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JP2008133258A - 腸溶性固体分散体の固形製剤及びその製造方法 - Google Patents

腸溶性固体分散体の固形製剤及びその製造方法 Download PDF

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JP2008133258A JP2007206388A JP2007206388A JP2008133258A JP 2008133258 A JP2008133258 A JP 2008133258A JP 2007206388 A JP2007206388 A JP 2007206388A JP 2007206388 A JP2007206388 A JP 2007206388A JP 2008133258 A JP2008133258 A JP 2008133258A
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Abstract

【課題】 固体分散体の溶出性を損なうことなく、製剤中の薬物を迅速に溶出することが
できる腸溶性固体分散体の固形製剤及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 難溶性薬物、腸溶性ポリマー及び崩壊剤を含む固体分散体の固形製剤であって、該崩壊剤が、平均粒子径が10〜100μmであり、かつBET法で測定した比表面積が1.0m2/g以上の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである腸溶性固体分散体の固形製剤を提供する。また、崩壊剤として平均粒子径が10〜100μmであり、かつBET法で測定した比表面積が1.0m2/g以上の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを混合した粉末に、難溶性薬物を分散又は溶解した腸溶性ポリマー溶液を噴霧し、造粒、乾燥することを含んでなる腸溶性固体分散体の固形製剤の製造方法を提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、難溶性薬物の溶出を改善する目的で製造された腸溶性固体分散体の固形製剤及びその製造方法に関するものである。特に、迅速な崩壊性と薬物の溶出性を有することを特徴とする固体分散体を含有する腸溶性固形の固形製剤及びその製造方法に関するものである。
難溶性薬物は結晶性が高く、水への溶解性が極めて低いために、これらを製剤化した場合、生物学的利用能又は体内吸収性が低く、薬効が不十分となる問題があった。この問題を解決するための技術として、難溶性薬物をセルロース誘導体等の高分子担体(キャリヤー)に非晶状態で分子分散させた固体分散体が開発されている。
従来の固体分散体は、難溶性薬物とキャリヤーを共溶媒で溶解させた物をスプレードライして得られた固形物をカプセルに詰めたり、そのまま細粒や顆粒に製剤化することで服用形態を取っていたが、定量処方及び定量服用、実際の患者の取り扱いや服用のし易さ等の点から、固形製剤の汎用的剤形である錠剤化が最も好ましい。
しかしながら、これまでの知見から、固体分散体粉末を錠剤化すると、比表面積の低下のみならず、圧縮成型過程で非晶質の薬物分子が可塑性の変形を受けることと、キャリヤー高分子の強い結合性により、しばしば錠剤の空隙率が低くなり、その結果、投与時に錠剤中への水分子の浸透が遅れ、錠剤の崩壊が遅延し、固体分散体本来の溶出改善性が得られないという問題が生じていた。また、キャリヤーとなる水溶性又は腸溶性高分子は、水和・溶解時に粘度が上昇するため、溶解時の錠剤表面に一種のハイドロゲル層を形成し、水の浸潤が更に妨げられてしまうということが生じていた。
これらの問題を解決する手段として、特許文献1では、スプレードライにより得られた固体分散体粉末と崩壊剤及びポロシゲンなる賦形剤を含有した錠剤が、特許文献2では、難溶性薬物に水溶性高分子基剤、必要に応じて賦形剤、崩壊剤を添加した散剤が提案されている。しかし、キャリヤーである濃度向上ポリマーや水溶性高分子基剤の添加量が多いため、投与後発現するポリマーの粘性が増大し、製剤からの薬物放出性が弱く、薬物溶解速度が遅延する傾向にあった。
また、特許文献1のようにスプレードライにより得られた固体分散体粉末は、その他の成分と混合した後、一旦圧縮・解砕して打錠用造粒末としなくてはならない。このようにスプレードライにより調製した固体分散体末は粒子径が細かいため、他の賦形剤と単純混合すると偏析が起こり、成分不均一な打錠用粉末が得られる。更に、このような工程を経ると、作業が煩雑となる一方、一旦圧縮することによる固体分散体が再結晶することが懸念される。また、崩壊剤が固体分散体を調製した後に添加されており、錠剤中で固体分散体同士がキャリヤーの強い結合力により凝集結合した場合、これが塊となって崩壊時に水中に分散されると、薬物の溶出性を低下させる原因となる。
更に、特許文献1では難溶性薬物と濃度向上ポリマーによって予め固体分散体粉末を調製し、その後崩壊剤及び賦形剤を物理的に混合されているのみのため、得られた錠剤は胃内でも崩壊してしまい比表面積の増えた固体分散体が消化管水溶液の中で長時間さらされ、溶解した薬物の再結晶による溶解能の低下も懸念される。
一方、特許文献3では、賦形剤と崩壊剤の混合末に、難溶性薬物のイトラコナゾール、水溶性ポリマー及び腸溶性ポリマーの溶液を噴霧、造粒、乾燥して得られる細粒を用いた錠剤が提案されている。しかし、崩壊性に劣るため、錠剤から薬物が溶出されるまで360分もかかっており、錠剤の崩壊性を改善するものではなかった。
平沢ら(非特許文献1)は、難溶性薬物のニルバジピンとクロスポビドン、メチルセルロースのエタノール分散液を結合液として、乳糖、メチルセルロースや低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等の混合末に投入し撹拌造粒したものから錠剤を得ている。しかしながら、ニルバジピンとキャリヤーであるクロスポビドン及びメチルセルロースのエタノール溶液ではそれらが溶解しないために、共溶解状態を経ず、単に非晶ニルバジピンの分散希釈剤として機能していると考えられる。キャリヤーであるポリマー中に非晶の薬物分子を分散させるためには、一旦両者を溶解する共溶媒で共溶解状態を経なくてはならないため、非特許文献1により得られた非晶質のニルバジピンの固体分散体は、十分な溶解性が得られないと考えられる。また、水溶性ポリマーの影響により崩壊性が抑制され、即溶出性の製剤を得ることが困難であると考えられる。
特表2005−517690号公報 特開平5−262642号公報 特開2004−67606号公報 薬学雑誌,124(1), 19−23(2004)
本発明者らは、上記事情に鑑みなされたもので、固体分散体の溶出性を損なうことなく、製剤中の薬物を迅速に溶出することができる腸溶性固体分散体の固形製剤及びその製造方法を提供するものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、崩壊剤として特殊な低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを用いることにより、固体分散体を圧縮成型した錠剤において崩壊性の低下を起すことなく、固形製剤において迅速な崩壊性と薬物の溶出性を有することを見出し、本発明を成すに至ったものである。
具体的には、本発明は、難溶性薬物、腸溶性ポリマー及び崩壊剤を含む固体分散体の固形製剤であって、該崩壊剤が、平均粒子径が10〜100μmであり、かつBET法で測定した比表面積が1.0m2/g以上の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである腸溶性固体分散体の固形製剤を提供する。腸溶性固体分散体の固形製剤は、好ましくは賦形剤を含んでもよい。また、崩壊剤として平均粒子径が10〜100μmであり、かつBET法で測定した比表面積が1.0m2/g以上の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを混合した粉末に、難溶性薬物を分散又は溶解した腸溶性ポリマー溶液を噴霧し、造粒、乾燥することを含んでなる腸溶性固体分散体の固形製剤の製造方法を提供する。
本発明によれば、造粒物の場合には高い溶出性が認められ、錠剤の場合には適当な溶解媒体への導入後10分以内に崩壊し、難溶性薬物の少なくとも70質量%を放出することができる優れた溶解性を有する固形製剤が得られる。
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明に用いる難溶性薬物は、水に対する溶解度が非常に低く、通常経口投与では吸収性の悪い薬物である。例えば、日本薬局方第15改正に定められている「ほとんど溶けない」又は「極めて溶けにくい」とされる薬物をいう。日本薬局方第15改正における薬物の「溶解性」とは、薬物が固形の場合には粉末とした後、溶媒中に入れ、20±5℃で5分毎に30秒間振り混ぜるときに30分以内に溶ける度合いをいい、「ほとんど溶けない」とは、薬物1g又は1mlを溶かすのに要する溶媒量(ここでは水)が10,000ml以上、「極めて溶けにくい」とは、薬物1g又は1mlを溶かすのに要する溶媒量が1,000ml以上、10,000ml未満の性状をいう。
本発明に用いる難溶性薬物の具体例としては、ニフェジピン、フェナセチン、フェニトイン、ジギトキシン、ニルバジピン、ジアゼパム、グリセオフルビン、クロラムフェニコール等が挙げられるが、これらに特に限定されるものではない。
本発明においては、難溶性薬物を非晶状態で分子分散させるため、キャリヤーとして腸溶性ポリマーを用いる。腸溶性ポリマーを固体分散体のキャリヤーとして用いる利点としては、固形製剤からの薬物放出が胃内では抑制され、胃から小腸へ移行後に、ようやく薬物が完全に放出され固体分散体から薬物が溶出されるという腸溶性ポリマーの溶解特性が挙げられる。これは体内において薬物の吸収面積及び吸収特性が最も高い小腸において、特異的・効率的に固体分散体の薬物を溶出、吸収ができることを意味する。また、固体分散体製剤における一般的問題点として挙げられる薬物溶解後の再結晶化を起す可能性のある薬物に対しても、有効である。すなわち、胃から腸へ製剤が移行する間に再結晶する可能性のある薬物に対して腸溶性ポリマーを固体分散体のキャリヤーとして用いることにより、再結晶化が抑えられ、再結晶化による薬物本来の低い溶解度に戻ってしまうことなく、小腸において、特異的・効率的に固体分散体の薬物を溶出、吸収ができる。
腸溶性ポリマーは、日本薬局方第15改正に定められている条件において、「ほとんど溶けない(薬物1g又は1ml溶かすのに必要な水量が10,000ml以上)」に該当し、かつアルカリ性溶液に溶けるポリマーである。腸溶性ポリマーとしては、具体的にはセルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、セルロースアセテートサクシネート、メチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルセルロースエチルフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルアセテートマレエート、ヒドロキシプロピルメチルトリメリテート、カルボキシメチルエチルセルロース、ポリビニルブチレートフタレート、ポリビニルアルコールアセテートフタレート、メタクリル酸/エチルアクリレート共重合体(好ましくは質量比1:99から99:1)、メタクリル酸/メタクリル酸メチル共重合体(好ましくは質量比1:99から99:1)、及びメタクリル酸共重合体等が挙げられ、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルアセテートマレエート、ヒドロキシプロピルメチルトリメリテートが好ましく、特にヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートが好ましい。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートの中でも特に、胃から小腸の上部から中部へ移行後、速やかに薬物溶出が始まると考えられる性質のものが好ましい。具体的には、ポリマーがpH5〜7(5.0〜6.8)の日局リン酸緩衝液中で120分以内に溶解する性質を示すものが好ましい。ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートのポリマーの溶解性を示す因子としては、各置換基の含有量及びアセチル基とサクシノイル基の組成比(サクシノイル基/アセチル基)が考えられ、具体例としては以下に示すものが好ましいが、これに限られることはない。
具体例1:メトキシル基:20質量%〜24質量%、ヒドロキシプロポキシル基:5質量%〜9質量%、アセチル基:5質量%〜9質量%、サクシノイル基:14質量%〜18質量%、組成比:1.5〜3.6
具体例2:メトキシル基:21質量%〜25質量%、ヒドロキシプロポキシル基:5質量%〜9質量%、アセチル基:7質量%〜11質量%、サクシノイル基:10質量%〜14質量%及び組成比:0.9〜2.0
なお、上記に挙げた置換基含有量以外のヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートでも具体例1及び2と組み合わせることで、pH溶解性がpH5〜7(5.0〜6.8)のリン酸緩衝液で120分以内に溶解するのであれば用いることができる。
腸溶性ポリマーの含有量は、固形製剤全体中に1〜75質量%、好ましくは1〜50質量%、特に好ましくは1〜35質量%である。腸溶性ポリマーの含有量が1質量%より少ないと固体分散体中の難溶性薬物を完全に非晶状態とすることが困難となる場合があり、75質量%より多いと製剤中に腸溶性ポリマーの割合が大きくなることで、投与量及び製剤サイズが大きくなるとともに、崩壊性が低下するし好ましくない場合がある。
難溶性薬物に対する腸溶性ポリマーの添加比率は、難溶性薬物1質量に対して腸溶性ポリマー1〜5質量が好ましい。腸溶性ポリマーの比率が1より小さいと固体分散体中の難溶性薬物を完全に非晶状態にすることができない場合があり、5よりも大きい場合は製剤中の腸溶性ポリマーの割合が大きくなるため、結果として製剤サイズが大きくなることになり、一般的な製剤として適さない場合がある。
腸溶性ポリマーを含んでなる難溶性薬物の固体分散体を調製する際の溶媒は、難溶性薬物が良く溶け、かつ腸溶性ポリマーも溶ける溶媒が好ましい。例えばメタノール、エタノール、塩化メチレン、アセトン又はこれらの混合溶媒の他、これらと水との混合溶媒が挙げられるが、難溶性薬物と腸溶性ポリマーの溶媒への溶解性により適宜選択することができる。
溶媒の添加量は、固形分濃度が好ましくは3〜18質量%、特に好ましくは3.5〜12%溶液になる量である。
また、必要に応じて固体分散体の成分中にポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイドやプロピレングリコール、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等界面活性剤を第三成分として添加することも可能である。
本発明で用いる賦形剤としては、例えば乳糖、コーンスターチ、白糖、マンニット、無水リン酸カルシウム、結晶セルロース、それらの混合物等が挙げられ、特に乳糖:コーンスターチ=7:3(質量比)の混合末が好ましい。
なお、賦形剤の含有量は、難溶性薬物、腸溶性ポリマー及び後述の崩壊剤を除く量(残部)が好ましい。
本発明の崩壊剤は、造粒物に高い流動性を与え圧縮成型した製剤からの高い溶出性を保証する点で、平均粒子径が10〜100μmであり、かつBET法で測定した比表面積が1.0m2/g以上の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが用いられる。
本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの平均粒子径は、10〜100μm、好ましくは20〜60μm程度である。10μm未満では微粉化により凝集性が増し、粉体の流動性が低下する恐れがあり、100μmを超えると薬物との混合性が低下して不均一となる恐れがある。平均粒子径は、レーザー回折法粒度分布測定であるHELOS&RODOS(シンパック社製)を用いて測定することができる。
更に、本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの比表面積は1.0m2/g以上である。これ未満では高い結合性が得られない場合があるからである。
一般的に粉体の比表面積が高い程、結合性が高い粉体となることが知られている。比表面積分析は、粉体粒子表面に吸着占有面積の判った分子を液体窒素の温度で吸着させ、その量から試料の比表面積を求める方法であり、不活性気体の低温低湿物理吸着によるBET法を用いることができる。例えば、MICROMERITICS GEMINI 2375(島津製作所社製)を用いて測定できる。
一般的には平均粒子径を小さくすることにより比表面積を増大させることができるが、上記記載のように平均粒子径が小さくなり過ぎると粉体の凝集性が増し、粉体の流動性が低下する恐れがある。本発明においては、圧密摩砕により、粉体の流動性が得られる平均粒子径でありながら高い比表面積を持つ粉体ができる。
低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、ゆるめ嵩密度が0.30g/ml以上のものが好ましい。
ここで、「ゆるめ嵩密度」とは、疎充填の状態の嵩密度をいい、直径5.03cm、高さ5.03cm(容積100ml)の円筒容器(材質:ステンレス)へ試料をJISの24メッシュの篩を通して、上方(23cm)から均一に供給し、上面をすり切って秤量することによって測定される。このような操作は、ホソカワミクロン社製パウダーテスター(PT−D)を使用することにより測定できる。
本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、圧縮圧50MPaで圧縮成型した時の弾性回復率が7%以下であるものを用いることが好ましい。これにより圧縮時に緻密な成型体を形成することができる。
弾性回復率は、粉体の圧縮成形性を示す指標である。粉体を錠剤径11.3mmであって、接触面が平面である平杵(タブレッティングテスター(三協パウテック社製))を用いて、錠剤質量480mg、圧縮圧50MPaで圧縮成型した時の錠剤厚みより、次式から求めることができる。
弾性回復率={(30秒後の錠剤厚み−最小錠剤厚み)/(最小錠剤厚み)}×100
ここで、「最小錠剤厚み」は、下杵が固定された平杵を用いて上杵にて粉体を圧縮した時の最下点、すなわち錠剤が最も圧縮された時の厚みをいい、「30秒後の錠剤厚み」は、上杵が上方に開放されてから30秒後の錠剤厚みをいう。
低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの膨潤特性の測定方法として、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを打錠圧1tで直径15mmの平面を有する錠剤に成型し、そこに水を滴下することにより、錠剤が膨潤するときの膨潤体積増加率と膨潤体積増加速度により評価できる。無水セルロースに対する苛性ソーダの質量比で0.1〜0.3であるアルカリセルロースを用いた場合、膨潤体積増加率は好ましくは300%以上で、膨潤体積増加速度は好ましくは100%/分以上となる。
膨潤体積増加率は、粉体を打錠圧1tで直径15mmの平面を有する錠剤に成型し、その後上杵の代わりに導管を持つ杵を取り付け、この導管を通じて臼に入った状態の錠剤に水を滴下することにより、錠剤が10分間吸水したときの膨潤体積増加率として得られる。水は、1ml/分の速度で10分間滴下する。体積の増加は、錠剤の厚み変化から以下の式により求めることができる。
膨潤体積増加率=(水添加前後の錠剤厚みの差/水添加前の錠剤厚み)×100
なお、上式中、「水添加前後の錠剤厚みの差」は、10分間の水添加後の錠剤厚みから水添加前の錠剤厚みを引いたものである。
また、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末の膨潤体積増加率は、崩壊剤として重要な特性である膨潤特性の点から、300%以上が好ましい。膨潤体積増加率が300
%未満だと製剤化した場合に崩壊時間が延長する場合がある。
膨潤体積増加速度は、上記方法と同様の条件で膨潤体積増加率を測定したとき、水添加開始から30秒後の初期膨潤率を意味し、以下の式から求めることができる。
膨潤体積増加速度=(初期水添加前後の錠剤厚みの差/水添加前の錠剤厚み)×100/0.5
上式中、「初期水添加前後の錠剤厚みの差」は、水添加開始から30秒後の錠剤厚みから水添加前の錠剤厚みを引いたものである。
本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末の膨潤体積増加速度は、崩壊剤として重要な特性である膨潤特性の点から、100%/分以上が好ましい。膨潤体積増加速度が100%/分未満であると、製剤化したときに崩壊時間が延長する場合がある。
本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、流動性が高く、粉体の流動性の指標の一つである安息角が好ましくは42o以下の粉体となる。安息角は、試料を平面上に落下させて堆積させた円錐の母線と水平面とのなす角度をいう。例えば、パウダーテスターPT−D型(ホソカワミクロン社製)を用いて直径80mmの金属製円盤状の台の上に75mmの高さより一定の角度になるまで試料を流出させ、堆積している粉体と台との角度を測定することにより算出できる。この角度が小さいほど流動性に優れる粉体と言える。
本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、特願2006−215401号に
示される通り、粉末化したパルプに苛性ソーダ水溶液を添加混合し、無水セルロースに対
する苛性ソーダの質量比が0.1〜0.3であるアルカリセルロースを製造し、次いでエ
ーテル化反応を行った後、溶解工程を経るか又は経ずに苛性ソーダを中和し、洗浄乾燥後
、粉砕工程において圧密摩砕することにより得られる。
より具体的には、(1)粉末化したパルプに無水セルロースに対する苛性ソーダの質量比が0.1〜0.3となる量で苛性ソーダ水溶液を添加混合してアルカリセルロースを製造する工程と、(2)得られたアルカリセルロースのエーテル化反応を行って粗反応物を得る工程と、(3)得られた粗反応物中に含有される苛性ソーダを中和する工程と、(4)その後の洗浄・脱水工程と、(5)乾燥工程と、(6)圧密摩砕を行う粉砕工程とを含んでなる製造方法を用いて低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末を得ることができる。また、無水グルコース単位あたりの置換モル数が0.05〜1.0である水不溶性で
吸水膨潤性を有する低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末の製造方法であって、(
1)粉末化したパルプに無水セルロースに対する苛性ソーダの質量比が0.1〜0.3と
なる量で苛性ソーダ水溶液を添加混合してアルカリセルロースを製造する工程と、(2)得られたアルカリセルロースのエーテル化反応を行って粗反応物を得る工程と、(3)粗反応物の一部又は全部を溶解する溶解工程を経ることなく、得られた粗反応物中に含有される苛性ソーダを中和する工程と、(4)その後の洗浄・脱水工程と、(5)乾燥工程と、(6)圧密摩砕を行う粉砕工程とを含んでなる製造方法を用いて低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末を得ることができる。上記洗浄・脱水工程は、好ましくは、洗浄するとともに含水率を65質量%以下とする脱水を行う工程である。
まず、原料として使用される粉末状のパルプは何れの粉砕方式を用いても良い。その平均粒子径は、好ましくは60〜300μmである。60μm未満の粉末状パルプを調製するには工業的に非効率的であり、300μmを超えると苛性ソーダ水溶液との混合性に劣る恐れがある。
アルカリセルロースを製造する工程は、好ましくは、上記粉末状のパルプに苛性ソーダ水溶液を滴下又は噴霧して混合することにより行う。この際、苛性ソーダはエーテル化反応の触媒として作用する。アルカリセルロースの製造は、好ましくは、内部撹拌型の反応機内で混合を行い、引き続いてエーテル化反応を行うか、他の混合機内で調製したアルカリセルロースを反応機内に仕込んでエーテル化反応を行うか何れの方法を用いても良い。
また、アルカリセルロース中の苛性ソーダ量は、反応効率への影響のみではなく、最終製品の膨潤特性及び結合性に影響を与えることが解った。アルカリセルロース中の最適な苛性ソーダ量は、無水セルロース(パルプ中の水分を除いたものをいう。)に対する苛性ソーダの質量比で0.1〜0.3である。0.1未満では膨潤特性の特に吸水膨潤時の体積増加率が低くなり、崩壊性が低下し、結合性も低下する場合がある。また、0.3を超えると後述の吸水時の膨潤体積増加率及び膨潤体積増加速度も低くなり、結合性も低下する場合がある。
苛性ソーダは、好ましくは20〜40質量%の水溶液として添加される。
次のエーテル化反応を行う工程は、アルカリセルロースを反応機内に仕込み、窒素置換後、エーテル化剤としてプロピレンオキサイドを反応機内に仕込み反応を行う。プロピレンオキサイドの仕込み比は、好ましくは、無水グルコース単位1モルに対して0.1〜1.0モル程度である。反応温度は40〜80℃程度、反応時間は1〜5時間程度である。
なお、エーテル化反応を行う工程の後、必要に応じて溶解工程を行うことができる。溶解工程は、エーテル化反応後の粗反応物の一部又は全部を水又は熱水に溶解することにより行われる。水又は熱水の使用量は、粗反応物の溶解量によって異なるが、粗反応物の全部を溶解させるときの水の量は、通常、粗反応物中の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースに対して質量比で0.5〜10である。
後述の洗浄・脱水工程における負荷及び低置換度セルロースエーテル結合性の更なる向上を考慮すると、この溶解工程を行わない方がより好ましい。
次に行われる中和工程は、触媒として使用した苛性ソーダが反応生成物に残存するため、好ましくは、その苛性ソーダに対して当量の酸を含む水又は熱水中に粗反応生成物を投入し中和を行う。また、反応生成物に当量の酸を含む水又は熱水を加えて中和を行っても良い。
使用する酸は、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸やギ酸、酢酸等の有機酸が挙げられる。
次の洗浄・脱水工程では、得られた中和物を、好ましくは水又は熱水を用いて洗浄しながら、好ましくは遠心分離、減圧濾過、加圧濾過等から選ばれる方法で脱水を行う。得られた脱水物ケーキ中の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは原料パルプの形態と同様に繊維状ものとなる。溶解工程を経た脱水物では置換モル数にもよるが、脱水率が概ね70〜90質量%であり、溶解工程を経ない脱水率は通常65質量%以下となり、その後の乾燥工程での負荷が低減でき生産性が向上する。更に、溶解工程が無いため工程を簡略化できる利点を有する。
また、製品の結合性の観点から繊維状形態のものを使用して粉砕した方が得られた製品の比表面積が高く、結合性の高いものが得られる。
上記で得られた脱水物を乾燥する乾燥工程は、好ましくは、流動乾燥機、ドラムドライヤー等の乾燥機を用いて60〜120℃にて行うことができる。
粉砕工程は、上記方法で得られた乾燥物を圧密摩砕することにより行われる。
この圧密摩砕には、ローラーミル、ボールミル、ビーズミル、石臼型粉砕機等の粉砕機が利用できる。ローラミルは、ローラー又はボールが、その回転運動に伴う遠心力や重力
荷重により、ミル壁の被粉砕物を圧縮・剪断しながら転がる粉砕機で、石川島播磨重工業社製ISミル、栗本鐵工所社製VXミル、増野製作所社製MSローラーミル等が利用でき
る。ボールミルは、鋼球、磁性ボール、玉石及びその類似物を粉砕媒体とする粉砕機で、栗本鉄工社製ボールミル、大塚鉄工社製チューブミル、FRITSCH社製遊星ボールミル等が利用できる。ビーズミルはボールミルと類似するが、使われるボールの径が小さく
、機器内部が高速回転することにより、ボールの加速度をより高めることができる点で異なり、例えばアシザワ製作所社製のビーズミルが利用できる。石臼型粉砕機は、石臼が狭いクリアランスで高速回転することにより粉体を摩砕することができる機械で、例えば増幸産業社製のセレンディピターが利用できる。
特に金属異物の混入が少なく、設置面積が小さく、生産性の高いローラーミルが好まし
い。
粉砕原料である繊維状形態の粒子は、圧密摩砕を繰り返すことにより、原料パルプ由来の繊維状で中空の管状形態が消失することにより、1次粒子を小さくすることができるため、比表面積が増大する。また、原料パルプ由来の繊維状形態が消失し、粒子形状の揃った粉体が得られる。
なお、従来の衝撃粉砕より製造される低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの結合性
は、繊維状形態の絡み合いにより発現されると言われてきた。そのため、結合性を高めるために繊維状粒子を多くすると流動性は低下してしまった。しかし、圧密摩砕より製造される低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末は、圧密摩砕されることにより繊維状形態が消失しているにも拘わらず、驚くべきことに高い結合性を示すものであった。
次に、好ましくは、粉砕物を定法に従い篩い分けを行うことにより目的の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末を得ることができる。篩いの目開きは、38〜180μm程度のものが使用できる。
このようにして得られた低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末は、原料パルプ由来の繊維状形態にも拘わらず流動性が高く、結合性に優れ、更に膨潤特性に優れるものである。また、結合性及び崩壊性に優れるため、錠剤中の添加量を削減でき錠剤のサイズを
小さくできるだけではなく、錠剤作成時における圧縮成型圧を低めにすることができるため、工程中に固体分散体が再結晶する等の物理的影響を低減できるという利点も有する。
本発明では、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの他に、例えばカルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロポキシル基5〜16質量%を有する低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン等やこれらの混合物を用いることができる。
崩壊剤の含有量は、固形製剤全体中に、好ましくは1〜98質量%、更に好ましくは1〜60質量%である。崩壊剤の含有量が1質量%より少ないと崩壊剤が少ないため固形製剤が崩壊しにくくなる場合があり、98質量%より多いと有効量の薬物を含有することができない場合がある。
本発明の固形製剤のうち造粒物とは、日本薬局方第15改正に定められている散剤及び顆粒剤をいう。
固形製剤が錠剤の場合には、必要に応じて滑沢剤を添加することができる。滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸等が挙げられる。
滑沢剤を添加する場合、滑沢剤の添加量は、好ましくは滑沢剤を除く製剤全体に対して0.5〜2質量%である。滑沢剤の添加量が0.5質量%より少ないと十分な滑沢性が得られない場合があり、打錠時に臼杵への付着が見られる一方、2質量%より多いと硬度の低下や崩壊性の低下が見られる場合がある。
本発明により得られた錠剤は、胃内の酸性環境下において完全に崩壊せず、腸内の中性〜アルカリ性下で崩壊し、薬物の溶出を改善する特性を示す。これは、打錠末である造粒物を調製時、キャリヤーである腸溶性ポリマーが崩壊剤の表面に噴霧され付着することによる。このような造粒物を用いた錠剤では、胃内では水が内部に浸透し難くなるため錠剤の崩壊を抑制し、一旦腸内でキャリヤーが溶解し始めれば水が浸入して崩壊剤の膨潤が可能となり錠剤が崩壊するようになる。この結果、固体分散体粒子の表面積が増え、溶解性が増大すると考えられる。
次に、本発明の腸溶性固体分散体の固形製剤及び錠剤の製造方法について説明する。
本発明の腸溶性固体分散体の固形製剤が造粒物の場合は、好ましくは、賦形剤及び崩壊剤の混合粉末に難溶性薬物が分散又は溶解した腸溶性ポリマー溶液を噴霧、造粒した後、乾燥することによって得られる。具体的には、賦形剤及び崩壊剤の混合粉末を造粒装置内で流動させ、これに予め調製した難溶性薬物が分散又は溶解した腸溶性ポリマー溶液を噴霧、造粒して、乾燥後、整粒する。
造粒装置としては、流動層造粒装置、高速撹拌造粒装置、転動造粒装置、乾式造粒装置等が挙げられるが、造粒物に対して機械的シェアがかからない点で、流動層造粒装置が特に好ましい。
本発明の腸溶性固体分散体の固形製剤の製造方法は、平均粒子径が10〜100μmであり、かつBET法で測定した比表面積が1.0m2/g以上の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを崩壊剤として用いる以外は、特に限定されるものではなく、例えば、以下の方法により行うことができる。
腸溶性ポリマーをエタノール/水等の上述の溶媒に完全に溶解した後、難溶性薬物を投入して固体分散体溶液を得る。なお、固体分散体溶液を構成する成分を一度に溶媒に投入しても良いが、腸溶性ポリマーを先に溶解した方が、最終的に得られる固形製剤中での薬物の安定性及び難溶性薬物の溶解時間の短縮化の観点から、より好適である。固体分散体溶液の濃度は特に制限されないが、噴霧することを考慮すると、400mPa・s以下、特に100mPa・s以下である。
そして、崩壊剤をはじめとする各種成分の混合物を例えば流動層造粒装置中で流動させながら、上記固体分散体溶液を噴霧し、造粒、乾燥して造粒物を得ることができる。噴霧・造粒工程の給気温度は、有機溶媒を使用する場合を考慮して、150℃以下、特に100℃以下が好ましい。
排気温度は30℃以上、特に40℃以上、スプレー速度は50g/分以下、特に30g/分以下、スプレーエアー圧250kPa以下、特に200kPa以下が好ましい。また、噴霧後は得られた造粒物中に溶媒が残留しないように行う乾燥工程の給気温度は150℃以下、特に100℃以下、乾燥時間は10〜60分が好ましい。
得られた造粒物は、そのままでも良いが篩過、粉砕等することによりより均一な粒度分布を有する固形製剤とすることも可能である。例えば、500μmの目開きの篩を介して整粒することができる。
一方、固体分散体の固形製剤が錠剤の場合には、上記の方法で得られた造粒物を打錠末とし、必要に応じて賦形剤、崩壊剤や滑沢剤を加えて打錠機にて圧縮成型することにより得られる。
打錠に用いる装置は、例えば、ロータリー打錠機、単発打錠機等が用いられるが、これに限定されず、特殊仕様の打錠機も使用できる。打錠の際の成形圧力は、1〜130kg/cm2であり、特に10〜100kg/cm2である。
こうして得られた腸溶性固体分散体の造粒物は、pH6.8の日局第2液(人工腸液)を用いて日本薬局方第15改正に記載された「溶出試験」で評価した場合に、投与後5分以内に薬物溶出濃度が投与量の70%以上となり、高い溶出性を示すことができる。また、pH1.2の日局第1液(人工胃液)での薬物の溶出率が、2時間経過後も薬物の初期投与濃度の10質量%以下で、胃内で崩壊しないものである。
得られた腸溶性固体分散体の錠剤は、pH6.8の日局第2液(人工腸液)を用いて日本薬局方第15改正に記載された「崩壊試験」で評価した場合に、投与後10分以内に崩壊し、pH6.8の日局第2液(人工腸液)を用いて日本薬局方第15改正に記載された「溶出試験」で評価した場合に、投与後10分以内の薬物溶出濃度が投与量の70%以上となり、高い崩壊性及び溶出性を示すことができる。また、pH1.2の日局第1液での崩壊時間が15分を超えており、薬物の溶出率も、2時間経過後も薬物の初期投与濃度の10質量%以下で、胃内で崩壊しないものである。
本発明で得られる固形製剤においては、味・臭気のマスキング、腸溶化又は徐放化を目的として、自体公知の方法によってコーティングしてもよい。この際、コーティング剤としては、例えば水溶性ポリマーである、メチルセルロース等のアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等や、腸溶性ポリマーであるセルロースアセテートフタレート、メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーLD、メタアクリル酸コポリマーS、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース等の他、胃溶性ポリマーであるポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー等が挙げられる。
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実
施例に限定されるものではない。
合成例1〜3
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末の合成
806gの粉末状のパルプ(無水換算750g)を10L内部撹拌型反応機に仕込み2
6%苛性ソーダ303gを反応機に仕込み45℃で30分間混合して、無水セルロースに
対する苛性ソーダの質量比が0.105のアルカリセルロースを得た。次に、窒素置換を
実施し、そこにプロピレンオキサイドを123g(セルロースに対して0.164質量部
)添加して、ジャケット温度60℃で1.5時間反応を行い、無水グルコース単位あたり
ヒドロキシプロポキシル基置換モル数0.28のヒドキシプロピルセルロース粗反応物1
232gを得た。エーテル化効率は61.4%であった。
次に、10L内部撹拌型反応機に50質量%の酢酸236gを添加混合して中和を行っ
た。この中和物をバッチ式遠心分離機を用いて回転数3000rpmの条件で、90℃の
熱水にて洗浄、脱水を行った。脱水物の含水率は58.2質量%であった。この脱水物を
棚段乾燥機で80℃、一昼夜乾燥を行った。
乾燥物をバッチ式遊星ボールミルFRITSH社製P−5を用いて255rpmで60
分間粉砕を実施した。得られた粉砕物を目開き38、75及び180μmの篩にて篩過してヒドロキシプロポキシル基含有率10.9質量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末(それぞれ、試料1〜3)を得た。この粉体の平均粒子径、比表面積、ゆるめ嵩密度、安息角、弾性回復率、結合性、膨潤体積増加率、膨潤体積増加速度を前記の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
Figure 2008133258
実施例1〜3及び比較例1
表2に示す所定量のニフェジピン、腸溶性ポリマーであるヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)をエタノール:水=8:2(質量比)の混合溶媒中に溶解し、固体分散体溶液を調製した。そして、表2に示す所定量の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)と、乳糖(DMV社製Pharmatose)及びコーンスターチ(日本食品加工社製コーンスターチW)の混合物を流動層造粒装置(POWREX社製Multiplex MP−01)中で流動させて固体分散体溶液を噴霧・造粒・乾燥した後、30メッシュ(目開き500μm)の篩で整粒して造粒物を得た。この際の噴霧・造粒及び乾燥条件は以下のとおりである。
給気温度:60℃、排気温度:40℃、
スプレー速度:10g/分、スプレーエアー圧:200kPa、
乾燥工程の給気温度:75℃、乾燥時間:15分。
比較例1
実施例1の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを除いた各種粉体を表2の組成で調製した以外は、実施例1と同様の方法で造粒物を製造した。
比較例2
実施例1の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)(ヒドロキシプロポキシル基10.9質量%、平均粒子径44μm、比表面積0.92m2/g、ゆるめ嵩密度0.44g/ml、安息角39o、弾性回復率3.8%、膨潤体積増加率250%、膨潤体積増加速度200%/分)に代えた以外は、実施例1と同様の方法で造粒物を製造した。
各処方の造粒物において、造粒工程中の造粒物の流動状態を観察した結果を表2に示す。流動状態評価は、「優」は特に流動性が良好、「良」は流動性が良好、「不良」は流動性がやや悪く、層内でブロッキング(層内で粉体が滞留し流動しない状態)発生の兆候有り、「不可」は流動物が層内でブロッキングを発生し、流動不可を意味する。
表2に示す通り、試料1〜3を用いた実施例1〜3の造粒物は流動性に優れていたが、比較例1では実施例1〜3と比較し、造粒物の流動性は劣っていた。また、比較例2では、工程中に造粒末の流動性が低下し、層内でブロッキングを発生したため最後まで造粒することが不可能であった。
Figure 2008133258
実施例1〜3及び比較例1、2の薬物溶出特性
実施例1〜3及び比較例1、2により得られた造粒物について、造粒物1800mg(ニフェジピンとして90mg含有)を日本薬局方第15改正の溶出試験のパドル法に従って試験を行った。溶出試験の条件は、回転数100rpm、試験液には日局第2液(pH6.8)900mlを用いた。また、参考のためにニフェジピン原末90mgについても同様の操作で試験を行った。その結果を表3に示す。
なお、比較例2の造粒物では、流動層造粒中にブロッキングを発生し、継続して良好な造粒を行うことが困難であったため、溶出試験を行うことが出来なかった。
実施例2の造粒物全てについて、日局第1液(人工胃液、pH1.2)を用いて日本薬局方第15改正に記載された「溶出試験」で評価した場合には、120分経過後の溶出率は薬物初期投与濃度の10%以下であり、日局第2液(人工腸液、pH6.8)を用いて日本薬局方第15改正に記載された「溶出試験」で評価した場合には、10分以内の溶出率が70%以上と、崩壊剤の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを添加していない比較例1よりも高い薬物溶出改善性を示した。また、日局第2液を用いた溶出試験では、ニフェジピン原末の溶解度と比較して有意に高い薬物溶出濃度及び溶出率を示した。
以上のことから本願発明の固体分散体の造粒物は、迅速で高い薬物溶出性を示すことが認められた。
Figure 2008133258
実施例4〜6及び比較例3
実施例1〜3において調製した造粒物を打錠末とし、この打錠末に対して滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム0.5質量%を加えて混合し、ロータリー打錠機(菊水製作所社製Vergo)にて成形圧力20kg/cm2で201mgの錠剤を製造した(実施例4〜6)。比較例として比較例1において調製した造粒物を打錠末として、実施例4と同様の方法により錠剤を製造した(比較例3)。得られた錠剤について硬度測定及び日局第1又は第2液中の崩壊試験を行い、その結果を表4に示す。
実施例4〜6により得られた錠剤では、適切な硬度と優れた崩壊性(日局第2液)を示した。一方、崩壊剤である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを添加しない場合(比較例3)では、良好な硬度及び崩壊性(日局第2液)を示したが、日局第1液では崩壊時間が15分以下であった。
Figure 2008133258
実施例4〜6及び比較例3の薬物溶出特性
実施例4〜6及び比較例3により得られた錠剤1890mg(ニフェジピンとして90mg含有)について、実施例1〜3と同様の溶出試験を行った。また、参考のためにニフェジピン原末90mgについても同様の操作で試験を行った。その結果を表5に示す。
実施例4〜6により得られた錠剤では、造粒物からの溶出率と遜色無い結果を得た。一方、比較例3により得られた錠剤では、溶出性の向上はほとんど見られなかった。
実施例4〜6により得られた錠剤では、日局第1液中での120分経過後の薬物溶出率は薬物初期投与濃度の10%以下であり、日局第2液中での10分以内の溶出率は70%以上であり、優れた薬物溶出を示した。また、日局第2液を用いた溶出試験では、ニフェジピン原末の溶解度と比較して有意に高い薬物溶出濃度及び溶出率を示した。
一方、崩壊剤である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを添加しない場合では、日局第1液(人工胃液)での120分経過後の薬物溶出率は薬物初期投与濃度の10%以下であったものの、日局第2液中での10分以内の溶出率は70%以上に達せず、溶出性の向上は見られなかった。
以上のことから本願発明の固体分散体の錠剤は、優れた崩壊性及び迅速で高い薬物溶出性が認められた。
Figure 2008133258
実施例7〜13
表6に示す所定量のニフェジピン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、乳糖(DMV社製Pharmatose)及びコーンスターチ(日本食品加工社製コーンスターチW)を用いて、実施例1〜3と同様の方法により表6に示す混合割合で造粒物を得た。
実施例14
ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートの置換度を代えた以外は、実施例1〜3と同様の方法により表6に示す混合割合で造粒物を得た。
実施例15,16
実施例1のヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートをヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートに代えた以外は、実施例1〜3と同様の方法により表6に示す混合割合で固体分散体の造粒物を得た。
比較例4,5
比較例2の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを用いた以外は、実施例1〜3と同様の方法により表6に示す混合割合で固体分散体の造粒物を得た。
各処方の造粒物において、造粒工程中の造粒物の流動状態を観察した結果を表6に示す。
実施例7〜16の造粒物は流動性に優れていたが、比較例4では実施例7〜16と比較して造粒物の流動性は劣っていた。また、比較例5は造粒中の流動性が低下し、層内でブロッキングを発生したため最後まで造粒することが不可能であった。
Figure 2008133258
実施例7〜16及び比較例4〜5の薬物溶出特性
実施例7〜16及び比較例4〜5により得られた造粒物について、造粒物1800mg(ニフェジピンとして90mg含有)を実施例1〜3と同様の方法で評価した。その結果を表7に示す。
実施例7〜16の造粒物全てについて、日局第1液(人工胃液、pH1.2)を用いて日本薬局方第15改正に記載された「溶出試験」で評価した場合には、120分経過後の溶出率は薬物初期投与濃度の10%以下であり、日局第2液(人工腸液、pH6.8)を用いて日本薬局方第15改正に記載された「溶出試験」で評価した場合には、10分以内の溶出率が70%以上と、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを添加した比較例4よりも高い薬物溶出改善性を示した。また、日局第2液を用いた溶出試験では、ニフェジピン原末の溶解度と比較して有意に高い薬物溶出濃度及び溶出率を示した。
Figure 2008133258
実施例17〜25及び比較例6
実施例7〜15において調製した造粒物を打錠末とし、この打錠末に対して滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム0.5質量%を加えて混合し、実施例4〜6と同様の方法で錠剤を製造した(実施例17〜25)。比較例として、比較例4において調製した造粒物を打錠末とし、実施例17〜25と同様の方法で錠剤を製造した(比較例6)。得られた錠剤について、実施例4〜5と同様の方法で硬度測定及び日局第1又は第2液中の崩壊試験を行い、その結果を表8に示した。
実施例17〜25により得られた錠剤では、適切な硬度と優れた崩壊性(日局第2液)を示した。また、崩壊剤として比較例2の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを添加した場合(比較例6)では、良好な硬度及び崩壊性(日局2液)を示したが、日局1液で15分以内に崩壊してしまった。
Figure 2008133258
実施例17〜25及び比較例6の錠剤の薬物溶出特性
実施例17〜25及び比較例6の錠剤1890mg(ニフェジピンとして90mg含有)について、実施例4同様の方法で溶出試験を行った。その結果を表9に示す。
実施例17〜25により得られた錠剤では、造粒物からの溶出率と遜色ない結果を得た。一方、比較例6により得られた錠剤では、薬物溶出性の向上は殆ど見られなかった。
実施例17〜25により得られた錠剤では、日局第1液中での120分経過後の薬物
溶出率は薬物初期投与濃度の10%以下であり、日局第2液中での10分以内の溶出率は
70%以上であり、優れた薬物溶出を示した。また、日局第2液を用いた溶出試験では、
ニフェジピン原末の溶解度と比較して有意に高い薬物溶出濃度及び溶出率を示した。
一方、崩壊剤として比較例2の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを添加した場合(比較例6)では、日局第1液(人工胃液)での120分経過後の薬物溶出率は薬物初期投与濃度の10%以下であったものの、日局第2液中での10分以内の溶出率は70%以上に達せず、溶出性の向上は見られなかった。
以上のことから、本願発明の固体分散体の錠剤は優れた崩壊性及び迅速で高い薬物溶出性が認められた。
Figure 2008133258

Claims (9)

  1. 難溶性薬物、腸溶性ポリマー及び崩壊剤を含む腸溶性固体分散体の固形製剤であって、該崩壊剤が、平均粒子径が10〜100μmであり、かつBET法で測定した比表面積が1.0m2/g以上の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである腸溶性固体分散体の固形製剤。
  2. さらに、賦形剤を含んでなる請求項1に記載の腸溶性固体分散体の固形製剤。
  3. 上記崩壊剤が、ヒドロキシプロポキシル基5〜16質量%を有する低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである請求項1又は請求項2に記載の腸溶性固体分散体の固形製剤。
  4. 上記崩壊剤が、ゆるめ嵩密度が0.30g/ml以上の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである請求項1〜3のいずれかに記載の腸溶性固体分散体の固形製剤。
  5. 上記崩壊剤が、圧縮圧50MPaで圧縮成型した時の弾性回復率が7%以下の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである請求項1〜4のいずれかに記載の腸溶性固体分散体の固形製剤。
  6. 上記崩壊剤が、吸水時の膨潤体積増加率が300%以上で、膨潤体積増加速度が100%/分以上の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである請求項1〜5のいずれかに記載の腸溶性固体分散体の固形製剤。
  7. 上記崩壊剤が、安息角が42o以下の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである請求項1〜6のいずれかに記載の腸溶性固体分散体の固形製剤。
  8. 上記腸溶性ポリマーが、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、セルロースアセテートサクシネート、メチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルセルロースエチルフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルアセテートマレエート、ヒドロキシプロピルメチルトリメリテート、カルボキシメチルエチルセルロース、ポリビニルブチレートフタレート、ポリビニルアルコールアセテートフタレート、メタクリル酸/エチルアクリレート共重合体、メタクリル酸/メタクリル酸メチル共重合体、及びメタクリル酸共重合体から選ばれる請求項1〜7のいずれかに記載の腸溶性固体分散体の固形製剤。
  9. 崩壊剤として平均粒子径が10〜100μmであり、かつBET法で測定した比表面積が1.0m2/g以上の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを混合した粉末に、難溶性薬物を分散又は溶解した腸溶性ポリマー溶液を噴霧し、造粒、乾燥することを含んでなる腸溶性固体分散体の固形製剤の製造方法。
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