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JP2008127460A - コンデンサー用二軸配向ポリプロピレンフィルム、それを用いてなる金属化フィルムおよびコンデンサー - Google Patents

コンデンサー用二軸配向ポリプロピレンフィルム、それを用いてなる金属化フィルムおよびコンデンサー Download PDF

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JP2008127460A
JP2008127460A JP2006313900A JP2006313900A JP2008127460A JP 2008127460 A JP2008127460 A JP 2008127460A JP 2006313900 A JP2006313900 A JP 2006313900A JP 2006313900 A JP2006313900 A JP 2006313900A JP 2008127460 A JP2008127460 A JP 2008127460A
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Junichi Masuda
順一 増田
Shigeru Tanaka
茂 田中
Masatoshi Okura
正寿 大倉
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Abstract

【課題】寸法安定性、耐熱性、剛性は従来品同等に保持し、絶縁破壊強度を高めた、ハンドリング性と耐電圧特性両方に優れるコンデンサー用二軸配向ポリプロピレンフィルムを提供すること。また、該ポリプロピレンフィルムを用いた金属化フィルムおよびコンデンサーを提供すること。
【解決手段】ポリプロピレンとイオン含有ポリマーとを含むことを特徴とするポリプロピレンフィルム、および該ポリプロピレンフィルムを用いた金属化フィルム、コンデンサーとする。
【選択図】なし

Description

本発明は、絶縁破壊強度が極めて高い、すなわち耐電圧特性に極めて優れるコンデンサー用二軸配向ポリプロピレンフィルムおよび金属化ポリプロピレンフィルムに関し、さらには小型大容量、高定格電圧下での使用にも好適なコンデンサーに関するものである。
ポリプロピレンフィルムは、優れた防湿性、透明性、表面光沢を有し、安価に供給し得ることから、工業用、包装用に幅広く用いられている。また、ポリプロピレンは他のポリマーに比べて優れた電気特性(耐電圧特性や誘電損失など)を併せ持つことから、特にその二軸配向フィルムが電気用途にも広く用いられている。なかでもコンデンサーの誘電体としての需要は大きく、その伸びは著しい。
近年、各種電気設備のインバータ化、およびコンデンサーの軽薄短小化、小型大容量化が進むにつれて、二軸配向ポリプロピレンフィルムが一層注目されるようになり、その薄膜化が加速度的に進行しつつある。
ところが、二軸配向ポリプロピレンフィルムは、薄くなるにつれてハンドリング性(例えば、フィルムを巻き取る際に滑り性が適度に良好で、巻きずれやシワが発生しないこと、など)や加工性(例えば、金属化の際にフィルムの伸びやシワ、白化が発生しない、など)などの特性が悪化する傾向にあるため、これらの向上が求められている。
二軸配向ポリプロピレンフィルムのハンドリング性を向上させる手法としては、フィルムの少なくとも片面を粗面化して滑り性を向上させる手法が代表的である。また、適度にフィルム表面を粗面化することは、コンデンサー素子の特性向上の観点からも重要である。この粗面化手法としては、例えばエンボス法やサンドブラスト法などの機械的な粗面化方法、溶剤を用いたケミカルエッチングなどの化学的な粗面化方法、ポリプロピレンにポリエチレンなどの異種ポリマーを混合したシートを延伸し、二軸配向せしめることにより粗面化する方法、β晶を含有するシートを延伸し、二軸配向せしめることにより粗面化する方法(例えば、特許文献1参照)などが挙げられる。このうち、コンデンサー用二軸配向ポリプロピレンフィルムには、粗さ密度の制御、耐熱性、耐電圧特性、環境対応などの観点から表面にβ晶を生成させたシートを延伸し、二軸配向せしめることにより粗面化する方法(以下、β晶法と略称することがある)が主に適用されている。
β晶法による粗面化では、溶融押出したポリプロピレンを金属ドラム上に巻き付けて冷却固化し、表面(近傍)にα晶の他にβ晶を含有するシートを作製し、該未延伸シートを二軸延伸する過程でβ晶(結晶密度0.922g/cm)をα晶(結晶密度0.936g/cm)に結晶変態させて、これらの密度差によりフィルム表面に凹凸を形成させて粗面化し、滑り性を付与する。β晶法による粗面化は、用いるポリプロピレンの原料特性(結晶性、粘度など)、金属ドラム上で冷却固化する際の冷却速度(ドラム温度、ドラム回転速度などにより制御可能)、二軸延伸条件(倍率、温度など)などにより制御できることは公知である(例えば、非特許文献1参照)。
一方、コンデンサー素子作製時には、別途準備した金属箔や両面を金属化した紙もしくはプラスチックフィルムなどの電極と重ねるか、金属化によりフィルム上に金属層を設置することにより、フィルムに電極を挿入し、巻き取った後、一定温度下で熱処理する。この際、フィルムを適度に熱収縮させ、素子に巻締まりを発生させることにより、形態保持性やフィルム層間の空気を排除させる必要がある。この熱収縮は、大きすぎると素子が変形してしまい、コンデンサー容量の低下、素子の破壊を生じる場合があり、小さすぎると巻締まりが不十分なため、長期高温使用下で誘電正接が上昇し、素子が破壊する場合があった。したがって、コンデンサー用二軸配向ポリプロピレンフィルムには熱収縮率が適度に低いことも必要とされる。
さらに、従来のフィルムコンデンサーは耐電圧特性に余裕を持たせて、厚めのフィルムを用いて設計されていたが、上記したように軽薄短小化、小型大容量化の進行に伴うフィルムの薄膜化により、コンデンサー用ポリプロピレンフィルムにはフィルムそのものについて、絶縁破壊強度がより高くて信頼性に優れること、また耐熱性に優れることなどが極めて重要視されている。特に、絶縁破壊強度が高いことは、最も基本的かつ最大の要求特性である場合が多い。
これまで、コンデンサー用二軸配向ポリプロピレンフィルムのハンドリング性、加工性、耐電圧特性、耐熱性、熱収縮特性を向上させるため、種々の提案がなされている。例えば、メソペンタッドフラクション、灰分、フィルムの密度より求めた結晶化度を特定範囲とすることにより、耐電圧特性、耐熱性、蒸着加工性を向上させた耐熱耐電圧性コンデンサ用ポリプロピレンフィルム(例えば、特許文献2参照)、フィルムの灰分、内部ヘイズの積を特定の範囲とすることにより、耐電圧特性を向上させたコンデンサ用ポリプロピレンフィルム(例えば、特許文献3参照)、特定範囲のヘプタンインデックスを有するポリプロピレンを用い、10点平均粗さ、中心線粗さ、最大粗さを特定範囲となるように上記β晶法により粗面化し、ハンドリング性を向上させた二軸延伸ポリプロピレンフィルム(例えば、特許文献4参照)、ポリプロピレンフィルムの一方の面に金属蒸着を施した後の非蒸着面とクロムメッキを施した金属板との80℃における静摩擦係数が0.8以下であって、かつ融点が130℃以下の添加剤の含有量が4,000重量ppm以下とすることにより、ロールとの滑り性が良好で、蒸着加工性を向上させたコンデンサ用蒸着用ポリプロピレンフィルム(例えば、特許文献5参照)、ポリプロピレンに、実質的に二重結合や極性基を含まない石油樹脂、テルペン樹脂から選ばれた樹脂の一種以上を特定組成で混合した樹脂層を少なくとも一層有し、少なくとも片面の中心線平均表面粗さを特定範囲とすることにより、絶縁欠陥を少なくして耐電圧特性を向上させ、長期耐用における保安特性を向上させたコンデンサー用ポリプロピレンフィルム(例えば、特許文献6参照)などが知られている。
特公昭56−11963号公報(第1頁第1段落第29〜35行) 特開平8−294962号公報(第2頁第1段落第2〜6行) 特開平9−139323号公報(第2頁第1段落第2〜6行) 特開平11−147962号公報(第2頁第1段落第2〜24行) 特許第2663594号公報(第1頁第1段落第2〜7行) 特開平11−162779号公報(第2頁第1段落第2〜10行) フジヤマ(M.Fujiyama)ら、"ジャーナル オブ アプライド ポリマー サイエンス"("Journal of Applied Polymer Science")、第36巻、1988年、p.985−1048
しかしながら、特許文献1〜5、非特許文献1などの従来のフィルムでは、ハンドリング性と耐電圧特性の両立が難しかった。一般的に、同じ厚みのフィルムであってもフィルム表面の粗さが大きいほど、絶縁破壊強度は低くなる傾向にある。ところが、表面の粗さが小さいほど、フィルムの滑り性が悪化し、ハンドリング性は低下してしまう。上記の通り、フィルムの耐電圧特性に対する要求特性は年々高まる一方で、より薄いフィルムが求められることから、ハンドリング性をも改良する必要がある。一つの解決手段として、上記した従来のフィルムにおいて、実用上最低限のハンドリング性を保持できるレベルまで表面の粗さを小さくし、耐電圧特性を向上させる手法がとられてきたが、この手法にも限界があった。
従来のβ晶法では、原料特性、製膜条件は主として耐電圧特性向上、安定製膜の観点から制御される。このため、ハンドリング性が良好な均一粗面を得るためには、主として溶融樹脂の冷却速度をコントロールして未延伸シートに含有されるβ晶量を制御する。すなわち、粗面を得るためには、溶融樹脂を金属ドラムに巻き付ける際のドラム温度を高く設定し、冷却速度を遅く(徐冷)することにより、未延伸シート表面(近傍)に適量のβ晶を生成させる必要があった。しかしながら、この際の冷却速度が遅すぎると(ドラム温度が高すぎると)、二軸延伸後のフィルム内部にボイドなどの絶縁欠陥が発生し、耐電圧特性を著しく悪化せしめることがあった。
また、フィルムが薄くなるほどハンドリング性、耐電圧特性を高いレベルでバランスさせることが困難になる。二軸延伸後のフィルムを薄くするためには、製膜が安定しない高延伸倍率で二軸延伸しない限りは、未延伸シートを薄くする必要がある。未延伸シートを薄くすると、該シート作製時に金属ドラムへの密着性が悪化し、ドラムへの密着ムラが発生することがある。また、未延伸シートが薄くなるとシートの冷却速度が早くなる傾向にあり、密着ムラの発生と相まってβ晶の生成効率が悪化し、薄くなるほどフィルム表面が粗面化せず、逆に平滑化する傾向にあった。加えて、薄くした際のβ晶生成効率の低下を補うためにドラム温度を高くすればするほど、二軸延伸後のフィルム内部に発生するボイドが多くなり、耐電圧特性が悪化する傾向にあった。
特許文献6では特定の樹脂を混合することにより、絶縁欠陥を減少せしめ、耐電圧特性を向上させているものの、高温での熱収縮率が高くなり、寸法安定性に劣ることが問題であった。
本発明の目的は、上記課題を解消すべくなされたものであり、寸法安定性、耐熱性を従来品同等に保持し、絶縁破壊強度を著しく高めた二軸配向ポリプロピレンフィルムを提供することである。好ましくは、従来のβ晶法によるフィルムに比較して、より均一かつ緻密な凹凸を表面に形成し、絶縁欠陥を減少せしめた二軸配向ポリプロピレンフィルムを提供することである。すなわち、ハンドリング性、耐電圧特性に極めて優れた二軸配向ポリプロピレンフィルムを提供することである。
本発明者らは、鋭意検討した結果、主として以下の構成により上記課題を達成できることを見出した。
すなわち、本発明のコンデンサー用二軸配向ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレンとイオン含有ポリマーとを含むことを特徴とする。
また、好ましい態様として、25℃での縁破壊強度(BDV)が650V/μm以上であること、またマイクロメータ法によるフィルムの厚みが5μm以下であること、またフィルムの両面について、その中心線平均表面粗さ(Ra)と最大表面粗さ(Rmax)の比(Rmax/Ra)が8〜15であること、またフィルムの120℃での縦方向の熱収縮率が0.5〜4.5%であること、また該ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属層を設けてなる金属化ポリプロピレンフィルム、また該コンデンサー用二軸配向ポリプロピレンフィルムもしくは該金属化ポリプロピレンフィルムを少なくとも一部に用いてなるコンデンサー、である。
本発明のポリプロピレンフィルムは、寸法安定性、剛性、耐熱性を従来同等に保持しながら、絶縁破壊強度が極めて高く、従来相反する特性であったハンドリング性と耐電圧特性の両特性に優れる。また、従来の単純なβ晶法を用いたフィルムとは異なり、薄膜化した際に極端な平滑化の傾向はみられず、フィルム両表面に粗大突起が少ない均一かつ緻密な凹凸を適度に形成することもできるため、薄くしてもハンドリング特性を保持できる。さらに、表面の凹凸が均一かつ緻密であり、二軸延伸時に発生するボイドなどの絶縁欠陥が従来に比べて少ないことから、薄くなるにつれてみられる耐電圧特性の低下を抑制できる。また、ボイドが少ないことから、薄くなるにつれてみられる製膜中の破れが少なく、フィルムを薄くしても生産性を保持することができる。
以上のことから、本発明のポリプロピレンフィルムは、例えば、金属化、コンデンサー素子作製の際にも優れたハンドリング性を有し、耐電圧特性に優れた信頼性の高いポリプロピレンフィルムとして、コンデンサー用途への適用が期待される。
本発明のコンデンサー用二軸配向ポリプロピレンフィルム(以下、単にポリプロピレンフィルム、フィルムと略称する場合がある)は、ポリプロピレンを主成分とすることが好ましい。本発明では、このことを、フィルムが、当該フィルムを構成する全てのポリマーに対して、70重量%以上のプロピレン単量体成分を含むことと定義する。ポリプロピレンが主成分であればコンデンサー素子とした際に絶縁破壊強度が高く耐電圧特性に優れ、損失の少ないコンデンサー用フィルムとすることができる。プロピレン単量体の含量は、フィルムを構成する全てのポリマーの単量体全量に対し、より好ましくは80重量%以上であり、さらに好ましくは85重量%以上である。
本発明のポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレンは、ポリプロピレンを主成分とすることが好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲でプロピレンとプロピレン以外の不飽和炭化水素の単量体成分が共重合された重合体であってもよいし、プロピレンとプロピレン以外の不飽和炭化水素の単量体成分が共重合された重合体がブレンドされてもよいし、プロピレン以外の不飽和炭化水素の単量体成分の(共)重合体がブレンドされてもよい。このような共重合成分やブレンド物を構成する単量体成分として、例えば、エチレン、プロピレン(共重合されたブレンド物の場合)、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチルペンテン−1、3−メチルブテン−1、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、5−エチルヘキセン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネンなどが挙げられる。
また、本発明のポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレンには、経済性の観点から、本発明の特性を損なわない範囲で本発明のフィルムを製造する際に生じた屑フィルムや他のフィルムを製造する際に生じた屑フィルムを回収使用してもかまわない。
本発明のフィルムに用いるポリプロピレンの原料特性については特に限定されないが、例えば、以下に示すような原料特性を有すれば、さらに優れた耐電圧特性を有し、滑り性が良好でハンドリング性に優れ、寸法安定性、剛性、耐熱性、加工性に優れたフィルムとできるので好ましい。
本発明のポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレンのメルトインデックス(MI)は、製膜性および製膜後のフィルム特性の観点から0.5〜30g/10分の範囲にあることが好ましい。MIが0.5g/10分未満であると、溶融押出時に濾圧が上昇したり、押出原料の置換に長時間を要するなどの問題点が生じる場合があり、得られるフィルムの寸法安定性(熱収縮率)が悪化する場合がある。MIが30g/10分を超えると、得られるフィルムの厚み斑が大きくなったり、表面粗さが小さくなるなどの問題点を生じる場合がある。MIを上記範囲とするためには、該ポリプロピレン重合時の重合条件により平均分子量や分子量分布などを調整する方法などが好ましく用いられる。MIは、より好ましくは1〜20g/10分、さらに好ましくは1.5〜10g/分である。
本発明のポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレンのメソペンタッド分率(mmmm)は、92〜99.2%の範囲にあることが好ましい。ここで、mmmmとは、ポリプロピレンにおけるアイソタクチックの立体構造を直接反映する指標である。また、ここでいうmmmmとは、下記に示すように13C−NMRにより得られたメチル基由来の各スペクトルから、下記測定方法の詳細な記述に示す方法により算出した平均値である。mmmmが92%未満であると、得られるフィルムの寸法安定性、耐熱性、剛性が低下して加工性が低下したり、ハンドリング性が悪化したり、耐電圧特性が著しく低下するため、コンデンサー用として実用に耐えない場合がある。mmmmが99.2%を超えると、製膜性が著しく低下する場合がある。mmmmを上記範囲とするためには、ポリプロピレン重合時の触媒組成(固体触媒、外部電子ドナー)やそれらの純度を調整する方法などが好ましく用いられる。mmmmは、より好ましくは94〜99%、さらに好ましくは95〜98.5%、最も好ましくは96〜98.5%である。
本発明のポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレンのアイソタクチックインデックス(II)は、92〜99.5%の範囲にあることが好ましい。IIが92%未満であると、得られるフィルムの寸法安定性、剛性が低下して加工性が低下したり、ハンドリング性が低下したり、耐電圧特性が著しく低下するため、コンデンサー用として実用に耐えない場合がある。IIが99.5%を超えると、製膜性が著しく低下する場合がある。IIを上記範囲とするためには、ポリプロピレンの沸騰n−ヘプタン可溶低分子量物成分や、立体規則性の低い所謂アタクチック成分の割合が適度に低いポリプロピレンを用いる方法が好ましく用いられる。IIは、より好ましくは94〜99.3%、さらに好ましくは95〜99%、最も好ましくは96〜99%である。
本発明のポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレンの灰分は、50ppm以下であることが好ましい。ポリプロピレンの重合過程では、触媒として金属を含む化合物を用いることが一般的である。この際、触媒の残渣は、樹脂を完全に燃焼させた後の金属酸化物の量から評価でき、これが灰分と定義される。灰分が50ppmを超えると、得られるフィルムの耐電圧特性が低下し、コンデンサーとした場合に絶縁破壊強度が低下する場合がある。本発明のポリプロピレンフィルムの灰分には、本発明の効果を奏する限り特に下限は設けないが、例えばポリプロピレン重合時の生産性の観点から1ppm以上であることが好ましい。灰分を上記範囲とするためには、用いるポリプロピレンの触媒残渣を低くする方法が最も好ましく用いられる。また、得られるフィルム自体の灰分が低いことが重要であり、その製膜工程において、汚染(ポリプロピレンの溶融押出時の劣化物もしくは異物の混入、製膜・巻き取り・スリット時の異物の混入、原料回収の際の異汚染物の混入、など)を可能な限り抑制することもまた好ましい。ポリプロピレンの灰分は、より好ましくは40ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下、最も好ましくは20ppm以下である。
次に、本発明のポリプロピレンフィルムは、イオン含有ポリマーを含む。ここで、本発明のフィルムが2層以上の多層構成のフィルムである場合は、そのうち少なくとも一層がポリプロピレンとイオン含有ポリマーとを含むことが必要であり、ポリプロピレンを主成分とし、イオン含有ポリマーを含むことが好ましい。ポリプロピレン中にイオン含有ポリマーを分散させることにより、当該ポリプロピレンフィルムの絶縁破壊強度を高めることができ、すなわち優れた耐電圧特性を付与することができる。これは、当該イオン含有ポリマーを添加することにより、フィルム中の電荷移動に何らかの抑制作用が働くためと推察される。また、例えば、下記のようにフィルムを製造する際の延伸温度よりも低い融点を有するイオン含有ポリマーを選択すれば、二軸延伸時に発生するボイドなどの絶縁欠陥を減少せしめられることから、耐電圧特性をさらに向上できる。この場合、未延伸シート製造時に当該シートが金属ドラムに密着しやすい傾向にあることから、溶融樹脂の冷却速度ひいては未延伸シート中のβ晶分率を容易にコントロールでき、フィルムの両表面に均一かつ緻密な凹凸を形成し、優れた滑り性を付与してハンドリング性を向上できる。また、フィルムが薄くした場合も、絶縁破壊強度を高く、絶縁欠陥を減少せしめられるとともに、製膜時の金属ドラムへの密着を保持し、両表面に均一かつ緻密な凹凸を形成できることから、ボイドなどの絶縁欠陥、表面の凹凸が全厚みに占める割合を小さくでき、優れた耐電圧特性を保持できる。
ここで、イオン含有ポリマーとは、側鎖または主鎖に有するイオン基によりイオン結合性の架橋構造を有するポリマーである。一般に“アイオノマー”と呼ばれる該ポリマーの詳細な定義などは、例えば、矢野伸一編、“アイオノマーの物性と工業的応用”、アイ ピー シー(1989)の第1章、第3章などに示される内容に準ずる。イオン含有ポリマーは、イオン基を導入されるポリマー(上記文献では“ホスト高分子”と称される)へのイオン基の導入形態によって、側鎖型、テレケリック型、アイオネン型に分類され、ホスト高分子、イオン基に用いる対イオンの種類によってさらに分類される。本発明のポリプロピレンフィルムに用いるイオン含有ポリマーとしては、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、ポリプロピレン中での分散性、溶融押出特性などの観点から、側鎖型のイオン含有ポリマーを用いることが好ましく、なかでもエチレン−メタクリル酸系、エチレン−アクリル酸系などのイオン含有ポリマーを用いることが好ましい。
本発明のポリプロピレンフィルムに好ましく用いられるイオン含有ポリマーの具体例としては、例えば、DuPont社製“Surlyn”(タイプ名:9721など)、三井・デュポンポリケミカル(株)社製“ハイミラン”(タイプ名:1706など)、ExxonMobil Chemical社製“Iotek”などが挙げられる。
本発明のポリプロピレンフィルムに含まれるイオン含有ポリマーの添加量は、フィルムに用いる樹脂全量に対して1〜30重量%であることが好ましく、少量添加でも上記した効果がみられるのが特徴である。イオン含有ポリマーの添加量が1重量%未満であると、絶縁破壊強度が低下したり、得られるフィルムの絶縁欠陥が増大したり、表裏緻密な表面粗さが得られず、フィルムのハンドリング特性が低下する場合がある。イオン含有ポリマーの添加量が30重量%を超えると、ポリプロピレン中へのイオン含有ポリマーの分散性が悪化したり、押出時に欠点が発生したり、得られるフィルムの耐熱性、寸法安定性や高温での体積抵抗が必要以上に低下する場合がある。イオン含有ポリマーの添加量は、より好ましくは2〜20重量%、さらに好ましくは3〜15重量%である。
本発明のポリプロピレンフィルムの25℃での絶縁破壊強度(BDV;絶縁破壊電圧ともいう)は、650V/μm以上であることが好ましく、イオン含有ポリマーを含むことにより従来より高いBDVを有することが特徴である。25℃でのBDVが上記範囲未満であると、得られるフィルムをコンデンサー素子とした場合、耐電圧特性が低くて、実用に耐えない場合があり、マイクロメータ法フィルム厚さが薄くなるほどこの傾向が強い。25℃でのBDVは、より好ましくは680V/μm以上、さらに好ましくは720V/μm以上、最も好ましくは750V/μm以上である。当該BDVは、主にポリプロピレンの結晶性、添加するイオン含有ポリマー種やその添加量により制御でき、本発明では、例えば、用いるポリプロピレンのmmmmやIIを上記範囲とすること、上記に例示したイオン含有ポリマーを用いること、その添加量を上記範囲とすることが好ましい。なお、本発明のポリプロピレンフィルムの25℃でのBDVは高いほどコンデンサー素子とした場合に耐電圧特性に優れた信頼性の高いフィルムとできる傾向にあり、25℃でのBDVには特に上限は設けないが、例えば、製膜性、ハンドリング性と耐電圧特性を高いレベルでバランスさせるためには、1,200V/μm以下であることが好ましい。また、例えば、下記実施例で得られたBDVの範囲内であることが上記した特性をさらに高いレベルでバランスできるので、より好ましい。
上記イオン含有ポリマーの融点は、50〜145℃であることが好ましい。なお、ここでいう融点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて下記測定方法に従って測定した値である。イオン含有ポリマーの融点が50℃未満であると、未延伸シートの製造工程において、シートがキャスティングドラムに粘着したり、得られるフィルムの耐熱性、寸法安定性や高温での体積抵抗が悪化する場合がある。イオン含有ポリマーの融点が145℃を超えると、当該ポリマーがフィルムの製造工程中で融解しにくいためか、フィルム中の絶縁欠陥が低減されない場合がある。また、均一かつ緻密な表面凹凸の形成、表裏バランスした表面粗さを付与することが難しく、滑り性が低下し、ハンドリング性に劣る場合がある。当該融点は、イオン含有ポリマーのイオン基の対イオンの選定、ポリマー骨格構造の選定により制御でき、上記範囲とするためには、それぞれ、例えば亜鉛、ナトリウムイオンなどを選定すること、アクリル系ポリマーを選定することが好ましい。イオン含有ポリマーの融点は、より好ましくは60〜140℃、さらに好ましくは、70〜135℃、最も好ましくは80〜120℃である。
本発明のポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレンには、本発明の目的を損なわない範囲で、例えば酸化防止剤、塩素捕捉剤、結晶核剤、熱安定剤、滑剤、ブロッキング防止剤、粘度調整剤、銅害防止剤などの公知の添加剤を混合してもよい。
これらのなかで、酸化防止剤の種類および添加量の選定はフィルムの長期耐熱性にとって重要である。本発明のポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレンに添加される酸化防止剤は、立体障害性を有するフェノール類で、そのうち少なくとも1種は分子量500以上の高分子量型のものが好ましい。酸化防止剤の具体例としては種々の化合物が挙げられるが、例えば2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT;分子量220)とともに1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(例えば、チバガイギー(株)社製“Irganox”1330;分子量775)、もしくはテトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(例えば、チバガイギー(株)社製“Irganox”1010;分子量1,178)などを併用することが好ましい。これら酸化防止剤の添加量は、それぞれポリプロピレン全量に対して、0.03〜1重量%であることが好ましい。酸化防止剤の添加量が0.03重量%未満であると、コンデンサー素子とした場合に長期耐熱性に劣る場合がある。酸化防止剤の添加量が1重量%を超えると、酸化防止剤のブリードアウトが原因で高温下でブロッキングが発生する場合がある。酸化防止剤の添加量は、ポリプロピレン全量に対して、より好ましくは0.05〜0.9重量%であり、さらに好ましくは0.1〜0.8重量%である。
本発明のポリプロピレンフィルムは、マイクロメータ法によるフィルム厚みが5μm以下であることが好ましい。本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、フィルムの厚みが上記した範囲にあり、薄くても優れたハンドリング性、耐電圧特性を有することが特徴である。本発明のポリプロピレンフィルムのマイクロメータ法によるフィルム厚さが5μmを超えると、コンデンサー素子とした場合に体積当たりの静電容量が小さくなるため好ましくない場合がある。当該フィルム厚さは、押出工程における溶融ポリマーの吐出量、縦・横延伸工程における延伸倍率など、製膜条件により制御できる。本発明のポリプロピレンフィルムのマイクロメータ法によるフィルム厚みは薄いほど体積当たりのコンデンサー素子とした場合の単位体積当たりの静電容量を大きくできる傾向にあり、マイクロメータ法によるフィルム厚さには特に下限は設けないが、例えば、安定製膜およびその後の加工性の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、1.5μm以上であることがさらに好ましい。マイクロメータ法によるフィルム厚さは、より好ましくは4μm以下、さらに好ましくは3.7μm以下、さらにより好ましくは3.3μm以下、最も好ましくは3.2μm以下である。
本発明のポリプロピレンフィルムの少なくとも片面の中心線平均表面粗さ(Ra)は、0.03〜0.3μmであることが好ましい。Raが0.03μm未満であると、フィルムの滑り性が低下し、蒸着などのフィルム加工時にシワが発生してハンドリング性に劣る場合がある。Raが0.3μmを超えると、製膜、コンデンサー素子作製などの際のフィルム巻き取り工程でフィルム端面がずれたり、表面凹凸が全厚みに占める割合が高くなり耐電圧特性が低下する場合がある。当該Raは、主に、用いるポリプロピレンの結晶性、イオン含有ポリマーの融点やその添加量、その製造工程においては、キャスト工程における未延伸シートの製造条件、延伸温度などにより制御でき、本発明では、用いるポリプロピレンのmmmmやIIを上記範囲とすること、イオン含有ポリマーの融点やその添加量を上記範囲とすること、キャスト工程において、下記の通りキャストドラムの温度を50〜95℃とする(ドラムが一つの場合)こと、縦・横延伸温度を下記の通り、それぞれ120〜160℃、150〜180℃とすることなどが好ましい。Raは、より好ましくは0.04〜0.2μm、さらに好ましくは0.05〜0.15μmである。さらに、フィルムの両面のRaが上記範囲を満たすことが、ハンドリング性と耐電圧特性の両立の観点から好ましい。
本発明のポリプロピレンフィルムの少なくとも片面の最大表面粗さ(Rmax)は、0.3〜2μmであることが好ましい。Rmaxが0.3μm未満であると、ハンドリング性に劣り、コンデンサー素子作製工程でシワが入りやすく、そのシワが原因で耐電圧特性が低下する場合がある。Rmaxが2μmを超えると、粗大突起の割合が増えるため、コンデンサー素子とした場合にフィルム層間に空気が入り、素子の劣化につながり、またフィルムに金属層を形成したとき金属層にピンホールなどが発生し、高温使用の際に絶縁破壊強度や素子ライフが低下したり、電圧印加時に電荷が集中し絶縁欠陥の原因となる場合がある。当該Raは、主に、用いるポリプロピレンの結晶性、イオン含有ポリマーの融点やその添加量、その製造工程においては、キャスト工程における未延伸シートの製造条件、延伸温度などにより制御でき、本発明では、用いるポリプロピレンのmmmmやIIを上記範囲とすること、イオン含有ポリマーの融点やその添加量を上記範囲とすること、キャスト工程において、下記の通りキャストドラムの温度を50〜95℃とする(ドラムが一つの場合)こと、縦・横延伸温度を下記の通り、それぞれ120〜160℃、150〜180℃とすることなどが好ましい。Rmaxは、より好ましくは0.4〜1.7μm、さらに好ましくは0.5〜1.5μmである。さらに、フィルムの両面のRmaxが上記範囲を満たすことが好ましい。
本発明のポリプロピレンフィルムは、両方の表面について、RmaxとRaの比、Rmax/Raが8〜15であることが好ましい。ここで、Rmax/Raは、平均的な表面の凹凸高さに対する粗大突起の高さの比であることから、当該フィルム表面の凹凸の均一性に関する尺度と考えることができる。Rmax/Raが8未満であると、ハンドリング性に劣り、コンデンサー素子作製時に皺が入りやすく、その皺が原因で絶縁破壊強度が低下する場合がある。Rmax/Raが15を超えると、粗大突起の割合が増えるため、コンデンサー素子作製時に積層したフィルム層間に空気が入りやすく、コンデンサー素子が劣化しやすくなったり、フィルムを金属化する際に金属層に穴アキ等が発生し、得られるコンデンサーの素子ライフが低下する場合がある。当該Rmax/Raは、主に用いるイオン含有ポリマーの融点や添加量により制御することができ、本発明では、例えば、それぞれ上記範囲の通りとすることが好ましい。フィルム両面のRmax/Raは、より好ましくは9〜14、さらに好ましくは9.5〜13.5、最も好ましくは10〜13である。
本発明のポリプロピレンフィルムの120℃での縦方向の熱収縮率は、0.5〜4.5%であることが好ましい。なお、ここでいう120℃での縦方向の熱収縮率とは、3gfの荷重下で120℃、15分間加熱処理した際のフィルムの縦方向の収縮率である。120℃での縦方向の熱収縮率が上記範囲未満であると、コンデンサー素子作製時に巻き締まりが不十分となって形態保持性や容量変化率に悪影響を及ぼしたり、素子層間に空隙が形成され、コンデンサー素子の劣化が進行する場合がある。また、120℃での縦方向の熱収縮率が上記範囲を超えると、コンデンサー素子作製時に巻き締まりが大きすぎて、素子が変形し、内部ストレス増大に伴うコンデンサー容量の低下、さらには素子の破壊を生じる場合がある。当該熱収縮率は、主に、用いるポリプロピレンの結晶性、イオン含有ポリマーの添加量、横延伸後の熱固定条件(温度、弛緩率)などにより制御でき、本発明では、用いるポリプロピレンのmmmmとIIを上記範囲とし、イオン含有ポリマーの添加量を上記範囲とし、横方向の熱固定温度と弛緩率を下記の通り150〜180℃、1%以上とすることが好ましい。120℃での縦方向の熱収縮率は、より好ましくは1〜3.8%、さらに好ましくは1.2〜3.5%以下、最も好ましくは1.4〜3.2%である。
本発明のポリプロピレンフィルムの25℃での縦方向のF2値は、35MPa以上であることが好ましい。ここで、縦方向のF2値とは、縦方向:15cm、横方向:1cmのサイズで切り出した試料を、原長50mm、引張り速度300mm/分で伸張した際の伸度2%の時に試料にかかる応力である。25℃での縦方向のF2値が35MPa未満であると、フィルムの抗張力性が不足し、特にフィルムを薄くした際に加工張力により伸びてしまう場合がある。当該F2値は、主に、用いるポリプロピレンの結晶性、イオン含有ポリマーの添加量、縦方向の延伸条件(温度、倍率)などにより制御でき、本発明では、用いるポリプロピレンのmmmmとIIを上記範囲とし、イオン含有ポリマーの添加量を上記範囲とし、縦方向の延伸温度と延伸倍率を下記の通り120〜160℃、4.2〜6倍とすることが好ましい。25℃での縦方向のF2値は、より好ましくは37MPa以上、さらに好ましくは40MPa以上である。また、本発明の金属化ポリプロピレンフィルムについても上記範囲を満たすことが好ましい。
本発明のポリプロピレンフィルムは、二軸配向している。二軸配向せしめることにより、得られるフィルムの耐熱性、耐電圧特性、ハンドリング性をさらに高めることができ、さらには、より薄いフィルム、すなわち単位体積当たりの静電容量がより大きいコンデンサーとできる。なお、二軸配向の手法としては、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法いずれを用いても構わないが、装置の拡張性の観点から逐次二軸延伸法が好ましい。
ここで、フィルムの配向状態(無配向、一軸配向、二軸配向の別)は、例えば、松本喜代一ら、“繊維学会誌”、第26巻、第12号、1970年、p.537−549;松本喜代一著、“フィルムをつくる”、共立出版(1993)、p.67−86;岡村誠三ら著、“高分子化学序論(第2版)”、化学同人(1981)、p.92−93などで解説されているように、フィルムに対して3方向からX線を入射した(一般に、Through入射(フィルムの縦方向(長手方向、MD)・横方向(幅方向、TD)で形成される面に垂直に入射)、End入射(フィルムの横方向・厚み方向で形成される面に垂直に入射)、Edge入射(フィルムの縦方向・厚み方向で形成される面に垂直に入射)と称される)X線回折写真から判別する。すなわち、無配向のシートでは、いずれの方向のX線回折写真においても実質的にほぼ均等強度を有するデバイ・シェラー環が得られ、縦一軸配向のフィルムではEnd入射のX線回折写真においてほぼ均等強度を有するデバイ・シェラー環が得られ、二軸配向のフィルムではいずれの方向のX線回折写真においてもその配向を反映した、回折強度が均等ではない回折像が得られる。本判別手法は、装置や手法の進化に伴い修正などは加えられるものの、当該業者には公知の手法として行われる。
本発明のポリプロピレンフィルムをコンデンサー素子に用いる際の電極は、金属箔であっても両面を金属化した紙やプラスチックフィルムであっても、本発明のフィルムの少なくとも片面を金属化して設置された金属層であっても構わず、特に限定されないが、例えば、軽薄短小化、小型大容量化の観点から、金属化により設置された金属層であることが好ましい。この際、用いる金属としては、亜鉛、錫、銀、クロム、アルミニウム、銅、ニッケルなどから選ばれる少なくとも1種の金属が挙げられるが、特に限定されない。
本発明のポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属層を設置する(金属化する)場合には、該フィルム面にコロナ放電処理を施し、金属層との接着性をより高めることは好ましい。コロナ放電処理時の雰囲気ガスとしては、空気、酸素、窒素、炭酸ガス、あるいは窒素/炭酸ガスの混合系などが好ましく、経済性の観点からは空気中でコロナ放電処理することが特に好ましい。また、火炎(フレーム)処理、プラズマ処理なども金属層との接着性向上の観点から好ましい。
また、フィルムを金属化する方法としては、真空蒸着法やスパッタリング法、イオンビーム法などが挙げられ、特に限定されないが、例えば、生産性や経済性などの観点から真空蒸着法がより好ましい。
一般に真空蒸着法としては、るつぼ方式やワイヤー方式などが挙げられ、特に限定されないが、例えば、金属層への欠陥発生率が小さいEBガン方式がより好ましい。
本発明において、金属化されたフィルムの膜抵抗値は1〜40Ω/□であることが好ましい。膜抵抗値が1Ω/□未満であると、金属層が厚いため、蒸着時に所謂熱負けが生じ、フィルムに白化、穴あきなどの欠点が発生する場合がある。膜抵抗値が40Ω/□を超えると、コンデンサー素子とした際に容量変化が大きくなる場合がある。当該膜抵抗値は、金属層の組成や金属層の厚みにより制御できる。膜抵抗値は、より好ましくは1.2〜30Ω/□である。
本発明において、金属化されたフィルムに形成されるマージン(電気絶縁目的などにより金属層を形成する面に設けられる金属層のない部分)の仕様は、通常タイプ以外にヒューズ機構を設けた種々のものなどを目的に応じて採用できる。また、それらマージンの形成方法も特に限定されず、例えば、テープ方式でもオイル方式でも構わない。
また、本発明のポリプロピレンフィルムを誘電体として用いたコンデンサーの構造や形態は、特に限定されるものではなく、例えば、乾式でも絶縁油による含浸式でも、あるいは丸型でも扁平プレス型でも差し支えないが、シワが入り易い扁平化プレス工程を経る扁平型コンデンサー用途には優れたハンドリング性、加工性を示すため、特に好ましい場合がある。
本発明のポリプロピレンフィルムを油含浸型コンデンサーに用いる場合、絶縁油としては、電気絶縁性のあるものであれば任意のものを使用することができ、例えば、多塩化ビフェニール類、パラフィン類、ナフテン類、あるいは芳香族系炭化水素よりなる鉱油類、ポリブテン、菜種油、あるいはシリコーン油などが挙げられ、単独もしくは混合して使用することができ、さらにはこれらの油の中に各種の添加剤を添加せしめることもできる。好ましい絶縁油としては、粘性が小さく、ガス吸収性に優れた、フェニルキシリルエタン、モノイソプロピルビフェニールなどが挙げられる。
次に、本発明のポリプロピレンフィルムを二軸延伸して製造する場合の一例、および得られるフィルムを用いてなる金属化フィルムおよびコンデンサーの製造方法の一例を以下に説明するが、必ずしも本発明がこれらに限定されるわけではない。
ポリプロピレンにイオン含有ポリマーを混合した樹脂を準備する。この際、これら樹脂の混合方法は、溶融押出時に混入する異物を最小限に留めるために各原料単体のチップをそのまま特定組成で混合するドライブレンド法でも構わないし、ポリプロピレン中のイオン含有ポリマーの分散性の観点から、予め特定の濃度で両者を押出機中で加熱・溶融混練せしめ、ガット状に押し出してチップカッターに通し、得られるチップを用いるマスターバッチ法を用いても構わない。また、この際上記した酸化防止剤などの添加剤を目的に応じて添加しても構わない。また、イオン含有ポリマーは溶融押出ポリマーの安定吐出や押出時の欠点防止の観点から、十分に乾燥を行うことが好ましい。
上記の手法により、ポリプロピレン、イオン含有ポリマーを添加混合せしめ、一軸押出機に供給して200〜260℃の温度で溶融させ、濾過フィルターを経た後、スリット状口金から押出し、冷却用の金属ドラムに巻き付けてシート状に冷却固化せしめ、未延伸シートを得る。押出温度は、ろ圧や未延伸シートの厚みなど、特にその他に支障が無い限りは、上記の温度範囲内でも低い方が、押出時の欠点防止の観点から好ましい。
上記金属ドラムに巻き付けて溶融ポリマーを冷却固化する工程において、二軸延伸後の表面粗さ制御の観点から、金属ドラムの温度を調整して溶融ポリマーの冷却速度を遅くすることが重要である。この際、冷却用金属ドラムは一つであっても構わないし、2つ以上を連続して設置し、これらを通過させて冷却速度を制御しても構わない。例えば、冷却用金属ドラムが一つの場合のキャストドラム温度は50〜95℃であることが好ましい。ドラム温度が50℃未満であると、未延伸シートに生成するβ晶が少ないため、得られる二軸配向フィルムの表面が平滑化し、所望の滑り性が得られず、ハンドリング性に劣る場合がある。ドラム温度が95℃を超えると、二軸延伸性が悪化し、製膜が不安定になったり、耐電圧特性が悪化する場合がある。ドラム温度は、好ましくは60〜90℃である。また、上記ドラム温度の条件はあくまで一例であり、金属ドラム径、ドラムの個数、ドラムの温度、ドラムの周速などにより溶融ポリマーの冷却速度が変化し、好ましい耐電圧特性、表面粗さが得られるようにこれらを設計することは、当該業者にとって公知である。
また、本発明のポリプロピレンフィルムは、上記冷却固化工程において溶融ポリマーの金属ドラムへの密着性が良好であり、フィルムを薄くしても密着ムラが発生し難いことが特徴であるが、さらに金属ドラムへの密着性を高めるために静電印加法、水の表面張力を利用した密着方法、エアーナイフ法、プレスロール法、水中キャスト法などの公知の手法が好ましく用いられる。いずれを用いてもよいが、平面性が良好であり、吹き出しエアーの温度により表面粗さの制御が可能であることから、エアーナイフ法を用いることが好ましい。
次に、得られた未延伸シートを二軸延伸して二軸配向せしめる。二軸延伸法としては、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法が挙げられ、いずれを用いてもよいが、以下に逐次二軸延伸法を用いた場合について説明する。まず、未延伸シートを120〜160℃の温度に保たれたロールに通して予熱し、引き続き該シートを120〜160℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、縦方向に実効倍率4.2〜6倍に延伸して直ちに室温に冷却する。この際、縦延伸を少なくとも2段階に分けて行うことは、縦方向の剛性向上、表面欠点抑制などの観点から好ましい場合がある。また、縦延伸後の冷却過程において、フィルムの厚みムラが悪化しない程度に縦方向に弛緩を与えることは、長手方向の寸法安定性の観点から好ましい。
引き続き、この縦延伸フィルムをテンター式延伸機に導いて、150〜180℃の温度で予熱し、150〜180℃の温度で横方向に実効倍率7〜12倍に延伸する。さらに、寸法安定性向上の観点から横方向に1%以上の弛緩を与えつつ150〜180℃で熱固定し、冷却する。
必要に応じ、フィルムの金属化する面に、金属との密着性向上の観点から、空気、窒素、炭酸ガスあるいはこれらの混合雰囲気中でコロナ放電処理を行い、ワインダーを用いて巻き取る。
次いで、得られたフィルムを内部を減圧度10−4Torr以下の高減圧状態に保持した真空蒸着装置に装填し、フィルムを走行させ、上記に例示した目的に応じた金属を加熱溶融して蒸発させ、フィルムのコロナ放電処理面に凝集堆積させて1〜40Ω/□の膜抵抗値となるように金属層を形成する。この際、目的に応じた絶縁溝部を形成するためグラビアコーターなどを用いてフィルムの金属化面にオイルを塗布し、オイルが塗布された部分は蒸着されないようにして、所謂マージンを適宜形成しても構わない。また、必要以上に金属層の膜抵抗値を高くしてコンデンサー素子とした際の容量変化を大きくさせず、かつ必要以上に膜抵抗値を低くしてコンデンサー素子とした際の端部メタリコンとの接触抵抗が高くなりコンデンサーの耐電流特性を悪化させないように、コンデンサー作製時のメタリコン接触部のみの膜抵抗値を低くして残りを高くするように、金属層の膜抵抗値に傾斜をつけて金属化する、所謂ヘビーエッジ法なども好ましく採用される。
得られた金属化フィルムを40〜60℃の温度でエージングすることは、フィルムの構造(好ましくは結晶性)が安定化し、金属層−フィルム間の密着力が向上する傾向にあるので好ましい。この際、エージングの時間は金属層の密着力向上の観点から12時間以上であることが好ましく、24時間以上であることがより好ましい。
得られた金属化フィルムを目的の寸法にスリットし、コンデンサー素子を作るための2リール1対の蒸着リールとする。この後、素子状に巻回し、熱プレスして例えば扁平状に成形し、端部を金属溶射(メタリコン工程)し、リード端子を取り出し、必要に応じて上記に例示したような絶縁油を含浸し、外装を経てコンデンサーとする。
ここで、メタリコン工程で用いる溶射金属には、アルミニウム、銅、亜鉛、錫、はんだなどから選ばれる少なくとも一種の金属(もしくは合金)を用いてもよいが、特に溶融温度が100〜200℃の金属(もしくは合金)を用いることが、溶射ムラが低減され、得られるコンデンサーの耐電流特性を向上させられる傾向にあるため、好ましい。また、該工程を1層目にフィルム表面の金属層と電気的に接着性が良好な金属を溶射し、その上にリード線を接着しやすい金属を順次溶射する、所謂2層吹きと称される方式も好ましく採用される。
[特性値の測定法]
本発明で用いられている用語および測定法を以下にまとめて説明する。
(ア)X線回折写真による配向の判別
フィルムの配向状態を、フィルムに対して以下に示す3方向からX線を入射したX線回折写真から判別する。
Through入射:フィルムの縦方向(長手方向、MD)・横方向(幅方向、TD)で形成される面に垂直に入射
End入射:フィルムの横方向・厚み方向で形成される面に垂直に入射
Edge入射:フィルムの縦方向・厚み方向で形成される面に垂直に入射
なお、サンプルは方向を揃えて重ね合わせ、厚さ1mm程度に調整した後、幅1mm程度に切り出し、測定に供した。また、フィルムの縦・横方向の判別が難しい場合は、簡便にフィルム面内の一方向を縦方向と仮定し、縦方向に直行する方向をフィルムの横方向として測定すればよい。
X線回折写真は以下の条件でイメージングプレート法により測定した。
X線発生装置:理学電気(株)社製 4036A2型
X線源:CuKα線(Niフィルター使用)
出力:40Kv、20mA
スリット系:1mmφピンホールコリメータ
イメージングプレート :FUJIFILM BAS−SR
撮影条件:カメラ半径40mm、露出時間5分。
ここで、フィルムの無配向、一軸配向、二軸配向の別は、例えば、松本喜代一ら、“繊維学会誌”、第26巻、第12号、1970年、p.537−549;松本喜代一著、“フィルムをつくる”、共立出版(1993)、p.67−86;岡村誠三ら著、“高分子化学序論(第2版)”、化学同人(1981)、p.92−93などで解説されているように、以下の基準で判別できる。
無配向:いずれの方向のX線回折写真においても実質的にほぼ均等強度を有するデバイ・シェラー環が得られる
縦一軸配向:End入射のX線回折写真においてほぼ均等強度を有するデバイ・シェラー環が得られる
二軸配向:いずれの方向のX線回折写真においてもその配向を反映した、回折強度が均等ではない回折像が得られる。
(イ)絶縁破壊強度(BDV)
JIS C 2110(1994)に基づいて測定した。下部電極に厚み100μm、10cm角のアルミ箔電極、上部電極に真鍮製8mmφの電極を用い、この間にフィルムをはさみ、春日電気(株)社製直流高圧安定化電源を用いて、100V/秒の速度で昇圧しながら電圧を印加し、電流が10mA以上流れた場合を絶縁破壊したものとした。その際の電圧を測定点近傍のフィルム厚み(安立電気(株)社製電気マイクロメータ、デジタル表示形K351C、プランジャ式検出器K−402B、JIS B 7536(1982))で割った値を絶縁破壊強度(V/μm)とし、30点測定した平均値で示した。
(ウ)マイクロメータ法フィルム厚さ(MMV)
JIS C 2330(2001)の7.4.1.1に従ってマイクロメータ法フィルム厚さ(MMV、単位:μm)を測定した。
(エ)中心線平均表面粗さ(Ra)、最大表面粗さ(Rmax)
JIS B 0601(2001)に基づいて、触針式表面粗さ計を用いて測定した。なお、小坂研究所(株)製、高精度薄膜段差測定器(型式:ET−30HK)および三次元粗さ分析装置(形式:SPA−11)を使用し、以下の条件より求めた。
・触針走査方向:フィルムの横方向
・測定モード:触針式(STYLUS)
・処理モード:8(ROUGHNESS)
・測定長さ:1mm
・触針径:円錐型0.5μmR
・荷重:16mg
・カットオフ:250μm
・測定ライン数:30本
・走査速度:100μm/秒
・ピッチ:X方向4μm、Y方向10μm
・SLOPE COMP:ON
・GAIN:×1
・測定面積:0.2988mm
・標準面積:0.1mm
測定に当たって、適宜レコーダーを用いて粗さ曲線を記録した。その際の条件は以下の通りである。
・X・Y軸方向記録倍率:100倍
・Z軸方向倍率:10,000倍(レコーダー上で粗さ曲線の倍率が大きすぎて場合は適宜5,000倍としてもよい)
・レコーダー速度:40μm/秒
・Y記録ピッチ:2mm
この際、中心線平均表面粗さ(Ra)は、粗さ曲線から測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸、縦方向をY軸とし、粗さ曲線をy=f(x)で表した時、次の式によって求められる値である(単位:μm)。
Figure 2008127460
また、最大表面粗さ(Rmax)は、粗さ曲線から測定長さLの部分を抜き取り、最大値、最小値を平均線に平行な2直線で挟んだ際にこの2直線の間隔の値を求めたものである(単位:μm)。
同じ測定を各サンプル毎に測定箇所を変えて5回行い、得られた値の平均値を算出し、当該ポリプロピレンフィルムのRa(μm)、Rmax(μm)とした。
(オ)120℃での縦方向の熱収縮率
測定方向を縦方向として、フィルムから試長260mm、幅10mmにサンプリングし、原寸(L0)として200mmの位置にマークを入れる。このサンプルの下端に3gの荷重をかけ、120℃の熱風循環オーブン中で15分間熱処理した後、室温中に取り出し、サンプルにマークした長さ(L1)を測定する。この際、120℃での縦方向の熱収縮率は次式により求められる(単位:%)。同じ測定を各サンプル毎に5回行い、得られた値の平均値を算出し、当該サンプルの120℃での縦方向の熱収縮率とした。
120℃での縦方向の熱収縮率(%)=100×(L0−L1)/L0
(カ)メルトインデックス(MI)
JIS Z 7210(1999)に準じて条件M(230℃、2.16kgf)で測定した。
(キ)メソペンタッド分率(mmmm)
ポリプロピレンを60℃以下の温度のn−ヘプタンで2時間抽出し、ポリプロピレン中の不純物・添加物を除去した後、130℃で2時間以上減圧乾燥したものをサンプルとする。該サンプルを溶媒に溶解し、13C−NMRを用いて、以下の条件にてメソペンタッド分率(mmmm)を求めた(単位:%)。
測定条件
・装置:Bruker製DRX−500
・測定核:13C核(共鳴周波数:125.8MHz)
・測定濃度:10重量%
・溶媒:ベンゼン:重オルトジクロロベンゼン=1:3混合溶液(体積比)
・測定温度:130℃
・スピン回転数:12Hz
・NMR試料管:5mm管
・パルス幅:45°(4.5μs)
・パルス繰り返し時間:10秒
・データポイント:64K
・換算回数:10,000回
・測定モード:complete decoupling
解析条件
LB(ラインブロードニングファクター)を1としてフーリエ変換を行い、mmmmピークを21.86ppmとした。WINFITソフト(Bruker製)を用いて、ピーク分割を行う。その際に、高磁場側のピークから以下のようにピーク分割を行い、更にソフトの自動フィッテイングを行い、ピーク分割の最適化を行った上で、mmmmとss(mmmmのスピニングサイドバンドピーク)のピーク分率の合計をメソペンタッド分率(mmmm)とする。
(1)mrrm
(2)(3)rrrm(2つのピークとして分割)
(4)rrrr
(5)mrmm+rmrr
(6)mmrr
(7)mmmr
(8)ss(mmmmのスピニングサイドバンドピーク)
(9)mmmm
(10)rmmr。
同じサンプルについて同様の測定を5回行い、得られたmmmmの平均値を当該サンプルのmmmmとした。
(キ)アイソタクチックインデックス(II)
ポリプロピレンを60℃以下の温度のn−ヘプタンで2時間抽出し、ポリプロピレン中の不純物・添加物を除去する。その後130℃で2時間減圧乾燥する。これから重量W(mg)の試料を取り、ソックスレー抽出器に入れ沸騰n−ヘプタンで12時間抽出する。次に、この試料を取り出し、アセトンで十分洗浄した後、130℃で6時間減圧乾燥し、その後常温まで冷却し、重量W’(mg)を測定し、次式で求めた。
II(%) = (W’/W)×100(%)
同じサンプルについて同様の測定を5回行い、得られたIIの平均値を当該サンプルのIIとした。
(ク)灰分
JIS C 2330(1995)の6.3.5に準じて測定した。初期重量Wo(g)のサンプルを、白金坩堝に入れ、まずガスバーナーで十分に燃焼させた後、800℃の電気炉で1時間処理して完全灰化し、得られた灰の重量W1(g)を測定して、次式より求めた。
灰分(ppm)=1,000,000×(W1/Wo)/Wo
(ケ)融点
Seiko Instruments社製熱分析装置RDC220型に、樹脂サンプルを重量5mgとしてアルミニウムパンに封入して装填し、20℃/分の速度で30℃から280℃まで昇温し、5分間保持する。次いで、20℃/分で280℃から30℃まで降温し、5分間保持後、20℃/分で30℃から280℃まで昇温する。2度目の昇温過程で得られた熱量曲線から、同社製熱分析システムSSC5200の内蔵プログラムを用い、結晶の融解に伴う吸熱ピークの頂点を融点(Tm)とした(単位:℃)。
(コ)25℃での縦方向のF2値
25℃での縦方向のF2値は、(株)オリエンテック社製フィルム強伸度測定装置(AMF/RTA−100)を用いて、65%RHにて測定した。サンプルを縦方向:15cm、横方向:1cmのサイズに切り出し、原長50mm、引張り速度300mm/分で伸張して、伸度2%に対する試料にかかる応力をF2値として測定した(単位:MPa)。同じ測定を各サンプル毎に5回行い、得られた値の平均値を算出し、当該サンプルの25℃での縦方向のF2値とした。
(サ)膜抵抗
JIS K 7194(1994)に示される四探針法に基づき、低抵抗率計(三菱化学(株)製ロレスタ−GP、MCP−T600)および四探針プローブ(ASPプローブ)を用いて、金属層側の面について表面抵抗率(単位:Ω/□)を測定した。なお、ここでいう表面抵抗率とは、JIS K 6911(1995)の5.13の定義に基づき、下記式で表される。
表面抵抗率(Ω/□)=R×RCF。
ここで、Rは抵抗(単位:Ω)であり、RCFはサンプルの形状、寸法、測定位置に対する抵抗率補正係数である。表面抵抗率は、金属層の厚みを反映して変化するため、本発明ではフィルム表面に設置した金属層の厚みの指標値として用いる。測定位置を変えて各サンプル毎に5回同じ測定を行い、得られた表面抵抗率の平均値を算出し、当該サンプルの膜抵抗値とした。
(シ)表面濡れ張力(mN/m)
JIS C 2330(2001)の7.4.13に従って測定した。
(ス)実効延伸倍率
スリット状口金から押し出し、金属ドラム(キャストドラム)に巻き付けてシート状に冷却固化せしめた未延伸フィルムに、長さ1cm四方の升目をそれぞれの辺がフィルムの長手方向、幅方向に平行になるように刻印した後、延伸・巻き取りを行い、得られたフィルムの升目の長さ(cm)を測定し、これを縦方向・横方向の実効延伸倍率とした。
(セ)絶縁欠陥試験
JIS C 2330(1995)の6.3.10に基づき、100個の試験片を作製し、春日電気(株)社製直流高圧安定化電源を用いて100V/秒の速度で昇圧しながら電圧を印加し、基準電圧が記載されていない厚さ6μm以下のフィルムについては電圧150V以下で破壊した試験片の数を絶縁欠陥数(個)とし、下記基準にて判定した。なお、コンデンサー用ポリプロピレンフィルムとして実用に供することができるのは、○、△のものである。
○:絶縁欠陥数が2個以下
△:絶縁欠陥数が3〜5個以下
×:絶縁欠陥数が6個以上
(ソ)ハンドリング性、加工性
フィルムをULVAC社製真空蒸着機に装填し、コロナ処理面にアルミニウムを膜抵抗15Ω/□となるように金属蒸着する際、T型マージンを形成させたものと通常マージンを形成したものを作製した。次に、これらT型マージン品と通常マージン品1対2リールを素子巻きし、容量100μFのコンデンサー素子を100個作製した。素子巻きの際の巻き取り条件は以下の通りである。
・巻き取り機:皆藤製作所製 KAW−4L
・巻き取り速度:2,000rpm
・張力:600gf
得られたコンデンサー素子にシワやずれが発生しているものを計測し、素子100個に対する割合からシワ発生率(%)、ずれ発生率(%)を測定した。コンデンサー素子として実用に供することができるのはシワ発生率、ずれ発生率がいずれも5%以下のものである。なお、ここでは巻き取った素子の外観を目視で観察し、長さ10mm以上のシワが2カ所以上確認された素子をシワが発生したものとし、2mm以上の端面ずれが確認された素子をずれが発生したものとして計測する。また、上記基準でシワとずれが同時に確認された素子は両方に計測する。
(タ)素子絶縁破壊強度
上記(ソ)で作製したコンデンサー素子のうちシワもずれも無いものを10個選定し、温度110℃、圧力0.4MPaの条件下、扁平化した状態で6時間加熱処理した後、メタリコンおよびリード端子付けを行った。該素子をエポキシ樹脂で外装し、容量100μFのコンデンサーを作製した。熱風循環オーブン中で105℃に保持した該コンデンサー素子に、春日電気(株)社製直流高圧安定化電源を用いて、100V/秒の速度で昇圧しながら電圧を印加し、電流が10mA以上流れた場合を素子が絶縁破壊したものとした。この際の電圧を求め、10個の素子について測定した電圧の平均値をマイクロメータ法フィルム厚さ当たりに換算して素子絶縁破壊強度(V/μm)とした。
本発明を実施例に基づいて説明する。なお、所望の厚みのフィルムを得るためには、特に断りのない限り、押出機の回転数と冷却ドラムの周速を所定の値に調節した。また、特に断りのない限り、上記測定法(ア)の方法により、得られたフィルムは二軸配向していることを確認した。さらに、特に断りのない限り、金属蒸着は、該フィルムを製造する工程において、樹脂を溶融押出し、金属ドラムに巻き付けて未延伸シートを作製する際にドラムに接した面に対して行った。
(実施例1)
メルトインデックス(MI)が4g/10分、メソペンタッド分率(mmmm)が96.8%、アイソタクチックインデックス(II)が98.5%、灰分が14ppmである公知のホモポリプロピレン(上記したBHT、“Irganox”1010をそれぞれ3,000ppm、ステアリン酸カルシウムを50ppm含有)90重量%に、イオン含有ポリマーとして三井・デュポンポリケミカル(株)社製“ハイミラン”1706(乾燥済み)を10重量%の比率で添加混合し、一軸押出機に供給して240℃で溶融させ、35μmカットの濾過フィルターを経た後にスリット状口金から押出し、表面温度80℃の金属ドラムにエアーナイフを用いてエアー温度30℃で巻き付けてシート状に成形した。
この未延伸シートを135℃に保たれたロール群に通して予熱し、140℃に保ち周速差を設けたロール間に通し、縦方向に5倍延伸して直ちに室温に冷却する。引き続きこの縦延伸フィルムをテンターに導入して165℃で予熱し、160℃で横方向に10倍に延伸し、次いで幅方向に8%の弛緩を与えつつ160℃で熱固定した後、フィルムの片面(未延伸シートを作製する際に冷却ドラムに接した面)に濡れ張力が40mN/mとなるように空気中でコロナ放電処理し、冷却後ワインダーで巻き取り、マイクロメータ法フィルム厚み(MMV)が3.0μmである二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。
得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムを真空蒸着機に装填し、コロナ処理面にアルミニウムを膜抵抗15Ω/□となるように蒸着した。この際、オイルマージン法により、スリット後のフィルムに縦方向0.7mm幅、横方向0.4mm幅、16mm間隔のT型マージンが形成されるように蒸着した。また、同様にして通常マージン品を作製した。得られたT型マージン品、通常マージン品をそれぞれ100mm幅にスリットし、これらを一対として素子巻きし、コンデンサー素子を作製した。
得られた二軸配向フィルムの原料組成、特性値、および金属化フィルム、コンデンサー素子の評価結果を表1、表2にまとめて示す。得られたフィルムは、絶縁破壊強度が極めて高く、耐電圧特性に優れていた。また、表面の粗大突起が少なく、均一な凹凸をフィルム表裏にバランスして形成していることから、蒸着加工時のハンドリング性に優れていた。さらに、コンデンサー素子作製後もその優れた耐電圧特性を保持していた。
(実施例2)
実施例1において、金属ドラムの表面温度を90℃に上げた以外は同様の条件で作製した、MMVが3.0μmである二軸配向ポリプロピレンフィルム、および該フィルムから作製した金属化フィルム、コンデンサー素子を実施例2とした。
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、絶縁破壊強度が極めて高く、耐電圧特性に優れていた。また、表面の粗大突起が少なく、均一な凹凸をフィルム表裏にバランスして形成していることから、蒸着加工時のハンドリング性に優れていた。さらに、コンデンサー素子作製後もその優れた耐電圧特性を保持していた。
(実施例3)
実施例1において、ポリプロピレンとして、MIが4.8g/10分、mmmmが98.2%、IIが99.0%、灰分が17ppmである公知のホモポリプロピレン(上記したBHTを2,500ppm、“Irganox”1330を2,000ppm、ステアリン酸カルシウムを50ppm含有)を用いた以外は同様の条件で作製した、MMVが3.2μmである二軸配向ポリプロピレンフィルム、および該フィルムから作製した金属化フィルム、コンデンサー素子を実施例3とした。
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、絶縁破壊強度が極めて高く、耐電圧特性に優れていた。また、表面の粗大突起が少なく、均一な凹凸をフィルム表裏にバランスして形成していることから、蒸着加工時のハンドリング性に優れていた。さらに、コンデンサー素子作製後もその優れた耐電圧特性を保持していた。
(実施例4)
メルトインデックス(MI)が3.5g/10分、mmmmが96.0%、IIが97.0%、灰分が12ppmである公知のホモポリプロピレン(上記した“Irganox”1010を4,500ppm、ステアリン酸カルシウムを75ppm含有)に、イオン含有ポリマーとして三井・デュポンポリケミカル(株)社製“ハイミラン”1650(乾燥済み)を40重量%の比率で添加混合し、二軸押出機に供給して220℃でガット状に溶融押出し、20℃の水槽に通して冷却してチップカッターで3mm長にカットした後、50℃で8時間減圧乾燥した。得られたチップ25重量%と上記ホモポリプロピレンを75重量%を混合し、一軸押出機に供給して240℃で溶融させ、35μmカットの濾過フィルターを経た後にスリット状口金から押出し、表面温度80℃の金属ドラムにエアーナイフを用いてエアー温度40℃で巻き付けてシート状に成形した。
この未延伸シートを132℃に保たれたロール群に通して予熱し、138℃に保ち周速差を設けたロール間に通し、縦方向に5倍延伸して直ちに室温に冷却した。引き続きこの縦延伸フィルムをテンターに導入して165℃で予熱し、160℃で横方向に10倍に延伸し、次いで幅方向に9%の弛緩を与えつつ160℃で熱固定した後、フィルムの片面(未延伸シートを作製する際に冷却ドラムに接した面)に濡れ張力が40mN/mとなるように空気中でコロナ放電処理し、冷却後ワインダーで巻き取り、MMVが3.3μmである二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。
得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムを実施例1と同様にしてアルミニウム蒸着、素子巻きし、金属化フィルムおよびコンデンサー素子を作製した。
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、絶縁破壊強度が極めて高く、耐電圧特性に優れていた。また、表面の粗大突起が少なく、均一な凹凸をフィルム表裏にバランスして形成していることから、蒸着加工時のハンドリング性に優れていた。さらに、コンデンサー素子作製後もその優れた耐電圧特性を保持していた。
(実施例5)
実施例4において、一軸押出機に供給する際のイオン含有ポリマーを含むチップの添加量を37.5重量%とした以外は同様の条件で作製した、MMVが3.3μmである二軸配向ポリプロピレンフィルム、および該フィルムから作製した金属化フィルム、コンデンサー素子を実施例5とした。
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、絶縁破壊強度が極めて高く、耐電圧特性に優れていた。また、表面の粗大突起が少なく、均一な凹凸をフィルム表裏にバランスして形成していることから、蒸着加工時のハンドリング性に優れていた。さらに、コンデンサー素子作製後もその優れた耐電圧特性を保持していた。
(実施例6)
実施例4において、一軸押出機に供給する際のイオン含有ポリマーを含むチップの添加量を12.5重量%とした以外は同様の条件で作製した、MMVが3.3μmである二軸配向ポリプロピレンフィルム、および該フィルムから作製した金属化フィルム、コンデンサー素子を実施例6とした。
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、絶縁破壊強度が極めて高く、耐電圧特性に優れていた。また、表面の粗大突起が少なく、均一な凹凸をフィルム表裏にバランスして形成していることから、蒸着加工時のハンドリング性に優れていた。さらに、コンデンサー素子作製後もその優れた耐電圧特性を保持していた。
(実施例7)
実施例1と同じ組成の原料を一軸押出機に供給して240℃で溶融させ、35μmカットの濾過フィルターを経た後にスリット状口金から押出し、表面温度80℃の金属ドラムにエアーナイフを用いてエアー温度25℃で巻き付けてシート状に成形した。
得られた未延伸シートをパンタグラフ式同時二軸延伸機に導入して170℃で予熱し、165℃で縦方向に8倍、横方向に7倍同時延伸し、次いで縦方向に5%、横方向に8%の弛緩を与えつつ160℃で熱固定した後、フィルムの片面に濡れ張力が40mN/mとなるように空気中でコロナ放電処理し、冷却後ワインダーで巻き取り、MMVが3.4μmである二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。
得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムを実施例1と同様にしてアルミニウム蒸着、素子巻きし、金属化フィルムおよびコンデンサー素子を作製した。
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、絶縁破壊強度が極めて高く、耐電圧特性に優れていた。また、表面の粗大突起が少なく、均一な凹凸をフィルム表裏にバランスして形成していることから、蒸着加工時のハンドリング性に優れていた。さらに、コンデンサー素子作製後もその優れた耐電圧特性を保持していた。
(実施例8)
実施例1において、未延伸シートの厚みを変えた以外は同様の条件で作製したMMVが7.5μmである二軸配向ポリプロピレンフィルム、および該フィルムから作製した金属化フィルム、コンデンサー素子を実施例8とした。
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、絶縁破壊強度が極めて高く、耐電圧特性に優れていた。また、表面の粗大突起が少なく、均一な凹凸をフィルム表裏にバランスして形成していることから、蒸着加工時のハンドリング性に優れていた。さらに、コンデンサー素子作製後もその優れた耐電圧特性を保持していた。
(実施例9)
実施例1において、未延伸シートの厚みを変えた以外は同様の条件で作製したMMVが2.5μmである二軸配向ポリプロピレンフィルム、および該フィルムから作製した金属化フィルム、コンデンサー素子を実施例9とした。
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、絶縁破壊強度が極めて高く、耐電圧特性に優れていた。また、表面の粗大突起が少なく、均一な凹凸をフィルム表裏にバランスして形成していることから、蒸着加工時のハンドリング性に優れていた。さらに、コンデンサー素子作製後もその優れた耐電圧特性を保持していた。
(実施例10)
実施例4において、ポリプロピレンとして、MIが3g/10分、mmmmが94.5%、IIが96%、灰分が15ppmである公知のホモポリプロピレン(上記したBHTを3,000ppm、“Irganox”1010を5,000ppm、ステアリン酸カルシウムを50ppm含有)を用いた以外は同様の条件で作製した、MMVが4.5μmである二軸配向ポリプロピレンフィルム、および該フィルムから作製した金属化フィルム、コンデンサー素子を実施例10とした。
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、絶縁破壊強度が極めて高く、耐電圧特性に優れていた。また、表面の粗大突起が少なく、均一な凹凸をフィルム表裏にバランスして形成していることから、蒸着加工時のハンドリング性に優れていた。さらに、コンデンサー素子作製後もその優れた耐電圧特性を保持していた。
(比較例1)
実施例1において、イオン含有ポリマーを添加せずにホモポリプロピレン単体を用いた以外は同様の条件で作製した、MMVが3.0μmである二軸配向ポリプロピレンフィルム、および該フィルムから作製した金属化フィルム、コンデンサー素子を比較例1とした。
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、絶縁欠陥が少ないとはいえず、絶縁破壊強度が低く、耐電圧特性に劣っていた。また、得られたフィルムには、表面に金属ドラムとの密着ムラに起因する斑点状のムラがみられた。また、フィルム表裏の表面粗さがアンバランスで片側の面の粗さが小さいためか、蒸着加工時にシワが散発し、ハンドリング性に劣っていた。さらに、素子巻き後のコンデンサー素子の耐電圧特性も劣っていた。
(比較例2)
比較例1において、金属ドラムの表面温度を90℃に上げ、縦方向、引き続き横方向にそれぞれ5倍、11倍に延伸した以外は同様の条件で作製した、MMVが3.0μmである二軸配向ポリプロピレンフィルム、および該フィルムから作製した金属化フィルム、コンデンサー素子を比較例2とした。
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、大量に発生した絶縁欠陥により絶縁破壊強度が極端に低く、耐電圧特性に著しく劣っていた。また、蒸着加工時に巻きずれが散発し、ハンドリング性に劣っていた。さらに、コンデンサー素子の耐電圧特性にも大きく劣っていた。
(比較例3)
実施例3において、イオン含有ポリマーを添加せずにホモポリプロピレン単体を用いた以外は同様の条件で作製した、MMVが3.2μmである二軸配向ポリプロピレンフィルム、および該フィルムから作製した金属化フィルム、コンデンサー素子を比較例3とした。
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、絶縁欠陥が少ないとはいえず、絶縁破壊強度が低く、耐電圧特性に劣っていた。また、得られたフィルムには、表面に金属ドラムとの密着ムラに起因する斑点状のムラがみられた。また、フィルム表裏の表面粗さがアンバランスで片側の面の粗さが小さいためか、蒸着加工時にシワが散発し、ハンドリング性に劣っていた。さらに、素子巻き後のコンデンサー素子の耐電圧特性も劣っていた。
(比較例4)
実施例4において、イオン含有ポリマーを添加せずにホモポリプロピレン単体を一軸押出機に直接供給して製膜を行った以外は同様の条件で作製した、MMVが3.3μmである二軸配向ポリプロピレンフィルム、および該フィルムから作製した金属化フィルム、コンデンサー素子を比較例4とした。
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、絶縁欠陥が少ないとはいえず、絶縁破壊強度が低く、耐電圧特性に劣っていた。また、得られたフィルムには、表面に金属ドラムとの密着ムラに起因する斑点状のムラがみられた。また、フィルム表裏の表面粗さがアンバランスで片側の面の粗さが小さいためか、蒸着加工時にシワが散発し、ハンドリング性に劣っていた。さらに、素子巻き後のコンデンサー素子の耐電圧特性も劣っていた。
(比較例5)
比較例1において、ポリプロピレンとして、MIが4.3g/10分、mmmmが99.5%、IIが99.6%、灰分が13ppmである公知のホモポリプロピレン(上記したBHTを2,000ppm、“Irganox”1010を2,000ppm、ステアリン酸カルシウムを35ppm含有)を用いた以外は同様の条件で作製した二軸配向ポリプロピレンフィルムを比較例5とした。
結果を表1、2に示す。製膜時に破れが散発し、満足なフィルムが得られず、工業的な使用に耐えないフィルムであった。
(比較例6)
比較例1において、未延伸シートの厚みを変えた以外は同様の条件で作製したMMVが7.5μmである二軸配向ポリプロピレンフィルム、および該フィルムから作製した金属化フィルム、コンデンサー素子を比較例6とした。
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは実用上必要なハンドリング性、耐電圧特性は有するものの、絶縁破壊強度が低く、耐電圧特性に劣っていた。さらに、素子巻き後のコンデンサー素子の耐電圧特性も劣っていた。また、フィルムが厚いため、コンデンサー素子が大きくなり、小型化には明らかに不向きであった。
(比較例7)
比較例1において、未延伸シートの厚みを変えた以外は同様の条件で作製したMMVが2.5μmである二軸配向ポリプロピレンフィルム、および該フィルムから作製した金属化フィルム、コンデンサー素子を比較例7とした。
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、粗大で不均一な表面粗さやボイドの影響か、絶縁欠陥が大量に発生しており、絶縁破壊強度が低く、耐電圧特性に劣っていた。また、得られたフィルムには、表面に金属ドラムとの密着ムラに起因する斑点状のムラがみられた。また、フィルム表裏の表面粗さがアンバランスで片側の面の粗さが小さいためか、蒸着加工時にシワが散発し、ハンドリング性に劣っていた。さらに、素子巻き後のコンデンサー素子の耐電圧特性も劣っていた。
(比較例8)
実施例4において、イオン含有ポリマーのかわりに極性基を含まない水添石油樹脂としてトーネックス(株)社製“エスコレッツ”5320を用いた以外は同様の条件で作製したMMVが3.3μmである二軸配向ポリプロピレンフィルム、および該フィルムから作製した金属化フィルム、コンデンサー素子を比較例8とした。
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、絶縁欠陥は少ないが、絶縁破壊強度が低く、耐電圧特性に劣っていた。また、得られたフィルムには、表面に金属ドラムとの密着ムラに起因する斑点状のムラがみられた。また、フィルム表裏の表面粗さがアンバランスで片側の面の粗さが小さいためか、蒸着加工時にシワが散発し、ハンドリング性に劣っていた。さらに、素子巻き後のコンデンサー素子の耐電圧特性も劣っていた。
Figure 2008127460
Figure 2008127460
表1、2より、本発明のポリプロピレンフィルムは、イオン含有ポリマーを含むことにより、未添加の場合に比較して絶縁破壊強度を高くすることができ、耐電圧特性に優れていた。また、当該ポリマーの融点が延伸温度に比べて十分低く、製膜工程中に融解するためか、絶縁欠陥が極めて少ないことや、粗大突起の少ない均一な凹凸を形成できたことも絶縁破壊強度を高められたことの一因と考えられる。
また、フィルムを薄くしてもそのキャスト工程において未延伸シートをドラムに密着させることができた。このことから、フィルム表裏にバランスした、粗大突起の少ない均一な凹凸を形成でき、従来品に比べて蒸着時のハンドリング性に優れていた。
さらに、フィルムが薄くなっても従来品に見られるような著しい耐電圧特性の低下がみられず、イオン含有ポリマーの添加量、製膜条件などによりこれらの優れた特性を制御することができた。
また、本発明のポリプロピレンフィルムを用いたコンデンサー素子は、耐電圧特性に優れていた。
本発明のポリプロピレンフィルムは、金属化フィルムとした場合には金属層との優れた密着性を示し、延伸する場合にはボイドが少なく優れた製膜性を示すため、例えば金属層、フィルム層の欠陥が少なくガスバリア性に優れる金属化用フィルムとしても使用できる可能性がある。

Claims (7)

  1. ポリプロピレンとイオン含有ポリマーとを含むコンデンサー用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  2. 25℃での絶縁破壊強度(BDV)が650V/μm以上である、請求項1記載のコンデンサー用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  3. マイクロメータ法によるフィルムの厚みが5μm以下である、請求項1または2に記載のコンデンサー用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  4. フィルムの両面について、その中心線平均表面粗さ(Ra)と最大表面粗さ(Rmax)の比(Rmax/Ra)が8〜15である、請求項1〜3のいずれかに記載のコンデンサー用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  5. フィルムの120℃での縦方向の熱収縮率が0.5〜4.5%である、請求項1〜4のいずれかに記載のコンデンサー用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属層を設けてなる金属化ポリプロピレンフィルム。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレンフィルムまたは請求項6に記載の金属化ポリプロピレンフィルムを少なくとも一部に用いてなるコンデンサー。
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