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JP2008115829A - レシプロ式内燃機関の制御装置及び制御方法 - Google Patents

レシプロ式内燃機関の制御装置及び制御方法 Download PDF

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JP2008115829A
JP2008115829A JP2006302300A JP2006302300A JP2008115829A JP 2008115829 A JP2008115829 A JP 2008115829A JP 2006302300 A JP2006302300 A JP 2006302300A JP 2006302300 A JP2006302300 A JP 2006302300A JP 2008115829 A JP2008115829 A JP 2008115829A
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Hiroshi Oba
大羽  拓
Hiroshi Iwano
岩野  浩
Shinobu Kamata
忍 釜田
Kensuke Ito
健介 伊藤
Kenji Ota
健司 太田
Hisanori Onoda
尚徳 小野田
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Nissan Motor Co Ltd
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  • Combustion Methods Of Internal-Combustion Engines (AREA)
  • Control Of Throttle Valves Provided In The Intake System Or In The Exhaust System (AREA)
  • Output Control And Ontrol Of Special Type Engine (AREA)
  • Combined Controls Of Internal Combustion Engines (AREA)

Abstract

【課題】 スロットル開度の変更に伴う吸気量の応答遅れに起因するトルク変動を低減・解消する。
【解決手段】 吸気通路を開閉する電制のスロットル弁と、リンク支持部の位置に応じてピストンモーションが変化する複リンク式ピストン−クランク機構と、を備え、ピストンモーションとスロットル開度とを制御することにより吸入空気量を調整する。ピストンモーションを変更することなくスロットル開度を増加する低負荷域から中負荷域への加速過渡期には、ピストンモーションの吸気ストローク量を一時的に増加して、スロットル開度の増加に伴う吸気量増加の応答遅れを低減・相殺する。
【選択図】 図10

Description

本発明は、複リンク式ピストン−クランク機構を利用してシリンダ内を往復動するピストンのピストンモーションを変更可能なレシプロ式内燃機関の制御に関する。
特許文献1には、ピストンモーションの変化を伴って機関圧縮比を変更可能なレシプロ式内燃機関の複リンク式ピストン−クランク機構の一例が開示されている。この機構では、シリンダ内を往復動するピストンとクランクシャフトのクランクピンとが複数のリンクにより連係され、これら複数のリンクの一つに連結された制御リンクのリンク支持部の位置をアクチュエータにより変更・保持することにより、クランク角に対するピストンの動作すなわちピストンモーションの変化を伴って、機関圧縮比を変更することが可能である。
特許文献2には、同じようにピストンモーションを変更可能なレシプロ式内燃機関の複リンク式ピストン−クランク機構の一例が開示されている。この機構では、シリンダ内を往復動するピストンとクランクシャフトのクランクピンとが複数のリンクにより連係され、これら複数のリンクの一つに連結された制御リンクのリンク支持部がガイド部材に摺動自在に支持されている。このガイド部材はシリンダブロックに揺動可能に支持されており、このガイド部材の固定位置を変化させることで、クランク角に応じてピストンが往復移動するピストン作動状態と、クランク角にかかわらずピストンが停止状態に保持されるピストン停止状態と、を切り換えることが可能である。
特開2003−201875号公報 特開2005−140108号公報
このような複リンク式ピストン−クランク機構を備えるレシプロ式内燃機関の制御装置では、一般的には上記特許文献1や特許文献2に記載されているように、熱効率向上のために負荷に応じてピストンモーションが変更される。しかしながら、負荷領域によっては、ピストンモーションだけではトルク制御できないような領域、つまり要求トルクに応じた吸入空気量(以下、単に吸気量とも呼ぶ)が得られない領域が存在する。そのような領域では、吸気通路を開閉する電制のスロットル弁を用いて吸気量を制御することになるが、スロットル弁の制御によるトルク制御は、スロットル開度の変化に対する吸入空気量の変化に不可避的に時間遅れ・応答遅れを生じ、これに起因するトルク変動により車両の搭乗者に違和感を与えるおそれがある。
また、スロットル開度の変化に伴う吸気量の変化はピストンモーションの変化による吸気量の変化に比して応答性が非常に低いので、特に、負荷領域に応じて過渡時にピストンモーションだけで吸気量を変化させる領域と、スロットル弁だけで吸気量を変化させる領域と、が存在する設定の場合には、トルク応答性が運転領域によって異なることとなり、具体的にはスロットル弁で吸気量を調整する領域では、ピストンモーションで吸気量を制御する領域に比して、負荷が変化する加速・減速の過渡期における吸気量の応答性が低くなる傾向にある。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、吸気通路を開閉する電制のスロットル弁と、ピストンとクランクシャフトのクランクピンとを連係する複数のリンクの一つに制御リンクが連結された複リンク式ピストン−クランク機構と、上記制御リンクのリンク支持部の位置を変更・保持するアクチュエータと、を有する4サイクルのレシプロ式内燃機関に適用され、上記リンク支持部の位置に応じて変化するピストンモーションと上記スロットル弁のスロットル開度とを制御することにより吸入空気量を調整することが可能である。そして、機関運転状態に応じてスロットル開度を変更する過渡期に、上記スロットル開度の変更に伴うトルク変動を相殺するように、上記ピストンモーションを一時的に変更することを特徴としている。
本発明によれば、例えば低負荷からの加速過渡期のように機関運転状態に応じてスロットル開度を変更する過渡期に、ピストンモーションを一時的に変更することによって、上記スロットル開度の変更に伴う吸入空気量つまりトルクの応答遅れに起因するトルク変動を良好に吸収・相殺することができ、トルク応答性能を向上することができる。
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1及び図2を参照して、この内燃機関(エンジン)は、膨張・排気・吸気・圧縮の4行程を1サイクルとする4サイクル・火花点火式の4気筒レシプロ式内燃機関である。シリンダブロック10には、機関出力軸としてのクランクシャフト11が回転可能に支持されているとともに、ピストン12が往復動可能に嵌合する複数、この例では4つの#1〜#4シリンダ(気筒)13が形成されている。このシリンダブロック10の上部に固定されるシリンダヘッド14には、ピストン12の冠面との間にペントルーフ型の燃焼室15が形成されるとともに、吸気通路(吸気ポート)16を開閉する吸気バルブ17と、排気通路(排気ポート)18を開閉する排気バルブ19とが設けられ、かつ、燃焼室15内の混合気を火花点火する点火プラグ20が設けられる。
また、吸気通路16には、制御部40からの制御信号に応じて開度を調整・制御可能な電制のスロットル弁41が設けられるとともに、このスロットル弁41よりも上流側に吸気量(吸入空気量)を検出するエアフロメータ42が設けられ、かつ、吸気ポートへ燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射弁)43が設けられている。機関運転状態を検出するセンサ類として、運転者によるアクセル操作量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ44,クランクシャフト11の回転角つまりクランク角(CA)を検出するクランク角センサ45,カムシャフトの回転角を検出するカム角センサ47,機関温度としての冷却水温度を検出する水温センサ46,車速を検出する車速センサ50及び上記のエアフロメータ42等が設けられ、上記のクランク角センサ45とカム角センサ47の検出信号との組合せで気筒判別やエンジン回転数の検出が行われる。
制御部40は、各種制御処理を記憶及び実行する機能を有するデジタルコンピュータシステムであり、上記センサ類からの検出信号の他、スタータスイッチ(SW)48からの機関始動信号等に基づいて、スロットル弁41,インジェクタ43,点火プラグ20,機関始動時にクランクシャフト11を回転駆動すなわちクランキングするスタータ49の他、後述するように各気筒毎に設けられる複リンク式ピストン−クランク機構21の複数(この実施例では4つ)のアクチュエータ27等へ制御信号を出力し、その動作を制御する。特に、吸入空気量の調整は、リンク支持部26の位置に応じて変化するピストンモーションとスロットル弁41のスロットル開度とを制御することにより行われる。
バッテリ52は、オルタネータやモータジェネレータ(図示省略)による発電電力を蓄電する。上記のスタータ49や図示せぬエアコン・コンプレッサ等の補機類は、バッテリ52からの供給電力(電圧・電流)により駆動される。このバッテリ52の蓄電状態、つまりは供給可能な電圧は、バッテリコントローラ(バッテリ状態検出手段)53により検出・モニタされる。
図2に示すように、複リンク式ピストン−クランク機構21は、各ピストン12とクランクシャフト11のクランクピン22とを複数のリンク23,24により連係し、これら複数のリンク23,24の一つに連結された制御リンク25のリンク支持部26の位置をアクチュエータ27により変更することによって、ピストン12のピストンモーション(PM)を変更可能なものである。より具体的には、複リンク式ピストン−クランク機構21は、クランクピン22に回転可能に取り付けられるロアリンク23と、このロアリンク23とピストン12とを連結するアッパリンク24と、一端がロアリンク23に回転可能に連結される制御リンク25と、を有し、この制御リンク25の他端に上記のリンク支持部26が設けられる。ピストン12とアッパリンク24の上端とはピストンピン28により連結されており、アッパリンク24の下端とロアリンク23とは第1連結ピン29により連結されており、ロアリンク23と制御リンク25の一端とは第2連結ピン30により連結されている。ロアリンク23は、機構的には、第1連結ピン29と第2連結ピン30を結ぶ第1アーム31と、第1連結ピン29とクランクピン22とを結ぶ第2アーム32と、第2連結ピン30とクランクピン22とを結ぶ第3アーム33と、を有している。上記アクチュエータ27は、この例では各気筒13毎にそれぞれ設けられている。
アクチュエータ27には電気制御されるリニアモータ(線形誘導電動機)を利用したリニアアクチュエータを用いるのが良い。このリニアアクチュエータ27は、例えばシリンダブロック10の内面に固定される直線状の固定子としてのガイドレール34と、このガイドレール34に往復直線移動可能に支持されて、このガイドレール34上をシリンダ軸方向に平行な直線方向L1に沿って走行する可動子としてのリンク支持部26と、にそれぞれ電機子と界磁とが設けられ、リンク支持部26には誘導電流等を供給するためのケーブル35が接続されている。このようなリニアアクチュエータ27により運転条件や回転数に応じてピストンモーションを素早く正確に変更することが可能となり、エンジンの高速回転時においてもリンク支持部26を正確に動作させることができ、容易に高速化及び高精度化が実現できる上、リンク支持部26の摩擦を低減することができる。なお、各気筒毎にリンク支持部26をクランク角に応じて周知のフィードバック制御等により正確に制御するために、好ましくはリンク支持部26の位置を検出する位置センサ51が設けられている。
但し、このようなリニアアクチュエータ27に代えて、油圧を制御する電磁弁と、油圧で作動する油圧ピストンと、で構成される油圧アクチュエータを適用しても良い。このような電磁弁により油圧を制御して油圧ピストンによりリンク支持部を直動させる油圧アクチュエータを用いることで、低コスト化を図ることができるとともに、大きなトルクでの動作を安定して行うことが可能となる。
また、アクチェエータとして磁気粘性流体を利用する構造としても良い。つまり、リンク支持部26の動作方向の速度を抑えるように磁気粘性流体を連結し、リンク支持部26に加わる力でリンク支持部26のモーションを変化させる。運転条件により電磁石に流す電流値を変化させて、その粘性を変化させることで、ピストンモーションを切り替えることが可能である。この場合、機構が単純であり低コスト化を図ることができる。
図3は、クランク角に対するリンク支持部26の一設定例を示し、図4は、クランク角に対するピストン12の位置・動作すなわちピストンモーションを示している。図中、H1は中〜高負荷域で用いられる第1の設定を示し、H2は低〜中負荷域で用いられる第2の設定を示している。これら第1,第2の設定では、排気上死点の位置や膨張下死点の位置を変更することなく、吸気行程の長さである吸気ストローク量(図面では単に「吸気S量」とも記す)IS1,IS2と、圧縮上死点の位置とをそれぞれ変化させている。このような設定H1,H2はクランク角に応じてリンク支持部26の位置を素早く変更することによって実現可能である。
中〜高負荷域で用いられる第1の設定H1では、リンク支持部26を所定位置に保持することによって、ピストンモーションを音振性能に優れた単振動つまり正弦波に近い特性としている。なお、リンク支持部26をシリンダ軸方向の下方へ下げるほどピストンモーションの位置が全体的に高くなり、上限位置へ向けて上げるほどピストンモーションの位置が全体的に低くなるように設定されている。
低・中負荷域で用いられる第2の設定H2では、リンク支持部26を各サイクル中の吸気行程から膨張行程にかけての所定の作動期間だけ、リンク支持部26をシリンダ下方側へ往復移動させることによって、特に、ピストンの吸気行程のストローク量すなわち吸気ストローク量IS2を、第1の設定H1での吸気ストロークIS1に比して十分に小さくしている。また、第1の設定H1に比して、圧縮上死点の位置を高くして、機関圧縮比を高くしている。これによって、吸気ストローク量の短縮により圧縮行程を短くしつつ、圧縮上死点位置を高くすることにより膨張行程を長くし、熱効率を高めることができる。
図5は、本発明の第1実施例に係るリンク支持部26の目標位置の演算処理を模式的に示すブロック図である。この処理は上記制御部40により記憶・実行される。要求トルク演算部B1では、アクセル開度(APO)とエンジン回転数(Ne)から要求トルク(tTe)を求める。一例としては、あらかじめ設定される図6に示すような制御マップを参照して要求トルク(tTe)を設定する。
目標スロットル開度・目標吸気ストローク量演算部B2では、上記の要求トルク演算部B1で求めた要求トルク(tTe)とエンジン回転数(Ne)から目標スロットル開度(tTVO)と目標吸気ストローク量(tQcyl0)を求める。一例としては、予め設定される図7に示すような制御マップを参照して、目標スロットル開度(tTVO)と目標吸気ストローク量(tQcyl0)を求める。図7に示すように、中〜高負荷域では、スロットル開度が全開とされ、吸気ストローク量の増減により吸入空気量を調整する。具体的には、要求トルク(負荷)が高いほど吸気ストローク量を大きくする。低〜中負荷域では、吸気ストローク量が最小値に固定され、スロットル開度の増減により吸入空気量を調整する。具体的には、要求トルクが高いほどスロットル開度を大きくする。図8は吸気ストローク量と機関圧縮比の関係を示している。同図に示すように、吸気ストローク量が大きくなるほど機関圧縮比が低くなる関係にある(図4参照)。
再び図5を参照して、トルク変化量補正判定演算部B3では、要求トルク演算部B1で求めた要求トルク(tTe)を用いて、例えば下式(1)により要求トルクの変化量(所定時間Δtの間隔毎の変化量)(dTe)を求める。
dTe=tTe−tTe(Δt)…(1)
また、このトルク変化量補正判定演算部B3では、要求トルクの変化量(dTe)に基づいて、スロットル開度の増減に伴う吸入空気量の応答遅れに起因するトルク変動を相殺・吸収するために、吸気ストローク量の補正が必要な加速過渡期であるか否かの補正判定を行う。この加速過渡期は、この実施例では、ピストンモーションを変化させることなくスロットル開度を増加する低負荷域から中負荷域への加速時であって、図10にも示すように加速開始時の要求トルクの変化量(dTe)が所定値(Tacc)以上の場合であり、かつ、加速開始からトルク変化量(dTe)が所定値(Tacc)未満となってから所定期間(Tdelay)経過するまでの期間に相当する。加速過渡期であれば、後述する図9のルーチンによって補正判定フラグTareaが「1」に設定され、加速過渡期でなければ補正判定フラグTareaが「0」に設定される。
目標吸気ストローク量補正部B4では、トルク変化量補正判定演算部B3で加速過渡期であると判定された場合(Tarea=1)に、例えば下式(2)により、トルク偏差(deltaT)及び目標吸気量補正係数(kQcyl)を用いて目標吸気ストローク量(tQcyl0)を補正し、最終的な目標吸気ストローク量(tQcyl)を演算する。
tQcyl=tQcyl0+kQcyl×deltaT×Tarea…(2)
ただし、tQcylは、設定可能な上限値tQcyl_max以下の範囲で設定される。なお、加速過渡期でなければ、上記(2)式のTareaを含む補正項が0となり、目標吸気ストローク量tQcyl0が補正されることなくそのまま目標吸気ストローク量tQcylとして設定される。
上記の目標吸気量補正係数(kQcyl)は、簡易的には予め実験で適合した固定値とする。また、トルク偏差(deltaT)は要求トルク(tTe)と推定トルク(eTe)の偏差より求める(deltaT=tTe−eTe)。推定トルク(eTe)は要求トルク(tTe)より、エンジン回転数、吸気系の遅れ等を加味して算出する。例えば次式(3)に示すように簡易的に1次遅れとして処理し、時定数kを運転条件に応じて変更する。
eTe=k×tTe+(1−k)×eTe_old …(3)
目標位置演算部B5では、上記目標吸気ストローク量補正部B4より出力される目標吸気ストローク量(tQcyl)と、クランクアングルと、気筒判別結果と、に基づいて、各気筒のリンク支持部26の目標位置を、例えば予め設定される制御マップを参照して設定する。この目標位置に応じてアクチュエータ27が駆動制御され、目標吸気ストローク量に対応するピストンモーションが実現される。
図9は、本実施例に係る目標吸気ストローク量の演算処理の流れを示すフローチャートである。本ルーチンは上記の制御部40により極短い所定の演算間隔Δt(例えば、10msあるいは所定クランク角)毎に繰り返し実行される。
ステップS11では、アクセル開度(APO)とエンジン回転数(Ne)を読み込む。アクセル開度は、例えば開度に応じて抵抗値が変化するアクセル開度センサ44の出力電圧を検出し、あらかじめ求めておいた出力電圧とアクセル開度の関係を示す制御マップを参照して求めることができる。エンジン回転数は、例えば、特定のクランク角度毎にパルスが発生するクランク角センサ45の出力等から求めることができる。
ステップS12では、例えばあらかじめ設定される制御マップを参照して、アクセル開度(APO)とエンジン回転数(Ne)から要求トルク(tTe)を求める。ステップS13では、上記の要求トルク(tTe)を用いて、例えば上記の(1)式により要求トルクの変化量(所定時間Δt間隔毎の変化量)(dTe)を求める。
ステップS14では、要求トルクの変化量(dTe)等を用いて、吸気ストローク量の補正を行うべき加速過渡期であるかを判定する。上述したように、ピストンモーションを変化させることなくスロットル開度を増加する低負荷域から中負荷域への加速時であって、その要求トルクの変化量(dTe)が所定値(Tacc)以上であり、かつ、加速開始時から、トルク変化量(dTe)が所定値(Tacc)未満となってから所定期間(Tdelay)経過するまでの期間が、加速過渡期として判定される判定される。あるいは、より簡易的に、要求トルクtTeが所定値Tmid以下の低・中負荷域であって、かつ加速開始(dTe≧Tacc)から所定期間内を加速過渡期と判定しても良い。
加速過渡期と判定されれば、補正判定フラグTareaを「1」とし(ステップS15)、加速過渡期以外の通常運転状態と判定されれば補正判定フラグTareaを「0」とする(ステップS16)。そしてステップS17では、例えば上述した(2)式により、目標吸気量(tQcyl0)、トルク偏差(deltaT)、目標吸気量補正係数(kQcyl)及び補正判定フラグ(Tarea)を用いて目標吸気ストローク量(tQcyl)を補正・演算する。
このように本実施例によれば、図10にも示すように、要求トルクの増加に応じてピストンモーションを変化させることなくスロットル開度を増加する低負荷域から中負荷域への加速過渡期に、図中に符号αで示すようにピストンモーションを一時的に変更し、具体的には吸気ストローク量を一時的に増大することによって、スロットル開度の増加に伴う吸気量増加の応答遅れによる吸気量の不足分を補い、そのトルク変動を良好に吸収・相殺することができ、トルク応答性能を向上することができる。
特に本実施例では、加速過渡期における吸気量の不足分に対応するトルク偏差(deltaT)を求め、このトルク偏差に基づいてピストンモーションの吸気ストローク量を補正しているので、精度良くトルク応答性を向上することができる。
以下に説明する実施例では、既述した実施例と異なる部分について主に説明し、重複する説明を適宜省略する。
図11を参照して、本発明の第2実施例に係る低負荷域から中負荷域への加速過渡期における目標吸気ストローク量の補正処理について説明する。この第2実施例では、スロットル弁41の下流のマニフォルド圧力(Pmani)、スロットル通過空気量(Qth)、エンジン吸入空気量(Qeng)、及び吸気系容積(スロットル下流〜吸気バルブまでの容積)(Vint:固定値)に基づいて、加速過渡期における目標吸気ストローク量を補正・演算している。より具体的には下式(4)に示すように、マニフォルド圧力(Pmani)を用いて要求トルク(tTe)を実現可能な空気量Qengを確保するために必要な要求吸気量tQcylを算出する。
tQcyl=Qeng/Ne×Patm/Pmani …(4)
ただし、
tQcyl≦tQcyl_max
Qth=f(Ath、Pmani)
Qeng=f(Qcyl、Pmani、Ne)=Qcyl×Pmani/Patm×Ne
Pmani=f(Qth、Qeng、Pmani_old、Vint)
上記のスロットル通過空気量(Qth)は、例えば、スロットル上流圧を大気圧(Patm)とし、スロットル弁41よりも下流のマニフォルド圧力(Pmani)とスロットル弁の開口面積(Ath)とを用いてベルヌーイの式を用いて算出することができる。エンジン吸入空気量(Qeng)は、例えば、吸気下死点での筒内圧力がマニフォルド圧力(Pmani)と等しいと仮定し、吸気行程容積(Qcyl)とエンジン回転数(Ne)とにより算出することができる。吸気系容積(Vint:固定値)は、スロットル下流から吸気バルブまでの容積に相当し、吸気系の設計値により定まる固定値である。吸気行程容積(Qcyl)は、吸気行程におけるストローク長さとシリンダの断面積とから算出される。スロットル弁の開口面積(Ath)は、スロットルの角度(開度)と比例関係にあり、例えば、両者の関係を表す所定のテーブルデータを参照して求めることができる。
このように第2実施例ではピストンモーション変化によるマニフォルド圧力変化をも加味して、加速過渡期における吸気ストローク量tQcylの補正(演算)を行っているので、加速過渡期におけるトルク変動をより精度よく吸収・相殺することができる。
図12及び図13を参照して、本発明の第3実施例に係る加速過渡期における目標吸気ストローク量の補正処理について説明する。この第3実施例では、目標吸気ストローク量tQcylの変化に伴う圧縮比変化による効率低下をさらに加味して、要求吸気量tQcylの補正・算出を行っており、これによって、より精度良く吸気量やトルクの応答遅れを低減・解消することができる。
具体的には、目標吸気ストローク量が最小の時を基準(100%)として、図13に示す制御マップを参照して、現在の目標吸気ストローク量に応じた効率(η)を設定する。同図に示すように、吸気ストローク量が大きくなるほど効率ηは低下する関係にある。
そして、この効率ηを用いて、下式(5)により加速過渡期における目標吸気ストローク量tQcylを算出(補正)する。
tQcyl=Qeng/Ne×Patm/Pmani/η …(5)
(ただし、tQcyl≦tQcyl_max)
図14及び図15を参照して本発明の第4実施例を説明する。低負荷域からの加速過渡期には、燃焼室内や排気バルブ等の温度が高負荷時に比べて低いために、ノッキングに対して若干ゆとりがある。そこで、このような加速過渡期には、図14の実線で示す補正時のピストンモーションを、定常状態で求めた要求吸気量tQcylに対応した圧縮比よりも高く設定する。より具体的には、スロットル開度の変更による吸気応答遅れを相殺するように、ピストンモーションを一時的に変更・補正する際に、吸気ストローク量を変化させることなく圧縮上死点位置を高くしている。これによって、過渡時のトルク補正による効率低下を軽減することが可能になる。
図16及び図17を参照して本発明の第5実施例を説明する。低負荷域からの加速過渡期には、吸入負圧の低下の応答遅れによって、吸気ストローク量を上限値(tQcyl_max)としても、目標トルクを実現するための吸気量が不足する可能性がある。そこで、加速過渡期にスロットル開度変化による吸気応答遅れを相殺するためにピストンモーションを一時的に変更する際に、図16の実線で示すように、そのストローク量を変化させることなく、吸気行程のクランク角度(以下、単に「吸気行程角度」とも呼ぶ)を、定常状態で求めた吸気行程角度よりも小さくし、吸気行程時のピストンスピードを増加させることで、吸気量を増大させている。ここで、吸気バルブタイミングを変更可能な機構を備えている場合、吸気行程に応じて吸気バルブが開弁するように、好ましくは吸気行程角度の変更に応じて吸気バルブの閉時期も変更する。
なお、吸気行程角度Cintは、吸気ストローク量が最大値(tQcyl_max)を超えた分、つまり目標吸気ストローク量不足値(tQcyl_hos)に基づいて、図17に示すような予め設定された制御マップを参照して求めることができ、吸気行程角度の最小値はコントロールシャフトの動く速度が速くなりすぎない範囲で、かつ吸気量増大効果が得られる範囲で設定される(Cint=f(tQcyl_hos))。図17に示すように、目標吸気ストローク量不足値(tQcyl_hos)が大きくなるほど、吸気行程角度を小さくする。
上記の目標吸気ストローク量不足値(tQcyl_hos)は、例えば下式(6)により求めることができる。
tQcyl_hos=(tQcyl0+kQcyl×deltaT×Tarea)
−tQcyl_max…(6)
図18及び図19を参照して本発明の第6実施例について説明する。低負荷域からの加速過渡期には、吸入負圧低下の応答遅れの影響により、定常時よりも残留ガスが多くなり、燃焼が不安定になる可能性がある。そこで、このような加速過渡期におけるピストンモーション(図18の実線参照)を、そのストローク量を変化させることなく、定常状態で求めた吸気行程角度よりも長くするとともに、圧縮行程のクランク角度を短くし、圧縮行程時のピストンスピードを増加させることで、圧縮時の吸気乱れを増大させている。これによって、残留ガスが多い状態でも安定した燃焼が可能となる。ここで、吸気バルブタイミングを変更可能な機構を備えている場合、好ましくは、吸気行程角度に応じて良好に吸気バルブが開弁するように、吸気行程角度の変更に応じて吸気バルブの閉時期も変更する。
上記の吸気行程角度Cintは、下式(7)に示すように、マニフォルド圧力Pmaniに基づいて設定され、具体的には図19に示すようにマニフォルド圧力が小さいほど長くして、圧縮行程時のピストンスピードを増加させる。
Cint=f(Pmani) …(7)
以上の説明より把握し得る本発明の特徴的な技術思想について列記する。但し、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変形・変更を含むものである。例えば、機関温度を検出するものとして上記実施例では冷却水温を検出する水温センサ46を用いているが、エンジンオイルの温度を検出する油温センサを単独又は水温センサ46と併用して機関温度を求めるようにしても良い。
[1]吸気通路16を開閉する電制のスロットル弁41と、ピストン12とクランクシャフト11のクランクピン22とを連係する複数のリンク23,24の一つに制御リンク25が連結された複リンク式ピストン−クランク機構21と、上記制御リンク25のリンク支持部26の位置を変更・保持するアクチュエータ27と、を有し、上記リンク支持部26の位置に応じて変化するピストンモーションと上記スロットル弁41のスロットル開度とを制御することにより吸入空気量を調整する4サイクルのレシプロ式内燃機関の制御装置であって、機関運転状態に応じてスロットル開度を変更する過渡期に、上記スロットル開度の変更に伴うトルク変動を相殺するように、上記ピストンモーションを一時的に変更する。
このような構成により、例えば低負荷からの加速過渡期のように機関運転状態に応じてスロットル開度を変更する過渡期に、ピストンモーションを一時的に変更することによって、上記スロットル開度の変更による吸入空気量つまりトルクの応答遅れに起因するトルク変動を良好に吸収・相殺することができ、トルク応答性能を向上することができる。
[2]スロットル開度の変化による吸気量の変化はピストンモーションの変化による吸気量の変化に比して応答性が非常に低いので、要求トルク(負荷)の変化に応じてピストンモーションだけで吸気量を変化させる領域と、スロットル弁だけで吸気量を変化させる領域と、が存在する設定の場合には、トルク応答性が運転領域によって異なることとなり、具体的にはスロットル弁で吸気量を調整する領域では、ピストンモーションで吸気量を調整する領域に比して、要求トルクが変化する加速・減速の過渡期における吸気量の応答性が低くなり、搭乗者に更に違和感を与えやすい。従って好ましくは、このようにピストンモーションを実質的に変更することなくスロットル開度を増加する低負荷域から中負荷域への加速過渡期で、上記[1]の制御を実施する。
なお、機関低〜中負荷域では吸気量制御にピストンモーションを用いない理由としては、機関低〜中負荷域では吸気ストローク量が既に小さく、それ以上吸気ストローク量を小さくしてしまうと圧縮比の確保が困難になること、また、吸気ストローク量を小さくするにしたがって、圧縮比の低下を抑制するために圧縮上死点位置を高くしていく必要があるが、これは機関の構成上、当然のことながら限界があること等が挙げられる。
[3]上記第1実施例のように、加速過渡期には、吸入空気量と直接的に関連する吸気行程の長さつまり吸気ストローク量を一時的に増加することによって、応答遅れによる吸気量の不足を精度良く相殺することが可能となる。
[4]また、上記第2実施例のように、加速過渡期には、スロットル弁41の下流のマニフォルド圧力を推定し、この圧力変化に基づいて、ピストンモーションを一時的に変更することによって、スロットル開度の変化による吸気量の応答遅れをより高精度に推定でき、トルク応答性を更に向上することができる。
[5]上記第3実施例のように、加速過渡期には、上記ピストンモーションの一時的な変更に伴う熱効率の変化を考慮して、ピストンモーションの変更量を設定することによって、スロットル開度の変化による吸気量の応答遅れを更に精度良く推定することが可能となる。
[6]上記第4実施例のように、加速過渡期には、圧縮上死点位置を一時的に高くすることによって、加速過渡期の熱効率を向上することができる。
[7]上記第5実施例のように、加速過渡期には、吸気行程のクランク角度を一時的に短くすることによって、過渡時の吸入効率を向上させ、実際に発生するトルクを目標トルクにより近づけることができる。
[8]上記第6実施例のように、加速過渡期には、吸気行程のクランク角度を一時的に長くするとともに、圧縮行程のクランク角度を一時的に短くすることによって、圧縮行程における圧縮時のシリンダ内の乱れを強化し、燃焼をより安定させることができる。
本発明に係るレシプロ式内燃機関の制御システムの一例を示す構成図。 複リンク式ピストン−クランク機構の一例を示す構成図。 クランク角に対するリンク支持部の目標位置の一設定例を示す特性図。 図3のリンク支持部の設定でのピストンモーションを示す特性図。 本発明の第1実施例に係るリンク支持部の目標位置の設定処理を模式的に示すブロック図。 アクセル開度(APO)と要求トルク(tTe)の関係を示す特性図。 要求トルクに対する目標吸気ストローク量(A)と目標スロットル開度(B)の関係を示す特性図。 吸気ストローク量と機関圧縮比の関係を示す特性図。 上記第1実施例に係る目標吸気ストローク量の演算処理の流れを示すフローチャート。 上記第1実施例に係る低負荷域から中負荷域への加速過渡期のタイムチャート。 本発明の第2実施例に係る低負荷域から中負荷域への加速過渡期のタイムチャート。 本発明の第3実施例に係る低負荷域から中負荷域への加速過渡期のタイムチャート。 上記第3実施例に係る吸気ストローク量に対する効率の関係を示す特性図。 本発明の第4実施例に係るクランク角に対するピストン位置の関係を示す特性図。 上記第4実施例に係る吸気ストローク量と圧縮比との関係を示す特性図。 本発明の第5実施例に係るクランク角に対するピストン位置の関係を示す特性図。 上記第5実施例に係る吸気ストローク量不足値と吸気行程角度との関係を示す特性図。 本発明の第6実施例に係るクランク角に対するピストン位置の関係を示す特性図。 第6実施例に係るマニフォルド圧力と吸気行程角度との関係を示す特性図。
符号の説明
11…クランクシャフト
12…ピストン
13…シリンダ
21…複リンク式ピストン−クランク機構
22…クランクピン
23…ロアリンク
24…アッパリンク
25…制御リンク
26…リンク支持部
27…アクチュエータ
40…制御部

Claims (9)

  1. 吸気通路を開閉する電制のスロットル弁と、ピストンとクランクシャフトのクランクピンとを連係する複数のリンクの一つに制御リンクが連結された複リンク式ピストン−クランク機構と、上記制御リンクのリンク支持部の位置を変更・保持するアクチュエータと、を有し、
    上記リンク支持部の位置に応じて変化するピストンモーションと上記スロットル弁のスロットル開度とを制御することにより吸入空気量を調整する4サイクルのレシプロ式内燃機関の制御装置であって、
    機関運転状態に応じてスロットル開度を変更する過渡期に、上記スロットル開度の変更に伴うトルク変動を相殺するように、上記ピストンモーションを一時的に変更することを特徴とするレシプロ式内燃機関の制御装置。
  2. 上記過渡期が、ピストンモーションを実質的に変更することなくスロットル開度を増加する低負荷域から中負荷域への加速過渡期を含んでいることを特徴とする請求項1に記載のレシプロ式内燃機関の制御装置。
  3. 上記加速過渡期には、吸気行程の長さを一時的に増加することを特徴とする請求項2に記載のレシプロ式内燃機関の制御装置。
  4. 上記加速過渡期には、上記スロットル弁の下流のマニフォルド圧力を推定し、この圧力変化に基づいて、ピストンモーションを一時的に変更することを特徴とする請求項2又は3に記載の内燃機関の制御装置。
  5. 上記加速過渡期には、上記ピストンモーションの一時的な変更に伴う熱効率の変化を考慮して、ピストンモーションの変更量を設定することを特徴とする請求項4に記載のレシプロ式内燃機関の制御装置。
  6. 上記加速過渡期には、圧縮上死点位置を一時的に高くすることを特徴とする請求項2に記載のレシプロ式内燃機関の制御装置。
  7. 上記加速過渡期には、吸気行程のクランク角度を一時的に短くすることを特徴とする請求項2に記載のレシプロ式内燃機関の制御装置。
  8. 上記加速過渡期には、吸気行程のクランク角度を一時的に長くするとともに、圧縮行程のクランク角度を一時的に短くすることを特徴とする請求項2に記載のレシプロ式内燃機関の制御装置。
  9. 吸気通路を開閉する電制のスロットル弁と、ピストンとクランクシャフトのクランクピンとを連係する複数のリンクの一つに制御リンクが連結された複リンク式ピストン−クランク機構と、上記制御リンクのリンク支持部の位置を変更・保持するアクチュエータと、を有するレシプロ式内燃機関の制御方法であって、
    上記リンク支持部の位置に応じて変化するピストンモーションと上記スロットル弁のスロットル開度とを制御することにより吸入空気量を調整し、
    かつ、機関運転状態に応じてスロットル開度を変更する過渡期には、上記ピストンモーションを一時的に変更することを特徴とするレシプロ式内燃機関の制御方法。
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