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JP2008106356A - 銅合金板材およびその製造法 - Google Patents

銅合金板材およびその製造法 Download PDF

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Abstract

【課題】Cu−Ni−Si系銅合金において、強度、導電性を良好に維持しながら、特に応力緩和特性と曲げ加工性を高レベルに両立した銅合金板材を提供する。
【解決手段】質量%で、Ni:0.6〜4.2%、Si:0.2〜1.0%、Sn:0.1〜1.3%を含有し、必要に応じてZn:2.0%以下、あるいはさらにCo、Cr、Mg、B、P、Fe、Zr、Ti、Mnの1種以上を合計3%以下の範囲で含有し、残部実質的にCuの組成を有し、下記(1)式を満たす双晶帯密度NGを有する銅合金板材。
G=(D−DT)/DT≧0.3 ……(1)
ここで、DTは双晶帯を結晶粒界とみなして測定される平均結晶粒径、Dは双晶帯を結晶粒界とみなさないで測定される同平均結晶粒径である。
【選択図】なし

Description

本発明は、コネクター、リードフレーム、リレー、スイッチなどの電気・電子部品に適したCu−Ni−Si系銅合金板材であって、特に高強度および高導電性を有するとともに、応力緩和特性と曲げ加工性に優れた銅合金板材に関する。
電気・電子部品を構成するコネクター、リードフレーム、リレー、スイッチなどの通電部品に使用される材料には、通電によるジュール熱の発生を抑制するために良好な「導電性」が要求されるとともに、電気・電子機器の組立時や作動時に付与される応力に耐え得る高い「強度」が要求される。また、電気・電子部品は一般に曲げ加工により成形されることから優れた「曲げ加工性」が要求される。さらに、電気・電子部品間の接触信頼性を確保するために、接触圧力が時間とともに低下する現象である「応力緩和特性」が優れることも要求される。
特に近年、電気・電子部品は高集積化、小型化および軽量化が進む傾向にあり、それに伴って素材である銅および銅合金には薄肉化の要求が高まっている。そのため、素材に要求される「強度」レベルは一層厳しいものとなっている。また、電気・電子部品の小型化、形状の複雑化に対応するには部品の「曲げ加工性」の向上がますます重要になる。さらに、電気・電子部品が苛酷な環境で使用される場合の増加に伴い、「応力緩和特性」に対する要求が厳しくなる。例えば、自動車用コネクターのように高温に曝される環境下で使用される場合は、「応力緩和特性」が特に重要となる。
しかしながら、「強度」と「導電性」、あるいは「強度」と「曲げ加工性」、さらに「曲げ加工性」と「応力緩和特性」の間にはトレードオフの関係がある。従来、このような通電部品には、用途に応じて「導電性」、「強度」、「応力緩和特性」あるいは「曲げ加工性」の良好な材料が適宜選択されて使用されている。
強度と導電性のバランスに優れた銅合金としてCu−Ni−Si系合金(いわゆるコルソン合金)が近年注目されている。この系の銅合金では比較的高い導電率(30〜45%IACS)を維持しながら、強度を顕著に向上させることができる。しかし、Cu−Ni−Si系合金は強度と曲げ加工性を高レベルで両立しにくい合金系であることが一般に知られている。
高強度化の手段として、Ni、Siなどの溶質元素の多量添加や時効処理後の仕上げ圧延(調質処理)率の増大などの一般な方法がある。しかしながら、前者はNi−Si系析出物の量が多ければ多いほど曲げ加工性が悪くなりやすい。後者は加工硬化が大きくなるために曲げ加工性(特に圧延方向に対し直角方向の曲げ加工性)が著しく悪化してしまう。そのため、強度レベルと導電性レベルが高くても電気・電子部品に使用できなくなる場合がある。
特許文献1、2には、Cu−Ni−Si系合金において応力緩和特性を向上するためにMg添加が有効であることが記載されている。特許文献3には、Cu−Ni−Si系合金曲げ加工性の改善には結晶粒の微細化が有効であることが記載されている。
特許第2503793号公報 特開2001−181759公報 特開2006−152393公報
応力緩和は、電気・電子部品を構成する素材のばね部の接触圧力が、常温では一定の状態に維持されても、比較的高温(例えば100〜200℃)の環境下では時間とともに低下するという、一種のクリープ現象である。すなわち、金属材料に応力が付与されている状態において、マトリックスを構成する原子の自己拡散や固溶原子の拡散によって転位が移動して、塑性変形が生じることにより、付与されている応力が緩和される現象である。
特許文献1、2に開示のMgを添加する手段は強度と応力緩和特性の同時改善に有効であり、導電率低下への悪影響も小さい。しかし、Mg添加は曲げ加工性を悪化させる要因になる。また、Mgは極めて酸化し易い元素であることから、鋳造性の悪化を招く。
特許文献3に開示の結晶粒を微細化する手段は曲げ加工性の改善に有効である。しかし、結晶粒の微細化に伴い金属材料の単位体積当たりに存在する結晶粒界の面積が増大し、粒界拡散による原子拡散が起こりやすい状況となる。このため、クリープ現象の一種である応力緩和は、生じやすくなってしまう。
このように、諸特性のバランスに比較的優れるCu−Ni−Si系銅合金において、更なる高強度化を図りながら応力緩和特性と曲げ加工性を同時に改善することは難しい。昨今の電気・電子部品の厳しい使用環境に対応するには、より安定的に優れた応力緩和特性が得られ、かつ、優れた曲げ加工性が得られることが望まれる。
本発明は、この合金系において、特に応力緩和特性と曲げ加工性を高レベルに両立した銅合金板材を提供することを目的とする。
耐応力緩和性と曲げ加工性の両立を困難にしている大きな要因の一つとして、材料の結晶粒径を、両特性が共に良好になる範囲に設定することが極めて難しい点が挙げられる。例えば、結晶粒径が小さいほど、金属材料の単位体積当たりに存在する結晶粒界の面積が大きくなる。この場合、曲げ加工性の改善には都合がよい。粒界は、曲げ加工の際に粒界すべりや粒界両側の結晶粒回転を可能にする界面として機能するので、その界面の面積が大きいほど局部的な応力集中が回避され、曲げ加工性は向上する傾向になる。しかし反面、結晶粒界の面積増大は、前述のようにクリープ現象の一種である応力緩和を助長する要因となる。特に車載用コネクターなど高温環境で使用される用途では、原子の粒界に沿う拡散速度は粒内より著しく速いので、結晶粒微細化による応力緩和特性の低下は重大な問題となる。
もし、単位体積当たりの結晶粒界面積を十分に確保しながら、原子の粒界拡散に対して抵抗力の大きい粒界部分が多く存在するような結晶粒組織を実現することができれば、それは曲げ加工性と応力緩和特性の同時改善を一挙に達成するための有効な手段となるであろう。発明者らは詳細な検討の結果、「双晶帯」の存在に着目した。そして、双晶帯の境界は、曲げ加工時の変形に寄与する界面として機能すること、および上記の「原子の粒界拡散に対して抵抗力の大きい粒界部分」に相当することを見出した。本発明はこの知見に基づき、双晶帯の存在割合を一定以上に多くした金属組織にコントロールした銅合金板材を提供するものである。
すなわち本発明では、質量%で、Ni:0.6〜4.2%、Si:0.2〜1.0%、Sn:0.1〜1.3%を含有し、必要に応じてZn:2.0%以下、あるいはさらにCo、Cr、Mg、B、P、Fe、Zr、Ti、Mnの1種以上を合計3%以下の範囲で含有し、残部実質的にCuの組成を有し、下記(1)式を満たす双晶帯密度NGを有すし、下記(A)式を満たす平均結晶粒径Dを有する銅合金板材が提供される。
G=(D−DT)/DT≧0.3 ……(1)
10μm≦D≦60μm ……(A)
ここで、DTは双晶帯を結晶粒界とみなして測定されるJIS H0501の切断法による平均結晶粒径である。この場合、双晶帯の幅の中央位置を粒界位置とする。Dは双晶帯を結晶粒界とみなさないで測定される同平均結晶粒径である。双晶帯を形成してない双晶境界が存在するときは、その双晶境界はDT、Dのいずれを測定する場合も結晶粒界とみなさない。
「残部実質的にCu」とは、本発明の効果を阻害しない範囲で上記以外の元素の混入が許容されることを意味し、「残部がCuおよび不可避的不純物」である場合が含まれる。
上記の銅合金板材において、特に下記(2)式を満たす結晶配向を有するものが好適な対象となる。
0.1≦I{420}/I{220}≦0.5 ……(2)
ここで、I{420}およびI{220}はそれぞれ当該板材の板面における{420}結晶面および{220}結晶面のX線回折強度である。「板面」は板の厚さ方向に垂直な表面(圧延面)である。
このような銅合金板材の製造法として、上記のように組成調整された銅合金材料に対し、700℃以下の温度域での圧延率を40%以上とする熱間圧延、圧延率85%以上の冷間圧延、加熱温度700〜850℃、100℃から700℃までの昇温時間を好ましくは20sec以下とする溶体化処理、圧延率0〜50%の中間冷間圧延、材温400〜500℃の時効処理、圧延率0〜65%、好ましくは下記(3)式を満たす圧延率とする仕上げ冷間圧延を順次施す工程を有する製造法が提供される。仕上げ冷間圧延後に、さらに150〜550℃の加熱処理を施す工程を採用することが好ましい。
10≦ε2≦(65−ε1)/(100−ε1)×100 ……(3)
ここで、ε1は中間冷間圧延率(%)、ε2は仕上げ冷間圧延率(%)である。
上記の「圧延率0%」は、当該中間冷間圧延を行わない場合を意味する。
圧延率ε(%)は、圧延前の板厚をt0、圧延後の板厚をt1とすると、下記(4)式で表される。
ε=(t0−t1)/t0×100 ……(4)
熱間圧延において「700℃以下の温度域での圧延率を40%以上とする」とは、700℃以下の温度における最初の圧延パスに供する時点の板厚をt0、最終パス後の板厚をt1として上記(4)式を適用したときのεの値が40%以上であることを意味する。
本発明によれば、コネクター、リードフレーム、リレー、スイッチなどの電気・電子部品に必要な基本特性を具備するCu−Ni−Si系銅合金の板材において、引張強さ650MPa以上あるいはさらに700MPa以上の高強度を有し、かつ優れた応力緩和特性と曲げ加工性を同時に有するものが提供された。このような高強度レベルにおいて引張強さ、応力緩和特性と曲げ加工性を安定して顕著に向上させることは、従来のCu−Ni−Si系銅合金製造技術では困難であった。本発明は、今後ますます進展が予想される電気・電子部品の小型化、薄肉化のニーズに対応し得るものである。
《金属組織》
〔双晶帯密度〕
双晶は、隣接する二つの結晶格子が、ある面(双晶境界という、一般に銅合金では{111}面である)に関して鏡映対称の関係にある一対の結晶を言う。銅および銅合金の最も一般的な双晶の形態は、二つの平行な双晶境界で挟まれた「双晶帯」も呼ばれる部分を形成するタイプである。双晶境界は、境界両側の結晶方位差が15°以上を有し、一種の「結晶粒界」である。ただし、双方の結晶格子が基本的に整合性を保って接している面であるので、特別の界面性格を有する「結晶粒界」である。
発明者らの詳細な検討によれば、例えば銅合金材料に強い機械的応力が付与された場合、双晶帯の両側の双晶境界は他の一般的な結晶粒界と同様に双晶帯を挟んで隣り合う結晶格子同士の「すべり」や「ずれ」を担う境界として働き、材料の変形を助ける作用を呈する。このため、金属材料の単位体積当たりに存在する双晶帯が増大すれば、その材料の曲げ加工性は向上する傾向を示す。つまり、双晶帯は、他の一般的な結晶粒界と同様、曲げ加工性にプラスに作用する。
一方、双晶境界は、原子配列の乱れが少なく構造的に緻密であることから、他の一般的な結晶粒界に比べ、境界に沿った原子の拡散は生じにくく、不純物の偏析や析出物の形成も起こりにくい。このため、原子の粒界拡散を伴うクリープ現象のような変形に対して、双晶帯は結晶粒界としての機能をほとんど持たない。つまり、双晶帯は、他の一般的な結晶粒界と異なり、クリープ現象の一種である応力緩和に対し、ほとんどマイナスに作用しない。
このようなことから、双晶帯が多いほど、応力緩和特性と曲げ加工性の同時改善に有利となる。具体的には、双晶帯密度NGが下記(1)式を満たすような金属組織を採用する。(1)式に替え、(1)’式を満たすことがより好ましい。
G=(D−DT)/DT≧0.3 ……(1)
G=(D−DT)/DT≧0.35 ……(1)’
ここで、DTは双晶帯を結晶粒界とみなして測定したJIS H0501の切断法による平均結晶粒径である。この場合、双晶帯の幅の中央位置を粒界位置とする。Dは双晶帯を結晶粒界とみなさないで測定した同平均結晶粒径である。銅合金では双晶帯を形成せずに結晶を2分するような双晶境界の存在は稀である。したがって双晶帯を形成していない双晶境界が存在する場合は、その双晶境界を無視して前記DTおよびDを測定すればよい。
例えばNG=1となるのはどういう場合かというと、双晶帯を除いた一般的な結晶粒界のみで特定される各結晶粒内に、双晶帯が平均1個ずつ存在する場合である。このときD=2DTとなり、NG=1となる。NGが0.3より小さい場合は曲げ加工性が不十分となる。
結晶粒径の測定は、銅合金板材の板面(すなわち圧延面)を研磨およびエッチングした面について、例えば光学顕微鏡を用いて行う。上記(1)式を満たす金属組織は、後述するように熱間圧延条件、冷間圧延条件、溶体化処理条件等をコントロールすることによって実現できる。特に溶体化処理前の高変形歪の付与と、溶体化処理時の急速加熱が双晶帯密度の増大に効果的である。
〔平均結晶粒径〕
双晶帯密度が上記のように調整されていることに加え、双晶帯を結晶粒界とみなさないで測定される切断法による平均結晶粒径D(一般的に平均結晶粒径と呼ばれているもの)は10〜60μmであることが望ましく、15〜40μmであることがより好ましい。平均結晶粒径Dが小さすぎると応力緩和特性が悪くなりやすく、大きすぎると曲げ加工性が低下しやすい。
〔集合組織〕
Cu−Ni−Si系銅合金の「強度」と「曲げ加工性」を高レベルで両立させるためには、集合組織の制御が有効である。発明者らの詳細な検討の結果、後述する溶体化処理で得られるような{420}を主方位成分とする集合組織が強く発達しているほど、曲げ加工性が良くなる。そのメカニズムは現時点で必ずしも明確ではないが、以下のようなことが考えられる。すなわち、板材の曲げ加工において、割れが発生する場合、曲げ加工部の外側の表層部が特に硬化し、表面割れはほとんど例外なく曲げ加工部の外側の板表面から約45°の方向に沿って発生する。もし、fccタイプである銅合金のすべり面{111}が板表面に対し約45°(あるいは135°)方向に配向していれば、上記の割れは大幅に軽減されると考えられる。{420}面を板面に平行に持つ結晶粒では、4つの{111}面のうち2つが板面から約39°の角度をもって存在している。つまり、その結晶粒は板面に対し45°に近い角度で存在する複数のすべり面を有していることになる。このような理由で、{420}を主方位成分とする集合組織を有する場合に、曲げ加工において板面から45°方向のすべりが生じやすくなり、割れ発生が顕著に抑止できるものと考えられる。
ただし、高強度化を図るためには、仕上げ冷間圧延が不可欠である。溶体化処理後に{420}を主方位成分とする集合組織を有していても、冷間圧延率の増大に伴い{220}を主方位成分とする圧延集合組織が発達していく。発明者らは詳細な検討の結果、銅合金板材を最終的に両者の中間的な組織状態に仕上げたとき、「強度」と「曲げ加工性」を高いレベルで両立させることが可能になることを見出した。
具体的には、下記(2)式を満たす結晶配向に調整することが望ましく、(2)’式を満たすことが一層好ましい。
0.1≦I{420}/I{220}≦0.5 ……(2)
0.2≦I{420}/I{220}≦0.4 ……(2)’
ここで、I{420}およびI{220}はそれぞれ当該板材の板面における{420}結晶面および{220}結晶面のX線回折強度である。
I{420}/I{220}が大きすぎる場合は{420}を主方位成分とする再結晶集合組織の持つ性質が相対的に優勢であり、加工硬化不足により十分な強度が得られにくい。I{420}/I{220}が小さすぎる場合は{220}を主方位成分とする圧延晶集合組織の持つ性質が相対的に優勢であり、従来材のように強度が高く、曲げ加工性が悪くなる。
《特性》
電気・電子部品の更なる小型化、薄肉化に対応するには、素材である銅合金板材の引張強さは650MPa以上であることが好ましく、700MPa以上であることが一層好ましい。圧延方向をLD、圧延方向と板厚方向に対し垂直方向をTDと呼ぶとき、曲げ加工性はLD、TDいずれにおいても90°W曲げ試験における最小曲げ半径Rと板厚tの比R/tが1.0以下であることが好ましく、0.5以下であることが一層好ましい。応力緩和特性は、自動車用コネクターなどの用途ではTDの値が特に重要であるため、長手方向がTDである試験片を用いた応力緩和率で応力緩和特性を評価することが望ましい。板材表面の最大負荷応力が0.2%耐力の80%である状態にして、150℃で1000時間保持した場合に、応力緩和率が5%以下であることが好ましく、3%以下であることが一層好ましい。
《合金組成》
本発明ではCu−Ni−Si系銅合金を採用する。Cu−Ni−Siの3元系基本成分にSn、Zn、その他の合金元素を添加した銅合金も、本明細書では包括的にCu−Ni−Si系銅合金と称している。
NiおよびSiは、析出物を形成し、強度上昇および導電性・熱伝導度向上に寄与する。Ni含有量が0.6質量%未満またはSi含有量が0.2質量%未満では、上記効果を有効に引き出すことが難しい。一方、Ni含有量が過剰である場合やSi含有量が過剰である場合は粗大な析出物が生成しやすく、曲げ加工性と応力緩和特性がともに低下しやすい。また、溶体化処理において{420}を主方位成分とする再結晶集合組織を発達させることが難しくなり、最終的に曲げ加工性に優れた板材を得ることが困難になる。このためNi含有量は4.2質量%以下とする必要であり、3.5質量%以下とすることがより好ましく、3.0質量%以下とすることが一層好ましい。Si含有量は1.0質量%以下とする必要があり、0.7質量%以下とすることがより好ましい。
Ni含有量は0.6〜4.2質量%に規定されるが、0.7〜4.2質量%の範囲とすることがより好ましく、1.0〜3.5質量%の範囲が一層好ましい。1.2〜2.5質量%の範囲に管理しても構わない。
Si含有量は0.2〜1.0質量%に規定されるが、0.3〜0.6質量%の範囲とすることがより好ましい。
NiとSiによって形成されるNi−Si系析出物はNi2Siを主体とする金属間化合物であると考えられる。ただし、合金中のNiおよびSiは時効処理によってすべてが析出物になるとは限らず、ある程度はCuマトリックス中に固溶した状態で存在する。固溶状態のNiおよびSiは、若干の強度上昇をもたらすものの析出状態と比べてその効果は小さく、また導電率を低下させる要因になる。このためNiとSiの含有量の比はできるだけ析出物Ni2Siの組成比に近付けることが望ましい。したがって本発明では質量%で表したNi/Si比を3.5〜6.0の範囲に調整することが望ましく、3.5〜5.0とすることが一層好ましい。
Snは、Cuマトリックスの積層欠陥エネルギーを低下させ、双晶の形成を促進させる作用を有する。また、固溶強化作用を有する。これらの作用を十分に発揮させるには、0.1質量%以上のSn含有量を確保する必要がある。ただし、多量のSn含有は導電性の低下を招く。また、熱間加工時に表面割れ、エッジ割れが発生しやすくなり、歩留低下の要因となる。種々検討の結果、Sn含有量は1.3質量%以下の範囲に制限される。
Sn含有量は0.1〜1.3質量%に規定されるが、0.1〜1.2質量%の範囲とすることがより好ましく、0.2〜0.7質量%の範囲が一層好ましい。
Znは、Cuマトリックスの積層欠陥エネルギーを低下させ、双晶の形成を促進させる作用を有する。また、はんだ付け性および強度を向上させる他、鋳造性を改善させる効果もある。さらに、Znの添加には安価な黄銅スクラップが使用できるメリットがある。ただし、2.0質量%を超えるZn含有は導電性、耐応力緩和特性、耐応力腐食割れ性の低下要因となりやすい。このため、Znを添加する場合は2.0質量%以下の範囲で行う。上記の効果を十分に得るには0.1質量%以上のZn含有量を確保することが望ましく、特に0.3〜1.0質量%の範囲に調整することが一層好ましい。
その他の元素として、必要に応じてCo、Cr、Mg、B、P、Fe、Zr、Ti、Mn等を含有させることができる。例えば、Co、Cr、Mg、B、P、Fe、Zr、Ti、Mnは合金強度をさらに高め、かつ応力緩和を小さくする作用を有する。Co、Cr、Zr、Ti、Mnは不可避的不純物として存在するS、Pbなどと高融点化合物を形成しやすく、また、B、P、Zr、Tiは鋳造組織の微細化効果を有し、熱間加工性の改善に寄与しうる。
Co、Cr、Mg、B、P、Fe、Zr、Ti、Mnの1種または2種以上を含有させる場合は、各元素の作用を十分に得るためにこれらの総量が0.01質量%以上となるように含有させることが望ましい。ただし、多量に含有させると、熱間または冷間加工性に悪い影響を与え、かつコスト的にも不利となる。したがって、これらの元素の総量は3質量%以下の範囲とすることが望ましく、2質量%以下の範囲がより好ましく、1質量%以下の範囲がより一層好ましく、0.5質量%以下の範囲がさらに一層好ましい。
《製造法》
以上のような本発明の銅合金板材は、例えば以下のような一般な製造工程により作ることができる。
「溶解・鋳造→熱間圧延→冷間圧延→溶体化処理→中間冷間圧延→時効処理→仕上げ冷間圧延→低温焼鈍」
ただし、後述のようにいくつかの工程での製造条件を厳しくコントロールすることが重要である。なお、上記工程中には記載していないが、熱間圧延後には必要に応じて面削が行われ、熱処理後には必要に応じて酸洗、研磨、あるいはさらに脱脂が行われる。以下、各工程について説明する。
〔溶解・鋳造〕
一般的な銅合金の溶製方法に従うことができる。連続鋳造、半連続鋳造等により鋳片を製造すればよい。
〔熱間圧延〕
鋳片を熱間圧延する際、圧延歪が生じやすい700℃以下の温度域での圧延率を40%以上確保する。これにより、後工程の溶体化処理において双晶帯密度の増大を図ることができ、また{420}を主方位成分とする再結晶集合組織が形成されやすくなる。また、再結晶が発生しやすい700℃より高温域での圧延率は60%以上とすることが望ましい。これにより、鋳造組織を破壊し成分と組織の均一化を図ることができる。この温度域での圧延率が不足すると完全再結晶が発生しない可能性がある。例えば、熱間圧延に供する鋳片の厚さが100mmのとき、700℃より高温域で20mmまで圧延したとすると、700℃より高温域での圧延率は前記(4)式より80%となる。その後700℃以下の温度域で20mmから10mmまで圧延したとすると、700℃以下の温度域での圧延率は前記(4)式より50%となる。このように700℃より高温域で60%以上、700℃以下の温度域で40%以上の圧延率をそれぞれ確保すると、鋳造組織の破壊と、圧延歪の導入が適切に達成される。トータルの圧延率は概ね80〜95%とすればよい。熱間圧延終了後は水冷等により急冷することが望ましい。熱間加工後は必要に応じて面削や酸洗を行うことができる。
〔冷間圧延〕
溶体化処理前に行う冷間圧延では圧延率を85%以上とすることが重要であり、90%以上とすることがより好ましい。このような高い圧延率で加工された材料に対し、次工程で溶体化処理を施すことにより、双晶帯密度の増大と、{420}を主方位成分とする再結晶集合組織の形成が可能になる。特に再結晶集合組織は再結晶前の冷間圧延率に大きく依存する。具体的には、{420}を主方位成分とする結晶配向は、冷間圧延率が60%以下ではほとんど生成せず、約60〜80%の領域では冷間圧延率の増加に伴って漸増し、冷間圧延率が約80%を超えると急激な増加に転じる。上記方位関係が十分に優勢な結晶配向を得るには85%以上の冷間圧延率を確保する必要があり、更に90%以上は望ましい。なお、冷間圧延率の上限はミルパワー等により必然的に制約を受けるので、特に規定する必要はないが、概ね98%以下で良好な結果を得やすい。
熱間圧延後、溶体化処理前に、中間焼鈍を挟んで複数回の冷間圧延を実施する場合は、溶体化処理前に行われる最後の中間焼鈍の後に実施される冷間圧延での冷間圧延率を上記のように調整する。
〔溶体化処理〕
ここでの溶体化処理は、「溶質元素のマトリックス中への再固溶」、「再結晶化」の他に、特に本発明では「双晶帯密度の増大」および「{420}を主方位成分とする再結晶集合組織の形成」をも目的とする重要な工程である。この溶体化処理は、700〜850℃の炉温で行うことが望ましい。温度が低すぎると再結晶が不完全で溶質元素の固溶も不十分となる。温度が高すぎると結晶粒が粗大化してしまう。これらいずれの場合も、最終的に曲げ加工性の優れた高強度材を得ることが困難である。また、双晶帯密度を増大させるためには、700℃までの昇温を急速に行うことが極めて有効であることがわかった。昇温速度が遅すぎると、昇温途中で回復や析出が生じて再結晶の進行速度が遅くなり、双晶の生成に不利となる。具体的には100℃から700℃までの昇温時間を20sec以下とすることが好ましく、15sec以下とすることが一層好ましい。
また、この溶体化処理は、再結晶粒径(双晶帯およびその他の双晶境界を結晶粒界とみなさない)が15〜60μmとなるように温度・時間を調整して行うことが望ましく、15〜40μmとなるように調整することが一層好ましい。再結晶粒径が微細になりすぎると双晶帯密度が低くなりやすいとともに、{420}を主方位成分とする再結晶集合組織が弱くなる。具体的には、700〜850℃の温度で10sec〜10min保持する加熱条件が採用できる。
〔中間冷間圧延〕
続いて0〜50%の圧延率で冷間圧延を行う。この段階での冷間圧延は次工程の時効処理中の析出を促進する効果があり、これにより必要な特性(導電率、硬さ)を引き出すための時効時間を短くすることができる。この冷間圧延によって{220}を主方位成分とする集合組織が発達していくが、50%以下の冷間圧延率の範囲では、まだ十分に{420}面を板面に平行にもつ結晶粒も残存する。特に、この冷間圧延での圧延率は、時効処理後に行う後述の仕上げ冷間圧での圧延率とうまく組合せることにより、最終的な高強度化と曲げ加工性改善に寄与する。この段階の冷間圧延は圧延率50%以下で行う必要があり、0〜35%とすることがより好ましい。圧延率が高過ぎると続く時効処理で析出が不均一に発生して過時効になりやすく、また前記(2)式を満たすような理想的な結晶配向が得られにくくなる。圧延率がゼロである場合は、溶体化処理後に中間の冷間圧延を行わず、直接時効処理に供することを意味する。本発明の銅合金板材は、生産性を向上するために、この段階での冷間圧延工程を省略してもよい。
〔時効処理〕
続いて時効処理を施す。時効処理では、当該合金の導電性と強度の向上に有効な条件の中で、あまり温度を上げすぎないようにする。時効処理温度が高くなりすぎると溶体化処理によって発達させた{420}を優先方位とする結晶配向が弱められ、結果的に十分な曲げ加工性改善効果が得られない場合がある。具体的には材温が400〜500℃となる温度で行うことが望ましく、420〜480℃の範囲が一層好ましい。時効処理時間は概ね1〜10h程度で良好な結果が得られる。
〔仕上げ冷間圧延〕
この仕上げ冷間圧延では、強度レベルの向上を図るとともに、{220}を主方位成分とする圧延集合組織を発達させていく。仕上げ冷間圧延の圧延率が低すぎると強度上昇効果が十分に得られない。逆に圧延率が高すぎると{220}方位の圧延集合組織が相対的に優勢となりすぎ、強度と曲げ加工性が高レベルで両立された中間的な結晶配向が実現できない。
仕上げ圧延率は10%以上とすることが望まれる。ただし、仕上げ冷間圧延率の上限については、時効処理前に行った中間冷間圧延の寄与分を考慮しなければならない。発明者らの詳細な研究の結果、その上限は上記の中間冷間圧延率との合計で溶体化処理から最終工程まで板厚の減少率が65%を超えないように設定することが好ましい。すなわち、下記(3)式を満たすように仕上げ冷間圧延を行う。
10≦ε2≦(65−ε1)/(100−ε1)×100 ……(3)
ここで、ε1は中間冷間圧延率(%)、ε2は仕上げ冷間圧延率(%)である。
最終的な板厚としては概ね0.05〜1.0mmが適用され、0.08〜0.5mmとすることが一層好ましい。
〔低温焼鈍〕
仕上げ冷間圧延後には、板条材の残留応力の低減による曲げ加工性の向上、空孔やすべり面上の転位の低減による耐応力緩和特性向上を目的として、低温焼鈍を施すことができる。加熱温度は材温が150〜550℃となるように設定することが望ましい。これにより強度低下をほとんど伴わずに曲げ加工性と耐応力緩和特性を向上させることができる。また、導電率を上昇させる効果もある。この加熱温度が高すぎると短時間で軟化し、バッチ式でも連続式でも特性のバラツキが生じやすくなる。逆に加熱温度が低すぎると上記特性の改善効果が十分に得られない。上記温度での保持時間は5sec以上確保することが望ましく、通常1h以内の範囲で良好な結果が得られる。
表1に示す銅合金を溶製し、縦型連続鋳造機を用いて鋳造した。得られた鋳片を950℃に加熱し、約950℃から熱間圧延を開始し、700℃以下の温度域でも圧延を行うようにパススケジュールを設定した。鋳片からのトータルの熱間圧延率は約90%である。最終パス終了後に急冷(水冷)した。熱間圧延後、表層の酸化層を機械研磨により除去(面削)した。次いで、種々の圧延率で冷間圧延を行った後、溶体化処理に供した。試料表面に取り付けた熱電対により溶体化処理時の温度変化をモニターし、昇温過程における100℃から700℃までの昇温時間を求めた。一部の比較例を除いて、溶体化処理後の平均結晶粒径(双晶帯およびその他の双晶境界を結晶粒界とみなさない)が15μmを超え〜40μmとなるように保持温度を合金組成に応じて700〜850℃の範囲内で調整した。保持時間は10sec〜10mimの範囲とした。続いて、上記溶体化処理後の板材に対して、一部のものを除き中間冷間圧延を施し、次いで時効処理を施した。時効処理温度は材温450℃とし、時効時間は合金組成に応じて450℃の時効で硬さがピークになる時間に調整した。このような合金組成に応じて最適な溶体化処理条件や時効処理時間は予備実験により把握してある。次いで、種々の圧延率で仕上げ冷間圧延を行い、その後、400℃の炉中に5min装入する低温焼鈍を施すことによって供試材を得た。なお、必要に応じて途中で面削を行い、供試材の板厚は0.2mmに揃えた。
Figure 2008106356
各供試材から試料を採取し、結晶粒組織、X線回折強度、導電率、引張強さ、応力緩和特性、曲げ加工性を以下の方法で調べた。
〔結晶粒組織〕
板面(圧延面)を研磨したのちエッチングし、その面を光学顕微鏡で観察し、平均結晶粒径をJIS H0501の切断法で測定した。その際、双晶帯を粒界とみなした場合の前記平均結晶粒径DTと、双晶帯を結晶粒界とみなさない場合の前記平均結晶粒径Dを測定し、(1)式に基づいて双晶帯密度NGを求めた。なお、平均結晶粒径Dは一部の供試材を除き15〜30μmの範囲であった。
〔X線回折強度〕
供試材の表面(圧延面)を#1500耐水ペーパーで研磨仕上げとした試料を準備し、X線回折装置(XRD)を用いて、Mo−Kα線、管電圧20kV、管電流2mAの条件で、前記研磨仕上げ面について{220}面および{420}面の反射回折積分強度を測定し、前記(2)式中に示されるX線回折強度比を求めた。
〔導電率〕
JIS H0505に従って各供試材の導電率を測定した。
〔引張強さ〕
各供試材からLDの引張試験片(JIS 5号)を採取し、n=3でJIS Z2241に準拠した引張試験行い、n=3の平均値によって引張強さと破断伸びを求めた。
〔応力緩和特性〕
各供試材から長手方向がTDの曲げ試験片(幅10mm)を採取し、試験片の中央部の応力が0.2%耐力の80%の大きさとなるようにアーチ曲げした状態で固定し、大気中150℃の温度で1000時間保持した後の曲げ癖から次式を用いて応力緩和率を算出した。
応力緩和率(%)=(L1−L2)/(L1−L0)×100
ただし、L0:治具の長さ(mm)
1:試験開始時の試料長さ(mm)
2:試験後の試料端間の水平距離(mm)
〔曲げ加工性〕
各供試材から長手方向がLDおよびTDの曲げ試験片(幅10mm)を採取し、JIS H3110に準拠した90°W曲げ試験を行った。試験後の試験片について曲げ加工部の表面および断面を光学顕微鏡にて100倍の倍率で観察することにより、割れが発生しない最小曲げ半径Rを求め、これを供試材の板厚tで除することによりLD、TDそれぞれのR/t値を求めた。各供試材のLD、TDともn=3で実施し、n=3のうち最も悪い結果となった試験片の成績を採用してR/t値を表示した。
主な製造条件と、これらの結果を表2、表3に示す。なお、表2、表3中、曲げ加工性の欄において、LDおよびTDは曲げ試験片の長手方向を意味する。
Figure 2008106356
Figure 2008106356
表2、表3から判るように、本発明例のものはいずれも(1)式を満たす双晶帯密度NGを有し、X線回折強度比が(2)式を満たす結晶配向を有し、引張強さが700MPa以上という高強度を呈するとともに、R/t値がLD、TDとも0.5以下という優れた曲げ加工性を有する。さらに、TD方向の応力緩和率が5%以下という優れた結果が得られた。
これに対し、比較例No.21〜23はNiまたはSiの含有量が規定範囲外であることにより、良好な特性が得られなかった例である。No.21はNiとSiの含有量が低すぎたので析出物の生成が少なく、強度レベルが低かった。No.22はNiとSiの含有量が高すぎたので製造条件が適正であっても双晶帯密度が小さく、また{420}を主方位成分とする結晶配向が弱くなり、結果的に引張強さは高いものの曲げ加工性に劣った。No.23はNo.22と同一組成のものについて、曲げ加工性の向上を図るべく溶体化時の保持温度を調整して平均結晶粒径Dを6μm程度の微細なものにした例である。この場合、No.22に比べ曲げ加工性は改善されたものの、結晶粒が微細になったために応力緩和特性は悪化してしまった。
比較例No.24、25、29、30は、700℃以下の温度域での熱間圧延率が低すぎ、また溶体化処理前の冷間圧延率が低すぎたことにより、双晶帯密度が小さくなり、かつ{420}を主方位成分とする再結晶集合組織が十分に発達しなかった例である。この場合、仕上げ冷間圧延率を調整しても、引張強さ、曲げ加工性の同時改善は達成できない。
比較例No.26〜28、32は溶体化処理条件が規定範囲外であったことにより、良好な特性が得られなかった例である。No.26は溶体化保持温度が高すぎたので結晶粒が粗大化し、良好な曲げ加工性が得られなかった。No.27は逆に溶体化保持温度が低すぎたので再結晶自体が十分進行せずに混粒組織となり、引張強さ、曲げ加工性、応力緩和特性全てが悪い結果となった。No.28、32は溶体化処理時の昇温速度が遅すぎたために、回復によって一部の変形歪が解放され、結局、溶体化処理前の圧延率が小さかった比較例No.24と同じような結果になった。
No.31は中間冷間圧延率が大きすぎたため、圧延集合組織が発達して{420}を主方位とする結晶配向が弱くなり、目標とする曲げ加工性が得られなかった。No.33はSn含有量が多すぎたために、熱間圧延時に割れが発生し、製造不能となった。No.34はZn含有量が多すぎたために、耐応力緩和特性に劣った。

Claims (8)

  1. 質量%で、Ni:0.6〜4.2%、Si:0.2〜1.0%、Sn:0.1〜1.3%、残部実質的にCuの組成を有し、下記(1)式を満たす双晶帯密度NGを有し、下記(A)式を満たす平均結晶粒径Dを有する銅合金板材。
    G=(D−DT)/DT≧0.3 ……(1)
    10μm≦D≦60μm ……(A)
    ここで、DTは双晶帯を1つの結晶粒界とみなして測定されるJIS H0501の切断法による平均結晶粒径、Dは双晶帯を結晶粒界とみなさないで測定される同平均結晶粒径である。
  2. さらにZn:2.0%以下を含む組成を有する請求項1に記載の銅合金板材。
  3. さらにCo、Cr、Mg、B、P、Fe、Zr、Ti、Mnの1種以上を合計3%以下の範囲で含む組成を有する請求項1または2に記載の銅合金板材。
  4. 下記(2)式を満たす結晶配向を有する請求項1〜3のいずれかに記載の銅合金板材。
    0.1≦I{420}/I{220}≦0.5 ……(2)
    ここで、I{420}およびI{220}はそれぞれ当該板材の板面における{420}結晶面および{220}結晶面のX線回折強度である。
  5. 組成調整された銅合金材料に対し、700℃以下の温度域での圧延率を40%以上とする熱間圧延、圧延率85%以上の冷間圧延、700〜850℃での溶体化処理、圧延率0〜50%の中間冷間圧延、400〜500℃の時効処理、圧延率0〜65%の仕上げ冷間圧延を順次施す工程を有する請求項1〜4のいずれかに記載の銅合金板材の製造法。
  6. 前記溶体化処理において100℃から700℃までの昇温時間を20sec以下とする請求項5に記載の銅合金板材の製造法。
  7. 前記仕上げ冷間圧延を、下記(3)式を満たす圧延率で行う請求項5または6のいずれかに記載の銅合金板材の製造法。
    10≦ε2≦(65−ε1)/(100−ε1)×100 ……(3)
    ここで、ε1は中間冷間圧延率(%)、ε2は仕上げ冷間圧延率(%)である。
  8. 仕上げ冷間圧延後に、150〜550℃の加熱処理を施す工程を有する請求項5〜7のいずれかに記載の銅合金板材の製造法。
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