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JP2008188664A - 接合方法 - Google Patents

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JP2008188664A
JP2008188664A JP2007028654A JP2007028654A JP2008188664A JP 2008188664 A JP2008188664 A JP 2008188664A JP 2007028654 A JP2007028654 A JP 2007028654A JP 2007028654 A JP2007028654 A JP 2007028654A JP 2008188664 A JP2008188664 A JP 2008188664A
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Isato Sato
勇人 佐藤
Hisashi Hori
久司 堀
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Nippon Light Metal Co Ltd
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Abstract


【課題】継手部材を利用して金属部材同士を接合する方法であって、金属部材と継手部材とを本接合する前に行われる予備的な摩擦攪拌接合を効率よく行うことが可能な接合方法を提供することを課題とする。
【解決手段】一方のタブ材1と継手部材20との突合部J1、一方の金属部材10の本体部1Aと継手部材20との突合部J2、他方のタブ材2と継手部材20との突合部J3および他方の金属部材10の本体部1Aと継手部材20との突合部J4に対して摩擦攪拌を行う継手仮接合工程を行う際に、摩擦攪拌の開始位置Sおよび終了位置Eを一方のタブ材1に設け、開始位置Sに挿入した仮接合用回転ツールAを途中で離脱させることなく終了位置Eまで相対移動させる。
【選択図】図7

Description

本発明は、摩擦攪拌を利用した金属部材の接合方法に関する。
金属部材同士を接合する方法として、摩擦攪拌接合(FSW=Friction Stir Welding)が知られている。摩擦攪拌接合は、回転させた回転ツールを金属部材同士の突合部に沿って移動させ、回転ツールと金属部材との摩擦熱により突合部の金属を塑性流動させることで、金属部材同士を固相接合させるものである。なお、回転ツールは、円柱状を呈するショルダ部の下端面に攪拌ピン(プローブ)を突設してなるものが一般的である。
摩擦攪拌を利用して肉厚の大きい金属部材同士を接合する場合には、肉厚に見合った大型の回転ツールを利用する必要があるが、特許文献1乃至特許文献3に開示されているように、金属部材の本体部の縁部に段部を形成しておけば、小型の回転ツールを使用しても、肉厚の大きな金属部材同士を接合することが可能となる。なお、特許文献1乃至特許文献3においては、段部同士を摩擦攪拌接合するだけでなく、段部同士を突き合せることで形成された凹部に継手部材を挿入し、この継手部材と金属部材の本体部とを摩擦攪拌接合することで、金属部材同士を接合している。
ところで、特許文献1乃至特許文献3においては、継手部材と金属部材とを接合する際にタブ材を利用していないが、タブ材を利用する場合には、タブ材を摩擦攪拌接合により金属部材や継手部材に固定しておくことが考えられる(特許文献4参照。)。また、特許文献1乃至特許文献3においては、継手部材と金属部材の仮接合(仮付け)を行っていないが、仮接合を行う場合には、摩擦攪拌接合を利用することが考えられる(特許文献5参照。)。
特開平11−342481号公報 特開平2004−358535号公報 特開平2005−131666号公報 特開2005−66669号公報 特開2002−1551号公報
金属部材と継手部材とを仮接合するために行われる摩擦攪拌接合やタブ材を継手部材等に固定しておくための摩擦攪拌接合などは、本接合の前に行われる予備的な作業にすぎないことから、効率化・迅速化が望まれるところであるが、特許文献1乃至特許文献3の技術に特許文献4や特許文献5の技術を適用しただけでは、予備的な摩擦攪拌接合の効率化・迅速化を図ることができない。
このような観点から、本発明は、継手部材を利用して金属部材同士を接合する方法であって、金属部材と継手部材とを本接合する前に行われる予備的な摩擦攪拌接合を効率よく行うことが可能な接合方法を提供することを課題とする。
このような課題を解決する本発明に係る接合方法は、本体部の縁部に前記本体部よりも肉厚の小さい段部を備える二つの金属部材の前記段部同士を突き合せ、前記本体部間に凹部を形成する突合工程と、前記凹部に継手部材を挿入し、前記継手部材を前記両本体部に突き合せるととともに、前記継手部材を挟むように一対のタブ材を配置し、前記各タブ材を前記継手部材に突き合せる継手部材配置工程と、仮接合用回転ツールを用いて、一方の前記タブ材と前記継手部材との突合部、一方の前記金属部材の前記本体部と前記継手部材との突合部、他方の前記タブ材と前記継手部材との突合部および他方の前記金属部材の前記本体部と前記継手部材との突合部に対して摩擦攪拌を行う継手仮接合工程と、前記仮接合用回転ツールよりも大型の本接合用回転ツールを用いて、一方の前記金属部材の前記本体部と前記継手部材との突合部および他方の前記金属部材の前記本体部と前記継手部材との突合部に対して摩擦攪拌を行う継手本接合工程と、を含む接合方法であって、前記継手仮接合工程では、摩擦攪拌の開始位置および終了位置を一方の前記タブ材に設け、前記開始位置に挿入した前記仮接合用回転ツールを途中で離脱させることなく前記終了位置まで相対移動させることを特徴とする。
要するに本発明は、各タブ材と継手部材との突合部および継手部材と各本体部との突合部に対して連続して摩擦攪拌を行い、開始位置および終了位置以外で仮接合用回転ツールを抜き差ししないようにしたところに特徴がある。このようにすると、仮接合用回転ツールの挿入作業および離脱作業が、それぞれ一度だけになるので、予備的な摩擦攪拌接合の効率化・迅速化を図ることが可能となる。
なお、前記継手部材配置工程において、一方の前記金属部材の前記本体部および他方の前記金属部材の前記本体部にも前記各タブ材を突き合せた場合には、前記継手仮接合工程において、前記各タブ材と前記各金属部材の前記本体部との突合部に対しても摩擦攪拌を行うことが望ましい。
ところで、摩擦攪拌に用いる回転ツールを右回転させた場合には、回転ツールの進行方向の左側に微細な接合欠陥が発生する虞があり、左回転させた場合には、回転ツールの進行方向の右側に微細な接合欠陥が発生する虞があることから、前記仮接合用回転ツールを右回転させた場合には、前記各タブ材と前記継手部材との突合部に対して摩擦攪拌を行う際に、前記仮接合用回転ツールの進行方向の左側に前記タブ材を位置させるとよく、前記仮接合用回転ツールを左回転させた場合には、前記各タブ材と前記継手部材との突合部に対して摩擦攪拌を行う際に、前記仮接合用回転ツールの進行方向の右側に前記タブ材を位置させるとよい。このようにすると、継手部材側に接合欠陥が発生し難くなるので、高品質の接合体を得ることが可能となる。
本発明に係る接合方法によれば、本接合の前に行なわれる予備的な摩擦攪拌接合の効率化・迅速化を図ることが可能となる。
[ 第一の実施形態 ]
第一の実施形態に係る接合方法は、図1に示す金属部材10,10を直線状に繋ぎ合せる接合方法であって、(1)突合工程、(2)第一の段部接合工程、(3)継手部材配置工程、(4)継手仮接合工程、(5)継手本接合工程、(6)一体化工程、(7)第一の補修工程、(8)第二の補修工程、(9)第二の段部接合工程を含むものである。なお、本実施形態では、金属部材10の一面側から(2)〜(8)の各工程を実行する場合を例示する。
まず、金属部材10の構成を詳細に説明する。金属部材10は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金など摩擦攪拌可能な金属材料からなる。本実施形態では、一方の金属部材10および他方の金属部材10を、同一組成の金属材料で形成している。
図1の(a)に示すように、金属部材10は、本体部1Aと、本体部1Aの縁部に形成された段部1Bとを備えて構成されている。なお、以下の説明においては、本体部1Aの側面11,14のうち、段部1Bの表面16から立ち上がる側面11を「立上側面11」と称し、その他の側面14を露出側面14と称することとする。また、段部1Bの側面15,18(図1の(d)参照)のうち、他の段部1Bに突き合わされる側面15を「突合側面15」と称し、その他の側面18を「露出側面18」と称することとする。
本体部1Aの立上側面11は、本実施形態では、段部1Bの表面16から垂直に立ち上がっており(図1の(c)参照)、かつ、段部1Bの突合側面15と平行である(図1の(b)参照)。
段部1Bは、本体部1Aよりも肉厚の小さい部位であり、本体部1Aの表面12を面削若しくは切除することにより形成される。図1の(c)に示すように、段部1Bの表面16は、本体部1Aの表面12から一段下がったところに位置しているが、段部1Bの裏面17は、本体部1Aの裏面13と面一になっている。また、段部1Bの突合側面15は、段部1Bの表面16に対して垂直になっている。段部1Bの奥行き寸法(本体部1Aの立上側面11から段部1Bの突合側面15までの距離)は、後記する本接合用回転ツールB(図2の(b)参照)のショルダ部B1の半径(=Y/2)よりも大きくなっている。段部1Bの肉厚tの大きさに特に制限はないが、本実施形態では、本体部1Aの肉厚tの2/3に設定されている。
(1)突合工程 :
突合工程は、金属部材10,10の段部1B,1B同士を突き合せ、本体部1A,1A間に凹部100を形成する工程である。突合工程では、図1の(c)に示すように、一方の金属部材10の段部1Bの突合側面15に他方の金属部材10の段部1Bの突合側面15を密着させるとともに、一方の金属部材10の段部1Bの表面(上面)16と他方の金属部材10の段部1Bの表面(上面)16を面一にし、さらに、一方の金属部材10の段部1Bの裏面17と他方の金属部材10の裏面17を面一にする。なお、段部1B,1B同士を突き合せると、一方の本体部1Aの立上側面11と他方の本体部1Aの立上側面11とが、後記する本接合用回転ツールB(図2の(b)参照)のショルダ部B1の外径Yよりも大きな間隔をあけて対向することになる。
(2)第一の段部接合工程 :
第一の段部接合工程は、段部1B,1Bの突合部J20を表面16側から接合する工程である。本実施形態に係る第一の段部接合工程には、図1の(b)に示す段部1B,1Bとタブ材30との突合部J10、段部1B,1Bの突合部J20および段部1B,1Bとタブ材40との突合部J30を仮接合する段部仮接合工程と、仮接合された状態の突合部J20を本格的に接合する段部本接合工程と、が含まれている。
タブ材30,40は、突合部J20を挟むように配置されるものであり、図1の(a)および(b)に示すように、それぞれ、段部1B,1Bの露出側面18,18を覆い隠すことができる寸法・形状を備えている。本実施形態に係るタブ材30,40は、段部1B,1Bの露出側面18,18だけでなく、本体部1A,1Aの露出側面14,14にも突き合わされる。タブ材30,40は、それぞれ、段部1Bの厚さ寸法と同一の厚さ寸法を備えていて(図1の(d)参照)、段部1Bの表面16および裏面17と面一になるように配置され、かかる状態で溶接により本体部1A,1Aの露出側面14,14に接合される。タブ材30,40の材質に特に制限はないが、本実施形態では、金属部材10と同一組成の金属材料で形成している。
段部仮接合工程および段部本接合工程における接合法に特に制限はないが、本実施形態では、摩擦攪拌接合を実施する場合を例示する。
まず、図2を参照して、段部仮接合工程に用いる回転ツールA(以下、「仮接合用回転ツールA」という。)および段部本接合工程に用いる回転ツールB(以下、「本接合用回転ツールB」という。)を詳細に説明する。
図2の(a)に示す仮接合用回転ツールAは、工具鋼など金属部材10よりも硬質の金属材料からなり、円柱状を呈するショルダ部A1と、このショルダ部A1の下端面A11に突設された攪拌ピン(プローブ)A2とを備えて構成されている。仮接合用回転ツールAの寸法・形状は、金属部材10の材質や厚さ等に応じて設定すればよいが、少なくとも、本接合用回転ツールB(図2の(b)参照)よりも小型にする。このようにすると、本接合用回転ツールBを用いる場合よりも小さな負荷で摩擦攪拌接合を行うことが可能となるので、摩擦攪拌装置に掛かる負荷を低減することが可能となり、さらには、仮接合用回転ツールAの移動速度(送り速度)を本接合用回転ツールBの移動速度よりも高速にすることも可能になるので、摩擦攪拌接合に要する作業時間やコストを低減することが可能となる。
ショルダ部A1の下端面A11は、塑性流動化した金属を押えて周囲への飛散を防止する役割を担う部位であり、本実施形態では、凹面状に成形されている。ショルダ部A1の外径Xの大きさに特に制限はないが、本実施形態では、本接合用回転ツールBのショルダ部B1の外径Yよりも小さくなっている。
攪拌ピンA2は、ショルダ部A1の下端面A11の中央から垂下しており、本実施形態では、先細りの円錐台状に成形されている。また、攪拌ピンA2の周面には、螺旋状に刻設された攪拌翼が形成されている。攪拌ピンA2の外径の大きさに特に制限はないが、本実施形態では、最大外径(上端径)Xが本接合用回転ツールBの攪拌ピンB2の最大外径(上端径)Yよりも小さく、かつ、最小外径(下端径)Xが攪拌ピンB2の最小外径(下端径)Yよりも小さくなっている。また、攪拌ピンA2の長さLも、本接合用回転ツールBの攪拌ピンB2の長さLよりも小さくなっている。
図2の(b)に示す本接合用回転ツールBは、工具鋼など金属部材10よりも硬質の金属材料からなり、円柱状を呈するショルダ部B1と、このショルダ部B1の下端面B11に突設された攪拌ピン(プローブ)B2とを備えて構成されている。
ショルダ部B1の下端面B11は、仮接合用回転ツールAと同様に、凹面状に成形されている。攪拌ピンB2は、ショルダ部B1の下端面B11の中央から垂下しており、本実施形態では、先細りの円錐台状に成形されている。また、攪拌ピンB2の周面には、螺旋状に刻設された攪拌翼が形成されている。攪拌ピンB2の長さLは、段部1Bの肉厚t(図1の(c)参照)の1/2以上3/4以下となるように設定することが望ましく、より好適には、1.01≦2L/t≦1.10という関係を満たすように設定することが望ましい。
段部仮接合工程では、図3に示すように、一の仮接合用回転ツールAを一筆書きの移動軌跡(ビード)を形成するように移動させて、突合部J10,J20,J30に対して連続して摩擦攪拌を行う。すなわち、摩擦攪拌の開始位置Sに挿入した仮接合用回転ツールAの攪拌ピンA2(図2の(a)参照)を途中で離脱させることなく終了位置Eまで移動させる。
段部本接合工程では、図2の(b)に示す本接合用回転ツールBを使用し、仮接合された状態の突合部J20に対して段部1Bの表面(上面)16側から摩擦攪拌を行う。具体的には、図4の(a)および(b)に示すように、開始位置Sに本接合用回転ツールBの攪拌ピンB2を挿入(圧入)し、挿入した攪拌ピンB2を途中で離脱させることなく終了位置Eまで移動させる。
本接合用回転ツールBを移動させると、その攪拌ピンB2の周囲にある金属が順次塑性流動化するとともに、攪拌ピンB2から離れた位置では、塑性流動化していた金属が再び硬化して塑性化領域W1が形成されることになるが、この塑性化領域W1に含まれている可能性がある接合欠陥を低減したい場合には、必要に応じて、塑性化領域W1に対して摩擦攪拌を行う。
前記した段部仮接合工程や段部本接合工程が終了したら、摩擦攪拌で発生したバリを除去するとともに、段部1Bの表面16(凹部100の底面)を面削して平滑にする。
(3)継手部材配置工程 :
継手部材配置工程は、図5の(a)および(b)に示すように、凹部100に継手部材20を挿入し、継手部材20を両本体部1A,1Aに突き合せるとともに、継手部材20を挟むように一対のタブ材1,2を配置し、各タブ材1,2を継手部材20に突き合せる工程である。
なお、以下の説明においては、継手部材20の側面21,22のうち、凹部100の側面(すなわち、本体部1Aの立上側面11)に対峙する側面21を「突合側面21」と称し、その他の側面22を「露出側面22」と称することとする。また、タブ材1,2を区別する場合には、タブ材1を「第一タブ材1」と称し、タブ材2を「第二タブ材2」と称することとする。
継手部材20は、凹部100の底面(すなわち、段部1Bの表面16)に載置されるものである。本実施形態に係る継手部材20は、凹部100と実質的に同一の平面形状(本実施形態では、長方形)を具備する板状部材からなり、凹部100に挿入すると、突合側面21が本体部1Aの立上側面11に当接し(図6の(a)および(b)参照)、露出側面22が本体部1Aの露出側面14および段部1Bの露出側面18(図1の(a)参照)と面一になる。継手部材20の肉厚の大きさに特に制限はないが、本実施形態では、凹部100の深さと同一に設定されており、継手部材20を凹部100に挿入すると、継手部材20の表面(上面)23と本体部1Aの表面(上面)12とが面一になる(図6の(b)参照)。なお、継手部材20の材質に特に制限はないが、本実施形態では、金属部材10と同一組成の金属材料で形成している。
タブ材1,2は、それぞれ、継手部材20の露出側面22側に現れる本体部1A,1Aと継手部材20の継ぎ目(境界線)を覆い隠すことができる寸法・形状を備えている。本実施形態に係るタブ材1,2は、継手部材20の露出側面22だけでなく、本体部1A,1Aの露出側面14,14にも突き合わされる。
また、タブ材1,2は、図5の(b)に示すように、それぞれ、本体部1Aの表面12および継手部材20の表面23と面一になるように設置される。なお、本実施形態では、第一タブ材1は、段部1B,1Bを接合する際に使用したタブ材30の表面(上面)に載置されるとともに、溶接により本体部1A,1Aの露出側面14,14に接合される。同様に、第二タブ材2は、段部1B,1Bを接合する際に使用したタブ材40の表面(上面)に載置されるとともに、溶接により本体部1A,1Aの露出側面14,14に接合される。
(4)継手仮接合工程 :
継手仮接合工程は、図7に示すように、仮接合用回転ツールAを用いて、第一タブ材1と継手部材20との突合部J1(第四交点c4〜第一交点c1)、一方の金属部材10の本体部1Aと継手部材20との突合部J2(第一交点c1〜第二交点c2)、第二タブ材2と継手部材20との突合部J3(第二交点c2〜第三交点c3)および他方の金属部材10の本体部1Aと継手部材20との突合部J4(第三交点c3〜第四交点c4)に対して摩擦攪拌を行う工程である。
継手仮接合工程では、摩擦攪拌の開始位置Sおよび終了位置Eを第一タブ材1に設け、開始位置Sに挿入した仮接合用回転ツールAを途中で離脱させることなく終了位置Eまで相対移動させる。つまり、継手仮接合工程では、一の仮接合用回転ツールAを一筆書きの移動軌跡(ビード)を形成するように移動させて、突合部J1〜J4に対して連続して摩擦攪拌を行う。
継手仮接合工程における摩擦攪拌の手順をより詳細に説明する。
まず、第一タブ材1の適所に設けた開始位置Sの直上に仮接合用回転ツールAを位置させ、続いて、仮接合用回転ツールAを右回転させつつ下降させて攪拌ピンA2(図2の(a)参照)を開始位置Sに押し付ける。仮接合用回転ツールAの回転速度は、攪拌ピンA2の寸法・形状、摩擦攪拌される金属部材10等の材質や肉厚等に応じて設定されるものであるが、多くの場合、500〜2000(rpm)の範囲内において設定される。
攪拌ピンA2が第一タブ材1の表面に接触すると、摩擦熱によって攪拌ピンA2の周囲にある金属が塑性流動化し、攪拌ピンA2が第一タブ材1に挿入される。攪拌ピンA2の全体が第一タブ材1に入り込み、かつ、ショルダ部A1の下端面A11(図2の(a)参照)の全面が第一タブ材1の表面に接触したら、仮接合用回転ツールAを回転させつつ突合部J1の中央部(第一交点c1と第四交点c4との中間)に設けた仮接合起点p1に向けて相対移動させる。
仮接合用回転ツールAの移動速度(送り速度)は、攪拌ピンA2の寸法・形状、摩擦攪拌される金属部材10等の材質や肉厚等に応じて設定されるものであるが、多くの場合、100〜1000(mm/分)の範囲内において設定される。なお、仮接合用回転ツールAを移動させる際には、ショルダ部A1の軸線を鉛直線に対して進行方向の後ろ側へ僅かに傾斜させてもよいが、傾斜させずに鉛直にすると、仮接合用回転ツールAの方向転換が容易となり、複雑な動きが可能となる。仮接合用回転ツールAを移動させると、その攪拌ピンA2の周囲にある金属が順次塑性流動化するとともに、攪拌ピンA2から離れた位置では、塑性流動化していた金属が再び硬化する。
仮接合用回転ツールAを相対移動させて仮接合起点p1まで連続して摩擦攪拌を行ったら、仮接合起点p1で仮接合用回転ツールAを離脱させずにそのまま突合部J1の一端である第一交点c1に向けて相対移動させ、突合部J1の一部に対して摩擦攪拌を行う。つまり、第一タブ材1と継手部材20の継ぎ目(境界線)上に摩擦攪拌のルートを設定し、当該ルートに沿って仮接合用回転ツールAを相対移動させることで、突合部J1に対して摩擦攪拌を行う。
なお、仮接合用回転ツールAの攪拌ピンA2が突合部J1に入り込むと、第一タブ材1と継手部材20を引き離そうとする力が作用するが、第一タブ材1を本体部1Aに溶接しているので、第一タブ材1と金属部材10との間に目開きが発生することがない。
第一交点c1まで仮接合用回転ツールAを相対移動させたら、第一交点c1で仮接合用回転ツールAを離脱させずにそのまま第一タブ材1と一方の金属部材10の本体部1Aとの突合部J5に設けた第一中間点m1に向けて相対移動させ、突合部J5に対して摩擦攪拌を行う。つまり、突合部J1の一端である第一交点c1まで連続して摩擦攪拌を行ったら、第一交点c1で摩擦攪拌を終了させずに、第一タブ材1と本体部1Aとの継ぎ目(境界線)上に設けた摩擦攪拌のルートに沿って仮接合用回転ツールAを相対移動させることで、突合部J5に対しても摩擦攪拌を行う。なお、第一交点c1は、直線状の摩擦攪拌のルート(仮接合起点p1〜第一中間点m1)の途中に位置しているので、第一交点c1の前後で仮接合用回転ツールAの移動速度を落とす必要はない。
第一中間点m1まで仮接合用回転ツールAを相対移動させたら、第一中間点m1で仮接合用回転ツールAを離脱させずにそのまま第一タブ材1に突入させ、第一タブ材1に対して摩擦攪拌を行いつつ突合部J2の一端でもある第一交点c1まで相対移動させる。つまり、仮接合用回転ツールAを第一中間点m1から第一交点c1に戻すための摩擦攪拌のルートを第一タブ材1に設定する。このようにすると、第一中間点m1から第一交点c1に仮接合用回転ツールAを戻す際に、金属部材10や継手部材20に接合欠陥が発生し難くなるので、高品質の接合体を得ることが可能となる。
なお、突合部J1,J5に沿って設けた摩擦攪拌のルート(移動軌跡)と、第一タブ1に設けた摩擦攪拌のルート(移動軌跡)のうち、突合部J1,J5に沿う部分との離隔距離dは、仮接合用回転ツールAのショルダ部A1の外径X(図2の(a)参照)以上確保することが望ましい。このようにすると、第一中間点m1から第一交点c1に仮接合用回転ツールAを戻す際に、仮接合用回転ツールAの金属部材10側に接合欠陥が発生したとしても、当該接合欠陥が金属部材10や継手部材20に及び難くなるので、高品質の接合体を得ることが可能となる。
第一交点c1に仮接合用回転ツールAを戻したら、第一交点c1で仮接合用回転ツールAを離脱させずにそのまま突合部J2に突入させ、突合部J2に対して摩擦攪拌を行いつつ突合部J2の他端である第二交点c2まで相対移動させる。つまり、第一交点c1に仮接合用回転ツールAを戻したら、一方の金属部材10の本体部1Aと継手部材20の継ぎ目(境界線)上に摩擦攪拌のルートを設定し、当該ルートに沿って仮接合用回転ツールAを相対移動させることで、突合部J2に対して摩擦攪拌を行う。なお、第一交点c1の前後で仮接合用回転ツールAの移動速度を落とす必要はない。
第二交点c2まで仮接合用回転ツールAを相対移動させたら、第二交点c2で仮接合用回転ツールAを離脱させずにそのまま第二タブ材2に突入させ、第二タブ材2に対して摩擦攪拌を行いつつ、第二タブ材2と一方の金属部材10の本体部1Aとの突合部J6に設けた第二中間点m2まで相対移動させる。つまり、第二交点c2から第二中間点m2に至る摩擦攪拌のルートを第二タブ材2に設定する。
第二中間点m2まで仮接合用回転ツールAを相対移動させたら、第二中間点m2で仮接合用回転ツールAを離脱させずにそのまま突合部J3の一端でもある第二交点c2に向けて相対移動させ、突合部J6に対して摩擦攪拌を行う。つまり、第二タブ材2と本体部1Aとの継ぎ目(境界線)上に設けた摩擦攪拌のルートに沿って仮接合用回転ツールAを相対移動させることで、突合部J6に対しても摩擦攪拌を行う。
第二交点c2まで仮接合用回転ツールAを相対移動させたら、第二交点c2で仮接合用回転ツールAを離脱させずにそのまま突合部J3の他端である第三交点c3に向けて相対移動させ、突合部J3に対して摩擦攪拌を行う。つまり、第二交点c2まで連続して摩擦攪拌を行ったら、第二交点c2で摩擦攪拌を終了させずに、第二タブ材2と本体部1Aとの継ぎ目(境界線)上に設けた摩擦攪拌のルートに沿って仮接合用回転ツールAを相対移動させることで、突合部J3に対して摩擦攪拌を行う。なお、第二交点c2は、直線状の摩擦攪拌のルート(第二中間点m2〜第三中間点m3)の途中に位置しているので、第二交点c2の前後で仮接合用回転ツールAの移動速度を落とす必要はない。
第三交点c3まで仮接合用回転ツールAを相対移動させたら、第三交点c3で仮接合用回転ツールAを離脱させずにそのまま第二タブ材2と他方の金属部材10の本体部1Aとの突合部J7に設けた第三中間点m3に向けて相対移動させ、突合部J7に対して摩擦攪拌を行う。つまり、突合部J3の他端である第三交点c3まで連続して摩擦攪拌を行ったら、第三交点c3で摩擦攪拌を終了させずに、第二タブ材2と本体部1Aとの継ぎ目(境界線)上に設けた摩擦攪拌のルートに沿って仮接合用回転ツールAを相対移動させることで、突合部J7に対しても摩擦攪拌を行う。なお、第三交点c3は、直線状の摩擦攪拌のルート(第二中間点m2〜第三中間点m3)の途中に位置しているので、第三交点c3の前後で仮接合用回転ツールAの移動速度を落とす必要はない。
第三中間点m3まで仮接合用回転ツールAを相対移動させたら、第三中間点m3で仮接合用回転ツールAを離脱させずにそのまま第二タブ材2に突入させ、第二タブ材2に対して摩擦攪拌を行いつつ突合部J4の一端でもある第三交点c3まで相対移動させる。つまり、仮接合用回転ツールAを第三中間点m3から第三交点c3に戻すための摩擦攪拌のルートを第二タブ材2に設定する。
第三交点c3に仮接合用回転ツールAを戻したら、第三交点c3で仮接合用回転ツールAを離脱させずにそのまま突合部J4に突入させ、突合部J4に対して摩擦攪拌を行いつつ突合部J4の他端である第四交点c4まで相対移動させる。つまり、第三交点c3に仮接合用回転ツールAを戻したら、他方の金属部材10の本体部1Aと継手部材20の継ぎ目(境界線)上に摩擦攪拌のルートを設定し、当該ルートに沿って仮接合用回転ツールAを相対移動させることで、突合部J4に対して摩擦攪拌を行う。なお、第三交点c3の前後で仮接合用回転ツールAの移動速度を落とす必要はない。
第四交点c4まで仮接合用回転ツールAを相対移動させたら、第四交点c4で仮接合用回転ツールAを離脱させずにそのまま第一タブ材1に突入させ、第一タブ材1に対して摩擦攪拌を行いつつ、第一タブ材1と他方の金属部材10の本体部1Aとの突合部J8に設けた第四中間点m4まで相対移動させる。つまり、第四交点c4から第四中間点m4に至る摩擦攪拌のルートを第一タブ材1に設定する。
第四中間点m4まで仮接合用回転ツールAを相対移動させたら、第四中間点m4で仮接合用回転ツールAを離脱させずにそのまま突合部J4の他端でもある第四交点c4に向けて相対移動させ、突合部J8に対して摩擦攪拌を行う。つまり、第一タブ材1と本体部1Aとの継ぎ目(境界線)上に設けた摩擦攪拌のルートに沿って仮接合用回転ツールAを相対移動させることで、突合部J8に対しても摩擦攪拌を行う。
第四中間点m4から第四交点c4まで仮接合用回転ツールAを相対移動させたら、第四交点c4で仮接合用回転ツールAを離脱させずにそのまま突合部J1の中間に設けた仮接合終点p2に向けて相対移動させ、突合部J1に対して摩擦攪拌を行う。つまり、突合部J1の他端である第四交点c4まで連続して摩擦攪拌を行ったら、第四交点c4で摩擦攪拌を終了させずに、第二タブ材2と本体部1Aとの継ぎ目(境界線)上に設けた摩擦攪拌のルートに沿って仮接合用回転ツールAを相対移動させることで、突合部J1に対して摩擦攪拌を行う。なお、第四交点c4は、直線状の摩擦攪拌のルート(第四中間点m4〜仮接合終点p2)の途中に位置しているので、第四交点c4の前後で仮接合用回転ツールAの移動速度を落とす必要はない。
仮接合終点p2まで仮接合用回転ツールAを相対移動させたら、仮接合終点p2で仮接合用回転ツールAを離脱させずにそのまま第一タブ材1に突入させ、第一タブ材1に対して摩擦攪拌を行いつつ摩擦攪拌の終了位置Eまで相対移動させる。なお、本実施形態では、仮接合終点p2を仮接合起点p1と同じ位置に設けているが、仮接合起点p1と仮接合終点p2を離間させてもよい。仮接合起点p1と仮接合終点p2を離間させる場合には、仮接合終点p2を仮接合起点p1よりも第一交点c1側に設け、第四交点c4から仮接合終点p2に至る際に、仮接合起点p1よりも第一交点c1側に形成された塑性化領域(ビード)に対して再び摩擦攪拌を行うことが望ましいが、仮接合終点p2を仮接合起点p1よりも第四交点c4側に設け、仮接合起点p1と仮接合終点p2との間に未接合の部位を残置しても差し支えない。
仮接合用回転ツールAが終了位置Eに達したら、仮接合用回転ツールAを回転させつつ上昇させて攪拌ピンA2(図2の(a)参照)を終了位置Eから離脱させる。
なお、仮接合用回転ツールAを右回転させた場合には、仮接合用回転ツールAの進行方向の左側に微細な接合欠陥が発生する虞があるので、タブ材1,2と継手部材20との突合部J1,J3およびタブ材1,2と本体部1Aとの突合部J5〜J8に沿って摩擦攪拌を行う際には、仮接合用回転ツールAの進行方向の左側にタブ材1,2が位置するように摩擦攪拌のルートを設定することが望ましい。つまり、仮接合用回転ツールAを右回転させた場合には、仮接合用回転ツールが継手部材20の外縁に沿って右回りに移動するように仮接合起点p1から仮接合終点p2に至る摩擦攪拌のルートを設定することが望ましい。このようにすると、継手部材20側に接合欠陥が発生し難くなるので、高品質の接合体を得ることが可能となる。
ちなみに、仮接合用回転ツールAを左回転させた場合には、仮接合用回転ツールAの進行方向の右側に微細な接合欠陥が発生する虞があるので、タブ材1,2と継手部材20との突合部J1,J3およびタブ材1,2と本体部1Aとの突合部J5〜J8に沿って摩擦攪拌を行う際には、仮接合用回転ツールAの進行方向の右側にタブ材1,2が位置するように摩擦攪拌のルートを設定することが望ましい。つまり、仮接合用回転ツールAを左回転させた場合には、仮接合用回転ツールが継手部材20の外縁(外周)に沿って左回りに移動するように仮接合起点p1から仮接合終点p2に至る摩擦攪拌のルートを設定することが望ましい。
(5)継手本接合工程 :
継手本接合工程は、仮接合用回転ツールAよりも大型の本接合用回転ツールBを用いて、突合部J2,J4に対して摩擦攪拌を行う工程である。
継手本接合工程では、図8に示すように、摩擦攪拌の開始位置Sおよび終了位置Eを第一タブ材1に設け、開始位置Sに挿入した本接合用回転ツールBを途中で離脱させることなく終了位置Eまで相対移動させる。つまり、継手本接合工程では、一の本接合用回転ツールBを一筆書きの移動軌跡(ビード)を形成するように移動させて、突合部J2,J4に対して連続して摩擦攪拌を行う。
継手本接合工程をより詳細に説明する。継手本接合工程では、まず、開始位置Sに形成した図示せぬ下穴の直上に本接合用回転ツールBを位置させ、続いて、本接合用回転ツールBを右回転させつつ下降させて攪拌ピンB2(図2の(b)参照)の先端を図示せぬ下穴に挿入する。本接合用回転ツールBの回転速度は、攪拌ピンB2の寸法・形状、摩擦攪拌される金属部材10等の材質や肉厚等に応じて設定されるものであり、多くの場合、70〜700(rpm)の範囲内において設定される。
攪拌ピンB2の全体が第一タブ材1に入り込み、かつ、ショルダ部B1の下端面B11(図2の(b)参照)の全面が第一タブ材1の表面に接触したら、摩擦攪拌を行いながら突合部J2の一端(第一交点c1)に向けて本接合用回転ツールBを相対移動させ、さらに、突合部J2に突入させる。本接合用回転ツールBを移動させると、その攪拌ピンB2の周囲にある金属が順次塑性流動化するとともに、攪拌ピンB2から離れた位置では、塑性流動化していた金属が再び硬化して塑性化領域W2が形成される。
本接合用回転ツールBの移動速度(送り速度)は、攪拌ピンB2の寸法・形状、摩擦攪拌される金属部材10等の材質や肉厚等に応じて設定されるものであるが、多くの場合、30〜300(mm/分)の範囲内において設定される。なお、本接合用回転ツールBを移動させる際には、ショルダ部B1(図2の(b)参照)の軸線を鉛直線に対して進行方向の後ろ側へ僅かに傾斜させてもよいが、傾斜させずに鉛直にすると、本接合用回転ツールBの方向転換が容易となり、複雑な動きが可能となる。
金属部材10および継手部材20への入熱量が過大になる虞がある場合には、本接合用回転ツールBの周囲に水を供給するなどして冷却することが望ましい。なお、突合部J2等に冷却水が入り込むと、接合面に酸化皮膜を発生させる虞があるが、本実施形態においては、継手仮接合工程を実行して金属部材10(本体部1A)と継手部材20の目地を閉塞しているので、突合部J2等に冷却水が入り込み難く、したがって、接合部の品質を劣化させる虞がない。
突合部J2に本接合用回転ツールBを突入させたら、本体部1Aと継手部材20の継ぎ目上に摩擦攪拌のルートを設定し、当該ルートに沿って本接合用回転ツールBを相対移動させることで、突合部J2の一端(第一交点c1)から他端(第二交点c2)まで連続して摩擦攪拌を行う。
突合部J2の他端(第二交点c2)まで本接合用回転ツールBを相対移動させたら、本接合用回転ツールBを離脱させずにそのまま第二タブ材2に突入させ、第二タブ材2に対して摩擦攪拌を行いつつ、突合部J4の一端(第三交点c3)まで相対移動させる。つまり、第二交点c2から第三交点c3に至る摩擦攪拌のルートを第二タブ材2に設定する。
なお、第二タブ2に設けた摩擦攪拌のルート(移動軌跡)のうち、突合部J3に沿う部分との離隔距離dは、本接合用回転ツールBのショルダ部B1の外径Y(図2の(b)参照)以上確保することが望ましい。このようにすると、本接合用回転ツールBを突合部J4の一端(第三交点c3)に移動させる際に、本接合用回転ツールBの継手部材20側に接合欠陥が発生したとしても、当該接合欠陥が継手部材20に及び難くなるので、高品質の接合体を得ることが可能となる。
突合部J4の一端(第三交点c3)まで本接合用回転ツールBを相対移動させたら、第三交点c3で本接合用回転ツールBを離脱させずにそのまま突合部J4に突入させ、突合部J4に対して摩擦攪拌を行いつつ突合部J4の他端である第四交点c4まで相対移動させる。つまり、突合部J4の一端まで本接合用回転ツールBを相対移動させたら、他方の金属部材10の本体部1Aと継手部材20の継ぎ目(境界線)上に摩擦攪拌のルートを設定し、当該ルートに沿って本接合用回転ツールBを相対移動させることで、突合部J4に対して摩擦攪拌を行う。
突合部J4の他端(第四交点c4)まで本接合用回転ツールBを相対移動させたら、本接合用回転ツールBを離脱させずにそのまま第一タブ材1に突入させ、第一タブ材1に対して摩擦攪拌を行いつつ終了位置Eまで相対移動させる。
本接合用回転ツールBが終了位置Eに達したら、本接合用回転ツールBを離脱させずにそのまま後記する一体化工程に移行する。なお、本接合用回転ツールBが終了位置Eに達した時点で、攪拌ピンB2を終了位置Eから離脱させても差し支えない。
(6)一体化工程 :
一体化工程は、図9の(b)に示すように、本体部1A,1Aで挟まれた領域に対して継手部材20の上面側から摩擦攪拌を行い、継手部材20の上面から段部1B,1Bの少なくとも上部までを塑性流動化させる工程である。一体化工程を経ると、段部1B,1Bと継手部材20とが摩擦攪拌接合されて一体になる。
一体化工程では、図9の(a)に示すように、継手部材20の全体に塑性化領域が形成されるように、継手部材20を複数回横断(あるいは縦断)する摩擦攪拌のルートを設定する。本実施形態では、一筆書きの移動軌跡(ビード)を形成するように、摩擦攪拌の開始位置S(本実施形態では、継手本接合工程の終了位置E)に挿入した本接合用回転ツールBを途中で離脱させることなく終了位置Eまで相対移動させる。
一体化工程をより詳細に説明する。一体化工程では、まず、本接合用回転ツールBを継手部材20に突入させ、段部1Bの上部および継手部材20に対して摩擦攪拌を行いつつ(図9の(b)参照)、突合部J4(図5参照)に沿って継手部材20の第二タブ材2側の縁部まで相対移動させる。
なお、継手部材20を最初に横断させる際の摩擦攪拌のルート(一回目の横断ルート)は、図9の(b)に示すように、継手本接合工程により突合部J4に形成された移動軌跡(塑性化領域W2)の一部が再び摩擦攪拌されるように設定することが望ましい。つまり、一回目の横断ルートと突合部J4との離隔距離dは、本接合用回転ツールBのショルダ部B1の外径Y(図2の(b)参照)よりも小さくすることが望ましい。
継手部材20の第二タブ材2側の縁部まで本接合用回転ツールBを相対移動させたら、図9の(a)に示すように、本接合用回転ツールBを離脱させずにそのまま第二タブ材2に突入させ、第二タブ材2に対して摩擦攪拌を行いつつ本接合用回転ツールBをUターンさせる。
次に、本接合用回転ツールBを再び継手部材20に突入させ、段部1Bの上部および継手部材20に対して摩擦攪拌を行いつつ(図9の(b)参照)、突合部J4に沿って継手部材20の第一タブ材1側の縁部まで相対移動させ、さらに、本接合用回転ツールBを離脱させずにそのまま第一タブ材1に突入させ、第一タブ材1に対して摩擦攪拌を行いつつ本接合用回転ツールBをUターンさせる。その後、継手部材20の横断と第一タブ材1または第二タブ材2でのUターンを繰り返し、継手部材20の全部に対して摩擦攪拌を行う。
なお、図9の(b)に示すように、本接合用回転ツールBをUターンさせた後の摩擦攪拌のルート(二回目以降の横断ルート)は、Uターンさせる前に形成された塑性化領域W3の一部が再び摩擦攪拌されるように設定することが望ましい。つまり、継手部材20をn回(nは2以上の自然数)以上横断させる場合には、n回目の横断ルートと(n−1)回目の横断ルートとの離隔距離d’を、本接合用回転ツールBのショルダ部B1の外径Y(図2の(b)参照)よりも小さくすることが望ましい。また、継手部材20を最後に横断させる際の摩擦攪拌のルートは、継手本接合工程により突合部J2に形成された移動軌跡(塑性化領域W2)の一部が再び摩擦攪拌されるように設定することが望ましい。
両本体部1A,1Aで挟まれた領域に対する摩擦攪拌が終了したら、図9の(a)に示すように、本接合用回転ツールBを第一タブ材1(場合によっては第二タブ材2でもよい)に設けた終了位置Eまで相対移動させたうえで、第一タブ材1から離脱させる。
なお、本実施形態では、第一タブ材1または第二タブ材2において本接合用回転ツールBをUターンさせているが、継手部材20の縁部において本接合用回転ツールBをUターンさせてもよい。つまり、第一タブ材1または第二タブ材2に本接合用回転ツールBを突入させずに、Uターンさせてもよい。
(7)第一の補修工程 :
第一の補修工程は、図10に示すように、継手本接合工程および一体化工程により継手部材20に形成された塑性化領域W2,W3に対して摩擦攪拌を行う工程であり、本接合用回転ツールBの移動方向に沿って形成された接合欠陥や本接合用回転ツールBが第一タブ材1と継手部材20との境界を横切る際に巻き込んだ酸化皮膜を分断することを主たる目的としている。
第一の補修工程では、継手部材20の上面側から塑性化領域W2,W3に挿入した補修用回転ツールCを、継手部材20の露出側面22(図5の(a)参照)に沿う方向に相対移動させることで、塑性化領域W2,W3に対して摩擦攪拌を行う。第一の補修工程では、摩擦攪拌の開始位置Sおよび終了位置Eを第一タブ材1に設け、開始位置Sに挿入した補修用回転ツールCを途中で離脱させることなく終了位置Eまで相対移動させる。
なお、第一の補修工程では、本接合用回転ツールBよりも小型の補修用回転ツールCを用いて摩擦攪拌を行う。このようにすると、塑性化領域が必要以上に広がることを防止することが可能となる。
補修用回転ツールCは、仮接合用回転ツールAと同様に、工具鋼など金属部材10よりも硬質の金属材料からなり、図10の(b)に示すように、円柱状を呈するショルダ部と、このショルダ部の下端面に突設された攪拌ピン(プローブ)とを備えて構成されている。なお、図2の(b)に示す本接合用回転ツールBによる接合欠陥は、攪拌ピンB2の上端から1/3までの範囲に形成されることが多いので、補修用回転ツールCの攪拌ピンの長さは、本接合用回転ツールBの攪拌ピンB2の長さL(図2の(b)参照)の1/3以上とすることが望ましいが、1/2よりも大きくなると、塑性化領域が必要以上に広がる虞があるので、1/2以下とすることが望ましい。なお、攪拌ピンの最大外径(上端径)および最小外径(下端径)の大きさに特に制限はないが、本実施形態では、それぞれ、本接合用回転ツールBの攪拌ピンB2の最大外径(上端径)Yおよび最小外径(下端径)Yよりも小さくなっている。
第一の補修工程における摩擦攪拌の手順をより詳細に説明する。
まず、図10の(a)に示すように、第一タブ材1に設けた開始位置Sの直上に補修用回転ツールCを位置させ、続いて、補修用回転ツールCを右回転させつつ下降させて攪拌ピンを開始位置Sに押し付ける。補修用回転ツールCを挿入する際に、金属表面の酸化皮膜を巻き込む虞があるが、摩擦攪拌の開始位置Sを第一タブ材1に設けておけば、最終製品となる金属部材10や継手部材20に酸化皮膜が混入し難くなる。なお、補修用回転ツールCの回転速度は、攪拌ピンの寸法・形状、摩擦攪拌される金属部材10等の材質や肉厚等に応じて設定されるものであるが、多くの場合、500〜2000(rpm)の範囲内において設定される。
補修用回転ツールCを開始位置Sに挿入したら、第一タブ材1に対して摩擦攪拌を行いつつ一方の本体部1Aに設けた補修起点q1まで相対移動させる。補修起点q1まで連続して摩擦攪拌を行ったら、補修起点q1で補修用回転ツールCを離脱させずにそのまま他方の本体部1Aに設けた補修終点q2に向けて相対移動させる。
また、補修起点q1から補修終点q2に至る摩擦攪拌のルートは、継手部材20(より詳細には、継手部材20が存在していた場所)に設け、露出側面22に沿う方向に補修用回転ツールCを相対移動させる際に、補修用回転ツールCのショルダ部を露出側面22から離間させるとよい。つまり、補修起点q1から補修終点q2に至る摩擦攪拌のルートと突合部J1との離隔距離dを、補修用回転ツールCのショルダ部の外径の半分以上確保するとよい。このようにすると、継手部材20(図10の(b)参照)の露出側面22に形成されていた酸化皮膜が継手部材20側に巻き込まれ難くなるので、接合部の品質を向上させることが可能となる。なお、本接合用回転ツールBが第一タブ材1と継手部材20とを横切る際に巻き込んだ酸化皮膜の分断を確実なものとするためには、離隔距離dを、補修用回転ツールCのショルダ部の外径以下、より好適には、3/4以下とすることが望ましい。
補修終点q2まで連続して摩擦攪拌を行ったら、補修終点q2で補修用回転ツールCを離脱させずにそのまま第一タブ材1に向かって相対移動させ、終了位置Eに達したら、第一タブ材1から離脱させる。補修用回転ツールCを離脱させると、抜き穴が形成されることになるが、第一タブ材1に摩擦攪拌の終了位置Eを設けておけば、最終製品となる金属部材10や継手部材20に抜き穴が形成されることを防ぐことができる。
なお、本実施形態のように、補修起点q1および補修終点q2を塑性化領域W2,W3の外側に設けると、露出側面22の全域に亘って摩擦攪拌が施されることになる。つまり、開始位置Sに挿入した補修用回転ツールCを一方の本体部1Aまで相対移動させた後に、露出側面22(すなわち、継手部材20と第一タブ材1との境界面)に沿って他方の本体部1Aまで相対移動させ、その後、終了位置Eまで相対移動させると、露出側面22に開口するような接合欠陥をより一層高い確実性をもって閉塞することが可能となる。
また、本実施形態のように、補修用回転ツールCを右回転させた場合には、補修用回転ツールCの進行方向の左側に微細な接合欠陥が発生する虞があるので、露出側面22に沿う方向に補修用回転ツールCを相対移動させる際の進行方向の左側に第一タブ材1が位置するように、摩擦攪拌のルート(すなわち、開始位置S、補修起点q1、補修終点q2、終了位置E)を設定するとよい。このようにすると、最終製品となる継手部材20側に接合欠陥が発生し難くなるので、接合部の品質をより一層向上させることが可能となる。
ちなみに、補修用回転ツールCを左回転させた場合には、補修用回転ツールCの進行方向の右側に微細な接合欠陥が発生する虞があるので、露出側面22に沿う方向に補修用回転ツールCを相対移動させる際の進行方向の右側に第一タブ材1が位置するように、摩擦攪拌のルートを設定するとよい。
(8)第二の補修工程 :
第二の補修工程は、第一の補修工程と同様に、継手本接合工程および一体化工程により継手部材20に形成された塑性化領域W2,W3に対して摩擦攪拌を行う工程であるが、本接合用回転ツールBの移動方向に沿って形成された接合欠陥や本接合用回転ツールB(図2の(b)参照)が第二タブ材2と継手部材20との境界を横切る際に巻き込んだ酸化皮膜を分断することを主たる目的としている。なお、第一の補修工程よりも先に第二の補修工程を行なっても勿論差し支えない。
第二の補修工程では、継手部材20の上面側から塑性化領域W2、W3に挿入した補修用回転ツールCを、継手部材20(図10の(b)参照)の露出側面22に沿う方向に相対移動させることで、塑性化領域W2,W3に対して摩擦攪拌を行う。第二の補修工程では、摩擦攪拌の開始位置Sおよび終了位置Eを第二タブ材2に設け、開始位置Sに挿入した補修用回転ツールCを途中で離脱させることなく終了位置Eまで相対移動させる。
第二の補修工程が終了したら、継手本接合工程、一体化工程、第一の補修工程および第二の補修工程における摩擦攪拌で発生したバリを除去する。
(9)第二の段部接合工程 :
第二の段部接合工程は、段部1B,1Bの突合部J20を裏面17側から接合する工程である。段部1B,1Bの裏面17側を接合する場合には、図11に示すように、金属部材10,10を裏返し、裏面17を上にしたうえで、本接合用回転ツールBを使用して、突合部J20に対して金属部材10の裏面17側から摩擦攪拌を行う。第二の段部接合工程において突合部J20に対して摩擦攪拌を行う際には、第一の段部接合工程で形成された塑性化領域W1に本接合用回転ツールBの攪拌ピンB2を入り込ませつつ摩擦攪拌を行う。このようにすると、塑性化領域W1の深部が、攪拌ピンB2によって再び摩擦攪拌されることになるので、塑性化領域W1の深部に接合欠陥が連続的に形成されていたとしても、当該接合欠陥を分断して不連続にすることが可能となり、ひいては、接合部における気密性や水密性を向上させることが可能となる。
第二の段部接合工程により段部1Bに形成された塑性化領域W4に含まれている可能性がある接合欠陥を低減したい場合には、必要に応じて、塑性化領域W4に対して摩擦攪拌を行う。
第二の段部接合工程が終了したら、摩擦攪拌により発生したバリを除去し、さらに、タブ材1,2,30,40を切除する。
なお、第二の段部接合工程は、前記した継手部材配置工程の前に行ってもよい。この場合には、第二の段部接合工程が終了した時点で、再度、金属部材10,10を裏返し、その後、継手部材配置工程以後の各工程を行なう。
以上のような(1)〜(9)の工程を経ることで、肉厚が40(mm)を超えるような極厚の金属部材10,10を接合する場合であっても、接合部における気密性や水密性を向上させることが可能となる。
以上説明した第一の実施形態に係る接合方法によれば、図7を参照して説明した継手仮接合工程において、各タブ材1,2と継手部材20との突合部J1,J3および継手部材20と各本体部1Aとの突合部J2,J4に対して連続して摩擦攪拌を行い、開始位置Sおよび終了位置E以外で仮接合用回転ツールBを抜き差ししないようにしたので、仮接合用回転ツールAの挿入作業および離脱作業が、それぞれ一度だけになり、ひいては、予備的な摩擦攪拌接合の効率化・迅速化を図ることが可能となる。
なお、本実施形態では、継手仮接合工程において仮接合起点p1を突合部J1の中央部(第一交点c1と第四交点c4との中間)に設けた場合を例示したが、仮接合起点p1の位置を限定する趣旨ではない。例えば、図12の(a)に示す継手仮接合工程のように、仮接合用回転ツールAを右回転させた場合であれば、仮接合起点p1を第一交点c1に設けるとともに仮接合終点p2を第一中間点m1に設け、開始位置S,第一交点c1(仮接合起点p1),第二交点c2,…,第四交点c4,第一交点c1,第一中間点m1(仮接合終点p2),終了位置Eの順で摩擦攪拌を行ってもよいし、図12の(b)に示す継手仮接合工程のように、仮接合起点p1を第四中間点m4に設けるとともに仮接合終点p2を第四交点c4に設け、開始位置S,第四中間点m4(仮接合起点p1),第四交点c4,第一交点c1,…,第三交点c3,第四交点c4(仮接合終点p2),終了位置Eの順で摩擦攪拌を行ってもよい。
また、本実施形態では、継手仮接合工程においてタブ材1,2と本体部1Aとの突合部J5〜J8に対しても連続して摩擦攪拌を行う場合を例示したが、突合部J5〜J8に対する摩擦攪拌を省略してもよい。この場合には、各交点c1〜c4において仮接合用回転ツールAの進行方向を変更し、継手部材20の外縁に沿って連続して摩擦攪拌を行えばよい。
また、第一の実施形態に係る接合方法によれば、継手本接合工程および一体化工程により継手部材20と段部1Bとの一体化を図った後に、第一の補修工程および第二の補修工程を行なっているので、継手本接合工程や一体化工程により形成された塑性化領域の中に、露出側面22に開口するような接合欠陥が形成されていたとしても、当該接合欠陥を高い確実性をもって閉塞することが可能となる。つまり、本実施形態に係る接合方法によれば、接合部の美観や気密性・水密性を低下させるような接合欠陥が形成され難くなる。また、継手本接合工程や一体化工程により形成された塑性化領域には、継手部材20の露出側面22に形成されていた酸化皮膜が巻き込まれている虞があるが、本発明によれば、このような酸化皮膜も第一の補修工程および第二の補修工程における摩擦攪拌によって分断することが可能となるので、接合欠陥が発生し難くなる。
[ 第二の実施形態 ]
前記した第一の実施形態では、金属部材10,10を直線状に繋ぎ合せる場合を例示したが、金属部材10,10をL字状やT字状に繋ぎ合せる場合にも前記した手法を適用することができる。なお、以下では、金属部材10,10をL字状に繋ぎ合せる場合を例示する。
第二の実施形態に係る接合方法は、図13に示す金属部材10,10をL字状に繋ぎ合せる接合方法であって、(1)突合工程、(2)第一の段部接合工程、(3)継手部材配置工程、(4)継手仮接合工程、(5)継手本接合工程、(6)一体化工程、(7)第一の補修工程、(8)第二の補修工程、(9)第二の段部接合工程を含むものである。なお、本実施形態では、金属部材10の一面側から(2)〜(8)の各工程を実行する場合を例示する
(1)突合工程 :
突合工程は、図13の(a)に示すように、金属部材10,10の段部1B,1B同士を突き合せ、本体部1A,1A間に凹部100を形成する工程である。本実施形態では、接合すべき金属部材10,10をL字状に配置し、図13の(b)に示すように、一方の金属部材10の段部1Bの突合側面15に他方の金属部材10の段部1Bの突合側面15を密着させる。
(2)第一の段部接合工程 :
第一の段部接合工程は、段部1B,1Bの突合部J20を接合する工程である。本実施形態では、段部1B,1Bとタブ材30との突合部J10、段部1B,1Bの突合部J20および段部1B,1Bとタブ材40との突合部J30を仮接合する段部仮接合工程と、仮接合された状態の突合部J20を本格的に接合する段部本接合工程と、を具備している。
タブ材30,40は、段部1B,1Bの突合部J20を挟むように配置されるものであり、それぞれ、段部1B,1Bの露出側面18,18を覆い隠すことができる寸法・形状を備えている。本実施形態に係るタブ材30,40は、段部1B,1Bの露出側面18,18だけでなく、本体部1A,1Aの露出側面14,14にも突き合わされる。なお、タブ材40は、金属部材10,10により形成された入隅部(金属部材10,10の内側の側面により形成された角部)に配置する。
段部仮接合工程では、図14に示すように、一の仮接合用回転ツールAを一筆書きの移動軌跡(ビード)を形成するように移動させて、突合部J10,J20,J30に対して連続して摩擦攪拌を行う。すなわち、摩擦攪拌の開始位置Sに挿入した仮接合用回転ツールAの攪拌ピンを途中で離脱させることなく終了位置Eまで移動させる。
段部本接合工程では、図15に示すように、本接合用回転ツールBを使用し、仮接合された状態の突合部J20に対して段部1Bの表面16側から摩擦攪拌を行う。具体的には、開始位置Sに本接合用回転ツールBの攪拌ピンB2を挿入(圧入)し、挿入した攪拌ピンB2を途中で離脱させることなく終了位置Eまで移動させる。なお、段部本接合工程において形成された塑性化領域W1に含まれている可能性がある接合欠陥を低減したい場合には、必要に応じて、塑性化領域W1に対して摩擦攪拌を行う。
前記した段部仮接合工程や段部本接合工程が終了したら、摩擦攪拌で発生したバリを除去するとともに、段部1Bの表面16を面削して平滑にする。
(3)継手部材配置工程 :
継手部材配置工程は、図16の(a)および(b)に示すように、凹部100に継手部材20を挿入し、継手部材20の側面21を両本体部1A,1Aに突き合せるとともに、継手部材20を挟むように一対のタブ材1,2を配置し、各タブ材1,2を継手部材20に突き合せる工程である。
継手部材20は、凹部100と実質的に同一の平面形状を具備する板状部材からなり、凹部100に挿入されたときに、突合側面21が凹部100の側面(すなわち、本体部1Aの立上側面11)に当接し、露出側面22が本体部1Aの露出側面14および段部1Bの露出側面18(図13参照)と面一になる。また、継手部材20の肉厚の大きさが、凹部100の深さと同一に設定されており、継手部材20の表面23と本体部1Aの表面12とが面一になる。
タブ材1,2は、それぞれ、継手部材20の露出側面22側に現れる本体部1A,1Aと継手部材20の継ぎ目(境界線)を覆い隠すことができる寸法・形状を備えている。本実施形態に係るタブ材1,2は、継手部材20の露出側面22だけでなく、本体部1A,1Aの露出側面14,14にも突き合わされる。
(4)継手仮接合工程 :
継手仮接合工程では、図17に示すように、摩擦攪拌の開始位置Sおよび終了位置Eを第一タブ材1に設け、開始位置Sに挿入した仮接合用回転ツールAを途中で離脱させることなく終了位置Eまで相対移動させる。つまり、継手仮接合工程では、一の仮接合用回転ツールAを一筆書きの移動軌跡(ビード)を形成するように移動させて、突合部J1〜J4に対して連続して摩擦攪拌を行う。
仮接合用回転ツールAを右回転させた場合の継手仮接合工程をより詳細に説明する。開始位置Sに仮接合用回転ツールAを挿入したら、摩擦攪拌を行いつつ突合部J1の中央部(第一交点c1と第四交点c4との中間)に設けた仮接合起点p1に向けて相対移動させる。
仮接合起点p1まで連続して摩擦攪拌を行ったら、仮接合起点p1で仮接合用回転ツールAを離脱させずにそのまま突合部J1の一端である第一交点c1に向けて相対移動させ、突合部J1の一部に対して摩擦攪拌を行う。
第一交点c1まで連続して摩擦攪拌を行ったら、第一交点c1で仮接合用回転ツールAを離脱させずにそのまま突合部J2に突入させ、突合部J2に対して摩擦攪拌を行いつつ突合部J2の他端である第二交点c2まで相対移動させる。なお、本実施形態では、突合部J2の平面形状がL字形を呈しているので、突合部J2の途中にある屈折点b1で仮接合用回転ツールAの方向を転換させる。
突合部J3の一端でもある第二交点c2まで連続して摩擦攪拌を行ったら、第二交点c2で仮接合用回転ツールAを離脱させずにそのまま突合部J3に突入させ、突合部J3に対して摩擦攪拌を行いつつ突合部J3の他端である第三交点c3まで相対移動させる。なお、本実施形態では、突合部J3の平面形状がL字形を呈しているので、突合部J3の途中にある屈折点b2で仮接合用回転ツールAの方向を転換させる。
突合部J4の一端でもある第三交点c3まで連続して摩擦攪拌を行ったら、第三交点c3で仮接合用回転ツールAを離脱させずにそのまま突合部J4に突入させ、突合部J4に対して摩擦攪拌を行いつつ突合部J4の他端である第四交点c4まで相対移動させる。
第四交点c4まで連続して摩擦攪拌を行ったら、第四交点c4で仮接合用回転ツールAを離脱させずにそのまま突合部J1に突入させ、突合部J1に対して摩擦攪拌を行いつつ突合部J1の中間に設けた仮接合終点p2に向けて相対移動させる。
仮接合終点p2まで連続して摩擦攪拌を行ったら、仮接合終点p2で仮接合用回転ツールAを離脱させずにそのまま第一タブ材1に突入させ、第一タブ材1に対して摩擦攪拌を行いつつ摩擦攪拌の終了位置Eまで相対移動させる。
仮接合用回転ツールAが終了位置Eに達したら、仮接合用回転ツールAを回転させつつ上昇させて攪拌ピンを終了位置Eから離脱させる。
なお、仮接合用回転ツールAを左回転させた場合には、摩擦攪拌のルートを前記したものと反対にすればよい。すなわち、仮接合起点p1、第四交点c4、第三交点c3、第二交点c2、第一交点c1、仮接合終点p2の順に摩擦攪拌を行えばよい。
(5)継手本接合工程 :
継手本接合工程では、図18に示すように、摩擦攪拌の開始位置Sおよび終了位置Eを第一タブ材1に設け、開始位置Sに挿入した本接合用回転ツールBを途中で離脱させることなく終了位置Eまで相対移動させる。
継手本接合工程では、まず、本体部1Aと継手部材20の継ぎ目上に摩擦攪拌のルートを設定し、当該ルートに沿って本接合用回転ツールBを相対移動させることで、突合部J2の一端(第一交点c1)から他端(第二交点c2)まで連続して摩擦攪拌を行う。
突合部J2の他端(第二交点c2)まで連続して摩擦攪拌を行ったら、本接合用回転ツールBを離脱させずにそのまま第二タブ材2に突入させ、第二タブ材2に対して摩擦攪拌を行いつつ、突合部J4の一端(第三交点c3)まで相対移動させる。
突合部J4の一端(第三交点c3)まで連続して摩擦攪拌を行ったら、第三交点c3で本接合用回転ツールBを離脱させずにそのまま突合部J4に突入させ、突合部J4に対して摩擦攪拌を行いつつ突合部J4の他端である第四交点c4まで相対移動させる。
突合部J4の他端(第四交点c4)まで連続して摩擦攪拌を行ったら、本接合用回転ツールBを離脱させずにそのまま第一タブ材1に突入させ、第一タブ材1に対して摩擦攪拌を行いつつ終了位置Eまで相対移動させる。本接合用回転ツールBが終了位置Eに達したら、本接合用回転ツールBを離脱させずにそのまま一体化工程に移行する。
(6)一体化工程 :
一体化工程では、本体部1A,1Aで挟まれた領域に対して継手部材20の上面側から摩擦攪拌を行い、継手部材20の上面から段部1B,1B(図16参照)の少なくとも上部までを塑性流動化させる。
図19に示すように、一体化工程では、継手部材20(図16参照)の全体に塑性化領域が形成されるように、継手部材20を複数回横断(あるいは縦断)する摩擦攪拌のルートを設定する。本実施形態では、一筆書きの移動軌跡(ビード)を形成するように、摩擦攪拌の開始位置S(本実施形態では、継手本接合工程の終了位置E)に挿入した本接合用回転ツールBを途中で離脱させることなく終了位置Eまで相対移動させている。
なお、継手部材20(図16参照)の第二タブ材2側の縁部まで本接合用回転ツールBを相対移動させたら、本接合用回転ツールBを離脱させずにそのまま第二タブ材2に突入させ、第二タブ材2に対して摩擦攪拌を行いつつ本接合用回転ツールBをUターンさせるか、あるいは、本接合用回転ツールBをそのまま本体部1Aに突入させ、本体部1Aに対して摩擦攪拌を行いつつ本接合用回転ツールBをUターンさせる。
両本体部1A,1Aで挟まれた領域に対する摩擦攪拌が終了したら、本接合用回転ツールBを第一タブ材1に設けた終了位置Eまで相対移動させたうえで、第一タブ材1から離脱させる。なお、終了位置Eを第二タブ材2に設けても差し支えない。
(7)第一の補修工程 :
第一の補修工程では、図20に示すように、継手部材20(図16参照)の上面側から塑性化領域W2、W3に挿入した補修用回転ツールCを、継手部材20の露出側面22(図16参照)に沿う方向に相対移動させることで、塑性化領域W2,W3に対して摩擦攪拌を行う。第一の補修工程では、第一タブ材1に設けた開始位置Sに挿入した補修用回転ツールCを、一方の本体部1Aに設けた補修起点q1と他方の本体部1Aに設けた補修終点q2とを通過するように相対移動させ、第一タブ材1に設けた終了位置Eで離脱させる。
(8)第二の補修工程 :
第二の補修工程では、継手部材20(図16参照)の上面側から塑性化領域W2、W3に挿入した補修用回転ツールCを、継手部材20の露出側面22(図16参照)に沿う方向に相対移動させることで、塑性化領域W2,W3に対して摩擦攪拌を行う。第二の補修工程では、摩擦攪拌の開始位置Sおよび終了位置Eを第二タブ材2に設け、開始位置Sに挿入した補修用回転ツールCを途中で離脱させることなく終了位置Eまで相対移動させる。
第二の補修工程が終了したら、継手本接合工程、一体化工程、第一の補修工程および第二の補修工程における摩擦攪拌で発生したバリを除去する。
(9)第二の段部接合工程 :
第二の段部接合工程は、段部1B,1Bの突合部J20を裏面側から接合する工程である。段部1B,1Bの裏面側を接合する場合には、図示は省略するが、金属部材10,10を裏返し、裏面を上にしたうえで、本接合用回転ツールBを使用して、突合部J20に対して金属部材10の裏面側から摩擦攪拌を行う。
第二の段部接合工程により段部1Bに形成された塑性化領域に含まれている可能性がある接合欠陥を低減したい場合には、必要に応じて、塑性化領域に対して摩擦攪拌を行う。
第二の段部接合工程が終了したら、摩擦攪拌により発生したバリを除去し、さらに、タブ材1,2,30,40を切除する。
以上のような(1)〜(9)の工程を経ることで、肉厚が40(mm)を超えるような極厚の金属部材10,10を接合する場合であっても、接合部における気密性や水密性を向上させることが可能となる。
以上説明した第二の実施形態に係る接合方法においても、図17を参照して説明した継手仮接合工程において、各タブ材1,2と継手部材20との突合部J1,J3および継手部材20と各本体部1Aとの突合部J2,J4に対して連続して摩擦攪拌を行い、開始位置Sおよび終了位置E以外で仮接合用回転ツールAを抜き差ししないようにしたので、仮接合用回転ツールAの挿入作業および離脱作業が、それぞれ一度だけになり、ひいては、予備的な摩擦攪拌接合の効率化・迅速化を図ることが可能となる。
また、第二の実施形態に係る接合方法においても、継手本接合工程および一体化工程により継手部材20と段部1Bとの一体化を図った後に、第一の補修工程および第二の補修工程を行なっているので、継手本接合工程や一体化工程により形成された塑性化領域の中に、露出側面22に開口するような接合欠陥が形成されていたとしても、当該接合欠陥を高い確実性をもって閉塞することが可能となる。つまり、第二の実施形態に係る接合方法によれば、接合部の美観や気密性・水密性を低下させるような接合欠陥が形成され難くなる。また、継手本接合工程や一体化工程により形成された塑性化領域には、継手部材20の露出側面22に形成されていた酸化皮膜が巻き込まれている虞があるが、本発明によれば、このような酸化皮膜も第一の補修工程および第二の補修工程における摩擦攪拌によって分断することが可能となるので、接合欠陥が発生し難くなる。
第一の実施形態に係る突合工程を説明するための図であって、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は(b)のI−I線断面図、(d)は(b)のII−II線断面図である。 (a)は仮接合用回転ツールを説明するための側面図、(b)は本接合用回転ツールを説明するための側面図である。 第一の実施形態に係る段部仮接合工程を説明するための平面図である。 (a)および(b)は第一の実施形態に係る段部本接合工程を説明するための断面図(図3のIII−III断面図)である。 (a)および(b)は第一の実施形態に係る継手部材配置工程を説明するための斜視図である。 (a)は図5の(b)の平面図、(b)は(a)のIV−IV線断面図である。 第一の実施形態に係る継手仮接合工程を説明するための平面図である。 第一の実施形態に係る継手本接合工程を説明するための平面図である。 第一の実施形態に係る一体化工程を説明するための平面図である。 (a)は第一の実施形態に係る補修工程を説明するための平面図、(b)は(a)のV−V線断面図である。 第一の実施形態に係る第二の段部接合工程を説明するための断面図である。 (a)および(b)は第一の実施形態に係る段部仮接合工程の変形例を説明するための平面図である。 第二の実施形態に係る突合工程を説明するための図であって、(a)は斜視図、(b)は平面図である。 第二の実施形態に係る段部仮接合工程を説明するための平面図である。 第二の実施形態に係る段部本接合工程を説明するための平面図である。 (a)および(b)は第二の実施形態に係る継手部材配置工程を説明するための斜視図である。 第二の実施形態に係る継手仮接合工程を説明するための平面図である。 第二の実施形態に係る継手本接合工程を説明するための平面図である。 第二の実施形態に係る一体化工程を説明するための平面図である。 第二の実施形態に係る補修工程を説明するための平面図である。
符号の説明
1,2 タブ材
10 金属部材
20 継手部材
100 凹部
J1〜J8 突合部
A 仮接合用回転ツール
A1 ショルダ部
A2 攪拌ピン
B 本接合用回転ツール
B1 ショルダ部
B2 攪拌ピン
C 補修用回転ツール
W1〜W4 塑性化領域

Claims (4)

  1. 本体部の縁部に前記本体部よりも肉厚の小さい段部を備える二つの金属部材の前記段部同士を突き合せ、前記本体部間に凹部を形成する突合工程と、
    前記凹部に継手部材を挿入し、前記継手部材を前記両本体部に突き合せるととともに、前記継手部材を挟むように一対のタブ材を配置し、前記各タブ材を前記継手部材に突き合せる継手部材配置工程と、
    仮接合用回転ツールを用いて、一方の前記タブ材と前記継手部材との突合部、一方の前記金属部材の前記本体部と前記継手部材との突合部、他方の前記タブ材と前記継手部材との突合部および他方の前記金属部材の前記本体部と前記継手部材との突合部に対して摩擦攪拌を行う継手仮接合工程と、
    前記仮接合用回転ツールよりも大型の本接合用回転ツールを用いて、一方の前記金属部材の前記本体部と前記継手部材との突合部および他方の前記金属部材の前記本体部と前記継手部材との突合部に対して摩擦攪拌を行う継手本接合工程と、を含む接合方法であって、
    前記継手仮接合工程では、摩擦攪拌の開始位置および終了位置を一方の前記タブ材に設け、前記開始位置に挿入した前記仮接合用回転ツールを途中で離脱させることなく前記終了位置まで相対移動させることを特徴とする接合方法。
  2. 前記継手部材配置工程において、一方の前記金属部材の前記本体部および他方の前記金属部材の前記本体部にも前記各タブ材を突き合せ、
    前記継手仮接合工程において、前記各タブ材と前記各金属部材の前記本体部との突合部に対しても摩擦攪拌を行うことを特徴とする請求項1に記載の接合方法。
  3. 前記継手仮接合工程では、前記仮接合用回転ツールを右回転させ、前記各タブ材と前記継手部材との突合部に対して摩擦攪拌を行う際には、前記仮接合用回転ツールの進行方向の左側に前記タブ材を位置させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の接合方法。
  4. 前記継手仮接合工程では、前記仮接合用回転ツールを左回転させ、前記各タブ材と前記継手部材との突合部に対して摩擦攪拌を行う際には、前記仮接合用回転ツールの進行方向の右側に前記タブ材を位置させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の接合方法。
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