JP2008186815A - 薄膜型発光体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 光取り出し効率を波長の広い範囲に亘って向上させることができ、且つ、低コストで実現可能な、薄膜型発光体とその製造方法を提供する。
【解決手段】 屈折率の異なる薄膜2a,3a間の境界面、あるいは発光体と外部との境界面の3次元形状を、発光体の発光ピーク波長をλ、JIS B 06011994で定義される上記境界面の凹凸の算術平均粗さをRa、上記境界面の凹凸の平均間隔をSmとしたとき、λ/100<Sm<2λ、且つ、0.01<Ra/Sm<10の関係を満たすよう形成する。
【選択図】 図4
【解決手段】 屈折率の異なる薄膜2a,3a間の境界面、あるいは発光体と外部との境界面の3次元形状を、発光体の発光ピーク波長をλ、JIS B 06011994で定義される上記境界面の凹凸の算術平均粗さをRa、上記境界面の凹凸の平均間隔をSmとしたとき、λ/100<Sm<2λ、且つ、0.01<Ra/Sm<10の関係を満たすよう形成する。
【選択図】 図4
Description
本発明は薄膜型発光体に関し、詳しくは、屈折率の異なる複数の薄膜層を有する発光体からの光取り出し効率(外部量子効率)を向上させる薄膜発光体の構造とその製造方法に関する。
従来、薄膜型の発光体としては無機EL、無機LED、バックライトを有した透過型液晶、また近年商品化が始まった有機EL(有機電界発光素子)等が存在している。いずれの方式も発光体内部の光を空気中に取り出して視認するものであり、様々の方法で発光効率の向上の検討がなされている。発光効率には発光体内部での発光自体の効率と、発生した光を外部に取り出す効率とが関わっており、前者は発光材料自体の開発や正孔と電子の注入バランス等の改善を目的とした層構成の改良が進められている。
一方、後者は光取り出し面に微小なレンズ構造を形成して正面への光量を向上させた技術(特開平11−045780号公報)や、発光面付近に屈折率の周期変調構造(微小共振器)を形成して特定の波長の光が前面から出てくるようにした技術(特開平11−329740号公報、特開平11−288786号公報)が報告されている。また、ガラス基板と透明電極であるITOとの間に屈折率が空気に近いシリカエアロゲル層を形成し、ガラス基板からの取り出し効率を向上させた報告(MRS Fallmeeting 2000,JJ.5.19)もある。
従来の薄膜型発光体からの光取り出し効率を向上させる方法の中で、取り出し面に微小なレンズ構造を形成する方法では、レンズの形状により限られた視野にのみ発光強度が強くなる特徴があり、高視野角の光取り出し効率の向上には向いていない。
微小共振器構造を用いる方法は、波長の揃った光が取り出せる特徴があるが、反面、複数の発光色(波長)を取り出す場合には色毎に共振器の構造を最適化する必要があるなど製造工程が複雑になりコストアップが避けられない。
また、シリカエアロゲル等の空気に近い屈折率を持つ層を中間層として挿入する方法は、エアロゲルの構造上の特徴から機械的強度が弱くその後の発光体形成工程の自由度が低下するという課題がある。
また、シリカエアロゲル等の空気に近い屈折率を持つ層を中間層として挿入する方法は、エアロゲルの構造上の特徴から機械的強度が弱くその後の発光体形成工程の自由度が低下するという課題がある。
本発明はこのような課題に鑑み創案されたもので、光取り出し効率を波長の広い範囲に亘って向上させることができ、且つ、低コストで実現可能な、薄膜型発光体とその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の薄膜型発光体は、基板上に少なくとも2以上の薄膜が積層され、光が発光部から外部に取り出される光路において少なくとも1回以上屈折率の異なる薄膜間を通過する構造の発光体であって、上記屈折率の異なる薄膜間の境界面、及び/または上記発光体と外部との境界面の、3次元形状が、上記発光体の発光ピーク波長をλ、JIS B 06011994で定義される上記境界面の凹凸の算術平均粗さをRa、上記境界面の凹凸の平均間隔をSmとしたとき、λ/100<Sm<2λ、且つ、0.01<Ra/Sm<10の関係を満たしていることを特徴としている。このように、屈折率の異なる薄膜間の境界面や発光体と外部との境界面が上記のような3次元形状に形成されることにより、可視光の広い範囲に亘って屈折率ロスを抑制して光取り出し効率の向上を図ることが可能になる。
なお、境界面を構成する凹凸の形状は必ずしも周期的なものである必要はない。例えば、上記の薄膜型発光体は、陽極層と陰極層と1以上の有機層とを上記薄膜として備えた有機電界発光素子として構成することもできるが、この場合には、陽極層または陰極層であるITO層の形成時にできる多結晶構造の凹凸形状をそのまま、あるいは結晶を成長させて用いることも可能である。また、必要があればエッチング処理等の表面処理により凹凸形状を強調してもよい。これにより、機械的強度を維持しつつ製造コストを抑えながら光取り出し効率を向上させることができる。
また、ITO層上に表面の凹凸形状を小さくするように有機層を積層するのも好ましい。この場合、有機層は少なくとも陽極界面層、正孔輸送層及び発光層から構成し、陽極界面層は塗布法等の湿式法により形成するのが好ましい。これにより、その後に形成する発光層や対向電極などへの凹凸の影響を抑えることも可能になる。
上記の薄膜型発光体、特にITO層を備えた有機電界発光素子は、以下の製造方法により低コストで製造することができる。
すなわち、まず、基板上に或いは上記基板上に積層された薄膜上にスパッタリング法や電子ビーム蒸着法等によりITO層を成膜し、その成膜中或いは成膜後の加熱による多結晶成長により、上記発光体の発光ピーク波長をλ、JIS B 06011994で定義される凹凸の算術平均粗さをRa、凹凸の平均間隔をSmとしたとき、λ/100<Sm<2λ、且つ、0.01<Ra/Sm<10の関係を満たしている凹凸を上記ITO層の表面に形成させる。そして、表面の凹凸形状を小さくするように上記ITO層上に有機層を積層する。
すなわち、まず、基板上に或いは上記基板上に積層された薄膜上にスパッタリング法や電子ビーム蒸着法等によりITO層を成膜し、その成膜中或いは成膜後の加熱による多結晶成長により、上記発光体の発光ピーク波長をλ、JIS B 06011994で定義される凹凸の算術平均粗さをRa、凹凸の平均間隔をSmとしたとき、λ/100<Sm<2λ、且つ、0.01<Ra/Sm<10の関係を満たしている凹凸を上記ITO層の表面に形成させる。そして、表面の凹凸形状を小さくするように上記ITO層上に有機層を積層する。
或いは、基板上に或いは上記基板上に積層された薄膜上にITO層を成膜し、その成膜中或いは成膜後の加熱による多結晶成長により上記ITO層の表面に凹凸を形成させ、さらに、上記発光体の発光ピーク波長をλ、JIS B 06011994で定義される凹凸の算術平均粗さをRa、凹凸の平均間隔をSmとしたとき、λ/100<Sm<2λ、且つ、0.01<Ra/Sm<10の関係を満たすように、表面処理によって上記ITO層の表面に形成された凹凸の形状の強調を行う。そして、表面の凹凸形状を小さくするように上記ITO層上に有機層を積層する。
以上の製造方法において、好ましくは上記有機層を少なくとも陽極界面層、正孔輸送層及び発光層から構成し、陽極界面層は湿式法により形成する。
以上詳述した通り、本発明の薄膜型発光体によれば、反射防止のためのコーティングや基板に複雑な集光構造を作製することなく、低コストで反射を防止することができ、発光体からの光をより多く外部に取り出すことができる。したがって、本発明の薄膜型発光体を用いれば高効率なフラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)や表示板、標識灯等が安価に提供することが可能になる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(イ)原理
まず、本発明に関わる光の反射防止すなわち光取り出し効率の向上の原理を図1〜図3を用いて説明する。
(イ)原理
まず、本発明に関わる光の反射防止すなわち光取り出し効率の向上の原理を図1〜図3を用いて説明する。
図1(a)は屈折率の異なる2種類の媒質(媒質1,媒質2)が滑らかな境界面を介して積層された積層体の断面模式図であり、図1(b)はそれら媒質中の屈折率の変化を膜厚方向に対して示した図である。ここでn1(>1)は媒質1の屈折率、n2(>n1>1)は媒質2の屈折率を表す。
この図1に示すように、滑らかな境界面を介して異なる屈折率の媒質が積層されていると、その境界面で屈折率が急激に変化するために境界面において光の反射が生じる。一般に媒質間の境界面における反射率R12は下記の数式(数1)で表され、2つの媒質の屈折率差に比例して増大する。
この図1に示すように、滑らかな境界面を介して異なる屈折率の媒質が積層されていると、その境界面で屈折率が急激に変化するために境界面において光の反射が生じる。一般に媒質間の境界面における反射率R12は下記の数式(数1)で表され、2つの媒質の屈折率差に比例して増大する。
(数1)
R12={(n1−n2)/(n1+n2)}2
次に図2(a)は屈折率の異なる2種類の媒質(媒質1,媒質2)が凹凸形状の境界面を介して積層された積層体の断面模式図である。ここで凹凸の高さはh*、ピーク間距離はf*であり、周期的な凹凸形状を持った境界面となっている。また、図2(b)はそれら媒質中の屈折率の変化を膜厚方向に対して示した図である。ここでn1(>1)は媒質1の屈折率、n2(>n1>1)は媒質2の屈折率を表す。
R12={(n1−n2)/(n1+n2)}2
次に図2(a)は屈折率の異なる2種類の媒質(媒質1,媒質2)が凹凸形状の境界面を介して積層された積層体の断面模式図である。ここで凹凸の高さはh*、ピーク間距離はf*であり、周期的な凹凸形状を持った境界面となっている。また、図2(b)はそれら媒質中の屈折率の変化を膜厚方向に対して示した図である。ここでn1(>1)は媒質1の屈折率、n2(>n1>1)は媒質2の屈折率を表す。
この図2に示すように、周期的凹凸形状の境界面を介して異なる屈折率の媒質が積層されていると、その遷移領域で屈折率が連続的に緩やかに変化する。ただし、これは凹凸の周期f*が光の波長λに比べて小さいときに起こる現象であり、この特性を用いて反射防止効果を得る試みが従来からなされている(Y.Ono, et al, Appl.Opt., vol.26, no.6, pp.1142-1146, 1987、E.B.Grann,et al, J.Opt.Soc.Am.A, vol.12, no2, pp.333-39, 1995)。
またこの遷移領域での厳密な解析はRigorous Coupled Wave Theory等(M. G. Moharam, et al, J.Opt. Soc. Am. A, vol. 72, no. 10, pp. 1385-1392, 1982、K. Yokomori, Appl. Opt., vol.23, no. 14, pp. 2303-2310, 1947)のベクトル回折計算により行われるが、誘電率の平均値の平方根でその等価屈折率を求める有効屈折率法で議論しても大きな相違はないことが報告されている(前出Y.Ono,et al, Appl. Opt., vol. 26, no. 6, pp. 1142-1146, 1987)。このように微小な凹凸の結果、屈折率が連続的に緩やかに変化する遷移領域は、近似的に多層膜から構成されていると考えると、この多層膜内において隣り合う膜の屈折率差は略ゼロと考えられるため、境界面における光の反射は抑制されることになる。
次に図3(a)は屈折率の異なる2種類の媒質(媒質1,媒質2)が、凹凸形状の境界面を介して積層された積層体の断面模式図である。ここで凹凸は図2の場合と違って周期性はなく、凹凸の平均の高さをh、平均のピーク間距離をfとしている。図3(b)はそれら媒質中の屈折率の変化を膜厚方向に対して示した図である。ここでn1(>1)は媒質1の屈折率、n2(>n1>1)は媒質2の屈折率を表す。
この図3に示すように光の波長に比べて小さい非周期的な凹凸界面を持った境界領域においても、有効屈折率法により屈折率は単調ではないが連続的に変化するものと考えられる。したがって、この場合も凹凸界面の遷移領域は近似的に多層膜から構成されていると考えると、この多層膜内において隣り合う膜の屈折率差は略ゼロと考えられるため、図2の場合と同様に反射防止効果が発現すると考えられる。このような考察から、発明者らは厳密なRigorous Coupled Wave理論に制限されることなく、非周期的なすなわち無作為に形成された凹凸界面であっても、周期的な凹凸界面と同等の反射防止効果が高範囲の波長領域で得られることを見いだした。
(ロ)製造方法
次に本発明の一実施形態にかかる薄膜型発光体の製造方法について説明する。
ここでは、本発明を薄膜型発光体の1種である有機電界発光素子に適用している。図4(a)は、本実施形態にかかる有機電界発光素子の構造を示す模式断面図である。図4(a)に示すように、有機電界発光素子は基板1上に、陽極としての導電層2a、陽極界面層3a、正孔輸送層3b、発光層3c、陰極としての導電層4が順に積層されている。なお、発光層3c内に符号5で示す領域は発光領域を摸式的に示したものである。また、陽極界面層3a、正孔輸送層3b及び発光層3cは一括して有機層と呼ぶことがある。
次に本発明の一実施形態にかかる薄膜型発光体の製造方法について説明する。
ここでは、本発明を薄膜型発光体の1種である有機電界発光素子に適用している。図4(a)は、本実施形態にかかる有機電界発光素子の構造を示す模式断面図である。図4(a)に示すように、有機電界発光素子は基板1上に、陽極としての導電層2a、陽極界面層3a、正孔輸送層3b、発光層3c、陰極としての導電層4が順に積層されている。なお、発光層3c内に符号5で示す領域は発光領域を摸式的に示したものである。また、陽極界面層3a、正孔輸送層3b及び発光層3cは一括して有機層と呼ぶことがある。
基板1は、本発明に係る有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、プラスチックフィルムやシート等の透明質のものが用いられる。
導電層2aは、通常、インジウム及び/又はスズの酸化物(ITO)等の金属酸化物により構成される。陽極としての導電層2aの形成は、通常、スパッタリング法や電子ビーム蒸着法等によって基板1上に成膜することにより行われることが多い。ここでは、導電層2aの上面には、図3を用いて説明したように非周期的な凹凸形状が無作為に形成されている。この導電層2aの表面の凹凸は、成膜中あるいは成膜後の、金属或いは金属酸化物の粒子の多結晶成長や、導電層2の形成後にエッチング等の表面処理を行うことにより形成することができる。なお、電界発光素子としては、導電層2aは透明性に優れていることが必要である。導電層2aの膜厚は10〜500nm程度が望ましい。
導電層2aは、通常、インジウム及び/又はスズの酸化物(ITO)等の金属酸化物により構成される。陽極としての導電層2aの形成は、通常、スパッタリング法や電子ビーム蒸着法等によって基板1上に成膜することにより行われることが多い。ここでは、導電層2aの上面には、図3を用いて説明したように非周期的な凹凸形状が無作為に形成されている。この導電層2aの表面の凹凸は、成膜中あるいは成膜後の、金属或いは金属酸化物の粒子の多結晶成長や、導電層2の形成後にエッチング等の表面処理を行うことにより形成することができる。なお、電界発光素子としては、導電層2aは透明性に優れていることが必要である。導電層2aの膜厚は10〜500nm程度が望ましい。
導電層4として用いられる材料は、前記導電層2aと同様の材料を用いることが可能であるが、効率的に電子注入を行うには、仕事関数の低い金属が好ましく、一般にはスズ、マグネシウム、インジウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金が用いられる。なお、導電層4は、本実施形態では前記導電層2aとは異なり透明性についての要求は無く、透明でもよく不透明でもよい。
陽極界面層3aは、塗布法あるいは真空蒸着法により前記導電層2a上に形成することができるが、導電層2aの凹凸形状を平坦化するには塗布法がより優れた方法であり、ここではスピンコート法で形成している。このように導電層2aの凹凸形状を小さく平坦化するように陽極界面層3aを積層することにより、発光層3cや対向電極である導電層4等への凹凸の影響を抑えることができる。陽極界面層3aとして用いられる材料は高分子材料及び低分子材料のいずれも可能であるが、正孔輸送性を持っていることが好ましく、また、塗布のための溶媒への溶解性(分散性)も必要となる。例えば、この溶液を基板1上に形成された導電層2a上に適量滴下して1500〜4000rpmの回転数でスピンコートして所望の陽極界面層3aを形成すればよい。陽極界面層3aの膜厚は、導電層2aの凹凸の大きさや材料の正孔輸送性に応じて塗布溶液の粘度や塗布時の回転数によって制御できるが、通常10〜200nm程度が選ばれる。
正孔輸送層3b及び発光層3cも塗布法あるいは真空蒸着法により前記陽極界面層3a上に形成することができるが、ここでは真空蒸着法によって形成した例を示す。
真空蒸着法の場合には、正孔輸送材料及び発光材料を真空容器内に設置されたルツボに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10-5Paにまで排気した後、順次ルツボを加熱して、正孔輸送材料及び発光材料を蒸発させ、ルツボと向き合って置かれた基板1上の導電層2a上の陽極界面層3a上に正孔輸送層3b及び発光層3cを形成する。このようにして形成される正孔輸送層3b及び発光層3cの膜厚は、各々通常、10〜300nm、好ましくは30〜100nmである。
真空蒸着法の場合には、正孔輸送材料及び発光材料を真空容器内に設置されたルツボに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10-5Paにまで排気した後、順次ルツボを加熱して、正孔輸送材料及び発光材料を蒸発させ、ルツボと向き合って置かれた基板1上の導電層2a上の陽極界面層3a上に正孔輸送層3b及び発光層3cを形成する。このようにして形成される正孔輸送層3b及び発光層3cの膜厚は、各々通常、10〜300nm、好ましくは30〜100nmである。
正孔輸送層3bと共に有機層3を構成する発光層3cに用いられる化合物としては、陰極としての導電層5からの電子注入効率が高く、かつ、注入された電子を効率よく輸送することができる化合物であることが必要である。そのためには、電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、更に安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくい化合物であることが要求される。また、正孔と電子の再結合の際に発光をもたらす役割も求められる。
図4(b)は図4(a)で示した有機電界発光素子を構成する各層の屈折率の変化を膜厚方向に対して示した図である。ここで各層のおよその屈折率は、n(空気)=1.0、n(ガラス基板1)=1.5、n(陽極2a)=2.0、n(有機層3)=1.5であり、導電層2aと有機層3との境界面の屈折率変化はその界面の凹凸形状によって連続的なものになっている。このように屈折率が連続的に変化することから、上述したように導電層2aと有機層3との境界は近似的に多層膜から構成されているものとみなすことができる。したがって、本実施形態にかかる有機電界発光素子によれば、導電層2aと有機層3との境界面における表面反射を抑制することができる。
一方、図5(a)は本発明の比較例となる一般的な有機電界発光素子の構造を示す模式断面図である。図4(a)で示した構造との違いは導電層2bの表面形状であり、図5(a)においては導電層2bの表面は平滑、すなわち、凹凸のない形状になっている。
図5(b)は図5(a)で示した有機電界発光素子を構成する各層の屈折率の変化を膜厚方向に対して示した図である。この場合は屈折率の異なる全ての層の間の屈折率変化は急峻なものとなっており、導電層2bと有機層3との境界面においても屈折率はステップ状に変化している。したがって、この場合には導電層2bと有機層3との境界面において、屈折率の差に伴なう表面反射が生じてしまう。
図5(b)は図5(a)で示した有機電界発光素子を構成する各層の屈折率の変化を膜厚方向に対して示した図である。この場合は屈折率の異なる全ての層の間の屈折率変化は急峻なものとなっており、導電層2bと有機層3との境界面においても屈折率はステップ状に変化している。したがって、この場合には導電層2bと有機層3との境界面において、屈折率の差に伴なう表面反射が生じてしまう。
(ハ)その他
以上、本発明の一実施形態にかかる薄膜型発光体(ここでは、有機電界発光素子)の製造方法について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り種々変形して実施してもよい。
例えば、図4に示す有機電界発光素子では、導電層2aと有機層3との境界面に凹凸形状を形成しているが、凹凸形状の形成位置は境界面に限定されない。発光体の基板1にガラスを用いる場合、ガラスの表面(すなわち発光体と外部との境界面)に上記条件を満たす凹凸を形成することによっても本発明の効果が得られる。すなわち、ガラスの陽極層側に凹凸構造を形成した場合、発光体からの光は陽極層とガラスの凹凸境界およびガラス本体を通過して大気中に取り出される。この場合、本発明による凹凸構造により、光は陽極層とガラスとの間の屈折率の変化を緩やかに通過し、急峻な屈折率変化による光の損失が抑えられる。また、ガラスの凹凸構造を陽極層とは反対の側に形成した場合も、光はガラスから大気への屈折率の変化を緩やかに通過することになり、急峻な屈折率変化による光の損失が抑えられる。
以上、本発明の一実施形態にかかる薄膜型発光体(ここでは、有機電界発光素子)の製造方法について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り種々変形して実施してもよい。
例えば、図4に示す有機電界発光素子では、導電層2aと有機層3との境界面に凹凸形状を形成しているが、凹凸形状の形成位置は境界面に限定されない。発光体の基板1にガラスを用いる場合、ガラスの表面(すなわち発光体と外部との境界面)に上記条件を満たす凹凸を形成することによっても本発明の効果が得られる。すなわち、ガラスの陽極層側に凹凸構造を形成した場合、発光体からの光は陽極層とガラスの凹凸境界およびガラス本体を通過して大気中に取り出される。この場合、本発明による凹凸構造により、光は陽極層とガラスとの間の屈折率の変化を緩やかに通過し、急峻な屈折率変化による光の損失が抑えられる。また、ガラスの凹凸構造を陽極層とは反対の側に形成した場合も、光はガラスから大気への屈折率の変化を緩やかに通過することになり、急峻な屈折率変化による光の損失が抑えられる。
また、ガラス表面に直接凹凸構造を形成する代わりに、凹凸構造を持ったフィルムをガラスに貼っても同様の効果が得られる。この場合、基板はガラスであってもよいし、樹脂など他の材質であっても構わないが、基板と凹凸構造を持つフィルムとの屈折率が近いほど好ましい。
このような凹凸を持つガラス基板、樹脂基板あるいはフィルムは、例えば以下のようにして製造することができる。すなわち、まず平滑な面を持ったガラス板などの上にフォトレジストをスピンコートして、あらかじめ作製しておいた所望の凹凸周期パターンを持ったのフォトマスク越しに露光する。その後レジストを現像することによりフォトマスクと同様あるいは縮小率に応じた周期の凹凸構造を持ったフォトレジストが得られる。このとき、露光用の光の波長、露光量、現像時間などを最適化することにより、凹凸の深さを任意に設定可能である。次に凹凸構造を持ったフォトレジストを真空槽に移し、ニッケルなどの金属をスパッタ蒸着して50〜500nmの厚みのニッケル膜を形成する。次にこのニッケル膜をニッケルの電界メッキ液の中に浸し、5〜50μmの厚みのニッケル膜を作製する。このニッケル膜をフォトレジストから剥がし、金属板などで裏打ちしてフォトレジストの凹凸構造を転写したニッケル金型が完成する。
このような凹凸を持つガラス基板、樹脂基板あるいはフィルムは、例えば以下のようにして製造することができる。すなわち、まず平滑な面を持ったガラス板などの上にフォトレジストをスピンコートして、あらかじめ作製しておいた所望の凹凸周期パターンを持ったのフォトマスク越しに露光する。その後レジストを現像することによりフォトマスクと同様あるいは縮小率に応じた周期の凹凸構造を持ったフォトレジストが得られる。このとき、露光用の光の波長、露光量、現像時間などを最適化することにより、凹凸の深さを任意に設定可能である。次に凹凸構造を持ったフォトレジストを真空槽に移し、ニッケルなどの金属をスパッタ蒸着して50〜500nmの厚みのニッケル膜を形成する。次にこのニッケル膜をニッケルの電界メッキ液の中に浸し、5〜50μmの厚みのニッケル膜を作製する。このニッケル膜をフォトレジストから剥がし、金属板などで裏打ちしてフォトレジストの凹凸構造を転写したニッケル金型が完成する。
次にこの金型を用いて、任意の基板やフィルムに金型の凹凸構造を転写して凹凸構造を持つ基板やフィルムを得ることができる。
例えば凹凸構造をもつガラス基板を作製する場合、ガラスの平板基板を金型の上に置き、ガラスを軟化点前後の温度まで加熱した後、ガラスを金型に押しつけて金型の凹凸を転写し、ガラスの形状が保てる温度まで冷やした後に金型から取り外すことにより所望の凹凸構造を持ったガラス基板が得られる。
例えば凹凸構造をもつガラス基板を作製する場合、ガラスの平板基板を金型の上に置き、ガラスを軟化点前後の温度まで加熱した後、ガラスを金型に押しつけて金型の凹凸を転写し、ガラスの形状が保てる温度まで冷やした後に金型から取り外すことにより所望の凹凸構造を持ったガラス基板が得られる。
また、光硬化性の樹脂を用いることによっても、凹凸樹脂基板が作製できる。すなわち、光硬化性樹脂を所望の厚みになるように金型に塗布し、その樹脂に光を照射して固めた後金型から取り外せばよい。
また、PETなどの樹脂フィルムを用いても凹凸フィルムが作製できる。すなわち、上記金型を円柱状に形成し、凹凸を持った金型ローラーの上をPETフィルムを任意の圧力と温度を掛けながら通過させることにより、大面積の凹凸フィルムが得られる。
また、PETなどの樹脂フィルムを用いても凹凸フィルムが作製できる。すなわち、上記金型を円柱状に形成し、凹凸を持った金型ローラーの上をPETフィルムを任意の圧力と温度を掛けながら通過させることにより、大面積の凹凸フィルムが得られる。
このように、フォトリソグラフ法を用いることにより、上記のように周期的な凹凸構造を形成することが可能であるが、境界面を構成する凹凸の形状は必ずしも周期的なものである必要はない
さらに、基板1と導電層2aとの間等、他の境界面にも上記のような反射防止特性を有する凹凸形状を形成してもよい。ガラス基板1と導電層2aとの境界面に凹凸を形成する場合にも、上記と同様の方法が考えられるが、ガラス自体に凹凸を設ける方が好ましい。
さらに、基板1と導電層2aとの間等、他の境界面にも上記のような反射防止特性を有する凹凸形状を形成してもよい。ガラス基板1と導電層2aとの境界面に凹凸を形成する場合にも、上記と同様の方法が考えられるが、ガラス自体に凹凸を設ける方が好ましい。
また、凹凸形状を形成する境界面は1つのみに限定されず、複数の境界面に凹凸形状も形成してもよい。
次に、本発明を実施例によって更に具体的に説明する。なお、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
<実施例1>
本実施例では、ガラス基板1として厚さ1.1mmのコーニング社製1737ガラスを用い、その上に電子ビーム蒸着法を用い導電層2aとしてインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を180nm成膜した。蒸着の際、ガラス基板の温度を200〜240℃に保ち、ITOの多結晶化を促進した。その後基板を取り出し、2規定の塩酸水溶液中で1分間浸漬の後水洗し、ITO表面の凹凸が大きくなるように処理した。その後ITOの平均膜厚を測定したら160nmであった。
<実施例1>
本実施例では、ガラス基板1として厚さ1.1mmのコーニング社製1737ガラスを用い、その上に電子ビーム蒸着法を用い導電層2aとしてインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を180nm成膜した。蒸着の際、ガラス基板の温度を200〜240℃に保ち、ITOの多結晶化を促進した。その後基板を取り出し、2規定の塩酸水溶液中で1分間浸漬の後水洗し、ITO表面の凹凸が大きくなるように処理した。その後ITOの平均膜厚を測定したら160nmであった。
この導電層2aのシート抵抗値を測定したところ17Ω/sqであった。
また、導電層2aの表面SEM写真を図6(a)、断面SEM写真を図7(a)、AFM観察像を図8(a)に示す。SEM写真からは導電層2aを形成するITOの多結晶構造により表面が凹凸になっている様子が分かる。また、AFM測定からこの導電層2a表面の算術平均粗さはRa=4.8nm、ピーク数は280個/3μm2であることが分かった。ピーク数から平均ピーク間隔つまり凹凸の平均間隔Smは180nmと求められた。したがって導電層2aの表面凹凸の算術平均粗さRaと平均間隔Smとの比は、Ra/Sm=0.027であった。ここで、AFMはデジタルインスツルメント社製のNanoscope IIIを用いた。また、Peakcountは、測定面全体の凹凸高低差の平均面から凹凸のばらつきの標準偏差(σ)分だけ上にずらした面をThresholdとして、それより上のピーク数をカウントして求めた。この値から凹凸の平均間隔Smを下記の数式(数2)にて求めた。
また、導電層2aの表面SEM写真を図6(a)、断面SEM写真を図7(a)、AFM観察像を図8(a)に示す。SEM写真からは導電層2aを形成するITOの多結晶構造により表面が凹凸になっている様子が分かる。また、AFM測定からこの導電層2a表面の算術平均粗さはRa=4.8nm、ピーク数は280個/3μm2であることが分かった。ピーク数から平均ピーク間隔つまり凹凸の平均間隔Smは180nmと求められた。したがって導電層2aの表面凹凸の算術平均粗さRaと平均間隔Smとの比は、Ra/Sm=0.027であった。ここで、AFMはデジタルインスツルメント社製のNanoscope IIIを用いた。また、Peakcountは、測定面全体の凹凸高低差の平均面から凹凸のばらつきの標準偏差(σ)分だけ上にずらした面をThresholdとして、それより上のピーク数をカウントして求めた。この値から凹凸の平均間隔Smを下記の数式(数2)にて求めた。
(数2)
Sm=(測定領域の1辺の長さ)/(Peakcount1/2)
次に導電層2a付きガラス基板の反射率を評価するために,凹凸の付いた面側から光線を入射し、光線透過率を下記の数式(数3)にて計算した。測定には島津製作所製の自記分光光度計UV−3100Sを使用した。
Sm=(測定領域の1辺の長さ)/(Peakcount1/2)
次に導電層2a付きガラス基板の反射率を評価するために,凹凸の付いた面側から光線を入射し、光線透過率を下記の数式(数3)にて計算した。測定には島津製作所製の自記分光光度計UV−3100Sを使用した。
(数3)
光線透過率=I1/I0
I0:サンプルに入射する光線強度
I1:サンプルから出射した光線強度
その結果、各波長における光線透過率は図9中に線aで示す結果となった。この結果から後に述べる比較例に比べ表面の反射が低く抑えられているため光線透過率が向上していることが確認できる。
光線透過率=I1/I0
I0:サンプルに入射する光線強度
I1:サンプルから出射した光線強度
その結果、各波長における光線透過率は図9中に線aで示す結果となった。この結果から後に述べる比較例に比べ表面の反射が低く抑えられているため光線透過率が向上していることが確認できる。
次にこの導電層2a上に陽極界面層3aをスピンコート法にて形成した。このときの回転数は2000rpm、時間は30秒とした。その結果、陽極界面層3aの膜厚は80nmであった。
次に基板を真空蒸着装置内に移し、蒸着槽内に配置されたセラミックるつぼに入れた4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルをるつぼの周囲のタンタル線ヒーターで加熱して陽極界面層3aの上に積層し、正孔輸送層3bとした。この時のるつぼの温度は230〜240℃の範囲で制御した。蒸着時の真空度は1.1×10−4Pa、蒸着時間は1分50秒で、膜厚は60nmであった。
次に基板を真空蒸着装置内に移し、蒸着槽内に配置されたセラミックるつぼに入れた4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルをるつぼの周囲のタンタル線ヒーターで加熱して陽極界面層3aの上に積層し、正孔輸送層3bとした。この時のるつぼの温度は230〜240℃の範囲で制御した。蒸着時の真空度は1.1×10−4Pa、蒸着時間は1分50秒で、膜厚は60nmであった。
次に発光機能を有する電子輸送層の材料として、アルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体、Al(C9H6NO)3を同様にして上記正孔輸送層3bの上に蒸着した。この時のるつぼの温度は310〜320℃の範囲で制御した。蒸着時の真空度は1.2×10−4Pa、蒸着時間は2分40秒で、蒸着された発光層3cの膜厚は75nmであった。
上記の正孔輸送層及び発光層を真空蒸着する時の基板温度は室温に保持した。
次に真空槽内で、陰極として対向電極4をマグネシウムと銀の合金電極を2元同時蒸着法によって膜厚100nmとなるように蒸着した。蒸着はモリブデンボートを用いて、真空度約1.3×10−3Pa、蒸着時間3分10秒で行った。また、マグネシウムと銀の原子比は10:1.1とした。陰極の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
次に真空槽内で、陰極として対向電極4をマグネシウムと銀の合金電極を2元同時蒸着法によって膜厚100nmとなるように蒸着した。蒸着はモリブデンボートを用いて、真空度約1.3×10−3Pa、蒸着時間3分10秒で行った。また、マグネシウムと銀の原子比は10:1.1とした。陰極の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
以上の処理により有機電界発光素子が完成した。
次に素子を真空槽から取り出して、発光輝度の電圧依存性を測定した。測定は、まず各電極に直流電源を接続し、ガラス基板1を通過してくる光を正面から輝度計で計測した。結果を図10中に線aで示す。この結果から後に述べる比較例に比べ印加電圧あたりの発光輝度が向上していることが確認できる。
次に素子を真空槽から取り出して、発光輝度の電圧依存性を測定した。測定は、まず各電極に直流電源を接続し、ガラス基板1を通過してくる光を正面から輝度計で計測した。結果を図10中に線aで示す。この結果から後に述べる比較例に比べ印加電圧あたりの発光輝度が向上していることが確認できる。
<比較例1>
次に、実施例1と同様にガラス基板1として厚さ1.1mmのコーニング社製1737ガラスを用い、その上にスパッタ蒸着法を用い導電層2bとしてインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を220nm成膜した。その透明導電膜の表面をテープ研磨して膜厚170nmの導電層2bを得た。
次に、実施例1と同様にガラス基板1として厚さ1.1mmのコーニング社製1737ガラスを用い、その上にスパッタ蒸着法を用い導電層2bとしてインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を220nm成膜した。その透明導電膜の表面をテープ研磨して膜厚170nmの導電層2bを得た。
この導電層2bのシート抵抗値を測定したところ16Ω/sqであった。また、導電層2bの表面SEM写真を図6(b)、断面SEM写真を図7(b)、AFM観察像を図8(b)に示す。SEM写真からは導電層2bを形成するITOの表面が平滑になっている様子が分かる。また、AFM測定からこの導電層2b表面の算術平均粗さはRa=0.62nm、ピーク数は84個/3μm2であることが分かった。ピーク数から平均ピーク間隔つまり凹凸の平均間隔は330nmと求められた。したがって導電層2bの表面凹凸の算術平均粗さRaと平均間隔Smとの比は、Ra/Sm=0.0019であった。
次に実施例1と同様にして各波長における光線透過率を測定した。その結果を図9中に線bで示す。
以下、実施例1と同様にして、導電層2b上に陽極界面層、正孔輸送層、発光層及び陰極層を形成して有機電界発光素子を完成した。各層の膜厚は実施例1と同様であった。
次に素子を真空槽から取り出して、実施例1と同様に発光輝度の電圧依存性を測定した。その結果を図10中に線bで示す。
以下、実施例1と同様にして、導電層2b上に陽極界面層、正孔輸送層、発光層及び陰極層を形成して有機電界発光素子を完成した。各層の膜厚は実施例1と同様であった。
次に素子を真空槽から取り出して、実施例1と同様に発光輝度の電圧依存性を測定した。その結果を図10中に線bで示す。
<実施例2>
次に、図11(a)に模式的に示した構成の、有機電界発光素子を作製した。
まず、実施例1で用いたガラス基板と同様の材質の基板を上述の実施形態中に記載の金型転写法で加工して、片側の表面に凹凸形状を有する基板1bを得た。このとき基板1bの凹凸面は、Ra/Sm=0.209であった。この基板1bの凹凸面に、スパッタ蒸着法を用い導電層としてインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を220nm成膜した。その透明導電膜の表面をテープ研磨して、ガラス側が凹凸、反対側が平坦な平均膜厚170nmの導電層2cを得た。
次に、図11(a)に模式的に示した構成の、有機電界発光素子を作製した。
まず、実施例1で用いたガラス基板と同様の材質の基板を上述の実施形態中に記載の金型転写法で加工して、片側の表面に凹凸形状を有する基板1bを得た。このとき基板1bの凹凸面は、Ra/Sm=0.209であった。この基板1bの凹凸面に、スパッタ蒸着法を用い導電層としてインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を220nm成膜した。その透明導電膜の表面をテープ研磨して、ガラス側が凹凸、反対側が平坦な平均膜厚170nmの導電層2cを得た。
この導電層2cのシート抵抗値を測定したところ17Ω/sqであった。
以下、実施例1と同様にして、導電層2c上に陽極界面層3a、正孔輸送層3b、発光層3c及び陰極層4を形成して有機電界発光素子を完成した。各層の膜厚は実施例1と同様であった。
次に素子を真空槽から取り出して、電流に対する発光効率の電圧依存性を測定した。その結果を図14中に黒四角印で示す。同様に測定した比較例1の発光効率(図14中に白抜き丸印(○)で示す)に比べて、発光効率が約8%向上している。
以下、実施例1と同様にして、導電層2c上に陽極界面層3a、正孔輸送層3b、発光層3c及び陰極層4を形成して有機電界発光素子を完成した。各層の膜厚は実施例1と同様であった。
次に素子を真空槽から取り出して、電流に対する発光効率の電圧依存性を測定した。その結果を図14中に黒四角印で示す。同様に測定した比較例1の発光効率(図14中に白抜き丸印(○)で示す)に比べて、発光効率が約8%向上している。
<実施例3>
次に、図12(a)に模式的に示した構成の、有機電界発光素子を作製した。
実施例2で用いたのと同様の片面を凹凸加工したガラス基板1cを用い、実施例2とは逆の平坦な面に、スパッタ蒸着法を用い導電層としてインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を220nm成膜した。その透明導電膜の表面をテープ研磨して、平均膜厚170nmの導電層2bを得た。このときITO面とは反対の基板1cの凹凸面は、Ra/Sm=0.211であった。
次に、図12(a)に模式的に示した構成の、有機電界発光素子を作製した。
実施例2で用いたのと同様の片面を凹凸加工したガラス基板1cを用い、実施例2とは逆の平坦な面に、スパッタ蒸着法を用い導電層としてインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を220nm成膜した。その透明導電膜の表面をテープ研磨して、平均膜厚170nmの導電層2bを得た。このときITO面とは反対の基板1cの凹凸面は、Ra/Sm=0.211であった。
この導電層2bのシート抵抗値を測定したところ18Ω/sqであった。
以下、実施例1と同様にして、導電層2b上に陽極界面層3a、正孔輸送層3b、発光層3c及び陰極層4を形成して有機電界発光素子を完成した。各層の膜厚は実施例と同様であった。
次に素子を真空槽から取り出して、電流に対する発光効率の電圧依存性を測定した。その結果を図14中に黒三角印で示す。同様に測定した比較例1の発光効率(図14中に白抜き丸印(○)で示す)に比べて、発光効率が約5%向上している。
以下、実施例1と同様にして、導電層2b上に陽極界面層3a、正孔輸送層3b、発光層3c及び陰極層4を形成して有機電界発光素子を完成した。各層の膜厚は実施例と同様であった。
次に素子を真空槽から取り出して、電流に対する発光効率の電圧依存性を測定した。その結果を図14中に黒三角印で示す。同様に測定した比較例1の発光効率(図14中に白抜き丸印(○)で示す)に比べて、発光効率が約5%向上している。
<実施例4>
次に、図13(a)に模式的に示した構成の、有機電界発光素子を作製した。
まず、比較例1と同様にして有機電界発光素子を完成した。ガラス基板と同等の屈折率を有し、上述の実施形態中に記載の金型転写法にて表面が凹凸加工されたフィルム6の裏面を、得られた素子のガラス基板1に密着して貼り付けた。このフィルム6の凹凸は、Ra/Sm=0.207であった。
次に、図13(a)に模式的に示した構成の、有機電界発光素子を作製した。
まず、比較例1と同様にして有機電界発光素子を完成した。ガラス基板と同等の屈折率を有し、上述の実施形態中に記載の金型転写法にて表面が凹凸加工されたフィルム6の裏面を、得られた素子のガラス基板1に密着して貼り付けた。このフィルム6の凹凸は、Ra/Sm=0.207であった。
この素子の電流に対する発光効率の電圧依存性を測定した。その結果を図14中に黒丸印で示す。同様に測定した比較例1の発光効率((図14中に白抜き丸印(○)で示す)に比べて、発光効率が約4%向上している。
以上の各実施例1〜4及び比較例1において測定された素子の発光ピーク波長λに対する凹凸の平均間隔Sm、及びRa/Smの値などの測定結果を表1にまとめて示す。表1中において、○×は測定されたSm及びRa/Smの評価であり、○は測定値が好ましい範囲に入っていることを意味し、×は測定値が好ましい範囲外であることを意味している。
以上の各実施例1〜4及び比較例1において測定された素子の発光ピーク波長λに対する凹凸の平均間隔Sm、及びRa/Smの値などの測定結果を表1にまとめて示す。表1中において、○×は測定されたSm及びRa/Smの評価であり、○は測定値が好ましい範囲に入っていることを意味し、×は測定値が好ましい範囲外であることを意味している。
1 基板
1b 導電層側が凹凸加工された基板
1c 導電層と反対側が凹凸加工された基板
2a 凹凸表面を持った導電層(陽極層)
2b 平滑な表面を持った導電層(陽極層)
2c 基板側は凹凸、陽極界面側は平滑な表面を持った導電層(陽極層)
3a 陽極界面層
3b 正孔輸送層
3c 発光層
4 導電層(陰極)
5 模式的に示した発光領域
6 基板と同じ屈折率を持つ凹凸加工されたフィルム
h* 導電層2aの周期的な凹凸の高さ
f* 導電層2aの周期的な凹凸のピーク間距離
h 導電層2bの非周期的な凹凸の平均の高さ
f 導電層2bの非周期的な凹凸の平均ピーク間距離
1b 導電層側が凹凸加工された基板
1c 導電層と反対側が凹凸加工された基板
2a 凹凸表面を持った導電層(陽極層)
2b 平滑な表面を持った導電層(陽極層)
2c 基板側は凹凸、陽極界面側は平滑な表面を持った導電層(陽極層)
3a 陽極界面層
3b 正孔輸送層
3c 発光層
4 導電層(陰極)
5 模式的に示した発光領域
6 基板と同じ屈折率を持つ凹凸加工されたフィルム
h* 導電層2aの周期的な凹凸の高さ
f* 導電層2aの周期的な凹凸のピーク間距離
h 導電層2bの非周期的な凹凸の平均の高さ
f 導電層2bの非周期的な凹凸の平均ピーク間距離
Claims (3)
- 基板上に少なくとも3以上の薄膜が積層され、光が発光部から外部に取り出される光路において少なくとも1回以上屈折率の異なる薄膜間を通過する構造の発光体であって、
上記発光体は、上記薄膜として陽極層と陰極層と1以上の有機層とを備えた有機電界発光素子として構成されており、
上記発光体と外部との境界面の3次元形状が、上記発光体の発光ピーク波長をλ、JIS B 06011994で定義される上記境界面の凹凸の算術平均粗さをRa、上記境界面の凹凸の平均間隔をSmとしたとき、
λ/100<Sm<2λ、且つ、
0.01<Ra/Sm<10の関係を満たしている
ことを特徴とする、薄膜型発光体。 - 上記境界面の3次元形状が、上記基板の表面に形成された凹凸である
ことを特徴とする、請求項1に記載の薄膜型発光体。 - 上記境界面の3次元形状が、上記基板の表面に貼り付けられた凹凸構造を有するフィルムである
ことを特徴とする、請求項1に記載の薄膜型発光体。
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JP2006066264A (ja) | 有機電界発光素子、プリズム構造体付き基板の作成方法、及びプリズム構造体付き基板を用いた有機電界発光素子の製造方法 |
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