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JP2008024756A - ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents

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JP2008024756A JP2006196238A JP2006196238A JP2008024756A JP 2008024756 A JP2008024756 A JP 2008024756A JP 2006196238 A JP2006196238 A JP 2006196238A JP 2006196238 A JP2006196238 A JP 2006196238A JP 2008024756 A JP2008024756 A JP 2008024756A
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基浩 宗像
Michio Higashijima
道夫 東島
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高明 川口
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Abstract

【課題】触媒残渣が少なく、また色調も良好でかつ顔料を含有する溶融紡糸用ポリエステル組成物の提供。
【解決手段】重縮合用触媒がチタン原子、アルカリ土類金属原子、リン原子及び炭素原子を含有するポリエステル重合用触媒であって、炭素原子の少なくとも一部が有機酸及び/又はカルボキシラートに由来しており、チタン原子の含有量T(重量基準)が4〜20重量%であり、有機酸及び/又はカルボキシラートの含有量L(モル基準)、アルカリ土類金属原子の含有量M(モル基準)、チタン原子の含有量T(重量基準)、リン原子の含有量P(モル基準)、及び炭素原子の含有量C(重量基準)、が下記式(1)、(2)、及び(3)を満足。 0.8≦L/M(モル比)≦1.8 (1) 0.05≦T/C(重量比)≦0.50 (2) 0.5≦M/P(モル比)≦3.0 (3)
【選択図】なし

Description

本発明は、特定のチタン系重縮合触媒を用いて重縮合された、顔料を含有することを特徴とするポリエステル樹脂組成物およびそれからなる各種成形品に関する。
ポリエステル樹脂は、化学的、物理的性質に優れていることから、従来、ボトル等の容器、フィルム、シート、繊維等の各種用途に広範囲に使用されている。
一般に、ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体とジオールとのエステル化反応若しくはエステル交換反応、及び溶融重縮合反応を経て、更に必要に応じて、固相重縮合反応させることにより製造される。
上記の通りポリエステル樹脂は各種用途に広範囲に使用されるが、繊維として使用される場合にはその繊維につや消し効果を付与するために、酸化チタンや酸化亜鉛などの顔料が添加される。また、ポリエステル樹脂の重縮合反応にはアンチモン、ゲルマニウム、チタン等の化合物が触媒として使用されている。
しかし、アンチモン化合物を触媒としたポリエステル樹脂においては、溶融紡糸した際に口金に堆積物が生じて糸切れを起こし生産性が悪くなることや、染色後の洗浄工程におけるアンチモン化合物による洗浄水の汚染の問題など、懸念されている安全衛生性、環境への配慮等の点から、アンチモン化合物の使用量を低減するか、それに代わる重縮合用触媒の出現が強く望まれていた。また、ゲルマニウム化合物を触媒としたポリエステル樹脂においては、異物が発生しにくいことから生産性の面で好適であり、また安全衛生性等の面でもアンチモンより有利であるものの、ゲルマニウム化合物自体が極めて高価であり経済的不利が避けられない等の点から、ゲルマニウム化合物についても、使用量を低減するか、それに代わる重縮合用触媒の出現が強く望まれていた。
一方、チタン化合物は、安価で、安全衛生性等への懸念もないことから注目され、アンチモン化合物やゲルマニウム化合物の代わりに使用されるに到っているが、チタン化合物を触媒としたポリエステル樹脂は、異物の発生が少ないことから生産性の面では好ましいものの特有の黄味を有し、更に、熱安定性が劣る等品質上の欠点があった。
これに対し、特許文献1には重縮合触媒としてチタンアルコキシドあるいはチタンとケイ素の複合酸化物を用いてなるポリエステル樹脂の開示がある。しかしながらこの方法ではチタンアルコキシドを用いた場合、ポリエステル樹脂の色調が悪くなることや、またその熱安定性が悪いことが問題となり、チタンとケイ素の複合酸化物を用いた場合、複合酸化物そのものが異物となって糸切れなどの問題を発生させる場合がある。
また特許文献2には重縮合触媒として多価カルボン酸をキレート剤とするチタン錯体化合物を用いてなるポリエステル樹脂の開示がある。しかしながらこの方法では触媒の調製が容易ではなく、また得られるポリエステル樹脂の色調が悪いことから調色剤によりその色調をコントロールする必要がある。
さらに特許文献3には上記の問題点の改良を狙って特定のpHでリン化合物とチタン化合物を混合してなる重縮合触媒およびその触媒を用いるポリエステルの製造方法が開示されている。しかしながら当該発明においても得られるポリエステル樹脂の調色のためにCoやMnなどの金属を添加する必要があり、それらが異物となって溶融紡糸時に不具合を生じ、またその触媒の調製が容易では無いものであった。
特許文献4には芳香族多価カルボン酸で処理されたアルキルチタネート、マグネシウム化合物、特定のリン化合物、エチレングリコールから成る触媒が開示されているが、本発明者らによる検討では、該触媒はエチレングリコール中での長期安定性に欠け、数日の保存で白濁し、金属成分の析出が見られスラリー状となる。そして、該触媒はスラリー状であるためにポリエステルの重縮合反応に精度よく添加するのが困難であり、また、スラリー状の触媒が触媒貯槽や触媒添加ライン中で沈降し、スケーリングしてしまうなど、取り扱い性に劣るという問題があることが判明した。また、該触媒の調製のためには、チタン化合物を芳香族多価カルボン酸と処理することが必須であり、その分、製造工程が複雑でコスト高になるという問題点もあった。更に、100℃以上の加熱工程を必要とすることも実施する上では容易性に欠ける。
特開2004−137319号公報 特開2003−238673号公報 特開2004−189962号公報 特開2004−217750号公報
本発明は、上記従来の問題点を解決するものであって、チタン原子、アルカリ土類金属原子、及びリン原子を含み、触媒活性成分濃度が高く、かつ長期保存安定性に優れ、工業的に製造が容易でかつコスト的にも有利な固体状又は液状のポリエステル重縮合用触媒を用いて重縮合され、顔料を含有してなるポリエステル樹脂組成物および、各種成形品、特に溶融紡糸して得られる繊維を安定的に生産できるレジンを提供することを目的とする。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、テレフタル酸及び/またはそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分とを重縮合触媒存在下に重縮合させて得られるポリエステル樹脂と顔料とを含むポリエステル樹脂組成物であって、重縮合用触媒が、チタン原子、アルカリ土類金属原子、リン原子及び炭素原子を含有するポリエステル重合用触媒であって、炭素原子の少なくとも一部が有機酸及び/又はカルボキシラートに由来しており、チタン原子の含有量T(重量基準)が4〜20重量%であり、有機酸及び/又はカルボキシラートの含有量L(モル基準)、アルカリ土類金属原子の含有量M(モル基準)、チタン原子の含有量T(重量基準)、リン原子の含有量P(モル基準)、及び炭素原子の含有量C(重量基準)、が下記式(1)、(2)、及び(3)を満足することを特徴とするポリエステル樹脂組成物である。
0.8≦L/M(モル比)≦1.8 (1)
0.05≦T/C(重量比)≦0.50 (2)
0.5≦M/P(モル比)≦3.0 (3)
本発明において用いられるポリエステル重縮合用触媒は、好ましくは、アルコール、チタン化合物、アルカリ土類金属化合物、及び酸性リン酸エステル化合物を混合し、該混合物を濃縮することによって得られ、得られたポリエステル重縮合用触媒の重量W1と、混合に用いたチタン化合物、アルカリ土類金属化合物、及び酸性リン酸エステル化合物の重量の和W0との比W1/W0が、0.45以上0.85以下であり、アルカリ土類金属化合物が、アルカリ土類金属の有機酸塩及び/又はその水和物であることが好ましい。
また重縮合触媒はその基本構造として下記の構造を含むものである。
(式中、Tはチタン原子、Mはアルカリ土類金属原子、Oは酸素原子、Pはリン原子、R1は炭素数1以上6以下のアルキル基、シクロヘキシル基、アリール基又は2−ヒドロキシエチル基であり、R2は炭素数1〜3のアルキル基である。)
本発明のポリエステル樹脂組成物は含有される異物量が少なく、かつ色調が良好であることから、成形性、特に溶融紡糸性に優れ、結果的に高品質の繊維を得ることが出来る。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定されるものではない。
なお、本明細書中において、「ppm」や「%」は、「モル」等と特記しない場合はすべて「重量ppm」、「重量%」を意味する。
本発明のポリエステル樹脂組成物は顔料を含有しており、そのポリエステル樹脂組成物を製造する際に以下のポリエステル重縮合用触媒を使用する。
<ポリエステル重縮合用触媒>
本発明で使用されるポリエステル重縮合用触媒は、チタン原子、アルカリ土類金属原子、リン原子、及び炭素原子を含有するものであって、炭素原子の少なくとも一部が有機酸及び/又はカルボキシラートに由来しており、チタン原子の含有量T(重量基準)が4〜20重量%であり、有機酸及び/又はカルボキシラートの含有量L(モル基準)、アルカリ土類金属原子の含有量M(モル基準)、チタン原子の含有量T(重量基準)、及び炭素原子の含有量C(重量基準)、リン原子の含有量P(モル基準)が下記式(1)、(2)、及び(3)を満足する固体状又は液体状の物質である。
0.8≦L/M(モル比)≦1.8 (1)
0.05≦T/C(重量比)≦0.50 (2)
0.5≦M/P(モル比)≦3.0 (3)
また当該重縮合用触媒が含有する炭素原子の少なくとも一部を構成する有機酸及び/又はカルボキシラートとしては、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボキシラートが挙げられ、中でも炭素数1〜4の脂肪族カルボン酸、炭素数1〜4の脂肪族カルボキシラートが好ましく、とりわけエチレングリコールや1,4−ブタンジオールなどのポリエステル樹脂原料グリコール中への触媒の溶解性が優れたものとなることから、酢酸(CH3COOH)、アセタート(CH3COO−)が特に好ましい。
重縮合用触媒中のチタン原子の含有量T(重量基準)が上記下限未満では、重縮合反応時の重縮合反応速度が低下する傾向となるので、工業的に十分な重縮合反応速度が得られない場合がある。また、上限を超えると重縮合反応速度は十分であるが、得られるポリエステル樹脂の色調と熱安定性が低下する傾向となる。重縮合用触媒中のチタン原子の含有量Tは、好ましくは4.5重量%以上、より好ましくは5.5重量%以上で、好ましくは16重量%以下より好ましくは14重量%以下である。
式(1)において、L/Mが上限値を超えると、触媒活性の低下を招き、また下限値未満ではポリエステル樹脂原料のグリコールに対する触媒の溶解性が小さくなり、実用時に不都合である。L/Mの上限は好ましくは1.7、より好ましくは1.6であり、下限は好ましくは0.8、より好ましくは1.0である。
式(2)において、T/Cが上限値を超えても、また下限値未満でも、エチレングリコールや1,4−ブタンジオールなどのポリエステル樹脂原料のグリコールに対する触媒の溶解度が小さくなり、実用時に不都合である。T/Cの上限は好ましくは0.40、より好ましくは0.30であり、下限は好ましくは0.15、より好ましくは0.20である。
式(3)において、M/Pが上限値を超えると、この触媒を用いて得られるポリエステル樹脂の熱安定性の悪化を招き好ましくない。また、ポリエステル樹脂原料のグリコール中での触媒安定性も悪化し、アルカリ土類金属が析出する場合がある。M/Pが下限値未満であると、触媒活性が低下する。M/Pの上限は好ましくは1.8、より好ましくは1.5であり、下限は好ましくは0.9、より好ましくは1.1である。
<ポリエステル重縮合用触媒の製造方法>
次に、本発明のポリエステル樹脂組成物の製造に用いるポリエステル重縮合用触媒の製造方法を説明する。
重縮合用触媒はアルコール、チタン化合物、アルカリ土類金属化合物、及び酸性リン酸エステル化合物を混合し、該混合物を濃縮することによって好ましく製造することができる。より詳しくは、
(i) アルコール、チタン化合物、アルカリ金属化合物及び酸性リン酸エステル化合物を混合、溶解、反応させる工程
(ii) 工程(i)で得た反応溶液からアルコールなどを留去することにより濃縮を行うと同時に更に反応を進め、粘稠な液体状触媒、又は固体状触媒、あるいはこれらの混合物を得る工程により製造される。この時、用いられるアルコールは反応には関与せず、単に溶媒としてのみ働くものと考えられる。
ここで粘稠な液体状触媒、又は固体状触媒、あるいはこれらの混合物と、得られる触媒の形態が異なるのは、濃縮の度合いによるものである。工程(ii)で得られる触媒はそのまま、又はエチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのグリコールなどに溶解させてから容易に回収することができる。なお、濃縮時に留去されるものは溶媒として用いられるアルコールと、チタン化合物、アルカリ土類金属化合物、及び酸性リン酸エステル化合物の反応によって副生するアルコール、有機酸などである。
従って、得られるポリエステル重縮合用触媒は、溶媒として用いられたアルコールを除く原料の総重量よりも必ず重量が減少している。得られるポリエステル重縮合用触媒の重量W1と、混合に用いた、即ち、上記(i)の工程でアルコールと混合したチタン化合物、アルカリ土類金属化合物、及び酸性リン酸エステル化合物の重量の和W0との比W1/W0は、通常0.45以上0.85以下である。この比は用いられる原料化合物の種類、組成比によって変化する。
重縮合用触媒の製造に使用されるアルコールは、チタン化合物、アルカリ土類金属化合物、及び酸性リン酸エステル化合物を混合して均一溶液になるアルコールであれば何でもよく、中でも、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、2−エチルヘキサノール等の1価アルコールが、化合物の溶解性や取り扱いの容易さから、好ましく用いられる。これらのアルコールは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特にチタン化合物、アルカリ土類金属化合物、酸性リン酸エステル化合物の溶解性が高く、反応溶液を濃縮するときに、沸点が低く、除去しやすいことから、エタノールが好ましい。
また、チタン化合物としては、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートテトラマー、テトラ−t−ブチルチタネート、アセチル−トリ−i−プロピルチタネートなどのテトラアルコキシチタネート、酢酸チタン等が挙げられ、中でも、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートが好ましく、テトラ−n−ブチルチタネートが特に好ましい。これらのチタン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アルカリ土類金属化合物としては、アルカリ土類金属の有機酸塩及び/又はその水和物が好ましく用いられる。中でも好ましい化合物としてはマグネシウム、カルシウム等の有機酸塩、及び/又はその水和物が挙げられるが、マグネシウム化合物が触媒活性の点で好ましい。マグネシウム化合物としては、例えば、酢酸マグネシウム、ラク酸マグネシウムなどの有機酸塩等が挙げられるが、特に酢酸マグネシウム及び/又はその水和物が、アルコールに対する溶解度が高く、触媒の調製がし易いため好ましい。これらのアルカリ土類金属化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。またマグネシウム化合物とカルシウム化合物のような、異なった金属の化合物を併用することもできる。
酸性リン酸エステル化合物としては、下記一般式(I)及び/又は(II)で表される少なくとも1個の水酸基を有するリン酸のエステル構造を有するものが好ましく用いられる。
(式中、R、R’、R”は各々炭素数1以上6以下のアルキル基、シクロヘキシル基、アリール基又は2−ヒドロキシエチル基を表し、式(I)において、RとR’は同一であっても異なっていてもよい。)
このような酸性リン酸エステル化合物の具体例としては、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェートなどが挙げられ、なかでもエチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェートが好ましい。これらの酸性リン酸エステル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸性リン酸エステル化合物にはモノエステル体(II)とジエステル体(I)があるが、モノエステル体、又は、モノエステル体を30重量%以上含むモノエステル体とジエステル体の混合物を用いるのが好ましい。更に好ましい混合物としては、40重量%以上のモノエステル体を含む混合物であり、特に好ましくは、40重量%以上のモノエチルエステル体またはモノブチルエステル体を含む混合物である。
また、それらの混合物は5〜20重量%の正リン酸を不純物として含んでいてよい。
本発明で使用される固体状もしくは液体状のポリエステル重縮合用触媒は、直接、エチレングリコールなどのポリエステル樹脂原料となるグリコールに容易に溶解し、その触媒希釈液として工業的に用いることが可能である。
また、工程(i)で得られた反応液から、1価のアルコールを全量未満の量、留去して濃縮した後、ポリエステルの原料となるグリコールを添加して、更に、このアルコール、チタン化合物、アルカリ土類金属化合物、酸性リン酸エステルの混合物から、アルコールなどの低沸点物を蒸留する工程、即ち、溶媒のアルコールとポリエステルの原料となるグリコールを置換することで高濃度のチタン、アルカリ土類金属、リンを含有する触媒溶液が製造される。この方法により、固体状触媒を経由すること無しに、濃縮された触媒のグリコール溶液を簡便に製造することが可能である。
この場合、蒸留により、アルコールとグリコールとの置換を効率的に行うために、用いるアルコールは、グリコールとの沸点差が50℃以上と沸点差の大きいものが好ましく、前述した1価のアルコールの中でもメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の比較的低沸点のアルコールを用いることが好ましい。これらのアルコールは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
以下に、溶媒として働くアルコールとしてエタノール、原料化合物としてチタン化合物としてテトラ−n−ブチルチタネート、マグネシウム化合物として酢酸マグネシウム・4水和物、酸性リン酸エステル化合物としてエチルアシッドホスフェート(モノエステル体とジエステル体の混合重量比は1:1.22)を用いる場合を例にして、ポリエステル重縮合用触媒の製造方法をより具体的に説明する。
工程(i)では原料投入口、撹拌機、などを付設した反応槽にエタノール、原料化合物を仕込み、撹拌混合して反応させる。反応は穏和な条件で行われ、例えば常圧下10〜80℃好ましくは20〜50℃、5〜60分で均一透明な液にする(工程(i))。反応液が透明になったことを目視で確認後、減圧下で溶媒などの留去を行い、反応液の濃縮を行う(工程(ii))。濃縮は通常150℃以下の温度で一般の蒸留装置、エバポレーター、コニカルドライヤー、スプレードライヤー、遠心薄膜濃縮装置、クラックスドライヤー等を用いて好ましくは120℃以下、特に好ましくは100℃以下の温度で実施される。また、高度な濃縮を行わず、粘稠な液体を得る程度であれば工程(i)の反応器に留出管を備えた減圧設備を附加したもので行うこともでき、この場合には製造装置が簡略化できる。
濃縮工程(ii)の初期においては、主に溶媒として働いたアルコールが留出する。濃縮の後期においては、酢酸マグネシウムに由来する酢酸、水、及び、テトラ−n−ブチルチタネートに由来するブタノールが留出する。このようにして、溶媒として働いたアルコールが90%以上留去された状態においては、粘稠な液体を生じ、次いで、この粘稠な液体状触媒は濃縮が進むと徐々に稠密な液体状物とその表面に生成する固体(粉体)状触媒との混合物となり、更に濃縮が進むと固体状触媒となる。
このような濃縮工程で得られた固体状触媒は、通常、混合した原料化合物の総重量に対して、30〜50重量%の重量減少が認められる(即ち、前記W1/W0=0.5〜0.7。以下、この混合した原料化合物の総重量に対する得られた重縮合用触媒の重量の減少割合を、「製造時重量減少率」と称す場合がある。)。
また、この固体状触媒は主として1〜20重量%のブタノールを含み、またマグネシウムに配位した酢酸(アセタート)をマグネシウム金属のモル数に対して0.8〜1.5モル含有している。このように、高度に濃縮された固体状触媒は輸送性、保存性に対して極めて有利な特性を有している。
得られた固体状触媒は、空気中で取り扱いが可能であり、反応器、ガラス製品への付着性も見られず、水に可溶であることから、反応器の水洗浄も極めて簡便である。
本触媒は密閉した容器中で保存することが好ましく、特に室温で、窒素等の不活性ガスで容器内を置換後、密閉した状態での保存が好ましい。このような不活性ガス雰囲気の条件であれば1年間以上の保存も可能である。
また、重縮合用触媒は、固体状の触媒として単離する前の粘稠な液体状としての取り扱いも可能であり、これはそのまま重縮合用触媒として用いることが可能である。この粘稠な液体状触媒では製造時に20〜10重量%の重量減少が認められる。
このような粘稠な液体の粘性を低下させ、より取り扱いを容易にするために、重縮合用触媒はエチレングリコールなどのようなポリエステル樹脂原料となるグリコールで溶解希釈して触媒溶液として長期間、析出物等を生じることなく保存することもできる。
通常、このような粘稠液状重縮合用触媒をエチレングリコール等のポリエステル樹脂原料グリコールで希釈した後のチタン原子濃度は10,000〜100,000重量ppmであり、好ましくは20,000〜50,000重量ppmである。
また、固体状及び粘稠液を経由しないで、アルコール溶媒とグリコールを置換する方法(段落番号[0034]に記載)においても、同様の濃度のエチレングリコール溶液の製造が可能である。
これらの高チタン濃度の触媒溶液は保存安定性及び輸送性に優れ、触媒使用時には、更にエチレングリコール等のポリエステル樹脂原料グリコールで希釈して使用することができる。触媒使用時の触媒溶液のチタン原子濃度は300〜10,000重量ppmであり、好ましくは400〜5,000重量ppm、更に好ましくは、500〜3,000重量ppmである。
液状の重縮合用触媒ないし触媒溶液についても、空気中での取り扱いが可能であるが、2,3ヶ月以上の長期保存の場合は不活性ガス雰囲気下で保存することが好ましい。
重縮合用触媒のエチレングリコール溶液のpHは通常7以下3以上、好ましくは6.5以下4以上、更に好ましくは6.0以下5.0以上である。pHが7.0を超えると金属が析出し易い傾向となり、pH4.0未満では、経時的に触媒がゲル状態に変質する場合があり、また装置の腐食を招く場合がある。従って、このようなpH範囲となるように、必要に応じてエチレングリコール溶液中に、酸性を示すリン化合物、特に上記酸性リン酸エステル化合物や、アルカリ土類金属化合物等を用いて調製することが好ましい。
また、重縮合用触媒は、エチレングリコールに溶解させて保存が必要な場合、少量の水を含んでいることが好ましい。この場合、好ましい水分含量としては、重縮合用触媒のエチレングリコール溶液全体に対する重量濃度として、10重量%以下が好ましく、更に好ましくは5重量%以下、特には1.5重量%以下が好ましい。また、0.01重量%以上が好ましく、更に好ましくは0.1重量%以上、特には0.5重量%以上が好ましい。水分含量が上記上限を超えると、チタン化合物が水と反応することでゲル化して均一溶液が得にくい傾向となる。また0.01重量%未満であると得られる重縮合用触媒液を長期保存すると析出が起き白濁しやすい傾向となる。また、水は触媒溶液製造時に使用するエチレングリコール中に適量添加してもよいし、触媒溶液製造中及び/又は製造後に添加してもよい。
このようにして、長期間安定な均一触媒溶液が得られる理由については、酸性リン酸エステル化合物とアルカリ土類金属化合物、チタン化合物を反応させることで、チタン/アルカリ土類金属/リンの3元系複合錯体が形成され、これがグリコール溶液中で安定であることによるものと推察される。
重縮合用触媒は、元素分析、赤外分光(IR)分析、アニオン分析の結果から同定されるチタン/アルカリ土類金属/リンの3元系複合錯体を含むものであり、好ましくは、下記一般式(III)で表される基本構造を少なくとも1つ有するものである。
(式中、Tはチタン原子、Mはアルカリ土類金属原子、R1は炭素数1以上6以下のアルキル基、シクロヘキシル基、アリール基又は2−ヒドロキシエチル基であり、触媒のグリコール溶媒に対する溶解性が優れているエチル基、ブチル基が好ましく、特にエチル基が好ましい。
R2は炭素数1〜3のアルキル基であり、触媒のグリコール溶媒に対する溶解性が優れているメチル基が好ましい。)
また、下記一般式(IV)で示される多量体構造も、本発明の重縮合用触媒中のチタン/アルカリ土類金属/リンの3元系複合錯体の可能な存在形態である。
(式中、T,M,R1,R2は一般式(III)におけると同義である。)
<ポリエステル樹脂の製造方法>
本発明に使用されるポリエステル樹脂を製造する方法は、上述のようなポリエステル重縮合用触媒を用い、その製造中に顔料を添加する以外は特に制限されず、基本的には、ポリエステル樹脂の慣用の製造方法を用いることができる。
以下に、ポリエステル樹脂の慣用の製造方法の一例として、ポリエチレンテレフタレートの製造を例に本発明に使用されるポリエステル樹脂の製造方法を説明する。
ポリエチレンテレフタレートの製造方法としては、具体的には、テレフタル酸若しくはそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分とを、エステル化反応槽でエステル化反応させ、若しくは、エステル交換触媒の存在下にエステル交換反応させた後、得られたエステル化反応生成物若しくはエステル交換反応生成物であるポリエステル低分子量体を重縮合槽に移送し、重縮合用触媒の存在下に、溶融重縮合させ、更に必要に応じて固相重縮合する方法が挙げられる。また、この製造方法は連続式でも、回分式でもよく、特に制限はされない。ここで主成分とするとは50モル%以上を占めることを言う。
なお、テレフタル酸のエステル形成性誘導体としては、例えば、各々のアルキル基が炭素数1〜4程度のアルキルエステル、及びハロゲン化物等が挙げられる。また、テレフタル酸若しくはそのエステル形成性誘導体以外のジカルボン酸成分として、例えば、フタル酸、イソフタル酸、ジブロモイソフタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、フェニレンジオキシジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸、及び、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、並びにこれらの各々のアルキル基が炭素数1〜4程度のアルキルエステル、及びハロゲン化物等が挙げられ、これらのジカルボン酸成分の1種又は2種以上が共重合成分として各種の用途別に用いられてもよい。特に、イソフタル酸やそのエステル形成性誘導体等は繊維同士を接着させる接着性樹脂の共重合成分として用いられ、スルホイソフタル酸ナトリウムやそのエステル形成性誘導体等はポリエステル繊維の染色性を良くするための共重合成分として用いられる。
イソフタル酸やそのエステル形成性誘導体を共重合成分として配合させてポリエステル樹脂組成物に接着性を持たせるためには、通常ジカルボン酸成分の0.5モル%以上50モル%以下、好ましくは10モル%以上50モル%以下、さらに好ましくは20モル%以上50モル%以下をイソフタル酸やそのエステル形成性誘導体とすることが好ましい。これよりも少ない共重合量では接着性が劣る傾向となり、これよりも多い共重合量では得られるポリエステルの取り扱いが困難となる。
これらのポリエステル樹脂は一般的に芯鞘構造をもつ繊維の鞘側に用いられる。また、芯鞘構造をもつ繊維は一般的に不織布などに用いられる。
またスルホイソフタル酸ナトリウムやそのエステル形成性誘導体等は通常ジカルボン酸成分の0.25モル%以上20モル%以下とし、好ましくは0.5モル%以上15モル%以下、さらに好ましくは0.5モル%以上10モル%以下である。共重合量がこの範囲未満では以下に述べる染色性が向上せず、この範囲を超えると重縮合時にポリエステルの溶融粘性が高くなりすぎてなり、生産が困難となる。これらの成分はポリエステル樹脂をアルカリや熱水等で可溶とするために添加され、繊維の表面が溶解されることで染料の定着がよくなり染色性が向上する。
また、その用途に応じてその他のジオール成分を添加することができ、その他のジオール成分として、例えば、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、2,5−ノルボルナンジメチロール等の脂環式ジオール、及び、キシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等の芳香族ジオール、並びに、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキサイド付加物又はプロピレンオキサイド付加物等が挙げられ、これらのジオール酸成分の1種又は2種以上が共重合成分として用いられてもよい。これらのジオール成分の添加量はポリエステル樹脂の用途に応じて決定される。
更に、例えば、グリコール酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−β−ヒドロキシエトキシ
安息香酸等のヒドロキシカルボン酸やアルコキシカルボン酸、及び、ステアリルアルコール、ヘネイコサノール、オクタコサノール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、ベヘン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸等の単官能成分、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレンテトラカルボン酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、等の三官能以上の多官能成分等の1種又は2種以上が共重合成分として用いられてもよい。
本発明において、テレフタル酸もしくはそのエステル形成性誘導体を主成分とする前記ジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とする前記ジオール成分、及び必要に応じて用いられる前記共重合成分とを、エステル化反応若しくはエステル交換反応させるにあたっては、これらを、ジカルボン酸成分に対するジオール成分のモル比が下限として通常1.02、好ましくは1.03、上限として通常2.2、好ましくは2.0の範囲で混合するのが一般的である。
エステル化反応は、例えば、単一のエステル化反応槽、又は、複数のエステル化反応槽を直列に接続した多段反応装置を用いて、エチレングリコールの還流下、反応で生成する水と余剰のエチレングリコールを系外に除去しながら、エステル化率(原料ジカルボン酸成分の全カルボキシル基のうちジオール成分と反応してエステル化したものの割合)が、通常90%以上、好ましくは93%以上に達するまで行われる。また、得られるエステル化反応生成物としてのポリエステル低分子量体の数平均分子量は500〜5,000であるのが好ましい。
エステル化反応における反応条件の例としては、単一のエステル化反応槽を用いる場合、通常200〜280℃程度の温度、大気圧に対する相対圧力を、通常0〜400kPa(0〜4kg/cm2G)程度とし、撹拌下に1〜10時間程度の反応時間とする方法が一般的である。また、複数のエステル化反応槽を用いる場合は、第1段目のエステル化反応槽における反応温度の下限は通常240℃、好ましくは245℃、上限は通常270℃、好ましくは265℃、反応圧力は大気圧に対する相対圧力で下限が通常5kPa(0.05kg/cm2G)、好ましくは10kPa(0.1kg/cm2G)、上限は通常300kPa(3kg/cm2G)、好ましくは200kPa(2kg/cm2G)とし、最終段における反応温度を、下限を通常250℃、好ましくは255℃、上限を通常280℃、好ましくは275℃、反応圧力を大気圧に対する相対圧力で通常0〜150kPa(0〜1.5kg/cm2G)、好ましくは0〜130kPa(0〜1.3kg/cm2G)とする方法が通常用いられる。
なお、エステル化反応においては、反応系内に例えば、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の第三級アミン、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム等の水酸化第四級アンモニウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム等の塩基性化合物等を少量添加しておくことにより、エチレングリコールからのジエチレングリコールの副生を抑制することができるため必要に応じて用いても良い。
このようにして得られるポリエステル低分子量体の溶融重縮合法としては、単一の溶融重縮合槽、又は、複数の溶融重縮合槽を直列に接続した、例えば、第1段目が撹拌翼を備えた完全混合型の反応器、第2段及び第3段目が撹拌翼を備えた横型プラグフロー型の反応器からなる多段反応装置を用いて、減圧下に、生成するエチレングリコールを系外に留出させながら行う方法が一般に用いられる。
溶融重縮合における反応条件の例としては、単一の重縮合槽を用いる場合、通常250〜290℃程度の温度、常圧から漸次減圧として、最終的に、絶対圧力を、通常1.3〜0.013kPa(10〜0.1Torr)程度とし、撹拌下に1〜20時間程度の反応時間とする方法が一般的である。また、複数の重縮合槽を用いる場合の一例としては、第1段目の重縮合槽における反応温度を、下限は通常250℃、好ましくは260℃、上限は通常290℃、好ましくは280℃、反応圧力を絶対圧力で、上限を通常65kPa(500Torr)、好ましくは26kPa(200Torr)、下限を通常1.3kPa(10Torr)、好ましくは2kPa(15Torr)とし、最終段における反応温度を、下限は通常265℃、好ましくは270℃、上限は通常300℃、好ましくは295℃、反応圧力を絶対圧力で、上限を通常1.3kPa(10Torr)、好ましくは0.65kPa(5Torr)、下限を通常0.013kPa(0.1Torr)、好ましくは0.065kPa(0.5Torr)とする方法が挙げられる。更に、中間段を用いる場合の反応条件としては、上記条件の中間の条件が選択され、例えば、3段反応装置における第2段の反応条件の一例として、反応温度を、下限は通常265℃、好ましくは270℃、上限は通常295℃、好ましくは285℃、反応圧力は絶対圧力で、上限は通常6.5kPa(50Torr)、好ましくは4kPa(30Torr)、下限は通常0.13kPa(1Torr)、好ましくは0.26kPa(2Torr)とする方法が挙げられる。
なお、従来法では通常重縮合反応開始以前の段階でリン化合物を添加することが多いが、本発明で使用される触媒はリン化合物である酸性リン酸エステル化合物を予め含んでいるので、別途リン化合物を添加せずに重縮合反応を行うこともできる。ただし、本発明で用いられる方法は、リン化合物の添加を何ら排除するものではない。
なお、本発明に開示されているポリエステル重縮合用触媒の反応系への添加は、前記ジカルボン酸成分とジオール成分の混合、調製段階、前記エステル化反応の任意の段階、又は、溶融重縮合の初期の段階のいずれであってもよい。しかし、色調、透明性に優れたポリエステル樹脂を高反応速度で製造するという本発明の効果を有効に発現するためには、本発明で使用されるポリエステル重縮合用触媒の反応系への添加をエステル化反応においてエステル化率が90%以上となった段階以降に行うのが好ましく、実質的にエステル化工程が終了した後、溶融重縮合工程の初期の段階までの間、特には溶融重縮合開始前までに添加するのがより好ましい。中でも、多段反応装置における最終段のエステル化反応槽、又は、エステル化槽から溶融重縮合工程への移送段階のエステル化反応生成物に添加するのが好ましい。エステル化率が90%未満の段階で重縮合用触媒を添加すると、未反応のカルボン酸によって重縮合用触媒が失活する場合があり、好ましくない。
また、本発明で使用される重縮合用触媒を添加する回数は特に制限されず、例えば必要な量を1度に添加してもよく、必要に応じて複数回に分けて添加してもよい。
また、本発明で使用される重縮合用触媒は、製造するポリエステル樹脂の主原料ジオール成分、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオールに溶解して添加することができる。本発明で使用されるポリエステル重縮合用触媒は、得られるポリエステル樹脂中のチタン濃度が、チタン原子換算で通常0.1〜200重量ppm、好ましくは0.5〜100重量ppm、より好ましくは3〜50重量ppm、更に好ましくは4〜30重量ppmの範囲で使用される。
また本発明では顔料を添加することを必須とする。顔料としては本発明の効果を阻害しないものであれば特に制限されず、市販されている顔料、例えば有機顔料、無機顔料等の何れも使用することが出来る。特に繊維用途としては一般的に無機顔料が好ましく用いられ、中でも酸化亜鉛及び/または酸化チタンが好ましく、特に酸化チタンが好ましく用いられる。これはポリエステルのつや消し効果が高いこと、およびコストの面で有利であることから選ばれる。
尚、酸化チタンの添加はエステル化反応時、あるいはエステル化反応終了後、重縮合反応開始までの任意の時期に添加することができる。しかし、前記の重縮合用触媒と混合して添加すると重縮合用触媒の活性が低下する傾向となるので好ましくなく、前記重縮合用触媒と酸化チタンとは別々に添加するほうが好ましい。重縮合用触媒と酸化チタンを混合すると、重縮合用触媒として活性を有するチタン化合物の成分が、酸化チタンの表面に吸着されるため、重縮合の活性が低下するものと考えられる。
顔料の添加方法は特に制限されず、粉体のまま添加する方法やスラリーとして添加する方法等で行うことができるが、添加が容易であり、添加量の調整を精度よく行うことができるという点ではスラリーによる添加が好ましい。顔料をスラリーとする分散媒は特に制限されないが、得られるポリエステルの物性に与える影響が少ないという点でジオール類が好ましく、中でもエチレングリコールおよび1,4-ブタンジオールが好ましく、特に得られるポリエステルの強度が高くなるという点でエチレングリコールが好ましい。スラリー濃度は特に制限されないが、一般的に流動性および重縮合反応時のプロセスへの負荷を抑えるという点で上限は50重量%、好ましくは45重量%、特に好ましくは35重量%であり、下限は5重量%、好ましくは10重量%、特に好ましくは15重量%である。スラリーの添加方法は、例えばバッチ法や連続法が挙げられるが、重縮合反応を連続で行っている場合には、添加量の制御を容易にするために連続法による添加が好ましい。顔料をエチレングリコールのスラリーとする調製方法としては、例えば、顔料をエチレングリコールに分散させた後に、該分散液をサンドミルを用いてガラスビーズによって顔料の粗大粒子を粉砕し、更にデカンター及び濾過によってガラスビーズの破片および顔料の粗大粒子を取り除く調製方法が挙げられる。
本発明で用いることのできる顔料は特に限定されないが、酸化チタンの場合には一般的に繊維用にはアナターゼ型のものが好ましく用いられる。用いることのできる顔料の粒径は、遠心沈降測定法で通常は1μm以下、好ましくは0.3±0.15μmの粒径のものが用いられる。顔料の粒径が大きすぎると、成形時に異物となり、たとえば紡糸工程で糸切れを起こすため好ましくない。また、顔料の添加量は、得られるポリエステル樹脂に対して通常0.05〜3.0重量%、好ましくは0.1〜2.0重量%、特に好ましくは0.2〜1.0重量%である。添加量が上記範囲を超えると、成形体に凝集体として異物化する場合があり繊維に成形する際の糸切れの原因となり、添加量が上記範囲未満であると繊維に成形したばあい十分な艶消し性を付与できない傾向となるので好ましくない。顔料は得られるポリエステル中の分散性を改良する目的で、表面処理したものを用いることもできる。このような顔料は必要とする機能を付与するために合成することも可能であるが、通常は市販のものを用いることができる。
このような溶融重縮合により得られるポリエステル樹脂組成物の固有粘度の値としては、下限は通常は0.40dl/g、好ましくは0.45dl/g、上限は通常は0.80dl/g、好ましくは0.75dl/gとなる。この範囲より低いと得られる繊維の機械的強度が劣ることとなり、この範囲より高いと操業性が劣ることとなる。
こうして得られたポリエステル樹脂組成物は色調が良好でかつ異物の含有量が少ないことから成形されて各用途に用いられる。例えば繊維用途に用いられる場合には口金より押出された繊維状のものをさらに延伸し紡糸することで繊維に加工される。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。
[重縮合用触媒調製の実施例及び比較例]
以下に重縮合用触媒調製の実施例及び比較例を挙げる。
なお、以下の実施例及び比較例で調製した重縮合用触媒又は重縮合用触媒溶液の保存安定性評価及びpH測定の方法は以下の通りである。
<重縮合用触媒又は重縮合用触媒溶液の保存安定性評価方法>
重縮合用触媒については50mL摺栓付き三角フラスコに特級エチレングリコールを50g入れ、触媒を0.5重量%となるように添加して、テフロン(登録商標)製スターラーバーで激しく2時間撹拌した。得られた均一溶液を室温(23℃)で静置して、2週間後の析出物の有無の様子を観察した。
また、重縮合用触媒溶液については、これをそのまま室温(23℃)で静置して、2週間後の析出物の有無の様子を観察した。
<重縮合用触媒又は重縮合用触媒溶液のpH測定方法>
東亜DKK社製自動滴定装置(AUT−501型)を用い、大気下で、pH電極を重縮合用触媒のエチレングリコール溶液又は重縮合用触媒溶液に浸して測定した。
また、重縮合用触媒又は触媒のエチレングリコール溶液中の有機成分(酢酸、アセタート、ブタノール、エタノール、エチレングリコールモノ酢酸エステル、エチレングリコール)の分析方法は次の通りである。
<カルボン酸成分以外の有機成分の分析>
重縮合用触媒50mg、又は触媒のエチレングリコール溶液の場合は500mgをメタノール10mlに溶解又は懸濁したものをガスクロマトグラフィー測定試料とした。ガスクロマトグラフィーの分析条件は、以下のとおりである。
装置:Agilent製 HP6890
検出器条件:200℃、FID
カラム:Agilent HP−INNOWAX 30m×0.25mmΦ
膜厚0.5μm
キャリアー:ヘリウム 1ml/min
昇温条件:試料注入後40℃で2min保持。その後60℃まで5℃/minで昇温
し、その後220℃まで10℃/minで昇温。
注入口条件:320℃、スプリット比1/50
試料注入量:2μL
内部標準物質:イソアミルアルコール
<カルボン酸成分の分析>
重水約1500μlに、試料100mgと内部標準物質であるジメチルスルホキシド(DMSO)を5.0mg添加し、溶解後、そのうち、750μlを外径5mmの試料管に移し、Bruker社製AV400M分光計を使用して、室温下、待ち時間20秒でH−NMRスペクトルを測定した。
本分析により、金属に配位子したアセタート(CHCOO)と遊離酢酸(CHCOOH)の合計を定量した。
<元素分析(C、H)>
C、H分析は、パーキンエルマー社製2400IICHN−O元素分析計(CHNモード)を用いて測定した。
<触媒中の金属元素分析>
重縮合用触媒0.1g、又は触媒のエチレングリコール溶液については0.2gをケルダールフラスコ中で硫酸存在下、過酸化水素で湿式分解の後、蒸留水にて定容したものについて、プラズマ発光分光分析装置(JOBIN YVON社製ICP−AES ULtrace JY−138U型)を用いて定量分析し、触媒中の金属含量(重量%)に換算した。
<IR測定>
Nicolet製FT710を用いて、触媒試料25mgをダイヤモンド粉末100mgで希釈後セル充填して測定した。
実施例1 重縮合用触媒の調製(重縮合用触媒A)
撹拌装置付き500mLのガラス型ナス型フラスコに酢酸マグネシウム・四水和物を116.6g入れ、更に250gの無水エタノール(純度99%以上)を加えた。更に、エチルアシッドホスフェートを71.6g添加して20分室温撹拌することで、均一溶液が得られた。次にテトラ−n−ブチルチタネートを75.0g添加し、この液を1Lのナス型フラスコに移し、エバポレーターで60℃、約2時間かけて濃縮を行い、粘稠な液体(重縮合用触媒A)が216.5g残るまで溶媒を留去させた。
分析値:Ti6.0,Mg7.5,P9.0,C22.2(重量%)
IR(cm−1):3500(νOH)、2980(νCH)、1400〜1600(νC=O)、1050(νC−O)
次に内容量が422gとなるようにエチレングリコールを205.5g添加して80℃、5Torrで更に低沸点物を2時間かけて留去し重縮合用触媒A溶液とした。
重縮合用触媒Aにおいて、触媒中に含まれるアセタートの分析値(モル基準)とマグネシウム含量(モル基準)の分析値よりL/Mを算出すると共に、炭素含量(重量基準)とチタン含量(重量基準)の分析値よりT/Cを算出したところ、算出されるL/M及びT/Cの値はそれぞれ1.6、0.27であった。上記の重合触媒溶液中のチタン原子の濃度は2.5重量%であり、チタン原子、マグネシウム原子、リン原子の比(重量基準)は1:1.25:1.5であった。
この重縮合用触媒A溶液の保存安定性は良好であり、析出物の生成は全く認められなかった。また、pHは5.8であった。
実施例2 重縮合用触媒の調製(重縮合用触媒B)
実施例1において酢酸マグネシウム・四水和物を45.0gとし、エチルアシッドホスフェートを35.8gとし、エバポレーターで70℃、約1時間かけて濃縮を行った他は、実施例1と同様に調整を行い、白色ペースト(重縮合用触媒B)96.1gを得た。
分析値:Ti10.2,Mg5.2,P7.6,C25.8,H5.3(重量%)
次に内容量が454gとなるようにエチレングリコールを357.9g添加して60℃、1Torrで更に低沸点物を2時間かけて留去し重縮合用触媒B溶液とした。
実施例1と同様に算出されるL/M及びT/Cの値はそれぞれ0.9、0.4であった。上記の重合触媒溶液中のチタン原子の濃度は2.3重量%であり、チタン原子、マグネシウム原子、リン原子の比(重量基準)は1:0.5:0.75であった。 また、エチレングリコール中における保存安定性は良好であり、析出物の生成は認められなかった。pHは6.1であった。
(比較例1.重縮合用触媒の調製(重縮合用触媒C))
撹拌装置付き500mLのガラス製ナス型フラスコに酢酸マグネシウム・4水和物を31.8g入れ、更に226gの無水エタノール(純度99%以上)及びテトラ−n−ブチルチタネートを50.5g順次添加して均一溶液を得た。次に、正リン酸(85重量%水溶液)を17.2g添加したところ、直ちに大量の白色析出物が観察された。そのまま2時間撹拌後、1時間放置することにより沈殿した白色析出物を濾過し、アセトン、ジエチルエーテルで洗浄し、次いで空気乾燥した。得られた白色固形物質(重縮合用触媒Cとする)50gは、瑪瑙乳鉢で粉砕して粉末にした。
分析値:Ti15.0,Mg7.4,P9.3,C15.9,H4.5(重量%)
重縮合用触媒Cはエチレングリコールに対する溶解性は全く認められず、保存安定性を評価できなかった。
実施例1と同様に算出されるL/M及びT/Cの値はそれぞれ0.93、0.94であった。
このように、T/C値が0.50を超えるとエチレングリコールに対する溶解性を欠き、取扱いが不便であり、実用に不都合であることが分かる。
表1に、実施例1、2及び比較例1について触媒名、触媒形態、触媒中のチタン、マグネシウム、炭素、リン原子、酢酸とアセタートの総含量、ブタノール含量(重量%)、及び、それらから算出されるL/M(モル比)、T/C(重量比)、M/P(モル比)、T/P(モル比)等をまとめた。更に、触媒の濃縮度の尺度でもある製造時重量減少率(触媒重量をアルコールを除いた原料化合物の総重量で除した値)と、触媒の保存安定性評価結果、及びpHの測定結果を示した。
以下にポリエステル樹脂製造の実施例及び比較例を挙げる。
なお、以下の実施例及び比較例におけるポリエステル樹脂の平均エステル化率、固有粘度、溶融重合速度、色調、ジエチレングリコール,イソフタル酸単位の含有量、及び金属含有量は、次のようにして求めた。
<平均エステル化率>
試料を重水素化クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール(重量比7/3)の混合溶媒に濃度3重量%で溶解させた溶液について、核磁気共鳴装置(日本電子社製「JNM−EX270型」)にて、H−NMRを測定して各ピークを帰属し、末端カルボキシル基量(Aモル/試料トン)をピークの積分値から計算し、以下の式により、テレフタル酸単位の全カルボキシル基のうちエステル化されているものの割合としてのエステル化率(E%)を算出した。
エステル化率(E)=〔1−A/{(1000000/192.2)×2}〕×100
<固有粘度の測定>
ペレット状ポリエステル樹脂を凍結粉砕した試料0.25gを、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合液を溶媒として、濃度(c)を1.0g/dlとして、110℃で30分間保持することにより溶解させた後、ウベローデ型毛細粘度管を用いて、30℃で、原液との相対粘度(ηrel)を測定し、この相対粘度(ηrel)−1から求めた比粘度(ηsp)と濃度(c)との比(ηsp/c)を求め、同じく濃度(c)を0.5g/dl、0.2g/dl、0.1g/dlとしたときについてもそれぞれの比(ηsp/c)を求め、これらの値より、濃度(c)を0に外挿したときの比(ηsp/c)を固有粘度(dl/g)として求めた。
<重縮合速度>
ポリエステル樹脂の固有粘度(dl/g)を溶融重縮合に要した時間(分)で除した値として算出した。
<色調>
重縮合反応で得られたチップ状ポリエステル樹脂を内径30mm、深さ12mmの円柱状の粉体測定用セルに充填し、測色色差計ZE−2000(日本電色工業(株))を使用して、JIS Z8730の参考例1に記載されるLab表示系におけるハンターの色差式の色差式の色座標によるカラーb値を、反射法により測定セルを90度ずつ回転させて4箇所測定した値の単純平均値として求めた。
<ジエチレングリコール(DEG),イソフタル酸、スルホイソフタル酸単位の含有量>
ポリエステルチップを重水素化トリフルオロ酢酸に常温で溶解して3重量%溶液とした。日本電色株式会社製JNM−EX270型核磁気共鳴装置を使用して1H−NMRを測定して、各ピークの帰属を行い、その積分比からポリエステル樹脂中のジエチレングリコール量(モル%)及びイソフタル酸量(モル%)を算出した。
<金属原子含有量>
得られたポリエステル樹脂試料2.5gを、予めポリエステルを溶媒に溶解し、未溶解の滑剤を遠心分離した後、上澄み液の溶媒を蒸発、乾固させたものについて硫酸存在下に過酸化水素で常法により灰化、完全分解後、蒸留水にて50mLに定容したものについて、プラズマ発光分光分析装置(JOBIN YVON社製ICP−AES「JY46P型」)を用いて定量し、ポリエステル中のppm量に換算した。
<粒径10μm以上の異物数>
ポリエステル試料3.0mgを精秤し、2枚のプレパラートにはさみホットプレート上で加熱し、上から軽く押さえてポリエステル試料を薄く延ばした。プレパラートは急冷した後、位相差顕微鏡を用いて300倍の倍率で透過光で観察し10μm以上の大きさの異物をマーキングした。次に、反射光に切り替え異物の色を観察し、茶色の劣化物由来の異物以外の異物の数を数え、それを異物数とした。測定を2回実施し、測定値を平均し試料10mgの値に換算した。このとき10μm以上の異物数が0〜10個の場合を良好、11〜15個の場合を使用可能、16個以上の場合を不良と判断した。
<ホモPETの例>
実施例3
<溶融重縮合>
テレフタル酸とエチレングリコールを原料として、直接エステル化法により製造したエチレンテレフタレート低重合体157gを260℃で溶解させた。この低重合体のエステル化率は96.5%であった。その後、酸化チタンを得られるポリエステルの理論収量に対して0.35重量%となるようにエチレングリコールのスラリーとして添加し、さらに実施例1で調製した重縮合用触媒Aを、チタン金属濃度が1270重量ppm、水分濃度が0.5重量%のエチレングリコール溶液として、得られるポリエステルの理論収量に対してチタン原子として8重量ppmとなるよう添加した。
次いで溶解液を攪拌翼により攪拌しながら、80分間で280℃まで段階的に昇温するとともに、反応系の圧力を60分間で常圧から絶対圧力1.3×10Paまで段階的に下げ、温度280℃、絶対圧力2.6×10Paに到達した後は、温度、圧力を一定に保った。
攪拌動力が所定トルクに到達後、攪拌を止めて系内に窒素ガスを導入して重縮合反応を停止した。その後ポリマーを反応容器より抜き出し、水冷することにより、ストランド状のポリマーを得た。これを切断することによりペレット状とし評価を実施した。
減圧開始から重縮合反応停止までの時間(重縮合反応時間)、得られたポリエステルの固有粘度、色調としての色座標b値、ジエチレングリコール(DEG)含有量、及び異物数の測定結果を表2に示す。
実施例4
<溶融重縮合>
実施例2で調製した重縮合用触媒Bを、チタン金属濃度が1450重量ppm、水分濃度が0.6重量%としたエチレングリコール溶液として、得られるポリエステルの理論収量に対してチタン原子として8重量ppmとなるよう添加した以外は、実施例3と同様にして重縮合反応及び評価を実施した。評価の結果を表2に示す。
実施例5
<溶融重縮合>
実施例2で調製した重縮合用触媒Bを、チタン金属濃度が1450重量ppm、水分濃度が0.6重量%としたエチレングリコール溶液として、得られるポリエステルの理論収量に対してチタン原子として20重量ppmとなるよう添加し、さらにトリエチルリン酸のエチレングリコール溶液(トリエチルリン酸として濃度 5重量%)を得られるポリエステルの理論収量に対してリン原子として10ppm添加した以外は、実施例3と同様にして重縮合反応及び評価を実施した。評価の結果を表2に示す。
実施例6
<溶融重縮合>
実施例2で調製した重縮合用触媒Bを、チタン金属濃度が1450重量ppm、水分濃度が0.6重量%としたエチレングリコール溶液として、得られるポリエステルの理論収量に対してチタン原子として3重量ppmとなるよう添加した以外は、実施例3と同様にして重縮合反応及び評価を実施した。評価の結果を表2に示す。
この例では触媒量が少ないために重縮合活性がやや悪い例である。
実施例7
<溶融重縮合>
実施例2で調製した重縮合用触媒Bを、チタン金属濃度が1450重量ppm、水分濃度が0.6重量%としたエチレングリコール溶液として、得られるポリエステルの理論収量に対してチタン原子として50重量ppmとなるよう添加した以外は、実施例3と同様にして重縮合反応及び評価を実施した。評価の結果を表2に示す。
この例では触媒量が多いために重縮合活性は良好であるものの、色調が悪い例である。
比較例2
<重縮合用触媒の調製>
テトラブトキシチタン溶液を、以下の方法で調製した。窒素雰囲気下で200mLのフラスコに100mLのエチレングリコールを秤取し、このフラスコを攪拌しながらテトラブトキシチタン0.7gを滴下した。滴下終了後、室温で1時間攪拌したところ、無色透明の溶液が得られた。
酢酸マグネシウム溶液を、以下の方法で調製した。500mLのフラスコに200mLのエチレングリコールを秤取し、このフラスコを攪拌しながら酢酸マグネシウム四水和物2.2gを投入した。投入終了後、室温で30分攪拌したところ、無色透明の溶液が得られた。
<溶融重縮合>
実施例3において、反応器内に重縮合用触媒を投入する代わりに、上記で調製したテトラブトキシチタンのエチレングリコール溶液を得られるポリエステルの理論収量に対してチタン原子として6重量ppm、酢酸マグネシウム四水和物のエチレングリコール溶液を得られるポリエステルの理論収量に対してマグネシウム原子として8重量ppm、さらにエチルアシッドホスフェートのエチレングリコール溶液(エチルアシッドホスフェートとして0.15重量%)を得られるポリエステルの理論収量に対してリン原子として10重量ppmとなるように別々に投入した以外は実施例3と同様にして重縮合反応及び評価を実施した。評価の結果を表2に示す。
比較例3
<溶融重縮合>
実施例3において、反応器内に重縮合用触媒を投入する代わりに、三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液(三酸化アンチモンとして0.98重量%)を得られるポリエステルの理論収量に対してアンチモン原子として250重量ppm、さらにエチルアシッドホスフェートのエチレングリコール溶液(エチルアシッドホスフェートとして0.15重量%)を得られるポリエステルの理論収量に対してリン原子として15重量ppmとなるように別々に投入した以外は実施例3と同様にして重縮合反応及び評価を実施した。評価の結果を表2に示す。
<イソフタル酸(IPA)共重合系の例>
実施例8
テレフタル酸とエチレングリコールを原料として、直接エステル化法により製造したエチレンテレフタレート低重合体94.1gを260℃で溶解させた。そこにイソフタル酸 51.9g、エチレングリコール29.1gを加えてエステル化反応を105分実施した。この低重合体中のイソフタル酸成分は全酸成分に対して40モル%であり、この低重合体のエステル化率は96.5%であった。その後、酸化チタンを得られるポリエステルの理論収量に対して0.35重量%となるようにエチレングリコールのスラリーとして添加し、さらに実施例2で調製した重縮合用触媒Bを、チタン金属濃度が1480重量ppm、水分濃度が0.5重量%のエチレングリコール溶液として、得られるポリエステルの理論収量に対してチタン原子として6重量ppmとなるよう添加した。
次いで溶解液を攪拌翼により攪拌しながら、80分間で280℃まで段階的に昇温するとともに、反応系の圧力を60分間で常圧から絶対圧力1.3×10Paまで段階的に下げ、温度280℃、絶対圧力2.6×10Paに到達した後は、温度、圧力を一定に保った。
攪拌動力が所定トルクに到達後、攪拌を止めて系内に窒素ガスを導入して重縮合反応を停止した。その後ポリマーを反応容器より抜き出し、水冷することにより、ストランド状のポリマーを得た。これを切断することによりペレット状とし評価を実施した。
減圧開始から重縮合反応停止までの時間(重縮合反応時間)、得られたポリエステルの固有粘度、計算で得られる重縮合速度、色調としての色座標b値、及び異物数の測定結果を表3に示す。
比較例4
<重縮合用触媒の調製>
比較例2と同様にテトラブトキシチタン溶液および酢酸マグネシウム溶液を調製した。
<溶融重縮合>
実施例8において、反応器内に重縮合用触媒を投入する代わりに、上記で調製したテトラブトキシチタンのエチレングリコール溶液を得られるポリエステルの理論収量に対してチタン原子として6重量ppm、酢酸マグネシウム四水和物のエチレングリコール溶液を得られるポリエステルの理論収量に対してマグネシウム原子として8重量ppm、さらにエチルアシッドホスフェートのエチレングリコール溶液(0.15重量%)を得られるポリエステルの理論収量に対してリン原子として10重量ppmとなるように別々に投入した以外は実施例8と同様にして重縮合反応及び評価を実施した。評価の結果を表3に示す。
比較例5
<溶融重縮合>
実施例8において、反応器内に重縮合用触媒を投入する代わりに、三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を得られるポリエステルの理論収量に対してアンチモン原子として250重量ppmを投入した以外は実施例8と同様にして重縮合反応及び評価を実施した。評価の結果を表3に示す。
<スルホイソフタル酸(SIP)共重合系の例>
実施例9
テレフタル酸とエチレングリコールを原料として、直接エステル化法により製造したエチレンテレフタレート低重合体の溶解液45.9kgを250℃で保持した重縮合反応槽に移送しこの低重合体に5−スルホイソフタル酸ナトリウム ジヒドロキシエチルエステル4.52kgおよびエチレングリコール3.42kgを添加し40分間エステル交換反応を実施した。この低重合体中のスルホイソフタル酸成分は全酸成分に対して5.0モル%であり、この低重合体のエステル化率は98.2%であった。その後、酸化チタンを得られるポリエステルの理論収量に対して0.20重量%となるようにエチレングリコールのスラリーとして添加し、さらに実施例2で調製した重縮合用触媒Bを、チタン金属濃度が1480重量ppm、水分濃度が0.5重量%のエチレングリコール溶液として得られるポリエステルの理論収量に対してチタン原子として6重量ppmとなるよう添加した。
次いで溶解液を攪拌翼により攪拌しながら、80分間で280℃まで段階的に昇温するとともに、反応系の圧力を60分間で常圧から絶対圧力1.3×10Paまで段階的に下げ、温度280℃、絶対圧力2.6×10Paに到達した後は、温度、圧力を一定に保った。
攪拌動力が所定トルクに到達後、攪拌を止めて系内に窒素ガスを導入して重縮合反応を停止した。その後ポリマーを反応容器より抜き出し、水冷することにより、ストランド状のポリマーを得た。これを切断することによりペレット状とし評価を実施した。
減圧開始から重縮合反応停止までの時間(重縮合反応時間)、得られたポリエステルの固有粘度、計算で得られる重縮合速度、色調としての色座標b値、及び異物数の測定結果を表4に示す。
比較例6
<重縮合用触媒の調製>
比較例2と同様にテトラブトキシチタン溶液および酢酸マグネシウム溶液を調製した。
<溶融重縮合>
実施例9において、反応器内に重縮合用触媒を投入する代わりに、上記で調製したテトラブトキシチタンのエチレングリコール溶液を得られるポリエステルの理論収量に対してチタン原子として6重量ppm、酢酸マグネシウム四水和物のエチレングリコール溶液を得られるポリエステルの理論収量に対してマグネシウム原子として8重量ppm、さらにエチルアシッドホスフェートのエチレングリコール溶液(エチルアシッドホスフェートとして0.15重量%)を得られるポリエステルの理論収量に対してリン原子として10重量ppmとなるように別々に投入した以外は実施例9と同様にして重縮合反応及び評価を実施した。評価の結果を表4に示す。
比較例7
<溶融重縮合>
実施例7において、反応器内に重縮合用触媒を投入する代わりに、三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を得られるポリエステルの理論収量に対してアンチモン原子として250重量ppmを投入した以外は実施例9と同様にして重縮合反応及び評価を実施した。評価の結果を表4に示す。

Claims (10)

  1. テレフタル酸及び/またはそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分とを重縮合触媒存在下に重縮合させて得られるポリエステル樹脂と顔料とを含むポリエステル樹脂組成物であって、重縮合用触媒が
    チタン原子、アルカリ土類金属原子、リン原子及び炭素原子を含有するポリエステル重合用触媒であって、炭素原子の少なくとも一部が有機酸及び/又はカルボキシラートに由来しており、チタン原子の含有量T(重量基準)が4〜20重量%であり、有機酸及び/又はカルボキシラートの含有量L(モル基準)、アルカリ土類金属原子の含有量M(モル基準)、チタン原子の含有量T(重量基準)、リン原子の含有量P(モル基準)、及び炭素原子の含有量C(重量基準)、が下記式(1)、(2)、及び(3)を満足することを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
    0.8≦L/M(モル比)≦1.8 (1)
    0.05≦T/C(重量比)≦0.50 (2)
    0.5≦M/P(モル比)≦3.0 (3)
  2. 重縮合用触媒が、アルコール、チタン化合物、アルカリ土類金属化合物、及び酸性リン酸エステル化合物を混合し、該混合物を濃縮することによって得られる請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
  3. 得られるポリエステル重縮合用触媒の重量W1と、混合に用いたチタン化合物、アルカリ土類金属化合物、及び酸性リン酸エステル化合物の重量の和W0との比W1/W0が、0.45以上0.85以下である請求項2に記載のポリエステル樹脂組成物。
  4. アルカリ土類金属化合物が、アルカリ土類金属の有機酸塩及び/又はその水和物である請求項2または3に記載のポリエステル樹脂組成物。
  5. 重縮合用触媒が、下記構造を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物


    (式中、Tはチタン原子、Mはアルカリ土類金属原子、Oは酸素原子、Pはリン原子、Rは炭素数1以上6以下のアルキル基、シクロヘキシル基、アリール基又は2−ヒドロキシエチル基であり、R2は炭素数1〜3のアルキル基である。)
  6. 顔料が酸化チタン及び/または酸化亜鉛である請求項1から5のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
  7. ジカルボン酸成分がイソフタル酸及び/またはそのエステル形成性誘導体を含む請求項1から6のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
  8. イソフタル酸及び/またはそのエステル形成性誘導体の量が、全ジカルボン酸成分に対して0.5モル%以上50モル%以下である請求項7に記載のポリエステル樹脂組成物。
  9. ジカルボン酸成分がスルホイソフタル酸及び/またはそのエステル形成性誘導体を含む請求項1から6のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
  10. 請求項1から9のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物からなる繊維。
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