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JP2008004286A - ペロブスカイト型酸化物微粒子、ペロブスカイト型酸化物担持粒子、触媒材料、酸素還元用触媒材料、燃料電池用触媒材料、燃料電池用電極 - Google Patents

ペロブスカイト型酸化物微粒子、ペロブスカイト型酸化物担持粒子、触媒材料、酸素還元用触媒材料、燃料電池用触媒材料、燃料電池用電極 Download PDF

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JP2008004286A JP2006170114A JP2006170114A JP2008004286A JP 2008004286 A JP2008004286 A JP 2008004286A JP 2006170114 A JP2006170114 A JP 2006170114A JP 2006170114 A JP2006170114 A JP 2006170114A JP 2008004286 A JP2008004286 A JP 2008004286A
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Abstract

【課題】白金担持カーボン粒子や金属白金粒子の代替物として使用でき、しかも白金の使用量を大幅に減らすことのできる可能性を持つ、金属酸化物粒子そのものを用いた電極用触媒を提供する。
【解決手段】一般式ABO3 (式中、Aは、ランタン,ストロンチウム,セリウム,カルシウム,イットリウム,エルビウム,プラセオジム,ネオジム,サマリウム,ユウロピウム,ケイ素,マグネシウム,バリウム,ニオブ,鉛,ビスマス,アンチモンから選ばれる一種以上の元素を示し、Bは、鉄,コバルト,マンガン,銅,チタン,クロム,ニッケル,モリブデンから選ばれる一種以上の元素を示す。)で表されるペロブスカイト型構造を主相に持つ遷移金属酸化物微粒子であり、格子定数が下記条件式(1)を満たす構成とする。 1.402<2b/(a+c)<1.422 (1) ここで、aおよびcはペロブスカイト型結晶格子の各短軸の長さを表し、bは長軸の長さを表す。
【選択図】図5

Description

本発明は、特定の結晶格子定数を持つペロブスカイト型酸化物微粒子に関し、さらに詳しくは、構成元素中に遷移金属元素を含み、遷移金属のペロブスカイト型酸化物結晶構造を主相とし、特定の範囲の結晶格子定数を持つペロブスカイト型酸化物微粒子、および、これを導電性担体上に担持させたペロブスカイト型酸化物担持粒子、ならびに、これらを用いて作製した燃料電池用電極等に関するものである。
従来、金属粒子、合金粒子、金属酸化物粒子等を担体粒子に担持させたものは、消臭、抗菌、自動車排ガスの浄化、燃料電池、NOx還元など、各種触媒として多用されている。この場合の担体粒子としては主に、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化コバルトなどの金属酸化物やカーボン等が用いられている。特に導電性を持つカーボン粒子を担体として用いた触媒は燃料電池の電極用触媒として有効なものである。
中でも、白金とルテニウムの合金粒子をカーボン担体上に担持させたものや、酸化モリブデン、酸化セリウム等の特定の金属酸化物粒子を助触媒として、金属白金微粒子と共にカーボン担体上に担持させたものは、優れた電極用触媒として知られている。例えば特許文献1には、酸化セリウムや酸化ジルコニウムなどの耐食性酸化物粒子に白金粒子を担持させたものを、カーボン担体上に担持させることにより、白金粒子同士の凝集を抑えることができると記載されている。また特許文献2、3では、ペロブスカイト型チタン酸化物粒子表面に白金などの貴金属粒子を担持させ、この貴金属担持酸化物のペーストをカーボン膜上に塗布して、電極触媒として使用する例が挙げられており、ペロブスカイト型チタン酸化物が助触媒として働くことにより、その触媒能が向上することが記載されている。
一方、遷移金属酸化物の一種であるペロブスカイト型酸化物のうち特定の構造を持つものは、NOxを分解する作用を有することが知られており、特許文献4では、これを担体に担持させたNOx接触触媒が提案されている。特許文献5には、ペロブスカイト型Fe酸化物を担体にしてPt,Pd,Rhなどの貴金属を担持させたものでは、500℃を上回る高温においても優れた触媒作用を持つことが記載されている。さらに特許文献6には、ペロブスカイト型Fe酸化物(一般式AFeO3 で表される)に対して、そのFeサイトをPt,Pd,Rhなどの貴金属で一部置換することにより、高温のみならず低温においても優れた触媒作用を持ち、さらに耐硫黄被毒性も向上することが記載されている。
鉄、コバルト、ニッケルなどの遷移金属元素を含む一部のペロブスカイト型複合金属酸化物は、固体酸化物型燃料電池(SOFC)の空気極用触媒としても実用化されている。固体酸化物型燃料電池は、その使用環境が約800℃程度以上の高温であるが、この様な高温条件下では、含有されている遷移金属元素そのものが酸素分解能を持つ触媒として機能することが知られている。
さらに特許文献7には、アルミナ、シリカ、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト等の金属酸化物粒子と白金粒子とを、共にカーボン粒子上に担持させることにより、担体上の白金粒子のシンタリングを抑制し、高価な白金粒子の低減化を図ることができると記載されている。
各種金属酸化物を担体表面に担持させる一般的な方法としては、主に次のような方法が挙げられる。
(1)金属コロイド粒子を担体に吸着させる方法。
(2)金属塩水溶液中に担体粒子を分散させ、アルカリ剤により金属水酸化物を担体表面に沈着させる方法。
(3)あらかじめ微粒子を分散させた微粒子分散液から、微粒子を担体表面に固着させる方法。
このような液相法を用いた公知例としては特許文献8や特許文献9がある。このうち、特許文献8では、あらかじめ白金を担持させたカーボン粒子を、他の所定の金属塩の混合溶液中に分散させ、アルカリ剤によりカーボン粒子に前記金属の水酸化物を沈着させ、還元雰囲気下で1000℃以上に加熱することにより、カーボン粒子に合金微粒子(白金・モリブデン・ニッケル・鉄の4元素の合金微粒子)を担持させることが行われている。そこでは、担持された合金微粒子は約3nm以上とされている。
特許文献9では、五酸化バナジウムをカーボンに担持させた粒子を得るにあたり、有機バナジウム溶液に有機溶媒を加えることにより、溶媒和させて有機錯体を作製し、これをカーボンに吸着、担持させる方法がとられている。この場合にはカーボンに担持された五酸化バナジウムは非晶質となっている。
ペロブスカイト型酸化物を担体表面に担持させる方法としては、金属塩を含む水溶液を担体上に塗布し、乾燥させた後、高温で熱処理を施し、担体表面に析出させる方法もある。例えば、特許文献10には、ペロブスカイト型鉄酸化物微粒子を担体上に担持させるに際し、あらかじめPdを結晶格子中に含むペロブスカイト型鉄酸化物粒子を合成し、これを用いて作製したスラリーを担体上にコーティングした後、熱処理を施すといった方法が記載されている。この場合には、あらかじめ合成されたペロブスカイト型鉄酸化物粒子はサブミクロンサイズであり、担体はスラリーを塗布できる程度の面積を持つ担体となっている。
そのほか、特許文献11には、マイクロ波を用いたプラズマ処理により炭素系材料に金属酸化物粒子を担持させる方法が記載されている。その具体例としては、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化コバルトを炭素上に担持させた例が挙げられており、本文中にはペロブスカイト型複合金属酸化物にも適用できると記載されている。この方法によれば、酸化温度が高く、担体である炭素が燃焼してしまうために炭素上に担持させることが困難であった金属酸化物を、炭素系担体上に担持させることができるが、プラズマ処理するために特殊な装置が必要となる。
特開2004−363056号公報 特開2005−50759号公報 特開2005−50760号公報 特開平5−261289号公報 特開2001−269578号公報 特開2004−321986号公報 特開2005−270873号公報 特開平5−217586号公報 特開2000−36303号公報 特開2004−41866号公報 特開平11−28357号公報
上述のように遷移金属酸化物それ自体は、各種触媒として、あるいは耐食性を向上させる助触媒として公知の物質であり、特にペロブスカイト型酸化物は固体酸化物型燃料電池用触媒として利用されており、さらにその構成元素の一部を貴金属で、特にパラジウムで置換したペロブスカイト型酸化物は、排ガス浄化用触媒として利用されている既知の材料であるとも言える。
しかしながら、固体高分子型燃料電池(PEFC)においては、MxOy、MOOH、Mx(OH)y等(Mは遷移金属元素)で表される一般的な金属酸化物について、貴金属元素と共に担持されて助触媒として利用される例はあっても、これら遷移金属酸化物そのものを電極用触媒として使用した例は見られない。
また、特にペロブスカイト型酸化物については、カーボンブラックをはじめとするカーボン粒子などのように導電性を有し、しかも安価かつ容易に入手できる粒子状の物質を担体とし、これにペロブスカイト型酸化物粒子を担持させて利用するものは見当たらない。これまで得られているものは、適用目的が固体酸化物型燃料電池(SOFC)あるいは排ガス浄化用触媒であるために、ペロブスカイト型酸化物粒子そのものを担体として用いるか、あるいは、これを担持させる場合でも、その担体としてアルミナやセリウム系などの耐熱性酸化物を使用したものである。これは、自動車エンジン等の排ガス浄化用触媒として用いる場合には、担体がカーボンブラックなどのように導電性を持つ必要がないこと、および、固体酸化物型燃料電池用触媒、排ガス浄化用触媒ともに、使用環境が1000℃近い高温であるためにカーボンブラックは燃焼してしまい担体として使用できないこと等によるものと思われる。
さらに、これまでは、金属酸化物粒子そのものを固体高分子型燃料電池(PEFC)の電極用触媒として利用するという考えそのものが存在しなかった。理由は、固体高分子型燃料電池の場合には電解質として高分子材料を用いるため、高々300℃以下という低温で作動させる必要があり、例えば固体酸化物型燃料電池で有効であるペロブスカイト型酸化物であっても触媒能が発揮されないことにより、この様な低温では、貴金属粒子以外では触媒効果がないと考えられていたためである。このような理由で、現状では主に白金粒子が固体高分子型燃料電池の電極触媒として用いられており、特にカソード用触媒における白金使用量の削減は大きな課題となっている。
本発明は、上記のような事情に照らして、白金の使用量を減らすべく、金属酸化物粒子そのものを用いた固体高分子型燃料電池の電極用触媒を提供することを主たる目的とする。
本発明者らは、固体高分子型燃料電池の電極用触媒としての使用環境下において、通常であれば高々300℃以下という低温では酸素分子を還元させるような活性を持たない遷移金属酸化物について、ある特定の条件下では、室温においても、含有される遷移金属元素の酸化・還元活性に伴い、酸素分子を還元・解離させることができることを初めて見出した。これらの現象について理由は明らかではないが、遷移金属元素の酸化・還元活性は、ペロブスカイト格子中の酸素原子の移動に伴って起こるものであり、この酸素原子の移動が、表面に吸着した酸素分子の還元・解離に効果を及ぼすとも考えられる。
さらに、酸素分子の還元・解離を起こすことが可能となる条件として、ペロブスカイト型酸化物の格子定数が重要な役割を果たすことを、本発明において初めて見出した。このような現象および相関関係は、これまで全く知られていなかったことであり、画期的な発見である。
ここで、酸素分子の還元・解離に有効な格子定数の範囲は非常に狭く、限られた範囲であり、本発明者らは、このような格子定数を持つペロブスカイト型酸化物を作製するために鋭意検討した。酸化物の格子定数は、構成元素のイオン半径および、その存在比率、格子欠陥の量、さらに、ナノメートル(nm)サイズの微粒子である場合には粒子径なども複雑に影響を及ぼし合い、変化していくものであり、詳細な微調整が必要となる。
本発明においては、詳細な検討を重ねた結果、鉄を主元素とするペロブスカイト型酸化物については、イオン半径の関係上、Aサイト元素として主にランタンを用い、白金元素を鉄サイトに添加することが有効であり、特定の範囲内にある格子定数を持つペロブスカイト型酸化物となることを見出した。
すなわち本発明は、遷移金属元素を含み、特定の範囲内の結晶格子定数を持つペロブスカイト型酸化物微粒子に関するもので、酸素分子の還元・解離に最適な結晶格子定数を持たせることにより、室温において遷移金属酸化物粒子そのものが酸素還元活性を発現するように構成したものである。このようなペロブスカイト型酸化物微粒子の実現は、白金使用量の低減に対する解決策の大きな糸口となる。
本発明によれば、遷移金属元素を含むペロブスカイト型酸化物であり、その結晶格子定数を特定の範囲内とすることにより、結晶格子中の酸素元素の移動により酸素還元活性が発現することを特徴とする、ペロブスカイト型酸化物微粒子を得ることができ、得られた微粒子は燃料電池用カソード電極として有用なものである。またこれらのペロブスカイト型酸化物微粒子をカーボンなどの導電性担体上に担持させることにより、燃料電池用電極触媒としてより優れた効果を発揮する。
本発明のペロブスカイト型酸化物粒子を作製するにあたっては、いずれの作製方法を用いてもよく、公知の作製方法が適用できる。本発明においては、あらかじめ金属の錯イオンを含む溶液を調整し、次に導電性担体上に担持させる場合には、前記溶液中に担体粒子を分散させることにより、金属の錯イオンを担体粒子表面に吸着させ、これを乾燥させることにより、担体表面に酸化物微粒子前駆体を析出させ、加熱処理することによって、ペロブスカイト型酸化物担持粒子を作製する。
本発明では、ペロブスカイト型酸化物結晶について、格子定数が以下の式(1)を満たし、かつ、ペロブスカイト型結晶格子中で安定に存在しうる遷移金属元素を、ペロブスカイト型酸化物(一般式:ABO3 )のBサイト中に含有させたものについて、結晶格子中の遷移金属元素が酸化・還元活性であり、室温において酸素還元活性を持つことを初めて見出したものであり、これをカーボンなどの導電性担体上に担持させたて得られたペロブスカイト型酸化物担持粒子は、燃料電池用カソード電極触媒用途の使用に特に適した機能性材料となる。
1.402<2b/(a+c)<1.422 (1)
ここで、aおよびcはペロブスカイト型結晶格子の各短軸の長さを表し、bは長軸の長さを表す。
本発明においては、燃料電池用電極触媒として遷移金属元素の酸化・還元活性により起こる、結晶格子中の酸素原子の出入りを利用するため、白金などの貴金属元素の使用量を減少させる、あるいは、使用せずに触媒の機能を発現させるための糸口となることが期待できる。
以下、本発明のペロブスカイト型酸化物微粒子について詳細に説明する。ペロブスカイト型構造ABO3 のBサイトに主たる元素として含有される遷移金属元素としては、銅(Cu),マンガン(Mn),鉄(Fe),チタン(Ti),モリブデン(Mo),コバルト(Co)等の遷移金属元素から1種以上の元素を選択するが、結晶格子中で容易に磁性を持ち得る元素として、鉄、銅、マンガンのうちの少なくとも一種が含有されていることが好ましい。後述する実施例においては、Bサイトの主元素として鉄を使用しているが、一般に、ペロブスカイト型酸化物は添加元素などを加えることにより磁性を持つものが多く、その選択肢の幅は鉄に限らず広いと考えられる。いずれの場合にも、結晶格子中で強磁性体となる可能性を持つ元素を、主元素とすることがより好ましい。これは、強磁性体となるペロブスカイト型酸化物が往々にして優れた導電性を示し、結晶格子内におけるイオンの移動度が高い場合が多いためである。イオンの移動度が高いことは、すなわち結晶格子中の酸素原子の移動が容易に起こることを示しており、結晶表面における酸素の出入りがより容易となる。
ペロブスカイト型構造ABO3 のうち、Aサイトの金属元素としては、安定に存在し得るものであれば特に限定されるものではない。例えば、前記遷移金属元素の中からBサイトと異なる種類の遷移金属元素を1種以上選択しても良いし、その他の金属元素として、ランタン(La),ストロンチウム(Sr),セリウム(Ce),カルシウム(Ca),イットリウム(Y),エルビウム(Er),プラセオジム(Pr),ネオジム(Nd),サマリウム(Sm),ユウロピウム(Eu),ケイ素(Si),マグネシウム(Mg),バリウム(Ba)、クロム(Cr),ニッケル(Ni),ニオブ(Nb),鉛(Pb),ビスマス(Bi),アンチモン(Sb)等の元素から1種以上の元素を選択しても良い。本発明においては、鉄元素を主元素としたことに対応して、主にランタン元素を使用しているが、これらの元素はB元素に選ばれた元素の種類に応じて、適宜選択する。
次に、格子定数を最適な範囲に操作するために、添加元素を選択する。本発明では、イオン半径の面から、ランタン−鉄系のペロブスカイト型酸化物に対しては白金元素が最適であったために白金元素を使用しているが、格子定数を変化させると共に、強磁性体組成とすることができるものであれば、当然、白金元素に限定されるものではない。結晶格子中に安定的に存在しうるものであれば、その種類は問わない。
本発明のペロブスカイト型酸化物微粒子は、それ自体導電性を持つため、そのものを用いても電極用の触媒として利用できるが、より特性を向上させるためには、カーボンなどの導電性担体上に担持させることもできる。例えばカーボン粒子であれば、電気化学工業社製のデンカブラック(登録商標)、CABOT社製のバルカン(登録商標)等の、アセチレンブラックあるいはケッチェンブラック、ファーネスカーボン等を用いて、これらのカーボン粒子担体上にペロブスカイト型酸化物粒子を担持させる。担持させる方法は、いずれの方法でも良く、一般的な微粒子担持法を用いればよい。
この際、最終生成物であるペロブスカイト型酸化物担持粒子の平均粒子径は20〜70nmであることが好ましい。平均粒子径が20nm以下でも最終生成物であるペロブスカイト型酸化物担持粒子の触媒能においては問題ないが、合成過程において粒子径が小さいために凝集が激しく、均一分散することが困難となるため、好ましくない。平均粒子径が70nm以上でも、最終生成物の触媒能が完全になくなることはないが、比表面積が小さくなるため触媒能が低下し、好ましくない。
なお、カーボン粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)写真で観測される粒子100個の平均から求める。この際、溶液中に含まれる金属元素量を、最終生成物であるペロブスカイト型酸化物担持粒子中の当該ペロブスカイト型酸化物量が、5〜50重量%となるようにする。ペロブスカイト型酸化物担持粒子中の当該ペロブスカイト型酸化物担持量が、5重量%より少なくても問題はないが、例えば触媒として利用する場合には、全体としての有効触媒量が少なくなるためにその機能が発現しにくくなる恐れがあり、また、50重量%以上でも問題はないが、含有量が多くなれば、担体粒子表面に単層で被着せずに、微粒子同士が重なり合ったり凝集してしまったりする恐れがあり、好ましくない。
また、燃料電池用の電極として利用する際には、これらのペロブスカイト型酸化物微粒子を単体で用いることも可能であり、ペロブスカイト型酸化物粒子と貴金属粒子とを組み合わせて利用することも可能である。
以上、基本的な粒子の構成を示したが、ペロブスカイト型酸化物の組成などは、個々に最適なものを選択していく必要がある。すなわち、ペロブスカイト型酸化物を構成する元素の組み合わせとしては、安定的に存在しうるものであれば問わないが、その組成に関しては、最適な格子定数を取り得る範囲である必要がある。しかしながら、格子定数は組成のみでは決まらず、粒子サイズ、合成条件などにより様々に変化する。従って、含有される元素の組み合わせ、組成、粒子サイズ、合成条件などについては、個々において最適である条件が全て異なり、それぞれについて調整する必要がある。
以上の事柄を全て最適に調整することにより、遷移金属元素を含み、かつ、下記条件式(1)の範囲内の結晶格子定数を持ち、結晶子サイズが1nmから20nmの範囲にあるペロブスカイト型酸化物粒子、および、これを導電性担体上に担持した、平均粒子径が20〜70nmのペロブスカイト型酸化物担持粒子が得られる。
1.402<2b/(a+c)<1.422 (1)
ここで、格子定数a,b,cはそれぞれ、a,cが各短軸の長さ、bが長軸の長さを表す。
上記格子定数の値が条件式(1)を満たす場合に、燃料電池用電極として有効なものとなるが、境界線外の数値をとる場合には徐々に性能は下降していくために好ましくない。また、格子定数のうちa,c軸に関しては、結晶構造が完全に対称である場合にはa=cとなるべきものであり、添加元素を一切加えない、例えばLaFeO3 のような結晶の場合には、かなり対称性が高く、a,cの値が一致はしないが近いものとなる。本発明においては、上式で示される格子定数の範囲内であり、かつ、a,c軸長の差が大きい(歪みが大きく対称性が低い)ほど、より良い特性を示す。
これは、はっきりとした理由は明らかではないが、格子定数のみならず歪みも関与している傾向が見られることから、ペロブスカイト型酸化物結晶格子中に含まれるA、Bサイトに含まれる原子間の距離ではなく、酸素原子間の距離が大きく影響を及ぼしていると推測される。酸素原子間の距離が変化することにより、酸素の還元・解離に適した距離ではなくなるためではないかと考えられる。一般的に、ペロブスカイト型酸化物が導電性を持つ場合には、結晶格子中の酸素イオン移動度は高いと考えられるため、組成として導電性を持つ場合に、表面吸着酸素分子の還元・解離が起こりやすくなる。しかしながら本発明では、特定の格子定数の範囲内のみでより優れた酸素分子の還元・解離が起こることから、組成として導電性を持つか否かだけではなく、表面に現れるペロブスカイト型酸化物結晶中の酸素原子間距離が、重要な影響を及ぼしていると考えることができる。
それぞれの粒子の平均粒子径は、TEM写真で観測される100個の粒子の平均から求める。この際、ペロブスカイト型酸化物微粒子の結晶子サイズは1nm以下でも、触媒としての特性上はかまわないと考えられるが、ペロブスカイト型酸化物の格子間隔は通常0.5nm(5Å)前後であることが多く、結晶構造上、格子点の数が少なすぎるために安定な結合が起こらず、酸化物の構造を保持することが難しくなると同時に、このような理由により作製すること自体が非常に困難である。また、結晶子サイズ20nm以上である場合でも、表面に結晶格子中の酸素原子が現れている限り触媒としての特性が完全に失われることはないが、十分な比表面積が得られないために触媒としての性能が劣化する傾向にある。
以上の理由により、ペロブスカイト型酸化物微粒子の結晶子サイズは、1〜20nmとすることが好ましい。この際、20nm以下のような微粒子においては、1つの粒子内で多結晶構造をとることは稀であり、ほとんどの場合に単結晶の粒子となる。従って、担持された微粒子の平均粒子径は、TEM写真から平均を求める方法の他に、粉末X線回折スペクトルから求められる平均結晶子サイズからも求めることができる。特に、粒子径が数nm以下であるような微粒子の場合には、TEM写真などから目視で粒子径を求める際の測定誤差が大きく、平均結晶子サイズから求めることが好ましい。ただし、多結晶構造を持つ粗大な粒子が存在している場合には、その粗大粒子に含まれる結晶子のサイズを測定している可能性もあるため、平均結晶子サイズから求められた粒子径と、TEMで観察される粒子の大きさに整合性があるかどうかを確認することが必要である。
得られた微粒子に関しては、粉末X線回折スペクトルを測定し、得られたピーク位置から結晶格子定数を計算する。スペクトルの測定範囲は、格子定数を特定できる範囲であれば良く、20〜80度の範囲があれば十分である。
また、遷移金属元素が高い酸化・還元活性を持つ場合、すなわち結晶格子中の酸素イオンの移動度が高い場合には、この粉末のサイクリックボルタンメトリー(CV)曲線上の約0.6〜0.8Vの範囲に、鉄に由来すると考えられる酸化還元ピークが現れる。この際、活性が高ければ高いほど、CV曲線上に現れる活性ピークは明確に鋭いピークを描き、かつ、酸化還元の各活性エネルギー間の差が小さくなる。逆に、活性が低くなると、CV曲線上の活性ピークがブロードになり、酸化還元の各活性エネルギー間のエネルギー差が大きくなったり、あるいは、活性ピークそのものが現れなくなることで確認することが可能である。
次に、本発明に係るペロブスカイト型酸化物微粒子を電極用触媒材料として用いた燃料電池用電極の具体例として、該ペロブスカイト型酸化物微粒子を用いて作製される燃料電池用の膜電極接合体(MEA)について説明する。
図1に、燃料電池用の膜電極接合体(MEA)の断面構造を模式的に示す。この膜電極接合体10は、固体高分子電解質膜1の厚み方向の片側に配置された空気極2と、他の片側に配置された燃料極3と、空気極2の外側に配置された空気極用ガス拡散層4と、燃料極3の外側に配置された燃料極用ガス拡散層5とを有する構成である。このうち、固体高分子電解質膜1としては、ポリパーフルオロスルホン酸樹脂膜、具体的には、デュポン社製の“ナフィオン”(商品名)、旭硝子社製の“フレミオン”(商品名)、旭化成工業社製の“アシプレックス”(商品名)などの膜を使用できる。またガス拡散層4・5としては、多孔質のカーボンクロスあるいはカーボンシートなどを使用できる。この膜電極接合体10の作製方法としては、以下の一般的な方法が適用できる。
エタノール、プロパノールなどの低級アルコールを主成分とする溶媒に、触媒担持カーボン粒子、高分子材料、さらに必要に応じてバインダなどを混合し、マグネチックスターラー、ボールミル、超音波分散機などの一般的な分散器具を用いて分散させて、触媒塗料を作製する。この際、塗料の粘度を塗布方法に応じて最適なものとすべく、溶媒量を調整する。次に、得られた触媒塗料を用いて空気極2あるいは燃料極3を形成していくが、この後の手順としては、一般的には下記の3種の方法(1)〜(3)が挙げられる。本発明の微粒子担持カーボン粒子の評価手段としてはいずれを用いてもかまわないが、比較評価を行う際には作製方法をいずれか一つに統一して評価することが重要である。
(1) 得られた触媒塗料を、バーコータなどを用いて、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリイミドフィルム、PTFEコートポリイミドフィルム、PTFEコートシリコンシート、PTFEコートガラスクロスなどの離型性基板上に均一塗布し、乾燥させて、離型性基板上に電極膜を形成する。この電極膜を剥し取り、所定の電極サイズに裁断する。このような電極膜を2種作製し、それぞれを空気極および燃料極として用いる。その後、上記電極膜を固体高分子電解質膜の両面に、ホットプレスあるいはホットロールプレスにより接合させた後、空気極および燃料極の両側にガス拡散層をそれぞれ配置し、ホットプレスして一体化させ、膜電極接合体を作製する。
(2) 得られた触媒塗料を、空気極用ガス拡散層および燃料極用ガス拡散層にそれぞれ塗布し、乾燥させて、空気極および燃料極を形成する。この際、塗布方法は、スプレー塗布やスクリーン印刷などの方法がとられる。次に、これらの電極膜が形成されたガス拡散層で、固体高分子電解質膜を挟み、ホットプレスして一体化させ、膜電極接合体を作製する。
(3) 得られた触媒塗料を、固体高分子電解質膜の両面に、スプレー塗布などの方法を用いて塗布し、乾燥させて、空気極および燃料極を形成する。その後、空気極および燃料極の両側にガス拡散層を配置し、ホットプレスして一体化させ、膜電極接合体を作製する。
以上のようにして得られた図1に示すごとき膜電極接合体10において、空気極2側および燃料極3側のそれぞれに集電板(図示せず)を設けて電気的な接続を行い、燃料極3に水素を、空気極2に空気(酸素)をそれぞれ供給することにより、燃料電池として作用させることができる。
《La(Fe0.95Pt0.05)O3 /C・40重量%担持》
硝酸ランタン六水和物2.23g、硝酸鉄九水和物1.98gおよび塩化白金酸六水和物0.14gを、水80ml/エタノール20mlの混合溶液に溶解し、2.16gのクエン酸を加え、ランタン、鉄および白金のクエン酸錯イオンを含む水溶液を調整した。
次に、カーボン粒子として2gのバルカンXC−72(登録商標、CABOT社製のカーボンブラック、平均粒子径30nm、以下同様。)に対して、上記クエン酸錯イオンを含む水溶液を含浸させ、前記錯化合物をバルカン表面に吸着させた。このカーボン粒子を窒素中600℃で加熱処理した後、水洗し、ペロブスカイト型複合酸化物微粒子La(Fe0.95Pt0.05)O3 担持カーボン粒子を得た。
このようにして得られたLa(Fe0.95Pt0.05)O3 担持カーボン粒子について、粉末X線回折スペクトル測定を行った結果、図2に示すように、ペロブスカイト型構造の明確な単一相のピークが現れ、ピーク位置から求められる格子定数が5.5672×7.867×5.5437(Å)であり、2b/(a+c)=1.416であることが確認された。粉末X線回折スペクトルにおいて、白金元素が含まれているにも関わらず白金に起因する構造を表すピークが現れなかったことから、白金元素はペロブスカイト構造の格子内に取り込まれていることがわかる。この際、回折ピークの半値幅から求めた平均結晶子サイズは10.3nmであった。また、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行った結果、約10nmの複合金属酸化物微粒子がカーボン粒子表面に担持されていることが確認された。なお、組成分析および担持量分析は、蛍光X線分析およびXPSを用いて行った。
《La(Fe0.95Pt0.05)O3 /C・40重量%担持》
実施例1の微粒子担持カーボン粒子の作製方法において、硝酸ランタン六水和物、硝酸鉄九水和物および塩化白金酸六水和物を、水100mlに溶解した以外は実施例1と同様にして、鉄および白金のクエン酸錯イオンを含む水溶液を調整し、合計100mlのクエン酸錯イオンを含む水溶液をカーボン粒子に含浸させ、前記錯化合物をバルカン表面に吸着させた。その後、窒素雰囲気中で約2時間の90℃加熱を行い、さらに窒素雰囲気中600℃で熱処理を施し、ペロブスカイト型複合酸化物微粒子La(Fe0.95Pt0.05)O3 担持カーボン粒子を得た。
このようにして得られたLa(Fe0.95Pt0.05)O3 担持カーボン粒子について、粉末X線回折スペクトル測定を行った結果、実施例1と同様、ペロブスカイト型構造の単一ピークが現れ、その格子定数が5.5645×7.8348×5.5536(Å)であり、2b/(a+c)=1.410であることが確認された。この際、回折ピークの半値幅から求めた平均結晶子サイズは14.7nmであった。また、TEM観察を行った結果、約15nmの複合金属酸化物微粒子がカーボン粒子表面に担持されていることが確認された。
《La(Fe0.98Pt0.02)O3 /C・40重量%担持》
実施例1の微粒子担持カーボン粒子の作製方法において、硝酸鉄九水和物を1.98gから2.04gへ変更し、塩化白金酸六水和物を0.14gから0.06gに変更した以外は、実施例1と同様にして鉄および白金のクエン酸錯イオンを含む水溶液を調整し、合計100mlのクエン酸錯イオンを含む水溶液を含浸させ、前記錯化合物をバルカン表面に吸着させた。その後、窒素雰囲気中600℃で熱処理を施し、ペロブスカイト型複合酸化物微粒子La(Fe0.98Pt0.02)O3 担持カーボン粒子を得た。
このようにして得られたLa(Fe0.98Pt0.02)O3 担持カーボン粒子について、粉末X線回折スペクトル測定を行った結果、実施例1と同様、ペロブスカイト型構造の単一ピークが現れ、その格子定数が5.5407×7.8400×5.5468(Å)であり、2b/(a+c)=1.414であることが確認された。この際、回折ピークの半値幅から求めた平均結晶子サイズは12.6nmであった。また、TEM観察を行った結果、約10〜15nmの複合金属酸化物微粒子がカーボン粒子表面に担持されていることが確認された。
《La(Fe0.97Pt0.03)O3 /C・40重量%担持》
実施例1の微粒子担持カーボン粒子の作製方法において、硝酸鉄九水和物を1.98gから2.02gへ変更し、塩化白金酸六水和物を0.14gから0.08gに変更した以外は、実施例1と同様にして鉄および白金のクエン酸錯イオンを含む水溶液を調整し、合計100mlのクエン酸錯イオンを含む水溶液を含浸させ、前記錯化合物をバルカン表面に吸着させた。その後、窒素雰囲気中600℃で熱処理を施し、ペロブスカイト型複合酸化物微粒子La(Fe0.97Pt0103)O3 担持カーボン粒子を得た。
このようにして得られたLa(Fe0.97Pt0.03)O3 担持カーボン粒子について、粉末X線回折スペクトル測定を行った結果、実施例1と同様、ペロブスカイト型構造の単一ピークが現れ、その格子定数が5.5899×7.8246×5.5524(Å)であり、2b/(a+c)=1.404であることが確認された。この際、回折ピークの半値幅から求めた平均結晶子サイズは16.6nmであった。また、TEM観察を行った結果、約15nmの複合金属酸化物微粒子がカーボン粒子表面に担持されていることが確認された。
[比較例1]
《La(Fe0.95Pt0.05)O3 /C・40重量%担持》
実施例1の微粒子担持カーボン粒子の作製方法において、窒素中600℃の熱処理を行う前に、空気中250℃で1時間の加熱処理を施し、その後、窒素中600℃の熱処理を行い、ペロブスカイト型複合酸化物微粒子La(Fe0.95Pt0.05)O3 担持カーボン粒子を得た。
このようにして得られたLa(Fe0.95Pt0.05)O3 担持カーボン粒子について、粉末X線回折スペクトル測定を行った結果、実施例1と同様、ペロブスカイト型構造の単一ピークが現れ、その格子定数が5.6220×7.7639×5.5979(Å)であり、2b/(a+c)=1.384であることが確認された。この際、回折ピークの半値幅から求めた平均結晶子サイズは7.5nmであった。また、TEM観察を行った結果、約5〜10nmの複合金属酸化物微粒子がカーボン粒子表面に担持されていることが確認された。
[比較例2]
《La(Fe0.99Pt0.01)O3 /C・40重量%担持》
硝酸鉄九水和物を1.98gから2.06gへ変更し、塩化白金酸六水和物を0.14gから0.03gに変更した以外は、実施例1と同様にして鉄および白金のクエン酸錯イオンを含む水溶液を調整し、合計100mlのクエン酸錯イオンを含む水溶液を含浸させ、前記錯化合物をバルカン表面に吸着させた。その後、窒素雰囲気中550℃で熱処理を施し、ペロブスカイト型複合酸化物微粒子La(Fe0.99Pt0.01)O3 担持カーボン粒子を得た。
このようにして得られたLa(Fe0.99Pt0.01)O3 担持カーボン粒子について、粉末X線回折スペクトル測定を行った結果、実施例1と同様、ペロブスカイト型構造の単一ピークが現れ、その格子定数が5.5852×7.8352×5.6069(Å)であり、2b/(a+c)=1.400であることが確認された。この際、回折ピークの半値幅から求めた平均結晶子サイズは18.2nmであった。また、TEM観察を行った結果、約20nmの複合金属酸化物微粒子がカーボン粒子表面に担持されていることが確認された。
[比較例3]
《La(Fe0.8 Pt0.2 )O3 /C・40重量%担持》
硝酸鉄九水和物を1.98gから1.67gへ変更し、塩化白金酸六水和物を0.14gから0.56gに変更した以外は、実施例1と同様にして鉄および白金のクエン酸錯イオンを含む水溶液を調整し、合計100mlのクエン酸錯イオンを含む水溶液を含浸させ、前記錯化合物をバルカン表面に吸着させた。その後、空気中270℃で4時間の加熱処理を行った後、窒素雰囲気中600℃で熱処理を施し、ペロブスカイト型複合酸化物微粒子La(Fe0.8 Pt0.2 )O3 担持カーボン粒子を得た。
このようにして得られたLa(Fe0.8 Pt0.2 )O3 担持カーボン粒子について、粉末X線回折スペクトル測定を行った結果、実施例1と同様、ペロブスカイト型構造の単一ピークが現れ、その格子定数が5.5056×7.8846×5.5728(Å)であり、2b/(a+c)=1.423であることが確認された。この際、回折ピークの半値幅から求めた平均結晶子サイズは20.3nmであった。また、TEM観察を行った結果、約20nmの複合金属酸化物微粒子がカーボン粒子表面に担持されていることが確認された。
次に、上述の各実施例および比較例で得られた微粒子担持カーボン粒子の触媒特性を評価するため、燃料電池用の膜電極接合体(MEA)を作製し、それを用いて燃料電池としての出力特性を調べた。膜電極接合体(MEA)を構成する電極に上記のような微粒子担持カーボン粒子を使用する場合、空気極と燃料極とでは、最大の効果が得られる微粒子担持カーボン粒子の酸化物組成(カーボン粒子に担持されている酸化物微粒子の組成)が異なる。そこで、本実施例では、一律に評価を行うために、燃料極に微粒子担持カーボン粒子電極膜を用い、空気極には以下に示す標準電極膜を用いた。
〈微粒子担持カーボン粒子電極膜〉
上記各実施例および比較例で得られた微粒子担持カーボン粒子1質量部を、ポリパーフルオロスルホン酸樹脂の5質量%溶液であるアルドリッチ(Aldrich)社製の“ナフィオン (Nafion)”(商品名、EW=1000)溶液9.72質量部およびポリパーフルオロスルホン酸樹脂の20質量%溶液であるデュポン社製の“ナフィオン(Nafion)”(商品名)2.52質量部および水1質量部に添加し、均一に分散するよう混合液を充分に攪拌することで触媒塗料を調製した。次に、PTFEフィルム上に上記触媒塗料を、白金担持量が0.03mg/cm2 となるように塗布し、乾燥した後剥がし取り、微粒子担持カーボン粒子電極膜を得た。
〈標準電極膜〉
標準電極としては、白金を50質量%担持させた田中貴金属工業社製の白金担持カーボン“10E50E”(商品名)を用いて、上記と同様にして触媒塗料を調整した後、PTFEフィルム上に、白金担持量が0.5mg/cm2 となるように塗布し、乾燥した後剥し取り、標準電極膜を得た。
〈膜電極接合体〉
固体高分子電解質膜としては、デュポン(DuPont)社製のポリパーフルオロスルホン酸樹脂膜“Nafion112”(商品名)を所定のサイズに切り出して用いた。この固体高分子電解質膜の両面に、先に作製した微粒子担持カーボン粒子電極膜と標準電極膜とを重ね合わせ、温度160℃、圧力4.4MPaの条件でホットプレスを行い、これらを接合した。次に、あらかじめ撥水処理を施したカーボン不織布(東レ社製、TGP−H−120)と、両面に電極膜を形成した固体高分子電解質膜とをホットプレスで接合し、膜電極接合体を作製した。
〔電池特性評価〕
以上のようにして得られた膜電極接合体を用いて、サイクリックボルタンメトリー(CV)測定を行いCV曲線を得、さらに燃料電池としての出力特性(ここでは最大出力密度)を測定した。出力特性測定の際には、膜電極接合体を含む測定系を60℃に保持し、燃料極側に60℃の露点となるよう加湿・加温した水素ガスを供給し、空気極側に60℃の露点となるよう加湿・加温した空気を供給して測定を行った。
このうち、CV曲線上に鉄の酸化・還元ピークがはっきりと現れる例として、実施例1で得られた粒子を用いた場合のCV測定結果を図3に示す。また、鉄の酸化・還元ピークが非常に弱く、触媒能が劣る場合の例として、比較例1で得られた粒子を用いた場合のCV測定結果を図4に示す。
表1に、上記の実施例1〜4および比較例1〜3で得られた各微粒子担持カーボン粒子についての測定結果と、これらの微粒子担持カーボン粒子を用いて実施例5で作製した各膜電極接合体についての測定結果をまとめて示す。ただし、CV測定結果は、鉄原子に起因するピークの様子を相対的に評価したものであり、図3に代表されるようなはっきりとしたピークを示すものを○、図4に代表されるような非常にブロードなピークを示すものを×とし、中間状態を△とした。
次に図5で示されるグラフは、ペロブスカイト型構造の格子定数をa,b,cとし、長軸をbとした場合に、グラフ横軸がa軸およびc軸の平均長さを、グラフ縦軸にb軸長さをとり、各実施例および比較例で得られたペロブスカイト型酸化物をプロットしたグラフである。図中、グレーで示した帯域が、下記の式(1)を満たす領域を表す。
1.402<2b/(a+c)<1.422 (1)
Figure 2008004286
表1および図5から明らかなように、各実施例で得られた、特定の範囲内の格子定数を持つ微粒子担持カーボン粒子については、いずれの場合にも、CV曲線上に鉄元素に起因すると考えられる酸化・還元ピークが現れ、含有される鉄元素が酸化・還元活性を持ち、燃料電池用カソード触媒として有効なことがわかる。一方、各比較例においては、組成や構造などは各実施例と類似であるにも関わらず、格子定数が特定の範囲から外れているために、含有される遷移金属元素はごく微弱な酸化・還元活性しか持たず、燃料電池用カソード触媒としては不適切であることがわかる。
燃料電池用の膜電極接合体(MEA)の一構造例を模式的に示す断面図である。一般的な膜電極接合体の模式断面図である。 実施例1で作製した10nmのLa(Fe0.95Pt0.05)O3 粒子を担持したカーボン粒子(ペロブスカイト型酸化物担持粒子)の粉末X線回折スペクトルを示す図である。 実施例1で作製した粒子を用いて、実施例5で得られたCV曲線を表す図である。 比較例1で作製した粒子を用いて、実施例5で得られたCV曲線を表す図である。 各実施例および比較例で得られた粒子についての格子定数を表したグラフである。

Claims (13)

  1. 一般式ABO3 (式中、Aで示される元素は、ランタン,ストロンチウム,セリウム,カルシウム,イットリウム,エルビウム,プラセオジム,ネオジム,サマリウム,ユウロピウム,ケイ素,マグネシウム,バリウム,ニオブ,鉛,ビスマス,アンチモンから選ばれる一種以上の元素を示し、Bで示される元素は、鉄,コバルト,マンガン,銅,チタン,クロム,ニッケル,モリブデンから選ばれる一種以上の元素を示す。)で表されるペロブスカイト型構造を主相に持つ遷移金属酸化物微粒子であり、当該酸化物微粒子の格子定数が下記条件式(1)を満たすことを特徴とするペロブスカイト型酸化物微粒子。
    1.402<2b/(a+c)<1.422 (1)
    ここで、aおよびcはペロブスカイト型結晶格子の各短軸の長さを表し、bは長軸の長さを表す。
  2. 前記Bで示される元素(B元素)として、鉄を主に含んでいる、請求項1記載のペロブスカイト型酸化物微粒子。
  3. 平均粒子径が1〜20nmである、請求項1または2記載のペロブスカイト型酸化物微粒子。
  4. 当該酸化物微粒子には貴金属が含有されている、請求項1ないし3のいずれかに記載のペロブスカイト型酸化物微粒子。
  5. 前記貴金属は、貴金属元素として、酸化物結晶格子を構成する元素の一部を置換しているか、あるいは貴金属結晶として、酸化物結晶と複合体を形成しているか、あるいは貴金属粒子として、酸化物表面に被着している、請求項4記載のペロブスカイト型酸化物微粒子。
  6. 前記貴金属の含有量が、前記B元素の総量に対して元素比で1〜20%である、請求項4または5記載のペロブスカイト型酸化物微粒子。
  7. 請求項1ないし6のいずれかに記載のペロブスカイト型酸化物微粒子を導電性担体上に担持してなるペロブスカイト型酸化物担持粒子。
  8. 前記導電性担体が導電性カーボン粒子である、請求項7記載のペロブスカイト型酸化物担持粒子。
  9. ペロブスカイト型酸化物担持粒子中のペロブスカイト型酸化物微粒子の担持量が、重量比(「ペロブスカイト型酸化物微粒子の重量」/「当該酸化物担持粒子全体の重量」)で、5〜50重量%である、請求項7または8記載のペロブスカイト型酸化物担持粒子。
  10. 請求項1ないし9のいずれかに記載したペロブスカイト型酸化物微粒子を主成分とする触媒材料。
  11. 請求項1ないし9のいずれかに記載したペロブスカイト型酸化物微粒子を主成分とする酸素還元用触媒材料。
  12. 請求項11記載の酸素還元用触媒材料の酸素還元作用を利用した燃料電池用触媒材料。
  13. 請求項12記載の燃料電池用触媒材料を用いてなる燃料電池用電極。
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