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JP2008054610A - 加工液卵白 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、起泡性に優れた加工液卵白を提供することを課題とする。
【解決手段】
液卵白にシスチンを添加してある状態で加熱処理してなり、α−アミラーゼ活性の残存率が20〜95%である加工液卵白。
【選択図】なし

Description

本発明は、生液卵白よりも起泡性に優れた加工液卵白に関する。
卵白は起泡性があるため、その性質を利用して、スポンジケーキ、シフォンケーキ、ムース又はフリッター等の食品が製造されている。この場合、殻付生卵を割卵し卵黄を分離して得られる生液卵白では起泡性が不足することがあるので、生液卵白よりも起泡性に優れた卵白の開発が求められている。
また、卵白は工業的規模で製される食品に用いる場合、食品衛生の面から加熱殺菌することが好ましい。しかし、卵白は加熱処理によるダメージを受け易く、加熱殺菌することにより、起泡性が低下してしまう性質がある。そこで、加熱殺菌しても起泡性が低下しないだけでなく、生液卵白よりも起泡性に優れた殺菌卵白の開発が特に求められている。
ところで、卵白の起泡性には、卵白を一定時間泡立てた場合にどの程度含気して容積が大きくなるかという起泡力と、形成された泡がどの程度の荷重に耐えられるかという泡の硬さと、形成された泡がどの程度の時間持続するかという泡の安定性の3つの要素が含まれる。これらの要素の中で、一般的には、泡立てたメレンゲの起泡力と泡の硬さが特に重視されている。
従来、卵白の起泡性を向上させる技術として、卵白に種々の添加剤を添加することが提案されている。このような添加剤としては、例えば、セアミンラウリル硫酸塩(特許文献1)、サイクロデキストリン(特許文献2)、又は還元剤やイースト自己消化液(特許文献3)等が提案されている。
しかしながら、これらの技術では、充分に起泡性に優れた卵白が得られないものであった。
特公昭50−25537号公報 特公昭51−37328号公報 特開平7−170944号公報 特許第3305536号公報
そこで、本発明は、生液卵白よりも起泡性に優れた加工液卵白を提供することを課題とする。
本発明者等は、この課題を達成するため、鋭意研究を行った結果、液卵白にシスチンが添加してある状態で加熱処理するならば、意外にも生液卵白よりも起泡性に優れた加工液卵白が得られることを見出し、遂に、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、(1)液卵白にシスチンが添加してある状態で加熱処理してなる加工液卵白、(2)加工液卵白のα−アミラーゼ活性の残存率が20〜95%である(1)記載の加工液卵白、(3)シスチンの添加量が、液卵白100質量部に対して、0.01〜0.2質量部である(1)又は(2)記載の加工液卵白、(4)加工液卵白がメレンゲを用いる食品用である(1)乃至(3)のいずれかに記載の加工液卵白、(5)(1)乃至(4)のいずれかに記載の加工液卵白からなるメレンゲを用いた食品、である。
一方、本発明が課題とする起泡性に優れた加工液卵白とは関係ないが、シスチンを添加してある卵白組成物がすでに特許登録となっている(特許文献4)。この技術は、卵白が加熱凝固した際に発生する卵白の硫化水素臭を抑制する発明であり、液卵白の起泡性に関しては一切検討されていない。
本発明によれば、殻付生卵を割卵し卵黄を分離して得られる生液卵白よりも、起泡性に優れた加工液卵白が得られる。さらに、本発明の加工液卵白は加熱処理する際に加熱殺菌を兼ねることもできるため、生液卵白よりも起泡性に優れた殺菌された加工液卵白が得られる。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「部」は「質量部」を意味する。
本発明の加工液卵白は、液卵白にシスチンが添加してある状態で加熱処理してなることを特徴とする。このように、本発明の加工液卵白は単に液卵白にシスチンを添加してあるだけでなく、シスチンが添加してある状態で加熱処理してなるものであり、これによりはじめて生液卵白よりも優れた起泡性が得られる。
前記本発明の液卵白としては、鶏卵等の鳥卵を割卵して卵黄を分離した生液卵白のほか、乾燥卵白を生液卵白と同程度に水戻しした液卵白や、凍結卵白を解凍した液卵白等を用いることができる。なお、前記液卵白としては、その起泡性の阻害要因となる卵黄がほとんど混入していないもののほか、商業的割卵において卵黄が混入する程度の卵黄混入液卵白(液卵白全体に対して約0.1%まで)を用いてもよい。
また、前記本発明に用いるシスチンは、タンパク質を構成する含流アミノ酸の一種で、システインがS−S結合したものであり、いわゆる天然添加物として調味料及び栄養強化剤等の目的で使用される白色の粉末である。シスチンの液卵白に対する添加量としては、添加量が少なすぎると優れた起泡性を有する液卵白が得られ難い傾向があり、また多過ぎても卵白の起泡性が向上する効果が比例して増大するわけではなく経済的ではないので、液卵白100部に対して、好ましくは0.01〜0.2部、より好ましくは0.1〜0.15部であるとよい。
本発明の加工液卵白は液卵白にシスチンが添加してある状態で加熱処理してなるが、液卵白にシスチンが添加してある状態とは、液卵白中にシスチンが略均一に分散又は溶解した状態をいう。また、加熱処理は、液卵白が加熱変性により白濁して煮えが生じない程度に加熱処理してあればよい。
ここで、前記加工液卵白の加熱処理の程度は、α−アミラーゼ活性の残存率で表すことができる。α−アミラーゼは液卵白に含まれる酵素であり、加熱されると徐々に失活する。このため、加工液卵白のα−アミラーゼ活性の残存率を測ることにより、加熱処理の程度を表すことができる。具体的には、加熱処理されていない生液卵白のα−アミラーゼ活性の残存率は100%であり、加熱による熱履歴が大きくなるにつれて、この値が徐々に低下し、最終的に液卵白が加熱凝固すると0%になる。
本発明の加工液卵白のα−アミラーゼ活性の残存率は、より優れた起泡性の加工液卵白を得られ易くなることから、95%以下であると好ましい。一方、α−アミラーゼ活性の残存率があまり低いと液卵白が加熱変性して白濁し煮えが生じて好ましくないことから、α−アミラーゼ活性の残存率は好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上であるとよい。
前記加工液卵白のα−アミラーゼ活性の残存率の値は、45℃に加温した15gの加工液卵白に0.7%澱粉溶液2mLを加え、45℃で2時間保管して卵白中のα−アミラーゼを反応させ、次いで、15%トリクロロ酢酸を5mL加えて反応を止め、濾紙を用いて濾過し、濾液2.5mLに5.0×10−4Mのヨウ素溶液を0.5mL加えて発色させ、分光光度計585nmの吸光度を計測する。そして、この加工液卵白の吸光度の計測値と、同様にして計測した加熱処理前の生卵白の吸光度の数値を以下のように計算したものである。
α−アミラーゼ活性の残存率(%)=100−{(加工液卵白の吸光度−生液卵白の吸光度)/(清水の吸光度−生液卵白の吸光度)×100}
また、本発明の加工液卵白は加熱殺菌してあると工業的利用価値が高まるため、前記加熱処理は、加熱殺菌も兼ねていると食品衛生の面からより好ましい。本発明の加工液卵白は、上述のようにα−アミラーゼ活性の残存率が少なくとも95%以下となるように加熱処理してあることが好ましいが、加熱殺菌を兼ねる場合は、更に加熱処理条件を強くして食品衛生法で定められている加熱殺菌、つまり、バッチ式殺菌の場合は54℃で10分間相当以上、連続式殺菌の場合は56℃で3.5分間相当以上、の加熱処理をしてあることが好ましい。
本発明の加工液卵白は生液卵白よりも起泡性に優れているので、卵白を泡立てたメレンゲを用いる食品に特に適している。メレンゲを用いる食品としては、具体的には、例えば、フリッター、スフレオムレツ、スポンジケーキ、ムース、淡雪羹、シフォンケーキ、エンゼルフードケーキ、ダックワーズ、フィナンシェ、マカロン等が挙げられる。なお、本発明の加工液卵白には、本発明の効果を損なわない範囲で、ショ糖、麦芽糖、オリゴ糖、糖アルコール等の糖類、キサンタンガム等の増粘多糖類、食塩、澱粉、香料等を添加してもよい。
本発明の加工液卵白は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、液卵白を用意する。この用意した液卵白にシスチンを添加し、攪拌混合する。攪拌混合は、液卵白が泡立たないように、また、シスチンが液卵白に略均一に溶解又は分散するように行えばよい。攪拌混合方法は特にこだわるものではないが、具体的には例えば、マリンプロペラを使用した攪拌機等を用いて300〜500rpm程度の速度で5〜15分程度攪拌すればよい。
次いで、液卵白にシスチンが添加してある状態で加熱処理する。加熱処理方法は、特にこだわるものではないが、全体に均一に熱が伝わればよく、具体的には例えば、バッチ式殺菌機にて、攪拌しながら中心品温が47〜58℃となったところで、2〜20分間程度加熱し、7℃以下となるように冷却する。加熱処理時の中心品温が前記温度よりも低いと、α−アミラーゼ活性の残存率を95%以下の範囲とし難く、前記温度よりも温度が高いと煮えが生じ易い。このようにして得られた加工液卵白のα−アミラーゼ活性の残存率は、好ましくは20〜95%、より好ましくは30〜95%となる。また、この加熱処理の際、加熱殺菌を兼ねることがより好ましい。加熱殺菌を兼ねる場合は、食品衛生法で定められている加熱殺菌を行えばよく、バッチ式殺菌の場合は54℃で10分間相当以上、連続式殺菌の場合は56℃で3.5分間相当以上、加熱処理すればよい。
以上のようにして得られた加工液卵白がなぜ生液卵白よりも優れた起泡性を有することになるのか理由は定かではないが、以下のように推察される。卵白の泡は、卵白タンパク質が気液界面に吸着することで出来、その起泡の固さや安定性は、タンパク質分子同士の会合により、表面膜を作ることに由来すると推定されている。液卵白中で加熱処理されたシスチンはこのタンパク質分子同士の会合に作用し、泡の表面膜を強固することにより、結果として、泡が硬く、起泡力がよいといった起泡性に優れた加工液卵白が得られるのではないか、と推察される。
以下、本発明の加工液卵白について、実施例等に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
[実施例1]
割卵機を用いて殻付生卵を割卵し、卵黄を分離して生液卵白(卵黄混入率0.1%)を得た。得られた生液卵白100部に対するシスチンの添加量が0.1部となるようにシスチンを添加した。シスチン入りの液卵白をマリンプロペラを使用した攪拌機(東京理化器械社製、マゼラNZ1200)を用いて400rpmで10分間泡立たないように、また、シスチンが液卵白中に均一に分散するように攪拌混合を行った。次に、シスチンが添加してある状態の液卵白をバッチ式の加熱殺菌機に投入し、中心品温が54℃達温後10分間加熱処理した後、5℃に冷却して、加熱殺菌した加工液卵白を得た。
得られた加工液卵白のα−アミラーゼ活性の残存率を調べたところ、62%であった。
[実施例2]
実施例1で得られた加工液卵白(液卵白に100部に対するシスチン添加量0.1部、α−アミラーゼ活性の残存率62%)を用いて、シフォンケーキを調製した。つまり、実施例1で得られた加工液卵白1500gをミキサー(関東混合機工業社製20コート)に投入し、中速(310rpm)で攪拌しながら、上白糖400gを3回に分けて加えメレンゲを調製した。メレンゲとは別に卵黄600gをミキサー(関東混合機工業社製20コート)に投入し、中速(310rpm)で攪拌しながら、上白糖250gを加え、さらに攪拌しながら水1000g、サラダ油650g、薄力粉1000gを加えて均一になるまでよく混合し、卵黄生地を得た。次に、メレンゲを低速(136rpm)で攪拌しながら得られた卵黄生地を流し込み、攪拌して生地を得た。次に得られた生地をシフォンケーキ型(直径18cm、高さ8cm)に400gずつ流しいれ、オーブンにて180℃で35分間焼成してシフォンケーキを得た。
得られたシフォンケーキは、本発明の加工液卵白(実施例1)のかわりに生液卵白を用いたものに比べてキメが細かく、ふっくらとして、非常に美味しかった。
[実施例3]
割卵機を用いて殻付生卵を割卵し、卵黄を分離して生液卵白(卵黄混入率0.1%)を得た。得られた生液卵白100部に対し、シスチンを0.15部添加した。シスチンが添加してある状態の液卵白をマリンプロペラを付けた攪拌機(東京理化器械社製、マゼラNZ1200)を用いて350rpmで15分間泡立たないように、また、シスチンが生液卵白中に均一に分散するように攪拌混合を行った。次に、バッチ式の加熱殺菌機に投入し、中心品温が56℃に達温後5分間加熱処理し、7℃に冷却し、加工液卵白を得た。
[実施例4〜6]
実施例3において、加熱処理条件をかえて3種類の加熱処理条件の異なる加工液卵白を得た。つまり、中心品温が52℃達温後5分間加熱処理したもの(実施例4)、54℃に達温後5分間加熱処理したもの(実施例5)、57℃に達温後5分間加熱処理したもの(実施例6)の3種類の加工液卵白を得た。
[比較例1]
加熱処理しない他は、実施例3と同じ配合と同じ製法にて液卵白を得た。
[比較例2]
シスチンを添加しない他は、実施例3と同じ製法にて液卵白を得た。
[試験例1]
対照例1として、殻付生卵を割卵し、卵黄を分離して生液卵白を用意した。対照例1、比較例1〜2及び実施例3〜6の液卵白それぞれに関して、実施例1と同様にしてα−アミラーゼ活性の残存率を調べた。結果を表1に示す。
また、対照例1、比較例1〜2及び実施例3〜6で得られた液卵白それぞれに関して起泡性を調べた。つまり、各液卵白を500gずつボール(口径30cm、深さ24.5cm)に入れ、品温を20℃に調整した後、ホイッパーを使用したホバートミキサーにて中速(196rpm)で2.5分間攪拌し、更に、高速(358rpm)で2分間攪拌して起泡させた後、ヘラで表面をならし、起泡力と泡の硬さとを測定した。起泡力は容積を測定する代わりに泡の高さ、つまりボールの底から表面までの距離を測定したものであり、泡の硬さは、泡の表面に錘(起泡した卵白との接触面が直径4cmの丸型)をのせて5秒間沈まない錘の重さを調べたものである。結果を表1に示す。
Figure 2008054610
表1より、α−アミラーゼ活性の残存率が100%(比較例1)で未加熱であると、シスチンを添加してあっても生液卵白(対照例1)と比較して起泡性が同程度であることが理解できる。また、シスチン無添加で加熱してα−アミラーゼ活性の残存率が53%(比較例2)であると、生液卵白(対照例1)と比較して起泡性が低下していることが理解できる。これに対して、液卵白にシスチンが添加してある状態で加熱処理してある加工液卵白、好ましくはα−アミラーゼ活性の残存率が95%以下である加工液卵白(実施例3〜6)は、生液卵白と比較して優れた起泡性を有していることが理解できる。なお、実施例3において加熱処理の温度と時間を60℃で5分として同様に調製した試験では煮えが生じ、その時のα−アミラーゼ活性の残存率は15%であったことから、加工液卵白のα−アミラーゼ活性の残存率は20%以上であると好ましい。

Claims (5)

  1. 液卵白にシスチンが添加してある状態で加熱処理してなることを特徴とする加工液卵白。
  2. 加工液卵白のα−アミラーゼ活性の残存率が20〜95%である請求項1記載の加工液卵白。
  3. シスチンの添加量が、液卵白100質量部に対して、0.01〜0.2質量部である請求項1又は2記載の加工液卵白。
  4. 加工液卵白がメレンゲを用いる食品用である請求項1乃至3のいずれかに記載の加工液卵白。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の加工液卵白からなるメレンゲを用いた食品。
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