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JP2007284647A - 塗装用樹脂成形体 - Google Patents

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JP2007284647A JP2006129651A JP2006129651A JP2007284647A JP 2007284647 A JP2007284647 A JP 2007284647A JP 2006129651 A JP2006129651 A JP 2006129651A JP 2006129651 A JP2006129651 A JP 2006129651A JP 2007284647 A JP2007284647 A JP 2007284647A
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Morio Tsunoda
守男 角田
Masami Suzuki
政巳 鈴木
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Mitsubishi Engineering Plastics Corp
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Abstract

【課題】 導電性繊維の含有量が多く、十分な導電性を保ちつつ、且つ表面性に優れ、そしてプライマー処理等を要さずとも塗装密着性にも優れる、ポリアミド樹脂組成物を成形してなる塗装用樹脂成形体を提供する。
【解決手段】 以下の成分(A)〜(C)からなる樹脂組成物を成形してなる、塗装用樹脂成形体。
成分(A) ISO粘度数が80ml/g以上160ml/g以下の、ポリアミド6樹脂、ポリアミド66樹脂、またはこれらの混合物若しくは共重合体から成る群より選ばれる少なくともひとつのポリアミド樹脂:55重量%以上88重量%未満
成分(B) 導電性繊維:11〜35重量%
成分(C) エチレン・ビニルアルコール共重合体および/またはエチレン・酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物:0.1〜10重量%
【選択図】 なし

Description

本発明は、特定の樹脂組成物からなり、その表面の少なくとも一部に塗膜を設けるための、塗装用樹脂成形体に関するものである。詳しくは、その樹脂表面にプライマー等の下地層を設けずとも、塗装密着性に優れ、導電性、外観にも優れた塗装樹脂成形体を提供することが出来る、塗装用樹脂成形体に関するものである。
ポリアミド樹脂(以下、「PA」と略記する事がある。)は、各種あるエンジニアリングプラスチックス(エンプラ)の中でも、その優れた成形性、機械的特性、耐薬品性等を利用して、各種の電気電子部品、自動車部品、各種構造部品の材料として広く使用されている。それらの部品の中でも各種のカバー、ハウジング、外装パネル、スイッチ類等に使用される場合、意匠性、機能性向上を目的として塗装を施す場合がある。
しかしポリアミド樹脂は他のエンプラと比較して塗装密着性が低いという課題を抱えている。この為、ポリアミド樹脂からなる成形体表面に塗装を施す場合には、一般的に事前にプライマー塗布(接着塗料)等の下地層を設ける予備工程が必要となっている。その為に生産性向上、及び環境負荷物質低減の観点から、プライマー塗布を要さずに塗装密着性に優れたポリアミド樹脂組成物が切望されていた。
従来、ポリアミド樹脂の塗装密着性改良方法としては、例えばエポキシ化合物を配合する方法が行われてきた。しかしエポキシ化合物は、少量の配合でもポリアミド樹脂と反応して、樹脂組成物の流動性を低下させるという問題があった。また一方で、大量にエポキシ化合物を配合しないと塗装密着性改良効果が得られない事から、塗装密着性に優れたエポキシ化合物配合ポリアミド樹脂組成物は、流動性が著しく低い為に樹脂成形品の形状が制約される材料となる問題があった。
この様な流動性の低いポリアミド樹脂は、例えば繊維状物質等の強化剤や、導電性成分等を含有しない場合には、樹脂成形体の形状、成形条件などを調整して用いる場合もあるが、その使用範囲が非常に限られているという問題があった。尚更、炭素繊維等の繊維状物質を含有するポリアミド樹脂組成物においては、流動性の低下により樹脂成形体表面に繊維状物質が浮かび上がり、樹脂成形体の表面性の低下や、これに塗膜を設けた際の塗装膜表面性も低下すると言う問題があり、事前のプライマー処理等が必須となっていた。
これらの問題に対しては、例えば塗装密着性の良い、他の樹脂を大量に配合して、塗装密着性を改良する方法が知られている。具体的には例えば、PA/PPE(ポリフェニレンエーテル)樹脂組成物(例えば特許文献1参照。)やPA/ABS(アクリル・ブタジエン・スチレン共重合体)樹脂組成物(例えば特許文献2参照。)等が挙げられる。
またポリアミド樹脂表面への塗装方法としては、一般的に静電塗装が用いられる場合が多く、ポリアミド樹脂にこの様な導電性を付与することが行われている。静電塗装を施す樹脂組成物に必要とされる導電性のレベルは一般的には、成形体のコア相での体積抵抗では少なくとも10Ω・cmレベル、成形体の表面抵抗率では少なくとも1011Ωレベルである。
ポリアミド樹脂に導電性を付与する為には、例えばイオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などの帯電防止剤や、導電性カーボンブラック、中空炭素フィブリル、炭素繊維、黒鉛等のカーボン系物質、金属紛、金属繊維等、金属被服物質等を配合することが行われており、ポリアミド樹脂の導電性も併せて改良する技術が提案されている。
例えばポリアミド樹脂(A)と、α,β−不飽和カルボン酸をグラフト変性したエチレン・α−オレフィン系共重合体(B)のアロイに、特定の導電性カーボンブラック(C)、無機充填剤(D)、エチレン・ビニルアルコール共重合体および/またはエチレン・酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物(E)を配合した樹脂組成物が提案されている(例えば特許文献3参照)。
またポリアミド樹脂90〜99.9重量%、導電性物質0.1〜10重量%からなる樹脂組成物100重量部に、オレフィン類と不飽和基および極性基を併せ持つ化合物との共重合体が0.1〜15重量部配合された熱可塑性樹脂組成物が提案されている(例えば特許文献4参照)。
一般的に導電性カーボンブラックは、樹脂への導電性付与を目的として広く使用されているが、嵩密度が高い為に取り扱いが難しく、樹脂との混合割合を高めることが困難であり、且つポリアミド樹脂への混合割合の増加に伴い、得られる樹脂組成物の流動性が低下するという問題があった。これを改良、導電性の更なる改良を目的として、不連続性導電性繊維を配合したポリアミド樹脂組成物に、特定量のポリビニルアルコール樹脂を配合した、ポリアミド樹脂組成物が提案されている(例えば特許文献5参照)。
特開平9−124923号公報 特開2005−264083号公報 特開2005−145995号公報 特開2003−64254号公報 特開2002−338802号公報
しかし特許文献1、2に記載の樹脂組成物では、塗装密着性は優れているが、ポリアミド樹脂よりも流動の悪いPPE樹脂やABS樹脂を大量に配合している為に、やはり繊維状物質を配合したものは外観(表面性)が著しく低下すると言う問題があった。
また特許文献3に記載の樹脂組成物は、樹脂特性バランスには優れるが、導電性物質としてカーボンブラックを用いるために、得られる導電性のレベルに限界があった。更に特許文献4に記載の樹脂組成物も、流動性、導電性、塗装密着性等の樹脂特性バランスには優れているが、導電性物質の含有量が少量の時に効果が顕著となるのであり、何れも、更に高度な導電性の要求に対しては、満足するものではなかった。
そして、特許文献5では不連続性導電性繊維を配合したポリアミド樹脂組成物の導電性を更に高める目的で、ポリビニルアルコール樹脂を配合してはいるが、導電性の改良が目的であり、樹脂成形体の表面性や塗膜密着性改良については、示唆すら無かった。更にポリビニルアルコール樹脂として例示されているものは、何れもホモのポリビニルアルコール樹脂や、それが混合された水溶性樹脂であり、本質的にはそれ自体が(混練押出加工、射出成形加工などの)熱溶融加工適性に欠ける樹脂であると言う問題があった。
そして本発明者らが特許文献5に記載されている様なホモのポリビニルアルコール樹脂について、塗装用樹脂成形体への使用を検討したところ、ゲルが大量に発生し、成形体表面にシルバー(銀条)が形成されるなど、著しく外観を悪化させると言う問題が生じた。
この様に、未だ、導電性繊維の含有量を増やし、十分な導電性、具体的には表面抵抗率が9×10Ω以下の高度な導電性を保持しつつ、且つ表面性に優れ、そしてプライマー処理等を要さずとも塗装密着性にも優れるポリアミド樹脂組成物が見出されておらず、その提供が切望されていた。
本発明らは上述した課題に鑑みて、塗装用樹脂成形体、とりわけ塗装用ポリアミド樹脂成形体について鋭意検討した結果、特定の物性を有する特定のポリアミド樹脂に、導電性繊維と、特定のビニルアルコール共重合体、具体的にはエチレン・ビニルアルコール共重合体および/またはエチレン・酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物を含有させることによって、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は、以下の成分(A)〜(C)からなる樹脂組成物を成形してなる、塗装用樹脂成形体に存する。
成分(A) ISO粘度数が80ml/g以上160ml/g以下の、ポリアミド6樹脂、ポリアミド66樹脂、またはこれらの混合物若しくは共重合体から成る群より選ばれる少なくともひとつのポリアミド樹脂:55重量%以上88重量%未満
成分(B) 導電性繊維:11〜35重量%。
成分(C) エチレン・ビニルアルコール共重合体および/またはエチレン・酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物:0.1〜10重量%。
本発明に係るポリアミド樹脂組成物及びそれからなる成形体は、塗装密着性に優れ、プライマーを施す必要が無く、外観にもすぐれるので、塗装用樹脂成形体として好適である。また本発明のポリアミド樹脂組成物及びそれを成形してなる塗装用樹脂成形体は、導電繊維の種類、配合量、分散状態を調整することが可能であり、高度且つ任意の表面抵抗率を発現させる事が出来る。そして静電塗装、電磁波シールド性など任意の性能を付与する事が可能となるので、産業上の利用価値は極めて大きいものである。
本発明のポリアミド樹脂組成物を成形してなる、塗装用樹脂成形体は、導電性、塗膜密着性、外観、機機械的特性にも優れているので、電磁波シールド、静電塗装用製品などに応用が可能であり、電気電子分野部品(例えば、電子回路の保護ケース、各種パネル、各種基盤)、自動車分野部品(例えば、フェンダー、ガーニッシュ、外装パネル、ドア、各種センサー等のハウジング)、機械部品などへ適用することで、その効果が顕著となることが期待される。
以下、本発明を詳細に説明する。
成分(A)ポリアミド樹脂
本発明に用いる成分(A)は、ISO粘度数が80〜160の、ポリアミド6樹脂、ポリアミド66樹脂、またはこれらの混合物若しくは共重合体から成る群より選ばれる少なくともひとつのポリアミド樹脂である。更に具体的には、ポリアミド6樹脂(以下、「PA6」と言う場合がある。)、ポリアミド66樹脂(以下、「PA66」と言う場合がある。)、ポリアミド6樹脂とポリアミド66樹脂の共重合体及び、この混合物(ブレンド物)からなる群より選ばれる少なくともひとつのポリアミド樹脂を示す。
本発明に用いる成分(A)としては、中でも、ポリアミド6樹脂や、ポリアミド6樹脂リッチの、ポリアミド6樹脂と該66樹脂の混合物若しくは共重合体(以下、「PA6/PA66」と言う場合がある。)を用いることにより、耐衝撃性が向上する傾向にある。また、ポリアミド66樹脂や、ポリアミド66樹脂リッチの、ポリアミド6樹脂と該66樹脂の混合物若しくは共重合体(以下、「PA66/PA6」と言う場合がある。)を用いることで、特にPA66/PA6がブレンド物で有る際には、耐熱剛性が向上する傾向にある。
本発明においては、成分(A)としてPA6やPA66等の、特定のポリアミド樹脂を用いることによって、塗装用樹脂成形体において、塗装密着性、外観、熱安定性、機械的特性等の物性が、バランス良く、向上する傾向にある。本発明に用いる成分(A)としては、その用途に応じて本発明の範囲内のポリアミド樹脂を適宜選択して決定すればよい。
特に、屋外の環境に曝される用途では、降雨、湿度の影響による寸法変化が少ないPA66やPA66/PA6が好ましくい。また持ち運び可能な電子機器のハウジング用途などでは、耐衝撃性に優れるPA6やPA6/PA66が好ましい。更に、製品の塗装工程や、使用環境が210℃を超える様な場合には、耐熱性に優れるPA66やPA66/PA6が好ましく、210℃以下の温度で使用される場合には、適度な耐熱性を有し、成形性にも優れる、PA6やPA6/PA66が好ましい。
本発明に用いる成分(A)のポリアミド樹脂は、ISO粘度数が80〜160ml/gであることを特徴とする。ここでISO粘度数とは、ISO−307に定められた方法、具体的には、96%濃硫酸中、0.5重量%濃度、23℃の条件下にて測定された粘度数を示す。この粘度数が、80〜160ml/gとすることで、本発明の塗装用樹脂成形体を、外観及び機械的特性に優れたものとすることが出来る。
ISO粘度数小さすぎると、械的特性が低下し、逆に大きすぎても流動性や外観が低下する。よって本発明に用いる成分(A)のISO粘度数は、成分(A)がPA6樹脂またはPA6/66の場合には、95〜140ml/gとすることが好ましく、またPA66樹脂やPA66/6樹脂の場合には、120〜155ml/gとすることが好ましい。
本発明に用いる成分(A)のポリアミド樹脂の末端基のアミノ基とカルボキシル基の濃度(末端基濃度)は任意であり、末端基の一部を、酢酸、ステアリン酸、ステアリルアミン等で末端を封止したり、変性してもよい。中でも本発明においては、熱安定性の点から、本発明に用いる成分(A)のポリアミド樹脂の末端基濃度の比(カルボキシル基/アミノ基)が、0.3〜5であることが好ましい。
本発明の塗装用樹脂成形体における成分(A)の含有量は、55重量%以上、88重量%未満である。成分(A)が少なすぎると、本発明の塗装用樹脂成形体における外観が不良となり、逆に多すぎても導電性が良好なものとならない。よって本発明における成分(A)は、中でも60重量%以上、88重量%未満であることが好ましく、特に70重量%以上、88重量%未満であることが好ましい。
成分(B)導電性繊維
本発明に用いる成分(B)導電性繊維は、従来公知の任意導電性繊維を用いればよく、通常、その体積抵抗率が1×10Ω・cm以下の導電性を有するものを用いる。
本発明に用いる成分(B)は、具体的には例えば、ニッケル、銅、SUSなどの金属繊維;炭素繊維;スズ、銅、ニッケルなどの金属で被服された有機或いは無機の繊維;等が挙げられる。中でもニッケル繊維や炭素繊維が導電性、機械的特性のバランスに優れ、且つ入手のし易さの点から好ましく、特に炭素繊維は良好な導電性を有し且つ、比重が小さいので、本発明の塗装用樹脂成形体を軽量化出来るので好ましい。
本発明に用いる成分(B)の導電性繊維の形状は、通常の、いわゆる繊維状のものであれば適宜選択して決定すればよい。繊維長が短すぎると本発明の塗装用樹脂成形体の耐衝撃性が低下し、逆に長すぎても外観が低下する場合があるので、重量平均繊維径は0.1〜100μmであることが好ましく、中でも1〜20μmであることが好ましい。
また重量平均繊維長が短すぎると導電性が低下し、逆に長すぎても外観が低下するので、重量平均繊維長は1μm〜2cmであることが好ましく、中でも20μm〜1cmであることが好ましい。そして更に、上述した重量平均繊維長と重量平均繊維径の比率(平均アスペクト比;重量平均繊維長/重量平均繊維径の比率)が2以上であることが好ましい。
上述の通り、本発明に用いる成分(B)としては、中でも炭素繊維が好ましいが、その製造方法は任意であり、従来公知の製造方法、例えばPAN系、ピッチ系、セルロース系、炭化水素の気相成長系の重量平均繊維長/重量平均繊維径や黒鉛繊維のいずれでもよい。本発明に用いる成分(B)導電性繊維として炭素繊維を用いる際には、中でもPAN系の炭素繊維が強度、耐衝撃、導電性のバランスに優れるので好ましい。
本発明に用いる炭素繊維は、その表面の一部又は全部を有機物質で処理したり、またメッキ法、CVD法、PVD法、イオンプレーティング法、蒸着法等によりニッケル、イッテルビウム、金、銀、銅、スズなどの金属成分により被服されていてもよい。中でも、取り扱い性や成分(A)等の樹脂中での分散性を改良する為に、サイジング剤(集束剤)で処理したものを用いることが好ましい。
サイジング剤(集束剤)としては、従来公知の任意のものを使用できる。具体的には、エポキシ化合物、ポリウレタン化合物、飽和又は不飽和ポリエステル、ポリフェニレンサルファイト、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢ビコポリマー、ポリアミド樹脂などのホモポリマー又はコポリマー等が挙げられる。
中でもエポキシ化合物やポリアミド化合物、ウレタン化合物が好ましい。サイジング剤(集束剤)は、水溶性でも、非水溶性でもよいが、中でもサイジング処理が容易な水溶性のものが好ましい。成分(B)中におけるサイジング剤(集束剤)の含有量は、適宜選択して決定すればよいが、少なすぎると導電性繊維の取り扱い性改善効果等が十分でなく、逆に多過ぎても熱安定性、導電性が低下する。よってその含有量は、中でも0.5〜10重量%、特に2〜8重量%であることが好ましい。
そして本発明の塗装用樹脂成形体中における、成分(B)の導電性繊維の含有量は、11〜35重量%である。成分(B)が11重量%未満であると導電性が不十分となり、逆に35重量%を超えると、外観が低下する。本発明においては、本発明の樹脂成形体の用途に応じて、成分(B)の含有量を上述の範囲内にて適宜選択して決定すればよい。具体的には例えば、電磁波シールド性が必要な場合には、樹脂成形体の表面抵抗率を1×10Ω以下にすればよい。また静電塗装を施す場合には1×10Ω以下、中でも1×1010Ω以下にすることが好ましい。
成分(C)エチレン・ビニルアルコール共重合体および/またはエチレン・酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物
本発明に用いる成分(C)の、エチレン・ビニルアルコール共重合体とは、エチレンとビニルアルコールとのランダム共重合体である。本発明に用いる成分(C)は、通常、エチレンの共重合比率が1〜99モル%である。エチレン含有率が多すぎると塗装密着性が低下する傾向にあり、逆にエチレン含有率が低すぎると本発明の塗装用樹脂成形体用ポリアミド樹脂組成物の熱安定性低下や、成形品の外観が低下する場合がある。よってこのエチレン含有率は20〜70モル%であることが好ましく、中でも30〜70モル%であることが好ましい
本発明に用いる成分(C)のエチレン・酢酸ビニル共重合体部分ケン化物におけるケン化度は、適宜選択して決定すればよいが、通常、40モル%以上である。ケン化度が低すぎると、本発明の塗装用樹脂成形体用ポリアミド樹脂組成物の溶融時の熱安定性が低下する場合がある。よってケン化度は60モル%以上であることが好ましく、更には80モル%以上、特に90モル%以上であることが好ましい。
本発明に用いる成分(C)のエチレン・酢酸ビニル共重合体部分ケン化物は、JIS−K6730に準じて測定したMIは、適宜選択して決定すればよいが、通常、0.5〜300g/10分であり、中でも0.8〜250g/10分のものが、本発明の塗装用樹脂成形体用ポリアミド樹脂組成物の溶融流動性および強度の観点から好ましい。
本発明に用いる成分(C)である、エチレン・酢酸ビニル共重合体部分ケン化物においては、そのエチレン・酢酸ビニル共重合体中に、少量の共重合可能な単量体成分を含有していてもよい。共重合可能な単量体成分としては、例えば、プロピレン、イソブテン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセンなどのα−オレフィン、不飽和カルボン酸またはその塩、部分アルキルエステル、完全アルキルエステル、アクリロニトリル、アクリルアミド、無水物、不飽和スルホン酸またはその塩などが挙げられる。
本発明に用いる成分(C)としては、熱安定性及び外観から、エチレン・ビニルアルコール樹脂を用いることが好ましい。本発明における成分(C)の含有量は0.1〜10重量%の範囲内である。成分(C)の含有量が少ないと、塗装装密着性の改善効果が十分ではなく、逆に多すぎても成分(A)ポリアミド樹脂との反応が顕著となり、本発明の塗装用樹脂成形体用ポリアミド樹脂組成物の溶融流動性が低下し、塗装用樹脂成形体の外観が低下するので、成分(C)の含有量は、中でも、1〜10重量%、特に6.5〜10重量%であることが好ましい。
本発明に用いる成分(C)は従来公知の任意の製造方法により、所望のものを製造して用いても、また市販されているものを使用してもよい。市販されているものとしては、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体部分ケン化物としては、クラレ社製エバール、日本合成化学社製ソアノール等が挙げられる。
その他の成分
本発明の塗装用樹脂成形体には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の添加剤、具体的には熱安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、強化剤、そして、成分(A)以外の熱可塑性樹脂や、成分(B)以外の導電材料等を含有させてもよい。
熱安定剤としては例えば、ハロゲン化銅、ヨウ化カリウム、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物、ホスフィネート化合物、ヒンダートフェノール、ハイドロタルサイト等が挙げられる。また紫外線吸収剤としては例えばヒンダートアミン類等が挙げられる。これらの含有量は適宜選択して決定すればよいが、通常、本発明の塗装用樹脂成形体用ポリアミド樹脂組成物に対して、2重量%以下である。
また難燃剤としては例えば、臭素化エポキシ、臭素化ポリスチレン、臭素化アクリル、臭素化ポリフェニレンエーテル、アンチモン化合物、ホウ酸亜鉛、シアヌル酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ホスファゼン、ホスフィネート金属塩等が挙げられる。これらの含有量は適宜選択して決定すればよいが、通常、本発明の塗装用樹脂成形体用ポリアミド樹脂組成物に対して、30重量%以下である。
更に成分(B)以外の導電材料としては例えば、全組成物中に0〜10重量%の範囲内でケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、リン片状黒鉛等が挙げられる。これらの含有量は適宜選択して決定すればよいが、通常、本発明の塗装用樹脂成形体用ポリアミド樹脂組成物に対して10重量%以下である。
強化剤としては例えば、ガラス繊維、ガラスフレーク、ワラストナイト、タルク、カオリン、マイカ等が挙げられる。これらの含有量は適宜選択して決定すればよいが、通常、本発明の塗装用樹脂成形体用ポリアミド樹脂組成物に対して10重量%以下である。
これらの添加剤の中でも、ハロゲン化銅、具体的にはヨウ化銅及び/又は塩化銅0.001〜0.3重量%と、ヨウ化カリウム0.01〜1重量%を併用することによって、耐熱老化性や耐候性が向上するので好ましい。これらを含有する本発明の塗装用樹脂成形体は、屋外使用や、80℃以上の高温下での使用に最適である。
また成分(A)ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、具体的には例えば、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、アクリル樹脂(AN)、アクリル−スチレン樹脂(AS)、ABS樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂(HIPS)等の汎用プラスチックス;成分(A)以外のポリアミド樹脂(PA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)などのエンジニアリングプラスチックス;液晶ポリマー類(LCP)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)などのスーパーエンジニアリングプラスチックス;アクリル系エラストマー、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマーなどの熱可塑性エラストマー樹脂等;が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂の含有量は適宜選択して決定すればよいが、通常、成分(A)以外の熱可塑性樹脂と成分(A)の重量比(成分(A)以外の熱可塑性樹脂/成分(A))が、0.8未満であることが好ましい。
熱可塑性樹脂の中でも、熱可塑性エラストマー樹脂を含有することで、耐衝撃性が改良できるので好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、中でもエチレン・ブテン共重合体、エチレン・オクテン共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、スチレン・エチレン・ブテン・スチレン共重合体、アクリル・ブタジエン・スチレン共重合体などが好ましい。更に、これら熱可塑性エラストマー樹脂は、成分(A)との相容性を改良する為に、不飽和酸及びその誘導体などにより変性されていることが好ましい。
また熱可塑性樹脂としてPA樹脂、具体的にはモノマー単位にテレフタル酸を含有するポリアミド6の共重合体(6I/6T共重合体)や、モノマー単位にメタキシレンを含有するポリアミド6(MXD6)等を用いる場合には、その含有量を成分(A)1重量部に対して、0.01〜0.6重量部、好ましくは0.01〜0.3重量部とすることで、外観を更に改良する事が出来るので好ましい。
本発明の塗装用樹脂成形体の製造方法は、従来公知の樹脂組成物の製造方法における任意の方法を使用できる。具体的には例えば成分(A)、(B)、(C)の各成分と、必要に応じて添加するその他の添加剤を溶融混練してペレットを製造し、これを成形する方法が挙げられる。また、各成分をドライブレンドしたものを成形する方法が挙げられる。中でも、本発明では、2種類以上の、各成分のペレットを、ドライブレンドする方法を用いることが好ましい。溶融混練は従来公知の任意の機械や、方法を使用することができる。具体的には例えば一軸または二軸、多軸の押出機、ロール、バンバリーミキサーなどが挙げられる。
本発明の塗装用樹脂成形体の製造方法は特に限定されるものではなく、樹脂組成物について一般に採用されている成形法、即ち射出成形法、中空成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法などにより、成形すればよい。中でもサイクル特性が高い(生産性が高い)点で、射出成形法による成形が好ましい。
本発明の塗装用樹脂成形体の製造方法としては、中でも、成分(A)と成分(B)からなる樹脂ペレット、好ましくは成分(A)、(B)を溶融・混練して得られたペレットを、成分(C)とドライブレンド混合した樹脂組成物を成形する方法が好ましい。また成分(C)を、成分(A)、(B)と同時に溶融・混練する場合には、得られるポリアミド樹脂組成物の熱安定性低下や塗装密着性維持のために、溶融混練時において、混練機中における樹脂組成物の滞留時間を短くすることが好ましい。
尚、ここでペレットとは、顆粒形状のものを示し、その形状は任意であり、具体的には球状、円柱状、角柱状などの形状である。またその大きさ(寸法)も従来公知の任意の値から適宜選択して決定すればよいが、ペレットが小さ過ぎたり、逆に大き過ぎると分散安定性や成形機への食い込み性が低下する場合がある。よってその大きさは通常、最長径が1〜30mmであり、中でも直径、短辺、長辺の各長さが、2〜5mmの円柱状又は四角柱状であることが好ましい。
本発明の塗装用樹脂成形体に塗装を施す方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の任意の、熱可塑性樹脂成形体への塗装方法を用いることが出来る。本発明の塗装用樹脂成形体は、従来のポリアミド樹脂成形品にて塗装を施す際に通常実施されるプライマー処理を施さなくても、十分な塗装密着性を発現することを特長とし、この様なプライマー処理工程を省くことが出来るが、必要に応じて、プライマー処理を行ってもよい。また、本発明の塗装用樹脂成形体は導電性にも優れるので、必要により自動車外装部品用の鋼板にて実施されている静電塗装法も適用することが出来る。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。尚、以下の実施例、比較例での配合量における「%」は、重量%を示す。
実施例及び比較例の各樹脂組成物を得るに当たり、次に示す原料を準備した。
1.成分(A)
(A−1)ポリアミド6樹脂:三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ノバミッド1010J、粘度数118ml/g、融点223℃
(A−2)ポリアミド66樹脂:デュポン社製、ZYTEL−FE3218、ISO粘度数138ml/g、融点264℃
2.成分(B)
(B−1)炭素繊維:東邦テナックス社製、HTA−C6−N、サイジング剤としてポリアミド樹脂を用い、サイジング剤含有量は3.5%、平均繊維径7μm、体積抵抗率1.5×10−3Ω・cm
(B−2)炭素繊維:東邦テナックス社製、HTA−C6−US、サイジング剤としてウレタン樹脂を用い、サイジング剤含有量は2.5%、平均繊維径7μm、体積抵抗率1.5×10−3Ω・cm
3.成分(C)
(C−1)エチレン・ビニルアルコール樹脂:クラレ社製、エバールG156A、エチレンの共重合比率47モル%、ケン化度99%以上、密度1.12、MIは6[g/10分](JISK6730に準拠し、190℃×2160g条件下での測定値)
(C−2)エチレン・酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物:東ソー社製、メルセンH6960、密度0.99g/cm3、融点113℃、酢酸ビニル含量4.2重量%、ケン化度90%、MIは40[g/10分](JISK6730に準拠し、190℃×2160g条件下での測定値)
4.その他の成分(D)
(D−1)エポキシ樹脂化合物:東都化成社製、エポトートYD5013
(D−2)ポリビニルアルコール樹脂:クラレ社製、ポバールPVA102、ケン化度98〜99%
(D−3)ポリアミド6:三菱エンジニアリングプラスチックス社製、1020J、ISO粘度数182ml/g、融点223℃
(D−4)ポリアミド12:EMS社製、グリルアミドL20G、融点178℃
[評価方法]
(1)塗装密着性:
縦横寸法100mm×100mm、厚さ3mmの正方形の板状成形体を試験片とした。先ず試験片の表面にアクリル・ウレタン系塗料(オリジン電気社製、OP−Z−NY)を塗布し、80℃の温度で60分間焼き付けた。次いで焼き付けた後の塗装膜面に、一辺が1mm幅で碁盤目状のスリットを100マス刻設した。塗装膜面にセロハンテープを張り付け、このセロハンテープを剥がした際に、塗装膜面が共に剥がれるか否かを目視観察した。塗装膜面がセロハンテープによって剥がされず、試験片の表面に残ったマスの残存率を求めた。残存率が100%のものを○、それ以外のものを×とした。
(2)外観
(2−1)塗装前の成形体の表面外観:
試験片には、前記(1)塗装密着性評価で使用したもの同様、塗装を施す前の板状成形体を用いた。
当該試験片の表面外観を目視にて観察し、シルバーストリークや、著しく粗雑な表面が形成されている場合は×、その様な不良が無い場合を○とした。
(2−2)塗装後の成形体の塗装膜表面外観
前記(1)の塗装密着性評価を行なった試験片にて、スリットを刻設していない部分の、塗装用樹脂成形体の塗膜表面の外観を目視にて観察した。著しく粗雑な表面が形成されている場合は×に、その様な不良が無い場合を○とした。
(6)表面抵抗率;
JIS−K6911に準拠して、表面抵抗率を測定した。測定装置にはアドバンテスト社デジタル超高抵抗計R8340を使用した。試験片には、前記(1)塗装密着性評価で使用したもの同様、塗装を施す前の板状試験片を使用した。
(3)曲げ弾性率;
ASTM D790に準拠し、絶乾状態の曲げ弾性率(単位:MPa)を測定した。
(4)熱変形温度;
ASTM D648に準拠し、応力条件0.45MPa、絶乾状態で温度を測定した。
(5)衝撃強度;
ASTM D256に準拠し、絶乾状態で、1/8インチ厚みのIZOD衝撃値(単位:J/m)を測定した。
(実施例1〜6、比較例1〜5)
表1、及び2に示す樹脂組成物の配合量(重量比率)になる様に調製し、以下の手法にて、樹脂組成物を製造した。
先ず二軸押出機(日本製鋼所製、TEX30HCT、スクリュー直径30mmφ)を用いて、シリンダー温度270℃、スクリュー回転数200rpmの条件にて、吐出量10kg/hの条件にて、成分(C)を除く、全ての成分を溶融混練した樹脂組成物ペレットを製造した。尚、この際、成分(B)は、押出機の中流部からサイドフィードにて配合し、成分(B)以外は、押出機の上流部から一括投入した。続いて、当該溶融混練によって製造したペレットと、成分(C)のペレットとをタンブラミキサーにてドライブレンドし、120℃の熱風乾燥機で8時間乾燥してポリアミド樹脂組成物を得た。
[試験片の作成];
成形機(住友重機械社製SH100)を用い、樹脂温度280℃、金型温度80℃、充填時間0.4sec、保圧時間10sec、冷却時間10sec、スクリュー回転数150rpm、背圧5kg/cmにて試験片を成形し評価した。結果を表1、2に示す。
Figure 2007284647
Figure 2007284647
表1、表2から明らかなとおり、本発明のポリアミド樹脂組成物(実施例1〜6)は、何れも、塗装密着性、外観に優れ、且つ高度な導電性を有し、剛性、耐衝撃性、耐熱剛性などの機械的特性も強化ポリアミド樹脂として十分な特性値を示すという、諸物性のバラ
ンスに優れたものであることが判る。
一方、比較例1〜比較例8のポリアミド樹脂組成物は、塗装密着性、外観、導電性の何れかに課題があり、本発明が目指す諸物性のバランスが不十分であった。尚、比較例4〜8にいては、既に塗装前後の樹脂成形体の外観不良が著しいために、その他の評価を中止した。

Claims (5)

  1. 以下の成分(A)〜(C)からなる樹脂組成物を成形してなる、塗装用樹脂成形体。
    成分(A) ISO粘度数が80ml/g以上160ml/g以下の、ポリアミド6樹脂、ポリアミド66樹脂、またはこれらの混合物若しくは共重合体から成る群より選ばれる少なくともひとつのポリアミド樹脂:55重量%以上88重量%未満
    成分(B) 導電性繊維:11〜35重量%
    成分(C) エチレン・ビニルアルコール共重合体および/またはエチレン・酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物:0.1〜10重量%
  2. 成分(C)がケン化度99%以上のエチレン・ビニルアルコール共重合体であることを特徴とする請求項1記載の塗装用樹脂成形体。
  3. 成分(B)が炭素繊維であることを特徴とする請求項1または2に記載の塗装用樹脂成形体。
  4. 成分(A)と成分(B)からなる樹脂ペレットと、成分(C)をドライブレンドして得られる樹脂組成物を成形してなる、請求項1乃至3のいずれかに記載の塗装用樹脂成形体。
  5. 成分(C)の含有量が6.5〜10重量%であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の塗装用樹脂成形体。

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