JP2007284300A - 光学素子成形型及びその製造方法、並びにこれを用いた光学素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ガラス材料で構成された成形型における素子成形面の歪み量や交換時期を容易に特定できるようにする。
【解決手段】ガラス材料51を軟化温度近傍まで加熱し、加熱したガラス材料51を、所定形状の成形面を有するマザー型46を用いてプレス成形することにより、ガラス材料51の一端にマザー型46の成形面を転写させて素子成形面を形成する。次に、ガラス材料51の他端に、素子成形面における残存歪み量に基づく屈折率の変化を計測するためのプリズム部を形成し、ガラス材料51全体を所定の温度条件及び冷却速度条件で焼鈍することにより、ガラス材料51の素子成形面の残存歪み量を低減する。
【選択図】図3
【解決手段】ガラス材料51を軟化温度近傍まで加熱し、加熱したガラス材料51を、所定形状の成形面を有するマザー型46を用いてプレス成形することにより、ガラス材料51の一端にマザー型46の成形面を転写させて素子成形面を形成する。次に、ガラス材料51の他端に、素子成形面における残存歪み量に基づく屈折率の変化を計測するためのプリズム部を形成し、ガラス材料51全体を所定の温度条件及び冷却速度条件で焼鈍することにより、ガラス材料51の素子成形面の残存歪み量を低減する。
【選択図】図3
Description
本発明は、光学素子成形型及びその製造方法、並びにこれを用いた光学素子の製造方法に関し、特に、ガラス材料で構成された基材を成形型として用いる技術に関する。
従来より、各種光学機器に使用されるガラスレンズを成形する方法として、精密ガラス成形法が知られている。この精密ガラス成形法では、まず、ガラスレンズを形成するための光学素子成形型(以下、成形型と称す)が形成される。成形型の一端には、光学素子のレンズ面の形状とは反対の形状を有する素子成形面が形成される。そして、レンズ素材を軟化温度近傍まで加熱して、成形型を用いてプレス成形する。
このような精密ガラス成形法に用いられる成形型としては、従来より耐熱性に優れたセラミックスや金属材料が用いられているが、高度な加工技術や高価な加工設備を用いて各々個別に作製するために、サブミクロンオーダでは各々に形状バラツキを生じやすく、且つコストがかかるという問題がある。
そのため、近年では、成形型をガラス材料で構成し、成形型自身を精密プレス成形法により製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特開昭62−226825号公報
特開平2−102136号公報
特許第1756263号公報
一般に、ガラス材料を用いて熱間押圧成形により成形型を製造すると、成形型の成形時に加わる温度や圧力によって内部応力が生じ、これに伴って成形型の素子成形面には熱歪みが残存する。
しかしながら、上述した特許文献1〜3には、ガラス材料で構成された成形型の素子成形面に残存する熱歪みが光学素子の成形に与える悪影響については記載されていない。以下、この点について説明する。
すなわち、ガラス材料で構成された成形型により光学素子を成形する場合、成形型のガラス材料のガラス転移点よりも低い温度で行うこととなり、その結果、成形型は焼鈍処理が施された状態となる。そのため、素子成形面に残存する熱歪みは、光学素子の成形を繰り返すことにより徐々に開放されてしまい、成形型には体積収縮が生じる傾向がある。
このような体積収縮が生じると、素子成形面の形状が変形するため、成形される光学素子の形状も変化してしまい、その結果、レンズ性能にバラツキが生じることとなる。
さらに、成形型における体積収縮の発生は、成形型本体の破損を招いたり、成形型本体と融着防止膜との界面に生じる応力によって融着防止膜が剥離する等、成形型の寿命が短くなるという問題がある。
ここで、一定の性能を有する光学素子を安定的に製造するために、素子成形面に歪みの開放が生じる前に成形型の交換を行うことが考えられるが、素子成形面に残存する歪み量は、成形型の製造ロットによって異なっていることから、成形型の交換時期の特定は困難である。さらに、成形型の寿命が短いということは、製造する光学素子の製品コストの高騰にも繋がる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ガラス材料で構成された成形型における素子成形面の歪み量や交換時期を容易に特定できるようにすることにある。
すなわち、本発明の光学素子成形型は、ガラス材料で構成され、レンズ素材をプレス成形するための素子成形面を有し、且つ素子成形面における残存歪み量に基づく屈折率の変化を計測するためのプリズム部が形成された基材を備えたことを特徴とする。
また、本発明の光学素子成形型の製造方法は、ガラス材料で構成された基材を軟化温度近傍まで加熱する手順と、加熱した基材を、所定形状の成形面を有するマザー型を用いてプレス成形することにより、基材の一端にマザー型の成形面を転写させて素子成形面を形成する手順と、基材の他端に、素子成形面における残存歪み量に基づく屈折率の変化を計測するためのプリズム部を形成する手順と、基材全体を所定の温度条件及び冷却速度条件で焼鈍することにより、基材の素子成形面の残存歪みを低減する手順とを備えたことを特徴とする。
また、本発明の光学素子は、上述した本発明の光学素子成形型を用いて成形することを特徴とする。
以上のように、本発明によれば、基材の一部に、素子成形面における残存歪み量に基づく屈折率の変化を計測するためのプリズム部を形成したから、プリズム部において基材の屈折率を計測評価することで、素子成形面の形状精度を確認することができ、成形型の交換時期の特定が容易となる。
また、素子成形面における残存歪み量を、レンズ素材のプレス成形時の成形温度まで成形型を加熱しても素子成形面が形状変化しないような歪み量まで低減させたから、成形型の体積収縮が生じにくくなり、素子形状のバラツキや成形型自身の破損や膜剥離が生じることを抑制する上で有利となる。
また、屈折率を計測した結果、レンズ成形の回数に応じて体積収縮が大きくなり素子性能の閾値を超えていることが確認された場合でも、再度、焼鈍処理を行って最適な冷却速度を選択して屈折率を調整するようにすれば、素子成形面の形状精度を修正することができ、成形型の再利用が可能となる。これにより、成形型の長寿命化を図るとともに、均一な性能を有する光学素子を安定的に製造できる信頼性の高い光学素子成形型を実現できる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
−光学素子成形型について−
図1は、本発明の実施形態に係る光学素子成形型(以下、成形型と称す)の構成を示す断面図である。図1に示すように、成形型1は、基材2と、中間接着膜3と、融着防止膜4とを備えている。
図1は、本発明の実施形態に係る光学素子成形型(以下、成形型と称す)の構成を示す断面図である。図1に示すように、成形型1は、基材2と、中間接着膜3と、融着防止膜4とを備えている。
前記基材2は、成形型1の型本体をなすものであり、円柱状のガラス材料で構成されている。基材2の上端面には、素子成形しようとする光学素子(以下、レンズと称す)の凸部の転写面となる凹部が形成されており、この凹部は、光学機能面としての機能と、レンズを押圧成形するための素子成形面5としての機能とを有している。
前記融着防止膜4は、素子成形を行う際にレンズ素材が基材2に融着することを防止するためのものであり、接着性を高めるための中間接着膜3を介して前記基材2の素子成形面に形成されている。
図2は、本実施形態に係る成形型の構成を示す斜視図である。図2に示すように、前記基材2の下端部には、素子成形面を含む成形型1全体の歪み量に基づいて変化する基材2の屈折率を測定するためのプリズム部8が形成されている。具体的に、プリズム部8は、基材2の下端面を第1平面6とし、第1平面6に直交する第2平面7とで構成されており、屈折率計を用いて基材2の屈折率を測定することにより、成形型1の歪み量が測定評価できるようになっている。
すなわち、屈折率はガラスの密度に依存し、その密度はガラス内部の歪み量(熱応力)と相関しているため、屈折率の数値が大きいほどガラス密度が高く、基材2に残存する熱歪み(熱応力)が少ないと評価することができる。一方、屈折率の数値が小さいほどガラス密度が低く、基材2に残存する熱歪みが大きいと評価することができる。
図3は、本実施形態に係る押圧成形装置の構成を示す断面図である。なお、図3では、押圧成形装置によりガラス材料を押圧成形している途中の状態を示しているものとする。
図3に示すように、押圧成形装置40は、基台41と、下加熱部材42と、ヒーター43,48と、成形型組55と、上加熱部材47と、フランジ49と、駆動軸50とを備えている。この押圧成形装置40において、駆動軸50を除く全ての構成部材は、不活性雰囲気を維持するための図示しないチャンバーによって区画されている。
前記押圧成形装置40のベースとなる基台41の上には、下加熱部材42が設けられている。下加熱部材42には、複数のヒーター43が埋設されており、下加熱部材42は、そのヒーター43によって温度調節可能に構成されている。
前記下加熱部材42の上には、成形型組55が設置されている。成形型組55の上には上加熱部材47が配置されている。上加熱部材47には、複数のヒーター48が埋設されている。
そして、この上加熱部材47と下加熱部材42とによって、上加熱部材47と下加熱部材42との間に配設された成形型組55の温度を調節することができる。
ここで、下加熱部材42及び上加熱部材47には、温度検知や温度制御のための図示しない熱電対がそれぞれ設けられている。
さらに、上加熱部材47の上には、駆動軸50に連結されたフランジ49が配置されている。駆動軸50は図示しないプレス器に接続されており、そのプレス器を駆動することによって、フランジ49を介して成形型組55(詳細には、マザー型46)に圧力を印加できる構成となっている。
前記成形型組55は、平面型44と、胴型45と、マザー型46とで構成されている。平面型44は円柱状に形成されており、上面が平坦な成形面が形成されている。マザー型46は、平面型44に対向配置されており、下面が凸状の成形面が形成されており、且つ平面型44の外径と略同一の外径を有する円柱状に形成されている。
前記胴型45は、円筒状に形成され、平面型44及びマザー型46が摺動自在に挿入可能なように、その内径が平面型44及びマザー型46の外径と略同一に形成されている。
なお、平面型44、胴型45、及びマザー型46は、例えば、タングステンカーバイドを主成分とする超硬合金やステンレス等によって形成することができる。また、マザー型46の成形面には、ガラス材料51の融着を抑制する離型膜(例えば、白金等の貴金属膜)がスパッタリングにより成膜されている。
前記平面型44とマザー型46との間には、ガラス材料51が配置されている。ここで、ガラス材料51は、円柱形状であり、その両端面は鏡面状に加工処理が施されている。
以上のように構成された押圧成形装置40では、ヒーター43,48によってガラス材料51が加熱されて軟化した状態になると、駆動軸50によってマザー型46が下降し、ガラス材料51の端面は押圧力Fで押圧される。これにより、ガラス材料51の上端面には、光学機能面としての凹部である素子成形面5が形成される。
具体的には、不活性ガス雰囲気中において、ガラス材料51の温度が780℃になるまで加熱した後、1300Nの押圧力Fで押圧成形を行うことにより、ガラス材料51に素子成形面5が形成される。不活性ガスとしては、窒素やアルゴン等を利用することができ、特に窒素が好適に利用できる。
図4は、本実施形態に係る成形型の製造方法を示すフローチャート図である。図4に示すように、まず、ステップS1で、ガラス材料で構成された基材2を加熱して軟化させ、所望の形状の素子成形面を有するマザー型を用いて押圧成形することにより、基材2にマザー型の素子成形面を転写させて素子成形面5を形成する。ステップS1での処理が終了すると、続くステップS2に進む。
なお、本実施形態では、基材2として、ガラス転移点690℃、屈伏点725℃、及び熱膨張係数64×10-7/℃(100〜300℃)である硼珪酸バリウム系の組成を有するガラス材料からなる基材2を用いることとし、図3に示す押圧成形装置40を用いて押圧成形を行うものとする。
ステップS2では、基材2を所定の温度条件で冷却処理する。具体的には、まず、マザー型46による加圧を継続した状態で、ガラス材料51を600℃まで5.7℃/分の速度で冷却する。そして、ガラス材料51が600℃に達した時点で徐圧することにより、ガラス材料51を室温まで放冷する。ステップS2での処理が終了すると、続くステップS3に進む。
ステップS3では、プリズム部8(図2参照)を形成する。具体的には、プリズム部8を構成する素子成形面5に対向する第1平面6と、該第1平面6に直交する第2平面7とを、ダイヤモンド砥石による研削加工で形成する。ステップS3での処理が終了すると、続くステップS4に進む。
ステップS4では、基材2に対して焼鈍処理を行う。具体的には、ステップS2の処理において室温まで冷却した基材2を、まず、大気中で650℃乃至670℃の温度に加熱し、8時間保持する。そして、2.5℃/分の速度の冷却条件で冷却する。
このように、基材2に素子成形面5を形成した後に、プリズム部8の形成と焼鈍処理を施すことで、素子成形面5における熱歪みや、プリズム部8を形成したときの加工歪み等の残存歪みが積極的に開放される。
ここで、焼鈍処理を行う際の温度条件及び冷却速度条件は、基材2の素子成形面5における残存歪み量を、レンズ材料をプレス成形するときの成形温度まで成形型1を加熱しても残存歪みが開放されないような歪み量まで低減させるように設定される。
具体的に、温度条件は、基材2を構成するガラス材料の光学特性の変化や基材2の形状変化を考慮すると、ガラス材料のガラス転移点以下の温度であることが好ましい。また、成形型1を成形した後の素子成形面5における歪みの開放を考慮すると、焼鈍温度は、レンズ材料の屈伏点以上の温度範囲であることがより好ましい。また、成形しようとするレンズ材料がガラス材料である場合には、レンズ成形時にかかる温度条件を考慮すると、焼鈍処理における焼鈍温度を、レンズ材料のガラス転移点以上とすることが好ましい。
一方、冷却速度条件は、素子成形面5に残存する熱歪みを必要以上に少なくすることなく、換言すれば必要以上に屈折率を高める必要性はなく、生産性が損なわれることのない程度の条件に設定するとともに、レンズ成形時において、成形型1の素子成形面5に形状変化が生じない程度の熱歪みを残す屈折率であることが望ましい。すなわち、所望するレンズの性能が満足される程度の熱歪みが残る屈折率の数値に設定する。
これは、素子成形面5に残存する熱歪みは完全に除去することが望ましいが、このような状態にするためには、冷却速度を非常に遅く設定する必要があり、成形型1の生産性を考慮すると好ましいとはいえないからである。
このように、所定の温度条件及び冷却速度条件で焼鈍処理を行うことにより、所望の熱歪みが残存する素子成形面5を有する基材2が得られる。また、成形型1を複数製造する場合には、全ての成形型1に一定の熱履歴を残すことができる。
次に、ステップS5では、素子成形面5に残存する熱歪みに基づく基材2の屈折率の変化をプリズム部8で計測し、その値が最適値となるように焼鈍されているかを確認する。なお、屈折率の計測は、屈折率計を用いてプリズム部8にd線(波長587.6nm)を透過させることにより行った。ステップS5での処理が終了すると、続くステップS6に進む。
ステップS6では、基材2の素子成形面5に中間接着膜3を形成し、続くステップS7に進む。ステップS7では、中間接着膜3の上に、レンズ材料との融着を防止するための融着防止膜4を形成し、処理を終了する。なお、融着防止膜4は、中間接着膜3の表面に、白金系の離型膜をスパッタリングで成膜することにより形成した。
このように、素子成形面5における残存歪み量を焼鈍処理によって少なくして安定な状態としておき、素子成形面5上に中間接着膜3及び融着防止膜4を成膜することで、各膜の密着力をより高めることができる。したがって、レンズ成形時における成形型1の体積収縮による膜剥離をより一層低減することができ、成形型1の寿命を長くすることができる。
以上のように、本実施形態に係る成形型1の製造方法によれば、素子成形面5が形成された基材2に焼鈍処理を施して、積極的に素子成形面5の残存歪みを開放するとともに、基材2の素子成形面5に所定量の熱歪みを残存させ、その残存歪み量を、成形型1に形成したプリズム部8を用いて計測される屈折率を評価指標とすることで、素子成形面の形状精度を確認することができ、成形型1の交換時期の特定が容易となる。
−実験例−
図4を用いて説明した製造工程により製造した成形型1について、図4に示すステップS4での焼鈍処理による熱歪みの影響を調べるために各種の実験を行った。まず、焼鈍処理前後の素子成形面5の形状変化を調べるために、以下のような実験を行った。
図4を用いて説明した製造工程により製造した成形型1について、図4に示すステップS4での焼鈍処理による熱歪みの影響を調べるために各種の実験を行った。まず、焼鈍処理前後の素子成形面5の形状変化を調べるために、以下のような実験を行った。
図5〜図7は、焼鈍処理前後の素子成形面5の形状を3次元計測した結果を示すグラフである。図5は焼鈍前の測定結果を示すグラフである。図6は650℃で焼鈍したときの焼鈍後の測定結果を示すグラフである。図7は670℃で焼鈍したときの焼鈍後の測定結果を示すグラフである。
また、図5(a)、図6(a)、図7(a)は、それぞれ素子成形面の中心断面形状(フィギア)を示し、図5(b)、図6(b)、図7(b)は、それぞれ素子成形面の全体形状のうねり精度(アキュラシ)を示す。
なお、図5〜図7の各グラフにおいて、縦軸は一枡が0.1μmで光学設計値からの偏差量を示し、横軸は一枡が0.6mmで素子成形面の径が約3mmの範囲を示す。
図5(a)に示す測定結果と、図6(a)及び図7(a)に示す測定結果とを比較したところ、焼鈍前後においてフィギアは約0.2μm〜0.55μm程度変化していた。
これに対して、図5(b)に示す測定結果と、図6(b)及び図7(b)に示す測定結果とを比較したところ、アキュラシにはさほどの変化が見られなかった。
これらの測定結果により、焼鈍処理による基材2の変化は、単純な相似収縮であることが確認できた。これにより、ステップS4における焼鈍処理は、成形型1に影響を与えることはないと考えられる。
なお、ステップS6及びステップS7での処理を経て製造された成形型1の素子成形面5についても、同様に3次元計測を用いて形状評価したところ、成形型1の素子成形面5は、マザー型46の成形面の形状からガラス材料の収縮量に相当する量だけ形状偏差を有していたものの、軸対称性は良好で、精度良く成形面の形状が転写されていたことが確認された。
次に、焼鈍処理の処理条件について調べるために、以下のような実験を行った。まず、ステップS3でのプリズム部8の形成処理が施された基材2を、650℃で8時間保持し、2.5℃/分の冷却速度の条件下で焼鈍した場合と、670℃で8時間保持し、2.5℃/分の冷却速度の条件下で焼鈍した場合との2つケースについて実験を行った。
そして、焼鈍処理前後の形状変化を、上述した実験と同様の手法で測定したところ、素子成形面5の形状の変化は大きくなるものの、軸対称性が維持されており、しかも単純収縮であることが確認された。
次に、ステップS3でのプリズム部8の形成処理が施された基材2を、基材2を構成するガラス材料のガラス転移点以上の焼鈍温度で焼鈍したところ、素子成形面5の形状に軸対称性の崩れが見られ、成形型1をなさなかった。これにより、焼鈍温度の好適範囲は、基材2を構成するガラス材料のガラス転移点以下であると考えられる。
ここで、焼鈍処理における冷却速度条件は、素子成形面5における残存歪み量を、レンズ素材をプレス成形するときの成形温度まで成形型1を加熱しても素子成形面5が形状変化しないような歪み量まで低減させるように設定される。
以下、素子成形面5に残存する歪み量についての検討を行った。まず、ステップS4での焼鈍処理前後における基材2及びその素子成形面5に残存する歪み量を評価するために、屈折率計(波長587.6nm)を用いて、屈折率の測定を行った。
ここで、屈折率はガラスの密度に依存し、その密度はガラス内部の歪み量(熱応力)と相関する。したがって、屈折率の数値が大きいほど密度が高くて熱歪み(熱応力)が少なく、屈折率の数値が小さいほど密度が低く大きな熱歪みが存在することを意味する。
次に、素子成形面5の形状と屈折率との間に相関関係があるか否かの実験を行った。まず、焼鈍処理前の屈折率は、1.58620×10-5であった。これに対し、650℃で焼鈍した後の屈折率は、1.58735×10-5であり、屈折率の数値が1.15×10-8だけ回復していた。また、670℃で焼鈍した後の屈折率は、1.58768×10-5であり、1.48×10-8だけ回復していた。 なお、使用した基材2の屈折率は1.58811×10-5であった。
また、焼鈍処理後の成形型1を用いて後述するレンズ成形を約1000回行った後の屈折率は、1.58799×10-5であり、屈折率の数値が、0.31×10-8〜0.64×10-8だけ変化し、基材2の初期の屈折率の値にほぼ近づくことが確認できた。
この測定結果により、焼鈍処理を行うことで素子成形面5の屈折率の値は大きく(残存する熱歪みは低減)変化したものの、基材2の初期の屈折率の数値よりも小さく(残存する熱歪み完全には除去されてはいない)なることが分かった。
さらに、本実施形態に係る成形型1を用いて、実際に各種のガラス材料をレンズ成形したときの成形型1の屈折率の変化を調べたところ、その変化量は焼鈍後における屈折率値の0.1%以内に包含されることが確認された。すなわち、焼鈍後に素子成形面5に残存する歪み量に基づく屈折率は、レンズ成形後における成形型1の屈折率に近似した値であると言える。
−光学素子について−
次に、上述した方法で製造した成形型1を上型及び下型として用い、精密ガラス成形法によってレンズを製造する方法について説明する。図8は、本実施形態に係るレンズを製造するための押圧成形装置の構成を示す断面図である。
次に、上述した方法で製造した成形型1を上型及び下型として用い、精密ガラス成形法によってレンズを製造する方法について説明する。図8は、本実施形態に係るレンズを製造するための押圧成形装置の構成を示す断面図である。
なお、図8に示す押圧成形装置60の基本的な構成は、成形型1を製造するための押圧成形装置40と略同様であり、以下、同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
図8に示すように、押圧成形装置60の成形型組65は、下型61と、上型62と、胴型45とで構成されている。そして、下型61と上型62との間には、レンズ材料63が配置されている。
具体的に、レンズ材料63として、硼珪酸系の成分組成に、酸化タングステン(WO3)、酸化タンタル(Ta2O5)、及び酸化ジルコニウム(ZrO2)等が含有された光学ガラス材料(屈伏温度:559℃、転移温度:528℃)を用いている。
以下、本実施形態に係るレンズの製造方法を説明する。まず、図8に示す押圧成形装置60において、下型61と上型62との間にレンズ材料63を配置した状態で、成形型組65全体をレンズ材料63の軟化点近傍、すなわち585℃まで加熱し、3分間保持した後、レンズ材料63を下型61及び上型62によって、1500Nの押圧力で押圧成形する。
そして、加熱された成形型組65全体を室温まで冷却することにより、所定の形状のレンズを成形する。
図9は、成形後のレンズの構成を模式的に示す側面図である。図9に示すように、レンズ70は、下型61及び上型62の素子成形面により転写され且つそれぞれ異なった曲率を有する凸状のレンズ面71,72と、2つのレンズ面71,72の間に配置されレンズ面71,72の外径よりも大きなフランジ部を有する位置決め面73とが一体成形された構成となっている。
以下、このように成形されたレンズの形状精度について考察する。具体的には、押圧成形装置60によりレンズ70を1000個作成し、そのうちの100個のレンズ70について、レンズ面71,72の形状を3次元測定機で計測した。
その結果、光学設計値に対して1μm前後の形状偏差は生じていたが、軸対称性の崩れはなく、実使用上問題のない形状精度が得られていることが分かった。また、1000個のレンズ70を作成しても、ガラス材料にて形成された上型62及び下型61には、融着防止膜4の剥離や基材2の破損は見られなかった。
このように、本実施形態に係るレンズの製造方法によれば、均一な性能を有するレンズ70を押圧成形によって歩留まり良く製造できるため、安価なレンズを市場に供給することができる。
さらに、レンズ成形後の下型61及び上型62の素子成形面に残存するリタデーションΓを計測したところ、下型61及び上型62のいずれにおいても、リタデーションΓは0.1nm/mmであった。また、下型61及び上型62において、焼鈍後のリタデーションΓを計測したところ、いずれも0.08nm/mmであった。
この結果によれば、焼鈍後に下型61及び上型62の素子成形面に残存する熱歪みは、レンズ成形によって生じる歪み量以下であることが確認できる。さらに、下型61及び上型62の素子成形面に残存する熱歪みは、完全に除去されていなくても良いことが確認できる。
なお、本実施形態では、光学素子としてレンズを例に挙げて説明したが、この形態に限定するものではなく、例えば、ミラー、プリズム、光学フィルタ、及びホログラム素子等にも適用できる。さらに、これらの光学素子を成形するガラス型自身にも適用できる。
また、本実施形態では、レンズ材料としてガラス材料を例に挙げて説明したが、この形態に限定するものではなく、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いても構わない。さらに、各種光学素子材料についても同様に、ガラス材料だけでなく、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることができる。
また、本実施形態では、下型61及び上型62として上述した成形型1を用いたが、この形態に限定するものではなく、下型61及び上型62のうち一方が上述した成形型1であれば、他方の成形型は特に限定されるものではなく、従来公知の成形型等も適用できる。
また、本実施形態では、成形型及びレンズの製造方法について具体例を挙げて説明したが、本発明はこの具体例のみに限定されるものではない。
以上説明したように、本発明は、ガラス材料で構成された成形型における素子成形面の歪み量や交換時期を容易に特定でき、精密ガラス成形法に用いる成形型の長寿命化を図ることができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。特に、カメラ付き携帯電話、ビデオカメラ、及びデジタルスチルカメラ等に使用されるレンズ等の各種光学素子の製造に有用である。
1 成形型
2 基材
5 素子成形面
6 第1平面
7 第2平面
8 プリズム部
40 押圧成形装置
41 基台
42 下加熱部材
44 平面型
45 胴型
46 マザー型
47 上加熱部材
51 ガラス材料
60 押圧成形装置
63 レンズ材料
70 レンズ
2 基材
5 素子成形面
6 第1平面
7 第2平面
8 プリズム部
40 押圧成形装置
41 基台
42 下加熱部材
44 平面型
45 胴型
46 マザー型
47 上加熱部材
51 ガラス材料
60 押圧成形装置
63 レンズ材料
70 レンズ
Claims (5)
- レンズ素材をプレスして光学素子を成形するための光学素子成形型であって、
ガラス材料で構成され、前記レンズ素材をプレス成形するための素子成形面を有し、且つ該素子成形面における残存歪み量に基づく屈折率の変化を計測するためのプリズム部が形成された基材を備えたことを特徴とする光学素子成形型。 - 請求項1において、
前記素子成形面は、前記基材の一端に形成され、
前記プリズム部は、前記基材の他端に形成された第1平面と、該第1平面に直交して形成された第2平面とで構成されていることを特徴とする光学素子成形型。 - レンズ素材をプレスして光学素子を成形するための光学素子成形型の製造方法であって、
ガラス材料で構成された基材を軟化温度近傍まで加熱する手順と、
前記加熱した基材を、所定形状の成形面を有するマザー型を用いてプレス成形することにより、該基材の一端に該マザー型の成形面を転写させて素子成形面を形成する手順と、
前記基材の他端に、前記素子成形面における残存歪み量に基づく屈折率の変化を計測するためのプリズム部を形成する手順と、
前記基材全体を所定の温度条件及び冷却速度条件で焼鈍することにより、該基材の素子成形面の残存歪みを低減する手順とを備えたことを特徴とする光学素子成形型の製造方法。 - 請求項3において、
前記素子成形面における残存歪み量を、前記レンズ素材をプレス成形するときの成形温度まで前記光学素子成形型を加熱しても該素子成形面が形状変化しないような歪み量まで低減させるように、前記所定の温度条件及び冷却速度条件を設定することを特徴とする光学素子成形型の製造方法。 - 請求項1に記載の光学素子成形型を用いて光学素子を成形することを特徴とする光学素子の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006114409A JP2007284300A (ja) | 2006-04-18 | 2006-04-18 | 光学素子成形型及びその製造方法、並びにこれを用いた光学素子の製造方法 |
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JP (1) | JP2007284300A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR20190091194A (ko) | 2018-01-26 | 2019-08-05 | 호야 가부시키가이샤 | 유리제 성형형 |
-
2006
- 2006-04-18 JP JP2006114409A patent/JP2007284300A/ja active Pending
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