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JP2007265856A - 超極細同軸ケーブル及びその製造方法 - Google Patents

超極細同軸ケーブル及びその製造方法 Download PDF

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JP2007265856A JP2006090675A JP2006090675A JP2007265856A JP 2007265856 A JP2007265856 A JP 2007265856A JP 2006090675 A JP2006090675 A JP 2006090675A JP 2006090675 A JP2006090675 A JP 2006090675A JP 2007265856 A JP2007265856 A JP 2007265856A
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Abstract

【課題】優れた耐屈曲性及び電磁シールド特性を有する超極細同軸ケーブル及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】内部導体、内部導体の外周に設けられたポリアミドとABS樹脂とのポリマーアロイからなる誘電体層、誘電体層の外周に設けられた薄膜シールド層及び薄膜シールド層の外周に設けられた保護被覆層からなる超極細同軸ケーブル、及び内部導体の外周に押し出し成形によってポリマーアロイからなる誘電体層を形成し、誘電体層の表面を塩酸、リン酸、硫酸又は有機酸でエッチング処理し、エッチング処理した誘電体層の外周を触媒付与液で処理し、触媒を活性化し、活性化した触媒を有する誘電体層の外周に無電解メッキ、又は無電解メッキと電気メッキとの組み合わせによって薄膜シールド層を形成し、薄膜シールド層の外周に保護被覆層を形成する超極細同軸ケーブルの製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は超極細同軸ケーブル及びその製造方法に関し、より詳しくは、本発明は、耐屈曲性に優れ、電磁シールド特性に優れていることにより、例えば、産業用ロボットの他、特に、ノート型PC、携帯電話等の情報通信機器等において可動部(屈曲部等)を経て制御用等の電気信号を伝達する電気ケーブルとして好適に利用できる超極細同軸ケーブル及びその製造方法に関する。
近年、エレクトロニクス産業の分野においては、例えば、電子機器の小型軽量化、高性能化等が急速に進んでおり、これに伴って電子機器同士を接続する電気ケーブルについても超細線化、省スペース化等が求められている。
また、電気ケーブルの1つであるフレキシブルプリント回路(FPC)基板は、例えば、ノート型パソコンのパソコン本体と液晶ディスプレイとの接続部(屈曲部)、折り畳み型等の携帯電話機の折り曲げ部等に使用されており、その寿命を長くするために屈曲に対する大きな耐久性が求められている。
更に、信号伝達用ケーブルでは、電気機器の小型化、高機能化に伴って、外部からの電磁ノイズの悪影響を防止することが重要な課題となっており、このための薄層の電磁シールド手段として導電性線状部材を編組又は横巻してなる編組又は横巻き薄層の電磁シールドが用いられている。このような薄層の電磁シールドは、一般的にケーブルの最外周部材たるシースの直下に位置するので、ケーブルの屈曲の際には大きな伸縮力及び曲げ変形力を受けることになる。
最近になって、回転型の携帯電話機等のように、フィルム状のFPC基板では対応できない接続部においては、同軸ケーブルが用いられるようになってきた。このような同軸ケーブルとして、例えば、内部導体の外周に誘電体層を形成し、この誘電体層の外周に金属細線の編組、横巻き、金属箔の巻回等により外部導体層を設け、この外部導体層の外周に保護被覆層を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。そして、このような同軸ケーブルについて、ケーブル外径の超極細化が進んでいるが、その超極細化の故に断線し易い等の問題があり、十分な耐屈曲性を有する超極細同軸ケーブルは未だ提案されていないのが実情である。
特開平7−272553号公報(従来の技術、第6図)
本発明は、非常に優れた耐屈曲性を有し、優れた電磁シールド特性を有する超極細同軸ケーブル及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、ポリアミドとABS樹脂とのポリマーアロイを用いて誘電体層を形成し、該誘電体層の外周に薄膜シールド層を形成することにより上記の目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の超極細同軸ケーブルは、内部導体と、該内部導体の外周に設けられたポリアミドとABS樹脂とのポリマーアロイからなる誘電体層と、該誘電体層の外周に設けられた薄膜シールド層と、該薄膜シールド層の外周に設けられた保護被覆層とからなることを特徴とする。
また、本発明の超極細同軸ケーブルの製造方法は、内部導体の外周に押し出し成形によってポリアミドとABS樹脂とのポリマーアロイからなる誘電体層を形成する工程、該誘電体層の表面を塩酸、リン酸、硫酸又は有機酸でエッチング処理する工程、該エッチング処理した誘電体層の外周を触媒付与液で処理する工程、触媒を活性化する工程、活性化した触媒を有する誘電体層の外周に無電解メッキ、又は無電解メッキと電気メッキとの組み合わせによって薄膜シールド層を形成する工程、及び薄膜シールド層の外周に保護被覆層を形成する工程を含むことを特徴とする。
本発明の超極細同軸ケーブルは誘電体層がポリアミドとABS樹脂とのポリマーアロイからなるので非常に優れた耐屈曲性を有し、また、薄膜シールド層を有するので電磁シールド特性に優れており、例えば、産業用ロボットの他、特に、ノート型PC、携帯電話等の情報通信機器等において可動部(屈曲部等)を経て制御用等の電気信号を伝達する電気ケーブルとして好適に利用できる。
本発明の超極細同軸ケーブルは、内部導体と、該内部導体の外周に設けられたポリアミドとABS樹脂とのポリマーアロイからなる誘電体層と、該誘電体層の外周に設けられた薄膜シールド層と、該薄膜シールド層の外周に設けられた保護被覆層とからなるものであり、該内部導体として、例えば、スズ含有銅合金、クロム−ジルコニウム含有銅合金、その場金属繊維強化銅合金等からなるものを挙げることができ、耐屈曲性の点では、その場金属繊維強化銅合金からなる内部導体が特に好ましい。
ここで、その場金属繊維強化銅合金からなる内部導体(導線)とは、金属繊維で強化された銅マトリックスであり、特に、その場で、即ち、線材を形成する工程で線材中に金属繊維を形成した線材をいう。例えば、銅マトリックス中に、最大径が2.5μm以下で平均径が1.0μm以下のその場形成繊維状銀を含む線材等をいう。
かかるその場金属繊維強化銅合金からなる導線は、例えば、銀含有率が1〜25質量%で残部が実質的に銅からなる合金材料を、必要に応じてスエージ加工し、次いで第1の冷間伸線加工を施し、次いで溶体化処理し、しかる後に第2の冷間伸線加工を施すことにより、銅マトリックス中に繊維状銀をその場形成して線材を得、該線材を少なくとも一本用いて導線を形成することにより得られる。なお、合金材料としては、上記した合金に限定されず、例えば、銀含有率が1〜25質量%で、ジルコニウム含有率が0.01〜8質量%で、残部が実質的に銅からなる合金材料も用いることができる。
このような複合材料からなる線材の高導電性は電流が銅マトリックス中を流れることで確保でき、且つ機械的強度は金属繊維強化で確保できるので、このような複合材料からなる線材は高機械的強度と高導電率とを併せ持つものとなる。
本発明の超極細同軸ケーブルにおいては、内部導体は、所定の直径を有する単線、例えば、直径30〜100μm程度の線材を単独で用いたものでもよいし、多心線、例えば、直径10〜80μm程度の極細線を複数本集合させたものでもよい。なお、内部導体をその場金属繊維強化銅合金からなる単線又は撚線とする場合には、内部導体の抗張力が高められ、その結果、断線し難い超極細同軸ケーブルを実現することができる。
本発明の超極細同軸ケーブルにおいては、内部導体の外周にポリアミドとABS樹脂とのポリマーアロイからなる誘電体層を設ける。このポリアミドとABS樹脂とのポリマーアロイ(以下、ポリマーアロイと略記する)としては、内部導体の外周に押し出し成形によって所定の厚さの誘電体層を形成することができれば、ポリマーアロイを構成するポリアミド及びABS樹脂のそれぞれの種類、配合割合等は特に限定されるものではない。しかし、内部導体の外周に押し出し成形によって所定の厚さの誘電体層を容易に形成し得るためには、ASTM D1238、温度:220±0.2℃、荷重:2160g、試料:ペレット約10g、試験装置:メルトインデキサー、オリフィス:0.9φ×8L(mm)の条件下で測定したメルトフローレート(MFR)が10g/10min以上であることが好ましい(本発明においては、MFRは全てこの条件下で測定した値である)。MFRの上限値については、押し出し成形の可能性の点では制限はないが、入手できるポリアミド、ABS樹脂、ポリマーアロイ等を考慮すると、60g/10min程度である。従って、本発明においては、ポリマーアロイのMFRが10〜60g/10min程度であることが好ましい。
誘電体層を、例えば、水平方向への押し出し成形によって形成する場合には、比較的低流動性のポリマーアロイ、例えば、MFRが30g/10min以下のポリマーアロイを用いることが好ましく、MFRが20g/10min以下のポリマーアロイを用いることが一層好ましい。一方、高流動性のポリマーアロイを使用する場合には、誘電体層を水平方向への押し出し成形によって形成すると、樹脂ダレに起因して誘電体層の厚さが外周方向で部分的に変化する虞があるので、誘電体層を鉛直方向下方への押し出し成形によって形成することが望ましい。この場合には、高流動性のポリマーアロイ、例えば、MFRが20〜60g/10minのポリマーアロイを用いることが好ましく、MFRが25〜50g/10minのポリマーアロイを用いることがより好ましく、MFRが30〜40g/10minのポリマーアロイを用いることが最も好ましい。但し、外径が300μm以下の超極細同軸ケーブルを製造する場合には、誘電体層の樹脂自体が軽くなるので、誘電体層を水平方向への押し出し成形によって形成しても、樹脂ダレに起因して誘電体層の厚さが外周方向で部分的に変化する虞はない。
ポリマーアロイを構成するポリアミドとして、ジアミンとジカルボン酸とから形成されるポリアミド及びそれらの共重合体を用いることができる。例えば、ナイロン66、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6・10)、ポリヘキサメチレンドデカナミド(ナイロン6・12)、ポリドデカメチレンドデカナミド(ナイロン1212)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)及びこれらの混合物や共重合体を用いることができる。更に、環状ラクタムの開環重合物、アミノカルボン酸の重縮合物及びこれらの成分からなる共重合体、具体的には、ナイロン6、ポリ−ω−ウンデカナミド(ナイロン11)、ポリ−ω−ドデカナミド(ナイロン12)等の脂肪族ポリアミド樹脂及びこれらの共重合体、ジアミン、ジカルボン酸とからなるポリアミドとの共重合体、具体的にはナイロン6T/6、ナイロン6T/11、ナイロン6T/12、ナイロン6T/6I/12、ナイロン6T/6I/610/12等及びこれらの混合物を用いることもできる。
ポリマーアロイを構成するABS樹脂については、種々のタイプ、種々のグレードのABS樹脂が市販されているので、ポリマーアロイのMFRが上記の範囲内になるように、適切に選択して使用する。一般的にはポリアミドのMFRは低いので、MFRの比較的高いABS樹脂を用いる。
なお、本発明においては、誘電体層を上記のポリマーアロイ単独で用いてもよいが、このポリマーアロイに、例えば、各種の樹脂、具体的にはポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)等を加えたものを用いてもよい。
更に、本発明においては、無電解メッキによって形成される薄膜シールド層の密着強度を高めるため、誘電体層を構成するポリマーアロイが水溶性物質、界面活性剤、凝固剤、リン系化合物等を含有することが好ましい。
本発明においては、水溶性物質とは、溶解度は問わず、水に可溶な物質を意味する。このような水溶性物質として、デンプン、デキストリン、プルラン、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース又はこれらの塩等の多糖類;プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセリン等の多価アルコール;ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、アクリル酸−無水マレイン酸コポリマー、無水マレイン酸−ジイソブチレンコポリマー、無水マレイン酸−酢酸ビニルコポリマー、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物及びこれらの塩等を挙げることができる。これらの中でも、水に可溶であるが溶解度の小さなものが好ましく、具体的には、水への溶解度(25℃)が300g/100g以下のものが好ましく、100g/100g以下のものがより好ましく、10g/100g以下のものが更に好ましい。このような水溶性物質として、ペンタエリスリトール(7.2g/100g)、ジペンタエリスリトール(0.1g/100g以下)がある。ポリマーアロイと水溶性物質との含有割合は、ポリマーアロイ100質量部に対して、水溶性物質が0.01〜50質量部であることが好ましく、0.01〜30質量部であることがより好ましく、0.01〜15質量部であることが更に好ましい。
界面活性剤として、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤の何れも使用できる。これらの界面活性剤として、脂肪酸塩、ロジン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸ジエステル塩、α−オレフィン硫酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩等のアニオン界面活性剤;モノもしくはジアルキルアミン又はそのポリオキシエチレン付加物、モノ又はジ長鎖アルキル第4級アンモニウム塩等のカチオン界面活性剤;アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレンブロックコポリマー、脂肪酸モノグリセリド、アミンオキシド等のノニオン界面活性剤;カルボベタイン、スルホベタイン、ヒドロキシスルホベタイン等の両性界面活性剤を挙げることができる。ポリマーアロイ中の界面活性剤の含有割合は、ポリマーアロイ100質量部に対して、界面活性剤が0.01〜10質量部であることが好ましく、0.01〜5質量部であることがより好ましく、0.01〜2質量部であることが更に好ましい。
リン系化合物として、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(o−又はp−フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、o−フェニルフェニルジクレジルホスフェート、トリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート、テトラフェニル−m−フェニレンジホスフェート、テトラフェニル−p−フェニレンジホスフェート、フェニルレゾルシン・ポリホスフェート、ビスフェノールA−ビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールA・ポリフェニルホスフェート、ジピロカテコールハイポジホスフェート等の縮合系リン酸エステル;ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニルネオペンチルホスフェート、ペンタエリスリトールジフェニルジホスフェート、エチルピロカテコールホスフェート等の正リン酸エステル等の脂肪酸・芳香族リン酸エステル;ポリリン酸メラミン、トリポリリン酸、ピロリン酸、オルソリン酸、ヘキサメタリン酸等のアルカリ金属塩、フィチン酸等のリン酸系化合物又はこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩等を挙げることができ、それらのリン系化合物から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。更に、上記以外のリン系化合物として、公知の樹脂用の難燃剤及び酸化防止剤として使用されているリン系化合物を用いることができる。このように、本発明においては、リン系化合物には難燃剤、酸化防止剤として汎用されているものも使用することができるが、これらのリン系化合物は、ポリマーアロイ誘電体層に対するメッキ層の密着強度を高める成分として機能する。
本発明においては、必要に応じて脱脂処理を行う。脱脂処理は、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ又は硫酸、炭酸等の酸を含有する界面活性剤水溶液を用いて行うことができる。
従来、ABS樹脂の成形体にメッキを施す場合、ABS樹脂成形体とメッキ層との密着強度を高めるため、脱脂処理の後にABS樹脂成形体を粗面化するエッチング工程が必須であった。例えば、脱脂処理の後に、クロム酸浴(三酸化クロム及び硫酸の混液)を用い、65〜70℃、10〜15分でエッチング処理する必要があり、廃水には有毒な6価のクロム酸イオンが含まれていた。このため、6価のクロム酸イオンを3価のイオンに還元した後に中和沈殿させる処理が必須となり、廃水処理時の問題があった。このように現場での作業時の安全性や廃水による環境への影響を考慮すると、クロム浴を使用したエッチング処理をしないことが望ましいが、その場合には、ABS樹脂から得られる成形体へのメッキ層の密着強度を高めることができないという問題がある。
本発明においては、誘電体層がポリアミドとABS樹脂とのポリマーアロイからなるものであるので、誘電体層の表面を塩酸、リン酸、硫酸又は有機酸でエッチング処理することによりポリアミド成分がエッチングされる。ポリマーアロイが水溶性物質を含有している場合には、エッチング処理においてこの水溶性物質が溶質して、誘電体層の該表面が多孔質となり、メッキ層の密着強度が更に改善される。これらの酸として低濃度(好ましくは4規定未満であり、より好ましくは3.5規定以下であり、更に好ましくは3.0規定以下である)のものを用いることが好ましい。このようなエッチング処理により、メッキ層の密着強度を向上させることができるほか、高濃度の酸を用いた場合に比べて、作業時の安全性が高く、廃液処理も容易になるという優れた効果が得られる。
上記の酸によるエッチング処理工程の後、例えば、水洗工程、触媒付与液で処理する工程、水洗工程、活性化液で処理する工程(活性化工程)及び水洗工程を行うことができる。なお、触媒付与液で処理する工程と活性化液で処理する工程とを同時に行うことができる。
触媒付与液による処理は、例えば、塩化錫(20〜40g/L)の35%塩酸溶液(10〜20mg/L)中、室温で1〜5分程度浸漬して行う。活性化液による処理は、塩化パラジウム(0.1〜0.3g/L)の35%塩酸溶液(3〜5m/L)中、室温で1〜2分程度浸漬して行う。
その後、必要に応じて1回又は2回以上の無電解メッキを行って薄膜シールド層を形成する。メッキ浴として、ニッケル、銅、コバルト、ニッケル−コバルト合金、銀、金等と、ホルマリン、次亜リン酸塩等の還元剤を含むものを用いることができる。メッキ浴のpHや温度は、使用するメッキ浴の種類に応じて選択する。無電解メッキ後に更にメッキ処理をする場合、酸又はアルカリによる活性化処理の後、銅等による電気メッキ工程を付加することもできる。
本発明においては、薄膜シールド層の外側に保護被覆層(シース)を設ける。保護被覆層の材料として、フッ素系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ABS樹脂、ポリイミド等を挙げることができる。保護被覆層の材料としてポリウレタンを用いることで、例えば、超極細同軸ケーブルの端部から内部導体を露出させる際のレーザ加工時において、保護被覆層の表面に焦げ(変色)の発生を有効に防止することができる。
ポリウレタンからなる保護被覆層を形成する方法として、例えば、ディッピング等を挙げることができるが、本発明では、ポリウレタンが収容されたポリウレタン槽内からダイスを介して、外周に薄膜シールド層が形成された被覆電線を引き出す、いわゆるダイス仕上げによって形成するのが好ましい。また、被覆電線を例えば、鉛直方向に向かって引き出して保護被覆層を形成することで、ダイスを内部導体の軸中心にセットし易くなり、ダイス仕上げによって保護被覆層を略均一な膜厚で形成することができる。
本発明の超極細同軸ケーブルは、誘電体層がポリアミドとABS樹脂とのポリマーアロイによって形成されているので、非常に優れた耐屈曲性を有するものである。本発明の超極細同軸ケーブルは、ケーブル外径を300μm以下、好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μm以下とすることができるので、非常に優れた耐屈曲性を有するものとなる。なお、本発明の超極細同軸ケーブルを特性インピーダンスが50Ωの同軸ケーブルとする場合においては、薄膜シールド層の内径が内部導体の外径の約3倍となるようにすることが好ましい。
本発明において、ポリアミドとABS樹脂とのポリマーアロイからなる誘電体層の厚さは、比較的薄く形成することが好ましく、例えば、90μm以下、さらに好ましくは、30μm以下とすることが好ましい。その理由は、誘電体層を比較的厚く形成してしまうと、ケーブルを屈曲させた際に、ケーブル(誘電体層)の表面が白化し、その白化した部分からケーブルが破断し易くなるためである。但し、この誘電体層の厚さは、上記した値に限定されず、ケーブル外径が300μm以下となるようにし且つ内部導体や薄膜シールド層等の厚さや材質を考慮して適宜決定すればよい。
本発明においては、薄膜シールド層として、金属メッキ層を形成することが好ましい。かかる金属メッキ層として、銅、銀、ニッケル、金など、又はこれらの複合メッキや合金メッキを挙げることができる。さらに、金属メッキ層の厚さは、好ましくは4μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。これより厚いと、耐屈曲性の面で問題となることがある。
本発明においては、誘電体層の厚さを90μm以下とし且つ薄膜シールド層の厚さを4μm以下とすることが好ましく、誘電体層の厚さを30μm以下とし且つ薄膜シールド層の厚さを2μm以下とすることが更に好ましい。このことにより、誘電体層及び薄膜シールド層の耐屈曲性がそれぞれ高められ、その結果、ケーブルの耐屈曲性をさらに高めることができる。
以下に、本発明の超極細同軸ケーブルを図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る超極細同軸ケーブルの断面図である。また、図2及び図3は、図1の超極細同軸ケーブルの製造に用いる押し出し成形装置の要部拡大断面図である。
図1に示すように、本発明に係る超極細同軸ケーブル10は、単線の内部導体11の外周にポリアミドとABS樹脂とのポリマーアロイからなる誘電体層12が設けられた被覆電線13と、該被覆電線の外周に設けられた薄膜シールド層14と、該薄膜シールド層14の外周に設けられたポリウレタンからなる保護被覆層15とからなり、超極細同軸ケーブルの外径を約100μmとしたものである。
ここで、被覆電線13は、その場銀繊維強化銅合金(銀含有量約10%)からなる外径30μmの内部導体11の外周に、図2に示す押し出し成形装置により、ポリアミドとABS樹脂とのポリマーアロイからなる誘電体層12を形成して、外径を80μmとしたものである。
具体的には、押し出し成形装置100は、図2及び図3に示すように、内部導体11が挿通される挿通孔111が設けられたチップ部材110と、チップ部材110の先端が係合する係合孔121が設けられたダイ部材120と、ダイ部材120が固定される固定部材130とで構成されている。
また、チップ部材110とダイ部材120との間には、所定の隙間が設けられ、この隙間には、ポリアミドとABS樹脂とのポリマーアロイが充填されている。さらに、このような押し出し成形装置の鉛直方向下方(図中下方向)の端面には、挿通孔111及び係合孔121により構成され、且つ被覆電線13が導出されるノズル開口140が設けられている。
そして、このような押し出し成形装置100では、ノズル方向が略鉛直方向となるように設置され、ノズル開口140から、チップ部材110の挿通孔111を介して内部導体11が引き出されると共に、ポリアミドとABS樹脂とのポリマーアロイ12Aがチップ部材110とダイ部材120との隙間から内部導体11の外周に沿って引き落とされ、内部導体11の外周にポリアミドとABS樹脂とのポリマーアロイ12Aからなる誘電体層12が形成された被覆電線13が導出される。
上記した引き落としによる押し出し成形では、下記式で表される引落率(DDR)が所望の値となるように設定することで、被覆電線13の外径を所望の太さで形成することができる。
引落率(DDR)=(DD−DT)/(DCW−DBW
ここで、DDは係合孔121のノズル開口側の内径(mm)であり、DTはチップ部材110の先端の外径(mm)であり、DCWは被覆電線13の仕上がり外径(mm)であり、DBWは内部導体11の外径(mm)である(図3参照)。
また、このようにして形成された被覆電線13の外周面は、例えば、塩酸でエッチング処理され、その上から、無電解メッキにより銅からなる厚さ2μmの薄膜シールド層14(金属メッキ層)が形成される。
さらに、薄膜シールド層14が形成された被覆電線13の外周には、図4に示すようなダイス仕上げによってポリウレタンからなる保護被覆層15が形成される。図4は、ダイス仕上げによって保護被覆層を形成する工程を説明する概略断面図である。具体的には、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン等の溶剤に溶かされたポリウレタン溶液が収容されたポリウレタン槽20の下端部にダイス21を設けると共に、そのダイス21の鉛直方向下方側(図中下側)にヒータ22を配置する。そして、ポリウレタン槽20内を経由して被覆電線13をダイス21から引き出し、ヒータ22で連続的に加熱することで、被覆電線13の外周にポリウレタンからなる保護被覆層15を形成する。この場合には、ダイス21を内部導体11の軸中心にセットし易く、ダイス仕上げによって保護被覆層13を略均一な膜厚で形成することができる。これにより、本発明の超極細同軸ケーブル10が製造される。
なお、上記において、薄膜シールド層14が形成された被覆電線13を鉛直方向上方から下方に向かってポリウレタン槽20を経由して引き出し、ダイス仕上げにより保護被覆層15を形成した例を説明したが、勿論、本発明はこれに限定されず、例えば、図示しないが、薄膜シールド層が形成された被覆電線を鉛直方向下方から上方に向かって引き出してダイス仕上げにより保護被覆層を形成するようにしてもよい。
上記のようにして製造される本発明の超極細同軸ケーブル10は、特性インピーダンスが46Ω程度であり、電磁波薄膜シールド特性が25dB程度であった。
図5は、ケーブルの耐久試験を説明する概略図である。図5に示すように、超極細同軸ケーブル10を半径5mmの一対の支持棒30で挟み、超極細同軸ケーブル10の一端に所定の荷重を付加した状態で、他端部をAの位置から左右90°屈曲したBおよびCの各位置に繰り返し屈曲した。本発明の超極細同軸ケーブルの屈曲に対する耐久性(耐屈曲性)は、10万回以上であった。また、図示していないが、本発明の超極細同軸ケーブル10の一端部を固定した状態で、超極細同軸ケーブルをその軸周りに±90°捻回して行う耐久試験においては、20万回以上の耐久性を示した。
実施例1〜4及び比較例1
内部導体としてその場銀繊維強化銅合金(銀含有量約10%)からなる外径30μmの単線を用い、誘電体層の材料として第1表に示す組成、MFR(g/10min)を有するポリマーアロイ又はABS樹脂を用い、図2及び図3に示す押し出し成形装置を用いて外径が約80μmの被覆電線を製造した。このようにして形成された被覆電線の外周面を塩酸でエッチング処理し、触媒を付与し、活性化処理し、その外周面に無電解メッキにより銅からなる厚さ2μmの薄膜シールド層(金属メッキ層)を形成した。薄膜シールド層が形成された被覆電線の外周に、図4に示すようなダイス仕上げによってポリウレタンからなる保護被覆層を形成し、外径が約100μmの超極細同軸ケーブルを得た。実施例1〜4及び比較例1について、薄膜シールド層(金属メッキ層)の密着性、外径が約100μmの超極細同軸ケーブルの製造の可否を下記の基準で評価した。それらの結果は第1表に示す通りであった。
<密着性>
◎ 密着性が特に優れている、
○ 密着性が優れている、
× 密着性が劣っている。
<製造の可否>
◎ 容易に製造できる、
○ 製造できる、
× 製造が困難である。
Figure 2007265856
本発明に係る超極細同軸ケーブルの断面図である。 図1の超極細同軸ケーブルの製造に用いる押し出し成形装置の要部拡大断面図である。 図1の超極細同軸ケーブルの製造に用いる押し出し成形装置の要部拡大断面図である。 ダイス仕上げによって保護被覆層を形成する工程を説明する概略断面図である。 超極細同軸ケーブルの耐屈曲性試験を説明する概略図である。
符号の説明
10 超極細同軸ケーブル
11 内部導体
12 誘電体層
13 被覆電線
14 薄膜シールド層
15 保護被覆層

Claims (4)

  1. 内部導体と、該内部導体の外周に設けられたポリアミドとABS樹脂とのポリマーアロイからなる誘電体層と、該誘電体層の外周に設けられた薄膜シールド層と、該薄膜シールド層の外周に設けられた保護被覆層とからなることを特徴とする超極細同軸ケーブル。
  2. 内部導体の外周に押し出し成形によってポリアミドとABS樹脂とのポリマーアロイからなる誘電体層を形成する工程、該誘電体層の表面を塩酸、リン酸、硫酸又は有機酸でエッチング処理する工程、該エッチング処理した誘電体層の外周を触媒付与液で処理する工程、触媒を活性化する工程、活性化した触媒を有する誘電体層の外周に無電解メッキ、又は無電解メッキと電気メッキとの組み合わせによって薄膜シールド層を形成する工程、及び薄膜シールド層の外周に保護被覆層を形成する工程を含むことを特徴とする超極細同軸ケーブルの製造方法。
  3. メルトフローレート(MFR)が10g/10min以上である、ポリアミドとABS樹脂とのポリマーアロイを用いる請求項2記載の超極細同軸ケーブルの製造方法。
  4. ポリマーアロイ中に水溶性物質を含有している、ポリアミドとABS樹脂とのポリマーアロイを用いる請求項2又は3記載の超極細同軸ケーブルの製造方法。






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