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JP2007264555A - 透過型回折素子及びこれを用いた眼球投影型表示装置 - Google Patents

透過型回折素子及びこれを用いた眼球投影型表示装置 Download PDF

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JP2007264555A
JP2007264555A JP2006093172A JP2006093172A JP2007264555A JP 2007264555 A JP2007264555 A JP 2007264555A JP 2006093172 A JP2006093172 A JP 2006093172A JP 2006093172 A JP2006093172 A JP 2006093172A JP 2007264555 A JP2007264555 A JP 2007264555A
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light
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Naruhiro Haneda
成宏 羽田
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Brother Industries Ltd
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Abstract

【課題】眼球投影型表示装置等に用いられる透光性回折素子は表面が矩形状の形状を有し、矩形の上辺部に対する底辺部の深さを数nmオーダーの精度で作成する必要があり、製造が容易ではなかった。
【解決手段】透光性基材の表面に凹凸部が周期的に形成された透過型回折素子において、前記凹凸部の底辺部と上辺部との間の側辺部は前記表面の垂線に対して傾斜する所定の傾斜角を有する台形形状とすることにより、格子の深さの許容誤差を大きくすることができるので、製造容易な回折素子を提供することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、透過型回折格子に関し、特に眼球投影型表示装置等において射出瞳の径を拡大させるために用いられる透過型回折素子に関する。
近年、バーチャル空間や大画面を楽しむことができるヘッドアップディスプレイが開発されている。この種の表示装置は、小型液晶表示素子をゴーグルに組み込んで頭部に装着し、液晶表示素子に映し出される映像を凸レンズにより集光し網膜に結像させる(例えば特許文献1参照)。また、車のダッシュボードからフロントガラスに画像を投影しフロントガラスから反射される反射光を網膜に結像させる方式の表示装置も開発されている。
図15(a)は、液晶ディスプレイを組み込んだゴーグルを頭部に装着して網膜に画像を結像させる眼球投影型表示装置を説明するための概略図である。照明系101により液晶表示素子100を背後から照射して、液晶表示素子100に表示された映像を凸レンズ102により集光し、使用者の眼球103の網膜104上に結像させる。しかし凸レンズ102の収差を抑えるために開口数を小さくしており、そのために液晶表示素子100と凸レンズ102からなる光学系の射出瞳120の径は小さい。図15(a)のように射出瞳120と瞳孔106が一致する場合は、液晶表示素子100の点P1と点P2の画像は瞳孔106を通過して網膜104上の点P1’、P2’として結像する。この場合は周辺の画像まで観察することができる。しかし図15(b)に示すように、使用者が眼球を回転させると射出瞳120と瞳孔106との間の位置がずれる。そのために周辺部の画像に蹴られが生じて極端な場合は画像の認識が困難になる。
この眼球を回転させたときの画像の蹴られを防止するために、入射光に対して出射光を分割する回折格子が用いられている。図16(a)は、2枚の回折格子を用いて入射光を分割して出射している状態を示す。左側から入射した光は第1回折格子107により回折され、第2回折格子108により再び回折させて平行光としている。これを凸レンズ102と眼球103との間に配置して射出瞳120の径を拡大させるようにしている。図16(b)に示すように眼球103を回転しても液晶表示素子100の中心部の点P1及び周辺部の点P2の映像は網膜104の点P1’及び点P2’に結像するが、射出瞳120の拡大により点P2’に到達する光量が増加する。これにより画像の欠けを防止することができる。図16(c)は、この種の表示装置に使用される回折素子110の断面図である。回折素子110は透光性基板111の表面に矩形状の凹凸部112の回折格子が形成されている。
特開平7−72422号公報 特開平8−184779号公報
しかしながら、この種の回折格子は極めて高精度に作成する必要がある。眼球投影型表示装置の分割素子として用いられる回折格子は、各回折光の光強度バランス、及び、色バランスを満たすように設計する必要がある。即ち、回折角が0°の0次回折光と回折角を有する±1次回折光との間の光強度バランスは適切に設定する必要がある。また、回折格子により回折された光の光強度は波長依存性を有する。例えば、±1次の回折光を分割光として利用して射出瞳の拡大を図る場合に、赤、緑、青の各波長において特定の色の光強度が強く、他の色の光強度が弱い場合には、網膜上に投影される点P2’の周辺部の映像は色バランスが崩れることになる。その結果観察者は自然な映像を見ることができなくなる。従って、0次回折光と±1次回折光との間の光強度バランスを保持するとともに色バランスも保持することが必要であるが、上記図16(c)のような矩形状の回折素子を用いた場合にはその矩形形状を格子ピッチ方向では数10nm、格子深さ方向では数nmという極めて高精度に製造しなければならない、という課題があった。
本発明は、上記課題を解決するために以下の対策を講じた。
請求項1の発明である透過型回折素子においては、透光性基材の表面に凹凸部が周期的に形成された透過型回折素子において、前記凹凸部の底辺部と上辺部との間の側辺部は前記表面の垂線に対して傾斜する所定の傾斜角を有することを特徴とする透過型回折素子とした。
請求項2の透過型回折素子は、請求項1の構成に加え、前記凹凸部が、前記表面において互いに直交する2方向に周期的に形成されている透過型回折素子とした。
請求項3の透過型回折素子は、請求項1又は2の構成に加え、前記凹凸部が、前記透光性基材において、入射光が前記透光性基材より出射する出射側表面に形成されている透過型回折素子とした。
請求項4の透過型回折素子は、請求項1〜3のいずれか1の構成に加え、前記透光性基材がシリコン酸化物の場合又は前記透光性基材の屈折率が略1.45の場合には前記傾斜角は17°〜55°の範囲である透過型回折素子とした。
請求項5の透過型回折素子は、請求項1〜3のいずれか1の構成に加え、前記透光性基材がアクリル樹脂の場合又は前記透光性基材の屈折率が略1.49の場合には前記傾斜角は10°〜75°の範囲である透過型回折素子とした。
請求項6の透過型回折素子は、請求項1〜3のいずれか1の構成に加え、前記透光性基材がシクロオレフィン樹脂の場合又は前記透光性基材の屈折率が略1.53の場合には前記傾斜角は2°〜55°の範囲である透過型回折素子とした。
請求項7の透過型回折素子は、請求項1〜6のいずれか1の構成に加え、前記凹凸部の1周期のピッチをP、前記底辺部の長さをL、前記上辺部に対する前記底辺部の深さをDとした場合に、前記深さDは400nm〜600nmの範囲であり、デューティ比DRをL/Pとした場合に前記デューティ比DRは0.2〜0.3又は0.7〜0.8の範囲である透過型回折素子とした。
請求項8の透過型回折素子は、請求項7の構成に加え、前記深さDは500nm〜570nmの範囲である透過型回折素子とした。
請求項9の発明である眼球投影型表示装置においては、映像を投影する映像投影手段と、前記映像を使用者の眼球に導入する光学手段と、前記光学手段により形成される射出瞳を拡大させるための回折手段とを備えた眼球投影型表示装置であって、前記回折手段は、透光性基材の表面に凹凸部が周期的に形成され、前記凹凸部の底辺部と上辺部との間の側辺部は前記表面の垂線に対して傾斜する所定の傾斜角を有する透過型回折素子である。
請求項1の透過型回折素子によれば、周期的な凹凸部の上辺部と底辺部との間の側辺部を表面に垂直方向に対して傾斜する所定の傾斜角を有する台形形状としたことにより、回折素子の基材を型に流し込んで冷却し又は反応した後に離型する際に、この離型を容易にし、また、製造上の許容誤差が大きいので製造が容易になる、という利点を有する。
請求項2の透過型回折素子によれば、請求項1の効果に加え、透光性基材の表面の互いに直行する2方向に周期的に凹凸部を有するので、1回折素子により直交する2方向の回折光を得ることができる、という利点を有する。
請求項3の透過型回折素子によれば、請求項1又は請求項2の効果に加え、透光性基材の出射側表面に回折格子を設けるようにしているので、回折光が透光性基材の材料に影響を受けず、光学設計が容易になる、という利点を有する。
請求項4の透過型回折素子によれば、請求項1〜3のいずれか1項の効果に加え、透光性基材としてシリコン酸化物又は透光性基材の屈折率を略1.45の材料を使用する場合に、側辺部の傾斜角を17°〜55°の範囲としたので、回折素子を製造する上での許容誤差が大きくなり、製造が容易になる、という利点を有する。
請求項5の透過型回折素子によれば、請求項1〜3のいずれか1項の効果に加え、透光性基材としてアクリル樹脂又は透光性基材の屈折率を略1.49の材料を使用する場合に、側辺部の傾斜角を10°〜75°の範囲としたので、回折素子を製造する上での許容誤差が大きくなり、製造が容易になる、という利点を有する。
請求項6の透過型回折素子によれば、請求項1〜3のいずれか1項の効果に加え、透光性基材としてシクロオレフィン樹脂又は透光性基材の屈折率を略1.53の材料を使用する場合に、側辺部の傾斜角を2°〜55°の範囲としたので、回折素子を製造する上での許容誤差が大きくなり、製造が容易になる、という利点を有する。
請求項7の透過型回折素子によれば、請求項1〜6のいずれか1項の効果に加え、凹凸部の深さを400nm〜600nmの範囲、デューティ比DR0.2〜0.3又は0.7〜0.8の範囲としたので、0次回折光と±1次回折光との間の光強度及び色のバランスのとれた回折光を得ることができる、という利点を有する。
請求項8の透過型回折素子によれば、請求項7の効果に加え、凹凸部の深さを500nm〜570nmの範囲としたので、0次回折光と±1次回折光との間の光強度及び色のバランスがよりとれた回折光を得ることができる、という利点を有する。
請求項9の眼球投影型表示装置によれば、映像投影手段と、当該映像投影手段から投影された映像を眼球に導入する光学手段と、当該光学手段により形成される射出瞳を拡大させる回折手段とを有する眼球投影型表示装置において、当該回折手段として透光性基材の表面に周期的な凹凸部を形成し、上辺部と底辺部との間の側辺部は垂線に対して所定の傾斜角を有するようにしたので、製造が容易であり、かつ、眼球を回転させても色バランスのとれた映像を視認することができる、という利点を有する。
以下、図面を用いて本発明に係る実施の態様を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の態様を示す回折素子1の斜視図である。透光性基材2の表面のx方向に凸部3と凹部4が周期的に形成されている。凸部3の上辺部と凹部4の底辺部との間には側辺部5が形成され、垂直方向に対して傾斜する傾斜角を有する。即ち、凸部はその断面が台形形状を有する。回折素子1の透光性基材2の材料は、透光性ガラスや透光性樹脂を使用することができる。例えば二酸化シリコン(SiO2)、アクリル樹脂(PMMA)、シクロオレフィン樹脂(COP)等を用いることができる。
なお、この種の回折素子1は、切削加工やリソグラフィー加工により予め格子を形成した金型等からなる型に透光性基材を流し込み、冷却し又は反応させて当該型に形成された格子を透光性基材に転写する方法で製造される。周期的に形成された凹凸部は、上辺部6と底辺部7との間の側辺部5が傾斜する台形形状であるために、型から透光性基材を切り離す離型が容易となる。
図2は、回折素子1の入射光に対する光の回折を説明するための説明図である。同一の部分又は機能を有する部分には同一の符号を付した。z方向に入射した光線はブラックの回折条件に従って0次回折光、回折角±φを有する±1次回折光(以下総称して1次回折光という)、更に高次回折光に分離される。なお、本実施の形態においては0次回折光と1次回折光について扱い、高次回折光については無視している。眼球投影型表示装置においてはこの1次回折光を用いて射出瞳径の拡大を図る。なお、図1に示した回折素子1はx方向に格子が周期的に形成されている。従って、1次回折光はx方向に広がる。
図3は、本発明の他の実施の態様を示す回折素子1の斜視図である。なお、同一の部分又は機能を有する部分には同一の符号を付した。図3において、透光性基材2の表面にはx方向とy方向に凸部3と凹部4が周期的に形成されている。そのため、透光性基材2を透過する光はx方向とy方向の直交する2方向に回折される。眼球投影型表示装置に適用する場合は、射出瞳径は左右と上下の方向に拡大される。なお、図3は直交する2方向に凹凸部を形成した例であるが、台形状の凸部3を6角形に形成し、角度が60づつ異なる3方向に凹凸部を形成しても良いし、台形状の凸部3を同心円状に形成してもよい。
図4は、図1に示した回折素子1のX方向について、1周期の凹凸部形状を表している。同一の部分又は機能を有する部分には同一の符号を付した。ここで、一周期のピッチをP、凹部4の底辺部7の長さをL、上辺部6に対する底辺部7の深さをD、垂線に対する側辺部5の傾斜角をθとする。これらの4つのパラメータにより回折格子の形状が特定される。また、デューティ比DR=L/Pと定義する。
図5は、デューティ比DRを0.90としたときの、回折素子1の格子の深さDと回折効率の関係を示すグラフである。縦軸が回折効率で横軸が格子の深さDを表す。ここで、回折効率とは、入射光のエネルギーに対する出射光のエネルギーの割合をいう。また、深さDが0であるとは、透光性基材2の表面に回折格子が形成されていないことを意味する。図5から、深さDを0から1000nmに変化させたときに、0次回折光は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のいずれの光に対しても回折効率は60%以上を有するが、1次回折光は波長依存性が少なく回折効率は約5%以下である。従って、デューティ比DRが0.90では1次回折光の回折効率が低く、この回折素子1では射出瞳径を拡大させることはできない。
図6は、デューティ比DRを0.75としたときの、回折素子1の格子の深さDと回折効率の関係を示すグラフである。0次回折光の回折効率は、格子の深さDが100nmから400nmにかけて低下し、400nm〜600nmにおいて最も低下し、600nm〜1000nmにかけて漸次増加する。1次回折光の回折効率は、0次回折光とは反対に格子の深さDが0nm〜400nmにかけて漸次増加し、400nm〜600nmで最大となり、600nm〜1000nmにかけて漸次低下する。また、特に深さDが600nm以上の領域においては0次回折光及び1次回折光ともに光の色に対する回折効率のバラツキが大きくなる。また、深さDが概ね400nm〜600nmの範囲では0次回折光と1次回折光との間の回折効率がほぼ等しくなる。また深さDが450nm〜550nmの範囲では各色に対する回折効率のばらつきが小さい。よって、デューティ比DRを略0.75とし、格子の深さDを400nm〜600nmの範囲に、より好ましくは450nm〜550nmの範囲に設定することにより、各色に対する回折効率をほぼ同程度とすることができる。更に、0次回折光と1次回折光との回折効率、即ち回折光の光強度を同程度とすることができる。0次回折光と1次回折光との間の光強度を同程度とすることにより、光強度むらの少ない眼球投影型表示装置の設計が容易となる。なお、デューティ比DRは、好ましくは略0.73に設定するのが良い。
図7は、デューティ比DRを0.5としたときの、回折素子1の格子の深さと回折効率の関係を示すグラフである。0次回折光の回折効率は格子の深さDが400nm〜600nmの範囲では10%以下となる。反対に、1次回折光の回折効率は深さDが400nm〜600nmにおいて最大値を示し約40%となる。従って、格子の深さDが400nm〜600nm付近では1次回折光が支配的となる。この回折素子1を眼球投影型表示装置に適用すると、直視したときに中心部の映像が暗く、周辺部の映像が明るくなり、均一な明度の画像を得るように設計するのが難しくなる。
図8は、デューティ比DRを0.25としたときの、回折素子1の格子の深さと回折効率の関係を示すグラフである。この場合は、デューティ比DRが0.75と同様の特性を示す。デューティ比DRが0.25の場合は、凹凸部の底辺部の長さと上辺部の長さとを逆転させた場合に相当する。
以上まとめると、回折素子1として、0次回折光と1次回折光の光強度をほぼ同程度とし、かつ、各色の回折効率の差を小さくするためには、デューティ比DRを0.2〜0.3、及び、0.7〜0.8の範囲とし、かつ、格子の深さDを概ね400nm〜600nmの範囲、より好ましくは450nm〜550nmの範囲とするのがよい。また、デューティ比DRは略0.73、あるいは凹凸部の辺の長さが逆転する略0.27とするのが良い。
次に、格子の深さDの許容誤差について説明する。透光性基材2を用いた透過型回折格子は、底辺部7を通過する透過光と上辺部6を通過する透過光との間の光学的な光路差に基づく光の干渉を利用している。そのために、格子の深さDを高精度で形成する必要がある。そこで、屈折率の異なる透光性基材2の材料について、格子の深さDを形成する上で許容可能な誤差を表す許容誤差を、傾斜角θを変化させて求めた。この許容誤差が大きければ大きいほど、回折素子1の作成は容易となる。
回折素子1の0次回折光及び1次回折光は、R,G,Bの各色について色バランスを保持する必要がある。眼球投影型表示装置に回折素子1を適用する場合に回折素子1の色バランスが崩れると、認識される映像が不自然になる。そこでG光の0次回折光と1次回折光の比を基準としてR光やB光の偏差を規定し、色バランスが崩れない傾斜角θの範囲を求める。
入射光の各色に対する0次回折光及び1次回折光の出射光強度を次のように定義する。
R0:R(赤色)光の回折素子1へ入射する入射光強度に対する、R光の0次回折光強度の比
R1:R(赤色)光の回折素子1へ入射する入射光強度に対する、R光の1次回折光強度の比
G0:G(緑色)光の回折素子1へ入射する入射光強度に対する、G光の0次回折光強度の比
G1:G(緑色)光の回折素子1へ入射する入射光強度に対する、G光の1次回折光強度の比
B0:B(青色)光の回折素子1へ入射する入射光強度に対する、B光の0次回折光強度の比
B1:B(青色)光の回折素子1へ入射する入射光強度に対する、B光の1次回折光強度の比
次に、G光を基準としてR光とB光の各色の偏差を次のように定義する。
R光の偏差:Dev(R1)=1−(R1×G0)/(R0×G1)
B光の偏差:Dev(B1)=1−(B1×G0)/(B0×G1)
R光の偏差とは、Rの0次回折光に対する1次回折光の光強度比を求めて、この値をGの0次回折光に対する1次回折光の光強度比により除算した値を1から差し引いた値である。B光も同様である。即ち、R光の偏差が0である場合は、G光の1次回折光と0次回折光との比と、R光の1次回折光と0次回折光との比が同一であることを意味する。B光についても同様である。
図9は、底辺部7の長さLを3μmとし、格子の深さDを変化したときのR光の偏差(R1)及びB光の偏差(B1)を示すグラフである。横軸が格子の深さDを示し、縦軸が上記において定義した偏差を示す。眼球投影型表示装置に回折素子1を適用した場合、偏差が0.2を超えると映像の色バランスが崩れる。そこで、この偏差は0.2以下に抑制する必要がある。図9に示すように、格子の深さDが大きくなるに従い、青色Bの偏差は増大し、逆に赤色Rの偏差は減少する。図9から、深さDが515nm〜526nmの範囲においてはいずれの色に対しても偏差0.2を下回っている。つまり、深さDがこの範囲であれば色バランスが崩れないことを意味する。従って、深さDの許容誤差は約11nmである。なお、上記は特定の条件についての一例である。他の条件等を考慮に入れると、深さDの好ましい範囲は500nm〜570nmである。また、底辺部7の長さLは3μmから100μmが好ましい。
図10は、透光性基材2として二酸化シリコン(屈折率nは略1.45)を用いて、傾斜角θを変化させたときの格子の深さDの許容誤差を表すグラフである。複数の曲線は、デューティ比を固定し、底辺部の長さLを13.0μm〜13.5μmの間で変化させたときの許容誤差を表している(底辺部の長さLは、aが13.0μm、bが13.1μm、cが13.2μm、dが13.3μm、eが13.4μm、fが13.5μmの場合である)。図10から、二酸化シリコンの場合は深さDの許容誤差は小さい。その中でも、許容誤差を10nm以上にすることが出来る傾斜角θの範囲は、概ね17°〜55°である。
図11は、透光性基材としてアクリル樹脂(屈折率nは略1.49)を用いて、傾斜角θを変化させたときの格子の深さDの許容誤差を表すグラフである。複数の曲線は上記図10と同様である。図11から、許容誤差を20nm以上とすることができる傾斜角θの範囲は概ね10°〜75°であり、許容誤差を30nm以上とすることができる傾斜角θの範囲は概ね15°〜65°であり、特定の底辺部の長さLに対して許容誤差を40nm以上とすることができる傾斜角θの範囲は概ね22°〜52°である。
図12は、透光性基材2としてシクロオレフィン樹脂(屈折率nはD線に対して略1.53)を用いて、傾斜角θを変化させたときの格子の深さDの許容誤差を表すグラフである。複数の曲線は図10と同様である。図12から明らかに、二酸化シリコンやアクリル樹脂の場合と比べて格子の深さDの許容誤差の値が大きい。これはシクロオレフィン樹脂の屈折率が二酸化シリコンやアクリル樹脂よりも大きいことによるものと考えられる。許容誤差を30nm以上とすることができる傾斜角θの範囲は概ね2°〜55°であり、許容誤差を40nm以上とすることができる傾斜角θの範囲は概ね3°〜50°であり、特定の底辺部の長さLに対して許容誤差を50nm以上とすることができる傾斜角θの範囲は概ね5°〜38°である。
以上まとめると、いずれの透光性基材2に対しても共通して、傾斜角θが0°の矩形状格子よりも傾斜角のある台形状格子のほうが深さDの許容誤差が大きい。従って、矩形状回折素子よりも台形状回折素子の製造のほうが容易となる。また、屈折率が大きいほうが許容誤差は大きくなり、回折素子1の作成が容易になる。また、底辺部7の長さLを高精度で作成することにより、格子の深さDの許容誤差を大きくとることができる。例えば、透光性基材2としてシリコン酸化物を用いた場合でも、図10のグラフeから、底辺部7の長さLを13.4μmとして、傾斜角θを概ね25°〜40°の範囲に設計すれば許容誤差を15nm以上とすることができる。
図13は、本発明に係る透過型回折素子を眼球投影型表示装置に適用した実施の態様を表す説明図である。液晶表示素子11と、液晶表示素子11を背面から白色光を照射する照明系10により映像投影手段を構成している。液晶表示素子11に表示された映像は、凸レンズ12及び凸レンズ13からなる光学手段により眼球14に導入され、網膜15に結像する。回折手段である回折素子1を凸レンズ12と凸レンズ13の間に配置している。回折手段である回折素子1は、上記したように、透光性基材2の表面に凹凸部が周期的に形成されており、上辺部6と底辺部7との間の側辺部5が傾斜する傾斜角を有する。液晶表示素子11から投影された映像は、凸レンズ12を介して回折素子1により0次回折光と1次回折光(±1次回折光)とに分離されて、射出瞳の径を拡大させる。眼球14を回転した場合でも射出瞳の径が拡大されたことにより、液晶表示素子11の周辺の点P2の映像は蹴られを防止して網膜15に結像させることが出来る。結像された映像は、明るさの均一性が高く、かつ、色バランスが保持されている。
なお、凸レンズ13に替えて回折素子1を使用することができる。また、回折素子1として、直行する2方向に凹凸部を形成した回折素子1を使用すれば、眼球14を左右上限に回転させても、蹴られの少ない映像を網膜15に結像させることが出来る。また、回折素子1を2枚使用する代わりに、透光性基材2の表面と裏面の両面に台形状の凹凸部を周期的に形成した回折素子1を使用することができる。また、照明系10と液晶表示素子11からなる映像投影手段に替えて、プラズマディスプレイやエレクトロルミネッセンスディスプレイからなる映像投影手段を使用することができる。
図14は、本発明に係る透過型回折素子を眼球投影型表示装置に適用した他の実施の態様を表す説明図である。本眼球投影型表示装置は、光源及び映像信号処理回路を含む光源ユニット40からなる映像投影手段と、映像を水平方向に走査する水平走査系31、映像を垂直方向に走査する垂直走査系32、及び、レンズ系からなる光学手段と、このレンズ系により形成される射出瞳を拡大させるための回折素子1からなる回折手段を備えている。更に、光源ユニット40からの映像が光ファイバ39を介して出射される光束の波面曲率を変調するための波面曲率変調器37を備えている。この眼球投影型表示装置は、映像信号が重畳された光束を上下左右に走査して網膜15に直接映像を表示させるものである。本実施の形態に係る回折素子1は、上記したように、透光性基材2の表面に凹凸部が周期的に形成されており、上辺部6と底辺部7との間の側辺部5が傾斜する傾斜角を有する。
光源ユニット40のRレーザドライバ51、Gレーザドライバ52、Bレーザドライバ53はそれぞれRレーザ48、Gレーザ49、Bレーザ50に輝度信号を出力し、これらのレーザから各色の輝度変調されたレーザ光が出力される。各色のレーザ光はコリメータレンズ45、46、47及びダイクロイックミラー42、43、44を介して光学結合系41により合成されて光ファイバ39に出力される。光ファイバ39から出射された光束は、ビームスプリッタ33により反射され、更に波面曲率変調器37により制御される反射ミラー36により反射され、収束レンズ35を介してポリゴンミラー30(ポリゴンミラーの代わりにガルバノミラーであってもよい)へ出射される。光束は、ポリゴンミラー30により水平走査され、前段レンズ群29、上記本実施の形態に係る台形形状の凸部を有する回折素子1、後段レンズ群27を介してガルバノミラー26(ポリゴンミラーであってもよい)に出射される。ガルバノミラー26は入射した光束を垂直方向に走査する。垂直走査系23は前段レンズ群24、後段レンズ群25から構成され、垂直及び水平に走査された光束が瞳孔21を通過して眼球14の網膜15で結像する。
従って本実施の形態においては、網膜15上に光束を水平及び垂直に走査して画像を書き込む。この場合にも、台形形状の凸部を有する回折素子1により、射出瞳径が拡大され、眼球14を回転させても周辺部分の画像の蹴られを抑制することができる。
以上の説明において、本発明に係る回折素子1を眼球投影型表示装置に適用した実施の形態について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、レーザによるディスクへの書き込み又は読取装置等へ適用することが出来る。
本発明の実施の形態に係る回折素子の斜視図である。 本発明の実施の形態に係る回折格子の回折を説明するための説明図である。 本発明の実施の形態に係る回折素子の斜視図である。 本発明の実施の形態に係る回折素子の表面の凹凸を現す説明図である。 本発明の実施の形態に係る回折素子の格子の深さ対回折効率を表すグラフである。 本発明の実施の形態に係る回折素子の格子の深さ対回折効率を表すグラフである。 本発明の実施の形態に係る回折素子の格子の深さ対回折効率を表すグラフである。 本発明の実施の形態に係る回折素子の格子の深さ対回折効率を表すグラフである。 本発明の実施の形態に係る回折素子の格子の深さ対偏差を表すグラフである。 本発明の実施の形態に係る回折素子の傾斜角対格子の深さ許容誤差を表すグラフである。 本発明の実施の形態に係る回折素子の傾斜角対格子の深さ許容誤差を表すグラフである。 本発明の実施の形態に係る回折素子の傾斜角対格子の深さ許容誤差を表すグラフである。 本発明の実施の形態に係る眼球投影型液晶表示装置を表す説明図である。 本発明の実施の形態に係る眼球投影型液晶表示装置を表すブロック図である。 従来公知の頭部装着式映像表示装置を表す説明図である。 従来公知の頭部装着式映像表示装置及び回折素子を表す説明図である。
符号の説明
1 回折素子
2 透光性基材
3 上辺部
4 底辺部
5 側辺部
10 照明系
11 液晶表示素子
12、13 凸レンズ
14 眼球
15 網膜

Claims (9)

  1. 透光性基材の表面に凹凸部が周期的に形成された透過型回折素子において、
    前記凹凸部の底辺部と上辺部との間の側辺部は前記表面の垂線に対して傾斜する所定の傾斜角を有することを特徴とする透過型回折素子。
  2. 前記凹凸部は、前記表面において互いに直交する2方向に周期的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の透過型回折素子。
  3. 前記凹凸部は、前記透光性基材において、入射光が前記透光性基材より出射する出射側表面に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の透過型回折素子。
  4. 前記透光性基材がシリコン酸化物の場合又は前記透光性基材の屈折率が略1.45の場合には前記傾斜角は17°〜55°の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載した透過型回折素子。
  5. 前記透光性基材がアクリル樹脂の場合又は前記透光性基材の屈折率が略1.49の場合には前記傾斜角は10°〜75°の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載した透過型回折素子。
  6. 前記透光性基材がシクロオレフィン樹脂の場合又は前記透光性基材の屈折率が略1.53の場合には前記傾斜角は2°〜55°の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載した透過型回折素子。
  7. 前記凹凸部の1周期のピッチをP、前記底辺部の長さをL、前記上辺部に対する前記底辺部の深さをDとした場合に、前記深さDは400nm〜600nmの範囲であり、デューティ比DRをL/Pとした場合に前記デューティ比DRは0.2〜0.3又は0.7〜0.8の範囲であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の透過型回折素子。
  8. 前記深さDは500nm〜570nmの範囲であることを特徴とする請求項7に記載の透過型回折素子。
  9. 映像を投影する映像投影手段と、前記映像を使用者の眼球に導入する光学手段と、前記光学手段により形成される射出瞳を拡大させるための回折手段とを備えた眼球投影型表示装置であって、
    前記回折手段は、透光性基材の表面に凹凸部が周期的に形成され、前記凹凸部の底辺部と上辺部との間の側辺部は前記表面の垂線に対して傾斜する所定の傾斜角を有する透過型回折素子であることを特徴とする眼球投影型表示装置。
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