JP2007258980A - 波形合成装置およびそのプログラム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】単発音の波形データを、吸気音、エンジン爆発音、排気音などといったその単発音を成す要素毎の波形データとして準備しておく。そして、エンジンの設計条件に応じて選択したそれらの要素毎の波形データに周波数変更や時間、振幅の揺らぎを付加した後に合成して出力することによって、エンジン音のシミュレーションを行う。
【選択図】図1
Description
前田 修、「エンジン音質のバーチャル評価技術」、日本音響学会誌、日本音響学会、平成15年、59巻、5号、p.p.288−293
本発明は、このような背景の下に案出されたものであり、エンジンの各設計条件の変更がそのエンジン音を成す音要素の各々の波形に個別に及ぼす影響を加味したシミュレーションを実現することを目的とする。
本発明の実施形態について説明する。
まず、本実施形態を理解する前提となる原理である単発音制御再生法について説明する。この方法は、単気筒エンジンの単発音を用いて多気筒エンジンの音を合成する方法の1つである。以降の説明は、車両の代表的なエンジン駆動方式の一つである4気筒4ストロークエンジンを例にとり行う。
単発音の波形が得られると、その波形を連ねることにより、エンジンの1気筒が継続して運転された場合に発する音(以下、「連続音」と呼ぶ)が合成される。図1は連続音が合成される様子を示した図である。図1の左図は、最大振幅がA0、時間がT0(秒)である単発音の波形を例示している。連続音の合成においては、この原波形である単発音の波形に振幅方向および時間方向の伸縮を加えたものが順次連結される。なお、連結の際には、連結部の不連続により発生するノイズを低減するために窓関数を乗じる処理を加えることが望ましい。
単発音制御再生法においては、単発音からより自然な連続音を得るために、各原波形に対し加えられる伸縮の程度に所定の揺らぎを加える。その結果、連続音を構成する各単発音の振幅および時間はそれぞれ微小に異なるものとなる。
上記のように合成される連続音に含まれる単発音の長さは原波形の時間T0を中心として揺らぐため、連続音の周期はT0(秒)であり、その基音はf0=1/T0(Hz)である。なお、4ストロークエンジンの場合、吸気、圧縮、爆発、排気の4段階においてクランクシャフトが2回転するため、エンジンの回転数をr(rpm)とすると、周期T0=(2×60)/r(秒)である。
上記のように合成される重合音においては、時間T0/4(秒)ごとにほぼ同じ波形が繰り返される。従って、重合音の周期はT=T0/4(秒)、その基音はf=f0×4(Hz)となる。このように合成される重合音が、単発音制御再生法により生成される4気筒4ストロークエンジンの音である。
図3(A−1)および図3(A−2)は、連続音の合成において、振幅揺らぎおよび時間揺らぎを全く加えない場合、すなわち連続音の合成に原波形をそのまま用いた場合に得られる重合音の波形および周波数特性をそれぞれ示している。また、図3(B−1)および図3(B−2)は、連続音の合成において、振幅揺らぎのみを加え、時間揺らぎを全く加えない場合に得られる重合音の波形および周波数特性をそれぞれ示している。さらに、図3(C−1)および図3(C−2)は、連続音の合成において、振幅揺らぎおよび時間揺らぎの両方を加えた場合に得られる重合音の波形および周波数特性をそれぞれ示している。
図4は、揺らぎの付加が重合音の音響特性に与える影響を確認するために行った別の実験結果を示すソナグラフである。図4(A)および図4(B)の縦軸は周波数、横軸は時間を示している。ただし、図4(A)および図4(B)の作成に用いた重合音においては、回転数rが1000回転/秒の割合で増加する場合のエンジン音を模すように、徐々に増加する縮小率で時間方向に縮小された単発音が連結された連続音が重合されている。従って、図4(A)および図4(B)の横軸の値に1000を乗じたものは、エンジンの回転数rに相当する。
図4(A)においては、グラフの左下から右上に向かいほぼ直線上に並んだ周波数成分の山が明確に確認される。ソナグラフに現れるこれらの直線はグラフの下から順次、回転2次、回転4次、回転6次、・・・の成分を示す直線と呼ばれ、これらの回転整数次の直線が明確である程、ソナグラフに示される周波数成分のピークが鋭いことが見てとれる。これに対し、図4(B)においては、回転整数次の直線が図4(A)のものと比較して明確でなく、ソナグラフに示される周波数成分のピークが鋭くないことが見てとれる。
図4(A)および図4(B)より、単発音に揺らぎを与えた場合は揺らぎを与えない場合と比較し、最終的に合成される重合音の回転整数次の周波数成分が際立っておらず、爆発1次の成分も他の成分と比較し顕著に現れず、聞き手にとってはあまり快調に回っていないエンジンの音と感じられることが分かる。
本実施形態にかかる波形合成装置は、上述した単発音制御再生方法をエンジン設計時におけるエンジン音のシミュレーションに応用したものであり、その特徴は、エンジンの回転数や車速などといった走行状態、クランクシャフトの角度や点火プラグの点火タイミングなどといったエンジンの物理的属性、車室内遮音性やエンジンと車室内の距離などといったエンジンから車室内に至る音の伝達特性に関する設計条件の入力を受け付け、入力された設計条件でエンジンを製作したときに発生するであろうエンジン音を各種音波形を基に合成して出力するようにした点にある。
波形合成システムは、波形合成装置1と、ユーザの操作に応じた信号を波形合成装置1に出力するポインタデバイスであるマウス2と、波形合成装置1から出力される音波形を増幅するアンプ3と、アンプ3から出力される音波形を音に変換するスピーカ4と、波形合成装置1が出力する描画データに応じて画像や文字を表示するディスプレイ5とを備えている。
図に示すように、このDBの第1欄には、600rpm、700rpm、800rpm・・・といったように100rpm毎のエンジン回転数を示す回転数値が記憶される。第2欄乃至第4欄の各々には、要素別原波形データが記憶される。要素別原波形データは、単発音を成す要素である、吸気音、エンジン爆発音、排気音の各々の、単発音1つ分の時間長に相当する波形を示すデータである。第2欄乃至第4欄に記憶される各要素別原波形データは、単気筒エンジン(実機)を各回転数で駆動させて収録した単発音から、吸気音、エンジン爆発音、排気音の各々に相当する波形を切り出すことにより得たものであってもよいし、ランダムノイズに対し、実際のエンジンの単発音に含まれる吸気音、エンジン爆発音、排気音の各々と同様の周波数特性を与えるべくイコライザ等を通じたフィルタ処理を加えることにより得たものであってもよい。
第1対応関係DB群1002は、上述したエンジン回転数やアクセル開度など、エンジンを搭載する車両の走行状態を決定付ける属性と各々対応するDBの集合体である。図に示すように、各DBの第1欄には、エンジン回転数やアクセル開度などの走行状態を定量的に示す走行状態値が記憶される。そして、第2欄乃至第4欄には、吸気音、エンジン爆発音、排気音の各々と対応する周波数変更パラメータが記憶される。周波数変更パラメータは、所定の周波数帯域毎の振幅レベルの増減率をそれぞれ表したパラメータである。具体的には、63Hz、125Hz、250Hz、500Hz、1kHz、2kHz、4kHz、8kHz、16kHzをそれぞれ中心周波数とする周波数帯域毎の増減率を示す値を取り纏めたものである。
第2対応関係DB群1003は、エンジンに内蔵される点火プラグの点火タイミング、クランクシャフト角度、ピストン角度、バルブの開閉タイミング、吸気管の集合点までの長さ、排気管の集合点までの長さ、燃料噴射量、吸気量など、エンジン自体の物理的属性と各々対応するDBの集合体である。図に示すように、各DBの第1欄には、エンジンの物理的属性を定量的に示す物理的属性値が記憶される。そして、第2欄乃至第4欄には、吸気音、エンジン爆発音、排気音の各々と対応する振幅揺らぎパラメータと時間揺らぎパラメータの対が記憶される。両パラメータは、時間揺らぎの程度と振幅揺らぎの程度をそれぞれ示すパラメータである。
eT=(Tmax−Tave)÷Tave×100 ・・・(式1)。
この式1において、Taveは単発音を連続させた音波形の単発音1つあたりの時間長の平均を、Tmaxはそれらのうちの最大の時間長を表している。
例えば、4ストロークエンジンの場合であれば、エンジン回転数が1000rpmであれば単発音1つの時間長は120ミリ秒となるが、「時間揺らぎの程度」1.0%はその時間長が約118.8ミリ秒〜121.2ミリ秒の範囲で揺らぐことを示している。
eA=(Amax−Aave)÷Aave×100 ・・・(式2)。
この式2において、Aaveは単発音を連続させた音波形の単発音1つあたりの最大振幅の平均を、Amaxはそれらのうち最大の振幅幅を表している。
例えば、連続する単発音の各々の最大振幅が100であり、「振幅揺らぎの程度」1.0%は、単発音の最大振幅が約99〜101の範囲で揺らぐことを示している。
第3対応関係DB群1004は、車室内遮音性やエンジンと車室内の距離など、エンジンから車室内に至る音の伝達特性を決定付ける属性と各々対応するDBの集合体である。図に示すように、各DBの第1欄には、そのような伝達特性を定量的に示す伝達特性値が記憶される。一方、第2欄乃至第4欄には、第1対応関係DB群1002と同様に、吸気音、エンジン爆発音、排気音の各々と対応する個別の周波数変更パラメータが記憶される。
第4対応関係DB群1005は、第2対応関係DB群1003と同様に、エンジン自体の物理的属性と各々対応するDBの集合体である。図に示すように、各DBの第1欄には、エンジンの物理的属性を定量的に示す物理的属性値が記憶される一方、第2欄には、オフセットパラメータが記憶される。オフセットパラメータは、オフセットの程度を示すパラメータである
Istd=(i1(n)−i1(1))÷(n−1)÷2 ・・・(式3)。
Iost={(i2(1)−i1(1))+(i2(2)−i1(2))+ ・・・ +(i2(n)−i1(n))}÷(n−1) ・・・(式4)。
s=Iost÷Istd ・・・(式5)。
ここで、式3により求められるIstdは、第1気筒の単発音と第2気筒の単発音が交互に等しい時間間隔で開始する場合(以下、「通常の場合」と呼ぶ)における第1気筒の単発音と第2気筒の単発音の開始タイミングとの時間間隔を示している。これに対し、式4により求められるIostは実際の第1気筒の単発音の開始タイミングとその後に続く第2気筒の単発音の開始タイミングとの時間間隔の平均値を示している。
従って、式5により求められるsは、第2気筒の単発音の開始タイミングが通常の場合よりも早い場合に1未満となり、第2気筒の単発音の開始タイミングが通常の場合よりも遅い場合に1より大きくなる。例えば「オフセットの程度」が1.01であれば、第2気筒の単発音の開始タイミングが全体として通常の場合より約1%、遅れていることになる。第3気筒及び第4気筒の単発音の開始タイミングのオフセットも上記式に従って同様に求めることが可能である。
I1は、通常の場合、すなわち各気筒の単発音の開始タイミングが等間隔の場合のその間隔を1とした場合における、第1気筒と第2気筒の単発音の開始タイミングの間隔を示している。同様に、I2は第2気筒と第3気筒の単発音の開始タイミングの間隔を示し、I3は第3気筒と第4気筒の単発音の開始タイミングの間隔を示している。通常の場合の各気筒の単発音の開始タイミングの間隔は、単発音1つに相当する音波形の時間長を気筒数である4で除した長さである。なお、第4気筒と第1気筒の単発音の開始タイミングの間隔は、4−(0.97+1.05+1.02)=0.96のように、I1〜I3により自動的に定まる。
波形合成装置1は、ユーザによるマウス2の操作内容に応じて生成した、走行状態値、物理的属性値、及び伝達特性値を記憶部100に記憶させる入力部101と、吸気音、エンジン爆発音、排気音の各要素別原波形データのセットを要素別原波形DB1001から選択する原波形選択部102と、選択されたセットの各要素別原波形データの周期を走行状態値が示す回転数に応じて伸縮する周期変更部103とを備えている。
更に、波形合成装置1は、記憶部100に記憶されている画面定義データに基づき画面を示す描画データを生成しディスプレイ5に対し出力する画面生成部104のほか、単気筒連続波形生成部105、多気筒連続波形生成部106、及びD/Aコンバータ107を備える。
後の動作説明の項にて詳述するように、周期変更部103による周期の伸縮を経た、吸気音、エンジン爆発音、排気音の各要素別原波形データは、第1複製処理部1051により所定回数に渡って複製されて第1周波数特性変更部1052へ順次供給される。そして、第1周波数特性変更部1052へ順次供給される要素別原波形データは、同部1052による1度目の周波数特性の変更、時間揺らぎ付加部1053による時間方向の伸縮の付加、振幅揺らぎ付加部1054による振幅方向の伸縮の付加、更には、第2周波数特性変更部1055による2度目の周波数特性の変更を経た後、連結処理部1056にて、吸気音、エンジン爆発音、排気音の連続波形データへと連結され、それらの連続波形データが第1重合処理部1057にて1つの単気筒連続波形データへとミキシングされて多気筒連続波形生成部106へ供給される。
D/Aコンバータ107は、多気筒連続波形生成部106により生成された多気筒連続波形データ(デジタルデータ)をアナログデータに変換してアンプ3に出力する。
データ入力用画面には、走行状態入力欄51、物理的属性入力欄52、及び伝達特性入力欄53のほか、エンジン音の波形合成の開始と終了を指示するための両コマンドボタン54及び55が含まれている。
このデータ入力用画面が表示されると、ユーザは、マウス2の操作を通じて各入力欄へ各種情報の入力を行う。具体的には、アクセル開度とエンジン回転数の設定を走行状態入力欄51へ入力し、バンク角、クランクシャフト角、点火プラグに対する点火タイミング、バルブの点火タイミング、吸気/排気管の集合するまでの長さ、バルブの開閉タイミング、燃料噴射量、吸気量の設定を物理的属性入力欄52に入力し、更に、車室内遮音性、エンジンと車室内の距離の設定を伝達特性入力欄53に入力する。
各入力欄への入力を行なったユーザは、マウス2の操作を通じてコマンドボタン54をクリックする。このクリック操作に応じて、波形合成装置1の原波形選択部102〜D/Aコンバータ107はエンジン音の合成処理およびその出力処理を開始する。
要素別原波形データのセットが選択されると、周期変更部103は、記憶部100に記憶されている走行状態値が示すエンジン回転数に合わせてそのセットの全要素別原波形データの周期を伸縮して第1複製処理部1051へそれぞれ供給する。例えば、走行状態入力欄51にて入力された回転数が620rpmである場合、原波形選択部102により600rpmに対応する要素別原波形データのセットが選択され、周期変更部103は600/620の伸縮率でそのセットの要素別原波形データの周期を伸縮することにより、各々が620rpmに対応する要素別原波形データを取得する。そして、吸気音の要素別原波形データを第1複製処理部1051aへ、エンジン爆発音の要素別原波形データを第1複製処理部1051bへ、排気音の要素別原波形データを第1複製処理部1051cへそれぞれ供給する。
第1周波数特性変更部1052は、第1複製処理部1051から供給される要素別原波形データの周波数特性を第1対応関係DB群1002の周波数変更パラメータに応じて変更した上で時間揺らぎ付加部1053へ供給する。周波数特性の変更の手順の詳細について、吸気音の要素別原波形データの供給を受ける第1周波数特性変更部1052aを例にとって説明する。
エンジン爆発音の要素別原波形データの供給を受ける第1周波数特性変更部1052b、及び排気音の要素別原波形データの供給を受ける第1周波数特性変更部1052cによる周波数特性の変更の手順も、DBの第3欄、第4欄の周波数変更パラメータを用いる点を除いて同様である。
まず、時間揺らぎ付加部1053aは、−1〜+1の間で変化する乱数列を生成すると共に、記憶部100に記憶された物理的属性値と対応するレコードを第2対応関係DB群1003を成す各DBからそれぞれ特定し、特定したレコードの第2欄のフィールドに記憶されている時間揺らぎのパラメータをそれぞれ読み出す。次に、時間揺らぎ付加部1053aは、読み出した時間揺らぎのパラメータを掛け合わせ、掛け合せにより求まった値を乱数列を成す各乱数値に乗じた上で1を加える。その結果、例えば、掛け合わせにより求まった時間揺らぎの程度が3%である場合、−0.97〜+1.03の間で変化する乱数列が生成されることになる。
更に、時間揺らぎ付加部1053aは、自身に順次供給される要素別原波形データを、乱数列に含まれる乱数の各々に応じた伸縮率で時間方向に伸縮する処理を繰り返していく。例えば、乱数列として0.982、1.021、0.997、・・・が生成された場合、第1周波数特性変更部1052から供給される要素別連続波形データを時間方向に0.982倍、1.021倍、0.997倍、・・・に伸縮した一連の要素別連続波形データが得られることになる。
エンジン爆発音の要素別原波形データの供給を受ける時間揺らぎ付加部1053b、及び排気音の要素別原波形データの供給を受ける時間揺らぎ付加部1053cによる時間揺らぎの付加の手順も、DBの第3欄、第4欄の時間揺らぎのパラメータを用いる点を除いて同様である。
まず、振幅揺らぎ付加部1054aは、−1〜+1の間で変化する乱数列を生成すると共に、記憶部100に記憶された物理的属性値と対応するレコードを第2対応関係DB群1003を成す各DBからそれぞれ特定し、特定したレコードの第2欄のフィールドに記憶されている振幅揺らぎのパラメータを読み出す。次に、振幅揺らぎ付加部1054aは、読み出した振幅揺らぎのパラメータを掛け合わせ、掛け合せにより求まった値を乱数列を成す各乱数値に乗じた上で1を加える。そして、自身に順次供給される要素別原波形データを、その乱数列に含まれる乱数の各々に応じた伸縮率で振幅方向に伸縮する処理を繰り返していく。
エンジン爆発音の要素別原波形データの供給を受ける振幅揺らぎ付加部1054b、及び排気音の要素別原波形データの供給を受ける振幅揺らぎ付加部1054cによる振幅揺らぎの付加の手順も、DBの第3欄、第4欄の振幅揺らぎのパラメータを用いる点を除いて同様である。
第1重合処理部1057は、連続処理部から供給される、吸気音、エンジン爆発音、排気音の各々の連続波形データをミキシングして得た単気筒連続波形データを第2複製処理部1061へ供給する。
第2複製処理部1061は、第1重合処理部1057から供給される単気筒連続波形データを3回に渡って複製することにより第1乃至第4の単気筒連続波形データを生成する。そして、第1の単気筒連続波形データを第2重合処理部1063へ供給する一方、第2の単気筒連続波形データをオフセット付加部1062aへ、第3の単気筒連続波形データをオフセット付加部1062bへ、第4の単気筒連続波形データをオフセット付加部1062cへそれぞれ供給する。
まず、オフセット付加部1062aは、記憶部100に記憶された物理的属性値と対応するレコードを第4対応関係DB群1005を成す各DBからそれぞれ特定し、特定したレコードの第2欄のフィールドに記憶されている各オフセットパラメータを読み出す。上述したように、第4対応関係DB群1005の各DBから読み出されるオフセットパラメータは、(I1,I2,I3)=(0.97,1.05,1.02)のような形式の値となっている。オフセット付加部1062aは、読み出したオフセットパラメータのI1の値を掛け合わせ、掛け合せにより求まったI1と、単発音に相当する音波形の長さを気筒数の4で序した長さであるDの積を求める。更に、その積の時間長に相当する振幅0の波形データを、第2複製処理部1061から供給される単気筒連続波形データの先頭に挿入する。その結果、第2の単気筒連続波形データの発音開始タイミングは、I1×Dのオフセット分の時間長だけ第1の単気筒連続波形データから遅れることになる。
同様に、オフセット付加部1062bは、(I1+I2)×Dの時間長に相当する振幅0の波形データを第3の単気筒連続波形データの先頭に挿入し、オフセット付加部1062cは、(I1+I2+I3)×Dの時間長に相当する振幅0の波形データを第4の単気筒連続波形データの先頭に挿入する。
また、本実施形態においては、エンジン音そのものの音波形ではなく、エンジン音を成す吸気音、爆発音、排気音の個別の音波形を用意しておき、設計条件の入力内容に応じてそれらの音波形を好適に重ね合わせることによりエンジン音の合成を行っている。よって、実機のエンジンにより近いリアルなエンジン音を聴取させることができる。
本願発明は、種々の変形実施が可能である。
上記実施形態において、要素別原波形DB1001には、吸気音、エンジン爆発音、排気音の各音要素毎の波形データの各セットが収録され、それらのセットを成す各波形データの各々に個別の周波数特定の変更と揺らぎの付加を施してからミキシングを行うことにより、単発音に相当する波形データを合成するようになっていた。これに対し、吸気音、エンジン爆発音、排気音とは別の音要素の波形データを要素別原波形DBに収録し、その波形データをも含めた合成を行なってもよい。
上記実施形態にかかる波形合成装置1は、4気筒4ストロークエンジンのエンジン音のシミュレーションを想定したものであり、その多気筒連続波形生成部106の第2複製処理部1061は、単気筒連続波形生成部105から供給される単気筒連続波形データを3回に渡って複製することにより、各々が1つの気筒に対応する第1乃至第4の単気筒連続波形データを生成するようになっていた。これに対し、第2複製処理部1061の複製回数を変えることにより、他の気筒数のエンジンのエンジン音のシミュレーションを行えるようにしてもよい。また、多気筒連続波形生成部106自体を有しないシステム構成をとることにより、単気筒エンジンのエンジン音のシミュレーションを行うことも可能である。
上記実施形態において、多気筒連続波形生成部106の第2複製処理部1061は、単気筒連続波形生成部105から単気筒連続波形データが供給されると、その単気筒連続波形データと全く同じ波形データを複製してオフセット付加部1062へ供給するようになっていた。これに対し、供給された単気筒連続波形データと全く同じでないながらもそれと所定の相関を持つ波形データを生成してオフセット付加部1062へ供給するようにしてもよい。
上記実施形態において、第1対応関係DB群1002には、アクセル開度とエンジン回転数という、走行状態を決定付ける2つの属性に応じた周波数変更パラメータが収録されており、第1周波数特性変更部1052aはそれら2つの属性の入力内容に応じてDB群1002から読み出したパラメータを基に周波数特性の変更を行っていた。これに対し、走行状態を決定付ける他の属性に応じたパラメータを第1対応関係DB群1002に収録し、そのパラメータの内容を反映させた周波数特性の変更を第1周波数特性変更部1052に行わせてもよい。また、第3対応関係DB群1004には、車室内遮音性とエンジンと車室内の距離という、エンジンから車室内に至る音の伝達特性を決定付ける2つの属性に応じた周波数変更パラメータが収録されており、第2周波数特性変更部1055はそれら2つの属性の入力内容に応じてDB群1004から読み出したパラメータを基に周波数特性の変更を行っていた。これに対し、伝達特性を決定付ける他の属性に応じたパラメータを第3対応関係DB群1004に収録し、そのパラメータの内容を反映させた周波数特性の変更を第2周波数特性変更部1055に行わせてもよい。
Claims (8)
- 車両に搭載されるエンジンのエンジン音を成す各音要素の音要素波形をそれぞれ示す要素別原波形データを取得する取得手段と、
前記取得された各要素別原波形データの各々が示す音要素波形に前記エンジンから前記車両内に至る音の伝達特性に応じた周波数特性の変更を加える周波数特性変更手段と、
前記周波数特性変更手段による周波数特性の変更を経た各音要素波形を重ね合わせることによってエンジン音の波形を生成する波形重合手段と
を備えた波形合成装置。 - 車両に搭載されるエンジンのエンジン音を成す各音要素の音要素波形をそれぞれ示す要素別原波形データを取得する取得手段と、
前記取得された各要素別原波形データの各々が示す音要素波形をそれぞれ複数連続させることにより音要素連続波形を生成する連続波形生成手段と、
前記連続波形生成手段により生成された音要素連続波形の各々に車両の走行状態に応じた周波数特性の変更をそれぞれ加える第1の周波数特性変更手段と、
前記第1の周波数特性変更手段による周波数特性の変更を経た音要素連続波形の各々に、前記エンジンの物理的属性に応じた揺らぎ幅を持つ振幅方向もしくは時間方向の伸縮をそれぞれ付加する揺らぎ付加手段と、
前記揺らぎ付加手段により振幅方向もしくは時間方向の伸縮の付加された音要素連続波形の各々に前記エンジンから前記車両内に至る音の伝達特性に応じた周波数特性の変更をそれぞれ加える第2の周波数特性変更手段と、
前記第2の周波数特性変更手段による周波数特性の変更を経た各音要素連続波形を重ね合わせることによってエンジン音の波形を生成する波形重合手段と
を備えた波形合成装置。 - 請求項2に記載の波形合成装置において、
前記エンジンから前記車両内に至る音の伝達特性をそれぞれ示す各伝達特性値を、前記第2の周波数特性変更手段による周波数特性の変更内容を決定付ける音要素毎のパラメータの各セットと対応付けて記憶した記憶手段と、
伝達特性値を入力する入力手段と
を更に備え、
前記第2の周波数特性変更手段は、
前記入力された伝達特性値と対応付けて前記記憶手段に記憶されているパラメータのセットを読み出し、読み出したセットを成す音要素毎のパラメータの各々を前記揺らぎ付加手段による振幅方向もしくは時間方向の伸縮の付加を経た音要素連続波形の各々に作用させることによって、それらの音要素連続波形に個別の周波数特性の変更を付加する
波形合成装置。 - 請求項2に記載の波形合成装置において、
前記エンジンの物理的属性をそれぞれ示す各物理的属性値を、前記揺らぎ付加手段により付加される振幅方向もしくは時間方向の伸縮の揺らぎ幅を決定付ける音要素毎のパラメータの各セットと対応付けて記憶した記憶手段と、
物理的属性値を入力する入力手段と
を更に備え、
前記揺らぎ付加手段は、
前記入力された物理的属性値と対応付けて前記記憶手段に記憶されているパラメータのセットを読み出し、読み出したセットを成す音要素毎のパラメータの各々を前記第1の周波数特性変更手段による周波数特性の変更を経た音要素連続波形の各々に作用させることによって、それらの音要素連続波形に振幅方向もしくは時間方向の伸縮を個別に付加する
波形合成装置。 - 請求項2に記載の波形合成装置において、
車両の走行状態をそれぞれ示す走行状態値を、前記第1の周波数特性変更手段による周波数特性の変更内容を決定付ける音要素毎のパラメータの各セットと対応付けて記憶した記憶手段と、
走行状態値を入力する入力手段と
を更に備え、
前記第1の周波数特性変更手段は、
前記入力された走行状態値と対応付けて前記記憶手段に記憶されているパラメータのセットを読み出し、読み出したセットを成す音要素毎のパラメータの各々を前記連続波形生成手段により生成された音要素連続波形の各々に作用させることによって、それらの音要素連続波形に個別の周波数特性の変更を付加する
波形合成装置。 - 請求項2乃至5に記載の波形合成装置において、
前記波形重合手段は、
前記生成したエンジン音の波形と同一の又はその波形と所定の相関を持つ複数の波形を生成し、当該エンジン音の波形と前記生成した複数の各波形を時間方向の所定のオフセットを持たせた上で重ね合わせることにより多気筒エンジンのエンジン音を生成する
波形合成装置。 - コンピュータに、
車両に搭載されるエンジンのエンジン音を成す各音要素の音要素波形をそれぞれ表す要素別原波形データを取得する取得機能と、
前記取得された各要素別原波形データの各々が示す音要素波形に前記エンジンから前記車両内に至る音の伝達特性に応じた周波数特性の変更を加える周波数特性変更機能と、
前記周波数特性変更機能による周波数特性の変更を経た各音要素波形を重ね合わせることによってエンジン音の波形を生成する波形重合機能と
を実現させるプログラム。 - コンピュータに、
車両に搭載されるエンジンのエンジン音を成す各音要素の音要素波形をそれぞれ表す要素別原波形データを取得する取得機能と、
前記取得された各要素別原波形データの各々が示す音要素波形を複数連続させることにより音要素連続波形をそれぞれ生成する連続波形生成機能と、
前記連続波形生成機能により生成された音要素連続波形の各々に車両の走行状態に応じた周波数特性の変更をそれぞれ加える第1の周波数特性変更機能と、
前記第1の周波数特性変更機能による周波数特性の変更を経た音要素連続波形の各々に、前記エンジンの物理的属性に応じた揺らぎ幅を持つ振幅方向もしくは時間方向の伸縮をそれぞれ付加する揺らぎ付加機能と、
前記揺らぎ付加機能による振幅方向もしくは時間方向の伸縮の付加を経た音要素連続波形の各々に前記エンジンから前記車両内に至る音の伝達特性に応じた周波数特性の変更をそれぞれ加える第2の周波数特性変更機能と、
前記第2の周波数特性変更機能による周波数特性の変更を経た各音要素連続波形を重ね合わせることによってエンジン音の波形を生成する波形重合機能と
を実現させるプログラム。
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