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JP2007130541A - メタクリル酸製造用触媒、その製造方法、およびメタクリル酸の製造方法 - Google Patents

メタクリル酸製造用触媒、その製造方法、およびメタクリル酸の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】触媒性能が高いメタクリル酸製造用触媒、流動性が良い乾燥粉が得られ、かつ触媒性能が高い触媒が得られるメタクリル酸製造用触媒の製造方法、および、メタクリル酸を高収率で製造できるメタクリル酸の製造方法を提供する。
【解決手段】リンおよびモリブデンを含む溶液またはスラリーを濃縮して濃縮液を得る工程と、濃縮液の粘度を低下させる工程と、粘度が低下した濃縮液を再濃縮する工程と、再濃縮した濃縮液を乾燥する工程とを有する製造方法によって得られたメタクリル酸製造用触媒を用いて、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造するためのメタクリル酸製造用触媒、その製造方法、およびメタクリル酸製造用触媒を用いたメタクリル酸の製造方法に関する。
メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造するメタクリル酸製造用触媒としては、モリブデンおよびリンを含むヘテロポリ酸系触媒が知られている。メタクリル酸製造用触媒の製造方法としては、例えば、以下の方法が提案されている。
(1)触媒スラリー中のモリブデン原子12モルに対して6〜17モルのアンモニアを用いるメタクリル酸製造用触媒の製造方法(特許文献1)。
(2)濃縮前の触媒スラリーとして、0.05〜2.0μmの粒子径を有する粒子の数が全粒子数に対し10%以下である粒度分布を有する触媒スラリーを調製するメタクリル酸製造用触媒の製造方法(特許文献2)。
しかしながら、(1)、(2)の製造方法によって得られた触媒は、乾燥によって得られた粉末状の触媒の流動性、および粉末状の触媒を成形した成形触媒の性能の観点から、工業触媒として不充分である。
特開2003−154273号公報 特開2005−066476号公報
(1)、(2)の製造方法によって得られた触媒の流動性および触媒性能に問題がある理由としては、以下のことが考えられる。
触媒スラリーは、例えば、つぎのように調製される。モリブデン化合物を溶媒または分散液(以下、溶媒と記す。)に溶解または懸濁させたA液と、モリブデン以外の触媒成分元素(酸素を除く)の化合物、またはそれを溶媒に溶解または懸濁させたものとを混合してB液とし、該B液と、アンモニアおよび/またはアンモニア化合物を溶媒に溶解または懸濁させたC液とを混合して触媒スラリーを得る。
B液とC液とを混合するときの温度が80℃を超えると、乾燥によって得られた粉末状の乾燥物(以下、乾燥粉と記す。)の流動性が向上するが、触媒の性能は低下する。また、B液とC液とを混合するときの温度が80℃以下では、触媒の性能は向上するはずであるが、実際には、乾燥粉の流動性が低下するため、成形性が悪くなり、その結果、成形触媒の性能が低下する。
よって、流動性が良い乾燥粉が得られ、かつ触媒性能が高い触媒が得られるメタクリル酸製造用触媒の製造方法が望まれている。
本発明の目的は、触媒性能が高いメタクリル酸製造用触媒、流動性が良い乾燥粉が得られ、かつ触媒性能が高い触媒が得られるメタクリル酸製造用触媒の製造方法、および、メタクリル酸を高収率で製造できるメタクリル酸の製造方法を提供することにある。
本発明のメタクリル酸製造用触媒の製造方法は、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造する際に用いられる、リンおよびモリブデンを含む触媒の製造方法であって、リンおよびモリブデンを含む溶液またはスラリーを濃縮して濃縮液を得る工程と、濃縮液の粘度を低下させる工程と、粘度が低下した濃縮液を再濃縮する工程と、再濃縮した濃縮液を乾燥する工程とを有することを特徴とする。
本発明のメタクリル酸製造用触媒は、本発明のメタクリル酸製造用触媒の製造方法で製造された触媒であることを特徴とする。
本発明のメタクリル酸の製造方法は、本発明のメタクリル酸製造用触媒の製造方法で製造されたメタクリル酸製造用触媒を用いて、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造することを特徴とする。
本発明のメタクリル酸製造用触媒は、触媒性能が高い。
本発明のメタクリル酸製造用触媒の製造方法によれば、流動性が良い乾燥粉が得られ、かつ触媒性能が高い触媒が得られる。
本発明のメタクリル酸の製造方法によれば、メタクリル酸を高収率で製造できる。
本発明のメタクリル酸製造用触媒としては、式(1)の組成式で表される複合酸化物が好ましい。
Moab Cucdefg (1)
式中、Mo、P、Cu、VおよびOは、それぞれモリブデン、リン、銅、バナジウムおよび酸素を表し、Xは、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を表し、Yは、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、クロム、タングステン、マンガン、銀、ホウ素、ケイ素、アルミニウム、ガリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマス、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、インジウム、イオウ、セレン、テルル、ランタンおよびセリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を表し、a、b、c、d、e、fおよびgは、各元素の原子比を表し、a=12のとき、0.1≦b≦3、0.01≦c≦3、0.01≦d≦3、0.01≦e≦3、0≦f≦3であり、gは前記各元素の原子比を満足するのに必要な酸素の原子比である。
本発明のメタクリル酸製造用触媒は、例えば、リンおよびモリブデンを含む溶液またはスラリーを調製する工程(調製工程)と、該溶液またはスラリーを濃縮して濃縮液を得る工程(濃縮工程)と、濃縮液の粘度を低下させる工程(低粘度化工程)と、粘度が低下した濃縮液を再濃縮する工程(再濃縮工程)と、再濃縮した濃縮液を乾燥して乾燥粉を得る工程(乾燥工程)と、必要に応じて乾燥粉を成形して成形品を得る工程(成形工程)と、乾燥粉または成形品を焼成する工程(焼成工程)とを経て製造される。
<調製工程>
リンおよびモリブデンを含む溶液またはスラリーは、モリブデン化合物を溶媒に溶解または懸濁させたA液と、モリブデン以外の元素(酸素を除く)の化合物、またはそれを溶媒に溶解または懸濁させたものとを混合してB液とし、該B液と、アンモニアおよび/またはアンモニア化合物を溶媒に溶解または懸濁させたC液とを混合することによって調製される。
(A液の調製)
A液は、モリブデン化合物(触媒原料)を溶媒に溶解または懸濁させて調製する。A液には、モリブデン以外の触媒成分元素(酸素を除く)の単体あるいは化合物、つまり、他の触媒原料が含まれないことが好ましい。
モリブデン化合物としては、例えば、三酸化モリブデン、モリブデン酸等が挙げられる。モリブデン化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
A液の溶媒としては、水が好ましい。
A液中のモリブデンと溶媒との含有比(質量比)は、通常、1:0.1〜1:100である。
A液の状態は特に制限されず、モリブデン化合物が完全に溶媒に溶解した溶液であってもよく、一部または全量が溶媒に懸濁したスラリーであってもよい。
A液は、通常、常温で攪拌して調製すればよいが、必要に応じて100℃程度まで加熱して調製してもかまわない。
(B液の調製)
B液は、モリブデン以外の触媒成分元素(酸素を除く)の化合物(触媒原料)、またはそれを溶媒に溶解または懸濁させたものと、A液とを混合したものである。
モリブデン以外の触媒成分元素の化合物としては、各元素の硝酸塩、炭酸塩、水酸化物等が挙げられる。
リン化合物としては、正リン酸、五酸化リン、リン酸アンモニウム等が挙げられる。
バナジウム化合物としては、五酸化バナジウム、メタバナジン酸アンモニウム等が挙げられる。
セシウム化合物としては、硝酸セシウム、炭酸セシウム、水酸化セシウム等が挙げられる。
触媒原料は、各元素について、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
混合方法としては、例えば、A液が入った容器に、モリブデン以外の触媒成分元素(酸素を除く)の化合物、またはそれを溶媒に溶解または懸濁させたものを順次加えていく方法;モリブデン以外の触媒成分元素(酸素を除く)の化合物、またはそれを溶媒に溶解または懸濁させたものに、A液を加える方法;容器に、A液と、モリブデン以外の触媒元素(酸素を除く)の化合物、またはそれを溶媒に溶解または懸濁させたものとを、同時に流し込む方法等が挙げられる。混合は、通常、攪拌しながら行う。
混合する際の溶液の温度は、100℃以下が好ましい。また、得られた溶液またはスラリーに対して、適宜、加熱処理等を施してもよい。加熱処理の温度は、100℃未満が好ましいが、必要に応じてオートクレーブ等を用いて100℃以上にしてもよい。加熱処理時間は、適宜決めればよい。
(C液の調製)
C液は、アンモニアおよび/またはアンモニア化合物を溶媒に溶解あるいは懸濁させて調製する。C液には、アンモニアおよびアンモニア化合物の他に、モリブデン以外の触媒成分元素(酸素を除く)の化合物も全量でなければ含んでいてもかまわないが、これらを含まないことが好ましい。
アンモニアおよびアンモニア化合物としては、例えば、アンモニア(アンモニア水)、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硝酸アンモニウム等が挙げられる。アンモニアおよび/またはアンモニア化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
C液の溶媒としては、水が好ましい。
C中のアンモニアおよびアンモニア化合物と溶媒との含有比(質量比)は、通常、1:0.1〜1:100である。
C液の状態は特に制限されず、アンモニアおよび/またはアンモニア化合物が完全に溶媒に溶解した溶液であってもよく、一部または全量が溶媒に懸濁したスラリーであってもよい。
C液は、通常、常温で攪拌して調製すればよいが、必要に応じてアンモニアが蒸散しない温度範囲で加熱して調製してもかまわない。
(B液とC液との混合)
B液とC液を混合し、触媒前駆体である、リンおよびモリブデンを含む溶液またはスラリーを調製する。
B液とC液の混合方法としては、例えば、B液が入った容器にC液を加える方法;C液が入った容器にB液を加える方法;容器にB液とC液とを同時に流し込む方法等が挙げられる。混合は、通常、攪拌しながら行う。混合の際、B液はできるだけ均一であることが好ましい。
B液とC液との混合比は、高いメタクリル酸収率の触媒が得られる点で、C液中のアンモニアおよびアンモニア化合物の量が、B液中のモリブデン原子12モルに対して、6モル以上が好ましく、7モル以上がより好ましく、また、17モル以下が好ましく、15モル以下がより好ましい。
B液とC液との混合液の状態は、溶液であってもよく、スラリーであってもよい。
混合の際の温度は、40〜80℃が好ましく、50〜75℃がより好ましい。加熱時間は適宜決めればよい。
<濃縮工程>
濃縮とは、リンおよびモリブデンを含む溶液またはスラリーを加熱し、該溶液またはスラリー中の溶媒等を揮発させる操作のことである。
濃縮は、例えば、リンおよびモリブデンを含む溶液またはスラリーの入った反応槽等の容器を、電気ヒーター、蒸気等の熱源を用いて加熱することで行える。加熱温度は、50〜120℃が好ましく、90〜110℃がより好ましい。
濃縮中は濃縮液の粘度を測定し、粘度が0.5〜1.3Pa・sの範囲、好ましくは0.6〜1.0Pa・sの範囲で濃縮を終了させる。濃縮終了時の濃縮液の粘度が0.5Pa・s未満または1.3Pa・sを超えると、乾燥工程においてドラムドライヤーを使用した場合、液だれにより粉末状の触媒の回収率が悪くなったり、乾燥不足により粉末状の触媒の水分濃度が上昇する等の問題が生じるだけでなく、粉末状の触媒の圧縮度も高く、流動性の悪いものとなる。粘度の測定は、連続または間欠のどちらでもよいが、5分以内毎に間欠的に測定することが好ましい。
濃縮の終了は、これ以上水分が揮発しないように濃縮槽等の容器に蓋をする等の操作により行うことができる。
<低粘度化工程>
濃縮液を低粘度化する方法としては、例えば、濃縮液を冷却し、その状態を保持する方法、溶媒を加える方法等がある。濃縮液の比重が以降の工程に適している場合には、低粘度化工程における比重の変化がないので、前者の方法が好ましい。一方、濃縮液の比重が適した比重より高い場合は、後者の方法を採用することもできる。低粘度化した濃縮液の比重は、後述する再濃縮工程で得られる濃縮液(以下、再濃縮液と記す。)の比重に影響する。そして再濃縮液の粘度と比重は、乾燥工程で得られる乾燥粉の流動性等に影響することがあるので、低粘度化の方法はこれらの条件を考慮して選択される。
前者の方法の場合、冷却温度は、濃縮工程の温度より低ければよく、50〜80℃が好ましい。冷却方法としては、例えば、濃縮液の入った容器外側に水を流す方法等が挙げられる。保持時間は、0.5〜24時間が好ましく、2〜5時間がより好ましい。
<再濃縮工程>
再濃縮は、前述の濃縮工程と同様の方法で行うことができる。再濃縮時の濃縮液の温度、再濃縮終了時の再濃縮液の粘度も前述の濃縮工程と同様の範囲とすればよい。また、再濃縮液の比重は、1.4〜2.0×103 kg/m3 が好ましく、1.5〜1.9×103 kg/m3 がより好ましい。
再濃縮の終了は、これ以上水分が揮発しないように反応槽等の容器に蓋をする等の操作により行うことができる。
<乾燥工程>
乾燥方法としては、例えば、ドラム乾燥法、気流乾燥法、蒸発乾固法、噴霧乾燥法等の種々の方法が挙げられる。乾燥に使用する乾燥機は、特に限定されない。本発明においては、ドラムドライヤーを用いたドラム乾燥法が好ましい。
乾燥温度、時間等の乾燥条件は、特に限定されずない。乾燥条件を適宜変えることによって、乾燥粉を得ることができる。
このようにして、流動性の良い乾燥粉が得られる。流動性は、圧縮度によって評価できる。圧縮度は、打錠成形を行う場合、40以下が好ましい。
圧縮度(以下、Cp と記す。)は、粉体の流動性を表す指数で、一定容積の容器に粉体を静かに充填し、あふれた部分を擦り切った後の粉体の質量と粉体の体積との比より求められる疎充填のかさ密度(以下、ρa と記す。)と、一定容積の容器に粉体を静かに充填し、粉体が充填された容器を上下にタッピングし一定のタッピング後、あふれた部分を擦り切った後の粉体の質量と粉体の体積との比より求められる密充填のかさ密度(以下、ρp と記す。)の差から以下のように求められ、この値が大きくなる程、粉体の流動性が低くなる。
p =(ρp −ρa )/ρp ×100
<成形工程>
乾燥粉は、必要により粉砕した後、成形せずにそのまま次の焼成を行ってもよいが、通常は、成形して成形品とした後、焼成を行う。
成形方法としては、公知の乾式または湿式の成形法が挙げられる。シリカ等の担体等を含めずに成形することが好ましい。成形方法としては、例えば、打錠成形、プレス成形、押出成形、造粒成形等が挙げられる。
成形品の形状は、特に限定されず、例えば、円柱状、リング状、球状等が挙げられる。
成形に際しては、公知の添加剤、例えば、グラファイト、タルク等を少量添加してもよい。
<焼成工程>
乾燥粉または成形品を焼成し、メタクリル酸製造用触媒を得る。焼成した乾燥粉は前記の成形工程で説明した方法で適宜成形する。
焼成方法、焼成条件は、公知の処理方法および条件を適用すればよい。焼成は、用いる触媒原料、触媒組成、調製法等によって異なるが、通常、空気等の酸素含有ガス流通下および/または不活性ガス流通下で、200〜500℃、好ましくは300〜450℃で、0.5時間以上、好ましくは1〜40時間で行う。ここで、不活性ガスとは、触媒の反応活性を低下させないような気体のことをいい、具体的には、窒素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。
<メタクリル酸の製造方法>
次に、本発明のメタクリル酸の製造方法について説明する。
本発明のメタクリル酸の製造方法は、上記のようにして得られる本発明のメタクリル酸製造用触媒の存在下でメタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造する方法である。
反応は、通常、固定床で行う。また、触媒層は1層でもよく、2層以上でもよい。メタクリル酸製造用触媒は、担体に担持させたものであってもよく、その他の添加成分を混合したものであってもよい。
本発明のメタクリル酸製造触媒を用いてメタクリル酸を製造する際には、メタクロレインおよび分子状酸素を含む原料ガスと、触媒とを接触させる。
原料ガス中のメタクロレイン濃度は、広い範囲で変えることができ、1〜20容量%が好ましく、3〜10容量%が特に好ましい。
原料ガス中の分子状酸素濃度は、メタクロレイン1モルに対して0.4〜4モルが好ましく、0.5〜3モルが特に好ましい。
分子状酸素源としては、経済性の点から、空気が好ましい。必要ならば、空気に純酸素を加えて分子上酸素を富化した気体等を用いてもよい。
原料ガスは、メタクロレインおよび分子状酸素源を、窒素、炭酸ガス等の不活性ガスで希釈したものであってもよい。
原料ガスに、水蒸気を加えてもよい。水の存在下で反応を行うことにより、メタクリル酸をより高収率で得ることができる。原料ガス中の水蒸気の濃度は、0.1〜50容量%が好ましく、1〜40容量%が特に好ましい。
原料ガスは、低級飽和アルデヒド等の不純物を少量含んでいてもよいが、その量はできるだけ少ないことが好ましい。
原料ガスとメタクリル酸製造用触媒との接触時間は、1.5〜15秒が好ましく、2〜5秒がより好ましい。
反応圧力は、大気圧〜数気圧が好ましい。
反応温度は、230〜450℃が好ましく、250〜400℃が特に好ましい。
以上説明した本発明のメタクリル酸製造用触媒の製造方法にあっては、リンおよびモリブデンを含む溶液またはスラリーを濃縮した後、一旦冷却、保持して、濃縮液の粘度を低下させ、その後、冷却、保持する前と同程度の粘度になるまで再び加熱し濃縮しているため、より流動性に優れた乾燥粉が得られる。その結果、ホッパーのブリッジ形成等の粉体輸送上の問題が解決され、また、打錠成形、プレス成形用等の型への粉体混入が短時間で容易に可能となり、さらには、メタクリル酸が高収率で得られる成形触媒が得られる。よって、本発明の製造方法により得られるメタクリル酸製造用触媒は、メタクリル酸の収率が高い。また、この触媒を用いることによって、メタクリル酸が高収率で得られる。
以下、実施例および比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例中の「部」は質量部を意味する。
触媒組成は、触媒成分の原料仕込み量から求めた。
反応原料ガスおよび生成物の分析は、ガスクロマトグラフィーを用いて行った。
ガスクロマトグラフィーの結果から、メタクロレインの転化率、メタクリル酸の選択率、およびメタクリル酸の単流収率を下記式にて求めた。
メタクロレインの転化率(%)=(B/A)×100
メタクリル酸の選択率(%)=(C/B)×100
メタクリル酸の単流収率(%)=(C/A)×100
式中、Aは供給したメタクロレインのモル数、Bは反応したメタクロレインのモル数、Cは生成したメタクリル酸のモル数である。
圧縮度Cp の測定は、マルチテスターMT−1001型(株式会社セイシン企業製)を用いて行った。測定は、100(cc)のセル容器にロートを通して粉体を落下させて充填した後にあふれた部分を擦り切って、充填された粉体の質量とセル容器の体積とから疎充填のかさ密度(ρa )を求め、同じく、100(cc)のセル容器にロートを通して粉体を落下させて充填した後にタッピングストローク18(mm)、タッピング速度1(回/秒)で180回タッピングを行った後、セルからあふれた部分を擦り切って、同じく充填された粉体の質量とセル容器の体積とから密充填のかさ密度(ρp )を求め、以下の式よりCp を求めた。
p =(ρp −ρa )/ρp ×100
スラリーの粘度(Pa・s)は、スラリーの一部をサンプリングし、固形分が分離しないように充分に攪拌を行った後にB型粘度計を用いて測定した。
スラリーの比重(kg/m3 )は、スラリーの一部をサンプリングし、体積(m3 )と質量(kg)を測定し、質量を体積で除して算出した。
乾燥粉の水分含有率はケット水分計を用いて測定した。
〔実施例1〕
(調製工程)
純水400部に三酸化モリブデン100部を加えてA液を得た。
A液に85質量%リン酸水溶液7.3部、五酸化バナジウム4.2部、酸化銅0.9部、酸化鉄0.2部を加え、還流下で5時間攪拌した。この液を50℃まで冷却した後、硝酸セシウム9.0部を純水30部に溶解した溶液を滴下し15分間攪拌してB液を得た。
B液を50℃に維持したまま、これに29質量%アンモニア水(C液)37.4部を滴下した後、15分間攪拌し、水性スラリーを得た。
(濃縮工程)
水性スラリーを101℃まで加熱し、攪拌しながら濃縮を開始した。水性スラリーの粘度が0.70Pa・sになった時点で加熱を停止し、これ以上水分が揮発しないよう水性スラリーの入った容器に蓋をした。濃縮に有した時間は2時間であった。また、濃縮液の比重は1.56×103 kg/m3 であった。
(低粘度化工程)
容器に蓋をしたままで濃縮された水性スラリー(濃縮液)を70℃まで冷却した後、この状態で2時間保持した。保持後の濃縮液の粘度は0.40Pa・sであった。
(再濃縮工程)
容器の蓋を外した後、濃縮液を101℃まで加熱し、攪拌しながら再濃縮を開始した。濃縮中は温度を101℃に保ち、濃縮液の粘度が0.70Pa・sになった時点で加熱を停止し、これ以上水分が揮発しないよう濃縮液の入った容器に蓋をした。再濃縮に要した時間は0.5時間であった。また、濃縮液の比重は1.64×103 kg/m3 であった。
(乾燥工程)
濃縮液をドラムドライヤーで120℃にて乾燥して乾燥粉を得た。乾燥粉の水分含有率は1.0質量%であった。圧縮度は表1に示す。
(成形工程)
乾燥粉100部に対してグラファイト2部を添加した後、打錠成形機で外径5mm、内径2mm、長さ5mmのリング状に成形した。乾燥粉の流動性は良く、成形性は良好であった。
(焼成工程)
得られた成形品を、空気流通下、380℃にて6時間焼成して、メタクリル酸製造用触媒を得た。得られた触媒組成(ただし酸素は省略した。以下同じ。)は、Mo121.5Cu0.150.6Cs0.9As0.7Fe0.02であった。
(メタクリル酸の製造)
メタクリル酸製造用触媒を反応管に充填し、メタクロレイン5容量%、酸素10容量%、水蒸気30容量%、窒素55容量%の混合ガスを、常圧下、反応温度290℃、接触時間3.6秒で通じ反応を行った。反応成績を表1に示す。
〔比較例1〕
粘度低下工程および再濃縮工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にしてメタクリル酸製造用触媒を製造し、メタクリル酸の製造を行った。結果を表1に示す。乾燥粉の流動性は悪く、成形性が悪かった。また、実施例1に比べメタクリル酸の収率も悪かった。
〔比較例2〕
B液とC液との混合温度を85℃としたこと、およびそれにより乾燥粉の流動性が良くなったため、粘度低下工程および再濃縮工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にしてメタクリル酸製造用触媒を製造し、メタクリル酸の製造を行った。結果を表1に示す。なお、濃縮に有した時間は2.5時間であった。乾燥粉の流動性が良く、成形性が良好であったが、実施例1に比べメタクリル酸の収率は悪かった。
Figure 2007130541
本発明のメタクリル酸製造用触媒は、粉末状のときには流動性に優れ、かつ触媒性能が高く、メタクリル酸の製造に有用である。

Claims (3)

  1. メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造する際に用いられる、リンおよびモリブデンを含む触媒の製造方法であって、
    リンおよびモリブデンを含む溶液またはスラリーを濃縮して濃縮液を得る工程と、
    濃縮液の粘度を低下させる工程と、
    粘度が低下した濃縮液を再濃縮する工程と、
    再濃縮した濃縮液を乾燥する工程と
    を有するメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
  2. 請求項1に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法で製造されたメタクリル酸製造用触媒。
  3. 請求項1に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法で製造されたメタクリル酸製造用触媒を用いて、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造するメタクリル酸の製造方法。
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