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JP2007123868A - 電磁干渉抑制体およびこれを用いる電磁障害抑制方法、並びにrfidデバイス - Google Patents

電磁干渉抑制体およびこれを用いる電磁障害抑制方法、並びにrfidデバイス Download PDF

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JP2007123868A
JP2007123868A JP2006268455A JP2006268455A JP2007123868A JP 2007123868 A JP2007123868 A JP 2007123868A JP 2006268455 A JP2006268455 A JP 2006268455A JP 2006268455 A JP2006268455 A JP 2006268455A JP 2007123868 A JP2007123868 A JP 2007123868A
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electromagnetic interference
fatty acid
interference suppressor
soft magnetic
acid ester
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JP2006268455A
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Kazuhisa Morita
和久 森田
Yoshiharu Kiyohara
好晴 清原
Takahiko Yoshida
隆彦 吉田
Shinichi Sato
真一 佐藤
Ryota Yoshihara
良太 吉原
Haruhide Go
東英 呉
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Nitta Corp
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Nitta Corp
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Abstract

【課題】高い表面抵抗率および難燃性を有すると共に、軟磁性金属の分散性および防錆性が向上した電磁干渉抑制体およびこれを用いる電磁障害抑制方法、並びにRFIDデバイスを提供する。
【解決手段】軟磁性金属と結合剤とを含有する電磁干渉抑制体61であって、さらに高級脂肪酸金属塩を含有する電磁干渉抑制体61である。高級脂肪酸金属塩はステアリン酸金属塩であるのが好ましく、ステアリン酸金属塩はステアリン酸亜鉛であるのが好ましい。電磁干渉抑制体61を電子機器類の内部または周辺部に配置して、不要電磁波の干渉によって生じる電磁障害を抑制する電磁障害抑制方法である。電磁干渉抑制体61をアンテナ素子と導体面との間に配置したRFIDデバイスである。
【選択図】図3

Description

本発明は、電子機器内の不要電磁波の干渉によって生じる電磁障害を抑制するための電磁干渉抑制体およびこれを用いる電磁障害抑制方法、並びにRFID(Radio Frequency IDentification)デバイスに関する。
近年、例えばテレビなどの家庭電気製品、パーソナルコンピューターなどのコンピューター、携帯電話などの移動体通信機器、医療機器など各種の電子機器が広く使われているが、これらの電子機器から放出される不要な電磁波(不要電磁波)が他の電子機器に影響を与え、誤作動を発生させるという問題(電磁障害)がある。
また、これら電子機器の高速化、軽量化、薄型化および小型化等に伴い、該電子機器内における回路基板への電子部品の実装密度が飛躍的に高くなっている。このため、電子部品間や回路基板間の電磁干渉に起因する電磁ノイズの増大に伴い、電子機器内の電子部品間や回路基板間でも不要電磁波による電磁障害が発生する。そのため、このような電子機器には、不要電磁波を取り除く電磁干渉抑制体が使用されている。
また、RFID(Radio Frequency Identification)と呼ばれるIC(Integrated Circuit)タグ機能を持つ携帯情報端末機に代表される様に、電磁誘導方式によるコイルアンテナを用いる無線通信が普及している。電磁誘導方式とは、13.56MHz帯や125KHz帯に代表される周波数の電波によりコイルアンテナ−コイルアンテナ間の無線通信手段である。例えば携帯情報端末機では、外部からの電磁波をシールドするために、金属筺体または金属めっきなどの導電化処理された筺体、すなわち導電化筐体を用いるが、この筺体内に配置されている送受信用のアンテナ素子が導電化筺体またはバッテリーなどの導電材料に近くに存在する状況が起きることがある。この場合、送受信時にアンテナ素子の周囲に発生する磁界の磁力線が導電化筺体または導電材料の表面、すなわち導体面(反射面)に平行に形成されて、導体面に渦電流が発生することになる。
この渦電流から発生する磁界が、送受信時に発生する電界を相殺する方向に形成されるので、通信に用いることができる磁界が大きく減衰し、電磁誘導方式におけるRFID通信距離が著しく短くなる。さらアンテナ近くに存在する金属により共振周波数がシフトすることから無線周波数を送受信することが困難になる。この場合の無線通信を改善する方法として、ICタグにおけるアンテナ素子と、導電化筐体または導電材料の表面(導体面)との間に、電磁干渉抑制体を配置する方法が知られている。
一般に、上記問題を解決する電磁干渉抑制体には、高い表面抵抗率が要求されると共に、電子機器等の発火や延焼を防止する上で、難燃性が要求される。例えば特許文献1には、所定の扁平型軟磁性金属材料(軟磁性金属)と、高分子結合剤とを主体とする電磁波吸収体(電磁干渉抑制体)が記載されている。この文献によると、結合剤として高分子結合剤を用いるので難燃性を確保できると記載されている。
しかしながら、前記高分子結合剤のみでは、難燃性は必ずしも十分ではない。また、特許文献1に記載されているような構成の電磁干渉抑制体では、金属材料等の充填剤が均一に分散しにくいので沈降しやすいという分散の問題と、長期間使用すると軟磁性金属が錆びるという問題がある。
一方、特許文献2には、熱可塑樹脂に金属繊維とクロム酸化物とを添加し、さらに脂肪酸アミドおよび金属石鹸からなる群より選択された滑剤の1種類以上を添加する電磁波遮蔽用組成物が記載されている。この文献によると、前記滑剤を添加することにより、金属繊維とクロム酸化物を均一に分散できると記載されている。
しかしながら、特許文献2には、軟磁性金属の分散性については特に記載がない。また、電磁干渉抑制体において、結合剤が架橋する場合には、特許文献2に記載されている脂肪酸アミドが添加されていると架橋阻害を起こす。
特開2003−229694号公報 特開昭61−190560号公報
本発明の課題は、高い表面抵抗率および難燃性を有すると共に、軟磁性金属の分散性および防錆性が向上した電磁干渉抑制体およびこれを用いる電磁障害抑制方法、並びにRFIDデバイスを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、軟磁性金属と結合剤とを含有する電磁干渉抑制体において、さらに高級脂肪酸金属塩を含有する場合には、高い抵抗率を有すると共に、前記軟磁性金属の分散性および防錆性が向上するという新たな知見と、高級脂肪酸金属塩による難燃性向上の相乗効果とを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明における電磁干渉抑制体は、以下の構成からなる。
(1)軟磁性金属と結合剤とを含有する電磁干渉抑制体であって、さらに高級脂肪酸金属塩を含有することを特徴とする電磁干渉抑制体。
(2)前記高級脂肪酸金属塩がステアリン酸金属塩である前記(1)記載の電磁干渉抑制体。
(3)前記ステアリン酸金属塩がステアリン酸亜鉛である前記(2)記載の電磁干渉抑制体。
(4)前記高級脂肪酸金属塩を軟磁性金属の総体積に対して0.5〜5体積%含有する前記(1)〜(3)のいずれかに記載の電磁干渉抑制体。
(5)さらに液状脂肪酸エステルを含有する前記(1)〜(4)のいずれかに記載の電磁干渉抑制体。
(6)前記液状脂肪酸エステルを軟磁性金属の総体積に対して0.5〜5体積%含有する前記(5)記載の電磁干渉抑制体。
(7)前記液状脂肪酸エステルが1価アルコールの脂肪酸エステルである前記(5)または(6)記載の電磁干渉抑制体。
(8)前記液状脂肪酸エステルが2−エチルヘキサノール脂肪酸エステル、又はパルミチン酸エチルへキシルである前記(5)〜(7)のいずれかに記載の電磁干渉抑制体。
(9)前記軟磁性金属が扁平形状である前記(1)〜(8)のいずれかに記載の電磁干渉抑制体。
本発明における電磁障害抑制方法は、前記(1)〜(9)のいずれかに記載の電磁干渉抑制体を電子機器類の内部または周辺部に配置して、不要電磁波の干渉によって生じる電磁障害を抑制することを特徴とする。
本発明におけるRFIDデバイスは、前記(1)〜(9)のいずれかに記載の電磁干渉抑制体をアンテナ素子と導体面との間に配置したことを特徴とする。
本発明によれば、軟磁性金属と結合剤とを含有する電磁干渉抑制体において、さらに高級脂肪酸金属塩を含有するので、高い表面抵抗率および難燃性を有すると共に、前記軟磁性金属の分散性および防錆性が向上するという効果がある。さらに液状脂肪酸エステルを含有する場合には、前記効果がより向上すると共に、加工性が向上する。
本発明の電磁干渉抑制体は、軟磁性金属と結合剤とを含有する。前記軟磁性金属の形状は、特に限定されないが、例えば扁平状、塊状、繊維状、球状、不定形状等が挙げられ、これらの形状のうち、特に扁平状(扁平形状)であるのが好ましい。軟磁性金属としては、例えば磁性ステンレス(Fe−Cr−Al−Si合金)、センダスト(Fe−Si−Al合金)、パーマロイ(Fe−Ni合金)、ケイ素銅(Fe―Cu―Si合金)、Fe−Si合金、Fe−Si−B(−Cu−Nb)合金、Fe−Ni−Cr―Si合金、Fe―Si−Cr合金、Fe―Si−Al−Ni−Cr合金等が挙げられる。また、フェライト若しくは純鉄粒子を用いてもよく、フェライトとしては、例えばMn−Znフェライト、Ni−Znフェライト、Mn−Mgフェライト、Mnフェライト、Cu−Znフェライト、Cu−Mg−Znフェライト等のソフトフェライト、あるいは永久磁石材料であるハードフェライト等が挙げられる。フェライトは金属酸化物であるが、金属成分を含有することで、本発明の軟磁性金属に含めることができる。フェライト以外の金属酸化物も同様である。上記で例示した各磁性材料は、それぞれ単体で使用するほか、複数をブレンドしてもよい。
扁平形状の軟磁性金属(フェライト、純鉄粒子)は、長径が1〜500μm、好ましくは5〜100μm、アスペクト比は2〜1000、好ましくは10〜400であるのがよい。塊状、繊維状、球状、不定形状等の軟磁性金属は、最も長い径が1μm〜5mm、好ましくは5〜500μmであるのがよい。また、軟磁性金属は、50〜1500PHR、好ましくは300〜800PHRの割合で含有されているのがよい。前記PHRおよび以下のPHRは、樹脂(結合剤)100重量部に対する重量部を意味する。
また、前記軟磁性金属の表面は、結合剤との親和性を向上させる上で、表面処理が施されていてもよく、該表面処理としては、例えばカップリング剤処理、樹脂等有機材料によるコーティング等が挙げられる。前記カップリング剤としては、例えばシランカップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤等が挙げられ、その使用量は、軟磁性金属総量に対して約0.01〜5重量%であるのがよい。また、前記樹脂等有機材料によるコーティングする樹脂等の有機材料としては、使用する結合剤と同じか、あるいは使用する結合剤との親和性に優れたエラストマー、樹脂等が挙げられる。このエラストマーおよび樹脂としては、下記結合剤で例示するものと同じものが挙げられる。樹脂等有機材料によるコーティング量は、軟磁性金属総量に対して約0.01〜10重量%であるのがよい。
前記結合剤としては、各種の有機重合体材料が使用可能であり、例えばゴム、熱可塑性エラストマー、各種プラスチック等の高分子材料が挙げられる。前記ゴムとしては、例えば天然ゴムのほか、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、エチレン−アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、水素添加ニトリルゴム(HNBR)等の合成ゴム単独、もしくはこれらのゴムを各種変性処理にて改質したものが挙げられる。
これらのゴムは単独で使用するほか、複数をブレンドして用いることができる。ゴムには加硫剤のほか、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、着色剤等の従来からゴムの配合剤として使用されていたものを適宜配合することができる。また、これら以外にも任意の添加剤を使用することができる。例えば、誘電率や導電率を制御するために所定量の誘電体(カーボンブラック、黒鉛、酸化チタン等)、放熱特性を付与するための熱伝導性材料(窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、アルミナ等)を、使用される電子機器内に発生する不要電磁波へのインピーダンスマッチングや、温度環境に応じて、材料設計して添加することができる。さらに加工助剤(滑剤、分散剤)を適宜選択して添加してもよい。
前記熱可塑性エラストマーとしては、例えば塩素化ポリエチレンのようなポリ塩化ビニル系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の各種熱可塑性エラストマーが挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
前記各種プラスチックとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、フッ素樹脂、アクリル系樹脂、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、ポリスルホン、ポリウレタン、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂等の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
また、上記で例示した各結合剤の低分子量のオリゴマータイプや液状タイプを採用してもよく、熱、圧力、紫外線、硬化剤、風乾等により、成型後にシート状になるものであれば任意の材料を選択することができる。
特に、本発明では、結合剤として水素添加ニトリルゴム(HNBR)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタンまたは塩素化ポリエチレンを使用するのが好ましい。水素添加ニトリルゴム(HNBR)およびエチレン−酢酸ビニル共重合体を使用すると、ハロゲンフリーでかつ耐熱性を付与でき、ポリウレタンや塩素化ポリエチレンを使用すると加工性が良好となる。
本発明の電磁干渉抑制体は、前記軟磁性金属および結合剤に加えて、さらに高級脂肪酸金属塩を含有する。該高級脂肪酸金属塩における高級脂肪酸としては、例えばパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられ、炭素数は14〜20であるのが好ましい。また、飽和高級脂肪酸および不飽和高級脂肪酸のいずれも使用可能であるが、安定性の上で飽和高級脂肪酸であるのが好ましい。前記高級脂肪酸金属塩の金属塩における金属としては、例えばカドミウム、バリウム、カルシウム、亜鉛、鉛、スズ、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、リン等が挙げられる。該高級脂肪酸金属塩は、それぞれ単体で使用するほか、複数をブレンドしてもよい。
本発明では、上記で例示した高級脂肪酸金属塩のうち、ステアリン酸金属塩であるのが好ましく、該ステアリン酸金属塩の具体例としては、例えばステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、ステアリン酸スズ、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
前記ステアリン酸金属塩はNa塩等の不純物がないものがよい。該金属塩の製造方法には、脂肪酸アルカリ石鹸と非アルカリ金属塩とを水中で反応させる複分解法と脂肪酸と金属の酸化物又は水酸化物を直接反応させる直接法とがあるが、原料そのものを直接反応させる直接法は、Na塩等の不純物を副生しないので好ましい。
特に、本発明では、上記で例示したステアリン酸金属塩のうち、ステアリン酸亜鉛であるのが好ましい。上記のような高級脂肪酸金属塩を含有すると、電磁干渉抑制体の表面抵抗率および難燃性が向上すると共に、前記軟磁性金属の分散性および防錆性が向上する。これらの効果が得られる理由としては、成形加工工程において高級脂肪酸金属塩が軟磁性金属の表面を被覆するように電磁干渉抑制体中に分散し、軟磁性金属の表面を緻密に被覆しながら、他の軟磁性金属との間に錯体状のネットワークを形成していることによるものと推察される。
前記高級脂肪酸金属塩は、前記軟磁性金属の総体積に対して0.5〜5体積%、好ましくは1〜4体積%含有するのがよい。この範囲内で高級脂肪酸金属塩を含有することにより、上記列挙した効果を得ることが出来た。すなわち電磁干渉抑制体の表面抵抗率および難燃性が向上すると共に、軟磁性金属の分散性および防錆性が向上する。これに対し、含有量が0.5体積%より少ないと、上記した効果が得られないおそれがあり、5体積%を超えると、電磁干渉抑制体の電磁障害抑制効果が低下するおそれがあるので好ましくない。
本発明の電磁干渉抑制体は、上記した軟磁性金属、結合剤および高級脂肪酸金属塩に加えて、さらに液状脂肪酸エステルを含有するのがよく、該液状脂肪酸エステルとしては、例えばオレイルアルコール、ステアリルアルコール等の一価のアルコール類および/またはネオペンチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類と、(高級)脂肪酸とのエステル化反応によって得られる液状の脂肪酸エステルが挙げられる。前記アルコール類および(高級)脂肪酸は、それぞれ単体で使用するほか、複数をブレンドして脱水反応させてもよい。また、液状脂肪酸エステルは常温で液状であるのがよい。
上記のような液状脂肪酸エステルとしては、例えば日本油脂(株)製の以下に示すものが挙げられる。
・同社製の商品名「H−381」:トリメチロールプロパントリオレート
・同社製の商品名「H327R」:脂肪酸エステル
・同社製の商品名「H−481R」:ペンタエリスリトールテトラオレート
・同社製の商品名「MB−876」:2−エチルヘキサノール脂肪酸エステル
・同社製の商品名「C−3371A」:トリメチロールプロパン脂肪酸縮合エステル
・同社製の商品名「ユニスターM182A」:オレイン酸メチルエステル
・同社製の商品名「MB816」:パルミチン酸2−エチルヘキシル
また、上記で例示した以外の液状脂肪酸エステルとしては、例えばトリメチロールプロパンジカプリン酸エステル等のトリメチロールプロパン脂肪酸エステル;トリメチロールプロパントリ脂肪酸エステル;ペンタエリスリトールオレイン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラオレイン酸エステル等のペンタエリスリトール脂肪酸エステル;ジペンタエリスリトールヘキサイソノナン酸エステル等のジペンタエリスリトール脂肪酸エステル;ネオペンチルグリコールジカプリン酸エステル、ネオペンチルグリコールジオレート等のネオペンチルグリコール脂肪酸エステル;オレイン酸2−エチルヘキシルエステル等が挙げられる。具体的にはリン酸エステル[(C1835O)nP(O)(OH)3-n]等の材料を用いることができる。これらの液状脂肪酸エステルは、それぞれ単体で使用するほか、複数をブレンドしてもよい。また本発明の液状脂肪酸エステルは液状脂肪酸エステル塩であってもよい。また部分的に塩になっているものでもよい。
本発明では、上記で例示した液状脂肪酸エステルのうち、1価アルコールの脂肪酸であるのが好ましく、該1価アルコールの脂肪酸の具体例としては、例えば上記した2−エチルヘキサノール脂肪酸エステル、パルミチン酸2−エチルヘキシルや、その他に、オレイン酸2−エチルへキシルエステル等が挙げられる。特に、本発明では、上記で例示した1価アルコールの脂肪酸のうち、2−エチルヘキサノール脂肪酸エステル、又はパルミチン酸2−エチルヘキシルであるのが好ましい。1価アルコールの脂肪酸を含有すると、前記軟磁性金属の分散性が改善される。
上記で例示したような液状脂肪酸エステルを含有すると、高級脂肪酸金属塩を含有することによる上記効果がさらに向上すると共に、電磁干渉抑制体の加工性(柔軟性)が向上する。このような効果が得られる理由としては、液状脂肪酸エステルが電磁干渉抑制体の表面近くに移行するので、上記効果がさらに向上すると共に、該液状脂肪酸エステルが液状なので、加工性(柔軟性)が向上するものと推察される。ただし、ブリードが進み、シート体表面に析出してしまうと他の回路に影響を与える可能性があるため好ましくない。
前記液状脂肪酸エステルは、前記軟磁性金属の総体積に対して0.5〜5体積%、好ましくは0.5〜2体積%含有するのがよい。この範囲内で液状脂肪酸エステルを含有することにより、液状脂肪酸エステルを含有することによる上記効果が得られる。これに対し、含有量が0.5体積%より少ないと、上記した効果が得られないおそれがあり、5体積%を超えると、電磁干渉抑制体が必要以上に軟化して加工性が低下するおそれがあるので好ましくない。
前記液状脂肪酸エステルの分子量は低い方が好ましい。これにより、該液状脂肪酸エステルがより効果的に電磁干渉抑制体の表面近くに移行するので、上記した効果のうち、特に電磁干渉抑制体の表面抵抗率をより高くすることができる。具体的には、前記液状脂肪酸エステルは、重量平均分子量で100〜5000、好ましくは200〜2000であるのがよい。前記重量平均分子量は、前記液状脂肪酸エステルをゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
本発明の電磁干渉抑制体は、上記高級脂肪酸金属塩を含有するので所定の難燃性を有するが、さらに各種の公知の難燃剤を含有させることで、難燃性をより向上させることが可能である。該難燃剤としては、特に限定されるものではなく、例えば亜鉛系難燃剤、窒素系難燃剤、水酸化物系難燃剤、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤等が挙げられる。
前記亜鉛系難燃剤としては、例えば炭酸亜鉛、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛等が挙げられ、前記窒素系難燃剤としては、例えばトリアジン化合物、ヒンダードアミン化合物、メラミンシアヌレート、メラミングアニジン化合物といったようなメラミン系化合物等が挙げられる。前記水酸化物系難燃剤としては、例えば水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。前記リン系難燃剤としては、例えば(縮合)リン酸エステル等が挙げられ、該(縮合)リン酸エステルとしては、例えばトリアリールホスフェート、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート等が挙げられる。ハロゲン系難燃剤としては塩素系化合物、臭素系化合物が挙げられ、例えば塩素化パラフィン、デカブロモジフェニルエタン等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用することもできる。好ましい組み合わせは、本発明の液状脂肪酸エステルであるリン酸エステルと複数の水酸化物系難燃剤の組み合わせである。
また、前記難燃剤は単独で使用する他、難燃助剤と併用してもよい。これにより、少量で高い難燃効果が得られ、本発明にかかる電磁干渉抑制体の難燃性がより向上する。前記難燃助剤としては、例えばカーボンブラック、三酸化アンチモン等が挙げられる。
前記難燃剤は、4〜100PHR、好ましくは8〜50PHRの割合で含有されているのがよく、前記難燃助剤は、2〜150PHR、好ましくは6〜50PHRの割合で含有されているのがよい。難燃剤と難燃助剤を併用する場合には、難燃剤と難燃助剤とが合計で6〜250PHR、好ましくは14〜100PHRの割合で含有されているのがよい。
また、本発明の電磁干渉抑制体は、さらに架橋剤を添加し、前記結合剤を架橋させて電磁干渉抑制体の耐熱性を向上させてもよい。該架橋剤としては、特に限定されるものではなく、例えば前記結合剤を架橋することが可能な各種の公知の架橋剤が採用可能である。
本発明の電磁干渉抑制体は、例えば軟磁性金属と、結合剤と、高級脂肪酸金属塩と、必要に応じて液状脂肪酸エステル等をそれぞれ所定量で混合し、ロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー等を用いて混練して樹脂組成物を得、ついで加圧プレス、カレンダーロール、押し出し機等によりシート状に成形して製造することができる。
また、電波干渉抑制体の厚さが薄い場合(例えば0.3mm以下)には、所定量の前記各構成成分に適量の溶剤を加えてなる組成物(磁性塗料)を作製し、電磁波干渉抑制が必要な対象面に塗布、スプレー、ナイフコーティングといった公知の技術を用いて電波干渉抑制体を作製することも可能である。
前記溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えばアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル、エチルグリコールアセテート等のエステル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2−エトキシエタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロフォルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素化合物などを用いることができる。これらの溶剤は、それぞれ単独で使用できるほか、2種以上をブレンドして用いてもよい。
前記塗料調製のための分散および混練装置としては、例えばニーダー、アジタ、ボールミル、サウンドミル、ロールミル、エクストルーダー、ホモジナイザ、超音波分散機、2軸遊星式混練機等を用いることができる。これら分散および混合装置のうち、特に軟磁性金属を破壊、歪みを与えない上で、アジタ、ボールミル、ロールミル、ホモジナイザ、超音波分散機、2軸遊星式混練機等が好ましい。
また、前記磁性塗料を、例えば(剥離)支持材上にブレード等にて塗布、乾燥し、ついでこの(剥離)支持体を剥離、加圧プレス(プレス成形)し、製造してもよい。前記支持体としては、特に限定されるものではなく、例えば紙、ポリオレフィン等の高分子樹脂をラミネートした紙、上質紙、グラシン紙、高分子樹脂、布、不織布、金属等が挙げられる。これらのうち、薄くて強度が有る高分子樹脂が好ましく、この高分子樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2、6−ナフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、これらポリオレフィン類の水素の一部または全部をフッ素樹脂で置換したフッ素樹脂、セルローストリアセテート、セルロースダイアセテート等のセルロース誘導体、ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン等のビニリデン樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリイミド等が挙げられる。これらの高分子樹脂表面は、シリコーン樹脂等の離型剤で剥離処理を施されているのが電磁干渉抑制体を簡単に剥離することができるうえで好ましい。また、これらの高分子樹脂は、厚さ6μm〜188mm程度のフィルム状であるのがよい。
前記支持体上に磁性塗料を塗布する方法としては、例えばエアドクターコート、ブレードコート、ワイアバーコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファロールコート、グラビアコート、キスコート、キャストコート、エクストルージョンコート、ダイコート、スピンコート等の従来の方法は、いずれも採用可能である。
前記プレス成形の条件としては、特に限定されるものではなく、例えばプレス温度は80〜190℃、プレス時間は0.5〜20分、プレス面圧は5〜20MPa程度であるのがよい。
また、磁性塗料を支持材上に塗工中または塗工後に磁場を加えてもよい。これにより得られる電磁干渉抑制体は、軟磁性金属を面内方向に配向させているので、軟磁性金属をより高密度に充填することができる。軟磁性金属を面内方向に配向させるには、例えば塗工面の上方または下方に永久磁石を設置し、垂直方向(シートの厚さ方向)に磁場を加える方法が挙げられる。磁場の強さ(磁束密度)は、溶剤に溶解または分散している結合剤、軟磁性金属の種類により異なるが、一般に0.01〜1テスラの範囲が選ばれる。なお、この磁場配向技術を用いる場合には、軟磁性金属は扁平状や繊維状が好ましい。
本発明の電磁干渉抑制体は通常シート体であり、その厚さは5μm〜5mm、好ましくは10μm〜1mmであるのがよい。厚さが5μm未満であると、電磁干渉抑制効果が不十分であり、また厚さが5mmを超えると、限られた空間内の占有体積が大きくなり過ぎ、他のものの配置に制限を加えることになるからである。
本発明の電磁干渉抑制体の使用形態としては、例えばシート状の電磁干渉抑制体を適宜切り取り、粘着剤等を介して機器のノイズ源近傍に貼り付けたり、あるいは機器のノイズ源または近傍に前記のように塗布するなどして電磁干渉抑制体を形成するなどして使用される。
本発明の電磁障害抑制方法は、上記した本発明にかかる電磁干渉抑制体を電子機器類の内部または周辺部に配置して、不要電磁波の干渉によって生じる電磁障害を抑制する。具体的には、上記電磁干渉抑制体は、高い表面抵抗率および難燃性を有すると共に、軟磁性金属の分散性に優れるので配向制御が可能となり、高い複素比透磁率の実数部(μ’)及び複素比透磁率の虚数部(μ”)が広い周波数で高い値をとるという磁気共鳴周波数域の高帯域化が実現できる。テレビなどの家庭電気製品、パソコンなどのコンピューター、携帯電話などの移動体通信機器、医療機器など各種の電子機器に使用されると、これら電子機器から放出される不要電磁波が他の電子機器や電子部品、回路基板に影響を与えて誤作動を発生させるのを抑制することができる。このため、該電磁干渉抑制体を前記電子機器類の内部または周辺部に配置することにより、不要電磁波の干渉によって生じる電磁障害を効果的に抑制することができる。例えば、ケーブルに巻いて使用し、ケーブルを流れるあるいはケーブルから放射するノイズを減衰させることができる。さらに、上記電磁干渉抑制体は、軟磁性金属の防錆性に優れるので、長期にわたり前記電磁障害を抑制することができる。
本発明のRFIDデバイスは、上記した本発明にかかる電磁干渉抑制体をアンテナ素子と導体面との間に配置したもの、すなわちアンテナである。アンテナをこのように構成することで、RFID(Radio Frequency Identification)と呼ばれるICタグ機能を有するモバイル端末(例えば携帯電話)において、例えば13.56MHzの電磁波における電磁誘導方式による無線通信を改善することができる。これは、本発明にかかる電磁干渉抑制体は、高い表面抵抗率を有すると共に、軟磁性金属の分散性に優れるので配向制御が可能となり、その結果、通信周波数における電磁干渉抑制体の複素比透磁率の実数部(μ’)が高くなり、磁束(磁界)を電磁干渉抑制体に集中させる事ができ、かつ電磁干渉抑制体の複素比透磁率の虚数部(μ”)が低くなり、集中させた磁束(磁界)を熱変換させることが少なく、通り抜けさせることができるためである。電磁誘導方式による無線通信は、13.56MHz帯に限定されるものではなく、125KHz帯、135KHz帯その他の周波数を使用することができる。
本発明の電磁干渉抑制体の効果にて、電磁障害抑制の場合(50MHz〜1GHzの周波数で高μ’且つ高μ”)とRFIDデバイスの通信改善の場合(20MHz以下の周波数で高μ’且つ低μ”)で求められる特性が異なっているが、例えば図2にある様に周波数別にみると両方の特性(とくにμ”の相反する関係)が実現している。またそれらの材料定数を実現するのは、軟磁性金属粉の特性と平面方向への配向・配列分散、接触しない態様での分散、低透磁率の原因となる空隙の排除等の分散制御技術によるものであり、本発明の組み合わせはそれらを実現する具体的手段である。図2のように両方の性質を同時実現するものであっても良いが、電磁障害抑制もしくはRFID通信改善の一方の性質のみ実現するものであっても良い。
前記アンテナ素子としては、例えばコイルアンテナ、ダイポールアンテナ、モノポールアンテナ、パッチアンテナ等が挙げられる。アンテナ素子は、導電性材料で構成され、特定周波数を送受信するための電子部材である。前記RFIDデバイスとしては、例えば携帯電話、ICカード、RFIDラベル、非接触ICカード用カードケース等が挙げられる。具体的には、送受信用の(コイル)アンテナ素子と、導電化処理が施された筐体(導電化筐体)の内面(導体面)とが近接して配置され、13.56MHz帯の電磁波で無線通信を行う携帯電話において、前記アンテナ素子と導体面との間に本発明にかかる電磁干渉抑制体を配置すると、前記アンテナ素子と導体面とが近接して配置されることによる導体面に発生する渦電流の発生を抑制でき、さらに、該渦電流から発生する磁界(反磁界)が通信に用いる磁界を減少させて通信距離が短くなるのを防止することができる。また、近くにある導電材料(金属、アンテナ体、磁気カード等)による共振周波数のシフト(一般に高周波数側にシフトする。)を電磁干渉抑制体の存在により元に戻すことができる。電磁干渉抑制体には共振周波数を低くする効果があるため、導電材料の影響で高周波数側にシフトした共振周波数を電磁干渉抑制体にて相殺できれば、自由空間の場合と同じまたは近似した共振周波数を得ることが可能となる。この場合、電磁干渉抑制体のみで共振周波数を合わせる必要はなく、整合回路によっても良い。さらに、該電磁干渉抑制体は高い難燃性を有しているので、携帯電話の発火や延焼を防止することができる。さらに、上記電磁干渉抑制体は、軟磁性金属の防錆性に優れるので、長期にわたり前記渦電流の発生や該渦電流の発生による通信に用いる磁界の減少を抑制することができる。
なお、本発明におけるRFIDデバイスは、上記で説明した13.56MHz帯の電磁波で無線通信を行う携帯電話に限定されるものではなく、例えばVHF帯、UHF帯、SHF帯、EHF帯等の導体(金属、カーボンや水などの液体を含む)近傍での動作するアンテナ(例えばICタグ、リーダー、データキャリア装置)等が挙げられる。
また、本発明の電磁干渉抑制体は、例えばGHz帯の無線通信、無線LAN、ETC用等各種の電波吸収体を含む。また、本発明の電磁干渉抑制体は、無機系の充填材を多量に使用することになる感圧センサー、誘電センサー、磁気センサー、および放熱材等にも使用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例で使用した材料は表1に示す通りである。
Figure 2007123868
[実施例1〜6および比較例1〜8]
表1に示した各材料を、表2に示す組み合わせおよび割合で混合し、この混合物に適量の溶剤(トルエン)を加えて磁性塗料を作製し、該磁性塗料をドクターブレード法にてポリエチレンテレフタレート(PET、剥離支持体)上に塗工および乾燥してシート成形を行った。ついで、前記PETをはがし、続いてプレス成形(プレス温度:170℃、プレス時間:8分、プレス面圧:10MPa)を行うことによって、厚さ100μmの電磁干渉抑制体をそれぞれ製造した(表2中の実施例1〜6および比較例1〜8)。
なお、表2中、各材料の配合の単位はPHR[樹脂(結合剤)100重量部に対する重量部]である。また、ステアリン酸亜鉛および液状脂肪酸エステルについては、軟磁性金属の総体積に対する体積%も併せて示した。各材料の体積は、各材料の比重と配合重量から求めた。
上記で得られた各電磁干渉抑制体について、柔軟性、表面抵抗率、難燃性、分散性および防錆性を評価した。各評価方法を以下に示すと共に、その結果を表2に併せて示す。
(柔軟性の評価方法)
柔軟性(加工性)は、上記電磁干渉抑制体の製造において、塗工後およびプレス成形後の表面状態をそれぞれ目視観察することにより評価した。なお、評価基準は以下のように設定した。
○:シートを折り曲げた際に柔軟性が十分ある
△:シートを折り曲げた際に柔軟性がある
×:シートを折り曲げた際に柔軟性に劣る
(表面抵抗率の評価方法)
表面抵抗率は、JIS K6911−1995に準じたリング電極プローブを用いた三菱化学法により評価した。表面抵抗率は106Ω/□以上が要求される。
(難燃性の評価方法)
難燃性は、UL94の規格に準拠して評価した。なお、評価基準は以下のように設定した。
○:UL94V−0相当の難燃性を示す
×:UL94V−0相当の難燃性を示さない
(分散性の評価方法)
分散性は、上記電磁干渉抑制体の製造において、各材料を表2に示す組み合わせおよび割合で混合した各混合物に、溶剤(トルエン)を700PHR加えた磁性塗料を作製し、材料を均一に分散させた後、該磁性塗料を100mlのガラス瓶に入れ、該磁性塗料中の軟磁性金属がスタート(分散直後)から10時間後までの沈降状態によって評価した。なお、評価基準は以下のように設定した。
◎:初期沈降が遅く、特に10時間後の沈降速度が遅い
○:初期沈降が遅く、10時間後も他の磁性塗料に比べて沈降速度が遅い
×:初期沈降が早く、10時間後も他の磁性塗料に比べて沈降速度が速い
(防錆性の評価方法)
防錆性は、塩水噴霧試験により評価した。具体的には、塩水噴霧試験機(スガ試験機社製のCASSER−ISO−3)を下記試験条件で用い、試験後の各電磁干渉抑制体の表面を下記評価基準で目視観察することにより評価した。
試験条件
塩化ナトリウム溶液濃度:5±0.5重量%
噴霧室温度:35±2℃
試験時間:48時間
評価基準
○:錆びが発生していない
×:錆びが発生した
Figure 2007123868
表2から明らかなように、ステアリン酸亜鉛を含有した実施例1〜6の電磁干渉抑制体は、高い表面抵抗率を示し、かつ難燃性、分散性および防錆性についても良好な結果を示した。実施例1は、液状脂肪酸エステルとしてリン酸エステルを用い、脂肪酸金属塩としてステアリン酸金属塩を組み合わせている。柔軟性においてやや不足する傾向があるものの、難燃性、分散性、防錆性について効果が認められた。特に、液状脂肪酸エステルを含有した実施例2〜6の電磁干渉抑制体は、柔軟性(加工性)が向上しているのがわかる。これに対し、ステアリン酸亜鉛を含有していない比較例1は、表面抵抗率、難燃性、分散性および防錆性に劣る結果を示した。また、液状脂肪酸エステルのみを含有した比較例2〜8は、表面抵抗率は比較的良好であったが、難燃性、分散性または防錆性に劣る結果を示した。なお表2の比較例1にステアリン酸6PHRを加えた配合では、難燃性評価が×となった。脂肪酸金属塩であることが、他の難燃剤との組み合わせにより、高い難燃効果を発現できることになる。
以下に、本発明の電磁干渉抑制体の性能として、材料定数の測定結果、電波抑制効果(伝送損失)及びRFID無線通信改善効果を示す。代表して、実施例5のシートの性能を示す。
<伝送損失の測定方法>
伝送損失の測定にはインピーダンスZ=50Ωのマイクロストリップラインを使用した。マイクロストリップライン線路は、面実装部品の実装に適した構造と作成のしやすさによって、広く使われている近傍ノイズの伝送損失測定方法である。図1は、使用したマイクロストリップラインの形状を示す。このものは、絶縁体基板51の表面に直線状の導体路52を設け、この導体路52上に電磁干渉抑制シート54を厚さ30μmの両面テープ(図示せず)で貼着したものである。導体路52の両端はネットワークアナライザー(図示せず)に接続される。そして、矢印Aで示す入射波に対して、電磁波吸収材料54の載置部位からの反射量(dB)(矢印S11で示す)および透過量(dB)(矢印S21で示す)を測定し、それらの差をロス量とし、伝送損失(吸収率)を下記式から求めた。
Figure 2007123868

マイクロストリップラインの伝送損失は電磁干渉抑制シート54の厚みが厚くなるほど高くなる。一般的には、厚みが薄く且つ高伝送損失の電磁干渉抑制シート54が望まれている。
本発明の実施例5の電磁干渉抑制体の1GHzに於ける伝送損失(吸収率)は35%あり、表面抵抗率の高さからも電磁波を反射することなく、吸収する効果が高いことがわかった。
<材料定数の評価方法>
本発明の電磁干渉抑制体の材料定数は、複素比透磁率の実数部μ’、複素比透磁率の虚数部μ”、複素比誘電率の実数部ε’および複素比誘電率の虚数部ε”を含む。測定は材料をリング加工(φ7×φ3)して同軸管法で測定した。使用した機器は、周波数が1MHz〜1GHzに対してはマテリアルアナライザー(アジレント社製E4991A)であり、50MHz〜20GHzに対してはネットワークアナライザー(アジレント社製8720ES)である。
本発明の電磁干渉抑制体(実施例5)の結果を図2に示すが、13.56MHz帯及びそれ以下の周波数にて、複素比透磁率の実数部μ’が高く(50以上)、複素比透磁率の虚数部μ”が低い(5以下)の関係があり、磁界を集めやすく、集めた磁束を損失し難いという性質を有しているといえる。さらに複素比誘電率の実数部ε’の高さ(100以上)から電気力線も集め易いといえ、このε’の高さとμ’の高さが相まって、波長短縮効果を得ることができ、アンテナのサイズ縮小や電波干渉抑制体の薄型化にも寄与することができる。そして複素比誘電率の虚数部ε”が低い(500以下)ことから、電磁波干渉抑制体自体の導電率が低く、抵抗値が高いことが判明し、それはこの周波数にて電磁波干渉抑制体自身に渦電流が発生しないことを意味している。
また図2より、50MHz〜1GHzに於いて、複素比透磁率の実数部μ’が高く(10以上)、且つ複素比透磁率の虚数部μ”が高い(8以上)の関係があり、μ’が高いことよりノイズ電磁波の磁界成分を集め易く、μ”が高いことより集めた磁界成分を熱損失し易いことがわかり、優れたノイズ抑制効果を有することを示している。
[試験例]
<RFIDシステムFeliCaリーダ・ライタ評価キット(13.56MHz)による通信距離の測定>
ソニー株式会社製のFeliCaリーダ・ライタ評価キットRC−S440Cを用いて、ICタグとリーダ・ライタ間の通信距離の測定を行った。測定方法は、図3に示すように、ICタグの裏面に実施例5の電磁干渉抑制体および金属板(鉄板)を配置し、この状態でICタグとリーダ・ライタ間の通信距離Lを測定した。なお、図3において60はICタグ、61は電磁干渉抑制体、62は基材、63はライタコイル、64は誘電体層、65はリーダコイル、66は通信妨害部材(金属板)を表し、矢印Aは電波送受信方向を示す。測定結果を表3に示す。なお、電磁干渉抑制体は厚さ100μmおよび150μmの2種類を用いた。一般に、通信距離Lは、金属板のない自由空間では約10cmであったものが、金属板をタグに近傍に設置した場合に通信距離が0cmになってしまう。
Figure 2007123868

表3から、電磁干渉抑制体を使用しない場合は通信不能であったのに対し、ICタグと金属板の間に電磁干渉抑制体(150μm厚)を配置することで、ICタグとリーダ・ライタを53mm離しても通信できるようになったことが分かる。
実施例5における伝送損失の測定に使用したマイクロストリップラインの形状を示す概略図である。 実施例5の配合の材料定数を示すグラフである。 実施例5の電磁干渉抑制体を用いたタグの通信距離を評価した実験構成を表す図である。
符号の説明
51・・・絶縁体基板
52・・・導体路
54・・・電磁干渉抑制体
60・・・ICタグ
61・・・電磁干渉抑制体
63・・・ライタコイル
65・・・リーダコイル

Claims (11)

  1. 軟磁性金属と結合剤とを含有する電磁干渉抑制体であって、さらに高級脂肪酸金属塩を含有することを特徴とする電磁干渉抑制体。
  2. 前記高級脂肪酸金属塩がステアリン酸金属塩である請求項1記載の電磁干渉抑制体。
  3. 前記ステアリン酸金属塩がステアリン酸亜鉛である請求項2記載の電磁干渉抑制体。
  4. 前記高級脂肪酸金属塩を軟磁性金属の総体積に対して0.5〜5体積%含有する請求項1〜3のいずれかに記載の電磁干渉抑制体。
  5. さらに液状脂肪酸エステルを含有する請求項1〜4のいずれかに記載の電磁干渉抑制体。
  6. 前記液状脂肪酸エステルを軟磁性金属の総体積に対して0.5〜5体積%含有する請求項5記載の電磁干渉抑制体。
  7. 前記液状脂肪酸エステルが1価アルコールの脂肪酸エステルである請求項5または6記載の電磁干渉抑制体。
  8. 前記液状脂肪酸エステルが2−エチルヘキサノール脂肪酸エステル、又はパルミチン酸エチルへキシルである請求項5〜7のいずれかに記載の電磁干渉抑制体。
  9. 前記軟磁性金属が扁平形状である請求項1〜8のいずれかに記載の電磁干渉抑制体。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の電磁干渉抑制体を電子機器類の内部または周辺部に配置して、不要電磁波の干渉によって生じる電磁障害を抑制することを特徴とする電磁障害抑制方法。
  11. 請求項1〜9のいずれかに記載の電磁干渉抑制体をアンテナ素子と導体面との間に配置したことを特徴とするRFIDデバイス。
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