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JP2007108724A - 防眩性反射防止フィルム、これを用いた偏光板および液晶表示装置 - Google Patents

防眩性反射防止フィルム、これを用いた偏光板および液晶表示装置 Download PDF

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JP2007108724A
JP2007108724A JP2006247174A JP2006247174A JP2007108724A JP 2007108724 A JP2007108724 A JP 2007108724A JP 2006247174 A JP2006247174 A JP 2006247174A JP 2006247174 A JP2006247174 A JP 2006247174A JP 2007108724 A JP2007108724 A JP 2007108724A
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Shinya Kato
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Abstract

【課題】高い防眩性と画像ボケ、白ボケの改善とを両立した防眩性反射防止フィルムおよ
び該防眩性反射防止フィルムを用いた偏光板、液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】透明支持体上に少なくとも層を設けた防眩性反射防止フィルムであって、該
支持体の法線と、該フィルム表面の凹凸形状の法線とのなす傾斜角θが1°以下である割
合が、全体の15%以上70%以下であり、かつ該傾斜角θが10°以上の割合が全体の
3%以下であることを特徴とする防眩性反射防止フィルム、これを用いた偏光板および液
晶表示装置。
【選択図】図1

Description

本発明は、防眩性反射防止フィルム、これを用いた偏光板および液晶表示装置に関する
防眩性フィルムは、大きくは実質的に表面散乱性だけを有する防眩性フィルムと、表面散乱性と内部散乱性の両方を有する防眩性フィルムとに大別することができる。防眩性フィルムは一般に、CRT、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や液晶表示装置(LCD)のようなディスプレイ装置において、外光の反射による像の映り込みを防止するために、ディスプレイの最表面に配置される。
また、特に近年表示装置の高精細化に伴い、防眩性フィルムによる微小な輝度ムラ(ギラツキと呼称する)の改良手段として、表面散乱に加えて従来以上に高い内部散乱性を有する防眩性フィルムに関する技術が開示されている(特許文献1)。
一方、表面散乱性はなく、内部散乱性のみを有することにより、LCDの視野角特性を向上する散乱性フィルムに関する技術が開示されている。また、光散乱性フィルムが表示装置の最表面に用いられる場合には、明室にて外光の表面反射を抑制する効果を有する反射防止機能を併せ持つフィルムが好ましいことが知られている。
近年、液晶テレビ等に代表されるような、大画面を有する表示装置を比較的離れた位置で視認するアプリケーションの市場が急速に拡大している。このようなアプリケーションにおいては、同一の精細度での画素の大きさが大きくなること、および、視認される距離が遠くなることから、前述したギラツキの問題は軽減される。一方で、前述したギラツキ改良の手段として広く用いられている、高い内部散乱性を有する防眩性フィルムがこのアプリケーションにも用いられているが、高い内部散乱性は画像の解像度の低下(画像ボケと呼称する)の問題を引き起こすため、必ずしもこのアプリケーションに対しては最適ではない。
外光の反射による像の映り込みを防止するために、フィルム表面に凹凸形状をつけ反射像の輪郭をぼかす手段が一般的であり、外光の正反射方向からの視認性は向上する。一方で正反射以外の方向にまで散乱光が回り込むためその方向では黒が白味がかって(白ボケと呼称する)見えてしまう。この課題に対して、フィルム表面凹凸の粗さや傾斜角を最適化する試みがなされているが(特許文献2、3)、全方位における性能向上には不十分であったり、生産性やコストに問題があった。
また、液晶表示装置など表示装置そのものの視野角依存性を考慮した上で、防眩性反射防止フィルムの性能を最適化することが、表示装置のトータル性能向上には極めて重要である。
特許第3507719号公報 特開2003−107205号公報 特開2005−92197号公報
以上に述べたように、防眩性と画像ボケ、白ぼけの改善を同時に満足する防眩性反射防
止フィルムは提案されてないのが現状である。
従って、本発明の目的は、高い防眩性と画像ボケ、白ボケの改善とを両立した防眩性反
射防止フィルムおよび該防眩性反射防止フィルムを用いた偏光板を高い生産性で提供する
ことにある。
さらに本発明の目的は、該偏光板を用いることで周囲の明るさに対して安定した表示性
能を示す高品位な液晶表示装置を提供することにある。
本発明者らは、上述の課題を解消すべく鋭意検討した結果、下記構成とすることにより
、前記課題を解決し目的を達成しうることを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、下記の構成により前記目的を達成したものである。
1)透明支持体上に少なくとも層を設けた防眩性反射防止フィルムであって、該支持体
の法線と、該フィルム表面の凹凸形状の法線とのなす傾斜角が1°以下である割合が、全
体の15%以上70%以下であり、かつ該傾斜角が10°以上の割合が全体の3%以下で
あることを特徴とする防眩性反射防止フィルム。
2)前記傾斜角を0.1°刻みで区切って度数分布を描いたとき、該傾斜角に対する度
数分布の最大傾きの絶対値が0.1/°以下であることを特徴とする上記1)に記載の防
眩性反射防止フィルム。
3)前記傾斜角を0.1°刻みで区切って度数分布を描いたとき、度数が最大となるピ
ークが0.3°以上2.0°以下であることを特徴とする上記1)または2)に記載の防
眩性反射防止フィルム。
4)前記防眩性反射防止フィルムの内部散乱に起因するヘイズ値が0〜35%であり、
かつ、表面散乱に起因するヘイズ値が2〜15%であることを特徴とする上記1)〜3)
のいずれかに記載の防眩性反射防止フィルム。
5)前記防眩性反射防止フィルムの中心線平均粗さRaが0.08〜0.30μmであ
ることを特徴とする上記1)〜4)のいずれかに記載の防眩性反射防止フィルム。
6)JIS K7105−1981に準じた透過画像鮮明度が光学くし幅0.5mmで測定したときに5%〜30%であることを特徴とする上記1)〜5)のいずれかに記載の防眩性反射防止フィルム。
7)前記層が防眩層を有し、該防眩層は透光性樹脂と透光性粒子とを少なくとも含有することを特徴とする、上記1)〜6)のいずれかに記載の防眩性反射防止フィルム。
8)前記透光性樹脂が、少なくとも3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを主成
分としてなり、前記透光性粒子がアクリル含率50〜100質量%である架橋ポリ(メタ
)アクリレート系重合体であることを特徴とする上記7)に記載の防眩性反射防止フィル
ム。
9)前記透光性樹脂が、少なくとも3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを主成
分としてなり、前記透光性粒子がアクリル含率50質量%以上100質量%未満である架橋ポリ(アクリル−スチレン)共重合体であることを特徴とする上記7)に記載の防眩性反射防止フィルム。
10)偏光膜と、該偏光膜の両側に設けられた2枚の保護フィルムとを有する偏光板に
おいて、該保護フィルムの少なくとも一方が、上記1)〜9)のいずれかに記載の防眩性
反射防止フィルムであることを特徴とする偏光板。
11)前記2枚の保護フィルムの少なくとも一方が、光学異方性層を有する光学補償フ
ィルムを有することを特徴とする上記10)に記載の偏光板。
12)前記2枚の保護フィルムのうち、防眩性反射防止フィルムとは反対に配置される
保護フィルムが、液晶性化合物の配向を固定した光学異方性層を有する光学補償フィルム
であることを特徴とする上記10)または11)に記載の偏光板。
13)前記2枚の保護フィルムのうち、防眩性反射防止フィルムとは反対に配置される
保護フィルムが、前記偏光膜と貼り合せる面とは反対側の面にディスコティック構造単位
を有する化合物からなる光学異方性層を有する光学補償フィルムである事を特徴とする上
記10)〜12)のいずれかに記載の偏光板。
14)少なくとも一枚の光学補償フィルムと偏光板とを粘着層を介して貼り合せた複合
偏光板であって、該偏光板が上記10)〜13)のいずれかに記載の偏光板であることを
特徴とする積層偏光板。
15)上記10)〜14)のいずれかに記載の偏光板を少なくとも一枚有することを特
徴とする液晶表示装置。
16)偏光板、表示用液晶セル、バックライトを少なくとも含み、最大輝度が300c
d/m2以上、白/黒表示における暗室コントラスト比が液晶セル法線方向において500
以上、該法線に対して30°以内の角度範囲で150以上、該法線に対して60°以内の
角度範囲で15以上である液晶表示装置であって、上記10)〜14)のいずれかに記載
の偏光板が該液晶表示装置の観察者側最表面に配置されていることを特徴とする液晶表示
装置。
17)表示画面の対角が20インチ以上であることを特徴とする上記15)または16
)に記載の液晶表示装置。
本発明により、高い防眩性と画像ボケ、白ボケの改善とを両立した防眩性反射防止フィ
ルムおよび該防眩性反射防止フィルムを用いた偏光板、液晶表示装置を提供することがで
きた。
以下、本発明について更に詳細に説明する。なお、本明細書において、数値が物性値、
特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数
値2)以下」の意味を表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記
載は、「アクリレート及びメタクリレートの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メ
タ)アクリル酸」等も同様である。
0.フィルム表面凹凸の傾斜角分布
本発明の防眩性反射防止フィルムは少なくとも表面に微細な凹凸形状を有し、光の散乱により反射像を散らして輪郭をぼかすことで防眩性を発揮する。本発明において、傾斜角およびその割合は以下の方法で決定される。
まず、面積が0.5乃至2平方マイクロメートルである三角形の頂点を透明支持体上に仮定し、その3つの頂点から鉛直上向きに法線を伸ばす(支持体上の3つの法線)。この支持体上の3つの法線がフィルム表面と交わる3点によって三角形を形成する。このようにして形成された三角形の面の法線が、支持体から鉛直上向きに伸ばした法線となす角を傾斜角と定義する。
次に傾斜角の割合の求め方を説明する。支持体上で250000平方マイクロメートル(0.25平方ミリメートル)以上の面積を先に述べた三角形に分割し、それぞれの三角形全てについて傾斜角の測定を行う。所望の角度の測定点の数の全測定点の数に対する割合を求める。この割合を傾斜角の割合と定義する。本発明においては、傾斜角度が1°以下、および10°以上である割合を求める。
傾斜角を測定する方法をさらに詳細に述べる。図1(a)のようにまず測定サンプルの支持体表面を三角形の面積が0.5乃至2平方マイクロメートルとなるようなメッシュに分割する。図1(b)は分割したメッシュを構成する一つの三角形の3つの頂点を抽出した図である。この支持体上の3点から鉛直上向きに法線を伸ばし、その3点が表面と交わった点をA、B、Cとする。三角形ABC面の法線DD’が、支持体から鉛直上向きに伸ばした法線DO'と為す角度θを傾斜角とする。図1(c)は点O’DD’を含む平面Pで切ったときのフィルムの断面図である。線分EFは三角形ABCと平面Pとの交線である。
本発明においては、測定面積は支持体上で250000平方マイクロメートル(0.25平方ミリメートル)以上が好ましく、0.25平方ミリメートル以上、1.0平方ミリメートル以下が測定精度と測定効率を両立させる上で好ましい。測定単位の三角形の面積は0.5乃至2平方マイクロメートルが測定精度を保証する上で好ましい。
測定する装置はいくつかあるが、本発明においてはマイクロマップ社(米国)製SXM520-AS150型を用いる。本装置は、光源に中心波長560nmの干渉フィルターを挿入したハロゲンランプ、倍率2.5倍〜50倍の対物レンズを内蔵している。データの取り込みは画素数640×480の2/3インチの標準装備のCCDによって行う。本発明においては、対物レンズが10倍傾斜角の測定単位は0.8平方マイクロメートル、測定面積は500000平方マイクロメートル(0.5平方ミリメートル)に設定する。所望によっては、対物レンズの倍率を大きくし、それに合わせて測定単位と測定面積は小さくすることもできる。
測定データはMath Works, Inc.(米国)製、MAT−LAB 等のソフトを用いて解析し、傾斜角分布を算出することができる。これにより測定した面積に対する結果をフィルム全体に対する傾斜角の結果とみなし、傾斜角が1°以下の割合および傾斜角度が10°以上の割合を容易に求めることができる。本発明では、傾斜角の刻みは0.01°程度に設定する。
本発明において、傾斜角が1°以下の割合は、15%以上70%以下であり、かつ傾斜角度が10°以上の割合は3%以下である。なお傾斜角が1°以下の割合は30%以上70%以下が好ましく、40%以上60%以下がさらに好ましい。また、傾斜角度10°以上の割合は2%以下が好ましく、1%以下がさらに好ましい。本発明において、特に好ましいのは傾斜角1°以下の割合が40%以上60%以下、かつ10°以上の割合が2%以下の場合である。これにより、防眩性と画像ボケ、白ぼけの改善を同時に満足することができる。
本発明の防眩性反射防止フィルムは、外光による反射像を好適にぼかし実質上視認できなくすることが目的である。このため視角変化により反射強度が急激に変化することは望ましくなく、即ち表面の傾斜角分布は変化が小さい事が望ましい。具体的には図2に示すように測定された傾斜角を0.1°刻みに区切ってカウントし度数分布を描いたとき、該傾斜角に対する度数分布の最大傾きの絶対値が0.1/°以下であることが望ましく、好ましくは0.07/°以下である。尚、図2における縦軸は傾斜角測定点の総数を1とした場合の発生頻度である。
本発明の防眩性反射防止フィルムは、反射光を不必要に広角でなくかつ正反射以外の角度範囲に適度に分散させる事が重要であり、従って図2における最大頻度となるピーク傾斜角度は0.3°以上2.0°以下の角度範囲にあることが望ましい。さらに好ましくは0.5°以上1.5°以下である。また、反射強度の急激な変化をなくす観点から図2における最大頻度は0.1以下が好ましい。さらに、傾斜角度分布は複数の極大を有しても良い。
本発明で規定する傾斜角およびその分布を達成するには、例えば、基材上に透光性の樹脂マトリックス中に微粒子を分散させた層を設ける、樹脂溶液を塗設し乾燥時にベナールセルを発生させる、非相容の複数のポリマー素材からなる層を設けるなどの手段が挙げられる。
1.本発明の構成物
まず、本発明のフィルムに使用することのできる各種化合物について記載する。
1−(1)バインダー
本発明のフィルムは、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成
され得る。すなわち、バインダーとして電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリ
ゴマーを含む塗布組成物(硬化性組成物)を透明支持体上に塗布し、多官能モノマーや多
官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線
、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基
等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
光重合性官能基を有する光重合性多官能モノマーの具体例としては、
ネオペンチルグリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレー
ト、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの(メタ)
アクリル酸ジエステル類;
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)
アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコ
ールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸
ジエステル類;
ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル
酸ジエステル類;
2,2−ビス{4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル}プロパン、2−2−ビス
{4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル}プロパン等のエチレンオキシドある
いはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類;
等を挙げることができる。
さらにはエポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエ
ステル(メタ)アクリレート類も、光重合性多官能モノマーとして、好ましく用いられる
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。さらに好ま
しくは、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーが好まし
い。具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエ
タントリ(メタ)アクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレー
ト、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリ
レート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトール
トリアクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールペンタアクリレート、(ジ)ペンタエリ
スリトールテトラ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)ア
クリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘ
キサトリアクリレート等が挙げられる。本明細書において、「(メタ)アクリレート」、
「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリロイル」は、それぞれ「アクリレートまたは
メタクリレート」、「アクリル酸またはメタクリル酸」、「アクリロイルまたはメタクリ
ロイル」を表す。
モノマーバインダーとしては、各層の屈折率を制御するために、屈折率の異なるモノマ
ーを用いることが出来る。特に高屈折率モノマーの例としては、ビス(4−メタクリロイ
ルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタ
クリロキシフェニル−4’−メトキシフェニルチオエーテル等が含まれる。
また、例えば特開2005−76005号、同2005−36105号に記載されたデ
ンドリマーや、例えば特開2005−60425号記載のようなノルボルネン環含有モノ
マーを用いることもできる。
多官能モノマーは、二種類以上を併用してもよい。
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱
ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
光重合性多官能モノマーの重合反応には、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重
合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤が好ましく、特に好ま
しいのは光ラジカル重合開始剤である。
1−(2)ポリマ−バインダー
本発明にはバインダーとして、ポリマーあるいは架橋しているポリマーを用いることが
できる。架橋しているポリマーはアニオン性基を有するのが好ましい。架橋しているアニ
オン性基を有するポリマーは、アニオン性基を有するポリマーの主鎖が架橋している構造
を有する。
ポリマーの主鎖の例には、ポリオレフィン(飽和炭化水素)、ポリエーテル、ポリウレ
ア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミドおよびメラミン樹脂が含まれ
る。ポリオレフィン主鎖、ポリエーテル主鎖およびポリウレア主鎖が好ましく、ポリオレ
フィン主鎖およびポリエーテル主鎖がさらに好ましく、ポリオレフィン主鎖が最も好まし
い。
ポリオレフィン主鎖は飽和炭化水素からなる。ポリオレフィン主鎖は、例えば、不飽和
重合性基の付加重合反応により得られる。ポリエーテル主鎖は、エーテル結合(−O−)
によって繰り返し単位が結合している。ポリエーテル主鎖は、例えば、エポキシ基の開環
重合反応により得られる。ポリウレア主鎖は、ウレア結合(−NH−CO−NH−)によ
って、繰り返し単位が結合している。ポリウレア主鎖は、例えば、イソシアネート基とア
ミノ基との縮重合反応により得られる。ポリウレタン主鎖はウレタン結合(−NH−CO
−O−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリウレタン主鎖は、例えば、イソシ
アネート基と、水酸基(N−メチロール基を含む)との縮重合反応により得られる。ポリ
エステル主鎖は、エステル結合(−CO−O−)によって繰り返し単位が結合している。
ポリエステル主鎖は、例えば、カルボキシル基(酸ハライド基を含む)と水酸基(N−メ
チロール基を含む)との縮重合反応により得られる。ポリアミン主鎖はイミノ結合(−N
H−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリアミン主鎖は、例えば、エチレンイ
ミン基の開環重合反応により得られる。ポリアミド主鎖は、アミド結合(−NH−CO−
)によって、繰り返し単位が結合している。ポリアミド主鎖は、例えば、イソシアネート
基とカルボキシル基(酸ハライド基を含む)との反応により得られる。メラミン樹脂主鎖
は、例えば、トリアジン基(例、メラミン)とアルデヒド(例、ホルムアルデヒド)との
縮重合反応により得られる。なお、メラミン樹脂は、主鎖そのものが架橋構造を有する。
アニオン性基は、ポリマーの主鎖に直接結合させるか、あるいは連結基を介して主鎖に
結合させる。アニオン性基は、連結基を介して側鎖として主鎖に結合させることが好まし
い。
アニオン性基の例としては、カルボン酸基(カルボキシル)、スルホン酸基(スルホ)
およびリン酸基(ホスホノ)などが挙げられ、スルホン酸基およびリン酸基が好ましい。
アニオン性基は塩の状態であってもよい。アニオン性基と塩を形成するカチオンは、ア
ルカリ金属イオンであることが好ましい。また、アニオン性基のプロトンは解離していて
もよい。
アニオン性基とポリマーの主鎖とを結合する連結基は、−CO−、−O−、アルキレン
基、アリーレン基、およびこれらの組み合わせから選ばれる二価の基であることが好まし
い。
架橋構造は二以上の主鎖を化学的に結合(好ましくは共有結合)するものであるが、三
以上の主鎖を共有結合することが好ましい。架橋構造は、−CO−、−O−、−S−、窒
素原子、リン原子、脂肪族残基、芳香族残基およびこれらの組み合わせから選ばれる二価
以上の基からなることが好ましい。
架橋しているアニオン性基を有するポリマーは、アニオン性基を有する繰り返し単位と
、架橋構造を有する繰り返し単位とを有するコポリマーであることが好ましい。コポリマ
ー中のアニオン性基を有する繰り返し単位の割合は、2〜96質量%であることが好まし
く、4〜94質量%であることがさらに好ましく、6〜92質量%であることが最も好ま
しい。繰り返し単位は、二以上のアニオン性基を有していてもよい。コポリマー中の架橋
構造を有する繰り返し単位の割合は、4〜98質量%であることが好ましく、6〜96質
量%であることがさらに好ましく、8〜94質量%であることが最も好ましい。
架橋しているアニオン性基を有するポリマーの繰り返し単位は、アニオン性基と架橋構
造の双方を有していてもよい。また、その他の繰り返し単位(アニオン性基も架橋構造も
ない繰り返し単位)が含まれていてもよい。
その他の繰り返し単位としては、アミノ基または四級アンモニウム基を有する繰り返し
単位およびベンゼン環を有する繰り返し単位が好ましい。アミノ基または四級アンモニウ
ム基は、アニオン性基と同様に無機粒子の分散状態を維持する機能を有する。なお、アミ
ノ基、四級アンモニウム基およびベンゼン環は、アニオン性基を有する繰り返し単位ある
いは架橋構造を有する繰り返し単位に含まれていても同様の効果が得られる。
アミノ基または四級アンモニウム基を有する繰り返し単位では、アミノ基または四級ア
ンモニウム基は、ポリマーの主鎖に直接結合させるか、あるいは連結基を介して主鎖に結
合させる。アミノ基または四級アンモニウム基は、連結基を介して側鎖として、主鎖に結
合させることが好ましい。アミノ基または四級アンモニウム基は、二級アミノ基、三級ア
ミノ基または四級アンモニウム基であることが好ましく、三級アミノ基または四級アンモ
ニウム基であることがさらに好ましい。二級アミノ基、三級アミノ基または四級アンモニ
ウム基の窒素原子に結合する基は、アルキル基であることが好ましく、炭素原子数が1〜
12のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数が1〜6のアルキル基であることが
さらに好ましい。四級アンモニウム基の対イオンは、ハライドイオンであることが好まし
い。アミノ基または四級アンモニウム基とポリマーの主鎖とを結合する連結基は、−CO
−、−NH−、−O−、アルキレン基、アリーレン基、およびこれらの組み合わせから選
ばれる二価の基であることが好ましい。架橋しているアニオン性基を有するポリマーが、
アミノ基または四級アンモニウム基を有する繰り返し単位を含む場合、その割合は0.0
6〜32質量%であることが好ましく、0.08〜30質量%であることがさらに好まし
く、0.1〜28質量%であることが最も好ましい。
架橋反応性付与のための構成単位としては主として以下の(A)、(B)、(C)で示
される単位が挙げられる。
(A):グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように分子内に
あらかじめ自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、
(B):カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー(例え
ば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)
アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチ
ルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等)の重合によって得られる構成単位、
(C):分子内に上記(A)、(B)の官能基と反応する基とそれとは別に架橋性官能基
を有する化合物を、上記(A)、(B)の構成単位と反応させて得られる構成単位、(例
えばヒドロキシル基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で合成できる構成
単位)が挙げられる。
上記(C)の構成単位は該架橋性官能基が光重合性基であることが好ましい。ここに、
光重合性基としては、例えば(メタ)アクリロイル基、アルケニル基、シンナモイル基、
シンナミリデンアセチル基、ベンザルアセトフェノン基、スチリルピリジン基、α−フェ
ニルマレイミド基、フェニルアジド基、スルフォニルアジド基、カルボニルアジド基、ジ
アゾ基、o−キノンジアジド基、フリルアクリロイル基、クマリン基、ピロン基、アント
ラセン基、ベンゾフェノン基、スチルベン基、ジチオカルバメート基、キサンテート基、
1,2,3−チアジアゾール基、シクロプロペン基、アザジオキサビシクロ基などを挙げ
ることができ、これらは1種のみでなく2種以上であってもよい。これらのうち、(メタ
)アクリロイル基およびシンナモイル基が好ましく、特に好ましくは(メタ)アクリロイ
ル基である。
光重合性基含有共重合体を調製するための具体的な方法としては、下記の方法を挙げる
ことができるが、これらに限定されるものではない。
a.水酸基を含有してなる架橋性官能基含有共重合体に、(メタ)アクリル酸クロリドを
反応させてエステル化する方法、
b.水酸基を含有してなる架橋性官能基含有共重合体に、イソシアネート基を含有する(
メタ)アクリル酸エステルを反応させてウレタン化する方法、
c.エポキシ基を含有してなる架橋性官能基含有共重合体に、(メタ)アクリル酸を反応
させてエステル化する方法、
d.カルボキシル基を含有してなる架橋性官能基含有共重合体に、エポキシ基を含有する
含有(メタ)アクリル酸エステルを反応させてエステル化する方法。
なお、上記光重合性基の導入量は任意に調節することができ、塗膜面状安定性・無機粒
子共存時の面状故障低下・膜強度向上などの点からカルボキシル基やヒドロキシル基等を
一定量残すことも好ましい。
1−(3)含フッ素ポリマ−バインダー
本発明にはポリマーのバインダーのうち、特に低屈折率層には含フッ素共重合体化合物
を好ましく用いることが出来る。
含フッ素ビニルモノマーとしてはフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビ
ニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等)、(メ
タ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート
6FM(商品名、大阪有機化学製)やR−2020(商品名、ダイキン製)等)、完全ま
たは部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィ
ン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオ
ロプロピレンである。これらの含フッ素ビニルモノマーの組成比を上げれば屈折率を下げ
ることができるが、皮膜強度は低下する。本発明では共重合体のフッ素含率が20〜60
質量%となるように含フッ素ビニルモノマーを導入することが好ましく、より好ましくは
25〜55質量%の場合であり、特に好ましくは30〜50質量%の場合である。
本発明に有用な共重合体では上記含フッ素ビニルモノマーから導かれる繰返し単位およ
び側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位以外に、基材への密着性、ポリマー
のTg(皮膜硬度に寄与する)、溶剤への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々
の観点から適宜他のビニルモノマーを共重合することもできる。これらのビニルモノマー
は目的に応じて複数を組み合わせてもよく、合計で共重合体中の0〜65モル%の範囲で
導入されていることが好ましく、0〜40モル%の範囲であることがより好ましく、0〜
30モル%の範囲であることが特に好ましい。
併用可能なビニルモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、
プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(ア
クリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル
、アクリル酸2‐ヒドロキシエチル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、
メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等)、ス
チレン誘導体(スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−メトキシスチレン等)、
ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニ
ルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等)、
ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、不飽和カルボ
ン酸類(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等)、アクリ
ルアミド類(N、N−ジメチルアクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、
N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類(N、N−ジメチルメタク
リルアミド)、アクリロニトリル等を挙げることができる。
本発明で特に有用な含フッ素ポリマーは、パーフルオロオレフィンとビニルエーテル類
またはビニルエステル類のランダム共重合体である。特に単独で架橋反応可能な基((メ
タ)アクリロイル基等のラジカル反応性基、エポキシ基、オキセタニル基等の開環重合性
基等)を有していることが好ましい。これらの架橋反応性基含有重合単位はポリマーの全
重合単位の5〜70mol%を占めていることが好ましく、特に好ましくは30〜60m
ol%の場合である。好ましいポリマーについては、特開2002−243907号、特
開2002−372601号、特開2003−26732号、特開2003−22270
2号、特開2003−294911号、特開2003−329804号、特開2004−
4444、特開2004−45462号に記載のものを挙げることができる。
また本発明の含フッ素ポリマーには防汚性を付与する目的で、ポリシロキサン構造が導
入されていることが好ましい。ポリシロキサン構造の導入方法に制限はないが例えば特開
平6−93100号、特開平11−189621号、同11−228631号、特開20
00−313709号の各公報に記載のごとく、シリコーンマクロアゾ開始剤を用いてポ
リシロキサンブロック共重合成分を導入する方法、特開平2−251555号、同2−3
08806号の各公報に記載のごとくシリコーンマクロマーを用いてポリシロキサングラ
フト共重合成分を導入する方法が好ましい。特に好ましい化合物としては、特開平11−
189621号の実施例1、2、及び3のポリマー、又は特開平2−251555号の共
重合体A−2及びA−3を挙げることができる。これらのポリシロキサン成分はポリマー
中の0.5〜10質量%であることが好ましく、特に好ましくは1〜5質量%である。
本発明に好ましく用いることのできるポリマーの好ましい分子量は、質量平均分子量が
5000以上、好ましくは10000〜500000、最も好ましくは15000〜20
0000である。平均分子量の異なるポリマーを併用することで塗膜面状の改良や耐傷性
の改良を行うこともできる。
上記のポリマーに対しては特開平10−25388号公報および特開2000−170
28号公報に記載のごとく適宜重合性不飽和基を有する硬化剤を併用してもよい。また、
特開2002−145952号に記載のごとく含フッ素の多官能の重合性不飽和基を有す
る化合物との併用も好ましい。多官能の重合性不飽和基を有する化合物の例としては、前
記で述べた多官能モノマーを挙げることができる。これら化合物は、特にポリマー本体に重合性不飽和基を有する化合物を用いた場合に耐擦傷性改良に対する併用効果が大きく好ましい。
1−(4)オルガノシラン化合物
本発明のフィルムには、オルガノシラン化合物の加水分解物および/またはその部分縮
合物等(以下、得られた反応溶液を「ゾル成分」とも称する)を含有させることが、耐擦
傷性の点で好ましい。
このゾル成分は、前記硬化性組成物を塗布後、乾燥、加熱工程で縮合して硬化物を形成
することによりバインダーとして機能する。また、多官能アクリレートポリマーを有する
場合、活性光線の照射により3次元構造を有するバインダーが形成される。
前記オルガノシラン化合物は、下記一般式[A]で表されるものが好ましい。
一般式[A]
(R10m−Si(X)4-m
前記一般式[A]において、R10は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無
置換のアリール基を表す。アルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル
、ヘキシル、デシル、ヘキサデシル等が挙げられる。アルキル基として好ましくは炭素数
1〜30、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜6のものである。
アリール基としてはフェニル、ナフチル等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
Xは、水酸基または加水分解可能な基を表し、例えばアルコキシ基(炭素数1〜5のア
ルコキシ基が好ましい。例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる)、ハロゲン原子
(例えばCl、Br、I等)、及びR2COO(R2は水素原子または炭素数1〜5のアル
キル基が好ましい。例えばCH3COO、C25COO等が挙げられる)で表される基が
挙げられ、好ましくはアルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基またはエトキシ基
である。
mは1〜3の整数を表し、好ましくは1または2であり、特に好ましくは1である。
10あるいはXが複数存在するとき、複数のR10あるいはXはそれぞれ同じであっても
異なっていても良い。
10に含まれる置換基としては特に制限はないが、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素
等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル、エチ
ル、i−プロピル、プロピル、t−ブチル等)、アリール基(フェニル、ナフチル等)、
芳香族ヘテロ環基(フリル、ピラゾリル、ピリジル等)、アルコキシ基(メトキシ、エト
キシ、i−プロポキシ、ヘキシルオキシ等)、アリールオキシ(フェノキシ等)、アルキ
ルチオ基(メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ等)、アルケニ
ル基(ビニル、1−プロペニル等)、アシルオキシ基(アセトキシ、アクリロイルオキシ
、メタクリロイルオキシ等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシ
カルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル等)、カルバモイ
ル基(カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メ
チル−N−オクチルカルバモイル等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ、ベンゾイルア
ミノ、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)等が挙げられ、これら置換基は更に置換さ
れていても良い。
10が複数ある場合は、少なくとも一つが置換アルキル基もしくは置換アリール基であ
ることが好ましい。
前記一般式[A]で表されるオルガノシラン化合物の中でも、下記一般式[B]で表さ
れるビニル重合性の置換基を有するオルガノシラン化合物が好ましい。
一般式[B]
前記一般式[B]において、R1は水素原子、メチル基、メトキシ基、アルコキシカル
ボニル基、シアノ基、フッ素原子、または塩素原子を表す。アルコキシカルボニル基とし
ては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。水素原子、メチ
ル基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子、および塩素原子が好
ましく、水素原子、メチル基、メトキシカルボニル基、フッ素原子、および塩素原子が更
に好ましく、水素原子およびメチル基が特に好ましい。
Yは単結合もしくは*−COO−**,*−CONH−**又は*−O−**を表し、
単結合、*−COO−**および*−CONH−**が好ましく、単結合および*−CO
O−**が更に好ましく、*−COO−**が特に好ましい。*は=C(R1)−に結合
する位置を、**はLに結合する位置を表す。
Lは2価の連結鎖を表す。具体的には、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もし
くは無置換のアリーレン基、内部に連結基(例えば、エーテル、エステル、アミドなど)
を有する置換もしくは無置換のアルキレン基、内部に連結基を有する置換もしくは無置換
のアリーレン基が挙げられ、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換の
アリーレン基、内部に連結基を有するアルキレン基が好ましく、無置換のアルキレン基、
無置換のアリーレン基、内部にエーテルあるいはエステル連結基を有するアルキレン基が
更に好ましく、無置換のアルキレン基、内部にエーテルあるいはエステル連結基を有する
アルキレン基が特に好ましい。置換基は、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、カルボキシ
ル基、エポキシ基、アルキル基、アリール基等が挙げられ、これら置換基は更に置換され
ていても良い。
nは0または1を表す。Xが複数存在するとき、複数のXはそれぞれ同じであっても異
なっていても良い。nとして好ましくは0である。
10は一般式[A]と同義であり、置換もしくは無置換のアルキル基、無置換のアリー
ル基が好ましく、無置換のアルキル基、無置換のアリール基が更に好ましい。
Xは一般式[A]と同義であり、ハロゲン原子、水酸基、無置換のアルコキシ基が好ま
しく、塩素原子、水酸基、無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基が更に好ましく、水酸基
、炭素数1〜3のアルコキシ基が更に好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
一般式[A]、一般式[B]の化合物は2種類以上を併用しても良い。以下に一般式[
A]、一般式[B]で表される化合物の具体例を示すが、限定されるものではない。
これらのうち、(M−1)、(M−2)、および(M−5)が特に好ましい。
そして、前記オルガノシラン化合物の加水分解物および/または部分縮合物は、一般に
前記オルガノシラン化合物を触媒の存在下で処理して製造されるものである。触媒として
は、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類;シュウ酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トルエ
ンスルホン酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩
基類;トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類;トリイソプロポキシアルミニウム、
テトラブトキシジルコニウム等の金属アルコキシド類;Zr、Ti又はAlなどの金属を
中心金属とする金属キレート化合物等が挙げられる。本発明においては、金属キレート化
合物、無機酸類及び有機酸類の酸触媒を用いるのが好ましい。無機酸では塩酸、硫酸が好
ましく、有機酸では、水中での酸解離定数(pKa値(25℃))が4.5以下のものが
好ましく、更には、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が3.0以下の有機酸が好ましく、
特に、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸が好ましく、水中での酸解
離定数が2.5以下の有機酸が更に好ましく、具体的には、メタンスルホン酸、シュウ酸
、フタル酸、マロン酸が更に好ましく、シュウ酸が特に好ましい。
金属キレート化合物としては、一般式R3OH(式中、R3は炭素数1〜10のアルキル
基を示す)で表されるアルコールとR4COCH2COR5(式中、R4は炭素数1〜10の
アルキル基、R5は炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基を
示す)で表される化合物とを配位子とした、Zr、Ti、Alから選ばれる金属を中心金
属とするものであれば特に制限なく好適に用いることができる。この範疇であれば、2種
以上の金属キレート化合物を併用しても良い。本発明に用いられる 金属キレート化合物
は、一般式Zr(OR3p1(R4COCHCOR5p2、Ti(OR3q1(R4COCH
COR5q2、およびAl(OR3r1(R4COCHCOR5r2で表される化合物群から
選ばれるものが好ましく、前記オルガノシラン化合物の加水分解物および/または部分縮
合物の縮合反応を促進する作用をなす。
金属キレート化合物中のR3およびR4は、同一または異なってもよく炭素数1〜10の
アルキル基、具体的にはエチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s
ec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、フェニル基などである。また、R5
、前記と同様の炭素数1〜10のアルキル基のほか、炭素数1〜10のアルコキシ基、例
えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、
sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基などである。また、金属キレート化合物中のp1、
p2、q1、q2、r1、およびr2は、それぞれp1+p2=4、q1+q2=4、r
1+r2=3となる様に決定される整数を表す。
これらの金属キレート化合物の具体例としては、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセ
テートジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、
n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピ
ルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニ
ウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート
化合物;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポ
キシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセ
トン)チタニウムなどのチタニウムキレート化合物;ジイソプロポキシエチルアセトアセ
テートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナートアルミニウム、イソプロポ
キシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセ
トナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(ア
セチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトア
セテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物などが挙げられる。
これらの金属キレート化合物のうち好ましいものは、トリ−n−ブトキシエチルアセト
アセテートジルコニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタニウム、
ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテー
ト)アルミニウムである。これらの金属キレート化合物は、1種単独であるいは2種以上
混合して使用することができる。また、これらの金属キレート化合物の部分加水分解物を
使用することもできる。
また、本発明においては、前記硬化性組成物に、更にβ−ジケトン化合物および/また
はβ−ケトエステル化合物が添加されることが好ましい。以下にさらに説明する。
本発明で使用されるのは、一般式R4COCH2COR5で表されるβ−ジケトン化合物
および/またはβ−ケトエステル化合物であり、本発明に用いられる硬化性組成物の安定
性向上剤として作用するものである。ここで、R4は炭素数1〜10のアルキル基、R5
炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基を表す。すなわち、前
記金属キレート化合物(ジルコニウム、チタニウムおよび/またはアルミニウム化合物)
中の金属原子に配位することにより、これらの金属キレート化合物によるオルガノシラン
化合物の加水分解物および/または部分縮合物の縮合反応を促進する作用を抑制し、得ら
れる組成物の保存安定性を向上させる作用をなすものと考えられる。β−ジケトン化合物
および/またはβ−ケトエステル化合物を構成するR4およびR5は、前記金属キレート化
合物を構成するR4およびR5と同様である。
このβ−ジケトン化合物および/またはβ−ケトエステル化合物の具体例としては、ア
セチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、ア
セト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec−ブチル、アセ
ト酢酸−t−ブチル、2,4−ヘキサン−ジオン、2,4−ヘプタン−ジオン、3,5−
ヘプタン−ジオン、2,4−オクタン−ジオン、2,4−ノナン−ジオン、5−メチル−
ヘキサン−ジオンなどを挙げることができる。これらのうち、アセト酢酸エチルおよびア
セチルアセトンが好ましく、特にアセチルアセトンが好ましい。これらのβ−ジケトン化
合物および/またはβ−ケトエステル化合物は、1種単独でまたは2種以上を混合して使
用することもできる。本発明においてβ−ジケトン化合物および/またはβ−ケトエステ
ル化合物は、金属キレート化合物1モルに対し好ましくは2モル以上、より好ましくは3
〜20モル用いられる。2モル未満では得られる組成物の保存安定性に劣るおそれがあり
好ましいものではない。
前記オルガノシラン化合物の配合量は、例えば低屈折率層の全固形分の0.1〜50質
量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましく、1〜10質量%が最も好ましい。
前記オルガノシラン化合物は硬化性組成物(防眩層用、低屈折率層用等の塗布液)に直
接添加してもよいが・BR>A前記オルガノシラン化合物をあらかじめ触媒の存在下に処理して前記オルガノシラン化合物の加水分解物および/または部分縮合物を調製し、得られた反応溶液(ゾル液)を用いて前記硬化性組成物を調整するのが好ましく、本発明においてはまず前記オルガノシラン化合物の加水分解物および/または部分縮合物および金属キレート化合物を含有する組成物を調製し、これにβ−ジケトン化合物および/またはβ−ケトエステル化合物を添加した液を防眩層もしくは低屈折率層の少なくとも1層の塗布液に含有せしめて塗設することが好ましい。
1−(5)開始剤
各種のエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラ
ジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
本発明のフィルムを作成するに当り、光開始剤あるいは熱開始剤を併用することができ
る。
<光開始剤>
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類
、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合
物、過酸化物類(特開2001−139663号等)、2,3−ジアルキルジオン化合物
類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィン
ダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体
、クマリン類などが挙げられる。
アセトフェノン類の例には、2,2−ジメトキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシ
アセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシ−ジメチルフェニルケト
ン、1−ヒドロキシ−ジメチル−p−イソプロピルフェニルケトン、1−ヒドロキシシク
ロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフ
ェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタ
ノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノ
ン、が含まれる。
ベンゾイン類の例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエ
ーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾインベン
ゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエ
ーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。
ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾ
イル−4’−メチルジフェニルサルファイド、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4
−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメチルアミノ
ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、3,3’、4、4’−テトラ(t−ブチルパーオキ
シカルボニル)ベンゾフェノンなどが含まれる。
ボレート塩としては、例えば、特許第2764769号、特開2002−116539
号等の各公報、および、Kunz,Martin“Rad Tech’98.Proce
eding April 19〜22頁,1998年,Chicago”等に記載される
有機ホウ酸塩記載される化合物があげられる。例えば、前記特開2002−116539
号明細書の段落番号[0022]〜[0027]記載の化合物が挙げられる。またその他
の有機ホウ素化合物としては、特開平6−348011号公報、特開平7−128785
号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−2
92014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられ、具体例に
はカチオン性色素とのイオンコンプレックス類が挙げられる。
ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォス
フィンオキシドが含まれる。
活性エステル類の例には1、2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−,2
−(O−ベンゾイルオキシム)]、スルホン酸エステル類、環状活性エステル化合物など
が含まれる。
具体的には特開2000−80068号公報記載の実施例記載化合物1〜21が特に好
ましい。
オニウム塩類の例には、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホ
ニウム塩が挙げられる。
活性ハロゲン類としては、具体的には、若林 等の“Bull Chem.Soc J
apan”42巻、2924頁(1969年)、米国特許第3,905,815号明細書
、特開平5−27830号、M.P.Hutt“Jurnal of Heterocy
clic Chemistry”1巻(3号),(1970年)等に記載の化合物が挙げ
られ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物:s−トリアジン化合物が
挙げられる。より好適には、少なくとも一つのモノ、ジまたはトリハロゲン置換メチル基
がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体が挙げられる。具体的な例にはS−
トリアジンやオキサチアゾール化合物が知られており、2−(p−メトキシフェニル)−
4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−
4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(p−スチリルフェニル)−
4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(3−Br−4−ジ(エチル
酢酸エステル)アミノ)フェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジ
ン、2−トリハロメチル−5−(p−メトキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾー
ルが含まれる。具体的には特開昭58−15503のp14〜p30、特開昭55−77
742のp6〜p10、特公昭60−27673のp287記載のNo.1〜No.8、
特開昭60−239736のp443〜p444のNo.1〜No.17、US−470
1399のNo.1〜19などの化合物が特に好ましい。
無機錯体の例にはビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,
6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムが挙げられ
る。
クマリン類の例には3−ケトクマリンが挙げられる。
これらの開始剤は単独でも混合して用いても良い。
「最新UV硬化技術」,(株)技術情報協会,1991年,p.159、及び、「紫外
線硬化システム」 加藤清視著、平成元年、総合技術センター発行、p.65〜148に
も種々の例が記載されており本発明に有用である。
市販の光ラジカル重合開始剤としては、日本化薬(株)製のKAYACURE(DET
X−S,BP−100,BDMK,CTX,BMS,2−EAQ,ABQ,CPTX,E
PD,ITX,QTX,BTC,MCAなど)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株
)製のイルガキュア(651,184,500,819,907,369,1173,1
870,2959,4265,4263など)、サートマー社製のEsacure(KI
P100F,KB1,EB3,BP,X33,KT046,KT37,KIP150,T
ZT)等およびそれらの組み合わせが好ましい例として挙げられる。
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で
使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
<光増感剤>
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチ
ルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーケトンおよびチオ
キサントン、などを挙げることができる。
更にアジド化合物、チオ尿素化合物、メルカプト化合物などの助剤を1種以上組み合わ
せて用いてもよい。
市販の光増感剤としては、日本化薬(株)製のKAYACURE(DMBI,EPA)
などが挙げられる。
<熱開始剤>
熱ラジカル開始剤としては、有機あるいは無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等
を用いることができる。
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸
化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒ
ドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリ
ウム等、アゾ化合物として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾ
ビス(プロピオニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等、
ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等が挙げら
れる。
1−(6)架橋性化合物
本発明を構成するモノマーあるいはポリマーバインダ−が単独で十分な硬化性を有しな
い場合には、架橋性化合物を配合することにより、必要な硬化性を付与することができる

例えばポリマー本体に水酸基含有する場合には、各種アミノ化合物を硬化剤として用い
ることが好ましい。架橋性化合物として用いられるアミノ化合物は、例えば、ヒドロキシ
アルキルアミノ基及びアルコキシアルキルアミノ基のいずれか一方又は両方を合計で2個
以上含有する化合物であり、具体的には、例えば、メラミン系化合物、尿素系化合物、ベ
ンゾグアナミン系化合物、グリコールウリル系化合物等を挙げることができる。
メラミン系化合物は、一般にトリアジン環に窒素原子が結合した骨格を有する化合物と
して知られているものであり、具体的には、メラミン、アルキル化メラミン、メチロール
メラミン、アルコキシ化メチルメラミン等を挙げることができるが、1分子中にメチロー
ル基及びアルコキシ化メチル基のいずれか一方又は両方を合計で2個以上有するものが好
ましい。具体的には、メラミンとホルムアルデヒドとを塩基性条件下で反応させて得られ
るメチロール化メラミン、アルコキシ化メチルメラミン、又はそれらの誘導体が好ましく
、特に硬化性樹脂組成物に良好な保存安定性が得られる点、及び良好な反応性が得られる
点で、アルコキシ化メチルメラミンが好ましい。架橋性化合物として用いられるメチロー
ル化メラミン及びアルコシ化メチルメラミンには特に制約はなく、例えば、文献「プラス
チック材料講座[8]ユリア・メラミン樹脂」(日刊工業新聞社)に記載されている方法
で得られる各種の樹脂状物の使用も可能である。
また、尿素系化合物としては、尿素の他、ポリメチロール化尿素その誘導体であるアル
コキシ化メチル尿素、ウロン環を有するメチロール化ウロン及びアルコキシ化メチルウロ
ン等を挙げることができる。そして、尿素誘導体等の化合物についても、上記の文献に記
載されている各種樹脂状物の使用が可能である。
1−(7)硬化触媒
本発明のフィルムには、硬化を促進する硬化触媒として電離放射線または熱の照射によ
りラジカルや酸を発生する化合物を使用することができる。
<熱酸発生剤>
熱酸発生剤の具体例としては、例えば、各種脂肪族スルホン酸とその塩、クエン酸、酢
酸、マレイン酸等の各種脂肪族カルボン酸とその塩、安息香酸、フタル酸等の各種芳香族
カルボン酸とその塩、アルキルベンゼンスルホン酸とそのアンモニウム塩、アミン塩、各
種金属塩、リン酸や有機酸のリン酸エステル等を挙げることができる。
市販されている材料としては、キャタリスト4040、キャタリスト4050、キャタ
リスト600、キャタリスト602、キャタリスト500、キャタリスト296−9、以
上日本サイテックインダストリーズ(株)製、やNACUREシリーズ155、1051
、5076、4054JやそのブロックタイプのNACUREシリーズ2500、522
5、X49−110、3525、4167以上キング社製などが挙げられる。
この熱酸発生剤の使用割合は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0
.01〜10質量部、さらに好ましくは0.1〜5質量部である。添加量がこの範囲であ
ると、硬化性樹脂組成物の保存安定性が良好で塗膜の耐擦傷性も良好なものとなる。
<感光性酸発生剤、光酸発生剤>
更に光重合開始剤として用いることができる光酸発生剤について詳述する。
酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、または
マイクロレジスト等に使用されている公知の酸発生剤等、公知の化合物およびそれらの混
合物等が挙げられる。また、酸発生剤としては、例えば、有機ハロゲン化化合物、ジスル
ホン化合物、オニウム化合物等が挙げられる。
感光性酸発生剤としては、例えば、(1)ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニ
ウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩等の各種オニウム塩;(2)
β−ケトエステル、β−スルホニルスルホンとこれらのα−ジアゾ化合物等のスルホン化
合物;(3)アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリール
スルホン酸エステル、イミノスルホネート等のスルホン酸エステル類;(4)スルホンイ
ミド化合物類;(5)ジアゾメタン化合物類;を挙げることができる。
オニウム化合物としては、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、イミニウム塩、ホスホニ
ウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アルソニウム塩、セレノニウム塩等が挙げら
れる。中でも、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、イミニウム塩が、光
重合開始の光感度、化合物の素材安定性等の点から好ましい。例えば特開2002−29
162号明細書の段落番号[0058]〜[0059]に記載の化合物等が挙げられる。
感光性酸発生剤の使用割合は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0
.01〜10質量部、さらに好ましくは0.1〜5質量部である。
その他、具体的な化合物や使用法として、例えば特開2005―43876号公報記載
の内容などを用いることができる。
1−(8)透光性粒子
本発明のフィルム、特に防眩層やハードコート層には、防眩性(表面散乱性)や内部散
乱性を付与するため、各種の透光性粒子を用いることが出来る。
透光性粒子は有機粒子であっても、無機粒子であってもよい。粒径にばらつきがないほ
ど、散乱特性にばらつきが少なくなり、ヘイズ値の設計が容易となる。透光性粒子として
は、プラスチックビーズが好適であり、特に透明度が高く、バインダーとの屈折率差が前
述のような数値になるものが好ましい。
有機粒子としては、ポリメチルメタクリレート粒子(屈折率1.49)、架橋ポリ(ア
クリル−スチレン)共重合体粒子(屈折率1.54)、メラミン樹脂粒子(屈折率1.5
7)、ポリカーボネート粒子(屈折率1.57)、ポリスチレン粒子(屈折率1.60)
、架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.61)、ポリ塩化ビニル粒子(屈折率1.60)、
ベンゾグアナミン−メラミンホルムアルデヒド粒子(屈折率1.68)等が用いられる。
無機粒子としては、シリカ粒子(屈折率1.44)、アルミナ粒子(屈折率1.63)
、ジルコニア粒子、チタニア粒子、また中空や細孔を有する無機粒子が挙げられる。
なかでも架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリ((メタ)アクリレート)粒子、架橋ポリ(
アクリル−スチレン)粒子が好ましく用いられ、これらの粒子の中から選ばれた各透光性
粒子の屈折率にあわせてバインダーの屈折率を調整することにより、本発明の内部ヘイズ
、表面ヘイズ、中心線平均粗さを達成することができる。
さらに、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを主成分としたバインダー(硬化
後の屈折率が1.50〜1.53)とアクリル含率50〜100質量パーセントである架
橋ポリ(メタ)アクリレート重合体からなる透光性粒子を組合せて用いることが好ましく
、特にバインダーとアクリル含率50質量パーセント以上100質量パーセント未満である架橋ポリ(スチレン−アクリル)共重合体からなる透光性粒子(屈折率が1.48〜1.54)との組合せが好ましい。
本発明におけるバインダー(透光性樹脂)と透光性粒子との屈折率は、1.45〜1.
70であることが好ましく、より好ましくは1.48〜1.65である。屈折率を前記範
囲とするには、バインダー及び透光性粒子の種類及び量割合を適宜選択すればよい。どの
ように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
また、本発明においては、バインダーと透光性粒子との屈折率の差(透光性粒子の屈折
率−バインダーの屈折率)は、絶対値として好ましくは0.001〜0.030であり、
より好ましくは0.001〜0.020、更に好ましくは0.001〜0.015である
。この差が0.030を超えると、フィルム文字ボケ、暗室コントラストの低下、表面の
白濁等の問題が生じる。
ここで、バインダーの屈折率は、アッベ屈折計で直接測定するか、分光反射スペクトル
や分光エリプソメトリーを測定するなどして定量評価できる。前記透光性粒子の屈折率は
、屈折率の異なる2種類の溶媒の混合比を変化させて屈折率を変化させた溶媒中に透光性
粒子を等量分散して濁度を測定し、濁度が極小になった時の溶媒の屈折率をアッベ屈折計
で測定することで測定される。
上記のような透光性粒子の場合には、バインダー中で透光性粒子が沈降し易いので、沈
降防止のためにシリカ等の無機フィラーを添加してもよい。なお、無機フィラーは添加量
が増す程、透光性粒子の沈降防止に有効であるが、塗膜の透明性に悪影響を与える。従っ
て、好ましくは、粒径0.5μm以下の無機フィラーを、バインダーに対して塗膜の透明
性を損なわない程度に、0.1質量%未満程度含有させるとよい。
透光性粒子の平均粒径は0.5〜10μmが好ましく、より好ましくは2.0〜6.0
μmである。平均粒径が0.5μm未満であると、光の散乱角度分布が広角にまで広がる
ため、ディスプレイの文字ボケを引き起こしたりするため、好ましくない。一方、10μ
mを超えると、添加する層の膜厚を厚くする必要が生じ、カールやコスト上昇といった問
題が生じる。
また、粒子径の異なる2種以上の透光性粒子を併用して用いてもよい。より大きな粒子
径の透光性粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径の透光性粒子で表面のザラツキ感を
低減することが可能である。
前記透光性粒子は、添加層全固形分中に3〜30質量%含有されるように配合される。
より好ましくは5〜20質量%である。3質量%未満であると、添加効果が不足し、30
質量%を超えると、画像ボケや表面の白濁やギラツキ等の問題が生じる。
また、透光性粒子の密度は、好ましくは10〜1000mg/m2、より好ましくは1
00〜700mg/m2である。
<透光性粒子調製、分級法>
本発明に係る透光性粒子の製造法は、懸濁重合法、乳化重合法、ソープフリー乳化重合
法、分散重合法、シード重合法等を挙げることができ、いずれの方法で製造されてもよい
。これらの製造法は、例えば「高分子合成の実験法」(大津隆行、木下雅悦共著、化学同
人社)130頁及び146頁から147頁の記載、「合成高分子」1巻、p.246〜2
90、同3巻、p.1〜108等に記載の方法、及び特許第2543503号明細書、同
第3508304号明細書、同第2746275号明細書、同第3521560号明細書
、同第3580320号明細書、特開平10−1561号公報、特開平7−2908号公
報、特開平5−297506号公報、特開2002−145919号公報等に記載の方法
を参考にすることができる。
透光性粒子の粒度分布はヘイズ値と拡散性の制御、塗布面状の均質性から単分散性粒子
が好ましい。例えば平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定し
た場合、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましく
は0.1%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下である。このような粒度分布を
持つ粒子は、調製または合成反応後に、分級することも有力な手段であり、分級の回数を
上げることやその程度を強くすることで、望ましい分布の粒子を得ることができる。
分級には風力分級法、遠心分級法、沈降分級法、濾過分級法、静電分級法等の方法を用
いることが好ましい。
1−(9)無機粒子
本発明には硬度などの物理特性、反射率、散乱性などの光学特性などの向上のため、各
種無機粒子を用いることができる。
無機粒子としては、珪素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、インジウム、亜鉛、
錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも一つ金属の酸化物、具体例としては、Zr
2、TiO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITO等が挙げられ
る。その他BaSO4、CaCO3、タルクおよびカオリンなどが含まれる。
本発明に使用する無機粒子の粒径は、分散媒体中でなるべく微細化されていることが好
ましく、質量平均径は1〜200nmである。好ましくは5〜150nmであり、さらに
好ましくは10〜100nm、特に好ましくは10〜80nmである。無機粒子を100
nm以下に微細化することで透明性を損なわないフィルムを形成できる。無機粒子の粒子
径は、光散乱法や電子顕微鏡写真により測定できる。
無機粒子の比表面積は、10〜400m2/gであることが好ましく、20〜200m2
/gであることがさらに好ましく、30〜150m2/gであることが最も好ましい。
本発明に使用する無機粒子は分散媒体中に分散物として、使用する層の塗布液に添加す
ることが好ましい。
無機粒子の分散媒体は、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散媒
体の例には、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノ
ール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソ
ブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロ
ピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化
水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド
、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)
、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)
、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルア
ルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が含まれる。トルエン、キシレン、メ
チルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびブタノールが特に
好ましい。
特に好ましい分散媒体は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキ
サノンである。
無機粒子は、分散機を用いて分散する。分散機の例には、サンドグラインダーミル(例
、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライ
ターおよびコロイドミルが含まれる。サンドグラインダーミルおよび高速インペラーミル
が特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の
例には、ボールミル、三本ロールミル、ニーダーおよびエクストルーダーが含まれる。
<高屈折率粒子>
本発明を構成する層を高屈折率化する目的に対しては、屈折率の高い無機粒子をモノマ
ーと開始剤、有機置換されたケイ素化合物中に分散した組成物の硬化物が好ましく用いら
れる。
この場合の無機粒子としては、屈折率の観点から、特にZrO2、TiO2好ましく用い
られる。ハードコート層の高屈折率化に対してはZrO2が、高屈折率層、中屈折率層用
の粒子としてはTiO2の微粒子が最も好ましい。
上記TiO2の粒子としては、コバルト、アルミニウム、ジルコニウムから選ばれる少
なくとも1つの元素を含有するTiO2を主成分とする無機粒子が特に好ましい。主成分
とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。
本発明におけるTiO2を主成分とする粒子は、屈折率が1.90〜2.80であるこ
とが好ましく、2.10〜2.80であることがさらに好ましく、2.20〜2.80で
あることが最も好ましい。
TiO2を主成分とする粒子の一次粒子の質量平均径は1〜200nmであることが好
ましく、より好ましくは1〜150nm、さらに好ましくは1〜100nm、特に好まし
くは1〜80nmである。
TiO2を主成分とする粒子の結晶構造は、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナ
ターゼ、アモルファス構造が主成分であることが好ましく、特にルチル構造が主成分であ
ることが好ましい。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い
成分を意味する。
TiO2を主成分とする粒子に、Co(コバルト)、Al(アルミニウム)及びZr(
ジルコニウム)から選ばれる少なくとも1つの元素を含有することで、TiO2が有する
光触媒活性を抑えることができ、本発明のフィルムの耐候性を改良することができる。
特に、好ましい元素はCo(コバルト)である。また、2種類以上を併用することも好
ましい。
本発明のTiO2を主成分とする無機粒子は、表面処理により特開2001−1661
04号公報記載のごとく、コア/シェル構造を有していても良い。
層中のモノマーや無機粒子の添加量は、バインダーの全質量の10〜90質量%である
ことが好ましく、20〜80質量%であると更に好ましい。無機粒子は層内で二種類以上
用いても良い。
<低屈折率粒子>
低屈折率層に含有させる無機粒子は、低屈折率であることが望ましく、フッ化マグネシ
ウムやシリカの微粒子が挙げられる。特に、屈折率、分散安定性、コストの点でシリカ微
粒子が好ましい。
シリカ微粒子の平均粒径は、低屈折率層の厚みの30%以上150%以下が好ましく、
より好ましくは35%以上80%以下、更に好ましくは40%以上60%以下である。即
ち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、シリカ微粒子の粒径は30nm以上150
nm以下が好ましく、より好ましくは35nm以上80nm以下、更に好ましくは、40
nm以上60nm以下である。
ここで、無機粒子の平均粒径はコールターカウンターにより測定される。
シリカ微粒子の粒径が小さすぎると、耐擦傷性の改良効果が少なくなり、大きすぎると
低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりといった外観、積分反射率が悪化する。
シリカ微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでも良く、また単分散粒子でも、所
定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球径が最も好ましいが、不定形
であっても問題無い。
また、平均粒径が低屈折率層の厚みの25%未満であるシリカ微粒子(「小サイズ粒径
のシリカ微粒子」と称す)の少なくとも1種を上記の粒径のシリカ微粒子(「大サイズ粒
径のシリカ微粒子」と称す)と併用することが好ましい。
小サイズ粒径のシリカ微粒子は、大サイズ粒径のシリカ微粒子同士の隙間に存在するこ
とができるため、大サイズ粒径のシリカ微粒子の保持剤として寄与することができる。
小サイズ粒径のシリカ微粒子の平均粒径は、低屈折率層が100nmの場合、1nm以
上20nm以下が好ましく、5nm以上15nm以下が更に好ましく、10nm以上15
nm以下が特に好ましい。このようなシリカ微粒子を用いると、原料コストおよび保持剤
効果の点で好ましい。
低屈折率粒子の塗設量は、1mg/m2〜100mg/m2が好ましく、より好ましくは
5mg/m2〜80mg/m2、更に好ましくは10mg/m2〜60mg/m2である。少
なすぎると、耐擦傷性の改良効果が減り、多すぎると、低屈折率層表面に微細な凹凸がで
き、黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪化する。
<中空シリカ粒子>
屈折率をよち低下させる目的のためには、中空のシリカ微粒子を用いることが好ましい
中空のシリカ微粒子は屈折率が1.15〜1.40が好ましく、更に好ましくは1.1
7〜1.35、最もに好ましくは1.17〜1.30である。ここでの屈折率は粒子全体
として屈折率を表し、中空シリカ粒子を形成している外殻のシリカのみの屈折率を表すも
のではない。この時、粒子内の空腔の半径をa、粒子外殻の半径をbとすると、下記数式
(VIII)で表される空隙率xは
(数式VIII)
x=(4πa/3)/(4πb/3)×100
好ましくは10〜60%、更に好ましくは20〜60%、最も好ましくは30〜60%
である。中空のシリカ粒子をより低屈折率に、より空隙率を大きくしようとすると、外殻
の厚みが薄くなり、粒子の強度としては弱くなるため、耐擦傷性の観点から1.15未満
の低屈折率の粒子は好ましくない。
中空シリカの製造方法は、例えば特開2001−233611や特開2002−796
16号の各公報に記載されている。特にシェルの内部に空洞を有している粒子で、そのシ
ェルの細孔が閉塞されている粒子が特に好ましい。なお、これら中空シリカ粒子の屈折率
は特開2002−79616号公報に記載の方法で算出することができる。
中空シリカの塗設量は、1mg/m2〜100mg/m2が好ましく、より好ましくは5
mg/m2〜80mg/m2、更に好ましくは10mg/m2〜60mg/m2である。少な
すぎると、低屈折率化の効果や耐擦傷性の改良効果が減り、多すぎると、低屈折率層表面
に微細な凹凸ができ、黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪化する。
中空シリカの平均粒径は、低屈折率層の厚みの30%以上150%以下が好ましく、よ
り好ましくは35%以上80%以下、更に好ましくは40%以上60%以下である。即ち
、低屈折率層の厚みが100nmであれば、中空シリカの粒径は30nm以上150nm
以下が好ましく、より好ましくは35nm以上80nm以下、更に好ましくは、40nm以上60nm以下である。
シリカ微粒子の粒径が小さすぎると、空腔部の割合が減り屈折率の低下が見込めず、大
きすぎると低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりといった外観、積分反射率が
悪化する。シリカ微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでも良く、また単分散粒
子が好ましい。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であっても問題無い。
また、中空シリカは粒子平均粒子サイズの異なるものを2種以上併用して用いることが
できる。ここで、中空シリカの平均粒径は電子顕微鏡写真から求めることができる。
本発明において中空シリカの比表面積は、20〜300m2/gが好ましく、更に好ま
しくは30〜120m2/g、最も好ましくは40〜90m2/gである。表面積は窒素を
用いBET法で求めることが出来る。
本発明においては、中空シリカと併用して空腔のないシリカ粒子を用いることができる
。空腔のないシリカの好ましい粒子サイズは、30nm以上150nm以下、更に好まし
くは35nm以上100nm以下、最も好ましくは40nm以上80nm以下である。
1−(10)導電性粒子
本発明のフィルムには導電性を付与するために、各種の導電性粒子を用いることができ
る。
導電性粒子は、金属の酸化物または窒化物から形成することが好ましい。金属の酸化物
または窒化物の例には、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛および窒化チタンが含まれる
。酸化錫および酸化インジウムが特に好ましい。導電性無機粒子は、これらの金属の酸化
物または窒化物を主成分とし、さらに他の元素を含むことができる。主成分とは、粒子を
構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。他の元素の例には、T
i、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al
、Mg、Si、P、S、B、Nb、In、Vおよびハロゲン原子が含まれる。酸化錫およ
び酸化インジウムの導電性を高めるために、Sb、P、B、Nb、In、Vおよびハロゲ
ン原子を添加することが好ましい。Sbを含有する酸化錫(ATO)およびSnを含有す
る酸化インジウム(ITO)が特に好ましい。ATO中のSbの割合は、3〜20質量%
であることが好ましい。ITO中のSnの割合は、5〜20質量%であることが好ましい
帯電防止層に用いる導電性無機粒子の一次粒子の平均粒子径は、1〜150nmである
ことが好ましく、5〜100nmであることがさらに好ましく、5〜70nmであること
が最も好ましい。形成される帯電防止層中の導電性無機粒子の平均粒子径は、1〜200
nmであり、5〜150nmであることが好ましく、10〜100nmであることがさら
に好ましく、10〜80nmであることが最も好ましい。導電性無
機粒子の平均粒子径は
、粒子の質量を重みとした平均径であり、光散乱法や電子顕微鏡写真により測定できる。
導電性無機粒子の比表面積は、10〜400m2/gであることが好ましく、20〜2
00m2/gであることがさらに好ましく、30〜150m2/gであることが最も好まし
い。
導電性無機粒子を表面処理してもよい。表面処理は、無機化合物または有機化合物を用
いて実施する。表面処理に用いる無機化合物の例には、アルミナおよびシリカが含まれる
。シリカ処理が特に好ましい。表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アル
カノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤およびチタネートカップリング剤
が含まれる。シランカップリング剤が最も好ましい。二種類以上の表面処理を組み合わせ
て実施してもよい。
導電性無機粒子の形状は、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状あるいは不定形状であ
ることが好ましい。
二種類以上の導電性粒子を特定の層内あるいはフィルムとして併用してもよい。
帯電防止層中の導電性無機粒子の割合は、20〜90質量%であることが好ましく、2
5〜85質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがさらに好ましい。
導電性無機粒子は、分散物の状態で帯電防止層の形成に使用することができる。
1−(11)表面処理剤
本発明で使用する無機粒子は、分散液中あるいは塗布液中で、分散安定化を図るために
、あるいはバインダー成分との親和性、結合性を高めるために、プラズマ放電処理やコロ
ナ放電処理のような物理的表面処理、界面活性剤やカップリング剤等による化学的表面処
理がなされていても良い。
表面処理は、無機化合物または有機化合物の表面処理剤を用いて実施することができる
。表面処理に用いる無機化合物の例には、コバルトを含有する無機化合物(CoO2,C
23,Co34など)、アルミニウムを含有する無機化合物(Al23,Al(OH)
3など)、ジルコニウムを含有する無機化合物(ZrO2,Zr(OH)4など)、ケイ素
を含有する無機化合物(SiO2など)、鉄を含有する無機化合物(Fe23など)など
が含まれる。
コバルトを含有する無機化合物、アルミニウムを含有する無機化合物、ジルコニウムを
含有する無機化合物が特に好ましく、コバルトを含有する無機化合物、Al(OH)3
Zr(OH)4が最も好ましい。
表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン
酸、シランカップリング剤およびチタネートカップリング剤が含まれる。シランカップリ
ング剤が最も好ましい。特にシランカップリング剤(オルガノシラン化合物)、その部分
加水分解物、およびその縮合物の少なくとも一種で表面処理されていることが好ましい。
チタネートカップリング剤としては、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシ
チタン、のどのテトライソプロポキシチタンなどの金属アルコキシド、プレンアクト(K
R−TTS、KR−46B、KR−55、KR−41Bなど;味の素(株)製)などが挙
げられる。
表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、その他アニ
オン性基を有する有機化合物などが好ましく、特に好ましいのは、カルボキシル基、スル
ホン酸基、又は、リン酸基を有する有機化合物である。ステアリン酸、ラウリン酸、オレ
イン酸、リノール酸、リノレイン酸などが好ましく用いることができる。
表面処理に用いる有機化合物は、さらに、架橋又は重合性官能基を有することが好まし
い。架橋、又は、重合性官能基としては、ラジカル種による付加反応・重合反応が可能な
エチレン性不飽和基(例えば(メタ)アクリル基、アリル基、スチリル基、ビニルオキシ
基等)、カチオン重合性基(エポキシ基、オキサタニル基、ビニルオキシ基等)、重縮合
反応性基(加水分解性シリル基等、N−メチロール基)等が挙げられ、好ましくはエチレ
ン性不飽和基を有する基である。
これらの表面処理は、2種類以上を併用することもでき、アルミニウムを含有する無機
化合物とジルコニウムを含有する無機化合物を併用することが、特に好ましい。
無機粒子がシリカである場合、カップリング剤の使用が特に好ましい。カップリング剤
としては、アルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤
)が好ましく用いられる。なかでも、シランカップリング処理が特に有効である。
上記カップリング剤は、低屈折率層の無機フィラーの表面処理剤として該層塗布液調製
以前にあらかじめ表面処理を施すために用いられるが、該層塗布液調製時にさらに添加剤
として添加して該層に含有させることが好ましい。
シリカ微粒子は、表面処理前に、媒体中に予め分散されていることが、表面処理の負荷
軽減のために好ましい。
本発明に好ましく用いることのできる表面処理剤および表面処理用の触媒の具体的化合
物は、例えば、WO2004/017105号に記載のオルガノシラン化合物および触媒
を挙げることができる。
1−(12)分散剤
本発明に使用する粒子の分散には各種の分散剤を使用することができる。
分散剤は、さらに架橋又は重合性官能基を含有することが好ましい。架橋又は重合性官
能基としては、ラジカル種による付加反応・重合反応が可能なエチレン性不飽和基(例え
ば(メタ)アクリロイル基、アリル基、スチリル基、ビニルオキシ基等)、カチオン重合
性基(エポキシ基、オキサタニル基、ビニルオキシ基等)、重縮合反応性基(加水分解性
シリル基等、N−メチロール基)等が挙げられ、好ましくはエチレン性不飽和基を有する
官能基である。
無機粒子の分散、特にTiO2を主成分とする無機粒子の分散にはアニオン性基を有す
る分散剤を用いることが好ましく、アニオン性基、及び架橋又は重合性官能基を有するこ
とがより好ましく、該架橋又は重合性官能基を側鎖に有する分散剤であることが特に好ま
しい。
アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基(スルホ)、リン酸基(ホスホ
ノ)、スルホンアミド基等の酸性プロトンを有する基、またはその塩が有効であり、特に
カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基またはその塩が好ましく、カルボキシル基、リ
ン酸基が特に好ましい。1分子当たりの分散剤に含有されるアニオン性基の数は、1分子
中に複数種類が含有されていてもよいが、平均で2個以上であることが好ましく、より好
ましくは5個以上、特に好ましくは10個以上である。また、分散剤に含有されるアニオ
ン性基は、1分子中に複数種類が含有されていてもよい。
側鎖にアニオン性基を有する分散剤において、アニオン性基含有繰返し単位の組成は、
全繰返し単位のうちの10-4〜100mol%の範囲であり、好ましくは1〜50mol
%、特に好ましくは5〜20mol%である。
分散剤は、さらに架橋又は重合性官能基を含有することが好ましい。架橋又は重合性官
能基としては、ラジカル種による付加反応・重合反応が可能なエチレン性不飽和基(例え
ば(メタ)アクリロイル基、アリル基、スチリル基、ビニルオキシ基等)、カチオン重合
性基(エポキシ基、オキサタニル基、ビニルオキシ基等)、重縮合反応性基(加水分解性
シリル基等、N−メチロール基)等が挙げられ、好ましくはエチレン性不飽和基を有する
官能基である。
1分子当たりの分散剤に含有される架橋又は重合性官能基の数は、平均で2個以上であ
ることが好ましく、より好ましくは5個以上、特に好ましくは10個以上である。また、
分散剤に含有される架橋又は重合性官能基は、1分子中に複数種類が含有されていてもよ
い。
本発明に用いる好ましい分散剤において、側鎖にエチレン性不飽和基を有する繰返し単
位の例としては、ポリ−1,2−ブタジエンおよびポリ−1,2−イソプレン構造あるい
は、(メタ)アクリル酸のエステルまたはアミドの繰返し単位であって、それに特定の残
基(−COORまたは−CONHRのR基)が結合しているものが利用できる。上記特定
の残基(R基)の例としては、−(CH2)n−CR21=CR2223、−(CH2O)n−
CH2CR21=CR2223、−(CH2CH2O)n−CH2CR21=CR2223、−(CH
2)n−NH−CO−O−CH2CR21=CR2223、−(CH2)n−O−CO−CR21
=CR2223および−(CH2CH2O)2−X(R21〜R23はそれぞれ、水素原子、ハロ
ゲン原子、炭素原子数が1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオ
キシ基であり、R21とR22またはR23は互いに結合して環を形成してもよく、nは1〜1
0の整数であり、そしてXはジシクロペンタジエニル残基である)を挙げることができる
。エステル残基のRの具体例には、−CH2CH=CH2(特開昭64−17047号公報
記載のアリル(メタ)アクリレートのポリマーに相当)、−CH2CH2O−CH2CH=
CH2、−CH2CH2OCOCH=CH2、−CH2CH2OCOC(CH3)=CH2、−C
2C(CH3)=CH2、−CH2CH=CH−C65、−CH2CH2OCOCH=CH−
65、−CH2CH2−NHCOO−CH2CH=CH2および−CH2CH2O−X(Xは
ジシクロペンタジエニル残基)が含まれる。アミド残基のRの具体例には、−CH2CH
=CH2、−CH2CH2−Y(Yは1−シクロヘキセニル残基)および−CH2CH2−O
CO−CH=CH2、−CH2CH2−OCO−C(CH3)=CH2が含まれる。
上記のエチレン性不飽和基を有する分散剤においては、その不飽和結合基にフリーラジ
カル(重合開始ラジカルまたは重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、分子
間で直接、または重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、分子間に架橋が形成さ
れて硬化する。あるいは、分子中の原子(例えば不飽和結合基に隣接する炭素原子上の水
素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに
結合することによって、分子間に架橋が形成されて硬化する。
アニオン性基、及び架橋又は重合性官能基を有し、かつ該架橋又は重合性官能基を側鎖
に有する分散剤の質量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが1000以上であるこ
とが好ましい。分散剤のより好ましい質量平均分子量(Mw)は2000〜100000
0であり、さらに好ましくは5000〜200000、特に好ましくは10000〜10
0000である。
架橋又は重合性官能基の含有単位は、アニオン性基含有繰返し単位以外の全ての繰返し
単位を構成していてもよいが、好ましくは全架橋又は繰返し単位のうちの5〜50mol
%であり、特に好ましくは5〜30mol%である。
分散剤は、架橋又は重合性官能基、アニオン性基を有するモノマー以外の適当なモノマ
ーとの共重合体であっても良い。共重合成分に関しては特に限定はされないが、分散安定
性、他のモノマー成分との相溶性、形成皮膜の強度等種々の観点から選択される。好まし
い例としては、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t‐ブ
チル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、スチレン等が挙げら
れる。
分散剤の形態は特に制限はないが、ブロック共重合体またはランダム共重合体であるこ
とが好ましくコストおよび合成的な容易さからランダム共重合体であることが特に好まし
い。
分散剤の無機粒子に対する使用量は、1〜50質量%の範囲であることが好ましく、5
〜30質量%の範囲であることがより好ましく、5〜20質量%であることが最も好まし
い。また、分散剤は2種類以上を併用してもよい。
以下に本発明に好ましく用いられる分散剤の具体例を示すが、本発明用の分散剤はこれ
らに限定されるものではない。なお特に記載の無い場合はランダム共重合体を表す。
1−(13)防汚剤
本発明のフィルム、特にフィルムの最上層には防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性等の
特性を付与する目的で、公知のシリコーン系あるいはフッ素系の防汚剤、滑り剤等を適宜
添加することが好ましい。
これらの添加剤を添加する場合には低屈折率層全固形分の0.01〜20質量%の範囲
で添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加される
場合であり、特に好ましくは0.1〜5質量%の場合である。
シリコーン系化合物の好ましい例としてはジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位と
して複数個含む化合物鎖の末端および/または側鎖に置換基を有するものが挙げられる。
ジメチルシリルオキシを繰り返し単位として含む化合物鎖中にはジメチルシリルオキシ以
外の構造単位を含んでもよい。置換基は同一であっても異なっていても良く、複数個ある
ことが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニ
ル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、フルオロア
ルキル基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などを含む基が挙げられ
る。分子量に特に制限はないが、10万以下であることが好ましく、5万以下であること
がより好ましく、3000〜30000であることが特に好ましく、10000〜200
00であることが最も好ましい。シリコーン系化合物のシリコーン原子含有量には特に制
限はないが18.0質量%以上であることが好ましく、25.0〜37.8質量%である
ことが特に好ましく、30.0〜37.0質量%であることが最も好ましい。好ましいシ
リコーン系化合物の例 としては信越化学(株)製、X−22−174DX、X−22−
2426、X−22−164B、X22−164C、X−22−170DX、X−22−
176D、X−22−1821(以上商品名)やチッソ(株)製、FM−0725、FM
−7725、FM−4421、FM−5521、FM6621、FM−1121やGel
est製DMS−U22、RMS−033、RMS−083、UMS−182、DMS−
H21、DMS−H31、HMS−301、FMS121、FMS123、FMS131
、FMS141、FMS221(以上商品名)などが挙げられるがこれらに限定されるも
のではない。
フッ素系化合物としては、フルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。該フルオロ
アルキル基は炭素数1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜10であり、直
鎖(例えば−CF2CF3,−CH2(CF24H,−CH2(CF2)8CF3,−CH2
2(CF24H等)であっても、分岐構造(例えばCH(CF32,CH2CF(CF3
2,CH(CH3)CF2CF3,CH(CH3)(CF25CF2H等)であっても、脂環
式構造(好ましくは5員環または6員環、例えばパーフルオロシクロへキシル基、パーフ
ルオロシクロペンチル基またはこれらで置換されたアルキル基等)であっても良く、エー
テル結合を有していても良い(例えばCH2OCH2CF2CF3,CH2CH2OCH24
8H,CH2CH2OCH2CH2817,CH2CH2OCF2CF2OCF2CF2H等)。
該フルオロアルキル基は同一分子中に複数含まれていてもよい。
フッ素系化合物は、さらに低屈折率層皮膜との結合形成あるいは相溶性に寄与する置換
基を有していることが好ましい。該置換基は同一であっても異なっていても良く、複数個
あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタクリロイル基、
ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオ
キシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。フッ素系化合物はフッ
素原子を含まない化合物とのポリマーであってもオリゴマーであってもよく、分子量に特
に制限はない。フッ素系化合物のフッ素原子含有量には特に制限は無いが20質量%以上
であることが好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましく、40〜70質量%
であることが最も好ましい。好ましいフッ素系化合物の例としてはダイキン化学工業(株
)製、R−2020、M−2020、R−3833、M−3833(以上商品名)、大日
本インキ(株)製、メガファックF−171、F−172、F−179A、ディフェンサ
MCF−300(以上商品名)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
防塵性、帯電防止等の特性を付与する目的で、公知のカチオン系界面活性剤あるいはポ
リオキシアルキレン系化合物のような防塵剤、帯電防止剤等を適宜添加することもできる
。これら防塵剤、帯電防止剤は前述したシリコーン系化合物やフッ素系化合物にその構造
単位が機能の一部として含まれていてもよい。これらを添加剤として添加する場合には低
屈折率層全固形分の0.01〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ま
しくは0.05〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0.1〜5
質量%の場合である。好ましい化合物の例としては大日本インキ(株)製、メガファック
F−150(商品名)、東レダウコーニング(株)製、SH−3748(商品名)などが
挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
1−(14)界面活性剤
本発明のフィルムには、特に塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状均一性を確保するた
めに、フッ素系、シリコーン系の何れかの界面活性剤、あるいはその両者を光拡散層形成
用の塗布組成物中に含有することが好ましい。特にフッ素系の界面活性剤は、より少ない
添加量において、塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状故障を改良する効果が現れるため
、好ましく用いることができる。面状均一性を高めつつ、高速塗布適性を持たせることに
より生産性を高めることができる。
フッ素系の界面活性剤の好ましい例としては、フルオロ脂肪族基含有共重合体(「フッ
素系ポリマー」と略記することもある)が挙げられ、該フッ素系ポリマーは、下記(i)
のモノマーに相当する繰り返し単位を含むことを特徴とする、あるいは下記(ii)のモ
ノマーに相当する繰り返し単位を含むことを特徴とするアクリル樹脂、メタアクリル樹脂
、及びこれらに共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体が有用である。
(i)下記一般式イで表されるフルオロ脂肪族基含有モノマー
一般式イ
一般式イにおいてR11は水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、イオウ原子ま
たは−N(R12)−を表し、mは1以上6以下の整数、nは2〜4の整数を表す。R12
水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基
、ブチル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。Xは酸素原子が好ましい
(ii)前記(i)と共重合可能な下記一般式ロで示されるモノマー
一般式ロ
一般式ロにおいて、R13は水素原子またはメチル基を表し、Yは酸素原子、イオウ原子
または−N(R15)−を表し、R15は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、具体的
にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を表し、好ましくは水素原子またはメチ
ル基である。Yは酸素原子、−N(H)−、および−N(CH3)−が好ましい。
14は置換基を有しても良い炭素数4以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル
基を表す。R14のアルキル基の置換基としては、水酸基、アルキルカルボニル基、アリー
ルカルボニル基、カルボキシル基、アルキルエーテル基、アリールエーテル基、フッ素原
子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基等があげら
れるがこの限りではない。炭素数4以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基と
しては、直鎖及び分岐してもよいブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オク
チル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル
基、ペンタデシル基、オクタデシル基、エイコサニル基等、また、シクロヘキシル基、シ
クロヘプチル基等の単環シクロアルキル基及びビシクロヘプチル基、ビシクロデシル基、
トリシクロウンデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、
テトラシクロデシル基、等の多環シクロアルキル基が好適に用いられる。
本発明で用いられるフッ素系ポリマー中に用いられるこれらの一般式イで示されるフル
オロ脂肪族基含有モノマーの量は、該フッ素系ポリマーの各単量体に基づいて10モル%
以上であり、好ましくは15〜70モル%であり、より好ましくは20〜60モル%の範
囲である。
本発明で用いられるフッ素系ポリマーの好ましい質量平均分子量は、3000〜100
,000が好ましく、5,000〜80,000がより好ましい。
更に、本発明で用いられるフッ素系ポリマーの好ましい添加量は、塗布液に対して0.
001〜5質量%の範囲であり、好ましくは0.005〜3質量%の範囲であり、更に好
ましくは0.01〜1質量%の範囲である。フッ素系ポリマーの添加量が0.001質量
%未満では効果が不十分であり、また5質量%より多くなると、塗膜の乾燥が十分に行わ
れなくなったり、塗膜としての性能(例えば反射率、耐擦傷性)に悪影響を及ぼす。
以下、一般式イで表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーからなるフッ素系ポリマーの
具体的な構造の例を示すがこの限りではない。なお式中の数字は各モノマー成分のモル比
率を示す。Mwは質量平均分子量を表す。
しかしながら、前記のようなフッ素系ポリマーを使用することにより、防眩層表面にF
原子を含有する官能基が偏析することにより防眩層の表面エネルギーが低下し、前記防眩
層上に低屈折率層をオーバーコートしたときに反射防止性能が悪化する問題が生じる。こ
れは低屈折率層を形成するために用いられる硬化性組成物の濡れ性が悪化するために低屈
折率層に目視では検知できない微小なムラが悪化するためと推定される。このような問題
を解決するためには、フッ素系ポリマーの構造と添加量を調整することにより、防眩層の
表面エネルギーを好ましくは20mN・m-1〜50mN・m-1に、より好ましくは30m
N・m-1〜40mN・m-1に制御することが効果的であることを見出した。前記のような
表面エネルギーを実現するためには、X線光電子分光法で測定したフッ素原子由来のピー
クと炭素原子由来のピークの比であるF/Cが0.1〜1.5であることが必要である。
或いは、上層を塗布する時には上層を形成する溶媒に抽出されるようなフッ素系ポリマ
ーを選択することで、下層表面(=界面)に偏在することがなくなり上層と下層の密着性
を持たせることで、高速塗布においても面状の均一性を保ち、かつ耐擦傷性の強い反射防
止フィルムを提供できる表面自由エネルギーの低下を防ぐことにより、低屈折率層塗布前
の防眩層の表面エネルギーを前記範囲に制御することでも目的を達成することができる。
そのような素材の例は下記一般式ハで表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーに相当する
繰り返し単位を含むことを特徴とするアクリル樹脂、メタアクリル樹脂、及びこれらに共
重合可能なビニル系モノマーとの共重合体である。
(iii)下記一般式ハで表されるフルオロ脂肪族基含有モノマー
一般式ハ
一般式ハにおいてR21は水素原子またはハロゲン原子またはメチル基を表し、水素原子
、メチル基がより好ましい。X2は酸素原子、イオウ原子または−N(R22)−を表し、
酸素原子または−N(R22)−がより好ましく、酸素原子が更に好ましい。mは1以上6
以下の整数(1〜3がより好ましく、1であることが更に好ましい。)、nは1以上18
以下の整数(4〜12がより好ましく、6〜8が更に好ましい。)を表す。R22は水素原
子または置換基を有しても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、水素原子または炭素数
1〜4のアルキル基がより好ましく、水素原子またはメチル基が更に好ましい。Xは酸素
原子が好ましい。
またフッ素系ポリマー中に一般式ハで表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーが2種類
以上構成成分として含まれていても良い。
(iv)前記(iii)と共重合可能な下記一般式ニで示されるモノマー
一般式ニ
一般式ニにおいて、R23は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表し、水素原子、
メチル基がより好ましい。Y2は酸素原子、イオウ原子または−N(R25)−を表し、酸
素原子または−N(R25)−がより好ましく、酸素原子が更に好ましい。R25は水素原子
または炭素数1〜8のアルキル基を表し、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基がよ
り好ましく、水素原子またはメチル基が更に好ましい。
24は置換基を有しても良い炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基、ポ
リ(アルキレンオキシ)基を含むアルキル基、置換基を有していても良い芳香族基(例え
ば、フェニル基またはナフチル基)を表す。炭素数1〜12の直鎖、分岐、または環状の
アルキル基、または総炭素数6〜18の芳香族がより好ましく、炭素数1〜8の直鎖、分
岐、または環状のアルキル基が更に好ましい。
以下、一般式ハで表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーに相当する繰り返し単位を含
むフッ素系ポリマーの具体的な構造の例を示すがこの限りではない。なお、式中の数字は
各モノマー成分のモル比率を示す。Mwは質量平均分子量を表す。
1−(15)増粘剤
本発明のフィルムは、塗布液の粘度を調整するために増粘剤を用いてもよい。
ここでいう増粘剤とは、それを添加することにより液の粘度が増大するものを意味し、
添加することにより塗布液の粘度が上昇する大きさとして好ましくは0.05〜50cP
(0.05〜50mPa.s)であり、さらに好ましくは0.10〜20cP(0.10
〜20mPa.s)であり、最も好ましくは0.10〜10cP(0.10〜10mPa
.s)である。
このような増粘剤としては以下のものが挙げられるが、これに限定されない。
ポリ−ε−カプロラクトン
ポリ−ε−カプロラクトン ジオール
ポリ−ε−カプロラクトン トリオール
ポリビニルアセテート
ポリ(エチレン アジペート)
ポリ(1,4−ブチレン アジペート)
ポリ(1,4−ブチレン グルタレート)
ポリ(1,4−ブチレン スクシネート)
ポリ(1,4−ブチレン テレフタレート)
ポリ(エチレンテレフタレート)
ポリ(2−メチル−1,3−プロピレンアジペート)
ポリ(2−メチル−1,3−プロピレン グルタレート)
ポリ(ネオペンチルグリコールアジペート)
ポリ(ネオペンチルグリコール セバケート)
ポリ(1,3−プロピレンアジペート)
ポリ(1,3−プロピレン グルタレート)
ポリビニルブチラール
ポリビニルホルマール
ポリビニルアセタール
ポリビニルプロパナール
ポリビニルヘキサナール
ポリビニルピロリドン
ポリアクリル酸エステル
ポリメタクリル酸エステル
セルロースアセテート
セルロースプロピオネート
セルロースアセテートブチレート
この他にも特開平8−325491号公報記載のスメクタイト、フッ素四珪素雲母、ベ
ントナイト、シリカ、モンモリロナイト及びポリアクリル酸ソーダ、特開平10−219
136エチルセルロース、ポリアクリル酸、有機粘土など、公知の粘度調整剤やチキソト
ロピー性付与剤を使用することが出来る。
1−(16)塗布溶剤
本発明の各層を形成するための塗布組成物に用いられる溶剤としては、各成分を溶解ま
たは分散可能であること、塗布工程、乾燥工程において均一な面状となり易いこと、液保
存性が確保できること、適度な飽和蒸気圧を有すること、等の観点で選ばれる各種の溶剤
が使用できる。
溶媒は2種類以上のものを混合して用いることができる。特に、乾燥負荷の観点から、
常圧室温における沸点が100℃以下の溶剤を主成分とし、乾燥速度の調整のために沸点
が100℃以上の溶剤を少量含有することが好ましい。
沸点が100℃以下の溶剤としては、例えば、ヘキサン(沸点68.7℃)、ヘプタン
(98.4℃)、シクロヘキサン(80.7℃)、ベンゼン(80.1℃)などの炭化水
素類、ジクロロメタン(39.8℃)、クロロホルム(61.2℃)、四塩化炭素(76
.8℃)、1,2−ジクロロエタン(83.5℃)、トリクロロエチレン(87.2℃)
などのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル(34.6℃)、ジイソプロピルエーテ
ル(68.5℃)、ジプロピルエーテル(90.5℃)、テトラヒドロフラン(66℃)
などのエーテル類、ギ酸エチル(54.2℃)、酢酸メチル(57.8℃)、酢酸エチル
(77.1℃)、酢酸イソプロピル(89℃)などのエステル類、アセトン(56.1℃
)、2−ブタノン(メチルエチルケトンと同じ、79.6℃)などのケトン類、メタノー
ル(64.5℃)、エタノール(78.3℃)、2−プロパノール(82.4℃)、1−
プロパノール(97.2℃)などのアルコール類、アセトニトリル
(81.6℃)、プロピオニトリル(97.4℃)などのシアノ化合物類、二硫化炭素(46.2℃)などがある。このうちケトン類、エステル類が好ましく、特に好ましくはケトン類である。ケトン類の中では2−ブタノンが特に好ましい。
沸点が100℃を以上の溶剤としては、例えば、オクタン(125.7℃)、トルエン
(110.6℃)、キシレン(138℃)、テトラクロロエチレン(121.2℃)、ク
ロロベンゼン(131.7℃)、ジオキサン(101.3℃)、ジブチルエーテル(14
2.4℃)、酢酸イソブチル(118℃)、シクロヘキサノン(155.7℃)、2−メ
チル−4−ペンタノン(MIBKと同じ、115.9℃)、1−ブタノール(117.7
℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(153℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(1
66℃)、ジメチルスルホキシド(189℃)などがある。好ましくは、シクロヘキサノ
ン、2−メチル−4−ペンタノンである。
1−(17)その他
本発明のフィルムには、前記の成分以外に、樹脂、カップリング剤、着色防止剤、着色
剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、接着
付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤などを添加することもできる。
1−(18)支持体
本発明のフィルムの支持体としては、透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明樹脂シート
や透明ガラスなど、特に限定は無い。透明樹脂フィルムとしては、セルロースアシレート
フィルム(例えば、セルローストリアセテートフィルム(屈折率1.48)、セルロース
ジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテー
トプロピオネートフィルム)、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエーテルスル
ホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステ
ルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム
、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリ
ルフィルム、ポリノルボルネン系樹脂フィルム(たとえば、アートンおよびゼオネックス
、いずれも商品名)等が使用できる。
<セルロースアシレートフィルム>
その中でも、透明性が高く、光学的に複屈折が少なく、製造が容易であり、偏光板の保
護フィルムとして一般に用いられているセルロースアシレートフィルムが好ましく、セル
ローストリアセテートフィルムが特に好ましい。又、透明支持体の厚さは通常25μm〜
1000μm程度とする。
本発明ではセルロースアシレートフィルムに、酢化度が59.0〜61.5%であるセ
ルロースアセテートを使用することが好ましい。
酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM
:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定お
よび計算に従う。
セルロースアシレートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく
、290以上であることがさらに好ましい。
また、本発明に使用するセルロースアシレートは、ゲルパーミエーションクロマトグラ
フィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の値が1.0に
近いこと、換言すれば分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値として
は、1.0〜1.7であることが好ましく、1.3〜1.65であることがさらに好まし
く、1.4〜1.6であることが最も好ましい。
一般に、セルロースアシレートの2,3,6の水酸基は全体の置換度の1/3づつに均
等に分配されるわけではなく、6位水酸基の置換度が小さくなる傾向がある。本発明では
セルロースアシレートの6位水酸基の置換度が、2,3位に比べて多いほうが好ましい。
全体の置換度に対して6位の水酸基が32%以上アシル基で置換されていることが好ま
しく、更には33%以上、特に34%以上であることが好ましい。さらにセルロースアシ
レートの6位アシル基の置換度が0.88以上であることが好ましい。6位水酸基は、ア
セチル基以外に炭素数3以上のアシル基であるプロピオニル基、ブチロイル基、バレロイ
ル基、ベンゾイル基、アクリロイル基などで置換されていてもよい。各位置の置換度の測
定は、NMRによって求めることができる。
本発明ではセルロースアシレートとして、特開平11−5851号公報の段落「004
3」〜「0044」[実施例][合成例1]、段落「0048」〜「0049」[合成例
2]、段落「0051」〜「0052」[合成例3]に記載の方法で得られたセルロース
アセテートを用いることができる。
<セルロースアシレートフィルムの製造>
本発明で用いられるセルロースアシレートフィルムは、溶液製膜法(ソルベントキャス
ト法)により製造することができる。ソルベントキャスト法では、セルロースアシレート
を有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造する。
有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素
原子数が3〜12のエステルおよび炭素原子数が1〜6のハロゲン化炭化水素から選ばれ
る溶媒を含むことが好ましい。二種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトン
およびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを
二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール
性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒
の場合、その好ましい炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の上記で特定した
好ましい炭素原子数の範囲内であればよい。
炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメ
タン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフ
ラン、アニソールおよびフェネトールが含まれる。
炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチル
ケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれ
る。
炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート
、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテート
が含まれる。
二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−
メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1または2であることが好ましく、1であること
が最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲ
ン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%である
ことが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、35〜65モル%である
ことがさらに好ましく、40〜60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリド
が、代表的なハロゲン化炭化水素である。
セルロースアシレート溶液(ドープ)の調整は一般的な方法で行える。一般的な方法と
は、0℃以上の温度(常温または高温)で処理することを意味する。溶液の調製は、通常
のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法および装置を用いて実施することがで
きる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特にメチレン
クロリド)を用いることが好ましい。非塩素系溶媒を用いることもでき、それについては
発明協会公開技報公技番号2001−1745号に記載されているものが挙げられる。
セルロースアシレートの量は、得られる溶液中に10〜40質量%含まれるように調整
する。セルロースアシレートの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。有
機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
溶液は、常温(0〜40℃)でセルロースアシレートと有機溶媒とを攪拌することによ
り調製することができる。高濃度の溶液は、加圧および加熱条件下で攪拌してもよい。具
体的には、セルロースアシレートと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒
の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。加
熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60〜200℃であり、さらに好ましく
は80〜110℃である。
各成分は予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。
容器は攪拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入し
て容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい
。あるいは、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの
加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して
液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の
壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するた
め、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶剤中に溶
解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換
器等を用いて冷却する。
冷却溶解法により、溶液を調製することもできる。冷却溶解法では、通常の溶解方法で
は溶解させることが困難な有機溶媒中にもセルロースアシレートを溶解させることができ
る。なお、通常の溶解方法でセルロースアセテートを溶解できる溶媒であっても、冷却溶
解法によると迅速に均一な溶液が得られるとの効果がある。
冷却溶解法では最初に、室温で有機溶媒中にセルロースアシレートを撹拌しながら徐々
に添加する。
セルロースアシレートの量は、この混合物中に10〜40質量%含まれるように調整す
ることが好ましい。セルロースアシレートの量は、10〜30質量%であることがさらに
好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
次に、混合物を−100〜−10℃(好ましくは−80〜−10℃、さらに好ましくは
−50〜−20℃、最も好ましくは−50〜−30℃)に冷却する。冷却は、例えば、ド
ライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30〜
−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、セルロースアセテートと有機溶媒の
混合物は固化する。
冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好
ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。冷却速度は、速いほど好ましいが、
10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして
100℃/秒が実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終
的な冷却温度との差を、冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割っ
た値である。
さらに、これを0〜200℃(好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは0〜120
℃、最も好ましくは0〜50℃)に加温すると、有機溶媒中にセルロースアセテートが溶
解する。昇温は、室温中に放置するだけでもよし、温浴中で加温してもよい。
加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好
ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。加温速度は、速いほど好ましいが、
10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして
100℃/秒が実用的な上限である。なお、加温速度は、加温を開始する時の温度と最終
的な加温温度との差を加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った
値である。
以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加
温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観
察するだけで判断することができる。
冷却溶解法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いる
ことが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時に減圧すると、
溶解時間を短縮することができる。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用
いることが望ましい。
なお、セルロースアセテート(酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)を冷却
溶解法によりメチルアセテート中に溶解した20質量%の溶液は、示差走査熱量測定(D
SC)によると、33℃近傍にゾル状態とゲル状態との疑似相転移点が存在し、この温度
以下では均一なゲル状態となる。従って、この溶液は疑似相転移温度以上、好ましくはゲ
ル相転移温度プラス10℃程度の温度で保持する必要がある。ただし、この疑似相転移温
度は、セルロースアセテートの酢化度、粘度平均重合度、溶液濃度や使用する有機溶媒に
より異なる。
調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりセル
ロースアシレートフィルムを製造する。
ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流
延前のドープは、固形分量が18〜35%となるように濃度を調整することが好ましい。
ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキ
ャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許第2336310号、同23
67603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同26
07704号、同2739069号、同2739070号、英国特許第640731号、
同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、同62−
115035号の各公報に記載がある。
ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。
流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムをドラム
またはバンドから剥ぎ取り、さらに100から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾
燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報
に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能で
ある。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてド
ープがゲル化することが必要である。
複数の調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)を用い、ソルベントキャスト法に
より2層以上を流延してフィルムを作製することもできる。この場合、ドープは、ドラム
またはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固
形分量が10〜40質量%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバ
ンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。
2層以上の複数のセルロースアシレート液を流延する場合、複数のセルロースアシレー
ト溶液を流延することが可能で、支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口か
らセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製
してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、特開平1
1−198285号、などの各公報に記載の方法が適応できる。また、2つの流延口から
セルロースアシレート溶液を流延することによってもフィルム化することでもよく、例え
ば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−104813号
、特開昭61−158413号、特開平6−134933号、の各公報に記載の方法で実
施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート
溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高・低粘度のセルロー
スアシレート溶液を同時に押出すセルロースアシレートフィルム流延方法でもよい。
あるいは、また2個の流延口を用いて、第一の流延口により支持体に成型したフィルム
を剥ぎ取り、支持体面に接していた側に第二の流延を行なうことでより、フィルムを作製
することでもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。
流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアシレー
ト溶液でもよく特に限定されない。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせるため
に、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい
さらに本発明では、セルロースアシレート溶液を、他の機能層(例えば、接着層、染料
層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)形成用溶液と同時に
流延し、機能層とフィルム形成を同時形成することも実施しうる。
単層液では、必要なフィルム厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースアシレー
ト溶液を押出すことが必要であり、その場合セルロースアシレート溶液の安定性が悪くて
固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良であったりして問題となることが多
い。この解決法として、複数のセルロースアシレート溶液を流延口から流延する。これに
より、高粘度の溶液を同時に支持体上に押出すことができ、平面性も良化し優れた面状の
フィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアシレート溶液を用いることで乾
燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができる。
セルロースアシレートフィルムには、機械的物性を改良するため、またはフィルム製造
の際における流延後の乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑
剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの
例には、トリフェニルフォスフェート(TPP)、ジフェニルビフェニルホスフェート、
およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、
フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、
ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(
DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジ
エチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−ア
セチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OA
CTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノ
ール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる
。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が
好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。
可塑剤の添加量は、セルロースアシレートの量の0.1〜25質量%であることが好ま
しく、1〜20質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることが最も好
ましい。
セルロースアシレートフィルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、
ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)を添加してもよい。劣化防止剤に
ついては、特開平3−199201号、同5−197073号、同5−194789号、
同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加
量は、劣化防止剤の効果及びフィルム表面へのブリードアウト(滲み出し)を考慮して、
調製する溶液(ドープ)の0.01〜1質量%であることが好ましく、0.01〜0.2
質量%であることがさらに好ましい。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒ
ドロキシトルエン(BHT)、トリベンジルアミン(TBA)を挙げることができる。
セルロースアシレートフィルムには、フィルムのレターデーションを調整するため、必
要に応じてレターデーション調整剤を使用することができる。フィルムのレターデーショ
ンとしては、膜厚方向には0〜300nm、面内方向には0〜1000nmが好ましい。
レターデーション上昇剤としては少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物が好
ましく、芳香族化合物は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.01〜20
質量部の範囲で使用する。芳香族化合物は、セルロースアセテート100質量部に対して
、0.05〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1〜10質量部の範囲で
使用することがさらに好ましい。二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。
詳しくは、特開2000−111914号公報、同2000−275434号公報、同
2002−236215号公報、国際公開第00/065384号パンフレット等に記載
されている。
<セルロースアシレートフィルムの延伸処理>
作製されたセルロースアシレートフィルムは、さらに延伸処理により乾燥ムラや乾燥収
縮で発生する膜厚ムラ、表面凹凸を改善することができる。また、延伸処理はレターデー
ションを調整することにも用いられる。
巾方向延伸処理の方法に特に限定はないが、その例としてテンターによる延伸方法が挙
げられる。
また、更に好ましくは、ロールの長手方向に縦延伸を行うことであり、ロールフィルム
を搬送するパスロール間にて、それぞれのパスロールのドロー比(パスロール同士の回転
比)を調節することにより、縦延伸が可能となる。
<ポリエチレンテレフタレートフィルム>
本発明では、ポリエチレンテレフタレートフィルムも、透明性、機械的強度、平面性、
耐薬品性および耐湿性共に優れており、その上安価であり好ましく用いられる。
透明プラスチックフィルムとその上に設けられるハードコート層との密着強度をより向
上させるため、透明プラスチックフィルムは易接着処理が施されたされたものであること
が更に好ましい。
市販されている光学用易接着層付きPETフィルムとしては東洋紡績社製コスモシャイ
ンA4100、A4300等が挙げられる。
2.フィルムを構成する層
本発明のフィルムは、上記の各種化合物を混合、塗設することによって得られるもので
あるが、次に、本発明のフィルムを構成する層について記載する。
2−(1)ハードコート層
本発明のフィルムには、フィルムの物理的強度を付与するために、好ましくは透明支持
体の一方の面にハードコート層が設けられる。
好ましくは、その上に低屈折率層が設けられ、更に好ましくはハードコート層と低屈折
率層の間に中屈折率層、高屈折率層が設けられ、反射防止フィルムを構成する。
ハードコート層は、二層以上の積層から構成されてもよい。
本発明におけるハードコート層の屈折率は、反射防止性のフィルムを得るための光学設
計から、屈折率が1.48〜2.00の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.
52〜1.90であり、更に好ましくは1.55〜1.80である。本発明では、ハード
コート層の上に低屈折率層が少なくとも1層あるので、屈折率がこの範囲より小さ過ぎる
と反射防止性が低下し、大き過ぎると反射光の色味が強くなる傾向がある。
ハードコート層の膜厚は、フィルムに充分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、ハ
ードコート層の厚さは通常0.5μm〜50μm程度とし、好ましくは1μm〜20μm
、さらに好ましくは2μm〜10μm、最も好ましくは3μm〜7μmである。
また、ハードコート層の強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H
以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
さらに、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少な
いほど好ましい。
ハードコート層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成さ
れることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを
含む塗布組成物を透明支持体上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応
、又は、重合反応させることにより形成することができる。
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線
、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基
等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
ハードコート層には、内部散乱性付与の目的で、平均粒径が1.0〜10.0μm、好
ましくは1.5〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子または樹脂粒子を含
有してもよい。
ハードコート層のバインダーには、ハードコート層の屈折率を制御する目的で、高屈折
率モノマーまたは無機粒子、或いは両者を加えることができる。無機粒子には屈折率を制
御する効果に加えて、架橋反応による硬化収縮を抑える効果もある。本発明では、ハード
コート層形成後において、前記多官能モノマーおよび/又は高屈折率モノマー等が重合し
て生成した重合体、その中に分散された無機粒子を含んでバインダーと称する。
2−(2)防眩層
防眩層は、表面散乱による防眩性と、好ましくはフィルムの耐擦傷性を向上するための
ハードコート性をフィルムに寄与する目的で形成される。
防眩性を形成する方法としては、特開平6−16851号記載のような表面に微細な凹
凸を有するマット状の賦型フィルムをラミネートして形成する方法、特開2000−20
6317号記載のように電離放射線照射量の差による電離放射線硬化型樹脂の硬化収縮に
より形成する方法、特開2000−338310号記載のように乾燥にて透光性樹脂に対
する良溶媒の質量比が減少することにより透光性微粒子および透光性樹脂とをゲル化させ
つつ固化させて塗膜表面に凹凸を形成する方法、特開2000−275404号記載のよ
うに外部からの圧力により表面凹凸を付与する方法などが知られており、これら公知の方
法を利用することができる。
本発明で用いることができる防眩層は好ましくはハードコート性を付与することのでき
るバインダー、防眩性を付与するための透光性粒子、および溶媒を必須成分として含有し
、透光性粒子自体の突起あるいは複数の粒子の集合体で形成される突起によって表面の凹
凸を形成されるものであることが好ましい。
マット粒子の分散によって形成される防眩層は、バインダーとバインダー中に分散され
た透光性粒子とからなる。防眩性を有する防眩層は、防眩性とハードコート性を兼ね備え
ていることが好ましい。
上記マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の
粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミ
ン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架
橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、シリカ粒子が好ましい。
マット粒子の形状は、球形あるいは不定形のいずれも使用できる。
また、粒子径の異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。より大きな粒子
径のマット粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径のマット粒子で別の光学特性を付与
することが可能である。例えば、133ppi以上の高精細ディスプレイに防眩性反射防
止フィルムを貼り付けた場合に、「ギラツキ」と呼ばれる表示画像品位上の不具合が発生
する場合がある。「ギラツキ」は、防眩性反射防止防止フィルム表面に存在する凹凸によ
り、画素が拡大もしくは縮小され、輝度の均一性を失うことに由来するが、防眩性を付与
するマット粒子よりも小さな粒子径で、バインダーの屈折率と異なるマット粒子を併用す
ることにより大きく改善することができる。
上記マット粒子は、形成された防眩層中のマット粒子量が好ましくは10〜1000m
g/m2、より好ましくは100〜700mg/m2となるように防眩層に含有される。
マット粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子
数分布に換算する。
防眩層の膜厚は、1〜10μmが好ましく、1.2〜8μmがより好ましい。薄すぎる
とハード性が不足し、厚すぎるとカールや脆性が悪化して加工適性が低下する場合がある
ので、前記範囲内とするのが好ましい。
一方、防眩層の中心線平均粗さ(Ra)を0.10〜0.40μmの範囲が好ましい。
0.40μmを超えると、ギラツキや外光が反射した際の表面の白化等の問題が発生する
。また、透過画像鮮明度の値は、5〜60%とするのが好ましい。
防眩層の強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であること
がさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
2−(3)高屈折率層、中屈折率層
本発明のフィルムには、高屈折率層、中屈折率層を設け、反射防止性を高めることがで
きる。
以下の本明細書では、この高屈折率層と中屈折率層を高屈折率層と総称して呼ぶことが
ある。なお、本発明において、高屈折率層、中屈折率層、低屈折率層の「高」、「中」、
「低」とは層相互の相対的な屈折率の大小関係を表す。また、透明支持体との関係で言え
ば屈性率は、透明支持体>低屈折率層、高屈折率層>透明支持体の関係を満たすことが好
ましい。
また、本明細書では高屈折率層、中屈折率層、低屈折率層を総称して反射防止層と総称
して呼ぶことがある。
高屈折率層の上に低屈折率層を構築して、反射防止フィルムを作製するためには、高屈
折率層の屈折率は1.55〜2.40であることが好ましく、より好ましくは1.60〜
2.20、更に好ましくは、1.65〜2.10、最も好ましくは1.80〜2.00で
ある。
支持体から近い順に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層を塗設し、反射防止フィルム
を作成する場合、高屈折率層の屈折率は、1.65乃至2.40であることが好ましく、
1.70乃至2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層
の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は
、1.55乃至1.80であることが好ましい。
高屈折率層および中屈折率層に用いるTiO2を主成分とする無機粒子は、分散物の状
態で高屈折率層および中屈折率層の形成に使用する。
無機粒子の分散において、分散剤の存在下で分散媒体中に分散する。
本発明に用いる高屈折率層および中屈折率層は、分散媒体中に無機粒子を分散した分散
液に、好ましくは、さらにマトリックス形成に必要なバインダー前駆体(例えば、後述す
る電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)、光重合開始剤等を加え
て高屈折率層および中屈折率層形成用の塗布組成物とし、透明支持体上に高屈折率層およ
び中屈折率層形成用の塗布組成物を塗布して、電離放射線硬化性化合物(例えば、多官能
モノマーや多官能オリゴマーなど)の架橋反応又は重合反応により硬化させて形成するこ
とが好ましい。
さらに、高屈折率層および中屈折率層のバインダーを層の塗布と同時または塗布後に、
分散剤と架橋反応又は重合反応させることが好ましい。
このようにして作製した高屈折率層および中屈折率層のバインダーは、例えば、上記の
好ましい分散剤と電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーとが、架橋又は
重合反応し、バインダーに分散剤のアニオン性基が取りこまれた形となる。さらに高屈折
率層および中屈折率層のバインダーは、アニオン性基が無機粒子の分散状態を維持する機
能を有し、架橋又は重合構造がバインダーに皮膜形成能を付与して、無機粒子を含有する
高屈折率層および中屈折率層の物理強度、耐薬品性、耐候性を改良する。
高屈折率層のバインダーは、該層の塗布組成物の固形分量に対して、5〜80質量%添
加する。
高屈折率層における無機粒子の含有量は、高屈折率層の質量に対し10〜90質量%で
あることが好ましく、より好ましくは15〜80質量%、特に好ましくは15〜75質量
%である。無機粒子は高屈折率層内で二種類以上を併用してもよい。
高屈折率層の上に低屈折率層を有する場合、高屈折率層の屈折率は透明支持体の屈折率
より高いことが好ましい。
高屈折率層に、芳香環を含む電離放射線硬化性化合物、フッ素以外のハロゲン化元素(
例えば、Br,I,Cl等)を含む電離放射線硬化性化合物、S,N,P等の原子を含む
電離放射線硬化性化合物などの架橋又は重合反応で得られるバインダーも好ましく用いる
ことができる。
高屈折率層の膜厚は用途により適切に設計することができる。高屈折率層を後述する光
学干渉層として用いる場合、30〜200nmが好ましく、より好ましくは50〜1
70nm、特に好ましくは60〜150nmである。
高屈折率層のヘイズは、防眩機能を付与する粒子を含有しない場合、低いほど好ましい
。5%以下であることが好ましく、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下
である。
高屈折率層は、前記透明支持体上に直接、又は、他の層を介して構築することが好まし
い。
2−(4)低屈折率層
本発明のフィルムの反射率を低減するため、低屈折率層を用いる必要がある。
低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.46であることが好ましく、1.25〜1.4
6であることがより好ましく、1.30〜1.46であることが特に好ましい。
低屈折率層の厚さは、50〜200nmであることが好ましく、70〜100nmであ
ることがさらに好ましい。低屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましく、2%
以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。具体的な低屈折
率層の強度は、500g荷重の鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上で
あることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
また、光学フィルムの防汚性能を改良するために、表面の水に対する接触角が90度以
上であることが好ましい。更に好ましくは95度以上であり、特に好ましくは100度以
上である。
低屈折率層を形成するための硬化性組成物は、(A)前記含フッ素ポリマー、(B)無
機粒子、(C)オルガノシラン化合物を含有してなるのが好ましい。
低屈折率層には、本発明の微粒子を分散・固定するためにバインダーが用いられる。バ
インダーとしては、前記ハードコート層で述べたバインダーを用いることが出来るが、バ
インダー自身の屈折率の低い含フッ素ポリマー、あるいは含フッ素ゾルゲル素材などを用
いることが好ましい。含フッ素ポリマーあるいは含フッ素ゾルゲルとしては、熱または電
離放射線により架橋し、形成される低屈折率層表面の動摩擦係数0.03〜0.30であ
り、水に対する接触角85〜120°となる素材が好ましい。
2−(5)帯電防止層、導電性層
本発明においては、帯電防止層を設けることがフィルム表面での静電気防止の点で好ま
しい。帯電防止層を形成する方法は、例えば、導電性微粒子と反応性硬化樹脂を含む導電
性塗工液を塗工する方法、或いは透明膜を形成する金属や金属酸化物等を蒸着やスパッタ
リングして導電性薄膜を形成する方法等の従来公知の方法を挙げることができる。導電性
層は、支持体に直接又は支持体との接着を強固にするプライマー層を介して形成すること
ができる。また、帯電防止層を反射防止膜の一部として使用することもできる。この場合
、最表層から近い層で使用する場合には、膜の厚さが薄くても十分に帯電防止性を得るこ
とができる
帯電防止層の厚さは、0.01〜10μmが好ましく、0.03〜7μmであることが
より好ましく、0.05〜5μmであることがさらに好ましい。帯電防止層の表面抵抗は
、105〜1012Ω/sqであることが好ましく、105〜109Ω/sqであることがさ
らに好ましく、105〜108Ω/sqであることが最も好ましい。帯電防止層の表面抵抗
は、四探針法により測定することができる。
帯電防止層は、実質的に透明であることが好ましい。具体的には、帯電防止層のヘイズ
が、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下で
あることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。波長550nmの光の
透過率が、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、6
5%以上であることがさらに好ましく、70%以上であることが最も好ましい。
本発明の帯電防止層は、強度が優れており、具体的な帯電防止層の強度は、1kg荷重
の鉛筆硬度で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H
以上であることがさらに好ましく、4H以上であることが最も好ましい。
2−(6)防汚層
本発明の最表面には防汚層を設けることができる。防汚層は反射防止層の表面エネルギ
ーを下げ、親水性あるいは親油性の汚れを付きにくくするものである。
防汚層には含フッ素ポリマーや防汚剤を用いて形成することができる。
防汚層の厚さは2〜100nmであることが好ましく、5〜30nmであることがさら
に好ましい。
2−(7)干渉ムラ(虹ムラ)防止層
透明支持体とハードコート層、または透明支持体と防眩層に実質的な屈折率差(屈折率
差が0.03以上)がある場合、透明支持体/ハードコート層、または透明支持体/防眩
界面で反射光が生じる。この反射光は反射防止層表面での反射光と干渉し、ハードコート
層(または防眩層)の微妙な膜厚ムラに起因した干渉ムラを生じることがある。この様な
干渉ムラを防止するために、例えば透明支持体とハードコート層(または防眩層)の間に
中間の屈折率nPを有し、膜厚dPが下記式を満たす様な干渉ムラ防止層を設けることもで
きる。
P=(2N−1)×λ/(4nP
但し、λは可視光の波長で450〜650nmの範囲の何れかの値、Nは自然数。
また、反射防止フィルムを画像表示等に貼合する場合、透明支持体の反射防止層を積層
していない側に粘着剤層(または接着剤層)を積層する場合がある。この様な態様で、透
明支持体と粘着剤層(または接着剤層)の間に実質的な屈折率差(0.03以上)がある
場合、透明支持体/粘着剤層(または接着剤層)の反射光が生じ、この反射光が、反射防
止層表面の反射光などと干渉し、上記と同様に支持体やハードコート層の膜厚ムラに起因
した干渉ムラを生じることがある。この様な干渉ムラを防止する目的で透明支持体の反射
防止層を積層していない側に上記と同様の干渉ムラ防止層を設けることもできる。
尚、この様な干渉ムラ防止層に関しては特開2004−345333号公報に詳しく記
載されており、本発明ではここで紹介されている干渉ムラ防止層を用いることもできる。
2−(8)易接着層
本発明のフィルムには易接着層を塗設することもできる。易接着層とは、例えば、偏光
板用保護フィルムとその隣接層、あるいはハードコート層と支持体とを接着し易くする機
能を付与する層のことをいう。
易接着処理としては、ポリエステル、アクリル酸エステル、ポリウレタン、ポリエチレ
ンイミン、シランカップリング剤等からなる易接着剤により透明プラスチックフィルム上
に易接着層を設ける処理が挙げられる。
本技術にて好ましく用いられる易接着層の例としては、−COOM(Mは水素原子また
はカチオンを表す)基を有する高分子化合物を含有する層を含むものであり、さらに好ま
しい態様はフィルム基材側に−COOM基を有する高分子化合物を含有する層を設け、そ
れに隣接させて偏光膜側に親水性高分子化合物を主たる成分として含む層を設けたもので
ある。ここでいう−COOM基を有する高分子化合物としては例えば−COOM基を有す
るスチレン−マレイン酸共重合体や−COOM基を有する酢酸ビニル−マレイン酸共重合
体、酢酸ビニル−マレイン酸−無水マレイン酸共重合体などであり、特に−COOM基を
有する酢酸ビニル−マレイン酸共重合体を用いると好ましい。このような高分子化合物を
単独でまたは2種以上併用して用い、好ましい質量平均分子量としては500〜500,
000程度のものであるとよい。−COOM基を有する高分子化合物の特に好ましい例は
特開平6−094915号、特開平7−333436号各公報記載のものが好ましく用い
られる。
また親水性高分子化合物として好ましくは、親水性セルロース誘導体(例えば、メチル
セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシセルロース等)、ポリビニルアル
コール誘導体(例えば、ポリビニルアルコール、酢酸ビニルービニルアルコール共重合体
、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ポリビニルベンザール等)、天然高分
子化合物(例えば、ゼラチン、カゼイン、アラビアゴム等)、親水性ポリエステル誘導体
(例えば、部分的にスルホン化されたポリエチレンテレフタレート等)、親水性ポリビニ
ル誘導体(例えば、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルイン
ダゾール、ポリビニルピラゾール等)が挙げられ、単独或いは2種以上併用して用いられ
る。
易接着層の厚みとしては0.05〜1.0μmの範囲が好ましい。0.05μmより薄
いと十分な接着性が得られ難く、また、1.0μmより厚いと接着性の効果は飽和する。
2−(9)カール防止層
本技術のフィルムには、カール防止加工を施すこともできる。カール防止加工とは、こ
れを施した面を内側にして丸まろうとする機能を付与するものであるが、この加工を施す
ことによって、透明樹脂フィルムの片面に何らかの表面加工をして、両面に異なる程度・
種類の表面加工を施した際に、その面を内側にしてカールしようとするのを防止する働き
をするものである。
カール防止層は基材の防眩層または反射防止層を有する側と反対側に設ける態様或いは
、例えば透明樹脂フィルムの片面に易接着層を塗設する場合もあり、また逆面にカール防
止加工を塗設するような態様が挙げられる。
カール防止加工の具体的方法としては、溶剤塗布によるもの、溶剤とセルローストリア
セテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等の透明樹脂
層を塗設するもの等が挙げられる。溶剤による方法とは、具体的には偏光板用保護フィル
ムとして用いるセルロースアシレートフィルムを溶解させる溶剤または膨潤させる溶剤を
含む組成物を塗布することによって行われる。これらのカールを防止する機能を有する層
の塗布液は従ってケトン系、エステル系の有機溶剤を含有するものが好ましい。好ましい
ケトン系の有機溶媒の例としてはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケト
ン、シクロヘキサノン、乳酸エチル、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、イソホ
ロン、エチル−n−ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジエチルケトン、ジ−n−プ
ロピルケトン、メチルシクロヘキサノン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−n−プロ
ピルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−へプチルケトン等であり、好ま
しいエステル系の有機溶剤の例としては酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチ
ル、乳酸エチル等が挙げられる。しかしながら、用いる溶剤としては溶解させる溶剤およ
び/または膨潤させる溶剤の混合物の他、さらに溶解させない溶剤を含む場合もあり、こ
れらを透明樹脂フィルムのカール度合や樹脂の種類によって適宜の割合で混合した組成物
および塗布量を用いて行う。この他にも、透明ハード加工や帯電防止加工を施してもカー
ル防止機能を発揮する。
2−(10)水吸収層
本発明のフィルムには水吸収剤を使用することができる。水吸収剤は、アルカリ土類金
属を中心に、水吸収機能を有する化合物から選択することができる。例えば、BaO、S
rO、CaO、およびMgOなどが挙げられる。さらに、Ti、Mg、Ba、Caの様な
金属元素から選択することもできる。これらの吸収剤粒子の粒子サイズは、好ましくは1
00nm以下であり、50nm以下で使用されるのがさらに好ましい。
これらの水吸収剤を含む層は前述のバリア層と同様に真空下蒸着法等を使って作成して
もよいし、ナノ粒子を各種方法で作成して用いてもよい。層の厚みは1〜100nmが好
ましく、1〜10nmがより好ましい。水吸収剤を含む層は、支持体と積層体(バリア層
と有機層の積層体)の間、積層体の最上層、積層体の間、或いは、積層体中の有機層或い
はバリア層中に添加されていてもよい。バリア層に添加する場合には共蒸着法を用いるこ
とが好ましい。
2−(11)プライマー層・無機薄膜層
本発明のフィルムでは、支持体と積層体との間に、公知のプライマー層または無機薄膜
層を設置することでガスバリアー性を高めたりすることができる。
プライマー層としては、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコー
ン樹脂等を用いることが可能であるが、本発明においてはこのプライマー層として有機無
機ハイブリッド層を、無機薄膜層として無機蒸着層またはゾルーゲル法による緻密な無機
コーティング薄膜が好ましい。無機蒸着層としては、シリカ、ジルコニア、アルミナ等の
蒸着層が好ましい。無機蒸着層は真空蒸着法、スパッタリング法等により形成することが
できる。
3.フィルムの層構成
本発明のフィルムについては、上記のような層を用い、公知の層構成を使用することが
できる。たとえば、代表的な例としては以下のようなものがある。
a.支持体/ハードコート層
b.支持体/ハードコート層/低屈折率層(図3(a))
c.支持体/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層(図3(b))
d.支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層(図3(c))
b(図3(a))のように、支持体(1)上にハードコート層(2)を塗布した上に、
低屈折率層(5)を積層すると、反射防止フィルムとして好適に用いることができる。低
屈折率層(5)はハードコート層(2)の上に低屈折率層(5)を光の波長の1/4前後
の膜厚で形成することにより、薄膜干渉の原理により表面反射を低減することができる。
また、c(図3(b))のように支持体(1)上にハードコート層(2)を塗布した上
に、高屈折率層(4)、低屈折率層(5)を積層しても反射防止フィルムとして好適に用
いることができる。さらに、d(図3(c))のように支持体(1)、ハードコート層(
2)、中屈折率層(3)、高屈折率層(4)、そして低屈折率層(5)の順序の層構成を
設置することにより、反射率を1%以下とすることができる。
aないしdの構成において、ハードコート層(2)は防眩性を有する防眩層とすること
ができる。防眩性は図3(d)に示されるようなマット粒子(6)の分散によるものでも
、図4に示されるようなエンボス加工などの方法による表面の賦形によって形成されても
よい。マット粒子(6)の分散によって形成される防眩層は、バインダーとバインダー中
に分散された透光性粒子とからなる。防眩性を有する防眩層は、好ましくは防眩性とハー
ドコート性を兼ね備えており、複数層、例えば2層〜4層で構成されていてもよい。
また透明支持体とそれよりも表面側の層の間あるいは最表面に設けても良い層として、
干渉ムラ(虹ムラ)防止層、帯電防止層(ディスプレイ側からの表面抵抗値を下げる等の
要求がある場合、表面等へのゴミつきが問題となる場合)、別のハードコート層(1層の
ハードコート層ないし防眩層だけで硬度が不足する場合)、ガスバリアー層、水吸収層(
防湿層)、密着改良層、防汚層(汚染防止層)、等が挙げられる。
本発明における反射防止層を有する防眩性反射防止フィルムを構成する各層の屈折率は
以下の関係を満たすことが好ましい。
ハードコート層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
4.製造方法
本発明のフィルムは以下の方法で形成することができるが、この方法に制限されない。
4−(1)塗布液の調整
<調製>
まず、各層を形成するための成分を含有した塗布液が調製される。その際、溶剤の揮発
量を最小限に抑制することにより、塗布液中の含水率の上昇を抑制できる。塗布液中の含
水率は5%以下が好ましく、2%以下がより好ましい。溶剤の揮発量の抑制は、各素材を
タンクに投入後の攪拌時の密閉性を向上すること、移液作業時の塗布液の空気接触面積を
最小化すること等で達成される。また、塗布中、或いはその前後に塗布液中の含水率を低
減する手段を設けてもよい。
<塗布液物性>
本発明の塗布方式は液物性により塗布可能な上限の速度が大きく影響を受けるため、塗
布する瞬間の液物性、特に粘度及び表面張力を制御する必要がある。
粘度については2.0[mPa・sec]以下であることが好ましく、更に好ましくは
1.5[mPa・sec]以下、最も好ましくは1.0[mPa・sec]以下である。
塗布液によってはせん断速度により粘度が変化するものもあるため、上記の値は塗布され
る瞬間のせん断速度における粘度を示している。塗布液にチキソトロピー剤を添加して、
高せん断のかかる塗布時は粘度が低く、塗布液にせん断が殆どかからない乾燥時は粘度が
高くなると乾燥時のムラが発生しにくくなり、好ましい。
また、液物性ではないが、透明支持体に塗り付けられる塗布液の量も塗布可能な上限の
速度に影響を与える。透明支持体に塗り付けられる塗布液の量は2.0〜5.0[cc/
2]であることが好ましい。透明支持体に塗り付けられる塗布液の量を増やすと塗布可
能な上限の速度が上がるため好ましいが、透明支持体に塗り付けられる塗布液の量を増や
しすぎると乾燥にかかる負荷が大きくなるため、液処方・工程条件によって最適な透明支
持体に塗り付けられる塗布液の量を決めることが好ましい。
表面張力については、15〜36[mN/m]の範囲にあることが好ましい。レベリン
グ剤を添加するなどして表面張力を低下させることは乾燥時のムラが抑止されるため好ま
しい。一方、表面張力が下がりすぎると塗布可能な上限の速度が低下してしまうため、1
7[mN/m]から32[mN/m]の範囲がより好まく、19[mN/m]から26[
mN/m]の範囲が更に好ましい。
<濾過>
塗布に用いる塗布液は、塗布前に濾過することが好ましい。濾過のフィルターは、塗布
液中の成分が除去されない範囲でできるだけ孔径の小さいものを使うことが好ましい。濾
過には絶対濾過精度が0.1〜10μmのフィルターが用いられ、さらには絶対濾過精度
が0.1〜5μmであるフィルターを用いることが好ましく用いられる。フィルターの厚
さは、0.1〜10mmが好ましく、更には0.2〜2mmが好ましい。その場合、ろ過
圧力は1.5MPa以下、より好ましくは1.0MPa以下、更には0.2MPa以下で
濾過することが好ましい。
ろ過フィルター部材は、塗布液に影響を及ぼさなければ特に限定されない。具体的には
、前記した無機化合物の湿式分散物のろ過部材と同様のものが挙げられる。
また、濾過した塗布液を、塗布直前に超音波分散して、脱泡、分散物の分散保持を補助
することも好ましい。
4−(2)塗布前の処理
本発明で使用する支持体は、塗布前に表面処理を施すことが好ましい。具体的方法とし
ては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理または紫外線
照射処理が挙げられる。また、特開平7−333433号公報に記載のように、下塗り層
を設けることも好ましく利用される。
さらに、塗布が行われる前工程としての除塵工程に用いられる除塵方法として、特開昭
59−150571号公報に記載のフィルム表面に不織布や、ブレード等を押しつける方
法、特開平10−309553号公報に記載の清浄度の高い空気を高速で吹き付けて付着
物をフィルム表面から剥離させ、近接した吸い込み口で吸引する方法、特開平7−333
613号公報に記載される超音波振動する圧縮空気を吹き付けて付着物を剥離させ、吸引
する方法(伸興社製、ニューウルトラクリーナー等)等の乾式除塵法が挙げられる。
また、洗浄槽中にフィルムを導入し、超音波振動子により付着物を剥離させる方法、特
公昭49−13020号公報に記載されているフィルムに洗浄液を供給したあと、高速空
気の吹き付け、吸い込みを行なう方法、特開2001−38306号に記載のように、ウ
ェブを液体でぬらしたロールで連続的に擦った後、擦った面に液体を噴射して洗浄する方
法等の湿式除塵法を用いることができる。このような除塵方法の内、超音波除塵による方
法もしくは湿式除塵による方法が、除塵効果の点で特に好ましい。
また、このような除塵工程を行う前に、フィルム支持体上の静電気を除電しておくこと
は、除塵効率を上げ、ゴミの付着を抑える点で特に好ましい。このような除電方法として
は、コロナ放電式のイオナイザ、UV、軟X線等の光照射式のイオナイザ等を用いること
ができる。除塵、塗布前後のフィルム支持体の帯電圧は、1000V以下が望ましく、好
ましくは300V以下、特に好ましくは、100V以下である。
フィルムの平面性を保持する観点から、これら処理においてセルロースアシレートフィ
ルムの温度をTg以下、具体的には150℃以下とすることが好ましい。
本発明のフィルムを偏光板の保護フィルムとして使用する場合のようにセルロースアシ
レートフィルムを偏光膜と接着させる場合には、偏光膜との接着性の観点から、酸処理ま
たはアルカリ処理、すなわちセルロースアシレートに対するケン化処理を実施することが
特に好ましい。
接着性などの観点から、セルロースアシレートフィルムの表面エネルギーは、55mN
/m以上であることが好ましく、60mN/m以上75mN/m以下であることが更に好
ましく、上記表面処理により調整することができる。
4−(3)塗布
本発明のフィルムの各層は以下の塗布方法により形成することができるが、この方法に
制限されない。
ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワ
イヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(ダイコート法)
(米国特許2681294号明細書参照)、マイクログラビアコート法等の公知の方法が
用いられ、その中でもマイクログラビアコート法、ダイコート法が好ましい。
本発明で用いられるマイクログラビアコート法とは、直径が約10〜100mm、好ま
しくは約20〜50mmで全周にグラビアパターンが刻印されたグラビアロールを支持体
の下方に、かつ支持体の搬送方向に対してグラビアロールを逆回転させると共に、該グラ
ビアロールの表面からドクターブレードによって余剰の塗布液を掻き落として、定量の塗
布液を前記支持体の上面が自由状態にある位置におけるその支持体の下面に塗布液を転写
させて塗工することを特徴とするコート法である。ロール形態の透明支持体を連続的に巻
き出し、該巻き出された支持体の一方の側に、少なくともハードコート層乃至フッ素含有
オレフィン系重合体を含む低屈折率層の内の少なくとも一層をマイクログラビアコート法
によって塗工することができる。
マイクログラビアコート法による塗工条件としては、グラビアロールに刻印されたグラ
ビアパターンの線数は50〜800本/インチが好ましく、100〜300本/インチが
より好ましく、グラビアパターンの深度は1〜600μmが好ましく、5〜200μmが
より好ましく、グラビアロールの回転数は3〜800rpmであることが好ましく、5〜
200rpmであることがより好ましく、支持体の搬送速度は0.5〜100m/分であ
ることが好ましく、1〜50m/分がより好ましい。
本発明のフィルムを高い生産性で供給するために、エクストルージョン法(ダイコート
法)が好ましく用いられる。特に、ハードコート層や反射防止層のような、ウエット塗布
量の少ない領域(20cc/m2以下)で好ましく用いることができるダイコーターにつ
いて、以下に説明する。
<ダイコーターの構成>
図5は本発明のフィルムを製造するために用いられるスロットダイを用いたコーターの
断面図である。コーター10はバックアップロール11に支持されて連続走行するウェブ
Wに対して、スロットダイ13から塗布液14をビード14aにして塗布することにより
、ウェブW上に塗膜14bを形成する。
スロットダイ13の内部にはポケット15、スロット16が形成されている。ポケット
15は、その断面が曲線及び直線で構成されており、例えば図5に示すような略円形でも
よいし、あるいは半円形でもよい。ポケット15は、スロットダイ13の幅方向にその断
面形状をもって延長された塗布液の液溜め空間で、その有効延長の長さは、塗布幅と同等
か若干長めにするのが一般的である。ポケット15への塗布液14の供給は、スロットダ
イ13の側面から、あるいはスロット開口部16aとは反対側の面中央から行う。また、
ポケット15には塗布液14が漏れ出ることを防止する栓が設けられている。
スロット16は、ポケット15からウェブWへの塗布液14の流路であり、ポケット1
5と同様にスロットダイ13の幅方向にその断面形状をもち、ウェブ側に位置する開口部
16aは、一般に、図示しない幅規制板のようなものを用いて、概ね塗布幅と同じ長さの
幅になるように調整する。このスロット16のスロット先端における、バックアップロー
ル11のウェブ走行方向の接線とのなす角は、30°以上90°以下が好ましい。
スロット16の開口部16aが位置するスロットダイ13の先端リップ17は先細り状
に形成されており、その先端はランドと呼ばれる平坦部18とされている。このランド1
8であって、スロット16に対してウェブWの進行方向の上流側を上流側リップランド1
8a、下流側を下流側リップランド18bと称する。
図6は、スロットダイ13の断面形状を従来のものと比較して示すもので、(A)は本
発明のスロットダイ13を示し、(B)は従来のスロットダイ30を示している。従来の
スロットダイ30では、上流側リップランド31aと下流側リップランド31bのウェブ
との距離は等しい。なお、符号32はポケット、33はスロットを示している。これに対
して、本発明のスロットダイ13では、下流側リップランド長さILOが短くされており、
これによって、湿潤膜厚が20μm以下の塗布を精度良くおこなうことができる。
上流側リップランド18aのランド長さIUPは特に限定はされないが、500μm〜1
mmの範囲で好ましく用いられる。下流側リップランド18bのランド長さILOは30μ
m以上100μm以下であり、好ましくは30μm以上80μm以下、さらに好ましくは
30μm以上60μm以下である。下流側リップのランド長さILOが30μmよりも短い
場合は、先端リップのエッジあるいはランドが欠けやすく、塗膜にスジが発生しやすくな
り、結果的には塗布が不可能になる。また、下流側の濡れ線位置の設定が困難になり、塗
布液が下流側で広がりやすくなるという問題も発生する。この下流側での塗布液の濡れ広
がりは、濡れ線の不均一化を意味し、塗布面上にスジなどの不良形状を招くという問題に
つながることが従来より知られている。一方、下流側リップのランド長さILOが100μ
mよりも長い場合は、ビードそのものを形成することができないために、薄層塗布を行う
ことは不可能である。
さらに、下流側リップランド18bは、上流側リップランド18aよりもウェブWに近
接したオーバーバイト形状であり、このため減圧度を下げることができて薄膜塗布に適し
たビード形成が可能となる。下流側リップランド18bと上流側リップランド18aのウ
ェブWとの距離の差(以下、オーバーバイト長さLOと称する)は30μm以上120μ
m以下が好ましく、さらに好ましくは30μm以上100μm以下、もっとも好ましくは
30μm以上80μm以下である。スロットダイ13がオーバーバイト形状のとき、先端
リップ17とウェブWの隙間GLとは、下流側リップランド18bとウェブWの隙間を示
す。
図7は、本発明のフィルムを製造するために用いられる塗布工程のスロットダイおよび
その周辺を示す斜視図である。
ウェブWの進行方向側とは反対側に、ビード14aに対して十分な減圧調整を行えるよ
う、接触しない位置に減圧チャンバー40を設置する。減圧チャンバー40は、その作動
効率を保持するためのバックプレート40aとサイドプレート40bを備えており、バッ
クプレート40aとウェブWの間、サイドプレート40bとウェブWの間にはそれぞれ隙
間GB、GSが存在する。
図8および図9は、近接している減圧チャンバー40とウェブWを示す断面図である。
サイドプレートとバックプレートは図8のようにチャンバー本体と一体のものであっても
よいし、図9のように適宜隙間を変えられるようにチャンバーにネジ40cなどで留めら
れている構造でもよい。いかなる構造でも、バックプレート40aとウェブWの間、サイ
ドプレート40bとウェブWの間に実際にあいている部分を、それぞれ隙間GB、GSと定
義する。減圧チャンバー40のバックプレート40aとウェブWとの隙間GBとは、減圧
チャンバー40を図8のようにウェブW及びスロットダイ13の下方に設置した場合、バ
ックプレート40aの最上端からウェブWまでの隙間を示す。
バックプレート40aとウェブWとの隙間GBをスロットダイ13の先端リップ17と
ウェブWとの隙間GLよりも大きくして設置するのが好ましく、これによりバックアップ
ロール11の偏心に起因するビード近傍の減圧度変化を抑制することができる。例えば、
スロットダイ13の先端リップ17とウェブWとの隙間GLが30μm以上100μm以
下のとき、バックプレート40aとウェブWの間の隙間GBは100μm以上500μm
以下が好ましい。
<材質、精度>
前記ウェブの進行方向側の先端リップのウェブ走行方向における長さ(ILO)は、長い
ほどビード形成に不利であり、この長さがスロットダイ幅方向における任意の個所間でば
らつくと、かすかな外乱によりビードが不安定になる。したがって、この長さをスロット
ダイ幅方向における変動幅が20μm以内とすることが好ましい。
また、スロットダイの先端リップの材質については、ステンレス鋼などのような材質を
用いるとダイ加工の段階でだれてしまい、前記のようにスロットダイ先端リップのウェブ
走行方向における長さ(ILO)を30〜100μmの範囲にしても、先端リップの精度を
満足できない。したがって、高い加工精度を維持するためには、特許第2817053号
公報に記載されているような超硬材質のものを用いることが重要である。具体的には、ス
ロットダイの少なくとも先端リップを、平均粒径5μm以下の炭化物結晶を結合してなる
超硬合金にすることが好ましい。超硬合金としては、タングステンカーバイド(以下、W
Cと称す)などの炭化物結晶粒子をコバルトなどの結合金属によって結合したものなどが
あり、結合金属としては他にチタン、タンタル、ニオブ及びこれらの混合金属を用いるこ
とも出来る。WC結晶の平均粒径としては、粒径3μm以下がさらに好ましい。
高精度な塗布を実現するためには、先端リップのウェブ進行方向側のランドの前記長さ
(ILO)及びウェブとの隙間のスロットダイ幅方向のばらつきも重要な因子となる。この
二つの因子の組み合わせ、つまり隙間の変動幅をある程度抑えられる範囲内の真直度を達
成することが望ましい。好ましくは、前記隙間のスロットダイ幅方向における変動幅が5
μm以下になるように先端リップとバックアップロールの真直度を出す。
<塗布速度>
上記の様なバックアップロール及び先端リップの精度を達成することにより、本発明で
好ましく用いられる塗布方式は高速塗布時における膜厚の安定性が高い。さらに、前記塗
布方式は前計量方式であるために高速塗布時でも安定した膜厚の確保が容易である。低塗
布量の塗布液に対して、該塗布方式は高速で膜厚安定性良く塗布が可能である。他の塗布
方式でも塗布は可能であるが、ディップコート法は液受け槽中の塗布液振動が不可避であ
り、段状のムラが発生しやすい。リバースロールコート法では、塗布に関連するロールの
偏芯やたわみにより段状のムラが発生しやすい。また、これらの塗布方式は後計量方式で
あるため、安定した膜厚の確保が困難である。前記ダイコート法を用い、25m/分以上
で塗布することが生産性の面から好ましい。
4−(4)<乾燥>
本発明のフィルムは、支持体上に直接又は他の層を介して塗布された後、溶剤を乾燥す
るために加熱されたゾーンにウェブで搬送されることが好ましい。
溶剤を乾燥する方法としては、各種の知見を利用することができる。具体的な知見とし
ては特開2001−286817号、同2001−314798号、同2003−126
768号、同2003−315505号、同2004−34002号などが挙げられる。
乾燥ゾーンの温度は25℃〜140℃が好ましく、乾燥ゾーンの前半は比較的低温であ
り、後半は比較的高温であることが好ましい。但し、各層の塗布組成物に含有される溶剤
以外の成分の揮発が始まる温度以下であることが好ましい。例えば、紫外線硬化樹脂と併
用される市販の光ラジカル発生剤のなかには120℃の温風中で数分以内にその数10%
前後が揮発してしまうものもあり、また、単官能、2官能のアクリレートモノマー等は1
・BR>O0℃の温風中で揮発が進行するものもある。そのような場合には、前記のように各層の塗布組成物に含有される溶剤以外の成分の揮発が始まる温度以下であることが好ましい。
また、各層の塗布組成物を支持体上に塗布した後の乾燥風は、前記塗布組成物の固形分
濃度が1〜50%の間は塗膜表面の風速が0.1〜2m/秒の範囲にあることが、乾燥ム
ラを防止するために好ましい。
また、各層の塗布組成物を支持体上に塗布した後、乾燥ゾーン内で支持体の塗布面とは
反対の面に接触する搬送ロールと支持体との温度差が0℃〜20℃以内とすると、搬送ロ
ール上での伝熱ムラによる乾燥ムラが防止でき、好ましい。
4−(5)硬化
本発明のフィルムは溶剤の乾燥の後に、ウェブで電離放射線および/または熱により各
塗膜を硬化させるゾーンを通過させ、塗膜を硬化することができる。
本発明における電離放射線種は特に制限されるものではなく、皮膜を形成する硬化性組
成物の種類に応じて、紫外線、電子線、近紫外線、可視光、近赤外線、赤外線、X線など
から適宜選択することができが、紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エ
ネルギーが容易に得られるという点で紫外線が好ましい。
紫外線反応性化合物を光重合させる紫外線の光源としては、紫外線を発生する光源であ
れば何れも使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、
カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。ま
た、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプまたはシンクロトロ
ン放射光等も用いることができる。このうち、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、
カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプを好ましく利用できる。
また、電子線も同様に使用できる。電子線としては、コックロフトワルトン型、バンデ
グラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各
種電子線加速器から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keV
のエネルギーを有する電子線を挙げることができる。
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は10mJ/cm2以上が好
ましく、更に好ましくは、50mJ/cm2〜10000mJ/cm2であり、特に好まし
くは、50mJ/cm2〜2000mJ/cm2である。その際、ウェブの幅方向の照射量
分布は中央の最大照射量に対して両端まで含めて50〜100%の分布が好ましく、80
〜100%の分布がより好ましい。
本発明では、支持体上に積層された少なくとも一層を、電離放射線を照射しかつ電離放
射線照射開始から0.5秒以上の間、膜面温度60℃以上に加熱した状態で、酸素濃度1
0体積%以下の雰囲気で電離放射線を照射する工程によって硬化することが好ましい。
また電離放射線照射と同時および/または連続して酸素濃度3体積%以下の雰囲気で加
熱されることも好ましい。
特に最外層であり、かつ膜厚が薄い低屈折率層がこの方法で硬化されることが好ましい
。硬化反応が熱で加速され、物理強度、耐薬品性に優れた皮膜を形成することができる。
電離放射線を照射する時間については0.7秒以上60秒以下が好ましく、0.7秒以
上10秒以下がより好ましい。0.5秒以下では、硬化反応が完了することができず、十
分な硬化を行うことができない。また長時間低酸素条件を維持することは、設備が大型化
し、多量の不活性ガスが必要であり好ましくない。
酸素濃度は6体積%以下の雰囲気で電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反
応により形成することが好ましく、更に好ましくは酸素濃度が4体積%以下、特に好まし
くは酸素濃度が2体積%以下、最も好ましくは1体積%以下である。必要以上に酸素濃度
を低減するためには、窒素などの不活性ガスの多量の使用量が必要であり、製造コストの
観点から好ましくない。
酸素濃度を10体積%以下にする手法としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃
度約21体積%)を別の気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒
素パージ)することである。
不活性ガスを電離放射線照射室に供給し、かつ照射室のウェッブ入り口側にやや吹き出
す条件にすることで、ウェッブ搬送にともなう導搬エアーを排除し反応室の酸素濃度を有
効に下げられるとともに、酸素による硬化阻害の大きい極表面の実質の酸素濃度を効率よ
く低減することができる。照射室のウェッブ入り口側での不活性ガスの流れの方向は、照
射室の給気、排気のバランスを調整することなどで制御できる。
不活性ガスをウェッブ表面に直接吹き付けることも、導搬エアーを除去する方法として
好ましく用いられる。
また前記反応室の前に前室を設け、事前にウェッブ表面の酸素を排除することで、より
硬化を効率よく進めることができる。また電離放射線反応室または前室のウェッブ入口側
を構成する側面は、不活性ガスを効率的に使用するために、ウェッブ表面とのギャップは
0.2〜15mmが好ましく、より好ましくは、0.2〜10mmとするのがよく、0.
2〜5mmとするのがもっとも好ましい。しかし、ウェッブを連続製造するには、ウェッ
ブを接合して繋げていく必要があり、接合には接合テープなどで貼る方法が広く用いられ
ている。このため、電離放射線反応室または前室の入口面とウェッブのギャップをあまり
狭くすると、接合テープなど接合部材が引っかかる問題が生じる。このためギャップを狭
くするためには、電離放射線反応室または前室の入口面の少なくとも一部を可動とし、接
合部が入るときは接合厚み分ギャップを広げるのが好ましい。この実現のためには、電離
放射線反応室または前室の入口面を進行方向前後に可動にしておき、接合部が通過する際
に前後に動いてギャップを広げるやり方や、電離放射線反応室または前室の入口面をウェ
ッブ面に対し、垂直方向に可動にし、接合部が通過する際に上下に動いてギャップを広げ
るやり方を取ることができる。
硬化の際、フィルム面が60℃以上170℃以下で加熱されることが好ましい。60℃
以下では加熱の硬化は少なく、170℃以上では基材の変形などの問題が生じる。更にこ
の好ましい温度は60℃〜100℃である。フィルム面とは硬化しようとする層の膜面温
度を指す。またフィルムが前記温度になる時間は、UV照射開始から0.1秒以上、30
0秒以下が好ましく、更に10秒以下が好ましい。フィルム面の温度を上記の温度範囲に
保つ時間が短すぎると、皮膜を形成する硬化性組成物の反応を促進できず、逆に長すぎて
もフィルムの光学性能が低下し、また設備が大きくなるなどの製造上の問題も生じる。
加熱する方法に特に限定はないが、ロールを加熱してフィルムに接触させる方法、加熱
した窒素を吹き付ける方法、遠赤外線あるいは赤外線の照射などが好ましい。特許252
3574号に記載の回転金属ロールに温水や蒸気・オイルなどの媒体を流して加熱する方
法も利用できる。加熱の手段としては誘電加熱ロールなどを使用しても良い。
紫外線照射は、構成する複数の層それぞれに対して1層設ける毎に照射してもよいし、
積層後照射してもよい。あるいはこれらを組み合わせて照射してもよい。生産性の点から
、多層を積層後、紫外線を照射することが好ましい。
本発明では、支持体上に積層された少なくとも一層を複数回の電離放射線により硬化す
ることができる。この場合、少なくとも2回の電離放射線が酸素濃度3体積%を超えるこ
とのない連続した反応室で行われることが好ましい。複数回の電離放射線照射を同一の低
酸素濃度の反応室で行うことにより、硬化に必要な反応時間を有効に確保することができ
る。
特に高生産性のため製造速度をあげた場合には、硬化反応に必要な電離放射線のエネル
ギーを確保するために複数回の電離放射線照射が必要となる。
また、硬化率(100−残存官能基含率)が100%未満のある値となった場合、その
上に層を設けて電離放射線および/または熱により硬化した際に下層の硬化率が上層を設
ける前よりも高くなると、下層と上層との間の密着性が改良され、好ましい。
4−(6)ハンドリング
本発明のフィルムを連続的に製造するために、ロール状の支持体フィルムを連続的に送
り出す工程、塗布液を塗布・乾燥する工程、塗膜を硬化する工程、硬化した層を有する支
持体フィルムを巻き取る工程が行われる。
ロール状のフィルム支持体からフィルム支持体がクリーン室に連続的に送り出され、ク
リーン室内で、フィルム支持体に帯電している静電気を静電除電装置により除電し、引き
続きフィルム支持体上に付着している異物を、除塵装置により除去する。引き続きクリー
ン室内に設置されている塗布部で塗布液がフィルム支持体上に塗布され、塗布されたフィ
ルム支持体は乾燥室に送られて乾燥される。
乾燥した塗布層を有するフィルム支持体は乾燥室から硬化室へ送り出され、塗布層に含
有されるモノマーが重合して硬化する。さらに、硬化した層を有するフィルム支持体は硬
化部へ送られ硬化を完結させ、硬化が完結した層を有するフィルム支持体は巻き取られて
ロール状となる。
上記工程は、各層の形成毎に行ってもよいし、塗布部−乾燥室−硬化部を複数設けて、
各層の形成を連続的に行うことも可能である。
本発明のフィルムを作成するためには、前記したように塗布液の精密濾過操作と同時に
、塗布部における塗布工程および乾燥室で行われる乾燥工程が高い清浄度の空気雰囲気下
で行われ、かつ塗布が行われる前に、フィルム上のゴミ、ほこりが充分に除かれているこ
とが好ましい。塗布工程および乾燥工程の空気清浄度は、米国連邦規格209Eにおける
空気清浄度の規格に基づき、クラス10(0.5μm以上の粒子が353個/(立方メー
トル)以下)以上であることが望ましく、更に好ましくはクラス1(0.5μm以上の粒
子が35.5個/(立方メートル)以下)以上であることが望ましい。また、空気清浄度
は、塗布−乾燥工程以外の送り出し、巻き取り部等においても高いことがより好ましい。
4−(7)鹸化処理
本発明のフィルムを2枚の偏光膜の表面保護フィルムの内の一方として用いて偏光板を
作成する際には、偏光膜と貼り合わせる側の表面を親水化することで、接着面における接
着性を改良することが好ましい。
(1)アルカリ液に浸漬する法
アルカリ液の中にフィルムを適切な条件で浸漬して、フィルム全表面のアルカリと反応
性を有する全ての面を鹸化処理する手法であり、特別な設備を必要としないため、コスト
の観点で好ましい。アルカリ液は、水酸化ナトリウム水溶液であることが好ましい。好ま
しい濃度は0.5〜3mol/Lであり、特に好ましくは1〜2mol/Lである。好ま
しいアルカリ液の液温は30〜75℃、特に好ましくは40〜60℃である。
前記の鹸化条件の組合せは比較的穏和な条件同士の組合せであることが好ましいが、フ
ィルムの素材や構成、目標とする接触角によって設定することができる。
アルカリ液に浸漬した後は、フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十
分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。
鹸化処理することにより、塗布層を有する表面と反対の表面が親水化される。偏光板用
保護フィルムは、透明支持体の親水化された表面を偏光膜と接着させて使用する。
親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする接着層との接着性を改良す
るのに有効である。
鹸化処理は、塗布層を有する側とは反対側の透明支持体の表面の水に対する接触角が低
いほど、偏光膜との接着性の観点では好ましいが、一方、浸漬法では同時に塗布層を有す
る表面から内部までアルカリによるダメージを受ける為、必要最小限の反応条件とするこ
とが重要となる。アルカリによる各層の受けるダメージの指標として、反対側の表面の透
明支持体の水に対する接触角を用いた場合、特に透明支持体がトリアセチルセルロースで
あれば、好ましくは10度〜50度、より好ましくは30度〜50度、さらに好ましくは
40度〜50度となる。50度以上では、偏光膜との接着性に問題が生じる為、好ましく
ない。一方、10度未満では、フィルムが受けるダメージが大きすぎる為、物理強度を損
ない、好ましくない。
(2)アルカリ液を塗布する方法
上述の浸漬法における各膜へのダメージを回避する手段として、適切な条件でアルカリ
液を塗布層を有する表面と反対側の表面のみに塗布、加熱、水洗、乾燥するアルカリ液塗
布法が好ましく用いられる。なお、この場合の塗布とは、鹸化を行う面に対してのみアル
カリ液などを接触させることを意味し、塗布以外にも噴霧、液を含んだベルト等に接触さ
せる、などによって行われることも含む。これらの方法を採ることにより、別途、アルカ
リ液を塗布する設備、工程が必要となるため、コストの観点では(1)の浸漬法に劣る。
一方で、鹸化処理を施す面にのみアルカリ液が接触するため、反対側の面にはアルカリ液
に弱い素材を用いた層を有することができる。例えば、蒸着膜やゾル−ゲル膜では、アル
カリ液によって、腐食、溶解、剥離など様々な影響が起こるため、浸漬法では設けること
が望ましくないが、この塗布法では液と接触しないため問題なく使用することが可能であ
る。
前記(1)、(2)のどちらの鹸化方法においても、ロール状の支持体から巻き出して
各層を形成後に行うことができるため、フィルム製造工程の後に加えて一連の操作で行っ
ても良い。さらに、同様に巻き出した支持体からなる偏光板との張り合わせ工程もあわせ
て連続で行うことにより、枚葉で同様の操作をするよりもより効率良く偏光板を作成する
ことができる。
(3)ラミネートフィルムで保護して鹸化する方法
前記(2)と同様に、塗布層がアルカリ液に対する耐性が不足している場合に、最終層
まで形成した後に該最終層を形成した面にラミネートフィルムを貼り合せてからアルカリ
液に浸漬することで最終層を形成した面とは反対側のトリアセチルセルロース面だけを親
水化し、然る後にラミネートフィルムを剥離することができる。この方法でも、塗布層へ
のダメージなしに偏光板保護フィルムとして必要なだけの親水化処理をトリアセチルセル
ロースフィルムの最終層を形成した面とは反対の面だけに施すことができる。前記(2)
の方法と比較して、ラミネートフィルムが廃棄物として発生する半面、特別なアルカリ液
を塗布する装置が不要である利点がある。
(4)中途層まで形成後にアルカリ液に浸漬する方法
下層層まではアルカリ液に対する耐性があるが、上層のアルカリ液に対する耐性不足で
ある場合には、下層まで形成後にアルカリ液に浸漬して両面を親水化処理し、然る後に上
層を形成することもできる。製造工程が煩雑になるが、たとえば防眩層とフッ素含有ゾル
ーゲル膜の低屈折率層とからなるフィルムにおいて、親水基を有する場合には防眩層と低
屈折率層との層間密着性が向上する利点がある。
(5)予め鹸化済のトリアセチルセルロースフィルムに塗布層を形成する方法
トリアセチルセルロースフィルムを予めアルカリ液に浸漬するなどして鹸化し、何れか
一方の面に直接または他の層を介して塗布層を形成してもよい。アルカリ液に浸漬して鹸
化する場合には、鹸化により親水化されたトリアセチルセルロース面との層間密着性が悪
化することがある。そのような場合には、鹸化後、塗布層を形成する面だけにコロナ放電
、グロー放電等の処理をすることで親水化面を除去してから塗布層を形成することで対処
できる。また、塗布層が親水性基を有する場合には層間密着が良好なこともある。
4−(8)偏光板の作製
本発明のフィルムは、偏光膜の片側ないし両側に配置された保護フィルムとして用い、
偏光板とすることができる。
一方の保護フィルムとして、本発明のフィルムを用いる、他方の保護フィルムは、通常
のセルロースアセテートフィルムを用いてもよいが、上述の溶液製膜法で製造され、かつ
10〜100%の延伸倍率でロールフィルム形態における巾方向に延伸したセルロースア
セテートフィルムを用いることが好ましい。
更には、本発明の偏光板において、片面が防眩性反射防止フィルムであるのに対して他
方の保護フィルムが液晶性化合物からなる光学異方性層を有する光学補償フィルムである
ことが好ましい。また、光学補償フィルムに粘着層を設け、これを介して本発明の偏光板
と貼り合せ、複合偏光板としてもよい。
前記光学異方性層は、液晶性化合物の配向が固定された層が好ましく、ディスコティッ
ク構造単位を有する化合物からなることがさらに好ましく、このような構造単位を形成す
るディスコティック液晶性化合物の例には、様々な文献(C.Destrade et
al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111
(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10
章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc
.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang et a
l.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994
))に記載の化合物が含まれる。
ディスコティック液晶性分子は、重合反応により固定されているのが最も好ましい。デ
ィスコティック液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。
ディスコティック液晶性分子を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性分
子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コア
に重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで
、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。重合性基を有するディスコティッ
ク液晶性分子について、特開2001−4387号公報に開示されている。
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜が
ある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを
用いて製造する。
反射防止フィルムの透明支持体やセルロースアセテートフィルムの遅相軸と偏光膜の透
過軸とは、実質的に平行になるように配置する。
偏光板の生産性には保護フィルムの透湿性が重要である。偏光膜と保護フィルムは水系
接着剤で貼り合わせられており、この接着剤溶剤は保護フィルム中を拡散することで、乾
燥される。保護フィルムの透湿性が高ければ、高いほど乾燥は早くなり、生産性は向上す
るが、高くなりすぎると、液晶表示装置の使用環境(高湿下)により、水分が偏光膜中に
入ることで偏光能が低下する。
保護フィルムの透湿性は、透明支持体やポリマーフィルム(および重合性液晶化合物)
の厚み、自由体積、親疎水性、等により決定される。
本発明のフィルムを偏光板の保護フィルムとして用いる場合、透湿性は100〜100
0g/m2・24hrsであることが好ましく、300〜700g/m2・24hrsであ
ることが更に好ましい。
透明支持体の厚みは、製膜の場合、リップ流量とラインスピード、あるいは、延伸、圧
縮により調整することができる。使用する主素材により透湿性が異なるので、厚み調整に
より好ましい範囲にすることが可能である。
透明支持体の自由体積は、製膜の場合、乾燥温度と時間により調整することができる。
この場合もまた、使用する主素材により透湿性が異なるので、自由体積調整により好ま
しい範囲にすることが可能である。
透明支持体の親疎水性は、添加剤により調整することが出来る。上記自由体積中に親水
的添加剤を添加することで透湿性は高くなり、逆に疎水性添加剤を添加することで透湿性
を低くすることができる。
上記透湿性を独立に制御することにより、光学補償能を有する偏光板を安価に高い生産
性で製造することが可能となる。
偏光膜としては公知の偏光膜や、偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長
尺の偏光膜から切り出された偏光膜を用いてもよい。偏光膜の吸収軸が長手方向に平行で
も垂直でもない長尺の偏光膜は以下の方法により作成される。
即ち、連続的に供給されるポリマーフィルムの両端を保持手段により保持しつつ張力を
付与して延伸した偏光膜で、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延伸し、
フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内であり、フィルム両端を保持す
る工程の出口におけるフィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす角が、20
〜70゜傾斜するようにフィルム進行方向を、フィルム両端を保持させた状態で屈曲させ
てなる延伸方法によって製造することができる。特に45°傾斜させたものが生産性の観
点から好ましく用いられる。
ポリマーフィルムの延伸方法については、特開2002−86554号公報の段落00
20〜0030に詳しい記載がある。
前記のように、偏光膜の2枚の保護フィルムのうち、防眩性反射防止フィルム以外のフ
ィルムが、光学異方層を含んでなる光学補償層を有する光学補償フィルムであることも好
ましい。光学補償フィルム(位相差フィルム)は、液晶表示画面の視野角特性を改良する
ことができる。
光学補償フィルムとしては、公知のものを用いることができるが、視野角を広げるとい
う点では、特開2001−100042号公報に記載されている光学補償フィルムが好ま
しい。
6.本発明の使用形態
本発明のフィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP
)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のよ
うな画像表示装置に用いられる。本発明に従う光学フィルターは、プラズマディスプレイ
パネル(PDP)または陰極管表示装置(CRT)など公知のディスプレー上に用いるこ
とが出来る。
6−(1)液晶表示装置
本発明のフィルム、偏光板は、液晶表示装置等の画像表示装置に有利に用いることがで
き、ディスプレイの最表層に用いることが好ましい。
液晶表示装置は、液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板を有し、液晶セル
は、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。さらに、光学異方性層が、液晶セルと一
方の偏光板との間に一枚配置されるか、あるいは液晶セルと双方の偏光板との間に二枚配
置されることもある。
液晶セルは、TNモード、VAモード、OCBモード、IPSモードまたはECBモー
ドであることが好ましい。
<TNモード>
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、さ
らに60〜120゜にねじれ配向している。
TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、
多数の文献に記載がある。
<VAモード>
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向して
いる。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配
向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2
−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチド
メイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of Tech
. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電
圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモー
ド(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記
載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98
で発表)が含まれる。
<OCBモード>
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の
方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルであり、米国特許第4583
825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セル
の上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学
補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Com
pensatory Bend)液晶モードと呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装
置は、応答速度が速いとの利点がある。
<IPSモード>
IPSモードの液晶セルは、ネマチック液晶に横電界をかけてスイッチングする方式で
あり、詳しくはProc.IDRC(Asia Display ’95),p.577
−580及び同p.707−710に記載されている。
<ECBモード>
ECBモードの液晶セルは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向してい
る。ECBモードは、最も単純な構造を有する液晶表示モードの一つであって、例えば特
開平5−203946号公報に詳細が記載されている。
中でも本発明のフィルム、偏光板は、次のような液晶表示装置に好適に用いることがで
きる。
偏光板、表示用液晶セル、バックライトを少なくとも含み、最大輝度が300cd/m2
以上、白/黒表示における暗室コントラスト比が液晶セル法線方向において500以上、
該法線に対して30°以内の角度範囲で150以上、該法線に対して60°以内の角度範
囲で15以上である液晶表示装置。
本発明のフィルム、偏光板は後述のディスプレーを含むいかなる表示装置にも適用でき
るが、上記のような高輝度で高コントラスト比、広視野角の黒が引き締まったメリハリの
ある表示ができるディスプレーでは僅かな外光の混入でも白ボケが目立って見える。本発
明のフィルム、偏光板は外光の散乱、反射を好適に抑える事が出来るため、このようなデ
ィスプレーに適用した時に特に効力を発揮する事が出来る。
5―(2)液晶表示装置以外のディスプレー
<PDP>
プラズマディスプレイパネル(PDP)は、一般に、ガス、ガラス基板、電極、電極リ
ード材料、厚膜印刷材料、蛍光体により構成される。ガラス基板は、前面ガラス基板と後
面ガラス基板の二枚である。二枚のガラス基板には電極と絶縁層を形成する。後面ガラス
基板には、さらに蛍光体層を形成する。二枚のガラス基板を組み立てて、その間にガスを
封入する。
プラズマディスプレイパネル(PDP)は、既に市販されている。プラズマディスプレ
イパネルについては、特開平5−205643号、同9−306366号の各公報に記載
がある。
前面板をプラズマディスプレイパネルの前面に配置することがある。前面板はプラズマ
ディスプレイパネルを保護するために充分な強度を備えていることが好ましい。前面板は
、プラズマディスプレイパネルと隙間を置いて使用することもできるし、プラズマディス
プレイ本体に直貼りして使用することもできる。
プラズマディスプレイパネルのような画像表示装置では、光学フィルターをディスプレ
イ表面に直接貼り付けることができる。また、ディスプレイの前に前面板が設けられてい
る場合は、前面板の表側(外側)または裏側(ディスプレイ側)に光学フィルターを貼り
付けることもできる。
<タッチパネル>
本発明のフィルムは、特開平5−127822号公報、特開2002−48913号公
報等に記載されるタッチパネルなどに応用することができる。
<有機EL素子>
本発明のフィルムは、有機EL素子等の基板(基材フィルム)や保護フィルムとして用
いることができる。
本発明のフィルムを有機EL素子等に用いる場合には、特開平11−335661号、
特開平11−335368号、特開2001−192651号、特開2001−1926
52号、特開2001−192653号、特開2001−335776号、特開2001
−247859号、特開2001−181616号、特開2001−181617号、特
開2002−181816号、特開2002−181617号、特開2002−0569
76号等の各公報記載の内容を応用することができる。また、特開2001−14829
1号、特開2001−221916号、特開2001−231443号の各公報記載の内
容と併せて用いることが好ましい。
6.各種特性値
以下に本発明に関する上述した項目以外の各種測定法と、好ましい特性値を示す。
6−(1)反射率
鏡面反射率及び色味の測定は、分光光度計“V−550”[日本分光(株)製]にアダ
プター“ARV−474”を装着して、380〜780nmの波長領域において、入射角
5°における出射角−5゜の鏡面反射率を測定し、450〜650nmの平均反射率を算
出し、反射防止性を評価することができる。
6−(2)色味
本発明の反射防止能付き偏光板は、CIE標準光源D65の、波長380nmから780
nmの領域における入射角5゜の入射光に対して、正反射光の色味、すなわちCIE19
76L***色空間のL*、a*、b*値を求めることで色味を評価することができる。
*、a*、b*値は、それぞれ3≦L*≦20、−7≦a*≦7、かつ、−10≦b*≦1
0の範囲内であることが好ましい。この範囲とすることで、従来の偏光板で問題となって
いた赤紫色から青紫色の反射光の色味が低減され、さらに3≦L*≦10、0≦a*≦5、
かつ、−7≦b*≦0の範囲内とすることで大幅に低減され、液晶表示装置に適用した場
合、室内の蛍光灯のような、輝度の高い外光が僅かに映り込んだ場合の色味がニュートラ
ルで、気にならない。詳しくはa*≦7であれば赤味が強くなりすぎることがなく、a*
−7であればシアン味が強くなりすぎることがなく好ましい。またb*≧−7であれば青
味が強くなりすぎることがなく、b*≦0であれば黄味が強くなりすぎることがなく好ま
しい。
更には、反射光の色味均一性は、反射光の380nm〜680nmの反射スペクトルに
より求めたL***色度図上でのa**より、下記の数式21に従って色味の変化率と
して得ることができる。
ここで、a* max及びa* minは、それぞれa*値の最大値及び最小値;b* max及びb* min
は、それぞれb*値の最大値及び最小値;a* av及びb* avは、それぞれa*値及びa*値の
平均値である。色の変化率は、それぞれ30%以下であることが好ましく、20%以下で
あることがより好ましく、8%以下であることが最も好ましい。
また、本発明のフィルムは、耐候性試験前後の色味の変化であるΔEwが15以下であ
ることが好ましく、10以下であることがより好ましく、5以下であることが最も好まし
い。この範囲において、低反射と反射光の色味の低減を両立することができるため、例え
ば画像表示装置の最表面に適用した場合、室内の蛍光灯のような、輝度の高い外光が僅か
に映り込んだ場合の色味が、ニュートラルで、表示画像の品位が良好となり、好ましい。
上記の色味の変化ΔEwは、下記の数式(22)に従って求めることができる。
数式(22):ΔEw=[(ΔLw2+(Δaw2+(Δbw21/2
ここで、ΔLw,Δaw,Δbwは、耐候性試験前後のL*値,a*値,b*値それぞれの変
化量である。
6−(3)透過画像鮮明度
透過画像鮮明度は、JIS K7105−1981に従い、スガ試験機(株)製の写像性測定器(ICM−2D型)にて、スリット幅が0.5mmの光学櫛を用いて測定できる。
本発明のフィルムの透過画像鮮明度は60%以上が好ましい。透過画像鮮明度は、一般
にフィルムを透過して映す画像の呆け具合を示す指標であり、この値が大きい程、フィル
ムを通して見る画像が鮮明で良好であることを示す。
6−(4)表面粗さ
中心線平均粗さ(Ra)等、表面粗さパラメータの測定は、JIS−B0601に準じ
て行なうことができる。
本発明フィルムの表面凹凸形状としては、中心線平均粗さRaが0.08〜0.30μ
m、・BR>P0点平均粗さRzがRaの10倍以下、平均山谷距離Smが1〜100μm、凹凸最深部からの凸部高さの標準偏差が0.5μm以下、中心線を基準とした平均山谷距離S
mの標準偏差が20μm以下となるように設計するのが、十分な防眩性と目視での均一な
マット感が達成されるので、好ましい。Raが0.08未満では充分な防眩性が得られず
、0.30を超えるとギラツキ、外光が反射した際の表面の白化等の問題が発生する。
6−(5)ヘイズ
本発明のフィルムのヘイズはJIS−K7105に規定されたヘイズ値のことであり、
JIS−K7361−1で規定された測定法に基づき、日本電色工業(株)製の濁度計「
NDH−1001DP」を用いて測定したヘイズ=(拡散光/全透過光)×100(%)
として自動計測される値を用いた。
本発明の防眩性反射防止フィルムは、その光学特性を内部散乱に起因するヘイズ(以後
、内部ヘイズと呼称する)0%〜35%であることが好ましく、より好ましくは0%〜3
0%、更に好ましくは0%〜10%、最も好ましくは0%〜5%である。また、表面散乱
に起因するヘイズ(以後、表面ヘイズと呼称する)が2%〜15%であることが好ましく
、5%〜10%であることがより好ましい。
内部ヘイズは例えばフィルム表面と実質的に等しい屈折率の媒体で表面凹凸による散乱
をなくす事で測定できる。表面ヘイズはフィルムの全ヘイズと内部ヘイズの差として求め
ることができる。
6−(6)ゴニオフォトメータ散乱強度比
自動変角光度計GP−5型((株)村上色彩技術研究所製)を用いて、入射光に対して
反射防止フィルムを垂直に配置し、全方位に渡って散乱光プロファイルを測定した。出射
角0°の光強度に対する出射角30°の散乱光強度から求めることができる。
6−(7)耐擦傷性
<スチールウール耐傷性評価>
ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストをおこなうことで、耐擦傷性の
指標とすることが出来る。
評価環境条件:25℃、60%RH
こすり材:スチールウール(日本スチールウール(株)製、ゲレードNo.0000
) 試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)に巻いて、バンド固定。
移動距離(片道):13cm、
こすり速度:13cm/秒、
荷重:500g/cm2、および200g/cm2
先端部接触面積:1cm×1cm、こすり回数:10往復。
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、こすり部分の傷を反射光で目視観察し
たり、擦った部分以外との反射光量との差によって評価する。
<消しゴム擦り耐傷性評価>
ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストをおこなうことで、耐擦傷性の
指標とすることが出来る。
評価環境条件:25℃、60%RH
こすり材:プラスチック消しゴム((株)トンボ鉛筆性 MONO)
試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)に固定
移動距離(片道):4cm、
こすり速度:2cm/秒、
荷重:500g/cm2
先端部接触面積:1cm×1cm、
こすり回数:100往復。
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、こすり部分の傷を反射光で目視観察し
たり、擦った部分以外との反射光量との差によって評価する。
<テーパー試験>
JIS―K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量から擦傷性を評
価することができる。
この摩耗量が少ないほど好ましい。
6−(8)硬度
<鉛筆硬度>
本発明のフィルムの強度は、JIS―K5400に従う鉛筆硬度試験で評価することが
出来る。
鉛筆硬度はH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H
以上であることが最も好ましい。
<表面弾性率>
本発明における表面弾性率は微小表面硬度計((株)フィッシャー・インスツルメンツ
製:フィッシャースコープH100VP−HCU)を用いて求めた値である。具体的には
、ダイヤモンド製の四角錐圧子(先端対面角度;136°)を使用し、押し込み深さが1
μmを超えない範囲で、適当な試験荷重下での押し込み深さを測定し、除荷重時の荷重と
変位の変化から求められる弾性率である。
また、前述の微小表面硬度計を用いて表面硬度をユニバーサル硬度として求めることも
できる。ユニバーサル硬度は四角錐圧子の試験荷重下での押し込み深さを測定し、試験荷
重をその試験荷重で生じた圧痕の幾何学的形状から計算される圧痕の表面積で割った値で
ある。上記の表面弾性率とユニバーサル硬度の間には、正の相関を有することが知られて
いる。
本発明で定義する架橋性ポリマーのユニバーサル硬度とはガラス板上に硬化形成した約
20〜30μm厚の該架橋性ポリマー膜についてフィッシャーインストルメンツ(株)製
の微小硬度計H100によって以下測定手順で求めたユニバーサル硬度(N/mm2)に
よって表わされる。
架橋性ポリマーの他に必要な触媒や架橋剤、重合開始剤等を含んだ固形分濃度約25%
の塗布液を硬化後の膜厚が約20〜30μmになるように適切なバーコーターを選択して
TOSHINRIKO.CO.LTD製、(26mm×76mm×1.2mm)みがきス
ライドガラス板上に塗布する。架橋性ポリマーが熱硬化性の場合には膜が十分硬化される
熱硬化条件をあらかじめ求めておき(一例として125℃10分)、架橋性ポリマーが電
離放射線硬化性の場合にも同様に膜が十分硬化される硬化条件をあらかじめ求めておく(
一例として酸素濃度12ppm、UV照射量750mJ/cm2)。それぞれの膜に対し
て荷重を0から4mNまで連続的に増加させ、基材のガラス板硬度の影響がでない1/1
0膜厚を最大として円錐ダイヤモンド圧子を押し込んだ際の各荷重Fに対する窪み面積A
(mm2)から求めたF/AのN=6測定平均値からユニバーサル硬度を算出する。
また、特開2004−354828記載のナノインデンテーションによって表面硬度を
もとめることができ、この場合の硬度としては2GPa〜4GPa、ナノインデンテーシ
ョン弾性率は10GPa〜30GPaであることが好ましい。
6−(9)防汚性試験
<マジック拭き取り性>
フィルムをガラス面上に粘着剤で固定し、25℃60RH%の条件下で黒マジック「マ
ッキー極細(商品名:ZEBRA製)」のペン先(細)にて直径5mmの円形を3周書き
込み、5秒後に10枚重ねに折り束ねたベンコット(商品名、旭化成(株))でベンコッ
トの束がへこむ程度の荷重で20往復拭き取る。マジック後が拭き取りで消えなくなるま
で前記の書き込みと拭き取りを前記条件で繰り返し、拭き取りできた回数により防汚性を
評価することが出来る。
消えなくなるまでの回数は5回以上であることが好ましく、10回以上であることが更
に好ましい。
黒マジックについてはマジックインキ No.700(M700―T1 黒)極細を用
い試料の上に直径1cmの円を描いて塗りつぶし、24時間放置後にベンコット(旭化成
(株)製)で擦り、マジックがふき取れるかによっても評価することができる。
6−(10)表面張力
本発明で測定、評価する表面張力は、機能層を形成する塗布液の表面張力を温度25℃
の環境下で表面張力計(協和界面科学製、KYOWA CBVP SURFACE TE
NSIOMETER A3)を用いて測定することができる。
6−(11)接触角
接触角計[“CA−X”型接触角計、協和界面科学(株)製]を用い、乾燥状
態(20℃/65%RH)で、液体として純水を使用して直径1.0mmの液滴を針先に
作り、これをフィルムの表面に接触させてフィルム上に液滴を作った。フィルムと液体と
が接する点における、液体表面に対する接線とフィルム表面がなす角で、液体を含む側の
角度を接触角とする。
6−(12)表面自由エネルギー
表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」,リアライズ社,1989.12.10発行
に記載のように接触角法、湿潤熱法、および吸着法により求めることができる。本発明の
フィルムの場合、接触角法を用いることが好ましい。
具体的には、表面エネルギーが既知である2種の溶液をフィルムに滴下し、液滴の表面
とフィルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフィルム表面のなす角で、液滴を
含む方の角を接触角と定義し、計算によりフィルムの表面エネルギーを算出できる。
本発明のフィルムの表面自由エネルギー(γsv:単位、mN/m)とはD.K.Ow
ens:J.Appl.Polym.Sci.,13,1741(1969)を参考に、
反射防止フィルム上で実験的に求めた純水H2Oとヨウ化メチレンCH22のそれぞれの
接触角θH2O、θCH2I2から以下の連立方程式a,bより求めたγsdとγshの和で表され
る値γsv(=γsd+γsh)で定義する反射防止フィルムの表面張力を表す。このγsv
が小さく、低表面自由エネルギーであるほど表面のはじき性が高く、一般に防汚性に優れ
る。
a.1+cosθH2O
2√γsd(√γH2O d/γH2O v)+2√γsh(√γH2O h/γH2O v
b.1+cosθCH2I2
2√γsd(√γCH2I2 d/γCH2I2 v)+2√γsh(√γCH2I2 h/γCH2I2 v
γH2O d=21.8、γH2O h=51.0、γH2O v=72.8、
γCH2I2 d=49.5、γCH2I2 h=1.3、γCH2I2 v=50.8
で、接触角の測定はフィルムを25℃60%の条件下で1時間以上調湿した後に、協和界
面科学(株)製、自動接触角計CA−V150型を用いて2μlの液滴をフィルム上に滴
下してから30秒後に接触角を求めた。
本発明のフィルムの表面自由エネルギーは25mN/m以下であることが好ましく、2
0mN/m以下であることが特に好ましい。
6−(13)カール
カールの測定は、JIS―K7619−1988の「写真フィルムのカールの測定法」
中の方法Aのカール測定用型板を用いて行われる。
測定条件は25℃、相対湿度60%、調湿時間10時間である。
本発明におけるフィルムは、カールを以下の数式で表したときの値が、マイナス15〜
プラス15の範囲に入っていることが好ましく、マイナス12〜プラス12の範囲がより
好ましく、さらに好ましくはマイナス10〜プラス10である。このときのカールの試料
内測定方向は、ウェッブ形態での塗布の場合、基材の搬送方向について測ったものである

(数式) カール=1/R Rは曲率半径(m)
これは、フィルムの製造、加工、市場での取り扱いで、ひび割れ、膜はがれを起こさな
いための重要な特性である。カール値が前記範囲にあり、カールが小さいことが好ましい

ここで、カールがプラスとはフィルムの塗設側が湾曲の内側になるカールを言い、マイ
ナスとは塗設側が湾曲の外側になるカールをいう。
また、本発明におけるフィルムは、上記したカール測定法に基づいて、相対湿度のみを
80%と10%に変更したときの各カール値の差の絶対値が、24〜0が好ましく、15
〜0がさらに好ましく、8〜0が最も好ましい。これはさまざまな湿度下でフィルムを貼
り付けたときのハンドリング性や剥がれ、ひび割れに関係する特性である。
6−(14)密着性評価
フィルムの層間、あるいは支持体と塗布層との密着性は以下の方法により評価すること
が出来る。
塗布層を有する側の表面にカッターナイフで碁盤目状に縦11本、横11本の切り込み
を1mm間隔で入れて合計100個の正方形の升目を刻み、日東電工(株)製のポリエス
テル粘着テープ(NO.31B)を圧着し、24時間放置後引き剥がす試験を同じ場所で
繰り返し3回行い、剥がれの有無を目視で観察する。
100個の升目中、剥がれが10升以内であることが好ましく、2升以内であることが
更に好ましい。
6−(15)脆性試験(耐ひび割れ性)
耐ひび割れ性は、フィルムの塗布、加工、裁断、粘着剤の塗布、種々の物体への貼りつ
け等のハンドリングで割れ欠陥を出さないための重要な特性である。
フィルム試料を35mm×140mmに切断し、温度25℃、相対湿度60%の条件で
2時間放置した後、筒状に丸めたときにひび割れが発生し始める曲率直径を測定し、表面
のひび割れを評価することができる。
本発明のフィルムの耐ひび割れ性は、塗布層側を外側にして丸めたときに、ひび割れが
発生する曲率直径が、50mm以下であることが好ましく、40mm以下がより好ましく
、30mm以下が最も好ましい。エッジ部のひび割れについては、ひび割れがないか、ひ
び割れの長さが平均で1mm未満であることが好ましい。
6−(17)塵埃除去性
本発明のフィルムをモニターに張り付け、モニター表面に塵埃(布団、衣服の繊維屑)
を振りかけ、クリーニングクロスで塵埃を拭き取り、塵埃除去性を評価することができる

6回の拭取りで完全に取除けることが好ましく、3回以内の拭き取りで塵埃が完全に取
り除けることが更に好ましい。
6−(18)液晶表示装置の性能
以下に、本発明のフィルムを表示装置上に用いたときの特性の評価方法と好ましい状況
について記載する。
液晶表示装置に設けられている視認側の偏光板を剥がし、代わりに本発明のフィルムあ
るいは偏光板を、塗布面が視認側に、かつ偏光板の透過軸が製品に貼られていた偏光板と
一致するように粘着剤を介して貼り付ける。500luxの明室にて、液晶表示装置を黒
表示にして、種々の視角から目視により以下の各種特性を評価することができる。
具体的な市販の液晶表示装置としては、例えばTNモードではSyncmaster172X/Samsun
g社製、MDT191S/三菱電機(株)製、TH−15TA2/松下電器産業(株)製
、VAモードではLC15S4/シャープ(株)製、IPSモードでは、TH32LX−
500/松下電器(株)製、OCBモードではVT23XD1/(株)ナナオ製などが挙
げられる。
<画像のムラ、色味評価>
作成した液晶表示装置を用いて、黒表示(L1)時のムラや色味変化を複数の観察者に
より目視評価する。
10人が評価し、ムラ、左右色味変化、温湿度による色味変化、白ボケを認識できるも
のが3人以下であることが好ましく、1人も認識できないことがより好ましい。
また、外光の映り込みは蛍光灯を用いて行い、目視にて映り込みの変化を相対的に評価
することができる。
<黒表示の光漏れ>
液晶表示装置正面からの方位方向45゜、極角方向70゜における黒表示の光漏れ率を
測定する。光漏れ率が0.4%以下であることが好ましく、0.1%以下であることがよ
り好ましい。
<コントラスト、及び視野角>
コントラストおよび視野角は、測定機(“EZ−Contrast 160D”ELD
IM社製)を用いて、コントラスト比及び左右方向(セルのラビング方向と直交方向)の
視野角(コントラスト比が10以上となる角度範囲の広さ)を調べることができる。
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに
限定されるものではない。なお、特別の断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準で
ある。
(パーフルオロオレフィン共重合体(1)の合成)
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブに酢酸エチル40ml、ヒド
ロキシエチルビニルエーテル14.7gおよび過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、
系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(HFP)25g
をオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に
達した時点の圧力は0.53Mpa(5.4kg/cm2)であった。該温度を保持し8
時間反応を続け、圧力が0.31MPa(3.2kg/cm2)に達した時点で加熱をや
め放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレー
ブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカン
テーションにより溶剤を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。さらにこの
ポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存
モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー28gを得た。次に該ポリマーの20gをN
,N−ジメチルアセトアミド100mlに溶解、氷冷下アクリル酸クロライド11.4g
を滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え水洗、有機層を抽出
後濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることによりパーフルオロオレフィ
ン共重合体(1)を19g得た。得られたポリマーの屈折率は1.421であった。
(ゾル液aの調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン120部、アクリロイルオキ
シプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、信越化学工業(株)製)100部、
ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3部を加え混合したのち、イオン
交換水30部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液aを得た
。質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が100
0〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原
料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
(防眩層用塗布液Aの調製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールテペンタクリレ
ートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)31gをメチルイソブチルケトン38gで
希釈した。更に、重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ
(株)製)を1.5g添加し、混合攪拌した。続いてフッ素系表面改質剤(FP−149
)0.04g、シランカップリング剤(KBM−5103、信越化学工業(株)製)を6
.2gを加えた。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.520で
あった。
最後に、この溶液にポリトロン分散機にて10000rpmで20分間分散した平均粒
径3.5μmの架橋ポリ(アクリル−スチレン)粒子(共重合組成比=50/50、屈折
率1.540)の30%シクロヘキサノン分散液を21.0g加え、完成液とした。
前記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩層用塗布液A
を調製した。
(防眩層用塗布液Bの調製)
前記架橋ポリ(アクリル−スチレン)粒子の30%シクロヘキサノン分散液の添加量を
14.0gに変更した以外は防眩層用塗布液Aと同様にして、防眩層用塗布液Bを調製し
た。
(防眩層用塗布液Cの調製)
前記架橋ポリ(アクリル−スチレン)粒子の30%シクロヘキサノン分散液の添加量を
10.0gに変更した以外は防眩層用塗布液Aと同様にして、防眩層用塗布液Cを調製し
た。
(防眩層用塗布液Dの調製)
前記架橋ポリ(アクリル−スチレン)粒子の30%シクロヘキサノン分散液の添加量を
17.0gに変更した以外は防眩層用塗布液Aと同様にして、防眩層用塗布液Dを調製し
た。
(防眩層用塗布液Eの調製)
前記架橋ポリ(アクリル−スチレン)粒子の30%シクロヘキサノン分散液の添加量を
28.0gに変更した以外は防眩層用塗布液Aと同様にして、防眩層用塗布液Eを調製し
た。
(防眩層用塗布液Fの調製)
前記平均粒径3.5μmの架橋ポリ(アクリル−スチレン)粒子(共重合組成比=50
/50、屈折率1.540)の粒径を5μmに変更し、その添加量を30%シクロヘキサ
ノン分散液として28.0gに変更した以外は防眩層用塗布液Aと同様にして、防眩層用
塗布液Fを調製した。
(防眩層用塗布液Gの調製)
前記平均粒径3.5μmの架橋ポリ(アクリル−スチレン)粒子の30%シクロヘキサ
ノン分散液を添加しないこと以外は防眩層用塗布液Aと同様にして、防眩層用塗布液Gを
調製した。
(低屈折率層用塗布液Aの調整)
ポリシロキサンおよび水酸基を含有する屈折率1.44の熱架橋性含フッ素ポリマー(
JTA113、固形分濃度6%、JSR(株)製)13g、コロイダルシリカ分散液ME
K−ST−L(商品名、平均粒径45nm、固形分濃度30%、日産化学(株)製)1.
3g、前記ゾル液a0.6g、およびメチルエチルケトン5g、シクロヘキサノン0.6
gを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層
塗布液Aを調製した。この塗布液により形成される層の屈折率は、1.45であった。
(低屈折率層用塗布液Bの調整)
前記低屈折率層用塗布液Aにおいて、シリカゾルの代わりに中空シリカゾル(屈折率1
.31、平均粒径60nm、固形分濃度20%)を1.95g用いた以外は添加量も含め
前記塗布液Aと同様にして、低屈折率層用塗布液Bを作成した。この塗布液により形成さ
れる層の屈折率は、1.39であった。
(低屈折率層用塗布液Cの調製)
パーフルオロオレフィン共重合体(1)の15.2g、シリカゾル(シリカ、MEK−
STの粒子径違い品、平均粒径45nm、固形分濃度30%、日産化学社製)1.4g、
反応性シリコーンX−22−164B(商品名;信越化学工業社製)0.3g、ゾル液a
7.3g、光重合開始剤(イルガキュア907(商品名)、チバ・スペシャルティ・ケミ
カルズ(株)製)0.76g、メチルエチルケトン301g、シクロヘキサノン9.0g
を添加、攪拌の後、孔径5μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用
塗布液Cを調製した。この塗布液により形成される層の屈折率は、1.44であった。
[実施例1]
(1)防眩層の塗設
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士写真フ
イルム(株)製)をロール形態で巻き出して、下記の図5〜8に示すような装置構成およ
び塗布条件で示されるダイコート法によって防眩層用塗布液Aを塗布し、溶剤を乾燥した
後、さらに窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィッ
クス(株)製)を用いて、照射量90mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ
、厚さ6μmの防眩性を有する防眩層を形成し、巻き取った。
基本条件:スロットダイ13は、上流側リップランド長IUPが0.5mm、下流側リッ
プランド長ILOが50μmで,スロット16の開口部のウェブ走行方向における長さが1
50μm、スロット16の長さが50mmのものを使用した。上流側リップランド18a
とウェブWの隙間を、下流側リップランド18bとウェブWの隙間よりも50μm長くし
(以下、オーバーバイト長さ50μmと称する)、下流側リップランド18bとウェブW
との隙間GLを50μmに設定した。また、減圧チャンバー40のサイドプレート40b
とウェブWとの隙間GS、及びバックプレート40aとウェブWとの隙間GBはともに20
0μmとした。それぞれの塗布液の液物性に合わせて、塗布速度=50m/分、ウエット
塗布量=17ml/m2で塗布を行い、その後30℃で15秒間、90℃で20秒乾燥し
た。また、塗布幅:1300mm、有効幅:1280mmとした。
(2)低屈折率層の塗設
上記防眩層用塗布液Aを塗布して防眩層を塗設したトリアセチルセルロースフィルムを
再び巻き出して、前記低屈折率層用塗布液Aを上記の塗布条件にて塗布速度=40m/分
、ウエット塗布量=5ml/m2で塗布を行った。120℃で150秒乾燥の後、更に1
40℃で8分乾燥させてから窒素パージにより酸素濃度0.1%の雰囲気下で240W/
cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量90
0mJ/cm2の紫外線を照射し、厚さ100nmの低屈折率層を形成し、巻き取った。
(3)反射防止フィルムの鹸化処理
前記低屈折率層の製膜後、前記試料について、以下の処理を行った。
1.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、55℃に保温した。0.01m
ol/lの希硫酸水溶液を調製し、35℃に保温した。作製した反射防止フィルムを前記
の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬し水酸化ナトリウム水溶液を十
分に洗い流した。次いで、前記の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水
溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
このようにして、鹸化処理済みの防眩性反射防止フィルムを作製した。これを実施例1
Fとする。
防眩層用塗布液Aを防眩層用塗布液B、Cに変更した以外は実施例1Fと同様にして防
眩層を形成し、更に実施例1Fと同様にして低屈折率層の塗設、鹸化処理を行った。防眩
層用塗布液Bを塗布したものを実施例2Fとし、防眩層用塗布液Cを塗布したものを比較
例1Fとする。
低屈折率用塗布液Aを低屈折率用塗布液Bに変更した以外は同様にして防眩性反射防止
フィルムを作製した。これを実施例3Fとする。
低屈折率用塗布液Aを低屈折率用塗布液Cに変更し、塗布後の乾燥条件を100℃、2
分間に変更した以外は同様にして防眩性反射防止フィルムを作製した。これを実施例4F
とする。
防眩層用塗布液Aを防眩層用塗布液Dに変更し、ウエット塗布量=10ml/m2した
以外は実施例1Fと同様にして防眩層を形成し、更に実施例1Fと同様にして低屈折率層
の塗設、鹸化処理を行った。これを比較例2Fとする。
防眩層用塗布液Aを防眩層用塗布液Eに変更し、ウエット塗布量=15ml/m2した
以外は実施例1Fと同様にして防眩層を形成し、更に実施例1Fと同様にして低屈折率層
の塗設、鹸化処理を行った。これを比較例3Fとする。
防眩層用塗布液Aを防眩層用塗布液Fに変更し、ウエット塗布量=15ml/m2した
以外は実施例1Fと同様にして防眩層を形成し、更に実施例1Fと同様にして低屈折率層
の塗設、鹸化処理を行った。これを比較例4Fとする。
防眩層用塗布液Aを防眩層用塗布液Gに変更し、防眩層塗設時のウエット塗布量=15
ml/m2とし、UV照射量を40mJ/cm2とした事以外は実施例1Fと同様のして防
眩層を形成した。続いて得られた防眩層の塗布面を所望の粗さとした鋳型ガラスの粗面化
面と密着させた、トリアセチルセルロース面側から照射量100mJ/cm2の紫外線を
照射した。引き続き実施例1Fと同様の低屈折率層の塗設、鹸化処理を行い、防眩性反射
防止フィルムを作製した。鋳型ガラスの粗さを変えて3種のフィルムを作製し、それぞれ
実施例5F、比較例5F、比較例6Fとした。
(防眩性反射防止フィルムの評価)
得られたフィルムについて、以下の項目の評価を行った。結果を表1、表2に示す。
(1)傾斜角分布プロファイル
マイクロマップ社(米国)製SXM520-AS150型を用い、得られたフィルムを測定した。光
源には中心波長560nmの干渉フィルターを挿入したハロゲンランプを使用した。対物
レンズの倍率は10倍であり、画素数640×480の2/3インチのCCDによりデータ
を取り込んだ。これより、縦および横方向の測定ピッチは1.3マイクロメートルであり
、傾斜角度の測定単位は0.8平方マイクロメートル、測定範囲は500000平方マイ
クロメートル(0.5平方ミリメートル)となった。
測定単位である3点の高さデータから傾斜角度を算出し、全測定データから傾斜角度分
布および、傾斜角1°以下の割合、傾斜角10°以上の割合を求めた。
(2)ヘイズ
以下の測定により、得られたフィルムの全ヘイズ(H)、内部ヘイズ(Hi)、表面ヘ
イズ(Hs)を測定した。
(i)JIS−K7136に準じて得られたフィルムの全ヘイズ値(H)を測定する。
(ii)得られたフィルムの低屈折率層側の表面にセロテープ(登録商標 ニチバン(株)製)を貼付け、表面ヘイズを除去した状態でヘイズを測定し、別途測定したセロテープ(登録商標)のヘイズを引いた値をフィルムの内部ヘイズ(Hi)として算出した。
(iii)上記(i)で測定した全ヘイズ(H)から上記(ii)で算出した内部ヘイズ(H
i)を引いた値をフィルムの表面ヘイズ(Hs)として算出した。
(3)中心線平均粗さ
JIS−B0601に準じて得られたフィルムの中心線平均粗さRaを測定した。
(4)防眩性
得られたフィルムにルーバーなしのむき出し蛍光灯(8000cd/m2)を45度の
角度から映し、−45度の方向から観察した際の反射像のボケの程度を以下の基準で評価
した。
蛍光灯の輪郭が全くわからない :◎
蛍光灯の輪郭がわずかにわかる :○
蛍光灯はぼけているが、輪郭は識別できる :△
蛍光灯がほとんどぼけない :×
(4)白味
得られたフィルムの防眩層を塗設した面とは反対側の面を粘着剤を介して黒色のアクリ
ル樹脂ボードに貼り付け、500luxの明室下にて黒が黒く見える度合い(すっきりとし
た黒のままで見えるか、散乱光によりグレーっぽく見えるか)を目視にて観察した。実施
例、比較例のサンプルについて一番白く見えるものを1点、黒色アクリル板を10点とし
て、10段階の相対評価を行った。
[実施例2]
(偏光板の作製)
1.5mol/L、55℃のNaOH水溶液中に2分間浸漬したあと中和、水洗した、
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士写真フイ
ルム(株)製)と、実施例1で作製した防眩性反射防止フィルム(鹸化処理済み:実施例
1F〜実施例5F、比較例1F〜比較例6F)を、ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着
させ、延伸して作製した偏光膜の両面に接着、保護して偏光板を作製した。これらを、そ
れぞれ実施例1P〜実施例5P、比較例1P〜比較例6Pとした。なお、防眩性反射防止
フィルムは、トリアセチルセルロースフィルムが偏光膜に接着するように配置した。
また、上記の鹸化処理済みのトリアセチルセルロースフィルムを両面の保護フィルムに
用いて偏光板を作製し、比較例7Pとした。
[実施例3]
(偏光板の評価)
実施例2で作製した実施例1P〜実施例5P、比較例1P〜比較例7Pの偏光板を、液
晶テレビ(LC20S4/シャープ(株)製)の視認側の偏光板の一部を剥がして上記偏
光板に貼り換えたものを作製した。なお、防眩性反射防止フィルムは、液晶テレビの視認
側最表面になるように配置した。得られた表示装置について、以下の項目の評価を行った
。結果を表3に示す。
(1)画像ボケ
LCDパネルで白地に10ポイントの大きさの明朝体で「薔薇」の文字を一行あたり25文字、10行連続して表示した状態で、防眩性のない偏光板を用いて同様の表示をした時と比較した際の文字の輪郭のボケ(画像ボケ)の程度を以下の基準で目視評価した。
ボケが全く気にならず、好ましい :◎
ボケがわずかに気になるが、比較的好ましい :○
ボケが若干気になる :△
ボケが目立ち、好ましくない :×
(2)映り込み
得られた液晶テレビにルーバーなしのむき出し蛍光灯(8000cd/m2)を45度
の角度から映し、−45度の方向から観察した際の蛍光灯の映り込みの程度を以下の基準
で評価した。
蛍光灯の輪郭が全くわからない程、映り込まない :◎
蛍光灯の輪郭がわずかにわかるが、殆ど映り込まない :○
蛍光灯はぼけているが、若干写り込む :△
蛍光灯が完全に写り込む :×
(3)白ボケ
得られた液晶TVを天井部に蛍光灯のある、500luxの明室下設置し、黒表示および
低階調な画像を含む動画を表示させ、白ボケの評価を行った。黒表示の場合は黒が黒く見
える度合いを、動画表示の場合は画像がくっきりと見えるか(明室コントラスト)を観点
に以下の基準で目視観察した。
黒表示が黒く見え、動画ともくっきりと見える :◎
黒表示、動画ともにやや甘く見える :○
黒表示での白味が目立ち、動画画像もすっきりしない :△
動画画像のメリハリが明らかにない :×
表3に示された結果より、以下のことが明らかである。
本発明の防眩性反射防止フィルムは、20インチ以上の液晶テレビに適用した際、高い
防眩性と画像ボケ、白ボケの改善とを両立することができる。
[実施例4]
透過型TN液晶セル(Syncmaster172X/Samsung社製)の液晶セ
ルのバックライト側の偏光板としてバックライト側の保護フィルムにプレーンタック(T
D−80UL/富士フイルム(株)製)を、液晶セル側の保護フィルムに視野角拡大フィ
ルム(ワイドビューフィルムSA 128、富士写真フイルム(株)製)を用い、視認側
の偏光板として視認側最表面の保護フィルムに実施例1Fの防眩性反射防止フィルムを、
液晶セル側の保護フィルムとして視野角拡大フィルム(ワイドビューフィルムSA 12
8、富士写真フイルム(株)製)を用いたところ、上下左右の視野角が非常に広く、極め
て視認性に優れ、表示品位の高い液晶表示装置が得られた。
[実施例5]
透過型TN液晶セル(RDT191S/三菱電機(株)製)の液晶セルのバックライト
側の偏光板としてバックライト側の保護フィルムにプレーンタック(TD−80UL/富
士フイルム(株)製)を、液晶セル側の保護フィルムに視野角拡大フィルム(ワイドビュ
ーフィルムSA 128、富士写真フイルム(株)製)を用い、視認側の偏光板として視
認側最表面の保護フィルムに実施例1Fの防眩性反射防止フィルムを、液晶セル側の保護
フィルムとして視野角拡大フィルム(ワイドビューフィルムSA 128、富士写真フイ
ルム(株)製)を用いたところ、上下左右の視野角が非常に広く、正面からの輝度が高く
鮮やかな表示が得られるにも関わらず、明室でも白ボケがなく、暗所でも非常に高コント
ラストであり、極めて視認性に優れ、表示品位の高い液晶表示装置が得られた。
(a)〜(c)ともに、本発明のフィルムの傾斜角の測定方法を示す概略図である。 フィルム傾斜角分布の一例を示す図である。 (a)〜(d)ともに、本発明のフィルムの好ましい実施形態を模式的に示す概略断面図である。 本発明のフィルムの好ましい実施形態を模式的に示す概略断面図である。 本発明のフィルムを製造するために用いられるスロットダイを用いたコーターの断面図である。 スロットダイ13の断面形状を従来のものと比較して示す斜視図である。 本発明のフィルムを製造するために用いられる塗布工程のスロットダイおよびその周辺を示す斜視図である。 近接している減圧チャンバー40とウェブWを示す断面図である。(バックプレート40aはチャンバー40本体と一体) 同上(バックプレート40aがチャンバー40にネジ40cで留められている)
符号の説明
(1)支持体
(2)ハードコート層
(3)中屈折率層
(4)高屈折率層
(5)低屈折率層
(6)マット粒子
10 コーター
11 バックアップロール
W ウェブ
13 スロットダイ
14 塗布液
14a ビード
14b 塗膜
15 ポケット
16 スロット
16a スロット開口部
17 先端リップ
18 ランド
18a 上流側リップランド
18b 下流側リップランド
UP 上流側リップランド18aのランド長さ
LO 下流側リップランド18bのランド長さ
LO オーバーバイト長さ(下流側リップランド18bと上流側リップランド18aの
ウェブWとの距離の差)
L 先端リップ17とウェブWの隙間(下流側リップランド18bとウェブWの隙間)
30 従来のスロットダイ
31a 上流側リップランド
31b 下流側リップランド
32 ポケット
33 スロット
40 減圧チャンバー
40a バックプレート
40b サイドプレート
40c ネジ
B バックプレート40aとウェブWの間の隙間
S サイドプレート40bとウェブWの間の隙間

Claims (17)

  1. 透明支持体上に少なくとも層を設けた防眩性反射防止フィルムであって、該支持体の法
    線と、該フィルム表面の凹凸形状の法線とのなす傾斜角が1°以下である割合が、全体の
    15%以上70%以下であり、かつ該傾斜角が10°以上の割合が全体の3%以下である
    ことを特徴とする防眩性反射防止フィルム。
  2. 前記傾斜角を0.1°刻みで区切って度数分布を描いたとき、該傾斜角に対する度数分
    布の最大傾きの絶対値が0.1/°以下であることを特徴とする請求項1に記載の防眩性
    反射防止フィルム。
  3. 前記傾斜角を0.1°刻みで区切って度数分布を描いたとき、度数が最大となるピーク
    が0.3°以上2.0°以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の防眩性反
    射防止フィルム。
  4. 前記防眩性反射防止フィルムの内部散乱に起因するヘイズ値が0〜35%であり、かつ
    、表面散乱に起因するヘイズ値が2〜15%であることを特徴とする請求項1〜3のいず
    れかに記載の防眩性反射防止フィルム。
  5. 前記防眩性反射防止フィルムの中心線平均粗さRaが0.08〜0.30μmであるこ
    とを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の防眩性反射防止フィルム。
  6. JIS K7105−1981に準じた透過画像鮮明度が光学くし幅0.5mmで測定したときに5%〜30%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の防眩性反射防止フィルム。
  7. 前記層が防眩層を有し、該防眩層は透光性樹脂と透光性粒子とを少なくとも含有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の防眩性反射防止フィルム。
  8. 前記透光性樹脂が、少なくとも3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを主成分と
    してなり、前記透光性粒子がアクリル含率50〜100質量%である架橋ポリ(メタ)ア
    クリレート系重合体であることを特徴とする請求項7に記載の防眩性反射防止フィルム。
  9. 前記透光性樹脂が、少なくとも3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを主成分と
    してなり、前記透光性粒子がアクリル含率50質量%以上100質量%未満である架橋ポリ(アクリル−スチレン)共重合体であることを特徴とする請求項7に記載の防眩性反射防止フィルム。
  10. 偏光膜と、該偏光膜の両側に設けられた2枚の保護フィルムとを有する偏光板において
    、該保護フィルムの少なくとも一方が、請求項1〜9のいずれかに記載の防眩性反射防止
    フィルムであることを特徴とする偏光板。
  11. 前記2枚の保護フィルムの少なくとも一方が、光学異方性層を有する光学補償フィルム
    を有することを特徴とする請求項10に記載の偏光板。
  12. 前記2枚の保護フィルムのうち、防眩性反射防止フィルムとは反対に配置される保護フ
    ィルムが、液晶性化合物の配向を固定した光学異方性層を有する光学補償フィルムである
    ことを特徴とする請求項10または11に記載の偏光板。
  13. 前記2枚の保護フィルムのうち、防眩性反射防止フィルムとは反対に配置される保護フ
    ィルムが、前記偏光膜と貼り合せる面とは反対側の面にディスコティック構造単位を有す
    る化合物からなる光学異方性層を有する光学補償フィルムである事を特徴とする請求項1
    0〜12のいずれかに記載の偏光板。
  14. 少なくとも一枚の光学補償フィルムと偏光板とを粘着層を介して貼り合せた複合偏光板
    であって、該偏光板が請求項10〜13のいずれかに記載の偏光板であることを特徴とす
    る積層偏光板。
  15. 請求項10〜14のいずれかに記載の偏光板を少なくとも一枚有することを特徴とする
    液晶表示装置。
  16. 偏光板、表示用液晶セル、バックライトを少なくとも含み、最大輝度が300cd/m2
    以上、白/黒表示における暗室コントラスト比が液晶セル法線方向において500以上、
    該法線に対して30°以内の角度範囲で150以上、該法線に対して60°以内の角度範
    囲で15以上である液晶表示装置であって、請求項10〜14のいずれかに記載の偏光板
    が該液晶表示装置の観察者側最表面に配置されていることを特徴とする液晶表示装置。
  17. 表示画面の対角が20インチ以上であることを特徴とする請求項15または16に記載
    の液晶表示装置。
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