以下、本発明の一実施形態に係るハイブリッド電源システムを図面を用いて詳しく説明する。図1は、同実施形態に係るハイブリッド電源システムS(図2参照)を備えた自動二輪車10を示している。この自動二輪車10は、前輪11と後輪12とからなる一対の車輪と、この一対の車輪が取り付けられた車体10aとを備えている。また、車体10aは、車体10aの主要部分を構成する車体フレーム13と、車体フレーム13に着脱自在に取り付けられるサブフレーム14を備えている。そして、車体フレーム13は、車体10aの前部側部分を構成するヘッドパイプ15と、ヘッドパイプ15から後方に延びるダウンチューブ16とで構成されている。
また、前輪11は、下方が二股に分岐したフロントフォーク17の下端部に回転可能に支持されている。すなわち、フロントフォーク17の両下端部は前輪11の中心軸(図示せず)の両側部分を回転可能に支持しており、これによって、前輪11は、中心軸を中心として回転可能になっている。また、フロントフォーク17の上端部には、ヘッドパイプ15内に配置されたステアリング軸18の下端部が連結されている。このステアリング軸18は、ヘッドパイプ15内に、ヘッドパイプ15の軸周り方向に回転可能な状態で取り付けられており、上端部がヘッドパイプ15から突出して上方に延びている。そして、ステアリング軸18の上端部に略水平方向に配置されたハンドル19が連結されている。
このため、ハンドル19を回転操作して、ステアリング軸18を軸周り方向に回転させると、ステアリング軸18の回転量に応じて前輪11はフロントフォーク17の軸方向を中心として左右に方向を変える。また、ハンドル19の左右両端には、グリップ(図示せず)が設けられている。このグリップのうちの一方のグリップは、軸回り方向に回転可能な状態で設けられており、手で持つための把持部として使用される外、後述する駆動モータ43の駆動力を調節するためのアクセル操作子を構成する。そして、他方のグリップは、ハンドル19に固定され手で持つための把持部として使用される。また、グリップの近傍には、それぞれ、グリップから離れるように付勢され、グリップ側に引っ張られることにより前輪11または後輪12の回転を抑制するブレーキレバー(図示せず)が設置されている。
ダウンチューブ16は、湾曲した一対のメインフレーム16a(一方しか図示せず)で構成されており、その前端部(上端部)はヘッドパイプ15の下部側部分の両側部に連結されている。そして、各メインフレーム16aは、ヘッドパイプ15との連結部からそれぞれ互いの間隔を広げるようにして、後方に向って斜め下方に延びたのちに湾曲して後方水平方向に延びている。さらに、各メインフレーム16aの後端側部分は、互いの間隔を保って後方斜め上方に向って延びている。そして、両メインフレーム16aの後端部は、水平方向に配置された板状の取付部材21に連結されている。
また、両メインフレーム16aにおける後部側部分の上面には、クロスメンバ22が掛け渡されている。このクロスメンバ22は両端側部分が略直角に屈曲した略コ字状の棒状に形成されており、屈曲した両端部をそれぞれメインフレーム16aに連結して本体部分が両メインフレーム16aの上側に突出している。また、両メインフレーム16aの下端部には、両メインフレーム16a間の下方に突出する設置台23が掛け渡されている。この設置台23の上面は、凹部に形成され、その凹部に燃料電池収容部24が設けられている。そして、この燃料電池収容部24の内部には燃料電池25(図2参照)が収容されている。
また、ダウンチューブ16を構成する両メインフレーム16aの前部側部分と、両メインフレーム16aの後部に設けられたクロスメンバ22との間に板状のサブフレーム14が取り付けられている。そして、サブフレーム14の上面における中央よりもやや前部側部分にリチウムイオン電池からなる二次電池26が固定され、サブフレーム14の上面における後部側部分に本発明の制御装置を構成する電源システム制御装置50が固定されている。
また、ヘッドパイプ15の前部には、固定部材27aを介してラジエータ27が取り付けられ、ラジエータ27の裏面(ラジエータ27とヘッドパイプ15との間)には、ラジエータ27を空冷するためのファン27bが取り付けられている。そして、ダウンチューブ16の前部側部分における燃料電池収容部24の前側でかつサブフレーム14(二次電池26)の下方部分にウォーターポンプ28が取り付けられている。ラジエータ27と燃料電池25との間は、冷却水が燃料電池25側からラジエータ27側に向って流れる冷却水配管29aで接続されており、この冷却水配管29aは、燃料電池25から燃料電池収容部24の前面部を通過してラジエータ27に向って延びている。
また、ラジエータ27からウォーターポンプ28に、冷却水がラジエータ27から燃料電池25側に向って流れる冷却水配管29bが延びている。そして、この冷却水配管29bは、さらにウォーターポンプ28から燃料電池収容部24に向って延び、燃料電池収容部24の前面から内部に入って燃料電池25に接続されている。このため、ウォーターポンプ28が作動すると、ラジエータ27内の冷却水が冷却水配管29bを通って燃料電池25に送られ燃料電池25を冷却する。そして、燃料電池25を冷却することによって熱を吸収した冷却水は、冷却水配管29aを通ってラジエータ27に戻され、ラジエータ27を通過する間にファン27bによって冷却される。
また、両メインフレーム16aの後端部に連結された取付部材21の上面には、燃料電池25に供給するための水素が充填された本発明の水素供給装置としての水素タンク31が取り付けられている。この水素タンク31は、図2に示したように、往路用のガス配管32aによって燃料電池25の水素ガス供給口に接続されている。また、燃料電池25の水素ガス排出口は復路用のガス配管32bによって、ガス配管32aの所定部分に接続されている。そして、ガス配管32aにおける水素タンク31側部分にガス配管32aを開閉するためのバルブ33が設けられ、ガス配管32bに燃料電池25の水素ガス排出口から排出される水素ガスをガス配管32aに送り返すための循環ポンプ34が設けられている。
このため、バルブ33を開けた状態で循環ポンプ34を作動させることにより、水素タンク31内の水素ガスをガス配管32aを介して燃料電池25に供給することができる。また、燃料電池25内で反応しないまま残った水素ガスは、ガス配管32bを通ってガス配管32aに戻され、水素タンク31から新たにガス配管32aに送り出される水素ガスと合流する。そして、水素ガスは、燃料電池25内で酸素ガスと反応するまでガス配管32a,32b内を循環する。また、水素タンク31の前部側部分の上部にシート35が配置されている。このシート35は、支持部材35aを介して両メインフレーム16aの後部側に連結されている。
また、両メインフレーム16aの後部側部分におけるクロスメンバ22の後方にエアフィルタ36が取り付けられ、両メインフレーム16aの後部側部分におけるクロスメンバ22の前方にエアブロア37が取り付けられている。なお、両メインフレーム16aの後部側部分における両メインフレーム16a間には、設置台(図示せず)が設けられており、エアフィルタ36およびエアブロア37は、この設置台を介してダウンチューブ16に固定されている。
また、エアフィルタ36とエアブロア37との間およびエアブロア37と燃料電池25との間はそれぞれ図2に示したガス配管38a,38bによって接続されており、エアブロア37の作動により、外部の空気がエアフィルタ36を介して吸引され、燃料電池25に供給される。そのエアフィルタ36に吸引された空気はエアフィルタ36内を通過する際に、異物を除去される。また、両メインフレーム16aの後部側部分の下部には、後方に向って延びる一対のアーム部材からなるリヤアーム(図示せず)が連結部材41を介して連結されている。
そして、リヤアームの両アーム部材の後端部に、後輪12の中心軸の両側部分が回転可能に支持されており、これによって、後輪12は、中心軸を中心として回転可能になっている。また、リヤアームの一方のアーム部材の外面側には、アーム部材を覆うようにして、モータユニット42が取り付けられている。このモータユニット42内には、燃料電池25が発生する電力によって作動する本発明の作動装置としての駆動モータ43や減速機が収容されている。この駆動モータ43の作動により後輪12が回転して自動二輪車10が走行する。
また、両メインフレーム16aの後端部と、リヤアームの後端上部との間には、リヤクッション44がそれぞれ掛け渡されている。このリヤクッション44の伸縮によって、リヤアームの後端側が揺動自在になっている。また、モータユニット42の内側面側にはドラムブレーキ(図示せず)が取り付けられている。駆動モータ43は、電源システム制御装置50の制御によってグリップの操作量に応じて作動し、後輪12に駆動力を自動的に発生させる。
また、この自動二輪車10は、静止状態のときに、自動二輪車10を起立状態に維持させるための回転式のスタンド45を備えており、自動二輪車10を走行させるときには、図1に実線で示したように、スタンド45を上方に上げておき、自動二輪車10を静止させておくときには、図1に二点鎖線で示したようにスタンド45を下方に下ろして、スタンド45に自動二輪車10を支持させる。
さらに、このハイブリッド電源システムSは、燃料電池25が発生する電力の電圧を昇圧する昇圧装置46および逆流防止用のダイオード47も備えており、燃料電池25、二次電池26、駆動モータ43、昇圧装置46、ダイオード47およびこれらを接続する配線で電気回路48が形成されている。また、このハイブリッド電源システムSを構成する各装置には、各装置の種々の状態を検出するための各種のセンサが設けられており、これらのセンサと電源システム制御装置50との間が各電気配線を介して接続されている。
すなわち、水素タンク31には、水素タンク31内の水素の残量を検出するための残量検出センサ51が設けられ、冷却水配管29aには、ラジエータ27から燃料電池に送られ燃料電池25を冷却したのちに燃料電池25からラジエータ27に送られる冷却水の温度を検出するための温度センサ52が設けられている。また、燃料電池25には、燃料電池25の温度を検出するための温度センサ53が設けられ、二次電池26には二次電池26の温度を検出するための温度センサ54が設けられている。そして、電気回路48には、電気回路48を流れる電流の値を検出するための電流センサ55および駆動モータ43に流れる電流の値を検出するための電流センサ56が設けられている。また、電気回路48における二次電池26に接続された配線48aには、二次電池26に流れる電流の値を検出するための電流センサ57が設けられている。
これらの各センサ51等はそれぞれ配線51a,52a,53a,54a,55a,56a,57aを介して電源システム制御装置50に接続されており、検出した値を電気信号として電源システム制御装置50に送信する。また、燃料電池25と電源システム制御装置50との間は配線58によって接続され、電気回路48と電源システム制御装置50との間は配線59によって接続されている。これらの配線58,59によって、燃料電池25および電気回路48の電圧値を検出できるようになっている。
また、電源システム制御装置50から、エアブロア37、バルブ33、循環ポンプ34、ファン27b、ウォーターポンプ28、昇圧装置46、駆動モータ43にそれぞれ指示信号を送信するための配線61,62,63,64,65,66,67がそれぞれ電源システム制御装置50と対応する装置との間を接続している。エアブロア37は、電源システム制御装置50からの流量指示信号に応じて作動して空気を燃料電池25に供給し、バルブ33は電源システム制御装置50からの動作指示信号に応じて開閉して、水素タンク31から水素ガスを燃料電池25に供給する。
燃料電池25は、エアブロア37から供給される空気中の酸素と、水素タンク31から供給される水素とを反応させて水を発生させるとともに電気を発生させる。そして、昇圧装置46は、電源システム制御装置50からの電圧指示信号に応じて燃料電池25が発生した電気を昇圧して、駆動モータ43に送ったり、二次電池26に送って二次電池26を充電したりする。また、循環ポンプ34は、電源システム制御装置50からの動作指示信号に応じて作動して、燃料電池25で酸素と反応しなかった水素ガスを、ガス配管32bを介してガス配管32aに戻し、水素タンク31から新たにガス配管32aに送り出される水素ガスと合流させる。
また、ウォーターポンプ28は、電源システム制御装置50からの動作指示信号に応じて作動して、ラジエータ27と燃料電池25との間で冷却水を循環させて燃料電池25の温度を所定の温度に維持する。そして、ファン27bは、電源システム制御装置50からの動作指示信号に応じて作動して、ラジエータ27を空冷する。また、駆動モータ43は、アクセル操作子を構成するグリップの操作量に応じた動作信号を電源システム制御装置50から受信し、その動作信号に応じて作動する。なお、二次電池26は、燃料電池25が発生する電力を適宜充電し、補助の電源として必要に応じて駆動モータ43に放電する。
また、電源システム制御装置50は、CPU,RAM,ROM,タイマ等を備えており、ROMには、予め用意された各種のプログラムやマップ等のデータが記憶されている。そして、CPUは、運転者によるグリップ等の操作や、予め用意されたプログラム等に基づいて、駆動モータ43、バルブ33、エアブロア37、ウォーターポンプ28等を制御する。さらに、この自動二輪車10は、始動用の電源スイッチ(図示せず)も備えている。
この構成において、運転者が自動二輪車10を運転する場合には、運転者は、まず、シート35を跨いで座る。ついで、電源スイッチをオン状態にする。これによって、燃料電池25には、エアブロア37から空気が供給されるとともに、水素タンク31から水素が供給され、燃料電池25は、供給される空気中の酸素と水素を反応させて電気を発生する。その際、燃料電池25は、ウォーターポンプ28の作動によりラジエータ27から送られる冷却水によって冷却され所定温度に維持される。また、燃料電池25は、酸素と水素との反応によって発生した水を排気とともに外部に放出する。
この際、燃料電池25の温度が作動に適した温度に到達するまでに、電源システム制御装置50は、図3のフローチャートに示したプログラムを実行して暖機時に応じた発電を燃料電池25に行わせる。また、暖機が終了したのちには、通常運転時に適した発電を燃料電池25に行わせる。すなわち、この燃料電池25に発電させるためのプログラムはROMに記憶されており、電源スイッチがオン状態になったのちに、CPUによって所定時間ごとに繰り返し実行される。このプログラムは、まず、ステップ100でスタートしたのちに、ステップ102に進み、駆動モータ43の負荷電圧および負荷電流の測定が行われる。この場合の負荷電流の値は、電流センサ56の検出値によって得られ、負荷電圧の値は、配線59を介して得られる。
つぎに、プログラムは、ステップ104に進み、ステップ102の処理によって得られた負荷電流の値と負荷電圧の値とから駆動モータ43が必要とする電力を算出する処理が行われる。この必要電力は、負荷電流値と負荷電圧値との積として求められる。ついで、ステップ106において、温度センサ53が検出する燃料電池25の温度のデータを取り込む処理が行われ、ステップ108において、更新フラグKFが“1”であるか否かの判定が行われる。
この更新フラグKFは、所定の時間が経過して後述する発電量更新の処理を行う状態であるか否かを示すものでプログラム開始時には“1”に設定されている。したがって、ステップ108においては、「YES」と判定してプログラムはステップ110に進む。そして、ステップ110においては、ステップ106の処理で得られた燃料電池25の温度が、しきい値以下か否かの判定が行われる。このしきい値は、予め設定されROMに記憶された値であり、例えば、暖機が略終了する70℃程度の温度としておく。
ここで、温度センサ53が検出した燃料電池25の温度がしきい値以下で、ステップ110において「YES」と判定すると、プログラムはステップ112に進む。そして、ステップ112においては、予め作成されROMに記憶されているマップ(図4参照)の中の暖機時発電量マップを選択して参照する処理が行われる。すなわち、図4に示したマップは、ステップ104の処理で求めた駆動モータ43の必要電力に対する燃料電池25の発電量を示しており、一点鎖線aは、必要電力に対して燃料電池25の発電量を同量にした場合の関係を示している。
また、破線bは、本発明に係る暖機時の燃料電池25の発電量を示した暖機時発電量マップであり、暖機時においては、燃料電池25の発電量が駆動モータ43の作動に必要な電力よりも大きくなるように設定している。このように設定することにより、燃料電池25の発電量だけでなく発熱量も増加して、燃料電池25の温度が早期に上昇して適正な作動状態になる。また、この場合、駆動モータ43の作動に用いられない余剰の電力は二次電池26に充電される。つぎに、プログラムは、ステップ114に進み、燃料電池25を作動させるためのFC補機(エアブロア37、バルブ33、ウォーターポンプ28等)の作動を制御する。これによって、燃料電池25は、図4の破線b上におけるステップ104の処理で算出した必要電力に対応する発電量を発生する。
ついで、ステップ122において、更新フラグKFを“0”に設定する処理が行われる。そして、プログラムはステップ124に進み、燃料電池25の発電量を更新するか否かの判定が行われる。この判定は、タイマが測定する経過時間と予め設定された設定時間との比較によって行われる。この設定時間は、燃料電池25の発電量を急変させず、各FC補機に過度の負担をかけさせない範囲で短い時間に設定しておく。ここで、経過時間が設定時間に達してなく、ステップ124において、「NO」と判定すると、プログラムはステップ128に進んで一旦終了する。
そして、再度、ステップ100においてプログラムの実行を開始する。この場合も、ステップ102,104の処理で必要電力を求めるとともに、ステップ106の処理で燃料電池25の温度を求める。そして、ステップ108において、更新フラグKFが“1”であるか否かの判定が行われる。この場合、前回のプログラム実行の際に、ステップ122で更新フラグKFは“0”に設定されているためステップ108においては、「NO」と判定され、プログラムはステップ116に進む。このステップ116においては、前回のステップ114の処理のときのFC補機制御と同じ制御を行うことにより、前述した必要電力に対応する発電量を燃料電池25に発生させる処理を継続する。
そして、プログラムは、ステップ124に進み、燃料電池25の発電量を更新するか否かの判定が行われる。ここで、まだ、経過時間が設定時間に達してなく、ステップ124において「NO」と判定すると、プログラムはステップ128に進んで一旦終了する。そして、設定時間が経過して、ステップ124において、「YES」と判定するまで、ステップ100〜108,116,124,128の処理が繰り返される。また、設定時間が経過して、ステップ124において、「YES」と判定すると、プログラムはステップ126に進み更新フラグKFを“1”に設定する処理が行われる。
そして、ステップ128に進み、プログラムは終了する。また、再度、プログラムは、ステップ100から開始され、前述したステップ102〜106の処理を行う。ついで、ステップ108において、更新フラグKFが“1”であるか否かの判定が行われる。ここでは、前回のプログラム実施の際に、ステップ126で更新フラグKFは“1”に設定されているため、「YES」と判定して、プログラムは110に進む。そして、ステップ110において、燃料電池25の温度がしきい値以下か否かの判定を行う。
ここで、燃料電池25の温度がまだしきい値以下で、ステップ110において「YES」と判定すると、プログラムはステップ112に進み、図4のマップの中の破線bで示した暖機時発電量マップを選択する処理が行われる。そして、プログラムは、ステップ114に進んで、FC補機の作動を制御し、燃料電池25に、図4の破線b上における必要電力に対応する発電量を発生させる。この場合の発電量は、ステップ112で参照された更新した発電量となる。
ついで、プログラムは、ステップ122に進み、更新フラグKFを“0”に設定する処理が行われる。そして、プログラムはステップ124に進み、ステップ114の処理を行ってからの時間が設定時間を経過したか否かの判定が行われる。ここで、設定時間が経過してなく、ステップ124において「NO」と判定すると、プログラムはステップ128に進んで一旦終了する。そして、再度、ステップ100からプログラムの実行が開始され、設定時間が経過して、ステップ124において、「YES」と判定するまで、ステップ100〜108,116,124,128の処理が繰り返される。
また、設定時間が経過すると、次のプログラム実施時において発電量が更新され、このステップ100〜116,122〜128の処理は、温度センサ53が検出する燃料電池25の温度がしきい値に達して、ステップ110において、「NO」と判定するまで繰り返される。その間、図4に破線bで示した暖機時発電量マップに基づいて燃料電池25は発電する。この暖機の際の燃料電池25の発電量と、二次電池26の充電量との関係を図5の左側部分に示している。
すなわち、図5に破線領域dで示したように暖機時には、燃料電池25の発電量が大きくなる。一方、二次電池26は、燃料電池25が発電する電力のうちの過剰分を充電して、図5に破線領域eで示したように充電量が徐々に上昇して、暖機が終了するころには、満充電の値に近づいていく。そして、温度センサ53が検出する燃料電池25の温度がしきい値に達して、ステップ110において、「NO」と判定すると、プログラムはステップ118に進む。
ステップ118においては、図4に実線cで示した通常運転時発電量マップを選択して参照する処理が行われる。すなわち、この実線cは、本発明に係る通常運転時の発電量を示しており、通常運転時においては、燃料電池25の発電量がステップ104の処理で算出した駆動モータ43の作動に必要な電力よりも小さくなるように設定している。そして、駆動モータ43の作動に足りない不足の電力は二次電池26によって補充されるようにしている。これによって、二次電池26が満充電より十分少ない充電状態となるので長寿命化する。
つぎに、プログラムは、ステップ120に進んで、FC補機の作動を制御して燃料電池25を通常運転により作動させる。これによって、燃料電池25は、図4の実線c上における必要電力に対応する発電量を発生する。ついで、ステップ122において、更新フラグKFを“0”に設定する処理が行われたのちに、ステップ124において、発電量を更新するか否かの判定が行われる。経過時間が設定時間に達してなく、ステップ124において「NO」と判定されると、ステップ128に進み、プログラムは一旦終了する。
そして、経過時間が設定時間に達してステップ124において「YES」と判定するまで、前述したように、ステップ100〜108,116,124,128の処理が繰り返される。この場合、ステップ116では、前回のステップ120の処理のときのFC補機制御と同じ制御を行うことにより、前述した必要電力に対応する発電量を燃料電池25に発生させる処理を継続する。
経過時間が設定時間に達すると、ステップ124において「YES」と判定して、プログラムは、ステップ126に進み、更新フラグKFを“1”に設定する処理が行われる。そして、プログラムはステップ128に進み一旦終了する。そして、再度、ステップ100においてプログラムの実行が開始され、その後、ステップ102〜110、116,118〜128の処理が繰り返される。この処理は、電源スイッチがオフにされるまで繰り返され、その間、燃料電池25は、図4の実線c上における必要電力に対応する発電量を発生させる。
この通常運転時の燃料電池25の発電量と、二次電池26の充電量との関係を図5の中央部分に示している。すなわち、図5に破線領域fで示したように通常運転時には、燃料電池25の発電量は暖機時よりも小さくなる。この発電量は、駆動モータ43の作動に使用される電力よりも小さくなるように設定されており、暖機が終了してから大きく低下する。一方、二次電池26は、燃料電池25が発電する電力のうちの不足分を駆動モータ43に放電して、図5に破線領域gで示したように充電量が徐々に低下していく。
また、前述した処理が行われる間、自動二輪車10は、グリップの操作に応じて加速減速を繰り返す。また、自動二輪車10の走行速度を下げる場合には、必要に応じてブレーキレバーを操作する。これによって、自動二輪車10は、ブレーキレバーの操作量に応じて減速する。そして、自動二輪車10の走行を終了させるときには、電源スイッチをオフ状態にするとともに、スタンド45を下方に回転させて地面に接地させることにより、自動二輪車10を起立状態にしておく。
また、ハイブリッド電源システムSの作動が停止した時の燃料電池25の発電量と、二次電池26の充電量との関係を図5の右側部分に示している。図5に示したように、燃料電池25は作動を停止すると同時に発電量も「0」になり以後その状態が続く。また、二次電池26は、燃料電池25からの充電も駆動モータ43への放電もしなくなるため、図5に破線領域hで示したように作動停止時の充電量を維持する。そして、再度、ハイブリッド電源システムSを作動させると、燃料電池25の発電量と、二次電池26の充電量とは、図5における暖機の初期状態になる。
このように、本実施形態に係るハイブリッド電源システムSでは、燃料電池25の温度がしきい値以下で暖機時にある場合の燃料電池25の発電量を駆動モータ43の作動に必要な電力よりも大きくすることで、燃料電池25の発熱量を発電量に比例して大きくすることができる。これによって、燃料電池25を早期に暖めて暖機状態から通常運転状態にすることができる。また、燃料電池25が発生する電力のうち駆動モータ43が消費しない余剰の電力は、二次電池26に充電されるため燃料電池25が発生する電力に無駄がなくなる。また、この場合、暖機のために、ヒータ等の装置を設ける必要がないため、ハイブリッド電源システムSの小型化が図れる。
また、暖機が終了してハイブリッド電源システムSが通常運転になると、燃料電池25が発生する電力を駆動モータ43が消費する電力よりも小さくするとともに、駆動モータ43が消費する電力の不足分を二次電池26から供給するようにしている。したがって、二次電池26が満充電より十分少ない充電状態になるので二次電池26を長寿命化することができる。さらに、燃料電池25が発電する際に、所定の周期ごとに間隔を保って、暖機時発電量マップおよび通常運転時発電量マップの対応するマップを参照して発電量を更新するようにしている。
このため、駆動モータ43の必要電力が急変しても、発電量を周期的にゆっくりと上昇させることができる。この結果、ハイブリッド電源システムSが備える燃料電池25のFC補機や制御系の装置は厳しい過渡特性を要求されなくなり、ハイブリッド電源システムSの小型化、軽量化も図れる。また、二次電池26をリチウムイオン電池で構成したため、小型でエネルギー密度の大きな二次電池26が得られる。さらに、ハイブリッド電源システムSを自動二輪車10の電源システムとして用いたため、暖機時間が短くてすみ、燃料電池25が発生した電力に無駄が生じない自動二輪車10が得られえる。
また、本発明の他の実施形態に係る燃料電池25の発電量を制御するためのプログラムを図6に示している。このプログラムも電源システム制御装置50が備えるROMに記憶されており、電源スイッチがオン状態になったのちに、CPUによって所定時間ごとに繰り返し実行される。このプログラムは、まず、ステップ200でスタートしたのちに、ステップ202に進み、ステップ202において二次電池26の電圧の測定が行われる。この電圧値は、電気回路48と電源システム制御装置50とを接続する配線59を介して得られる。
つぎに、プログラムは、ステップ204に進み、二次電池26の電流の測定が行われる。この電流値は、電流センサ57が検出する検出値によって得られる。ついで、ステップ206において、ステップ204の処理で求めた燃料電池25の二次電池26の電流値が、しきい値以下か否かの判定が行われる。このしきい値は、予め設定されROMに記憶された値であり、例えば2Aとしておく。ここで、電流センサ57が検出した二次電池26の電流値がしきい値以下で、ステップ206において「YES」と判定すると、プログラムはステップ208に進む。
そして、ステップ208においては、ステップ202の処理で求めた電圧値から二次電池26の充電量を求める処理が行われる。この充電量は、予め作成された電圧値と充電量とのマップ(図示せず)に基づいて求められる。ついで、ステップ210において、温度センサ53が検出する燃料電池25の温度のデータを取り込む処理が行われ、ステップ212において、更新フラグKFが“1”であるか否かの判定が行われる。この更新フラグKFは、前述した図3のプログラムの更新フラグKFと同様、所定の時間が経過して後述する更新処理を行う状態であるか否かを示すものでプログラムの開始時には“1”に設定されている。
したがって、ステップ212においては、「YES」と判定してプログラムはステップ214に進む。そして、ステップ214においては、ステップ210の処理で得られた燃料電池25の温度が、しきい値以下か否かの判定が行われる。このしきい値は、予め設定されROMに記憶された値であり、前述した図3のプログラムにおけるステップ110の設定値と同じである。
ここで、温度センサ53が検出した燃料電池25の温度がしきい値以下で、ステップ214において「YES」と判定すると、プログラムはステップ216に進む。そして、ステップ216においては、予め作成されROMに記憶されているマップ(図7参照)の中の暖機時発電量マップを選択して参照する処理が行われる。すなわち、図7に示したマップは、二次電池26の充電量に対する燃料電池25の発電量を示している。
図7の破線iは、暖機時の燃料電池25の発電量を示した暖機時発電量マップであり、実線jは通常運転時の燃料電池25の発電量を示した運転時発電マップである。図示のように、暖機時における燃料電池25の発電量は、通常運転時における燃料電池25の発電量よりも大きくなるように設定している。このように設定することにより、暖機時における燃料電池25の発熱量が増加して温度が上昇し、燃料電池25が早期に適正な作動状態になる。また、この場合も、燃料電池25が発生する電力のうちの余剰の電力は二次電池26に充電される。
つぎに、プログラムは、ステップ218に進み、以下、ステップ228〜234の処理を行う。このステップ218,228〜234における処理は、ステップ216で参照した破線iの暖機時発電量マップ(充電量は二次電池26の電圧値に基づく。)を参照して行うこと以外は、前述した図3のプログラムのステップ114,122〜128での処理と同じであるため説明は省略する。そして、ステップ218,228〜234の処理が終了すると、プログラムは一旦終了する。
そして、再度、ステップ200においてプログラムの実行を開始する。この場合も、ステップ202の処理で二次電池26の電圧値を求めたのち、ステップ204の処理で二次電池26の電流値を求める。そして、ステップ206において、二次電池26の電流値が、しきい値以下か否かの判定を行う。ここで、電流センサ57が検出した二次電池26の電流値が、まだしきい値以下で、ステップ206において「YES」と判定すると、プログラムはステップ208に進む。そして、ステップ208においては、ステップ202の処理で求めた電圧値から二次電池26の充電量を求める処理が行われる。
ついで、ステップ210において、温度センサ53が検出する燃料電池25の温度のデータを取り込む処理が行われ、ステップ212において、更新フラグKFが“1”であるか否かの判定が行われる。この場合、前回のプログラム実施の際に、ステップ230で「NO」と判定し、ステップ232の処理を行っていなければ、ステップ228の処理により更新フラグKFは“0”に設定されたままであるから、ステップ212において、「NO」と判定して、プログラムはステップ220に進む。ステップ220においては、前回のステップ218の処理のときのFC補機制御と同じ制御を行うことにより、前述した必要電力に対応する発電量を燃料電池25に発生させる処理を継続する。そして、ステップ230において「YES」と判定するまで、ステップ200〜212,220,230〜234の処理を繰り返す。
ステップ230において「YES」と判定すると、ステップ232において更新フラグKFを“1”に設定する処理が行われる。そして、つぎのプログラム実行の際に、ステップ212において「YES」と判定して、以下、更新した発電量に基づいたFC補機の制御が行われる。そして、ステップ206,214において「YES」と判定する間は、二次電池26の電圧値に基づいた暖機時処理が発電量を設定された所定時間ごとに更新しながら繰り返し行われる。また、電流センサ57が検出した二次電池26の電流値がしきい値以上になり、ステップ206において「NO」と判定すると、プログラムはステップ222に進む。
そして、ステップ222においては、ステップ204の処理で求めた電流値の積算値から二次電池26の充電量を求める処理が行われる。この積算値は、プログラムを実行するたびに電源システム制御装置50が電流値を積算処理してその値をデータとしてRAMに保存したものである。ついで、ステップ210において、温度センサ53が検出する燃料電池25の温度のデータを取り込む処理が行われ、ステップ212において、更新フラグKFが“1”であるか否かの判定が行われる。ここでは、更新フラグKFが“1”であるとして、ステップ214に進み、燃料電池25の温度が、しきい値以下か否かの判定を行う。
そして、温度センサ53が検出する燃料電池25の温度がしきい値に達してなく、ステップ214において、「YES」と判定すると、プログラムはステップ216に進み、以下前述したステップ218,228〜234の処理を実行する。そして、ステップ206において「NO」と判定し、ステップ214において「YES」と判定する間は、二次電池26の電流積算値に基づいた暖機時処理が行われる。その間、図7に破線iで示した暖機時発電量マップに基づいて燃料電池25は発電する。
そして、温度センサ53が検出する燃料電池25の温度がしきい値に達して、ステップ214において、「NO」と判定すると、プログラムはステップ224に進む。ステップ224においては、図7に実線jで示した通常運転時発電量マップを選択して参照する処理が行われる。すなわち、この実線jは、通常運転時の発電量を示しており、通常運転時においては、燃料電池25の発電量が暖機時の発電量よりも小さくなるように設定している。この場合も、駆動モータ43の作動に足りない不足の電力は二次電池26によって補充される。
つぎに、プログラムは、ステップ226に進み、FC補機の作動を制御して燃料電池25を通常運転により作動させる。これによって、燃料電池25は、図7の実線j上における二次電池26の充電量に対応する発電量を発生する。ついで、ステップ228において、更新フラグKFを“0”に設定する処理が行われたのち、プログラムはステップ230に進み、発電量を更新するか否かの判定が行われる。そして、経過時間が設定時間に達してなく、ステップ230において「NO」と判定されると、プログラムは一旦終了する。そして、再度、ステップ200においてプログラムの実行が開始され、その後、ステップ202〜206,220,222,210〜214,224〜234の処理が繰り返される。この処理は、電源スイッチがオフにされるまで繰り返され、その間、燃料電池25は、図7の実線j上における二次電池26の充電量に対応する発電量を発生させる。
この図6のプログラムを実行した際の、燃料電池25の発電量と二次電池26の充電量との関係は、図5に示したグラフと略同じになる。これによると、暖機時における燃料電池25の発電量および通常運転時における燃料電池25の発電量を、それぞれ二次電池26の電圧値や電流積算値に応じて調節できるため、二次電池26に無理な負担がかからなくなる。すなわち、燃料電池25の温度がしきい値以下であるかしきい値よりも大きいかに加えて、二次電池26の電流値がしきい値以下であるかしきい値よりも大きいかによって燃料電池25の発電量を電圧に基づいて電源システム制御装置50が算出した充電量または電流に基づいて電源システム制御装置50が算出した充電量に基づいて調整できるためより細かな制御ができる。
また、図8に、ステップ208の処理で求めた二次電池26の充電量が、満充電に近い大きな値であった場合の処理における燃料電池25の発電量と二次電池26の充電量との関係を示している。この場合は、暖機処理を省略して、最初から通常運転による制御が行われる。すなわち、図8に破線領域kで示したように、燃料電池25の発電量は、駆動モータ43の作動に使用される電力よりもやや小さな範囲で上下に小さく変動しながら経過し、二次電池26の充電量が所定値になると、駆動モータ43の作動に使用される電力と略同じ値になるように制御される。
一方、二次電池26は、燃料電池25が発電する電力のうちの不足分を駆動モータ43に放電して、図8に破線領域lで示したように充電量が徐々に低下していく。この充電量は、燃料電池25が起動してから大きく低下したのちに所定時間経過後に略一定値になるように落ち着く。これによると、二次電池26を過度に高い充電状態にすることがなくなるため、二次電池26の劣化を抑制できるとともに、過充電に対する安全性の確保も可能になる。
また、本発明に係るハイブリッド電源システムは、前述した実施形態に限定するものでなく、適宜変更実施が可能である。例えば、前述した実施形態では、ハイブリッド電源システムSを自動二輪車10に設けているが、このハイブリッド電源システムを利用する装置としては、自動二輪車10に限らず、自動三輪車や自動四輪車等の車両であってもよいし、車両以外の電力を利用する装置であってもよい。また、前述した実施形態では、二次電池26の初期の充電量が大きい場合に、暖機処理を省略する制御を図6に示したプログラムにおいて利用できるようにしているが、図3に示したプログラムにおいても二次電池の充電量を算出するステップを設けてこの制御を行うことができる。
また、前述した実施形態では、電気回路48を流れる電流の値を検出するための電流センサ55,56,57を設けているが、この電流センサ55等のうちのいずれか一つは省略してもよい。また、配線58,59に電圧センサを設けてもよい。これによって、正確な電圧の検出が行える。さらに、前述した図3のフローチャートでは、燃料電池25の温度がしきい値温度以下であるか否かを判定するようにしているが、この温度をラジエータ27の冷却水の温度にすることもできる。また、本発明に係るハイブリッド電源システムSを構成するその他の部分の構成についても適宜変更することができるし、所定の装置を省略したり他の装置を加えたりすることもできる。
10…自動二輪車、25…燃料電池、26…二次電池、27…ラジエータ、28…ウォーターポンプ、29a,29b…冷却水配管、31…水素タンク、32a,32b,38a,38b…ガス配管、33…バルブ、37…エアブロア、43…駆動モータ、50…電源システム制御装置、52a,53a,56a,57a,58,59,61,62,63,65,67…配線、52,53…温度センサ、56,57…電流センサ、S…ハイブリッド電源システム。