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JP2007161764A - 粉末色材組成物 - Google Patents

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JP2007161764A
JP2007161764A JP2005356349A JP2005356349A JP2007161764A JP 2007161764 A JP2007161764 A JP 2007161764A JP 2005356349 A JP2005356349 A JP 2005356349A JP 2005356349 A JP2005356349 A JP 2005356349A JP 2007161764 A JP2007161764 A JP 2007161764A
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Makoto Hiroya
誠 広谷
Takeshi Omatsu
武志 尾松
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Sakura Color Products Corp
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Abstract

【課題】使用前には粉末でありながら、紙などの被塗布面に筆などでこすり付けると液状化するため、水に溶解または分散させることなく、そのまま描画できる粉末色材組成物においては、被塗布面がガラス・金属・プラスチックなどを材質とする非吸収面の場合、描画や筆記が困難であった。
【解決手段】水成分、着色材及び疎水化二酸化ケイ素に加え、更に粉末状の樹脂エマルジョンを含む粉体状の粉末色材組成物とする。
【効果】前記粉末色材組成物が塗擦もしくは加圧されると、粉末状であったものがペースト又は液状になるともに、前記樹脂エマルジョンが、そのペーストまたは液中の水分に分散または溶解することで、その接着性が発揮され、該色材組成物が非吸着面上に接着されることで描画や筆記が可能となる。
【選択図】なし

Description

本発明は、描画時に液体に溶解する必要がなく、画材上に着色材粉末をふりかけ、その上から塗擦もしくは加圧することで描画できる粉末色材組成物に関する。
現在、一般に使用されている色材としてはインキ、絵の具などがある。このうち、粉状の絵の具である粉絵の具は、液状やペースト状の絵の具に比べて小型で軽量であり、また、鞄等に入れて持ち運んだ場合においては、粉がこぼれても取り除くことが容易であるために旅行用などの持ち運び用として非常に便利である。しかし、かかる粉絵の具を使用するに際しては、使用前に水と任意の割合で混合し、均一に溶解または分散させなければならないため、持ち運びの利便性とは反対に使用時の利便性に欠ける。また、粉絵の具に対して水を混合する割合が少ない場合には絵の具が溶け難く、水を混合する割合が多い場合には所望の着色が得られず、使用性に支障をきたすなどの問題があった。
そこで我々は、使用前には粉末でありながら、紙などの被塗布面に筆などで塗擦する(こすり付ける)か、加圧すると液状化またはペースト化するため、水に溶解または分散させることなく、そのまま描画できるという従来の粉絵の具とは使用形態、概念を全く異にする粉体色材組成物として、水成分、着色材及び疎水化二酸化ケイ素を含む色材であって、実質的に粉体状であることを特徴とする粉末色材組成物を提案した(特許文献1)。
特開2002-322405号公報
しかしながら、特許文献1記載の粉末色材組成物は、被塗布面が紙や布などを材質とする吸収面である場合には良好な描画性を有するものであるが、被塗布面がガラス・金属・プラスチックなどを材質とする非吸収面に対しては、レベリングが悪く、仮に描画したとしても、乾燥した塗膜からハガレやウキ、ヒビワレが発生しやすいものであった。
そこで、本発明者らは、水成分、着色材、疎水化二酸化ケイ素に加え、粉末状の樹脂エマルジョンを含む粉体状の粉末色材組成物とすることを上記課題解決のための最も主要な手段とした。この色材組成物を絵の具、インキ等に用いることにより、上記粉末色材組成物の特徴を維持しつつ、上記課題が解決できることを見出し、本発明に至ったものである。
更に、本発明の粉末色材組成物は、その成分として含まれる樹脂エマルジョンが粉末状であるので、使用前は粉状であるが、塗擦または加圧によって液状またはペースト化するという粉末色材組成物の特徴を維持したまま上記接着性を付与することができる。
更に、ペースト状または液状となった本発明の粉末色材組成物は、その水分中に分散または溶解した樹脂エマルジョンによって、一定の接着性を与えられる。このため絵の具として使用する際に、絵のような塗膜の接着性を必要とせず、被塗布面が非吸収面であっても、その接着性により描画できるものである。
したがって、本発明の粉末色材組成物を用いたインキや絵の具は、被塗布面が吸収面であっても、粉末色材組成物では描画や筆記が困難であった非吸収面であっても、その表面に描画や筆記ができるようになった。
本発明は、水成分、着色材、疎水化二酸化ケイ素及び樹脂エマルジョンを含む色材組成物であって、実質的に粉体状の粉末色材組成物である。本発明の粉末色材組成物は、前記粉末色材組成物の粉末が粒子体の集合体として構成されるものである。前記の粉末色材組成物の粒子体は、疎水化二酸化ケイ素粒子の粒子群及び水成分から構成されたものであり、微小な前記粒子群が前記水成分を包摂する(覆う)ことにより粒子体を形成したものである。静的状態においては、前記粉末色材組成物は前記水成分の気液界面における自由液面が存在しない状態のものである。したがって、前記粉末色材組成物は、塗擦前または加圧前において、全体として粉末状であって粉体としての流動性を示すものであり、前記水成分の自由液面が存在しないものであれば、前記粒子体の構成は特に限定されるものではなく、前記水成分をコアとし前記粒子群をシェルとする複合粒子状であってもよく、ペンジュラ−状、ファニキュラー状、キャピラリー状であっても良い。
(疎水化二酸化ケイ素)
本発明の粉末色材組成物における疎水化二酸化ケイ素は、粉末状のものであって、疎水化二酸化ケイ素を構成する粒子の表面にシランカップリング剤処理のような公知の疎水化処理がされたものであれば特に限定されるものではない。例えば、トリメチルシロキシ化無水ケイ酸、ジメチルシロキシ化無水ケイ酸、オクチルシロキシ化無水ケイ酸、シリコーンオイル処理無水ケイ酸を用いることができる。具体的には、トリメチルシロキシ化無水ケイ酸としては、キャボットTS−530(BET比表面積325m/g、キャボット社製)、アエロジルR−812(BET比表面積260±30m/g、デグサ社製)、アエロジルR−812S(BET比表面積220±15m/g、デグサ社製)、RX−200(BET比表面積140±25m/g、日本アエロジル社製)を挙げることができる。ジメチルシロキシ化無水ケイ酸としては、アエロジルR−972(BET比表面積110±20m/g、デグサ社製)、R−974(BET比表面積170±20m/g、デグサ社製)、アエロジルR−972V(BET比表面積110±20m/g、デグサ社製)、アエロジルR−972CF(BET比表面積110±20m/g、デグサ社製)を挙げることができる。オクチルシロキシ化無水ケイ酸としては、アエロジルR−805(BET表面積150±25m/g、デグサ社製)を挙げることができる。シリコーンオイル処理無水ケイ酸としては、アエロジルR−202(BET表面積100±20m/g、デグサ社製)、RY−200(BET比表面積100±20m/g、日本アエロジル社製)を挙げることができる。
なかでも、疎水化二酸化ケイ素がトリメチルシロキシ化無水ケイ酸及びジメチルシロキシ化無水ケイ酸であれば、水成分を含ませたなかでも安定に粉末化できるために本発明において好適である。
前記疎水化二酸化ケイ素の粉末の粒子における特性は、疎水化処理がされていれば、形状、粒径、比表面積、疎水化率などについて特に限定されるものではないが、1次粒子が略球状であるものがブロッキング性等の粉体貯蔵性のために好ましい。BET比表面積については80m/g以上であることが好ましい。BET比表面積が80m/g以下である場合には、疎水化二酸化ケイ素粒子の表面に微細な凹凸が少ないので疎水化二酸化ケイ素粒子の撥水効果が疎水化処理剤のみに依存するために、疎水化二酸化ケイ素の粒子が色材粉体組成物中の水分とヌレやすくなり、前記水成分を粉末色材組成物中に経時安定的に分散することが難しくなるために好ましくない。特に、BET比表面積については80m/g以上であって、粒子径50nm以下である疎水化二酸化ケイ素を用いることがより安定的に粉末化できるために好ましい。また、疎水化率についても水成分を粉末色材組成物中に安定的に分散するために50%以上であることが好ましく、55%以上であることが好ましい。なお、疎水化率は公知の計算方法により計算されるものである。
前記疎水化二酸化ケイ素が本発明の粉末色材組成物に含まれる量は、特に限定されるものではないが、粉末色材組成物の全量に対して0.1〜10重量%であることが好ましく、1〜5重量%であることがより好ましい。前記疎水化二酸化ケイ素が粉末色材組成物の全量に対して0.1重量%より少ない場合には、水成分を安定的に分散して粉末色材組成物を得ることが容易ではなく、粉末色材組成物の全量に対して10重量%より多い場合には塗擦しても十分に液化することができないために好ましくない。
(水成分)
本発明の粉末色材組成物に含まれる水成分は、特に限定されるものではないが、筆などにより着色材等を被塗物に塗布する際に、着色材を定着させるための樹脂成分を均一に塗布できるものであればよく、水のみからなるものでもよく、湿潤剤や樹脂、着色材、体質顔料、その他の成分などを含むものであっても良い。前記水成分は、塗布の作業性が良好であることから水を主成分として含むものであることが好ましく、前記水は品質管理の容易性の観点からイオン交換水であることが好ましい。前記水成分の含有量は、粉末色材組成物の全量に対して20〜60重量%の範囲内にあれば、塗布作業性が良好なことから好ましい。上述のとおり、本発明の粉末色材組成物にあっては、前記水成分は、前記疎水化二酸化ケイ素の複数の粒子により包摂されている状態で存在しているため、該粉末色材組成物に塗擦または加圧などの変形力が与えられない限り、該粉末色材組成物は水成分を含有しても粉末状態で存在しているものである。
(着色材)
本発明の粉末色材組成物に含まれる着色材は、粉末状または、液状でも前記疎水化二酸化ケイ素で粉末化でき、着色性を有するものであれば特に限定されるものではないが、粉末色材組成物を絵の具またはインキに用いる場合には、溶解性、分散性の観点から水溶性染料もしくは着色顔料を含むことが好ましい。水溶性染料としては、特に限定されるものではないが、酸性染料、直接染料、塩基性染料などを用いることができる。着色顔料としては、特に限定されるものではなく、有機顔料または無機顔料を用いることができる。有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントバイオレッド19等を挙げることができる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、黒鉛、ベンガラ、酸化クロム、コバルトブルー、群青、カーボンブラック等が挙げられる。本発明では、アルミニウム顔料、真鍮粉顔料等の金属顔料、ガラスフレーク顔料、蛍光顔料や蓄光顔料等を例示できる。また、これらを顔料分散体として用いることもできる。また、着色エマルジョンも使用することができる。また、着色材としては、これらの1種又は2種以上を混合して用いることができる。
本発明の粉末色材組成物が絵の具として用いられる場合には、前記着色材の含有量は、特に限定されるものではないが、通常は粉末色材組成物の全量に対して2〜30重量%であることが好ましく、使用する有色顔料の種類等に応じて適宜設定することができる。例えば、有機顔料を用いる場合には粉末色材組成物の全量に対して2〜20重量%であることがより好ましく、無機顔料を用いる場合には粉末色材組成物の全量に対して10〜30重量%であることが好ましい。
本発明の粉末色材組成物がインキとして用いられる場合には、前記着色材の含有量は、特に限定されるものではないが、粉末色材組成物の全量に対して0.5〜20重量%であることが好ましく、1〜15重量%であることがより好ましい。前記着色材の含有量は、粉末色材組成物の全量に対して20重量%より多い場合にはインキ粘度が高くなり筆記性が低下し、製造コストも高くなるために好ましくなく、粉末色材組成物の全量に対して0.5重量%より少ない場合には着色効果が得にくいために好ましくない。
(樹脂エマルジョン)
本発明の粉末色材組成物で用いられる樹脂エマルジョンは、被塗布面が非吸収面であっても、描画や筆記ができるようにするため、ペースト又は液状となった粉末色材組成物に接着性を与えるため含有させるものである。かかる樹脂エマルジョンは、それ自体が粉末状であって、粉末状態では接着性を有しないが、水成分に容易に分散または溶解し、これにより塗膜に一定の接着性が発生するものであれば特に限定されるものではない。ここで、「粉末状」の語句は、固体が細かな粒の集まりとなっている状態という、一般的に認識されている意味で用いるものであるが、本発明では範囲明確化のため更に具体的に、固体であって、300μmふるいの篩い上残量が、全体の2重量%以下であるような粒子の集まりとなっている状態をいうものとする。液状のものを用いると、粉末色材組成物の特徴である使用前には粉末状という特徴が失われるし、粒子径が大きすぎる固体の集合体を用いると、均一な分散が困難になり、接着性が劣ってしまうからである。
該樹脂エマルジョンの主成分となる樹脂としては、酢酸ビニル、酢酸ビニル/アクリル、酢酸ビニル/エチレン、酢酸ビニル/バーサチック酸のビニルエステル(商品名「ベオバ」(登録商標))等の共重合体樹脂、アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル共重合体樹脂などを挙げることができるが、これらに限られるものではない。具体的には、酢酸ビニル等の共重合体樹脂としては、Mowilith-Powder LDM 2071P、Mowilith-Powder LDM 2072P、Mowilith-Powder DM 200、Mowilith-Powder DM 201P、Mowilith-Powder DM 1645P、Mowilith-Powder LDM1464P、Mowilith-Powder LE 201C5、Mowilith-Powder D5100P(以上、クラリアントポリマー社製)等を挙げることができ、アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル共重合体樹脂としては、Mowilith-Powder LDM 7000P (クラリアントポリマー社製)等を挙げることができる。これらは1種または2種以上で使用することができる。なかでもMowilith-Powder LDM 7000Pのようなアクリル酸エステル/メタクリル酸エステル共重合体樹脂を好適に用いることができる。
前記樹脂エマルジョンの含有量は、特に限定されるものではないが、粉末色材組成物の全量に対して1〜30重量%であることが好ましく、5〜15重量%であることが更に好ましい。樹脂エマルジョンの含有量が1重量部よりも少なくなると、非吸収面上の接着性が極めて困難になるため好ましくない。一方、30重量部よりも多くなると粘度が高くなって筆記性が低下するため好ましくない。
また本発明の粉末色材組成物では、上記必須成分の他に、体質顔料、水溶性樹脂、湿潤剤などを添加することができる。
(体質顔料)
本発明の粉末色材組成物が含むことができる体質顔料は、有色顔料による発色を妨げない限り、特に限定されるものではなく、疎水化二酸化ケイ素以外の体質顔料であって、公知の絵の具、インキとして用いられるものと同様のものを使用できる。例えば、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、アルミナシリケート等を挙げることができる。これらは1種または2種以上を使用することができる。
前記体質顔料の含有量は、特に限定されるものではなく、体質顔料の種類等に応じて設定すればよいが、粉末色材組成物の全量に対して10〜50重量%であることが好ましい。体質顔料の含有量が粉末色材組成物の全量に対して10重量%より少ない場合には、被覆力が低下したり、適切な顔料濃度が得られなくなるおそれがある。一方、50重量%を超える場合には定着性が低下したり、発色不良となるおそれがあるので好ましくない。
(水溶性樹脂)
本発明の粉末色材組成物が含むことができる水溶性樹脂は、水溶性であり、かつ、再溶解性があれば特に限定されるものではなく、公知の絵の具やインキで用いられるものと同様のものを使用することができる。例えば、アラビアゴム、デキストリン、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を挙げることができる。前記水溶性樹脂は1種または2種以上を使用することができる。
前記水溶性樹脂の含有量は、特に限定されず、用いられる水溶性樹脂の種類等に応じて設定されればよいが、粉末色材組成物の全量に対して10〜40重量%であることが好ましい。水溶性樹脂の含有量が粉末色材組成物の全量に対して10重量%より少ない場合には、定着性が低下したり、顔料が分散不良となるおそれがあるので好ましくない。一方、粉末色材組成物の全量に対して40重量%より多い場合には高粘度になり、筆記性が低下するので好ましくない。
(湿潤剤)
本発明の粉末色材組成物が含むことができる湿潤剤は、特に限定されるものではなく、公知の湿潤剤を使用することができる。例えば、グリセンリン、エチレングリコール、ピロピレングリコール等を挙げることができる。なかでも本発明においては、特にグリセリン及びプロピレングリコールの少なくとも1種を用いることが好ましい。グリセリン及びプロピレングリコールの少なくとも1種を湿潤剤として用いることにより、優れた定着性を付与することができるからである。なお、エチレングリコール及びプロピレングリコールはいずれも市販品または公知の製法で得られたものを使用することができる。なお、前記湿潤剤は、前記粉末色材組成物中の水成分に含ませてもよい。
前記湿潤剤の含有量は、使用する湿潤剤の種類、他の成分等との関係により適宜設定すればよいが、0.2〜5重量%、好ましくは0.4〜3重量%であることが好ましい。かかる範囲の含有量に設定することにより、本発明の粉末色材組成物は粉末状でありながら、より優れた定着性を発揮することができ、塗膜のひび割れ、ひいては塗膜の剥離を効果的に防止することができる。
(その他添加物)
更に本発明の粉末色材組成物は、その他の添加剤として、必要に応じて防腐防黴剤、分散剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤などの各種添加剤を含むことができる。
(防腐防黴剤)
本発明の粉末色材組成物が含むことができる防腐防黴剤としては、公知の防腐剤をそのまま使用することができる。例えば、パラベン、デハイドロ酢酸ソーダ、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、ジチオ−2,2’ビス(ベンズメチラミド)、フェノール、安息香酸ソーダ、サリチル酸ソーダ等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用することができる。本発明では、液状または粉末状のいずれの防腐防黴剤であっても良いが、均一混合が容易であるという点で粉末タイプの防腐防黴剤が好ましい。
なかでも本発明では、防腐防黴剤としてパラベン及びデハイドロ酢酸ソーダの少なくとも1種を用いることが好ましい。本発明の粉末色材組成物においてこれらの防腐剤を用いれば、前記粉末色材組成物に含まれる水成分や水溶性樹脂などのカビ発生や腐敗等をより有効に防止することができる結果、比較的多量の湿潤剤も使用することができる。本発明の粉末色材組成物においては、湿潤剤と防腐剤を併用することは、より優れた定着性とより優れた保存性を発揮することを可能とするものである。
前記防腐防黴剤の含有量は、特に限定されるものではなく、他の成分等と関係により適宜設定すれば良いが0.2〜10重量%であることが好ましく、0.4〜5重量%であることがより好ましい。かかる範囲内において、特に優れた保存性を発揮することができるからである。
(分散剤)
本発明の粉末色材組成物が含むことができる分散剤は、特に限定されるものではなく、公知の絵の具組成物やインキで用いられているものと同様のものを使用できる。例えば、ナフタレンスルホン酸ソーダホルマリン縮合物、高級アルコール硫酸エステルソーダ、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ等のアニオン系界面活性剤、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールフェニルアルキルエーテル、ポリエチレングリコールラウリルエーテル等のノニオン系界面活性剤等を用いることができる。これらは1種又は2種以上使用することができる。
前記分散剤の含有量は、分散剤の種類、他の成分等との関係により適宜設定すればよいが0.05〜5重量%であることが好ましく、0.1〜2重量%であることがより好ましい。
(製造方法)
本発明の粉末色材組成物は、上記の成分を均一に混合することが可能なものであって、全体として粉末状の色材組成物を製造することが可能であれば、特に限定されるものでなく公知の方法により製造することができる。ただし、まず上記成分のうち、水成分と疎水化二酸化ケイ素をハイスピードディゾルバーやホモジナイザーなどの攪拌機を用いて強制的に攪拌混合させて含水粉末体を得たうえで、次に着色材、樹脂エマルジョンなど、他の必要な成分と、前記含水粉末体とを混合させることで、疎水化二酸化ケイ素の粒子群により水成分が覆われた粒子体を形成し易い粉末色材組成物を得やすいので好ましい。
前記の疎水化二酸化ケイ素及び水成分以外であるその他の成分は、疎水化二酸化ケイ素により水成分が覆われた粉末体に加える前に予め均一な混合物または分散物としておくのが粉末色材組成物の均一性の観点から好ましい。例えば、粉末状の樹脂エマルジョン、着色材、体質顔料、必要に応じて分散剤、防腐剤等を配合し、パンロールミル、三本ロールミル等の公知の混合機、撹拌機を用いて混合・分散させた後、水溶性樹脂、湿潤剤、必要に応じて分散剤を配合して同様に混合・分散させることにより製造できる。この場合、必要に応じて得られた混合物または混練物を公知の粉砕機を用いて常法により粉砕することもできる。
(描画方法、筆記方法)
本発明の粉末色材組成物を用いた描画方法、筆記の方法は、従来の粉末色材組成物描画方法、筆記方法と変わるところがないが、その描画または筆記ができる原理は異なる。まず被塗布面に本発明の粉末色材組成物を被塗布面にふりかける。次に該粉末色材組成物に塗擦もしくは加圧すると、粉末状であったものがペースト又は液状になるとともに、粉末状の樹脂エマルジョンがそのペーストまたは液中の水分に分散または溶解されて、樹脂エマルジョンが有する接着性が発揮される。この接着性によって、該粉末色材組成物が前記被塗布面に接着されることにより、描画または筆記が行われる。
したがって、本発明の粉末色材組成物を用いれば、被塗布面が紙や布などを材質とする吸収面であるか、ガラス・金属・プラスチックなどを材質とする非吸収面であるかを問わず、描画または筆記できるようになった。なお、紙や布などを材質とする場合であっても、その表面にテフロン(登録商標)加工のような防水処理等を施した場合にはその表面は非吸収面となるので、本発明の粉末色材組成物を用いた描画や筆記が有効である。
以下、本発明の実施例を記載するが、本発明はこれら実施例の様態に限定されるものではない。
〔含水粉末体の製造〕
表1に示す原料及び配合量を用いて、イオン交換水、疎水化二酸化ケイ素、湿潤剤を混合容器に投入し、ホモジナイザー「オートセルマスター CM−200」(アズワン社製)を用いて回転数18000rpmで強制的に攪拌混合を用い、均一な含水粉末体A及び含水粉末体Bを得た。なお、含水粉末体Aの原料である疎水化二酸化ケイ素Aには、商品名「アエロジルR−972」(粒径16μm、BET比表面積110±20m/g、デグサ社製)を用い、含水粉末体Bの原料である疎水化二酸化ケイ素Bには、商品名「アエロジルR−974」(粒径12μm、BET比表面積170±20m/g、デグサ社製)を用いた。また湿潤剤としては、グリセリン(商品名「プロピレングリコール」坂本薬品社製)を用いた。
Figure 2007161764
〔粉末色材組成物の製造〕
(実施例1〜3)
表2に示す原料及び配合量を用い、体質顔料、着色顔料、分散剤、防腐剤をパンロールミルで混合分散させた後、粉末の樹脂エマルジョン、水溶性樹脂、を添加し、含水粉末体Aを用いた実施例1では更に湿潤剤を添加して、パンロールミルでさらに混合分散させることにより着色粉末体を得た。得られた着色粉末体に製造例により得られた含水粉末体を加えて公知のハイスピードディゾルバーやホモジナイザーを用いて混合することにより実施例1〜3の粉末色材組成物を得た。
(比較例1〜3)
粉末の樹脂エマルジョンを含有させなかったことを除いては、実施例1〜3同様の方法で表2に示す原料及び配合量を用いて、比較例1〜3の粉末色材組成物を得た。
Figure 2007161764
なお、実施例1〜6における各原料は次のものを使用した。樹脂エマルジョンとしては、アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル共重合体樹脂を主成分とする樹脂エマルジョン(商品名「Mowilith-Powder LDM 7000P」
クラリアントポリマー社製)を用いた。水溶性樹脂としてはデキストリン(商品名「デキストリンD−400E」、COBALT
STARCH TAIWAN社製)を用いた。体質顔料としては、体質顔料Aに炭酸カルシウム(商品名「軽質炭酸カルシウム」、近江化学社製)を用い、体質顔料Bに硫酸バリウム(商品名「リュウサンバリウムBA」、堺化学社製)を用いた。着色材としては、着色材Aに青色顔料(商品名「NSBA−25」、有機顔料、大日精化社製)を用い、着色材Bに赤色顔料(商品名「ノバパームレッドF3RK−70」、有機顔料、クラリアント社製)を用いた。分散剤としては、商品名「ラベリンFC−P」(第一工業社製)を用い、防腐剤としては商品名「デハイドロ酢酸S」(タイショーテクノス社製)を用い、湿潤剤としては、グリセリン(商品名「プロピレングリコール」坂本薬品社製)を用いた。
〔効果〕
上記実施例、比較例ともに得られた粉末状着色材を紙面(吸収面)にふりかけ、筆で擦ると、液状化し、いずれの粉末状着色材においても通常の液状着色材と何ら変わることなく画像を形成することが可能であった。次にガラス面(非吸収面)に筆記したところ、実施例1〜3の粉末状着色材は、乾燥した塗膜によってガラス面上へ正常に画像を形成できた。一方、比較例1〜3の粉末状着色材では、該ガラス面へ画像は形成できたが、液状化した着色材が乾燥した際に、描画にひび割れ、剥れが発生した。また、紙面・ガラス面それぞれの塗膜に水を数滴垂らしたところ、実施例1〜3の粉末状着色材による描画は紙面・ガラス面いずれの面においても変化がなかったのに対し、比較例1〜3の粉末状着色材による描画は、紙面への描画において、色の滲みが発生した。
実施例1〜3、比較例1〜3の粉末状着色剤をボールペンレフィルに充填し、紙面に筆記を行ったところ、画像(文字)を形成することが可能であった。これは、ボールペンチップでせん断をうけ、粉末状着色材が液状化することによるものと考えられる。
本発明の粉末色材組成物は、従来のインキや絵の具、特に粉絵の具同様、筆記具のインキ、或は絵具などの描画材に好適に用いることができる。例えばボールペンのような筆記具の場合、通常の液体インキと同様に、本発明の粉末色材組成物自体またはその含有物を粉末インキとして、インキ収容部に充填することにより使用することができる。使用方法としては、筆記具のペン先部で上記粉末色材組成物を非吸収面にふりかけると同時に塗擦もしくは加圧することにより筆記できる。ただし使用者の動作としては、通常の液体インキのボールペンの操作とほとんど変わるところがない。

Claims (7)

  1. 水成分、着色材、疎水化二酸化ケイ素及び粉末状の樹脂エマルジョンを含む粉体状の粉末色材組成物。
  2. 疎水化二酸化ケイ素、該疎水化二酸化ケイ素の複数の粒子により包摂されている水成分、着色材及び粉末状の樹脂エマルジョンを含む粉体状の粉末色材組成物。
  3. 前記粉末状の樹脂エマルジョンが、酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/アクリル共重合体、酢酸ビニル/エチレン共重合体、酢酸ビニル/バーサチック酸のビニルエステル共重合体及びアクリル酸エステル/メタクリル酸エステル共重合体の群から選ばれる1種または2種以上の共重合体樹脂を主成分とするものである請求項1記載の粉末色材組成物。
  4. 前記粉末色材組成物が、塗擦または加圧することにより、液状もしくはペースト状となるともに該粉末色材組成物に接着性が発揮されることを特徴とする請求項1〜3いずれかの項に記載された粉末色材組成物。
  5. 水成分、着色材、疎水化二酸化ケイ素及び粉末状の樹脂エマルジョンを含む粉体状の粉末色材組成物をインキまたは絵の具として、非吸収面にふりかけ、その上から塗擦もしくは加圧することにより前記粉末色材組成物をペースト又は液状にし、前記非吸収面に接着させて描画することを特徴とする描画方法。
  6. 前記非吸収面の材質が、ガラス、金属またはプラスチックのいずれかである請求項5記載の描画方法。
  7. 水成分、着色材、疎水化二酸化ケイ素及び粉末状の樹脂エマルジョンを含む粉体状の粉末色材組成物をインキ収容部に充填してなる筆記具を用いて、筆記具のペン先部で上記粉末色材組成物を非吸収面に塗擦もしくは加圧することにより前記粉末色材組成物をペースト又は液状にし、前記非吸収面に接着させて筆記する筆記方法。
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