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JP2007016243A - 摺動部材用組成物、摺動部材及び流体機械 - Google Patents

摺動部材用組成物、摺動部材及び流体機械 Download PDF

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JP2007016243A JP2006214767A JP2006214767A JP2007016243A JP 2007016243 A JP2007016243 A JP 2007016243A JP 2006214767 A JP2006214767 A JP 2006214767A JP 2006214767 A JP2006214767 A JP 2006214767A JP 2007016243 A JP2007016243 A JP 2007016243A
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Abstract

【課題】圧縮機の摺動部材の金属基材の表面において、耐摩耗性に優れた摺動部材用組成物のコート層を提供する。
【解決手段】スクロール型圧縮機(10)におけるスライドブッシュ(25)の円筒部(26)と可動スクロール(50)の突出部(53)との摺動部分に潤滑部(70)を設ける。潤滑部(70)は、鉄製の基材の表面に、ポリテトラフルオロエチレン100重量部に対し、300重量部のポリアミドイミド樹脂と耐摩耗剤として100重量部のフッ化カルシウムを包含して構成される摺動部材用組成物のコート層を形成している。
【選択図】図1

Description

本発明は、摺動部材用組成物、摺動部材及び流体機械に関するものである。
現在使用されているほとんどの機械には軸受けやピストンのような摺動部材が用いられている。このような摺動部材は所要の機械的強度を必要とされるのと同時に、表面においては摺動性あるいは耐摩耗性が必要とされる。
そこで、従来から摺動部材表面にフッ素樹脂等を主成分とする摺動部材用組成物のコート層を形成し、摺動性の他、耐摩耗性を向上させる検討が行われている。
耐摩耗性の向上手段として、フッ素樹脂とバインダと耐摩耗剤とから構成される摺動部材用組成物が検討されている(例えば、特許文献1)。この摺動部材用組成物は、フッ素樹脂100重量部に対して、モース硬度が2.0〜5.0の範囲にある耐摩耗剤を0.5〜12体積%含有させることにより、摺動部材の耐摩耗性を向上させている。特に、モース硬度が2.0〜5.0の耐摩耗剤のうちフッ化カルシウムは、機械的強度と固体潤滑性を共に有するので、耐摩耗性を確実に向上させることができる。
特開2000−249063号公報
しかしながら、特許文献1に記載のコート層はアルミニウム合金を基材としているので、基材や相手材が鉄系材料である厳しい摺動条件下においては、フッ化カルシウムの有する機械的強度が必ずしも発揮されず、耐摩耗性が十分ではなかった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、優れた摺動性及び耐摩耗性を有する摺動部材用組成物と、該摺動部材用組成物をコート層として備えた摺動部材及び流体機械を提供することにある。
第1の発明は、フッ素樹脂100重量部に対して、100重量部以上で500重量部以下のバインダと、70重量部以上で200重量部以下のフッ化カルシウムとを包含して構成されている摺動部材用組成物である。
第1の発明では、摺動部材用組成物に、フッ素樹脂を含有しているので固体潤滑性が向上する。そして、上記摺動部材用組成物は、フッ素樹脂100重量部に対して70重量部以上のフッ化カルシウムを含有しているので、フッ化カルシウムが有する機械的強度を利用することができ、摺動部材の基材や相手材が鉄系材料であっても、耐摩耗性を向上させることができる。そして、フッ素樹脂100重量部に対して、100重量部以上のバインダを含有するので、バインダによる結合強度も向上し、摺動部材用組成物の強度が向上する。さらに、フッ素樹脂100重量部に対して、バインダ500重量部以下であり、かつ、フッ化カルシウムが200重量部以下であるので、フッ素樹脂の有する固体潤滑性が十分に発揮される。これらの構成により、本発明の組成物は、固体潤滑性と機械的強度が共に向上するので、結果的に耐摩耗性が向上する。
第2の発明は、第1の発明において、上記フッ素樹脂がポリテトラフルオロエチレンであり、上記バインダがポリアミドイミド樹脂である。
第2の発明では、摩擦係数が低くなり、さらに、機械的強度が向上する。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、フッ素樹脂100重量部に対して、バインダが300重量部であり、フッ化カルシウムが100重量部である。
第3の発明では、フッ素樹脂100重量部に対して、フッ化カルシウムが100重量部であるので、フッ素樹脂の固体潤滑性、フッ化カルシウムが有する機械的強度が確実に発揮される。さらに、フッ素樹脂100重量部とフッ化カルシウム100重量部に対して、バインダが300重量部であるので、バインダによる結合強度も向上し、結果的に耐摩耗性が確実に向上する。
第4の発明は、金属の基材の表面にコート層が形成された摺動部材であって、上記コート層が、第1から第3の発明の何れかの摺動部材用組成物で構成されている。
第4の発明では、基材表面に上記摺動部材用組成物のコート層が形成されているので、摺接面における耐摩耗性が向上する。
第5の発明は、第4の発明において、上記基材の表面が粗面化処理されている。
第5の発明では、上記基材表面と上記摺動部材用組成物のコート層との密着性が高くなる。
第6の発明は、第4及び第5の何れかの摺動部材を備えている流体機械である。
第6の発明では、機械内において、基材表面のコート層の耐摩耗性が向上する。
第7の発明は、第6の発明において、上記摺動部材が軸受部材である流体機械である。
第7の発明では、機械内の軸受部材において、基材表面のコート層の耐摩耗性が向上する。
本発明によれば、摺動部材用組成物に、フッ素樹脂を含有しているので固体潤滑性が向上する。そして、上記摺動部材用組成物は、フッ素樹脂100重量部に対して70重量部以上のフッ化カルシウムを含有しているので、フッ化カルシウムが有する機械的強度を発揮させることができ、摺動部材の基材や相手材が鉄系材料であっても、耐摩耗性を向上させることができる。
そして、フッ素樹脂100重量部に対して、100重量部以上のバインダを含有するので、バインダによる結合強度も向上し、組成物全体の強度を向上させることができる。さらに、フッ素樹脂100重量部に対して、バインダ500重量部以下であり、かつ、フッ化カルシウムが200重量部以下であるので、フッ素樹脂の有する固体潤滑性を十分に発揮させることができる。これらの構成により、固体潤滑性と機械的強度が共に向上するので、結果的に、組成物全体の耐摩耗性を向上させることができる。
また、上記第2の発明によれば、組成物自体の摩擦係数を低下させ、さらに、機械的強度を向上させることができる。
また、上記第3の発明によれば、フッ素樹脂100重量部に対して、フッ化カルシウムが100重量部であるので、フッ素樹脂の固体潤滑性、フッ化カルシウムの機械的強度を確実に発揮させることができる。さらに、フッ素樹脂100重量部とフッ化カルシウム100重量部に対して、バインダが300重量部であるので、バインダによる結合強度も向上させることができ、結果的に、組成物全体の耐摩耗性を確実に向上させることができる。
また、上記第4の発明によれば、基材表面に上記摺動部材用組成物のコート層が形成されているので、摺接面における耐摩耗性を向上させることができる。この結果、部材自体の耐久性も向上するため、長期間の使用を可能とすることができる。
また、上記第5の発明によれば、上記基材表面と上記摺動部材用組成物のコート層との密着性が高くなり、良好な摺動性を確保することができる。
また、上記第6の発明によれば、機械内において、基材表面のコート層の耐摩耗性が向上し、機械自体の信頼性の向上を図ることができる。
また、上記第7の発明によれば、軸受部材の耐摩耗性が向上し、軸受機能の信頼性を向上させることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の流体機械は、スクロール圧縮機(10)である。該スクロール型圧縮機(10)は、冷凍装置の冷媒回路に設けられて、流体であるガス冷媒を圧縮するために用いられる。
《スクロール型圧縮機の全体構成》
図1に示すように、上記スクロール型圧縮機(10)は、いわゆる全密閉形に構成されている。このスクロール型圧縮機(10)は、縦長で円筒形の密閉容器状に形成されたケーシング(11)を備えている。ケーシング(11)の内部には、下から上へ向かって順に、下部軸受部材(30)と、電動機(35)と、圧縮機構(40)とが配置されている。また、ケーシング(11)の内部には、上下に延びる駆動軸(20)が設けられている。
ケーシング(11)の内部は、圧縮機構(40)の固定スクロール(60)によって上下に仕切られている。このケーシング(11)の内部では、固定スクロール(60)の上方の空間が第1室(12)となり、その下方の空間が第2室(13)となっている。
ケーシング(11)の胴部には、吸入管(14)が取り付けられている。この吸入管(14)は、ケーシング(11)内の第2室(13)に開口している。一方、ケーシング(11)の上端部には、吐出管(15)が取り付けられている。この吐出管(15)は、ケーシング(11)内の第1室(12)に開口している。
駆動軸(20)は、主軸部(21)と鍔部(22)と偏心部(23)とを備えている。鍔部(22)は、主軸部(21)の上端に形成されており、主軸部(21)よりも大径の円板状となっている。一方、偏心部(23)は、鍔部(22)の上面に突設されている。この偏心部(23)は、主軸部(21)よりも小径の円柱状となっており、その軸心が主軸部(21)の軸心に対して偏心している。
駆動軸(20)の主軸部(21)は、圧縮機構(40)のフレーム部材(41)を貫通している。この主軸部(21)は、ころ軸受(42)を介してフレーム部材(41)に支持されている。また、駆動軸(20)の鍔部(22)及び偏心部(23)は、フレーム部材(41)よりも上方の第1室(12)に位置している。
駆動軸(20)には、スライドブッシュ(25)が取り付けられている。スライドブッシュ(25)は、円筒部(26)とバランスウェイト部(27)とを備え、鍔部(22)の上に載せられている。スライドブッシュ(25)の円筒部(26)には、駆動軸(20)の偏心部(23)が回転自在に挿入されている。
下部軸受部材(30)は、ケーシング(11)内の第2室(13)に位置している。この下部軸受部材(30)は、ボルト(32)によってフレーム部材(41)に固定されている。そして、下部軸受部材(30)は、玉軸受(31)を介して駆動軸(20)の主軸部(21)を支持している。
下部軸受部材(30)には、給油ポンプ(33)が取り付けられている。この給油ポンプ(33)は、駆動軸(20)の下端に係合している。そして、給油ポンプ(33)は、駆動軸(20)によって駆動され、ケーシング(11)の底に溜まった冷凍機油を吸入する。給油ポンプ(33)に吸い上げられた冷凍機油は、駆動軸(20)内に形成された通路を通って圧縮機構(40)等へ供給される。
電動機(35)は、固定子(36)と回転子(37)とによって構成されている。固定子(36)は、下部軸受部材(30)と共にボルト(32)によってフレーム部材(41)に固定されている。一方、回転子(37)は、駆動軸(20)の主軸部(21)に固定されている。
ケーシング(11)の胴部には、給電用のターミナル(16)が取り付けられている。このターミナル(16)は、端子箱(17)によって覆われている。電動機(35)に対しては、ターミナル(16)を通じて電力が供給される。
《圧縮機構の構成》
圧縮機構(40)は、固定スクロール(60)やフレーム部材(41)の他に、可動スクロール(50)とオルダムリング(43)とを備えている。そして、この圧縮機構(40)は、いわゆる非対称スクロール構造を採っている。
可動スクロール(50)は、可動側平板部(51)、可動側ラップ(52)、及び突出部(53)を備えている。可動側平板部(51)は、やや肉厚の円板状に形成されている。突出部(53)は、可動側平板部(51)の下面から突出するように、可動側平板部(51)と一体に形成されている。また、突出部(53)は、可動側平板部(51)のほぼ中央に位置している。この突出部(53)には、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)が挿入されている。つまり、可動スクロール(50)は、スライドブッシュ(25)を介して駆動軸(20)の偏心部(23)に係合している。
可動側ラップ(52)は、可動側平板部(51)の上面側に立設され、可動側平板部(51)と一体に形成されている。可動側ラップ(52)は、高さが一定の渦巻き壁状に形成されている。
可動スクロール(50)は、オルダムリング(43)を介してフレーム部材(41)の上に載置されている。オルダムリング(43)には、二対のキーが形成されている。このオルダムリング(43)は、一対のキーが可動スクロール(50)の可動側平板部(51)に係合し、残りの一対のキーがフレーム部材(41)に係合している。駆動軸(20)の偏心部(23)に係合する可動スクロール(50)はオルダムリング(43)により自転運動が規制されて、公転運動を行う。つまり、上記オルダムリング(43)は、可動スクロール(50)とフレーム部材(41)とに摺接移動する。
図1に示すように、固定スクロール(60)は、固定側平板部(61)と、固定側ラップ(63)と、縁部(62)とを備えている。固定側平板部(61)は、やや肉厚の円板状に形成されている。この固定側平板部(61)の直径は、ケーシング(11)の内径と概ね等しくなっている。縁部(62)は、固定側平板部(61)の周縁部分から下方へ向かって延びる壁状に形成されている。固定スクロール(60)は、縁部(62)の下端がフレーム部材(41)に当接する状態で、ボルト(44)によってフレーム部材(41)に固定されている。そして、固定スクロール(60)は、その縁部(62)がケーシング(11)と密着することで、ケーシング(11)内を第1室(12)と第2室(13)に仕切っている。
固定側ラップ(63)は、固定側平板部(61)の下面側に立設され、固定側平板部(61)と一体に形成されている。固定側ラップ(63)は、高さが一定の渦巻き壁状に形成されており、約3巻き分の長さとなっている。
上記固定側ラップ(63)の両側面である内側ラップ面(64)と外側ラップ面(65)は、可動側ラップ(52)の両側面である外側ラップ面(54)と内側ラップ面(55)に摺接移動する。一方、固定側平板部(61)の下面、つまり固定側ラップ(63)以外の歯底面(66)は、可動側ラップ(52)の先端面が摺接移動し、可動側平板部(51)の上面、つまり、可動側ラップ(52)以外の歯底面(56)は、固定側ラップ(63)の先端面が摺接移動する。また、固定側平板部(61)における固定側ラップ(63)の巻き始め近傍には、吐出口(67)が形成されている。この吐出口(67)は、固定側平板部(61)を貫通しており、第1室(12)に開口している。
上述のように、本実施形態のスクロール型圧縮機(10)は、冷凍機の冷媒回路に設けられている。この冷媒回路では、冷媒が循環して蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。その際、スクロール型圧縮機(10)は、蒸発器から低圧のガス冷媒を吸入して圧縮し、圧縮後の高圧のガス冷媒を凝縮器へ送り出す。
スクロール型圧縮機(10)を運転すると、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)と可動スクロール(50)の突出部(53)とが摺動する。本実施形態では、この摺動部分に軸受メタルである潤滑部(70)を設けている。この潤滑部(70)は、円筒形であって、鉄を基材として、その内周面に摺動部材用組成物からなる潤滑剤層であるコート層が設けられた摺動部材である。潤滑剤層が設けられた潤滑部(70)の内面は、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)の外周面と摺動する。
この潤滑部(70)の基材内周面は、化成処理によってその表面粗さRaが3.7μmとなるように粗面化処理されている。そして、その基材の上には、ポリアミドイミド樹脂(以下PAIという。)とポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEという。)と耐摩耗剤としてフッ化カルシウム(以下CaF2という。)を包含して構成される摺動部材用組成物の潤滑剤層を約100μmの厚みで形成している。ここで、表面粗さRaとは、JIS B 0601−2001に規定されている輪郭曲線の算術平均高さRaのことであり、これ以降も表面粗さRaと表示されているときは、JISにより規定された算術平均高さRaを表しているものとする。
このような構成の潤滑部(70)を配置することにより、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)と潤滑部(70)とが冷媒に晒されながら摺動しても低い摩擦係数で非常に長時間摺動し続けることができる。
《摺動部分の検討》
以下に潤滑部(70)に関して行った検討について説明する。
フッ素樹脂を含む摺動部材用組成物は、金属との摩擦係数が低く摺動性が優れているが、基材または相手材が鉄系材料である場合、耐摩耗性が十分ではなかった。そこで、本願発明者らは、耐摩耗剤であるCaF2の配合量を変えることにより、摺動部材表面における摺動部材用組成物のコート層の耐摩耗性が向上するかを検討した。
本検討では、フッ素樹脂としてPTFE、バインダとしてPAIを用い、摺動部材用組成物中のCaF2の配合量を10重量%、20重量%、50重量%と変化させ検討を行った。具体的には、PTFE/PAI/CaF2=30/60/10のサンプルA、PTFE/PAI/CaF2=20/60/20のサンプルB、PTFE/PAI/CaF2=15/35/50のサンプルCの3種類の組成比の摺動部材用組成物を用い検討した。
検討の方法は、図2に示すようなドライジャーナル試験により行った。先ず、鉄基材からなる軸受(100)を適用し、この軸受(100)の基材における円筒内表面に、リン酸マンガンを用いた化成処理によりRa3.7μmの粗面化処理を施し、その上には、上記3種類の摺動部材用組成物のコート層(101)を約100μmの厚みの潤滑剤層として形成した。なお、コート層(101)は上記3種類の摺動部材用組成物を塗布した後に焼成し、その後に表面を研磨して形成した。
次に、SUJ2(JIS G4805−1990による)からなる軸(102)を上記軸受(100)に貫挿し、該軸(102)を一定速度で回転させる。試験は、軸(102)と軸受(100)との摺動速度を1.57m/sとし、軸受(100)には0.41MPaの荷重を与えて固定し、1時間保持後、摺動部材用組成物のコート層における摩耗量を測定することにより、耐摩耗性を評価した。なお、今回の試験は大気中で、かつ、軸(102)と軸受(100)の間には潤滑油を介在させることなく行った。
図3は、ドライジャーナル試験の結果である。各サンプルの摩耗量は、CaF2を10重量%含有するサンプルAが10μmで、CaF2を20重量%含有するサンプルBが4.5μmであり、CaF2を50重量%含有するサンプルCが20μmであった。この結果、サンプルBの耐摩耗性が優れていることがわかる。
上記結果から明らかなように、本実施形態では、CaF2を20重量部含有するサンプルBは、大気中で潤滑油無しでも摩耗量が少ない。また、粗面化処理によって、基材と摺動部材用組成物のコート層とが強固に密着しており、優れた摺動性能を示すので、低摩擦係数での摺動を長時間維持できる。
このように、摺動部材の基材表面にPTFE/PAI/CaF2=20/60/20の組成比の摺動部材用組成物からなるコート層を備えることにより、基材や相手材が鉄系材料であっても、優れた耐摩耗性を発揮する。そこで、上記潤滑部(70)の内周面に、PTFE/PAI/CaF2=20/60/20の組成比のコート層を形成するようにした。
(その他の実施形態)
上記実施形態のサンプルBの摺動部材用組成物は、PTFE/PAI/CaF2=20/60/20の組成比であり、つまり、PTFE100重量部に対し、300重量部のPAIと100重量部のCaF2により構成されるが、摺動部材用組成物の重量組成比は、PTFEの固体潤滑性とCaF2の機械的強度が利用でき、さらに、バインダのPAIにより強固に結合していれば、この数値に限定されない。具体的には、100重量部のPTFEに対して、100重量部以上で500重量部以下のPAI、70重量部以上で300重量部以下のCaF2で構成されていればよい。
さらに、フッ素樹脂はPTFEの他、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂等が挙げられ、また、これらに限定されるものではない。また、PAIをバインダとして使用することにより、耐衝撃性に優れ、かつ硬度が高いというPAIの特性が利用できるため、上記摺動部材用組成物の耐衝撃性と耐摩耗性が向上できるが、PAI以外に同様な特性をもつポリアミド樹脂等も使用でき、また、これらに限定されるものではない。
そして、上記実施形態では、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)と可動スクロール(50)の突出部(53)の摺動部分に軸受メタルである潤滑部(70)を設けているが、軸受メタル(70)を設けず、可動スクロール(50)の突出部(53)円筒内表面を直接化成処理することにより粗面化し、その上に上記実施形態のサンプルBの摺動部材用組成物からなるコート層を直接形成してもよい。また、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)の外周面に上記コート層を直接形成してもよい。
また、上記の実施形態のサンプルBの摺動部材用組成物は、スライドブッシュ(25)の円筒部(26)と可動スクロール(50)の突出部(53)との摺動部分に限らず、様々な種類・用途の摺動部材にコーティングすることで、同様の効果を得ることができる。
具体的には、可動スクロール(50)の可動側平板部(51)の下面は、フレーム部材(41)とオルダムリング(43)の上面と摺動するので、可動スクロール(50)の可動側平板部(51)の下面に上記実施形態のサンプルBの摺動部材用組成物からなるコート層を形成してもよい。また、可動スクロール(50)の全体に、上記コート層を形成してもよい。
また、可動スクロール(50)と固定スクロール(60)の対向面が摺動するので、可動スクロール(50)の可動側ラップ(52)の内側ラップ面(55)、外側ラップ面(54)、及び先端面に上記実施形態のサンプルBの摺動部材用組成物からなるコート層を形成してもよいし、固定スクロール(60)の固定側ラップ(63)における可動側スクロール(50)の対向面、つまり固定側ラップ(63)の内側ラップ面(64)、外側ラップ面(65)及び、先端面に上記コート層を形成してもよい。これにより、可動スクロール(50)と固定スクロール(60)の対向面におけるシール性が向上するので、圧縮機としての信頼性も向上する。
また、オルダムリング(43)が、可動スクロール(50)の可動側平板部(51)の下面と摺動し、オルダムリング(43)の本体及び他方のキーはフレーム部材(41)と摺動するので、オルダムリング(43)の表面に上記実施形態のサンプルBの摺動部材用組成物からなるコート層を形成してもよい。そして、上記実施形態では、可動スクロール(50)はオルダムリング(43)を介してフレーム部材(41)の上に載置されているが、オルダムリング(43)とスラスト軸受を介してフレーム部材の上に載置している場合は、スラスト軸受上面と可動スクロール(50)の可動側平板部(51)の下面が摺動するので、スラスト軸受上面に、上記コート層を形成してもよい。
また、上記実施形態では、主軸部(21)はころ軸受(42)および玉軸受(31)が摺動部となって支持されているが、主軸部(21)をすべり軸受であるジャーナル軸受で支持してもよく、その場合は主軸部(21)と軸受の摺動部分において、上記実施形態のサンプルBの摺動部材用組成物からなるコート層を形成してもよい。つまり、主軸部(21)の外周面、又は、軸受の内周面に上記コート層を形成してもよい。
また、上記実施形態では、スクロール型圧縮機(10)の摺動部材において、上記実施形態のサンプルBの摺動部材用組成物からなるコート層を形成しているが、圧縮機はスクロール型に限定されず、流体を圧縮するどのような形式の圧縮機であってもよい。また流体も冷媒に限定されない。さらには、本発明の摺動部材は圧縮機に使用される摺動部材に限定されない。圧縮機以外の流体機械の摺動部材、車両や製造装置等の駆動部、回転部分など、摺動する部分であればどのような部分であってもよい。
上記の摺動部分においては、互いに摺動する2つの部材の一方の部材においてのみ上記実施形態のサンプルBの摺動部材用組成物からなるコート層を形成してもよいし、両方の部材において上記コート層を形成してもよい。
また、基材の粗面化の方法は化成処理に限定されず、サンドブラスト処理など種々の公知の方法を用いることができる。また、化成処理に用いる薬剤もリン酸マンガンに限定されず、他のリン酸塩や公知の薬液を用いることができる。
また、摺動部材用組成物のコート層には、フッ素樹脂、バインダとCaF2で構成された主成分の他に、着色料としてのカーボン等の顔料、その他の添加剤が配合されていてもよい。このような添加剤の添加量は、摺動部材用組成物を含む層の耐摩耗性や基材に対する密着性等の性能に悪影響が出ない程度に設定される。例えば、添加剤としてのカーボンは、フッ素樹脂の3質量%以下に設定する必要があり、好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下に設定するのが望ましい。
また、摺動部材用組成物のコート層の厚みは、35μm以上120μm以下が好ましい。35μmよりも薄いと摺動性能が劣ってしまう虞があり、120μmよりも厚いと、製造コストが大きくなってしまう。この層の厚みは、50μm以上105μm以下が摺動性能の面とコスト面とでより好ましい。なお、ここでいう層の厚みは平均の厚みであって、局所的にはこの範囲外の厚みであっても構わない。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
以上説明したように、本発明に係る摺動部材用組成物は、優れた耐摩耗性能を有し、空調機や車両、工作機械等の摺動部材のコート層として有用である。そして、該コート層を備えた摺動部材及び該摺動部材を備えた流体機械は、空調機や車両、工作機械等の摺動部材及び流体機械として有用である。
実施形態に係るスクロール型圧縮機の断面図である。 ドライジャーナル試験を説明する概略図である。 摺動部材用組成物の組成と耐摩耗性との関係を表す表である。
符号の説明
10 スクロール圧縮機
25 スライドブッシュ
26 スライドブッシュの円筒部
50 可動スクロール
53 可動スクロールの突出部
70 潤滑部

Claims (7)

  1. フッ素樹脂100重量部に対して、100重量部以上で500重量部以下のバインダと、70重量部以上で200重量部以下のフッ化カルシウムとを包含して構成されている
    ことを特徴とする摺動部材用組成物。
  2. 請求項1において、
    上記フッ素樹脂がポリテトラフルオロエチレンであり、
    上記バインダがポリアミドイミド樹脂である
    ことを特徴とする摺動部材用組成物。
  3. 請求項1及び2の何れか1項において、
    フッ素樹脂100重量部に対して、バインダが300重量部であり、フッ化カルシウムが100重量部である
    ことを特徴とする摺動部材用組成物。
  4. 金属の基材の表面にコート層が形成された摺動部材であって、
    上記コート層が、請求項1から3の何れか1項の摺動部材用組成物で構成されている
    ことを特徴とする摺動部材。
  5. 請求項4において、
    上記基材の表面が粗面化処理されている
    ことを特徴とする摺動部材。
  6. 請求項4及び5の何れか1項に記載の摺動部材を備えている
    ことを特徴とする流体機械。
  7. 請求項6において
    上記摺動部材が軸受部材である
    ことを特徴とする流体機械。
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