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JP2007092845A - 軸受装置 - Google Patents

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JP2007092845A
JP2007092845A JP2005281559A JP2005281559A JP2007092845A JP 2007092845 A JP2007092845 A JP 2007092845A JP 2005281559 A JP2005281559 A JP 2005281559A JP 2005281559 A JP2005281559 A JP 2005281559A JP 2007092845 A JP2007092845 A JP 2007092845A
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建治 日比
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Abstract

【課題】軸受と軸部材との潤滑が良好で、製品寿命の長い軸受装置を提供する。
【解決手段】電鋳部をインサートして射出成形された軸受において、軸受隙間に介在する潤滑油が微量なため、潤滑油の拡散、蒸発などによって潤滑油不足が起こり、軸受と軸部材との摺動による摩耗が問題となっていた。本発明では、軸受に設けられた油溜まりに保持された油を連通孔を通して軸受隙間に供給することにより、良好な潤滑が保たれるため、異音の発生や軸受と軸部材との接触摺動による摩耗などの潤滑不良による不具合が防止される。また、前記油溜まりは、軸部材の外周面と離隔されて設けられ、通連孔を介して油を供給するため、軸受面の面積減少はごく僅かであり、軸受性能の低下を回避できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、滑り軸受を備えた軸受装置に関するものである。
滑り軸受(以下、単に「軸受」と称する)を備えた軸受装置は、軸受と軸部材との間の相対的な回転、摺動、もしくは摺動回転を支持する用途に広く用いられている。
このような軸受装置として、例えば特許文献1では、樹脂成形部の軸心に電鋳加工による電鋳部をインサートして型成形した軸受部品を備えた軸受装置が提案されている。このように、軸受面となる軸受の内周面を電鋳加工で形成することにより、耐摩耗性に優れた軸受面が得られるとともに、内周に挿入される軸部材との間に形成される軸受隙間を高い精度で設定することができる。
特開2003−56552号公報
上記のような軸受装置が、例えば、高速回転、高回転精度が求められるHDDの磁気ディスク駆動用のスピンドルモータの回転軸支持等に用いられる場合は、軸受と軸部材との潤滑を良好にするため、油潤滑が必要となる場合がある。
しかし、軸受の内周面と軸部材の外周面との間の軸受隙間は、軸部材のがたつきを抑えるために、できるだけ微小な隙間幅に設定され、この軸受隙間に保持される潤滑油の量は極少量である。このため、潤滑油が飛散、蒸発などにより減少すると、潤滑油不足による潤滑不良を招き、異音の発生や、軸受と軸部材との接触摺動による部材の摩耗などの不具合が生じていた。
本発明の課題は、軸受と軸部材との潤滑が良好で、異音の発生や部材の摩耗を防ぎ、製品寿命の長い滑り軸受を備えた軸受装置を提供することである。
前記課題を解決するため、本発明の軸受装置は、電鋳加工で形成される電鋳部、及び電鋳部を内周にインサートして成形された樹脂部からなる滑り軸受と、滑り軸受の内周に挿入された軸部材とを備え、前記滑り軸受が前記軸部材の外周面から離隔して形成された油溜まりを有し、前記油溜まりに保持された油が、連通孔を介して前記滑り軸受の内周面と前記軸部材の外周面との間の軸受隙間に供給されることを特徴とする。
このように本発明の軸受装置は、軸受隙間に油を供給する油溜まりを有する。これにより、油溜まりに保持された油が連通孔を介して軸受隙間に供給されるため、軸受隙間に形成された油膜によって軸受装置がスムーズに作動し、潤滑不良による異音の発生や、軸受と軸部材との接触摺動による摩耗を回避できる。また、前記油溜まりが軸部材と非接触であることにより、油溜まりによって軸受面の面積が侵食されることはないため、軸受性能の低下を回避できる。
前記連通孔は、例えば電鋳部を貫通するように設けることができる。
上記のような軸受装置と、ロータマグネットと、ステータコイルとを備えたモータは円滑に作動するため、異音の発生がなく、製品寿命が長い。
以上のように、本発明の軸受装置は、軸受と軸部材との潤滑が良好なため、異音の発生や部材の摩耗を防止でき、高速回転化や製品寿命の延長を図ることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る軸受装置1の断面図である。軸受装置1は、軸受3と、軸受3の内周に挿入された軸部材2とで構成される。このうち軸受3は、電鋳加工で形成される電鋳部4と、電鋳部4を内周に保持する樹脂部5とを備える。
電鋳部4は電鋳加工により形成され、その内周面4aは軸受面として作用する。軸受3には油溜まり6が軸部材2の外周面2aと離隔して形成され、その油溜まり6と、電鋳部4の内周面4aと軸部材2の外周面2aとの間の軸受隙間とが、電鋳部4を貫通する連通孔9により連通されている。樹脂部5は、略円筒状をなし、樹脂を型成形することで形成される。本実施形態では、図1に示すように、油溜まり6が電鋳部4の外周面4bに隣接して設けられる場合を例示する。
以下、軸受3の製造工程を説明する。軸受3は、マスター軸7に所要個所のマスキング等の所定処理を行う工程(図2参照)、非マスク部に電鋳加工等を行って電鋳軸11を形成する工程(図3、図4参照)、電鋳軸11の電鋳部4を樹脂で射出成形する工程(図5参照)、及び電鋳部4をマスター軸7から剥離し、軸受3とマスター軸7とを分離する工程を経て製作される。
なお、以下の説明において、「回転用の軸受」とは、軸部材との間の相対回転を支持する軸受を意味し、軸受が回転側となるか固定側となるかを問わない。「摺動用の軸受」とは、軸との間の相対的な直線運動を支持する軸受を意味し、同様に軸受が移動側となるか固定側となるかを問わない。「回転摺動用の軸受」とは、前記二つの軸受の機能を併せ持つもので、軸との間の回転運動及び直線運動の双方を支持する軸受を意味する。また、「揺動用の軸受」とは、例えばボールジョイントのように、軸の三次元方向の運動が許容される軸受を意味する。
マスター軸7は、導電性材料、例えば焼入処理をしたステンレス鋼で、ストレートな横断面円形の軸として製作される。もちろんステンレス鋼に限定されるものでなく、剛性などの機械的強度、摺動性、耐熱性、耐薬品性、電鋳部4の加工性及び剥離性など、軸受の機能上あるいは軸受製作の都合上求められる特性に適合した材料、さらには熱処理方法が選択される。セラミック等の非金属材料でも、導電処理を施すことにより(例えば表面に導電性の金属皮膜を形成することにより)使用可能となる。なお、マスター軸7の表面には、電鋳部4との間の摩擦力を減じるための表面処理、例えばフッ素系の樹脂コーティングを施すのが望ましい。
マスター軸7は、中実軸の他、中空軸や中空部に樹脂を充填した中実軸であっても良い。また、回転用の軸受では、マスター軸の横断面は基本的に円形に形成されるが、摺動用の軸受の場合は横断面を任意形状にすることができ、円形のほかに多角形状や非真円形状とすることもできる。また、摺動用の軸受では、基本的にマスター軸7の横断面形状は軸方向で一定であるが、回転用の軸受や回転摺動用の軸受では、軸の全長にわたって一定の横断面形状ではない形態をとることもある。
マスター軸7の外周面精度は、後述する軸受隙間の精度を直接左右するので、真円度、
円筒度、表面粗さ等の軸受機能上重要となる表面精度を、予め高精度に仕上げておく必要がある。例えば回転用の軸受では、軸受面との接触回避の観点から真円度が重視されるので、マスター軸7の外周面はできるだけ真円度を高める必要がある。例えば、後述する軸受隙間の平均幅(半径寸法)の8割以下にまで仕上げておくのが望ましい。従って、例えば軸受隙間の平均幅を2μmに設定する場合、マスター軸外周面は1.6μm以下の真円度に仕上げるのが望ましい。
マスター軸7の外周面には、電鋳部4の形成予定部を除き、マスキングが施される(図2に散点で示す)。マスキング用の被覆材8としては、非導電性、及び電解質溶液に対する耐食性を有する既存品が選択使用される。また、連通孔9の形成予定部には突起部19が設けられる。突起部19には、非導電性、及び電解質溶液に対する耐食性を有し、特定の溶剤によって溶融する材料、例えば溶融性の樹脂が使用される。突起部19の径方向寸法(突起高さ)は、後に形成される電鋳部4の厚さとおよそ同じに設定される。本実施形態では、突起部19は軸方向およそ中心部に設けられているが、場所や数は特に限定されず、後述の油溜まり形成部材10が配置される位置に応じて決定される。
電鋳加工は、NiやCu等の金属イオンを含んだ電解質溶液にマスター軸7を浸漬し、電解質溶液に通電して目的の金属をマスター軸7の表面に析出させることにより行われる。電解質溶液には、カーボンなどの摺動材、あるいはサッカリン等の応力緩和材を必要に応じて含有させてもよい。電着金属の種類は、軸受の軸受面に求められる硬度や耐摩耗性、疲れ強さ等の物理的性質、化学的性質に応じて適宜選択される。電鋳部4の厚みは、これが厚すぎるとマスター軸7からの剥離性が低下し、薄すぎると軸受面の耐久性低下等につながるので、求められる軸受性能や軸受サイズ、さらには用途等に応じて最適な厚みに設定される。例えば軸径1mm〜6mmの回転用の軸受では、10μm〜200μmの厚さとするのが好ましい。
以上の工程を経ることにより、図3に示すように、マスター軸7外周に円筒状の電鋳部4が形成され、電鋳部4の外周面4bには、突起部19の外径端面が露出している。なお、マスキング用の被覆材8が薄い場合、電鋳部4の両端は被覆材8側に迫り出し、内周面にテーパ状の面取り部が形成される場合がある。この面取り部を利用して、電鋳部の樹脂部からの抜け落ちを防止するフランジ部を形成することもできる。本実施形態では、面取り部が形成されない場合を例示する。また、本実施形態では、電鋳部4が軸方向に連続して形成される場合を例示しているが、軸方向に離隔した複数箇所に電鋳部4を形成してもよい。
その後、図4に示すように、電鋳部4の外周面4bの突起部19を覆うように油溜まり形成部材10を配置する。配置方法としては、例えば、マスター軸7、電鋳部4、及び突起部19を金型内に設置し、樹脂等を射出成形して油溜まり形成部材10を一体形成する方法、あるいは、別途形成した油溜まり形成部材10を電鋳部4の外周面4bに嵌合させる方法等が考えられる。油溜まり形成部材10は、溶剤により溶融し、かつ、射出成形時に射出される高温の樹脂材料によって溶融しないように、射出される樹脂よりも高い融点を有する材料で形成される。油溜まり形成部材10の材料に、突起部19と同一材料あるいは突起部19と同じ溶剤で溶融できる別材料を選定すると、後述の射出成形後の油溜まり10及び突起部19の溶融を一度に行えるため、工程が簡略化できる。以上により、マスター軸7の外周面に電鋳部4と油溜まり形成部材10を有する電鋳軸11が形成される。
油溜まり形成部材10を形成する場所は、突起部19の外径側端面と接触可能である限り特に問わない。本実施形態を示す図4では、油溜まり形成部材10が円周方向全周(環状)に形成される場合を例示したが、例えば、円周方向に離隔した複数箇所に円弧状の油
溜まり形成部材10を配置することもできる。また、油溜まり形成部材10の断面形状は、図5に示すような矩形の他、半円状や台形状など適宜の形状に形成することができる。また、図4では、油溜まり形成部材10は電鋳部4の外径側の軸方向中央部一箇所に配置されているが、軸方向何れかの方向にずらして配置しても、あるいは、軸方向複数箇所に配置してもよい。
電鋳軸11は、図5に示す射出成形工程に移送され、電鋳部4、油溜まり形成部材10、マスター軸7、及び突起部19をインサート部品とするインサート成形が行われる。
図5は、樹脂部5のインサート成形工程を概念的に示すもので、可動型12、および固定型13からなる金型には、ランナ14およびゲート15と、キャビティ16とが設けられる。ゲート15は、この実施形態では、点状ゲートであり、成形金型(固定型13)の、樹脂部5の軸方向一端面に対応する位置に、かつ円周方向等間隔に複数箇所(例えば三箇所)形成される。各ゲート15のゲート面積は、充填する溶融樹脂の粘度や、成形品の形状に合わせて適切な値に設定される。
上記構成の金型において、電鋳軸11を所定位置に位置決めした状態で可動型12を固定型13に接近させて型締めする。次に、型締めした状態で、スプール(図示は省略)、ランナ14、およびゲート15を介してキャビティ16内に溶融樹脂Pを射出、充填し、樹脂部5を電鋳軸11と一体に成形する。
なお、溶融樹脂Pは熱可塑性樹脂であり、非晶性樹脂として、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニルサルフォン(PPSU)、ポリエーテルイミド(PEI)等、結晶性樹脂として、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等を用いることができる。また、上記の樹脂に充填する充填材の種類も特に限定されないが、例えば、充填材として、ガラス繊維等の繊維状充填材、チタン酸カリウム等のウィスカー状充填材、マイカ等の鱗片状充填材、カーボンファイバー、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノマテリアル、金属粉末等の繊維状又は粉末状の導電性充填材を用いることができる。これらの充填材は、単独で用い、あるいは、二種以上を混合して使用しても良い。
型開き後、マスター軸7、電鋳部4、油溜まり形成部材10、突起部19、及び樹脂部5が一体となった成形品を金型から脱型する。この成形品は、その後の剥離工程において電鋳部4、樹脂部5、油溜まり形成部材10、及び突起部19からなる要素と、マスター軸7とに分離される。
この剥離工程では、電鋳部4に蓄積された内部応力を解放することにより、電鋳部4の内周面4aを拡径させ、マスター軸7の外周面から剥離させる。内部応力の解放は、マスター軸7又は軸受3に衝撃を与えることにより、あるいは電鋳部4の内周面4aとマスター軸7の外周面との間に軸方向の加圧力を付与することにより行われる。内部応力の解放により、電鋳部4の内周面を半径方向に拡径させて、電鋳部4の内周面4aとマスター軸7の外周面との間に適当な大きさの隙間を形成することにより、電鋳部4の内周面4aからマスター軸7を軸方向にスムーズに引き抜くことができ、これにより成形品が、電鋳部4、樹脂部5、油溜まり形成部材10、及び突起部19からなる要素と、マスター軸7とに分離される。なお、電鋳部4の拡径量は、例えば電鋳部4の肉厚や電解質溶液の組成、電鋳条件を変えることによって制御できる。
衝撃の付与だけでは電鋳部4の内周を十分に拡径さえることができない場合、電鋳部4とマスター軸7とを加熱又は冷却し、両者間に熱膨張量差を生じさせることによって、マ
スター軸7から電鋳部4を剥離することもできる。
こうして分離された電鋳部4、樹脂部5、油溜まり形成部材10、及び突起部19からなる要素のうち、突起部19及び油溜まり形成部材10を溶剤により溶融させ、連通孔9及び油溜まり6を有する軸受3が形成される。油溜まり6の容積、すなわち油溜まり形成部材10の体積V1は、十分な油を保持するために、軸受隙間の容積V2に対する比(V1/V2)を10以上に設定することが望ましい。
その後、軸受3に別途製作した軸部材2を挿入し、軸受3の内周面と軸部材2の外周面との間の軸受隙間及び油溜まり6に潤滑油を充填することで、図1に示す軸受装置1が完成する。
本実施形態では、連通孔9及び油溜まり6を、それぞれ突起部19及び油溜まり形成部材10の別部材で形成する場合を例示したが、例えば突起部19と油溜まり形成部材10とが一体に形成された部材を、電鋳加工工程前のマスター軸7の外周面に配置し、その後、上記と同様に電鋳加工、射出成形、分離、溶融を行うことにより、軸受3に連通孔9及び油溜まり6を形成することもできる。この場合、図1のように油溜まり6を電鋳部4の外周面4bと接するように設けても良いが、電鋳部4と径方向に離隔して設けることもできる。この場合、連通孔9は、電鋳部4及び樹脂部5を貫通して、油溜まり6と軸受隙間とを連通する(図示省略)。
また、本実施形態では、図1のように、軸受3の内周面3aが、電鋳部4の内周面4aと樹脂部5の小径内周面5aとで形成され、電鋳部4の内周面4aが軸受面として作用する。射出成形後の固化時に、樹脂部5の小径内周面5aが成形収縮により拡径するよう樹脂材料の組成や成形条件等を配慮することにより、マスター軸7の外周面との間に微小隙間を形成することができる。これにより、樹脂部5とマスター軸7とを容易に分離することが可能となる。微小隙間の幅が適切であれば、図1に示す軸受装置1において、樹脂部5の小径内周面5aと軸部材2の外周面2aとの間の微小隙間を毛細管シールとして機能させることができ、軸受隙間からの潤滑油の流出防止に有効となる。この他、マスター軸7の分離後、機械加工等で小径内周面5aを形成しても良い。
このように毛細管シールは、樹脂部5の小径内周面5aを拡径させる他、小径内周面5aに対向する軸部材2の外周面2aに小径外周面(図示省略)を形成することで構成することもできる。また、毛細管シールを、軸受隙間側ほど隙間幅を徐々に縮径させたテーパシールとすれば、より有効な潤滑油の流出防止が可能となる。
軸部材2として、マスター軸7を使用する場合、電鋳部4とマスター軸7との剥離工程でできた、電鋳部4の内周面4aとマスター軸7の外周面との間の微小隙間は軸受隙間として機能する。この軸受隙間は、電鋳加工の特性から、クリアランスが極めて小さく、かつ高精度であるという特徴を有するため、高い回転精度または摺動性を有する軸受の提供が可能となる。なお、軸部材2としてマスター軸7を使用する必要は必ずしもなく、マスター軸7と同程度の精度で別途製作した軸部材と置き換えて軸受を構成することもできる。この場合、一度マスター軸7を製作すれば、これを繰返し転用することができるので、マスター軸7の製作コストを抑え、軸受装置1のさらなる低コスト化を図ることが可能となる。
軸受装置1の作動(回転、摺動、回転摺動、又は揺動)時には、油溜まり6から供給された油が、電鋳部4の内周面4aと軸部材2の外周面2aとの間の軸受隙間に油膜を形成するため、常に潤沢な潤滑油が軸受隙間に介在する。これにより、油不足による潤滑不良による異音の発生や、軸部材2と軸受3との接触摺動による摩耗が回避され、製品寿命が
延長される。また、油溜まり6に保持された油は、連通孔9を通じて軸受隙間に供給されるため、軸受面となる電鋳部4の内周面4aが減少する面積はごく僅か(連通孔9のみ)である。よって、軸受面の減少による軸受性能の低下を回避できる。
本発明は、上記実施形態に限られない。図6に示す本発明の第2の実施形態に係る軸受装置21は、カップ状に形成された軸受3の内周面及び内底面に電鋳部4が形成される。軸受3の内周に軸部材2が挿入され、電鋳部4の内周面4aと軸部材2の外周面2aとの間にラジアル軸受隙間が形成され、電鋳部4の内底面4cと軸部材2の凸球面部2bの先端との間には、軸部材2をスラスト方向に接触支持するスラスト軸受部Tが形成される。この場合、電鋳部4の外周面4bの下端付近に形成された油溜まり6に保持された油が、連通孔9を通ってラジアル軸受隙間及びスラスト軸受部Tに供給される。第1の実施形態と同様、油溜まり6の場所は軸部材と非接触あれば特に限定されず、例えば電鋳部4の底部の下端面4dに接する位置に設けてもよい。あるいは、電鋳部4と非接触となるように、樹脂部5の内部に配置することもできる。
図7に示す本発明の第3の実施形態に係る軸受装置31は、カップ状の軸受3の側部17と底部18とが別体に形成される。側部17は大径内周面5bと小径内周面5cを有し、樹脂の射出成形で形成される。底部18は、例えば金属材料で形成され、接着、高周波溶着、超音波溶着などの方法で、側部17に固定される。軸部材2の凸球面部2bの先端と電鋳部4の内底面4cとの間には、軸部材2をスラスト方向に接触支持するスラスト軸受部Tが形成される。この場合、電鋳部4の外周面4bと、底部18の上端面18aと、樹脂部5の大径内周面5bとで囲まれた領域により油溜まり6が形成され、油溜まり6に保持された油が、連通孔9、及び軸部材2の凸球面部2bと電鋳部4とで囲まれた空間を介して軸受隙間に供給される。
本実施形態では、軸受3の底部18が別体に形成されるため、油溜まり6を構成する樹脂部5の大径内周面5bの形成方法の自由度が高まる。例えば、射出成形工程の前に、電鋳部4の外周に環状のゴム材を配置し、成形後に取り外すことにより樹脂部5の大径内周面5bを形成することができる。また、射出成形時の金型によって大径内周面5bを形成することもできる。あるいは、樹脂で射出成形した後、旋削などの機械加工により、樹脂部5の一部を除去することによって大径内周面5bを形成することもできる。これらの方法で油溜まり6を形成する場合、油溜まり6の位置は、底部18の上端面18aと接している必要があるが、第1、第2の実施形態と同様に溶剤に溶融する物質で形成する場合は、特に限定されない。
以上で示した軸受は、電鋳部4の内周面4aと軸部材2の外周面2aとの間のラジアル軸受隙間に、流体の動圧作用で圧力を発生させる動圧軸受として使用することも可能である。この動圧軸受は、例えば軸部材2の外周面2aに、ヘリングボーン形状等に形成した動圧溝、多円弧面、あるいはステップ面等の動圧発生部を形成し、この動圧発生部を電鋳部4の真円状内周面4aと対向させることで構成することができる。これとは逆に、電鋳部4の内周面4aに動圧発生部を形成することもでき、この場合、電鋳部内周面4aの動圧発生部は、マスター軸7の外周面に動圧発生部の形状に対応した型を形成して電鋳加工を行うことで形成可能である。その後、同様の手順で軸受3とマスター軸7の分離を行い、さらに軸受3の内周に真円状の外周面を有する軸部材2を挿入することで、動圧軸受が構成される。
また、軸受装置のスラスト軸受部にも動圧軸受を採用することができる。この場合、下端面を有する軸部材2を使用し、例えば軸部材2の下端面にスパイラル形状に形成した動圧溝やステップ面等の動圧発生部を形成し、この動圧発生部を軸部材2の下端面と対向する面、例えば電鋳部4の内底面4cと対向させることでスラスト軸受部を構成することが
できる。これとは逆に、電鋳部4の内底面4cに動圧発生部を形成することもできる。
以上説明した軸受装置は、例えば情報機器用のモータに組み込んで使用可能である。以下、軸受装置1を上記モータ用の回転軸支持装置として使用した例を、図8に基づいて説明する。
図8に示すように、このモータ100は、例えばHDD等のディスク駆動装置用のスピンドルモータとして使用されるものであって、軸部材2を回転自在に非接触支持する軸受装置1と、軸部材2に装着されたロータ(ディスクハブ)103と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル104およびロータマグネット105とを備えている。ステータコイル104は、ブラケット106の外周に取付けられ、ロータマグネット105はディスクハブ103の内周に取付けられている。ディスクハブ103には、磁気ディスク等のディスクDが一又は複数枚保持されている。ステータコイル104に通電すると、ステータコイル104とロータマグネット105との間の電磁力でロータマグネット105が回転し、それによって、ディスクハブ103及びディスクハブ103に保持されたディスクDが軸部材2と一体に回転する。
この実施形態において、軸受装置1は、軸受3と、軸受3の内周に挿入される軸部材2と、軸受3の一端に装着されるスラストプレート107とを備える。図8では、軸受装置として図1に示す軸受装置1を例示しているが、図6、図7に示す軸受装置21、31も使用可能である。スラストプレート107の上端面には、スラスト動圧発生部として、複数の動圧溝をスパイラル状に配列した領域(スラスト軸受面)107aが形成される。軸部材2の回転時には、軸部材2の外周面2aと軸受3のラジアル軸受面となる電鋳部4の内周面4aとのラジアル軸受隙間に油膜が形成され、これにより軸部材2をラジアル方向に回転自在に非接触支持するラジアル軸受部Rが形成される。同時に、軸部材2の下端面2bとスラストプレート107の上端面107aとの間のスラスト軸受隙間に、動圧溝による潤滑油の動圧作用で軸部材2をスラスト方向に回転自在に非接触支持するスラスト軸受部Tが形成される。
本発明の軸受装置は、以上の例示に限らず、光ディスクの光磁気ディスク駆動用のスピンドルモータ等、高速回転下で使用される情報機器用の小型モータ、あるいはレーザビームプリンタのポリゴンスキャナモータ等における回転軸支持用としても好適に使用することができる。また、長寿命が要求されるファンモータなどにも適用できる。
以上の説明では、軸受3を回転用の軸受に使用する場合を例示しているが、この他にも軸受3は、摺動用の軸受や、回転摺動用の軸受、あるいは揺動用の軸受の何れにも適用することができる。
本発明の第1の実施形態に係る電鋳軸11の断面図である。 マスター軸7の外周面のマスキングを施した状態を示す斜視図である。 マスター軸7に電鋳部4を形成した状態を示す斜視図である。 電鋳軸11の斜視図である。 射出成形金型に電鋳軸11を取付けた状態を示す断面図である。 本発明の第2の実施形態に係る軸受装置21の断面図である。 本発明の第3の実施形態に係る軸受装置31の断面図である。 本発明を適用したモータ100の概略構造を示す断面図である。
符号の説明
1 軸受装置
2 軸部材
3 軸受
4 電鋳部
5 樹脂部
6 油溜まり
7 マスター軸
8 被覆材
9 連通孔
10 油溜まり形成部材
11 電鋳軸
100 モータ
R ラジアル軸受部
T スラスト軸受部

Claims (3)

  1. 電鋳加工で形成される電鋳部、及び電鋳部を内周にインサートして成形された樹脂部からなる滑り軸受と、滑り軸受の内周に挿入された軸部材とを備えた軸受装置において、
    前記滑り軸受が前記軸部材の外周面から離隔して形成された油溜まりを有し、前記油溜まりに保持された油が、連通孔を介して前記滑り軸受の内周面と前記軸部材の外周面との間の軸受隙間に供給されることを特徴とする軸受装置。
  2. 前記連通孔が、電鋳部を貫通している請求項1記載の軸受装置。
  3. 請求項1又は2の何れかに記載の軸受装置と、ロータマグネットと、ステータコイルとを備えたモータ。

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