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JP2007090803A - ガスバリアフィルム、並びに、これを用いた画像表示素子および有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

ガスバリアフィルム、並びに、これを用いた画像表示素子および有機エレクトロルミネッセンス素子 Download PDF

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JP2007090803A JP2005286166A JP2005286166A JP2007090803A JP 2007090803 A JP2007090803 A JP 2007090803A JP 2005286166 A JP2005286166 A JP 2005286166A JP 2005286166 A JP2005286166 A JP 2005286166A JP 2007090803 A JP2007090803 A JP 2007090803A
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Hirohisa Sotozono
裕久 外園
Hiroshi Iwanaga
宏 岩永
Seiya Sakurai
靖也 桜井
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Abstract

【課題】フレキシブルかつ十分なバリア性能および耐熱性を有するガスバリアフィルム、耐久性と軽量化とを両立させた画像表示素子および有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【解決手段】プラスチック基板上に、少なくとも一層の無機物からなるバリア層と少なくとも一層の有機層とを交互に有するガスバリアフィルムであって、前記バリア層の少なくとも一層が原子層デポジッション法(Atomic Layer Deposition:ALD法)によって形成されたことを特徴とするガスバリアフィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は、超高ガスバリア性を有するガスバリアフィルムに関するものである。より具体的には、各種デバイスの基板として用いられ、また、基板を被覆するのに適した超ガスバリア性を有するガスバリアフィルムに関するものである。さらに、本発明は、前記ガスバリアフィルムを用いたことで耐久性およびフレキシブル性に優れた画像表示素子、特に有機エレクトロルミネッセンス素子(以下「有機EL素子」という)に関するものである。
従来から、プラスチック基板やフィルムの表面に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物の薄膜を形成したガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装用途や、食品や工業用品および医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。また、包装用途以外にも液晶表示素子、太陽電池、EL基板等で使用されている。特に液晶表示素子、有機EL素子などへの応用が進んでいる透明基材には、近年、軽量化、大型化という要求に加え、長期信頼性や形状の自由度が高いこと、曲面表示が可能であること等の高度な要求が加わり、重くて割れやすく大面積化が困難なガラス基板に代わって透明プラスチック等のフィルム基材が採用され始めている。プラスチックフィルムは前記要求に応えるだけでなく、ロール トゥ ロール方式が可能であることからガラスよりも生産性が良くコストダウンの点でも有利である。
しかしながら、透明プラスチック等のフィルム基材はガラスに対しガスバリア性が劣るという問題がある。ガスバリア性が劣る基材を用いると、水蒸気や空気が浸透し、例えば液晶セル内の液晶を劣化させ、表示欠陥となって表示品位を劣化させてしまう。この様な問題を解決するために、フィルム基板上に金属酸化物薄膜を形成してガスバリア性フィルム基材とすることが知られている。包装材や液晶表示素子に使用されるガスバリア性フィルムとしてはプラスチックフィルム上に酸化珪素を蒸着したもの(特許文献1参照)や酸化アルミニウムを蒸着したもの(特許文献2参照)が知られており、いずれも1g/m2・day程度の水蒸気バリア性を有する。
しかし近年では、液晶ディスプレイの大型化、高精細ディスプレイ等の開発により、フィルム基材にはより高いバリア性能が求められるようになっている。ごく近年においては、さらなるバリア性を要求される有機ELディスプレイや高精彩カラー液晶ディスプレイなどの開発が進み、これに使用可能な透明性を維持しつつもさらに高いバリア性能を有するフィルム基材、特に水蒸気バリアで0.1g/m2・day未満の性能をもつフィルム基材が要求されるようになっている。このような要求に応えるために、低圧条件下でグロー放電させて生じるプラズマを用いて薄膜を形成するスパッタリング法やCVD法による成膜法などが、より高いバリア性能を期待できる手段として検討されている。また、有機層/無機層の交互積層構造を有するバリア膜を真空蒸着法により作製する技術も提案されている(特許文献3および非特許文献1参照)。
しかしながら、これらの薄膜形成法は、高温の蒸気として噴出した有機物がフィルム上で凝集して薄膜を形成するものであるため、一時的にフィルムが加熱されて部分的に変形を起こし、その後の積層工程が不均一となって充分なバリア能が得られないという問題を有していた。
前記薄膜形成技術のひとつとして原子層デポジッション法(Atomic Layer Deposition:以下、「ALD法」ともいう)がある。前記のスパッタリング法やCVD法が高エネルギー粒子を利用するがゆえに生成した薄膜のピンホールや損傷を引き起こしてしまうのに対して、この方法では複数の低エネルギーガスの基材表面に対する化学吸着および化学反応を利用する方法であるためピンホールや損傷が生じることがなく高密度の単原子膜が得られる(特許文献4、特許文献5および特許文献6参照)。
特公昭53−12953号公報 特開昭58−217344号公報 米国特許第6,413,645号明細書 特開2003−347042号公報 特表2004−535514号公報 国際公開第2004/105149号パンフレット Affinitoら, Thin Solid Film, 290-291(1996)
プラスチック基板で有機EL素子等の画像表示素子を設計することができれば、ガラス基板を用いた従来品よりも大幅な軽量化を進めることができる。しかし、その一方において、上述のような透過ガスに伴う素子劣化が避けられないという問題があった。このため、素子の耐久性と軽量化とを両立する技術の発現が望まれていた。
そこで本発明は、耐熱性に優れたプラスチック基板を用い、この基板の上に薄く、緻密、かつ無欠陥な無機バリア層を設置することにより、フレキシブルかつ十分なバリア性能および耐熱性を有するガスバリアフィルムを提供することを目的とする。さらに、耐久性と軽量化とを両立させた画像表示素子および有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
本発明者は、従来のガスバリアフィルムのバリア性能が損なわれる原因について種々検討を重ねた結果、薄膜設置時の無機バリア層の微小欠陥が主要因であること、さらに前記ガスバリアフィルムにTFT設置等の250℃以上の高温処理を施す場合はプラスチック基板の耐熱性不足による変形も大きな要因のひとつであることが明らかになった。本発明者は、このような検討結果に基づいて、以下の構成を有する本発明のガスバリアフィルムであれば、プラスチック基板上に形成した薄膜に欠陥が生じるのを抑えてバリア性が損なわれないようにすることができることを見いだした。
(1) プラスチック基板上に、少なくとも一層の無機物からなるバリア層と少なくとも一層の有機層とを交互に有するガスバリアフィルムであって、前記バリア層の少なくとも一層が原子層デポジッション法(Atomic Layer Deposition:ALD法)によって形成されたことを特徴とするガスバリアフィルム。
(2) 前記プラスチック基板が、下記一般式(1)の構造を有し且つガラス転移温度が250℃以上のポリアリレートからなることを特徴とする(1)に記載のガスバリアフィルム。
Figure 2007090803
〔一般式(1)中、Xは下記構造で表されるナフタレン構造またはビフェニレン構造を有する連結基を表し、Aは下記一般式(2)で表される連結基を表す。〕
Figure 2007090803
Figure 2007090803
〔一般式(2)中、R1およびR2はそれぞれ独立にアルキル基またはアリール基を表し、jおよびkはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。jが2以上の場合、各R1は同じであってもよいし異なっていてもよい。kが2以上の場合、各R2は同じであってもよいし異なっていてもよい。〕
(3) 前記原子層デポジッション法を250℃以上で行うことを特徴とする(2)に記載のガスバリアフィルム。
(4) (1)〜(3)のいずれかに記載のガスバリアフィルムを用いることを特徴とする画像表示素子。
(5) (1)〜(3)のいずれかに記載のガスバリアフィルムを基板として用いることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
本発明によれば、フレキシブルかつ十分なバリア性能および耐熱性を有するガスバリアフィルムを提供することができる。また、本発明によれば、耐久性と軽量化とを両立させた画像表示素子および有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
以下において、本発明のガスバリアフィルムと画像表示素子および有機エレクトロルミネッセンスについて詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
《ガスバリアフィルム》
本発明のガスバリアフィルムは、プラスチック基板上に、少なくとも一層の無機物からなるバリア層と少なくとも一層の有機層とを交互に有するガスバリアフィルムであって、前記バリア層の少なくとも一層が原子層デポジッション法(Atomic Layer Deposition:ALD法)によって形成されたことを特徴とする。
本発明のガスバリアフィルムは、無機バリア薄膜形成法として原子層デポジッション法(ALD法)を用いているため、薄膜設置時の無機バリア層の微小欠陥が生じることがなくガスバリア性が損なわれることがない。また本発明におけるプラスチック基板は耐熱性に優れるため、バリア薄膜設置法が真空蒸着の場合でも変形が生じることがなくガスバリア性が損なわれることがない。さらに本発明のガスバリアフィルムを基材等に用いることで、フレキシブル支持体を有し高精細および高耐久性を有する液晶表示装置や、有機EL素子などの画像表示素子を提供することができる。
本発明のガスバリアフィルムは、上述の通り、プラスチック基板上に、少なくとも一層の原子層デポジッション法(ALD法)を用いて形成した無機バリア層および少なくとも一層の有機層を交互に有する構造をしている。即ち、プラスチック基板表面にはバリア層が設けられており、該バリア層上に有機層が設けられる。バリア層および有機層が各々2層以上の場合には、バリア層上に設けられた有機層上に、無機バリア層および有機層が交互に設けられる。本発明のガスバリアフィルムは、バリア層を2〜7層有するものが好ましく、3〜6層有するものが更に好ましい。同様に、本発明のガスバリアフィルムは、有機層を1〜6層有するものが好ましく、2〜5層有するものが更に好ましい。
また、本発明においては、前記プラスチック基板が後述する一般式(1)の構造を有するガラス転移温度250℃以上のポリアリレートからなることが好ましい。
[ガスバリアフィルムの構成]
本発明のガスバリアフィルムは、プラスチック基板上に、少なくとも一層の無機物からなるバリア層および少なくとも一層の有機層を交互に有する構造をしている。このような構造を有するものであれば、本発明の効果を損なわない限りその他の層を有していていてもよい。
例えば、バリア層と有機層とからなる積層体とプラスチック基板との間や積層体表面などに別の層を有していてもよい。具体的には、バリア層と有機層とからなる積層体とプラスチック基板との間に、公知のプライマー層または無機薄膜層を設置することができる。
また、例えばバリア層と有機層とからなる積層体の上または最外層には、それぞれ種々の機能層を設置してもよい。
また、前記機能層の例としては、反射防止層・防眩層・光学補償層・偏光層・液晶層・カラーフィルター・紫外線吸収層・光取出効率向上層等の光学機能層や、ハードコート層(硬化樹脂層)・応力緩和層等の力学的機能層、帯電防止層(導電性層)などの電気的機能層、防曇層、防汚層、被印刷層・易接着層などが挙げられる。特に帯電防止層は、高いバリア能を安定的に付与すると言う点で形成することが好ましい。また、これらの層に用いられる材料として、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止剤など数多くの材料を挙げることができる。
本発明のガスバリアフィルムは、積層構造を有するために、バリア性能が極めて高い。本発明のガスバリアフィルムの38℃・相対湿度90%における酸素透過率は0.05ml/m2・day・atm(0.05×105ml/m2・day・Pa)以下であることが好ましく、0.02ml/m2・day・atm(0.02×105ml/m2・day・Pa)以下であることがさらに好ましく、0.01ml/m2・day・atm(0.01×105ml/m2・day・Pa)以下であることが特に好ましく、0.005ml/m2・day・atm(0.005×105ml/m2・day・Pa)以下であることが最も好ましい。本発明のガスバリアフィルムの38℃・相対湿度90%における水蒸気透過率は0.05g/m2・day以下であることが好ましく、0.02g/m2・day以下であることがさらに好ましく、0.01g/m2・day以下であることが特に好ましく、0.005g/m2・day以下であることが最も好ましい。
以下では、まず、本発明のガスバリアフィルムの必須構成要素である無機物からなるバリア層およびその形成方法である原子層デポジッション法(ALD法)を説明し、続いて有機層、プラスチック基板、について説明した後に、その他の層や材料について説明する。
(無機物からなるバリア層)
本発明のガスバリアフィルムを構成するバリア層は、無機物を含有しバリア性能を改善する層である。無機バリア層に含まれる無機物の成分は特に限定されないが、例えば、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、Ta等の1種以上を含む酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物などを用いることができる。
水蒸気バリア性と高透明性とを両立させるにはバリア層として珪素酸化物や珪素酸化窒化物を使うことも好ましい。前記珪素酸化物は「SiOx」と表記される。例えば、無機物層として「SiOx」を用いる場合、良好な水蒸気バリア性と高い光線透過率とを両立させるためには1.6<x<1.9であることが望ましい。珪素酸化窒化物は「SiOxNy」と表記されるが、このxとyとの比率は密着性向上を重視する場合、酸素リッチの膜とし、1<x<2且つ0<y<1が好ましく、水蒸気バリア性向上を重視する場合、窒素リッチの膜とし、0<x<0.8且つ0.8<y<1.3が好ましい。
本発明のガスバリアフィルムは、原子層デポジッション法(ALD法)により形成されたバリア層を含むことを特徴とする。目的とするバリア層を形成できる方法であればいかなる他の無機薄膜形成法と組み合わせてもよく、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などがある。本発明におけるバリア層は、例えば、特許第3400324号公報、特開2002−322561号公報、特開2002−361774号公報に記載の方法も組み合わせて製膜することができる。
バリア層の厚みは特に限定されないが、厚すぎると曲げ応力によるクラックの恐れがあり、薄すぎると膜が島状に分布するため、いずれも水蒸気バリア性が悪くなる傾向がある。このため、各バリア層の厚みは5nm〜1000nmが好ましく、より好ましくは5nm〜1000nmであり、最も好ましくは5nm〜200nmである。
本発明のガスバリアフィルムには、バリア層が2層以上形成されていることが好ましい。その場合、各バリア層は各々が同じ組成でも別の組成でもよく、制限はない。
(原子層デポジッション法:ALD法)
本発明におけるバリア層を形成する方法である原子層デポジッション法(ALD法)について以下に説明する。以下、原子層デポジッション法はALD法と記載する。
原子層デポジッション(ALD)は、当初は原子層エピタキシー(ALE)と呼ばれていたが、多結晶および非結晶の膜についても適用するため原子層デポジッション(ALD)という用語を主に用いるようになった。本発明では、両者は同じ技術を指すこととする。
ALD法では原料となる複数のガスを交互に切り替えて基板上に導き、化学吸着により基板上へ単原子層(ガス分子層)を形成させ、基板上での化学反応により無機層を一層ずつ形成する。この薄膜形成機構の特長として、ALD法では基板表面の形状(凹凸は微小欠陥など)に依らず、陰影部分も含め完全な表面被覆、かつ緻密な薄膜形成が可能である。ALD法で形成可能な無機薄膜および使用可能な原料ガスは多岐にわたり、文献(M. Ritala : Appl. Surf. Sci. 112, 223 (1997))に記載のものなどが適用可能であるが、本発明はこれに限定されるものではない。
高透明性かつバリア性に優れる点で、珪素酸化物や珪素酸化窒化物、アルミナ、が好ましく製膜される。例えばアルミナの場合はAl源としてトリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEA)、およびトリクロロアルミニウムなどが使用でき、酸素(O)源としては水(H2O)などが使用できる。2種のガス分子を交互に基板上に導入することにより、基板上での薄膜形成を行う。ガスの切り替えのときには窒素などの不活性ガスをパージし、系内の余分なガスを除去することが好ましい。製膜温度としては、ガス分子の基材への吸着のため基材表面の活性化が必要であるため、基材のプラスチック基板のガラス転移温度あるいは分解開始温度を超えない範囲で、なるべく高温が好ましい。ただし高温すぎると基材表面からのガス分子が脱離してしまうので、適宜調整が必要である。本発明ではプラスチック基板としてガラス転移温度が250℃以上のポリアリレートを用いることが好ましいため、製膜温度としては250℃以上が好ましく、250℃〜350℃がさらに好ましく、特に好ましくは300℃〜350℃が好ましい。一回の製膜サイクルで最大約0.3nmの薄膜が形成され、所望の膜厚までこのサイクルを繰り返すことで、完全被覆かつ緻密な高品質の本発明におけるバリア層を形成することができる。途中で原料ガスを変えて複数種の無機薄膜から成る無機バリア層を形成してもよい。
(有機層)
本発明のガスバリアフィルムは有機層を有する。ここで、「有機層」とは有機物を含む層であり、無機バリア層に隣接して設けられて応力緩和層として機能する。有機層は、前記の無機物からなるバリア層の脆性およびバリア性を向上させるために、これと隣接して1層以上設けられる。バリア層と有機層とは交互に積層される。
前記有機層は、(1)ゾルゲル法を用いて作製した無機酸化物層を利用する方法、(2)有機物を塗布または蒸着で積層下した後、紫外線または電子線で硬化させる方法等を用いて形成することができる。また、(1)および(2)の方法は、組み合わせて使用してもよく、例えば、プラスチック基板上に(1)の方法で薄膜を形成した後、無機酸化物層を作製し、その後(2)の方法で薄膜を形成してもよい。以下においてこれらの方法を順に説明する。
(1)ゾルゲル法
ゾル−ゲル法は、好ましくは溶液中、または塗膜中で金属アルコキシドを加水分解、縮重合させて、緻密な薄膜を得るものである。このとき、樹脂を併用して有機−無機ハイブリッド材料にしてもよい。
ゾル−ゲル法に用いられる金属アルコキシドとしては、アルコキシシランおよび/またはアルコキシシラン以外の金属アルコキシドを挙げることができる。アルコキシシラン以外の金属アルコキシドとしては、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、アルミニウムアルコキシド等が好ましい。
ゾル−ゲル反応時に併用するポリマーは、水素結合形成基を有していることが好ましい。前記水素結合形成基を有する樹脂の例としては、ヒドロキシル基を有するポリマーとその誘導体(ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、フェノール樹脂、メチロールメラミン等とその誘導体);カルボキシル基を有するポリマーとその誘導体(ポリ(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の重合性不飽和酸の単位を含む単独または共重合体と、これらのポリマーのエステル化物(酢酸ビニル等のビニルエステル、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル等の単位を含む単独または共重合体)等);エーテル結合を有するポリマー(ポリアルキレンオキサイド、ポリオキシアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、珪素樹脂等);アミド結合を有するポリマー(>N(COR)−結合(式中、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を示す)を有するポリオキサゾリンやポリアルキレンイミンのN−アシル化物);>NC(O)−結合を有するポリビニルピロリドンとその誘導体;ウレタン結合を有するポリウレタン;尿素結合を有するポリマー等を挙げることができる。
また、ゾル−ゲル反応時にモノマーを併用し、ゾル−ゲル反応時、またはその後に重合させて有機−無機ハイブリッド材料を作製することもできる。
前記ゾル−ゲル反応時には、水、および有機溶媒中で金属アルコキシドを加水分解、および縮重合させるが、この時、触媒を用いることが好ましい。加水分解の触媒としては、一般に酸(有機または無機酸)が用いられる。
前記酸の使用量は、金属アルコキシド(アルコキシシランおよび他の金属アルコキシドを含有する場合には、アルコキシシランと他の金属アルコキシドとの総量)1モル当たり、0.0001〜0.05モルであり、好ましくは0.001〜0.01モルである。また、加水分解後、無機塩基やアミンなどの塩基性化合物を添加して溶液のpHを中性付近にし、縮重合を促進してもよい。
さらに、中心金属にAl、Ti、Zrを有する金属キレート化合物、スズの化合物等の有機金属化合物、有機酸のアルカリ金属塩等の金属塩類など、他のゾル−ゲル触媒も併用することができる。
ゾルゲル触媒の組成物中の割合は、ゾル液の原料であるアルコキシシランに対し、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%である。
次に、ゾル−ゲル反応に用いられる溶媒について述べる。前記溶媒はゾル液中の各成分を均一に混合させ、組成物の固形分を調整すると同時に、種々の塗布方法に適用できるようにし、組成物の分散安定性および保存安定性を向上させるものである。これらの溶媒は前記目的の果たせるものであれば特に限定されない。これらの溶媒の好ましい例として、例えば水、および、水と混和性の高い有機溶媒が挙げられる。
ゾル−ゲル反応の速度を調節する目的で、多座配位可能な有機化合物を添加して、金属アルコキシドを安定化してもよい。多座配位可能な有機化合物の例としては、β−ジケトンおよび/またはβ−ケトエステル類、およびアルカノールアミンが挙げられる。
このβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類の具体例としては、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec−ブチル、アセト酢酸−tert−ブチル、2,4−ヘキサン−ジオン、2,4−ヘプタン−ジオン、3,5−ヘプタン−ジオン、2,4−オクタン−ジオン、2,4−ノナン−ジオン、5−メチル−ヘキサン−ジオンなどを挙げることができる。これらのうち、アセト酢酸エチルおよびアセチルアセトンが好ましく、特にアセチルアセトンが好ましい。これらβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して使用することもできる。
これらの多座配位可能な化合物は、ゾル−ゲル触媒として前記の金属キレート化合物を用いた場合、その反応速度を調節する目的にも用いることができる。
次にゾル−ゲル反応組成物を塗設する方法について述べる。ゾル液はカーテンフローコート、ディップコート、スピンコート、ロールコート等の塗布法によって、バリア層上に薄膜を形成することができる。この場合、加水分解のタイミングは製造工程中の如何なる時期であっても構わない。例えば、予め必要な組成の液を加水分解部分縮合して目的のゾル液を調製し、それを塗布−乾燥する方法や、必要な組成の液を調製し塗布と同時に加水分解部分縮合させながら乾燥する方法や、塗布−一次乾燥後、加水分解に必要な水含有液を重ねて塗布し加水分解させる方法等を好適に採用できる。また、塗布方法としては、様々な形態をとることが可能であるが、生産性を重視する場合には多段の吐出口を有するスライドギーサー上で下層塗布液と上層塗布液とのそれぞれが必要な塗布量になる様に吐出流量を調整し、形成した多層流を連続的にバリア層に乗せ、乾燥させる方法(同時重層法)が好適に用いられる。
塗設後の乾燥温度は好ましくは150〜350℃、より好ましくは150〜250℃、さらに好ましくは150〜200℃である。
塗布、乾燥後のフィルムをさらに緻密にするため、エネルギー線の照射を行ってもよい。その照射線種に特に制限はないが、支持体の変形や変性に対する影響を勘案し、紫外線、電子線あるいはマイクロ波の照射を特に好ましく用いることができる。照射強度は30mJ/cm2〜500mJ/cm2であり、特に好ましくは50mJ/cm2〜400mJ/cm2である。照射温度は室温から支持体の変形温度の間を制限無く採用することが可能であり、好ましくは30℃〜150℃、特に好ましくは50℃〜130℃である。
(2)有機物を塗布または蒸着で積層した後、紫外線または電子線で硬化させる方法
モノマーを架橋させて得られた高分子を主成分とする有機層を形成する方法について説明する。この方法で用いるモノマーとしては、紫外線あるいは電子線で架橋できる基を含有していれば特に限定は無いが、アクリロイル基またはメタクリロイル基、オキセタン基を有するモノマーを用いることが好ましい。例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどのうち、2官能以上のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するモノマーを架橋させて得られる高分子を主成分とすることが好ましい。これらの2官能以上のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するモノマーは2種類以上を混合して用いても、また1官能の(メタ)アクリレートを混合して用いてもよい。
また、オキセタン基を有するモノマーとしては、特開2002−356607号公報の一般式(3)〜(6)に記載されている構造を有するモノマーを使うことが好ましい。この場合、これらを任意に混合してもよい。
また、ディスプレイ用途に要求される耐熱性および耐溶剤性の観点から、特に架橋度が高く、ガラス転移温度が200℃以上である、イソシアヌル酸アクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートを主成分とすることが好ましい。有機層の厚みについては特に限定されないが、10nm〜5000nmが好ましく、さらに好ましくは、10〜2000nmであり、最も好ましくは10nm〜1000nmである。有機層の厚みが薄すぎると、厚みの均一性を得ることが困難となり、応力緩和層としての機能が低下してしまう。このため、曲げ等の外力により無機層がクラックを発生し易くなり、バリア性が悪化することがある。逆に有機層の厚みが厚すぎると、曲げ等の外力により有機層がクラックを発生し易くなるためバリア性が低下してしまう不具合が発生することがある。
有機層を形成させるための方法としては、上述に例示した方法の他に、真空成膜法等を挙げることができる。真空成膜法としては、特に制限はないが、蒸着、プラズマCVD等の成膜方法が好ましく、有機物質モノマーの成膜速度を制御しやすい抵抗加熱蒸着法がより好ましい。モノマーの架橋方法に関しては、何ら制限はないが、電子線や紫外線等による架橋が、真空槽内に容易に取り付けられる点や架橋反応による高分子量化が迅速である点で望ましい。
塗布方式で作製する場合には、従来用いられる種々の塗布方法、例えば、スプレーコート、スピンコート、バーコート等の方法を用いることができる。
(プラスチック基板)
本発明におけるプラスチック基板は、上述の各層を保持できるものであれば特に限定はなく公知のプラスチックフィルム等を用いることができるが、耐熱性の観点から、下記一般式(1)の構造を有し、且つ、ガラス転移温度が250℃以上のポリアリレート(以下、「本発明におけるポリアリレート」とも称する。)からなるプラスチック基板を用いることが好ましい。本発明におけるポリアリレートは、無置換のビスフェノールフルオレンまたはアルキル基もしくはアリール基で置換されたビスフェノールフルオレンと、2,6−ナフタレンジカルボン酸もしくは4,4’−ビフェニルジカルボン酸と、を重縮合させて得ることができる。以下、本発明におけるポリアリレートについて説明する。
Figure 2007090803
一般式(1)中、Xは下記構造で表されるナフタレン構造またはビフェニレン構造を有する連結基を表し、Aは下記一般式(2)で表される連結基を表す。
Figure 2007090803
Figure 2007090803
一般式(2)中、R1およびR2はそれぞれアルキル基またはアリール基を表し、jおよびkはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。jが2以上の場合、各R1は同じであってもよいし異なっていてもよい。kが2以上の場合、各R2は同じであってもよいし異なっていてもよい。
1、R2の好ましい例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基およびフェニル基が挙げられ、特に好ましくはメチル基である。
一般式(2)で表される連結基の好ましい例(A−1〜A−16)をビスフェノールの形態で以下に示すが、本発明で採用することができるものはこれらに限定されるものではない。
Figure 2007090803
Figure 2007090803
前記で挙げた一般式(2)で表される連結基の好ましい例をビスフェノールの形態で示したもののうち、耐熱性の観点では、A−1,A−2,A−3が特に好ましい。
一般式(1)で表される構造(繰り返し単位)を有するポリアリレートは、前記で例を挙げた無置換のビスフェノールフルオレンもしくは、アルキル基またはアリール基で置換されたビスフェノールフルオレンと2,6−ナフタレンジカルボン酸もしくは4,4’−ビフェニルジカルボン酸とを重縮合させて得ることができる。本発明におけるポリアリレートは、耐熱性と透明性との観点からは、一般式(1)で表される繰り返し単位を複数種有することが好ましい。
さらに耐熱性を損なわない範囲で2,6−ナフタレンジカルボン酸もしくは4,4’−ビフェニルジカルボン酸以外のジカルボン酸を共重合することも好ましい。前記共重合可能なジカルボン酸の好ましい例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸などが挙げられる。また、耐熱性と透明性とを損なわない範囲で種々公知のビスフェノール化合物を共重合してもよい。
以下、一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリアリレートの好ましい例をビスフェノールとジカルボン酸単位とで示すが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、前記で例示したビスフェノール化合物はその番号で表し、2,6−ナフタレンジカルボン酸を「X−1」と表し、4,4’−ビフェニルジカルボン酸を「X−2」と表す。また、複数のビスフェノール化合物、ジカルボン酸化合物を用いる場合はそれぞれのモル比率も付記する。
Figure 2007090803
一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリアリレートは、対応するビスフェノール化合物とジカルボン酸とを重縮合させて得ることができる。該重縮合方法としては、脱酢酸による溶融重縮合法、脱フェノールによる溶融重縮合法、ジカルボン酸化合物を酸クロライドとして有機塩基を用いポリマーが可溶となる有機溶媒系で行う脱塩酸均一重合法、ジカルボン酸化合物を酸クロライドとしてアルカリ水溶液と水非混和性有機溶媒の2相系で行う界面重縮合法などいずれの公知の方法を用いることができる。また、本発明におけるポリアリレートのTgが300℃以上となる場合、溶融重縮合は困難となるが、特開平7−188405号公報に記載されているように高沸点可塑剤を併用し、反応温度300℃程度で重合してもよい。
本発明におけるポリアリレートのガラス転移温度(Tg)は、250℃以上であり、300℃以上が好ましく、350℃以上がさらに好ましい。前記Tgが250℃未満であると、該ポリアリレートを用いたプラスチック基板を用いてTFT設置のような250℃以上の高温処理を行った際にフィルムが変形し、使用できなくなってしまう。また、前記Tgの上限は特に限定されないが、450℃程度が好ましい。
本発明におけるポリアリレートを合成する場合、界面重縮合法が簡便で好ましい。しかし、典型的な公知の界面重縮合方法は、ビスフェノールAと、テレフタル酸やイソフタル酸とを用いる方法に代表されるようにビスフェノール化合物をアルカリ水溶液に可溶ならしめ、ジカルボン酸クロライドを水非混和性有機溶媒(代表的にはジクロロメタンなど)に可溶ならしめ短時間で混合する方法が取られる。
一方で本発明においてはビスフェノール化合物のアルカリ水溶液に対する溶解度が低い場合がある。また、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライドは水非混和性有機溶媒に対する溶解度が低く、公知の方法では高分子量の一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリアリレートを合成できない場合がある。この場合、予め水、水非混和性有機溶媒、ビスフェノール化合物、ジカルボン酸クロライドをスラリー状混合撹拌しておき、高濃度のアルカリ水溶液を徐々に添加していく方法が高分子量化に有効である。該方法の詳細に関しては後に合成例を挙げて説明する。
本発明におけるポリアリレートの分子量を調節する方法としては、前記した製造方法によらず、重合時に一官能の物質を分子量調節剤として添加して行うことができる。ここでいう分子量調節剤として用いられる一官能物質としては、フェノール、クレゾール、p−tert−ブチルフェノールなどの一価フェノール類;安息香酸クロライド、メタンスルホニルクロライド、フェニルクロロホルメートなどの一価酸クロライド類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ドデシルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールなどの一価のアルコール類;酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、フェニル酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−メトキシフェニル酢酸などの一価のカルボン酸などが挙げられる。
本発明におけるポリアリレートの好ましい分子量は通常重量平均分子量で1万〜50万程度であり、より好ましくは2万〜30万、特に好ましくは、3万〜20万である。分子量が低すぎる場合、フィルム成形が難しくなったり、力学特性が低下する。分子量が高すぎる場合、合成上分子量のコントロールが難しかったり、溶液の粘度が高すぎて取扱いが難しくなる。なお、分子量は対応する粘度を目安にすることもできる。
本発明におけるポリアリレートのカルボキシル価は300μmol/g以下であることが好ましく、さらに好ましくは30μmol/g以下であり、特に好ましくは10μmol/g以下である。カルボキシル価が高すぎると、耐アーク放電性や誘電率など電気特性に影響を与えたり、溶剤に溶解して調製したポリマー溶液の保存安定性にも影響したり、溶液キャスト法により得られるキャストフィルムの表面特性に影響を与える場合がある。樹脂のカルボキシル価は、電位差滴定装置を利用した中和滴定など公知の方法で測定することができる。
本発明におけるポリアリレート中の残留アルカリ金属量およびハロゲン量は、50ppm以下であることが好ましく、特に好ましくは10ppm以下である。残留アルカリ金属量およびハロゲン量が高すぎると、上述した電気特性が低下する傾向にあり、さらにはフィルムの表面特性にも悪影響を与える。また、導電膜、半導体膜等を付与した機能性フィルムの性能低下を引き起こす場合もあり、好ましくない。本発明におけるポリアリレート中の残留アルカリ金属量およびハロゲン量は、イオンクロマトグラフ分析法、原子吸光法、プラズマ発光分光分析法など公知の方法を利用して定量することができる。
また、本発明におけるポリアリレート中に残留する第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩などの触媒の量が200ppm未満であることが好ましく、より好ましくは100ppm未満である。残留する触媒量が高すぎると上述した電気特性が低下する傾向にあり、さらにはフィルムの表面特性にも悪影響を与える。また、導電膜、半導体膜等を付与した機能性フィルムの性能低下を引き起こす場合もあり、好ましくない。本発明におけるポリアリレート中に残留する第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩などの触媒はHPLC、ガスクロマトグラフ法などを利用して定量できる。
さらに本発明におけるポリアリレート中に残留するフェノールモノマーおよびジカルボン酸量は3000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは100ppmである。残留するフェノールモノマーおよびカルボン酸量が高すぎると上述した電気特性が低下する傾向にあり、さらにはフィルムの表面特性にも悪影響を与える。また、導電膜、半導体膜等を付与した機能性フィルムの性能低下を引き起こす場合もあり、好ましくない。例えばフィルム上に透明導電膜を形成する際、成膜時の加熱やプラズマの影響等が原因で、残留するフェノールモノマーやカルボン酸成分等のガスを発生させたり、熱分解等が生じることにより、透明導電膜中に結晶粒塊が生じたり、また「抜け」と呼ばれるようなコーティングされない部分が生じ、透明導電膜の低抵抗化が阻害されるなどの悪影響を及ぼすため好ましくない。ポリアリレートおよびそのフィルム中に残留するフェノールモノマーおよびジカルボン酸量は、HPLCや核磁気共鳴法など公知の方法で分析することができる。
本発明におけるポリアリレートをフィルムまたはシート形状に成形する方法としては公知の方法が採用できるが、溶液流延法が好ましい方法として挙げられる。溶液流延法における流延および乾燥方法については、米国特許2336310号明細書、米国特許2367603号明細書、米国特許2492078号明細書、米国特許2492977号明細書、米国特許2492978号明細書、米国特許2607704号明細書、米国特許2739069号明細書、米国特許2739070号明細書、英国特許640731号、英国特許736892号明細書、特公昭45−4554号公報、特公昭49−5614号公報、特開昭60−176834号公報、特開昭60−203430号公報、特開昭62−115035号公報に記載がある。溶液流延法にて製造する製造装置の例としては特開2002−189126号公報、段落[0061]〜[0068]に記載の製造装置、図1および図2などが例として挙げられるが本発明はこれらに限定されるものではない
前記溶液流延法においては、本発明におけるポリアリレートを溶媒に溶解する。この際に使用される溶媒は、本発明におけるポリアリレートを溶解するものであればいずれの溶媒を用いても構わないが、特に25℃において固形分濃度10質量%以上溶解できる溶媒が好ましい。また、使用する溶媒の沸点は200℃以下のものが好ましく、さらに好ましくは150℃以下のものである。沸点が高い場合、溶媒の乾燥が不十分となり、フィルム中に残存する恐れがある。また、本発明におけるポリアリレートの溶解性を損なわない範囲で貧溶媒を混合することも可能であり、この場合、溶液流延後の剥ぎ取りや乾燥速度の観点で有利になる場合がある。
本発明に用いることができる溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、アニソール、γ−ブチロラクトン、ベンジルアルコール、イソホロン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、酢酸エチル、アセトン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、溶媒は2種以上を混合して用いてもよく、乾燥性と溶解性との両立の観点からは、むしろ混合溶媒が好ましい。また、混合溶媒とすることで、本発明のガスバリアフィルム(本発明におけるプラスチック基板)の透明性を向上させることができる場合もあり好ましい。
溶液流延に用いられる溶液中の樹脂濃度は5〜60質量%が好ましく、さらに好ましくは10〜40質量%であり、特に好ましくは10〜30質量%である。樹脂の濃度が低すぎると粘度が低く厚さの調節が困難となり、高すぎると製膜性が悪くムラが大きくなる。また、溶液流延前に必要に応じてろ過することで本発明のガスバリアフィルム(本発明におけるプラスチック基板)の透過率やフィルム内の不純物を低減させることが可能となる。
溶液流延する方法は特に限定されないが、バーコーター、Tダイ、バー付きTダイ、ドクターブレード、ロールコート、ダイコート等を用いて平板、またはロール上に流延することができる。
溶媒を乾燥する温度は、使用する溶媒の沸点によって異なるが、二段階に分けて乾燥することが好ましい。これによって、光学的に等方性を有したポリアリレートフィルムを得ることができる。第一段階としては30〜100℃で溶媒の質量濃度が10%以下になる、より好ましくは5%以下になるまで乾燥する。次いで、第二段階として平板またはロールからフィルムを剥がし、60℃以上、樹脂のガラス転移温度以下の範囲で乾燥する。
平板またはロールからフィルムを剥がす際、第一段階の乾燥終了直後に剥がしても、いったん冷却してから剥がしてもよい。
本発明におけるプラスチック基板は、溶液流延の際、加熱乾燥が不足すれば残留溶媒量が多くなり、また、極度に加熱しすぎるとポリアリレートの熱分解を引き起こし、残留するフェノールモノマー量が多くなる。さらに急激な加熱乾燥は含有溶媒の急速な気化を生じ、フィルムに気泡等の欠陥を生じさせる。本発明のガスバリアフィルム中に残留する溶媒量は2000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは1000ppm以下、特に好ましくは100ppm以下である。残留する溶媒量が多すぎると、フィルム表面の特性が悪化し表面処理等に悪影響を及ぼしたり、導電膜、半導体膜等を付与した機能性フィルムの性能低下を引き起こす場合があるので、好ましくない。本発明におけるプラスチック基板中に残留する溶媒量はガスクロマトグラフ法など公知の方法を利用して定量することができる。
本発明におけるプラスチック基板は、回転ドラムもしくはバンド上への溶液流延、剥ぎ取り、乾燥を連続的に行い、ロール状に巻取って製造する方法が好ましい。このように、本発明におけるプラスチック基板を機械的に搬送する場合など、フィルムの力学強度が高いことが好ましい。本発明におけるプラスチック基板の好ましい力学強度は、搬送装置にもより一概に言えないが、目安としてフィルムの引張試験から得られる破断応力、破断伸度を用いることができる。好ましい破断応力は50MPa以上、より好ましくは80MPa以上、さらに好ましくは100MPa以上である。破断伸度はサンプル作製条件などによっても変動するため、信頼性が低いが、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上である。
本発明におけるプラスチック基板は延伸されていてもよい。延伸により耐折強度など機械的強度が改善され、取扱性が向上する利点がある。特に延伸方向のオリエンテーションリリースストレス(ASTMD1504、以下「ORS」と略記する)が0.3〜3GPaであるものは機械的強度が改善され好ましい。ORSは延伸フィルムまたはシートに凍結されている、延伸により生じた内部応力である。延伸は、公知の方法が使用できるが、本発明におけるポリアリレートが300℃以上のガラス転移温度を有する場合、単なる加熱のみでの延伸は難しいものとなるため、溶媒を含んだ状態での延伸が可能である。この場合、乾燥途中過程で延伸を行うことが好ましく、例えば溶媒を含んだ状態のガラス転移温度(Tg)より10℃高い温度から、50℃高い温度の間の温度で、ロール一軸延伸法、テンター一軸延伸法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、インフレーション法により延伸できる。延伸倍率は1.1〜3.5倍が好ましく用いられる。
本発明におけるプラスチック基板に用いることのできる本発明におけるポリアリレートは1種類だけであっても2種類以上が混合されていてもよい。また本発明の効果を損なわない範囲で本発明におけるポリアリレート以外のポリマーを含んでいてもよい。また、耐溶剤性、耐熱性、力学強度などの観点から架橋樹脂を添加してもよい。架橋樹脂の種類としては熱硬化性樹脂、放射線硬化樹脂のいずれも種々の公知のものを特に制限なく用いることができる。このように、本発明でいう「ポリアリレートからなるプラスチック基板」には、ポリアリレートのみからなるプラスチック基板だけでなく、ポリアリレートとポリアリレート以外の成分とを本発明の効果を損なわない範囲で含むプラスチック基板も含まれる。
前記熱硬化性樹脂の例としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フラン樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネート樹脂などが挙げられる。
その他、架橋樹脂の架橋反応としては共有結合を形成する反応であれば特に制限なく用いることができ、ポリアルコール化合物とポリイソシアネート化合物とを用いて、ウレタン結合を形成するような室温で反応が進行する系も特に制限なく使用できる。ただし、このような系は製膜前のポットライフが問題になる場合が多く、通常、製膜直前にポリイソシアネート化合物を添加するような2液混合型として用いられる。一方で1液型として用いる場合、架橋反応に携わる官能基を保護しておくことが有効であり、ブロックタイプ硬化剤として市販もされている。市販されているブロックタイプ硬化剤として、三井武田ケミカル(株)製「B−882N」、日本ポリウレタン工業(株)製「コロネート2513」(以上ブロックポリイソシアネート)、三井サイテック(株)製「サイメル303」(メチル化メラミン樹脂)などが知られている。また、エポキシ樹脂の硬化剤として用いることのできるポリカルボン酸を保護した下記B−1のようなブロック化カルボン酸も知られている。
Figure 2007090803
前記放射線硬化樹脂としては、ラジカル硬化性樹脂、カチオン硬化性樹脂に大別される。
前記ラジカル硬化性樹脂の硬化性成分としては分子内に複数個のラジカル重合性基を有する化合物が用いられ、代表的な例として分子内に2〜6個のアクリル酸エステル基を有する多官能アクリレートモノマーと称される化合物やウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートと称される分子内に複数個のアクリル酸エステル基を有する化合物が用いられる。ラジカル硬化性樹脂の代表的な硬化方法としては、電子線を照射する方法、紫外線を照射する方法が挙げられる。通常、紫外線を照射する方法においては紫外線照射によりラジカルを発生する重合開始剤を添加する。なお、加熱によりラジカルを発生する重合開始剤を添加すれば、熱硬化性樹脂として用いることもできる。
前記カチオン硬化性樹脂の硬化性成分としては分子内に複数個のカチオン重合性基を有する化合物が用いられ、代表的な硬化方法として紫外線の照射により酸を発生する光酸発生剤を添加し、紫外線を照射して硬化する方法が挙げられる。カチオン重合性化合物の例としては、エポキシ基などの開環重合性基を含む化合物やビニルエーテル基を含む化合物を挙げることができる。
本発明におけるプラスチック基板は、前記で挙げた熱硬化性樹脂、放射線硬化樹脂のそれぞれ複数種を混合して用いてもよく、熱硬化性樹脂と放射線硬化樹脂を併用してもよい。また、架橋性樹脂と架橋性基を有さないポリマーと混合して用いてもよい。
さらに本発明のガスバリアフィルムに用いられる本発明におけるポリアリレートに架橋性基を導入することも可能である。この際、前記架橋性基はポリアリレートの、ポリマー主鎖末端、ポリマー側鎖、ポリマー主鎖中のいずれの部位に架橋性基を有していてもよい。この場合、前記で挙げた汎用の架橋性樹脂を併用せずに架橋することができる。
本発明におけるプラスチック基板には、金属の酸化物および/または金属の複合酸化物、およびゾルゲル反応により得た金属酸化物を含有させることもできる。この場合、前記で挙げた架橋樹脂と同様に耐熱性および耐溶剤性を付与できる。さらに必要により本発明の効果を損なわない範囲で、本発明におけるプラスチック基板には、可塑剤、染顔料、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、無機微粒子、剥離促進剤、レベリング剤、および潤滑剤などの樹脂改質剤を添加してもよい。
本発明のガスバリアフィルムを液晶表示用途などに使用する場合には、光学的均一性を達成するために本発明におけるプラスチック基板は非晶性ポリマーで構成されていることが好ましい。さらに、レターデーション(Re)や、その波長分散を制御する目的で、樹脂の固有複屈折の符号が異なる樹脂を組み合わせたり、波長分散の大きい(あるいは小さい)樹脂を組み合わせたりすることができる。
以下に本発明ガスバリアフィルムに用いる本発明におけるプラスチック基板のフィルム特性について説明する。
本発明におけるプラスチック基板の23℃・相対湿度60%におけるカール度は−10〜10であることが好ましい。また、前記プラスチック基板の厚さは、5μm〜300μmであることが好ましく、より好ましくは40μm〜200μm、さらに好ましくは50μm〜150μmである。さらに、前記プラスチック基板の厚さのバラツキが、±3%以内であることが好ましい。
前記プラスチック基板の透明度は、80〜99.5%であることが好ましく、より好ましくは90〜99.5%である。また、前記プラスチック基板のヘイズは、0.005〜5%であることが好ましく、より好ましくは0.005〜3%であり、さらに好ましくは0.005〜1%である。さらに、前記プラスチック基板の面内のレターデーション(Re)が、0〜70nmであることが好ましい。
前記プラスチック基板の厚み方向のレターデーション(Rth)が、0〜700nmであることが好ましい。また、前記Reおよび前記Rthのバラツキは、±3%以内であることが好ましい。
また、前記プラスチック基板の残留溶媒量は、1質量%以下であることが好ましい。
前記プラスチック基板の含水率は、1質量%以下であることが好ましい。さらに、前記プラスチック基板の弾性率は、1〜7GPaであることが好ましい。さらに、前記プラスチック基板の伸長率は、10〜70%であることが好ましい。
前記プラスチック基板の抗張力は、5〜500MPaであることが好ましい。また、前記プラスチック基板のTgは250℃以上であることが好ましい。さらに、前記プラスチック基板の熱収縮は、−2〜2%であることが好ましい。
前記プラスチック基板の表面が水に対する接触角は、5〜90°であることが好ましい。また、前記プラスチック基板の輝点は、クロスニコル状態に配置された2枚の偏光板の間に配置された光学フィルムを一方の偏光板側から光を当てて他方の偏光板の側から観察するに当たって、直径0.01mm以上である輝点の数が200個/cm2以下であることが好ましい。
(下塗層)
本発明のガスバリアフィルムには、プラスチック基材とその上に形成する層との接着性を改善するために、これらの間に1層以上の下塗層(接着層)を形成してもよい。プラスチック基材上に下塗層を形成する前に、プラスチック基材上には何らかの表面処理をしてもよい。プラスチック基材には、単一の下塗層を形成する単層法と、2層以上の下塗層を形成する重層法のいずれも適用することができる。
単層法においては、プラスチック基材を膨張させ、下塗層素材と界面混合させることによって良好な接着性を達成している場合が多い。ここで使用する下塗ポリマーとしては、水溶性ポリマー、セルロースアシレート、ラテックスポリマー、水溶性ポリエステルなどが例示される。水溶性ポリマーとしては、ゼラチン、ゼラチン誘導体、カゼイン、寒天、アルギン酸ナトリウム、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体、無水マレイン酸共重合体などであり、セルロースアシレートとしてはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどである。ラテックスポリマーとしては塩化ビニル含有共重合体、塩化ビニリデン含有共重合体、アクリル酸エステル含有共重合体、酢酸ビニル含有共重合体、ブタジエン含有共重合体などが挙げられる。
前記重層法を用いる場合は、第1層としてプラスチック基材によく接着する層(以下、「下塗第1層」と略す)を設け、その上に第2層としてその上に形成する層とよく接着する層(以下、「下塗り第2層」と略す)を塗布する態様を好ましい例として挙げることができる。
重層法における下塗第1層では、例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などの中から選ばれた単量体を出発原料とする共重合体を始めとして、ポリエチレンイミン、エポキシ樹脂、グラフト化ゼラチン、ニトロセルロース等のオリゴマーもしくはポリマーなどを用いることができる(これらについてはE.H.Immergut、Polymer Handbook” IV187-231、Interscience Pub.New
York 1966などに詳しい)。
下塗層には、機能層の透明性などを実質的に損なわない程度に無機または有機の微粒子をマット剤として含有させることができる。無機の微粒子のマット剤としては、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化チタン(TiO2)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどを使用することができる。また、有機の微粒子マット剤としては、ポリメチルメタクリレ−ト、セルロースアセテートプロピオネート、ポリスチレン、米国特許第4、142、894号明細書に記載されている処理液可溶性のもの、米国特許第4、396、706号明細書に記載されているポリマーなどを用いることができる。これらの微粒子マット剤の平均粒子サイズは0.01μm〜10μmのものが好ましい。より好ましくは、0.05μm〜5μmである。また、その含有量は0.5〜600mg/m2が好ましく、さらに好ましくは、1〜400mg/m2である。
下塗層用塗布液は、一般に良く知られた塗布方法、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カ−テンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法、あるいは、米国特許第2、681、294号明細書に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法により塗布することができる。
(プライマー層・無機薄膜層)
本発明のガスバリアフィルムには、バリア層と有機層とからなる積層体と基材フィルムとの間に、プライマー層または無機薄膜層を設置することができる。
プライマー層や無機薄膜層としては、公知のものを設置することができる。前記プライマー層としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等を用いることが可能である。本発明のガスバリアフィルムには、プライマー層として有機無機ハイブリッド層を形成することもできる。無機薄膜層としては無機蒸着層またはゾル−ゲル法による緻密な無機コーティング薄膜を挙げることができる。無機蒸着層としては、シリカ、ジルコニア、アルミナ等の蒸着層を挙げることができる。無機蒸着層は真空蒸着法、スパッタリング法等により形成することができる。
(帯電防止層)
本発明のガスバリアフィルムは、帯電防止層(導電性層)を有することが好ましい。前記帯電防止層は、ガスバリアフィルムの裏面(バリア層と有機層とが形成されていない面)に形成することが特に好ましい。
前記帯電防止層は、ガスバリアフィルムの取扱の際に帯電するのを防ぐ機能を付与するものであり、具体的には、イオン導電性物質や導電性微粒子を含有する層を設けることによって行う。ここでイオン導電性物質とは電気伝導性を示し、電気を運ぶ担体であるイオンを含有する物質のことであるが、例としてはイオン性高分子化合物を挙げることができる。
前記イオン性高分子化合物としては、特公昭49−23828号公報、特公昭49−23827号公報、特公昭47−28937号公報に見られるようなアニオン性高分子化合物;特公昭55−734号公報、特開昭50−54672号公報、特公昭59−14735号公報、特公昭57−18175号公報、特公昭57−18176号公報、特公昭57−56059号公報などに見られるような、主鎖中に解離基を持つアイオネン型ポリマー;特公昭53−13223号公報、特公昭57−15376号公報、特公昭53−45231号公報、特公昭55−145783号公報、特公昭55−65950号公報、特公昭55−67746号公報、特公昭57−11342号公報、特公昭57−19735号公報、特公昭58−56858号公報、特開昭61−27853号公報、特公昭62−9346号公報に見られるような、側鎖中にカチオン性解離基を持つカチオン性ペンダント型ポリマー等を挙げることができる。
これらのうち、好ましいのは導電性物質が微粒子状をしており、前記樹脂中にこれらを微分散し添加したものであって、これらに用いられる好ましい導電性物質として、金属酸化物やこれらの複合酸化物からなる導電性微粒子および特開平9−203810号公報に記載されているようなアイオネン導電性ポリマーあるいは分子間架橋を有する第4級アンモニウムカチオン導電性ポリマー粒子などを含有することが望ましい。好ましい粒子サイズとしては5nm〜10μmの範囲であり、さらに好ましい範囲は用いられる微粒子の種類に依存する。
導電性微粒子である金属酸化物の例としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V25等、あるいはこれらの複合酸化物が好ましく、特にZnO、TiO2およびSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加、TiO2に対してはNb、Ta等の添加、またSnO2に対しては、Sb、Nb、ハロゲン元素等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01〜25mol%の範囲が好ましいが、0.1〜15mol%の範囲が特に好ましい。
また、これらの導電性を有するこれら金属酸化物粉体の体積抵抗率は107Ωcm以下、特に105Ωcm以下であって、1次粒子サイズが100Å〜0.2μmで、高次構造の長径が30nm〜6μmである特定の構造を有する粉体を、帯電防止層に体積分率で0.01%〜20%含んでいることが好ましい。
また、分散性粒状ポリマーとしての架橋型カチオン性導電性ポリマーは、粒子内のカチオン成分を高濃度、高密度に持たせることができる。このため、優れた導電性を有しているばかりでなく、低相対湿度下においても導電性の劣化は見られず、粒子同士も分散状態ではよく分散されているにもかかわらず、塗布後造膜過程において粒子同士の接着性もよいため膜強度も強く、また他の物質(例えばプラスチック基板)にも優れた接着性を有し、耐薬品性に優れているという特徴を有する。
帯電防止層に用いられるこれら架橋型のカチオン性導電性ポリマーである分散性粒状ポリマーは、一般に約10nm〜1000nmの粒子サイズを有しており、好ましくは20nm〜300nmの範囲の粒子サイズを有している。ここで用いる分散性粒状性ポリマーとは、視覚的観察によって透明またはわずかに濁った溶液に見えるが、電子顕微鏡では粒状分散物として見えるポリマーである。下層塗布組成物に上層の膜厚に相当する粒子サイズよりも大きなゴミ(異物)が実質的に含まれない塗布組成物を用いることによって、上層の異物故障を防止することができる。
該微粒子と樹脂との比率は微粒子1質量部に対して、樹脂0.5〜4質量部が密着性の点で好ましく、特に紫外線照射後の密着性では微粒子1質量部に対して、樹脂が1〜2質量部であることが好ましい。さらにまた、有機電子導電性有機化合物も利用できる。前記有機電子導電性有機化合物としては、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフォスファゼンなどである。これらは、酸供与材としてポリスチレンスルホン酸、過塩素酸などとのコンプレックスで好ましく用いられる。
ここで使用される樹脂は、例えばセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、またはセルロースナイトレート等のセルロース誘導体;ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、またはコポリブチレン/テレ/イソフタレート等のポリエステル;ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、またはポリビニルベンザール等のポリビニルアルコール誘導体;ノルボルネン化合物を含有するノルボルネン系ポリマー;ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂もしくはアクリル樹脂とその他樹脂との共重合体を用いることができる。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
この中でセルロース誘導体あるいはアクリル樹脂が好ましく、さらにアクリル樹脂が最も好ましく用いられる。
帯電防止層等の樹脂層に用いられる樹脂としては、重量平均分子量が40万を超え、ガラス転移温度が80〜110℃である前述の熱可塑性樹脂が光学特性および塗布層の面品質の点で好ましい。
ガラス転移温度はJIS K7121に記載の方法にて求めることができる。ここで使用する樹脂は下層で使用している樹脂全体の60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であることが好ましく、必要に応じて活性線硬化性樹脂あるいは熱硬化樹脂を添加することもできる。これらの樹脂はバインダーとして前述の適当な溶剤に溶解した状態で塗設される。
帯電防止層を塗設するための塗布組成物には、次の溶剤が好ましく用いられる。溶剤としては、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の溶媒を適宜混合して使用することができるが特にこれらに限定されるものではない。
これらの溶媒のうち、沸点が低い溶媒は蒸発によって空気中の水分を結露させやすく、調液工程、塗布工程にて塗布組成物中に水分を取り込みやすい。特に、降雨時には外部の湿度上昇の影響を受けやすく・相対湿度65%以上の環境ではその影響が顕著となってくる。特に調液工程で樹脂の溶解時間が長時間となったり、塗布工程で塗布組成物が空気に暴露されている時間が長くなったり、塗布組成物と空気との接触面積が広い場合はその影響は大きくなる。
前記炭化水素類としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール等が挙げられる。
前記ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
前記エステル類としては、例えば、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、乳酸エチル、乳酸メチル等が挙げられる。
前記グリコールエーテル(炭素数1〜4)類としては、例えば、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、またはプロピレングリコールモノ(炭素数1〜4)アルキルエーテルエステル類としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、その他の溶媒として、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。特にこれらに限定されるものではないが、これらを適宜混合した溶媒も好ましく用いられる。
前記塗布組成物は、ドクターコート、エクストルージョンコート、スライドコート、ロールコート、グラビアコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、カーテンコート、押し出しコートあるいは米国特許第2,681,294号明細書に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート方法等により0.1〜10μmの乾燥膜厚となるように塗布することができる。好ましくは通常0.1〜1μmの乾燥膜厚となるように塗布される。
(滑り剤)
本発明のガスバリアフィルムには、滑り剤を用いることができる。滑り剤は、ガスバリアフィルムの最外層に用いることが好ましく、裏面(バリア層と有機層とが形成されていない面)に用いることが特に好ましい。
前記滑り剤としては、例えば、特公昭53−292号公報に開示されているようなポリオルガノシロキサン、米国特許第4、275、146号明細書に開示されているような高級脂肪酸アミド、特公昭58−33541号公報、英国特許第927、446号明細書あるいは特開昭55−126238号公報および特開昭58−90633号公報に開示されているような高級脂肪酸エステル(炭素数10〜24の脂肪酸と炭素数10〜24のアルコールとのエステル)、そして、米国特許第3、933、516号明細書に開示されているような高級脂肪酸金属塩、また、特開昭58−50534号公報に開示されているような、直鎖高級脂肪酸と直鎖高級アルコールのエステル、欧州特許公開第90108115.8号公報に開示されているような分岐アルキル基を含む高級脂肪酸−高級アルコールエステル等が挙げられる。
このうちポリオルガノシロキサンとしては、一般的に知られている、ポリジメチルシロキサンポリジエチルシロキサン等のポリアルキルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等のポリアリールシロキサンのほかに、特公昭53−292号公報、特公昭55−49294号公報、特開昭60−140341号公報等に示されるような、炭素数5以上のアルキル基を持つオルガノポリシロキサン、側鎖にポリオキシアルキレン基を有するアルキルポリシロキサン、側鎖にアルコキシ、ヒドロキシ、水素、カルボキシル、アミノ、メルカプト基を有するようなオルガノポリシロキサン等の変性ポリシロキサンを用いることもできるし、シロキサンユニットを有するブロックコポリマーや、特開昭60−19124号公報記載の化合物を用いることもできる。
このような化合物の具体例を次に示すが、本発明で用いることができる滑り剤はこれらによって制限されるものではない。
(S−1) (CH33SiO−(Si(CH32O)a−Si(CH33
a=5 〜1000
(S−2) (C653SiO−(Si(CH32O)a−Si(CH33
a=5 〜1000
(S−3) (CH33SiO−(Si(C511) (CH3)−O)a−Si(CH3
a=10
(S−4) (CH33SiO−(Si(C1225)(CH3)−O)10−(Si(CH32O)18−Si(CH330
(S−5) (CH33SiO−(Si(CH32O)x−(Si(CH3)((CH23−O(CH2CH2O)10H)−O)y−(Si(CH32O)z−Si(CH33
x+y+z=30
(S−6) (CH33SiO−(Si(CH32O)x−(Si(CH3){(CH23−O(CH2CH(CH3)−O)10(CH2CH2O)1037}O)y−(Si(CH32O)z−Si(CH33
x+y+z=35
また、高級脂肪酸およびその誘導体、高級アルコールおよびその誘導体としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸の多価アルコールエステル等、また、高級脂肪族アルコール、高級脂肪族アルコールのモノアルキルフォスファイト、ジアルキルフォスファイト、トリアルキルフォスファイト、モノアルキルフォスフェート、ジアルキルフォスフェート、トリアルキルフォスフェート、高級脂肪族のアルキルスルホン酸、そのアミド化合物またはその塩等を用いることができる。このような化合物の具体例を次に示すが、本発明で用いることができる滑り剤はこれらによって制限されるものではない。
(S−7) n−C1531COOC3061−n
(S−8) n−C1735COOC3061−n
(S−9) n−C1531COOC50101−n
(S−10) n−C2143COO−(CH27CH(CH3)−C919
(S−11) n−C2143COOC2449−iso
(S−12) n−C1837OCO(CH24COOC4081−n
(S−13) n−C50101 O(CH2CH2O)15
(S−14) n−C40H81OCOCH2CH2COO(CH2CH2O)16
(S−15) n−C2141CONH2
(S−14) 流動パラフィンH
(S−15) カルナバワックス
このような滑り剤を用いることにより、引っかき強度にすぐれ、下塗面でのはじき等の発生のない優れたフィルムが得られる。また、前記滑り剤の含有量は特に限定されないが、その含有量は0.0005〜2g/m2が好ましく、より好ましくは0.001〜1g/m2であり、特に好ましくは0.002〜0.5g/m2である。滑り剤を含む層は、滑り剤を適当な有機溶剤に溶解した塗布液を塗布し、乾燥することにより形成できる。また、滑り剤は、塗布液中に分散物の形で添加することもできる。使用される溶剤としては、水、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エステル類(酢酸、蟻酸、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸などのメチル、エチル、プロピル、ブチルエステルなど)、芳香族炭化水素系(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、アミド系(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドンなど)が好ましい。
前記滑り剤の塗設に用いる塗布液には、皮膜形成能のあるバインダーを用いることもできる。このようなポリマーとしては,公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂、反応性樹脂、およびこれらの混合物、ゼラチンなどの親水性バインダーを挙げることができる。
滑り剤を含有する層の滑り性能は、静摩擦係数が0.30以下であることが好ましく、さらには0.25以下、特には0.13以下であることが好ましい。接触する相手材質との静摩擦係数が小さければ、傷などの防止に役立つ。相手材質との静摩擦係数も0.30以下が好ましく、さらには0.25以下、特には0.13以下が好ましい。また、滑り剤を含有する層は動摩擦係数が0.30以下が好ましく、さらには0.25以下、特には0.15以下が好ましい。また、接触する相手材質との動摩擦係数も0.3以下が好ましく、さらには0.25以下、特には0.15以下が好ましい。
(マット剤)
本発明のガスバリアフィルムには、マット剤を用いることができる。マット剤はガスバリアフィルムの最外層に用いることが好ましく、裏面(バリア層と有機層とが形成されていない面)に用いることが特に好ましい。また、マット剤は易滑性や高湿度下での耐接着性の改良のために使用することも好ましい。
これらの目的でマット剤を用いる場合、表面の突起物の平均高さは0.005〜10μmが好ましく、より好ましくは0.01〜5μmである。また、その突起物は表面に多数ある程よいが、必要以上に多いとへイズとなり問題である。例えば球形、不定形マット剤で突起物を形成する場合はその含有量が0.5〜600mg/m2であることが好ましく、より好ましいのは1〜400mg/m2である。この時、使用されるマット剤としては、前記のフィルム中に添加される微粒子も利用できる。その組成は特に限定されず、無機物でも有機物でもよく、2種類以上の混合物でもよい。
前記マット剤を構成する無機化合物としては、例えば、硫酸バリウム、マンガンコロイド、二酸化チタン、硫酸ストロンチウムバリウム、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウムなどの無機物の微粉末が挙げられ、さらに、湿式法やケイ酸のゲル化より得られる合成シリカ等の二酸化ケイ素やチタンスラッグと硫酸とから生成する二酸化チタン(ルチル型やアナタース型)等が挙げられる。また、粒子サイズの比較的大きい、例えば20μm以上の無機物から粉砕した後、分級(振動ろ過、風力分級など)することによって得られたものでもよい。その他、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプピルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレンカーボネート、アクリルスチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリオレフィン系粉末、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、あるいはポリ弗化エチレン系樹脂、澱粉等の有機高分子化合物の粉砕分級物も挙げられる。あるいはまた懸濁重合法で合成した高分子化合物、スプレードライ法あるいは分散法等により球型にした高分子化合物、または無機化合物を用いることもできる。また、同様な材質でより粒子サイズの大きな0.1〜10μmの粒子および/または前記の微粒子を添加して防眩層とすることもできる。0.5〜20質量%の微粒子を添加することが好ましい。これらの微粒子としては、好ましくはシリカなどの二酸化ケイ素、例えば富士シリシア化学(株)製のサイリシアや日本シリカ(株)製のNipsil Eなどがある。
マット剤を構成する微粒子としては、表面に炭素数2〜20のアルキル基またはアリール基を有する微粒子を用いることも好ましい。アルキル基は炭素数4〜12のものがより好ましく、炭素数6〜10のものがさらに好ましい。炭素数が小さい程、分散性に優れ、炭素数が大きい程、ドープと混合した時の再凝集が少ない。
ここで使用される表面に炭素数2〜20のアルキル基を有する微粒子やアリール基を有する微粒子の材料のうち、無機化合物の例としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムを挙げることができる。この中でも、二酸化ケイ素、二酸化チタンおよび酸化ジルコニウムが好ましく、特にケイ素原子を含有する化合物、特に二酸化ケイ素が好ましい。二酸化ケイ素の微粒子は、例えば、「アエロジル130」、「アエロジル200」、「アエロジル300」(以上日本アエロジル(株)製)などの商品名で市販されている。また表面がシリコーンオイルで修飾された二酸化ケイ素微粒子、球状単分散二酸化ケイ素の微粒子も好ましく用いられる。
表面に炭素数2〜20のアルキル基を有する無機化合物の微粒子は、例えば、前記、二酸化ケイ素の微粒子をオクチルシランで処理することにより得ることができる。また、表面にオクチル基を有する「アエロジルR805」(日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
表面にフェニル基を有する無機化合物の微粒子は、例えば、前記、二酸化ケイ素の微粒子をトリクロロフェニルシランで処理することにより得ることができる。
前記表面に炭素数2〜20のアルキル基を有する微粒子やフェニル基を有する微粒子の材料のうち、ポリマーの例としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂およびアクリル樹脂を挙げることができ、特にポリメチルメタクリレートが好ましい。前述の様に、ケイ素を含有する化合物であることが好ましいが、特に二酸化ケイ素または三次元の網状構造を有するシリコーン樹脂であることが好ましく、二酸化ケイ素が最も好ましい。
これらのマット剤として用いられる微粒子は、一般には添加する層の質量に対して0.005〜0.3質量%で使用することが好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.1質量%である。これらの微粒子を用いることにより、含有される粒子サイズ10μm以上の凝集粒子が10個/m2以下の極めて微粒子の分散性に優れたフィルムを得ることができる。これらの詳細は、特開2001−2788号公報に記載されている。
(界面活性剤)
本発明のガスバリアフィルムには、界面活性剤を用いることができる。
界面活性剤はその使用目的によって、分散剤、塗布剤、濡れ剤、帯電防止剤などに分類されるが、以下に述べる界面活性剤を適宜使用することで、それらの目的は達成できる。界面活性剤としては、ノニオン性、イオン性(アニオン、カチオン、ベタイン)のいずれも使用することができる。さらにフッ素系界面活性剤も、有機溶媒中での塗布剤や帯電防止剤として好ましく用いられる。界面活性剤が使用される層は、特に制限されない。
また、本発明のガスバリアフィルムを光学用途で利用する場合は、前記界面活性剤を下塗層、中間層、配向制御層、屈折率制御層、保護層、防汚層、粘着層、バック下塗層、バック層などに用いることができる。その使用量は目的を達成するために必要な量であれば特に限定されないが、一般には添加する層の質量に対して、0.0001〜5質量%が好ましく、さらには0.0005〜2質量%が好ましい。その場合の塗設量は、1m2当り0.02〜1000mgが好ましく、0.05〜200mgが好ましい。
好ましいノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリグリシジルやソルビタンをノニオン性親水性基とする界面活性剤が挙げられ、具体的にはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステルを挙げることができる。
前記アニオン系界面活性剤としてはカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩であり、代表的なものとしては脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α−スルホン化脂肪酸塩、N−メチル−N−オレイルタウリン、石油スルホン酸塩、アルキル硫酸塩、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンスチレン化フェニールエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物などが挙げられる。
前記カチオン系界面活性剤としてはアミン塩、4級アンモニウム塩、ピリジュム塩などを挙げることができ、第1〜第3脂肪アミン塩、第4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩、アルキルイミダゾリウム塩など)を挙げることができる。
前記両性(ベタイン)系界面活性剤としてはカルボキシベタイン、スルホベタインなどであり、N−トリアルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタインなどを挙げることができる。
これらの界面活性剤は、界面活性剤の応用(幸書房、刈米孝夫著、昭和55年9月1日発行)に詳しく記載されている。本発明において好適に用いられる界面活性剤の使用量は特に限定されず、目的とする界面活性特性が得られる量であればよい。以下に界面活性剤の具体例を記すが、本発明で用いることができる界面活性剤はこれらに限定されるものではない(ここで、「−C64−」はフェニレン基を表わす)。
WA−1 :C1225(OCH2CH210OH
WA−2 :C919−C64−(OCH2CH212OH
WA−3 :ポリ(重合度20)オキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル
WA−4 :ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
WA−5 :トリ(イソプロピル)ナフタレンスルホン酸ナトリウム
WA−6 :ドデシル硫酸ナトリウム
WA−7 :α−スルファコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル ナトリウム塩
WA−8 :セチルトリメチルアンモニウム クロライド
WA−9 :C1123CONHCH2CH2N(+)(CH32−CH2COO(−)
WA−10 :C817SO2N(C37)(CH2CH2O)16
WA−11 :C817SO2N(C37)CH2COOK
WA−12 :C715COONH4
WA−13 :C817SO3
WA−14 :C817SO2N(C37)(CH2CH2O)4(CH24SO3Na
WA−15 :C817SO2N(C37)−(CH23−N(+)(CH33・I(−)
WA−16 :C817SO2N(C37)CH2CH2CH2N(+)(CH32−CH2COO(−)
WA−17 :C817CH2CH2O(CH2CH2O)16
WA−18 :C817CH2CH2O(CH23−N(+)(CH33・I(−)
WA−19 :H(CF28CH2CH2OCOCH2CH(SO3Na)COOCH2CH2CH2CH2(CF28
WA−20 :H(CF26CH2CH2O(CH2CH2O)16
WA−21 :H(CF28CH2CH2O(CH23−N(+)(CH33・I(−)
WA−22 :H(CF28CH2CH2OCOCH2CH(SO3K)COOCH2CH2CH2CH2817
WA−23 :C917−C64SO2N(C37)(CH2CH2O)16
WA−24 :C917−C64CSO2N(C37)−(CH23−N(+)(CH33・I(−)
(水吸収剤)
本発明では、以下に示すような水吸収剤を併用することが特に好ましい。前記水吸収剤は、アルカリ土類金属を中心に、水吸収機能を有する化合物から選択することができる。例えば、BaO、SrO、CaOおよびMgOなどが挙げられる。さらに、Ti、Mg、Ba、Ca等の金属元素から選択することもできる。これらの吸収剤粒子の粒子サイズは、好ましくは100nm以下であり、50nm以下であるのがさらに好ましい。粒子サイズは公知の各種方法で調整することができる。
これらの水吸収剤は、前述の無機物からなるバリア層と同様に真空下蒸着法等を使って独立した層として形成してもよい。水吸収剤で層を形成する場合、その厚みとしては1nm〜100nmが好ましく、1nm〜10nmがより好ましい。層の形成位置は、基板フィルムと積層体(バリア層・有機層)の間、積層体の最上層、積層体の間などを選択することができる。また、これらの無機化合物は、積層体中の有機層あるいは無機物からなるバリア層中に添加されてもよい。バリア層に添加する場合には共蒸着法を用いることが好ましい。
(透明ハードコート層)
本発明のガスバリアフィルムには、透明ハードコート層を設けることができる。前記透明ハードコート層としては活性線硬化性樹脂(以下、活性線硬化性樹脂を含む層を活性線硬化性樹脂層ということがある)あるいは熱硬化樹脂が好ましく用いられる。
前記活性線硬化性樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応などを経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。前記活性線硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
前記紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物にさらに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができ、例えば特開昭59−151110号公報に記載されている。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができ、例えば特開昭59−151112号公報に記載されている。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させたものを挙げることができ、例えば、特開平1−105738号公報に記載されている。
前記光反応開始剤としては、ベンゾイン誘導体、オキシムケトン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体等のうちから、1種もしくは2種以上を選択して使用することができる。
また、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。これらの樹脂は通常公知の光増感剤と共に使用される。
また前記光反応開始剤も光増感剤としても使用できる。具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等およびこれらの誘導体を挙げることができる。また、エポキシアクリレート系の光反応剤の使用に際しては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。
塗布乾燥後に揮発する溶媒成分を除いた紫外線硬化性樹脂組成物に含まれる光反応開始剤、または光増感剤は該組成物の2.5〜6質量%であることが特に好ましい。2.5%未満では樹脂フィルムから溶出する可塑剤および/または紫外線吸収剤によって硬化阻害を受け、耐擦傷性が低下し、逆に6質量%を超えると相対的に紫外線硬化性樹脂成分が減るため逆に耐擦傷性が低下すること、塗布性が悪化するなどのため塗膜の面品質を悪くすることがある。
前記活性線硬化樹脂層に添加することができる樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、酢酸ビニル、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることができる。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。
前記活性線硬化性樹脂層の塗布組成物の固形分濃度は10〜95質量%であることが好ましく、塗布方法により適当な濃度が選ばれる。
活性線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化皮膜層を形成するための光源としては、紫外線を発生する光源であれば何れでも使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10000mJ/cm2であればよく、好ましくは50〜2000mJ/cm2である。近紫外線領域から可視光線領域にかけてはその領域に吸収極大のある増感剤を用いることによって使用できる。紫外線照射は1回でもよく、2回以上でもよい。
活性線硬化性樹脂層を塗設する際の溶媒として前述の樹脂層を塗設する溶媒、例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の溶媒の中から適宜選択し、あるいは混合されて利用できる。好ましくは、プロピレングリコールモノ(炭素数1〜4)アルキルエーテルまたはプロピレングリコールモノ(炭素数1〜4)アルキルエーテルエステルを5質量%以上、さらに好ましくは5〜80質量%含有する溶媒が用いられる。
活性線硬化性樹脂層組成物塗布液の塗布装置としては、グラビアコーター、スピナーコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、リバースコーター、押出コーター、エアードクターコーター等公知の装置を用いることができる。塗布量はウェット膜厚で0.1μm〜200μmが適当で、好ましくは、0.5μm〜100μmである。塗布速度は好ましくは5〜200m/minで行われる。膜厚が厚い場合は、2回以上に分割して塗布し透明ハードコート層としてもよい。紫外線硬化性樹脂層組成物は塗布乾燥された後、紫外線を光源より照射するが、照射時間は0.5秒〜5分がよく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率、作業効率とから3秒間〜2分間がより好ましい。
得られるハードコート層の乾燥時の膜厚は、0.2〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜50μmであり、特に好ましくは2〜45μmである。
このような被膜層には滑り性を付与するために、前述の無機あるいは有機の微粒子を加えることもできる。また、前述したマット剤を利用することもできる。さらに、前述したように帯電防止層等の樹脂層の上にこれら活性線硬化性樹脂層を設けることもできる。帯電防止層あるいは透明ハードコート層はそれぞれ単独でもしくは積層して設けることができる。具体的には、特開平6−123806号公報、特開平9−113728号公報、特開平9−203810号公報等の帯電防止付き光学フィルム、偏光板保護フィルム、セルロースアシレートフィルム等のどちらかの面に直接もしくは下引き層を介して設けることができる。
(反射防止層)
本発明のガスバリアフィルムには、反射防止層を設けることができる。
前記反射防止層としては、単層からなるものや多層からなるもの等各種知られているが、多層のものとしては高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した構造のものが一般的である。
前記反射防止層構成の例としては、プラスチック基材側から高屈折率層/低屈折率層の2層を順に積層したものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(透明基材あるいはハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層したもの等があり、さらに多くの反射防止層を積層するものも提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性などから、ハードコート層を有する基材上に、高屈折率層/中屈折率層/低屈折率層を順に積層したものが好ましい。
基材面に(中屈折率層を設ける場合もある)高屈折率層、空気に向かって低屈折率層を順に積層し、高屈折率層および低屈折率層の光学膜厚光の波長に対しある値に設定することにより光学干渉層を作り、反射防止積層体としたものが反射防止層としては特に好ましい。屈折率と膜厚とは、分光反射率の測定より計算して算出し得る。
屈折率の高低はそこに含まれる金属あるいは化合物によってほぼ決まり、例えばTiは高く、Siは低く、Fを含有する化合物はさらに低く、このような組み合わせによって屈折率が設定される。
透明基材上に複数の層を逐次積層して反射防止層を作製するには、チタン、ジルコニウム等の金属アルコキシドおよびその加水分解物から選ばれる化合物、活性エネルギー線反応性化合物および有機溶媒を含有する組成物を塗布し、活性エネルギー線を照射して高屈折率層を形成し、さらにこの上に、低屈折物質および有機溶媒を含有する低屈折率層組成物を塗布して低屈折率塗膜とした後に、活性エネルギーを付与して低屈折率層を形成する方法を採用することができる。このとき、高屈折率層と低屈折率層との間に中屈折層を設けてもよい。
好ましい高屈折率層は、活性エネルギー線反応性基を有しない金属アルコキシドおよびその加水分解物から選ばれる少なくとも一つと、活性エネルギー線反応性の金属アルコキシド化合物、好ましくは活性エネルギー線反応性化合物を含有する塗布液を塗設後、塗膜に活性エネルギー線を照射して任意の屈折率に調整することにより形成することができる。
高屈折率層に使用される金属アルコキシドおよびその部分加水分解物から選ばれる少なくとも一つの化合物、および後述する一般式(II)の活性エネルギー線反応性金属アルコキシド化合物の金属として、Al、Si、Ti、V、Ni、Cu、Zn、Y、Ga、Ge、Zr、In、Sn、Sb、Sr、La、Ta、Tl、W、CeおよびNdを挙げることができる。活性エネルギー線反応性金属アルコキシド化合物の金属化合物は、特に紫外線照射により、これらを含有する層の屈折率を変化させるのに役立つ。好ましい金属は、Al、Si、Ti、V、Zn、Y、Zr、In、Sn、Sr、Ta、Tl、WおよびCeであり、特に屈折率を変化させ易い好ましい金属はTi、Zr、Tl、In(In−Sn錯体として)、Sr(Sr−TiO2錯体として)である。Tiの場合、光に反応することは知られているが、Ti化合物を含む層の屈折率を光により変化させることについては知られていない。
活性エネルギー線反応性基を有しない金属アルコキシドとしては、炭素原子数1〜10のものが好ましく、炭素原子数1〜4のものがより好ましい。また金属アルコキシドの加水分解物はアルコキシド基が加水分解を受けて−金属原子−酸素原子−金属原子−のように反応し、架橋構造を作り、硬化した層を形成する。
活性エネルギー線反応性基を有しない金属アルコキシドの例として;Alのアルコキシドとしては、Al(O−CH33、Al(OC253、Al(O−i−C373、Al(O−n−C493;Siの例としては、Si(OCH34、Si(OC254、Si(O−i−C374、Si(O−tert−C494;Tiの例としては、Ti(OCH34、Ti(OC254、Ti(O−n−C374、Ti(O−i−C374、Ti(O−n−C494、Ti(O−n−C374の2〜10量体、Ti(O−i−C374の2〜10量体、Ti(O−n−C494の2〜10量体、Vの例としては、VO(OC253;Znの例としては、Zn(OC252;Yの例としてはY(OC493;Zrの例としては、Zr(OCH34、Zr(OC254、Zr(O−n−C374、Zr(O−i−C374、Zr(O−i−C494、Zr(O−n−C494の2〜10量体;Inの例としては、In(O−n−C493;Snの例としては、Sn(O−n−C494、Taの例としてはTa(OCH35、Ta(O−n−C375、Ta(O−i−C375、Ta(O−n−C495;Wの例としては、W(OC256;Ceの例としては、Ce(OC373等が挙げられる。これらを単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。中でも、Ti(O−n−C374、Ti(O−i−C374、Ti(O−n−C494、Ti(O−n−C374の2〜10量体、Ti(O−n−C494の2〜10量体;Zr(O−i−C374、Zr(O−n−C494;Si(OC254、Si(O−i−C374が特に好ましい。
前記金属アルコキシドは加水分解(部分または完全加水分解)させてから使用してもよい。酸性触媒または塩基性触媒の存在下に例えば前記の金属アルコキシドを有機溶媒中で加水分解することによって加水分解物を得ることができる。この酸性触媒としては、例えば硝酸、塩酸等の鉱酸やシュウ酸、酢酸等の有機酸がよく、また塩基性触媒としては、例えばアンモニア等が挙げられる。
前記金属アルコキシド化合物を含む層(高屈折率層)は、金属アルコキシド自身が自己縮合して架橋し網状結合するものである。その反応を促進するために触媒や硬化剤を使用することができ、それらには金属キレート化合物、有機カルボン酸塩等の有機金属化合物や、アミノ基を有する有機ケイ素化合物、光酸発生剤等がある。これらの触媒または硬化剤の中で特に好ましいのは、アルミキレート化合物と光による酸発生剤(光酸発生剤)であり、アルミキレート化合物の例としてはエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等であり、他の光酸発生剤の例としてはベンジルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスフェートやその他のホスホニウム塩やトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスフェートの塩等を挙げることができる。
使用する活性エネルギー線反応性基を有しない金属アルコキシドおよび/またはその加水分解物を含む塗布組成物には、塗布液の保存安定化のためにβ−ジケトンと反応させてキレート化合物を添加することができ、それによって安定な塗布組成物とすることができる。
高屈折率層に好ましく使用される活性エネルギー線反応性化合物は、重合可能なビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソプロペニル基、エポキシ基等の重合性基を二つ以上有するもので、活性エネルギー線照射により架橋構造または網目構造を形成するものが好ましい。これらの活性基のうちアクリロイル基、メタクリロイル基またはエポキシ基が重合速度、反応性の点から好ましく、例えば、特開昭59−151110号、特開昭59−151112号各公報などに記載されている。なかでも、多官能モノマーまたはオリゴマーがより好ましい。
前記活性エネルギー線反応性化合物としては、活性エネルギー線反応性エポキシ樹脂も好ましく用いられる。前記活性エネルギー線反応性エポキシ樹脂としては、芳香族エポキシ化合物(多価フェノールのポリグリシジルエーテル)が好ましい。活性エネルギー線反応性化合物エポキシ樹脂は、エポキシ基を分子内に2つ以上有するもの以外に、モノエポキサイドも所望の性能に応じて配合して使用することができる。活性エネルギー線反応性化合物エポキシ樹脂はラジカル重合によるのではなく、カチオン重合により重合、架橋構造または網目構造を形成する。ラジカル重合と異なり反応系中の酸素に影響を受けないため好ましい活性エネルギー線反応性樹脂である。
また、特開昭50−151996号公報、特開昭50−158680号公報等に記載の芳香族ハロニウム塩、特開昭50−151997号公報、特開昭52−30899号公報、特開昭59−55420号公報、特開昭55−125105号公報等に記載のVIA族芳香族オニウム塩、特開昭56−8428号公報、特開昭56−149402号公報、特開昭57−192429号公報等に記載のオキソスルホニウム塩、特公昭49−17040号公報等に記載の芳香族ジアゾニウム塩、米国特許第4,139,655号明細書等に記載のチオピリリウム塩等が好ましい。また、アルミニウム錯体や光分解性ケイ素化合物系重合開始剤等を挙げることができる。前記カチオン重合開始剤と、ベンゾフェノン、ベンゾインイソプロピルエーテル、チオキサントンなどの光増感剤を併用することができる。
活性エネルギー線反応性の金属アルコキシドの具体的例としては、ビニルトリメトキシチタン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)チタン、ジビニロキジメトキシチタン、グリシジルオキシエチルトリエトキシチタン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリ−n−プロピルチタン、γ−メタクリロイルオキシ−n−プロピルトリ−n−プロピルチタン、ジ(γ−アクリロイルオキシ−n−プロピル)ジ−n−プロピルチタン、アクリロイルオキシジメトキシエチルチタン、ビニルトリメトキシジルコン、ジビニロキジメトキシジルコン、アクリロイルオキシエチルトリエトキシジルコン、γ−アクリロイルオキシ−n−プロピルトリ−n−プロピルジルコン、γ−メタクリロイルオキシ−n−プロピルトリ−n−プロピルジルコン、ジ(γ−アクリロイルオキシ−n−プロピル)ジ−n−プロピルジルコン、アクリロイルオキシジメトキシエチルジルコン、ビニルジメトキシタリウム、ビニルジ(β−メトキシ−エトキシ)タリウム、ジビニロキシメトキシタリウム、アクリロイルオキシエチルジエトキシタリウム、γ−アクリロイルオキシ−n−プロピルジ−n−プロピルタリウム、γ−メタクリロイルオキシ−n−プロピルジ−n−プロピルタリウム、ジ(γ−アクリロイルオキシ−n−プロピル)−n−プロピルタリウム、アクリロイルオキシメトキシエチルタリウム、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、ジビニロキジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリアルコキシシラン、アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、グリシジルオキシエチルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシ−n−プロピルトリ−n−プロピルシラン、γ−メタクリロイルオキシ−n−プロピルトリ−n−プロピルシラン、ジ(γ−アクリロイルオキシ−n−プロピル)ジ−n−プロピルシラン、アクリロイルオキシジメトキシエチルシラン等を挙げることができる。
高屈折率層に使用する活性エネルギー線反応性基と、好ましく使用される活性エネルギー線反応性化合物の反応基とに対する活性エネルギー線による光重合の挙動はほとんど変わりなく、前述の活性エネルギー線化合物の光増感剤や光開始剤などは同様なものが用いられる。
活性エネルギー線は、化合物を活性させるエネルギー源であれば制限なく使用することができる。例えば、紫外線、電子線、γ線等を挙げることができ、紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られるという点で紫外線が好ましい。紫外線反応性化合物を光重合させる紫外線の光源としては、紫外線を発生する光源であれば何れでも使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプまたはシンクロトロン放射光等も用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は50mJ/m2以上、好ましくは100mJ/cm2以上、さらに400mJ/cm2以上が好ましい。紫外線は多層の反射防止層を1層ずつ照射してもよいし、積層後照射してもよい。生産性の点から、多層を積層後、紫外線を照射することが好ましい。またこの際には酸素濃度が0.5%以下の条件で行うのが効率的であり、硬化速度の点で好ましい。
また、電子線も同様に使用できる。電子線としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線を挙げることができる。
前記低屈折率層には、層の屈折率を低下させるために、通常は下記のフッ素原子あるいはケイ素原子を含有する低屈折率物質が含まれる。前記低屈折率物質としては、フッ素含有樹脂、シリケートオリゴマーから形成される化合物、およびSiO2ゾルと反応性有機ケイ素化合物とから形成される化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物が挙げられ、特に特開平7−126552号公報、特開平7−188582号公報、特開平8−48935号公報、特開平8−100136号公報、特開平9−220791号公報、特開平9−272169号公報等に記載されている化合物が好ましく用いられる。
好ましく使用し得るフッ素含有樹脂としては、フッ素含有不飽和エチレン性単量体成分を主として含有する重合物およびフッ素含有エポキシ化合物を挙げることができる。
フッ素含有不飽和エチレン性単量体としては、含フッ素アルケン、含フッ素アクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステル、含フッ素ビニルエステル、含フッ素ビニルエーテル等を挙げることができる。例えば、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、トリフルオロプロピレン、ヘプタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキセン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−オクテン、4−エトキシ−1,1,1−トリフルオロ−3−ブテン−2−オン、ペンタデカフルオロオクチルアクリレート、テトラフルオロ−3−(ペンタフルオロエトキシ)プロピルアクリレート、テトラフルオロ−3−トリフルオロメトキシプロピルアクリレート、ウンデカフルオロヘキシルアクリレート、ノナフルオロペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ペンタフルオロピロピルアクリレート、2−ヘプタフルオロブトキシエチルアクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブトキシアクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、2−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エチルアクリレート、トリフルオロイソプロピルメタクリレート、(2,2,2−トリフルオロ−1−メチル)エチルメタクリレート、3−トリフルオロメチル−4,4,4−トリフルオロブチルアクリレート、1−メチル−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアクリレート、1−メチル−2,2,3,3,4,4,4−ヘプタウルオロブチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、ペンタフルオロプロピルアクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルアクリレート、ノナフルオロペンチルアクリレート、ウンデカフルオロヘキシルアクリレート、トリデカフルオロヘプチルアクリレート、ペンタデカフルオロオクチルアクリレート、トリデカフルオロオクチルアクリレート、ノナデカフルオロデシルアクリレート、ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、ヘキサフルオロブチルアクリレート(以上のアクリレートはメタクリレートあるいはα−フルオロアクリレートであってもよい)、ビニルトリフルオロアセテート、ビニル−2,2,2−トリフルオロプロピオネート、ビニル−3,3,3,2,2−ヘプタブチレート、2,2,2−トリフルオロエチルビニルエーテル、1−(トリフルオロメチル)エテニルアセテート、アリルトリフルオロアセテート、アリル−1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル、アリル−1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルエーテル、エチル−4,4,4−トリフルオロクロトネート、イソプロピル−2,2,2−トリフルオロエチルフマレート、イソプロピル−ペンタフルオロプロピルフマレート、イソプロピル−2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルフマレート、イソプロピル−2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナプロピルペンチルフマレート、イソプロピル−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロヘキシルフマレート、イソプロピル−トリデカフルオロヘプチルフマレート、イソプロピル−ペンタデカフルオロオクチルフマレート、イソプロピル−トリデカフルオロオクチルフマレート、イソプロピル−ノナデカフルオロデシルフマレート、イソプロピル−ヘプタデカフルオロデシルフマレート、イソプロピル−2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルフマレート、イソプロピル−3−トリフルオロメチル−4,4,4−トリフルオロブチルフマレート、イソプロピル−1−メチル−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルフマレート、イソプロピル−1−メチル−ヘプタフルオロオクチルフマレート、tert−ブチル−ペンチルフルオロプロピルフマレート、tert−ブチル−ヘプタフルオロブチルフマレート等の含フッ素不飽和エチレン性単量体を挙げることができるが、本発明で用いることができる化合物はこれらに限定されない。また、共重合相手の単量体はフッ素を含有しても、含有していなくてもよい。
前記フッ素含有単量体と共重合し得る単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、酢酸ビニル、ビニルエチルエーテル、ビニルエチルケトン、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチル−α−フルオロアクリレート、エチル−α−フルオロアクリレート、プロピル−α−フルオロアクリレート、ブチル−α−フルオロアクリレート、シクロヘキシル−α−フルオロアクリレート、ヘキシル−α−フルオロアクリレート、ベンジル−α−フルオロアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、α−フルオロアクリル酸、スチレン、スチレンスルホン酸等を挙げることができるが、本発明で用いることができる単量体はこれらに限定されない。
前記フッ素含有エチレン性不飽和単量体のホモポリマーの屈折率は、ほぼ1.33〜1.42の範囲にあり、また共重合し得るフッ素を含有しない単量体のホモポリマーの屈折率は、1.44以上である。これらを任意の割合で共重合して目的の屈折率のフッ素含有樹脂として用いることができる。また、本技術のフッ素含有樹脂とフッ素を含まない樹脂とを任意の割合で混合して目的の屈折率のものとして使用してもよいが、ここでは低屈折率物質のフッ素含有量は50質量%以上であることが好ましく、種類によって異なるが特に好ましくは60〜90質量%である。フッ素含有重合体の場合は、フッ素含有率がこのような範囲にあると有機溶媒に対して良好な溶解性を示すため加工し易いばかりでなく、下の基体や層に対する接着性が優れ、高い透明性と低い屈折率の層を得ることができる。
使用する含フッ素のアルケン、アクリレート、ビニルエステルあるいはビニルエーテル等を重合させる重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤を用いることができる。前記ラジカル重合開始剤の具体的な例としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスバレロニトリル等のアゾ系ラジカル重合開始剤;過酸化ベンゾイル、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド等の有機過酸化物系ラジカル重合開始剤;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の無機系ラジカル重合開始剤;過酸化水素−硫酸第1鉄アンモニウム、過硫酸アンモニウム−メタ亜硫酸ナトリウム等のレドックス系重合開始剤等の各種ラジカル重合開始剤等を挙げることができ、これらを用いて溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合または放射線重合等の公知のラジカル重合をすることができる。この際、反応温度は10〜100℃、反応時間は1〜100時間であることが好ましい。このようにして得られるフッ素含有樹脂の数平均分子量は1000〜300000であることが望ましい。フッ素含有樹脂としてのフッ素含有エポキシ樹脂は、例えば下記のようなエポキシ化合物を常法で反応させることによって得ることができる。
フッ素含有エポキシ化合物としては、フッ素系アルコールのモノ,ジ、トリさらにはオリゴグリシジルエーテルが好ましい。中でも含フッ素アルカン末端ジオールグリシジルエーテルとしては例えば、2,2,3,3−テトラフルオロ−1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等を挙げることができる。これらの他にフッ素を含有しないエポキシ化合物を屈折率があまり上がらない程度に少量使用してもよい。ここで使用するフッ素含有エポキシ化合物の構造には制限はないが、屈折率を高めるようなベンゼン核を有するエポキシ化合物や脂環式のエポキシ化合物の使用は少ない方がよい。
別の好ましい低屈折率物質としては、シリケートオリゴマーから形成される化合物を挙げることができる。シリケートオリゴマーから形成される化合物に使用するシリケートオリゴマーとしては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロピオキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン、テトラ−2,2,2−トリフルオロエトキシシラン、テトラ−2−フルオロエトキシシラン、テトラ−2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロピオキシシラン、テトラ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピオキシシラン、テトラ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロピオキシシラン、テトラ−1,3−ジフルオロ−2−プロピオキシシラン、テトラ−2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブトキシシラン、テトラ−2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−1−ブトキシシラン、テトラシクロヘキシルオキシシランまたはテトラフェノキシシラン等を挙げることができ、これらを加水分解することによりシリケートオリゴマーが得られる。
前記のようにテトラアルコキシシランに触媒、水を添加して得られる加水分解物に溶媒を配合し、次いで硬化触媒と水を添加する等の方法により硬化した加水分解物が得られる。かかる溶媒としては、メタノール、エタノールを1種または2種使用するのが安価であること、および得られる皮膜の特性が優れ硬度が良好であることから好ましい。イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、オクタノール等も用いることができるが、得られた皮膜の硬度が低くなる傾向にある。溶媒量は部分加水分解物100質量部に対して50〜400質量部、好ましくは100〜250質量部である。硬化触媒としては、酸、アルカリ、有機金属、金属アルコキシド等を挙げることができるが、酸、特に酢酸、マレイン酸、シュウ酸、フマル酸等が好ましく用いられる。シリケートオリゴマー中のSiO2含有量は1〜100%、好ましくは10〜99%であることが望まれる。このようなSiO2含有量が1%未満では耐久性の向上が見られなくなり、本技術の効果を発揮しない。
これらのシリケートオリゴマーからケイ素層を形成させる方法については特に制限されないが、例えばシリケートオリゴマーを光学フィルムの光学性能を阻害しない溶媒、例えばアルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ、メチルグリコールアセテート、メトキシブチルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチレンクロライド、トルエン、キシレン、ミネラムスピリット、クレゾール、キシレノール、フフラール等であり、これらでシリケートオリゴマーを希釈し、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーター、リバースコーター、リップコーター等、公知の装置により基材に塗設、加熱処理すればよい。
さらに別の好ましい低屈折率物質として、SiO2ゾルと反応性有機ケイ素化合物とから形成される化合物であって、SiO2ゾルと反応性有機ケイ素化合物とを含むゾル液を用い、SiO2ゲル膜として低屈折率層が形成されるものを挙げることができる。SiO2ゾルは、ケイ素アルコキシドを塗布に適した有機溶媒に溶解し、一定量の水を添加して加水分解を行って調製される。SiO2ゾルの形成に使用するケイ素アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロピオキシシラン、テトラ−n−プロピオキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタイソプロピオキシシラン、テトラペンタ−n−プロピオキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロピオキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメキメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルプロピオキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
前記アルキルケイ素アルコキシドまたはケイ素アルコキシドを適当な溶媒中に溶解することによりSiO2ゾルとすることができる。使用する溶媒としては、例えばメチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のアルコール、ケトン、エステル類、ハロゲン化炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、あるいはこれらの混合物が挙げられる。アルキルケイ素アルコキシドまたはケイ素アルコキシドを、それらが100%加水分解および縮合したとして生じるSiO2換算で、濃度を0.1質量%以上、好ましくは0.1〜10質量%になるように前記溶媒中に溶解する。SiO2ゾルの濃度が0.1質量%未満であると形成されるゾル膜が所望の特性が充分に発揮できず、一方、10質量%を超えると透明均質膜の形成が困難となる。また、本技術においては、以上の固形分以内であるならば、有機物や無機物バインダーを併用することも可能である。
この溶液に加水分解に必要な量以上の水を加え、15〜35℃、好ましくは22〜28℃の温度で、0.5〜10時間、好ましくは2〜5時間攪拌を行う。前記加水分解においては、触媒を用いることが好ましく、これらの触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸または酢酸等の酸が好ましい。これらの酸を好ましくは約0.001〜40.0mol/l、より好ましくは0.005〜10.0mol/l程度の水溶液として加え、該水溶液中の水分を加水分解用の水分とすることができる。
最終的に得られるゲル膜は、反射防止フィルムの低屈折率層として使用するが、その屈折率の調整する必要がある場合もある。例えば、屈折率を下げるためにフッ素系有機ケイ素化合物、屈折率を高めるために有機ケイ素化合物、屈折率をさらに高めるために硼素系有機化合物を添加することができる。具体的には、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラプロピオキシシラン、テトラブトキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、コルコート40(コルコート社製)、MS51(三菱化学社製)、スノーテックス(日産化学社製)等の有機ケイ素化合物;ザフロンFC−110、220、250(東亜合成化学社製)、セクラルコートA−402B(セントラル硝子社製)、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフッ素系化合物、硼酸トリエチル、硼酸トリメチル、硼酸トリプロピル、硼酸トリブチル等の硼酸系化合物が挙げられる。これらの添加剤は、ゾルの調製時に加えてもよいし、ゾルの形成後に加えてもよい。これらの添加剤を用いることによって、アルキルケイ素アルコキシドまたはケイ素アルコキシドの加水分解時、あるいはその後にシラノール基と反応して、さらに均一に反応してさらに均一で透明なゾル溶液が得られ、且つ形成されるゲル膜の屈折率をある程度の範囲で変化させることができる。
前記フッ素含有樹脂、シリケートオリゴマーから形成される化合物、およびSiO2ゾルと反応性有機ケイ素化合物とから形成される化合物から選ばれる少なくとも一つの低屈折率物質を含有する低屈折率層(前記高屈折率層の上に設けられている)には、前記高屈折率層のところで挙げられた活性エネルギー線反応性化合物が添加されていてもよい。そのうち好ましく用いられるのはエポキシ系活性エネルギー線反応性化合物である。エポキシ系活性エネルギー線反応性化合物は、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物で、前記と同様の活性エネルギー線照射によりカチオン重合を開始物質として放出することが可能な化合物である。エポキシ系活性エネルギー線反応性化合物としては、(イ)ビスフェノールAのグリシジルエーテル(この化合物はエピクロロヒドリンとビスフェノールAとの反応により得られ、重合度の異なる混合物として得られる);(ロ)ビスフェノールA等のフェノール性OHを2個有する化合物に、エピクロロヒドリン、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを反応させ末端にグリシジルエーテル基を有する化合物等を挙げることができる。エポキシ系活性エネルギー線反応性化合物をカチオン重合させる光重合開始剤または光増感剤は、活性エネルギー線照射によりカチオン重合開始物質を放出することが可能な化合物であり、特に好ましくは、照射によりカチオン重合開始能のあるルイス酸を放出するオニウム塩の一群の複塩である。これらの活性エネルギー線反応性化合物は前記高屈折率層のところで述べられたようなものと同様の紫外線や、電子線等の活性エネルギー線、またはプラズマ処理、あるいは熱エネルギーの付与により硬化されることも同様である。
(防眩層)
本発明のガスバリアフィルムには、防眩層を設けることもできる。
前記防眩層は表面に凹凸を有する構造を付与することにより、防眩層表面または防眩層内部において光を散乱させることにより防眩機能発現させるため、微粒子物質を層中に含有した構成をとっている。好ましい防眩層は、膜厚0.5μm〜5.0μmであって、平均粒子サイズ0.25μm〜10μmの1種以上の微粒子を含む層であり、平均粒子サイズが当該膜厚の1.1から2倍の二酸化ケイ素粒子と平均粒子サイズ0.005〜0.1μmの二酸化ケイ素微粒子を例えばジアセチルセルロースのようなバインダー中に含有する層である。この「粒子」としては、無機粒子および有機粒子が挙げられる。前記無機粒子としては二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム等が挙げられる。前記有機粒子としては、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、メラミン系樹脂、さらにポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ弗化エチレン系樹脂等が使用できる。
これらのうちでも、防眩性を好ましく達成するには、シリカなどの二酸化ケイ素が特に好ましく用いられる。二酸化ケイ素粒子のなかでも、合成非晶質シリカの中でも湿式法によって作られる超微粉含水珪酸が光沢度を下げる効果が大きいため好ましい。湿式法とは珪酸ナトリウムと鉱酸および塩類を水溶液中で反応させる方法で、例えば富士シリシア化学(株)製のサイリシアや日本シリカ(株)製のNipsil Eなどがある。
防眩層には、バインダーとして活性線硬化性樹脂を用いるのが特に好ましく、塗布後に活性線を照射することにより前記二酸化ケイ素粒子や二酸化ケイ素微粒子含有活性線硬化性樹脂層を形成させることができる。偏光板表面の機械的強度を増すことができるという点においてはバインダーとして活性線硬化性樹脂を用いた防眩層とするのがより好ましい。
ここで用いることのできる活性線硬化性樹脂とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応などを経て硬化する樹脂をいう。
活性線硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが代表的具体例として挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂であってもよい。紫外線硬化性樹脂の例としては紫外線硬化性ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化性アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化性アクリル酸エステル系樹脂、紫外線硬化性メタクリル酸エステル系樹脂、紫外線硬化性ポリエステルアクリレート系樹脂および紫外線硬化性ポリオールアクリレート系樹脂などが挙げられる。
本発明に用いることのできる紫外線硬化性ポリオールアクリレート系樹脂としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタエリスリトール等の光重合モノマーオリゴマーが挙げられる。これらのポリオールアクリレート系樹脂は、高架橋性で硬化性が大きく、硬度が大きく、硬化収縮が小さく、また低臭気性で低毒性であり安全性も比較的高いのが特徴である。
前記の紫外線硬化性ポリオールアクリレート系樹脂には、その効果を損なわない範囲で他の紫外線硬化性樹脂、例えば紫外線硬化性エポキシ系樹脂を含有して使用してもよい。アクリレート系樹脂は厚膜塗布した硬化塗膜は、硬化収縮によりカーリングが強くなり、取り扱い作業上支障をきたす場合がある。エポキシ系樹脂はアクリレート系樹脂と比べて一般に硬化収縮が小さく硬化塗膜のカーリングも小さい。ここでいう紫外線硬化性エポキシ系樹脂とは、エポキシ基を分子内に2個以上含む化合物で、カチオン重合開始剤を含有し、紫外線を照射することにより架橋反応するエポキシ樹脂である。
用いることのできる電子線硬化性樹脂の例としては、好ましくは、アクリレート系の官能基を有するもの、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂などが挙げられる。
中でも、紫外線硬化性樹脂を用いることが好ましい。活性線硬化性樹脂の硬化は、電子線または紫外線のような活性線照射によって硬化することができる。例えば、電子線硬化の場合にはコックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線等が使用され、紫外線硬化の場合には超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用できる。
膜厚は0.5μm〜5.0μmであることが好ましい。また、このうち特に2.0μm〜4.0μmの場合が好ましい。
防眩層や反射防止層をはじめとする層の硬化に用いられる活性輻射線の代わりに、活性エネルギーを与える手段としてプラズマ処理、熱などの方法も好ましい。プラズマ処理としては特願平11−143206号公報に記載の方法が好ましく用いることができる。また、活性エネルギーを付与する熱処理としては、反射防止層または防眩層の塗布乾燥後に熱処理することも有効である。70℃以上で30秒〜10分、より好ましくは30秒〜5分加熱することが好ましい。これらの防眩層を設けることにより、可視光の透過率が低下しないことが望ましく、ヘイズ値が3%以上であることが好ましい。また、その時の透過率は550nmにおける透過率で90%以上であることが好ましい。防眩層の表面層は、臨界表面張力が20×10-6N/cm以下であることが好ましい。臨界表面張力が20×10-6N/cmより大きい場合は、表面層に付着した汚れが取れにくくなる。含フッ素系のフッ素材料が汚れ防止の点において好ましい。
前記含フッ素材料としては、有機溶剤に溶解し、その取り扱いが容易であるフッ化ビニリデン系共重合体や、フルオロオレフィン/炭化水素オレフィン共重合体、含フッ素エポキシ樹脂、含フッ素エポキシアクリレート、含フッ素シリコーン、含フッ素アルコキシシラン、さらに、TEFRON AF1600(デュポン社製、n=1.30)、CYTOP(旭硝子(株)社製、n=1.34)、17FM(三菱レーヨン(株)社製、屈折率n=1.35)、LR201(日産化学工業(株)社製、n=1.38)等を挙げることができる。これらは単独でも複数組み合わせて使用することも可能である。
また、2−(パーフルオロデシル)エチルメタクリレート、2−(パーフロロ−7−メチルオクチル)エチルメタクリレート、3−(パーフロロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−(パーフロロ−9−メチルデシル)エチルメタクリレート、3−(パーフロロ−8−メチルデシル)2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の含フッ素メタクリレート、3−パーフロロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルデシル)エチルアクリレート等の含フッ素アクリレート、3−パーフルオロデシル1,2−エポキシプロパン、3−(パーフロロ−9−メチルデシル)−1,2−エポキシプロパン等のエポキサイド、エポキシアクリレート等の放射線硬化型の含フッ素モノマー、オリゴマー、プレポリマー等を挙げることができる。これらは単独もしくは複数種類混合して使用することも可能である。
(カール防止層)
本発明のガスバリアフィルムには、カール防止層を形成することができる。
前記カール防止層は、これを施した面を内側にして丸まろうとする機能を付与する。カール防止層を形成することによって、フィルムの片面に何らかの表面加工をして、両面に異なる程度・種類の表面加工を施した際に、その面を内側にしてカールしようとするのを防止することができる。
カール防止層は、例えば基材の防眩層または反射防止層を有する側とは反対側に設けることができる。また、例えば易接着層を塗設する側とは反対側に設けることも効果的である。
カール防止層は、溶剤塗布によるか、溶剤とセルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等とを含む塗布液を塗設すること等により形成することができる。溶剤による方法とは、例えば偏光板用保護フィルムとして用いるセルロースアシレートフィルムを溶解させる溶剤または膨潤させる溶剤を含む組成物を塗布することによって行われる。これらのカールを防止する機能を有する層の塗布液は、従ってケトン系、エステル系の有機溶剤を含有するものが好ましい。
好ましいケトン系の有機溶媒の例としてはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、乳酸エチル、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、イソホロン、エチル−n−ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジエチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、メチルシクロヘキサノン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−へプチルケトン等が挙げられる。
好ましいエステル系の有機溶剤の例としては酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられる。しかしながら、用いる溶剤としては溶解させる溶剤および/または膨潤させる溶剤の混合物の他、さらに溶解させない溶剤を含む場合もあり、これらを透明樹脂フィルムのカール度合や樹脂の種類によって適宜の割合で混合した組成物および塗布量を用いて行う。この他にも、透明ハード加工や帯電防止加工を施してもカール防止機能を発揮させることもできる。
本発明のガスバリアフィルムにおいては、基材の防眩層または反射防止層を有する側と反対側にカールを防止する機能を有する層を設けることが好ましい。また、こうして製造されたフィルムは23℃・相対湿度60%におけるカール度が−10〜+10であることが望ましい。
カール度の測定は、以下の方法で行われる。当該フィルム試料を80℃・相対湿度90%環境下で48時間放置後、該フィルムを幅手方向50mm、長手方向2mmに切断する。さらに、そのフィルム小片を23℃±2℃・相対湿度55%環境下で24時間調湿し、曲率スケールを用いて該フィルムのカール値を測定する。カール値は1/Rで表され、Rは曲率半径で単位はmを用いる。カール値については、フィルムの変形が少ないものが好ましく、変形方向は+方向でも−方向でもかまわない。即ち、カール値の絶対値が小さければ良く、具体的には、該フィルムのカール値の絶対値が10より大きいと、該フィルムを用いて偏光板等を作製した場合、高温高湿下(例えば、80℃・相対湿度90%で48時間放置する)での反り等の変形が大きくなり使用に耐えない。該フィルムのカール値が10以下であれば、該フィルムを用いて偏光板等を作製した場合、高温高湿下(例えば、80℃・相対湿度90%で48時間放置する)でも反りなどの変形が小さく使用することができる。
(易接着層)
本発明のガスバリアフィルムには、易接着層を塗設することもできる。
前記易接着層とは、隣接する層を互いに接着し易くする機能を有する層である。例えば、偏光板用保護フィルムとその隣接層、代表的には偏光膜とを接着し易くするために形成することができる。
好ましく用いられる易接着層の例としては、−COOM(Mは水素原子またはカチオンを表す)基を有する高分子化合物を含有する層を挙げることができ、さらに好ましい態様として、フィルム基材側に−COOM基を有する高分子化合物を含有する層を設け、それに隣接させて偏光膜側に親水性高分子化合物を主たる成分として含む層を設けたものを挙げることができる。ここでいう−COOM基を有する高分子化合物としては例えば−COOM基を有するスチレン−マレイン酸共重合体や−COOM基を有する酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸−無水マレイン酸共重合体などであり、特に−COOM基を有する酢酸ビニル−マレイン酸共重合体を用いると好ましい。このような高分子化合物を単独でまたは2種以上併用して用い、好ましい重量平均分子量としては500〜500,000程度のものであるとよい。−COOM基を有する高分子化合物の特に好ましい例は特開平6−094915号公報、特開平7−333436号公報に記載のものが好ましく用いられる。
また前記親水性高分子化合物として好ましくは、親水性セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシセルロース等)、ポリビニルアルコール誘導体(例えば、ポリビニルアルコール、酢酸ビニルービニルアルコール共重合体、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ポリビニルベンザール等)、天然高分子化合物(例えば、ゼラチン、カゼイン、アラビアゴム等)、親水性ポリエステル誘導体(例えば、部分的にスルホン化されたポリエチレンテレフタレート等)、親水性ポリビニル誘導体(例えば、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルインダゾール、ポリビニルピラゾール等)が挙げられ、単独あるいは2種以上併用して用いられる。
易接着層はある程度の親水性を有している必要があり、23℃・相対湿度60%における水の接触角は50°以下であることが好ましい。
(エンボス加工)
本発明のガスバリアフィルムには、エンボス加工を施すことができる。エンボス加工の具体的な方法として、エンボスロールと硬質平滑面ロールの間をTg以上の温度でフィルムを通すを挙げることができる。また、「きしみ値」を10g〜500gに調整するためには、表面粗さ(Ra)をおよそ0.01μm〜5μmにすることが好ましい。RaはJISB0601−1994で規定されるところの「算術平均粗さ」のことである。
《画像表示素子》
本発明のガスバリアフィルムの用途は特に限定されないが、光学特性と機械特性とに優れるため、画像表示素子の透明電極用基板等として好適に用いることができる。ここでいう「画像表示素子」とは、円偏光板・液晶表示素子、タッチパネル、有機EL素子などを意味する。
<円偏光板>
本発明のガスバリアフィルムにλ/4板と偏光板とを積層し、円偏光板を作製することができる。この場合、λ/4板の遅相軸と偏光板の吸収軸とが45°になるように積層する。このような偏光板は、長手方向(MD)に対し45°の方向に延伸されているものを用いることが好ましく、例えば、特開2002−865554号公報に記載のものを好適に用いることができる。
<液晶表示素子>
反射型液晶表示装置は、下から順に、下基板、反射電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、透明電極、上基板、λ/4板、そして偏光膜からなる構成を有する。本発明のガスバリアフィルムは、前記透明電極および上基板として使用することができる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を反射電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。
透過型液晶表示装置は、下から順に、バックライト、偏光板、λ/4板、下透明電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、上透明電極、上基板、λ/4板および偏光膜からなる構成を有する。このうち本発明の基板は、前記上透明電極および上基板として使用することができる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を下透明電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。
液晶セルの種類は特に限定されないが、より好ましくはTN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型またはHAN(Hybrid Aligned Nematic)型、VA(Vertically Alignment)型、ECB型(Electrically Controlled Birefringence)、OCB型(Optically Compensated Bend)、CPA型(Continuous Pinwheel Alignment)であることが好ましい。
<タッチパネル>
タッチパネルは、特開平5-127822号公報、特開2002-48913号公報等に記載されたものに応用することができる。
<有機EL素子>
本発明のガスバリアフィルムを有機EL素子等のELに用いる場合には、特開平11−335661号公報、同11−335368号公報、特開2001−192651号公報、同192652号公報、同192653号公報、同335776号公報、同247859号公報、同181616号公報、同181617号公報、特開2002−181816号公報、同181617号公報、特開2002−056976号公報記載の内容および特開2001−148291号公報、同221916号公報、同231443号公報に記載される技術と併せて用いることが好ましい。
本発明のガスバリアフィルムを、有機EL素子を形成する場合の基材フィルム、および/または保護フィルムとして好ましく用いることができる。
<TFT表示素子>
本発明のフィルムは、薄膜トランジスタ(TFT)表示素子用基板として用いることができる。TFTアレイの作製方法としては、特表平10−512104号公報に記載されている方法等が挙げられる。さらにこの基板はカラー表示のためのカラーフィルターを有していてもよい。カラーフィルターはいかなる方法を用いて作製されてもよいが、好ましくはフォトリソグラフィー手法を用いることが好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
以下に実施例1および実施例2における特性値の測定方法を示す。
(表面平滑性)
実施例に用いられるプラスチック基板の表面平滑性は(株)RYOKA SYSTEM社製のマイクロマップ機「Micromap SX520−SD200」を用い「平均面粗さ:Sa」を指標として評価した。測定範囲は500μm×500μm〜1000μm×1000μmとした。
(ガラス転移温度(Tg))
示差走査熱量計(DSC6200、セイコー(株)製)を用いて、窒素中、昇温温度10℃/分の条件で各光学フィルム試料のTgを測定した。
(線熱膨張係数)
フィルムを5mm×19mmに切り抜き、チャック間距離15mmで引張荷重66mNの条件下、TMA8310(理学電気株式会社製、Thermo Plusシリーズ)にて測定した。
(ガスバリア性の測定)
38℃・相対湿度90%の条件下でMOCON法(酸素:MOCON OX−TRAN 2/20L、水蒸気:MOCON PERMATRAN−W3/31)によって測定した。
(厚み変動測定)
アンリツ電気社製の電子マイクロメーターを用いて600mm/分の速度にて測定し、縮尺1/20,チャート速度30mm/分にてチャート紙上に記録した後、定規により計測し、小数点第1位を四捨五入する。
(ヘイズ)
試料40mm×80mmを、25℃・相対湿度60%で、ヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)でJIS K−6714に従って測定した。
(透過率)
試料20mm×70mmを、25℃・相対湿度60%で、透明度測定器(AKA光電管比色計、KOTAKI製作所)を用いて可視光(615nm)の透過率を測定した。
(レターデーション(Re))
試料70mm×100mmを、25℃・相対湿度60%で2時間調湿し、自動複屈折計(KOBRA21DH、王子計測(株)にて632.8nmにおける垂直方向から測定したレターデーション値(Re)の外挿値より次式に従い算出した。
Re=|nMD−nTD|×d
なお、波長は632.8nm以外の波長を用いた場合がある。
(レターデーション(Rth))
試料30mm×40mmを、25℃・相対湿度60%で2時間調湿し、エリプソメーター(M150、日本分光(株))で、632.8nmにおける垂直方向から測定した値とフィルム面を傾けながら同様に測定したレターデーション値の外挿値より次式に従い算出した。
Rth={(nMD+nTD)/2−nTH}×d
(引裂強度)
試料50mm×64mmを、23℃・相対湿度65%で2時間調湿し、軽荷重引裂強度試験器(東洋精機製作所)にてISO6383/2−1983に従って、引裂に要する加重を測定、MD,TD方向で平均化して評価した。
(耐折強度)
試料120mm×120mmを、23℃・相対湿度65%、2時間調湿し、ISO8776−1988に従って折り曲げによって切断するまでの往復回数を測定した。
(引張強度)
試料15mm×250mmを、23℃・相対湿度65%、2時間調湿しテンシロン引張試験機(RTA−100、オリエンテック(株))にてISO1184−1983に従って、初期試料長100mm、引張速度200±5mm/分で弾性率を引張初期の応力と伸びとから算出した。抗張力、伸張力、破断伸度も同時に評価した。
(キシミ値)
試料100mm×200mmおよび75mm×100mmの試料を、23℃・相対湿度65%、2時間調湿し、テンシロン引張試験機(RTA−100,オリエンテック(株))にて、大きいフィルムを台の上に固定し、200gのおもりをつけた小さいフィルムを載せた。おもりを水平方向に引っ張り、動きだした時の力、動いているときの力を測定し、静摩擦係数、動摩擦係数をそれぞれ次式に従い算出した。
F=μ×W (W:おもりの重さ(kgf))
(アルカリ加水分解性)
試料100mm×100mmを、自動アルカリケン化処理装置(新東科学(株))にて、60℃で2N水酸化ナトリウム水溶液にて2分間ケン化し、4分間水洗。30℃,0.01N希硝酸にて4分間中和し、4分間水洗。100℃で3分間、自然乾燥1時間し、下記の目視基準とケン化処理前後のヘイズ値で評価した。
A:白化は全く認められない。
B:白化がわずかに認められる。
C:白化がかなり認められる。
D:白化が著しく認められる。
(カール値)
試料35mm×3mmを、カール調湿槽(HEIDON(No.YG53−168)、新東科学(株))で相対湿度25%、55%、85%で24時間調湿し、曲率半径をカール板で測定した。またウェットでのカール値は、水温25℃の水中に30分静置した後にそのカール値を測定した。
(耐湿熱性)
試料35mm×25mmを、85℃・相対湿度90%で200,500,1000時間それぞれ経時させて、プラチナスレインボー(PR−1G、タバイ エスペック(株))にて 、2枚のサンプルを接着剤にて張り合わせて調湿し、サンプル状態を目視で観察、色の変化を測定し下記にて判断した。
A:特に異常が認められない。
B:分解臭または分解による形状変化が認められる。
(含水率)
試料7mm×35mmを水分測定器、試料乾燥装置(CA−03、VA−05、共に三菱化学(株))にてカールフィッシャー法で測定。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出した。
(残留溶剤量)
試料7mm×35mmをガスクロマトグラフィー(GC−18A、島津製作所(株))にて、ベース残留溶剤量を測定した。
(フィルムの平面性)
試料として全幅×1.5mを反射光、透過光にて角度を変えて検査し、平面性を評価した。表面形状に関しては暗室にてスライドスコープでフィルムを検査すると共に、ベース面状投影機でも評価した。
A:フィルム表面は平滑である。
B:フィルム表面は平滑であるが、少し異物が見られる。
C:フィルム表面に弱い凹凸が見られ、異物の存在がはっきり観察される。
D:フィルムに凹凸が見られ、異物が多数見られる。
(異物検査)
試料として全幅×1mに反射光をあて、膜中異物を目視にて検出した後、偏向顕微鏡で異物(リント)を確認し評価した。
(弾性率)
東洋ボールドウィン製万能引っ張り試験機STM T50BPを用い、23℃、70%雰囲気中、引っ張り速度10%/分で0.5%伸びにおける応力を測定し、弾性率を求めた。
(輝点異物の測定)
直交状態(クロスニコル)に二枚の偏光板を配置して透過光を遮断し、二枚の偏光板の間に各試料を置く。偏光板はガラス製保護板のものを使用した。片側から光を照射し、反対側から光学顕微鏡(50倍)で1cm2当たりの直径0.01mm以上の輝点数をカウントした。
(溶液の安定性)
ろ過,濃縮後のドープを採取し、30℃で静置保存したまま観察し以下のA、B、C、Dの4段階に評価した。
A:20日間経時でも透明性と液均一性を示す。
B:10日間経時まで透明性と液均一性を保持しているが、20日で少し白濁が見られる。
C:液作製終了時では透明性と均一な液であるが、一日経時するとゲル化し不均一な液となる。
D:液は膨潤・溶解が見られず不透明性で不均一な溶液状態である。
(フィルム面状)
フィルムを目視で観察し、その面状を以下の如く評価した。
A:フィルム表面は平滑である。
B:フィルム表面は平滑であるが、少し異物が見られる。
C:フィルム表面に弱い凹凸が見られ、異物の存在がはっきり観察される。
D:フィルムに凹凸が見られ、異物が多数見られる。
(フィルムの耐湿熱性)
試料1gを折り畳んで15ml容量のガラス瓶に入れ、温度90℃・相対湿度100%条件下で調湿した後、密閉した。これを90℃で経時して10日後に取り出した。フィルムの状態を目視で確認し、以下の判定をした。
A:特に異常が認められない。
B:かすかな分解臭が認められる。
C:かなりな分解臭が認められる。
D:分解臭と分解による形状の変化が認められる。
[実施例1]
《ガスバリアフィルムの作製および評価》
(基材プラスチック用ポリマーの合成)
JFEケミカル製のBPFL(フルオレンビスフェノール)をアセトニトリルで2回再結晶を行い、70℃、3時間の加熱真空乾燥を行うことでHPLC純度99.9%以上の化合物を得た。ただし、アセトニトリルを8.6質量%含有していた。
前記で得られたアセトニトリルを含む化合物を253.03g(660mmol)、テトラブチルアンモニウムクロライドを9.171g(33mmol)、ジクロロメタン2805ml、水を2475ml、攪拌装置を備えた反応容器中に投入し、窒素気流下、水浴中300rpmで撹拌を行った。30分後、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライドを167.03g(660mmol)粉体のまま投入し、330mlのジクロロメタンで洗い流した。10分後、2mol/L水酸化ナトリウム水溶液693mlを132mlの水で希釈した液を1時間かけて滴下装置を用いて滴下し、終了後165mlの水で洗い流した。その後3時間撹拌を継続した後、ジクロロメタン1Lを添加し、有機相を分離した。さらに12mol/L塩酸水6.6mlを水2.5Lで希釈した溶液を添加し有機相を洗浄した。さらに水2.5Lで2回洗浄を行った後、分離した有機相にジクロロメタン1Lを添加し、希釈した後、激しく撹拌した25Lのメタノール中に1時間かけて投入した。メタノール中、得られた白色沈殿を濾取し、40℃、12時間加熱乾燥後、70℃、3時間、減圧下で乾燥し、ポリアリレートP−1を302g得た。
得られたポリアリレートP−1の分子量をGPC(THF溶媒)で測定した結果、重量平均分子量が170000であった。また、上述のDSCで測定したガラス転移温度は369℃であった。
(プラスチック基材S−1の製膜)
前記ポリアリレートP−1を、溶解後の溶液粘度が500〜1500mPa・sの範囲になる濃度でジクロロメタンに溶解した。この溶液を1μmのフィルターを通してろ過した後、特開2001−71418号公報の図3に記載される流延バンドを用いた溶液製膜装置を用いて流延した。100℃の熱風にて残留溶剤量が10質量%になるまで乾燥し、その後175℃の熱風にて30分加熱乾燥させ、膜厚100μmのプラスチック基材S−1を得た。
得られたプラスチック基材S−1は、溶液の安定性「A」、フィルムの平面性「A」、フィルム面状「A」、フィルムの引裂強度では14gであり、フィルムの耐折強度は69回であり、フィルムの耐湿熱性「A」であり、すべて優れたものであった。プラスチック基材S−1の厚さは、全領域に渡り100μm±1.5μmであった。この時、長さ方向のトップ、中間部とラストとのそれぞれについて、さらにその幅方向の両端部と中央部の評価を実施し、そのデータは誤差が0.2%以下であることを確認した。さらに、フィルムの線熱膨張係数は65ppm/℃であった。
またプラスチック基材S−1は、ヘイズが0.3%、透過率(透明性)が90.4%、Reは32nm、Rthは560nmであり、弾性率は長手方向が2.1GPa,幅方向が2.2GPa、抗張力は長手方向が142MPa,幅方向が141MPa、伸長率は長手方向が20%,幅方向が21%であり、キシミ値(静止摩擦係数)は0.45、キシミ値(動摩擦係数)は0.42、アルカリ加水分解性は「A」であり、カール値は相対湿度25%で−0.4,ウェットでは0.0であった。また、含水率は0.4質量%であり、残留溶媒量は0.05質量%であり、熱収縮率は長手方向が−0.01%であり幅方向が−0.01%であった。異物はリントが5個/m未満であった。また、輝点異物は、0.02mm〜0.05mmが10個/3m未満,0.05〜0.1mmが5個/3m未満,0.1mm以上はなかった。これらは、光学用途に対しては優れた特性を有するものであった。
(機能性層の設置)
特開2000−105445号公報の実施例1の試料110の作製方法と同様にして、プラスチック基材であるPEN(Dupont-Teijin Q65A)上に下塗層およびバック層を形成して基材フィルムF−2とした。すなわち、ポリエチレン−2,6−ナフタレートポリマー(Dupont-Teijin製、Q65A)100質量部と紫外線吸収剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、Tinuvin P.326)2質量部とを乾燥した後、300℃にて溶融後、T型ダイから押し出し、140℃で3.3倍の縦延伸を行ない、続いて130℃で3.3倍の横延伸を行い、さらに250℃で6秒間熱固定して、厚さ90μmのPENフィルムを得た。なおこのPENフィルムにはブルー染料、マゼンタ染料およびイエロー染料(公開技報:公技番号94−6023号記載のI−1,I−4,I−6,I−24,I−26,I−27,II−5)を適当量添加した。さらに、直径20cmのステンレス巻き芯に巻付けて、110℃で48時間の熱履歴を与え、巻き癖のつきにくいフィルムとし、これを比較用基材フィルムF−2とした。DSCで測定したガラス転移温度は150℃であった。
同様に前記プラスチック基材S−1に対して下塗層およびバック層を作製し本発明の基材フィルムF−1とした。
(下塗層の塗設)
各基材フィルムの両面にコロナ放電処理、UV照射処理、さらにグロー放電処理をした後、一方の面にゼラチン0.1g/m2、α−スルホジ−2−エチルヘキシルコハク酸ナトリウム0.01g/m2、サリチル酸0.04g/m2、p−クロロフェノール0.2g/m2、(CH2=CHSO2CH2CH2NHCO)2CH20.012g/m2、ポリアミド−エピクロロヒドリン重縮合物0.02g/m2の下塗液を塗布して(10mL/m2、バーコーター使用)、下塗層を設けた。乾燥は115℃で6分間実施した(乾燥ゾーンのローラーや搬送装置はすべて115℃とした)。
(帯電防止層と滑り層との塗設)
下塗後の各基材フィルムのもう一方の面にバック層として、下記組成の帯電防止層と滑り層を塗設した。
帯電防止層用として、平均粒子サイズ0.005μmの酸化スズ−酸化アンチモン複合物の微粒子粉末の分散物(比抵抗5Ω・cm、2次凝集粒子サイズ約0.08μm)0.2g/m2、ゼラチン0.05g/m2、(CH2=CHSO2CH2CH2NHCO)2CH20.02g/m2、ポリオキシエチレン−p−ノニルフェノール(重合度10)0.005g/m2およびレゾルシン0.22g/m2を塗布した。
さらに、ジアセチルセルロース(25mg/m2)、C613CH(OH)C1020COOC4081(6mg/m2)/C50101O(CH2CH2O)16H(9mg/m2)混合物を塗布した。なお、この混合物は、キシレン/プロピレングリコールモノメチルエーテル(1/1)中で、105℃で溶融し、常温のプロピレングリコールモノメチルエーテル(10倍量)に注加分散して作製した後、アセトン中で分散物(平均粒子サイズ0.01μm)にしてから添加した。マット剤として二酸化ケイ素粒子(0.3μm)を15mg/m2となるように添加した。乾燥は115℃で6分間行なった(乾燥ゾーンのローラーや搬送装置はすべて115℃とした)。
(バリア層の形成)
前記方法にて作製した、本発明の基材フィルムF−1を用いて以下の工程で処理を行い、本発明のガスバリアフィルムB−1を得た。
(ALD法による無機バリア層の形成)
フィンランドのASM Microchemistry Oy社製流動型ALD反応器F−120モデルで、Al23の薄膜を堆積させた。アルミニウム源としてトリメチルアルミニウム(TMA)、酸素源として水を使用した。
基材フィルムF−1を反応器内に取り付けて、その反応器を真空ポンプで引いて真空にした。次に窒素ガスをパージして反応器内の圧力を約500〜1000Paに調整し、次いで反応器内の温度を250℃に加熱した。次いで原料を以下のサイクルでパルス状に反応器内に導入した。パルスサイクルは、TMA:0.5秒、窒素パージ:1.0秒、水:0.4秒、窒素パージ:1.5秒、である。このときTMAおよび水からのAl23の堆積速度は0.07nm/サイクルであった。ここでは100サイクル行い7.0nmのAl23薄膜を設置した。
(有機層の形成)
ついで、テトラエチレングリコールジアクリレート、カプロラクトンアクリレート、トリプロピレングリコールモノアクリレートを質量比=7:1.2:1.4で混合した溶液に、ラジカル開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュアー651)を1質量%添加し、溶剤に溶かして塗布乾燥した後、UV照射により、硬化させ、樹脂基板上に厚さ約500nmの有機層を作製した。
(無機バリア層/有機層の交互積層)
ついで、前記有機層の上に前記と同じ条件でALD法によるAl23薄膜を設置し、無機バリア層/有機層/無機バリア層、の3層積層構造を有する本発明のガスバリアフィルムB−1を得た。
(7層バリア層および11層バリア層の形成)
前記本発明のガスバリアフィルムB−1に対して、前記同様に有機層/無機バリア層の交互積層をさらに2回繰り返し本発明のガスバリアフィルムB−2を得た。さらにこのB−2に対して前記同様に有機層/無機バリア層の交互積層を2回繰り返し本発明のガスバリアフィルムB−3を得た。
(ガスバリアフィルムB−12、B−13の作製)
前記のALD法による無機バリア層の形成における反応器内の温度を100℃に変更する以外はガスバリアフィルムB−1の作製と同様にして、基材フィルムとしてF−1およびF−2を用い、それぞれから比較用ガスバリアフィルムB−12およびB−13を得た。
(比較用ガスバリアフィルムB−14の作製)
前記のALD法による無機バリア層の形成を以下に説明するスパッタ法に変更する以外はB−1作製と同様にして、比較用ガスバリアフィルムB−14を作製した。
(スパッタ法による無機バリア層の形成)
図1に示すロール トゥ ロール方式のスパッタリング装置1を用いた。スパッタリング装置1は真空槽2を有しており、その中央部にはプラスチックフィルム6を表面に接触させて冷却するためのドラム3が配置されている。また、前記真空槽2にはプラスチックフィルム6を巻くための送り出しロール4および巻き取りロール5が配置されている。送り出しロール4に巻かれたプラスチックフィルム6はガイドロール7を介してドラム3に巻かれ、さらにプラスチックフィルム6はガイドロール8を介して巻き取りロール5に巻かれる。真空排気系としては排気口9から真空ポンプ10によって真空槽2内の排気が常に行われている。成膜系としてはパルス電力を印加できる直流方式の放電電源11に接続されたカソード12上にターゲット(図示せず)が装着されている。この放電電源11は制御器13に接続され、さらにこの制御器13は真空槽2へ配管15を介して反応ガス導入量を調整しつつ供給するガス流量調整ユニット14に接続されている。また、真空槽2には一定流量の放電ガスが供給されるよう構成されている(図示せず)。以下、具体的な条件を示す。
ターゲットとしてAlをセットし、放電電源11としてパルス印加方式の直流電源を用意した。プラスチックフィルム6として厚さ100μmの前記各基材フィルムを用意し、これを送り出しロール4に掛け、巻き取りロール5まで通した。スパッタリング装置1への基材の準備が終了後、真空槽2の扉を閉めて真空ポンプ10を起動し、真空引きとドラムの冷却を開始した。到達圧力が4×10-4Pa、ドラム温度が5℃になったところで、プラスチックフィルム6の走行を開始した。放電ガスとしてアルゴンを導入して放電電源11をONし、放電電力5kW、成膜圧力0.3PaでSiターゲット上にプラズマを発生させ、3分間プレスパッタを行った。この後、反応ガスとして酸素を導入した。放電が安定してからアルゴンおよび酸素ガス量を徐々に減らして成膜圧力を0.1Paまで下げた。0.1Paでの放電の安定を確認してから、一定時間Al23の成膜を行ない7.0nmのAl23膜を設置した。成膜終了後、真空槽2を大気圧に戻してAl23を成膜したフィルムを取り出した。
本発明のガスバリアフィルムB−1〜B−3,B−12〜B−13および比較用ガスバリアフィルムB−14について、ガスバリア層の層構成を下記表2に示した。
Figure 2007090803
(試験および評価)
本発明のガスバリアフィルムB−1〜B−3,B−12〜B−13および比較用ガスバリアフィルムB−14について、ガスバリア性の評価を行った。結果を表3に示した。
Figure 2007090803
表2および表3からわかるように、スパッタ法により作製した比較用ガスバリアフィルムB−14に対し、本発明のガスバリアフィルムB−1、2、3、12、13は、無機バリア層がALD法により形成された無欠陥かつ緻密なアルミナ薄膜であるため、ガスバリア性が良好であった。
さらに、(i)基材フィルムがPENのサンプル(B−13)よりも、ガラス転移温度が250℃以上のポリアリレートPS−1のサンプル(B−12)の方がより好ましいこと、(ii)ALD法による製膜時の温度が100℃の場合(B−13)よりも、250℃の場合(B−1)の方がより好ましいこと、(iii)B−1よりも有機層/無機バリア層の積層を繰り返したサンプル(B−2、B−3)の方がより好ましいこと、もわかった。
[実施例2]
《有機EL素子の作製および評価》
(有機EL素子の作製)
表2および表3に記載される本発明のガスバリアフィルムB−1〜B−3,B−12〜B−13および比較用ガスバリアフィルムB−14を用いて、下記方法により本発明の有機EL素子EL−1〜EL−3、EL−12〜13および比較用有機EL素子EL−14を作製した。
ガスバリアフィルムを真空チャンバー内に導入し、IXOターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリングにより、厚さ0.2μmのIXO薄膜からなる透明電極を形成した。透明電極(IXO)より、アルミニウムのリ−ド線を結線し、積層構造体を形成した。
透明電極の表面に、ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸の水性分散液(BAYER社製、Baytron P:固形分1.3質量%)をスピンコートした後、150℃で2時間真空乾燥し、厚さ100nmのホール輸送性有機薄膜層を形成した。これを基板Xとした。
一方、厚さ188μmのポリエーテルスルホン(住友ベークライト(株)製、スミライトFS−1300)からなる仮支持体の片面上に、下記組成を有する発光性有機薄膜層用塗布液を、スピンコーターを用いて塗布し、室温で乾燥することにより、厚さ13nmの発光性有機薄膜層を仮支持体上に形成した。これを転写材料Yとした。
〔組成〕
・ポリビニルカルバゾール(Mw=63000、アルドリッチ社製): 40質量部
・トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体(オルトメタル化錯体):1質量部
・ジクロロエタン: 3200質量部
基板Xの有機薄膜層の上面に転写材料Yの発光性有機薄膜層側を重ね、一対の熱ローラーを用い160℃、0.3MPa、0.05m/minで加熱・加圧し、仮支持体を引き剥がすことにより、基板Xの上面に発光性有機薄膜層を形成した。これを基板XYとした。
また、25mm角に裁断した厚さ50μmのポリイミドフィルム(UPILEX−50S、宇部興産製)片面上に、パターニングした蒸着用のマスク(発光面積が5mm×5mmとなるマスク)を設置し、約0.1mPaの減圧雰囲気中でAlを蒸着し、膜厚0.3μmの電極を形成した。つづいてLiFをAl層と同パターンで蒸着し、膜厚3nmとした。Al電極よりアルミニウムのリード線を結線し、積層構造体を形成した。得られた積層構造体の上に下記組成を有する電子輸送性有機薄膜層用塗布液をスピンコーター塗布機を用いて塗布し、80℃で2時間真空乾燥することにより、厚さ15nmの電子輸送性有機薄膜層をLiF上に形成した。これを基板Zとした。
〔組成〕
・ポリビニルブチラール2000L(Mw=2000、電気化学工業社製):10質量部
・下記構造を有する電子輸送性化合物: 20質量部
・1−ブタノール: 3500質量部
Figure 2007090803
基板XYと基板Zとを用い、電極同士が発光性有機薄膜層を挟んで対面するように重ね合せ、一対の熱ローラーを用い160℃、0.3MPa、0.05m/minで加熱・加圧し、貼り合せ、有機EL素子を得た。
(有機EL素子の評価)
ソースメジャーユニット2400型(東洋テクニカ(株)製)を用いて、作製した有機EL素子EL−1〜EL−3、EL−12〜EL−14にそれぞれ直流電流を印加し発光させたところ、いずれの素子も良好に発光した。
次いで、有機EL素子EL−1〜EL−3、EL−12〜EL−14を素子作製後25℃・相対湿度75%下に1ヶ月放置し、同様にして発光させてみた。本発明の有機EL素子EL−1〜EL−3、EL−12およびEL−13はいずれも良好に発光したが、比較用有機EL素子EL−14は欠陥が増大し良好な発光は見られなかった。
本発明のガスバリアフィルムは優れたガスバリア性を有し、かつ優れた耐久性、および耐熱性を兼ね備えている。このため、本発明のガスバリアフィルムは、液晶、フラットパネルディスプレイ、エレクトロルミネッセンス(EL)、蛍光表示管、発光ダイオードなどの画像表示素子として好適に利用することができる。また、本発明のガスバリアフィルムは、これら以外にも従来ガラス基板が用いられてきたディスプレイ方式のガラス基板に代替する基板として用いることができる。さらに本発明のガスバリアフィルムは、太陽電池、タッチパネルなどの用途にも利用可能である。また、本発明の画像表示素子、特に有機EL素子は、軽量で優れた耐久性を有しているため、広範な分野で利用することができる。
実施例において用いたスパッタリング装置を示す説明図である。
符号の説明
1 スパッタリング装置
2 真空槽
3 ドラム
4 送り出しロール
5 巻き取りロール
6 プラスチックフィルム
7 ガイドロール
8 ガイドロール
9 排気口
10 真空ポンプ
11 放電電源
12 カソード
13 制御器
14 ガス流量調整ユニット
15 配管

Claims (5)

  1. プラスチック基板上に、少なくとも一層の無機物からなるバリア層と少なくとも一層の有機層とを交互に有するガスバリアフィルムであって、前記バリア層の少なくとも一層が原子層デポジッション(Atomic Layer Deposition)法によって形成されたことを特徴とするガスバリアフィルム。
  2. 前記プラスチック基板が、下記一般式(1)の構造を有し且つガラス転移温度が250℃以上のポリアリレートからなることを特徴とする請求項1に記載のガスバリアフィルム。
    Figure 2007090803
    〔一般式(1)中、Xは下記構造で表されるナフタレン構造またはビフェニレン構造を有する連結基を表し、Aは下記一般式(2)で表される連結基を表す。〕
    Figure 2007090803
    Figure 2007090803
    〔一般式(2)中、R1およびR2はそれぞれ独立にアルキル基またはアリール基を表し、jおよびkはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。jが2以上の場合、各R1は同じであってもよいし異なっていてもよい。kが2以上の場合、各R2は同じであってもよいし異なっていてもよい。〕
  3. 前記原子層デポジッション法を250℃以上で行うことを特徴とする請求項2に記載のガスバリアフィルム。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムを用いることを特徴とする画像表示素子。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムを基板として用いることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
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