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JP2007079533A - 光学樹脂フィルム、これを用いた偏光板および液晶表示装置 - Google Patents

光学樹脂フィルム、これを用いた偏光板および液晶表示装置 Download PDF

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JP2007079533A JP2006066459A JP2006066459A JP2007079533A JP 2007079533 A JP2007079533 A JP 2007079533A JP 2006066459 A JP2006066459 A JP 2006066459A JP 2006066459 A JP2006066459 A JP 2006066459A JP 2007079533 A JP2007079533 A JP 2007079533A
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Abstract

【課題】広範囲にわたり高いコントラスト比を有し、カラーシフトを抑制可能な光学樹脂フィルム、これを用いた偏光板および液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】下記式(A)〜(D)のレターデーションを満たし、フィルムの幅手方向の面内レターデーション(Re)の変動係数が5%以下であり、かつ厚み方向のレターデーション(Rth)の変動係数が10%以下である光学樹脂フィルム、これを用いた偏光板および液晶表示装置。(A)0.1<Re(450)/Re(550)<0.95、(B)1.03<Re(650)/Re(550)<1.93、(C)0.4<(Re/Rth(450))/(Re/Rth(550))<0.95、(D)1.05<(Re/Rth(650)/(Re/Rth(550))<1.9
【選択図】なし

Description

本発明は、光学樹脂フィルム、これを用いた偏光板および液晶表示装置に関する。
液晶表示装置は、低電圧・低消費電力で小型化・薄膜化が可能など様々な利点からパーソナルコンピューターや携帯機器のモニター、テレビ用途に広く利用されている。このような液晶表示装置は液晶セル内の液晶分子の配列状態により様々なモードが提案されているが、従来は液晶セルの下側基板から上側基板に向かって約90°捩れた配列状態になるTNモードが主流であった。
一般に液晶表示装置は液晶セル、光学補償シート、偏光子から構成される。光学補償シートは画像着色を解消したり、視野角を拡大するために用いられており、延伸した複屈折フィルムや透明フィルムに液晶を塗布したフィルムが使用されている。例えば、特許文献1ではディスコティック液晶をトリアセチルセルロースフィルム上に塗布し配向させて固定化した光学補償シートをTNモードの液晶セルに適用し、視野角を広げる技術が開示されている。しかしながら、大画面で様々な角度から見ることが想定されるテレビ用途の液晶表示装置は視野角依存性に対する要求が厳しく、前述のような手法をもってしても要求を満足することはできていない。そのため、IPS(In−Plane Switching)モード、OCB(Optically Compensatory Bend)モード、VA(Vertically Aligned)モードなど、TNモードとは異なる液晶表示装置が研究されている。特にVAモードはコントラストが高く、比較的製造の歩留まりが高いことからTV用の液晶表示装置として着目されている。
しかしながらVAモードではパネル法線方向においてはほぼ完全な黒色表示ができるものの、斜め方向からパネルを観察すると光漏れが発生し、視野角が狭くなるという問題があった。この問題を解決するためにnx=ny>nzの屈折率異方性を有する位相差板を液晶層と偏光板の間の少なくとも一方に配置することで光漏れを低減することが提案されている(例えば特許文献1)。また、nx>ny=nzとなる正の屈折率異方性を有する第一の位相差板とnx=ny>nzとなる負の屈折率異方性を有する第2の位相差板とを併用することにより光漏れを低減する方法が提案されている(例えば特許文献2)。さらにnx>ny>nzの光学的に二軸の位相差板を用いることによりVAモードの液晶表示装置の視野角特性を向上することが提案されている(例えば特許文献3)。ここでnx,ny,nzはそれぞれ前記位相差板における、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の屈折率を示す。前記X軸方向は前記位相差板の面内方向において最大の屈折率を示す軸方向であり、前記Y軸方向は、前記面内における前記X軸方向に対して垂直な軸方向であり、前記Z軸方向は前記X軸方向および前記Y軸方向に垂直な厚み方向を示す。
しかしながらこれらの方法はある波長域(例えば550nm付近の緑光)に対して光漏れを低減しているのみであり、それ以外の波長域(例えば450nm付近の青光、650nm付近の赤光)に対する光漏れは考慮していない。このため例えば黒表示をして斜めから観察すると、青色や赤色に着色するいわゆるカラーシフトの問題が解決されていなかった。
特開昭62−210423号公報 特許3027805号公報 特許3330574号公報
本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、広範囲にわたり高いコントラスト比を有し、カラーシフトを抑制可能な光学樹脂フィルム、これを用いた偏光板および液晶表示装置の提供を目的とする。
これらの目的は以下の手段によって達成された。
(1)下記式(A)〜(D)のレターデーションを満たし、フィルムの幅手方向の面内レターデーション(Re)の変動係数が5%以下であり、かつ厚み方向のレターデーション(Rth)の変動係数が10%以下であることを特徴とする光学樹脂フィルム。
(A)0.1<Re(450)/Re(550)<0.95
(B)1.03<Re(650)/Re(550)<1.93
(C)0.4<(Re/Rth(450))/(Re/Rth(550))<0.95
(D)1.05<(Re/Rth(650)/(Re/Rth(550))<1.9
(式中、Re(λ)は、波長λnmの光に対する該フィルムの面内レターデーション値であり、Rth(λ)は、波長λnmの光に対する該フィルムの厚み方向のレターデーション値であり、Re/Rth(λ)は、波長λnmの光に対する該フィルムの面内レターデーション値と厚み方向のレターデーション値の比である(単位:nm)。)
(2)前記光学樹脂フィルムがセルロースアシレートフィルムからなることを特徴とする前記(1)に記載の光学樹脂フィルム。
(3)可塑剤、紫外線吸収剤、剥離促進剤、染料およびマット剤からなる群から選択された1種以上を含有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の光学樹脂フィルム。
(4)棒状化合物または円盤状化合物からなるレターデーション発現剤を1種以上含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の光学樹脂フィルム。
(5)ポリビニルアルコールを有する偏光子の両面に保護膜を設けてなる偏光板であって、前記保護膜の少なくとも一方が、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の光学樹脂フィルムであることを特徴とする偏光板。
(6)前記保護膜の一方の表面に、ハードコート層、防眩層および反射防止層から選択された少なくとも一層を設けたことを特徴とする前記(5)に記載の偏光板。
(7)少なくとも一方の保護膜の上に光学異方性層を設けたことを特徴とする前記(5)または(6)に記載の偏光板。
(8)前記(5)〜(7)のいずれかに記載の偏光板を備えてなることを特徴とする液晶表示装置。
本発明は、本発明者らの鋭意検討の結果得られた知見に基づいて完成されたものであり、素材や製造方法を適宜選択する等により、光学樹脂フィルムの面内のレターデーションと厚み方向のレターデーションの波長分散を独立に制御し、その光学的な最適値を求め、液晶セル、特にVAモードの液晶セルの黒状態の視角補償をほぼ全ての波長において可能にするものである。その結果、本発明の液晶表示装置は、黒表示時の斜め方向の光抜けが軽減され、視野角コントラストが著しく改善されている。また、本発明の液晶表示装置は、黒表示時の斜め方向の光抜けをほぼ全ての可視光波長領域で抑えることができるため、従来問題であった視野角に依存した黒表示時の色ずれが大きく改善されている。したがって本発明によれば、広範囲にわたり高いコントラスト比を有し、カラーシフトを抑制可能な光学樹脂フィルム、これを用いた偏光板および液晶表示装置を提供することができる。
以下、図面を用いて本発明の作用を説明する。図1は、一般的なVAモードの液晶表示装置の構成を示す模式図である。VAモードの液晶表示装置は、電圧無印加時、即ち黒表
示時に、液晶が基板面に対して垂直配向する液晶層を有する液晶セル3と、該液晶セル3を挟持し、且つ互いの透過軸方向(図1では縞線で示した)を直交させて配置された偏光板1及び偏光板2とを有する。図1中、光は、偏光板1側から入射するものとする。電圧無印加時に、法線方向、即ち、z軸方向に進む光が入射した場合、偏光板1を通過した光は、直線偏光状態を維持したまま、液晶セル3を通過し、偏光板2において完全に遮光される。その結果、コントラストの高い画像を表示できる。
しかし、図2に示す様に、斜光入射の場合には状況が異なる。光が、z軸方向でない斜め方向、即ち、偏光板1および2の偏光方向に対して斜めの方位(いわゆるOFF AXIS)から入射する場合、入射光は、液晶セル3の垂直配向した液晶層を通過する際に、斜め方向のレターデーションの影響を受け、その偏光状態が変化する。さらに、偏光板1と偏光板2の見かけの透過軸が直交配置からずれる。この2つの要因のため、OFF AXISにおける斜め方向からの入射光は、偏光板2で完全に遮光されず、黒表示時に光抜けが生じ、コントラストを低下させることになる。
ここで、極角と方位角を定義する。極角はフィルム面の法線方向、即ち、図1及び図2中のz軸からの傾き角であり、例えば、フィルム面の法線方向は、極角=0度の方向である。方位角は、x軸の正の方向を基準に反時計回りに回転した方位を表しており、例えばx軸の正の方向は方位角=0度の方向であり、y軸の正の方向は方位角=90度の方向である。前述したOFF AXISにおける斜め方向とは、極角が0度ではない場合で且つ、方位角=45度、135度、225度、315度の場合を主に指す。
図3に、本発明の作用を説明するための構成例についての模式図を示す。図3の構成は、図1の構成に、液晶セル3と偏光板1との間に光学樹脂フィルム(以下、光学補償フィルムともいう)4を配置した構成である。光学補償フィルム4は、前記のように、
(A)0.1<Re(450)/Re(550)<0.95
(B)1.03<Re(650)/Re(550)<1.93
(C)0.4<(Re/Rth(450))/(Re/Rth(550))<0.95
(D)1.05<(Re/Rth(650)/(Re/Rth(550))<1.9
の関係を満たしている。
本発明は、前記光学特性を有する光学補償フィルムを用いることによって、斜め方向に入射したR、G、B各波長の光について、各波長ごとに異なった遅相軸及びレターデーションで光学補償することを可能としている。その結果、従来の液晶表示装置と比較して、黒表示の視角コントラストを格段に向上されるとともに、さらに黒表示の視角方向における色づきも格段に軽減される。ここで、本明細書においては、R、G、Bの波長として、Rは波長650nm、Gは波長550nm、Bは波長450nmを用いた。R、G、Bの波長は必ずしもこの波長で代表されるものではないが、本発明の効果を奏する光学特性を規定するのに適当な波長であると考えられる。
特に、本発明では、ReとRthの比であるRe/Rthに着目している。これは、Re/Rthの値は、2軸性複屈折媒体を斜め方向に進む光の伝播における2つの固有偏光の軸を決定するものだからである。図4に本発明で用いられる光学補償フィルムに、斜め方向に進む光が入射した場合における、2つある固有偏光の1つの軸の方向とRe/Rthの関係を計算した結果の一例を示す。なお、光の伝播方向を、方位角=45度、極角=34度と仮定した。図4に示す結果から、Re/Rthが決まれば、固有偏光の1つの軸が決まることがわかる。光学補償フィルムを通過することによって入射光の偏光状態がどのように変化するかは、該光学補償フィルムの面内遅相軸方位及び該光学補償フィルムのレターデーションによって主に決定される。本発明では、R、G、B各波長について、Re/Rthの関係を規定することで、偏光状態の変化を主に決定するファクターである、面内遅相軸及びレターデーションの双方をR、G、B各波長において最適化している。そ
の結果、斜め方向から光が入射し、液晶層の斜め方向のレターデーションの影響を受け、且つ偏光板1と偏光板2の見かけの透過軸がずれているという2つの要因がある場合であっても、一の光学補償フィルムによる完全な補償を可能とし、コントラストの低下を軽減している。R、G、Bで可視光全領域を代表させてフィルムのパラメータを決めれば、可視光全領域でほぼ完全な補償をすることができるということになる。
なお、VAモードは、電圧無印加時、即ち黒表示時に液晶が垂直配向しているので、黒表示時に、法線方向から入射した光の偏光状態が、光学補償フィルム4のレターデーションによって影響されないように、光学補償フィルム4の面内遅相軸を、偏光板1又は偏光板2と垂直または平行にするのが好ましい。偏光板2と液晶セル3との間にも光学補償フィルムを配置してもよく、かかる場合も、光学補償フィルムの面内遅相軸を、偏光板1又は偏光板2と垂直または平行にするのが好ましい。
図5に、図3の構成における補償機構について、ポアンカレ球を用いて説明した図を示す。ここで、光の伝播方向は方位角=45度、極角=34度である。図5中、S2軸は、紙面上から下に垂直に貫く軸であり、図5は、ポアンカレ球を、S2軸の正の方向から見た図である。また、図5は、平面的に示されているので、偏光状態の変化前と変化後の点の変位は、図中直線の矢印で示されているが、実際は、液晶層や光学補償フィルムを通過することによる偏光状態の変化は、ポアンカレ球上では、それぞれの光学特性に応じて決定される特定の軸の回りに、特定の角度回転させることで表される。
図3中の偏光板1を通過した入射光の偏光状態は、図5では点(i)に相当し、図3中の偏光板2の吸収軸によって遮光される偏光状態は、図5では点(ii)に相当する。従来、VAモードの液晶表示装置において、斜め方向におけるOFF AXISの光抜けは、この点(i)と点(ii)がずれていることに起因する。光学補償フィルムは、一般的に、液晶層における偏光状態の変化も含めて、入射光の偏光状態を点(i)から点(ii)に変化させるために用いられる。液晶セル3の液晶層は正の屈折率異方性を示し、垂直配向しているので、液晶層を通過することによる入射光の偏光状態の変化は、ポアンカレ球上では、図5中の上から下への矢印で示され、S1軸回りの回転として表される。従って、液晶層を通過後の可視光が、偏光板2で完全に遮光されるには、回転前の出発点は、R、G、Bそれぞれについて、点(ii)をS1軸回りに回転した線上になくてはならない。また、その回転角度は、液晶層の斜め方向からの実効的なレターデーションΔn’d’を波長で割った値Δn’d’/λに比例するので、波長が異なるR、G、Bの各波長においては、回転角度は一致しない。従って、回転後に、R、G、Bそれぞれの偏光状態が全て点(ii)となるためには、図5に示す様に、回転前のR、G、Bそれぞれの偏光状態が、点(ii)をS1軸回りに回転した線上であって、且つそれぞれの回転角度に応じた点に位置する必要がある。本発明では、光学補償フィルム4を通過した後、液晶セル3を通過する前のR、G、Bそれぞれの偏光状態を、上記した偏光状態とするために、R、G、BそれぞれのRe/Rthが一定の関係を満たす光学補償フィルムを配置して、光学補償を行っている。
一方、従来技術の一例について、同様に図6に示す。図6に示す例は、波長に対しRe/Rthが一定の光学補償フィルムを用いた場合の例である。この場合、例えば、光学補償フィルムの光学特性を、G光について、液晶層による回転前の出発点が、点(ii)をS1軸回りに回転した線上に位置する様に調整しても、R光及びB光については、かかる線上に位置させることはできない。従って、液晶層を通過したR及びB光は、点(ii)の偏光状態には変化せず、偏光板の吸収軸によって完全に遮光することはできない。その結果、R光及びB光の光抜けが生じ、黒表示で色ずれが生じることになる。R光及びB光のみに対して最適化した光学補償フィルムを使用しても同様である。
本発明は、入射光が法線方向とそれに対して傾いた斜め方向、例えば極角60度方向とで、レターデーションの波長分散が異なる光学特性をフィルムに持たせ、それを光学補償に積極的に用いることを特徴としている。本発明の範囲は、液晶層の表示モードによって限定されず、VAモード、IPSモード、ECBモード、TNモードおよびOCBモード等、いずれの表示モードの液晶層を有する液晶表示装置にも用いることができる。
次に、本発明の光学樹脂フィルム(光学補償フィルム)について、光学特性、原料、製造方法等について、より詳細に説明する。
なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記載は、「アクリレート及びメタクリレートの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリル酸」等も同様である。
[光学補償フィルム]
本発明の光学補償フィルムは、液晶表示装置、特にVAモードの液晶表示装置の視野角コントラストの拡大、及び視野角に依存した色ずれの軽減に寄与する。本発明の光学補償フィルムは、観察者側の偏光板と液晶セルとの間に配置しても、背面側の偏光板と液晶セルとの間に配置してもよいし、双方に配置してもよい。例えば、独立の部材として液晶表示装置内部に組み込むこともできるし、また、偏光子を保護する保護膜に、前記光学特性を付与して光学補償フィルムとしても機能させて、偏光板の一部材として、液晶表示装置内部に組み込むこともできる。
本発明の光学補償フィルムは、上記した様に、
(A)0.1<Re(450)/Re(550)<0.95
(B)1.03<Re(650)/Re(550)<1.93
(C)0.4<(Re/Rth(450))/(Re/Rth(550))<0.95
(D)1.05<(Re/Rth(650)/(Re/Rth(550))<1.9
の関係を満たしている。
好ましくは、
(A)0.3<Re(450)/Re(550)<0.9
(B)1.05<Re(650)/Re(550)<1.8
(C)0.6<(Re/Rth(450))/(Re/Rth(550))<0.8
(D)1.2<(Re/Rth(650)/(Re/Rth(550))<1.7
である。
なお、R、G、BそれぞれにおけるRe/Rthは、いずれも0.1〜0.8の範囲であるのが好ましい。
また、光学補償フィルム全体の厚み方向のレターデーション(Rth)は、液晶層のレターデーションをキャンセルさせるのに相当しているのが好ましいので、各液晶層の態様によって好ましい範囲も異なる。例えば、VAモードの液晶セル(例えば、厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・dが0.2〜1.0μmである液晶層を有するVAモードの液晶セル)の光学補償に用いられる場合は、70〜400nmであるのが好ましく、100nm〜400nmであるのがより好ましく、100〜300nmであるのがさらに好ましい。また、Reレターデーション値については特に制限はないが、一般的には20〜150nmであり、好ましくは20〜70nmであり、より好ましくは30〜70nmである。また、光学補償フィルムの厚みに関しては、特に制限はないが、110μm以下、好ましくは40〜110μmであり、より好ましくは60〜110μmであり、80〜110μmであることが好ましい。
光学補償フィルムは、それぞれ互いに直交するx、yおよびz軸方向に3つの平均屈折
率nx、nyおよびnzを有する。この3つの値が、光学補償フィルムの固有の屈折率であり、これらの値とフィルムの厚さd1とで、Rth及びReが決まる。従って、原料、その配合量、製造条件などを選択し、これらの値を所望の範囲に調整することで、上記光学特性を満足する光学補償フィルムを作製することができる。nx、ny及びnzは波長によって異なるので、Rth及びReも波長によって異なる。前記光学補償フィルムは、この特徴を利用することによって作製することができる。
本発明において、光学補償フィルムの素材については特に制限はない。例えば、延伸複屈折ポリマーフィルムであっても、液晶性化合物を特定の配向に固定することによって形成された光学異方性層であってもよい。また、光学補償フィルムは単層構造に限定されるものではなく、複数の層を積層した積層構造を有していてもよい。積層構造の態様では、各層の素材は同種でなくてもよく、例えば、ポリマーフィルムと液晶性化合物からなる光学異方性層との積層体であってもよい。
前記光学補償フィルムの作製に液晶性化合物を用いた場合は、液晶性化合物には多様な配向形態があるので、液晶性化合物を特定の配向状態に固定して作製した光学異方性層は、単層でまたは複数層の積層体により、所望の光学的性質を発現する。即ち、前記光学補償フィルムは、支持体と該支持体上に形成された1以上の光学異方性層とからなる態様であってもよい。かかる態様の光学補償フィルム全体のレターデーションは、光学異方性層の光学異方性によって調整することができる。液晶性化合物は、その分子の形状から、棒状液晶化合物と円盤状液晶化合物に分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがあり、いずれも使用することができる。前記光学補償フィルムの作製に液晶性化合物を使用する場合は、棒状液晶化合物または円盤状液晶性化合物を用いることが好ましく、重合性基を有する棒状液晶化合物または重合性基を有する円盤状液晶性化合物を用いるのがより好ましい。
また、光学補償フィルムは高分子フィルムからなっていてもよい。前記高分子フィルムは、延伸された高分子フィルムであることができる。高分子フィルムの材料は、一般に合成ポリマー(例、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ノルボルネン樹脂、トリアセチルセルロース)が用いられる。また、セルロースアシレートに、芳香環を有する棒状化合物(具体的には、二つの芳香族環を有する芳香族化合物)を添加した組成物をフィルムとした、セルロースアシレート系フィルムも好ましい。前記芳香族化合物の種類、添加量、フィルムの延伸条件を調整することによって、所望の光学特性を有する高分子フィルムを作製することができる。
(レターデーション分布)
本発明においては、光学補償フィルムの幅手方向の面内レターデーション(Re)の変動係数が5%以下であり、さらに好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下である。なおかつ、厚み方向のレターデーション(Rth)の変動係数は10%以下、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは5%以下である。
上記のレターデーション分布の数値は得られたフィルムの幅手方向に1cm間隔でレターデーションを測定し、得られたレターデーションの変動係数(標準偏差を平均値で除した値)で表したものである。
(レターデーションの測定方法)
自動複屈折計KOBRA21ADH(王子計測器(株)製)を用いて25℃60%RHの環境下で波長590nmにおいて試料の幅手方向に1cm間隔で3次元複屈折率測定を行う。得られたRe,Rthについて下記式で変動係数(CV)を求めた。
変動係数(CV)=標準偏差/レターデーション平均値×100
(波長分散特性)
自動複屈折計KOBRA21ADH(王子計測器(株)製)を用いて25℃60%RHの環境下で波長450nm,550nm,650nmにおいて3次元複屈折測定を行った。それぞれ得られた値をRe(450)、Re(550),Re(650)とした。
[製造方法]
本発明のフィルムの製造時においては、以下の、製造方法1または製造方法2を採用することが好ましい。
また、製造方法1及び製造方法2を兼ね備えた製造方法も好ましい。
本発明に好ましい製造方法1及び製造方法2については以下に詳細には述べる。
(製造方法1)
本発明による幅手方向のレターデーションのばらつきが小さいフィルムを作成するためにはフィルム延伸プロセスでの乾燥条件を制御することが重要である。延伸プロセスでは通常テンターを使用する。
製造方法1において通常、テンターは、フィルムを幅手方向に把持する工程A、フィルムを幅手方向に延伸する工程B、幅手方向にフィルムを緩和する工程Cがこの順に構成されている。
好ましくは、把持工程及び延伸工程での平均乾燥速度をA%/sec、緩和工程での平均乾燥速度をB%/secとした場合、A/Bが1.9〜4.2の範囲でフィルムを乾燥することでレターデーション分布の小さいフィルムを実現することができる。
ここで乾燥速度とは、上記工程でフィルムに含有されている溶媒の含有量、すなわち残留溶媒量(質量%)の単位時間当たりの減少量(%)で表す。具体的な測定方法としては、平均乾燥速度を測定する工程で、例えば、任意の点で、5m間隔で乾燥中のフィルム試料をサンプリングし、各々の位置での残留溶媒量を測定し、これを数十箇所で測定し、搬送速度(m/min)より1分当たりの残留溶媒量の減少量(%)を測定し、この平均値を算出して、平均乾燥速度として求めることができる。
本発明においては、把持工程Aおよび延伸工程Bとの平均乾燥速度A%/secと緩和工程Cでの平均乾燥速度B%/secとの比A/Bが1.9〜4.2とすることが好ましく、より好ましくは2.4〜4.1である。このようなA/Bの範囲となるように平均乾燥速度を調整する手段としては、特に制限はないが、各工程での乾燥温度と乾燥風量で調整することが最も有効である。また、このときフィルムの幅手方向で乾燥温度および乾燥風量を均一にすることが非常に重要である。
(製造方法2)
また、本発明者らは鋭意検討の結果、フィルムを延伸する延伸工程と収縮させる収縮工程とを含むことを特徴とする製造方法により、上記好ましい光学物性を有する光学フィルムが得られることを見出した。
本発明においては特にフィルムの搬送方向に延伸する延伸工程と、フィルムの幅方向にフィルムを把持しながら収縮させる収縮工程とを含むことを特徴とする光学フィルムの製造方法、あるいはフィルムの幅方向に延伸する延伸工程と、フィルムの搬送方向に収縮させる収縮工程とを含むことを特徴とする光学フィルムの製造方法が好ましく用いられる。
[本発明のフィルムに使用可能なポリマー]
本発明のフィルムに使用可能なポリマーとしては、例えば、後述のセルロースアシレートが好適であるが、セルロースアシレートに限定されず、光学フィルムとして使用可能なポリマー全般に適用可能で、セルロースアシレートと同様な効果が見込める。
これらの光学フィルムとして使用可能なポリマーとしては、例えばポリカーボネート共重合体や、環状オレフィン構造を有する重合体樹脂が挙げられる。またこれらのポリマーを用いた場合環境変化耐性の良いフィルムが得られることがある。
ポリカーボネート共重合体の例としては、下記式(Z)で示される繰り返し単位および下記式(B)で示される繰り返し単位からなり、上記式(Z)で表される繰り返し単位が全体の80〜30mol%を占めるポリカーボネート共重合体が挙げられる。
Figure 2007079533

上記式(Z)において、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子及び炭素数1〜6の炭化水素基から選ばれる。かかる炭素数1〜6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基が挙げられる。この中で、水素原子、メチル基が好ましい。
上記式(Z)において、Xは下記式(X)であり、RおよびR10はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基である。ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基としては上記したものと同じものをあげることができる。
Figure 2007079533
Figure 2007079533
上記式(B)において、R11〜R18はそれぞれ独立に水素原子、ハロン原子及び炭素数1〜22の炭化水素基から選ばれる。かかる炭素数1〜22の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜9のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等のアリール基が挙げられる。この中で、水素原子、メチル基が好ましい。
上記式(B)において、Yは下記式群であり、R19〜R21、R23及びR24はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子及び炭素数1〜22の炭化水素基から選ばれる少なくとも1種の基である。かかる炭化水素基については、上記したものと同じものを挙げることができる。R22及びR25はそれぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基から選ばれ、かかる炭化水素基としてはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基、ナフチレン基、ターフェニレン基が挙げられる。Ar〜Arとしてはフェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基を挙げられる。
Figure 2007079533
上記ポリカーボネート共重合体としては、下記式(C)で示される繰り返し単位30〜60mol%、と、下記式(D)で示される繰り返し単位70〜40mol%とからなるポリカーボネート共重合体が好ましい。
Figure 2007079533
Figure 2007079533
さらに好ましくは上記式(C)で示される繰り返し単位45〜55mol%と上記式(D)で示される繰り返し単位55〜45mol%とからなるポリカーボネート共重合体である。
上記式(C)においてR26〜R27はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、取り扱い性の点から好ましくはメチル基である。
上記式(D)においてR28〜R29はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、経済性、フィルム特性等から水素原子が好ましい。
本発明における光学フィルムは、上記したフルオレン骨格を有するポリカーボネート共重合体を用いたものが好ましい。このフルオレン骨格を有するポリカーボネート共重合体
としては、例えば上記式(Z)で表わされる繰り返し単位と上記式(B)で表わされる繰り返し単位とからなる異なる組成比のポリカーボネート共重合体のブレンド体がよく、上記式(Z)の含有率はポリカーボネート共重合体全体の80〜30mol%が好ましく、より好ましくは75〜35mol%であり、さらに好ましくは70〜40mol%である。
上記共重合体は、上記式(Z)および(B)で表わされる繰り返し単位をそれぞれ2種類以上組み合わせたものでもよい。
ここで上記モル比は、光学フィルムを構成するポリカーボネートバルク全体で、例えば核磁気共鳴(NMR)装置により求めることができる。
上記したポリカーボネート共重合体は公知の方法によって製造し得る。ポリカーボネートはジヒドロキシ化合物とホスゲンとの重縮合による方法、溶融重縮合法等が好適に用いられる。
上記ポリカーボネート共重合体の極限粘度は0.3〜2.0dl/gであることが好ましい。0.3未満では脆くなり機械的強度が保てないといった問題があり、2.0を超えると溶液粘度が上がりすぎるため溶液製膜においてダイラインの発生等の問題や、重合終了時の精製が困難になるといった問題がある。
また本発明の光学フィルムは、前記ポリカーボネート共重合体と、その他の高分子化合物との組成物(ブレンド体)であってもよい。この場合、該高分子化合物としては、光学的に透明である必要があることから前記ポリカーボネート共重合体と相溶できるもの、または、各々の高分子の屈折率が略等しいことが好ましい。その他の高分子の具体例としては、ポリ(スチレン−コ−マレイン酸無水物)などが挙げられ、ポリカーボネート共重合体と高分子化合物との組成比は、ポリカーボネート共重合体80〜30質量%、高分子化合物体20〜70質量%、好ましくはポリカーボネート共重合体80〜40質量%、高分子化合物体20〜60質量%である。ブレンド体の場合も、上記ポリカーボネート共重合体の繰り返し単位はそれぞれ2種類以上組み合わせてもよい。またブレンド体の場合、相溶性ブレンドが好ましいが、完全に相溶しなくても成分間の屈折率を合わせれば成分間の光散乱を抑え、透明性を向上させることが可能である。なお、ブレンド体は、3種類以上の材料を組合わせてもよく、複数種類のポリカーボネート共重合体とその他の高分子化合物とを組合わせることができる。
ポリカーボネート共重合体の質量平均分子量は、1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000である。その他の高分子化合物の質量平均分子量は、500〜100,000、好ましくは1,000〜50,000である。
環状オレフィン構造を有する重合体樹脂(以下、「環状ポリオレフィン系樹脂」あるいは「環状ポリオレフィン」ともいう)の例には、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィンの重合体、(3)環状共役ジエンの重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及び(1)〜(4)の水素化物などがある。本発明に好ましい重合体は下記一般式(ロ)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含む付加(共)重合体環状ポリオレフィン、および必要に応じて一般式(イ)で表される繰り返し単位の少なくとも1種以上を更に含んでなる付加(共)重合体環状ポリオレフィンである。また、一般式(ハ)で表される環状繰り返し単位を少なくとも1種含む付加(共)重合体(開環(共)重合体も含む)も好適に使用することができる。また、一般式(ハ)で表される繰り返し単位を少なくとも一種に、必要に応じて一般式(イ)で表される繰り返し単位の少なくとも1種以上を更に含んでなる付加(共)重合体環状ポリオレフィンも好ましく使用することができる。
Figure 2007079533
Figure 2007079533
Figure 2007079533
一般式(イ)〜(ハ)中、mは0〜4の整数を表す。R1〜R6は水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基、X1〜X3およびY1〜Y3は、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CH2)nCOOR11、−(CH2)nOCOR12、−(CH2)nNCO、−(CH2)nNO2、−(CH2)nCN、−(CH2)nCONR1314、−(CH2)nNR1314、−(CH2)nOZ、−(CH2)nW、またはX1とY1、X2とY2あるいはX3とY3から構成された(−CO)2O、(−CO)2NR15を示す。なお、R11,R12,R13,R14,R15は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、Zは炭化水素基またはハロゲンで置換された炭化水素基、WはSiR16 p3−p(R16は炭素数1〜10の炭化水素基、Dはハロゲン原子−OCOR16または−OR16、pは0〜3の整数を示す)、nは0〜10の整数を示す。
1〜X3 、Y1 〜Y3の置換基に分極性の大きい官能基を導入することにより、光学フィルムの厚さ方向レターデーション(Rth)を大きくし、面内レターデーション(Re)の発現性を大きくすることが出来る。Re発現性の大きなフィルムは、製膜過程で延伸することによりRe値を大きくすることができる。
ノルボルネン系付加(共)重合体は、特開平10−7732号、特表2002−504184号、US2004229157A1号あるいはWO2004/070463A1号等に開示されている。ノルボルネン系多環状不飽和化合物同士を付加重合する事によって得られる。また、必要に応じ、ノルボルネン系多環状不飽和化合物と、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、イソプレンのような共役ジエン;エチリデンノルボルネンのような非共役ジエン;アクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、酢酸ビニル、塩化ビニルなどの線状ジエン化合物とを付加重合することもできる。このノルボルネン系付加(共)重合体は、三井化学(株)よりアペルの商品名で発売されており、ガラス転移温度(Tg)の異なる例えばAPL8008T(Tg70℃)、APL6013T(Tg125℃)あるいはAPL6015T(Tg145℃)などのグレードがある。ポリプラスチック(株)よりTOPAS8007、同6013、同6015などのペレットが発売されている。更に、Ferrania社よりAppear3000が発売されている。
ノルボルネン系重合体水素化物は、特開平1−240517号、特開平7−196736号、特開昭60−26024号、特開昭62−19801号、特開2003‐159767号あるいは特開2004‐309979号等に開示されているように、多環状不飽和化合物を付加重合あるいはメタセシス開環重合したのち水素添加することにより作られる。本発明に用いるノルボルネン系重合体において、R5〜R6は水素原子又は−CH3 が好ましく、X3、及びY3 は水素原子、Cl、−COOCH3 が好ましく、その他の基は適宜選択される。このノルボルネン系樹脂は、JSR(株)からアートン(Arton)GあるいはアートンFという商品名で発売されており、また日本ゼオン(株)からゼオノア(Zeonor)ZF14、ZF16、ゼオネックス(Zeonex)250あるいはゼオネックス280という商品名で市販されており、これらを使用することができる。
以下に、本発明の光学樹脂フィルムの原料および製造方法、これを用いた偏光板及び液晶表示装置等について、主にセルロースアシレートを使用する場合を例として説明するが、本発明においては、セルロースアシレートに限定されない。
(セルロースアシレート)
次に本発明で有用なセルロースアシレートについて説明する。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートはこれらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位それぞれについてセルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)を意味する。
全アシル置換度、すなわちDS2+DS3+DS6は2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.20〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.82である。またDS6/(DS2+DS3+DS6)は0.315以上が好ましく、より好ましくは、0.32以上、最も好ましくは、0.325以上である。
ここでDS2はグルコース単位の2位の水酸基のアシル化による置換度(以下「2位のアシル置換度」とも言う)であり、DS3は3位の水酸基のアシル化による置換度(以下「3位のアシル置換度」とも言う)でありDS6は6位の水酸基のアシル化による置換度(以下「6位のアシル置換度」とも言う)である。
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでも良いし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されても良い。2種類以上のアシル基を用いる時は、その一つがアセチル基であることが好ましい。2位、3位および6位の水酸基のアセチル基による置換度の総和をAとし、2位、3位および6位の水酸基のプロピオニル基による置換度をB、ブチリル基による置換度をCとすると、Aは1.60〜2.0が好ましく、より好ましくは1.7〜1.9である。また、B+Cは0.60〜0.80が好ましく、より好ましくは0.65〜0.75である。
アセチル基、プロピオニル基および/またはブチル基の置換度はASTM:D−817−96(セルロースアセテート等の試験方法)に従い測定し、計算で求めることができる。
セルロースエステルの2位、3位および6位の未置換の水酸基量は、セルロースアセテートの残存水酸基を別のアシル基で置換処理した後、13C−NMRによる測定によって求めることができる。測定方法の詳細については、手塚他(Carbohydr.Res.273(1995)p.83−91)に記載がある。
(セルロースアシレートの合成方法)
セルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法である。
前記セルロースアシレートを得るには、具体的には、綿花リンタや木材パルプ等のセルロース原料を適当量の酢酸で前処理した後、予め冷却したカルボン酸化混液に投入してエ
ステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。上記カルボン酸化混液は、一般に溶媒としての酢酸、エステル化剤としての無水カルボン酸および触媒としての硫酸を含む。無水カルボン酸は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。エステル化反応終了後に、系内に残存している過剰の無水カルボン酸の加水分解およびエステル化触媒の一部の中和のために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩または酸化物)の水溶液を添加する。次に、得られた完全セルロースアシレートを少量の酢化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、50〜90℃に保つことによりケン化熟成し、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは中和することなく水または希硫酸中にセルロースアシレート溶液を投入(あるいは、セルロースアシレート溶液中に、水または希硫酸を投入)してセルロースアシレートを分離し、洗浄および安定化処理を行う等して、前記の特定のセルロースアシレートを得ることができる。
前記セルロースアシレートフィルムは、フィルムを構成するポリマー成分が実質的に上記の特定のセルロースアシレートからなることが好ましい。『実質的に』とは、ポリマー成分の55質量%以上(好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上)を意味する。
前記セルロースアシレートは、粒子状で使用することが好ましい。使用する粒子の90質量%以上は、0.5〜5mmの粒子径を有することが好ましい。また、使用する粒子の50質量%以上が1〜4mmの粒子径を有することが好ましい。セルロースアシレート粒子は、なるべく球形に近い形状を有することが好ましい。
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で、好ましくは200〜700、より好ましくは250〜550、更に好ましくは250〜400であり、特に好ましくは250〜350である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、「繊維学会誌」、1962年、第18巻第1号、105〜120頁)により測定できる。更に特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため、前記セルロースアシレートとしては低分子成分を除去したものが有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロースアシレート100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。セルロースアシレートの製造時に使用される際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下である。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており含水率2.5〜5質量%が知られている。本発明でこのセルロースアシレートの含水率にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。
前記セルロースアシレートの原料綿や合成方法は、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.7−12に詳細に記載されている原料綿や合成方法を採用できる。
本発明に関するセルロースアシレートフィルムは、前記セルロースアシレートと必要に応じて添加剤とを有機溶媒に溶解させた溶液を用いてフィルム化することにより得ること
ができる。
(添加剤)
本発明において前記セルロースアシレート溶液等の樹脂溶液に用いることができる添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、レターデーション(光学異方性)発現剤、レターデーション(光学異方性)減少剤、微粒子、染料、剥離促進剤、赤外吸収剤などを挙げることができる。本発明においては、レターデーション発現剤を用いるのが好ましい。また、可塑剤、紫外線吸収剤、剥離促進剤、染料及びマット剤の少なくとも1種以上を用いるのが好ましい。
それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収剤を混合して用いたり、同様に可塑剤を混合して用いることができ、例えば特開2001−151901号公報などに記載されている。
紫外線吸収剤としては、目的に応じ任意の種類のものを選択することができ、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、ニッケル錯塩系等の吸収剤を用いることができ、好ましくはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系である。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アセトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4,4’−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシ)プロポキシベンゾフェノン等を挙げることができる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。サリチル酸エステル系としては、フェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート等を挙げることができる。これら例示した紫外線吸収剤の中でも、特に2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4,4’−メトキシベンゾフェノン、2(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾールが特に好ましい。
紫外線吸収剤は、吸収波長の異なる複数の吸収剤を複合して用いることが、広い波長範囲で高い遮断効果を得ることができるので好ましい。液晶用紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。特に好ましい紫外線吸収剤は、先に上げたベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロースエステルに対する不要な着色が少ないことから、好ましい。
また、紫外線吸収剤については、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載の化合物も用いることができる。
紫外線吸収剤の添加量は、セルロースアシレートに対し0.001〜5質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。添加量が0.001質量%未満では添加効果を十分に発揮することができず、添加量が5質量%を超えると、フィルム表面へ紫外線吸収剤がブリードアウトする場合がある。
また、紫外線吸収剤はセルロースアシレート溶解時に同時に添加しても良いし、溶解後のドープに添加しても良い。特にスタティックミキサ等を用い、流延直前にドープに紫外線吸収剤溶液を添加する形態が、分光吸収特性を容易に調整することができ、好ましい。
前記劣化防止剤は、セルローストリアセテート等が劣化、分解するのを防止することができる。劣化防止剤としては、ブチルアミン、ヒンダードアミン化合物(特開平8−325537号公報)、グアニジン化合物(特開平5−271471号公報)、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤(特開平6−235819号公報)、ベンゾフェノン系UV吸収剤(特開平6−118233号公報)などの化合物がある。
可塑剤としては、リン酸エステル、カルボン酸エステルであることが好ましい。また、前記可塑剤が、トリフェニルフォスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレートから選ばれたものであることがより好ましい。さらに、前記可塑剤が、(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、グリセロールエステル類、ジグリセロールエステル類であることが好ましい。
剥離促進剤としてはクエン酸のエチルエステル類が例として挙げられる。さらに赤外吸収剤としては例えば特開平2001−194522号公報に記載されている。
また、本発明では、色相調整のための染料を添加してもよい。染料の含有量は、セルロースアシレートに対する質量割合で10〜1000ppmが好ましく、50〜500ppmが更に好ましい。この様に染料を含有させることにより、セルロースアシレートフィルムのライトパイピングが減少でき、黄色味を改良することができる。これらの化合物は、セルロースアシレート溶液の調製の際に、セルロースアシレートや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。又インライン添加する紫外線吸収剤液に添加しても良い。
本発明で用いられる染料は好ましくは下記一般式(I)または(II)で表される化合物である。
一般式(I)
Figure 2007079533

式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、各々独立して、水素原子、水酸基、脂肪族基、芳香族基、複素環基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、COR9、COOR9、NR910、NR10COR11、NR10SO211、CONR910、SO2NR910、COR11、SO211、OCOR11、NR9CONR1011、CONHSO211、またはSO2NHCOR11を表わし、R9、およびR10は各々独立して、水素原子、脂肪族基、芳香族基、または複素環基を表わし、R11は脂肪族基、芳香族基、または複素環基を表わし、R9とR10は連結して5又は6員環を形成していてもよく、R1とR2もしくはR2とR3は各々連結して環を形成してもよい。
一般式(II)
Figure 2007079533

式中、R21、R23、R24は各々独立して、水素原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、脂肪族基、芳香族基、COR29、COOR29、NR2930、NR30COR31、またはNR30SO231を表わし、R22は脂肪族基又は芳香族基を表わし、R29、R30は一般式(I)におけるR9、R10と同義であり、R31は一般式(I)におけるR11と同義である。但し、R21、R22、R23、R24のうち1個以上は水素以外の基である。
以下に一般式(I)の各基について詳細に説明する。R1〜R11で表わされる脂肪族基は、炭素数1〜20のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n−ブチル、イソプロピル、2−エチルヘキシル、n−デシル、n−オクタデシル)、炭素数1〜20のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル)又はアリル基を表わし、置換基〔例えば、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I)、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボン酸基、炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル、ナフチル)、炭素数0〜20のアミノ基(例えば、NH2、NHCH3、N(C252、N(C492、N(C8172、アニリノ、4−メトキシアニリノ)、炭素数1〜20のアミド基(例えば、アセチルアミノ、ヘキサノイルアミノ、ベンゾイルアミノ、オクタデカノイルアミノ)、炭素数1〜20のカルバモイル基(例えば、無置換のカルバモイル、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、オクチルカルバモイル、ヘキサデシルカルバモイル)、炭素数2〜20のエステル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、フェノキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル)、炭素数1〜20のアルコキシ基又はアリーロキシ基(メトキシ、エトキシ、ブトキシ、イソプロポキシ、ベンジルオキシ、フェノキシ、オクタデシルオキシ)、炭素数1〜20のスルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、エタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、オクタンスルホンアミド)、炭素数0〜20のスルファモイル基(例えば、無置換のスルファモイル、メチルスルファモイル、ブチルスルファモイル、デシルスルファモイル)、5又は6員の複素環(例えば、ピリジル、ピラゾリル、モルホリノ、ピペリジノ、ピロリノ、ベンズオキサゾリル)〕を有していてもよい。
1〜R11で表わされる芳香族基は炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル、ナフチル)を表わし、置換基〔例えば、前記した脂肪族基が有しても良い置換基として挙げた各基の他、炭素数1〜20のアルキル基(例えば、メチル、エチル、ブチル、t−ブチル、オクチル)等〕を有していてもよい。
1〜R11で表わされる複素環基は5又は6員の複素環(例えば、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、ピロリジン、ピラゾール、ピラゾリジン、ピラゾリン、ピラゾロン、ベンズオキサゾール)を表わし、置換基(例えば、前記した芳香族基が有しても良い置換基として挙げた各基)を有していてもよい。
9とR10が連結して形成される5又は6員環としては、モルホリン環、ピペリジン環、ピロリジン環を挙げることができる。R1とR2又はR2とR3が連結して形成される環としては5又は6員環(例えば、ベンゼン環、フタルイミド環)が好ましい。
次に一般式(II)の各基について説明する。R21〜R24で表わされる脂肪族基は、一般式(I)におけるR1〜R11が表わす脂肪族基と同義であり、R21〜R24で表わされる芳香族基は、一般式(I)におけるR1〜R11が表わす芳香族基と同義である。
これらの添加剤を添加する時期はドープ作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層である場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。これら添加剤の種類や添加量の選択によって、セルロースアシレートフィルムの動的粘弾性測定機(バイブロン:DVA−225(アイティー計測制御(株)製)で測定するガラス転移点Tgを70〜150℃に、より好ましくは、ガラス転移点Tgが80〜135℃にすることが好ましい。すなわち、本発明に関するセルロースアシレートフィルムは、偏光板加工や液晶表示装置組立ての工程適性の点で、ガラス転移点Tgを上記の範囲とすることが好ましい。
さらに添加剤については、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.16以降に詳細に記載されているものを適宜用いることができる。
(レターデーション発現剤)
本発明では光学異方性を大きく発現させ、好ましいレターデーション値を実現するため、レターデーション発現剤を用いるのが好ましい。
レターデーション発現剤とは、セルロースアシレート等を含むポリマー成分100質量部に対して1質量部の添加により、Rthの値をフィルム膜厚1ミクロンあたり0.11以上上昇させるものである。より好ましくはフィルム膜厚1ミクロンあたり0.2以上、さらに好ましくはフィルム膜厚1ミクロンあたり0.3以上レターデーションを上昇させるものである。
本発明において用いることができるレターデーション発現剤としては、棒状又は円盤状化合物からなるものを挙げることができる。
上記棒状又は円盤状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用い
ることができる。
棒状化合物からなるレターデーション発現剤の添加量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して0.1乃至30質量部であることが好ましく、0.5乃至20質量部であることがさらに好ましい。
円盤状のレターデーション発現剤は、前記セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して、0.05乃至30質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1乃至20質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.2乃至15質量部の範囲で使用することがさらに好ましく、0.5乃至10質量部の範囲で使用することが最も好ましい。
円盤状化合物はRthレターデーション発現性において棒状化合物よりも優れているため、特に大きなRthレターデーションを必要とする場合には好ましく使用される。
二種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
棒状または円盤状化合物からなる前記レターデーション発現剤は、250乃至400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
円盤状化合物について説明する。円盤状化合物としては少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることができる。
本明細書において、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が好ましく、特に1,3,5−トリアジン環が好ましく用いられる。具体的には例えば特開2001−166144号公報に開示の化合物が円盤状化合物として好ましく用いられる。
前記円盤状化合物が有する芳香族環の数は、2乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがより好ましく、2乃至8であることがさらに好ましく、2乃至6であることが最も好ましい。
二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合および(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。
(a)の縮合環(二つ以上の芳香族環の縮合環)の例には、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドリジン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、インダゾール環、クロメン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環およびチアントレン環が含まれる。ナフタレン環、アズレン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環およびキノリン環が好ましい。
(b)の単結合は、二つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。二以上の単結合で二つの芳香族環を結合して、二つの芳香族環の間に脂肪族環または非芳香族性複素環を形成してもよい。
(c)の連結基も、二つの芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−またはそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。
c1:−CO−O−
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−
c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c14:−NH−CO−アルケニレン−
c15:−O−CO−アルケニレン−
芳香族環および連結基は、置換基を有していてもよい。
置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、スルファモイル基、ウレイド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基および非芳香族性複素環基が含まれる。
アルキル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、さらに置換基(例、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、4−カルボキシブチル基、2−メトキシエチル基および2−ジエチルアミノエチル基が含まれる。
アルケニル基の炭素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル基、アリル基および1−ヘキセニル基が含まれる。
アルキニル基の炭素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルキケニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル基、1−ブチ
ニル基および1−ヘキシニル基が含まれる。
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル基、プロパノイル基およびブタノイル基が含まれる。
脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシ基が含まれる。
アルコキシ基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルコキシ基は、さらに置換基(例、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基およびメトキシエトキシ基が含まれる。
アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基およびエトキシカルボニル基が含まれる。
アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノ基およびエトキシカルボニルアミノ基が含まれる。
アルキルチオ基の炭素原子数は、1乃至12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ基、エチルチオ基およびオクチルチオ基が含まれる。
アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニル基およびエタンスルホニル基が含まれる。
脂肪族アミド基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミド基が含まれる。
脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基およびn−オクタンスルホンアミド基が含まれる。
脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基および2−カルボキシエチルアミノ基が含まれる。
脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル基およびジエチルカルバモイル基が含まれる。
脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイル基およびジエチルスルファモイル基が含まれる。
脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイド基が含まれる。
非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノ基およびモルホリノ基が含まれる。
円盤状化合物からなるレターデーション発現剤の分子量は、300乃至800であることが好ましい
本発明では前述の円盤状化合物の他に、直線的な分子構造を有する棒状化合物も好ましく用いることができる。直線的な分子構造とは、熱力学的に最も安定な構造において棒状化合物の分子構造が直線的であることを意味する。熱力学的に最も安定な構造は、結晶構造解析または分子軌道計算によって求めることができる。例えば、分子軌道計算ソフト(例、WinMOPAC2000、富士通(株)製)を用いて分子軌道計算を行い、化合物の生成熱が最も小さくなるような分子の構造を求めることができる。分子構造が直線的であるとは、上記のように計算して求められる熱力学的に最も安定な構造において、分子構造で主鎖の構成する角度が140度以上であることを意味する。
棒状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有するものが好ましく、少なくとも二つの芳香族環を有する棒状化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
一般式(1):Ar1−L1−Ar2
上記一般式(1)において、Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。
本明細書において、芳香族基は、アリール基(芳香族性炭化水素基)、置換アリール基、芳香族性ヘテロ環基および置換芳香族性ヘテロ環基を含む。
アリール基および置換アリール基の方が、芳香族性ヘテロ環基および置換芳香族性ヘテロ環基よりも好ましい。芳香族性へテロ環基のヘテロ環は、一般には不飽和である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性へテロ環は一般に最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましく、窒素原子または硫黄原子がさらに好ましい。
芳香族基の芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環およびピラジン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
置換アリール基および置換芳香族性ヘテロ環基の置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基(例、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基)、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基(例、N−メチルカルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基(例、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基)、ウレイド基、アルキルウレイド基(例、N−メチルウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基、N,N,N'−トリメチルウレイド基)、アルキル基(例、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、s−ブチル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基)、アルケニル基(例、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基)、アルキニル基(例、エチニル基、ブチニル基)、アシル基(例、ホルミル基、アセチル基、ブチリル基、ヘキサノイル基、ラウリル基)、アシルオキシ基(例、アセトキシ基、ブチリルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ラウリルオキシ基)、アルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基)、アリールオキシ基(例、フェノキシ基)、アルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例、フェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニルアミノ基(例、ブトキシカルボニルアミノ基、ヘキシルオキシカルボニルアミノ基)、アルキルチオ基(例、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基)、アリールチオ基(例、フェニルチオ基)、アルキルスルホニル基(例、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、ヘプチルスルホニル基、オクチルスルホニル基)、アミド基(例、アセトアミド基、ブチルアミド基、ヘキシルアミド基、ラウリルアミド基)および非芳香族性複素環基(例、モルホリル基、ピラジニル基)が含まれる。
置換アリール基および置換芳香族性ヘテロ環基の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルキル置換アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基お
よびアルキル基が好ましい。
アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基およびアルキルチオ基のアルキル部分とアルキル基とは、さらに置換基を有していてもよい。アルキル部分およびアルキル基の置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、アルキルアミノ基、ニトロ、スルホ、カルバモイル、アルキルカルバモイル基、スルファモイル、アルキルスルファモイル基、ウレイド、アルキルウレイド基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アミド基および非芳香族性複素環基が含まれる。アルキル部分およびアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基およびアルコキシ基が好ましい。
一般式(1)において、L1は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる基から選ばれる二価の連結基である。
アルキレン基は、環状構造を有していてもよい。環状アルキレン基としては、シクロヘキシレンが好ましく、1,4−シクロへキシレンが特に好ましい。鎖状アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基の方が分岐を有するアルキレン基よりも好ましい。
アルキレン基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、より好ましくは1乃至15であり、さらに好ましくは1乃至10であり、さらに好ましくは1乃至8であり、最も好ましくは1乃至6である。
アルケニレン基およびアルキニレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。
アルケニレン基およびアルキニレン基の炭素原子数は、好ましくは2乃至10であり、より好ましくは2乃至8であり、さらに好ましくは2乃至6であり、さらに好ましくは2乃至4であり、最も好ましくは2(ビニレンまたはエチニレン)である。
アリーレン基は、炭素原子数は6乃至20であることが好ましく、より好ましくは6乃至16であり、さらに好ましくは6乃至12である。
一般式(1)の分子構造において、L1を挟んで、Ar1とAr2とが形成する角度は、140度以上であることが好ましい。
棒状化合物は、文献記載の方法により合成できる。文献としては、Mol.Cryst.Liq.Cryst.,53巻,229ページ(1979年)、同89巻,93ページ(1982年)、同145巻,111ページ(1987年)、同170巻,43ページ(1989年)、J.Am.Chem.Soc.,113巻,1349ページ(1991年)、同118巻,5346ページ(1996年)、同92巻,1582ページ(1970年)、J.Org.Chem.,40巻,420ページ(1975年)、Tetrahedron,48巻,16号,3437ページ(1992年)を挙げることができる。
また、本発明においては下記一般式(A)で表される棒状化合物を用いることがさらに好ましい。以下に一般式(A)で表される化合物について説明する。
Figure 2007079533
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R9およびR10はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R1、R2、R3、R4およびR5のうち少なくとも1つは電子供与性基を表す。R8は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜6のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜12のアシルアミノ基、シアノ基またはハロゲン原子を表す。)
一般式(A)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R9およびR10はそれぞれ独立に水素原子、または置換基を表し、置換基は後述の置換基Tが適用できる。
1、R2、R3、R4およびR5のうち少なくとも1つは電子供与性基を表す。好ましくはR1、R3またはR5のうちの1つが電子供与性基であり、R3が電子供与性基であることがより好ましい。
電子供与性基とはHammetのσp値が0以下のものを表し、Chem.Rev.,91,165(1991)記載のHammetのσp値が0以下のものが好ましく適用でき、より好ましくは−0.85〜0のものが用いられる。例えば、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基などが挙げられる。
電子供与性基として好ましくはアルキル基、アルコキシ基であり、より好ましくはアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6特に好ましくは炭素数1〜4である。)である。
一般式(A)のR1として好ましくは、水素原子または電子供与性基であり、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基であり、更に好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基であり、特に好ましくはアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4)であり、最も好ましくはメトキシ基である。
一般式(A)のR2として好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基であり、更に好ましくは水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4、より好ましくはメチル基である。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4)である。特に好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基である。
一般式(A)のR3として好ましくは、水素原子または電子供与性基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基であり、更に好ましくは、アルキル基、アルコキシ基であり、特に好ましくはアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4)である。最も好ましくはn−プロポキシ基、エトキシ基、メトキシ基である。
一般式(A)のR4として好ましくは、水素原子または電子供与性基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基であり、更に好ましくは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4)であり、特に好ましくは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基であり、最も好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基である。
一般式(A)のR5として好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基であり、更に
好ましくは水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4より好ましくはメチル基である。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6特に好ましくは炭素数1〜4)である。特に好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基である。
一般式(A)のR6、R7、R9およびR10として好ましくは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、水素原子、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子である。
一般式(A)のR8は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜6のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜12のアシルアミノ基、シアノ基またはハロゲン原子を表し、可能な場合には置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。
一般式(A)のR8として好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜6のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数2〜12のアリールオキシ基であり、より好ましくは、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、更に好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4である。)であり、特に好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基である。
一般式(A)のうち、より好ましくは下記一般式(I−A)である。
一般式(I−A)
Figure 2007079533
(式中、R11はアルキル基を表す。R1、R2、R4、R5、R6、R7、R9およびR10はそれぞれ独立に水素原子、または置換基を表す。R8は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜6のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜12のアシルアミノ基、シアノ基またはハロゲン原子を表す。)
一般式(I−A)中、R1、R2、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10はそれぞれ一般式(A)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
一般式(I−A)中、R11は炭素数1〜12のアルキル基を表し、R11で表されるアルキル基は直鎖でも分岐があってもよく、また更に置換基を有してもよいが、好ましくは炭素数1〜12のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜8アルキル基、更に好ましくは炭素数1〜6アルキル基、特に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる)を表す。
一般式(A)のうちより好ましくは下記一般式(I−B)である。
一般式(I−B)
Figure 2007079533
(式中、R1、R2、R4、R5、R6、R7、R9およびR10はそれぞれ独立に水素原子、または置換基を表す。R11は炭素数1〜12のアルキル基を表す。Xは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜6のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜12のアシルアミノ基、シアノ基またはハロゲン原子を表す。)
一般式(I−B)中、R1、R2、R4、R5、R6、R7、R9、およびR10は一般式(A)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
一般式(I−B)中、R11は一般式(I−A)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
一般式(I−B)中、Xは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜6のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜12のアシルアミノ基、シアノ基またはハロゲン原子を表す。
1、R2、R4、およびR5がすべて水素原子の場合にはXとして好ましくはアルキル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基であり、より好ましくは、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基であり、更に好ましくはアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4である。)であり、特に好ましくは、メトキシ基、メトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基である。
1、R2、R4、およびR5のうち少なくとも1つが置換基の場合にはXとして好ましくはアルキニル基、アリール基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、であり、より好ましくはアリール基(好ましくは炭素数6〜12)、シアノ基、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜12)であり、更に好ましくはアリール基(好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、より好ましくはフェニル基、p−シアノフェニル基、p−メトキシフェニルである。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素2〜12、より好ましくは炭素数2〜6、更に好ましくは炭素数2〜4、特に好ましくはメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニルである。)、シアノ基であり、特に好ましくは、フェニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、シアノ基である。
一般式(A)のうち更に好ましくは下記一般式(I−C)である。
一般式(I−C)
Figure 2007079533
式中、R1、R2、R4、R5、R11およびXは一般式(I−B)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
一般式(A)で表される化合物の中でより好ましいのは下記一般式(I−D)で表される化合物である。
一般式(I−D)
Figure 2007079533
(式中、R2、R4およびR5は一般式(I−C)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。R21、R22はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基である。X1は炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、又はシアノ基である。)
21は炭素数1〜4のアルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくはエチル基、メチル基である。
22は炭素数1〜4のアルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくはエチル基、メチル基であり、更に好ましくはメチル基である。
1は炭素数6〜12のアリール基、炭素2〜12アルコキシカルボニル基、又はシアノ基であり、好ましくは炭素数6〜10のアリール基、炭素数2〜6アルコキシカルボニル基、シアノ基であり、より好ましくはフェニル基、p−シアノフェニル基、p−メトキシフェニル基、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、シアノ基であり、更に好ましくは、フェニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、シアノ基である。
一般式(A)のうち最も好ましくは下記一般式(I−E)である。
一般式(I−E)
Figure 2007079533
(式中、R2、R4およびR5は一般式(I−D)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様だが、いずれか1つは−OR13で表される基である(R13は炭素数1〜4のアルキル基である。)。R21、R22、およびX1は一般式(I−D)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。)
一般式(I−E)中、R2、R4およびR5は一般式(I−D)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様だが、いずれか1つは−OR13で表される基であり(R13
は炭素数1〜4のアルキル基である。)、好ましくはR4、およびR5が−OR13で表される基であり、より好ましくはR4が−OR13で表される基である。
13は炭素数1〜4のアルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくはエチル基、メチル基であり、更に好ましくはメチル基である。
以下に前述の置換基Tについて説明する。
置換基Tとしては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。
また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
以下に一般式(A)で表される化合物に関して具体例をあげて詳細に説明するが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。
Figure 2007079533
Figure 2007079533
Figure 2007079533
Figure 2007079533
Figure 2007079533
Figure 2007079533
本発明一般式(A)で表される化合物は置換安息香酸とフェノール誘導体の一般的なエステル反応によって合成でき、エステル結合形成反応であればどのような反応を用いてもよい。例えば、置換安息香酸を酸ハロゲン化物に官能基変換した後、フェノールと縮合する方法、縮合剤あるいは触媒を用いて置換安息香酸とフェノール誘導体を脱水縮合する方法などがあげられる。
製造プロセス等を考慮すると置換安息香酸を酸ハロゲン化物に官能基変換した後、フェノールと縮合する方法が好ましい。
反応溶媒として炭化水素系溶媒(好ましくはトルエン、キシレンが挙げられる。)、エーテル系溶媒(好ましくはジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどが挙げられる)、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどを用いることができる。これらの溶媒は単独でも数種を混合して用いてもよく、反応溶媒として好ましくはトルエン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドである。
反応温度としては、好ましくは0〜150℃、より好ましくは0〜100℃、更に好ましくは0〜90℃であり、特に好ましくは20℃〜90℃である。
本反応には塩基を用いないのが好ましく、塩基を用いる場合には有機塩基、無機塩基のどちらでもよく、好ましくは有機塩基であり、ピリジン、3級アルキルアミン(好ましくはトリエチルアミン、エチルジイソプルピルアミンなどが挙げられる)である。
溶液の紫外線吸収スペクトルにおいて最大吸収波長(λmax)が250nmより短波長である棒状化合物を、二種類以上併用してもよい。
[マット剤微粒子]
本発明に関するセルロースアシレートフィルム等の光学樹脂フィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
前記二酸化珪素微粒子を用いる場合の使用量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して0.01〜0.3質量部とするのが好ましい。
これらの微粒子は、通常平均粒子径が0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子径は0.2μm以上1.5μm以下が好ましく、0.4μm以上1.2μm以下がさらに好ましく、0.6μm以上1.1μm以下が最も好ましい。1.5μmよりも大きいとヘイズが強くなり、0.2μmよりも小さいときしみ防止効果が小さくなる。
1次、2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とする。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とする。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
本発明において2次平均粒子径の小さな粒子を有するセルロースアシレートフィルムを得るために、微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ作成し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのセルロースアシレートドープ液と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行いこれを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。本発明はこれらの方法に限定されないが、二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤の添加量は1m2あたり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
[溶媒]
次に、本発明のフィルムに使用される樹脂の例として、セルロースアシレートが溶解される前記有機溶媒について記述する。
本発明における良溶媒とは25℃において溶媒100gに5g以上のセルロースを溶解する溶媒とする。一方本発明における貧溶媒とは25℃において溶媒100gに5g未満
のセルロースアシレートを溶解する溶媒とする。
本発明においては、有機溶媒として、塩素系有機溶媒を主溶媒とする塩素系溶媒と塩素系有機溶媒を含まない非塩素系溶媒とのいずれをも用いることができる。
(塩素系溶媒)
本発明に関するセルロースアシレートの溶液を作製するに際しては、主溶媒として塩素系有機溶媒が好ましく用いられる。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し流延,製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りはその塩素系有機溶媒の種類は特に限定されない。これらの塩素系有機溶媒は、好ましくはジクロロメタン、クロロホルムである。特にジクロロメタンが好ましい。また、塩素系有機溶媒以外の有機溶媒を混合することも特に問題ない。その場合は、ジクロロメタンは有機溶媒全体量中少なくとも50質量%使用することが必要である。本発明で塩素系有機溶剤と併用される他の有機溶媒について以下に記す。すなわち、好ましい他の有機溶媒としては、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、アルコール、炭化水素などから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を同時に有していてもよい。二種類以上の官能基を有する溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテート等が挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノン等が挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等が挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノール等が挙げられる。
また塩素系有機溶媒と併用されるアルコールとしては、好ましくは直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。
塩素系有機溶媒と他の有機溶媒との組合せ例としては以下の組成を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
・ジクロロメタン/メタノール/エタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/メタノール/プロパノール(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール(75/8/5/5/7、質量部)、
・ジクロロメタン/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール(80/7/5/8、質量部)、
・ジクロロメタン/酢酸メチル/ブタノール(80/10/10、質量部)、
・ジクロロメタン/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/1、3ジオキソラン/メタノール/エタノール(70/20/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール(60/20/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(70/10/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール(65/20/10/5、質量部)、
・ジクロロメタン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5、質量部)、
などを挙げることができる。
(非塩素系溶媒)
次に、本発明に関するセルロースアシレートの溶液を作製するに際して好ましく用いられる非塩素系有機溶媒について記載する。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し流延,製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りは非塩素系有機溶媒は特に限定されない。本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。
以上のセルロースアシレートに用いられる非塩素系有機溶媒については、前述のいろいろな観点から選定されるが、好ましくは以下のとおりである。すなわち、非塩素系溶媒と
しては、前記非塩素系有機溶媒を主溶媒とする混合溶媒が好ましく、互いに異なる3種類以上の溶媒の混合溶媒であって、第1の溶媒が酢酸メチル、酢酸エチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、アセトン、ジオキソラン、ジオキサンから選ばれる少なくとも一種あるいは或いはそれらの混合液であり、第2の溶媒が炭素原子数が4〜7のケトン類またはアセト酢酸エステルから選ばれ、第3の溶媒として炭素数が1〜10のアルコールまたは炭化水素、より好ましくは炭素数1〜8のアルコールから選ばれる、混合溶媒である。なお第1の溶媒が、2種以上の溶媒の混合液である場合は、第2の溶媒がなくてもよい。第1の溶媒は、さらに好ましくは酢酸メチル、アセトン、蟻酸メチル、蟻酸エチルあるいはこれらの混合物であり、第2の溶媒は、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチル酢酸メチルが好ましく、これらの混合溶媒であってもよい。
第3の溶媒であるアルコールは、直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。これらの第3の溶媒であるアルコールおよび炭化水素は単独でもよいし2種類以上の混合物でもよく特に限定されない。第3の溶媒としては、好ましい具体的化合物は、アルコールとしてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、およびシクロヘキサノール、シクロヘキサン、ヘキサンを挙げることができ、特にはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールである。
以上の3種類の混合溶媒の混合割合は、混合溶媒全体量中、第1の溶媒が20〜95質量%、第2の溶媒が2〜60質量%さらに第3の溶媒が2〜30質量%の比率で含まれることが好ましく、さらに第1の溶媒が30〜90質量%であり、第2の溶媒が3〜50質量%、さらに第3のアルコールが3〜25質量%含まれることが好ましい。また特に第1の溶媒が30〜90質量%であり、第2の溶媒が3〜30質量%、第3の溶媒がアルコールであり3〜15質量%含まれることが好ましい。以上の本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、さらに詳細には発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.12−16に詳細に記載されている。本発明の好ましい非塩素系有機溶媒の組合せは以下挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/ブタノール(75/10/5/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/プロパノール(75/10/5/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(75/10/5/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(81/8/7/4、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(82/10/4/4、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(80/10/4/6、質量部)、
・酢酸メチル/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5、質
量部)、
・酢酸メチル/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール(75/8/5/5/7、質量部)、
・酢酸メチル/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール(80/7/5/8、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/ブタノール(85/10/5、質量部)、
・酢酸メチル/シクロペンタノン/アセトン/メタノール/ブタノール(60/15/14/5/6、質量部)、
・酢酸メチル/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/1、3−ジオキソラン/メタノール/エタノール(70/20/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール(60/20/10/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、
・ギ酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)、
・ギ酸メチル/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、
・アセトン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール(65/20/10/5、質量部)、
・アセトン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5、質量部)、
・アセトン/1,3−ジオキソラン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5、質量部)、
・1、3−ジオキソラン/シクロヘキサノン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(55/20/10/5/5/5、質量部)、
などをあげることができる。
更に下記の方法で調整したセルロースアシレート溶液を用いることもできる。
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(81/8/7/4、質量部)でセルロースアシレート溶液を作製しろ過・濃縮後に2質量部のブタノールを追加添加する方法
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(84/10/4/2、質量部)でセルロースアシレート溶液を作製しろ過・濃縮後に4質量部のブタノールを追加添加する方法
・酢酸メチル/アセトン/エタノール(84/10/6、質量部)でセルロースアシレート溶液を作製しろ過・濃縮後に5質量部のブタノールを追加添加する方法
本発明に用いるドープには、上記本発明の非塩素系有機溶媒以外に、ジクロロメタンを本発明の全有機溶媒量の10質量%以下含有させてもよい。
(セルロースアシレート溶液特性)
セルロースアシレートの溶液は、前記有機溶媒にセルロースアシレートを10〜30質量%の濃度で溶解させた溶液であるのが製膜流延適性の点で好ましく、より好ましくは13〜27質量%であり、特に好ましくは15〜25質量%である。これらの濃度にセルロースアシレートを実施する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように実施してもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として作製した後に後述する濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。さらに、予め高濃度のセルロースアシレート溶液とした後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度のセルロースアシレート溶液としてもよく、いずれの方法でも本発明に関するセルロースアシレート溶液濃度になるように実施されれば特に問題ない。
次に、本発明ではセルロースアシレート溶液を同一組成の有機溶媒で0.1〜5質量%にした希釈溶液中のセルロースアシレートの会合体分子量が15万〜1500万であることが、剥ぎ取り性を良くする点で好ましい。さらに好ましくは、会合分子量が18万〜900万である。この会合分子量は静的光散乱法で求めることができる。その際に同時に求められる慣性自乗半径は10〜200nmになるように溶解することが好ましい。さらに好ましい慣性自乗半径は20〜200nmである。更にまた、第2ビリアル係数が−2×10-4〜+4×10-4となるように溶解することが好ましく、より好ましくは第2ビリアル係数が−2×10-4〜+2×10-4である。
ここで、本発明での会合分子量、さらに慣性自乗半径および第2ビリアル係数の定義について述べる。これらは下記方法に従って、静的光散乱法を用いて測定する。測定は装置の都合上希薄領域で測定するが、これらの測定値は本発明の高濃度域でのドープの挙動を反映するものである。
まず、セルロースアシレートをドープに使用する溶剤に溶かし、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.4質量%の溶液を調製する。なお、秤量は吸湿を防ぐためセルロースアシレートは120℃で2時間乾燥したものを用い、25℃,10%RHで行う。溶解方法は、ドープ溶解時に採用した方法(常温溶解法、冷却溶解法、高温溶解法)に従って実施する。続いてこれらの溶液、および溶剤を0.2μmのテフロン製フィルターで濾過する。そして、ろ過した溶液を静的光散乱を、光散乱測定装置(大塚電子(株)製DLS−700)を用い、25℃に於いて30度から140度まで10度間隔で測定する。得られたデータをBERRYプロット法にて解析する。なお、この解析に必要な屈折率はアッベ屈折系で求めた溶剤の値を用い、屈折率の濃度勾配(dn/dc)は、示差屈折計(大塚電子(株)製DRM−1021)を用い、光散乱測定に用いた溶剤、溶液を用いて測定する。
(ドープ調製)
次に本発明に係る樹脂溶液の例として、セルロースアシレート溶液(ドープ)の調製について述べる。セルロースアシレートの溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、さらに特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平04−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、特開平11−302388号各公報などにセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。以上記載したこれらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜本発明の範囲であればこれらの技術を適用できるものである。これらの詳細は、特に非塩素系溶媒系については発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.22−25に詳細に記載されている方法で実施される。さらに本発明に関するセルロースアシレートのドープ溶液は、溶液濃縮,ろ過が通常実施され、同様に発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.25に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
セルロースアシレート溶液は、その溶液の粘度と動的貯蔵弾性率が以下に述べる範囲で
あることが、流延しやすく好ましい。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instruments社製)を用いて測定する。測定条件はOscillation Step/Temperature Rampで40℃〜−10℃の範囲を2℃/分で可変して測定し、40℃の静的非ニュートン粘度n*(Pa・s)および−5℃の貯蔵弾性率G’(Pa)を求める。尚、試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始する。本発明では、40℃での粘度が1〜400Pa・sであり、15℃での動的貯蔵弾性率が500Pa以上であるのが好ましく、より好ましくは40℃での粘度が10〜200Pa・sで、15℃での動的貯蔵弾性率が100〜100万である。さらには低温での動的貯蔵弾性率が大きいほど好ましく、例えば流延支持体が−5℃の場合は動的貯蔵弾性率が−5℃で1万〜100万Paであることが好ましく、支持体が−50℃の場合は−50℃での動的貯蔵弾性率が1万〜500万Paが好ましい。
本発明においては、前述の特定のセルロースアシレートを用いる場合、高濃度のドープが得られるのが特徴であり、濃縮という手段に頼らずとも高濃度でしかも安定性の優れたセルロースアシレート溶液が得られる。更に溶解し易くするために低い濃度で溶解してから、濃縮手段を用いて濃縮してもよい。濃縮の方法としては、特に限定するものはないが、例えば、低濃度溶液を筒体とその内部の周方向に回転する回転羽根外周の回転軌跡との間に導くとともに、溶液との間に温度差を与えて溶媒を蒸発させながら高濃度溶液を得る方法(例えば、特開平4−259511号公報等)、加熱した低濃度溶液をノズルから容器内に吹き込み、溶液をノズルから容器内壁に当たるまでの間で溶媒をフラッシュ蒸発させるとともに、溶媒蒸気を容器から抜き出し、高濃度溶液を容器底から抜き出す方法(例えば、米国特許第2,541,012号、米国特許第2,858,229号、米国特許第4,414,341号、米国特許第4,504,355号各明細書等などに記載の方法)等で実施できる。
溶液は流延に先だって金網やネルなどの適当な濾材を用いて、未溶解物やゴミ、不純物などの異物を濾過除去しておくのが好ましい。セルロースアシレート溶液の濾過には絶対濾過精度が0.1〜100μmのフィルタを用いることが好ましく、さらには絶対濾過精度が0.5〜25μmであるフィルタを用いることが好ましい。フィルタの厚さは、0.1〜10mmが好ましく、更には0.2〜2mmが好ましい。その場合、ろ過圧力は1.6MPa以下が好ましく、より好ましくは1.2MPa以下、更には1.0MPa以下、特に0.2MPa以下で濾過することが好ましい。濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂等の従来公知である材料を好ましく用いることができ、特にセラミックス、金属等が好ましく用いられる。セルロースアシレート溶液の製膜直前の粘度は、製膜の際に流延可能な範囲であればよく、通常10Pa・s〜2000Pa・sの範囲に調製されることが好ましく、30Pa・s〜1000Pa・sがより好ましく、40Pa・s〜500Pa・sが更に好ましい。なお、この時の温度はその流延時の温度であれば特に限定されないが、好ましくは−5〜+70℃であり、より好ましくは−5〜+55℃である。
(製膜)
本発明に関する光学樹脂フィルム、例えばセルロースアシレートフィルムは、前記セルロースアシレート溶液を用いて製膜を行うことにより得ることができる。製膜方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離
点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。以下に各製造工程について簡単に述べるが、これらに限定されるものではない。
まず、調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)は、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを作製する際に、ドープをドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が5〜40質量%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ドープは、表面温度が30℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましく用いられ、特には−10〜20℃の金属支持体温度であることが好ましい。さらに特開2000−301555号、特開2000−301558号、特開平07−032391号、特開平03−193316号、特開平05−086212号、特開昭62−037113号、特開平02−276607号、特開昭55−014201号、特開平02−111511号、および特開平02−208650号の各公報に記載の方法を本発明では用いることができる。
(重層流延)
セルロースアシレート溶液を、金属支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に単層液として流延してもよいし、2層以上の複数のセルロースアシレート液を流延してもよい。複数のセルロースアシレート溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、および特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、および特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出すセルロースアシレートフィルム流延方法でもよい。更に又、特開昭61−94724号および特開昭61−94725号の各公報に記載の外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。或いはまた2個の流延口を用いて、第一の流延口により金属支持体に成型したフィルムを剥離し、金属支持体面に接していた側に第二の流延を行なうことでより、フィルムを作製することでもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアシレート溶液でもよく特に限定されない。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらにセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。
従来の単層液では、必要なフィルム厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースアシレート溶液を押出すことが必要であり、その場合セルロースアシレート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良であったりして問題となることが多かった。この解決として、複数のセルロースアシレート溶液を流延口から流延する
ことにより、高粘度の溶液を同時に金属支持体上に押出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアシレート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができる。共流延の場合、内側と外側の厚さは特に限定されないが、好ましくは外側が全膜厚の1〜50%であることが好ましく、より好ましくは2〜30%の厚さである。ここで、3層以上の共流延の場合は金属支持体に接した層と空気側に接した層のトータル膜厚を外側の厚さと定義する。共流延の場合、前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるセルロースアシレート溶液を共流延して、積層構造のセルロースアシレートフィルムを作製することもできる。例えば、スキン層/コア層/スキン層といった構成のセルロースアシレートフィルムを作ることができる。例えば、マット剤は、スキン層に多く、又はスキン層のみに入れることができる。可塑剤、紫外線吸収剤はスキン層よりもコア層に多くいれることができ、コア層のみにいれてもよい。又、コア層とスキン層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えばスキン層に低揮発性の可塑剤及び紫外線吸収剤の少なくともいずれかを含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、或いは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。また、剥離促進剤を金属支持体側のスキン層のみ含有させることも好ましい態様である。また、冷却ドラム法で金属支持体を冷却して溶液をゲル化させるために、スキン層に貧溶媒であるアルコールをコア層より多く添加することも好ましい。スキン層とコア層のTgが異なっていても良く、スキン層のTgよりコア層のTgが低いことが好ましい。又、流延時のセルロースアシレートを含む溶液の粘度もスキン層とコア層で異なっていても良く、スキン層の粘度がコア層の粘度よりも小さいことが好ましいが、コア層の粘度がスキン層の粘度より小さくてもよい。
(流延)
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、或いは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるがいずれも好ましく用いることができる。また、ここで挙げた方法以外にも従来知られているセルローストリアセテート溶液を流延製膜する種々の方法で実施でき、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することによりそれぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。本発明に関するセルロースアシレートフィルムを製造するのに使用されるエンドレスに走行する金属支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が用いられる。本発明に関するセルロースアシレートフィルムの製造に用いられる加圧ダイは、金属支持体の上方に1基或いは2基以上の設置でもよい。好ましくは1基又は2基である。2基以上設置する場合には流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギヤアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられるセルロースアシレート溶液の温度は、−10〜55℃が好ましくより好ましくは25〜50℃である。その場合、工程のすべてが同一でもよく、あるいは工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
(乾燥工程 D1)
セルロースアシレートフィルムの製造に係わる金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には金属支持体(ドラム或いはベルト)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム或いはベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラム或いはベルトを加熱し表面温度をコントロールする液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度はドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するために
は、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。尚、流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
本発明において工程D0とは流延したフィルムを剥離した後テンター部分まで搬送を行う工程をあらわす。工程D0では延伸時のフィルム残留溶媒量をコントロールする目的で温度をコントロールすることが好ましい。
工程D0でのフィルム搬送張力はドープの物性、工程D0での残留溶媒量、温度などに影響を受けるが、30N/m〜300N/mが好ましい。この範囲を超えると、フィルムの均一性に影響を及ぼし、表示むらの遠因となる。
工程D0終点での良溶媒及び貧溶媒の比率はフィルム搬送に対しての伸びを防止する意味で好ましい範囲が規定される。工程D0終点での貧溶媒質量/(良溶媒質量+貧溶媒質量)×100(%)としては95質量%〜15質量%の範囲が好ましく、より好ましくは95質量%〜25質量%であり、特に好ましくは95質量%〜30質量%である。
(本発明に好ましい製造方法1)
前述の本発明に好ましい製造方法1に係わる延伸工程を図11および12を用いて説明する。
図11において工程Aでは図示されていないフィルム搬送工程D0から搬送されてきたフィルムを把持する工程であり、次の工程Bにおいて、図12に示すような延伸角度でフィルムが幅手方向(フィルムの進行方向と直行する方向)に延伸され、工程Cにおいては延伸が終了し、フィルムが把持されたまま搬送される工程であり、フィルムを緩和する場合もある。
(工程Bでの延伸開始時の残留溶媒量)
工程B開始時の残留溶媒量としては90質量%〜5質量%に調整することが好ましく、さらに好ましくは90質量%〜10質量%に調整することが好ましく、最も好ましくは40質量%〜10質量%に調整することが好ましい。
フィルムを搬送方向に対して垂直方向に延伸する工程でフィルムの幅手方向で光学遅相軸の分布(配向角分布)が悪くなることはよく知られている。かかる配向角分布を良好な状態になるように延伸を行うためには、工程A,B,Cでの良溶媒濃度をそれぞれMa,Mb,Mcとすると、Ma>2000ppmが好ましく、Ma>3000ppmが更に好ましく、最も好ましくはMa>飽和良溶媒蒸気濃度の60%である。また、Mb>2000ppmが好ましく、Mb>3000ppmが更に好ましく、最も好ましくはMb>飽和良溶媒蒸気濃度の60%である。また、Mc<飽和良溶媒蒸気濃度の60%が好ましく、Mc<3000ppmがさらに好ましく、Mc<2500ppmが最も好ましい。
(フィルム中の残留溶媒における貧溶媒含有量(%)
延伸工程には好ましい良溶媒及び貧溶媒の比率が存在する。工程A,B,C各終了時点でのそれぞれの残留貧溶媒質量/(残留良溶媒質量+残留貧溶媒質量)×100%が95質量%〜15質量(%)が好ましい。更に95質量%〜25質量%が好ましく、95質量%〜30質量%が最も好ましい。また、工程A,B,C終了時点でのそれぞれの残留貧溶媒質量/(残留良溶媒質量+残留貧溶媒質量)×100%は同一であっても異なっていても良い。
(工程A,B,Cでのフィルム温度設定と残留溶媒量)
延伸工程において、フィルムの厚みむらを小さくするために工程Bでは軟らかい状態で
延伸を行い、工程A,Cは工程Bに比較してベースが硬い状態であることが好ましい。蒸気条件は具体的にはフィルム温度およびフィルム残留溶媒量をコントロールすることで達成できる。
各工程での雰囲気温度としてはフィルム残留溶媒量にも影響されるが、工程Aで30〜40℃、工程B,Cでは30〜140℃が好ましい。具体的には工程B終了時のフィルム残留溶媒量が工程B開始時のフィルム残留溶媒量の0.4〜0.8の範囲にあるとき工程Bの雰囲気温度は110℃〜140℃であることが好ましい。工程B終了時のフィルム残量溶媒量が工程B開始時のフィルム残留溶媒量の0.4〜0.8の範囲にあるとき工程B開始時のフィルム温度は30℃〜140℃であり、工程B終了時のフィルム温度は70℃〜140℃の範囲であることが好ましい。
工程Bでの延伸時間はフィルムの均一性を高めるために好ましい範囲が存在する。具体的には1〜10秒であることが好ましく、4〜10秒であることがより好ましい。
また、延伸速度は一定で行っても良いし、変化させても良いが、50%/min〜500%/minが好ましく、さらに好ましくは100%/min〜400%/min、200%/min〜300%/minが最も好ましい。
本発明では、前述のように、把持工程及び延伸工程での平均乾燥速度をA%/sec、緩和工程での平均乾燥速度をB%/secとした場合、A/Bが1.9〜4.2の範囲でフィルムを乾燥することで本発明のレターデーション分布の小さいフィルムを実現することができる。
また、本発明に関するセルロースアシレートフィルムは、延伸処理によりレターデーションを調整することができる。更には、積極的に幅方向に延伸する方法もあり、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、および特開平11−48271号の各公報などに記載されている。これは、セルロースアシレートフィルムの面内レターデーション値を高い値とするために、製造したフィルムを延伸する。
フィルムの延伸は、縦あるいは横だけの一軸延伸でもよく同時あるいは逐次2軸延伸でもよい。光学フィルムの複屈折は幅方向の屈折率が長さ方向の屈折率よりも大きくなることが好ましい。従って幅方向により多く延伸することが好ましい。また、延伸処理は製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理しても良い。
本発明の光学樹脂フィルムのReを制御する方法として、光学樹脂フィルムを該フィルムのガラス転移点よりも25℃乃至100℃高い温度で延伸する方法、すなわちフィルムを、該フィルムのガラス転移点をTgとしたとき、Tg+25℃乃至Tg+100℃の温度で延伸する方法が好ましく用いられる。
一方、光学フィルムの透過率は、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。本発明の延伸方法を適用することで同じ材料を使用しても、より高い透過率の光学フィルムを得ることが出来る。本発明者によれば、非常に高温で延伸することでポリマー材料中の不純物等が揮発し、フィルム中での散乱因子が減少するものと推定している。
高温延伸することで各波長でのReが所望の値になるメカニズムを、最も好ましい態様であるセルロースアシレートを例に説明する。
セルロースアシレートは、グルコピラノース環からなる主鎖とアシル基からなる側鎖で形成されている。セルロースアシレートからなるフィルムを延伸すると主鎖が延伸方向に向き、Reを発現する。本発明者らは、鋭意研究の末、Tgが140℃のセルロースアシレートの場合、165℃〜240℃という非常に高温で延伸することで、450nmにおけるReが減少し、650nmにおけるReが上昇することを突き止めた。
また、同高温延伸後のセルロースアシレートフィルムには、結晶化に由来すると考えられるX線回折のピークが現れており、結晶化により主鎖と側鎖の配向状態が変化し、Reの波長依存性が変化したと推定している。
一方、液晶表示装置の色ずれを改良するには、Rthを制御することも重要である。このRthを制御する方法としては、後述の液晶層を塗設する方法、もしくは添加剤を使用する方法等が好ましく使用される。
(本発明に好ましい製造方法2)
前述のように本発明者らは鋭意検討の結果、フィルムを延伸する延伸工程と収縮させる収縮工程とを含むことを特徴とする製造方法により、上記好ましい光学物性を有する光学フィルムが得られることを見出した。
本発明においては特にフィルムの搬送方向に延伸する延伸工程と、フィルムの幅方向にフィルムを把持しながら収縮させる収縮工程とを含むことを特徴とする光学フィルムの製造方法、あるいはフィルムの幅方向に延伸する延伸工程と、フィルムの搬送方向に収縮させる収縮工程とを含むことを特徴とする光学フィルムの製造方法が好ましく用いられる。
まずフィルムの搬送方向に延伸する延伸工程と、フィルムの幅方向にフィルムを把持しながら収縮させる収縮工程とを含むことを特徴とする、光学フィルムの製造方法について説明する。
この場合、フィルムの搬送方向にフィルムを延伸することとなるが、フィルムの搬送方向に延伸する方法としては、フィルムの搬送ローラーの速度を調節して、フィルムの剥ぎ取り速度よりもフィルムの巻き取り速度の方を速くする方法が好ましく用いられる。
この場合、フィルムの巾をテンターで保持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に狭めることでフィルムを延伸方向と略直交して収縮させることが出来る。
具体的にはチェーン式、スクリュー式、パンタグラフ式、リニアモーター式等のテンターによって保持し、搬送方向に延伸しながら、テンターの巾を徐々に狭めることでフィルムを延伸するのと同時に直交方向には収縮することが出来る。
一方、フィルムの幅方向に延伸する延伸工程と、フィルムの搬送方向に収縮させる収縮工程を含むことを特徴とする光学フィルムの製造方法においてはチェーン式、スクリュー式、パンタグラフ式、リニアモーター式等によって保持し、フィルムの幅方向に延伸しながら搬送方向にはクリップの間隔を徐々に狭めることでフィルムを収縮させることが出来る。
前記で説明した方法は、延伸工程と収縮工程の少なくとも一部が、同時に行われることができる。
なお、上記のようなフィルムの長手方向または幅方向のいずれか一方を延伸し、同時にもう一方を収縮させ、同時にフィルムの膜厚を増加させる延伸工程を具体的に行う延伸装置として、市金工業社製FITZ機などを望ましく用いることができる。この装置に関しては(特開2001−38802号公報)に記載されている。
延伸工程における延伸率および収縮工程における収縮率としては目的とする正面レターデーションReおよび膜厚方向のレターデーションRthの値により、任意に適切な値を選択することができるが、延伸工程における延伸率が10%以上であり、かつ収縮工程における収縮率が5%以上とすることが好ましい。
なお、本発明でいう延伸率とは、延伸方向における延伸前のフィルムの長さに対する延伸後のフィルムの長さの延びた割合を意味し、収縮率とは、収縮方向における収縮前のフ
ィルムの長さに対する収縮後のフィルムの収縮した長さの割合を意味する。
また延伸率としては10〜60%が好ましく、20〜50%が特に好ましい。一方、収縮率としては5〜40%が好ましく、15〜35%が特に好ましい。
また所望の光学物性を達成する上で、延伸および収縮工程を、処理時点でのフィルムのガラス転移点温度+(5〜100)℃で行うことが好ましく、ガラス転移温度+(10〜80)度で行うことがさらに好ましい。
なお本発明におけるガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量測定機(DSC)を用い、下記条件で測定した吸熱(発熱)カーブの、低温側の変曲点の温度におけるカーブの2本の接線の交点から求めた値である。
容器 ステンレス製密封容器 70μl
測定モード Modulated DSC
走査温度域 −50〜200℃
昇温速度 2℃/分
降温速度 20℃/分
昇温時振幅 ±1℃
振幅周期 80秒
また処理温度とは非接触赤外線温度計で測定したフィルム表面の温度である。
延伸および収縮処理は流延後、溶剤が残っている状態で行っても良いし、乾燥後巻き取った後に行っても良い。また、延伸は1段で行っても良く、多段で行っても良い。多段で行う場合は各延伸倍率の積がこの範囲にはいるようにすれば良い。収縮工程も1段で行っても多段で行っても良い。
延伸速度は5%/分〜1000%/分であることが好ましく、さらに10%/分〜500%/分であることが好ましい。延伸はヒートロールあるいは/および放射熱源(IRヒーター等)、温風により行うことが好ましい。また、温度の均一性を高めるために恒温槽を設けてもよい。ロール延伸で一軸延伸を行う場合、ロール間距離(L)とフィルム幅(W)の比であるL/Wが、2.0乃至5.0であることが好ましい。収縮速度は5%/分〜1000%/分であることが好ましく、さらに10%/分〜500%/分であることが好ましい。また、延伸速度、収縮速度ともに一定速度でも良いし、速度を変化させながら延伸および収縮を行っても良い。
延伸前に予熱工程を設けることが好ましい。予熱工程は延伸工程もしくは収縮工程の前に適宜設けて良い。
延伸工程後もしくは収縮工程後にさらに熱処理を行ってもよい。熱処理温度は光学フィルムのガラス転移温度より20℃低い値から10℃高い温度で行うことが好ましく、熱処理時間は1秒間乃至300時間であることが好ましい。また、加熱方法はゾーン加熱であっても、赤外線ヒータを用いた部分加熱であっても良い。工程の途中または最後にフィルムの両端をスリットしても良い。これらのスリット屑は回収し原料として再利用することが好ましい。
(本発明に使用可能な製造技術の例)
本発明のフィルムの製造においては、以下に記載する技術を適宜使用することができる。
テンターに関しては、特開平11−077718号公報に開示があり、テンターで幅保
持しながらウェブを乾燥させる際に、乾燥ガス吹き出し方法、吹き出し角度、風速分布、風速、風量、温度差、風量差、上下吹き出し風量比、高比熱乾燥ガスの使用等を適度にコントロールすることで、溶液流延法による速度を上げたり、ウェブ幅を広げたりする時の平面性等の品質低下防止を確保する技術が開示されている。
また、特開平11−077822号公報には、ムラ発生を防ぐために、延伸した熱可塑性樹脂フィルムを延伸工程後、熱緩和工程においてフィルムの幅方向に温度勾配を設けて熱処理する発明が記載されている。
さらに、ムラ発生を防ぐために、特開平4−204503号公報には、フィルムの溶媒含有率を固形分基準で2〜10%にして延伸する発明が記載されている。
また、クリップ噛み込み幅の規定によるカールを抑制するために、特開2002−248680号公報には、テンタークリップ噛み込み幅D≦(33/(log延伸率×log揮発分))で延伸することにより、カールを抑制し、延伸工程後のフィルム搬送を容易にする発明が記載されている。
さらに、高速軟膜搬送と延伸とを両立させるために、特開2002−337224号公報には、テンター搬送を、前半ピン、後半クリップに切り替える発明が記載されている。
また、特開2002−187960号公報には、視野角特性を簡便に改善でき、且つ視野角を改善することを目的として、セルロースエステルドープ液を流延用支持体に流延し、ついで、流延用支持体から剥離したウェブ(フィルム)を、ウェブ中の残留溶媒量が100質量%以下、とくに10〜100質量%の範囲にある間に少なくとも1方向に1.0〜4.0倍延伸することにより得られる光学的に二軸性を有する発明が記載されている。さらに好ましい態様として、ウェブ中の残留溶媒量が100質量%以下、特に10〜100質量%の範囲にある間に、少なくとも1方向に1.0〜4.0倍延伸することが記載されている。また、他の延伸する方法として、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法、これらを組み合わせて用いる方法なども挙げられている。さらに、いわゆるテンター法の場合には、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸を行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましいことが示されている。
さらに、添加剤ブリードアウトが少なく、かつ層間の剥離現象もなく、しかも滑り性が良好で透明性に優れた位相差フィルムを作製するために、特開2003−014933号公報に記載されているように、樹脂と添加剤と有機溶媒とを含むドープAと、添加剤を含まないか、もしく添加剤の含有量がドープAより少ない樹脂と添加剤と有機溶媒とを含むドープBを調製し、ドープAがコア層、ドープBが表面層となるように支持体上に共流延して、剥離可能となるまで有機溶媒を蒸発させた後、ウェブを支持体から剥離し、さらに延伸時の樹脂フィルム中の残留溶媒が3〜50質量%の範囲で少なくとも1軸方向に1.1〜1.3倍延伸する発明が記載されている。さらに、好ましい態様として、ウェブを支持体から剥離し、更に延伸温度が140℃〜200℃の範囲で少なくとも1軸方向に1.1〜3.0倍延伸すること、樹脂と有機溶媒とを含むドープAと、樹脂と微粒子と有機溶媒とを含むドープBを調製し、ドープAがコア層、ドープBが表面層となるように支持体上に共流延して、剥離可能となるまで有機溶媒を蒸発させた後、ウェブを支持体から剥離し、更に延伸時の樹脂フィルム中の残留溶媒量が3質量%〜50質量%の範囲で少なくとも1軸方向に1.1〜3.0倍延伸すること、更に延伸温度が140℃〜200℃の範囲で少なくとも1軸方向に1.1〜3.0倍延伸すること、樹脂と有機溶媒と添加剤を含むドープAと、添加剤を含まないか添加剤の含有量がドープAより少ない樹脂と添加剤と有機溶媒とを含むドープBと、樹脂と微粒子と有機溶媒とを含むドープCを調製し、ドープAがコア層、ドープBが表面層、ドープCがドープBとは反対側の表面層となるように支持体上に共流延して、剥離可能となるまで有機溶媒を蒸発させた後、ウェブを支持体から剥離し、更に延伸時の樹脂フィルム中の残留溶媒量が3質量%〜50質量%の範囲で少なくとも1軸方向に1.1〜3.0倍延伸すること、延伸温度が140℃〜200℃の範囲で少なくとも1軸方向に1.1〜3.0倍延伸すること、ドープA中の添加剤量が樹脂に対して1〜30質量%、ドープB中の添加剤量が樹脂に対して0〜5質量%であり、添加剤が可塑剤、あるいは紫外線吸収剤、あるいはレターデーション制御剤であること、ドープA中とドープB中の有機溶媒がメチレンクロライドまたは酢酸メチルを全有機溶媒に対して50質量%以上含有することを利用することが記載されている。
さらに、特開2003−014933号公報には、延伸する方法として、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を横方向に広げて横方向に延伸するテンターと呼ばれる横延伸機を好ましく用いることができることが記載されている。また縦方向に延伸または収縮させるには、同時2軸延伸機を用いて搬送方向(縦方向)にクリップやピンの搬送方向の間隔を広げたりまたは縮めることで行うことができることも開示されている。また、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかに延伸を行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましく、また、縦方向に延伸する方法としては、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法も用いることができることがしめされている。なお、これらの延伸方法は複合して用いることもでき、(縦延伸、横延伸、縦延伸)または(縦延伸、縦延伸)などのように、延伸工程を2段階以上に分けて行ってもよいことが記載されている。
さらに、テンター乾燥のウェブの発泡を防止し、離脱性を向上させ、発塵を防止するために、特開2003−004374号公報には、乾燥装置において、乾燥器の熱風がウェブ両縁部に当たらないように、乾燥器の幅がウェブの幅よりも短く形成されている発明が記載されている。
また、テンター乾燥のウェブの発泡を防止し、離脱性を向上させ、発塵を防止するために、特開2003−019757号公報には、テンターの保持部に乾燥風が当らないようウェブ両側端部内側に遮風板を設ける発明が記載されている。
さらに、搬送、乾燥を安定的に行うために、特開2003−053749号公報には、ピンテンターにより担持されるフィルムの両端部の乾燥後の厚さをXμm、フィルムの製品部の乾燥後の平均厚さをTμmとすると、XとTとの関係が式(1)T≦60のとき、40≦X≦200、式(2)60<T≦120のとき、40+(T−60)×0.2≦X≦300又は式(3)120<Tのとき、52+(T−120)×0.2≦X≦400の関係を満たす発明が記載されている。
また、多段式テンターにシワを発生させないために、特開平2−182654号公報には、テンター装置において、多段式テンターの乾燥器内に加熱室と冷却室とを設け、左右のクリップ−チェーンを別々に冷却する発明が記載されている。
さらに、ウェブの破断、シワ、搬送不良を防止するために、特開平9−077315号公報には、ピンテンターのピンにおいて、内側のピン密度を大きく、外側のピン密度を小さくする発明が記載されている。
また、テンター内においてウェブ自体の発泡やウェブが保持手段に付着するのを防止するために、特開平9−085846号公報には、テンター乾燥装置において、ウェブの両側縁部保持ピンを吹出型冷却器でウェブの発泡温度未満に冷却すると共に、ウェブを喰い
込ます直前のピンをダクト型冷却器でのドープのゲル化温度+15°C以下に冷却する発明が記載されている。
さらに、ピンテンターハズレを防止し、異物を良化するために、特開2003−103542号公報には、ピンテンターにおいて、差込構造体を冷却し、差込構造体と接触しているウェブの表面温度がウェブのゲル化温度を超えないようにする溶液製膜方法に関する発明が記載されている。
また、溶液流延法により速度を上げたり、テンターにてウェブの幅を広げたりする時の平面性等の品質低下を防止するために、特開平11−077718号公報には、テンター内でウェブを乾燥する際には、風速を0.5〜20(40)m/s、横手方向温度分布を10%以下、ウェブ上下風量比を0.2〜1とし、乾燥ガス比を30−250J/Kmolとする発明が記載されている。さらに、テンター内での乾燥において、残留溶媒の量に応じて好ましい乾燥条件を開示している。具体的には、ウェブを支持体から剥離した後、ウェブ中の残留溶媒量が4質量%になるまでの間に、吹き出し口からの吹き出す角度がフィルム平面に対して30゜〜150゜の範囲にし、かつ乾燥ガスの吹き出し延長方向に位置するフィルム表面上での風速分布を風速の上限値を基準にした時、上限値と下限値との差を上限値の20%以内にして、乾燥ガスを吹き出し、ウェブを乾燥させること、ウェブ中の残留溶媒量が130質量%以下70質量%以上の時には、吹き出し型乾燥機から吹き出される乾燥ガスのウェブ表面上での風速が0.5m/sec以上20m/sec以下とすることまた残留溶媒量が70質量%未満4質量%以上の時には、乾燥ガスの風速が0.5m/sec以上40m/sec以下で吹き出される乾燥ガス風により乾燥させ、ウェブの幅手方向の乾燥ガスの温度分布がガス温度の上限値を基準にした時、上限値と下限値との差を上限値の10%以内とすること、ウェブ中の残留溶媒量が4質量%以上200質量%以下の時には、搬送されるウェブの上下に位置する吹き出し型乾燥機の吹き出し口から吹き出す乾燥ガスの風量比qが0.2≦q≦1とすることが記載されている。さらに、好ましい態様として、乾燥ガスに少なくとも1種の気体を使用し、その平均比熱が31.0J/K・mol以上、250J/K・mol以下であること、乾燥中の乾燥ガスに含まれる常温で液体の有機化合物の濃度が、50%以下の飽和蒸気圧の乾燥ガスで乾燥すること、等が開示されている。
また汚染物質の発生によって平面性や塗布が悪化するのを防止するために、特開平11−077719号公報には、TAC(トリアセチルセルロース)の製造装置において、テンターのクリップが加熱部分を内蔵している発明が記載されている。さらに好ましい態様として、テンターのクリップがウェブを解放してから、再びウェブを担持するまでの間に、クリップとウェブの接触部分に発生する異物を除去する装置を設けること、噴射する気体または液体及びブラシを用いて異物を除去すること、クリップあるいはピンとウェブとの接触時の残留量は12質量%以上50質量%以下であること、クリップあるいはピンとのウェブとの接触部の表面温度は60°以上200°以下(より好ましくは80°以上120°以下)であること、等が開示されている。
平面性を良化し、テンター内での裂けによる品質低下を改良し、生産性を挙げるために、特開平11−090943号公報には、テンタークリップにおいて、テンターの任意の搬送長さLt(m)と、Ltと同じ長さのテンターのクリップがウェブを保持している部分の搬送方向の長さの総和Ltt(m)との比Lr=Ltt/Ltが、1.0≦Lr≦1.99とする発明が記載されている。さらに好ましい態様として、ウェブを保持する部分が、ウェブ幅方向から見て隙間なく配置することが開示されている。
また、テンターにウェブを導入する際、ウェブのたるみに起因する平面性悪化と導入不安定性を良化させるために、特開平11−090944号公報には、プラスティックフィ
ルムの製造装置において、テンター入口前に、ウェブ幅手方向のたるみ抑制装置を有する発明が記載されている。なお、さらに好ましい態様として、たるみ抑制装置が幅手方向に広がる角度が2〜60゜の方向範囲で回転する回転ローラーであること、ウェブの上部に吸気装置を有すること、ウェブの下から送風出来る送風機を有すること、等も開示されている。
品質の劣化と生産性を阻害するたるみを起こさせないようにすることを目的として、特開平11−090945号公報には、TACの製法において、支持体より剥離したウェブを水平に対して角度を持たせてテンターに導入する発明が記載されている。
また、安定した物性のフィルムを作るために、特開2000−289903号公報には、剥離され溶媒含有率50〜12wt%の時点で、ウェブの巾方向にテンションを与えつつ搬送する搬送装置において、ウェブの幅検知手段とウェブの保持手段と、2つ以上の可変可能な屈曲点を有しウェブの幅検知で検知の信号からウェブ幅を演算し、屈曲点の位置を変更する発明が記載されている。
さらに、クリッピング性を向上し、ウェブの破断を長期間防止し、品質の優れたフィルムを得るために、特開2003−033933号公報には、テンターの入口寄り部分の左右両側において、ウェブの左右両側縁部の上方及び下方のうちの少なくとも下方にウェブ側縁部カール発生防止用ガイド板を配置し、ガイド板のウェブ対向面が、ウェブの搬送方向に配されたウェブ接触用樹脂部とウェブ接触用金属部とによって構成することが記載されている。さらに好ましい態様として、ガイド板のウェブ対向面のウェブ接触用樹脂部がウェブ搬送方向の上流側に、ウェブ接触用金属部が同下流側に配置されること、ガイド板のウェブ接触用樹脂部及びウェブ接触用金属部の間の段差(傾斜を含む)が、500μm以内であること、ガイド板のウェブ接触用樹脂部及びウェブ接触用金属部のウェブに接する幅手方向の距離が、それぞれ2〜150mmであること、ガイド板のウェブ接触用樹脂部及びウェブ接触用金属部のウェブに接するウェブ搬送方向の距離が、それぞれ5〜120mmであること、ガイド板のウェブ接触用樹脂部が、金属製ガイド基板に表面樹脂加工もしくは樹脂塗装により設けられること、ガイド板のウェブ接触用樹脂部が樹脂単体からなっていること、ウェブの左右両側縁部において上方及び下方に配置されたガイド板のウェブ対向面同士の間の距離が、3〜30mmであること、ウェブの左右両側縁部において上下両ガイド板のウェブ対向面同士の間の距離が、ウェブの幅手方向にかつ内方に向かって幅100mm当たり2mm以上の割合で拡大されていること、ウェブの左右両側縁部において上下両ガイド板がそれぞれ10〜300mmの長さを有するものであり、かつ上下両ガイド板がウェブの搬送方向に沿って前後にずれるように配置されていて、上下両ガイド板同士の間のずれの距離が、−200〜+200mmとなっていること、上部ガイド板のウェブ対向面が、樹脂または金属のみによって構成されていること、ガイド板のウェブ接触用樹脂部がテフロン(登録商標)製であり、ウェブ接触用金属部がステンレス鋼製であること、ガイド板のウェブ対向面またはこれに設けられたウェブ接触用樹脂部及び/又はウェブ接触用金属部の表面粗さが、3μm以下なっていること、等が開示されている。また、ウェブ側縁部カール発生防止用上下ガイド板の設置位置は、支持体の剥離側端部からテンター導入部までの間が好ましく、特にテンター入口寄り部分に設置するのがより好ましいことも記載されている。
さらに、テンター内で乾燥中発生するウェブの切断やムラを防止するために、特開平11−048271号公報には、剥離後、ウェブの溶媒含有率50〜12wt%の時点で、幅延伸装置で延伸、乾燥し、またウェブの溶媒含有率が10wt%以下の時点で加圧装置によってウェブの両面から0.2〜10KPaの圧力を付与する発明が記載されている。さらに好ましい態様として、溶媒含有率が4質量%以上の時点で張力付与を終了することや圧力をウェブ(フィルム)両面から加える方法としてニップロールを用いて圧力を加える場合は、ニップロールのペアは1から8組程度が好ましく、加圧する場合の温度は100〜200℃が好ましいことも開示されている。
また、厚さ20−85μmの高品質薄手TACを得るための発明である、特開2002−036266号公報には、好ましい態様として、テンターの前後における、ウェブにその搬送方向に沿って作用する張力の差を、8N/mm2以下とすること、剥離工程の後、ウェブを予熱する予熱工程と、この予熱工程の後、テンターを用いてウェブを延伸する延伸工程と、この延伸工程の後、ウェブをこの延伸工程での延伸量よりも少ない量だけ緩和させる緩和工程とを具備すること等が開示されている。
さらに、乾燥膜厚が10〜60μmの薄型化及び軽量化透湿性の小耐久性に優れることを目的とした、特開2002−225054号公報には、剥離後、ウェブの残留溶媒量が10質量%になるまでの間に、ウェブの両端をクリップで把持して、幅保持による乾燥収縮抑制を行い、及び/または幅手方向に延伸を行い、式S={(Nx+Ny)/2}−Nzで表される面配向度(S)が0.0008〜0.0020のフィルムを形成すること(式中、Nxはフィルムの面内の最も屈折率が大きい方向の屈折率、NyはNxに対して面内で直角な方向の屈折率、Nzはフィルムの膜厚方向の屈折率)、流延から剥離までの時間を30〜90秒とすること、剥離後のウェブを幅手方向及び/または長手方向に延伸すること、等が開示されている。
また、特開2002−341144号公報には、光学ムラ抑制のために、レターデーション上昇剤の質量濃度が、フィルム幅方向中央に近づくほど高い光学分布を持つ、延伸工程を有する溶液製膜方法が記載されている。
さらに、曇りの発生しないフィルムを得るための発明である特開2003−071863号公報には、巾手方向の延伸倍率は0〜100%であることが好ましく、偏光板保護フィルムとして用いる場合は、5〜20%が更に好ましく、8〜15%が最も好ましいことが記載されている。さらに、一方、位相差フィルムとして用いる場合は、10〜40%が更に好ましく、20〜30%が最も好ましく、延伸倍率によってRoをコントロールすることが可能で、延伸倍率が高い方が、でき上がったフィルムの平面性に優れるため好ましいことが開示されている。さらにテンターを行う場合のフィルムの残留溶媒量は、テンター開始時に20〜100質量%であるのが好ましく、かつ、フィルムの残留溶媒量が10質量%以下になるまでテンターをかけながら乾燥を行うことが好ましく、更に好ましくは5質量%以下であることがしめされている。
また、高温度、高湿度条件での保存時、縦、横の寸法変動を少なくする発明である、特開2002−248639号公報には、支持体上にセルロースエステル溶液を流延し、連続的に剥離して乾燥させるフィルムの製造方法において、乾燥収縮率が、式…0≦乾燥収縮率(%)≦0.1×剥離する時の残留溶媒量(%)を満たすように乾燥させる発明が記載されている。さらに、好ましい態様として、剥離後のセルロースエステルフィルムの残留溶媒量が40〜100質量%の範囲内にあるとき、テンター搬送でセルロースエステルフィルムの両端部を把持しながら少なくとも残留溶媒量を30質量%以上減少させること、剥離後のセルロースエステルフィルムのテンター搬送入り口における残留溶媒量が40〜100質量%であり、出口における残留溶媒量が4〜20質量%であること、テンター搬送でセルロースエステルフィルムを搬送する張力がテンター搬送の入り口から出口に向けて増加するようにすること、テンター搬送でセルロースエステルフィルムを搬送する張力とセルロースエステルフィルムを幅手方向の張力が略等しいこと、等が開示されている。
なお、膜厚が薄く、光学的等方性、平面性に優れたフィルムを得るために、特開200
0−239403号公報には、剥離時の残留溶媒率Xとテンターに導入する時の残留溶媒率Yの関係を0.3X≦Y≦0.9Xの範囲として製膜を行うことが開示されている。
特開2002−286933号公報には、流延により製膜するフィルムを延伸する方法として、加熱条件下で延伸する方法と溶媒含有条件下で延伸する方法とが挙げられ、加熱条件下で延伸する場合には、樹脂のガラス転移点近傍以下の温度で延伸することが好ましく、一方、流延製膜されたフィルムを溶媒含浸条件下で延伸する場合には、一度乾燥したフィルムを再度溶媒に接触させて溶媒を含浸させて延伸することが可能であることが開示されている。
[光学樹脂フィルムの物性]
以下に、本発明の光学樹脂フィルムの好ましい物性について、セルロースアシレートフィルムを例として説明する。
(膜厚)
乾燥後得られる本発明に関するセルロースアシレートフィルムの膜厚は、使用目的によって異なり、通常5から500μmの範囲であることが好ましく、更に20〜300μmの範囲が好ましく、特に30〜150μmの範囲が好ましい。また、光学用として特にVA液晶表示装置用としては40〜110μmであることが好ましい。フィルム厚さの調製は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。以上のようにして得られたセルロースアシレートフィルムの幅は0.5〜3mが好ましく、より好ましくは0.6〜2.5m、さらに好ましくは0.8〜2.2mである。長さは1ロールあたり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであっても良い。
(セルロースアシレートフィルムの光学特性)
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のリターデーションおよび厚さ方向のリターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレタデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHが算出する。ここで平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
本発明に関するセルロースアシレートフィルムをVAモードに使用する場合、セルの両側に1枚ずつ合計2枚使用する形態(2枚型)と、セルの上下のいずれか一方の側にのみ使用する形態(1枚型)の2通りがある。
2枚型の場合、Reは20乃至100nmが好ましく、30乃至70nmがさらに好ましい。Rthについては70乃至300nmが好ましく、100乃至200nmがさらに好ましい。
1枚型の場合、Reは30乃至150nmが好ましく、40乃至100nmがさらに好ましい。Rthについては100乃至400nmが好ましく、150乃至250nmがさらに好ましい。
本発明に関するセルロースアシレートフィルムのフィルム面内の遅相軸角度のバラつきは、ロールフィルムの基準方向に対して−2度から+2度の範囲にあることが好ましく、−1度から+1度の範囲にあることがさらに好ましく、−0.5度から+0.5度の範囲にあることが最も好ましい。ここで、基準方向とは、セルロースアシレートフィルムを縦延伸する場合はロールフィルムの長手方向であり、横延伸する場合はロールフィルムの幅方向である。
また、本発明に関するセルロースアシレートフィルムは、25℃10%RHにおけるRe値と25℃80%RHにおけるRe値との差ΔRe(=Re10%RH−Re80%RH)が0〜10nmであり、25℃10%RHにおけるRth値と25℃80%RHにおけるRth値との差ΔRth(=Rth10%RH−Rth80%RH)が0〜30nmであるのが、液晶表示装置の経時による色味変化を少なくする上で好ましい。
また、本発明に関するセルロースアシレートフィルムは、25℃80%RHにおける平衡含水率が3.2%以下であるのが、液晶表示装置の経時による色味変化を少なくする上で好ましい。
含水率の測定法は、本発明に関するセルロースアシレートフィルム試料7mm×35mmを水分測定器、試料乾燥装置(CA−03、VA−05、共に三菱化学(株))にてカールフィッシャー法で測定する。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出する。
また、本発明に関するセルロースアシレートフィルムは、60℃、95%RH、24hrの透湿度(膜厚80μm換算)が、400g/m2・24hr以上1800g/m2・24hr以下であるのが、液晶表示装置の経時による色味変化を少なくする上で好ましい。
セルロースアシレートフィルムの膜厚が厚ければ透湿度は小さくなり、膜厚が薄ければ透湿度は大きくなる。そこでどのような膜厚のサンプルでも基準を80μmに設け換算する必要がある。膜厚の換算は、(80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚μm/80μm)として求める。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができる。
ガラス転移温度の測定は、本発明に関するセルロースアシレートフィルム試料(未延伸)5mm×30mmを、25℃60%RHで2時間以上調湿した後に動的粘弾性測定装置(バイブロン:DVA−225(アイティー計測制御(株)製))で、つかみ間距離20mm、昇温速度2℃/分、測定温度範囲30℃〜200℃、周波数1Hzで測定し、縦軸に対数軸で貯蔵弾性率、横軸に線形軸で温度(℃)をとった時に、貯蔵弾性率が固体領域からガラス転移領域へ移行する際に見受けられる貯蔵弾性率の急激な減少を固体領域で直線1を引き、ガラス転移領域で直線2を引いたときの直線1と直線2の交点を、昇温時に貯蔵弾性率が急激に減少しフィルムが軟化し始める温度であり、ガラス転移領域に移行し始める温度であるため、ガラス転移温度Tg(動的粘弾性)とした。
また、本発明に関するセルロースアシレートフィルムは、ヘイズが0.01〜2%であるのが、好ましい。ここで、ヘイズは、以下のようにして測定できる。
ヘイズの測定は、本発明に関するセルロースアシレートフィルム試料40mm×80mmを、25℃,60%RHでヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)でJIS K−6714に従って測定する。
また、本発明に関するセルロースアシレートフィルムは、80℃、90%RHの条件下に48時間静置した場合の質量変化が、0〜5%であるのが、好ましい。
また、本発明に関するセルロースアシレートフィルムは、60℃、95%RHの条件下に24時間静置した場合の寸度変化および90℃、5%RHの条件下に24時間静置した場合の寸度変化が、いずれも0〜5%であるのが、好ましい。
光弾性係数が、50×10-13cm2/dyne以下であるのが、液晶表示装置の経時による色味変化を少なくする上で好ましい。
具体的な測定方法としては、セルロースアシレートフィルム試料10mm×100mmの長軸方向に対して引っ張り応力をかけ、その際のレターデーションをエリプソメーター(M150、日本分光(株))で測定し、応力に対するレターデーションの変化量から光弾性係数を算出する。
(光学異方性層)
本発明の光学樹脂フィルムは、その上に光学異方性層を設け、例えば偏光板の保護膜として用いることができる。光学異方性層は、該フィルム上に配向層と光学異方性層をこの順に有したものが好ましい。
配向層は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログループを有する層の形成のような手段で設けることができる。さらに電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により配向機能が生じる配向層も知られているが、ポリマーのラビング処理により形成する配向層が特に好ましい。ラビング処理はポリマー層の表面を紙や布で一定方向に数回こすることにより好ましく実施される。偏光子の吸収軸方向とラビング方向は実質的に平行であることが好ましい。配向層に使用するポリマーの種類は、ポリイミド、ポリビニルアルコール、特開平9−152509号公報に記載された重合性基を有するポリマー等を好ましく使用することができる。配向層の厚さは0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがさらに好ましい。
光学異方性層は液晶性化合物を含有していることが好ましい。本発明に使用される液晶性化合物はディスコティック化合物(ディスコティック液晶)を有していることが特に好ましい。ディスコティック液晶分子は下記ディスコティック液晶性分子(I)のように円盤状のコア部を有し、そこから放射状に側鎖が伸びた構造を有している。また、経時安定性を付与するため、熱、光等で反応する基をさらに導入することも好ましく行われる。上記ディスコティック液晶の好ましい例は特開平8−50206号公報に記載されている。
Figure 2007079533

ディスコティック液晶性分子(I)
ディスコティック液晶分子は、配向層付近ではラビング方向にプレチルト角を持ってほぼフィルム平面に平行に配向しており、反対の空気面側ではディスコティック液晶分子が面に垂直に近い形で立って配向している。ディスコティック液晶層全体としては、ハイブリッド配向を取っており、この層構造によってTNモードのTFT−LCDの視野角拡大を実現することができる。
上記光学異方性層は、一般にディスコティック化合物及び他の化合物(更に、例えば重
合性モノマー、光重合開始剤)を溶剤に溶解した溶液を配向層上に塗布し、乾燥し、次いでディスコティックネマチック相形成温度まで加熱した後、UV光の照射等により重合させ、さらに冷却することにより得られる。本発明に用いるディスコティック液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度としては、70〜300℃が好ましく、特に70〜170℃が好ましい。
また、上記光学異方性層に添加するディスコティック化合物以外の化合物としては、ディスコティック化合物と相溶性を有し、液晶性ディスコティック化合物に好ましい傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しない限り、どのような化合物も使用することができる。これらの中で、重合性モノマー(例、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基を有する化合物)、含フッ素トリアジン化合物等の空気界面側の配向制御用添加剤が、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース及びセルロースアセテートブチレート等のポリマーを挙げることができる。これらの化合物は、ディスコティック化合物に対して一般に0.1〜50質量%、好ましくは0.1〜30質量%の添加量にて使用される。
光学異方性層の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましい。
また、光学異方性層は、非液晶性化合物を溶媒中に溶解させ、支持体上に塗布し、加熱乾燥させて作製した非液晶性ポリマー層でも良い。この場合、非液晶性化合物は例えば、耐熱性、耐薬品性、透明性に優れ、剛性にも富むことから、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等のポリマーを用いることができる。これらのポリマーは、いずれか一種類を単独で使用してもよいし、例えば、ポリアリールエーテルケトンとポリアミドとの混合物のように、異なる官能基を持つ2種以上の混合物として使用してもよい。このようなポリマーの中でも、高透明性、高配向性、高延伸性であることから、ポリイミドが好ましい。また、支持体としては、TACフィルムが好ましい。
また、非液晶層と支持体の積層体を、1.05倍にテンター横軸延伸し、支持体側を偏光子に貼合することも好ましい。
さらには、光学異方性層は、選択反射の波長域が350nm以下であるコレステリック液晶の配向固化層であっても良い。コレステリック液晶としては、例えば特開平3−67219号公報や特開平3−140921号公報、特開平5−61039号公報や特開平6−186534号公報、特開平9−133810号公報などに記載された、前記の選択反射特性を示す適宜なものを用いうる。配向固化層の安定性等の点より好ましく用いうるものは、例えばコレステリック液晶ポリマーやカイラル剤配合のネマチック液晶ポリマー、光や熱等による重合処理で斯かる液晶ポリマーを形成する化合物などからなるコレステリック液晶層を形成しうるものである。
この場合の光学異方性層は、例えば支持基材上にコレステリック液晶をコーティングする方法などにより形成することができる。その場合、位相差の制御等を目的に必要に応じて、同種又は異種のコレステリック液晶を重ね塗りする方式なども採ることができる。コーティング処理には、例えばグラビア方式やダイ方式、ディッピング方式などの適宜な方式を採ることができる。前記の支持基材にはTACフィルム、又はその他のポリマーフィルムなどの適宜なものを用いうる。
前記において光学異方性層の形成に際しては、液晶を配向させるための手段が採られる。その配向手段については特に限定はなく、液晶化合物を配向させうる適宜な手段を採ることができる。ちなみにその例としては、配向膜上に液晶をコーティングして配向させる方式があげられる。またその配向膜としては、ポリマー等の有機化合物からなるラビング処理膜や無機化合物の斜方蒸着膜、マイクログルーブを有する膜、あるいはω−トリコサン酸やジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチルの如き有機化合物のラングミュア・ブロジェット法によるLB膜を累積させた膜などがあげられる。
さらに光の照射で配向機能が生じる配向膜などもあげられる。一方、延伸フィルム上に液晶をコーティングして配向させる方式(特開平3−9325号公報)、電場や磁場等の印加下に液晶を配向させる方式などもなどもあげられる。なお液晶の配向状態は、可及的に均一であることが好ましく、またその配向状態で固定された固化層であることが好ましい。
本発明に関する光学樹脂フィルム、例えばセルロースアシレートフィルムを偏光板保護膜として用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。例えば、得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。保護膜処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護膜で構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成してもよい。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶セルへ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶セルへ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶セルへ貼合する面側に用いられる。
本発明に関する光学樹脂フィルム、例えばセルロースアシレートフィルムの偏光子への貼り合せ方は、偏光子の透過軸と本発明に関するセルロースアシレートフィルムの遅相軸を一致させるように貼り合せることが好ましい。
なお、偏光板クロスニコル下で作製した偏光板は、本発明に関するセルロースアシレートフィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸(透過軸と直交する軸)との直交精度が1°より大きいと、偏光板クロスニコル下での偏光度性能が低下して光抜けが生じ、液晶セルと組み合わせた場合に、十分な黒レベルやコントラストが得られない為、本発明に関するセルロースアシレートフィルムの主屈折率nxの方向と偏光板の透過軸の方向とは、そのずれが1°以内、好ましくは0.5°以内であることが好ましい。
(表面処理)
本発明に関する光学樹脂フィルム、例えばセルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。表面処理としては、例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.30−32に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000Kev下で20〜500Kgyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500Kev下で20〜300Kgyの照射エネルギーが用いられる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。
アルカリ鹸化処理は、セルロースアシレートフィルムを鹸化液の槽に直接浸漬する方法または鹸化液をセルロースアシレートフィルム塗布する方法で実施することが好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法およびE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液をセルロースアシレートフィルムに対して塗布するために、濡れ性が良く、また鹸化液溶媒によってセルロースアシレートフィルム表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒以上5分以下が好ましく、5秒以上5分以下がさらに好ましく、20秒以上3分以下が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。
また、本発明の偏光板は、偏光板の一方の側の保護膜の表面にハードコート層、防眩層、反射防止層の少なくとも一層を設けたものであるのが好ましい。すなわち、偏光板の液晶表示装置への使用時において液晶セルの視認側に配置される保護膜には反射防止層などの機能性膜を設けることが好ましく、かかる機能性膜としてハードコート層、防眩層、反射防止層の少なくとも一層を設けるのが好ましい。
図7は、本発明の偏光板の一例の断面構造を模式的に示す図である(説明のために液晶セル用ガラスも示した)。図7において、偏光子71の両面に保護膜72および73が設けられ、これらのうちの少なくとも一方が本発明の光学樹脂フィルムを有する。この偏光板70が、粘着剤層74を介して液晶セル用ガラス75上に貼りあわされる。また図8は、本発明の偏光板の別の例の断面構造を模式的に示す図である。図8の形態は、図7の偏光板上に、前記のような機能性膜81が設けられている。
なお、各層はそれぞれ別個の層として設ける必要はなく、例えば、防眩層を、反射防止層やハードコート層にその機能を持たせることにより、例えば反射防止層を反射防止層及び防眩層として機能させることにより設けても良い。
(反射防止層)
本発明では、保護膜上に少なくとも光散乱層と低屈折率層がこの順で積層されてなる反射防止層又は保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層した反射防止層が好適に用いられる。以下にそれらの好ましい例を記載する。
保護膜上に光散乱層と低屈折率層を設けた反射防止層の好ましい例について述べる。
光散乱層には、マット粒子が分散されているのが好ましく、光散乱層のマット粒子以外の部分の素材の屈折率は1.50〜2.00の範囲にあることが好ましく、低屈折率層の屈折率は1.20〜1.49の範囲にあることが好ましい。本発明において光散乱層は、防眩性とハードコート性を兼ね備えており、1層でもよいし、複数層、例えば2層〜4層で構成されていてもよい。
反射防止層は、その表面凹凸形状として、中心線平均粗さRaが0.08〜0.40μm、10点平均粗さRzがRaの10倍以下、平均山谷距離Smが1〜100μm、凹凸最深部からの凸部高さの標準偏差が0.5μm以下、中心線を基準とした平均山谷距離Smの標準偏差が20μm以下、傾斜角0〜5度の面が10%以上となるように設計することで、十分な防眩性と目視での均一なマット感が達成され、好ましい。また、C光源下での反射光の色味がa*値−2〜2、b*値−3〜3、380nm〜780nmの範囲内での反射率の最小値と最大値の比0.5〜0.99であることで、反射光の色味がニュートラ
ルとなり、好ましい。またC光源下での透過光のb*値が0〜3とすることで、表示装置に適用した際の白表示の黄色味が低減され、好ましい。また、面光源上と本発明の反射防止フィルムの間に120μm×40μmの格子を挿入してフィルム上で輝度分布を測定した際の輝度分布の標準偏差が20以下であると、高精細パネルに本発明のフィルムを適用したときのギラツキが低減され、好ましい。
本発明で用いることができる反射防止層は、その光学特性として、鏡面反射率2.5%以下、透過率90%以上、60度光沢度70%以下とすることで、外光の反射を抑制でき、視認性が向上するため好ましい。特に鏡面反射率は1%以下がより好ましく、0.5%以下であることが最も好ましい。ヘイズ20%〜50%、内部ヘイズ/全ヘイズ値の比が0.3〜1、光散乱層までのヘイズ値から低屈折率層を形成後のヘイズ値の低下が15%以内、くし幅0.5mmにおける透過像鮮明度20%〜50%、垂直透過光/垂直から2度傾斜方向の透過率比が1.5〜5.0とすることで、高精細LCDパネル上でのギラツキ防止、文字等のボケの低減が達成され、好ましい。
(低屈折率層)
本発明で用いることができる低屈折率層の屈折率は、好ましくは1.20〜1.49であり、更に好ましくは1.30〜1.44の範囲にある。さらに、低屈折率層は下記式を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
(m/4)λ×0.7<n1d1<(m/4)λ×1.3
式中、mは正の奇数であり、n1は低屈折率層の屈折率であり、そして、d1は低屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、500〜550nmの範囲の値である。
低屈折率層を形成する素材について以下に説明する。
低屈折率層は、低屈折率バインダーとして、含フッ素ポリマーを含むことが好ましい。フッ素ポリマーとしては動摩擦係数0.03〜0.20、水に対する接触角90〜120°、純水の滑落角が70°以下の熱または電離放射線により架橋する含フッ素ポリマーが好ましい。本発明の偏光板を画像表示装置に装着した時、市販の接着テープとの剥離力が低いほどシールやメモを貼り付けた後に剥がれ易くなり好ましく、引張り試験機で測定した場合に500gf以下が好ましく、300gf以下がより好ましく、100gf以下が最も好ましい。また、微小硬度計で測定した表面硬度が高いほど、傷がつき難く、0.3GPa以上が好ましく、0.5GPa以上がより好ましい。
低屈折率層に用いられる含フッ素ポリマーとしてはパーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン)の加水分解に引き続く脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性付与のための構成単位を構成成分とする含フッ素共重合体が挙げられる。
含フッ素モノマーの具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
架橋反応性付与のための構成単位としては、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように分子内にあらかじめ自己架橋性官能基を有するモノマーの重
合によって得られる構成単位、カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等)の重合によって得られる構成単位、これらの構成単位に高分子反応によって(メタ)アクリルロイル基等の架橋反応性基を導入した構成単位(例えばヒドロキシ基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で導入できる)が挙げられる。
また上記含フッ素モノマー単位、架橋反応性付与のための構成単位以外に溶剤への溶解性、皮膜の透明性等の観点から適宜フッ素原子を含有しないモノマーを共重合することもできる。併用可能なモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロ二トリル誘導体等を挙げることができる。
上記のポリマーに対しては特開平10−25388号および特開平10−147739号各公報に記載のごとく適宜硬化剤を併用しても良い。
(光散乱層)
光散乱層は、表面散乱および内部散乱の少なくともいずれかによる光拡散性と、フィルムの耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに付与する目的で形成される。従って、ハードコート性を付与するためのバインダー、光拡散性を付与するためのマット粒子、および必要に応じて高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラーを含んで形成される。また、このような光散乱層を設けることにより、該光散乱層が防眩層としても機能し、偏光板が防眩層を有することになる。
光散乱層の膜厚は、ハードコート性を付与する目的で、1〜10μmが好ましく、1.2〜6μmがより好ましい。薄すぎるとハード性が不足し、厚すぎるとカールや脆性が悪化して加工適性が不足となる。
光散乱層のバインダーとしては、飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。また、バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマーの重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。バインダーポリマーを高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むものを選択することもできる。
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、上記のエチレンオキサイド変性体、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4'−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、マット粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を保護膜上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して反射防止膜を形成することができる。これらの光ラジカル開始剤等は公知のものを使用することができる。
ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキ化合物の開環重合は、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。従って、多官能エポシキシ化合物、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤、マット粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を保護膜上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して反射防止膜を形成することができる。
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりにまたはそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
光散乱層には、防眩性付与の目的で、フィラー粒子より大きく、平均粒径が1〜10μm、好ましくは1.5〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子または樹脂粒子が含有される。
上記マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架
橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、架橋アクリルスチレン粒子、シリカ粒子が好ましい。マット粒子の形状は、球状あるいは不定形のいずれも使用できる。
また、粒子径の異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。より大きな粒子径のマット粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径のマット粒子で別の光学特性を付与することが可能である。
さらに、上記マット粒子の粒子径分布としては単分散であることが最も好ましく、各粒子の粒子径は、それぞれ同一に近ければ近いほど良い。例えば平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合には、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つマット粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布のマット剤を得ることができる。
上記マット粒子は、形成された光散乱層のマット粒子量が好ましくは10〜1000mg/m2、より好ましくは100〜700mg/m2となるように光散乱層に含有される。
マット粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
光散乱層には、層の屈折率を高めるために、上記のマット粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である無機フィラーが含有されることが好ましい。また逆に、マット粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率マット粒子を用いた光散乱層では層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は前述の無機フィラーと同じである。
光散乱層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO2、ZrO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITOとSiO2等が挙げられる。TiO2およびZrO2が高屈折率化の点で特に好ましい。該無機フィラーは表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
これらの無機フィラーの添加量は、光散乱層の全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%であり、特に好ましくは30〜75%である。
なお、このようなフィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
光散乱層のバインダーおよび無機フィラーの混合物のバルクの屈折率は、1.50〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.51〜1.80である。屈折率を上記範囲とするには、バインダー及び無機フィラーの種類及び量割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
光散乱層は、特に塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状均一性を確保するために、フッ素系、シリコーン系の何れかの界面活性剤、あるいはその両者を光散乱層形成用の塗布組成物中に含有する。特にフッ素系の界面活性剤は、より少ない添加量において、本発明の反射防止フィルムの塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状故障を改良する効果が現れるため、好ましく用いられる。面状均一性を高めつつ、高速塗布適性を持たせることにより生産性を高めることが目的である。
次に保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層された反射防止層
について述べる。
保護膜上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成から成る反射防止層は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>保護膜の屈折率>低屈折率層の屈折率
また、保護膜と中屈折率層の間に、ハードコート層を設けてもよい。更には、中屈折率ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層からなってもよい。
例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等に記載の反射防止層が挙げられる。
また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止層のヘイズは、5%以下あることが好ましく、3%以下がさらに好ましい。また、膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
(高屈折率層および中屈折率層)
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒径100nm以下の高屈折率の無機化合物微粒子及びマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化膜から成る。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
このような微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908号公報、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(特開2001−166104号公報等)、特定の分散剤併用(例、特開平11−153703号公報、米国特許第6210858号明細書、特開2002−277609号公報等)等挙げられる。
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
更に好ましい材料としては、ラジカル重合性及びカチオン重合性の少なくともいずれかの重合性基を2個以上有する多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有する有機金属化合物を含有する組成物、及びその部分縮合体を含有する組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が挙げられる。
例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。
また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
高屈折率層の屈折率は、1.70〜2.20であることが好ましい。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。また、厚さは5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
(低屈折率層)
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層して成る。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55であることが好ましい。より好ましくは1.30〜1.50である。
低屈折率層は、耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等から成る薄膜層の手段を適用できる。
また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
例えば、特開平9−222503号公報段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物が挙げられる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。
シリコーン化合物としてはポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例、サイラプレーン(チッソ(株)製等)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
架橋又は重合性基を有する含フッ素ポリマー及びシロキサンポリマーの少なくともいずれかの架橋又は重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時または塗布後に光照射や加熱することにより低屈折率層を形成することが好ましい。
又、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物またはその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
低屈折率層は、上記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物、特開平11−3820号公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されても良い。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
(ハードコート層)
ハードコート層は、反射防止層を設けた保護膜に物理強度を付与するために、保護膜の表面に設ける。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。ハードコート層は、光及び/又は熱の硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。硬化性化合物における硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましい。又加水分解性官能基含有の有機金属化合物や有機アルコキシシリル化合物も好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。
ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開第00/46617号パンフレット等記載のものが挙げられる。
高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
ハードコート層は、平均粒径0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は、用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。又、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
(反射防止層の他の層)
さらに、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
(帯電防止層)
帯電防止層を設ける場合には体積抵抗率が10-8(Ωcm-3)以下の導電性を付与することが好ましい。吸湿性物質や水溶性無機塩、ある種の界面活性剤、カチオンポリマー、アニオンポリマー、コロイダルシリカ等の使用により10-8(Ωcm-3)の体積抵抗率の付与は可能であるが、温湿度依存性が大きく、低湿では十分な導電性を確保できない問題がある。そのため、導電性層素材としては金属酸化物が好ましい。金属酸化物には着色しているものがあるが、これらの金属酸化物を導電性層素材として用いるとフィルム全体が着色してしまい好ましくない。着色のない金属酸化物を形成する金属としてZn,Ti,Sn,Al,In,Si,Mg,Ba,Mo,W,又はVをあげることができ、これらを主成分とした金属酸化物を用いることが好ましい。具体的な例としては、ZnO,TiO2,SnO2,Al23,In23,SiO2,MgO,BaO,MoO3,WO3,V25等、あるいはこれらの複合酸化物がよく、特にZnO,TiO2,及びSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl,In等の添加物、SnO2に対してはSb,Nb,ハロゲン元素等の添加、またTiO2に対してはNb,Ta等の添加が効果的である。更にまた、特公昭59−6235号公報に記載の如く、他の結晶性金属粒子あるいは繊維状物(例えば酸化チタン)に上記の金属酸化物を付着させた素材を使用しても良い。尚、体積抵抗値と表面抵抗値は別の物性値であり単純に比較することはできないが、体積抵抗値で10-8(Ωcm-3)以下の導電性を確保するためには、該導電層が概ね10-10(Ω/□)以下の表面抵抗値を有していればよく更に好ましくは10-8(Ω/□)である。導電層の表面抵抗値は帯電防止層を最表層としたときの値として測定されることが必要であり、本特許に記載の積層フィルムを形成する途中の段階で測定することができる。
〔液晶表示装置〕
本発明の偏光板は、液晶表示装置に有利に用いられる。本発明の偏光板は、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric
Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric
Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA
(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。このうち、VAモードに好ましく用いることができる。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード、CPAモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
VAモードの液晶表示装置としては、液晶セル(VAモードセル)およびその両側に配置された二枚の偏光板からなるものが挙げられる。液晶セルは、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。
図9および10に、本発明の液晶表示装置の構成例を示す。
図9において、偏光子71の両面に保護膜72および73が設けられ、これらのうちの少なくとも一方が本発明の光学樹脂フィルムを有する。本発明の光学樹脂フィルムは、液晶セル側に設けられるのが好ましい。また、保護膜72上(観察者側)には、機能性膜81が設けられている。この偏光板70が、粘着剤層74を介して液晶セル用ガラス92上に貼りあわされている。液晶セル90は、液晶層91を液晶セル用ガラス92および93で挟み込んで形成され、光源側の液晶セル用ガラス93には、粘着剤層74’を介して偏光板70’が貼りあわされている。偏光板70’は、偏光子71’の両面に保護膜72’および73’が設けられてなる。本発明では、偏光板70または偏光板70’のいずれかまたは両方に本発明の光学樹脂フィルムを有していればよい。
図10は、さらに具体的に本発明の液晶表示装置を説明している。図10において、液晶表示装置は、液晶層107とそれを挟む上側基板106および下側基板108からなる液晶セルを有する。上側基板106および下側基板108は液晶面に配向処理が施してある。液晶セルを挟持して偏光膜101および201が配置されている。偏光膜101および201それぞれの透過軸102および202を、互いに直交に、かつ液晶セルの液晶層107の配向方向と45度の角度に配置している。偏光膜101および201と液晶セルとの間には、本発明の光学樹脂フィルム103aおよび203aと光学異方性層105および109がそれぞれ配置されている。
光学樹脂フィルム103aおよび203aは、その面内遅相軸104aおよび204aが、それぞれに隣接する偏光膜101および201の透過軸102および202の方向と平行に配置されている。
本発明の光学樹脂フィルム以外の保護膜を用いる場合は、通常のセルロースアシレートフィルムでも良く、たとえば、市販のKC4UX2M(コニカオプト(株)製40μm)、KC5UX(コニカオプト(株)製60μm)、KC80UVSFD(コニカオプト(株)製80μm)、TD80U(富士写真フイルム(株)製80μm)、TF80U(富士写真フイルム(株)製80μm)等が挙げられるが、これらに限定されない。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
実施例1
(セルロースアシレートフィルムの作製)
リンターパルプからのセルロース100質量部とセルロースに対して100質量部の氷酢酸を室温にて均一に攪拌混合した混合物を、無水酢酸245質量部、酢酸365質量部および触媒の硫酸15質量部の反応釜中の冷却した混合液中に投入し、47℃で60分間、酢化反応を行った。酢化反応終了時に45.5質量部の加水分解および中和のための酢酸マグネシウム水溶液(30質量%)を加え、過剰に存在する無水酢酸の加水分解と硫酸の中和を行った。その後、反応液を60℃まで昇温しながら、約12.8質量部の熟成のための酢酸マグネシウム水溶液(30質量%)を添加した。その後、水を添加した後、70℃で40分間熟成反応を行った。熟成反応終了後、約20質量部の反応終了後の酢酸マグネシウム水溶液(30質量%)を加え、硫酸を完全に中和して反応を停止した。反応終了後、大過剰の水で沈殿、洗浄、乾燥を行った。
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルローストリアセテート(トリアセチルセルロース:TAC)溶液を調製した。このとき、同時にセルロースアシレート100質量部に対して微粒子であるマット剤(AEROSIL R972、日本エアロジル(株)製)0.05質量部および下記紫外線吸収剤1を0.3質量部、紫外線吸収剤2を0.7質量部投入し、ドープを完成させた。
────────────────────────────────────────素材・溶剤組成
────────────────────────────────────────
セルロースアセテート(置換度2.81 酢化度60.2%) 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 6.5質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 5.2質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 500質量部
メタノール(第2溶媒) 80質量部
下記のレターデーション上昇剤(λmax=230nm) 1.0質量部
─────────────────────────────────────
Figure 2007079533

紫外線吸収剤 1
Figure 2007079533
紫外線吸収剤 2
Figure 2007079533
(流延)
上述のドープをダイからステンレスベルト上にドープ温度30℃で幅1.6mで流延した。ステンレスベルトの裏面から25℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に15℃の冷水を接触させて15秒間把持した後、ステンレスベルトから剥離した。
次いで一軸延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで把持し(工程A)、工程Bでクリップ間隔を幅手方向に延伸速度250%/minで変化させた。このとき、フィルム雰囲気温度は120℃、延伸倍率は1.3倍であった。
次に工程Cでフィルムを把持したまま搬送を行った。工程Cでは工程Bでの幅に対し、98%となるように緩和を行った。続いて雰囲気温度を100℃に設定した工程D1でフィルムの乾燥を行い、セルロースアシレートフィルム1を得た。
上記のフィルム作成工程において延伸時の温度はフィルムのガラス転移点(Tg)に対して、Tg+30℃になるように設定した。
また、把持工程および延伸工程での平均乾燥速度と緩和工程での平均乾燥速度の比が3.1になるように乾燥条件を調節した。
得られたセルロースアシレートフィルムをコア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに幅1m、長さ100mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度250℃のエンボスリングを押し当て厚みだし加工を施してフィルム同士の密着を防止した。
得られたフィルムロールから取り出したフィルムのReおよびRthを測定した。結果を表1に示す。膜厚は全て80μであった。
(フィルムNo.2,3の作成)
フィルムNo.1の作成において、延伸温度および紫外線吸収剤を変更することによって表1に示す光学性能のフィルムを作成した。
本例で得られたフィルムのヘイズは、全て0.1〜0.9、マット剤の2次平均粒子径が1.0μm以下であり、80℃90%RHの条件下に48時間静置した場合の質量変化は0〜3%であった。さらに、どのサンプルも光弾性係数は50×10-13cm2/dyne以下であった。
[偏光板1〜3の作製]
厚み75μm、重合度2400のポリビニルアルコール(PVA)フィルムを30℃の温水で40秒間膨潤させた後、ヨウ素濃度0.06質量%、ヨウ化カリウム6質量%の水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%、ヨウ化カリウム3質量%の水溶液中に40℃で60秒浸漬している間に、縦方向が元の長さの5.0倍にな
るように延伸した。その後、50℃で4分間乾燥させて、偏光子を得た。
既に作製済みのセルロースアシレートフィルムNo.1乃至3を、1.5モル/リットルで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、0.005モル/リットルで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
前記のように鹸化処理を行ったセルロースアシレートフイルム1乃至3と富士写真フイルム(株)製「TD80U」を前記の偏光子フイルムを挟むようにポリビニールアルコール系接着剤を用いて張り合わせ、さらに70℃で30分間加熱した。この後、幅方向から3cm、カッターにて耳きりをし、有効幅1000mm、長さ50mのロール形態の偏光板1乃至3を作製した。
[粘着剤層の塗工]
(アクリル系ポリマー溶液の作製)
n−ブチルアクリレート(n−BA)75質量部、メチルアクリレート(MA)20質量部、2−ヒドロキシアクリレート(2−HEA)5質量部、酢酸エチル100質量部およびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部を反応容器に入れ、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、撹拌下に窒素雰囲気中で、この反応容器を60℃に昇温させ、4時間反応させた。4時間後、トルエン100質量部、α−メチルスチレンダイマー5質量部およびAIBN2質量部を加え、90℃に昇温し、さらに4時間反応させた。反応後、酢酸エチルで希釈し、固形分20%のアクリルポリマー溶液を得た。ポリマー溶液の固形分100質量部にイソシアネート系架橋剤(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン(株)製)1.0質量部を添加し、よく撹拌して粘着剤組成物を得た。
(粘着剤付偏光板1〜3の作製)
上記で作製した偏光板1〜3に粘着剤を塗工する。
上記アクリルポリマー溶液を含有する粘着剤組成物を剥離処理したポリエステルフィルム上に25μmの粘着剤層を形成し、それを偏光板(セル側保護フィルム上)に転写し、温度23℃,湿度65%の条件で7日間熟成させて粘着剤付偏光板1〜3を作製した。さらにその粘着剤層の上にセパレートフィルムを貼り付けた。セルと反対側の保護フィルム上にはプロテクトフィルムを貼り付けた。
[偏光板の調湿]
得られた粘着剤付偏光板1を41cm×30cmの大きさで切り出して(辺に対して偏光板の吸収軸が平行になるように切り出した)、プロテクトフィルムを剥離して、25℃60%RHの雰囲気下で48時間調湿した。
[パネルへの実装]
(VAパネルへの実装)
VAモードの液晶TV(LC−20C5、シャープ(株)製)の表裏の偏光板および位相差板を剥し、裏側に実施例で作製・調湿した偏光板1〜3、表側に視野角補償板のない市販の偏光板(HLC2−5618、サンリッツ(株)製)を、ラミネーターロールを用いて貼り付け液晶パネルを作成した。
この際、視認側の偏光板の吸収軸をパネル水平方向に、バックライト側の偏光板の吸収軸をパネル鉛直方向となり、粘着材面が液晶セル側となるように配置した。
上記で作製した偏光板を貼り合せた液晶パネルを使用し、液晶TVを組み立て、バックライトを点灯させた。このときの方位角0度、極角60度と正面における色ずれΔxを求めた。測定は画面の10箇所で行いその平均値をΔxとした。結果を表1に示す。
色ずれ:方位角0度でのΔCu'v';u'v'(極角60°)-u'v'(極角0°)と方位角180度でのΔCu'v':u'v'(極角60°)-u'v'(極角0°)の和(u'v':CIELAB空間における色座標)。
Figure 2007079533
表1より本発明の光学特性を持つフィルムを用いた液晶表示装置では、色ずれが小さい好ましい表示装置が得られることがわかる。
実施例2
実施例1のフィルム作成において、表2のように乾燥条件を変化させ、面内のRe,Rth分布を変化させたフィルムを作成した。実施例1と同様に色ずれを評価し、表2に示した。
Figure 2007079533
表2から、Re,Rthの分布を本発明で規定する範囲内にすることにより、色ずれの小さい表示装置が得られることがわかる。
実施例3
実施例1で作製したフィルムのバンド面側に、1.0Nの水酸化カリウム溶液(溶媒:水/イソプロピルアルコール/プロピレングリコール=69.2質量部/15質量部/15.8質量部)を10cc/m2塗布し、約40℃の状態で30秒間保持した後、アルカリ液を掻き取り、純水で水洗し、エアーナイフで水滴を削除した。その後、100℃で15秒間乾燥した。これらのフィルムの純水に対する接触角を求めたところ、42°であった。
(配向膜の作製)
No.1〜3のフィルム上に、下記の組成の配向膜塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28ml/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥し、配向膜を作製した。
────────────────────────────────────────配向膜塗布液組成
────────────────────────────────────────
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
クエン酸エステル(三協化学製 AS3) 0.35質量部
────────────────────────────────────────
Figure 2007079533
乾燥後の配向膜厚みは1.1μmであった。また、配向膜の表面粗さを原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope、SPI3800N、セイコーインスツルメンツ(株)製)にて測定したところ、1.147nmであった。
(光学異方性層の形成)
配向膜上に、下記の組成のディスコティック液晶を含む塗布液を#2.8のワイヤーバーを391回転でフィルムの搬送方向と同じ方向に回転させて、20m/分で搬送されているフィルムの配向膜面に連続的に塗布した。
────────────────────────────────────────ディスコティック液晶層の塗布液組成
────────────────────────────────────────
下記のディスコティック液晶性化合物 33.2質量%
下記化合物(円盤面を5度以内に配向させるための添加剤) 0.1質量%
エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 3.2質量%
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 0.4質量%
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 1.1質量%
メチルエチルケトン 62.0質量%
────────────────────────────────────────
Figure 2007079533
Figure 2007079533
室温から100℃に連続的に加温する工程で、溶媒を乾燥させ、その後、130℃の乾燥ゾーンでディスコティック液晶化合物層の膜面風速が、2.5m/secとなるように、約90秒間加熱し、ディスコティック液晶化合物を配向させた。次に、フィルムの表面温度が約130℃の状態で、紫外線照射装置(紫外線ランプ:出力120W/cm)により、紫外線を4秒間照射し、架橋反応を進行させて、ディスコティック液晶化合物をその配向に固定した。その後、室温まで放冷し、円筒状に巻き取ってロール状の形態にした。このようにして、ロール状光学補償フィルムを作製した。
なお、ディスコティック液晶化合物の円盤面と透明ポリマーフィルム面との角度は、0度であった。
フイルム1から作成したフイルムをNo.33、フイルム2から作成したフイルムをNo.35、フイルム3から作成したフイルムをNo.31として光学特性を測定した。結果を表3に示す。
偏光板をクロスニコル配置とし、得られた光学補償フィルムのムラを観察したところ、正面、および法線から60°まで傾けた方向から見ても、ムラは検出されなかった。
これらのフィルムを実施例1同様にして液晶表示装置に装着し、色ずれを評価した。結果を表3に示す。
光学異方性層を有するフィルムにおいても本発明の効果は顕著であった。
Figure 2007079533
実施例4
[反射防止機能付き保護膜の作製(フィルム25)]
(光散乱層用塗布液の調製)
ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(PETA、日本化薬(株)製)50gをトルエン38.5gで希釈した。更に、重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を2g添加し、混合攪拌した。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.51であった。
さらにこの溶液にポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散した平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.60、SX−350、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液を1.7gおよび平均粒径3.5μmの架橋アクリル−スチレン粒子(屈折率1.55、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液を13.3g加え、最後に、フッ素系表面改質剤(FP−1)0.75g、シランカップリング剤(KBM−5103、信越化学工業(株)製)を10gを加え、完成液とした。
上記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して光散乱層の塗布液を調製した。
(低屈折率層用塗布液の調製)
まず初めに、次のようにしてゾル液aを調製した。攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン120部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM5103、信越化学工業(株)製)100部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3部を加え混合したのち、イオン交換水30部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液aを得た。質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー(JN−7228、固形分濃度6%、JSR(株)製)13g、シリカゾル(シリカ、MEK−STの粒子サイズ違い、平均粒径45nm、固形分濃度30%、日産化学(株)製)1.3g、上記ゾル液a0.6gおよびメチルエチルケトン5g、シクロヘキサノン0.6gを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液を調製した。
(反射防止層付き透明保護膜の作製)
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(フジタックTD80U、富士写真フィルム(株)製)をロール形態で巻き出して、上記の機能層(光散乱層)用塗布液を線数180本/インチ、深度40μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、さらに窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量250mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ6μmの機能層を形成し、巻き取った。
該機能層(光散乱層)を塗設したトリアセチルセルロースフィルムを再び巻き出してその光散乱層側に、該調製した低屈折率層用塗布液を線数180本/インチ、深度40μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度15m/分の条件で塗布し、120℃で150秒乾燥の後、更に140℃で8分乾燥させてから窒素パージ下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量900mJ/cm2の紫外線を照射し、厚さ100nmの低屈折率層を形成し、巻き取り、反射防止機能付き保護膜(フィルム25)を作製した。
〔反射防止機能付き保護膜26〕
(ハードコート層用塗布液の調製)
トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA、日本化薬(株)製)750.0質量部に、質量平均分子量3000のポリ(グリシジルメタクリレート)270.0質量部、メチルエチルケトン730.0g、シクロヘキサノン500.0g及び光重合開始剤(イルガキュア184、日本チバガイギー(株)製)50.0gを添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用の塗布液を調製した。
(二酸化チタン微粒子分散液の調製)
二酸化チタン微粒子としては、コバルトを含有し、かつ水酸化アルミニウムと水酸化ジルコニウムを用いて表面処理を施した二酸化チタン微粒子(MPT−129、石原産業(株)製)を使用した。
この粒子257.1gに、下記分散剤38.6g、およびシクロヘキサノン704.3gを添加してダイノミルにより分散し、質量平均径70nmの二酸化チタン分散液を調製した。
Figure 2007079533
(中屈折率層用塗布液の調製)
上記の二酸化チタン分散液88.9gに、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)58.4g、光重合開始剤(イルガキュア907)3.1g、光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)1.1g、メチルエチルケトン482.4gおよびシクロヘキサノン1869.8gを添加して攪拌した。十分に攪拌ののち、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して中屈折率層用塗布液を調製した。
(高屈折率層用塗布液の調製)
上記の二酸化チタン分散液586.8gに、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)47.9g、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)4.0g、光増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製)1.3g、メチルエチルケトン455.8g、およびシクロヘキサノン1427.8gを添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して高屈折率層用の塗布液を調製した。
(低屈折率層用塗布液の調製)
下記共重合体(P−1)をメチルイソブチルケトンに7質量%の濃度になるように溶解し、末端メタクリレート基含有シリコーン樹脂X−22−164C(信越化学(株)製)を固形分に対して3%、光ラジカル発生剤イルガキュア907(商品名)を固形分に対して5質量%添加し、低屈折率層用塗布液を調製した。
共重合体(P−1)
Figure 2007079533
(反射防止層付透明保護膜の作製)
膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム(フジタックTD80U、富士写真フィルム(株)製)上に、ハードコート層用塗布液をグラビアコーターを用いて塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ8μmのハードコート層を形成した。
ハードコート層の上に、中屈折率層用塗布液、高屈折率層用塗布液、低屈折率層用塗布液を3つの塗布ステーションを有するグラビアコーターを用いて連続して塗布した。
中屈折率層の乾燥条件は100℃、2分間とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら180W/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量400mJ/cm2の照射量とした。硬化後の中屈折率層は屈折率1.630、膜厚67nmであった。
高屈折率層および低屈折率層の乾燥条件はいずれも90℃、1分の後、100℃、1分とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を
用いて、照度600mW/cm2、照射量600mJ/cm2の照射量とした。
硬化後の高屈折率層は屈折率1.905、膜厚107nm、低屈折率層は屈折率1.440、膜厚85nmであった。このようにして、反射防止層付き透明保護膜(フィルム26)を作製した。
実施例1の偏光板作成過程において、TD80Uのかわりに上記フィルム25および26を用いて偏光板を作成し、実施例1同様に色ずれを評価した。
ハードコート層および反射防止層を有する保護膜を用いた場合でも、本発明の効果は顕著であった。
実施例5
(セルロースアシレートフィルムの製膜)
(1)セルロースアシレート
原料のセルロースに、触媒として硫酸を添加し、さらにアシル置換基の原料となる無水カルボン酸を添加してアシル化反応を行い、その後、中和、ケン化熟成することによって調製した。この時、触媒量、無水カルボン酸の種類、量、中和剤の添加量、水添加量、反応温度、熟成温度を調整することで、アシル基の種類、置換度、嵩比重、重合度の異なるセルロースアシレートを調製した。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をア
セトンで洗浄し除去した。
上記のようにして調製したセルロースアシレートのうち、アセチル基置換度2.79、
DS6/(DS2+DS3+DS6)=0.322のセルロースアシレートを用い、以下のドープ調製を行った。
(2)ドープ調製
<1−1> セルロースアシレート溶液
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、更に90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート 100.0質量部
トリフェニルフォスフェイト 8.0質量部
ビフェニルジフェニルフォスフェイト 4.0質量部
メチレンクロライド 403.0質量部
メタノール 65.0質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
<1−2> マット剤分散液
次に上記方法で作製したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤分散液
――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製 2.0質量部
メチレンクロライド 72.4質量部
メタノール 10.8質量部
セルロースアシレート溶液 10.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
<1−3> レターデーション発現剤溶液
次に上記方法で作製したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して溶解し、レターデーション発現剤溶液Aを調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
レターデーション発現剤溶液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
レターデーション発現剤A 15.0質量部
メチレンクロライド 58.3質量部
メタノール 8.7質量部
セルロースアシレート溶液 12.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
上記セルロースアシレート溶液を100質量部、マット剤分散液を1.35質量部、更にセルロースアシレートフィルム中のレターデーション発現剤A量が4.5質量部となる
量のレターデーション発現剤溶液を混合し、製膜用ドープを調製した。
レターデーション発現剤A
Figure 2007079533
(流延)
上述のドープをガラス板流延装置を用いて流延した。給気温度70℃の温風で6分間乾燥し、ガラス板から剥ぎ取ったフィルムを枠に固定し、給気温度100℃の温風で10分間、給気温度140℃の温風で20分間乾燥し、膜厚100μmのセルロースアシレートフィルムを製造した。
このフィルムを、2軸延伸試験装置((株)東洋精機製作所製)にて4辺を把持し、表5の条件で延伸および収縮工程を行った。延伸および収縮工程の共通条件として、これらの工程前に各例での指定給気温度で2分間の予備加熱を行った後、この給気温度にてTD方向へ延伸およびMD方向へ緩和を行った。これらの工程の終了後にクリップで把持したまま5分間、送風冷却を行った。表中のMDとはガラス板流延時の流延方向を指し、TDとはそれと直行する幅方向を指す。これらのフィルムをフィルム51〜55とする。
<フィルムの波長450、550、650nmにおけるRe、Rth>
このフィルムの波長450、550、650nmにおけるRe、Rthを、先に述べた方法に従い、KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)にて測定した。
結果を表4に示す。表4からReの変動係数が5%以下かつRthの変動係数が10%以下である本発明のセルロースアシレートは、延伸工程と収縮工程の両方を含む方法で作成することにより実現できることがわかる。また、このとき本発明の要件である式(A)〜(D)を満たしていることがわかる。
Figure 2007079533
実施例6
実施例5で作製したセルロースアシレートフィルム51〜55に、1.0Nの水酸化カリウム溶液(溶媒:水/イソプロピルアルコール/プロピレングリコール=69.2質量部/15質量部/15.8質量部)を10cc/m2塗布し、約40℃の状態で30秒間保持した後、アルカリ液を掻き取り、純水で水洗し、エアーナイフで水滴を削除した。その後、100℃で18秒間乾燥した。
アルカリ処理面の純水に対する接触角を測定したところ、40°であった。
(配向膜の形成)
該アルカリ処理面に、下記の組成の配向膜塗布液を#16のワイヤーバーコーターで2
8ml/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥し、配向膜を形成した。
────────────────────────────────────────
配向膜塗布液組成
────────────────────────────────────────
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
クエン酸エステル(AS3、三協化学(株)製) 0.35質量部
────────────────────────────────────────
Figure 2007079533
(ラビング処理)
配向膜を形成した透明支持体を速度20m/分で搬送し、長手方向に対して45°にラビング処理されるようにラビングロール(300mm直径)を設定し、650rpmで回転させて、透明支持体の配向膜設置表面にラビング処理を施した。ラビングロールと透明支持体の接触長は、18mmとなるように設定した。
(光学異方性層の形成)
102Kgのメチルエチルケトンに、下記円盤状液晶性化合物35.03Kg、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)4.35Kg、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)0.35Kg、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)1.31Kg、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.47Kgを溶解した。溶液に、フルオロ脂肪族基含有共重合体(メガファックF780 大日本インキ(株)製)0.1Kgを加え、塗布液を調製した。塗布液を、#3.2のワイヤーバーを391回転でフィルムの搬送方向と同じ方向に回転させて、20m/分で搬送されている透明支持体の配向膜面に連続的に塗布した。
Figure 2007079533
室温から100℃に連続的に加温し、溶媒を乾燥させ、その後、130℃の乾燥ゾーンで円盤状光学異方性層の膜面風速が、2.5m/secとなるように、約90秒間加熱し、円盤状液晶性化合物を配向させた。次に、80℃の乾燥ゾーンに搬送させて、フィルムの表面温度が約100℃の状態で、紫外線照射装置(紫外線ランプ:出力160W/cm、発光長1.6m)により、照度600mWの紫外線を4秒間照射し、架橋反応を進行させて、円盤状液晶性化合物をその配向に固定した。その後、室温まで放冷し、円筒状に巻き取ってロール状の形態にした。このようにして、ロール状光学補償フィルムを作製した。
127℃の膜面温度で光学異方性層の粘度を測定したところ、695cpであった。粘度は、光学異方性層と同じ組成の液晶層(溶媒は除く)を加熱型のE型粘度系で測定した結果である。
作製したロール状光学補償フィルムの一部を切り取り、サンプルとして用いて、光学特性を測定した。波長546nmで測定した光学異方性層のReレターデーション値は35nmであった。また、光学異方性層中の円盤状液晶性化合物の円盤面と支持体面との角度(傾斜角)は、層の深さ方向で連続的に変化し、平均で28゜であった。さらに、サンプルから光学異方性層のみを剥離し、光学異方性層の分子対称軸の平均方向を測定したところ、光学補償フィルムの長手方向に対して、45°となっていた。
〈OCBパネルへの実装評価〉
これらのセルロースアシレートフィルム試料を実施例1同様に偏光板加工した。
<液晶表示装置での実装評価>
(ベンド配向液晶セルの作製)
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを4.7μmに設定した。セルギャップにΔnが0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向液晶セルを作製した。
作製したベンド配向セルを挟むように作製した偏光板を二枚貼り付けた。作成したフィイルムが液晶セル側にくるように貼り付けた。また液晶セルのラビング方向とそれに対面する光学異方性層のラビング方向とが反平行となるように配置した。
液晶セルに55Hzの矩形波電圧を印加した。白表示2V、黒表示5Vのノーマリーホワイトモードとした。正面における透過率が最も小さくなる電圧すなわち黒電圧を印加し、そのときの正面の色と方位角0°〜90°、極角60°方向視野角における色ずれΔxを求めた。結果を表5に示す。ただし下記のようにランク分けして示した。
黒表示時の色ずれ(Δx:ただし方位角0°〜90°の間での最大値)
○ 0.02未満
○△ 0.02〜0.04
△ 0.04〜0.06
× 0.06以上
Figure 2007079533
表5からわかるように本発明のフィルムを用いることで、色ずれの変化が小さい品位の高い液晶表示装置が得られることがわかる。
従来のVAモードの液晶表示装置の構成例を説明する概略模式図である。 従来のVAモードの液晶表示装置の構成例を説明する概略模式図である。 本発明の液晶表示装置の構成例を説明する概略模式図である。 本発明に用いられる光学補償フィルムの一例についての光学特性を示すグラフである。 本発明の液晶表示装置における入射光の偏光状態の変化を説明するために用いたポアンカレ球の概略図である。 従来の液晶表示装置の一例における入射光の偏光状態の変化を説明するために用いたポアンカレ球の概略図である。 本発明の偏光板の一例の断面構造を模式的に示す図である。 本発明の偏光板の別の例の断面構造を模式的に示す図である。 本発明の液晶表示装置の構成例を示す図である。 本発明の液晶表示装置の構成例を示す図である。 本発明の、把持工程A、幅手方向延伸工程B及び幅手方向緩和工程Cの関係を説明する図である。 延伸工程Bの一態様を説明する図である。
符号の説明
1,2 偏光板
3 液晶セル
4 光学補償フィルム
70 偏光板
71,101 偏光子
72,73,103a 保護膜
81 機能性膜
102 吸収軸
104a 面内遅相軸
105 光学補償フィルム
105a 面内遅相軸
106 上側基板
107 液晶層
108 下側基板
109 光学補償フィルム
109a 面内遅相軸
203a 保護膜
204a 面内遅相軸

Claims (8)

  1. 下記式(A)〜(D)のレターデーションを満たし、フィルムの幅手方向の面内レターデーション(Re)の変動係数が5%以下であり、かつ厚み方向のレターデーション(Rth)の変動係数が10%以下であることを特徴とする光学樹脂フィルム。
    (A)0.1<Re(450)/Re(550)<0.95
    (B)1.03<Re(650)/Re(550)<1.93
    (C)0.4<(Re/Rth(450))/(Re/Rth(550))<0.95
    (D)1.05<(Re/Rth(650)/(Re/Rth(550))<1.9
    (式中、Re(λ)は、波長λnmの光に対する該フィルムの面内レターデーション値であり、Rth(λ)は、波長λnmの光に対する該フィルムの厚み方向のレターデーション値であり、Re/Rth(λ)は、波長λnmの光に対する該フィルムの面内レターデーション値と厚み方向のレターデーション値の比である(単位:nm)。)
  2. 前記光学樹脂フィルムがセルロースアシレートフィルムからなることを特徴とする請求項1に記載の光学樹脂フィルム。
  3. 可塑剤、紫外線吸収剤、剥離促進剤、染料およびマット剤からなる群から選択された1種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の光学樹脂フィルム。
  4. 棒状化合物または円盤状化合物からなるレターデーション発現剤を1種以上含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学樹脂フィルム。
  5. ポリビニルアルコールを有する偏光子の両面に保護膜を設けてなる偏光板であって、前記保護膜の少なくとも一方が、請求項1〜4のいずれかに記載の光学樹脂フィルムであることを特徴とする偏光板。
  6. 前記保護膜の一方の表面に、ハードコート層、防眩層および反射防止層から選択された少なくとも一層を設けたことを特徴とする請求項5に記載の偏光板。
  7. 少なくとも一方の保護膜の上に光学異方性層を設けたことを特徴とする請求項5または6に記載の偏光板。
  8. 請求項5〜7のいずれかに記載の偏光板を備えてなることを特徴とする液晶表示装置。
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