以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、単に実施の形態という。)について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るスイッチング電源装置の構成を表すものである。このスイッチング電源装置は、高圧バッテリ10から供給される高圧の直流入力電圧Vinを、より低い直流出力電圧Voutに変換して、図示しない低圧バッテリに供給して負荷7を駆動するDC−DCコンバータとして機能するものである。
このスイッチング電源装置は、1次側高圧ラインL1Hと1次側低圧ラインL1Lとの間に設けられた入力平滑コンデンサ11、ブリッジ回路1およびサージ電圧抑止回路2と、共振用のインダクタLrと、1次側巻線31および2次側巻線32A,32Bを有するトランス3とを備えている。そして1次側高圧ラインL1Hの入力端子T1と1次側低圧ラインL1Lの入力端子T2との間には、高圧バッテリ10から出力される直流入力電圧Vinが印加されるようになっている。このスイッチング電源装置はまた、トランス3の2次側に設けられた整流回路4と、この整流回路4に接続された平滑回路5と、ブリッジ回路1を駆動する駆動回路6とを備えている。
入力平滑コンデンサ11は、入力端子T1,T2から入力された直流入力電圧Vinを平滑化するためのものである。
ブリッジ回路1は、4つのスイッチング素子S1〜S4と、これらスイッチング素子S1〜S4に対してそれぞれ並列接続されたコンデンサC1〜C4およびダイオードD1〜D4とを有しており、フルブリッジ型の回路構成となっている。具体的には、スイッチング素子S1,S2の一端同士が互いに接続されると共に、スイッチング素子S3,S4の一端同士が互いに接続されている。また、スイッチング素子S1,S3の他端同士が互いに接続されると共にスイッチング素子S2,S4の他端同士が互いに接続され、これらの他端同士は、それぞれ入力端子T1,T2に接続されている。ブリッジ回路1はこのような構成により、駆動回路6から供給される駆動信号SG1〜SG4に応じて、入力端子T1,T2間に印加される直流入力電圧Vinを入力交流電圧に変換するようになっている。
なお、スイッチング素子S1〜S4は、例えば電界効果型トランジスタ(MOS−FET;Metal Oxide Semiconductor-Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolor Transistor)などのスイッチ素子から構成される。また、これらスイッチ素子としてMOS―FETを用いた場合には、上記コンデンサC1〜C4およびダイオードD1〜D4をそれぞれ、このMOS―FETの寄生容量または寄生ダイオードから構成することが可能である。また、上記コンデンサC1〜C4をそれぞれ、ダイオードD1〜D4の接合容量で構成することも可能である。このように構成した場合、スイッチ素子とは別個にコンデンサC1〜C4やダイオードD1〜D4を設ける必要がなくなり、回路構成を簡素化することができる。
サージ電圧抑止回路2は、逆方向接続の一対のダイオードD5,D6と、これらダイオードD5,D6にそれぞれ並列接続されたコンデンサC5,C6とを有している。ダイオードD5のアノードは接続点P3に接続され、カソードは1次側高圧ラインL1Hに接続されている。また、ダイオードD6のアノードは1次側低圧ラインL1Lに接続され、カソードは接続点P3に接続されている。このような構成によりサージ電圧抑止回路2は、コンデンサC5,C6と後述するインダクタLrとの間でLC直列共振回路(第1共振回路)を構成し、このLC直列共振回路による共振特性を利用することで、後述する整流回路4内の整流ダイオード4A,4Bに加わるサージ電圧を抑制するようになっている。具体的には、本実施の形態のスイッチング電源装置では、第1共振回路の共振時間と整流ダイオード4A,4Bのリカバリ時間とが、以下の条件式(1)を満たすように設定され、整流ダイオード4A,4Bの逆電圧が共振時間の1/4で共振に従い緩やかに入力電圧の巻数比に従った電圧に達し、その期間中に緩やかにリカバリが終了するため、これにより後述するように、整流ダイオード4A,4Bに加わるサージ電圧が抑制されるようになっている。
1/4×{2π×(L×C)1/2}>Trr1 ……(1)
但し、{2π×(L×C)1/2}は第1共振回路における1周期分の共振時間であり、LはインダクタLrのインダクタンスであり、CはコンデンサC5,C6の並列合成容量値(C=(C5+C6))であり、Trr1は整流ダイオード4A,4Bのリカバリ時間である。ここで、このリカバリ時間とは、以下に説明する時間を意味する。すなわち、これら整流ダイオード4A,4BがPN接合ダイオードの場合、P層からN層へ注入される正孔によってダイオードが導通状態となっているが、順方向電流が減少して逆電圧が印加される過程では、このN層内に蓄積された正孔はP層に戻るかあるいは再結合することにより消滅し、その結果、整流ダイオード4A,4Bでは、空乏層が広がるまで逆方向に電流が流れる。これをリカバリ電流といい、リカバリ電流が流れている時間を、リカバリ時間という。なお、これら整流ダイオード4A,4Bが金属−半導体接合のショットキーバリアダイオードの場合、原理的にはリカバリ電流は発生しない。しかしながら、この場合でも接合容量は存在するので、逆電圧が印加される過程において、この接合容量を充電する間は、逆方向に電流が流れる。よって、ショットキーバリアダイオードの場合には、このように逆方向電流が流れる時間を、上記リカバリ時間に相当するものとして考えることができる。
インダクタLrは、その一端が接続点P1に接続され、その他端が接続点P3に接続されている。すなわち、このインダクタLrは、スイッチング素子S1,S2とダイオードD5,D6およびコンデンサC5,C6とから構成されるブリッジ回路に、Hブリッジ接続されるようになっている。このような構成によりインダクタLrは、ブリッジ回路1内のコンデンサC1〜C4と共にLC直列共振回路(第2共振回路)を構成し、このLC直列共振回路による共振特性を利用することで、後述するように、スイッチング素子S1〜S4における短絡損失を抑制するようになっている。また、上記のように、サージ電圧抑止回路2内のコンデンサC5,C6と共にLC直列共振回路(第1共振回路)を構成し、整流回路4内の整流ダイオード4A,4Bに加わるサージ電圧を抑制するようになっている。なお、このインダクタLrのインダクタンスは、後述するトランス3の1次側巻線31のインダクタンスと比べ、非常に小さくなるように設定される。
トランス3は、1次側巻線31と、一対の2次側巻線32A,32Bとを有している。このうち、1次側巻線31は、その一端が接続点P3に接続され、その他端が接続点P2に接続されている。すなわち、この1次側巻線31は、スイッチング素子S3,S4とダイオードD5,D6およびコンデンサC5,C6とから構成されるブリッジ回路に、Hブリッジ接続されるようになっている。一方、2次側巻線32A,32Bの一端同士はセンタタップCTで互いに接続され、このセンタタップCTは、出力ラインLO上を平滑回路5を介して出力端子T3に導かれている。つまり、後述する整流回路4は、センタタップ型のものである。このような構成によりトランス3は、ブリッジ回路1によって生成された入力交流電圧を降圧し、2次側巻線32A,32Bの各端部から、互いに180度位相が異なる出力交流電圧を出力するようになっている。なお、この場合の降圧の度合いは、1次側巻線31と2次側巻線32A,32Bとの巻数比によって定まる。
整流回路4は、一対の整流ダイオード4A,4Bからなる単相全波整流型のものである。整流ダイオード4Aのカソードはトランス3の2次側巻線32Aの他端に接続され、整流ダイオード4Bのカソードはトランス3の2次側巻線32Bの他端に接続されている。また、これら整流ダイオード4A,4Bのアノード同士は互いに接続され、接地ラインLGに接続されている。つまり、この整流回路4はセンタタップ型のアノードコモン接続の構成となっており、トランス3からの出力交流電圧の各半波期間を、それぞれ整流ダイオード4A,4Bによって個別に整流して直流電圧を得るようになっている。
なお、整流ダイオード4A,4Bをそれぞれ、MOS―FETの寄生ダイオードから構成するようにしてもよい。また、このように整流ダイオード4A,4BをそれぞれMOS―FETの寄生ダイオードから構成するようにした場合、これらMOS−FETの寄生ダイオードが導通する期間と同期して、MOS−FET自身もオン状態とすることが好ましい。より少ない電圧降下で整流することができるからである。
平滑回路5は、チョークコイル51と出力平滑コンデンサ52とを含んで構成されている。チョークコイル51は出力ラインLOに挿入配置されており、その一端はセンタタップCTに接続され、その他端は出力ラインLOの出力端子T3に接続されている。また、平滑コンデンサ52は、出力ラインLO(具体的には、チョークコイル51の他端)と接地ラインLGとの間に接続されている。また、接地ラインLGの端部には、出力端子T4が設けられている。このような構成により平滑回路5は、整流回路4で整流された直流電圧を平滑化して直流出力電圧Voutを生成し、これを出力端子T3,T4から低圧バッテリ(図示せず)に給電するようになっている。
駆動回路6は、ブリッジ回路1内のスイッチング素子S1〜S4を駆動するためのものである。具体的には、スイッチング素子S1〜S4に対してそれぞれ駆動信号SG1〜SG4を供給し、これらスイッチング素子S1〜S4をオン・オフ制御するようになっている。また、この駆動回路6は、後述するようにこれらスイッチング素子S1〜S4に対してスイッチング位相制御を行い、スイッチング位相差を適切に設定することで、直流出力電圧Voutを安定化させるようになっている。
ここで、コンデンサC1〜C4は本発明における「第2容量素子」の一具体例に対応し、インダクタLrは本発明における「共振用インダクタ」の一具体例に対応し、整流ダイオード4A,4Bは本発明における「第1整流素子」の一具体例に対応する。また、コンデンサC5,C6は本発明における「第1容量素子」の一具体例に対応し、ダイオードD5,D6は本発明における「第2整流素子」の一具体例に対応し、コンデンサC5およびダイオードD5、ならびにコンデンサC6およびダイオードD6が、それぞれ本発明における「素子対」の一具体例に対応する。また、スイッチング素子S3,S4が本発明における「一方の2つのスイッチング素子」の一具体例に対応し、スイッチング素子S1,S2が本発明における「他方の2つのスイッチング素子」の一具体例に対応する。
次に、以上のような構成のスイッチング電源装置の動作について説明する。まず、スイッチング電源装置の基本動作について説明する。
ブリッジ回路1は、高圧バッテリ10から入力端子T1,T2を介して供給される直流入力電圧Vinをスイッチングして入力交流電圧を生成し、これをトランス3の1次側巻線31に供給する。トランス3の2次側巻線32A,32Bからは、変圧(ここでは、降圧)された出力交流電圧が取り出される。
整流回路4は、この出力交流電圧を整流ダイオード4A,4Bによって整流する。これにより、センタタップCT(出力ラインLO)と整流ダイオード4A,4Bの接続点(接地ラインLG)との間に整流出力が発生する。
平滑回路5は、このセンタタップCTと整流ダイオード4A,4Bのとの間に生じる整流出力を平滑化し、出力端子T3,T4から直流出力電圧Voutを出力する。そしてこの直流出力電圧Voutが図示しない低圧バッテリに給電されると共に、負荷7が駆動される。
次に、図2〜図15を参照して、本発明の主な特徴である、整流回路4内の整流ダイオード4A,4Bに加わるサージ電圧を抑止する動作について詳細に説明する。
ここで、図2は、図1のスイッチング電源装置における各部の電圧波形または電流波形をタイミング波形図(タイミングt0〜t10)で表したものであり、図中の(A)〜(D)は駆動信号SG1〜SG4の電圧波形を、(E)〜(G)は接続点P1〜P3の電位VP1〜VP3を、(H)は接続点P3の電位VP3を基準とした接続点P1,P3間の電位差VP1-P3を、(I)は接続点P2の電位VP2を基準とした接続点P3,P2間の電位差VP3-P2を、(J)はインダクタLrを流れる電流Irを、(K)はトランス3の1次側巻線31を流れる電流I31を、(L),(M)はそれぞれサージ電圧抑止回路2におけるダイオードD5,D6とコンデンサC5,C6との並列接続部分を流れる電流I5,I6を、(N),(P)はそれぞれ整流ダイオード4A,4Bのアノード・カソード間に加わる逆電圧V4A,V4Bを、(O),(Q)はそれぞれ整流ダイオード4A,4Bを流れる電流I4A,I4Bを、(R)はチョークコイル51を流れる電流I51を、それぞれ表している。なお、各電圧の方向は図1に矢印で示したとおりであり、「−」から「+」の方向を正方向としている。また、各電流の方向も、図1に矢印で示した方向を正方向としている。
また、図3〜図14は、図2の各タイミング(タイミングt0〜t10)におけるスイッチング電源装置の動作状態を表したものであり、図15は、図2で示したタイミング以降(タイミングt10〜t20(t0))の各部の電圧波形または電流波形を表したものである。なお、図2,図15でそれぞれ示したタイミングは、それぞれスイッチング電源装置の動作の半周期分のものを表しており、これらの動作を合わせて一周期分の動作となっている。
まず、図2〜図14を参照して、最初の半周期分の動作について説明する。
スイッチング素子S1〜S4の駆動信号SG1〜SG4(図2(A)〜(D))についてみると、これらのスイッチング素子は、2つのスイッチング素子対に区分されることが分かる。具体的には、スイッチング素子S1,S2はいずれも時間軸上における固定タイミングでオンするように制御され、「固定側スイッチング素子」と称される。また、スイッチング素子S3,S4はいずれも時間軸上における可変タイミングでオンするように制御され、「シフト側スイッチング素子」と称される。
また、これらスイッチング素子S1〜S4は、スイッチング動作のいかなる状態においても、直流入力電圧Vinが印加された入力端子T1,T2が電気的に短絡されない組み合わせおよびタイミングで駆動される。具体的には、スイッチング素子S3,4(固定側スイッチング素子)は、同時にオンとなることはなく、また、スイッチング素子S1,S2(シフト側スイッチング素子)も、同時にオンとなることはない。これらが同時にオンとなるのを回避するためにとられる時間的間隔は、デッドタイムTdと称される(図2(A),(D))。
また、スイッチング素子S1,S4は同時にオンとなる期間を有し、この同時にオンとなる期間において、トランス3の1次側巻線31が励磁される。そしてこれらスイッチング素子S1,S4は、スイッチング素子S1(固定側スイッチング素子)を基準としてスイッチング位相差φをなすように動作する(図2(A),(D))。また同様に、スイッチング素子S2,S3は同時にオンとなる期間を有し、この同時にオンとなる期間において、トランス3の1次側巻線31が、上記の場合とは逆方向に励磁される。そしてこれらスイッチング素子S2,S3は、スイッチング素子S2(固定側スイッチング素子)を基準としてスイッチング位相差φをなすように動作する(図2(B),(C))。さらに、スイッチング素子S1とスイッチング素子S4とのスイッチング位相差φ、およびスイッチング素子S2とスイッチング素子S3とのスイッチング位相差φがそれぞれ制御されると、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S4が同時にオンになっている時間、ならびにスイッチング素子S2およびスイッチング素子S3が同時にオンになっている時間がそれぞれ変化する。これにより、トランス3の1次側巻線31に印加される入力交流電圧のデューティ比が変化し、直流出力電圧Voutが安定化されるようになっている。
まず、図3に示したタイミングt0〜t1までの期間では、スイッチング素子S1,S4がオン状態となっており(図2(A),(D))、スイッチング素子S2,S3はオフ状態となっている(図2(B),(C))。また、接続点P1の電位VP1=Vin(図2(E))、および接続点P2の電位VP2=0V(図2(F))であり、前述のようにインダクタLrのインダクタンスはトランス3の1次側巻線31のインダクタンスと比べて非常に小さいことから、接続点P3の電位VP3≒Vinとなり(図2(G))、VP2を基準とした接続点P3,P2間の電位差VP3-P2もほぼVinと等しくなっている(図2(I))。したがって、ブリッジ回路1には図3に示したようなループ電流Iaが流れ、インダクタLrが励磁されると共に、トランス3の1次側から2次側へ電力伝送が行われる。よって、トランス3の2次側には、整流ダイオード4Aおよびチョークコイル51を介するループ電流Ixaが流れ、負荷7が駆動される。なお、この期間では、整流ダイオード4Aには順方向電圧が印加され、逆電圧V4A=0V(図2(N))となる一方、整流ダイオード41Bには、逆電圧V4Bが印加されている(図2(P))。
次に、図4で示したタイミングt1〜t2までの期間では、タイミングt1でスイッチング素子S4がオフ状態となる(図2(D))。すると、コンデンサC3,C4とインダクタLrとが協働してLC直列共振回路(第2共振回路)が構成され、第2共振動作が行われる。したがって、図4に示したようなループ電流Ib,Icが流れ、コンデンサC3が放電される一方、コンデンサC4は充電されるので、接続点P2の電位VP2が徐々に上昇していき、タイミングt2でVP2=Vinとなる(図2(F))。また、このとき整流ダイオード4Bの逆電圧V4Bが徐々に下降していき、タイミングt2で0Vとなる(図2(P))。
ここで、図5で示したように、タイミングt2でVP2=Vinとなると(図2(F))、ダイオードD3が導通するようになる。また、このようにVP2=VinとなってダイオードD3が導通した後に、図6に示したように、タイミングt3でスイッチング素子S3がオン状態となることで(図2(C))、ゼロボルトスイッチング(ZVS;Zero Volt Switching)動作がなされ、その結果、スイッチング素子S3における短絡損失が抑制される。
また、このタイミングt2〜t4の期間では、タイミングt0〜t1の期間で励磁されることによりインダクタLrに蓄えられたエネルギーが、このインダクタLrの両端に接続された回路において、電流として循環しようとする。具体的には、図6に示したように、インダクタLrの一端(接続点P3)からスイッチング素子S1の他端(1次側高圧ラインL1H側)までの間の電位差が互いに等しくなるように、ループ電流Id,Ieがそれぞれ流れる。ここで、ループ電流Idの経路においては、この電位差は、トランス3の1次側巻線31の両端間の電圧V31と、スイッチング素子S3の両端間の電圧VS3との和になる。V31は、トランス3の1次側巻線と2次側巻線との巻数比をnとすると、整流ダイオード4Aの順方向電圧降下をこの巻数比nで割ったものとなり、V31は、スイッチング素子S3がオフ状態のとき(タイミングt2〜t3の期間)はダイオードD3の順方向電圧降下となり、スイッチング素子S3がオン状態のとき(タイミングt3〜t4の期間)は、スイッチング素子S3のオン抵抗と流れる電流との積になる。一方、ループ電流Ieの経路においては、上記電位差は、ダイオードD5の順方向電圧降下となる。
ここで、これらダイオード4A,D3,D5の順方向電圧降下の値は、流れている順方向電流値や周囲の温度によって変化するが、ループ電流Id,Ieはそれぞれ、上記電位差が互いに等しくなるように流れる。また、このように電流が2つのループ電流Id,Ieに分流することにより、トランス3の1次側巻線31を流れる電流I31の絶対値が減少する(図2(K))。さらに、このトランス3でのアンペア・ターンが等しくなると共に、トランス3の2次側巻線32A,32Bをそれぞれ流れる電流の和がチョークコイル51を流れる電流I51に等しくなるように、この電流I51が、整流ダイオード4Aを流れるループ電流Ixaと、整流ダイオード4Bを流れるループ電流Ixbとに分流する。
次に、図7で示したように、タイミングt4になると、スイッチング素子S1がオフ状態となる(図2(A))。すると、コンデンサC1,C2とインダクタLrとが協働してLC直列共振回路(第2共振回路)が構成され、第2共振動作が行われる。したがって、図7に示したようなループ電流If,Ig,Ih,Iiが流れる。よって、コンデンサC2が放電される一方、コンデンサC1は充電されるので、接続点P1の電位VP1が徐々に下降していき、タイミングt5でVP1=0Vとなる(図2(E))。
ここで、図8で示したように、タイミングt5でVP1=0Vとなると(図2(E))、このときVP3=Vin(図2(G))およびVP1-P3=−Vin(図2(H))であることから、ダイオードD2が導通するようになる。また、このようにVP1=0VとなってダイオードD2が導通した後に、図9に示したように、タイミングt6でスイッチング素子S2がオン状態となることで(図2(B))ZVS動作がなされ、その結果、スイッチング素子S2における短絡損失が抑制される。
次に、図9に示したタイミングt6〜t7までの期間では、インダクタLrに蓄えられたエネルギーは、コンデンサC1,C2における充放電が終了した後も、図9に示したようなループ電流Im,Ilによって、入力平滑コンデンサ11に回生される。そしてこの入力平滑コンデンサ11へ回生されるに従ってインダクタLrに蓄えられたエネルギーは減少し、それに伴ってインダクタLrを流れる電流Irの絶対値、およびトランス3の1次側巻線31を流れる電流I31の絶対値も減少していく(図2(J),(K))。このため、トランス3でのアンペア・ターンが等しくなると共に、トランス3の2次側巻線32A,32Bをそれぞれ流れる電流の和がチョークコイル51を流れる電流I51に等しくなるように、この電流I51が、整流ダイオード4Aを流れるループ電流Ixaと、整流ダイオード4Bを流れるループ電流Ixbとに分流する。
また、この期間では、インダクタLrの一端(接続点P3)からダイオードD5のカソードまでの間の電位差が互いに等しくなるように、上記ループ電流Im,Ilがそれぞれ流れているが、次第にループ電流Imの経路での電位差のほうがループ電流Ilの経路での電位差よりも大きくなり、ダイオードD5が非導通となることで、インダクタLrを流れる電流Irの絶対値とトランス3の1次側巻線31を流れる電流I31の絶対値とが等しくなる(図2(J),(K))。なお、前述したように、ループ電流Ilの経路での電位差は、トランス3の1次側巻線31の両端間の電圧V31(整流ダイオード4Aの順方向電圧降下を、トランス3の1次側巻線と2次側巻線との巻数比nで割ったもの)と、スイッチング素子S3の両端間の電圧VS3(この期間では、スイッチング素子S3がオン状態であるので、スイッチング素子S3のオン抵抗と流れる電流との積になる)との和となり、ループ電流Imの経路での電位差は、ダイオードD5の順方向電圧降下となる。
次に、図10で示したように、タイミングt7になると、インダクタLrに蓄えられたエネルギーがすべて回生され、インダクタLrを流れる電流Ir=トランス3の1次側巻線31を流れる電流I31=0A(図2(J),(K))、および整流ダイオード4Aを流れる電流I4A=整流ダイオード4Bを流れる電流I4B(図2(O),(Q))となる。そしてこのタイミングt7から、インダクタLrはこれまでと逆方向のエネルギーを蓄えるようになり、インダクタLrおよびトランス3の1次側巻線31には、図11に示したようにこれまでと反対方向のループ電流Inが流れるようになると共に、電流IrはVin/L(L;インダクタLrのインダクタンス)の割合で増加していく(図2(J),(K))。このため、トランス3でのアンペア・ターンが等しくなると共に、トランス3の2次側巻線32A,32Bをそれぞれ流れる電流の和がチョークコイル51を流れる電流I51に等しくなるように、この電流I51が、整流ダイオード4Aを流れるループ電流Ixaと、整流ダイオード4Bを流れるループ電流Ixbとに分流する。ただし、整流ダイオード4Aを流れる電流I4Aは徐々に減少していく一方、整流ダイオード4Bを流れる電流I4Bは徐々に増加していく(図2(O),(Q))。そしてI4A=0Aとなり、トランス3の2次側巻線32Bを流れる電流がチョークコイル51を流れる電流I51と等しくなったとき、このトランス3でのアンペア・ターンはこれ以上増加しないことからI31の増加が妨げられようとするが、サージ電圧抑止回路2のコンデンサC5,C6とインダクタLrとが協働してLC直列共振回路(第1共振回路)が構成され、第1共振動作が開始される。このときが、タイミングt8に相当する。
次に、図12に示したタイミングt8〜t9までの期間では、上記第1共振動作によって、ループ電流Io,Ipが流れる。よって、コンデンサC6が放電される一方、コンデンサC5は充電されるので、この第1共振動作に伴って、接続点P3の電位VP3が緩やかに下降していく(図2(G))。これに伴い、トランス3の1次側巻線31の両端間の電圧V31の絶対値が増加すると共に、2次側巻線32A,32Bにもそれぞれ電圧V32A,V32Bが発生し、V32A=V32B=V31/n(n;トランス3の1次側巻線と2次側巻線との巻数比)、(整流ダイオード4Bのカソードの電位)<(センタタップCTの電位)<(整流ダイオード4Aのカソードの電位)、(インダクタLrを流れる電流Ir)=(トランス3の1次側巻線31を流れる電流I31)+(ダイオードD5とコンデンサC5との並列接続部分を流れる電流I5)+(ダイオードD6とコンデンサC6との並列接続部分を流れる電流I6)となる。上記のようにVP3が緩やかに下降していき、VP3=0VおよびVP3-P2=−Vin(図2(G),(I))となったときが、タイミングt9に相当する。
ここで、本実施の形態のスイッチング電源装置では、このタイミングt8〜t9までの期間において、第1共振回路の共振時間と整流ダイオード4A,4Bのリカバリ時間とが前述の条件式(1)を満たすように設定されているので、これら整流ダイオード4A,4Bでのリカバリ電流の発生が抑制される。したがって、コンデンサC5,C6とインダクタLrとによる第1共振動作は継続されようとするが、VP3=0V(図2(G))であることから、コンデンサC6およびダイオードD6の両端の電圧は0Vとなり、コンデンサC6を流れる電流IC6=0Aになると共に、ダイオードD6が導通する。
よって、図13に示したタイミングt9〜t10までの期間では、ダイオードD6が導通すること、およびスイッチング素子S3がオン状態(図2(C))であることから、トランス3の1次側巻線31の両端の電圧V31(およびVP3-P2の絶対値(図2(I)))がVinにクランプされ、これによりトランスの2次側巻線32Bの両端の電圧V32Bが、Vin/n(n;トランス3の1次側巻線と2次側巻線との巻数比)にクランプされる。このため、整流ダイオード4Aに加わる逆電圧V4Aは、整流回路4がセンタタップ型の構成であることから、2×Vin/nよりも大きくなることはない(図2(N))。言い換えると、この整流ダイオード4Aに加わる逆電圧V4Aは、最大でも2×Vin/n以下となり、サージ電圧の上昇が抑制される。
また、このタイミングt9〜t10までの期間では、上記のようにダイオードD6が導通することから、(インダクタLrを流れる電流Ir)=(トランス3の1次側巻線31を流れる電流I31)+(ダイオードD6を流れる電流ID6)となり、第1共振動作による共振電流が、図13に示したようにループ電流Iqで表される一方、Irは一定となる(図2(J))。また、トランス3の2次側巻線32Bの両端の電圧V32Bによってチョークコイル51が励磁されるのに伴い、このチョークコイル51を流れる電流I51が増加し、I31=(2次側巻線32Aを流れる電流I32A)+(2次側巻線32Bを流れる電流I32B)=I32B=I51であることから、I31も増加していく(図2(K))。さらに、Ir=I31+ID6、およびIrが一定であることから、I31の増加によりID6が減少する。ID6=I6=0Vとなったとき(図2(M))が、図14に示したタイミングt10に相当する。以上で、最初の半周期分の動作が終了する。
次に、図15を参照して、図2で示したタイミングt0〜t10以降の半周期分(タイミングt10〜t20(t0))の動作について説明する。
この半周期分の動作も、基本的には図2〜図14で説明した半周期分の動作と同様である。すなわち、タイミングt10〜t11までの期間では、スイッチング素子S2,S3がオン状態となっており(図15(B),(C))、スイッチング素子S1,S4はオフ状態となっている(図15(A),(D))。また、接続点P1の電位VP1=0V(図15(E))、および接続点P2の電位VP2=Vin(図15(F))であり、インダクタLrのインダクタンスはトランス3の1次側巻線31のインダクタンスと比べて非常に小さいことから、接続点P3の電位VP3≒0Vとなり(図15(G))、VP2を基準とした接続点P3,P2間の電位差VP3-P2もほぼ0Vと等しくなっている(図15(I))。したがって、ブリッジ回路1にはループ電流が流れ、インダクタLrが励磁されると共に、トランス3の1次側から2次側へ電力伝送が行われる。よって、トランス3の2次側には、整流ダイオード4Bおよびチョークコイル51を介するループ電流が流れ、負荷7が駆動される。なお、この期間では、整流ダイオード4Bには順方向電圧が印加され、逆電圧V4B=0V(図15(P))となる一方、整流ダイオード41Aには、逆電圧V4Aが印加されている(図15(N))。
次に、タイミングt11〜t12までの期間では、タイミングt11でスイッチング素子S3がオフ状態となる(図15(C))。すると、コンデンサC3,C4とインダクタLrとが協働してLC直列共振回路(第2共振回路)が構成され、第2共振動作が行われる。したがって、2つのループ電流によって、コンデンサC3が充電される一方、コンデンサC4は放電されるので、接続点P2の電位VP2が徐々に下降していき、タイミングt12でVP2=0Vとなる(図15(F))。また、このとき整流ダイオード4Aの逆電圧V4Aが徐々に下降していき、タイミングt12で0Vとなる(図15(N))。
ここで、タイミングt12でVP2=0Vとなると(図15(F))、ダイオードD4が導通するようになる。また、このようにVP2=0VとなってダイオードD4が導通した後に、タイミングt13でスイッチング素子S4がオン状態となることで(図15(D))、ZVS動作がなされ、その結果、スイッチング素子S4における短絡損失が抑制される。
また、このタイミングt12〜t14の期間では、前述のように、タイミングt10〜t11の期間で励磁されることによりインダクタLrに蓄えられたエネルギーがインダクタLrの両端に接続された回路において電流として循環しようとし、電流が2つのループ電流に分流するため、トランス3の1次側巻線31を流れる電流I31の絶対値が減少する(図15(K))。また、このトランス3でのアンペア・ターンが等しくなると共に、トランス3の2次側巻線32A,32Bをそれぞれ流れる電流の和がチョークコイル51を流れる電流I51に等しくなるように、この電流I51が、整流ダイオード4Aを流れるループ電流Ixaと、整流ダイオード4Bを流れるループ電流Ixbとに分流する。
次に、タイミングt14になると、スイッチング素子S2がオフ状態となる(図15(B))。すると、コンデンサC1,C2とインダクタLrとが協働してLC直列共振回路(第2共振回路)が構成され、第2共振動作が行われる。したがって、4つのループ電流が流れ、コンデンサC2が充電される一方、コンデンサC1は放電されるので、接続点P1の電位VP1が徐々に上昇していき、タイミングt15でVP1=Vinとなる(図15(E))。
ここで、タイミングt15でVP1=Vinとなると(図15(E))、このときVP3=0V(図15(G))およびVP1-P3=Vin(図15(H))であることから、ダイオードD1が導通するようになる。また、このようにVP1=VinとなってダイオードD1が導通した後に、タイミングt16でスイッチング素子S1がオン状態となることで(図15(A))ZVS動作がなされ、その結果、スイッチング素子S1における短絡損失が抑制される。
次に、タイミングt16〜t17までの期間では、インダクタLrに蓄えられたエネルギーは、コンデンサC1,C2における充放電が終了した後も、2つのループ電流によって入力平滑コンデンサ11に回生される。そしてこの入力平滑コンデンサ11へ回生されるに従ってインダクタLrに蓄えられたエネルギーは減少し、それに伴ってインダクタLrを流れる電流Irの絶対値、およびトランス3の1次側巻線31を流れる電流I31の絶対値も減少していく(図15(J),(K))。このため、トランス3でのアンペア・ターンが等しくなると共に、トランス3の2次側巻線32A,32Bをそれぞれ流れる電流の和がチョークコイル51を流れる電流I51に等しくなるように、この電流I51が、整流ダイオード4Aを流れるループ電流Ixaと、整流ダイオード4Bを流れるループ電流Ixbとに分流する。また、この期間では、ダイオードD6が非導通となることで、インダクタLrを流れる電流Irの絶対値とトランス3の1次側巻線31を流れる電流I31の絶対値とが等しくなる(図15(J),(K))。
次に、タイミングt17になると、インダクタLrに蓄えられたエネルギーがすべて回生され、インダクタLrを流れる電流Ir=トランス3の1次側巻線31を流れる電流I31=0A(図15(J),(K))、および整流ダイオード4Aを流れる電流I4A=整流ダイオード4Bを流れる電流I4B(図15(O),(Q))となる。そしてこのタイミングt17から、インダクタLrはこれまでと逆方向のエネルギーを蓄えるようになり、インダクタLrおよびトランス3の1次側巻線31には、これまでと反対方向のループ電流が流れるようになると共に、電流IrはVin/L(L;インダクタLrのインダクタンス)の割合で増加していく(図15(J),(K))。このため、トランス3でのアンペア・ターンが等しくなると共に、トランス3の2次側巻線32A,32Bをそれぞれ流れる電流の和がチョークコイル51を流れる電流I51に等しくなるように、この電流I51が、整流ダイオード4Aを流れるループ電流Ixaと、整流ダイオード4Bを流れるループ電流Ixbとに分流する。ただし、整流ダイオード4Bを流れる電流I4Bは徐々に減少していく一方、整流ダイオード4Aを流れる電流I4Aは徐々に増加していく(図15(O),(Q))。そしてI4B=0Aとなり、トランス3の2次側巻線32Aを流れる電流がチョークコイル51を流れる電流I51と等しくなったとき、このトランス3でのアンペア・ターンはこれ以上増加しないことからI31の増加が妨げられようとするが、サージ電圧抑止回路2のコンデンサC5,C6とインダクタLrとが協働してLC直列共振回路(第1共振回路)が構成され、第1共振動作が開始される。このときが、タイミングt18に相当する。
次に、タイミングt18〜t19までの期間では、上記第1共振動作によって2つのループ電流が流れ、コンデンサC6が充電される一方、コンデンサC5は放電されるので、この第1共振動作に伴って、接続点P3の電位VP3が緩やかに上昇していく(図15(G))。これに伴い、トランス3の1次側巻線31の両端間の電圧V31が増加すると共に、2次側巻線32A,32Bにもそれぞれ電圧V32A,V32Bが発生する。このようにVP3が緩やかに上昇していき、VP3=VinおよびVP3-P2=Vin(図15(G),(I))となったときが、タイミングt19に相当する。
また、本実施の形態のスイッチング電源装置では、このタイミングt18〜t19までの期間において、第1共振回路の共振時間と整流ダイオード4A,4Bのリカバリ時間とが前述の条件式(1)を満たすように設定されているので、これら整流ダイオード4A,4Bでのリカバリ電流の発生が抑制される。したがって、コンデンサC5,C6とインダクタLrとによる第1共振動作は継続されようとするが、VP3=Vin(図15(G))であることから、コンデンサC5およびダイオードD5の両端の電圧は0Vとなり、コンデンサC5を流れる電流IC5=0Aになると共に、ダイオードD5が導通する。
よって、タイミングt19〜t20までの期間では、ダイオードD5が導通すること、およびスイッチング素子S4がオン状態(図15(D))であることから、トランス3の1次側巻線31の両端の電圧V31(およびVP3-P2の絶対値(図15(I)))がVinにクランプされ、これによりトランスの2次側巻線32Aの両端の電圧V32Aが、Vin/n(n;トランス3の1次側巻線と2次側巻線との巻数比)にクランプされる。このため、整流ダイオード4Bに加わる逆電圧V4Bは、整流回路4がセンタタップ型の構成であることから、2×Vin/nよりも大きくなることはない(図15(P))。言い換えると、この整流ダイオード4Bに加わる逆電圧V4Bは、最大でも2×Vin/n以下となり、サージ電圧の上昇が抑制される。
また、このタイミングt19〜t20までの期間では、上記のようにダイオードD5が導通することから、Irは一定となる(図15(J))。また、トランス3の2次側巻線32Aの両端の電圧V32Aによってチョークコイル51が励磁されるのに伴い、このチョークコイル51を流れる電流I51が増加し、I31も増加していく(図15(K))。さらに、Ir=I31+ID5、およびIrが一定であることから、I31の増加によりID5が減少する。ID5=I5=0Vとなったとき(図15(L))が、タイミングt20に相当する。以上で後半の半周期分の動作が終了し、図2のタイミングt0と等価な状態となる。
次に、図16〜図18を参照して、本実施の形態のスイッチング電源装置において整流ダイオードに加わるサージ電圧の波形と、従来のスイッチング電源装置(比較例1,2)において整流ダイオードに加わるサージ電圧の波形とについて、比較しつつ説明する。
ここで、図16(A)〜(C)はそれぞれ、本実施の形態および比較例1,2に係るスイッチング電源装置において、整流ダイオードに加わる逆電圧のタイミング波形を表したものである。また、図17,図18はそれぞれ、これら比較例1,2に係るスイッチング電源装置の構成を表したものである。具体的には、比較例1は、本実施の形態のサージ電圧抑止回路2の代わりに、このサージ電圧抑止回路2からコンデンサC5,C6が除かれたサージ電圧抑止用の回路102を設けたものであり、比較例2は、サージ電圧抑止回路2の代わりに、トランス3の2次側に、インダクタL7、コンデンサC7およびダイオードD7から構成されるサージ電圧抑止用のスナバ回路202を設けたものである。このスナバ回路202は、具体的には、インダクタL7の一端が出力ラインLO上のチョークコイル51とセンタタップCTとの間に接続され、他端がダイオードD7のカソードとコンデンサC7の一端とに接続されている。また、ダイオードD7のアノードはやはり出力ラインLO上のチョークコイル51とセンタタップCTとの間に接続され、コンデンサC5の他端は接地ラインLGに接続されている。なお、図16(A)〜(C)にそれぞれ示した逆電圧波形は、トランス3の2次側のセンタタップCTにおける電圧波形であり、実際に整流ダイオード4A,4Bに加わる逆電圧は、この2倍の値となる。
まず、図16(C)に示した比較例2に係る逆電圧波形では、サージ電圧の最大値(ピーク値)が83Vとなっている。これは、スナバ回路202によってサージ電圧がある程度抑制された結果によるものであり、直流入力電圧Vin/n(n;トランス3の1次側巻線と2次側巻線との巻数比)の約2倍(2.02倍)に相当するものである。一方、図16(B)に示した比較例1に係る逆電圧波形では、サージ電圧の最大値が52Vとなっており、Vin/nの1.26倍に相当するものである。また、この比較例1に係る逆電圧波形では、この最大値までの立ち上がり時間が約20nsとなっており、サージ電圧抑止用の回路102にコンデンサが含まれていないことに起因して、急峻に立ち上がっていることが分かる。
これに対して、図16(A)に示した本実施の形態に係る逆電圧波形では、サージ電圧抑止回路2にコンデンサC5,C6が含まれ、これらコンデンサC5,C6とインダクタLrとから構成される第1共振回路の共振時間と、整流ダイオード4A,4Bのリカバリ時間とが、前述の条件式(1)を満たすように設定されていることから、前述のように整流ダイオード4A,4Bでのリカバリ電流の発生が抑制されると共に、第1共振回路の共振動作によって緩やかに立ち上がっていることが分かる。具体的には、サージ電圧の最大値が45.5Vであり、Vin/nの約1倍(1.08倍)に相当するものであると共に、このこの最大値までの立ち上がり時間が約100nsとなっている。すなわち、図16(B),(C)に示した比較例1,2と比べて逆電圧の立ち上がりが緩やかになり、その結果、サージ電圧の上昇がより効果的に抑制されていることが分かる。
以上のように、本実施の形態では、サージ電圧抑止回路2内のコンデンサC5,C6とインダクタLrとから第1共振回路を構成すると共に、この第1共振回路の共振時間と整流回路4内の整流ダイオード4A,4Bのリカバリ時間とが上記条件式(1)を満たすようにしたので、これら整流ダイオード4A,4Bに加わる逆電圧の立ち上がりを従来と比べて緩やかにすることができ、装置構成に依存することなく、サージ電圧の上昇をより効果的に抑制することが可能となる。具体的には、例えば本実施の形態のように整流回路4をセンタタップ型の構成とした場合には、このサージ電圧の最大値(ピーク値)を2×Vin/n(n;トランス3の1次側巻線と2次側巻線との巻数比)に抑えることができ、最大値が4×Vin/n程度である従来と比べ、低くすることが可能となる。
また、サージ電圧を抑制することができることにより、整流素子での損失を低減し、装置の効率を向上させることが可能となる。また、整流素子での損失を低減することにより、素子での発熱を抑制することも可能となる。
また、サージ電圧の上昇を抑制することにより、耐圧の低い整流素子(整流ダイオード)を使用することでき、部品コストを低減することが可能となる。
さらに、装置構成に依存せずにサージ電圧の抑制が可能であることから、装置設計の際の自由度を向上させることが可能となる。
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されず、種々の変形が可能である。
例えば、上記実施の形態で説明した条件式(1)に加え、さらに、第1共振回路の共振時間と、サージ電圧抑止回路2内のダイオードD5,D6のリカバリ時間Trr2とが、以下の条件式(2)を満たすように設定するのが好ましい。このように構成した場合、上記した整流ダイオード4A,4Bに加え、これらダイオードD5,D6に加わる逆電圧が共振時間の1/4で共振に従い緩やかに入力電圧に達し、その期間中に緩やかにリカバリが終了するため、ダイオードD5,D6におけるサージ電圧の上昇も抑制される。よって、これらダイオードD5,D6に加わる逆電圧においてリンギングの発生を抑えることができ、これによりノイズの発生を抑えることも可能となる。
1/4×{2π×(L×C)1/2}>Trr2 ……(2)
また、例えば図19に示したように、上記実施の形態のスイッチング電源装置(図2)において、インダクタLrと、トランス3およびその2次側の回路(整流回路4および平滑回路5)の構成とを、サージ電圧抑止回路2に対して左右逆となるように配置してもよい。具体的には、インダクタLrを接続点P2,P3間に配置すると共に、トランス3を接続点P1,P3間に配置するようにしてもよい。このように構成した場合でも、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、例えば図20に示したように、センタタップ型の整流回路4を、フルブリッジ型の整流回路41とするようにしてもよい。具体的には、図1のトランス3の代わりに、1次側巻線331および1つの2次側巻線332を有するトランス33を設け、このトランス33の2次側に、4つの整流ダイオード41A〜41Dを含むフルブリッジ型の整流回路41を設けるようにする。このように構成した場合、上記実施の形態と同様の作用により、整流ダイオード41A〜41Dに加わるサージ電圧の最大値(ピーク値)を1×Vin/n(n;トランス3の1次側巻線と2次側巻線との巻数比)に抑えることができ、最大値が2×Vin/n程度である従来のフルブリッジ型のものと比べて、やはり低くすることが可能となる。なお、これら整流ダイオード41A〜41Dも、整流ダイオード4A,4Bの場合と同様に、それぞれMOS―FETの寄生ダイオードから構成することも可能である。
また、上記実施の形態では、トランス3とインダクタLrとが互いに磁気的に独立して設けられている場合で説明したが、例えば図21および図22に示したように、トランス3の1次側にトランス3の補助巻線31Bを設け、この補助巻線31Bとトランス3とが、図中の符号M1,M2でそれぞれ示したように、互いに磁気的に結合されている(互いに磁束(磁路)を共有している)ようにしてもよい。具体的には、インダクタLrを接続点P1,P2間に配置すると共に、トランス3の補助巻線31Bを、接続点P1,P3間または接続点P1,P2間に接続するようにする。このように構成した場合でも、図21,図22に示した構成はそれぞれ、図1または図19に示した構成と等価なものであることから、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、このようにトランス3とその補助巻線31Bとを磁気的に結合した場合において、例えば図23および図24にそれぞれ示したように、サージ電圧抑止回路2の代わりに、サージ電圧抑止回路21,22を設けるようにしてもよい。具体的には、ダイオードD5およびコンデンサC5からなる素子対とダイオードD6およびコンデンサC6からなる素子対とを、1次側高圧ラインL1Hと1次側低圧ラインL1Lとの間に互いに並列接続すると共に、トランス3の補助巻線31B,31Cをセンタタップ型の構成(図中の符号M3,M4でそれぞれ示したようにトランス3と磁気結合している)にするようにしてもよい。このように構成した場合でも、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、図21〜図24では、補助巻線31B,31Cとトランス3とが磁気的に結合している例を示したが、これとは別に補助巻線31B,31Cと共振用インダクタLrとが磁気的に結合していてもよく、同様に効果的である。
また、上記実施の形態では、共振用のインダクタLrをトランス3の1次側に配置した場合で説明したが、例えば図25〜図28にそれぞれ示したように、この共振用のインダクタLrを、トランス3の2次側に設けるようにしてもよい。具体的には、図25,図27にそれぞれ示したように、互いに磁気的に結合された一対のインダクタLrA,LrBをそれぞれ、センタタップ型の整流回路4内の整流ダイオード4A,4Bのカソードとトランス3の2次側巻線32A,32Bとの間に設けるようにしてもよく、また、図26,図28にそれぞれ示したように、インダクタLrをフルブリッジ型の整流回路41内において、整流ダイオード41Aのアノードおよび整流ダイオード41Bのカソードの接続点と、整流ダイオード41Cのアノードおよび整流ダイオード41Dのカソードの接続点との間に配置するようにしてもよい。また、図25,図26中の符号M5,M6でそれぞれ示したように、トランス3とその補助巻線31B,331Bとが磁気的に結合しているようにしてもよく、図27,図28中の符号M7,M8でそれぞれ示したように、共振用インダクタLrまたは共振用インダクタLrA,LrBと補助巻線31B,331Bとが磁気的に結合しているようにしてもよい。これらのように構成した場合でも、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、もちろん、これら変形例を組み合わせて構成するようにしてもよい。
10…高圧バッテリ、1…ブリッジ回路、11…入力平滑コンデンサ、2,21,22…サージ電圧抑止回路、3,33…トランス、31,31A,331,331A…1次側巻線、32,332…2次側巻線、31B,31C,331B…補助巻線、4,41…整流回路、4A,4B,41A〜41D…整流ダイオード、5…平滑回路、51…チョークコイル、52…出力平滑コンデンサ、6…駆動回路、7…負荷、S1〜S4…スイッチング素子、D1〜D6…ダイオード、C1〜C6…コンデンサ、Lr,LrA,LrB…インダクタ、T1,T2…入力端子、T3,T4…出力端子、L1H…1次側高圧ライン、L1L…1次側低圧ライン、LO…出力ライン、LG…接地ライン、P1〜P3…接続点、CT…センタタップ、Vin…直流入力電圧、Vout…直流出力電圧、VP1〜VP3…電位、VP1-P3,VP3-P2…電位差、V4A,V4B…逆電圧(サージ電圧)、Ir,I31,ID5,ID6,IC5,IC6,I5,I6,I4A,I4B,I51,Ia〜Iq,Ixa〜Ixb…電流、SG1〜SG4…スイッチング信号、t0〜t20…タイミング、Td…デッドタイム、φ…位相差。