JP2006316070A - 喘息の処置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は喘息の新規な処置方法を提供し、さらに喘息の処置に有用な新規な医薬組成物をも提供する。特に本発明は、喘息罹患者に有効量のたとえばモノクローナル抗体HP1/2のような抗−VLA−4抗体を投与する工程からなる方法を提供する。抗−VLA−4抗体は慢性アレルゲン誘発喘息を有する患者にインビボで有利に投与され、アレルゲンに対する後期反応を阻止すると共に気道過反応性を軽減させる。
【選択図】なし
Description
本発明は喘息の処置に関するものである。より詳細には本発明は、喘息の処置
におけるベリーレイト抗原−4(Very Late Antigen−4)(
VLA−4)、すなわち内皮細胞リセプタ血管細胞付着分子−1(VCAM−1
)のための或る種の白血球におけるリガンドを認識する抗体の使用に関するもの
である。
喘息は広範な可逆性気道狭窄(気管支収縮)および各種の刺激に対する気道の
過敏性増大(過反応症)を特徴とする気道の症状である。喘息の周知された徴候
、たとえば咳、喘鳴、胸詰、呼吸困難は気道平滑筋の収縮、気管支粘液分泌の増
加および炎症によって生ずる。殆ど致命的でないが、喘息は世界中の学齢児童の
10〜20%を占めると推定され、小児喘息の病院収容が近年劇的に増大してお
り、米国の1調査が示すところでは喘息を有する15才未満の児童の病院収容は
少なくとも1970年から1984年の間に少なくとも145%増大している(
M.R.シアーズ、1990[1]参照)。全体として、1,000万人のアメ
リカ人(人口の4%)が喘息を有すると推定され、約40億ドルがその処置に毎
年費やされている(L.K.アルトマン、1991[2];C.スタール、19
91[3])。
研究は、喘息が個人の環境における特定アレルゲンに対し反応する個人の免疫学
的反応であるという理論を支持している。これらの「引き金」は、気道過反応性
の一時的増大を引き起こすことにより喘息を悪化させる。気道過反応性を誘発す
ることが判明している引き金はアレルゲン吸入、個人が敏感になっている(たと
えば職業的露呈による)低分子量物質の吸入、ウィルス性もしくはマイコプラズ
マ性呼吸器感染、並びにたとえばオゾンおよび二酸化窒素のような酸化性ガスを
包含する。これら「誘発性」引き金は運動、冷気、感情ストレス、薬理学的引き
金、刺激剤の吸入を包含する気管支痙攣症状の「興奮性」引き金とは区別するこ
とができる。誘発性引き金の一般的特徴は、気道炎症を伴うことである。興奮性
引き金は平滑筋収縮(気管支痙攣)を生ぜしめ、これは気道反応性の増大でなく
或る程度の過反応性に依存する(D.W.コッククロフト、1990[4]参照
)。
識は、喘息罹患者の処置に衝撃を与えている。喘息の早期治療は気管支収縮に集
中し、多くの有効な気管支拡張剤の開発をもたらしている。最も一般的に処方さ
れるものはβ2−アドレノセプタ作用剤(エピネフィリン、イソプロテレノー
ル、アルブテロール、サルメテロールなど)、キサンチン(カフェイン、テオフ
ィリンなど)およびコリノセプタ拮抗剤(アトロピン、アセチルコリンなど)で
あった。しかしながら極く最近、抗炎症剤が喘息の最も重要な治療として気管支
拡張剤の代替になり始めた。一般的に処方される喘息用の抗炎症剤はジソジウム
クロモグリケート(DSCG)、ネドクロミルソジウム、ケトチフェンのような
抗ヒスタミン剤およびプレドニゾロンのようなコルチコステロイドを包含する(
F.M.C.クス、1990[5]およびP.M.オービルネ、1990[6]
参照)。
血漿滲出、たとえば好中球、単球、大食細胞、リンパ球および好酸球のような炎
症性細胞の炎症部位に対する補充および常在性組織細胞(たとえばマスト細胞)
による炎症性媒介物の放出または炎症細胞の移動を特徴とする(J.C.ホッグ
、1990 [7])。アレルゲン誘発の喘息において、罹患者はしばしばアレ
ルゲンに対する露出に二重の応答を示し、すなわち露出の直後に開始して露出の
1〜2時間後まで持続する「早期」反応、およびそれに続く露出後の約3時間で
開始して露出後の8〜10時間もしくはそれ以上にわたりしばしば持続する「後
期」反応を示す(D.W.コッククロフト、1990[4])。アレルゲン誘発
喘息における後期反応および持続性の過反応症は、炎症肺組織への白血球および
特に好酸球の補充に関連している(W.M.アブラハム等、1988[8])。
好酸球は数種の炎症性媒介物、たとえば15−HETE、ロイコトリエンC4
、PAF、カチオン性蛋白質、好酸球ペルオキシダーゼを放出することが知られ
ている(K.F.チャング、1990[9])。
物の放出の作用を阻止し或いは中和することが判明している。たとえば、β2
−アドレノセプタ作用剤およびDSCGはマスト細胞の有力な安定剤であって、
マスト細胞はヒスタミン、プロスタグランジン、ロイコトリエン、血小板活性化
因子(PAF)、並びに好中球および好酸球の走化性因子を包含する多くの媒介
物を放出することができる。他の例としてはコルチコステロイド、たとえばステ
ロイドホルモンリセプタとの複合体はたとえばリポコルチンのような蛋白質の合
成をもたらして抗炎症作用を生ぜしめる(F.M.C.クス、1990[5])
。
ラハム等、1990[8])、これら薬剤はいずれも炎症組織への白血球の移動
を直接阻止するのに有効ではない。
合体に対するリセプタとして作用する細胞付着分子によって炎症の部位に補充さ
れる。最近、好酸球は血管内皮に対する3種の異なる細胞付着経路に関与して細
胞間付着分子−1(ICAM−1)、内皮細胞付着分子−1(ELAM−1)お
よび血管細胞付着分子−1(VCAM−1)を発現する細胞に結合することが判
明した(P.F.ウェラー等、1991[10];G.M.ワルシュ等、199
1[11];B.S.ボホナー等、1991[12];およびA.ドブリナ等、
1991[13])。VCAM1は、好酸球を包含する各種のリンパ細胞で発現
されるα4β1インテグリン、すなわちVLA−4に結合する(ウェラー等、
1991[10];エリシス等、1990[14])。好酸球がVLA−4を発
現するという事実は、ELAM−1およびICAM−1に結合するがVCAM−
1には結合しない好中球のような他の炎症細胞から好酸球を区別する。
補充におけるVLA−4の可能な役割を検討した。今回、抗−VLA−4抗体の
投与はアレルギー性ヒツジにおける後期反応と気道過反応症との両者を阻止する
ことが突き止められた。驚くことに、抗−VLA−4の投与はアレルゲン攻撃誘
発の4時間後に肺における好中球および好酸球の両者の個数を、両細胞がこれら
を肺組織に補充しうる代替の付着経路を有するとしても減少させた。また驚くこ
とに、処置されたヒツジにおける過反応症の阻止は、好中球および好酸球を含む
白血球の浸潤が経時的に顕著には低下しなくても、1週間まで持続することが観
察された。
本発明により、以下が提供される。
(項目1) 喘息に罹患した哺乳動物に抗−VLA−4抗体からなる組成物を投与することを特徴とする喘息の処置方法。
(項目2) 抗−VLA−4抗体組成物を静脈内投与する項目1に記載の方法。
(項目3) 抗−VLA−4抗体組成物を吸入によりエアロゾルとして投与する項目1に記載の方法。
(項目4) 抗−VLA−4抗体がHP1/2、HP2/1、HP2/4、L25およびP4C2から選択される項目1に記載の方法。
(項目5) 抗−VLA−4抗体がHP1/2またはVLA−4に結合しうるその断片である項目1に記載の方法。
(項目6) 組成物を、喘息罹患者の体重に対し0.05〜5.0mg/kgの抗体を供給するような投与量で投与する項目1に記載の方法。
(項目7) 組成物を、喘息罹患者の体重に対し0.5〜2.0mg/kgの抗体を供給するような投与量にて投与する項目6に記載の方法。
(項目8) 組成物を、少なくとも10μg/mlの哺乳動物における抗体の血漿レベルを与えるのに有効な量で投与する項目1に記載の方法。
(項目9) 組成物を、喘息罹患者が過敏性であるアレルゲンに露呈する前に投与する項目1に記載の方法。
(項目10) 哺乳動物がヒトである項目1に記載の方法。
(項目11) 組成物を、哺乳動物が過敏性であるアレルゲンに露呈した後に投与する項目1に記載の方法。
(項目12) アレルギー性喘息に罹患した哺乳動物に対し抗体、組換抗体、キメラ抗体、これら抗体の断片、VLA−4のα4サブユニットに結合しうるポリペプチドもしくは小分子または前記したこれらの組合せ物を、罹患者が過敏性であるアレルゲンに対する後期反応を阻止しまたはアレルゲン攻撃誘発の後の前記哺乳動物にて気道過敏症を減少させるのに有効な量で投与することを特徴とする喘息の処置方法。
(項目13) 抗体、ポリペプチドもしくは分子がモノクローナル抗体HP1/2;この種の抗体のFab、Fab′、F(ab′)2もしくはF(v)断片;可溶性VCAM−1ポリペプチド;またはVLA−4のVCAM−1結合性ドメインに結合する小分子から選択される項目12に記載の方法。
(項目14) 組成物が複数の抗−VLA−4モノクローナル抗体またはそのVLA−4結合性断片からなる項目12に記載の方法。
(項目15) 組成物が抗−VLA−4の他に抗−ELAM−1抗体もしくは抗−ICAM−1抗体または抗−ELAM−1抗体と抗−ICAM−1抗体との両者を含む項目12に記載の方法。
(項目16) 抗−VLA−4抗体がHP1/2またはVLA−4に結合しうるその断片である項目12に記載の方法。
(項目17) 組成物を、喘息罹患者の体重に対し0.05〜5.0mg/kgの抗体、抗体断片、ポリペプチドもしくは小分子を供給するような投与量にて投与する項目12に記載の方法。
(項目18) 組成物を、喘息罹患者の体重に対し1.0〜2.0mg/kgの抗体、抗体断片、ポリペプチドもしくは小分子を供給するような投与量にて投与する項目17に記載の方法。
(項目19) 組成物を、7日間にわたり少なくとも10μg/mlの哺乳動物における抗体の血漿レベルを与えるのに有効な量で投与する項目12に記載の方法。
(項目20) 喘息に罹患した哺乳動物に対し、抗−VLA−4抗体HP1/2またはVLA−4に結合しうるその断片からなる組成物を投与することを特徴とする喘息の処置方法。
(項目21) 喘息症の哺乳動物における後期反応を軽減させ、またはその気道過敏症を顕著に減少させるのに有効な医薬組成物であって、医薬上許容しうるキャリヤ中で実質的にVLA−4を認識するモノクローナル抗体よりなる医薬組成物。
本発明は喘息の新規な処置方法を提供し、さらに喘息の処置に有用な新規な医
薬組成物をも提供する。特に本発明は、喘息罹患者に有効量のたとえばモノクロ
ーナル抗体HP1/2のような抗−VLA−4抗体を投与する工程からなる方法
を提供する。抗−VLA−4抗体は慢性アレルゲン誘発喘息を有する患者にイン
ビボで有利に投与され、アレルゲンに対する後期反応を阻止すると共に気道過反
応性を軽減させる。
(典型的には骨髄腫細胞)を所定の抗原(たとえばVLA−4)を発現する全細
胞で免疫化した哺乳動物からのリンパ球(典型的には脾細胞)に融合させ、得ら
れたハイブリドーマ細胞の培養上澄液を抗原に対する抗体につきスクリーニング
する(一般にコーラー等、1975[15]参照)。
式は、免疫化される哺乳動物の種類、その免疫状態、哺乳動物の体重などに依存
する。典型的には免疫化された哺乳動物を出血させ、各血液試料からの血清を適
するスクリーニング分析により特定の抗体につき分析する。たとえば抗−VLA
−4抗体は、VLA−4−発現性細胞からの125I標識細胞溶解物の免疫沈
澱により同定することができる(サンチェズ・マドリッド等、1986[16]
およびヘムラー等、1987[17])。さらに抗−VLA−4抗体は、VLA
−4を認識すると思われる抗体と共にインキュベートしたRamos細胞の蛍光
染色を測定することによりフロー・サイトメトリーによっても同定することがで
きる (エリシス等、1990[14]参照)。ハイブリドーマ細胞の産生に用
いられるリンパ球は典型的には、この種のスクリーニング分析を用いて抗−VL
A−4抗体の存在につき陽性と既に試験された血清を有する免疫化された哺乳動
物から分離される。
種類の哺乳動物から得られる。好適な不死細胞ラインはヒポキサンチン、アミノ
プテリンおよびチミジンを含有する培地(「HAT培地」)に対し感受性である
マウス骨髄腫細胞ラインである。
レングリコール(「PEG 1500」)を用いてマウス脾細胞に融合させる。
次いで、融合から得られるハイブリドーマ細胞をHAT培地を用いて選択し、こ
の培地は未融合および非産生融合の骨髄腫細胞を死滅させる(未融合の脾細胞は
形質転換されないので数日間後に死滅する)。所望の抗体を産生するハイブリド
ーマをハイブリドーマ培養上澄液をスクリーニングして検出する。たとえば抗−
VLA−4抗体を産生すべく作成したハイブリドーマは、たとえばトランスフェ
クトされたK−562細胞のような組換α4サブユニット−発現性細胞ライン
に結合する能力を持った分泌抗体につきハイブリドーマ培養上澄液を試験してス
クリーニングすることができる(エリシス等[14]参照)。
と試験されたハイブリドーマ細胞を、これらハイブリドーマ細胞によりモノクロ
ーナル抗体を培地中へ分泌させるのに充分な条件および時間にて栄養培地で培養
した。ハイブリドーマ細胞に適する組織培養技術および培地は周知されている。
細胞を除いたハイブリドーマ培養上澄液を集め、抗−VLA−4抗体を必要に応
じさらに周知方法で精製することができる。
を産生させることもできる。ハイブリドーマ細胞は腹腔内で増殖して抗体を分泌
し、この抗体は腹液として蓄積する。この抗体を、腹腔内から注射器により腹液
を抜取って回収することができる。
ンチェズ−マドリッド等、1986[16];ヘムラー等、1987[17];
プリド等、1991[19]参照)。ここの実験ではHP1/2と称する抗−V
LA−4モノクローナル抗体(バイオジェン・インコーポレーション社・ケンブ
リッジ、MAから入手)を使用した。抗−VLA−4抗体HP1/2の重鎖およ
び軽鎖の可変領域はクローン化され、配列決定され、ヒト免疫グロブリン重鎖お
よび軽鎖の定常領域と組合せて発現されている。この種のキメラHP1/2抗体
はネズミHP1/2抗体に特異性および能力において類似し、本発明による処置
方法に有用である。同様に、人間適合させた組換抗−VLA−4抗体もこれら方
法に有用である。HP1/2 VH DNA配列およびその翻訳アミノ酸配列
をそれぞれSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2で示す。HP
1/2 VK DNA配列およびその翻訳アミノ酸配列をそれぞれSEQ ID
NO:3およびSEQ ID NO:4で示す。
識しうる他の抗−VLA−4抗体(たとえばMAb HP2/1、HP2/4、
L25、P4C2)が本発明に有用である。抗体はVLA−α4鎖のB1もし
くはB2エピトープを認識することが特に好ましい(プリド等、1991[19
]参照)。特定の理論に拘束されるものでないが、本発明の方法に使用される抗
−VLA−4抗体はアレルゲン攻撃誘発の後の少なくとも最初の期間にわたり肺
の炎症部分へのVLA−4発現性リンパ球の移動を特異的に阻止することができ
る。VLA−4白血球移動の阻止は次いで白血球浸潤の病理学的二次作用、たと
えば毒性物質の放出、可溶性炎症細胞媒介物の誘発、白血球走化性作用剤(たと
えば好中球走化性因子)の誘発などを防止する。その結果、アレルゲンに対する
後期反応および気道の持続過敏性を軽減することができる。或いは、抗−VLA
−4抗体は炎症媒介物および/または細胞走化性作用剤の放出に必要な信号導入
を軽減することができる。
からなる組成物を投与することを特徴とする。下記する実施例は喘息ヤギで観察
された結果を示す。しかしながら、ヤギとヒトとの間における生理学的反応およ
び薬理学的作用の類似性が記載されており(たとえばW.M.アブラハム、19
89[20]参照)、さらにヤギと他の動物との喘息モデル(ウサギ、リスザル
、モルモットおよび感作したイヌ)の間における類似性も記載されている(たと
えばW.M.アブラハム等、1988[8]参照)。したがって、ここで報告す
る結果はアレルギー性喘息に罹患した人間を含む任意の哺乳動物に適切かつ適用
され、本発明の方法はこれらに有用である。
する前に予防投与することができる。さらに、抗体をアレルゲン露呈の時点もし
くはその直後、後期反応の程度を軽減させる早期反応と後期反応との間、或いは
気道過反応性を減少もしくは除去するアレルゲン露呈後の任意の時点で投与すれ
ば有利な作用が得られる。
ら組成物として投与することができる。好ましくは、組成物は静脈内注射に適す
る形態である。さらに、無菌の水溶液または燐酸塩緩衝塩水溶液の形態の抗体組
成物も考えられ、例えば吸入器により噴霧され喘息罹患者が肺中へ直接に吸入す
ることができる。投与量は特定アレルゲンに対する喘息罹患者の感受性、露呈時
のアレルゲン濃度および露呈の頻度/持続時間、提案される投与方式(たとえば
注射もしくは吸入)、所望の抗体の血漿レベル、特定抗体の効果または気道反応
性を抑制する抗体の組合せ、抗体組成物の消失速度もしくは半減期、並びにアレ
ルギー性喘息の処置を経験した医者に熟知される他の因子に応じて変化する。一
般に、投与量は1〜1000μg/mlの範囲に抗体の血漿レベルを維持するよ
う計算かつ調整されるが、それより高いもしくは低い投与量も患者の年齢、感受
性、耐性および他の特性、炎症の急激性、病気の履歴および過程、並びに担当医
により日常的に考慮される同様な因子を考えて可能である。用いる抗体の効能お
よび半減期に応じ、処置を受ける患者の体重に対し約0.05〜5.0mg/k
gの抗体、特に好ましくは0.5〜2.0mg/kgの抗体を使用するのが好適
である。
る。吸入投与には燐酸塩緩衝塩水(PBS)が好適である。医薬組成物はさらに
、活性成分の放出を調節し或いは患者体内におけるその存在を長期化させるよう
処方することもできる。多数の適する薬物放出系がこの目的で知られており、た
とえばヒドロゲル、ヒドロキシメチルセルロース、マイクロカプセル、リポソー
ム、マイクロエマルジョン、微小球などを包含する。
を用いねばならないことも認識されよう。モノクローナル抗体を使用するのが好
適である。
用することができる。この種の組換抗体は、組換DNA技術により産生される抗
体、たとえば宿主細胞を所望抗体の免疫グロブリン軽および重鎖をコードするD
NAを含有した適する発現ベクターで形質転換させて産生させた抗体、並びに抗
−VLA−4抗体の重鎖および/または軽鎖のヒンジおよび定常領域の幾つかま
たは全部が、異なる種の免疫グロブリン軽鎖もしくは重鎖の対応領域で置換され
ている組換キメラ抗体を用いることもできる(すなわち、好ましくは投与抗体に
対する免疫反応を最小化させるため処置される喘息罹患者と同じ種のもの)(た
とえばP.T.ジョーンズ等、1986 [21];E.S.ワード等、198
9[22]および米国特許第4,816,397号(ボス等)[23]参照、こ
れら全てを参考のためここに引用する)。
ような抗−VLA−4抗体のVLA−4結合性断片;重鎖モノマーもしくはダイ
マー;軽鎖モノマーもしくはダイマー;並びに1個の重鎖と1個の軽鎖とよりな
るダイマーもここで考えられる。この種の抗体断片は化学法により、たとえば完
全抗体をたとえばペプシンもしくはパパインのようなプロテアーゼで切断させる
か、或いは組換DNA技術により、たとえば端を切取った重鎖および/または軽
鎖遺伝子により形質転換された宿主細胞を用いて産生させることもできる。重鎖
および軽鎖モノマーも同様に、完全抗体をたとえばジチオスレイトール(dit
hiothreitol)もしくはβ−メルカプトエタノールのような還元剤で
処理して、或いは所望の重鎖もしくは軽鎖またはその両者をコードするDNAで
形質転換された宿主を用いて産生することができる。
ロックする他のポリペプチドおよび分子も、抗−VLA−4抗体と同様に喘息の
処置に有効である。たとえば、VCAM−1(VLA−4の内皮細胞リセプタ)
の可溶型またはその断片を投与して、VLA−4結合部位に競合させることによ
り抗VLA−4抗体の投与と同様な作用を得ることもできる。たとえばVLA−
4−リガンドの結合ドメインを模倣すると共にVLA−4のリセプタドメインに
適合する、たとえばオリゴ糖のような小分子も用いることができる(J.J.デ
ブリン等1990[24];J.K.スコットおよびG.O.スミス、1990
[25]、並びに米国特許第4,833,092号(ゲイセン)[26]参照、
これら全てを参考のためここに引用する)。アレルギー患者における後期反応ま
たは気道過反応性を効果的に阻止するVLA−4結合性ポリペチチドもしくは分
子の使用がここでは喘息を処置するための代案法として考えられる。
組合せて使用することも考えられる。たとえば、ここに報告した有利な作用がV
CAM−1−発現性内皮細胞に対する白血球補充の阻止に基づく程度に応じて、
抗−VLA−4抗体と、白血球抗原と内皮細胞リセプタ分子との間の付着を阻害
する他の抗体との組合せが有利である。たとえば本発明による抗−VLA−4抗
体を使用する他、抗−ELAM−1および/または抗−ICAM−1の抗体の使
用も有利である(グンデル等、1991[27];ウェグナー等、1990[2
8]参照)。
的、食道内もしくは鼻腔内、気管支内(局部処置、たとえば気管支鏡を介する)
により、さらに皮下、筋肉内、静脈内、動脈内もしくは非経口的に任意適する手
段で投与することができる。通常の吸入を介する投与が好適である。
アブラハム等[8]により実質的に記載されたように実験を行なった。要する
に、アスカリス・スウム抽出物(グリアー・ダイアグノスチックス社、レノワ、
NC)の1:1000もしくは1:10,000希釈物に対する天然のアレルギ
ー皮膚反応を有するアレルギー性ヒツジを試験し、アスカリス・スウム抗原によ
る吸入攻撃誘発に対し早期および後期気道反応(「二重応答」)を示すヒツジを
選択した。気道における呼吸メカニクスおよび物理的変化を測定するため、ヒツ
ジを頭を固定した俯位に拘束した。バルーンカテーテルを食道下側に対する2%
リドカイン溶液での局部麻酔下で一方の鼻腔中に前進させると共に、拘束した気
管内チューブを他方の鼻腔中に前進させ(可撓性の光学繊維気管支鏡を案内とし
て用いる)、エアロゾル攻撃誘発に際し気道メカニクスを測定した。胸膜圧を、
胃食道接合部から5〜10cmに位置せしめた食道バルーンカテーテル(1ml
の空気を充填)で推定した。この位置にて、末端呼吸胸膜圧は−2〜−5cmH
2Oの範囲であった。バルーンを設置した後、これを実験の持続時間にわたり
所定位置に留めるよう固定した。気管における側圧を横穴カテーテル(内径2.
5mm)で測定し、このカーテルを気管内チューブの先端に対し遠位方向に前進
させて設置した。経肺圧(気管圧と胸膜圧との間の圧力差)を差圧トランスジュ
ーサ・カテーテルシステム(MP45、バリダイン、ノースリッジ、CA)で測
定した。圧力トランスジューサ・カテーテルシステムは、周波数9Hzに対する
圧力と流動との間の相変化を示さなかった。気管内チューブの近位端部をフライ
ヒ・ニューモタコグラフ(ダイナ・サイエンシス社、ブルー・ベル、PA)に接
続することにより肺抵抗(RL)を測定した。流動圧および経肺圧を示す信号
をオシロスコープ記録計(モデルDR−12型;エレクトロニクス・フォー・メ
ディスン社、ホワイト・プレイン、NY)に記録し、この記録計を経胸圧、呼吸
容量(デジタル積算により得られる)および中間容積技術による流動からの胸抵
抗(RL)を5〜10回の呼吸により分析して自動計算するコンピュータに連
結した。胸部ガス容積(Vtg)を、一定容積の人体プレチスモグラフにおける
RLの測定の直後に測定した。比肺抵抗 (SRL)をこれら数値から計算し
た(SRL=Vtg×RL)。
。投与量反応曲線を緩衝液(PBS)単独の吸入直後およびPBS中にてカルバ
コールの濃度を増大させた10回の呼吸の各連続投与の後に採取したSRLの
測定値を用いてプロットした。カルバコールの濃度はPBS中で0.25%、0
.5%、1.0%、2.0%および4.0%w/vとした。SRLがPBS値
から400%を越えて上昇した際または最高のカルバコール濃度が投与された後
に、刺激試験を中止した。気道反応性を、投与量反応曲線から後緩衝値を400
%越える比肺抵抗(PD400%)に増大する呼吸単位(BU)における積算カ
ルバコール量を計算することにより決定した。1呼吸単位は、1%w/vカルバ
コール溶液の1呼吸として規定した。すなわち、気道過反応性の抑制が大きいほ
ど、対照で見られると同じ気管支収縮を観察する前に必要とされる呼吸単位数が
大となる。
0分間にわたり予備処理として用いた後、アスカリス・スウム抗原(グリア・ダ
イアグノスティックス社、レノワ、NC)でアレルゲン攻撃誘発した。次いで、
このヒツジを同一の試験にかけたが、ただし1mg/kgのモノクローナル抗体
HP1/2を各ヒツジに抗原攻撃誘発の30分間前に投与した。プラシーボ(緩
衝剤対照またはアイソトープ適合の抗体(1E6、抗−LFA3)対照)および
HP1/2組成物を静脈内注射により投与した。HP1/2組成物(および1E
6対照)は、ハイブリドーマ(バイオジェン・インコーポレーション社、ケンブ
リッジ、MA)から入手した純抗体を無菌の内生毒素フリーのPBSに希釈する
と共に各ヒツジの体重に対し1mg/kgの抗体を供給するよう調整して作成し
た。抗原溶液を使い捨て薬用ネブライザ(レインドロップ(登録商標)、ピュー
リタン・ベネット社、レネクサ、KS)を用いエアロゾルとして供給し、このネ
ブライザはエアロゾルをアンダーセン・カスケード・インパクタにより測定して
3.2μM(幾何学的SD1.9)の質量平均空気力学直径を有するエアロゾル
を与えた。アスカリス・スウム抽出物をPBSで82,000蛋白質窒素単位(
PNU)/mlの濃度まで希釈した。ネブライザの出口をプラスチックT管に指
向させ、その1端部をハーバード・レスピレータの吸入口に接続した。電磁弁と
20psi圧縮空気源とよりなるネブライザおよび電磁弁に接続された投与計を
、ハーバード・レスピレータの吸入サイクルの開始時点で1秒間作動させた。エ
アロゾルは波状で500ml容積を毎分20回の呼吸速度で20分間にわたり供
給した。各ヒツジは同等量の抗原(400回の呼吸)で対照およびHP1/2の
試験につき攻撃誘発した。さらに、投与量反応曲線につきカルバコールエアロゾ
ルを上記のネブライザにより発生させた。
設計した80cmの光学繊維気管支鏡の遠位端部を、ランダム選択された気管支
サブセグメントに緩徐に挿入した。肺洗浄を3×30mlのPBS(pH7.4
)を39℃にて緩和に吸引して行ない、その際気管支鏡の操作チャンネルに接続
した30mlの注射器を用いた。洗浄戻り液を集め、ガーゼに通過させて粘液を
除去し、次いで420×gにて15分間遠心分離した。上澄液をデカントし、細
胞をPBSに再懸濁させた。懸濁物の1部を血液計チャンバに移して全細胞を推
定した。生存の全細胞をトリパンブルー排除により推定した。第2の細胞懸濁物
部分を細胞分離器(10分間にわたり600rpm)にて遠心分離し、ライト・
ギエムサ(Wright−Giemsa)で染色し、100倍で観察して細胞集
団を確認した。スライド1枚当り500個の細胞が、細胞数差を確認すべく特性
化された。特性化した細胞は表皮細胞、大食細胞、好塩基球、単球および未同定
細胞(「その他」と名付ける種類に分類)とをリンパ球、好中球および好酸球の
他に含んだ。
の静脈血試料(約5ml)から決定した。
8匹の二重応答アレルギー性ヒツジを用いる気道攻撃誘発試験を上記手順にし
たがって行なった。基線(BSL)気道反応性(PD400%)を抗原攻撃誘発
の2〜3日前に確立し、基線気管肺胞洗浄(BAL)を攻撃誘発の1日前に行な
った。攻撃誘発の当日、比肺抵抗(SRL)の基線値を測定し、次いでヒツジ
に緩衝剤(対照)またはHP1/2を注射により投与した。この最初の投与(「
処理」)の後、SRLを測定し、処理の30分間後にヒツジをアスカリス・ス
ウム抗原で攻撃誘発した。SRLを攻撃誘発の直後、攻撃誘発してから1〜6
時間にわたり毎時間、6.5〜8時間の範囲で30分間毎、並びに抗原攻撃誘発
してから24時間、48時間および1週間(すなわち168時間)の後に測定し
た。BALはSRL測定の後に4時間、8時間、24時間および48時間、並
びに1週間にて行なった。これらの試験にて末梢血液を抜取り、全白血球のカウ
ント数および細胞集団の測定を処理前(基線)、攻撃誘発の直後、並びに攻撃誘
発してから1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、24時間および
48時間、並びに1週間の後に行なった。この試験の結果を図面に示す:
第1図は、検体ヒツジにおける抗原誘発の気道反応に対するHP1/2処理の
効果を示す。HP1/2の処理は、対照により示される後期反応の顕著な阻止(
実質的に完全)を与えた。
間、4時間、6時間、8時間、24時間および48時間の後に測定した処理検体
におけるHP1/2の血漿濃度(μg/ml)を示すグラフである。均衡化した
後、抗体濃度は約20μg/mlの濃度に落ち着き、この濃度は48時間の時点
まで維持された。
抗原攻撃誘発の24時間、48時間および1週間の後、処理された検体は気道反
応性の顕著な減少を示した。抗原攻撃誘発の2週間後においてさえ、処理された
検体は気道反応性の減少を示し続けた。抗体の実質的に完全な阻止効果が1週間
まで持続するという事実は特に驚異的であり、処理の治療価値の点で有望である
。
に抗原攻撃誘発の1週間後に行なったBALの結果を示す一連のグラフである。
結果は、処理検体から回収された全細胞にて、対照と対比し顕著な変化を示さな
い。しかしながら、処理検体は、攻撃誘発してから4時間後の時点にて好中球お
よび好酸球の両者レベルの減少を示した。抗−VLA−4の投与が好中球の補充
に影響を与えない、何故なら好中球はVLA−4を発現しないからと予想すると
、これは若干驚異的である。さらに、好中球と好酸球との両者は内皮に対する付
着に関与する他のリガンドを発現し、両種の細胞はLFA−1/ICAM−1経
路およびCDX/ELAM−1経路を介し内皮細胞に結合することが示されてい
る。
体により抗原攻撃誘発の2時間後に処置した際にも観察され、これは上記したよ
うに攻撃誘発の30分間前と対比される。HP1/2の効果は投与量依存性であ
った。たとえば、投与量を0.2mg/kgまで減少させれば、後期反応に対す
る保護は充分でなかった。1E6(抗−LFA3)をアイソトープ適合対照抗体
としてHP1/2の処理に用いた抗原攻撃誘発試験に関し、早期反応もしくは後
期反応に対する効果は対照試験で1E6を用いて観察されなかった。1E6抗体
を産生する1E6−2C12ハイブリドーマ細胞ラインはATCC HB 10
693として寄託されている。
抗体のエアロゾル供給の効能を検討するため次の実験を行なった。試験は上記
と実質的に同様に行なったが、ただし2匹のヒツジを用いると共にHP1/2を
エアロゾルとしてネブライザを介し供給した(投与量=動物1匹当り8mgのH
P1/2、抗原攻撃誘発の30分間前に投与)。
SRLの平均上昇を特徴とするのに対し、ヒツジを抗−VLA−4抗体で処理
すればSRLの平均上昇は基線の26%であった。これらの結果は後期反応の
約80%阻止に相当する。これら結果はさらに、24時間における気道反応性の
約70%阻止を示した。この試験から明らかなように、抗体の吸入供給を用いて
本発明の利点を得ることができる。
/kgエアロゾル投与量を用いて確認し、対照(アイソタイプ適合1E6(抗−
LFA3)抗体対照)と共に5匹のヒツジに拡大した。第5図および第6図は、
抗原攻撃誘発を行なう30分間前のこの投与量におけるHP1/2エアロゾルで
の処理が後期反応および気道過反応性を阻止するにも有効であることを示す。H
P1/2エアロゾル処理は、1E6対照により経験される後期反応の顕著(実際
には、実質的に完全)な阻止を与えた。1E6エアロゾル処理は効果がなかった
。匹敵する保護は静脈内試験およびエアロゾル試験の両者で達成されたが、エア
ロゾル試験においてHP1/2により与えられる保護は検出しうる薬剤の血中レ
ベルなしに達成された。HP1/2のこの効果は、同じ投与量の1E6が保護作
用を示さないので特異的である(たとえば1E6で処理された動物はPC400
にて顕著な低下を示したのに対し、HP1/2はこの作用を阻止した)。HP
1/2と1E6との間の生理学的反応における差は、これら群における全WBC
の欠如またはカウント差の結果ではない。全WBCおよびHP1/2と1E6と
の群における差は、静脈内試験で見られたと同様な反応のパターンを示した。
ものでない。上記の開示から当業者には多くの改変が可能であることも明らかで
あろう。たとえば、用いる実際の投与量、用いる抗体もしくは抗体断片の種類、
投与方式、正確な組成、処置の投与時間および投与方式、並びに多くの他の特徴
は全て本発明の思想および範囲を逸脱することなく改変することが可能である。
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- 喘息に罹患した哺乳動物に抗−VLA−4抗体からなる組成物を投与することを特徴とする喘息の処置方法。
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