本発明は、自動車の走行制御装置及び方法に係り、特に、自車前方の走行環境に応じて演算される制御パラメータによりエンジン,変速機,及び/又はブレーキを制御する自動車の走行制御装置及び方法に関する。
従来、把握した周辺の道路情報に基づき、自動車の走行を制御することによって、運転者を支援するとともに、運転者の運転技術や感覚に関わらず安全な走行を可能とし、さらに、燃費の向上や排ガスの削減を目的とした自動車の制御手法が提案されている。
例えば、運転者が設定した設定速度を維持するように駆動力を制御するCC(Cruise Control)と呼ばれる速度制御や、先行車と自車との車間距離を適切に維持するACC(Adaptive Cruise Control)と呼ばれる車間距離適応型速度制御が開発されている。さらに、上述のCCやACCに加えて、自動車の走行経路を案内する自動車用ナビゲーションシステムの地図情報に含まれた自車進路前方の道路情報に基づいて、運転者を支援する装置が開示されている。例えば、特許文献1に開示されている車両用走行制御装置では、ACCの目標速度と、道路情報に応じて設定された目標速度のうち、低い方を目標速度に決定し、この目標速度を維持するように車両の速度を制御するものである。
また、特許文献2には、周辺道路情報に基づく速度制御(上記CC)中に、前方の道路の状況により、速度を落とす必要が生じたとき、2段階の減速度を用いて減速制御することが開示されている。
特開2003−170760号公報
特開2004−142686号公報
しかしながら、特許文献1や2に開示された速度制御方法では、ACCの先行車追従(車間距離制御)モードから、道路情報に応じた目標速度に従う速度制御モードに切り替える際に、目標速度がステップ的に変化するために、快適性が著しく低下してしまう。また、手動運転状態から、道路情報に応じた目標速度に従う速度制御モードに切り替える際にも、同様の問題点がある。
本発明の目的は、このモードの切り替えにおいて、それぞれのシステムを利用し、安全性及び快適性を損なわずに制御モードの切り替えを実現する点にある。
本発明はその一面において、自車前方の先行車との車間距離に応じて第1の目標速度を演算し、道路情報に応じて第2の目標速度を演算し、第1又は第2の目標速度を速度指令として自車の速度を制御する自動車の走行制御において、速度制御に対する速度指令を、第1の目標速度から第2の目標速度に切り替える際に、当該速度指令の加減速度を所定の範囲内に制限することを特徴とする。
本発明は他の一面において、道路情報に応じて第2の目標速度を演算し、第2の目標速度を速度指令として自車の速度を制御する自動車の走行制御において、手動運転から前記第2の目標速度を速度指令として自車の速度を制御する速度制御に切り替える際に、加減速度を所定の範囲内に制限することを特徴とする。
本発明はさらに他の一面において、乗員のアクセル及びブレーキ操作に基づく手動運転モード、先行者との車間距離に応じた第1の目標速度を速度指令として速度制御する第1の制御モード、並びに、道路情報に応じた第2の目標速度を速度指令として速度制御する第2の制御モードを含む複数のモードの中から1つのモードを選択するモード選択スイッチを備え、前記手動運転モード又は前記第1の制御モードから前記第2の制御モードに切り替えるとき、あるいは前記速度指令を、第1の目標速度から第2の目標速度に切り替えるとき、前記速度指令の加減速度を所定の範囲内に制限することを特徴とする。
本発明の望ましい実施態様においては、前記第1の目標速度及び/又は前記第2の目標速度を乗員に報知する目標速度報知手段を備える。
本発明の望ましい実施態様によれば、先行車との車間距離に応じた第1の目標速度に基づく第1の制御モードから、道路情報に応じた第2の目標速度に基づく第2の制御モードへ切り替わる際に、急激な加減速を防止し、快適性を保ちつつ、安全性を確保することができる。
また、事前に情報を乗員に報知する手段を有することにより、乗員に与える安心感を向上できる。
本発明のその他の目的と特徴は、以下に述べる実施形態の説明で明らかにする。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る自動車の走行制御システムの概略図である。
まず、車載端末装置10の構成と処理内容について説明する。
車載端末装置10は、ユーザーインターフェース11とカーブ曲率演算部12から構成され、以下に示す処理の内容は、車載端末装置10の図示しないコンピュータにプログラミングされ、予め定められた周期で繰り返し実行される。
ユーザーインターフェース11は、運転者の操作により入力された信号に応じてユーザー情報を演算し、演算されたユーザー情報は車内LAN(Local Area Network)等の通信手段を用いて走行制御装置20に出力される。また、カーブ曲率演算部12は、車両に搭載されたGPS(Global Positioning System:衛星航法システム)受信機から出力された自車位置の信号と、地図DB(Data Base)に応じて自車前方のカーブを検出し、検出されたカーブの曲率半径を演算する。演算された曲率半径は車内LAN等の通信手段を用いて走行制御装置20に出力される。
次に、走行制御装置20の構成と処理内容について説明する。
走行制御装置20は、走行モード切り換え手段21、速度制御手段22、目標ギア位置演算部23、要求トルク演算部24、ブレーキ圧力演算部25、変速機制御手段26、エンジン制御手段27、ブレーキ制御手段28、状態記憶手段29によって構成され、以下に示す処理の内容は、走行制御装置20の図示しないコンピュータにプログラミングされ、予め定められた周期で繰り返し実行される。
走行モード切り換え手段21は、自車の速度を制御する第1の走行モードと、運転者の操作により生成された信号に応じてエンジン,変速機,ブレーキの少なくとも1つを制御する第2の走行モードを切り換える機能を有する。一般に、前記第1の走行モードはACC(Adaptive Cruise Control:車間距離適応型速度制御)と呼ばれており、運転者が設定した目標速度に応じて自車の速度を制御する従来のCC(Cruise Control:速度制御)に、先行車との車間距離を制御する機能を付加したシステムである。走行モード切り換え手段21は、運転者によって操作されるACCスイッチ30の信号に応じて前記第1の走行モードと前記第2の走行モードの切り換えを行う。
速度制御手段22は、運転者により設定されたセット車速31,カーブ曲率演算部12により演算された曲率半径および車速に応じて目標ギア位置TGP,目標エンジントルクTTENG,目標ブレーキ圧力TPBRKを演算する。走行モード切り換え手段21により第1の走行モードが選択された場合には、速度制御手段22にて演算された目標ギア位置TGP,目標エンジントルクTTENG,目標ブレーキ圧力TPBRKを実現するように、変速機制御手段26,エンジン制御手段27、ブレーキ制御手段28により変速機,エンジン,ブレーキが制御される。
目標ギア位置演算部23は、アクセルペダル踏込量と車速に応じて目標ギア位置TGPを演算する。要求トルク演算部24は、アクセルペダル踏込量とエンジン回転数に応じて目標エンジントルクTTENGを演算する。ブレーキ圧力演算部25は、ブレーキ踏力に応じて目標ブレーキ圧力を演算する。走行モード切り換え手段21により第2の走行モードが選択された場合には、目標ギア位置演算部23にて演算された目標ギア位置TGP,要求トルク演算部24にて演算された目標エンジントルクTTENG,ブレーキ圧力演算部25にて演算された目標ブレーキ圧力TPBRKを実現するように、変速機制御手段26,エンジン制御手段27、ブレーキ制御手段28により変速機,エンジン,ブレーキが制御される。つまり、第2の走行モードは、運転者の操作(アクセル,ブレーキ操作)により生成される信号に応じた制御を行い、運転者の意図を忠実に反映するモードである。
状態記憶手段29は、走行モード切り換え手段21により選択された走行モード,カーブ曲率演算部12により演算されたカーブ曲率半径,ユーザーインターフェース11から出力されたユーザー情報,図示しないセンサから検出された現在の車速等のパラメータに応じて速度学習値を演算する。なお、状態記憶手段29の詳細な処理内容については後述する。
次に、図2を用いて、第1の走行モードを選択した場合の制御方法について説明する。
図2は、カーブ曲率半径の情報に応じて事前に車両を減速させる場合の概略図である。
図2においては、直線路201とカーブ路202から構成されている道路200を車両210が走行している場合を想定している。
まず、図のG点において、車載端末装置10がGPS受信機から出力される自車位置の情報と地図DBに応じて前方のカーブ路202を検出すると、走行制御装置20がカーブ到達距離D(図のB点で示すカーブ路202の入口から自車位置までの距離)を演算する。また、走行制御装置20は、前方のカーブ路202が検出されると、曲率半径Rkの値に応じてカーブ進入時の(第2の)目標速度Vinを演算し、演算された進入目標速度Vinに応じて減速距離X(現在の車速あるいは直線路201に応じて設定された速度から、カーブ進入時の速度まで減速するために必要な距離)を演算する。
次に、図のS点(速度Vs)において、カーブ到達距離Dが減速距離X以下になると、図の実線203で示すように、走行制御装置20により演算された第2の目標速度に応じて車両の減速が開始される。なお、カーブ進入前の減速においては、特許文献2に記載されているように2段階の減速を行うことにより運転者の違和感を軽減することが望ましい。図2に示す実施例においては、図のA点(速度Va)までは所定の減速度A1で車両を減速させ、図のA点からB点(速度Vin)までは所定の減速度A2で減速させる方針としている。
その後、図のB点において、車両210がカーブ進入時の目標速度Vinまで減速した後は、進入目標速度Vinを保持した第2の目標速度でカーブ路202を定速走行させる。
以上説明したように、車載端末装置10によりカーブを検出し、走行制御装置20によりカーブ手前で車両210を適正な速度まで減速させることにより、快適性,利便性および安全性の向上が可能となる。
次に、図3を用いて、カーブ曲率半径の情報に応じて事前に車両を減速させる場合の第2の目標速度の演算方法について説明する。
図3は、ユーザー情報と速度学習値から第2の目標速度を演算するブロック図である。
車載端末装置10には、運転者によって操作可能なスイッチ11a,11bから構成されるユーザーインターフェース11を設けている。車載端末装置10が起動したときに、ユーザー情報NUM_USERが初期化(=0)され、運転者がスイッチ11aを押した場合には、ユーザー情報としてNUM_USER=1が出力される。また、運転者がスイッチ11bを押した場合には、ユーザー情報としてNUM_USER=2が出力される。このように、車載端末装置10にユーザーインターフェース11を設けることにより、低コストかつ簡単な方法で複数の運転者を識別することができる。
目標速度設定手段300に記載されているチャートは横軸が自車位置,縦軸が速度である。目標速度設定手段300には、図の実線で示すように、カーブの曲率半径に応じて第2の目標速度を演算する制御ロジックが予めプログラミングされている。例えば図のS点で自車前方のカーブを検出すると、図のB点でカーブ進入時の目標速度となるように第2の目標速度の軌道は徐々に低下していく。この第2の目標速度の軌道は、出荷時には所定の基準値となるようにプログラミングされており、カーブ進入時の目標速度も基準値TVSPLOとして定義されている。しかしながら、カーブ進入時の目標速度は複数の運転者の嗜好により異なるため、ユーザー情報に応じて目標速度を学習することが望ましい。図3に示すブロック図では、状態記憶手段29においてユーザー情報に応じて速度学習値を演算し、状態記憶手段29により演算された速度学習値を用いて目標速度設定手段300によりカーブ進入時の第2の目標速度を設定しているため、複数の運転者の嗜好に対応した速度制御が可能となる。例えば、ユーザーAがスイッチ11aを押してユーザー情報NUM_USER=1が出力された場合には、図の点線で示すようにユーザーA固有の速度学習値TVSPLAに応じてカーブ進入時の目標速度が設定される。また、ユーザーBがスイッチ11bを押してユーザー情報NUM_USER=2が出力された場合には、図の一点鎖線で示すようにユーザーB固有の速度学習値TVSPLBに応じてカーブ進入時の目標速度が設定される。
このように、車載端末装置10にユーザーインターフェース11を設け、ユーザーインターフェース11により識別されたユーザー情報に応じてカーブ進入時の速度を学習し、学習された速度学習値に応じて第2の目標速度を設定することで、複数の運転者の嗜好に合致した速度制御が可能となる。
次に、図4を用いて、状態記憶手段29の処理内容について説明する。
図4は、状態記憶手段29の処理内容を示すフローチャートである。
まず、処理401において、走行モードMODE,カーブ曲率半径Rk,ユーザー情報NUM_USER,車速VSP等のパラメータを読み込み、処理402において第2の走行モードか否かの判定を行う。処理402において、走行モードMODE=2と判定された場合には、第2の走行モードで走行中と判断して処理403に進み、走行モードMODE≠2と判定された場合には、第2の走行モードで走行中でないと判断して処理を終了する。次に、処理403において、自車前方に検出されたカーブの曲率半径がRkの近傍であるか否かの判定を行い、近傍であると判定された場合には処理404に進み、近傍でないと判定された場合には処理を終了する。次に、処理404において、ユーザー情報の判定を行い、NUM_USER=1の場合にはユーザーAが運転中と判断して処理405に進み、処理405において、曲率RkにおけるユーザーAの速度学習値VSPLA[Rk]に車速VSPを代入して処理406に進む。処理406では、ユーザーA状態記憶フラグfVSPL(#bA)をセット(=1)して処理を終了する。
また、処理404において、NUM_USER=2の場合にはユーザーBが運転中と判断して処理407に進み、処理407において、曲率RkにおけるユーザーBの速度学習値VSPLB[Rk]に車速VSPを代入して処理408に進む。処理408では、ユーザーB状態記憶フラグfVSPL(#bB)をセット(=1)して処理を終了する。
なお、処理404において、NUM_USER≠1,2の場合にはユーザーA,B以外が運転中と判断して処理を終了する。
以上説明したように、状態記憶手段29を用いることにより第2の走行モードにおける車速を記憶し、かつ複数の運転者に対応する速度学習値を演算することが可能となる。
次に、図5,6を用いて、目標速度設定手段300の処理内容について説明する。
図5は、カーブ進入時における第2の目標速度の更新処理内容を示すフローチャートである。
まず、処理501において、走行モードMODE,状態記憶フラグfVSPL,ユーザーA速度学習値VSPLA,ユーザーB速度学習値VSPLB等のパラメータを読み込み、処理502に進む。処理502において、走行モードMODEの値が2から1に切り替わったか否かを判定し、走行モードが第2の走行モードから第1の走行モードに切り替わったと判断された場合には処理503に進む。また、上記の走行モード切り替えが無いと判断された場合には処理を終了する。次に、処理503において、状態記憶フラグfVSPLの値に応じてユーザーA,B固有の運転状態を記憶したか否かの判定を行う。処理503において、状態記憶フラグのビットfVSPL(#bA)がセット(=1)されている場合には処理504に進み、処理504において曲率Rkにおけるカーブ進入時のユーザーA目標速度TVSPLA[Rk]の更新処理を行う。具体的には(1)式に示すような重み付け処理により更新処理を行う。ここで、TVSPLA[Rk](n−1)は更新前のユーザーA目標速度であり、TVSPLA[Rk](n)は更新後のユーザーA目標速度である。(1)式の重みKAの値に応じて速度学習値の反映度合いを調整することが可能となる。処理504においてカーブ進入時の目標速度の更新を行った後は、処理505において状態記憶フラグのビットfVSPL(#bA)をクリア(=0)して処理を終了する。
また、処理503において、状態記憶フラグのビットfVSPL(#bB)がセット(=1)されている場合には処理506に進み、処理506において曲率Rkにおけるカーブ進入時のユーザーB目標速度TVSPLB[Rk]の更新処理を行う。具体的には(2)式に示すような重み付け処理により更新処理を行う。ここで、TVSPLB[Rk](n−1)は更新前のユーザーB目標速度であり、TVSPLB[Rk](n)は更新後のユーザーB目標速度である。(2)式の重みKBの値に応じて速度学習値の反映度合いを調整することが可能となる。処理506においてカーブ進入時の第2の目標速度の更新を行った後は、処理507において状態記憶フラグのビットfVSPL(#bB)をクリア(=0)して処理を終了する。
TVSPLA[Rk](n)=TVSPLA[Rk](n−1)×(1−KA)+VSPLA[Rk]×KA …(1)
TVSPLB[Rk](n)=TVSPLB[Rk](n−1)×(1−KB)+VSPLB[Rk]×KB …(2)
以上説明したように、図5に示した処理により、複数の運転者の嗜好に合致するようにカーブ進入時の目標速度を演算することが可能となる。また、(1),(2)式の重みKA,KBを運転者の操作によって変更可能なように設定することで、速度学習値の反映度合いを調整することができるため、運転者の嗜好をより満足させることが可能となる。
図6は、自車前方に曲率半径Rkを検出した場合における目標速度設定手段300の処理内容を示すフローチャートである。
まず、処理601において、ユーザー情報NUM_USER,ユーザーA目標速度TVSPLA[Rk],ユーザーB目標速度TVSPLB[Rk]等のパラメータを読み込み、処理602においてユーザー情報の判定を行う。処理602において、NUM_USER=1の場合にはユーザーAが運転中と判断して処理603に進み、処理603においてカーブ進入時の目標速度VinにユーザーA目標速度TVSPLA[Rk]を代入して処理606に進む。処理602において、速度学習値NUM_USER=2の場合にはユーザーBが運転中と判断して処理604に進み、処理604においてカーブ進入時の目標速度VinにユーザーB目標速度TVSPLB[Rk]を代入して処理606に進む。また、処理602において、NUM_USER≠1,2の場合にはユーザーA,B以外が運転中と判断して処理605に進み、処理605においてカーブ進入時の目標速度Vinにカーブ進入時目標速度(基準値)TVSPLO[Rk]を代入して処理606に進む。次に、処理606において、速度VSPとカーブ進入時の目標速度Vinに応じて減速距離Xを演算する。減速距離Xは、車速VSPからカーブ進入時の目標速度Vinまで所定の減速度で減速する場合に必要な距離を示している。減速距離Xは(3)式により求められる。
X=1/2×A1×T2+Vs×T+(Va2−Vin2)÷(2×A2) …(3)
ここで、A1は初期のエンジンブレーキを想定した減速度であり、A2はフットブレーキを想定した減速度である。また、Tは減速度A1を継続する時間であり、運転者がアクセルペダルからブレーキペダルに踏み変える時間を考慮して設定することが望ましい。また、Vsは減速開始時の速度を示しており、Vaは初期の減速が終了したときの速度である。速度Vaは減速度A1,時間Tを用いて(4)式で表される。
Va=Vs−A1・T …(4)
処理606において減速距離Xが演算された後は処理607に進み、処理607においてカーブ到達距離Dを演算する。カーブ到達距離Dは、GPS受信機の信号と地図DBに応じて検出されたカーブの入口と自車位置までの距離を示しており、GPS受信機の信号に応じて演算された自車位置と地図DBに応じて演算される。
処理607においてカーブ到達距離Dが演算された後は処理608に進み、処理608において減速距離Xとカーブ到達距離Dの大小関係を比較して減速開始地点に到達したか否かの判定を行う。処理608において減速距離Xがカーブ到達距離Dよりも小さく、減速開始地点に到達していないと判定された場合には処理609に進み、処理609において制御タイマtのクリア処理(=0)を行い、処理610において第2の目標速度TVSPにセット車速VSPSETを代入して処理を終了する。
処理608において減速距離Xがカーブ到達距離D以上となり、減速開始地点に到達したと判定された場合には処理611に進み、処理611において制御タイマtのインクリメント処理を行い、処理612に進む。処理612において、制御タイマtが時間Tよりも小さい場合には処理613に進み、処理613においてエンジンブレーキを想定した減速度により第2の目標速度TVSPを演算して処理を終了する。処理613における第2の目標速度TVSPの演算は(5)式により実行される。ただし、第2の目標速度TVSPの下限を、初期の減速が終了したときの速度Vaで制限する。
TVSP(n)=TVSP(n-1)−A1・t …(5)
処理612において、制御タイマtが時間T以上となった場合には処理614に進み、処理614においてフットブレーキを想定した減速度により第2の目標速度を演算して処理を終了する。処理614における第2の目標速度TVSPの演算は(6)式により実行される。ただし、第2の目標速度TVSPの下限を、カーブ進入時の目標速度Vinで制限する。
TVSP(n)=TVSP(n-1)−A2・t …(6)
以上説明したように、図6に示した処理により、複数の運転者の嗜好に合致するように第2の目標速度の設定を行うことが可能となる。
次に、図7を用いて、目標速度設定手段300により演算された目標速度から目標ギア位置TGP,目標エンジントルクTTENG,目標ブレーキ圧力TPBRK等の目標パラメータを演算する方法について説明する。
図7は、目標パラメータの演算方法を示すブロック図である。
目標パラメータ演算手段700には、目標速度設定手段300により演算された目標速度と車速が入力され、制動・駆動トルク演算部701において目標速度と車速の偏差に応じて車両駆動軸に要求される駆動軸要求トルク(制動トルクを含む)を演算する。駆動軸要求トルクは、正の値が駆動トルク、負の値が制動トルクになる。なお、駆動軸要求トルクは、フィードバック制御等を用いて目標速度と車速の偏差が小さくなるように演算されることが望ましい。目標パラメータ演算部702では、制動・駆動トルク演算部701において演算された駆動軸要求トルクと変速機の現在ギア位置に応じて目標ギア位置TGP,目標エンジントルクTTENG,目標ブレーキ圧力TPBRKを演算する。例えば、駆動軸要求トルクと現在ギア位置の変速比に応じて目標エンジントルクを演算し、演算された目標エンジントルクが不適切な場合には、適切なエンジントルクを実現するために目標ギア位置を変更する。
以上説明したように、第1の走行モードにおいては、目標パラメータ演算手段700により演算された目標ギア位置TGP,目標エンジントルクTTENG,目標ブレーキ圧力TPBRKに応じて変速機,エンジン,ブレーキがそれぞれ制御されるため、目標速度設定手段300にて設定された目標速度に車速を追従させることが可能となる。
次に、図8を用いて、本発明の効果について説明する。
図8は、自車前方にカーブを検出した場合の第2の目標速度の軌道を示すチャートである。
図2および図3で説明したように、カーブ進入時の第2の目標速度の更新処理が行われる前は、カーブ進入時の目標速度が基準値TVSPL0[Rk]に設定され、目標速度設定手段300により図の点線810で示すような第2の目標速度に設定される。まず、図のS0点で1回目の減速が開始され、図のA0点で2回目の減速に移行し、図のB点でカーブ進入時の目標速度が基準値TVSPL0[Rk]となる。
次に、ユーザーAが運転した場合の目標軌道の設定方法について説明する。
ユーザーAがスイッチ11aを押し、ユーザーインターフェース11によりユーザー情報としてNUM_USER=1となった場合を想定する。ACCスイッチ30がオフ状態のとき、すなわち通常運転時(走行モードMODE=2)において、曲率半径がRkの近傍にあるカーブを図の実線801で示すような速度軌道で走行した場合には、状態記憶手段29によりカーブ走行時の車速VSPを記憶し、ユーザーAの第2の目標車速TVSPLA[Rk]の更新処理を行う。その後、ACCスイッチ30がオン状態となり、すなわち速度制御時(走行モードMODE=1)に切り替わり、曲率半径がRkの近傍にあるカーブを検出すると、目標速度設定手段300により図の破線811で示すような第2の目標速度に設定される。すなわち図のS1点で1回目の減速が開始され、図のA1点で2回目の減速に移行し、図のB点でカーブ進入時の目標速度が基準値TVSPLA[Rk]となる。このとき、(1)式で示すように、ユーザーAの第2の目標車速TVSPLA[Rk]は重みKAに応じて更新されるため、所定の割合で図の実線801で示す通常運転時(走行モードMODE=2)の速度軌道に近づく。
次に、ユーザーBが運転した場合の目標軌道の設定方法について説明する。
ユーザーBがスイッチ11bを押し、ユーザーインターフェース11によりユーザー情報としてNUM_USER=2となった場合を想定する。ACCスイッチ30がオフ状態のとき、すなわち通常運転時(走行モードMODE=2)において、曲率半径がRkの近傍にあるカーブを図の実線802で示すような速度軌道で走行した場合には、状態記憶手段29によりカーブ走行時の車速VSPを記憶し、ユーザーBの第2の目標車速TVSPLB[Rk]の更新処理を行う。その後、ACCスイッチ30がオン状態となり、すなわち速度制御時(走行モードMODE=1)に切り替わり、曲率半径がRkの近傍にあるカーブを検出すると、目標速度設定手段300により図の破線812で示すような第2の目標速度に設定される。すなわち図のS2点で1回目の減速が開始され、図のA2点で2回目の減速に移行し、図のB点でカーブ進入時の目標速度が基準値TVSPLB[Rk]となる。このとき、(2)式で示すように、ユーザーBの第2の目標車速TVSPLB[Rk]は重みKBに応じて更新されるため、所定の割合で図の実線802で示す通常運転時(走行モードMODE=2)の速度軌道に近づく。
以上説明したように、ユーザーインターフェース11により複数の運転者を簡易な方法で識別でき、通常運転時(走行モードMODE=2)における車両の状態パラメータ(車速VSP)を記憶することにより、カーブ進入時の目標速度の更新処理を実行でき、複数の運転者の嗜好に応じた速度制御が可能となる。
また、更新処理においては、図5で説明した方式の他に、カーブ走行時における車速の平均値を利用したり、カーブ進入時と脱出時には更新処理を行わないことが望ましい。これは、運転者の操作や周囲の状況によって、カーブ走行中に車両挙動が不安定になると、上記更新処理によって運転者が望まない特性を反映させてしまう可能性があり、運転者の嗜好を忠実に反映させることが困難となるためである。したがって、「自車位置がカーブ入口/出口付近で無いこと」や「加減速度が所定値以下」、「アクセルペダル踏込量/ブレーキ踏力の変化量が所定値以下」という条件のもとでこれらの更新処理を行うことが望ましい。
次に、図9を用いて、自車前方のカーブを検出して速度制御を行っている途中に、自車前方に先行車が割り込んできた場合の制御方法について説明する。
図9は、カーブ曲率半径の情報に応じて事前に車両を減速させる際に、先行車割り込みが発生した場合の概略図である。
図9においては、図2と同様に、直線路201とカーブ路202から構成されている道路200を車両210が走行している場合を想定している。
まず、図のG点において、車載端末装置10がGPS受信機から出力される自車位置の情報と地図DBに応じて前方のカーブ路202を検出すると、走行制御装置20がカーブ到達距離D(図のB点で示すカーブ路202の入口から自車位置までの距離)を演算する。また、走行制御装置20は、前方のカーブ路202が検出されると、曲率半径Rkの値に応じてカーブ進入時の第2の目標速度Vinを演算し、演算された目標速度Vinに応じて減速距離X(現在の車速あるいは直線路201に応じて設定された速度から、カーブ進入時の速度まで減速するために必要な距離)を演算する。
次に、図のS点(速度Vs)において、カーブ到達距離Dが減速距離X以下になると、図2で説明したように、図の実線203で示すカーブ曲率半径の情報に応じた第2の目標速度が走行制御装置20により演算され、この第2の目標速度に応じて車両の減速が開始される。
その後、図のSx点において、車線変更や急減速等により先行車910が割り込んできた場合には、レーダ,カメラ等の車間距離検出手段により車間距離が検出される。車間距離検出手段により自車前方に先行車が認識された場合には、点線913で示す先行車910の速度Vfを算出し速度Vfに応じた目標速度(第1の目標速度)を設定し、設定された第1の目標速度に応じて自車の速度を制御して先行車910との車間距離を所定の値に保つ必要がある。このとき、点線913で示す先行車910の速度Vfよりも図の実線203で示すカーブ曲率半径の情報に応じた目標速度(第2の目標速度)が高くなっているため、この目標速度(第2の目標速度)に応じて自車の速度を制御すると自車210が先行車910に追突する可能性がある。したがって、図のSx点から図のC点の間、すなわちカーブ曲率半径の情報に応じた目標速度(第2の目標速度)が先行車910の速度Vfよりも高くなっている場合は、先行車910の速度Vfに応じて設定された目標速度(第1の目標速度)を基準値として選択し、選択された基準値に応じて目標速度の設定を行い、設定された目標速度に応じて自車の速度を制御することが望ましい。
また、図のC点以降において、先行車910が速度を低下させずに速度Vfでの走行を継続した場合、すなわち図の点線913で示す先行車910の速度Vfよりも図の実線203で示すカーブ曲率半径の情報に応じた目標速度(第2の目標速度)が低くなった場合には、先行車910の速度Vfに応じて設定された目標速度(第1の目標速度)に応じて自車の速度を制御すると前方のカーブ路202において適切な速度で走行できず、乗員に違和感を与える可能性がある。したがって、図のC点以降においては、すなわち先行車910の速度Vfに応じて設定された目標速度(第1の目標速度)がカーブ曲率半径の情報に応じた目標速度(第2の目標速度)よりも高くなっている場合は、カーブ曲率半径の情報に応じた目標速度(第2の目標速度)を基準値として選択し、選択された基準値に応じて目標速度の設定を行い、設定された目標速度に応じて自車の速度を制御することが望ましい。
以上説明したように、カーブ曲率半径の情報に応じて事前に車両を減速させる際に、先行車割り込みが発生した場合には、先行車910の速度Vfに応じて設定された目標速度(第1の目標速度)とカーブ曲率半径の情報に応じた目標速度(第2の目標速度)の低い方を基準値として選択し、選択された基準値に応じて目標速度の設定を行う。すなわち図の破線903で示すような目標速度を設定し、設定された目標速度に応じて自車の速度を制御することにより快適性および安全性を保つことが可能となる。
次に、図10を用いて、自車前方のカーブを検出して速度制御を行っている途中に、自車前方に先行車が割り込み、その後、先行車の車線変更等により自車前方に先行車が認識されなくなった場合の制御方法について説明する。
図10は、カーブ曲率半径の情報に応じて事前に車両を減速させる際に、先行車割り込みが発生し、所定時間経過後に先行車が認識されなくなった場合の概略図である。
図10においては、図2,図9と同様に、直線路201とカーブ路202から構成されている道路200を車両210が走行している場合を想定しており、図のY点までの制御は図9で示した実施例と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
図10において、図のSx点から図のY点までの間は、図9と同様に自車前方に先行車910が認識されているため、図9で説明したとおり、図の点線913で示す先行車910の速度Vfに応じた目標速度(第1の目標速度)に応じて自車の速度を制御している。この制御を行っているモードを第1の制御モードと定義する。
その後、図のY点において、車線変更や急加速等により先行車910が認識されなくなった場合には、自車前方に先行車が存在しないため、図の実線203で示すカーブ曲率半径の情報に応じた目標速度(第2の目標速度)に応じて自車の速度を制御する必要がある。この制御を行っているモードを第2の制御モードと定義する。
ここで、図のY点において、第1の制御モードから第2の制御モードへの遷移が発生した場合には、図の実線矢印1001で示すように、目標速度がステップ的に変化するため、自車が一時的に加速され、その後減速に転じる。すなわち、短時間で加速感と減速感を乗員に与えることになり、快適性が著しく低下することが懸念される。
したがって、図のY点(先行車910が認識されなくなる点)の前後では、目標速度を緩やかに変化させて自車の速度の急変を防止する必要がある。つまり、第1の制御モードから第2の制御モードに遷移する図のY点の前後では、先行車910の速度Vfに応じて設定された目標速度(第1の目標速度)から所定の範囲内で目標速度の設定を行い、設定された目標速度に応じて自車の速度を制御することが望ましい。例えば、図10の破線1003で示すように、先行車910が認識されなくなった図のY点から、カーブ曲率半径の情報に応じた目標速度(第2の目標速度)が先行車910の速度Vfに応じて設定された目標速度(第1の目標速度)まで低下する図のCx点までは、第1の制御モードにて設定された目標速度(第1の目標速度)を所定時間継続する。
以上説明したように、カーブ曲率半径の情報に応じて事前に車両を減速させる際に、先行車割り込みが発生し、所定時間経過後に先行車が認識されなくなった場合には、先行車910の速度Vfに応じて設定された目標速度(第1の目標速度)から所定範囲内に目標速度を設定する。すなわち図の破線1003で示すような目標速度を設定し、設定された目標速度に応じて自車の速度を制御することにより快適性を保つことが可能となる。
また、図10においては、第1の制御モードと第2の制御モードの切り替え前後で、先行車910の速度Vfに応じて設定された目標速度(第1の目標速度)を所定時間継続する方法について説明したが、所定の変化量上限値を用いて目標速度を変化させても良い。例えば、乗員に違和感を与えない程度の変化量上限値を設け、図のY点から目標速度を緩やかに上昇させても良いし、カーブ進入時目標速度Vinを下限値として、図の一点鎖線で示すように、図のY点から目標速度を徐々に低下させても良い。
なお、本実施例においては、地図情報から道路形状を抽出し、抽出された道路形状に応じて自車を制御するシステムの一例として、カーブ前に事前に速度を制御するシステムを記載したが、地図情報から停止線,スクールゾーン,制限速度の情報などを抽出し、抽出された情報に応じて自車の速度を制御するシステムにも本発明は適用可能である。例えば、停止線情報に応じて減速・停止制御を行うシステムでは、地図情報に応じて停止線を認識し、認識された停止線に応じて自車の目標速度を設定する。すなわち、本実施例のカーブ進入時目標速度を停止線の目標速度、すなわち0km/hに設定する。設定された目標速度に応じて自車の速度を制御することにより停止線に応じた減速・停止制御を行うことができる。このシステムにおいては、通常運転時、すなわち運転者の操作によって生成された信号に応じて自車の制御を行っている走行モード(MODE=2)において、減速・停止の際の自車の速度を記憶し、記憶された速度に応じて上述の地図情報に応じた減速・停止制御を行うことにより運転者の違和感を低減できる。
また、地図情報から停止線,スクールゾーン,制限速度の情報などを抽出し、抽出された情報に応じて自車の速度を制御するシステムにおいても、本実施例の図9,図10で説明した従来ACCの先行車追従制御と地図情報に応じた速度制御の切り替え制御方法が適用可能であることはいうまでもない。
図11は、本発明の実施例2による自動車の走行制御装置の概略図である。
まず、車載端末装置10の構成と処理内容について説明する。車載端末装置10は、道路情報取得手段51、モード選択スイッチ52、及び情報報知手段53を備え、車載端末装置10の図示しないコンピュータにプログラミングされ、予め定められた周期で繰り返し実行される。
道路情報取得手段51は、車両に搭載されたGPS(Global Positioning System:衛星航法システム)受信機から出力された自車位置の信号を取得する。また、地図DB(Data Base)もしくはインフラストラクチャ等との通信により自車周辺の道路情報を取得し、取得した道路情報は車内LAN(Local Area Network)等の通信手段を用いて走行制御装置20に出力される。ここで、道路情報取得手段51により取得する道路情報は、例えば、自車の進行に影響を与える可能性のある区間における、(1)自然条件、(2)時刻情報、及び(3)路線情報などから成る。自然条件としては、過去の履歴を含めて天候(晴天,降雨,降雪,霧などの情報とその程度),視界,路面状態(路面の摩擦係数),気温,湿度などである。時刻情報には、時刻のほか、季節情報等も含まれる。路線情報には、カーブや勾配情報(カーブ曲率半径,カーブの横断勾配,勾配傾斜角等),規制速度,速度規制情報(工事,事故等),渋滞情報、料金所,分岐・合流の有無と位置(情報の種類によっては開始位置と終了位置又は区間長)に関する情報等である。
モード選択スイッチ52は、ドライバーによって選択操作され、次の4つのモードの中から、1つを選択できる操作手段である。この実施例においては、第1の走行モードである各種の目標速度に基く速度制御モードの中で、まず、(1)設定目標速度に基く定速運転に、先行車との車間距離制御を付加した第1の制御モードである。すなわち、ACC(Adaptive Cruise Control:車間距離適応型速度制御)と呼ばれ、運転者が設定した目標速度に応じて制御する従来のCC(Cruise Control:速度制御)に、先行車との車間距離を保つ制御機能を付加した制御モードである。次に、(2)カーブ等の道路状況に基く第2の制御モードである。また、(3)これら第1,第2の制御モード併用のモードがある。さらに、(4)前述した第2の走行モードである手動運転を選択することができる。
情報報知手段53は、現在の走行及び制御モード、道路前方のカーブ等の状況案内、先行車存在の警告表示、第1,第2の制御モードでの目標速度、並びに、減速の事前案内などをドライバーに分かり易く音声や画面で報知する。
なお、車載端末装置10として、例えば、目的地までの経路を乗員に報知するカーナビゲーションシステムを用いることができる。
車間距離検出手段6は、車両に搭載されたカメラやレーダ等により先行車との車間距離を検出し、検出した車間距離は、車内LAN等の通信手段を用いて走行制御装置20に出力される。
次に、走行制御装置20の構成と処理内容について説明する。
走行制御装置20は、第1の目標速度演算手段2,第2の目標速度演算手段3,目標速度選択手段211、速度制御手段22(図7では700相当)を備え、図示しないコンピュータにプログラミングされた処理を、予め定められた周期で繰り返し実行する。速度制御手段22は、制動・駆動トルク演算部701及び目標パラメータ演算部702から成る。
第1の目標速度演算手段2は、前述したように、定速運転の設定目標速度に加え、車間距離検出手段6により検出された車間距離に応じた速度制限を付加した第1の目標速度を演算する。例えば、車間距離が縮まり続けている場合には、目標速度を小さくして車間距離が広がるようにし、基本的には所定の車間距離を維持するように目標速度を演算する。この演算方法自体は、ACCの基本機能であるとともに、公知技術であるため、詳細は割愛する。
第2の目標速度演算手段3は、道路情報取得手段51により取得した道路情報に応じて第2の目標速度を演算する。基本的には、現在走行中の道路の規制速度又は設定された定速運転速度を目標速度とし、進路前方にカーブ路が検出された場合には、自車がそのカーブ路を安全に通過することのできる第2の目標速度を演算する。このとき、取得された道路情報に対して第2の目標速度を演算する検索範囲は、自車が所定の減速度で減速した際に、現在の速度から停止するまでに要する距離とすることが望ましい。例えば、所定の減速度を、運転者が、だらだらとした感覚を抱かない減速度とし、これによって安全に停止できるまでの距離を求め、その減速範囲内を検索することが望ましい。さらに、コンピュータのROM(Read Only Memory)容量から検索範囲を決定してもよい。すなわち、コンピュータのROM容量や演算時間を少なくし、かつ自車が安全に停止できるまでの範囲を検索範囲とすることが望ましい。
目標速度選択手段211は、ドライバーによって操作されたモード選択スイッチ52の状態に応じた目標速度を速度制御手段22へ出力する。すなわち、第1の制御モードでは、定速運転の設定目標速度に先行車との車間距離に基く制限を付加した第1の目標速度であり、第2の制御モードでは、カーブ等の道路状況に基く第2の目標速度である。また、これら第1,第2の制御モードの併用モードでは、第1,第2の目標速度の低位優先を採って、速度制御手段22へ出力する。さらに、第1の制御モードから第2の制御モードへの繋ぎの第3の制御モードでは、第1の目標速度から第2の目標速度へ切り替える際に、これらを繋ぐ第3の目標速度(パターン)を演算する。そして、この第3の目標速度を速度制御手段22へ出力し、この第3の目標速度パターンに沿って自車の速度を制御する。
速度制御手段22(図7の700相当)は、その制動・駆動トルク演算部701へ上記目標速度と、自車の車速を入力し、自車の速度が目標速度に近づくようにトルク指令を演算し、目標パラメータ演算部702へ出力する。
目標パラメータ演算部702では、得られたトルク指令に応じて、目標ギア位置TGP,目標エンジントルクTTENG,及び目標ブレーキ圧力TPBRKを演算し、変速機制御手段26,エンジン制御手段27,及びブレーキ制御手段28に指令する。すなわち、制動・駆動トルク演算部701において演算された駆動軸要求トルクと、変速機の現在ギア位置に応じて、目標ギア位置TGP,目標エンジントルクTTENG,及び目標ブレーキ圧力TPBRKを演算する。例えば、駆動軸要求トルクと現在ギア位置の変速比に応じて、目標エンジントルクを演算し、演算された目標エンジントルクが不適切な場合には、適切なエンジントルクを実現するために目標ギア位置を変更する。
変速機,エンジン,及びブレーキは、それぞれ、変速機制御手段26,エンジン制御手段27,及びブレーキ制御手段28により制御される。
このように、目標パラメータ演算部702により演算された目標ギア位置TGP,目標エンジントルクTTENG,及び目標ブレーキ圧力TPBRKに応じて変速機,エンジン,及びブレーキがそれぞれ制御される。このため、第1の目標速度演算手段2又は第2の目標速度演算手段3にて演算された第1又は第2の目標速度に車速を追従させることが可能となる。
次に、実施例2において第2の制御モードを選択した場合の、道路状況等に応じた第2の目標速度に応じて速度を制御する方法について説明する。
まず、図2で説明した前方にカーブが存在する状況における第2の制御モードによる第2の目標速度演算手段3における処理フローは、実施例1における図6と同様であり、重複説明は避ける。さらに、図9を用いて、実施例1で説明した自車前方のカーブを検出して速度制御を行っている途中に、自車前方に先行車が割り込んできた場合の制御方法についても、実施例1と同様である。
これらは、本発明の実施例2において、前述実施例1と共通する制御であるが、次に、実施例2による新たな制御動作について説明する。
図12は、本発明の実施例2における第1の制御モードから第2の制御モードへの遷移時の制御状況説明図である。まず、自車前方のカーブを検出して、第2の制御モードで速度制御を行っている最中に、自車前方に先行車が割り込み、第2の制御モードから第1の制御モードに切り替えて速度制御を行う。その後に、先行車の車線変更等により、自車前方に先行車が認識されなくなり、第1の制御モードから、再び、第2の制御モードに遷移する場合の制御である。
図12においては、図2,図9,及び図10と同様に、直線路201の前方にカーブ路202が存在する道路200を車両210が走行している場合を想定しており、Y点までの制御は、図9,及び図10に示した実施例と同様である。
図12において、Sx点からY点までの間は、図9や図10と同様に自車前方に先行車910が認識されているため、第1の制御モードにより、先行車910の速度Vfに応じた第1の目標速度913に応じて自車の速度を制御している。その後、Y点において、先行車910の車線変更や急加速等により、先行車910が認識されなくなった場合、第1の制御モードから、再び、第2の制御モードによるカーブ情報に応じた第2の目標速度203に応じて自車の速度を制御することとなる。
ここで、Y点において、第1の制御モードから第2の制御モードへの遷移が発生した場合、実線矢印1201で示すように、目標速度がステップ的に変化するため、自車が一時的に加速され、その後減速に転じる。このとき、短時間で、加速感と減速感を乗員に与えることになり、快適性が著しく低下する。
そこで、本制御例においては、先行車910が認識されなくなるY点の前後では、目標速度をパターン1203〜1205とし、緩やかに変化させて自車の速度の急変を防止するようにしている。つまり、第1の制御モードから第2の制御モードに遷移するY点の前後では、自車の加減速度が所定の範囲内になるように、目標速度(パターン)1203〜1205の設定を行い、設定された第3の目標速度(パターン)に応じて自車の速度を制御する。この制御モードを第3の制御モードと定義する。例えば、破線1203で示す目標速度パターンのように、先行車910が認識されなくなったY点から、第3の制御モードに遷移させ、第3の目標速度を設定する。すなわち、カーブ曲率半径の情報に応じた第2の目標速度203に向かって所定の範囲内となる加速度で一旦加速し、自車の速度の急変を防止するために、C1点から一旦加速を中止し、第2の目標速度203に到達するC2点までの区間は定速走行させる。その後、第2の目標速度203に到達するC2点から、再び、第2の制御モードに遷移し、第2の目標速度203に応じて自車の速度を制御する。
このように、第1の制御モードから第2の制御モードに遷移する前後で、第3の目標速度(パターン)1203〜1205を挟んで第2の制御モードに遷移させる。
ここで、第3の制御モードにおいては、自車の加減速度が所定の範囲内になるような第3の目標速度(パターン)1203〜1205に応じて自車の速度を制御する。ここでの加減速度の設定範囲は、ACCにて規定されている値を採用することが望ましい。具体的には、JIS(Japanese Industrial Standards:日本工業規格)にて定められている。JIS規格番号:JIS D 0801には、「平均自動減速度は、3.0m/s2を超えてはならない」、並びに「ACCシステムの自動加速度は2.0m/s2を超えてはならない」とある。このため、第3の制御モードにおける加速度は、2.0m/s2以内,減速度は、3.0m/s2以内とすることが望ましい。このように既存のシステム(ACC)における許容範囲内の加減速度を設定することで、安全性を確保し、かつ規格に従った速度制御が可能となる。
また、加速感と減速感の感じ方は運転者毎に異なるため、予め運転者が違和感を覚えない加減速度を設定しても良く、その設定手段は、車載端末装置10にタッチパネルなどを備え付け、運転者自身が好みの値を設定しても良い。さらに、運転者自身が好みの値を設定するのではなく、通常運転時の加減速度を記憶し、記憶した値を用いて目標速度を設定する学習制御としても良い。このように加減速度の設定を行うことで、複数の運転者の嗜好に合致した速度制御が可能となる。
以上説明したように、カーブ情報に応じて事前に車両を減速中に、先行車割り込みが発生し、さらに、その後、先行車が車線変更により認識されなくなった場合、第1の目標速度から、加減速度を制限した第3の目標速度を挟んで、第2の目標速度に移行させる。すなわち、先行車910の速度Vfに応じて設定された第1の目標速度1202から、加減速度が所定の範囲の第3の目標速度(パターン)1203〜1205を挟んで、第2の目標速度203に移行させる。この第3の目標速度(パターン)1203〜1205に応じて自車の速度を制御することにより、快適性を保つことが可能となる。
第3の目標速度パターンとしては、一点鎖線1204で示すように、Y点から、先行車910の速度Vfに応じて設定された第1の目標速度を所定時間継続させても良い。また、二点鎖線1205で示すように、カーブ進入時の目標速度Vinを下限値として、Y点から目標速度を徐々に低下させても良い。さらに、破線1203のC1点からC2点までの区間は定速走行ではなく、乗員に違和感を与えない程度の変化量上限値を設け、Y点から目標速度を緩やかに上昇させ、C2点に到達する前から、目標速度を緩やかに下降させても良い(図示せず)。
以上のように、図12において、第1の制御モードから第2の制御モードへ切り替える際の目標速度設定方法を説明したが、自車の加減速度が所定の範囲内になるような目標速度の設定はこの限りでなく、様々なパターンが存在することは言うまでもない。
以上、本発明の実施例2における第1の制御例においては、自車前方のカーブを検出して速度制御中に、自車前方に先行車が割り込み、さらにその後、先行車が認識されなくなった場合の制御方法について説明した。しかし、先行車を継続して認識し続ける場合にも、本発明は適用可能である。
次に、本発明の実施例2における第2の制御例として、自車前方のカーブを検出し第2の制御モードの最中に、先行車が割り込み第1の制御モードに遷移し、さらにその後、先行車が加速し、先行車が認識されなくなった場合の制御方法について説明する。
図13は、本発明の実施例2において、第1の制御モードから第2の制御モードへの遷移時の第2の制御例の制御状況説明図である。
図13においては、図12と同様に、直線路201とカーブ路202から構成されている道路200を車両210が走行している場合を想定しており、Y点までの制御は、図12で示した制御例と同様であり、重複説明は避ける。
図13において、Sx点からY点までの間は、図12と同様に自車前方に先行車910が認識されているため、第1の制御モードにより、図12で説明した通り、破線1313で示す先行車910の速度Vfに応じた第1の目標速度に応じて速度制御している。
その後、Y点において、先行車910が加速を開始し、先行車910の速度Vfが第1の目標速度203で示すカーブ曲率半径の情報に応じた速度を超えた場合、第1の制御モードを継続し続けると、実線矢印1301で示すように、自車が一時的に加速される。その後、減速に転じるが、短時間で、加速感と減速間を乗員に与えることになり、快適性が著しく低下することが懸念される。
したがって、Y点を経過した後は、目標速度を緩やかに変化させて自車の速度の急変を防止する。つまり、第1の制御モードから第2の制御モードに遷移するY点以降では、第3の制御モードにより、自車の加減速度が所定の範囲内に収まるように第3の目標速度(パターン)1303の設定を行い、設定された第3の目標速度1303に応じて自車の速度を制御する。例えば、先行車910が加速を開始したY点から第3の制御モードに遷移し、破線1303で示すように、カーブ情報に応じた第2の目標速度203に向かって所定の加速度で一旦加速させる。その後、速度の急変を防止するため、C1点から一旦加速を中止し、第2の目標速度203に到達するC2点までの区間は定速走行させる。その後、第2の目標速度203に到達するC2点から、再び、第2の制御モードに遷移し、第2の目標速度203に応じて自車の速度を制御する。このように、第1の制御モードから第2の制御モードに遷移時に、第3の目標速度(パターン)1303を介在させて速度を制御する。
ただし、図13での第3の制御モードにおいて設定される第3の目標速度は、追突を防ぐために、先行車910の速度Vfに応じた第1の目標速度1313を超えてはならず、第3の目標速度は、第1の目標速度1313の情報を利用して演算するものとする。
以上説明したように、カーブ情報に応じて事前に車両を減速中に、先行車割り込みが発生し、さらにその後、先行車が加速を開始し認識されなくなった場合、第1の目標速度から、第3の目標速度1303を挟んで、第2の目標速度203に移行させる。すなわち、先行車910の速度Vfに応じて設定された第1の目標速度から、加減速度が所定の範囲の第3の目標速度1303を挟み、加減速度の急変を抑え、第2の目標速度203に移行させる。これにより、ドライバーの快適性を保つことが可能となる。
また、図13においては、第1の制御モードから第2の制御モードへ切り替える際に、破線1303に示す第3の目標速度パターンを設定する方法について説明したが、その他にも、以下に示す方法にて実施しても良い。しかし、図12の場合と同様に、乗員に違和感を与えない範囲で様々な第3の目標速度(パターン)の設定方法があることは言うまでもない。
図14は、本発明の実施例2における第3の制御例として、図12に示した第1の制御例において、先行車の速度Vfがカーブ進入時の目標速度Vinより低い場合の制御状況説明図である。
第1の制御例と同様に、Y点において、第1の制御モードから第2の制御モードへの遷移が発生した場合には、実線矢印1401で示すように、目標速度がステップ的に変化するため、自車が一時的に加速され、その後減速に転じる。すなわち、短時間で加速感と減速感を乗員に与えることになり、快適性が著しく低下することが懸念される。
そこで、Y点の前後では、第1の制御例と同様に、例えば、破線1403で示す第3の目標速度パターンのように、自車の加減速度が所定の範囲内になるように自車の速度を制御する。また、一点鎖線1404で示す第3の目標速度パターンのように、第2の制御モードにおけるカーブ進入時の目標速度Vinを上限として一旦加速し、その後は、Vinを目標速度として所定時間継続させても良い。さらには、二点鎖線1405で示す第3の目標速度パターンのように、Y点から先行車910の速度Vfに応じて設定された目標速度を所定時間継続した後に、速度Vinを上限として徐々に加速させても良い。
以上説明したように、カーブ情報に応じて事前に車両を減速中に、先行車割り込みが発生し、さらにその後、先行車が加速を開始し認識されなくなった場合、第1の目標速度から、第3の目標速度1403〜1405を挟んで、第2の目標速度203に移行させる。すなわち、先行車910の速度Vfに応じて設定された第1の目標速度から、加減速度が所定の範囲の第3の目標速度1403〜1405を挟み、加減速度の急変を抑え、第2の目標速度203に移行させる。これにより、ドライバーの快適性を保つことが可能となる。
なお、本発明の実施例2の第1〜第3の制御例(図12〜14)においては、道路情報取得手段51により道路情報を取得し、取得された道路情報に応じて自車の速度を制御するシステムの一例として、カーブ前に事前に速度を制御する状況を説明した。しかし、カーブに限らず、道路情報からT字路や十字路などの交差点,停止線,スクールゾーン,あるいは制限速度などの情報を取得し、取得された情報に応じて自車の速度を制御する状況においても、本発明が適用可能である。
次に、本発明の実施例2における第4の制御例としてT字路を例に採って説明する。
図15は、本発明の実施例2における第4の制御例として、先行車を追従しながらT字路における一時停止線の情報に応じて事前に車両を減速中に、先行車が左折した場合の制御状況説明図である。図においては、直線路1501が直線路1502にぶつかるT字路1500における、直線路1501を車両210が走行している場合を想定している。
まず、G点において、車載端末装置10がGPS受信機から出力される自車位置の情報と地図DBに応じて、前方のT字路1503における一時停止線1504を検出したとする。すると、走行制御装置20は、一時停止線1504における目標速度Vinを設定する。この場合、一時停止線であるから目標速度は、0km/hに設定される。次に、走行制御装置20は、自車位置から、B点で示す一時停止線1504までの距離、すなわち一時停止線到達距離Dを演算する。また、走行制御装置20は、設定された目標速度Vinに応じて、減速距離Xを演算する。減速距離Xは、現在の車速あるいは直線路1501に応じて設定された速度から、一時停止線1504で停止するまでの減速に必要な距離である。
次に、S点(速度Vs)において、一時停止線到達距離Dが減速距離X以下になると、図2の場合と同様に、走行制御装置20によって、一時停止線の情報に応じた第2の目標速度1511が演算され、この目標速度に応じて車両の減速が開始される。これによって、設定された第2の目標速度1511に応じて自車の速度を制御することにより、一時停止線までの減速・停止制御を行うことができる。
さて、本制御例においては、G点に達する以前から、自車前方に先行車910を車間距離検出手段6により認識しているものとする。このため、破線1513で示す先行車910の速度Vfに応じた第1の目標速度を設定し、設定された目標速度1513に応じて自車の速度を制御して、先行車910との車間距離を所定の値に保っている。すなわち、前述同様、第1の制御モードである。
その後、Y点において、先行車910がT字路1503において、図の破線矢印1505のように左折することによって、先行車910が認識されなくなる。この場合には、一時停止線1504の情報に応じた第2の目標速度1511に応じて、自車の速度を制御する第2の制御モードに戻す必要がある。
ここで、Y点において、第1の制御モードから第2の制御モードへの遷移が発生した場合には、このままでは、実線矢印1520で示すように、目標速度がステップ的に変化するため、自車が一時的に加速され、その後減速に転じる。すなわち、短時間で加速感と減速感を乗員に与えることになり、快適性が著しく低下することが懸念される。
そこで、本制御例においては、先行車910が認識されなくなるY点の前後で、目標速度を緩やかに変化させて自車の速度の急変を防止する。つまり、第1の制御モードから第2の制御モードに遷移するY点の前後では、図14の実施例と同様に、自車の加減速度が所定の範囲内になるように第3の目標速度(パターン)1514〜1516の設定を行い、これに応じて自車の速度を制御する。すなわち、第3の制御モードである。例えば、破線1514で示すように、先行車910が認識されなくなったY点から、第3の制御モードに遷移させる。すなわち、一時停止線の情報に応じた第2の目標速度1511に向かって所定の範囲内となる加速度で一旦加速し、自車の速度の急変を防止するために、C1点から一旦加速を中止し、第2の目標速度1511に到達するC2点までの区間は定速走行させる。その後、第2の目標速度1511に到達するC2点から、再び、第2の制御モードに遷移し、第2の目標速度1511に応じて自車の速度を制御する。
このように、第1の制御モードから第2の制御モードに遷移する前後で、第3の目標速度1514〜1516を挟んで第2の制御モードに遷移し、第2の目標速度1511に応じて自車の速度を制御する。
ここで、第1の制御例(図12)において説明した通り、第3の制御モードにおける加減速度の設定範囲はACCにて規定されている値を採用することが望ましい。これにより、既存のシステム(ACC)における許容範囲内の加減速度を設定することで、安全性を確保し、かつ規格に従った速度制御が可能となる。
また、第1の制御例(図12)において説明した通り、加速感と減速感の感じ方は運転者毎に異なるため、予め運転者が違和感を覚えない加減速度を設定しても良い。さらに、運転者自身が好みの値を設定するのではなく、通常運転時の加減速度を記憶し、記憶した値を用いて目標速度を設定する学習制御としても良い。このように加減速度の設定を行うことで、複数の運転者の嗜好に合致した速度制御が可能となる。
以上説明したように、T字路における一時停止線の情報に応じて車両を減速中に、先行車が左折あるいは進路変更等により認識されなくなった場合に、設定された目標速度に応じて自車の速度を制御することにより快適性を保つことが可能となる。すなわち、先行車910の速度Vfに応じて設定された第1の目標速度1513から、加減速度が所定の範囲内の第3の目標速度1514〜1516に応じて自車の速度を制御することにより、快適性を保つことができる。
第3の目標速度としては、一点鎖線1515で示すように、Y点から先行車910の速度Vfに応じて設定された第1の目標速度を所定時間継続させても良い。また、二点鎖線1516で示すように、一時停止線目標速度Vin(=ゼロ)を下限値として、Y点から目標速度を徐々に低下させても良い。さらに、破線1514のC1点からC2点までの区間は定速走行ではなく、乗員に違和感を与えない程度の変化量上限値を設け、Y点から目標速度を緩やかに上昇させ、C2点に到達する前から、目標速度を緩やかに下降させても良い(図示せず)。
以上のように、図15において、第1の制御モードから第2の制御モードへ切り替える際の目標速度設定方法を説明したが、自車の加減速度が所定の範囲内になるような目標速度の設定はこの限りでなく、様々なパターンが存在することは言うまでもない。
さらに、図15における状況がT字路ではなく十字路であり、先行車が一時停止線を通過した後に加速を開始した場合にも、図15と同様な状況と考えられ、先行車の速度に応じた目標速度に追従し続けると、快適性が著しく低下することが懸念される。そこで、同様に、自車の加減速度が所定の範囲内になるように目標速度の設定を行い、設定された目標速度に応じて自車の速度を制御することが望ましい。これにより、快適性を保つことが可能となる。
以上、本発明の実施例2について説明したが、本発明は、以下に示す実施例3において実施してもよい。
図16は、本発明の実施例3による自動車の走行制御装置の概略図である。
実施例2における第1の制御モードが、車間距離検出手段6及び第1の目標速度演算手段3により第1の目標速度を設定するものであった。これに対し、実施例3では、第1の制御モードによる車間距離制御の代わりに、アクセルペダル踏込量やブレーキ踏力といった運転者の操作により生成される信号に応じて自車の速度を制御する手動運転、すなわち、第1の走行モードとしている。図16が、図11と異なる点は、走行制御装置20であり、以下にその構成と処理内容を説明する。
走行制御装置20は、第2の目標速度演算手段3、速度制御手段22(図7の700相当)によって構成され、図示しないコンピュータにプログラミングされ、予め定められた周期で繰り返し実行される。速度制御手段22は、制動・駆動トルク演算部701及び目標パラメータ演算部702から成る。
速度制御手段22の制動・駆動トルク演算部701は、第2の目標速度演算手段3により演算された第2の目標速度と、車速とを入力し、その偏差に応じて、この速度偏差を小さくするように、自車の速度を制御するためのトルク指令を演算する。そして、このトルク指令を目標パラメータ演算部702に出力する。目標パラメータ演算部702は、このトルク指令に応じて、目標ギア位置TGP,目標エンジントルクTTENG,及び目標ブレーキ圧力TPBRKを演算する。
第2の制御モードでは、これらにより、変速機制御手段26,エンジン制御手段27,及びブレーキ制御手段28に対して指令を行う。一方、第1の制御モードは存在せず、第1の走行モードである手動運転モードにおいては、アクセルペダル踏込量やブレーキ踏力といった運転者の操作により生成される手動運転トルク指令に応じて、制御される。すなわち、アクセルやブレーキペダル踏込に応じ、ブレーキ目標ギア位置TGP,目標エンジントルクTTENG,及び目標ブレーキ圧力TPBRKを演算する。そして、変速機制御手段26,エンジン制御手段27,及びブレーキ制御手段28に対して指令を行う。これらのモードを適切に切り替えることによって、自車の速度を制御する。
次に、図17を用いて、自車前方のカーブを検出して、そのカーブ曲率半径の情報に応じた目標速度よりも低い速度で運転者の手動操作による速度制御を行っている途中に、道路情報に応じた速度制御に切り替えた場合の制御方法について説明する。すなわち、手動運転である第2の走行モードから、第1の走行モードにおける第2の制御モードに切り替えた場合の制御方法である。
図17は、カーブ近傍において運転者の手動操作から道路情報に応じた速度制御に切り替えた場合の制御状況説明図である。図17は、図2と同様に、直線路201の前方にカーブ路202がある道路200の直線路201を車両210が走行している場合を想定している。
まず、運転者の手動操作により、破線1710で示す速度Vmにて、直線路201を走行している。すなわち、第2の走行モードである。
その後、G点において、図2の場合と同様に、走行制御装置20により、カーブ到達距離D,カーブ進入時の目標速度Vin,減速距離Xを演算し、実線203で示すカーブ曲率半径の情報に応じた第2の目標速度が演算される。
次に、Y点において、運転者が、モード選択スイッチ52の操作により、手動運転による第2の走行モードから、第1の走行モードにおける第2の制御モードである道路情報に応じた速度制御に切り替えたとする。この切り替えにより、実線203で示すカーブ曲率半径の情報に応じた第2の目標速度に応じて、自車の速度を制御する第2の制御モードとなる。
まず、このままでは、実線矢印1701で示すように、目標速度がステップ的に変化するため、自車が一時的に加速され、その後減速に転じる。すなわち、短時間で加速感と減速感を乗員に与えることになり、快適性が著しく低下することが懸念される。
そこで、Y点の前後では、第1の制御例(図12)の場合と同様に、例えば、破線1703,一点鎖線1704,あるいは二点鎖線1705で示す第3の目標速度(パターン)のように、自車の加減速度が所定の範囲となる第3の目標速度(パターン)の設定を行い、自車の速度を制御する。
このように、カーブ曲率半径の情報に応じた第2の目標速度よりも低い速度で運転者の手動操作による速度制御を行っている途中で、道路情報に応じた第2の制御モードに切り替えた場合、加減速度を所定範囲内に抑え目標速度の切り替えを行う。すなわち、破線1703,一点鎖線1704,又は二点鎖線1705で示すような第3の目標速度(パターン)を設定し、この目標速度に応じて速度を制御することにより、快適性を保つことが可能となる。
また、車載端末装置10に、上記の第1の走行モードにおける第2の制御モードと、第2の走行モードである手動運転との間に切り替えるモード選択スイッチ52を設けることで、運転者が望む制御モードへの切り替えが可能となる。具体的には、カーナビゲーションのタッチパネルにより操作したり、運転席周辺にモード選択スイッチ52を設けてそれを操作すれば良い。これにより、運転者の意図したタイミングで制御モードの切り替えが可能となり、操作性が向上する。
以上、本発明の実施例2及び実施例3においては、制御モードの切り替えが生じる場合に、自車の加減速度が所定の範囲内になるように自車の速度を制御する。しかし、加減速度の設定を行うのではなく、自車の駆動力乃至制動力(トルク)が所定の範囲内になるようにしても良い。また、加減速度の設定を行うのではなく、制御モードの切り替え前後で、運転者に違和感を抱かせない目標速度を直接設定しても快適性を保つことが可能となる。
なお、本発明の走行制御装置によって自動車の走行制御が行われている際に、自動車に搭載の車両安定化制御装置、例えば、VDC(Vehicle Dynamics Control)が作動した場合には、本発明の走行制御装置を中止し、運転者の手動による運転状態にする。同様に、ABS(Anti-lock Brake System)やTCS(Traction Control System)が作動した場合にも、本発明の走行制御装置による自動車の走行制御を中止することが望ましい。さらに、車載端末装置10において、GPS衛星を捕捉できていない状態や、マップマッチングが成立していない状態では、正確な道路情報が得られないため、本発明による走行制御を中止し、運転者の手動運転状態にすることが望ましい。マップマッチングとは、GPSにより検出された自車位置を論理的に道路上に合わせ込む技術である。また、GPS衛星を捕捉し、マップマッチングも成立している状態であっても、車載端末装置10が、位置精度が悪いと判断した場合にも、本発明の走行制御を中止し、運転者の手動運転状態にすることが望ましい。なお、本発明の走行制御を中止する際に、車載端末装置により運転者に対して警告音を発生させることで、安心感を向上できる。
また、カーナビゲーションに代表される車載端末装置10においては、道路情報取得手段5により取得した道路情報や、走行制御装置20により演算された各種情報を音声や液晶パネルなどを用いて乗員に報知する構成としても良い。例えば、自車前方の道路形状(カーブ路,勾配路など),料金所の有無,分岐・合流路の有無や、自車前方にカーブ路を検出した場合には、図2で説明したカーブ到達距離Dやカーブ進入時の目標速度Vinなどを乗員に報知する。
図18は、本発明の一実施例による乗員への情報報知手段の表示画面の一例である。
図18(A)は、定速設定速度及び道路状況に応じた第2の目標速度の表示例である。まず、定速走行運転(CC)の目標速度の設定値が80km/hと数字181で表示され、走行中に、カーブの手前にさしかかったとする。ここで、画面の左方には、前方の道路状況として、左に曲がるカーブの存在を示す矢印182を表示する。そして、このカーブへの進入安全速度、すなわち第2の目標速度を、50km/hであることを数字183で表示する。さらに、減速開始距離Xに近づくと、減速を開始する旨の案内表示184を行う。
図18(B)は、同図(A)に加え、先行車に注意が必要である旨の警報表示185と、先行車の速度が70km/hであること、すなわち、第1の目標速度あるいは、その上限を数字186で表示する。
これにより、事前に各種情報を乗員に報知できるため、乗員の安心感と安全性を向上することが可能となる。
本発明の実施例1に係る自動車の走行制御システムの概略図。
カーブ曲率半径の情報に応じて事前に車両を減速させる場合の概略図。
ユーザー情報と速度学習値から目標速度を演算するブロック図。
状態記憶手段29の処理内容を示すフローチャート。
カーブ進入時における目標速度の更新処理内容を示すフローチャート。
目標速度設定手段300の処理内容を示すフローチャート。
目標パラメータの演算方法を示すブロック図。
自車前方にカーブを検出した場合の目標速度の軌道を示すチャート。
カーブ曲率半径の情報に応じて事前に車両を減速させる際に、先行車割り込みが発生した場合の概略図。
カーブ曲率半径の情報に応じて事前に車両を減速させる際に、先行車割り込みが発生し、所定時間経過後に先行車が認識されなくなった場合の概略図。
本発明の実施例2による自動車の走行制御装置の概略図。
本発明の実施例2における第1の制御モードから第2の制御モードへの遷移時の制御状況説明図。
本発明の実施例2において、第1の制御モードから第2の制御モードへの遷移時の第2の制御例の制御状況説明図。
本発明の実施例2における第3の制御例として、図12に示した第1の制御例において、先行車の速度Vfがカーブ進入時の目標速度Vinより低い場合の制御状況説明図。
本発明の実施例2における第4の制御例として、先行車を追従しながらT字路における一時停止線の情報に応じて事前に車両を減速中に、先行車が左折した場合の制御状況説明図。
本発明の実施例3による自動車の走行制御装置の概略図。
カーブ近傍において運転者の手動操作から道路情報に応じた速度制御に切り替えた場合の制御状況説明図。
本発明の一実施例による乗員への情報報知手段の表示画面の一例図。
符号の説明
10…車載端末装置、11…ユーザーインターフェース、11a,11b…スイッチ、20…走行制御装置、21…走行モード切り換え手段、211…目標速度選択手段、22(700)…速度制御手段、23…目標ギア位置演算部、24…要求トルク演算部、25…ブレーキ圧力演算部、26…変速機制御手段、27…エンジン制御手段、28…ブレーキ制御手段、29…状態記憶手段、200…道路、201…直線路、202…カーブ路、210…自車両、300…目標速度設定手段、2…第1の目標速度演算手段、3…第2の目標速度演算手段、51…道路情報取得手段、52…モード選択スイッチ、53…情報報知手段、6…車間距離検出手段、700…目標パラメータ演算手段(速度制御手段)、701…制動・駆動トルク演算部、702…目標パラメータ演算部、910…先行車。