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JP2006215081A - 光学物品及び製造方法 - Google Patents

光学物品及び製造方法 Download PDF

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崇 野口
Munehiro Shibuya
宗裕 澁谷
Toshihito Kanai
利仁 金井
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Abstract

【課題】 耐熱性が向上した反射防止膜を有する光学物品及び製造方法を提供する。
【解決手段】 光学基板の表面に、SiO2層を下地層とし、その下地層の表面から順に、酸化ジルコニウム(ZrO2)に、酸化カルシウム(CaO2)、酸化マグネシウム(MgO2)、酸化イットリウム(Y23)、酸化ネオジウム(Nd23)の内の少なくとも一種以上が、安定化剤として添加された部分安定化または安定化ジルコニア層と、SiO2層とを交互に積層した多層膜からなる反射防止膜を形成する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、反射防止膜を有する光学物品及び製造方法に関し、特に反射防止膜の耐熱性の向上に関する。
近年、各種レンズ、携帯電話の表示板を始めとする各種ディスプレイのカバー等、光の透過を目的とした光学物品には、光の反射を抑制し、光の透過性を高めるために、光学物品の表面に反射防止膜が形成されている。特に、眼鏡やカメラ等のレンズにおいては、高い屈折率を有するレンズほど表面における光の反射率が上昇するため、屈折率の異なる薄膜を積層させて光の干渉作用を利用した反射防止膜が広く用いられている。
一般的に反射防止膜に用いられる物質は無機酸化物(金属酸化物)である。特に、SiO2層とZrO2層の膜厚を調節して、その層を交互に積層させ、広い帯域を持つ反射防止膜が多く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
また、光学物品とは異なるが、金属基材上に、少なくとも希土類元素で安定化された安定化ジルコニアなどを含むセラミック被膜層を形成することにより、遮熱効果を有する耐熱被膜部材が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2002−122820号公報 特開平9−287065号公報
しかしながら、特許文献1に記載されるZrO2層とSiO2層の多層から形成される反射防止膜は、ZrO2層の成膜の際に、ZrO2がマルテンサイト変態することによりマイクロクラックが発生して、耐熱性が低いという課題がある。
そこで本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、耐熱性が向上した反射防止膜を有する光学物品及び製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の光学物品は、光学基板の表面に、無機酸化物の多層膜からなる反射防止膜を形成した光学物品において、前記反射防止膜の内の少なくとも1層が、部分安定化または安定化ジルコニアからなることを特徴とする。
これによれば、光学基板の表面に、無機酸化物の多層膜からなる反射防止膜の内の少なくとも1層が、部分安定化または安定化ジルコニアからなることにより、耐熱性が向上した反射防止膜を有する光学物品が得られる。これは、部分安定化または安定化ジルコニアからなる膜が、常温でも立方晶あるいは正方晶系の固溶体で存在することにより、マルテンサイト変態が発生せず、マイクロクラックが発生しない。その際、形成する膜に印加する引っ張り応力が圧縮応力に変化すると考えられる。
また、本発明の光学物品は、前記部分安定化または安定化ジルコニアが、酸化ジルコニウム(ZrO2)に、酸化カルシウム(CaO2)、酸化マグネシウム(MgO2)、酸化イットリウム(Y23)、酸化ネオジウム(Nd23)の内の少なくとも一種以上を、安定化剤として添加されていることを特徴とする。
これによれば、酸化ジルコニウム(ZrO2)に、酸化カルシウム(CaO2)、酸化マグネシウム(MgO2)、酸化イットリウム(Y23)、酸化ネオジウム(Nd23)の内の少なくとも一種以上が、安定化剤として添加されることにより、部分安定化または安定化ジルコニアが得られ、これを多層膜からなる反射防止膜の内の少なくとも1層として形成することにより、耐熱性が向上した反射防止膜を有する光学物品が得られる。
また、本発明の光学物品は、前記光学基板が光学用ガラスであり、前記反射防止膜が、前記光学基板の表面から順に、前記部分安定化または安定化ジルコニア層と、SiO2層とを交互に積層した多層膜からなることを特徴とする。
これによれば、光学基板が光学用ガラスである場合に、その光学用ガラス自体がSiO2を含むことから、下地層としてのSiO2層を設けなくても、部分安定化または安定化ジルコニア被膜の密着性能を確保できる。反射防止膜は、光学用ガラスの表面から順に、部分安定化または安定化ジルコニア層と、SiO2層とを交互に積層した多層膜からなることにより、少ない層数で広い波長帯域を有し、しかも耐熱性が向上した反射防止膜を有する光学物品が得られる。なお、多層膜の層数は、少なくとも4層以上、好ましくは5層以上で構成されるのが好ましい。
また、本発明の光学物品は、前記反射防止膜が、前記光学基板の表面にSiO2層を下地層とし、前記下地層の表面から順に、前記部分安定化または安定化ジルコニア層と、SiO2層とを交互に積層した多層膜からなることを特徴とする。
これによれば、反射防止膜が光学基板の表面にSiO2層を下地層とし、下地層の表面から順に、部分安定化または安定化ジルコニア層と、SiO2層とを交互に積層した多層膜からなることにより、少ない層数で広い波長帯域を有し、しかも耐熱性が向上した反射防止膜を有する光学物品が得られる。なお、多層膜の層数は、少なくとも4層以上、好ましくは5層以上で構成されるのが好ましい。
また、本発明の光学物品は、前記光学基板はハードコート層を形成されたプラスチックであることを特徴とする。
これによれば、ハードコート層が形成されたプラスチックからなる光学基板の表面にSiO2層を下地層とし、下地層の表面から順に、部分安定化または安定化ジルコニア層と、SiO2層とを交互に積層した多層膜からなる反射防止膜が形成されることにより、耐擦傷性、および耐熱性が向上したプラスチックの光学物品が得られる。
また、本発明の光学物品の製造方法は、光学基板の表面に、無機酸化物からなる薄膜を形成し反射防止膜とする光学物品の製造方法において、前記反射防止膜を構成する部分安定化または安定化ジルコニア層を蒸着により形成することを特徴とする。
この製造方法によれば、反射防止膜を構成する部分安定化または安定化ジルコニア層を蒸着により形成することにより、光学基板の表面に、耐熱性に優れた反射防止膜を均一に形成することができる。
また、本発明の光学物品の製造方法は、前記部分安定化または安定化ジルコニア層が、酸化ジルコニウム(ZrO2)に、安定化剤として酸化カルシウム(CaO2)、酸化マグネシウム(MgO2)、酸化イットリウム(Y23)、酸化ネオジウム(Nd23)の内の少なくとも一種以上を添加されている層で形成されたことを特徴とする。
この製造方法によれば、反射防止膜が光学基板の表面にSiO2層を下地層とし、下地層の表面から順に、酸化ジルコニウム(ZrO2)に、酸化カルシウム(CaO2)、酸化マグネシウム(MgO2)、酸化イットリウム(Y23)、酸化ネオジウム(Nd23)の内の少なくとも一種以上が、安定化剤として添加された部分安定化または安定化ジルコニア層と、SiO2層とを交互に積層した多層膜からなることにより、耐熱性が向上した反射防止膜を形成することができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
反射防止膜は、無機酸化物の単層または多層で構成される。無機酸化物の材質としては、SiO2、SiO、ZrO2、TiO2、TiO、Ti23、Ti25、Al23、Ta25、CeO2、MgO、Y23、SnO2、MgF2、WO3等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。光学基板がプラスチックの場合には、低温で真空蒸着が可能なSiO2、ZrO2、TiO2、Ta25を好ましく用いることができる。
これらの無機酸化物の内、特に、SiO2とZrO2の膜を交互に積層させた多層膜は、少ない層数で広い波長帯域を持つ反射防止膜を容易に形成することができる。例えば、光学基板の表面から、ZrO2層とSiO2層の合計光学的膜厚がλ/4の層、光学的膜厚がλ/4のZrO2層、光学的膜厚がλ/4のSiO2層を最上層とする4層構造を例示することができる。ここで、λは設計波長であり、通常520nmの値が用いられる。
なお、無機酸化物被膜の成膜方法は、例えば真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、CVD法、飽和溶液中での化学反応により析出させる方法等を用いることができる。
また、反射防止膜の形成は、光学基板がガラスの場合は、光学基板の表面に直接形成することができるが、光学基板がプラスチックの場合には、光学基板の表面に直接反射防止膜を形成してもよいが、表面硬度、耐擦傷性を確保するうえで、金属酸化物とシラン化合物を主成分とするコーティング組成物からなるハードコート層をディッピング法またはスピンコート法等の塗布法により成膜し、このハードコート層上に形成する方法が好ましい。さらに、反射防止膜の形成の前に、光学基板またはハードコート層との密着性を高めるためにアルカリ処理、プラズマ処理、イオン処理などを行い、表面の清浄化と活性化を行うことが望ましい。また、必要に応じて、形成した反射防止膜上に撥水層または防曇層などの保護層をつけることができる。
一方、ジルコニア(ZrO2)は、いまやファインセラミックスを代表する材料のひとつとして脚光を浴びている。このジルコニアは、成膜の際に正方晶あるいは立方晶から、単斜晶へと結晶構造が変化するマルテンサイト変態を起こす。このマルテンサイト変態により、成膜直後の蒸着粒子が冷却の際に膨張する体積変化を起こし、膜に引っ張り応力が印加されてマイクロクラックが発生する。なお、こうした応力現象は、例えばシリコン基板上に膜を形成し、膜応力測定器等により確認することができる。
しかし、ジルコニア(ZrO2)にイットリウム、カルシウムあるいはジルコニウム等を添加して加熱、反応させることにより、常温でも立方晶あるいは正方晶系の固溶体で存在し、マルテンサイト変態が発生しない。すなわち、マイクロクラックが発生しない。これにより形成する膜に印加する引っ張り応力が圧縮応力に変化すると考えられる。この立方晶あるいは正方晶系の固溶体が安定化ジルコニアあるいは部分安定化ジルコニアであり、高強度、高靭性、高耐熱等の特性を備えている。なお、安定化ジルコニアあるいは、部分安定化ジルコニアの膜は、光学的に高屈折率膜の光学機能を有する。
部分安定化または安定化ジルコニアは、ジルコニア(ZrO2)に、安定化剤として酸化イットリウム(Y23)を3mol%添加した、いわゆるイットリウム安定化ジルコニアが好ましく用いられる。この他に用いられる安定化剤として酸化カルシウム(CaO2)、酸化マグネシウム(MgO2)、酸化ネオジウム(Nd23)等が挙げられる。
次に、本実施形態に基づく実施例、ならびに比較例を説明する。
本実施形態は、反射防止膜を形成する光学物品(光学基板)として、例えばチオウレタン系樹脂を熱硬化したプラスチック眼鏡レンズを用いた。また、プラスチック眼鏡レンズ(以降、レンズと表記する)の表面上には、予めハードコート層が形成されたレンズを準備した。
(実施例1)
既にハードコート層が形成されたレンズ面に、反射防止膜を形成する。反射防止膜は、レンズ表面から順に、低屈折率の光学機能を有するSiO2層と、高屈折率の光学機能を有する部分安定化または安定化ジルコニア層を交互に積層させ、5層の反射防止多層膜を形成した。部分安定化または安定化ジルコニアは、ジルコニア(ZrO2)に、安定化剤として酸化イットリウム(Y23)を3mol%添加した、いわゆるイットリウム安定化ジルコニアを原料とした。
SiO2層、および部分安定化または安定化ジルコニア層の成膜は、真空蒸着法により行った。真空蒸着装置の真空容器内に、蒸着材料のSiO2あるいはイットリウム安定化ジルコニアが収容されたるつぼを交互にセットし、るつぼに対向した上部に配置されたレンズに、例えば電子ビーム法により蒸着を行った。蒸着の際の真空容器内の真空度は、5.0×10-4Paに設定した。
形成する反射防止膜は、レンズ表面から順に、第1層に0.32λの光学膜厚を持つSiO2層、第2層に0.60λの光学膜厚を持つイットリウム安定化ジルコニア層、第3層に0.22λの光学膜厚を持つSiO2層、第4層に1.02λの光学膜厚を持つイットリウム安定化ジルコニア層、第5層に1.08λの光学膜厚を持つSiO2層を順次積層し、5層の多層膜を形成し、反射防止膜が形成されたレンズを作製した。
(比較例1)
実施例1において、5層の多層膜からなる反射防止膜の内、部分安定化または安定化ジルコニア(イットリウム安定化ジルコニア)層に替えて、安定化剤を含まない通常のZrO2の層を形成した。多層膜の形成は、実施例1と全て同一の形成方法で行い、実施例1と同一の物理膜厚の5層の反射防止多層膜が形成されたレンズを作製した。
次に実施例1、および比較例1において作製したレンズを、耐熱性試験を行い、それの評価を行った。
耐熱性試験の試験方法および評価方法は、反射防止膜が形成された各レンズを、オーブン内に投入し、30分加熱した後、レンズ表面のクラック発生の有無を目視により評価した。加熱温度は40℃よりはじめて、順次5℃ずつ上昇させ、クラック発生時のオーブン設定温度値をそのレンズにおける耐熱温度とした。したがって、その温度値が大きい程、耐熱性が良いこと示す。
評価結果は、実施例1に基づくレンズの耐熱温度は75℃であり、比較例1に基づくレンズの耐熱温度は、65℃であった。
このことから、反射防止膜が、レンズの表面にSiO2層を下地層とし、下地層の表面から順に、部分安定化または安定化ジルコニア(イットリウム安定化ジルコニア)層と、SiO2層とを交互に積層した多層膜からなることにより、高い耐熱性を有する反射防止膜が得られた(実施例1)。
なお、実施例1は、部分安定化または安定化ジルコニアとして、ジルコニア(ZrO2)に、安定化剤として酸化イットリウム(Y23)を添加した、イットリウム安定化ジルコニアを原料とした場合のみ例示したが、酸化カルシウム(CaO2)、酸化マグネシウム(MgO2)、酸化ネオジウム(Nd23)を用いた場合にも、同様の効果が得られることを確認している。
また、反射防止特性については、試験項目(評価項目)として説明をしなかったが、実施例1および比較例1に基づくレンズは、共に同等の反射防止特性であった。さらに、光学基板が光学用ガラスである場合は、その光学用ガラス自体がSiO2を含むことから、下地層としてのSiO2層を設けなくても、部分安定化または安定化ジルコニア被膜の密着性能を確保できる。
以上のように、本発明の反射防止膜を有する光学物品は、光学基板の表面に、無機酸化物の多層膜からなる反射防止膜の内の少なくとも1層が、酸化ジルコニウム(ZrO2)に、酸化カルシウム(CaO2)、酸化マグネシウム(MgO2)、酸化イットリウム(Y23)、酸化ネオジウム(Nd23)の内の一種が、安定化剤として添加された部分安定化または安定化ジルコニアの層から形成されることにより、耐熱性が向上した反射防止膜を有する光学物品を得ることができる。
また、本発明の光学物品の製造方法によれば、光学基板の表面に、耐熱性が向上した反射防止膜を形成することができる。
以上の実施形態において、光学物品(光学基板)として、チオウレタン系樹脂を熱硬化したプラスチック眼鏡レンズを用いた場合で説明したが、光学物品(光学基板)としては、各種光学機器用のガラスレンズあるいはプラスチックレンズ、それらのハイブリットレンズ、光学フィルター、携帯電話の表示板を始めとする各種ディスプレイのカバー、光ディスク、ディスプレイ等に適用することができる。また、プラスチックの材質としては、アクリル樹脂、チオウレタン系樹脂、メタクリル系樹脂、アリル系樹脂、エピスルフィド系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR−39)等を用いた場合であってもよい。

Claims (7)

  1. 光学基板の表面に、無機酸化物の多層膜からなる反射防止膜を形成した光学物品において、
    前記反射防止膜の内の少なくとも1層が、
    部分安定化または安定化ジルコニアからなることを特徴とする光学物品。
  2. 請求項1に記載の光学物品において、
    前記部分安定化または安定化ジルコニアが、
    酸化ジルコニウム(ZrO2)に、酸化カルシウム(CaO2)、酸化マグネシウム(MgO2)、酸化イットリウム(Y23)、酸化ネオジウム(Nd23)の内の少なくとも一種以上を、安定化剤として添加されていることを特徴とする光学物品。
  3. 請求項1または2に記載の光学物品において、
    前記光学基板が光学用ガラスであり、前記反射防止膜が、
    前記光学基板の表面から順に、前記部分安定化または安定化ジルコニア層と、SiO2層とを交互に積層した多層膜からなることを特徴とする光学物品。
  4. 請求項1または2に記載の光学物品において、
    前記反射防止膜が、
    前記光学基板の表面にSiO2層を下地層とし、
    前記下地層の表面から順に、前記部分安定化または安定化ジルコニア層と、SiO2層とを交互に積層した多層膜からなることを特徴とする光学物品。
  5. 請求項4に記載の光学物品において、
    前記光学基板はハードコート層が形成されたプラスチックであることを特徴とする光学物品。
  6. 光学基板の表面に、無機酸化物からなる薄膜を形成して反射防止膜とする光学物品の製造方法において、
    前記反射防止膜を構成する部分安定化または安定化ジルコニア層を蒸着により形成することを特徴とする光学物品の製造方法。
  7. 請求項6に記載の光学物品の製造方法において、
    前記部分安定化または安定化ジルコニア層が、
    酸化ジルコニウム(ZrO2)に、安定化剤として酸化カルシウム(CaO2)、酸化マグネシウム(MgO2)、酸化イットリウム(Y23)、酸化ネオジウム(Nd23)の内の少なくとも一種以上を添加されている層で形成されたことを特徴とする光学物品の製造方法。
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