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JP2006212765A - 工作機械の熱変位補正方法 - Google Patents

工作機械の熱変位補正方法 Download PDF

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正海 夏目
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Abstract

【課題】
工作機械の送りねじと加工ワーク双方の熱変位を包括的に補正することにより、基準温度における加工ワークの実寸に基づいた加工精度の改善を実現する。
【解決手段】
第1に、駆動軸1の位置決め精度を正しく補正するために、ほとんど熱膨張しないインバー材Rの絶対基準を設け、この絶対基準との対比による正確な位置決め方法を確立する。
第2に、加工ワークWの材質固有の線膨張係数と、加工ワークの長さ、加工ワークの温度から、ワークの精度判定の基礎となる基準温度における寸法を見据えた補正を、第1の加工時の位置決めに反映させる。
【選択図】図19

Description

本発明は、工作機械の送りねじと加工ワーク双方の熱変位を包括的に補正することにより、基準温度における加工ワークの実寸に基づいた加工精度の改善を実現する熱変位補正方法に関するものである。
従来、工作機械は高精度な位置決めを要求されるにもかかわらず、工作機械そのものは位置決め精度を悪化させてしまう複数の潜在的な要因を持っており、1個もしくは複合要因によって容易に位置決め誤差を悪化させてしまう。
位置決め誤差を発生させてしまう要因としては、例えば、駆動系の構成部材であるボールネジの熱膨張、周囲の温度変化による工作機械自身の歪や熱変形等さまざまであり、位置決め誤差の発生を完全に防ぐことは不可能である。
図1は、一般的な工作機械の構成であり、サーボモーター5の回転運動をボールネジ1により伝達し、加工テーブル3と一体化したナット2で直線運動に変換されるが、この駆動力により加工テーブル3上のワークWは主軸7と相対移動可能となる。
サーボモータ5の駆動力を伝達する媒体となるボールネジ1は、図2に示すようにサーボモータ5と接続された側が固定側10となり、他端はサポート的な反固定側11となるので、ボールネジ1が熱膨張を起こせば反固定側11の方向に伸びていくこととなる。
ボールネジ1の熱膨張は、環境温度の変化や加工時の移動速度の状況により変動するが、摩擦熱に起因する熱膨張は、変動幅が特に大きく膨張量の予測も困難である。
上記の悪影響は位置決め精度を悪化させるので、図4に示すように、加工ワークWの位置決めが本来在るべき位置に対し、誤差EX、EY分の位置決め誤差として発生してしまうこととなる。
一方、図5に示すように、加工ワークWにおいて、加工ワーク周辺の大気温度は刻々と変化し、また、切削油の温度も工作機械やポンプの可動状況により変動するため、ここでも加工ワークの熱膨張による誤差CX、CYが発生している。
このような位置決め誤差の対策としては、温度変化等の要因を小さくするか、もしくは誤差そのものを認識した上でそれを補正するしかない。
本来は、誤差要因そのものを小さくすることが望ましいが、例えば、高度な空調設備による環境温度の調整や工作機械全体に及ぶような温度調整を行おうとすれば設備費や維持費が高騰するし、省エネルギーの観点から見ても合理性に欠ける。
従って、誤差の発生を不可避と認識した上で、この誤差認識に基づく精度補正を行うことが一般的である。
近年の工作機械の高速化は著しいが、その半面、駆動部となるボールネジやナット等の発熱による熱変位の問題は避けられず、特に、ボールネジの熱膨張による精度悪化を防ぐ対策に苦慮することが多い。
上記ボールネジ以外にも、工作機械の位置決め誤差の要因は多岐に渡り、往々にして複合的であるため、コストパフォーマンスを見据えながら効果的に抑制することが肝要である。
公知例の中には、機体の温度変化を温度センサ により検出し、この検出温度変化から工作機械の熱変位の熱的挙動と略同じ挙動をする演算温度変化を算出する微分方程式に基づいて、検出温度変化を用いて前記演算温度変化を算出し、この演算温度変化に対応して変化する熱変位に基づいて加工誤差を補正するもの(例えば、特許文献1参照)や、
送り軸の位置をモニタリングし、位置補正単位時間毎送り軸の平均移動速度及び移動頻度を求めてこの速度と頻度により近似式で補正量を求め更新し、この補正量より指令位置に対する位置補正量を求めて、指令位置を位置補正量で補正するもの(例えば、特許文献1参照)が見られる。
上記のように、ボールネジの膨張に対処する文献が見られるが、いずれも内部に不変の絶対基準を持たない精度補正である。
上記補正法のように、測定結果からの予測のみに依存した推論では信頼性に欠けるし、使用条件をある程度限定しなければ安心して運用できないなどの制約がある。
また、熱膨張は工作機械だけではなく加工ワークにおいても発生するが、製品である加工ワークをも含めた包括的な精度維持のための方法が見当たらない。
特開平9−108992号公報 特開平10−138091号公報
本発明が解決しようとする課題とその目的は、工作機械の位置決め誤差の対策を行う上で、最も効果的と考えられるボールネジの熱変位を絶対基準との比較に基づく簡易な装置によって高精度に補正し、且つ製品となる加工ワークの熱変位を基準温度に基づき管理することにより、包括的で高精度な精度補正を安定し運用可能とした熱変位補正方法を提供することである。
本発明は、温度変化に対し極めて低膨張という特性を持つインバー材を絶対基準に据え、これに基づく位置決め補正を行いながら、更に、基準温度に対するワークの熱膨張量も考慮することが最も主要な特徴である。
本発明の請求項1の工作機械の熱変位補正方法は、低膨張材であるインバー材を、工作機械の直線駆動軸の固定側に該駆動軸の移動方向と平行な位置関係で接合し、
上記インバー材には、検出片を検知するための検出センサーを精密な間隔で2個配し、
一方、上記駆動軸の移動側には、上記検出センサーで検出可能な検出片を設け、
上記駆動軸の固定側と移動側との相対移動において、
まず、工作機械の精度検査時に、上記2個の検出センサーが検出片を検知した時のそれぞれの座標値をあらかじめ記憶しておき、これを絶対基準とし、
工作機械の使用時には、上記2個の検出センサーが検出片を検知した時の2個のそれぞれの座標値と上記絶対基準との座標値の差を絶対基準からの位置決め誤差と見なし、
一方を駆動軸の座標値、他方を誤差とする2次元の座標上に、上記2個所の座標値と誤差を示す点を置き、この2点間を通過する直線近似式を設定することにより、
制御装置が駆動軸の移動指令を実行する直前に、あらかじめ移動先の座標値を上記直線近似式に代入し、移動先における位置決め誤差を求め、この誤差を相殺するための移動修正を加えた数値を真の移動先の座標値となるよう工作機械の位置決め制御に補正をかけることを特徴とする。
本発明の請求項2は、請求項1記載の検出センサーを3個以上配したことを特徴とする。
本発明の請求項3は、請求項1記載の、検出センサーと検出片を置き換え、1個の検出センサーで2個の検出片の動きを捕捉することを特徴とする。
本発明の請求項4は、請求項3記載の検出片を3個以上配したことを特徴とする。
本発明の請求項5の工作機械の熱変位補正方法は、インバー材を工作機械の加工テーブルと一体化するよう接合し、
上記インバー材両端には、2個の検出センサーの代わりに、精密な間隔で2個の真円ポケット加工を施し、
一方、工作機械の主軸には自動工具交換可能なタッチセンサーを工具交換指令により呼び出し、
まず、工作機械の精度検査時に、NCプログラムとマクロプログラムにより、上記タッチセンサーを上記インバー材のそれぞれの真円部の中心に移動させ、2個の真円ポケットの内部側壁に対し、複数点の測定を行い、これを演算処理することによりそれぞれの真円ポケットの中心座標をあらかじめ算出し記憶しておき、これを絶対基準とし、
工作機械の使用時に、2個の真円ポケットの中心座標をタッチセンサーで測定することにより、各真円ポケットの中心座標における上記絶対基準との位置ずれを位置決め誤差と見なし、
一方を駆動軸の座標値、他方を誤差とする2次元の座標上に、上記2個所の座標値と誤差を示す点を置き、この2点間を通過する直線近似式を設定することにより、
駆動軸の移動指令を実行する直前に、あらかじめ移動先の座標値を上記直線近似式に代入し、移動先における位置決め誤差を求め、この誤差を相殺するための移動修正を加えた数値を真の移動先の座標値となるよう工作機械の位置決め制御に補正をかけることを特徴とする。
本発明の請求項6は、インバー材を工作機械の加工テーブルに対し傾斜させて接合することにより、2軸方向の位置決め誤差を同時に検知し、工作機械の位置決め制御に2軸の位置決め補正をかけることを特徴とする。
本発明の請求項7は、インバー材を治具に組み込み一体化したことを特徴とする。
本発明の請求項8は、インバー材を治具のベースプレートに組み込み、ベースプレートと一体化したことを特徴とする。
本発明の請求項9の工作機械の熱変位補正方法は、上記請求項1から請求項8において、インバー材の中心付近に加工ワークを固定し、
上記加工ワークに接触型の温度センサーを取り付け、これにより加工ワークの温度を測定し、
上記加工ワークの温度測定結果と加工ワーク固有の線膨張係数とにより、20℃の基準温度における寸法を実際の寸法とし、この実際の寸法に補正するための補正値を、
補正値=ワークの長さ×(基準温度−加工ワーク温度)×線膨張係数、の計算式に基づき算出し、
上記補正値を位置決め補正に更に重畳させることを特徴とする。
本発明の請求項10は、請求項9において、温度センサーを、非接触型の温度センサーとしたことを特徴とする。
本発明の請求項11は、請求項10において、非接触型の温度センサーを、タッチセンサーと一体化したことを特徴とする。
本発明の請求項12は、請求項10において、非接触型の温度センサーを、主軸と一体化したことを特徴とする。
本発明の熱変位補正方法は、上記構成条件からなり、以下のように作用する。
第1に、ボールネジのための熱変位補正を、極めて熱膨張しにくいインバー材を絶対基準として行うため、極めて直接的な方法である。
つまり、予測や推論に大きく依存するような熱変位補正の場合、工作機械の使用状況はユーザーにより大きく異なるため、これらの予測や推論が全てのユーザーに対し適切に当てはまる保証はないし、現実は往々にして不適切な補正による弊害が発生する可能性がある。
しかし、本発明によるボールネジの熱変位補正方法は、熱膨張の極めて小さいインバー材を絶対基準とすることにより、一切の曖昧さが無くなり、装置構成やデータの処理もシンプルであるから、非常に効果的であり運用上の信頼性も高い。
またシンプルな装置構成と処理系は、工作機械への実装を容易にするので、低コストで工作機械に実装可能である。
第2に、加工テーブル上に置かれる加工ワークについても熱膨張するから、いくら工作機械の位置決め精度を改善しても、加工ワークの精度対策抜きでは製品レベルで精度を保証できない。
しかし、本発明による熱変位補正方法は、ワークの温度測定を加えることにより、基準温度のワーク寸法、即ち実寸になるよう、上記の位置決め補正に対し、更に、ワークの熱膨張を相殺するための重畳補正をかける。
第1の駆動軸の熱変位補正で工作機械の位置決め誤差を無くし、更に、第2のワークの熱膨張の補正を上記位置決め補正に重畳させることにより、最終的な製品レベルの精度を維持させるための位置制御を加工時にあらかじめ反映させることができる。
上記で述べたように、本発明は、熱変位による誤差に対し、部分的もしくは局所的に対応するのではなく、製品そのものの精度維持を目標とした包括的な熱変位補正方法であり、本発明はシンプルな機械構成と制御でそれを可能とし、低コストでありながら実装しやすく信頼性の高い熱変位補正を提供できる利点がある。
本発明は、まず第1の実施の形態では、駆動軸の位置決め精度を正しく補正するために、ほとんど熱膨張しないインバー材の絶対基準を設け、この絶対基準との対比による正確な位置決め方法を確立する。
これにより、駆動系は熱変位による誤差から開放され、駆動軸の移動指令がそのまま正確無比な位置決めに反映されるものである。
求める精度によっては、上記第1の実施の形態による駆動系の位置決め精度の改善で十分な場合もあるが、更なる高精度化を目指すならば、加工テーブル上にあるワークの熱膨張も考慮し、更なる高精度化が必要となる。
そのために、本発明は、第2の実施の形態では、加工ワークの材質固有の線膨張係数と、加工ワークの長さ、加工ワークの温度から、ワークの精度判定の基礎となる基準温度における寸法を見据えた補正を、加工時の位置決めに反映させる。
上記第1、第2の実施形態による熱変位補正方法を組み合わせた場合、製品の精度基準と加工時の位置決め補正は極めて直接的に相関することとなり、製品の精度は大幅に改善される。
これより、本発明について各実施例を伴いながら順次説明する。
図6は、本発明の第1の実施の形態例を示しており、駆動軸(ボールネジ1)の固定側に取り付けられたインバー材Rに位置センサー14、14’を精密な間隔L2で取付け、駆動軸の移動側(加工テーブル3)に取り付けられた検出片15を2個の位置センサー14、14’で捕捉し、検出信号を信号線13により制御装置12へ伝送する。
この際、ボールネジ固定側の検出センサー14と14’が検出片15を捕捉した時点における座標値と、工作機械の精度検査時にあらかじめ保持しておいた座標値をそれぞれ比較し誤差を求め、インバー材Rが不変であることを前提とし、誤差の近似直線式を設定し、以後の加工の位置決めを補正する。
図7は、インバー材Rに4個の検出センサー14,14’、14’’、14’’’を取り付けたものである。
精密な間隔L3、L4、L5で並べられた各検出センサーにおける、それぞれの誤差から各区間ごとで、より精密に位置決め補正を行うためのものである。
通常は図6に示す2点間の補正でも十分な効果を期待できるが、一部区間において特に高精度な位置決めの補正が必要な場合や、もしくは可動範囲が非常に長く、ボールネジの各部位による熱膨張の差を考慮せざるを得なくなった場合に対応するための方法となる。
図8は、上記図6で示した第1の実施の形態のものを、工作機械のXYZ軸の各軸にそれぞれ実装した実施例であり、一般的な直交3軸の位置決め補正を可能とする。
上記インバー材Rの各位置を検出する方法は、検出センサーと検出片による測定から位置決め補正を行うものであるが、図9に示すものは、2個の真円ポケットP1、P2の中心位置をそれぞれプローブ17で検出することにより位置決め補正を行う方法である。
例えば、両端に真円ポケットP1、P2を施したインバー材Rを加工テーブル3上に固定し、この真円ポケットP1、P2に対し、自動工具交換可能なタッチセンサーSを主軸7に呼び出し、先端のプローブ17で計測する。
真円ポケットの計測に関しては、図10に示すが、図10(a)の4点計測、図10(b)の3点計測ならば、数学的に円の中心を2次元座標で求めることが可能である。
また、1次元的な中心でよいなら図10(c)に示す2点計測で済む場合もある。
実際の測定の安定性や計測のために許容可能なサイクルタイム等により、測定点を設定することとなるが、基本的に4点計測が望ましい。
図11は両端に真円ポケットP1、P2の加工を施されたインバー材Rを補正したい駆動軸と平行に設置した場合であるが、この場合は1軸のみの位置決め補正を可能としたものである。
しかし、図12に示すように上記インバー材Rを傾斜させると2軸方向においてL3、L4の区間ができ、且つ真円ポケットP1、P2の中心は2次元座標で測定されるから、それぞれの軸方向に位置決め補正することにより、測定回数を増やすことなく2軸方向の補正に対応可能としたものである。
図13は、図9と同様に、インバー材Rを加工テーブル3上に実装した実施例である。
図はわかりやすくするために拡大して記載しているが、現実には真円ポケットの径やインバー材等をコンパクトに実装し、加工時の干渉に配慮することとなる。
また、真円ポケットP1、P2さえ測定可能ならばインバー材Rの中央部に治具やワークが搭載されてもかまわないため、図14に示すように加工テーブル3に埋没させてもよく、こうすることにより加工テーブルの使用を妨げることがない。
図15は、インバー材Rを傾斜させ、更に加工テーブル3に埋没させたものであり、2軸同時の位置決め補正を可能としながら、加工テーブルの使用を妨げない実施例としたものである。
図16は、真円ポケットPを測定する際、切粉や切削油等の影響を受けないようにする付加装置の例を装備した実施例である。
測定時以外は真円ポケットPの上面をカバー18で塞ぐことにより切粉や切削油の侵入を防止し、測定時のみカバーの開信号を信号線13から受け、駆動部19(例えば、電磁アクチュエーター、エアーアクチュエーター)にて回転軸20回りにカバー18を上方に回転させ、真円ポケットPを開放し、タッチセンサーSのプローブ17で測定可能とする。
これにより、測定基準となる真円ポケットPの測定面は清浄に保たれる。
図17は、工作機械の加工テーブル3上に治具Fを実装する例である。
本実施例は、加工テーブル3上に平面状のインバー材Rを載せ、このインバー材の対角点付近に測定のための真円ポケットP1、P2をあけたブロックR1、R2を用意し、この範囲内に治具Fを載せ、治具FとワークWの位置決め補正を行うものである。
図17ではプレート状のインバー材Rを図示しているが、図15で示したようなインバー材の使用も可能である。
ところで、上述した位置決め補正のための各実施例は、あくまでも駆動軸(ボールネジ1)のみの補正であり、ワークの熱膨張が考慮されていない。
即ち、駆動系の位置決め補正だけでは不十分な場合、線膨張係数が大きく熱膨張しやすいワークを加工する場合、量産時において周囲の環境温度に伴うワーク温度の経時変化が大きい場合など、ワークの熱膨張による誤差発生を考慮しなければならない場合は、ワークの基準温度における実寸を基準とした精度管理が別途必要となる。
本発明は、これに対応するために、インバー材という絶対基準による駆動軸の位置決め補正と合せ、ワークの基準温度に基づくワークの熱膨張の補正を加えた第2の実施の形態となる熱変位補正方法を提供する。
図18はワークWの熱膨張を補正するためのワークの温度測定方法を示す実施例である。
ワークWに熱伝対等の接触型温度センサー22を取付け、ワークWの温度の経時変化を捉え、ワークWの材質固有の線膨張係数、ワークWの温度測定、ワークWの長さにより、基準温度(20℃)に対するワークの膨張量を計算により求め、位置決め補正に加えることにより、包括的に位置決め精度の改善をするものである。
図18ではワークW側面に温度センサー22を取り付けているが、治具F上でワークWを固定するためのクランパ12のワークの押し当て部に温度センサーを内蔵することも可能であり、複数のクランパに温度センサーを取り付ければワークの温度をより多角的に測定したり、複数の測定結果を平均化処理することにより測定データを安定化させられる。
また、上記の接触型温度センサー14、14’、14’’、14’’’の替わりに、図19に非接触型の温度センサー23を用いた変更例を示す。
即ち、赤外線量により温度測定可能な放射温度計等の非接触型の温度センサー23をワークW近傍にとりつけ、ワークWの温度を測定するものである。
非接触型の温度センサー23は、ワークWや治具Fから離れて設置することが可能であるから、接触型に比べ実装の自由度が高くなる。
また、図20(a)に示すように温度センサー23をタッチセンサーSに組み込んだり、図20(b)に示すように主軸7に組み込めば、自在に測定個所を変更しながら温度測定を行うことも可能となる。
以上のように、本発明の熱変位補正方法を実行するための熱変位補正装置を記載した。
続いて、本発明の第1の実施の形態となる熱変位補正方法の詳細を記述する。
説明にあたっては、1軸の構成をもとに述べるが、2軸であっても考え方の基本は同じであるし、検出センサーと検出片、真円ポケットとタッチセンサーについても考え方の基本は同じである。
図21に示すインバー材Rは、両端に真円ポケットP1、P2を加工したものであるが、真円ポケットP1、P2のそれぞれの中心間の距離は温度変化によらず不変であるから、これを絶対基準と見なし、本発明の位置決め補正のためのマスターゲージMGと見なす。
このインバー材RによるマスターゲージMGは、ワークWの置かれる領域、主に加工テーブル3の中央付近に置かれることが望ましく、その場合はボールネジ1の固定側の機械原点をO1とし、各真円ポケットP1、P2の中心座標をそれぞれM1、M2とする。
まず、図22で、本発明の第1の実施の形態となる熱変位補正方法を説明する。
工作機械の精度検査時に上記のM1、M2の機械座標を測定し、これを制御装置12のパラメータにあらかじめ登録しておく。
次に、実際の加工直前に、上記M1、M2の機械座標を再度測定し、それぞれの誤差を求める。
再度測定した測定点M1、M2には、工作機械のボールネジ等の温度変化や稼動による摩擦熱等による熱膨張による誤差が含まれているから、測定点M1、M2における各点の誤差の近似直線式G2をグラフ化すると、図22のようになる。
これはボールネジが固定側を基準として反固定側に熱膨張で伸びていくため、基本的にこのような1次直線のグラフとなる。
現実はG1に示すように微小の変化を伴う折れ線のグラフとなるが、一般的な工作機械の位置決めの分解能から考えると、上記近似直線式G2でも必要十分な精度で近似化される。
このグラフの段階で、M1、M2以外の任意の点における誤差は、上記近似直線式により求めることが可能であり、この近似直線式が成立した以後は、加工プログラムの移動指令の座標値にあらかじめ上記近似直線式から求めた誤差を相殺する補正をしておけばよい。
例えば、X=165.5に移動するための移動指令の場合、この移動指令を実行する直前に近似直線式によりX=165.5における誤差をあらかじめ求め、それが仮にプラス方向に5ミクロンということであれば、これを相殺するためのマイナス5ミクロンを移動指令に反映することで、実際の移動指令はX=165.495となる。
上記により駆動軸(ボールネジ1)そのものの正確な位置決め精度を得ることができるが、ワークWの温度膨張を無視すれば、駆動軸の正確な位置決め精度の効果が減少してしまうので、ワークの熱膨張を位置決め補正に更に反映するための第2の実施の形態となる熱変位補正方法を図23に示す。
線膨張係数53に示すように、加工ワークは素材特有の線膨張係数を持っているが、この数値とワークの温度変を把握することにより、ワークの大きさの変化を予想することが可能である。
また、ワークの熱膨張はワーク全体で発生するため、熱膨張の基準位置の設定が必要となるが、ワーク中心をマスターゲージ中心M3付近に設定し、マスターゲージ中心M3を基点にワークの熱膨張を補正する。
補正すべき値は、式51に示す通りであり、ワークが正規の寸法を示す温度が基準温度(20℃)で、温度センサーが測定した温度と基準温度との差に線膨張係数をかけた数値がワーク1mあたりの熱膨張による誤差であるから、更にワークの大きさをかければ実際に補正すべきワークの熱膨張量を求めることができる。
従って、式52に示すように、測定値に上記補正値を加えれば、見かけの寸法から実際のワークの寸法を求めることができる。
グラフA1は先の説明で述べたボールネジの位置決め補正のためのグラフであるが、中心M3を基点に、上記の式51をグラフA1に重畳させると、重畳補正値となるグラフA2を設定することができる。
このグラフA2から、任意の座標においてワークの熱膨張を加味した位置決め補正値を求めることが可能となる。
以上のように、上記各実施の形態によると、下記の効果がある。
即ち、本発明は、熱変位による誤差に対し、部分的もしくは局所的に対応するのではなく、製品そのものの精度維持を目標とした包括的な熱変位補正方法であり、本発明はシンプルな機械構成と制御でそれを可能とし、低コストでありながら実装しやすく信頼性の高い熱変位補正を提供できる利点がある。
本発明による位置決め方式による熱変位補正方法は、工作機械に限定されるものではなく、直線移動軸において精密な位置決め精度を要求されるあらゆる送り装置に有効であり、加工ワークやその他のワークの精度を高精度かつ安定化させる極めて有効な手段である。
また、本発明により加工精度の不良に由来する不良品の発生を抑制するから、工作機械からなる製造ラインにおいて、より安定的な物流を確立できる。
従来例となる工作機械の構成図である。 従来例となるボールネジの固定を説明する外観図である。 従来例となるボールネジの伸びを説明する外観図である。 従来例となるボールネジの熱変位による位置ずれを示す説明図である。 従来例となるワークの熱膨張を示す説明図である。 本発明の第1の実施の形態であり、装置の取付け概略図である。 本発明の第1の実施の形態であり、装置の取付け概略図である。 本発明の第1の実施の形態であり、検出センサーと検出片等の実装図である。 本発明の第1の実施の形態であり、タッチセンサーの概略図である。 タッチセンサーの動きを示す説明図である。 タッチセンサー用のインバー材の整形例を示す概略図である。 タッチセンサー用の傾斜配置を示す概略図である。 タッチセンサーによる測定の実装示す概略図である。 タッチセンサーによる測定の実装示す概略図である。 タッチセンサーによる測定の実装示す概略図である。 真円ポケットのための保護カバーの構成図である。 治具と組み合わせた構成を示す概略図である。 本発明の第2の実施形態を示し、ワーク温度の測定方法を示す概略図である。 本発明の第2の実施形態を示し、ワーク温度の測定方法を示す概略図である。 本発明の第2の実施形態を示し、ワーク温度の測定装置の実装を示す概略図である。 マスターゲージの概略図である。 第1の実施形態を示し、誤差の近似直線式の説明図である。 第2の実施形態を示し、重畳補正の説明図である。
符号の説明
1 ボールネジ(駆動軸)
2 ナット
3 加工テーブル
4 カップリング
5 サーボモータ
6 エンコーダー
7 主軸
8 自動工具交換装置
9 制御盤
10 ボールネジ固定側
11 ボールネジ反固定側
12 制御装置
13 信号線
14 位置センサー
14’ 位置センサー
14’’ 位置センサー
14’’’ 位置センサー
15 検出片
16 コラム
17 プローブ
18 カバー
19 カバー駆動部
20 カバー回転軸
21 クランパ
22 温度センサー(接触型)
23 温度センサー(非接触型)
24 工具
51 補正値を求める計算式
52 実際の寸法を求める計算式
53 線膨張係数の例
100 工作機械
101 工作機械
A1 グラフ(基準値との比較から得られた補正量)
A2 グラフ(ワークの温度と線膨張を加味した補正量)
CX X方向の熱膨張
CY Y方向の熱膨張
EX X方向の誤差
EY Y方向の誤差
F 治具
G1 誤差のプロット
G2 誤差の近似直線
L1 ボールネジの長さ
L2 センサーの間隔
L3 センサーの間隔
L4 センサーの間隔
L5 センサーの間隔
M1 測定点
M2 測定点
M3 マスターゲージ中心
MG マスターゲージ(インバー材)
O1 機械原点(固定側)
P 真円ポケット
P1 真円ポケット
P2 真円ポケット
R インバー材
R1、R2 真円加工を施したブロック
S タッチセンサー
W 加工ワーク
θ 傾き角度

Claims (12)

  1. 低膨張材であるインバー材を、工作機械の直線駆動軸の固定側に該駆動軸の移動方向と平行な位置関係で接合し、
    上記インバー材には、検出片を検知するための検出センサーを精密な間隔で2個配し、
    一方、上記駆動軸の移動側には、上記検出センサーで検出可能な検出片を設け、
    上記駆動軸の固定側と移動側との相対移動において、
    まず、工作機械の精度検査時に、上記2個の検出センサーが検出片を検知した時のそれぞれの座標値をあらかじめ記憶しておき、これを絶対基準とし、
    工作機械の使用時には、上記2個の検出センサーが検出片を検知した時の2個のそれぞれの座標値と上記絶対基準との座標値の差を絶対基準からの位置決め誤差と見なし、
    一方を駆動軸の座標値、他方を誤差とする2次元の座標上に、上記2個所の座標値と誤差を示す点を置き、この2点間を通過する直線近似式を設定することにより、
    制御装置が駆動軸の移動指令を実行する直前に、あらかじめ移動先の座標値を上記直線近似式に代入し、移動先における位置決め誤差を求め、この誤差を相殺するための移動修正を加えた数値を真の移動先の座標値となるよう工作機械の位置決め制御に補正をかけることを特徴とする工作機械の熱変位補正方法。
  2. 請求項1記載の検出センサーを3個以上配したことを特徴とする工作機械の熱変位補正方法。
  3. 請求項1記載の、検出センサーと検出片を置き換え、1個の検出センサーで2個の検出片の動きを捕捉することを特徴とする工作機械の熱変位補正方法。
  4. 請求項3記載の検出片を3個以上配したことを特徴とする工作機械の熱変位補正方法。
  5. インバー材を工作機械の加工テーブルと一体化するよう接合し、
    上記インバー材両端には、2個の検出センサーの代わりに、精密な間隔で2個の真円ポケット加工を施し、
    一方、工作機械の主軸には自動工具交換可能なタッチセンサーを工具交換指令により呼び出し、
    まず、工作機械の精度検査時に、NCプログラムとマクロプログラムにより、上記タッチセンサーを上記インバー材のそれぞれの真円部の中心に移動させ、2個の真円ポケットの内部側壁に対し、複数点の測定を行い、これを演算処理することによりそれぞれの真円ポケットの中心座標をあらかじめ算出し記憶しておき、これを絶対基準とし、
    工作機械の使用時に、2個の真円ポケットの中心座標をタッチセンサーで測定することにより、各真円ポケットの中心座標における上記絶対基準との位置ずれを位置決め誤差と見なし、
    一方を駆動軸の座標値、他方を誤差とする2次元の座標上に、上記2個所の座標値と誤差を示す点を置き、この2点間を通過する直線近似式を設定することにより、
    駆動軸の移動指令を実行する直前に、あらかじめ移動先の座標値を上記直線近似式に代入し、移動先における位置決め誤差を求め、この誤差を相殺するための移動修正を加えた数値を真の移動先の座標値となるよう工作機械の位置決め制御に補正をかけることを特徴とする工作機械の熱変位補正方法。
  6. インバー材を工作機械の加工テーブルに対し傾斜させて接合することにより、2軸方向の位置決め誤差を同時に検知し、工作機械の位置決め制御に2軸の位置決め補正をかけることを特徴とする請求項5記載の工作機械の熱変位補正方法。
  7. インバー材を治具に組み込み一体化したことを特徴とする請求項6記載の工作機械の熱変位補正方法。
  8. インバー材を治具のベースプレートに組み込み、ベースプレートと一体化したことを特徴とする請求項6記載の工作機械の熱変位補正方法。
  9. 上記請求項1から請求項8において、インバー材の中心付近に加工ワークを固定し、
    上記加工ワークに接触型の温度センサーを取り付け、これにより加工ワークの温度を測定し、
    上記加工ワークの温度測定結果と加工ワーク固有の線膨張係数とにより、20℃の基準温度における寸法を実際の寸法とし、この実際の寸法に補正するための補正値を、
    補正値=ワークの長さ×(基準温度−加工ワーク温度)×線膨張係数、の計算式に基づき算出し、
    上記補正値を位置決め補正に更に重畳させることを特徴とする工作機械の熱変位補正方法。
  10. 請求項9において、温度センサーを、非接触型の温度センサーとしたことを特徴とする工作機械の熱変位補正方法。
  11. 請求項10において、非接触型の温度センサーを、タッチセンサーと一体化したことを特徴とする加工ワークの温度測定装置。
  12. 請求項10において、非接触型の温度センサーを、主軸と一体化したことを特徴とする加工ワークの温度測定装置。
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