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JP2006212194A - イオントフォレーシス装置 - Google Patents

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JP2006212194A JP2005027748A JP2005027748A JP2006212194A JP 2006212194 A JP2006212194 A JP 2006212194A JP 2005027748 A JP2005027748 A JP 2005027748A JP 2005027748 A JP2005027748 A JP 2005027748A JP 2006212194 A JP2006212194 A JP 2006212194A
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Abstract

【課題】 薬剤の投与効率の高いイオントフォレーシス装置を提供する。
【解決手段】 プラスの電圧が印加される電極と、プラスに荷電した薬剤イオンを含む薬剤液を保持し、前記電極の前面側に配置される薬剤保持部と、前記薬剤保持部の前面側に配置されるセルロース系樹脂膜、又は、カチオン交換膜と当該カチオン交換膜の前面側に配置されるセルロース系樹脂膜とからなる複合膜であって、前記薬剤保持部の前面側に配置される複合膜とを有する作用極構造体を備え、前記セルロース系樹脂膜を介して前記薬剤イオンの投与が行われることを特徴とするイオントフォレーシス装置。
【選択図】 図1

Description

本発明は、プラスに荷電した薬剤イオンを保持する作用極構造体に印加されるプラス電圧の作用により当該薬剤イオンを生体に投与するイオントフォレーシス装置に関し、薬剤乃至薬剤イオンの投与効率が顕著に高められたイオントフォレーシス装置に関する。
イオントフォレーシス装置は、一般に、薬効成分がプラス又はマイナスのイオン(薬剤イオン)に解離する薬剤液を保持する作用極構造体と、作用極構造体の対極の役割を有する非作用極構造体を備えており、これら両構造体を生体(ヒト又は動物)の皮膚に当接させた状態で、作用極構造体に薬剤イオンと同一極性の電圧を印加することにより薬剤イオンが生体内に投与される。
ここで、作用極構造体に給電された電荷は、薬剤イオンの生体への移動と、生体対イオン(生体内に存在するイオンであって、薬剤イオンとは反対導電型に荷電したイオン)の作用極構造体側への放出により消費されることになるが、生体からは、分子量が小さく、従って、移動度が大きい生体対イオン(例えば、NaやClなど)が主として放出されることになるために輸率(作用極構造体に給電される全電流のうち薬剤イオンの移動に寄与する電流の割合)が低下し、十分な量の薬剤を投与することが出来ない問題がある。
特許文献1〜10は、このような問題を解決したイオントフォレーシス装置を開示している。
即ち、特許文献1〜10のイオントフォレーシス装置では、作用極構造体を、電極と、電極の前面側(皮膚に当接する側)に配置された薬剤保持部と、当該薬剤保持部の前面側に配置され、当該薬剤保持部に保持される薬剤イオンと同一極性のイオンを選択的に通過させるイオン交換膜とから構成し、薬剤イオンがイオン交換膜を介して投与されるようにすることで、生体対イオンの放出が抑制されて輸率が向上し、薬剤の投与効率の向上が達成される。
なお、特許文献1〜10に記載されるイオントフォレーシス装置では、その作用極構造体が、電極と接触を保つようにされた電解液を保持する電解液保持部、及び、当該電解液保持部の前面側に配置され、薬剤イオンと反対の導電型のイオンを選択的に通過させるイオン交換膜を更に備え、上記薬剤保持部がこのイオン交換膜の前面側に配置されるようにすることで、薬剤イオンを電極から隔離することによる薬剤イオンの分解の阻止や電極において発生するHやOHイオンの薬剤保持部、ひいては、生体皮膚界面への移行の阻止などの追加的な効果をも達成している。
また、特許文献11には、上記特許文献1〜10に開示されるイオントフォレーシス装置を更に改良した発明が開示されており、イオン交換膜として、ポリオレフィン、塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂などの素材よりなる多孔質膜にイオン交換樹脂(イオン交換機能を付与された樹脂)を充填させたタイプのイオン交換膜を使用することにより、薬剤の投与量が著しく高められることが記載されている。
特許第3030517号公報 特開2000−229128号公報 特開2000−229129号公報 特開2000−237326号公報 特開2000−237327号公報 特開2000−237328号公報 特開2000−237329号公報 特開2000−288097号公報 特開2000−288098号公報 国際公開第03/037425号パンフレット 特開2004−188188号公報
上記のように、特許文献11に開示されるイオントフォレーシス装置は、現時点において公知とされているものの中で、最も薬剤の投与効率に優れるイオントフォレーシス装置であると考えられるが、本発明は、この特許文献11に開示されるイオントフォレーシス装置と比較しても更に飛躍的に薬剤の投与効率が高められたイオントフォレーシス装置を提供するものである。
本発明は、セルロース系樹脂膜を介してプラスに荷電した薬剤イオンの投与が行われるイオントフォレーシス装置であって、プラスの電圧が印加される電極と、薬剤イオンを含む薬剤液を保持し、前記電極の前面側に配置される薬剤保持部と、前記薬剤保持部の前面側に配置されるセルロース系樹脂膜とを有する作用極構造体を備えるイオントフォレーシス装置である。
即ち本発明は、薬効成分が溶液中でプラスイオンに解離する薬剤を投与するためのイオントフォレーシス装置であって、特許文献1〜11において薬剤保持部の前面側に配置されるイオン交換膜に代えてセルロース系樹脂膜を用いることとした点に特徴を有するものである。
セルロース系樹脂膜は、カチオン交換膜としての機能を有することが知られているが、一般に使用されているカチオン交換膜(例えば、特許文献1〜11に例示されるカチオン交換膜)と比較するとイオン交換能などの特性が劣るために、イオントフォレーシス装置にセルロース系樹脂膜を適用することは従来検討されてこなかった。
現に、本発明者らの研究においても、開発の初期段階において通例実施されるインビトロでの評価では他のカチオン交換膜に勝る特性は確認されなかったのであるが、生体を用いたインビボでの評価を行ったところ、上記本発明のイオントフォレーシス装置によれば、特許文献11に開示されるカチオン交換樹脂を用いたイオントフォレーシス装置と比較しても薬剤の投与効率(同一表面積の膜面からの同一電流条件下での単位時間当たりの薬剤投与量)が格段に高められることが見出されたものである。
ここで、本発明における薬効成分がプラスイオンに解離する薬剤としては、麻酔薬である塩酸モルヒネやリドカイン、胃腸疾患治療薬である塩化カルチニン、骨格筋弛緩剤である臭化バンクロニウムなどを例示することができる。
また、本発明における薬剤保持部は、上記のような薬剤の溶液を液体状体で保持する容器として構成することが可能であるが、薬剤の溶液を適当なゲル化剤などでゲル化乃至粘調化したものを保持しても良く、或いは、高分子担体などに薬剤の溶液を含侵させたものを薬剤保持部とすることも可能である。
本発明におけるセルロース系樹脂膜は、再生セルロース、セルロースエステル、セルロースエーテル、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂から構成される薄膜体であり、また、主たる成分がセルロース系樹脂であり、イオントフォレーシス装置としての使用を不可能とするような薬剤の投与特性(投与効率や安全性など)の重大な毀損を生じない限りにおいて、他の成分(樹脂や可塑剤、架橋剤など)がブレンド、配合されたセルロース系樹脂からなる薄膜体も本発明のセルロース系樹脂膜として使用できる。
また、本発明のセルロース系樹脂膜は、投与すべき薬剤イオンの分子量に応じた適切なポアサイズの多孔質膜であることが好ましく、その平均孔径は、典型的には1Å〜数μm、より好ましくは1〜1000Å、特に好ましくは1〜100Åである。
また、本発明のイオントフォレーシス装置は、作用極構造体を生体皮膚に装着した状態で使用するものであるため、ここで使用するセルロース系樹脂膜は、生体皮膚の伸縮や曲げに追随できる柔軟性と、そのような伸縮、曲げによる応力で破壊されない程度の強度とを併せ持つことが望ましいが、一般にセルロース系樹脂膜の厚みを増大させると、強度を高めることができる一方で柔軟性は失われていくため、セルロース系樹脂膜の種類に応じて、上記両特性の兼ね合いから適切な膜厚を選定することが好ましい。
また、本発明のセルロース系樹脂膜は、クロロスルホン酸、クロロ酢酸、無機環状三リン酸塩などを作用させることでスルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基などの陽イオン交換基を導入することが可能であり、これにより、薬剤投与における薬剤イオンの輸率を更に高め、薬剤の投与効率を一層向上させることが可能である。
或いは、セルロース系樹脂膜中に、陽イオン交換基が導入されたイオン交換樹脂を充填したものを本発明のセルロース系樹脂膜として使用することも可能であり、これによっても、薬剤投与における薬剤イオンの輸率を高め、薬剤の投与効率を一層上昇させることができる。
このようなセルロース系樹脂膜は、陽イオン交換基の導入が可能な官能基を有する炭化水素系単量体、架橋性単量体及び重合開始剤よりなる単量体組成物をセルロース系樹脂よりなる多孔質薄膜体に含侵させ、これに、クロロスルホン酸、クロロ酢酸、無機環状三リン酸塩などを作用させることにより得ることができる。
なお、上記セルロース系樹脂膜又はイオン交換樹脂に導入する陽イオン交換基としては、強酸性基であるスルホン酸基が最も好まい。
また、上記各陽イオン交換基は、遊離酸として存在しても良く、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオンやアンモニウムイオンなどとの塩として存在しても良い。
また本発明は、プラスの電圧が印加される電極と、プラスに荷電した薬剤イオンを含む薬剤液を保持し、前記電極の前面側に配置される薬剤保持部と、カチオン交換膜と当該カチオン交換膜の前面側に配置されるセルロース系樹脂膜とからなる複合膜であって、前記薬剤保持部の前面側に配置される複合膜とを有する作用極構造体を備え、前記セルロース系樹脂膜を介して前記薬剤イオンの投与が行われることを特徴とするイオントフォレーシス装置とすることも可能であり、これにより、薬剤投与における輸率の向上を図り、更に高い薬剤の投与効率を得ることが可能となる。
かかる本発明におけるセルロース系樹脂膜には、上記と同様のものを使用することが可能である。
またここでのカチオン交換膜としては、ポリオレフィン、塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂などの素材よりなる多孔質膜に陽イオン交換基が導入されたイオン交換樹脂を充填した構造のものを使用することが好ましく、これにより、薬剤投与における輸率の一層の向上を達成することができる。
また上記複合膜は、カチオン交換膜とセルロース系樹脂膜との界面に空気層が介在することを防止するために、両者の界面を接合して一体化させたものを使用することが好ましい。
接合の方法としては、熱融着、超音波接合、シアノアクリレート系などの接着剤による接着、ジビニルベンゼンなどの架橋剤による架橋反応を挙げることができ、或いは、カチオン交換膜上に塗布されたセルロース銅アンモニア溶液に硫酸を作用させてセルロースの再生を行うなど、カチオン交換膜上においてセルロース樹脂膜の製膜を行うことによってもカチオン交換膜とセルロース系樹脂膜の接合を行うことが可能である。
ここで、接着、架橋反応、或いは、カチオン交換膜上でのセルロース樹脂膜の製膜などの方法で接合を行う場合には、エンボス加工、溝切り加工、切り目加工、機械的研磨、化学的研磨などの手法により少なくともカチオン交換膜のセルロース系樹脂膜側の表面を粗面化させた状態で接合の処理を行うことが好ましく、これにより、カチオン交換膜とセルロース系樹脂膜の密着性、一体性を高めることが可能である。
また、カチオン交換膜の粗面化は、カチオン交換膜を構成する樹脂膜に炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムなどの無機フィラー、変性ポリエチレン粒子や変性ポリアクリル酸樹脂粒子などの有機フィラーを配合することによって行うことも可能である。
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
図示されるように、本発明のイオントフォレーシス装置X1は、大きな構成要素(部材)として、作用極構造体1、非作用極構造体2及び電源3を備えている。なお、参照符号4は皮膚(又は粘膜)を示している。
作用極構造体1は、電源3のプラス極に接続された電極部材11、当該電極部材11と接触を保つようにされた電解液を保持する電解液保持部12、当該電解液保持部12の前面に配置されたアニオン交換膜13、当該アニオン交換膜13の前面に配置された薬剤保持部14、当該薬剤保持部14の前面に配置されたセルロース系樹脂膜15を備え、その全体が樹脂フィルム、プラスチックなどの材料で構成されるカバー乃至容器16に収容されている。
一方、非作用極構造体2は、電源3のマイナス極に接続された電極部材21、当該電極部材21と接触を保つようにされた電解液を保持する電解液保持部22、当該電解液保持部22の前面に配置されたカチオン交換膜23、当該カチオン交換膜23の前面に配置された電解液保持部24、当該電解液保持部24の前面に配置されたアニオン交換膜25を備え、その全体が樹脂フィルム、プラスチックなどの材料で構成されるカバー乃至容器26に収容されている。
このイオントフォレーシス装置X1において、電極部材11、21は、任意の導電性材料よりなる電極が特に制限無く使用できるが、特に、炭素、白金などから構成される不活性電極が好ましく使用でき、金属イオンの溶出、及び、その生体への移行の懸念を有さない炭素電極が特に好ましく使用できる。
しかしながら、電極部材11が銀、電極部材21が塩化銀から構成される銀/塩化銀カップル電極とするなど、活性電極を採用することも可能である。
例えば、銀/塩化銀カップル電極を用いた場合、プラス極である電極部材11においては銀電極と塩素イオン(Cl)は容易に反応し、AgCl→AgCl+eにより不溶性のAgClが生成し、マイナス極である電極部材21においては塩化銀電極から塩素イオン(Cl)が溶出する反応が生じる結果、水の電気分解反応が抑止され、プラス極でのH+イオンに基づく急激な酸性化、及びマイナス極でのOHイオンに基づく急激なアルカリ性化が防止できるという効果を得ることができる。
これに対して、図1のイオントフォレーシス装置X1における作用極構造体1、非作用極構造体2においては、アニオン交換膜13、カチオン交換膜23の作用により、電解液保持部12におけるH+イオンに基づく急激な酸性化、乃至、電解液保持部22におけるOHイオンに基づく急激なアルカリ性化が抑制されるため、銀/塩化銀カップル電極などの活性電極に代えて、安価で、かつ、金属イオン溶出の懸念が不要となる炭素電極を好適に使用することができる。
また、図1のイオントフォレーシス装置X1における電解液保持部12、22、24は、通電性を確保するための電解液を保持するものであり、この電解液としては、リン酸緩衝食塩水、生理食塩水などが典型的に使用される。
また、電解液保持部12、22には、水の電解反応によるガスの発生やこれによる導電抵抗の増大、或いは、水の電解反応によるpH変化をより効果的に防止するために、水の電解反応(プラス極での酸化及びマイナス極での還元)よりも酸化または還元されやすい電解質を添加することが可能であり、生体安全性、経済性(安価かつ入手の容易性)の観点からは、例えば、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄などの無機化合物、アスコルビン酸(ビタミンC)やアスコルビン酸ナトリウムなどの医薬剤、乳酸、シュウ酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸などの有機酸及び/又はその塩などを好ましく使用することができ、或いは、例えば、1モル(M)乳酸と1モル(M)フマル酸ナトリウムの1:1混合水溶液など、これらを組み合わせて使用することもできる。
なお、これら電解液保持部12、22、24は、上記のような電解液を液体状態で保持するものとしても構わないが、高分子材料などで形成された吸水性の薄膜担体に上記のような電解液を含浸させて構成することにより、その取り扱い性などを向上させることも可能である。なお、ここで使用される薄膜担体としては、薬剤保持部14において使用可能な薄膜担体と同様のものが使用可能であるため、以下の薬剤保持部14に関する説明において併せてその詳細を説明する。
本実施形態に係るイオントフォレーシス装置X1における薬剤保持部14には、薬剤液として、少なくとも、溶解することにより薬効成分がプラスの薬剤イオンに解離する薬剤の水溶液が保持される。
ここで、薬剤保持部14は、薬剤液を液体状態で保持するものとしても構わないが、下記のような吸水性の薄膜担体に薬剤液を含浸保持させることで、その取り扱い性などを向上させることも可能である。
この場合の吸水性の薄膜担体として使用できる材料としては、例えば、アクリル系樹脂のヒドロゲル体(アクリルヒドロゲル膜)、セグメント化ポリウレタン系ゲル膜、ゲル状固体電解質形成用のイオン導電性多孔質シートなどを使用することができ、上記水溶液を20〜60%の含浸率で含浸させることにより、高い輸率(高いドラッグデリバリー性)、例えば、70〜80%を得ることができる。
なお、本明細書における含浸率は重量%であって、乾燥時の重量をD、含浸後の重量をWとしたときの100×(W−D)/D[%]である。また、含浸率の測定は、水溶液の含浸直後に測定すべきであり、経時的影響を排除すべきである。
また、輸率は、電解液中を流れる全電流のうち特定のイオンの移行に寄与する電流の割合であり、本明細書では、薬剤イオンについての輸率、即ち、作用極構造体に給電される全電流のうち薬剤イオンの移行に寄与する電流の割合の意味で用いている。
ここで、上記アクリルヒドロゲル膜(例えば、(株)サンコンタクトレンズ社から入手できる)は、三次元網目構造(架橋構造)を持ったゲル体であり、これに分散媒である電解液を添加したものは、イオン導電性を有する高分子吸着材となる。また、アクリルヒドロゲル膜の含浸率と輸率の関係は、三次元網目構造の大きさや樹脂を構成するモノマーの種類や比率によって調製可能であり、上記した含浸率30〜40%、輸率70〜80%のアクリルヒドロゲル膜は、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとエチレングリコールジメタクリレート(モノマー比98〜99.5:0.5〜2)から調製することができ、通常の厚さ0.1〜1mmの範囲では上記含浸率及び輸率は殆ど同じであることが確認されている。
また、セグメント化ポリウレタン系ゲル膜は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)をセグメントとして有し、これらを構成するモノマーとジイソシアネートとにより調整することができる。セグメント化ポリウレタン系ゲル膜は、ウレタン結合によって架橋された三次元構造を有し、このものの含浸率と輸率、粘着力の強さは、前記アクリルヒドロゲル膜と同様にネットワークの網目の大きさ及びモノマーの種類や比率をコントロールすることにより容易に調製可能である。このセグメント化ポリウレタン系ゲル膜(多孔質ゲル膜)に分散媒である水と電解質(アルカリ金属塩など)を添加したものは、セグメントを形成するポリエーテルのエーテル結合部の酸素とアルカリ金属塩がコンプレックスを形成し、電気を流したとき金属塩のイオンは次の空白のエーテル結合部の酸素に移動し、通電性が発現される。
ゲル状固体電解質形成用のイオン導電性多孔質シートとしては、例えば、特開昭11−273452に開示されたものがあり、このものは、アクリルニトリル共重合体をベースとし、空隙率20〜80%の多孔質重合体がベースとなっている。より具体的には、アクリロニトリルが50モル%以上(好ましくは70〜98モル%)、空隙率が20〜80%のアクリロニトリル系共重合体である。なお、前記アクリロニトリル系のゲル状固体電解シート(固体電池)は非水溶媒に可溶であり、空隙率20〜80%のアクリロニトリル系共重合体シートに電解質を含む非水溶媒を含浸し、ゲル化して調整され、ゲル体はゲル状から硬質の膜状のものまでを含むものである。
前記非水溶媒に可溶なアクリロニトリル系共重合体シートは、イオン導電性、安全性などの観点から、好ましくはアクリロニトリル/C1〜C4アルキル(メタ)アクリレート共重合体、アクリロニトリル/酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/塩化ビニリデン共重合体などで構成される。なお、前記共重合体シートを多孔質シートにするには、湿(乾)式抄紙法、不織布製造法の一種であるニードルパンチ法、ウォータージェット法、溶融押出しシートの延伸多孔化や溶媒抽出による多孔化などの常法が採用される。本発明において、前記した固体電池に使用されるアクリロニトリル系共重合体のイオン導電性多孔質シートのうち、高分子鎖の三次元ネットワークの中に前記水溶液を保持し、前記した含浸率と輸率が達成されるゲル体(ゲル状体から硬質の膜状体)は、本発明の薬剤保持部14、或いは、電解液保持部12、22、24に使用する薄膜担体として有用なものである。
本発明において、上記のような薄膜担体に薬剤液又は電解液を含浸させる条件は、含浸量、含浸速度などの観点から最適条件を決めればよい。例えば40℃で30分という含浸条件を選べばよい。
本実施形態に係るイオントフォレーシス装置X1におけるアニオン交換膜(マイナスイオンを選択的に通過させる特性を有するイオン交換膜)13、25としては、基材に陰イオン交換機能を有するイオン交換樹脂が担持されたイオン交換膜、例えば、(株)トクヤマ製ネオセプタ(NEOSEPTA、AM−1、AM−3、AMX、AHA、ACH、ACS、ALE04−2、AIP−21)などを使用することができ、カチオン交換膜(プラスイオンを選択的に通過させる特性を有するイオン交換膜)23としては、基材に陽イオン交換機能を有するイオン交換樹脂が担持されたイオン交換膜、例えば、(株)トクヤマ製ネオセプタ(NEOSEPTA、CM−1、CM−2、CMX、CMS、CMB、CLE04−2)などを使用することができ、特に、多孔質フィルムの空隙部の一部または全部に、陽イオン交換機能を有するイオン交換樹脂が充填されたカチオン交換膜、或いは、陰イオン交換機能を有するイオン交換樹脂が充填されたアニオン交換膜が好ましく使用することができる。
ここで、上記イオン交換樹脂としては、パーフルオロカーボン骨格にイオン交換基が導入されたフッ素系のもの又はフッ素化されていない樹脂を骨格とする炭化水素系のものが使用できるが、製造工程の簡便さから炭化水素系のイオン交換樹脂が好ましく、また、イオン交換樹脂の充填率は、多孔質フィルムの空隙率とも関係するが、一般的には5〜95質量%であり、特に、10〜90質量%、更には、20〜60質量%とすることが好ましい。
また、上記イオン交換樹脂が有するイオン交換基としては、水溶液中で負又は正の電荷を有する基を生じる官能基であれば特に限定されない。このようなイオン交換基となり得る官能基を具体的に例示すれば、陽イオン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基などが挙げられる。また、これらの酸基は、遊離酸として或いは塩の形で存在していてもよい。塩の場合の対カチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属陽イオンや、アンモニウムイオンなどが挙げられる。これらの陽イオン交換基の中でも、一般的に、強酸性基であるスルホン酸基が特に好ましい。また、陰イオン交換基としては、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウム基、4級イミダゾリウム基などが挙げられる。これら陰イオン交換基における対アニオンとしては、塩素イオンなどのハロゲンイオンやヒドロキシイオンなどが挙げられる。これら陰イオン交換基のなかでも、一般的に、強塩基性基である4級アンモニウム基や4級ピリジニウム基が好適に用いられる。
また、上記多孔質フィルムは、表裏を連通する多数の小孔を有するフィルムもしくはシート状のものが特に制限されることなく使用されるが、高い強度と柔軟性を両立させるために、熱可塑性樹脂からなるものであることが好ましい。
この多孔質フィルムを構成する熱可塑性樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘプテンなどのα−オレフィンの単独重合体または共重合体などのポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−オレフィン共重合体などの塩化ビニル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体などのフッ素系樹脂;ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂などからなるものが制限なく使用されるが、機械的強度、柔軟性、化学的安定性、耐薬品性に優れ、イオン交換樹脂との馴染みがよいことからポリオレフィン樹脂を用いるのが好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンが特に好ましく、ポリエチレンが最も好ましい。
上記熱可塑性樹脂からなる多孔質フィルムの性状は、特に限定されないが、薄くかつ強度に優れ、さらに電気抵抗も低いイオン交換膜としやすい点で、孔の平均孔径が、好ましくは0.005〜5.0μm、より好ましくは0.01〜2.0μm、最も好ましくは0.02〜0.2μmであるのがよい。なお、本明細書における平均孔径は、バブルポイント法(JIS K3832−1990)に準拠して測定される平均流孔径を意味する。同様に、多孔質フィルムの空隙率は、好ましくは20〜95%、より好ましくは30〜90%、最も好ましくは30〜60%であるのがよい。さらに、多孔質フィルムの厚みは、好ましくは5〜140μm、より好ましくは10〜120μm、最も好ましくは15〜55μmであるのがよい。通常、このような多孔質フィルムを使用したアニオン交換膜、カチオン交換膜は、多孔質フィルムの厚さ+0〜20μm程度の厚さになる。
本実施形態に係るイオントフォレーシス装置X1のセルロース系樹脂膜15としては、銅アンモニウム法や第三級アミンオキシドを用いた方法などにより生成される再生セルロース、酢酸セルロース、酢酸プロピオンセルロース、酢酸酪酸セルロースなどのセルロースエステル類、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロースエーテル類、或いは、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂から構成され、1Å〜数μm、より好ましくは1〜1000Å、特に好ましくは1〜100Å程度の平均孔径を有する、膜厚10〜200μm、特に好ましくは膜厚20〜50μmの多孔質薄膜を使用することができる。
また、上記のようなセルロース系樹脂膜は、クロロスルホン酸、クロロ酢酸、無機環状三リン酸塩などを作用させることにより、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基などの陽イオン交換基を導入することが可能であり、セルロース系樹脂膜15として、このような陽イオン交換基が導入されたセルロース系樹脂膜を使用することで、薬剤の投与効率を一層高めることが可能である。
或いは、上記のようなセルロース系樹脂からなる多孔性薄膜の空孔中に陽イオン交換樹脂を充填させたものをセルロース系樹脂膜15に使用することも可能である。
このような陽イオン交換樹脂が充填されたセルロース系樹脂膜は、陽イオン交換基が導入可能な官能基を有する炭化水素系単量体、架橋性単量体及び重合開始剤よりなる単量体組成物を上記のようなセルロース系樹脂よりなる多孔質薄膜に含侵させ、適当な反応条件の下で重合させ、これにクロロスルホン酸、クロロ酢酸、無機環状三リン酸塩などを作用させることにより得ることができる。
また、上記の陽イオン交換基が導入可能な官能基を有する炭化水素系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−ハロゲン化スチレン、ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル化合物が挙げられ、これらを1種又は2種以上使用することができ、架橋性単量体としては、ジビニルベンゼン類、ジビニルスルホン、ブタジエン、クロロプレン、ジビニルビフェニル、トリビニルベンゼンなどの多官能性ビニル化合物、トリメチロールメタントリメタクリル酸エステル、メチレンビスアクリルアミド、ヘキサメチレンジメタクリルアミドなどの多官能性メタクリル酸誘導体を使用することができ、重合開始剤としては、オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシドなどを使用することができる。
また、上記各成分の他に、必要に応じて上記炭化水素系単量体や架橋性単量体と共重合可能な他の炭化水素系単量体や、可塑剤類を添加してもよい。こうした他の単量体としては、例えば、アクリロニトリル、アクロレイン、メチルビニルケトンなどを使用することができる。また、可塑剤類としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジメチルイソフタレート、ジブチルアジペート、トリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、ジブチルセバケート、ジベンジルエーテルなどを使用することができる。
本発明のイオントフォレーシス装置における電源3としては、電池、定電圧装置、定電流装置(ガルバノ装置)、定電圧・定電流装置などを使用することができるが、0.01〜1.0mA、好ましくは、0.01〜0.5mAの範囲で任意電流調整が可能な、安全な電圧条件、具体的には、50V以下、好ましくは、30V以下で動作する定電流装置を使用することが好ましい。
本実施形態に係るイオントフォレーシス装置X1は、後述の実施例において説明する通り、セルロース系樹脂膜15に代えてカチオン交換膜が使用されていた従来のイオントフォレーシス装置と比較して格段に高い薬剤の投与効率を有する。
図2は、本発明の他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置X2の構成を示す説明図である。
図示されるように、イオントフォレーシス装置X2では、セルロース系樹脂膜15に代えて、薬剤保持部14の前面側に配置されるカチオン交換膜17aと、当該カチオン交換膜17aの前面側に配置されるセルロース系樹脂膜17bよりなる複合膜17を備える点を除いて、上記イオントフォレーシス装置X1と同一の構成を有している。
この複合膜17に使用されるカチオン交換膜17aとしては、カチオン交換膜23について上記したものと同様のカチオン交換膜を使用することができ、セルロース系樹脂膜17bとしては、セルロース系樹脂膜15について上記したものと同様のセルロース系樹脂膜を使用することができる。
この複合膜17は、カチオン交換膜17aとセルロース系樹脂膜17bの界面に空気層が介在することを防止するために、熱融着、超音波接合、接着剤による接着、架橋剤による化学結合、或いは、カチオン交換膜17a上においてセルロース系樹脂膜17bの製膜を行うなどの方法により、両者の界面を接合したものを使用することが好ましく、接着或いは化学結合などにより接合を行う場合には、その接合の一体性、密着性を良好なものとするため、エンボス加工、溝切り加工、切り目加工、機械的研磨、化学的研磨などの手法により、或いは、セルロース系樹脂に炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムなどの無機フィラー、変性ポリエチレン粒子や変性ポリアクリル酸樹脂粒子などの有機フィラーを配合することにより、少なくとも接合側表面を粗面化させたセルロース系樹脂膜17bを使用することが好ましい。
なお、熱融着や超音波接合の条件、接着剤の種類や接着条件、架橋剤の種類や架橋条件などは、カチオン交換膜17aの種類(主にカチオン交換膜17aに使用される多孔性樹脂膜の種類)及びセルロース系樹脂膜17bの種類に応じて適宜決定することができるが、ここでの接合は、カチオン交換膜17aとセルロース系樹脂膜17bの界面に空気層が介在することにより薬剤の投与効率が低下することを防止することを目的とするものであるから、イオントフォレーシス装置を装着している間の皮膚の伸縮や曲げによって界面が剥離してしまわない程度の強度をもって接合されていれば十分である。
本実施形態に係るイオントフォレーシス装置X2では、カチオン交換膜17aにより複合膜17のイオン交換能が高められているために、薬剤投与における輸率を上昇させることが可能であり、イオントフォレーシス装置X1と同等或いはそれ以上に高い薬剤の投与効率を得ることができる。
実施例1(インビボ試験1)
試験動物として20〜24週令のC57BL/6マウス(雌)を使用し、上記イオントフォレーシス装置X1による塩酸モルヒネの投与実験を行った。
なお、イオントフォレーシス装置X1のアニオン交換膜13、25として(株)トクヤマ製ネオセプタALE04−2を、カチオン交換膜23として(株)トクヤマ製ネオセプタCLE04−2を、セルロース系樹脂膜15としてビスケース社(米国イリノイ州)より入手したα−セルロース99%の再生セルロース製透析膜UC8−32−25(平均孔径:50Å、透過分子量(MWCO):約14000、膜厚:50μm)を使用し、薬剤保持部14の薬剤液としては、50mg/mLの塩酸モルヒネを、電解液保持部12、22、24の電解液としては、0.7mol/Lのフマル酸ナトリウム水溶液と0.7mol/Lの乳酸水溶液の7:1の混合液を使用した。また、作用極構造体1の有効面積(薬剤が投与されるセルロース系樹脂膜15の膜面の面積/図1中の符号S参照)は2.23cmである。
また、薬剤の投与は、作用極構造体1及び非作用極構造体2を上記マウスの剃毛した腹部の異なる部位に当接し、通電電流0.45mA/cmの定電流条件下で120分間連続通電することにより行った。
上記条件での通電中のマウスの血中モルヒネ濃度の推移を図3(a)に、また、通電開始前及び終了後の電解液保持部12、22、24の電解液及び薬剤保持部14の薬剤液のpH値を図3(b)示す。
比較例1(インビボ試験2)
セルロース系樹脂膜15に代えて、カチオン交換膜((株)トクヤマ製ネオセプタCLE04−2)を使用したこと以外は実施例1のイオントフォレーシス装置X1と同一構造のイオントフォレーシス装置を用い、実施例1と同一の条件でマウスに対する塩酸モルヒネの投与を行った。
なお、アニオン交換膜であるネオセプタALE04−2及びカチオン交換膜であるCLE04−2は、多孔質膜の空隙部にイオン交換樹脂が充填された構造を有するイオン交換膜であり、比較例1で使用したイオントフォレーシス装置は、従来技術において最も高い薬剤の投与効率が得られるとされていた特許文献11のイオントフォレーシス装置と同一の構成を有している。
比較例1における通電中のマウスの血中モルヒネ濃度の推移は図4に示す通りである。
参考例1(インビトロ試験1)
実施例1において使用したイオントフォレーシス装置X1と等価の構造を有する試験装置を製作し、0.45mA/cmの定電流条件で120分間の連続通電を行った。
図5は当該試験装置の構造を示す説明図であり、図中11、21は電極板であり、13、25はアニオン交換膜((株)トクヤマ製ネオセプタALE04−2)であり、23はカチオン交換膜((株)トクヤマ製ネオセプタCLE04−2)であり、15はセルロース系樹脂膜(ビスケース社製透析膜UC8−32−25)であり、4はマウスより採取した皮膚である。また、これらの膜11、13、15、4、25、23により区画されるA室、D室及びE室には電解液として0.7mol/Lのフマル酸ナトリウム水溶液と0.7mol/Lの乳酸水溶液の7:1の混合液を、B室には薬剤液として50mg/mLの塩酸モルヒネを、C室には生理食塩水を使用した。
参考例1における通電中のC室におけるモルヒネ濃度の推移を図6に示す。
比較参考例1(インビトロ試験2)
比較例1において使用したイオントフォレーシス装置と等価の構造を有する試験装置、即ち、図5におけるセルロース系樹脂膜15に代えて、カチオン交換膜((株)トクヤマ製ネオセプタCLE04−2)を使用したこと以外は、参考例1と同一の試験装置を用い、0.45mA/cmの定電流条件で120分間の連続通電を行った。
比較参考例1おける通電中のC室におけるモルヒネ濃度の推移を図7に示す。
図3(a)と図4の対比から明らかなように、本発明に係るイオントフォレーシス装置では、従来薬剤の投与効率が最も高いとされていた比較例1の構造のイオントフォレーシス装置と比較しても、実に5〜10倍以上の効率でモルヒネの投与がなされている。
また、図3(b)に示されるように、本発明に係るイオントフォレーシス装置の電解液保持部12、22、24の電解液及び薬剤保持部14の薬剤液は、通電の前後を通じて殆どpH値に変化を生じておらず、薬剤投与の安全性、安定性が確保されていることが分かる。
また、図6、図7に示されるように、インビトロ試験では、本発明の構造の試験装置(参考例1)におけるモルヒネの移行速度は、従来構造の試験装置(比較参考例1)に比較して数十%程度劣っていた。
本発明が属する技術分野では、装置の部材材料の選定などの段階においては、生体を使用しないインビトロでの評価、検討が行われるのが通例であり、上記のように、セルロース系樹脂膜を使用することによる効果がインビボでの評価を行うことにより初めて確認することが可能であり、インビトロでの評価では確認することができないという事実は、本発明を構成することの困難性を実証するものであると言える。
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲において、種々の改変が可能である。
例えば、上記実施形態では、作用極構造体が電極部材11、薬剤保持部14、及び、セルロース系樹脂膜15(又は複合膜17)に加えて、電解液保持部12、及び、アニオン交換膜13を備える場合について説明したが、電解液保持部12及びイオン交換膜13は省略することも可能であり、その場合には、薬剤の電極部材11近傍での分解の抑制機能やHイオンの皮膚界面への移動、及び、それによる皮膚界面におけるpHの変動の抑制機能などにおいて上記した実施形態に及ばない点はあるものの、本発明の基本的な作用効果である薬剤の生体への投与効率の向上は同様に達成されるのであり、そのようなイオントフォレーシス装置も本発明の範囲に含まれる。
同様に、非作用極構造体に関しては、カチオン交換膜23及び電解液保持部24、或いはこれらに加えてアニオン交換膜25を省略することが可能であり、その場合には、非作用極構造体2の皮膚4との当接面におけるpH変化の抑制性能において上記した実施形態に及ばない点はあるものの、本発明の基本的な作用効果である薬剤の生体への投与効率の向上は同様に達成されるのであり、そのようなイオントフォレーシス装置も本発明の範囲に含まれる。
或いは、イオントフォレーシス装置そのものには非作用極構造体2を設けずに、例えば、生体皮膚に作用極構造体を当接させる一方、アースとなる部材にその生体の一部を当接させた状態で作用極構造体に電圧を印加して薬剤の投与を行うようにすることも可能であり、そのようなイオントフォレーシス装置も本発明の基本的な作用効果である薬剤の生体への投与効率の向上は同様に達成するのであり、本発明の範囲に含まれる。
また、上記実施形態では、作用極構造体、非作用極構造体、及び、電源がそれぞれ別体として構成されている場合について説明したが、これらの要素を単一のケーシング中に組み込み、或いは、これらを組み込んだ装置全体をシート状乃至パッチ状に形成して、その取扱性を向上させることも可能であり、そのようなイオントフォレーシス装置も本発明の範囲に含まれる。
本発明の一実施形態に係るイオントフォレーシス装置の構成を示す説明図。 本発明の他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置の構成を示す説明図。 本発明に係るイオントフォレーシス装置を用いて塩酸モルヒネをマウスに投与したときの血中モルヒネ濃度の時間推移(a)並びに薬剤投与の前後における薬剤液及び電解液のpH値(b)。 従来のイオントフォレーシス装置を用いて塩酸モルヒネをマウスに投与したときの血中モルヒネ濃度の時間推移。 インビトロでのモルヒネ移行特性の評価に用いた試験装置の構成を示す説明図。 本発明のイオントフォレーシス装置に等価な試験装置におけるモルヒネ移行特性の評価結果。 従来のイオントフォレーシス装置に等価な試験装置におけるモルヒネ移行特性の評価結果。
符号の説明
X1、X2 イオントフォレーシス装置
1 作用極構造体
11 電極部材
12 電解液保持部
13 アニオン交換膜
14 薬剤保持部
15 セルロース系樹脂膜
16 容器
17 複合膜
17a カチオン交換膜
17b セルロース系樹脂膜
2 非作用極構造体
21 電極部材
22 電解液保持部
23 カチオン交換膜
24 電解液保持部
25 アニオン交換膜
26 容器
4 皮膚

Claims (9)

  1. プラスの電圧が印加される電極と、
    プラスに荷電した薬剤イオンを含む薬剤液を保持し、前記電極の前面側に配置される薬剤保持部と、
    前記薬剤保持部の前面側に配置されるセルロース系樹脂膜とを有する作用極構造体を備え、
    前記セルロース系樹脂膜を介して前記薬剤イオンの投与が行われることを特徴とするイオントフォレーシス装置。
  2. プラスの電圧が印加される電極と、
    プラスに荷電した薬剤イオンを含む薬剤液を保持し、前記電極の前面側に配置される薬剤保持部と、
    カチオン交換膜と当該カチオン交換膜の前面側に配置されるセルロース系樹脂膜とからなる複合膜であって、前記薬剤保持部の前面側に配置される複合膜とを有する作用極構造体を備え、
    前記セルロース系樹脂膜を介して前記薬剤イオンの投与が行われることを特徴とするイオントフォレーシス装置。
  3. 前記カチオン交換膜と前記セルロース系樹脂膜の界面を接合することにより、前記カチオン交換膜と前記セルロース系樹脂膜が一体化されていることを特徴とする請求項2に記載のイオントフォレーシス装置。
  4. 前記カチオン交換膜の前記セルロース系樹脂膜側の表面に粗面化処理が施されており、
    前記界面が、接着剤による接着、架橋剤による架橋反応又は前記カチオン交換膜上での前記セルロース系樹脂膜の製膜のいずれかにより接合されていることを特徴とする請求項3に記載のイオントフォレーシス装置。
  5. 前記カチオン交換膜が、多孔質膜の空隙部にイオン交換樹脂が充填された構造を有することを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のイオントフォレーシス装置。
  6. 前記セルロース系樹脂膜に陽イオン交換基が導入されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のイオントフォレーシス装置。
  7. 前記セルロース系樹脂膜に陽イオン交換基が導入されたイオン交換樹脂が充填されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のイオントフォレーシス装置。
  8. 前記作用極構造体が、前記電極と接触を保つようにされた電解液を保持する電解液保持部と、前記電解液保持部の前面側に配置されるアニオン交換膜を更に備え、
    前記薬剤保持部が、前記アニオン交換膜の前面側に配置されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のイオントフォレーシス装置。
  9. マイナスの電圧が印加される第2電極と、
    前記第2電極と接触を保つようにされた電解液を保持する第2電解液保持部と、
    前記第2電解液保持部の前面側に配置される第2カチオン交換膜と、
    前記第2カチオン交換膜の前面側に配置され、電解液を保持する第3電解液保持部と、
    前記第3電解液保持部の前面側に配置される第2アニオン交換膜とを有する非作用極構造体を更に備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のイオントフォレーシス装置。
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