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JP2006293342A - 光学樹脂フィルム、偏光板及び液晶表示装置 - Google Patents

光学樹脂フィルム、偏光板及び液晶表示装置 Download PDF

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JP2006293342A
JP2006293342A JP2006073360A JP2006073360A JP2006293342A JP 2006293342 A JP2006293342 A JP 2006293342A JP 2006073360 A JP2006073360 A JP 2006073360A JP 2006073360 A JP2006073360 A JP 2006073360A JP 2006293342 A JP2006293342 A JP 2006293342A
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伸隆 深川
Osamu Uchida
内田  修
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Abstract

【課題】面内レターデーションの波長分散と厚み方向レターデーションの波長分散を独立に制御した光学樹脂フィルムを提供し、さらに、面内レターデーションが短波長側ほど小さく(逆波長分散)且つ厚み方向レターデーションが短波長側ほど大きい(順波長分散)偏光板を液晶表示装置に用いることで、色味変化が少なく、コントラストの視野角依存性が改良された表示品位の高い液晶表示装置を提供する。
【解決手段】負の固有複屈折性を有する添加剤を少なくとも1種と、正の固有複屈折性を有する添加剤を少なくとも1種とを含有することを特徴とする延伸光学樹脂フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、光学補償シート、偏光板及び液晶表示装置とに関する。
液晶表示装置は、消費電力の小さい省スペースの画像表示装置として年々用途が広がっている。従来、画像の視野角依存性が大きいことが液晶表示装置の大きな欠点であったが、近年、VAモードの高視野角液晶モードが実用化されており、これによりテレビ等の高品位の画像が要求される市場でも液晶表示装置の需要が急速に拡大しつつある。
これに伴い液晶表示装置において、色味、コントラスト、及びそれらの視角依存性改良に用いられる光学補償部材に対しても光学補償能のさらなる向上が求められている。
VAモード用の液晶表示装置用の光学補償フィルムとして特許文献1には、液晶表示装置の視野角度特性改善のために用いる負のCプレートと正のAプレートとを、特定の波長分散特性の組み合わせにして積層型にすることにより、高コントラストで干渉ムラやカラーシフトがなく色再現性の良い液晶表示装置を可能にする技術が知られている。しかし、この方法ではAプレート、及びCプレートの基材フィルムを偏光板の保護フィルムとして用いる場合に、偏光膜との接着が難しく粘着加工等が必要でありコストがかさむ問題があった。
さらに特許文献2には正の屈折率異方性を有する樹脂と、負の屈折率異方性を有する樹脂と、二色性を示すレターデーション調整剤とを混合してなり、又は正の屈折率異方性を有する高分子を形成する繰り返し単位、及び負の屈折率異方性を有する高分子を形成する前記繰り返し単位を有する共重合樹脂と前記レターデーション調整剤とを混合して成る1枚の位相差フィルムにより、広帯域(短波長域から長波長域)における位相差特性に優れ、かつ反射LCDに用いた場合に短波長域及び長波長域においても良好な反射防止効果を有する位相差フィルムを提供する技術が開示されている。しかし、この方法ではフィルムを作製するための材料が高価にならざるを得ないものや、製造コストが高く量産性が悪い問題があった。
また特許文献3には、正の固有複屈折値を有する材料を主成分とする第1層と、負の固有複屈折率値を有する材料を主成分とする第2層とをそれぞれ少なくとも一層有する積層体を延伸することにより形成されるところの、複屈折を有する積層位相差板により、高コントラストで干渉ムラやカラーシフトがなく色再現性の良い液晶表示装置を可能にする技術が開示されている。しかし、この方法では軟化温度が異なる積層体をある温度で延伸するために、各層の最適延伸温度からずれてしまい十分な性能が発現しない問題があった。
特開2004−326089号公報 特開2004−325523号公報 特開2004−325971号公報
本発明の目的は、面内レターデーションの波長分散と厚み方向レターデーションの波長分散を独立に制御した光学樹脂フィルムを提供することである。また別の本発明の目的は、面内レターデーションが短波長側ほど小さく(逆波長分散)且つ厚み方向レターデーションが短波長側ほど大きい(順波長分散)偏光板を液晶表示装置に用いることで、色味変化が少なく、コントラストの視野角依存性が改良された表示品位の高い液晶表示装置を提供することである。
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の手段により上記課題を達成出来ることを見出した。
1)負の固有複屈折性を有する添加剤を少なくとも1種と、正の固有複屈折性を有する添加剤を少なくとも1種とを含有することを特徴とする延伸光学樹脂フィルム。
2)前記正の固有複屈折性添加剤の最も長波長側の吸収極大と前記負の固有複屈折性添加剤の最も長波長側の吸収極大よりも短波長側に存在する上記1)に記載の延伸光学樹脂フィルム。
3)レターデーションが下記(A)〜(F)の関係を満たし、より好ましくは下記(G)〜(L)を満たし、さらに好ましくは下記(M)〜(R)を満たすことを特徴とする上記2)に記載の実質的に透明な延伸光学樹脂フィルム。
0nm<Re(546)<300nm (A)
30nm<Rth(546)<700nm (B)
0.1<Re(480)/Re(546)<1.0 (C)
1.0<Re(628)/Re(546)<4.0 (D)
0.8<Rth(480)/Rth(546)<4.0 (E)
0.1<Rth(628)/Rth(546)<1.2 (F)
20nm<Re(546)<200nm (G)
70nm<Rth(546)<500nm (H)
0.3<Re(480)/Re(546)<1.0 (I)
1.0<Re(628)/Re(546)<3.0 (J)
1.0<Rth(480)/Rth(546)<3.0 (K)
0.3<Rth(628)/Rth(546)<1.0 (L)
30nm<Re(546)<150nm (M)
100nm<Rth(546)<400nm (N)
0.5<Re(480)/Re(546)<1.0 (O)
1.0<Re(628)/Re(546)<2.0 (P)
1.0<Rth(480)/Rth(546)<2.0 (Q)
0.5<Rth(628)/Rth(546)<1.0 (R)
4)前記延伸ポリマーフィルムがセルロースアシレートフィルムである上記1)〜3)のいずれかに記載の延伸ポリマーフィルム。
5)延伸ポリマーフィルムがシクロオレフィン系ポリマーフィルムである上記1)〜3)のいずれかに記載の延伸ポリマーフィルム。
6)1〜5の延伸ポリマーフィルム上に光学異方性層を有する光学補償シート。
7)偏光子及びその両側に配置された2枚の保護フィルムからなり、少なくとも1枚の保護フィルムが請求項1〜5に記載の延伸ポリマーフィルムである偏光板。
8)偏光子及びその両側に配置された2枚の保護フィルムからなり、少なくとも1枚の保護フィルムが6の光学補償シートである偏光板。
9)液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板を有し、少なくとも1つの偏光板が7〜8に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
10)該液晶セルがVAモードである9に記載の液晶表示装置。
11)該液晶セルがOCBモードである9に記載の液晶表示装置。
本発明の負の固有複屈折性を有する添加剤を少なくとも1種と、正の固有複屈折性を有する添加剤を少なくとも1種とを含有することを特徴とする延伸光学樹脂フィルムにおいては面内レターデーション、厚み方向レターデーション、および波長分散性を簡便に、かつ広範囲で制御することが出来る。本発明においてはこれらのうち面内レターデーションが逆波長分散で且つ厚み方向レターデーションが順波長分散である光学樹脂フィルムが特に好ましい。
このような光学特性を有する光学樹脂フィルムは、正の固有複屈折性添加剤として面内レターデーションの可視光領域における波長分散特性が実質的にフラットまたは逆分散である特性を有しているものを用い、これに負の固有複屈折性を有する添加剤を添加して延伸することで得られる。
すなわち該光学樹脂フィルムに、正の固有複屈折性添加剤を添加すると該添加剤は分子の長軸方向と分極率異方性が最大となる方向が実質的に並行であるために、光学樹脂フィルムの面内レターデーションが発現しやすくなる。また同時に負の固有複屈折性添加剤を添加すると、該添加剤は分子の長軸方向と分極率異方性が最大となる方向が直交しているために該光学樹脂と該添加剤との面内レターデーションの発現方向が直交し、該光学樹脂の面内レターデーションは該添加剤の面内レターデーションの値だけ打ち消されることになる。
このため、例えば正の固有複屈折性を有する添加剤の面内レターデーションの可視光領域における波長分散特性が実質的にフラットまたは逆分散である特性を有している場合に、負の固有複屈折性添加剤の面内レターデーションの波長分散特性が順分散であれば、結果として出来る正の固有複屈折性添加剤を含む該延伸光学フィルムの面内レターデーションの波長分散特性は、該延伸フィルムの面内レターデーションの波長分散特性がフラットだった場合は逆分散に、逆分散だった場合はより大きな逆分散特性を有するようになる。
これに対して厚み方向レターデーションは、該光学樹脂及び該添加剤の双方が面内配向しており分極率異方性が最大となる方向も面内に配向しているため、面内レターデーションとは逆に互いに強め合うことになる。仮に正および負の固有複屈折性添加剤が、該光学樹脂のフラット乃至逆分散である波長分散特性を上回る順分散特性を有していれば、結果として該延伸光学フィルムの厚み方向レターデーションは順分散特性を有するようになる。
以上のことによって面内レターデーションが逆波長分散で且つ厚み方向レターデーションが順波長分散である光学樹脂フィルムが環便に実現出来ることを見出し、本発明を完結するに至った。
本発明においては、特に正の固有複屈折性添加剤を用いることで、延伸倍率を過度に上げることなく広範囲に面内レターデーションを調整することができるので、簡便かつ安定に延伸樹脂フィルムを作製することが可能となった。
更に本発明によれば、コントラストの視野角が広く、長時間点灯しても色味変化の少ない液晶表示装置が得られる。
以下本発明について詳細に説明する。
本発明にこの発明に係る位相差フィルムは、負の固有複屈折性添加剤のうち少なくとも1種と、正の固有複屈折性添加剤のうち少なくとも1種とを含有することを特徴とする延伸ポリマーフィルムである。
本明細書において「正の固有複屈折性添加剤」とは、マトリックスとなる高分子樹脂の配向につれて配向し、配向方向に対してほぼ平行な方向に大きな分極率を持つものであり、「負の固有複屈折性添加剤」とは、マトリックスとなる高分子樹脂の配向につれて配向し、配向方向に対してほぼ直交する方向に大きな分極率を持つものである。ここで、添加剤分子の配向方向は高分子樹脂の配向と厳密に同じ方向でなくてもよく、高分子鎖の配向方向にほぼ直交する方向に大きな分極率異方性をもつことが重要である。なお、偏光ラマン分光法、偏光IR等を用いて高分子主鎖や添加剤分子の配向方向を測定でき、またこれらの分極率異方性も別途測定できるため、高分子鎖と添加剤の両者の相対関係は容易に把握することができる。
本発明の正の固有複屈折性添加剤としては、その固有複屈折値の波長分散が小さいか、逆分散性を示すものが好ましく、具体的には、波長450nmおよび波長550nmの固有複屈折値(Δn)を、各々、Δn(450)およびΔn(550)としたとき、下記関係式を満たすものから選ばれるのが好ましい。
|Δn(450)/Δn(550)| ≦ 1.00
さらに、下記関係式を満たすものから選ばれるのがより好ましい。
|Δn(450)/Δn(550)| ≦ 0.95
尚、|Δn(450)/Δn(550)|の値は大きいほうが好ましい。
上記の条件を満たすものであればその構造や分子量は問われないが、該高分子樹脂と相溶性が高くかつ分極率異方性の大きい化合物が好ましい。また、該添加剤は150nm〜400nmの波長領域に吸収極大を持つことが好ましく、150nm〜300nmの波長領域に吸収極大を持つことがより好ましく、150nm〜250nmの波長領域に吸収極大を持つことが特に好ましい。このような添加剤の具体的な例としてはポリビニルアルコール系オリゴマー、ポリカーボネート系オリゴマー、オレフィン系オリゴマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ノルボルネン系オリゴマー、及び下記化学式(A1)で示す添加剤等が挙げられる。中でも化学式(A1)で示す添加剤等を用いることが特に好ましい。ただし本発明は上記の具体例によって何ら限定されることはない。
上記の正の固有複屈折性添加剤の該高分子樹脂100質量部に対する含有量は0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜15質量%がより好ましく、1〜10質量%が更に好ましい。
また、本発明の正の固有複屈折性添加剤は、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランの有機溶媒に溶解してから、該高分子樹脂溶液(ドープ)に添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。
前記正の固有複屈折性添加剤としては、下記一般式(A1)で表される化合物であることが、紫外域低波長側に吸収極大をもち、且つ固有複屈折性が大きい添加剤である点で好ましい。
Figure 2006293342
[式(A1)中、Ar1、Ar2、Ar3はアリール基または芳香族ヘテロ環を表し、L1、L2は単なる結合、または2価の連結基を表す。nは3以上の整数を表し、それぞれAr2、L2は同一であっても異なっていても良い。]
次に、本発明の一般式(A1)で表される化合物に関して詳細に説明する。
一般式(A1)中、Ar1、Ar2、Ar3はアリール基または芳香族ヘテロ環を表し、L1、L2は単なる結合、または2価の連結基を表す。nは3以上の整数を表し、それぞれAr2、L2は同一であっても異なっていても良い。
Ar1、Ar2、Ar3はアリール基または芳香族ヘテロ環を表し、Ar1、Ar2、Ar3で表されるアリール基として好ましくは炭素数6〜30のアリール基であり、単環であってもよいし、さらに他の環と縮合環を形成してもよい。また、可能な場合には置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。
一般式(A1)中、Ar1、Ar2、Ar3で表されるアリール基としてより好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。
一般式(A1)中、Ar1、Ar2、Ar3で表される芳香族ヘテロ環としては酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含む芳香族ヘテロ環であればいずれのヘテロ環でもよいが、好ましくは5ないし6員環の酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含む芳香族ヘテロ環である。また、可能な場合にはさらに置換基を有してもよい。置換基としては後述の置換基Tが適用できる。
一般式(A1)中、Ar1、Ar2、Ar3で表される芳香族ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン、ピロロトリアゾール、ピラゾロトリアゾールなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾールである。
一般式(A1)中、L1、L2は単なる結合、または2価の連結基を表し、2価の連結基の例として好ましくは、−NR7−(R7は水素原子、置換基を有していても良いアルキル基またはアリール基を表す)で表される基、−SO2−、−CO−、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−S−、−SO−およびこれらの2価基を2つ以上組み合わせて得られる基であり、その内より好ましいものは−O−、−CO−、−SO2NR7−、−NR7SO2−、−CONR7−、−NR7CO−、−COO−、および−OCO−、アルキニレン基であり、最も好ましくは−CONR7−、−NR7CO−、−COO−、および−OCO−、アルキニレン基である。
本発明の一般式(A1)で表される化合物において、Ar2はL1およびL2と結合するがAr2がフェニレン基である場合、L1-Ar2-L2、およびL2-Ar2-L2は互いにパラ位(1,4-位)の関係にあることが最も好ましい。
nは3以上の整数を表し、好ましくは3ないし7であり、より好ましくは3ないし5である。
一般式(A1)のうち好ましくは一般式(A2)である。以下、一般式(A2)について詳しく説明する。
Figure 2006293342
式(A2)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R21、R22、R23およびR24は水素原子または置換基を表す。Ar2はアリール基または芳香族ヘテロ環を表し、L2、L3は単なる結合、または2価の連結基を表す。nは3以上の整数を表し、それぞれAr2、L2は同一であっても異なっていても良い。
Ar2、L2、およびnは一般式(A1)の例と同一であり、L3は単なる結合、または2価の連結基を表し、2価の連結基の例として好ましくは、−NR7−(R7は水素原子、置換基を有していても良いアルキル基またはアリール基を表す)で表される基、アルキレン基、置換アルキレン基、−O−、およびこれらの2価基を2つ以上組み合わせて得られる基であり、その内より好ましいものは−O−、−NR7−、−NR7SO2−、および−NR7CO−である。
11、R12、R13、R14、R15およびR16はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基であり、より好ましくは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基など)、炭素数6〜12のアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基)であり、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。
22、R23およびR24それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4、より好ましくはメチル基)である。
以下に前述の置換基Tについて説明する。
置換基Tとして好ましくはハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、
アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル)、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、
シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N-メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p-クロロフェノキシカルボニルアミノ、m-n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、
スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキルおよびアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイルベンゾイル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリールおよびヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)を表わす。
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていても良い。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
以下に一般式(A1)および一般式(A2)で表される化合物に関して具体例を挙げて詳細に説明するが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。
Figure 2006293342
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[負の固有複屈折性添加剤]
次に本発明に使用する負の固有複屈折性添加剤について説明する。
本明細書において「負の固有複屈折性添加剤」とは、その添加剤が一軸性の秩序をもって配向したときに、光学的に負の一軸性を示す特性を有する材料を意味する。例えば、その材料が一軸性の配向をとって形成された層に光が入射したとき、前記配向方向の光の屈折率が前記配向方向に直交する方向の光の屈折率より小さくなる材料は、負の固有複屈折値添加剤である。
特に本発明においてはこの「負の固有複屈折性添加剤」がマトリックスとなる高分子樹脂の配向につれて配向し、配向方向に対してほぼ直交する方向に最も大きな分極率異方性を発現させる。ここで、添加剤分子の配向方向は高分子樹脂の配向と厳密に同じ方向でなくてもよく、高分子鎖の配向方向にほぼ直交する方向に最も大きな分極率異方性をもつことが重要である。なお分極率異方性が大きい置換基の配向方向としては、高分子樹脂の配向方向に直交しつつフィルム面内方向に配向する場合、及び直交しつつフィルム厚み方向に配向する場合の2通りに大きく分けられる。本発明の光学フィルムは面内レターデーションが逆分散特性であり、かつ膜厚方向レターデーションが順分散特性を有することが好ましい。そのためには、分極率異方性が大きい置換基が高分子樹脂の配向方向に直交しつつフィルム面内方向に配向することが好ましい。本発明においては、偏光ラマン分光法、偏光IR等を用いて高分子主鎖や添加剤分子の配向方向を測定でき、またこれらの分極率異方性も別途測定できるため、高分子鎖と添加剤の両者の相対関係は容易に把握することができる。
本発明の負の固有複屈折性添加剤としては、その固有複屈折値の波長分散が大きいものが好ましく、具体的には、波長450nmおよび波長550nmの固有複屈折値(Δn)を、各々、Δn(450)およびΔn(550)としたとき、下記関係式を満たすものから選ばれるのが好ましい。
|Δn(450)/Δn(550)| > 1.02
さらに、下記関係式を満たすものから選ばれるのがより好ましい。
|Δn(450)/Δn(550)| > 1.05
尚、|Δn(450)/Δn(550)|の値は大きいほうが好ましいが、樹脂の場合一般的には2.0以下である。
上記の条件を満たすものであればその構造や分子量は問われないが、該高分子樹脂と相溶性が高くかつ分極率異方性の大きい化合物が好ましい。また、該添加剤は200nm〜400nmの波長領域に吸収極大を持つことが好ましく、200nm〜350nmの波長領域に吸収極大を持つことがより好ましく、250nm〜350nmの波長領域に吸収極大を持つことが特に好ましい。このような添加剤の具体的な例としてはポリスチレン、ポリスチレン系ポリマー(スチレン及び/又はスチレン誘導体と他のモノマーとの共重合体)、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、セルロースエステル系ポリマー、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマー、スチレンオリゴマー、ベンジルメタクリレートオリゴマー、セルロースエステル系オリゴマー(前記固有複屈折値が正であるものを除く)などが挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
前記ポリスチレン系ポリマーとしては、スチレン及び/又はスチレン誘導体と他のモノマーとの共重合体等が挙げられ、中でもスチレン及び/又はスチレン誘導体と、アクリルニトリル、無水マレイン酸、メチルメタクリレートおよびブタジエンから選ばれる少なくとも一種との共重合体が好ましい。
この発明においては、これらの中でも、ポリスチレン、ポリスチレン系ポリマー、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート系ポリマーの中から選択される少なくとも一種が好ましく、これらの中でも、複屈折発現性が高いという観点から、ポリスチレン、及びポリスチレン系ポリマーがより好ましく、耐熱性が高い点で、スチレン及び/又はスチレン誘導体と無水マレイン酸との共重合体が特に好ましい。ただし本発明は上記の具体例によって何ら限定されることはない。
上記の負の固有複屈折性添加剤の該高分子樹脂100質量部に対する含有量は0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜15質量%がより好ましく、1〜10質量%が更に好ましい。
本発明の負の固有複屈折性添加剤は、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランの有機溶媒に溶解してから、該高分子樹脂溶液(ドープ)に添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。
本発明においては用いる正の固有複屈折性を有する添加剤の最も長波長側の吸収極大が、負の固有複屈折性を有する添加剤の最も長波長側の吸収極大よりも短波長側に存在することが好ましい。すなわち吸収極大が短波にある正の添加剤ほど波長に対する屈折率変化が小さくなり、該添加剤に比べてより吸収極大が長波にある負の添加剤ほど波長に対する屈折率変化が大きくなる。これらの添加剤を併用した光学補償フィルムを作成した場合、(波長に対する)延伸方向と延伸直交方向の屈折率差が大きくなり、結果として波長に対するRe変化も大きくなる。そのようなフィルムを作成することで、本発明に好ましい面内レターデーションの可視光領域における波長分散特性が実質的にフラットまたは逆分散である特性を発現することができる。
[光学樹脂]
次に、本発明に用いる延伸光学樹脂について詳細に記載する。
本発明で用いることのできる延伸光学樹脂としては、種々の透明高分子樹脂を挙げることができ、特に限定されない。ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルクロライド、セルロースアシレート、シクロオレフィン系ポリマー等を挙げることができる。中でも、延伸光学樹脂として、レターデーションの波長分散特性が可視光領域において実質的にフラットか逆波長分散特性を持つものを使用することが好ましい。このような特性を持つ光学樹脂としてセルロースアシレート、ポリカーボネート、シクロオレフィン系ポリマーを使用することがより好ましく、セルロースアシレートとしてはセルロースアセテートを使用することが特に好ましい。
(セルロースアシレート)
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)を意味する。全アシル置換度すなわちD2+D3+D6は2.00〜2.96が好ましく、より好ましくは2.22〜2.95であり、特に好ましくは2.40〜2.94である。これらのセルロースアシレートフィルムにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。更に粘度が低くろ過性のよい溶液の作成が可能となる。
セルロースの水酸基の置換基はアセチル基であることが好ましい。また、セルロースの水酸基に置換されている炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい置換基としては、プロピオニル、ブタノイル、ケプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso‐ブタノイル、t‐ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t‐ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどがより好ましい。特に好ましくはプロピオニル、ブタノイルである。
(セルロースアシレートの合成方法)
セルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田伸彦他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法である。具体的には、綿花リンタや木材パルプ等のセルロース原料を適当量の酢酸で前処理した後、予め冷却したカルボン酸化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。上記カルボン酸化混液は、一般に溶媒としての酢酸、エステル化剤としての無水カルボン酸および触媒としての硫酸を含む。無水カルボン酸は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。アシル化反応終了後に、系内に残存している過剰の無水カルボン酸の加水分解およびエステル化触媒の一部を中和するために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩または酸化物)の水溶液を添加する。次に、得られた完全セルロースアシレートを少量の酢化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、50〜90℃に保つことによりケン化熟成し、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは中和することなく水または希硫酸中にセルロースアシレート溶液を投入(あるいは、セルロースアシレート溶液中に、水または希硫酸を投入)してセルロースアシレートを分離し、洗浄および安定化処理によりセルロースアシレートを得る。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、フィルムを構成するポリマー成分が実質的に上記の定義を有するセルロースアシレートからなることが好ましい。『実質的に』とは、ポリマー成分の55質量%以上(好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上)を意味する。フィルム製造の原料としては、セルロースアシレート粒子を使用することが好ましい。使用する粒子の90質量%以上は、0.5〜5mmの粒子径を有することが好ましい。また、使用する粒子の50質量%以上が1〜4mmの粒子径を有することが好ましい。セルロースアシレート粒子は、なるべく球形に近い形状を有することが好ましい。
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度200〜700、好ましくは250〜550、更に好ましくは250〜400であり、特に好ましくは粘度平均重合度250〜350である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。更に特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。本発明のセルロースアシレートの製造時に使用される際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下の含水率を有するセルロースアシレートである。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており2.5〜5質量%が知られている。本発明でこのセルロースアシレートの含水率にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。
本発明に使用するこれらのセルロースアシレートは、その原料綿や合成方法は発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の7頁〜12頁に詳細に記載されている。
[光学樹脂フィルムの製造]
本発明の光学樹脂フィルムは、ソルベントキャスト法により製造する。ソルベントキャスト法では、光学樹脂を有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造する。
有機溶媒は、炭素原子数が3乃至12のエーテル、炭素原子数が3乃至12のケトン、炭素原子数が3乃至12のエステルおよび炭素原子数が1乃至6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。
エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する溶媒の上記した好ましい炭素原子数範囲内であることが好ましい。
炭素原子数が3乃至12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが含まれる。
炭素原子数が3乃至12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3乃至12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含まれる。
二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1または2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25乃至75モル%であることが好ましく、30乃至70モル%であることがより好ましく、35乃至65モル%であることがさらに好ましく、40乃至60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
本発明の有機溶媒はメチレンクロライドとアルコールを混合して用いることが好ましく、メチレンクロライドに対するアルコールの比率は1wt%以上50%以下が好ましく、10wt%以上40wt%以下が好ましく、12wt%以上30wt%以下が最も好ましい。アルコールとしてはメタノール、エタノール、n−ブタノールが好ましく、2種類以上のアルコールを混合して使用してもよい。
0℃以上の温度(常温または高温)で処理することからなる一般的な方法で、セルロースアシレート溶液を調製することができる。溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法および装置を用いて実施することができる。
セルロースアシレートの量は、得られる溶液中に10乃至40質量%含まれるように調整する。セルロースアシレートの量は、10乃至30質量%であることがさらに好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
溶液は、常温(0乃至40℃)でセルロースアシレートと有機溶媒とを撹拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧および加熱条件下で撹拌してもよい。具体的には、セルロースアシレートと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら撹拌する。
加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60乃至200℃であり、さらに好ましくは80乃至110℃である。
各成分は予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。容器は撹拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。あるいは、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に撹拌翼を設けて、これを用いて撹拌することが好ましい。撹拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。撹拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶剤中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
冷却溶解法により、溶液を調製することもできる。冷却溶解法では、通常の溶解方法では溶解させることが困難な有機溶媒中にもセルロースアシレートを溶解させることができる。なお、通常の溶解方法でセルロースアシレートを溶解できる溶媒であっても、冷却溶解法によると迅速に均一な溶液が得られるとの効果がある。
冷却溶解法では最初に、室温で有機溶媒中にセルロースアシレートを撹拌しながら徐々に添加する。
セルロースアシレートの量は、この混合物中に10乃至40質量%含まれるように調整することが好ましい。セルロースアシレートの量は、10乃至30質量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
次に、混合物を−100乃至−10℃(好ましくは−80乃至−10℃、さらに好ましくは−50乃至−20℃、最も好ましくは−50乃至−30℃)に冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30乃至−20℃)中で実施できる。冷却によりセルロースアシレートと有機溶媒の混合物は固化する。
冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を、冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。
さらに、これを0乃至200℃(好ましくは0乃至150℃、さらに好ましくは0乃至120℃、最も好ましくは0乃至50℃)に加温すると、有機溶媒中にセルロースアシレートが溶解する。昇温は、室温中に放置するだけでもよく、温浴中で加温してもよい。
加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。加温速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、加温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を、加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。
以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。
冷却溶解法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時の減圧すると、溶解時間を短縮することができる。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。
なお、セルロースアセテート(酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)を冷却溶解法によりメチルアセテート中に溶解した20質量%の溶液は、示差走査熱量計(DSC)による測定によると、33℃近傍にゾル状態とゲル状態との疑似相転移点が存在し、この温度以下では均一なゲル状態となる。従って、この溶液は疑似相転移温度以上、好ましくはゲル相転移温度プラス10℃程度の温度で保する必要がある。ただし、この疑似相転移温度は、セルロースアセテートの酢化度、粘度平均重合度、溶液濃度や使用する有機溶媒により異なる。
調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造する。ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18乃至35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。
ソルベントキャスト法における乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。バンドまたはドラム上での乾燥は空気、窒素などの不活性ガスを送風することにより行なうことができる。
得られたフィルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さらに100から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
剥ぎ取り時の残留溶剤のメチレンクロライドとアルコールの比率は15%以上90%以下が好ましく、25%以上85%以下がさらに好ましく、35%以上80%以下が最も好ましい。
調整したセルロースアシレート溶液(ドープ)を用いて二層以上の流延を行いフィルム化することもできる。この場合、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを作製することが好ましい。ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が10乃至40%の範囲となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。
二層以上の複数のセルロースアシレート液を流延する場合、複数のセルロースアシレート溶液を流延することが可能で、支持体の進行方向に間隔をおいて設けられた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよい。例えば、特開昭61−158414号、特開平1−122419号、および、特開平11−198285号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってもフィルム化することもできる。例えば、特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、および、特開平6−134933号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押し出すセルロースアシレートフィルムの流延方法を用いることもできる。
また、二個の流延口を用いて、第一の流延口により支持体に成形したフィルムを剥ぎ取り、支持体面に接していた側に第二の流延を行うことにより、フィルムを作製することもできる。例えば、特公昭44−20235号公報に記載の方法を挙げることができる。
流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液を用いてもよいし、異なるセルロースアシレート溶液を用いてもよい。複数のセルロースアシレート層に機能をもたせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押し出せばよい。さらに本発明のセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、紫外線吸収層、偏光層など)と同時に流延することもできる。
従来の単層液では、必要なフィルムの厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースアシレート溶液を押し出すことが必要である。その場合セルロースアシレート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良となったりして問題となることが多かった。この問題の解決方法として、複数のセルロースアシレート溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に支持体上に押し出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアシレート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができる。
〔延伸処理〕
本発明のセルロースアシレートフィルムは、延伸処理によりレターデーションを調整することができる。更には、積極的に幅方向に延伸する方法もあり、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、および特開平11−48271号の各公報などに記載されている。この方法では、セルロースアシレートフィルムの面内レターデーション値を高い値とするために、製造したフィルムが延伸される。
フィルムの延伸は、常温または加熱条件下で実施する。加熱温度は、フィルムのガラス転移温度以下であることが好ましい。フィルムの延伸は、縦あるいは横だけの一軸延伸でもよく同時あるいは逐次2軸延伸でもよい。延伸は1〜200%の延伸が行われる。好ましくは1〜100%の延伸が、特に好ましくは1から50%延伸を行う。光学フィルムの複屈折は幅方向の屈折率が長さ方向の屈折率よりも大きくなることが好ましい。従って幅方向により多く延伸することが好ましい。また、延伸処理は製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理しても良い。前者の場合には残留溶剤量を含んだ状態で延伸を行っても良く、残留溶剤量が2乃至40%で好ましく延伸することができる。
セルロースアシレートフィルムには機械的物性を改良するために、以下の可塑剤を用いることができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。
可塑剤の添加量は、セルロースアシレートの量の0.1乃至25質量%であることが好ましく、1乃至20質量%であることがさらに好ましく、3乃至15質量%であることが最も好ましい。
セルロースアシレートフィルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、調製する溶液(ドープ)の0.01乃至1質量%であることが好ましく、0.01乃至0.2質量%であることがさらに好ましい。添加量が上記範囲であると、劣化防止剤の効果を得られ、フィルム表面へのブリードアウト(滲み出し)も認められないため好ましい。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トリベンジルアミン(TBA)を挙げることができる。
[マット剤微粒子]
本発明のセルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
これらの微粒子は、通常平均粒子径が0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子径は0.2μm以上1.5μm以下が好ましく、0.4μm以上1.2μm以下がさらに好ましく、0.6μm以上1.1μm以下が最も好ましい。1次、2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とした。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが、その1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
本発明において2次平均粒子径の小さな粒子を有するセルロースアシレートフィルムを得るために、微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ作成し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのセルロースアシレートドープ液と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行いこれを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。本発明はこれらの方法に限定されないが、二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤の添加量は1m2あたり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
本発明に用いるセルロースアシレートフィルムの製造に用いる巻き取り機は一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
[セルロースアシレートフィルムのガラス転移温度]
セルロースアシレートフィルムのガラス転移温度の測定はJIS規格K7121記載の方法によりおこなうことができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムのガラス転移温度は80℃以上200℃以下が好ましく、100℃以上170℃以下がさらに好ましい。ガラス転移温度は可塑剤、溶剤等の低分子化合物を含有させることにより低下させることが可能である。
[フィルムの厚み]
本発明のセルロースアシレートフィルムの厚み(乾燥膜厚)は、40μm以上110μm以下が好ましく、50μm以上100μmがさらに好ましい。
<シクロオレフィン系ポリマーフィルム>
次に本発明の偏光板保護フィルムに用いられるシクロオレフィン系ポリマーについて詳しく説明する。
(シクロオレフィン系付加重合体)
本発明の偏光板保護フィルムで使用されるシクロオレフィン系ポリマーは下記一般式(1)で表される構造単位(a)と下記一般式(3)で表される構造単位(b)を適度の比率で含むシクロオレフィン系付加重合体が好ましい。
Figure 2006293342
[式(1)中、A1,A2,A3,A4はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、炭素数4〜15のシクロアルキル基、ハロゲン原子である。また、A1〜A4には、A1とA2、A1とA3またはA2とA4から形成されるアルキレン基も含まれる。rは0〜2の整数を示す。
このような構造単位(a)は下記式(2)で表されるシクロオレフィン化合物(以下、「特定の単量体(1)」という。)を付加重合することにより、形成される。
Figure 2006293342
[式(2)のA1,A2,A3,A4はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、炭素数4〜15のシクロアルキル基、ハロゲン原子である。またA1〜A4には、A1とA2、A1とA3またはA2とA4から形成されるアルキレン基、アルキリデン基も含まれる。rは0〜2の整数を示す。]
式(2)で表される「特定の単量体(1)」の具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-プロピル-ビシクロ2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ブチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ペンチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ヘキシル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ヘプチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-オクチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-デシル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ドデシル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メチル-5-エチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-フェニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロヘキシル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロオクチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-フロロ-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-クロロ-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、トリシクロ[4.2.0.15,8]ノナ-2-エン、1-メチルトリシクロ[4.2.0.15,8]ノナ-2-エン、6-メチルトリシクロ[4.2.0.15,8]ノナ-2-エン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-エン、3-メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-エン、4-メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-エン、トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ-9-エン、1-メチルトリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ-9-エン、3-メチルトリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ-9-エン、1-エチルトリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ-9-エン、3-エチルトリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ-9-エン、トリシクロ[8.2.1.02,9]トリデカ-11-エン、1-メチルトリシクロ[8.2.1.02,9]トリデカ-11-エン、5-メチルトリシクロ[8.2.1.02,9]トリデカ-11-エン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチル-テトラシクロ[4.4.0.12,517,10]ドデカ-3-エン、8-エチル-テトラシクロ[4.4.0.12,517,10]ドデカ-3-エン、などが挙げられる。
また、5-ビニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-ブテニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3,8-ジエン、1-メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3,8-ジエン、1-エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3,8-ジエン、などの環状ジオレフィン系化合物を付加重合し、しかる後、側鎖に存在するシクロオレフィン性不飽和結合を水素化することにより、構造単位(a)とすることができる。
これらの「特定の単量体(1)」のうち好ましいものは、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エンまたはトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-エンである。なお、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-エンには、endo体およびexo体の立体異性体が存在するが、本発明においては、endo体を使用した方が最終的に得られるフィルムの靱性が高まるため好ましく、少なくともendo体含量が80%以上のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-エンを使用することが好ましい。また、endo体のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3,8-ジエンを用いて付加重合し、しかる後側鎖に残存するシクロオレフィン性不飽和結合を水素化する方法も同様に好ましい。この場合でも、endo体含量は80%以上であることが好ましい。これらを用いて得られるシクロオレフィン系重合体は、透明性、耐熱性が優れるだけでなく、低吸水性、低誘電性、および高い靭性を有する重合体となる。なお、「特定の単量体(1)」は1種または2種以上用いることができる。
下記式(3)で表される構造単位(b)は、下記式(4)で表されるシクロオレフィン(以下、「特定の単量体(2)」という。)を付加重合することにより、形成される。
Figure 2006293342
[式(3)中、B1〜B4はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリ-ル基、ハロゲン化アルキル基、加水分解性シリル基または-(CH2jXで表される極性基を示し、B1〜B4の少なくとも一つは加水分解性シリル基または-(CH2jXで表される極性基を含む。ここで、Xは-C(O)OR1または-OC(O)R2であり、R1,R2は炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、またはおれらのハロゲン置換体からなる基から選ばれた置換基、jは0〜3の整数である。また、B1〜B4には、B1とB3またはB2とB4から形成されるアルキレン基、B1とB2またはB3とB4から形成されるアルキリデニル基も含まれる。pは0〜2の整数を示す。
Figure 2006293342
[式(4)中、B1〜B4は式(3)と同一である。pは0〜2の整数を示す。]
このような「特定の単量体(2)」の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。5-メトキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エトキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ブトキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メチル-5-メトキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メチル-5-エトキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メチル-5-プロポキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メチル-5-ブトキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エチル-5-メトキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メチル-5-トリフロロメトキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-5-イルメチルカルボン酸エチル、アクリル酸-1-メチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-3-エン、メタクリル酸-1-メチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-3-エン、5,6-ジ(メトキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ジ(メトキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、8-メチル-8-メトキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチル-8-エトキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、5-トリメトキシシリル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ジメトキシクロロシリル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メトキシクロロメチルシリル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ジメトキシクロロシリル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メトキシヒドリドメチルシリル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ジメトキシヒドリドシリル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メトキシジメチルシリル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-トリエトキシシリル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ジエトキシクロロシリル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エトキシクロロメチルシリル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ジエトキシヒドリドシリル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エトキシジメチルシリル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エトキシジエチルシリル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-プロポキシジメチルシリル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-トリプロポキシシリル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-トリフェノキシシリル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-トリメトキシシリルメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ジメチルクロロシリル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メチルジクロロシリル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-トリクロロシリル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ジエチルクロロシリル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エチルジクロロシリル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(2-トリメトキシシリル)エチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(2-ジメトキシクロロシリル)エチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-トリメトキシシリル)エチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(2-トリメトキシシリル)プロピル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-トリメトキシシリル)プロピル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-トリエトキシシリルエチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ジメトキシメチルシリルメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-トリメトキシプロピルシリル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メチル-5-(3-トリエトキシシリル)プロポキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、8-トリエトキシシリル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチルジメトキシシリル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、5-[1'-メチル-2',5'-ジオキサ-1'-シラシクロペンチル]-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-[1'-メチル-3',3',4',4'-テトラフェニル-2',5'-ジオキサ-1'-シラシクロペンチル]-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-[1'-メチル-3',3',4',4'-テトラメチル-2',5'-ジオキサ-1'-シラシクロペンチル]-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-[1'-フェニル-2',5'-ジオキサ-1'-シラシクロペンチル]-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-[1'-エチル-2',5'-ジオキサ-1'-シラシクロペンチル]-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-[1',3'-ジメチル-2',5'-ジオキサ-1'-シラシクロペンチル]-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-[1'-メチル-3',4'-ジメチル-2',5'-ジオキサ-1'-シラシクロペンチル]-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-[1'-メチル-2',6'-ジオキサ-1'-シラシクロヘキシル]-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-[1'-エチル-2’,6’-ジオキサ-1'-シラシクロヘキシル]-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-[1',3'-ジメチル-2',6'-ジオキサ-1'-シラシクロヘキシル]-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-[1'-メチル-4',4'-ジメチル-2',6’-ジオキサ-1'-シラシクロヘキシル]-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-[1’-メチル-4',4'-ジメチル-2',6'-ジオキサ-1'-シラシクロヘキシル]メチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-[1'-メチル-4',4'-ジメチル-2',6'-ジオキサ-1'-シラシクロヘキシル]エチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-[1'-フェニル-4',4'-ジメチル-2',6'-ジオキサ-1'-シラシクロヘキシル]-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-[1'-メチル-4'-フェニル-2',6'-ジオキサ-1'-シラシクロヘキシル]-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-[1'-メチル-4'-スピロ-シクロヘキシル-2',6'-ジオキサ-1'-シラシクロヘキシル]-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-[1'-メチル-4’-エチル-4'-ブチル-2',6'-ジオキサ-1'-シラシクロヘキシル]-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-[1'-メチル-3',3'-ジメチル-5'メチレン-2',6'-ジオキサ-1'-シラシクロヘキシル]-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-[1'-フェニル-2',6'-ジオキサ-1'-シラシクロヘキシル]-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-[1'-メチル-3'-フェニル-2',6'-ジオキサ-1’-シラシクロヘキシル]-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-[1'-メチル-4’,4’-ジメチル-2',6'-ジオキサ-1'-シラシクロヘキシル]-7-オキサ-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-[1'-メチル-2',6'-ジオキサ-1'-シラシクロヘキシル]-7-オキサ-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-[1'-メチル-2',7'-ジオキサ-1'-シラシクロヘプチル]-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、8-[1'-メチル-4',4'-ジメチル-2',6'-ジオキサ-1'-シラシクロヘキシル]-テトラシクロ[4.4.0.12,517,10]ドデカ-3-エン、8-[1'-メチル-2',6'-ジオキサ-1'-シラシクロヘキシル]-テトラシクロ[4.4.0.12,517,10]ドデカ-3-エン、8−メチル−8−カルボキシメチル−9-カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]-3-ドデセン、などが挙げられる。これらの「特定の単量体(2)」は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のシクロオレフィン系重合体に含まれる構造単位(b)の割合は、全構造単位中、5〜95モル%、好ましくは10〜90モル%、さらに好ましくは20〜80モル%である。上記シクロオレフィン系重合体の構造単位(b)の割合が少なすぎると、偏光子に使用されるポリビニルアルコールとの接着・密着性が劣る場合が生じる。一方、その割合が多すぎると、吸湿性が大きくなり寸法安定性に劣る。なお、構造単位(b)の配列は、シクロオレフィン系重合体中にランダム状、ブロック状など制限はないが、好ましくはランダム状である。さらに、側鎖置換基として加水分解性シリル基、エステル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などの反応性置換基を有する構造単位(b)を含むシクロオレフィン系付加重合体は、後述する架橋剤を用いることによって本発明のシクロオレフィン系重合体のフィルムを架橋体とすることができる。
本発明のシクロオレフィン系重合体には、さらに、「特定のα-オレフィン化合物」を付加重合して得られる構造単位(c)を導入することができる。
このような「特定のα-オレフィン化合物」の具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、トリメチルシリルエチレン、トリエチルシリルエチレン、スチレンなどが挙げられる。好ましくはエチレンである。
「特定のα-オレフィン化合物」に由来する繰り返し単位(c)を重合体に導入することにより、本発明のシクロオレフィン系重合体のガラス転移温度を制御することができる。本発明のシクロオレフィン系重合体に含まれる繰り返し単位(c)の割合は、0〜30モル%、好ましくは0〜20モル%である。なお、繰り返し単位(c)の割合が30モル%を超えると、本発明のシクロオレフィン系重合体のガラス転移温度が170℃以下と低くなり、耐熱性が低下することがあり好ましくない。
本発明のシクロオレフィン系重合体の分子量は、ポリスチレン換算で表され、数平均分子量が10,000〜300,000、重量平均分子量が20,000〜700,000、好ましくは数平均分子量が20,000〜200,000、重量平均分子量が50,000〜500,000、さらに好ましくは数平均分子量が50,000〜150,000、重量平均分子量が100,000〜300,000である。数平均分子量10,000未満、重量平均分子量が20,000未満の場合には、フィルムとしたときに靭性に劣り割れやすいものとなることがある。一方、数平均分子量が300,000、重量平均分子量が700,000を超えると、溶液粘度が高くなり、溶液キャスト法による製膜の作業性や得られたフィルムの表面などが悪くなることがある。
また、本発明のシクロオレフィン系重合体のガラス転移温度は、未架橋の状態で180〜450℃、好ましくは200〜400℃である。該重合体のガラス転移温度が180℃未満では耐熱性が不十分で、一方、450℃を超えるとフィルムとして靭性がなく割れやすいものとなることがある。
本発明のシクロオレフィン系重合体は、「特定の単量体(1)」を主として用い、必要に応じて架橋形成または接着・密着付与のために「特定の単量体(2)」を用い、さらに必要に応じてガラス転移温度の制御のために「特定のα-オレフィン化合物」を用いて製造される。以下、その製造法について説明する。
重合触媒としては、下記[1]、[2]、[3]に挙げられるパラジウム、ニッケル、コバルト、チタンおよびジルコンなどの単一錯体触媒や多成分系触媒が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[1] Pd、Niなどの単一錯体触媒[Pd(CH3CN)4][BF42、[Pd(PhCN)4][SbF6]、[(η3-クロチル)Pd(シクロオクタジエン)][PF6]、[(η3-crotyl)Ni(cycloocta-1,5-diene)][B(3,5-(CF32634]、[(η3-crotyl)Ni(cycloocta-1,5-diene)][PF6]、[(η3-allyl)Ni(cycloocta-1,5-diene)][B(C654]、[(η3-crotyl)Ni(cycloocta-1,5-diene)][SbF6]、Toluene・Ni(C652、Benzene・ Ni(C652、Mesitylene・Ni(C652Ethylether・ Ni(C652
[2] σまたはσ,π結合を有するパラジウム錯体と有機アルミニウムまたは超強酸塩の組み合わせによる多成分系触媒ジ-μ-クロロ-ビス(6-メトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-エンド-5σ,2π)Pd、とメチルアルモキサン(MAOと略す)、AgSbF6、AgBF4、から選ばれた化合物との組み合わせ。[(η3-アリール)PdCl]2とAgSbF6またはAgBF4、との組み合わせ。[(1,5-シクロオクタジエン)Pd(CH3)Cl]とPPh3とNaB[3,5-(CF32634との組み合わせ。などの組み合わせが挙げられる。
[3]以下に示した、1)ニッケル化合物、コバルト化合物、チタン化合物またはジルコン化合物から選ばれた遷移金属化合物、2)超強酸、ルイス酸およびイオン性ホウ素化合物から選ばれた化合物、ならびに 3)有機アルミニウム化合物、を含む多成分系触媒。
1)遷移金属化合物1)-1 ニッケル化合物、コバルト化合物:以下に挙げる群から選ばれた少なくとも1種の化合物、ニッケルまたはコバルトの有機カルボン酸塩、有機亜リン酸塩、有機リン酸塩、有機スルホン酸塩、β-ジケトン化合物などから選ばれた化合物。
例えば、2-エチルヘキサン酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト、オレイン酸ニッケル、ドデカン酸ニッケル、ドデカン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ドデシルベンゼンスルホン酸ニッケル、ビス(アセチルアセトナート)ニッケル、ビス(エチルアセトアセテート)ニッケルなど。・上記のニッケルの有機カルボン酸塩を六フッ化アンチモン酸、四フッ化ホウ素酸、トリフロロ酢酸、六フッ化アセトンなどの超強酸で変性した化合物、ニッケルのジエンもしくはトリエン配位錯体、例えば、ジクロロ(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル、[(η3-クロチル)(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル]ヘキサフロロホスフェート、およびそのテトラフロロボレート、テトラキス[3,5-ビス(トリフロロメチル)]ボレート錯体、5,9-シクロドデカトリエン)ニッケル、ビス(ノルボルナジエン)ニッケル、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケルなどのニッケル錯体、ニッケルにP、N、Oなどの原子を有する配位子が配位した錯体、例えば、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロライド、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジブロマイド、ビス(トリフェニルホスフィン)コバルトジブロマイド、ビス[N-(3-t-ブチルサリシリデン)フェニルアミネート]ニッケル、Ni[PhC(O)CH](Ph)、Ni(OC(C64)PPh)(H)(PCy3)、Ni[OC(O)(C64)P](H)(PPh3)、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケルとPhC(O)CH=PPh3との反応物、6-(i-Pr)2C63N=CHC63(O)(Anth)](Ph)(PPh3)Niなどのニッケル錯体(ここで、Anthは9-anthracenyl、Phはphenyl、Cyはcyclohexylの略称である。)が挙げられる。
1)-2 チタン化合物、ジルコン化合物:[t-BuNSiMe(Me4Cp)]TiCl2、(Me4Cp)(O-iPr2C632TiCl、(Me4Cp)TiCl3、(Me4Cp)Ti(OBu)3、[t-BuNSiMeFlu]TiMe2、[t-BuNSiMeFlu]TiCl2Et(Ind)2ZrCl2、Ph2C(Ind)(Cp)ZrCl2、iPr(Cp)(Flu)ZrCl2、iPr(3-tert-But-Cp)(Ind)ZrCl2、iPr(Cp)(Ind)ZrCl2、 Me2Si(Ind)2ZrCl2、Cp2ZrCl2、[CpはCyclopentadienl、IndはIndenyl、FluはFluorenylの略称である。]などが挙げられる。
2)超強酸、ルイス酸化合物およびイオン性ホウ素化合物から選ばれた化合物超強酸としては、例えば、ヘキサフロロアンチモン酸、ヘキサフロロリン酸、ヘキサフロロ砒酸、トリフロロ酢酸、フロロ硫酸、トリフロロメタンスルホン酸、テトラフロロホウ酸、テトラキス(ペンタフロロフェニル)ホウ酸、テトラキス[3,5-ビス(トリフロロメチル)フェニル]ホウ酸、p-トルエンスルホン酸、ペンタフロロプロピオン酸などが挙げられる。ルイス酸化合物としては、例えば、三フッ化ホウ素とエーテル、アミン、フェノールなどとの錯体、三フッ化アルミニウムのエーテル、アミン、フェノールなどの錯体、トリス(ペンタフロロフェニル)ボラン、トリス[3,5-ビス(トリフロロメチル)フェニル]ボラン、などのホウ素化合物、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムフロライド、トリ(ペンタフロロフェニル)アルミニウムなどのアルミニウム化合物、ヘキサフロロアセトン、ヘキサクロロアセトン、クロラニル、ヘキサフロロメチルエチルケトンなどのルイス酸性を示す有機ハロゲン化合物、その他、四塩化チタン、ペンタフロロアンチモンなどのルイス酸性を示す化合物などが挙げられる。イオン性ホウ素化合物としては、例えば、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(2,4,6-トリフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラフェニルボレート、トリブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジフェニルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが挙げられる。
3)有機アルミニウム化合物例えば、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、ブチルアルモキサンなどのアルキルアルモキサン化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムフルオライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどのアルキルアルミニウム化合物およびハロゲン化アルキルアルミニウム化合物、または上記アルキルアルモキサン化合物と上記アルキルアルミニウム化合物との混合物などが好適に使用される。
これら単一錯体触媒または多成分系触媒の成分は、以下の範囲の使用量で用いられる。ニッケル化合物、パラジウム化合物、コバルト化合物、チタニウム化合物およびジルコニウム化合物などの遷移金属化合物は単量体1モルに対して、0.02〜100ミリモル原子、有機アルミニウム化合物は遷移金属化合物1モル原子に対して1〜5,000モル、また超強酸、ルイス酸、イオン性ホウ素化合物は遷移金属化合物の1モル原子に対して0〜100モルである。
本発明のシクロオレフィン系重合体は、上記成分からなる単一錯体触媒または多成分系触媒を用い、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタンなどの脂環式炭化水素溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、ベンゼン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素溶媒などから、1種または2種以上選ばれた溶媒中で、−20〜120℃の温度範囲で重合を行うことにより得られる。
(シクロオレフィン系開環重合体)
本発明のシクロオレフィン系ポリマーとしては、下記一般式(5)及び(6)のモノマーユニットを有する開環重合体も好ましく用いることができる。
Figure 2006293342
[式(5)中、mは1以上の整数、pは0又は1以上の整数であり、Xは、ビニレン基(-CH=CH-)またはエチレン基(-CH2CH2-)を示し、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子若しくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基を示す。
更に、R1とR2、R3とR4またはR2とR3は、互いに結合して、単環構造若しくは他の環が縮合して多環構造を有する炭素環または複素環を形成していてもよく、形成される炭素環または複素環は芳香環であってもよいし非芳香環であってもよい。]
Figure 2006293342
[式(6)中、Yは、ビニレン基(-CH=CH-)またはエチレン基(-CH2CH2-)を示し、R5〜R8は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子若しくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基を示す。更に、R5とR6、R7とR8またはR6とR7は、互いに結合して、単環構造若しくは他の環が縮合して多環構造を有する炭素環または複素環(但し、一般式(1)で表される構造を除く)を形成してもよく、形成される炭素環または複素環は芳香環であってもよいし非芳香環であってもよい。]
上記一般式(5)及び(6)のポリマーは下記の(イ)〜(ニ)に示す単量体の(共)重合体(以下、「特定重合体」ともいう。)として合成される。
(イ)下記一般式(7)で表される化合物(以下、「特定単量体d」ともいう。)の開環重合体。
(ロ)特定単量体dと、当該特定単量体dと共重合可能な化合物(以下、「共重合性単量体」ともいう。)との開環重合体。
(ハ)上記(イ)の開環重合体または(ロ)の開環重合体の水素添加物。
(ニ)上記(イ)の開環重合体または(ロ)の開環重合体をフリーデルクラフト反応により環化して得られた化合物若しくはその水素添加物。
Figure 2006293342
[式(7)中、mは1以上の整数、pは0又は1以上の整数であり、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子若しくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基を示す。更に、R1とR2、R3とR4またはR2とR3は、互いに結合して、単環構造若しくは他の環が縮合して多環構造を有する炭素環または複素環を形成していてもよく、形成される炭素環または複素環は芳香環であってもよいし非芳香環であってもよい。]
特定重合体は、共重合性単量体として下記一般式(8)で表される化合物(以下、「特定単量体b」ともいう。)を用い、特定単量体dと、特定単量体bとを共重合して得られるものであることが好ましい。このような構成の特定重合体によれば、最終的に得られる特定位相差フィルムが靱性等の機械的な特性が一層優れたものとなり、また、延伸加工により特定位相差フィルムに必要とされる所望の位相差を得やすくなる。
Figure 2006293342
[式中、R5〜R8は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子若しくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基を示す。更に、R5とR6、R7とR8またはR6とR7は、互いに結合して、単環構造若しくは他の環が縮合して多環構造を有する炭素環または複素環(但し、一般式(5)で表される構造を除く)を形成してもよく、形成される炭素環または複素環は芳香環であってもよいし非芳香環であってもよい。]
更に、特定重合体は、特定単量体dと特定単量体eとの開環重合体であって、上記一般式(5)で表される特定単量体aに由来の構造単位(以下、「構造単位d」ともいう。)と、上記一般式(6)で表される特定単量体eに由来の構造単位(以下、「構造単位e」ともいう。)とを有するものであることが好ましい。このような構成の特定重合体は、耐熱性と延伸加工等による加熱加工性とのバランスを図ることができる点で好ましい。
一般式(7)及び一般式(8)におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。
炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基などが挙げられる。
また、一般式(5)〜一般式(8)における置換または非置換の炭化水素基は、直接環構造に結合していてもよいし、あるいは連結基(linkage)を介して結合していてもよい。
連結基としては、例えば炭素原子数1〜10の2価の炭化水素基〔例えば、-(CH2q-(式中、qは1〜10の整数)で表されるアルキレン基〕;酸素原子、窒素原子、イオウ原子若しくはケイ素原子を含む連結基〔例えば、カルボニル基(-CO-)、オキシカルボニル基(-O(CO)-)、スルホン基(-SO2-)、エーテル結合(-O-)、チオエーテル結合(-S-)、イミノ基(-NH-)、アミド結合(-NHCO-,-CONH-)、シロキサン結合(−OSi−)、8−メチル−8-n-プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5. 17,10]-3-ドデセン、8-メチル-8-イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,12,5 .17,10]-3-ドデセン、8-フルオロ-8-ペンタフルオロエチル-9,9-ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]-3-ドデセン、8,9-ジフルオロ-8-ヘプタフルオロiso-プロピル-9-トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]-3-ドデセン、8-クロロ-8,9,9-トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]-3-ドデセン、8,9-ジクロロ-8,9-ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]-3-ドデセン、8-(2,2,2-トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]-3-ドデセン、8-メチル-8-(2,2,2-トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]-3-ドデセン、
8-(4-ビフェニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]-3-ドデセン、8-(4-ビフェニルカルボニルオキシエチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]-3-ドデセン、8-メチル-8-(4-ビフェニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]-3-ドデセン、8-(2-ビフェニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]-3-ドデセン、8-メチル-8-(2-ビフェニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]-3-ドデセン、8-(3-ビフェニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]-3-ドデセン、8-メチル-8-(3-ビフェニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]-3-ドデセン、8-(1-ナフチルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]-3-ドデセン、8-メチル-8-(1-ナフチルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]-3-ドデセン、8-(2-ナフチルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]-3-ドデセン、8-メチル-8-(2-ナフチルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]-3-ドデセン、8-(9-アントラセニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]-3-ドデセン、8-メチル-8-(9-アントラセニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]-3-ドデセン、1,2-(2H、3H-[1,3]エピシクロペンタ)-1,2-ジヒドロアセナフチレンとシクロペンタジエンとのディールス・アルダー付加体などを挙げることができるが、特定単量体aは、これらの化合物に限定されるものではない。また、これらの化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて特定単量体aとして用いることができる。
これらの中では、分子内に少なくとも1つの極性基を有する化合物が好ましく、特に、一般式(5)において、R1およびR3が水素原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、R2およびR4が水素原子または一価の有機基に相当するものであって、かつR2およびR4の少なくとも一つが水素原子および炭化水素基以外の極性基であるものが、他素材との密着性・接着性を高めるので好ましい。
ここに、得られる特定重合体中の極性基の含有量は、最終的に得られる特定位相差フィルムに要求される所望の機能等により決定されるものであり、特に限定はされないが、特定単量体aに由来する全構造単位中に極性基を有する特定単量体aに由来の構造単位が、通常1モル%以上、好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、特定単量体aに由来する全構造単位が極性基を有するものであってもよい。
また、特定単量体dとしては、一般式(7)において、R2およびR4の少なくとも一つが下記一般式(9)で表される極性基を有するものであることが、得られる特定重合体のガラス転移温度と吸水性を制御しやすい点で好ましい。
Figure 2006293342
〔式(9)中、nは0〜5の整数であり、R10は一価の有機基である。〕
一般式(9)においてR10で表される一価の有機基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニリル基等のアリール基;この他にもジフェニルスルホン、テトラヒドロフルオレン等のフルオレン類等の芳香環やフラン環、イミド環等の複素環を有する一価の基等が挙げられる。
また、一般式(9)において、nは0〜5の整数、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0である。nの値が小さいものほど得られる特定重合体のガラス転移温度が高くなるので好ましく、特にnが0である特定単量体aは、その合成が容易である点で好ましい。
更に、特定単量体dは、一般式(7)において、一般式(9)で表される極性基が結合した炭素原子に更にアルキル基が結合したものであることが好ましく、これにより、得られる特定重合体の耐熱性と吸水性のバランスを図ることができる。ここで、アルキル基の炭素原子数は1〜5であることが好ましく、更に好ましくは1〜2、特に好ましくは1である。
また、特定単量体dとしては、一般式(7)においてmが1でありpが0であるものは、ガラス転移温度の高い特定重合体が得られる点で好ましい。
特定単量体eの具体例としては、
ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカ-8-エン、
トリシクロ[6.2.1.02,7 ]ウンデカ-9-エン、
5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-メチル-5-メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-メチル-5-フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-(2-ナフチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(α体およびβ体)、
5-フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-ペンタフルオロエチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5,5-ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5,6-ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5,5-ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5,6-ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-メチル-5-トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5,5,6-トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5,5,6-トリス(フルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5,5,6,6-テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5,5,6,6-テトラキス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-
エン、
5,5-ジフルオロ-6,6-ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5,6-ジフルオロ-5,6-ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5,5,6-トリフルオロ-5-トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エ
ン、
5-フルオロ-5-ペンタフルオロエチル-6,6-ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[
2.2.1]ヘプト-2-エン、
5,6-ジフルオロ-5-ヘプタフルオロ-iso-プロピル-6-トリフルオロメチルビシク
ロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-クロロ-5,6,6-トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5,6-ジクロロ-5,6-ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5,5,6-トリフルオロ-6-トリフルオロメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-
エン、
5,5,6-トリフルオロ-6-ヘプタフルオロプロポキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-(4-フェニルフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
4-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-イル)フェニルスルホニルベンゼン、
5-(4-ビフェニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(4-ビフェニルカルボニルオキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-(4-ビフェニルカルボニルオキシプロピル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-メチル-5-(4-ビフェニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-(2-ビフェニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(2-ビフェニルカルボニルオキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メチル-5-(2-ビフェニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-(3-ビフェニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(3-ビフェニルカルボニルオキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-ナフチルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-(1-ナフチルカルボニルオキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-メチル-5-(1-ナフチルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-
2-エン、
5-(2-ナフチルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-(2-ナフチルカルボニルオキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-メチル-5-(2-ナフチルカルボニルオキシメチル)メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-(9-アントラセニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-(9-アントラセニルカルボニルオキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-メチル-5-(9-アントラセニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
アセナフチレンとシクロペンタジエンとのディールス・アルダー付加体などを挙げることができるが、特定単量体eは、これらの化合物に限定されるものではない。また、これらの化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて特定単量体eとして用いることができる。
特定単量体dと特定単量体eとを共重合させることによって得られる特定重合体は、当該特定単量体dおよび特定単量体e以外の他の共重合性単量体と共に共重合されてなるものであってもよい。
他の共重合性単量体としては、例えばシクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ジシクロペンタジエンなどのシクロオレフィンを挙げることができる。シクロオレフィンの炭素原子数としては、4〜20が好ましく、更に好ましくは5〜12である。更にポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-非共役ジエン共重合体、ポリノルボルネンなどの主鎖にオレフィン性不飽和結合を有する不飽和炭化水素系ポリマーなどの存在下に特定単量体aおよび必要に応じて特定単量体bを重合させてもよく、このようにして得られる特定重合体は、耐衝撃性の大きい樹脂の原料として有用である。
特定重合体の30℃クロロホルム中で測定した固有粘度(ηinh)は、0.2〜5dl/gであることが好ましい。更に好ましくは0.3〜4dl/g、特に好ましくは0.5〜3dl/gである。5dl/gを超えると、溶液粘度が高くなりすぎ、加工性が悪化することがあり、0.2dl/g未満であるとフィルム強度が低下することがある。
特定重合体の分子量としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が、通常は8,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜500,000、更に好ましくは20,000〜100,000、特に好ましくは30,000〜100,000、また、重量平均分子量(Mw)が、通常は20,000〜3,000,000、好ましくは30,000〜1,000,000、更に好ましくは40,000〜500,000、特に好ましくは40,000〜300,000の範囲である。
また、特定重合体の分子量分布は、上記のMw/Mnが通常1.5〜10、好ましくは2〜8、更に好ましくは2.5〜5、特に好ましくは2.5〜4.5である。
特定重合体のガラス転移温度(Tg)は、例えば特定重合体の構造単位aおよび構造単位bの種類若しくは構造単位aと構造単位bとの比の調整、あるいは添加剤の添加等により適宜変えることが可能であるが、通常は100〜250℃、好ましくは110〜200℃、更に好ましくは120〜180℃である。Tgが100℃以下の場合は、熱変形温度が低くなり、耐熱性に問題が生じるおそれがあり、また、最終的に得られるフィルムの光学特性が温度により大きく影響を受けることがある。また、Tgが250℃以上であると、延伸加工等にTg近辺まで加熱して加工する場合に熱可塑性ノルボルネン系樹脂が熱劣化する可能性が高くなる。
構造単位dおよび構造単位eを有する特定重合体においては、構造単位dと構造単位eとの比(d/e)は、好ましくは、モル比ではd/e=95/5〜5/95、更に好ましくは95/5〜60/40である。構造単位dの割合が上記範囲より大きいと靱性改良の効果や所望の光学特性が期待できない場合があり、逆に、構造単位dの割合が上記範囲より小さいとガラス転移温度が低くなり、耐熱性に問題が生じる場合がある。
更に、構造単位dおよび構造単位eを有する特定重合体において、当該重合体中の構造単位dと構造単位eの比率(組成比)は、分子量分布全範囲においてバラツキが小さいことが好ましい。具体的には、重合反応に供した特定単量体aと特定単量体eとの比率に対して、任意の分子量における組成比を、±50%以内、好ましくは±30%以内、更に好ましくは±20%以内のバラツキ範囲に収めることで、より一層均一な特定位相差フィルムを得ることができる。また、こうした範囲に収めることで、延伸配向した際に、位相差のより一層の均一性を得ることが可能となる。
以下に、特定単量体d、および必要に応じて特定単量体eあるいはその他の共重合性単量体を開環共重合することにより、あるいはこれらの単量体を開環共重合した後、得られる開環共重合体を水素添加することにより得られる特定重合体を製造するための条件について説明する。
(開環重合触媒):
単量体の開環重合反応は、メタセシス触媒の存在下に行われる。
このメタセシス触媒は、(a)W、MoおよびReの化合物から選ばれた少なくとも1種と、(b)デミングの周期律表IA族元素(例えばLi、Na、Kなど)、IIA族元素(例えばMg、Caなど)、IIB族元素(例えばZn、Cd、Hgなど)、IIIB族元素(例えばB、Alなど)、IVA族元素(例えばTi、Zrなど)あるいはIVB族元素(例えばSi、Sn、Pbなど)の化合物であって、少なくとも1つの当該元素-炭素結合あるいは当該元素-水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種との組合せからなる触媒である。またこの場合に触媒の活性を高めるために、後述の添加剤(c)が添加されたものであってもよい。
(a)成分として適当なW、MoあるいはReの化合物の代表例としては、WCl6、MoCl5、ReOCl3など特開平1-240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。
(b)成分の具体例としては、n-C49Li、(C253Al、(C252AlCl、(C251.5AlCl1.5、(C25)AlCl2、メチルアルモキサン、LiHなど特開平1-240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。
(c)成分の代表例としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類などが好適に用いることができるが、更に特開平1-240517号公報に記載の化合物を使用することができる。
メタセシス触媒の使用量としては、上記(a)成分と特定単量体dおよび特定単量体e(以下、双方を併せて「特定単量体」という。)とのモル比で(a)成分:特定単量体が、通常1:500〜1:50000となる範囲、好ましくは1:1000〜1:10000となる範囲である。
(a)成分と(b)成分との割合は、金属原子比で「(a):(b)」が1:1〜1:50、好ましくは1:2〜1:30の範囲である。
(a)成分と(c)成分との割合は、モル比で「(c):(a)」が0.005:1〜15:1、好ましくは0.05:1〜7:1の範囲である。
(分子量調節剤):
特定重合体の分子量の調節は重合温度、触媒の種類、溶媒の種類によっても行うことができるが、本発明においては、分子量調節剤を反応系に共存させることにより調節することが好ましい。好適な分子量調節剤としては、例えばエチレン、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセンなどのα-オレフィン類およびスチレンを挙げることができ、これらのうち、1-ブテン、1-ヘキセンが好ましい。
これらの分子量調節剤は、単独であるいは2種以上を併用して用いることができる。分子量調節剤の使用量としては、重合反応に供される特定単量体1モルに対して0.005〜0.6モル、好ましくは0.02〜0.5モルである。
(開環重合反応用溶媒):
開環重合反応において用いられる溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナンなどのシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素類;クロロブタン、ブロムヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素化合物類;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル、プロピオン酸メチルなどの飽和カルボン酸エステル類;ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を挙げることができ、これらは単独であるいは2種以上を併用して用いることができる。これらの中でも、上記芳香族炭化水素類が好ましい。
溶媒の使用量としては、溶媒:特定単量体(質量比)が、通常1:1〜10:1となる量、好ましくは1:1〜5:1となる量である。
(水素添加):
以上の開環重合により得られる開環共重合体は、そのまま特定重合体として使用することもできるが、当該開環共重合体において残留するオレフィン性不飽和結合を水素添加された水素添加物とすることが好ましい。
この水素添加物は、優れた熱安定性を有するものとなり、フィルム製膜加工時および延伸加工時、あるいは製品としての使用時において、加熱によってその特性が劣化しにくくなる。このような水素添加物において、オレフィン性不飽和結合に対する水素添加率は、50%以上、好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは98%以上である。また、水素添加に供される開環共重合体が分子内に芳香環を有するものである場合には、水素添加後において、当該芳香環が実質的に水素添加されていないことが好ましい。
水素添加反応は、通常の方法、すなわち開環共重合体の溶液に水素添加触媒を添加し、これに常圧〜300気圧、好ましくは3〜200気圧の水素ガスを0〜200℃、好ましくは20〜180℃で作用させることによって行われる。
水素添加触媒としては、通常のオレフィン性化合物の水素添加反応に用いられるものを使用することができる。この水素添加触媒としては、不均一系触媒および均一系触媒が公知である。なお、芳香環を有する置換基を分子内に有する開環重合体を水素添加する場合には、芳香環の不飽和結合が実質的に水素添加されない条件を選択することが好ましい。不均一系触媒としては、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属類を、カーボン、シリカ、アルミナ、チタニアなどの担体に担持させた固体触媒を挙げることができる。また、均一系触媒としては、ナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n-ブチルリチウム、チタノセンジクロリド/ジエチルアルミニウムモノクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムなどを挙げることができる。触媒の形態は粉末でも粒状でもよい。
これらの水素添加触媒は、開環重合体:水素添加触媒(質量比)が、1:1×10-6〜1:2となる割合で使用される。
(フィルム製造)
本発明においては、特定重合体よりなる熱可塑性ノルボルネン系樹脂は溶融成形法あるいは溶液流延法(溶剤キャスト法)などによりフィルムに成形することができるが、厚みの均一性が高く、表面平滑性が良好な加工前フィルムが得られる点で、溶剤キャスト法を利用することが好ましい。溶剤キャスト法としては、例えば、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を溶媒に溶解または分散させることにより、熱可塑性ノルボルネン系樹脂が適度の濃度で含有されてなるフィルム形成液を調製し、このフィルム形成液を適当なキャリヤー上に注ぐかまたは塗布し、これを乾燥した後、キャリヤーから剥離させる方法が挙げられる。
熱可塑性ノルボルネン系樹脂を溶媒に溶解または分散させる際には、当該熱可塑性ノルボルネン系樹脂の濃度を、通常0.1〜90質量%、好ましくは1〜50質量%、更に好ましくは10〜35質量%にする。この濃度が0.1質量%未満である場合には、所要の厚みを有する加工前フィルムを得ることが困難になるおそれがあり、また、乾燥により溶媒を除去する際に、当該溶媒の蒸発に伴って発泡等が生じやすく、表面平滑性が良好な加工前フィルムを得ることが困難になるおそれがある。一方、この濃度が90質量%を超える場合には、フィルム形成液の溶液粘度が高くなりすぎるため、厚みや表面状態が均一なフィルムを得ることが困難となるおそれがある。
また、フィルム形成液の粘度は、室温で、通常1〜1,000,000(mPa・s)、好ましくは10〜100,000(mPa・s)、更に好ましくは100〜50,000(mPa・s)、特に好ましくは1000〜40,000(mPa・s)である。
フィルム形成液の調製に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1-メトキシ-2-プロパノール等のセロソルブ系溶媒、ジアセトンアルコール、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、4-メチル-2-ペンタノン、シクロヘキサノン、エチルシクロヘキサノン、1,2-ジメチルシクロヘキサン等のケトン系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル系溶媒、2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン含有溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、1-ペンタノール、1-ブタノール等のアルコール系溶媒を挙げることができる。
また、上記の溶媒以外でも、SP値(溶解度パラメーター)が、通常10〜30(MPa1/2 )、好ましくは10〜25(MPa1/2 )、更に好ましくは15〜25(MPa1/2 )、特に好ましくは15〜20(MPa1/2 )の範囲の溶媒を使用すれば、表面均一性と光学特性の良好な加工フィルムを得ることができる。
上記の溶媒は単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。溶媒を2種以上組み合わせて用いる場合には、得られる混合溶媒のSP値の範囲を上記範囲内とすることが好ましい。このとき、混合溶媒のSP値の値は、当該混合溶媒を構成する各溶媒の質量比から求めることができ、例えば2種の溶媒から得られる混合溶媒においては、各溶媒のSP値およびそれらの質量分率をW1およびW2とし、また、SP値をSP1およびSP2とすると、混合溶媒のSP値は式:SP値=W1・SP1+W2・SP2により算出することができる。
フィルム形成液における溶媒として混合溶媒を用いる場合において、熱可塑性ノルボルネン系樹脂に対して良溶媒となるものと貧溶媒となるものとを組み合わせることにより、光拡散機能を有する加工前フィルムを得ることができる。具体的には、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のSP値をSPx、熱可塑性ノルボルネン系樹脂の良溶媒のSP値をSPy、熱可塑性ノルボルネン系樹脂の貧溶媒のSP値をSPzとしたとき、SPxとSPyとの差が好ましくは7以下、更に好ましくは5以下、特に好ましくは3以下であり、SPxとSPzとの差が好ましくは7以上、更に好ましくは8以上、特に好ましくは9以上であり、SPyとSPzとの差が好ましくは3以上、更に好ましくは5以上、更に好ましくは7以上とすることにより、得られる加工前フィルムに光拡散機能を付与することができ、その結果、最終的に得られる特定位相差フィルムを光拡散機能を有するものとすることができる。
また、混合溶媒中に占める貧溶媒の割合は、好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、特に好ましくは15質量%以下、最も好ましくは10質量%以下である。また、貧溶媒の沸点と良溶媒の沸点との差は好ましくは1℃以上、更に好ましくは5℃以上、特に好ましくは10℃以上、最も好ましくは20℃以上であり、特に貧溶媒の沸点が良溶媒の沸点より高いことが好ましい。
熱可塑性ノルボルネン系樹脂を溶媒に溶解または分散させる際の温度は、室温でも高温でもよく、十分に撹拌することにより、熱可塑性ノルボルネン系樹脂が均一に溶解または分散したフィルム形成液が得られる。
また、必要に応じてフィルム形成液に染料、顔料等の着色剤を適宜添加することができ、これにより、着色された加工前フィルムを得ることができる。
また、得られる加工前フィルムの表面平滑性を向上させることを目的として、フィルム形成液にレベリング剤を添加してもよい。かかるレベリング剤としては、一般的なものであれは種々のものを用いることができ、その具体例としては、フッ素系ノニオン界面活性剤、特殊アクリル樹脂系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤などが挙げられる。
フィルム形成液の液層を形成するためのキャリヤーとしては、金属ドラム、スチールベルト、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等よりなるポリエステルフィルム、ポリテトラフルオロエチレン製ベルトなどを用いることができる。フィルム形成液を塗布する方法としては、ダイスやコーターを使用する方法、スプレー法、刷毛塗り法、ロールコート法、スピンコート法、ディッピング法などを利用することができる。
また、フィルム形成液を繰り返し塗布することにより、得られる加工前フィルムの厚みや表面平滑性を制御することもできる。
また、キャリヤーとしてポリエステルフィルムを使用する場合には、表面処理されたフィルムを使用してもよい。
表面処理の方法としては、一般的に行われている親水化処理方法、例えばアクリル系樹脂やスルホン酸塩基含有樹脂をコーテイングやラミネートにより積層する方法、あるいは、コロナ放電処理等によりフィルム表面の親水性を向上させる方法等が挙げられる。
溶剤キャスト法において、液層中の溶媒を除去するための具体的な方法としては、特に限定されず、一般的に用いられる乾燥処理法、例えば多数のローラーによって乾燥炉中を通過させる方法を利用することができるが、乾燥工程において溶媒の蒸発に伴って気泡が発生すると、最終的に得られる特定位相差フィルムの特性を著しく低下させるので、これを回避するために、乾燥工程を2段以上の複数工程とし、各工程における温度あるいは風量を制御することが好ましい。
このようにして得られる加工前フィルム中の残留溶媒量は、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。ここで、加工前フィルム中の残留溶媒量が10質量%を超える場合には、当該加工前フィルムを延伸加工することによって得られる特定位相差フィルムを実際に使用したときに経時による寸法変化が大きくなり好ましくない。また、残留溶媒によりガラス転移温度が低くなり、耐熱性も低下することため好ましくない。
また、後述する延伸加工を好適に行うためには、加工前フィルム中の残留溶媒量を上記範囲内で適宜調節することが必要となる場合がある。具体的には、延伸配向処理によってフィルムに位相差を安定して均一に発現させるために、加工前フィルム中の残留溶媒量を通常10〜0.1質量%、好ましくは5〜0.1質量%、更に好ましくは1〜0.1質量%にすることがある。加工前フィルム中に微量の溶媒を残留させることにより、延伸配向処理が容易になる、あるいは位相差の制御が容易になる場合がある。
本発明において、加工前フィルムの厚みは、通常1〜500μm(1,000〜500,000nm)、好ましくは1〜300μm(1,000〜300,000nm)、更に好ましくは1〜200μm(1,000〜200,000)、最も好ましくは1〜100μm(1,000〜100,000nm)である。この厚みが1μm未満である場合には、当該加工前フィルムを実質的にハンドリングすることが困難となる。一方、この厚みが500μm以上である場合には、当該加工前フィルムをロール状に巻き取った際に、いわゆる「巻きぐせ」がついてしまい後加工等における取扱いが困難になる場合がある。
加工前フィルムの厚み分布は、平均値に対して通常±20%以内、好ましくは±10%以内、更に好ましくは±5%以内、特に好ましくは±3%以内である。また、1cmあたりの厚みの変動は、通常は10%以下、好ましくは5%以下、更に好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下であることが望ましい。加工前フィルムの厚み分布を上記の範囲内に制御することにより、当該加工前フィルムに対して延伸配向処理を行う際に、位相差ムラが発生することを防止することができる。
特定位相差フィルムを製造するための延伸加工法としては、具体的に、公知の一軸延伸法又は二軸延伸法を挙げることができる。
すなわち、テンター法による横一軸延伸法、ロール間圧縮延伸法、円周の異なる二組のロールを利用する縦一軸延伸法等あるいは横一軸と縦一軸を組み合わせた二軸延伸法、インフレーション法による延伸法等を用いることができる。
一軸延伸法の場合、延伸速度は通常1〜5,000%/分であり、好ましくは50〜1,000%/分であり、更に好ましくは100〜1,000%/分であり、特に好ましくは100〜500%/分である。
二軸延伸法の場合、同時2方向に延伸を行う場合や一軸延伸後に最初の延伸方向と異なる方向に延伸処理する場合がある。この時、延伸後のフィルムの屈折率楕円体の形状を制御するための2つの延伸軸の交わり角度は、所望の特性により決定されるため特に限定はされないが、通常120〜60度の範囲である。また、延伸速度は各延伸方向で同じであってもよく、異なっていてもよく、通常1〜5,000%/分であり、好ましくは50〜1,000%/分であり、更に好ましくは100〜1,000%/分であり、特に好ましくは100〜500%/分である。
延伸配向処理における処理温度は、特に限定されるものではないが、用いられる熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgを基準として、通常Tg±30℃、好ましくはTg±15℃、更に好ましくはTg-5℃〜Tg+15℃の範囲である。処理温度を上記の範囲内とすることにより、位相差ムラの発生を抑制することが可能となり、また、屈折率楕円体の制御が容易になることから好ましい。
延伸倍率は、所望の特性により決定されるため特に限定はされないが、通常1.01〜10倍、好ましくは1.03〜5倍、更に好ましくは1.03〜3倍である。延伸倍率が10倍以上であると、位相差の制御が困難になる場合がある。
延伸したフィルムは、そのまま冷却してもよいが、Tg-20℃〜Tgの温度雰囲気下
に少なくとも10秒以上、好ましくは30秒〜60分間、更に好ましくは1分〜60分間保持してヒートセットすることが好ましい。これにより、透過光の位相差の経時変化が少なく安定した位相差フィルムが得られる。
特定位相差フィルムの加熱による寸法収縮率は、100℃における加熱を500時間行った場合に、通常10%以下、好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。
寸法収縮率を上記範囲内にするためには、熱可塑性ノルボルネン系樹脂の原料である、例えば特定単量体a、特定単量体bあるいはその他の共重合性単量体の選択に加え、キャスト方法や延伸方法によりコントロールすることが可能である。
なお、延伸配向処理を施していない状態の加工前フィルムの加熱による寸法収縮率は、100℃における加熱を500時間行った場合に、通常5%以下、好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下である。
上記のようにして延伸したフィルムは、延伸により分子が配向していることにより、透過光に位相差を与えるようになるが、この位相差は、原料として用いる熱可塑性ノルボルネン系樹脂の種類、延伸倍率、延伸処理温度あるいは延伸前のフィルム(加工前フィルム)の厚み等を調整することにより制御することができる。例えば、延伸倍率については、延伸前の厚みが同じフィルムであっても、延伸倍率が大きいフィルムほど透過光の位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸倍率を変更することによって所望の位相差を透過光に与えるフィルムを得ることができる。また、延伸前のフィルム(加工前フィルム)の厚みについては、延伸倍率が同じであっても、延伸前のフィルムの厚みが大きいほど透過光に与える位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸前のフィルムの厚みを変更することによって所望の位相差を透過光に与える位相差フィルムを得ることができる。また、延伸処理温度については、延伸温度が低いほど透過光の位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸温度を変更することによって所望の位相差を透過光に与える位相差フィルムを得ることができる。
また、特定位相差フィルムの厚みを調整するためには、加工前フィルムの厚み、延伸倍率等を調整することにより制御することができる。具体的には、例えば加工前フィルムの厚みを小さくすること、あるいは延伸倍率を大きくすることにより位相差フィルムの厚みを小さくすることができる。
このような特定位相差フィルムにおいては、フィルム面上における1m2当たりに換算したときの輝点の数は、10個以下、好ましくは7個以下、更に好ましくは5個以下、特に好ましくは3個以下、最も好ましくは0または1とされる。
ここに、「輝点」とは、特定位相差フィルムをクロスニコル状態の偏光板に挟んで観察したときに肉眼で確認される部分的な光の漏れであり、通常外径1μm以上(円形のものであればその直径、その他の形状のものであれば長手方向の長さ)のものを計測する。もちろん、要求される性能によっては、これよりも小さいものを輝点として計測する場合がある。また、かかる輝点は、微小領域における位相差の部分的なムラが原因と考えられている。すなわち、加工前フィルム中に異物や泡等が存在すると、それらが肉眼では確認できないような大きさであっても、延伸加工した際に、異物や泡等が存在する部分に応力が集中し、この応力が集中した部分の位相差が周辺部分の位相差と異なってしまうことがあり、係る位相差の違いにより光が漏れてしまうと考えられている。
また、特定位相差フィルムにおいては、フィルム面上における1m2当たりに換算したときの異物の数が、好ましくは10個以下、更に好ましくは5個以下、特に好ましくは3個以下、最も好ましくは0または1とされる。
ここでいう「異物」とは、特定位相差フィルムに光を透過させた場合に、実質的に光の透過を妨げるものである。このような異物が特定位相差フィルム中に存在する場合には、透過光強度に影響を与え、液晶表示素子等に用いた場合、画素抜けや特性の低下を招くおそれがある。
なお、計測すべき異物の大きさは、通常外径1μm以上(円形のものであればその直径、その他の形状のものであれば長手方向の長さ)であるが、要求される性能によっては、これよりも小さいものを異物として計測する場合がある。
[レターデーション]
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフイルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(1)及び式(2)よりRthを算出することもできる。ここで、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY& SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny) が更に算出される。
Figure 2006293342
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。
Figure 2006293342
本発明のセルロースアシレートフィルムのReは20〜200nmが好ましく25〜100nmがさらに好ましく、30〜80nmが最も好ましい。また、Rthは70nm〜400nmが好ましく、90nm〜350nmがさらに好ましく、110nm〜320nmが最も好ましい。
また、Rth/Re比は1以上10以下が好ましく、2以上9以下がさらに好ましい。
Re及びRthの幅方向の変動は5%以内であることが好ましい。
また、フィルムの遅相軸と流延方向の成す角度は85°以上95°以下であり、かつ幅方向における角度の変動幅は5°以下であることが好ましい。
[セルロースアシレートフィルムの表面処理]
セルロースアシレートフィルムは、表面処理を施すことが好ましい。具体的方法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理または紫外線照射処理が挙げられる。また、特開平7−333433号公報に記載のように、下塗り層を設けることも好ましい。
偏光板の透明保護膜として使用する場合、偏光子との接着性の観点から、酸処理またはアルカリ処理、すなわちセルロースアシレートに対するケン化処理を実施することが特に好ましい。
表面エネルギーは55mN/m以上であることが好ましく、60mN/m以上75mN/m以下であることが更に好ましい。
以下、アルカリケン化処理を例に、具体的に説明する。
セルロースアシレートフィルムのアルカリケン化処理は、フィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。
アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオンの規定濃度は0.1乃至3.0Nの範囲にあることが好ましく、0.5乃至2.0Nの範囲にあることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、室温乃至90℃の範囲にあることが好ましく、40乃至70℃の範囲にあることがさらに好ましい。
固体の表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社1989.12.10発行)に記載のように接触角法、湿潤熱法、および吸着法により求めることができる。本発明のセルロースアシレートフィルムの場合、接触角法を用いることが好ましい。
具体的には、表面エネルギーが既知である2種の溶液をセルロースアシレートフィルムに滴下し、液滴の表面とフィルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフィルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフィルムの表面エネルギーを算出できる。
[セルロースアシレートフィルムの含水率]
セルロースアシレートフィルムの吸水率は一定温湿度における平衡含水率を測定することにより評価することができる。平衡含水率は一定温湿度に24時間放置した後、平衡に達した試料の水分量をカールフィッシャー法で測定し、水分量(g)を試料質量(g)で除して算出したものである。
本発明のセルロースアシレートフィルムの25℃80%における平衡含水率は3質量%以下が好ましく、2.5質量%以下がさらに好ましく、2質量%以下が最も好ましい。
[透湿度]
透湿度はJIS Z 0208に記載の方法に則り、各試料の透湿度を測定し、面積1m2あたり24時間で蒸発する水分量(g)として算出する。
セルロースアシレートフィルムの透湿度は様々な方法により調節可能である。
セルロースアシレートフィルムに疎水性化合物を添加し、セルロースアシレートフィルムの吸水率を低下させることにより透湿度を低下させることができる。
JIS Z 0208、条件Aの方法で測定した本発明のセルロースアシレートフィルムの透湿度は、20g/m2以上250g/m2以下が好ましく、40g/m2以上225g/m2以下がさらに好ましく、100g/m2以上200g/m2以下が最も好ましい。
[吸湿膨張係数]
吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。
額縁状の透過率上昇を防止するために、セルロースアシレートフィルムの吸湿膨張係数は、30×10-5/%RH以下とすることが好ましく、15×10-5/%RH以下とすることが更に好ましく、10×10-5/%RH以下とすることが最も好ましい。また、吸湿膨張係数は小さい方が好ましいが、通常は、1.0×10-5/%RH以上の値である。
吸湿膨張係数の測定方法について以下に示す。作製したポリマーフィルム(位相差板)から幅5mm。長さ20mmの試料を切り出し、片方の端を固定して25℃、20%RH(R0)の雰囲気下にぶら下げた。他方の端に0.5gの重りをぶら下げて、10分間放置し長さ(L0)を測定した。次に、温度は25℃のまま、湿度を80%RH(R1)にして、長さ(L1)を測定した。吸湿膨張係数は下式により算出した。測定は同一試料につき10サンプル行い、平均値を採用した。
吸湿膨張係数[/%RH]={(L1−L0)/L0}/(R1−R0)
上記吸湿による寸度変化を小さくするには、製膜時の残留溶剤量を低くしポリマーフィルム中の自由体積を小さくすることが好ましい。
残留溶剤を減らすための一般的手法は、高温かつ長時間で乾燥することであるが、あまり長時間であると、当然のことながら生産性が落ちる。従ってセルロースアシレートフィルムに対する残留溶剤の量は、0.01乃至1質量%の範囲にあることが好ましく、0.02乃至0.07質量%の範囲にあることがさらに好ましく、0.03乃至0.05質量%の範囲にあることが最も好ましい。
上記残留溶剤量を制御することにより、光学補償能を有する偏光板を安価に高い生産性で製造することができる。
残留溶剤量は、一定量の試料をクロロホルムに溶解し、ガスクロマトグラフ(GC18A、島津製作所(株)製)を用いて測定した。
溶液流延法では、ポリマー材料を有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造する。溶液流延法での乾燥は、後述するように、ドラム(またはバンド)面での乾燥と、フィルム搬送時の乾燥に大きく分かれる。ドラム(またはバンド)面での乾燥時には、使用している溶剤の沸点を越えない温度(沸点を越えると泡となる)でゆっくりと乾燥させることが好ましい。また、フィルム搬送時の乾燥は、ポリマー材料のガラス転移点±30℃、更に好ましくは±20℃で行うことが好ましい。
また、上記吸湿による寸度変化を小さくする別な方法として、疎水基を有する化合物を添加することが好ましい。疎水基を有する素材としては、分子中にアルキル基やフェニル基のような疎水基を有する素材であれば特に制限はないが、前記のセルロースアシレートフィルムに添加する可塑剤や劣化防止剤の中で該当する素材が特に好ましく用いられる。これら好ましい素材の例としては、トリフェニルフォスフェート(TPP)、トリベンジルアミン(TBA)などを挙げることができる。
これらの疎水基を有する化合物の添加量は、調整する溶液(ドープ)に対して0.01乃至30質量%の範囲にあることが好ましく、0.1乃至20質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
[寸度変化率]
セルロースアシレートフィルムの寸度変化率はピンゲージにより一定温度での経時前後の寸度変化を測定し、下記式により算出することができる。
寸度変化率(%)=[(L2−L1)/L1]×100
式中、L1は経時前の寸度を、L2は経時後の寸度を表す。
本発明のセルロースアシレートフィルムの90℃24hr経時での寸度変化率は、−0.5%以上0.5%以下が好ましく、−0.3%以上0.3%以下がさらに好ましく、−0.2%以上0.2%以下が最も好ましい。
[セルロースアシレートフィルムの弾性率]
セルロースアシレートフィルムの弾性率は引っ張り試験により求めることができる。本発明のセルロースアシレートフィルムは幅方向あるいは流延方向の少なくともひとつの方向が1.0GPa以上6.0GPa以下が好ましく、2.0Gpa以上5.5GPa以下がさらに好ましく2.5GPa以上5.0GPa以下が最も好ましい。
[光弾性]
本発明のセルロースアシレートフィルムの光弾性係数は60×10-8cm2/N以下が好ましく、20×10-8cm2がさらに好ましい。光弾性係数はエリプソメーターにより求めることができる。
(フィルムの表面処理)
本発明の延伸ポリマーフィルムは偏光子、及び光学異方性層あるいは光学異方性層と本発明の延伸ポリマーフィルムとの間に設けられる配向層、との密着の確保するため、表面が親水化処理されていることが好ましい。
表面処理方法としては、例えば特開2000-24167号、特開平10-130402号、特開2002-148436号、特開2002-90546号、特開2001-350017号に記載の接着層を設ける方法、また、特開2001-350018号に記載のコロナ放電処理等の表面処理により親水性を付与することもできる。
(偏光板の構成)
まず、本発明の偏光板を構成する保護フィルム、偏光子について説明する。
本発明の偏光板は、偏光子の両側に保護フィルムが貼り合わされてなる偏光板であり、保護フィルムの少なくとも1枚が本発明の延伸光学樹脂フィルムであることが好ましい。
また、偏光子や保護フィルム以外にも、粘着剤層、セパレートフィルム、保護フィルムを構成要素として有していても構わない。さらに、保護フィルムの表面に、ハードコート層、防眩層、および反射防止層等を設けることが好ましい。これらの層については後述する。
(1)保護フィルム
本発明の偏光板は偏光子の両側に1ずつ合計2枚の保護フィルムを有し、少なくとも1枚は本発明の延伸光学樹脂フィルムである。また、2枚の保護フィルムのうち、少なくとも一枚は位相差フィルムとしての機能を合わせてもつことが好ましい。液晶表示装置に本発明の偏光板を用いる場合、液晶セルの両側に配置される二枚の偏光板の少なくとも一方が、本発明の偏光板であることが好ましい。
本発明において用いられる保護フィルムはノルボルネン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアリレート、ポリスルフォン、セルロースアシレートなどから製造されたポリマーフィルムであることが好ましく、セルロースアシレートフィルムであることが最も好ましい。
(2)偏光子
本発明の偏光子は、ポリビニルアルコール(PVA)と二色性分子から構成することが好ましいが、特開平11−248937号に記載されているようにPVAやポリ塩化ビニルを脱水、脱塩素することによりポリエン構造を生成し、これを配向させたポリビニレン系偏光子も使用することができる。
PVAは、ポリ酢酸ビニルをケン化したポリマー素材であるが、例えば不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸、オレフィン類、ビニルエーテル類のような酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有しても構わない。また、アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等を含有する変性PVAも用いることができる。
PVAのケン化度は特に限定されないが、溶解性等の観点から80〜100mol%が好ましく、90〜100mol%が特に好ましい。またPVAの重合度は特に限定されないが、1000〜10000が好ましく、1500〜5000が特に好ましい。
PVAのシンジオタクティシティーは特許2978219号に記載されているように耐久性を改良するため55%以上が好ましいが、特許第3317494号に記載されている45〜52.5%も好ましく用いることができる。
PVAはフィルム化した後、二色性分子を導入して偏光子を構成することが好ましい。PVAフィルムの製造方法は、PVA系樹脂を水又は有機溶媒に溶解した原液を流延して成膜する方法が一般に好ましく用いられる。原液中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度は、通常5〜20質量%であり、この原液を流延法により製膜することによって、膜厚10〜200μmのPVAフィルムを製造できる。PVAフィルムの製造は、特許第3342516号、特開平09−328593号、特開2001−302817号、特開2002−144401号を参考にして行うことができる。
PVAフィルムの結晶化度は、特に限定されないが、特許第3251073号に記載されている平均結晶化度(Xc)50〜75質量%や、面内の色相バラツキを低減させるため、特開2002−236214号に記載されている結晶化度38%以下のPVAフィルムを用いることができる。
PVAフィルムの複屈折(Δn)は小さいことが好ましく、特許第3342516号に記載されている複屈折が1.0×10-3以下のPVAフィルムを好ましく用いることができる。但し、特開2002−228835号に記載されているように、PVAフィルムの延伸時の切断を回避しながら高偏光度を得るため、PVAフィルムの複屈折を0.02以上0.01以下としてもよいし、特開2002−060505号に記載されているように(nx+ny)/2−nzの値を0.0003以上0.01以下としてもよい。PVAフィルムのレターデーション(面内)は0nm以上100nm以下が好ましく、0nm以上50nm以下がさらに好ましい。また、PVAフィルムのRth(膜厚方向)は0nm以上500nm以下が好ましく、0nm以上300nm以下がさらに好ましい。
この他、本発明の偏光板には、特許3021494号に記載されている1、2−グリコール結合量が1.5モル%以下のPVAフィルム、特開2001−316492号に記載されている5μm以上の光学的異物が100cm2当たり500個以下であるPVAフィルム、特開2002−030163号に記載されているフィルムのTD方向の熱水切断温度斑が1.5℃以下であるPVAフィルム、さらにグリセリンなどの3〜6価の多価アルコ−ルを1〜100質量部にしたり、特開平06−289225号に記載されている可塑剤を15質量%以上混合した溶液から製膜したPVAフィルムを好ましく用いることができる。
PVAフィルムの延伸前のフィルム膜厚は特に限定されないが、フィルム保持の安定性、延伸の均質性の観点から、1μm〜1mmが好ましく、20〜200μmが特に好ましい。特開2002−236212号に記載されているように水中において4倍から6倍の延伸を行った時に発生する応力が10N以下となるような薄いPVAフィルムを使用してもよい。
二色性分子はI3-やI5-などの高次のヨウ素イオンもしくは二色性染料を好ましく使用することができる。本発明では高次のヨウ素イオンが特に好ましく使用される。高次のヨウ素イオンは、「偏光板の応用」永田良編、CMC出版や工業材料、第28巻、第7号、p.39〜p.45に記載されているようにヨウ素をヨウ化カリウム水溶液に溶解した液および/またはホウ酸水溶液にPVAを浸漬し、PVAに吸着・配向した状態で生成することができる。
二色性分子として二色性染料を用いる場合は、アゾ系色素が好ましく、特にビスアゾ系とトリスアゾ系色素が好ましい。二色性染料は水溶性のものが好ましく、このため二色性分子にスルホン酸基、アミノ基、水酸基などの親水性置換基が導入され、遊離酸、あるいはアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン類の塩として好ましく用いられる。
このような二色性染料の具体例としては、例えば、C.I.Direct Red 37、 Congo Red(C.I. Direct Red 28)、C.I.Direct Violet 12、 C.I.Direct Blue 90、 C.I.Direct Blue 22、 C.I.Direct Blue 1、 C.I.Direct Blue 151、 C.I.Direct Green 1等のベンジジン系、C.I.Direct Yellow 44、 C.I.Direct Red 23、 C.I.Direct Red 79等のジフェニル尿素系、C.I.Direct Yellow 12等のスチルベン系、C.I.Direct Red 31等のジナフチルアミン系、C.I.Direct Red 81、 C.I.Direct Violet 9、 C.I.Direct Blue 78等のJ酸系を挙げることができる。
これ以外にも、C.I.Direct Yellow 8、C.I.Direct Yellow 28、C.I.Direct Yellow 86、C.I.Direct Yellow 87、C.I.Direct Yellow 142、C.I.Direct Orange 26、C.I.Direct Orange 39、C.I.Direct Orange 72、C.I.Direct Orange 106、C.I.Direct Orange 107、C.I.Direct Red 2、C.I.Direct Red 39、C.I.Direct Red 83、C.I.Direct Red 89、C.I.Direct Red 240、C.I.Direct Red 242、C.I.Direct Red 247、C.I.Direct Violet 48、C.I.Direct Violet 51、C.I.Direct Violet 98、C.I.Direct Blue 15、C.I.Direct Blue 67、C.I.Direct Blue 71、C.I.Direct Blue 98、C.I.Direct Blue 168、C.I.Direct Blue 202、C.I.Direct Blue 236、C.I.Direct Blue 249、C.I.Direct Blue 270、C.I.Direct Green 59、C.I.Direct Green 85、C.I.Direct Brown 44、C.I.Direct Brown 106、C.I.Direct Brown 195、C.I.Direct Brown 210、C.I.Direct Brown 223、C.I.Direct Brown 224、C.I.Direct Black 1、C.I.Direct Black 17、C.I.Direct Black 19、C.I.Direct Black 54等が、さらに特開昭62−70802号、特開平1−161202号、特開平1−172906号、特開平1−172907号、特開平1−183602号、特開平1−248105号、特開平1−265205号、特開平7−261024号、の各公報記載の二色性染料等も好ましく使用することができる。各種の色相を有する二色性分子を製造するため、これらの二色性染料は2種以上を配合してもかまわない。二色性染料を用いる場合、特開2002−082222号に記載されているように吸着厚みが4μm以上であってもよい。
フィルム中の該二色性分子の含有量は、少なすぎると偏光度が低く、また、多すぎても単板透過率が低下することから通常、フィルムのマトリックスを構成するポリビニルアルコール系重合体に対して、0.01質量%から5質量%の範囲に調整される。
偏光子の好ましい膜厚としては、5μm〜40μmが好ましく、さらに好ましくは10μm〜30μmである。偏光子の厚さと後述する保護フィルムの厚さの比を、特開2002−174727号に記載されている0.01≦A(偏光子膜厚)/B(保護フィルム膜厚)≦0.16範囲とすることも好ましい。
保護フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸の交差角は、任意の値でよいが、平行もしくは45±20゜の方位角であることが好ましい。
(偏光板の製造工程)
次に、本発明の偏光板の製造工程について説明する。
本発明における偏光板の製造工程は、膨潤工程、染色工程、硬膜工程、延伸工程、乾燥工程、保護フィルム貼り合わせ工程、貼り合わせ後乾燥工程から構成されることが好ましい。染色工程、硬膜工程、延伸工程の順序を任意に変えること、また、いくつかの工程を組み合わせて同時に行っても構わない。また、特許第3331615号に記載されているように、硬膜工程の後に水洗することも好ましく行うことができる。
本発明では、膨潤工程、染色工程、硬膜工程、延伸工程、乾燥工程、保護フィルム貼り合わせ工程、貼り合わせ後乾燥工程を記載の順序で遂次行うことが特に好ましい。また、前述の工程中あるいは後にオンライン面状検査工程を設けても構わない。
膨潤工程は、水のみで行うことが好ましいが、特開平10−153709号公報に記載されているように、光学性能の安定化及び、製造ラインでの偏光板基材のシワ発生回避のために、偏光板基材をホウ酸水溶液により膨潤させて、偏光板基材の膨潤度を管理することもできる。
また、膨潤工程の温度、時間は、任意に定めることができるが、10℃以上60℃以下、5秒以上2000秒以下が好ましい。
染色工程は、特開2002−86554号公報に記載の方法を用いることができる。また、染色方法としては浸漬だけでなく、ヨウ素あるいは染料溶液の塗布あるいは噴霧等、任意の手段が可能である。また、特開2002−290025号公報に記載されているように、ヨウ素の濃度、染色浴温度、浴中の延伸倍率、および浴中の浴液を撹拌させながら染色させる方法を用いてもよい。
二色性分子として高次のヨウ素イオンを用いる場合、高コントラストな偏光板を得るためには、染色工程はヨウ素をヨウ化カリウム水溶液に溶解した液を用いることが好ましい。この場合のヨウ素−ヨウ化カリウム水溶液のヨウ素は0.05〜20g/l、ヨウ化カリウムは3〜200g/l、ヨウ素とヨウ化カリウムの質量比は1〜2000が好ましい範囲である。染色時間は10〜1200秒が好ましく、液温度は10〜60℃が好ましい。さらに好ましくは、ヨウ素は0.5〜2g/l、ヨウ化カリウムは30〜120g/l、ヨウ素とヨウ化カリウムの質量比は30〜120がよく、染色時間は30〜600秒、液温度は20〜50℃がよい。
また、特許第3145747号に記載されているように、染色液にホウ酸、ホウ砂等のホウ素系化合物を添加しても良い。
硬膜工程は、架橋剤溶液に浸漬、または溶液を塗布して架橋剤を含ませるのが好ましい。また、特開平11−52130号公報に記載されているように、硬膜工程を数回に分けて行うこともできる。
架橋剤としては米国再発行特許第232897号に記載のものが使用でき、特許第3357109号に記載されているように、寸法安定性を向上させるため、架橋剤として多価アルデヒドを使用することもできるが、ホウ酸類が最も好ましく用いられる。硬膜工程に用いる架橋剤としてホウ酸を用いる場合には、ホウ酸−ヨウ化カリウム水溶液に金属イオンを添加しても良い。金属イオンとしては塩化亜鉛が好ましいが、特開2000−35512号公報に記載されているように、塩化亜鉛の変わりに、ヨウ化亜鉛などのハロゲン化亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛などの亜鉛塩を用いることもできる。
本発明では、塩化亜鉛を添加したホウ酸−ヨウ化カリウム水溶液を作製し、PVAフィルムを浸漬させて硬膜を行うことが好ましく行われる。ホウ酸は1〜100g/l、ヨウ化カリウムは1〜120g/l、塩化亜鉛は0.01〜10g/l、硬膜時間は10〜1200秒が好ましく、液温度は10〜60℃が好ましい。さらに好ましくは、ホウ酸は10〜80g/l、ヨウ化カリウムは5〜100g/l、塩化亜鉛は0.02〜8g/l、硬膜時間は30〜600秒がよく、液温度は20〜50℃がよい。
延伸工程は、米国特許2,454,515号などに記載されているような、縦一軸延伸方式、もしくは特開2002−86554号に記載されているようなテンター方式を好ましく用いることができる。好ましい延伸倍率は2倍以上12倍以下であり、さらに好ましくは3倍以上10倍以下である。また、延伸倍率と原反厚さと偏光子厚さの関係は特開2002−040256号に記載されている(保護フィルム貼合後の偏光子膜厚/原反膜厚)×(全延伸倍率)>0.17としたり、最終浴を出た時の偏光子の幅と保護フィルム貼合時の偏光子幅の関係は特開2002−040247号に記載されている0.80≦(保護フィルム貼合時の偏光子幅/最終浴を出た時の偏光子の幅)≦0.95とすることも好ましく行うことができる。
乾燥工程は、特開2002−86554号で公知の方法を使用できるが、好ましい温度範囲は30℃〜100℃であり、好ましい乾燥時間は30秒〜60分である。また、特許第3148513号に記載されているように、水中退色温度を50℃以上とするような熱処理を行ったり、特開平07−325215号や特開平07−325218号に記載されているように温湿度管理した雰囲気でエージングすることも好ましく行うことができる。
保護フィルム貼り合わせ工程は、乾燥工程を出た前述の偏光子の両面を2枚の保護フィルムで貼合する工程である。貼合直前に接着液を供給し、偏光子と保護フィルムを重ね合わせるように、一対のロールで貼り合わせる方法が好ましく使用される。また、特開2001−296426号及び特開2002−86554号に記載されているように、偏光子の延伸に起因するレコードの溝状の凹凸を抑制するため、貼り合わせ時の偏光子の水分率を調整することが好ましい。本発明では0.1%〜30%の水分率が好ましく用いられる。
偏光子と保護フィルムとの接着剤は特に限定されないが、PVA系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等の変性PVAを含む)やホウ素化合物水溶液等が挙げられ、中でもPVA系樹脂が好ましい。接着剤層厚みは乾燥後に0.01〜5μmが好ましく、0.05〜3μmが特に好ましい。
また、偏光子と保護フィルムの接着力を向上させるために、保護フィルムを表面処理して親水化してから接着することが好ましく行われる。表面処理の方法は特に制限は無いが、アルカリ溶液を用いてケン化する方法、コロナ処理法など公知の方法を用いることができる。また、表面処理後にゼラチン下塗り層等の易接着層を設けても良い。特開2002−267839号に記載されているように保護フィルム表面の水との接触角は50°以下が好ましい。
貼り合わせ後乾燥条件は、特開2002−86554号に記載の方法に従うが、好ましい温度範囲は30℃〜100℃であり、好ましい乾燥時間は30秒〜60分である。また、特開平07−325220号に記載されているように温湿度管理をした雰囲気でエージングすることも好ましい。
偏光子中の元素含有量は、ヨウ素0.1〜3.0g/m2、ホウ素0.1〜5.0g/m2、カリウム0.1〜2.00g/m2、亜鉛0〜2.00g/m2であることが好ましい。また、カリウム含有量は特開2001−166143号に記載されているように0.2質量%以下であってもよいし、偏光子中の亜鉛含有量を特開2000−035512号に記載されている0.04質量%〜0.5質量%としてもよい。
特許第3323255号に記載されているように、偏光板の寸法安定性をあげるために、染色工程、延伸工程および硬膜工程のいずれかの工程において有機チタン化合物および/または有機ジルコニウム化合物を添加使用し、有機チタン化合物および有機ジルコニウム化合物から選ばれた少なくとも一種の化合物を含有することもできる。また、偏光板の色相を調整するために二色性染料を添加しても良い。
(偏光板の特性)
(1)透過率および偏光度
本発明の偏光板の好ましい単板透過率は42.5%以上49.5%以下であるが、さらに好ましくは42.8%以上49.0%以下である。式4で定義される偏光度の好ましい範囲は99.900%以上99.999%以下であり、さらに好ましくは99.940%以上99.995%以下である。平行透過率の好ましい範囲は36%以上42%以下であり、直交透過率の好ましい範囲は、0.001%以上0.05%以下である。式5で定義される二色性比の好ましい範囲は48以上、1215以下であるが、さらに好ましくは53以上525以下である。
上述の透過率はJISZ8701に基づいて定義される。
Figure 2006293342
ここで、K、S(λ)、y(λ)、τ(λ)は以下の通りである。
Figure 2006293342
S(λ):色の表示に用いる標準光の分光分布
y(λ):XYZ系における等色関数
τ(λ):分光透過率
偏光度は下記式4で定義される。
Figure 2006293342
また、二色性比は下記式5で定義される。
Figure 2006293342
ヨウ素濃度と単板透過率は特開2002−258051号に記載されている範囲であってもよい。
平行透過率は、特開2001−083328号や特開2002−022950号に記載されているように波長依存性が小さくてもよい。偏光板をクロスニコルに配置した場合の光学特性は、特開2001−091736号に記載されている範囲であってもよく、平行透過率と直交透過率の関係は、特開2002−174728号に記載されている範囲内であってもよい。
特開2002−221618号に記載されているように、光の波長が420〜700nmの間での10nm毎の平行透過率の標準偏差が3以下で、且つ、光の波長が420〜700nmの間での10nm毎の(平行透過率/直交透過率)の最小値が300以上であってもよい。
偏光板の波長440nmにおける平行透過率と直交透過率、平行透過率、波長550nmにおける平行透過率と直交透過率、波長610nmにおける平行透過率と直交透過率が、特開2002−258042号や特開2002−258043号に記載された範囲とすることも好ましく行うことができる。
(2)色相
本発明の偏光板の色相は、CIE均等知覚空間として推奨されているL***表色系における明度指数L*およびクロマティクネス指数a*とb*を用いて好ましく評価される。
*、a*、b*は、上述のX、Y、Zを用い使って式6で定義される。
Figure 2006293342
ここでX0、Y0、Z0は照明光源の三刺激値を表し、標準光Cの場合、X0=98.072、Y0=100、Z0=118.225であり、標準光D65の場合、X0=95.045、Y0=100、Z0=108.892である。
偏光板単枚の好ましいa*の範囲は−2.5以上0.2以下であり、さらに好ましくは−2.0以上0以下である。偏光板単枚の好ましいb*の範囲は1.5以上5以下であり、さらに好ましくは2以上4.5以下である。2枚の偏光板の平行透過光のa*の好ましい範囲は−4.0以上0以下であり、さらに好ましくは−3.5以上−0.5以下である。2枚の偏光板の平行透過光のb*の好ましい範囲は2.0以上8以下であり、さらに好ましくは2.5以上7以下である。2枚の偏光板の直交透過光のa*の好ましい範囲は−0.5以上1.0以下であり、さらに好ましくは0以上2以下である。2枚の偏光板の直交透過光のb*の好ましい範囲は−2.0以上2以下であり、さらに好ましくは−1.5以上0.5以下である。
色相は、前述のX、Y、Zから算出される色度座標(x,y)で評価しても良く、例えば、2枚の偏光板の平行透過光の色度(xp、yp)と直交透過光の色度(xc、yc)は、特開2002−214436号、特開2001−166136号や特開2002−169024号に記載されている範囲にしたり、色相と吸光度の関係を特開2001−311827号に記載されている範囲内にすることも好ましく行うことができる。
(3)視野角特性
偏光板をクロスニコルに配置して波長550nmの光を入射させる場合の、垂直光を入射させた場合と、偏光軸に対して45度の方位から法線に対し40度の角度で入射させた場合の、透過率比やxy色度差を特開2001−166135号や特開2001−166137号に記載された範囲とすることも好ましい。また、特開平10−068817号に記載されているように、クロスニコル配置した偏光板積層体の垂直方向の光透過率(T0)と、積層体の法線から60°傾斜方向の光透過率(T60)との比(T60/T0)を10000以下としたり、特開2002−139625号に記載されているように、偏光板に法線から仰角80度までの任意な角度で自然光を入射させた場合に、その透過スペクトルの520〜640nmの波長範囲において波長域20nm以内における透過光の透過率差を6%以下としたり、特開平08−248201号に記載されている、フィルム上の任意の1cm離れた場所における透過光の輝度差が30%以内とすることも好ましい。
(4)耐久性
(4−1)湿熱耐久性
特開2001−116922号に記載されているように60℃、90%RHの雰囲気に500時間放置した場合のその前後における光透過率及び偏光度の変化率が絶対値に基づいて3%以下であることが好ましい。特に光透過率の変化率は2%以下、また、偏光度の変化率は絶対値に基づいて1.0%以下、更には0.1%以下であることが好ましい。また、特開平07−077608号に記載されているように80℃、90%RH、500時間放置後の偏光度が95%以上、単体透過率が38%以上であることも好ましい。
(4−2)ドライ耐久性
80℃、ドライ雰囲気下に500時間放置した場合のその前後における光透過率及び偏光度の変化率も絶対値に基づいて3%以下であることが好ましい。特に、光透過率の変化率は2%以下、また、偏光度の変化率は絶対値に基づいて1.0%以下、更には0.1%以下であることが好ましい。
(4−3)その他の耐久性
さらに、特開平06−167611号に記載されているように80℃で2時間放置した後の収縮率が0.5%以下としたり、ガラス板の両面にクロスニコル配置した偏光板積層体を69℃の雰囲気中で750時間放置した後のx値及びy値が特開平10−068818号に記載されている範囲内としたり、80℃、90%RHの雰囲気中で200時間放置処理後のラマン分光法による105cm-1及び157cm-1のスペクトル強度比の変化を、特開平08−094834号や特開平09−197127号に記載された範囲とすることも好ましく行うことができる。
(5)配向度
PVAの配向度は高い程良好な偏光性能が得られるが、偏光ラマン散乱や偏光FT−IR等の手段によって算出されるオーダーパラメーター値として0.2〜1.0が好ましい範囲である。また、特開昭59−133509号に記載されているように、偏光子の全非晶領域の高分子セグメントの配向係数と占領分子の配向係数(0.75以上)との差を少なくとも0.15としたり、特開平04−204907号に記載されているように偏光子の非晶領域の配向係数が0.65〜0.85としたり、I3-やI5-の高次ヨウ素イオンの配向度を、オーダーパラメーター値として0.8〜1.0とすることも好ましく行うことができる。
(6)その他の特性
特開2002−006133号に記載されているように、80℃30分加熱したときの単位幅あたりの吸収軸方向の収縮力が4.0N/cm以下としたり、特開2002−236213号に記載されているように、偏光板を70℃の加熱条件下に120時間置いた場合に、偏光板の吸収軸方向の寸法変化率及び偏光軸方向の寸法変化率を、共に±0.6%以内としたり、偏光板の水分率を特開2002−090546号に記載されているように3質量%以下とすることも好ましく行うことができる。さらに、特開2000−249832号に記載されているように延伸軸に垂直な方向の表面粗さが中心線平均粗さに基づいて0.04μm以下としたり、特開平10−268294号に記載されているように透過軸方向の屈折率n0を1.6より大きくしたり、偏光板の厚みと保護フィルムの厚みの関係を特開平10−111411号に記載された範囲とすることも好ましく行うことができる。
(偏光板の機能化)
本発明の偏光板は、LCDの視野角拡大フィルム、反射型LCDに適用するためのλ/4板等の位相差フィルム、ディスプレイの視認性向上のための反射防止フィルム、輝度向上フィルムや、ハードコート層、前方散乱層、アンチグレア(防眩)層等の機能層を有する光学フィルムと複合した機能化偏光板として好ましく使用される。
本発明の偏光板と上述の機能性光学フィルムを複合した構成の一実施態様を図1に示した。偏光板5の片側の保護フィルムとして機能性光学フィルム3を偏光子2に粘着層を介して接着しても良いし(図1(A))、偏光子2の両面に保護フィルム1a、1bを設けた偏光板5に粘着層4を介して機能性光学フィルム3を接着しても良い(図1(B))。前者の場合、もう一方の保護フィルム1には任意の透明保護フィルムを使用してもよい。また、本発明の偏光板においては、保護フィルムに光学機能層を粘着層を介して貼り合わせ、機能性光学フィルム3として、図1(A)の構成とすることも好ましい。機能層や保護フィルム等の各層間の剥離強度は特開2002−311238号に記載されている4.0N/25mm以上とすることも好ましい。機能性光学フィルムは、目的とする機能に応じて液晶モジュール側に配置したり、液晶モジュールとは反対側、すなわち表示側もしくはバックライト側に配置することが好ましい。
以下に本発明の偏光板と複合して使用される機能性光学フィルムについて説明する。
(1)視野角拡大フィルム
本発明の偏光板は、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、OCB(Optically Compensatory Bend)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)のような表示モードに提案されている視野角拡大フィルムと組み合わせて使用することができる。
TNモード用の視野角拡大フィルムとしては、日本印刷学会誌第36巻第3号(1999)p.40〜44、月刊ディスプレイ8月号(2002)p.20〜24、特開平4−229828、特開平6−75115、特開平6−214116号、特開平8−50206等に記載されたWVフィルム(富士写真フイルム(株)製)を好ましく組み合わせて使用される。
TNモード用の視野角拡大フィルムの好ましい構成は、前述の透明なポリマーフィルム上に配向層と光学異方性層をこの順に有したものである。視野角拡大フィルムは粘着剤を介して偏光板と貼合され、用いられてよいが、SID’00 Dig.、p.551(2000)に記載されているように、前記偏光子の保護フィルムの一方も兼ねて使用されることが薄手化の観点から特に好ましい。
配向層は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログループを有する層の形成のような手段で設けることができる。さらに電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により配向機能が生じる配向層も知られているが、ポリマーのラビング処理により形成する配向層が特に好ましい。ラビング処理はポリマー層の表面を紙や布で一定方向に数回こすることにより好ましく実施される。偏光子の吸収軸方向とラビング方向は実質的に平行であることが好ましい。配向層に使用するポリマーの種類は、ポリイミド、ポリビニルアルコール、特開平9−152509号公報に記載された重合性基を有するポリマー等を好ましく使用することができる。配向層の厚さは0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがさらに好ましい。
光学異方性層は液晶性化合物を含有していることが好ましい。本発明に使用される液晶性化合物はディスコティック化合物(ディスコティック液晶)を有していることが特に好ましい。ディスコティック液晶分子は、下記式で表されるトリフェニレン誘導体のように円盤状のコア部を有し、そこから放射状に側鎖が伸びた構造を有している。また、経時安定性を付与するため、熱、光等で反応する基をさらに導入することも好ましく行われる。上記ディスコティック液晶の好ましい例は特開平8−50206号公報に記載されている。
Figure 2006293342
ディスコティック液晶分子は、配向層付近ではラビング方向にプレチルト角を持ってほぼフィルム平面に平行に配向しており、反対の空気面側ではディスコティック液晶分子が面に垂直に近い形で立って配向している。ディスコティック液晶層全体としては、ハイブリッド配向を取っており、この層構造によってTNモードのTFT−LCDの視野角拡大を実現することができる。
上記光学異方性層は、一般にディスコティック化合物及び他の化合物(更に、例えば重合性モノマー、光重合開始剤)を溶剤に溶解した溶液を配向層上に塗布し、乾燥し、次いでディスコティックネマティック相形成温度まで加熱した後、UV光の照射等により重合させ、さらに冷却することにより得られる。本発明に用いるディスコティック液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度としては、70〜300℃が好ましく、特に70〜170℃が好ましい。
また、上記光学異方性層に添加するディスコティック化合物以外の化合物としては、ディスコティック化合物と相溶性を有し、液晶性ディスコティック化合物に好ましい傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しない限り、どのような化合物も使用することができる。これらの中で、重合性モノマー(例、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基を有する化合物)、含フッ素トリアジン化合物等の空気界面側の配向制御用添加剤が、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース及びセルロースアセテートブチレート等のポリマーを挙げることができる。これらの化合物は、ディスコティック化合物に対して一般に0.1〜50質量%、好ましくは0.1〜30質量%の添加量にて使用される。
光学異方性層の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましい
視野角拡大フィルムの好ましい態様は、透明基材フィルムとしてのセルロースアシレートフィルム、その上に設けられた配向層、および該配向層上に形成されたディスコティック液晶からなる光学異方性層から構成され、かつ光学異方性層がUV光照射により架橋されている。
また、上記以外にも視野角拡大フィルムと本発明の偏光板を組み合わせる場合、例えば、特開平07−198942号に記載されているように板面に対し交差する方向に光軸を有して複屈折に異方性を示す位相差板と積層したり、特開2002−258052号に記載されているように保護フィルムと光学異方性層の寸法変化率が実質的に同等とすることも好ましく行うことができる。また、特開平12−258632号に記載されているように視野角拡大フィルムと貼合される偏光板の水分率を2.4%以下としたり、特開2002−267839号に記載されているように視野角拡大フィルム表面の水との接触角を70°以下とすることも好ましく行うことができる。
IPSモード液晶セル用視野角拡大フィルムは、電界無印状態の黒表示時において、基板面に平行配向した液晶分子の光学補償および偏光板の直交透過率の視野角特性向上に用いる。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の透過軸は直交している。しかし斜めから観察した場合は、透過軸の交差角が90°ではなくなり、漏れ光が生じてコントラストが低下する。本発明の偏光板をIPSモード液晶セルに用いる場合は、漏れ光を低下するため特開平10−54982号公報に記載されているような面内の位相差が0に近く、かつ厚さ方向に位相差を有する視野角拡大フィルムと好ましく組み合わせて用いられる。
OCBモードの液晶セル用視野角拡大フィルムは、電界印加により液晶層中央部で垂直配向し、基板界面付近で傾斜配向した液晶層の光学補償を行い、黒表示の視野角特性を改善するために使用される。本発明の偏光板をOCBモード液晶セルに用いる場合は、米国特許5805253号に記載されたような円盤状の液晶性化合物をハイブリット配向させた視野角拡大フィルムと好ましく組み合わせて用いられる。
VAモードの液晶セル用視野角拡大フィルムは、電界無印加状態で液晶分子が基板面に対して垂直配向した状態の黒表示の視野角特性を改善する。このような視野角拡大フィルムしては特許番号第2866372号公報に記載されているような面内の位相差が0に近く、かつ厚さ方向に位相差を有するフィルムや、円盤状の化合物が基板に平行に配列したフィルムや、同じ面内レターデーション値を有する延伸フィルムを遅相軸が直交になるように積層配置したフィルムや、偏光板の斜め方向の直交透過率悪化防止のために液晶分子のような棒状化合物からなるフィルムを積層したものと好ましく組み合わせて用いられる。
また、ノルボルネン系樹脂フィルムやポリカーボネート樹脂を延伸することにより位相差を付与したものも視野角拡大フィルムあるいはその一部として好ましく用いることができる。
(2)位相差フィルム
本発明の偏光板は、位相差層を有することが好ましい。本発明における位相差層としてはλ/4板が好ましく、本発明の偏光板とλ/4板とを積層させることで、円偏光板として使用することができる。円偏光板は入射した光を円偏光に変換する機能を有しており、反射型液晶表示装置やECBモードなどの半透過型液晶表示装置、あるいは有機EL素子等に好ましく利用されている。
本発明に用いるλ/4板は、可視光の波長の範囲においてほぼ完全な円偏光を得るため、可視光の波長の範囲において概ね波長の1/4のレターデーション(Re)を有する位相差フィルムであることが好ましい。「可視光の波長の範囲において概ね1/4のレターデーション」とは、波長400から700nmにおいて長波長ほどレターデーションが大きく、波長450nmで測定したレターデーション値(Re450)が80〜125nmであり、かつ波長590nmで測定したレターデーション値(Re590)が120〜160nmである関係を満足する範囲を示す。Re590−Re450≧5nmであることがさらに好ましく、Re590−Re450≧10nmであることが特に好ましい。
本発明で用いるλ/4板は上記の条件を満たしていれば特に制限はないが、例えば、特開平5−27118号公報、特開平10−68816号公報、特開平10−90521号公報に記載された複数のポリマーフィルムを積層したλ/4板、WO00/65384号公報、WO00/26705号公報に記載された1枚のポリマーフィルムを延伸したλ/4板、特開2000−284126号公報、特開2002−31717号公報に記載されたポリマーフィルム上に少なくとも1層以上の光学異方性層を設けたλ/4板など公知のλ/4板を用いることができる。また、ポリマーフィルムの遅相軸の方向や光学異方性層の配向方向は液晶セルに合わせて任意の方向に配置することができる。
円偏光板において、λ/4板の遅相軸と上記偏光子の透過軸は、任意の角度で交差できるが、45゜±20°の範囲で交差されることが好ましい。但し、λ/4板の遅相軸と上記偏光子の透過軸は上記以外の範囲で交差されても構わない。
λ/4板をλ/4板およびλ/2板を積層して構成する場合は、特許番号第3236304号公報や特開平10−68816号公報に記載されているように、λ/4板およびλ/2板の面内の遅相軸と偏光板の透過軸とがなす角度が実質的に75°および15゜となるように貼り合わせることが好ましい。
(粘着剤)
次に本発明で好ましく用いられる粘着剤について説明する。
粘着剤としては、アクリル酸系、メタクリル酸系、ブチルゴム系、シリコーン系などのベースポリマーを用いた粘着剤が使用できる。特に限定されるものでないが、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸エステル系ベースポリマーや、これらの(メタ)アクリル酸エステルを二種類以上用いた共重合系ベースポリマーが好適に用いられる。粘着剤では通常、これらのベースポリマー中に極性モノマーが共重合されている。極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートのような、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基などを有するモノマーを挙げることができる。
粘着剤は通常、架橋剤を含有する。架橋剤としては、2価又は多価金属イオンとカルボン酸金属塩を生成するもの、ポリアミン化合物とアミド結合を形成するもの、ポリエポキシ化合物やポリオールとエステル結合を形成するもの、ポリイソシアネート化合物とアミド結合を形成するものなどが挙げられ、これらの化合物が架橋剤として1種又は2種以上、ベースポリマーに混合して用いられる。
本発明の粘着剤層の厚みは、2〜50μmが好ましい。粘着剤層の偏光板と反対側の面には、粘着剤層の保護のために、セパレートフィルムが貼合されているのが通常の形態である。セパレートフィルムとしては、シリコーン樹脂などによって離型処理されたポリエステルフィルムなどが用いられる。このセパレートフィルムは、液晶セルや他の光学機能性フィルムとの貼合時に剥離除去される。
(偏光板を使用する液晶表示装置)
次に本発明の偏光板が使用される液晶表示装置について説明する。本発明の液晶表示装置は液晶セルの両側に2枚の偏光板が配置されており、偏光板の少なくとも1枚が本発明の偏光板である。
図2は、本発明の偏光板が使用される液晶表示装置の一例である。
本発明の図2に示す液晶表示装置は、液晶セル(5〜9)、および液晶セル(5〜9)を挟持して配置された上側偏光板1と下側偏光板14とを有する。偏光板は偏光子および一対の透明保護フィルムによって挟持されているが、図2中では一体化された偏光板として示し、詳細構造は省略する。液晶セルは、上側電極基板5および下側電極基板8と、これらに挟持される液晶分子7から形成される液晶層からなる。液晶セルは、ON・OFF表示を行う液晶分子の配向状態の違いで、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、OCB(Optically Compensatory Bend)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)のような表示モードに分類されるが、本発明の偏光板は透過および反射型によらず、いずれの表示モードにも使用できる。
これらの表示モードの中でも、OCBモードまたはVAモードであることが好ましい。
電極基板5および8の液晶分子7に接触する表面(以下、「内面」という場合がある)には、配向膜(不図示)が形成されていて、配向膜上に施されたラビング処理等により、電界無印加状態もしくは低印加状態における液晶分子7の配向が制御されている。また、基板5および8の内面には、液晶分子7からなる液晶層に電界を印加可能な透明電極(不図示)が形成されている。
TNモードのラビング方向は上下基板で互いに直交する方向に施し、その強さとラビング回数などでチルト角の大きさが制御できる。配向膜はポリイミド膜を塗布後焼成して形成する。液晶層のねじれ角(ツイスト角)の大きさは、上下基板のラビング方向の交差角と液晶材料に添加するカイラル剤により決まる。ここではツイスト角が90°になるようにするためピッチ60μm程度のカイラル剤を添加する。
なお、ツイスト角は、ノートパソコンやパソコンモニタ、テレビ用の液晶表示装置の場合は90°近傍(85から95°)に、携帯電話などの反射型表示装置として使用する場合は0から70°に設定する。またIPSモードやECBモードでは、ツイスト角が0°となる。IPSモードでは電極が下側基板8のみに配置され、基板面に平行な電界が印加される。また、OCBモードでは、ツイスト角がなく、チルト角を大きくされ、VAモードでは液晶分子12が上下基板に垂直に配向する。
ここで液晶層の厚さdと屈折率異方性Δnの積Δndの大きさは白表示時の明るさを変化させる。このため最大の明るさを得るために表示モード毎にその範囲を設定する。
上側偏光板1の吸収軸2と下側偏光板14の吸収軸15の交差角は一般に概略直交に積層することで高コントラストが得られる。液晶セルの上側偏光板1の吸収軸2と上側基板5のラビング方向の交差角は液晶表示モードによってことなるが、TN、IPSモードでは一般に平行か垂直に設定する。OCB、ECBモードでは45°に設定することが多い。ただし、表示色の色調や視野角の調整のために各表示モードで最適値が異なり、この範囲に限定されるわけではない。
本発明の偏光板が使用される液晶表示装置は、図2の構成に限定されず、他の部材を含んでいてもよい。例えば、液晶セルと偏光子との間にカラーフィルターを配置してもよい。また、液晶セルと偏光板との間に、別途、前述した視野角拡大フィルムを配置することもできる。偏光板1、14と光学異方性層(視野角拡大フィルム)3、10は粘着剤で貼合した積層形態で配置されてもよいし、液晶セル側保護フィルムの一方を視野角拡大に使用した、いわゆる一体型楕円偏光板として配置されてもよい。
また、本発明の偏光板が使用される液晶表示装置を透過型として使用する場合は、冷陰極あるいは熱陰極蛍光管、あるいは発光ダイオード、フィールドエミッション素子、エレクトロルミネッセント素子を光源とするバックライトを背面に配置できる。また、本発明の偏光板が使用される液晶表示装置は、反射型であってもよく、かかる場合は、偏光板は観察側に1枚配置したのみでよく、液晶セル背面あるいは液晶セルの下側基板の内面に反射膜を設置する。もちろん前記光源を用いたフロントライトを液晶セル観察側に設けてもよい。本発明の液晶表示装置は、本発明の偏光板をセルのバックライト側に用いたVAモード液晶表示装置であることが好ましい。
[実施例1]
<光学補償シートA−1の作製>
(偏光板保護フィルムA−1の作製)
(セルロースアシレートフィルムの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Aを調製した。
<セルロースアシレート溶液A組成>
置換度2.86のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール 11質量部
別のミキシングタンクに、下記の組成物を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液Bを調製した。
<溶液B組成>
メチレンクロライド(第1溶媒) 80質量部
メタノール(第2溶媒) 20質量部
正の複屈折性添加剤(化合物16) 30質量部
負の複屈折性添加剤 (ベンジルメタクリレートオリゴマー) 70質量部
<セルロースアセテートフィルム試料CAF−01の作製>
セルロースアシレート溶液Aを477質量部に、添加剤溶液Bの20質量部を添加し、充分に攪拌して、ドープを調製した。ドープを流延口から10℃に冷却したバンド上に流
延した。溶媒含有率50質量%で剥ぎ取り、溶媒含有率が5乃至40質量%の状態で、横方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が1.15倍となる間隔を保ちつつテンター延伸したのち乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚み80μmのセルロースアセテートフィルム試料A−1を作製した。
作製したA−1について、光学特性を測定した。結果は第1表に示す。
(偏光子の作製)
平均重合度4000、鹸化度99.8mol%のPVAを水に溶解し、4.0%の水溶液を得た。この溶液をテーパーのついたダイを用いてバンド流延して乾燥し、延伸前の幅が110mmで厚みは左端が120μm、右端が135μmになるように製膜した。
このフィルムをバンドから剥ぎ取り、ドライ状態で45度方向に斜め延伸してそのままよう素0.5g/L、よう化カリウム50g/Lの水溶液中に30℃で1分間浸漬し、次いでホウ酸100g/L、よう化カリウム60g/Lの水溶液中に70℃で5分間浸漬し、さらに水洗槽で20度で10秒間水洗したのち80℃で5分間乾燥してよう素系偏光子(HF-01)を得た。偏光子は、幅660mm、厚みは左右とも20μmであった。
(偏光板HB-1の作製)
ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、延伸フィルム(A−1)を偏光子(HF-01)の片側に貼り付けた。又、トリアセチルセルロースフィルム:フジタックTD-80Uに、WO02/46809号公報明細書実施例1記載のケン化処理と同様にして表面鹸化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側に貼り付けた。
偏光子の透過軸と上記延伸フィルム(A−1)、およびトリアセチルセルロースフィルムの遅相軸とは、直交するように配置した。
このようにして偏光板(HB-1)を作製したのち、図3の液晶表示装置を作製した。即ち、観察方向(上)から上側偏光板、VAモード液晶セル(上基板、液晶層、下基板)、下側偏光板(HB-1)を積層し、さらにバックライト光源を配置した。以下の例では、上側偏光板に市販品の偏光板(HLC2−5618)を用いて、下側偏光板に本発明の偏光板を使用している。
<液晶セルの作製>
液晶セルは、基板間のセルギャップを3.6μmとし、負の誘電率異方性を有する液晶材料(「MLC6608」、メルク社製)を基板間に滴下注入して封入し、基板間に液晶層を形成して作製した。液晶層のリターデーション(即ち、記液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・d)を275nmとした。なお、液晶材料は垂直配向するように配向させた。
[実施例2]
負の複屈折性添加剤としてスチレン-無水マレイン酸共重合体(積水化学工業(株)製、商品名:ダイラークD332)を、正の複屈折性添加剤(化合物16)に代えて、正の複屈折性添加剤(化合物1)を同量用いた以外は、実施例1と同様にフィルムA−2を作製した。またA−1に代えて、A−2を用いた以外は、実施例1と同様に液晶表示装置を作製した。
[比較例1]
負の複屈折性添加剤(ベンジルメタクリレートオリゴマー)を添加しなかった点以外は、実施例1と同様にフィルムB−1を作製した。
[比較例2]
レターデーション制御剤(化合物16)を添加しなかった点以外は、実施例1と同様にフィルムB−2を作製した。
[比較例3]
ポリカーボネートを加熱溶融し、スチレンオリゴマーをポリカーボネートに対し25wt%添加した。両者を均一に混練した後、混合溶融物の状態で2枚のガラス板の間に入れて圧縮することによって厚さ約115μmの光学樹脂材料フィルムを得た。この光学樹脂材料フィルムを170℃で更に1.5倍に延伸しフィルムB−3を得た。
<フィルム物性の測定>
(光学特性の測定)
光学特性は、自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)製)を用い25℃60%RHでRe及びRthを測定した。測定波長は480nm、546nm、628nmとした。
フィルム物性の測定結果を表1に示す。なお、コントラストの評価方法として極角60°で全方位角で10点測定を行った時の平均輝度(単位:Cd/m2)および、10点の変化率=10点測定の最大値と最小値の差/平均輝度(単位:%)を測定した。従って、平均輝度が小さく輝度変化率が小さいフィルムほど、コントラストが高く視野角依存性が小さい表示が可能となる。
Figure 2006293342
<色味変化の評価>
実施例2及び比較例1及び比較例3で作製した液晶表示を30℃80%の環境下で点灯直後及び500hr時間点灯後の正面の色味変化をELDIM社製Ezcontrastにより測定し、xy色度図上での色味変化の絶対値Δx,Δyを求めた。結果を表2に示す。
Figure 2006293342
表2の結果から本発明の光学補償シートを用いた偏光板は液晶表示に組み込んだ場合、長時間点灯しても色味変化が少なく、好ましいことがわかった。
本発明の偏光板の例を示す概略図である。 本発明の液晶表示装置の例を示す概略図である。 実施例で用いた偏光板と機能性光学フィルムを複合した構成の一実施態様を示す図である。
符号の説明
1‥‥上偏光板
2‥‥上偏光板吸収軸
3‥‥第1光学異方性層
4‥‥第1光学異方性層遅相軸の方向
5‥‥液晶セル上電極基板
6‥‥上基板配向制御方向
7‥‥液晶層
8‥‥液晶セル下電極基板
9‥‥下基板配向制御方向
10‥‥第2光学異方性層1
11‥‥第2光学異方性層1遅相軸の方向
12‥‥第2光学異方性層2
13‥‥第2光学異方性層2遅相軸の方向
14‥‥下偏光板
15‥‥下偏光板吸収軸の方向
101 偏光板保護膜
102 偏光板保護膜遅相軸の方向
103 偏光板偏光膜
104 偏光膜吸収軸方向
105 偏光板保護膜
106 偏光板保護膜遅相軸の方向

Claims (11)

  1. 負の固有複屈折性を有する添加剤を少なくとも1種と、正の固有複屈折性を有する添加剤を少なくとも1種とを含有することを特徴とする延伸光学樹脂フィルム。
  2. 前記正の固有複屈折性を有する添加剤の最も長波長側の吸収極大が前記負の固有複屈折性を有する添加剤の最も長波長側の吸収極大よりも短波長側に存在する請求項1記載の延伸光学樹脂フィルム。
  3. レターデーションが下記(A)〜(F)の関係を満たす請求項2記載の延伸光学樹脂フィルム。
    0nm<Re(546)<300nm (A)
    30nm<Rth(546)<700nm (B)
    0.1<Re(480)/Re(546)<1.0 (C)
    1.0<Re(628)/Re(546)<4.0 (D)
    0.8<Rth(480)/Rth(546)<4.0 (E)
    0.1<Rth(628)/Rth(546)<1.2 (F)
  4. 前記延伸ポリマーフィルムがセルロースアシレートフィルムである請求項1〜3のいずれかに記載の延伸光学樹脂フィルム。
  5. 延伸ポリマーフィルムがシクロオレフィン系ポリマーフィルムである請求項1〜4のいずれかに記載の延伸光学樹脂フィルム。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の延伸ポリマーフィルム上に光学異方性層を有する光学補償シート。
  7. 偏光子及びその両側に配置された2枚の保護フィルムからなり、少なくとも1枚の保護フィルムが請求項1〜6のいずれかに記載の延伸ポリマーフィルムである偏光板。
  8. 偏光子及びその両側に配置された2枚の保護フィルムからなり、少なくとも1枚の保護フィルムが請求項7記載の光学補償シートである偏光板。
  9. 液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板を有し、少なくとも1つの偏光板が請求項7又は8に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
  10. 該液晶セルがVAモードである請求項9に記載の液晶表示装置。
  11. 該液晶セルがOCBモードである請求項9に記載の液晶表示装置。
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