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JP2006282872A - 窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体、及びその製造方法、並びに当該蛍光体を用いた発光装置 - Google Patents

窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体、及びその製造方法、並びに当該蛍光体を用いた発光装置 Download PDF

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JP2006282872A JP2005105126A JP2005105126A JP2006282872A JP 2006282872 A JP2006282872 A JP 2006282872A JP 2005105126 A JP2005105126 A JP 2005105126A JP 2005105126 A JP2005105126 A JP 2005105126A JP 2006282872 A JP2006282872 A JP 2006282872A
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Shuji Yamashita
修次 山下
Tetsuya Ikuta
哲也 生田
Akira Nagatomi
晶 永富
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Dowa Mining Co Ltd
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Abstract

【課題】 発光効率を向上させ且つ安定させることができる窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体を提供すること。
【解決手段】 組成式MmAaBbOoNn:Z(但し、M元素はII価の価数をとる1種以上の元素であり、A元素はIII価の価数をとる1種以上の元素であり、B元素はIV価の価数をとる1種以上の元素であり、Oは酸素であり、Nは窒素であり、Z元素は、前記蛍光体中において付活剤として作用する元素であり、n=2/3m+a+4/3b-2/3o 、m>0,a≧0,b>0,o≧0)と表記される窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体であり、Fe元素の含有量が200ppmより少ないことを特徴とするものである。
【選択図】 図2

Description

本発明は、CRT、PDP、FED、ELなどのディスプレイ装置や、蛍光表示管、蛍光ランプなどの照明装置等に使用される窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体に関するものであり、特に、紫外から緑色の光により励起され、可視光または白色光を発光させるための窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体、及びその製造方法、並びに当該蛍光体を用いた発光装置に関する。
従来から照明装置として用いられている発光装置としては放電式蛍光灯、白熱電球などが挙げられるが、近年、発光ダイオード(LED)を備えて白色光を発する白色LED照明が開発されている。この白色LED照明の特徴としては、従来の照明用光源に比べ、熱の発生が少なく発光効率がよく低消費電力であることと、半導体素子のみ、または半導体素子と蛍光体から構成されているため、従来の白熱電球のようにフィラメントが切れることがなく長寿命であり、従来の蛍光灯には不可欠であった、環境に影響を与える水銀などの有害な物質が不要であるといった利点がある理想的な照明装置である。
ここで、上述のLEDと蛍光体とを組み合せて白色光を得るには、一般的に2つの方式が考えられる。一つは、青色を発光するLEDと、当該青色発光を受けて励起され緑から黄色を発光する蛍光体とを組み合せ、これら補色関係にある青色発光と緑から黄色発光との組み合せにより白色発光を得るものである。
他の一つは、近紫外や紫外を発光するLEDと、当該近紫外や紫外の発光により励起されて赤色(R)を発光する蛍光体、緑色(G)を発光する蛍光体、青色(B)を発光する蛍光体、他の色を発光する蛍光体とを組み合せ、当該RGB等の光の混合により白色発光を得るものである。このRGB等の光により白色発光を得る方法は、RGB等の光を発光する蛍光体の組み合せや混合比などにより、白色光以外にも任意の発光色を得ることが可能であり、照明装置としての応用範囲が広い。
白色LED照明に使用される蛍光体としては、例えば(Y, Gd)3(Al, Ga)5O12:Ce、Tb3Al5O12:Ce、Ca3Sc2Si3O12:Ce、(Ca,Ba,Sr)2SiO4:Eu、BAM:Eu、BAM:Mn・Eu、SrAl2O4:Eu、Sr5(PO4)3Cl:Eu 、(Sr,Ca,Mg,Ba)10(PO4)6Cl2:Euなどの酸化物系蛍光体、 ZnS:Cu,Al、CaGa2S4:Eu、SrGa2S4:Eu、BaGa2S4:Eu、Ca(Al,Ga,In)2S4:Eu, Sr(Al,Ga,In)2S4:Eu、Ba(Al,Ga,In)2S4:Eu、Y2O2S:Eu、La2O2S:Euなどの硫化物または酸硫化物蛍光体、CaSi2O2N2:Eu、SrSi2O2N2:Eu、BaSi2O2N2:Eu、(Ca,Sr)Si2O2N2:Eu、(Sr,Ba)Si2O2N2:Eu、(Ca,Ba)Si2O2N2:Euなどの窒化物系または酸窒化物系の蛍光体がある。
また、サイアロンを母体とする蛍光体(例えば、特許文献1参照)、シリコンナイトライド系などの蛍光体(例えば、特許文献2.3参照)が提案されており、本発明者らにおいても、近紫外・紫外から可視光(300 nm 〜 550 nm)の波長域の光に良好な励起帯を持ち、黄色から赤色(580 nm 〜 680 nm)の範囲にピークを持つ窒素を含有する蛍光体を提案している。(特許文献4.5参照)
これらの蛍光体を、青や紫外を発光するLEDなどの発光部(発光素子)と組み合せることにより、白色または所望の単色を発光する白色LED照明を始めとした発光装置や、当該発光装置を備えた照明装置を得ることが可能となる。
通常の蛍光灯などの照明装置と同様に、白色LED照明を用いた照明装置の場合においても、低い消費電力で高輝度な効率の良い照明装置が求められている。照明装置の効率を高くするには、励起源である半導体素子からの光の取り出し効率を高めることともに、励起源となる光を効率よく異なる波長に変換する蛍光体が求められている。
特開2003-336059号公報 特開2001-214162号公報 特開2003-124527号公報 特願2003-321675号公報 国際公開第WO2003/080764 A1号パンフレット
上述の紫外から緑色に発光する発光素子と、当該発光素子から発生する紫外から緑色の波長域に対して励起帯を持つ蛍光体との組合せにより可視光、白色光を発する白色LED照明を始めとした発光装置においては、可視光または白色光の発光特性向上のために、発光素子及び蛍光体の発光効率の向上や安定性が求められる。ところが、窒素を含有する窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体においては、従来の酸化物を用いる合成方法と異なり、大気中扱うと酸化され易い窒化物などの窒素を含有する原料を用いるため、不活性ガス中で扱う必要があり、殆ど研究がなされていなかった。そのため、製造時においても発光効率がバッチ毎に安定しているとは限らず、発光効率にバラツキがみられることがあった。ここで、本発明者らは当該バラツキの原因を究明し、その対策を打つことができれば、当該窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体の発光効率をより高めることができ、且つその安定性を確保できるのではないかと考えた。
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、発光効率を向上させ且つ安定させることができる窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体を提供することにある。
本発明の他の目的は、窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体の発光効率を向上させ且つ安定させることができる蛍光体の製造方法を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、当該発光効率が向上し且つ安定した窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体を用いた発光装置を提供することにある。
上述の課題を達成するために、本発明者らは、様々な窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体(以下、蛍光体と略して記載する場合がある。)の試料を調製して、蛍光体における発光効率のバラツキの原因を追求したところ、当該バラツキは、蛍光体中に不純物に起因し、その不純物の中でも特にFe元素が原因であることに想到した。そこで、本発明者らは、当該不純物として含まれる鉄の由来について、さらに研究をおこなった結果、当該Fe元素は、出発原料となる物質中に含まれる不純物としてのFe元素であることに想到した。そして、この蛍光体中のFe元素を抑制することで、蛍光体の発光効率の向上及びその安定性を図ることができると考えた。
具体的には、上述の課題を解決する第1の構成は、
Fe元素の含有量が200ppmより少ないことを特徴とする窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体である。
第2の構成は、第1の構成に記載の窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体であって、
組成式MmAaBbOoNn:Z(但し、M元素はII価の価数をとる1種以上の元素であり、A元素はIII価の価数をとる1種以上の元素であり、B元素はIV価の価数をとる1種以上の元素であり、Oは酸素であり、Nは窒素であり、Z元素は、前記窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体中において付活剤として作用する元素であり、n=2/3m+a+4/3b-2/3o 、m>0,a≧0,b>0,o≧0)と表記されることを特徴とする窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体である。
第3の構成は、第2の構成に記載の窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体であって、
前記M元素がMg、Ca、Sr、Ba、Znから選択される少なくとも一種の元素であり、A元素がAl、Gaから選択される少なくとも一種の元素であり、B元素がSi、Geから選択される少なくとも一種の元素であり、Z元素がEuであることを特徴とする窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体である。
第4の構成は、第2または第3の構成に記載の窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体であって、
前記m、a、b、o、nが、m=a=b=1 ,o<0.5, n = 3 −2/3o で表記されることを特徴とする窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体である。
第5の構成は、第1乃至4の構成のいずれかに記載の窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体の製造方法であって、
前記窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体の原料として、Fe元素含有量が100ppm以下の原料を使用することを特徴とする窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体の製造方法である。
第6の構成は、第5の構成に記載の窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体の製造方法であって、
前記窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体の原料として、Fe元素含有量が100ppm以下である一般式M3N2で表記されるII族元素の窒化物(但し、M元素はMg、Ca、Sr、Ba、Znから選択される少なくとも1種以上の元素である。)を用いることを特徴とする窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体の製造方法である。
第7の構成は、第6の構成に記載の窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体の製造方法であって、
2N以上、且つFe含有量が100ppm以下の金属単体を、窒素雰囲気またはアンモニア雰囲気中で300℃以上の温度で窒化して、前記II族元素の窒化物を製造することを特徴とする窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体の製造方法である。
第8の構成は、第1乃至4の構成のいずれかに記載の窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体と、所定波長の光を発光する発光部とを有し、
上記所定波長の光の一部を励起源とし、上記窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体を上記所定波長と異なる波長で発光させることを特徴とする発光装置である。
第9の構成は、第8の構成に記載の発光装置であって、
上記所定波長が300〜550nmの波長であることを特徴とする発光装置である。
第1の構成に記載の蛍光体によれば、Fe元素の含有量が200ppmより少ない窒化物または酸窒化物蛍光体であることから、いずれの場合も、発光に寄与しないFe元素の不純物含有量が少ないので、蛍光体の発光強度の低下を抑制でき、当該蛍光体の発光効率を向上させ、且つ発光効率を安定させることができる。
第2乃至第4の構成のいずれかに記載の蛍光体は、発光素子が発光する紫外から緑色(波長域300〜550nm)の広い範囲の光に励起帯を有するので、様々な発光素子に対しても極めて効率よく光を放出させることができる。
第5乃至第7の構成のいずれかに記載の蛍光体の製造方法によれば、蛍光体の原料をFe元素が100ppm以下の原料を用いて製造することから、Fe元素の不純物含有量が少ない窒化物蛍光体を製造することができる。このように、発光に寄与しない不純物が少ない蛍光体を製造できるので、発光強度の低下を抑制でき、蛍光体の発光効率を向上させ、且つ発光効率を安定させることができる。
第8または第9の構成に係る発光装置は、蛍光体が発光部の発光する所定の広い波長域(300〜550nm)の光に励起帯を有して発光するため、これらの蛍光体と発光部との組み合わせにより、可視光または白色光を発光する発光効率が高く安定した発光装置を得ることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明するが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。
本発明者らの研究によれば、窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体において、不純物Fe元素の含有量が200ppmを超えると、当該蛍光体の発光強度を相対強度で表したとき、10%以上の発光強度の低下を招いてしまう。従って、当該Fe元素含有量を200ppm以下に抑制することで、発光効率を大きく向上させることができる。
ここで、本実施形態の蛍光体として、組成式MmAaBbOoNn:Zを有する酸窒化物蛍光体を例としてさらに説明する。
ここで、組成式MmAaBbOoNn:Z(但し、M元素はII価の価数をとる1種以上の元素であり、A元素はIII価の価数をとる1種以上の元素であり、B元素はIV価の価数をとる1種以上の元素であり、Oは酸素であり、Nは窒素であり、Z元素は、前記蛍光体中において付活剤として作用する元素であり、n=2/3m+a+4/3b-2/3o 、m>0,a≧0,b>0,o≧0)と表記される酸窒化物蛍光体は、m、a、b、o、n が当該関係を満たすとき、上記蛍光体の母体構造が化学的に安定な構造をとり、当該母体構造中に、発光に寄与しない不純物相が生じにくくなる。
上記M元素は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Hgから選択される少なくとも一種の元素であることが好ましく、更には、Mg、Ca、Sr、Ba、Znから選択される少なくとも一種の元素であることが好ましい。
上記A元素は、Al、Gaから選択される少なくとも一種の元素であり、B元素は、Si、Geから選択される少なくとも一種の元素であることが好ましく、更には、A元素はAl、B元素はSiであることが好ましい。
上記Z元素は、希土類元素または遷移金属元素から選択される少なくとも一種の元素であることが好ましいが、特にEu、Ceから選択される少なくとも一種の元素であることが好ましい。なかでもEuを用いると、蛍光体は黄色から赤色にかけての強い発光を示すため発光効率が高く、白色を発する発光装置用の蛍光体の付活剤としてより好ましい。
さらに、m=a=b=1 ,o<0.5, n = 3 -2/3oとなることで蛍光体の安定性が向上する。ただし、母体構造の組成式からの若干の組成のずれは許容される。
ここで、本実施形態の蛍光体の製造方法について、組成式CaAlSiN3:Eu (但し、Eu/(Ca+Eu) = 0.020である。)で示される蛍光体の製造を例に挙げて説明する。
M元素、A元素、B元素の各窒化物原料は、純度は高い方が好ましいことから、好ましくは2N以上、更に好ましくは3N以上のものを準備する。各元素の原料は窒化物原料、もしくはイミド化合物、アミド化合物、または単体金属が好ましいが、なかでも他の化合物に比べ比較的化学的特性が安定であり、入手しやすい窒化物が好ましい。Z元素などの原料として添加量が少量であれば酸化物を用いても問題はない。そして、当該原料中に含まれるFe元素が100ppm以下の原料を用いることで、発光効率の良い蛍光体を作成することが可能となる。
各原料粒子の粒径は、一般的には、反応を促進させる観点から微粒子の方が好ましいが、原料の粒径、形状により、得られる蛍光体の粒径、形状も変化する。このため、最終的に得られる蛍光体に求められる粒径に合わせて、近似の粒径を有する窒化物原料を準備すればよい。
Ca0.980AlSiN3:Eu0.020の製造であれば、例えばM元素、A元素、B元素の窒化物として、それぞれCa3N2(2N)、AlN(3N)、Si3N4(3N)を準備し、Z元素としては、Eu2O3(3N)を準備するとよい。いずれの原料もFe元素の含有量は100ppm以下のものを用いる。
ここで、上記蛍光体の各原料について説明する。
M元素の窒化物、例えば市販のCa3N2は、Fe元素含有量が250ppm程度である。
そこで、本発明に係る蛍光体のM元素の窒化物原料は、例えば、次の方法で製造したものを使用することが好ましい。
まず、2N以上かつFe元素の含有量が100ppm以下であるM元素の金属単体を用意する。アルカリ金属単体表面には保管時に付着した油膜が付着しているものもあるため、不活性ガス中にて、有機溶媒で洗浄する。洗浄した金属単体を、窒素またはアンモニア中で300℃以上の温度で加熱して窒化し窒化物を製造する。尚、当該窒化時に使用する容器やるつぼは、Fe元素の含有量が少ない容器が好ましく、なかでも高純度なBNるつぼが好ましい。また、窒化の際の加熱温度は、高いほど窒化が促進されるため、700℃以上が好ましい。得られたM元素の窒化物は、100μm以下の粒度に粉砕して使用すればよい。
A元素の窒化物、B元素の窒化物についても、同様な方法で金属元素から窒化を行うことが可能であるが、A元素の窒化物、例えばAlNは市販品でも、Fe元素の含有量が10ppm以下程度のものが市販されているため、それらを用いてもよい。
B元素の窒化物に対しても、例えばSi3N4は市販品で、Fe元素の含有量が50ppm以下程度のものが市販されているため、それらを用いてもよい。
これらの原料を、各元素のモル比がCa : Al : Si : Eu = 0.980 : 1 : 1 : 0.020となるように、各原料の混合比を、それぞれ、Ca3N2を0.980/3 mol、AlNを1 mol、Si3N4を1/3 mol、Eu2O3を0.020/2 molを秤量し混合する。
当該秤量・混合は、Ca3N2が非常に酸化し易いために不活性雰囲気下のグローブボックス内での操作が便宜である。また、各原料の窒化物は水分の影響を受けやすいため、不活性ガスは水分を十分取り除いたものを使用するのが良い。混合方式は湿式、乾式どちらでも構わないが、湿式混合の溶媒として純水を用いると原料が分解するため、適当な有機溶媒を選定する必要がある。装置としてはボールミルや乳鉢等を用いる通常のものでよい。混合時におけるFe元素の混入を防ぐため、上記有機溶媒を含む媒体は、すべてFe元素を含有していない媒体を用いるのが好ましい。
混合が完了した原料をるつぼに入れ、窒素等の不活性雰囲気中で1000℃以上、好ましくは1400℃以上、更に好ましくは1500℃以上で30分以上、好ましくは3時間保持して焼成する。保持時間は焼結温度が高いほど焼結が迅速に進むため短縮できる。一方、焼結温度が低い場合でも、当該温度を長時間保持することにより目的の発光特性を得ることができる。しかし、焼結時間が長いほど粒子成長が進み、粒子サイズが大きくなるため、目的とする粒子サイズに応じて焼結時間を設定すればよい。
不活性雰囲気の焼成中の圧力は0.5MPa以下で焼成することが好ましく、これ以下の圧力で焼成すれば粒子間の焼結が抑制されて、焼成後の解砕が容易化でき好ましい。尚、るつぼとしては、Fe元素を始めとした不純物を含まないものであって、Al2O3るつぼ、Si3N4るつぼ、AlNるつぼ、サイアロンるつぼ、C(カーボン)るつぼ、BN(窒化ホウ素)るつぼなどの不活性雰囲気中で使用可能なものを用いれば良いが、BNるつぼを用いると、るつぼからの不純物混入を特に回避することができ好ましい。
焼成が完了した後、焼成物をるつぼから取り出し、乳鉢、ボールミル等の粉砕手段を用いて、所定の平均粒径となるように粉砕して組成式Ca0.980AlSiN3:Eu0.020で示される蛍光体を製造することができる。ここで、Eu原料としてEu2O3を使用した場合には、少量ではあるが酸素が添加されてしまうことにより、組成式はCa0.980AlSiO0.03N2.96:Eu0.020となるが、酸素量が少量なので特に問題はない。尚、酸素量を更に削減したい場合は、Eu原料としてEu金属またはEu窒化物などを用いれば良い。
M元素、A元素、B元素、Z元素として、他の元素を用いた場合、および付活剤であるEuの付活量を変更した場合も、各原料の仕込み時の配合量を所定の組成比に合わせることで、上述と同様な製造方法により蛍光体を製造することができる。
本実施形態の蛍光体を粉体の形で用いる場合は、混合する各蛍光体粉体は20μm以下の粒子から構成されることが好ましい。これは、蛍光体粉体における発光は主に粉体粒子表面で起こると考えられるため、平均粒子径が20μm以下であれば、粉体単位重量あたりの表面積を確保でき、輝度の低下を回避できるからである。更に、当該蛍光体粉体を用いた照明装置の製造において、当該蛍光体粉体をペースト状とし、例えば、発光素子等に塗布する場合に当該粉体の密度を高めることができ、この観点からも輝度の低下を回避することができる。また、本発明者らの検討によると、詳細な理由は不明であるが、蛍光体粉体の発光効率の観点からは、平均粒子径が1μmより大きいことが好ましいことも判明した。以上のことより、係る蛍光体粉体の平均粒子径は、1μm〜20μmであることが好ましい。
粉末状となった本実施形態の蛍光体を、波長域300nm〜550nm、好ましくは波長域380nm〜480nmのいずれかの光を発光する発光部と組み合わせることで、各種の照明装置やディスプレイ用バックライトを製造することができる。
発光部として、例えば、青色発光するLED発光素子、または青色を発光する放電灯が考えられる。そして、本実施形態の蛍光体を上記LED発光素子と組み合わせた場合には、各種の照明装置やディスプレイ用バックライトを製造することができる。また、本実施形態の蛍光体を上記放電灯と組み合わせた場合には、各種蛍光灯などの照明装置やディスプレイ用バックライトを製造することができる。
以下、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。
(実施例1)
実施の形態で説明した方法により、純度99.5%、Fe元素の含有量が90ppmである金属Caを700℃窒素雰囲気中で加熱した後、粉砕し、Ca3N2を製造した。製造されたCa3N2のFe元素の含有量は60ppmであった。当該製造されたCa3N2を0.980/3 mol、Si3N4を1/3 mol 、AlNを1 mol、Eu2O3を0.020/2 molをそれぞれ秤量後、乳鉢で混合し、1600℃で3時間、圧力0.05MPaの窒素雰囲気中で焼成を行い、赤色蛍光体CaAlSiN3:Euを製造した。ここで、表1に示すように、原料に使用したCa3N2、Si3N4、AlN、Eu2O3のFe元素の含有量はそれぞれ60ppm、20ppm、90ppm、10ppm であった。
図1は、実施例1および後述する実施例2〜3、比較例1〜3で製造した蛍光体粉末の、それぞれの発光スペクトルを示す。横軸に発光波長、縦軸に相対発光強度を示している。そして、図1では、実施例1の発光強度を1と規格化して、その他の実施例の相対発光強度を求めている。
すると、図1の太実線に示すように、得られた実施例1に係る蛍光体粉末へ460nmの単色光を照射したところ、656nmに発光ピークを有する赤色発光を示した。また、表1及び図2に示すように、化学分析により得られた実施例1に係る蛍光体の不純物Fe元素含有量は、100ppmであった。
上記図2は、実施例1および後述する実施例2〜3、比較例1〜3で製造した蛍光体のFe元素不純物濃度に対する相対発光強度を示し、実施例1の発光強度を1と規格化して、その他の実施例及び比較例の相対発光強度を求めている。
また、表1は、実施例及び比較例において作製した蛍光体の原料であるCa3N2(2N)、Si3N4(3N)、AlN(3N)、 Eu2O3(3N)の、化学分析により得られた不純物Fe元素濃度、実施例および比較例において作製した蛍光体の相対発光強度、並びに化学分析により得られた不純物Fe元素含有量を示す。上記相対発光強度は、実施例1の発光強度を1と規格化して、その他の実施例および比較例の相対発光強度を求めている。
Figure 2006282872
(実施例2)
表1に示すように、Fe元素含有量が実施例1より低いCa3N2原料を使用した以外は、実施例1と同様の条件で赤色蛍光体CaAlSiN3:Euを製造した。原料に使用したCa3N2、Si3N4、AlN、Eu2O3のFe元素含有量はそれぞれ27ppm、20ppm、90ppm、10ppmであった。
得られた蛍光体粉末に460nmの単色光を照射したところ、図1の太破線に示すように、656nmに発光ピークを有する赤色発光を示した。また、表1及び図2に示すように、化学分析により得られた蛍光体の不純物Fe元素含有量は80ppmであった。
(実施例3)
表1に示すように、Fe元素含有量が実施例1より10ppm多いCa3N2原料を使用した以外、実施例1と同様の条件で赤色蛍光体CaAlSiN3:Euを準備した。原料に使用したCa3N2、Si3N4、AlN、Eu2O3のFe元素含有量はそれぞれ70ppm、20ppm、90ppm、10ppmであった。
得られた蛍光体粉末に460nmの単色光を照射したところ、図1中の太二点鎖線に示すように、656nmに発光ピークを有する赤色発光を示した。また、表1及び図2に示すように、化学分析により得られた蛍光体の不純物Fe元素含有量は120ppmであった。
次の比較例1〜3では、実施例よりもFe元素含有量の高いCa3N2を原料として使用した場合の、蛍光体の発光強度を、実施例1〜3と比較し検討した。
(比較例1)
表1に示すように、Fe元素含有量が230ppmであるCa3N2原料を使用した以外、実施例1と同様の条件で赤色蛍光体CaAlSiN3:Euを準備した。その他の原料であるSi3N4、AlN、Eu2O3のFe元素含有量はそれぞれ20ppm、90ppm、10ppmであった。
得られた蛍光体粉末に460nmの単色光を照射したところ、図1の細実線に示すように、656nmに発光ピークを有する赤色発光を示した。また、表1及び図2に示すように、化学分析により得られた蛍光体の不純物Fe元素含有量は260ppmであった。
(比較例2)
表1に示すように、Fe元素含有量が770ppmである市販のCa3N2原料を使用した以外、実施例1と同様の条件で赤色蛍光体CaAlSiN3:Euを準備した。その他の原料であるSi3N4、AlN、Eu2O3のFe元素含有量はそれぞれ20ppm、90ppm、10ppmであった。
得られた蛍光体粉末に460nmの単色光を照射したところ、図1の細破線に示すように、656nmに発光ピークを有する赤色発光を示した。また、表1及び図2に示すように、化学分析により得られた蛍光体の不純物Fe元素含有量は400ppmであった。
(比較例3)
表1に示すように、Fe元素含有量が1400ppmであるCa3N2原料を使用した以外、実施例1と同様の条件で赤色蛍光体CaAlSiN3:Euを準備した。その他の原料であるSi3N4、AlN、Eu2O3のFe元素含有量はそれぞれ20ppm、90ppm、10ppmであった。
得られた蛍光体粉末に460nmの単色光を照射したところ、図1の細一点鎖線に示すように、656nmに発光ピークを有する赤色発光を示した。また、表1及び図2に示すように、化学分析により得られた蛍光体の不純物Fe元素含有量は600ppmであった。
(実施例1〜3と比較例1〜3との比較・検討)
図2及び表1から、比較例1〜3で作製した蛍光体粉末において、Fe元素含有量が200ppm以上になると、その発光強度が急激に低下することが分かる。これはFe元素が発光効率を大幅に低下させるキラー元素として発光特性に悪影響を及ぼしているからである。この作用の原因は、Fe元素含有量が200ppmを越えると蛍光体粉末の発光中心へのエネルギー伝達の阻害が著しくなり、結果として発光強度が大きく低下するからと考えられる。従って、実施例1〜3のように、原料中のFe元素濃度を200ppm以下に制御することによって、当該蛍光体粉末のFe元素濃度を200ppm以下に抑制すれば、蛍光体粉末の発光中心へのエネルギー伝達が阻害されず、発光強度の低下を防止できるので、蛍光体の発光効率の向上及び安定が実現可能となる。
実施例1〜3と比較例1〜3において作製した蛍光体を460nmの光で励起させた場合の、不純物Fe元素含有量に対する発光スペクトルを示すグラフである。 実施例1〜3と比較例1〜3で作製した蛍光体を460nmの光で励起させた場合の、不純物Fe元素含有量に対する相対発光強度を示すグラフである。

Claims (9)

  1. Fe元素の含有量が200ppmより少ないことを特徴とする窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体。
  2. 請求項1に記載の窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体であって、
    組成式MmAaBbOoNn:Z(但し、M元素はII価の価数をとる1種以上の元素であり、A元素はIII価の価数をとる1種以上の元素であり、B元素はIV価の価数をとる1種以上の元素であり、Oは酸素であり、Nは窒素であり、Z元素は、前記窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体中において付活剤として作用する元素であり、n=2/3m+a+4/3b-2/3o 、m>0, a≧0 , b>0 , o≧0)と表記されることを特徴とする窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体。
  3. 請求項2に記載の窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体であって、
    前記M元素がMg、Ca、Sr、Ba、Znから選択される少なくとも一種の元素であり、A元素がAl、Gaから選択される少なくとも一種の元素であり、B元素がSi、Geから選択される少なくとも一種の元素であり、Z元素がEuであることを特徴とする窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体。
  4. 請求項2または3に記載の窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体であって、
    前記m、a、b、o、nが、m=a=b=1 ,o<0.5, n = 3 -2/3o で表記されることを特徴とする窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体の製造方法であって、
    前記窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体の原料として、Fe元素含有量が100ppm以下の原料を使用することを特徴とする窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体の製造方法。
  6. 請求項5に記載の窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体の製造方法であって、
    前記窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体の原料として、Fe元素含有量が100ppm以下である一般式M3N2で表記されるII族元素の窒化物(但し、M元素はMg、Ca、Sr、Ba、Znから選択される少なくとも1種以上の元素である。)を用いることを特徴とする窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体の製造方法。
  7. 請求項6に記載の窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体の製造方法であって、
    2N以上、且つFe含有量が100ppm以下の金属単体を、窒素雰囲気またはアンモニア雰囲気中で300℃以上の温度で窒化して、前記II族元素の窒化物を製造することを特徴とする窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体の製造方法。
  8. 請求項1乃至4のいずれかに記載の窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体と、所定波長の光を発光する発光部とを有し、
    上記所定波長の光の一部を励起源とし、上記窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体を上記所定波長と異なる波長で発光させることを特徴とする発光装置。
  9. 請求項8に記載の発光装置であって、
    上記所定波長が300〜550nmの波長であることを特徴とする発光装置。
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