JP2006262640A - スイッチング電源回路 - Google Patents
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Abstract
【課題】 力率改善機能を有する電源回路として、電力変換効率の向上、回路構成部品の削減を図る。
【解決手段】電流共振形コンバータに対して電力回生方式の力率改善回路10を設け、二次側にも直列共振回路を設けることでコンバータトランスPITの電磁結合による結合形共振回路を形成する。そして、この結合形共振回路について単峰特性を得るために、コンバータトランスPIT自体の結合係数について0.74程度を設定し、電圧帰還トランス一次巻線数のインダクタンスをコンバータトランスPITの一次側に接続して総合結合係数を0.64程度とすることで、スイッチング周波数の可変制御範囲を縮小してワイドレンジ対応とする。これにより、アクティブフィルタを不要とする。更に、コンバータトランスPIT自体の結合係数を大きくすることによってギャップ部における渦電流損失を低減する。これにより、AC→DC電力変換効率の向上が図られる。
【選択図】 図1
【解決手段】電流共振形コンバータに対して電力回生方式の力率改善回路10を設け、二次側にも直列共振回路を設けることでコンバータトランスPITの電磁結合による結合形共振回路を形成する。そして、この結合形共振回路について単峰特性を得るために、コンバータトランスPIT自体の結合係数について0.74程度を設定し、電圧帰還トランス一次巻線数のインダクタンスをコンバータトランスPITの一次側に接続して総合結合係数を0.64程度とすることで、スイッチング周波数の可変制御範囲を縮小してワイドレンジ対応とする。これにより、アクティブフィルタを不要とする。更に、コンバータトランスPIT自体の結合係数を大きくすることによってギャップ部における渦電流損失を低減する。これにより、AC→DC電力変換効率の向上が図られる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、各種電子機器の電源として用いられるスイッチング電源回路に関する。
近年、高周波の比較的大きい電流及び電圧に耐えることができるスイッチング素子の開発によって、商用電源を整流して所望の直流電圧を得る電源回路としては、大部分がスイッチング方式の電源回路になっている。スイッチング電源回路はスイッチング周波数を高くすることによりトランスその他のデバイスを小型にすると共に、大電力のDC−DCコンバータとして各種の電子機器の電源として使用される。
ところで、一般に商用電源を整流すると平滑回路に流れる電流は歪み波形になるため、電源の利用効率を示す、力率が損なわれるという問題が生じる。また、このような歪み電流波形となることによって発生する、高調波を抑圧するための対策が必要とされている。
また、スイッチング電源回路としては、例えば日本や米国等の交流入力電圧AC100V系の地域と、欧州等のAC200V系の地域に対応するように、例えば約AC85V〜288Vの交流入力電圧範囲に対応した動作が可能に構成された、いわゆるワイドレンジ対応の電源回路が知られている。
ここで、上述した共振形コンバータとしては、コンバータを形成するスイッチング素子のスイッチング周波数を制御すること(スイッチング周波数制御方式)により安定化を図るように構成したものが知られている。このようなスイッチング周波数制御方式による共振形コンバータとして、例えば汎用の発振・ドライブ回路ICなどによりスイッチング素子をスイッチング駆動するような構成では、例えばスイッチング周波数fsの可変範囲は最大で、fs=50KHz〜250KHz程度となっている。
このような可変範囲である場合、例えば負荷電力Poの変動範囲がPo=0Wから90W程度まで、更には150W程度までの比較的大きな変動幅となる負荷条件では、ワイドレンジとしてのAC85V〜288Vの交流入力電圧範囲に対応して安定化を図ることはほぼ不可能となる。
これらの各問題の解決を図るべく、力率の改善、及びワイドレンジ対応の構成を実現する従来技術として、いわゆるアクティブフィルタを用いる方法が知られている(例えば上記特許文献1参照)。
このようなアクティブフィルタの基本構成としては、例えば次の図15に示すものとなる。図15においては、商用交流電源ACにブリッジ整流回路Diを接続している。このブリッジ整流回路Diの正極/負極ラインに対しては並列に出力コンデンサCoutが接続される。ブリッジ整流回路Diの整流出力が出力コンデンサCoutに供給されることで、出力コンデンサCoutの両端電圧として、直流電圧Voutが得られる。この直流電圧Voutは、例えば後段のDC−DCコンバータなどの負荷50に入力電圧として供給される。
また、力率改善のための構成としては、図示するようにして、インダクタL、高速リカバリ型のダイオードD、抵抗Ri、スイッチング素子Q、及び乗算器11を備える。インダクタL、ダイオードDは、ブリッジ整流回路Diの正極出力端子と、出力コンデンサCoutの正極端子との間に、直列に接続されて挿入される。抵抗Riは、ブリッジ整流回路Diの負極出力端子(一次側アース)と出力コンデンサCoutの負極端子との間に挿入される。
また、スイッチング素子Q1は、この場合には、MOS−FETが選定されており、図示するようにして、インダクタLとダイオードDの接続点と、一次側アース間に挿入される。
乗算器11に対しては、フィードフォワード回路として、電流検出ラインLI及び波形入力ラインLwが接続され、フィードバック回路として電圧検出ラインLVが接続される。乗算器11は、電流検出ラインLIから入力される、ブリッジ整流回路Diの負極出力端子に流れる整流電流レベルを検出する。
また、波形入力ラインLwから入力される、ブリッジ整流回路Diの正極出力端子の整流電圧波形を検出する。これは、即ち、商用交流電源AC(交流入力電圧)の波形を絶対値化して検出していることに相当する。
また、電圧検出ラインLVから入力される、出力コンデンサCoutの直流電圧Voutに基づいて、直流入力電圧の変動差分を検出する。
そして、乗算器11からは、スイッチング素子Qを駆動するためのドライブ信号が出力される。
乗算器11では、先ず、上述のようにして電流検出ラインLIから検出した整流電流レベルと、電圧検出ラインLVから検出した直流入力電圧の変動差分と乗算する。そして、この乗算結果と、波形入力ラインLwから検出した交流入力電圧の波形とによって、交流入力電圧VACと同一波形の電流指令値を生成する。
更に、この場合の乗算器11では、電流指令値と実際の交流入力電流レベル(電流検出ラインLIからの入力に基づいて検出される)を比較し、この差に応じてPWM信号についてPWM制御を行い、PWM信号に基づいたドライブ信号を生成する。そして、スイッチング素子Qは、このドライブ信号によってスイッチング駆動される。この結果、交流入力電流は交流入力電圧と同一波形となるように制御されて、力率がほぼ1に近付くようにして力率改善が図られることになる。また、この場合には、乗算器によって生成される電流指令値は、整流電圧の変動差分に応じて振幅が変化するように制御されるため、整流電圧の変動も抑制されることになる。
図16(a)は、図15に示したアクティブフィルタ回路に入力される入力電圧Vin及び入力電流Iinを示している。電圧Vinは、ブリッジ整流回路Diの整流出力としての電圧波形に対応し、電流Iinは、ブリッジ整流回路Diの整流出力としての電流波形に対応する。ここで、電流Iinの波形は、ブリッジ整流回路Diの整流出力電圧(電圧Vin)と同じ導通角となっているが、これは、商用交流電源ACからブリッジ整流回路Diに流れる交流入力電流の波形も、この電流Iinと同じ導通角となっていることを示す。つまり、ほぼ1に近い力率が得られている。
また、図16(b)は、出力コンデンサCoutに入出力するエネルギー(電力)Pchgの変化を示す。出力コンデンサCoutは、入力電圧Vinが高いときにエネルギーを蓄え、入力電圧Vinが低いときにエネルギーを放出して、出力電力の流れを維持する。
図16(c)は、出力コンデンサCoutに対する充放電電流Ichgの波形を示している。この充放電電流Ichgは、図16(b)の入出力エネルギーPchgの波形と同位相となっていることからも分かるように、出力コンデンサCoutにおけるエネルギーPchgの蓄積/放出動作に対応して流れる電流である。
充放電電流Ichgは、入力電流Iinとは異なり、交流ライン電圧(商用交流電源AC)の第2高調波とほぼ同一の波形となる。交流ライン電圧には、出力コンデンサCoutとの間のエネルギーの流れによって、図16(d)に示すようにして、第2高調波成分にリップル電圧Vdが生じる。このリップル電圧Vdは、無効なエネルギー保存のために、図16(c)に示す充放電電流Ichgに対して、90°の位相差を有する。出力コンデンサCoutの定格は、第2高調波のリップル電流と、その電流を変調するブースト・コンバータ・スイッチからの高周波リップル電流を処理することを考慮して決定するようにされる。
また、図17には、先の図15の回路構成を基として、基本的なコントロール回路系を備えたアクティブフィルタの構成例を示している。なお、図15と同一とされる部分については同一符号を付して説明を省略する。
ブリッジ整流回路Diの正極出力端子と、出力コンデンサCoutの正極端子間には、スイッチングプリレギュレータ51が備えられる。このスイッチングプリレギュレータ51は、図15においては、スイッチング素子Q、インダクタL、及びダイオードDなどにより形成される部位となる。
そして、乗算器11を含むコントロール回路系は、他に、誤差電圧増幅器12、除算器13、二乗器14を備えて成る。誤差電圧増幅器12では、出力コンデンサCoutの直流電圧Voutを、分圧抵抗Rvo−Rvdにより分圧してオペアンプ15の非反転入力に入力する。オペアンプ15の反転入力には基準電圧Vrefが入力される。オペアンプ15では、基準電圧Vrefに対する分圧された直流電圧Voutの誤差に応じたレベルの電圧を、帰還抵抗Rvl、コンデンサCvlによって決定される増幅率により増幅して、誤差出力電圧Vveaとして除算器13に出力する。
また、二乗器14には、いわゆるフィードフォワード電圧Vffが入力される。このフィードフォワード電圧Vffは、入力電圧Vinを平均化回路16(Rf11,Rf12,Rf13,Cf11,Cf12)により平均化した出力(平均入力電圧)とされる。二乗器14では、このフィードフォワード電圧Vffを二乗して除算器13に出力する。
除算器13では、誤差電圧増幅器12からの誤差出力電圧Vveaについて、二乗器14から出力された平均入力電圧の二乗値により除算を行い、この除算結果としての信号を乗算器11に出力する。つまり、電圧ループは、二乗器14、除算器13、乗算器11の系から成るものとされる。そして、誤差電圧増幅器12から出力される誤差出力電圧Vveaは、乗算器11で整流入力信号Ivacにより乗算される前の段階で、平均入力電圧(Vff)の二乗により除算されることになる。この回路によって、電圧ループの利得は、平均入力電圧(Vff)の二乗として変化することなく、一定に維持される。平均入力電圧(Vff)は、電圧ループ内において順方向に送られる開ループ補正の機能を有する。
乗算器11には、除算器13により誤差出力電圧Vveaを除算した出力と、抵抗Rvacを介したブリッジ整流回路Diの正極出力端子(整流出力ライン)の整流出力(Iac)が入力される。ここでは、整流出力を電圧によるのではなく、電流(Iac)として示している。乗算器11では、これらの入力を乗算することによって、電流プログラミング信号(乗算器出力信号)Imoを生成して出力する。これは、図15にて説明した電流指令値に相当する。出力電圧Voutは、この電流プログラミング信号の平均振幅を可変することで制御される。つまり、電流プログラミング信号の平均振幅の変化に応じたPWM信号が生成され、このPWM信号に基づいたドライブ信号によってスイッチング駆動が行われることによって、出力電圧Voutのレベルをコントロールするものである。
したがって、電流プログラミング信号は、入力電圧と出力電圧を制御する平均振幅の波形を有する。なお、アクティブフィルタは、出力電圧Voutのみではなく、入力電流Vinも制御するようになっている。そして、フィードフォワード回路における電流ループは、整流ライン電圧によってプログラムされるということがいえるので、後段のコンバータ(負荷50)への入力は抵抗性になる。
図18は、図15に示した構成に基づくアクティブフィルタの後段に対して、電流共振形コンバータを接続して成る電源回路の構成例を示している。この図に示す電源回路において、電流共振形コンバータとしては、他励式のハーフブリッジ結合方式による構成を採る。
先ず、この図18に示す電源回路においては、商用交流電源ACに対して、図示する接続態様により、2組のラインフィルタトランスLFT,LFTと、3組のアクロスコンデンサCLが接続され、この後段に、図示する突入電流制限回路22を介してブリッジ整流回路Diが接続される。この突入電流制限回路22としては、突入電流制限抵抗RiとスイッチSWとによる並列接続回路から成り、例えば外部からの信号でスイッチSWがオフとされることで、電源回路起動時における商用交流電源側からの突入電流の流入が制限される。
そして、ブリッジ整流回路Diの整流出力ラインには、1組のチョークコイルLNと、2組のフィルタコンデンサ(フィルムコンデンサ)CN,CNを図示するようにして接続して成るノーマルモードノイズフィルタ24が接続されている。
ブリッジ整流回路Diの正極出力端子は、チョークコイルLNと、パワーチョークコイルPCCのインダクタLpcと、高速リカバリ型の整流ダイオードD10の直列接続を介して、平滑コンデンサCiの正極端子と接続される。この平滑コンデンサCiは、図15、図17における出力コンデンサCoutに相当する。また、パワーチョークコイルPCCのインダクタLpcと整流ダイオードD10は、それぞれ、図15に示したインダクタLとダイオードDに相当する。また、この図における整流ダイオードD10には、コンデンサCsn−抵抗Rsnから成るRCスナバ回路が並列に接続される。
スイッチング素子Q6は、図15におけるスイッチング素子Qに相当する。つまり、実際にアクティブフィルタのスイッチング素子を実装するのにあたって、この場合にはスイッチング素子Q6をパワーチョークコイルLpcと高速リカバリ型の整流ダイオードD10の接続点と、一次側アース(負極整流出力ライン)との間に挿入するようにしている。この場合のスイッチング素子Q6にはMOS−FETが選定されている。そして、スイッチング素子Q6のゲート−ソース間にはゲート−ソース間抵抗R52が接続されている。
アクティブフィルタコントロール回路20は、この場合には力率を1に近づけるように力率改善を行うアクティブフィルタの動作を制御するもので、例えば1石の集積回路(IC)とされている。この場合、アクティブフィルタコントロール回路20は、乗算器、除算器、誤差電圧増幅器、PWM制御回路、及びスイッチング素子をスイッチング駆動するためのドライブ信号を出力するドライブ回路等を備えて構成される。図17に示した乗算器11、誤差電圧増幅器12、除算器13、及び二乗器14などに相当する回路部は、このアクティブフィルタコントロール回路20内に搭載される。
この場合、フィードバック回路は平滑コンデンサCiの両端電圧(整流平滑電圧Ei)を分圧抵抗R56,R57により分圧した電圧値を、アクティブフィルタコントロール回路20の端子T1に入力するようにして形成される。
また、フィードフォワード回路としては、先ず、抵抗R58を介して整流出力が端子T3に入力される。これによって、交流入力電圧波形の検出と、平均化回路のための対応するフィードフォワード回路が形成されている。
また、ブリッジ整流回路Diの負極出力端子と一次側アース間に挿入される抵抗R61との接続点から、抵抗R60を介して、端子T6に対して整流電流レベルを入力するようにしている。つまり、図17における電流検出ラインLIに相当するラインとしてのフィードフォワード回路が形成されている。
また、端子T4には、起動抵抗Rsを介したブリッジ整流回路Diの正極の整流出力が、起動電圧として入力されている。アクティブフィルタコントロール回路20は、電源起動時において、この端子T4に入力される起動電圧によって起動される。
また、パワーチョークコイルPCCにおいては、インダクタLpcとトランス結合された巻線N5が巻装されている。この巻線N5に励起された交番電圧は、ダイオードD11及びコンデンサC11とから成る半波整流回路により所定の低圧直流電圧に変換されるが、端子T4には、この低圧直流電圧も入力されている。アクティブフィルタコントロール回路20は、上記起動電圧により起動した後は、この低圧直流電圧を電源として入力して動作するようになっている。また、端子T5は、抵抗R59を介して、一次側アースと接続されている。
端子T2からは、スイッチング素子を駆動するためのドライブ信号が出力される。そして、この端子T2から出力されたドライブ信号は、抵抗R51を介してスイッチング素子Q6のゲートに対して出力される。
スイッチング素子Q6では、印加されるドライブ信号に応じて、ゲート−ソース間抵抗R52の両端にゲート電圧が発生するようになっている。そして、ゲート電圧が閾値以上となることでオンとなり、閾値以下となるとオフとなるようにしてスイッチング動作を行う。
そして、スイッチング素子Q6のスイッチング駆動は、図15及び図17により説明したようにして、整流出力電流の導通角が、整流出力電圧波形とほぼ同等の導通角となるように、PWM制御に基づくドライブ信号によって行われる。整流出力電流の導通角が整流出力電圧波形とほぼ同等の導通角となるということは、即ち、商用交流電源ACから流入する交流入力電流の導通角が、交流入力電圧VACの波形とほぼ同じ導通角となることであり、結果的に、力率がほぼ1となるように制御されることになる。つまり、力率改善が図られる。実際においては、力率PF=0.99〜0.98となる特性が得られている。
また、この図18に示すアクティブフィルタコントロール回路20によっては、整流平滑電圧Ei(図17では、Voutに相当する)=375Vの平均値について、交流入力電圧VAC=85V〜264Vの範囲で定電圧化するようにも動作する。つまり、後段の電流共振形コンバータには、交流入力電圧VAC=85V〜264Vの変動範囲に関わらず、375Vで安定化された直流入力電圧が供給されることとなる。
交流入力電圧VAC=85V〜264Vの範囲は、商用交流電源AC100V系と200V系を連続的にカバーするものであり、従って、後段のスイッチングコンバータには、商用交流電源AC100V系と200V系とで、同じレベルで安定化された直流入力電圧(Ei)が供給されることとなる。つまり、図18に示す電源回路は、アクティブフィルタを備えることで、ワイドレンジの電源回路としても構成されている。
アクティブフィルタの後段の電流共振形コンバータは、図示するようにして、2石のスイッチング素子Q1,Q2を備えて成る。この場合には、スイッチング素子Q1がハイサイドで、スイッチング素子Q2がローサイドとなるようにしてハーフブリッジ接続し、整流平滑電圧Ei(直流入力電圧)に対して並列に接続している。つまり、ハーフブリッジ結合方式による電流共振形コンバータを形成している。
この場合の電流共振形コンバータは他励式とされ、これに対応してスイッチング素子Q1,Q2には、MOS−FETが用いられている。これらスイッチング素子Q1,Q2に対しては、それぞれ並列にダンパーダイオード DD1,DD2が接続され、これによりスイッチング回路が形成される。これらダンパーダイオード DD1,DD2は、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時における逆方向電流を流す経路を形成する。
スイッチング素子Q1,Q2は、ドライブ回路21によって、交互にオン/オフとなるタイミングによって所要のスイッチング周波数によりスイッチング駆動される。また、ドライブ回路21は、後述する二次側直流出力電圧Eoのレベルに応じてスイッチング周波数を可変制御し、これにより、二次側直流出力電圧Eoの安定化を図るようにされる。
コンバータトランスPITは、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力を一次側から二次側に伝送するために設けられる。コンバータトランスPITの一次巻線N1の一方の端部は、スイッチング素子Q1,Q2の接続点(スイッチング出力点)に対して接続され、他方の端部は、直列共振コンデンサC1を介して一次側アースに接続される。ここで、直列共振コンデンサC1は、自身のキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンス(L1)とによって直列共振回路を形成する。この直列共振回路は、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力が供給されることで共振動作を生じるが、これによって、スイッチング素子Q1,Q2から成るスイッチング回路の動作を電流共振形とする。
ここでの図示による説明は省略するが、上述したコンバータトランスPITの構造としては、例えばフェライト材によるE型コアを組み合わせたEE型コアを備える。そして、一次側と二次側とで巻装部位を分割したうえで、一次巻線N1と二次巻線N2とを、EE型コアの内磁脚に対して巻装している。また、コンバータトランスPITのEE型コアの内磁脚に対しては1.0mm程度以下のギャップを形成するようにして、一次巻線N1と二次巻線N2とで0.80〜0.90程度の結合係数を得るようにしている。
コンバータトランスPITの二次巻線N2に対しては、図示するようにしてセンタータップを施し二次側アースに接続した上で、図示するようにして整流ダイオードDo1,Do2、及び平滑コンデンサCoから成る両波整流回路を接続している。これにより、平滑コンデンサCoの両端電圧として二次側直流出力電圧Eoが得られる。この二次側直流出力電圧Eoは、図示しない負荷側に供給されるとともに、ドライブ回路21のための検出電圧としても分岐して入力される。前述もしたように、ドライブ回路21は、入力される二次側直流出力電圧Eoのレベルに基づいて、二次側直流出力電圧Eoが安定化されるようにスイッチング周波数を可変するようにしてスイッチング素子Q1,Q2を駆動する。つまり、スイッチング周波数制御方式による安定化を行う。
これまでの説明から分かるように、図18に示した電源回路は、従来から知られている図15及び図17に示したアクティブフィルタを実装して構成されている。このような構成を採ることによって、力率改善を図っている。
しかしながら、図18に示した構成による電源回路は次のような問題を有している。
図18の電源回路について実際に実験を行った結果、アクティブフィルタでのAC→DC電力変換効率(ηAC→DCとしては、交流入力電圧VAC=100V時ではηAC→DC=92%程度、交流入力電圧VAC=230Vの条件ではηAC→DC=95%程度となった。
また、アクティブフィルタにより生成する直流入力電圧Eiの平均値が上述したEi=375Vの条件で、負荷電力Po=200Wとされた場合での電流共振形コンバータの電力変換効率は、ηDC→DC=94%程度である。
このために、図18に示した回路の総合効率は、前段のアクティブフィルタでの電力変換効率と電流共振形コンバータの電力変換効率との積で表され、VAC=100V時においてηAC→DC=86.5%程度となる。また、VAC=230V時の総合効率は、ηAC→DC=89.3%程度となり、90%以上の効率を得ることができない。
また、アクティブフィルタ回路はハードスイッチング動作であることから、ノイズの発生レベルが非常に大きいため、比較的重度のノイズ抑制対策が必要となる。このため、図18に示した回路では、商用交流電源ACのラインに対して、コモンモードノイズを抑制するために2組のラインフィルタトランスLFTと、3組のアクロスコンデンサによるノイズフィルタを形成している。つまり、2段以上のラインノイズフィルタが必要となっている。
また、整流出力ラインに対しては、1組のチョークコイルLNと、2組のフィルタコンデンサCNから成るノーマルモードノイズフィルタを設けている。更に、整流用の高速リカバリ型の整流ダイオードD10に対しては、RCスナバ回路を設けている。このようにして、実際の回路としては、非常に多くの部品点数によるノイズ対策が必要であり、回路構成の複雑化やコストアップ、及び電源回路基板の実装面積の大型化を招いている。
更に、汎用ICとしてのアクティブフィルタコントロール回路20によって動作するスイッチング素子Q6のスイッチング周波数は固定であるのに対して、後段の電流共振形コンバータのスイッチング周波数は、例えば80kHz〜200kHz程度の範囲で可変する。このようにして両者のスイッチングタイミングが個々に独立して行われることで、両者のスイッチング動作により、一次側アース電位は干渉しあって不安定になり、例えば異常発振が生じやすくなる。これにより、例えば回路設計が難しいものとなり、また、信頼性を劣化させるなどの問題も招くことになる。
そこで、本発明では上述してきた各種の問題点に鑑み、スイッチング電源回路として下記のように構成することとした。
つまり、商用交流電源を入力して整流電圧を生成する整流手段と、整流電圧のスイッチングを行うスイッチング素子を有して形成されるスイッチング手段と、スイッチング素子をスイッチング駆動する駆動信号を発生するスイッチング駆動手段と、を備える。
また、少なくとも、スイッチング手段のスイッチング動作により得られたスイッチング出力が供給される一次巻線と、この一次巻線により交番電圧が誘起される二次巻線とが巻装されて形成されたコンバータトランスを備える。
また、少なくとも、コンバータトランスの一次巻線の漏洩インダクタンス成分と、一次巻線に直列接続された一次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成される一次側直列共振回路を備える。
また、整流手段とスイッチング手段との間に介在し、一次側直列共振回路に流れる電流に応じた電圧を整流手段とスイッチング手段との間に発生させることによって商用交流電源から整流手段に入力される電流の導通角を拡大させて力率を改善する力率改善手段を備える。
また、少なくとも、コンバータトランスの二次巻線の漏洩インダクタンス成分と、二次巻線に直列接続された二次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成される二次側直列共振回路と、を備える。
また、二次側直列共振回路に得られる共振出力を入力して整流動作を行って二次側直流出力電圧を生成する二次側直流出力電圧生成手段と、二次側直流出力電圧のレベルに応じて、駆動信号の周波数を変化させて二次側直流出力電圧を所定の電圧値とする電圧制御手段と、を備える。
そして、一次側直列共振回路と二次側直列共振回路とを有して形成される電磁結合形共振回路について、駆動信号の周波数に対する二次側直流出力電圧の出力特性が単峰特性となるようにしたことを特徴とする。
なお、上述の結合係数なる用語は、電磁的な結合の度合いを示すものであり、数値として1が最も結合の度合が高いことを示し、数値として0が最も結合の度合いが低い(結合していない)ことを示すものである。そして、結合係数の用語は、構成態様によらず総称として一般に用いられるものであるが、コンバータトランス自体の結合係数と区別するために、一次側の全体と二次側の全体との間の電磁的な結合の度合い示すものとして、総合結合係数の用語を用いる。例えば、コンバータトランスに他のインダクタンス成分が接続されていない場合には、結合係数の値と総合結合係数の値とは一致するものである。また、コンバータトランス自体の結合係数であることを明確にする必要がある場合にはトランス結合係数の用語を用いる。
このようにして本発明によれば、駆動信号の周波数に対する二次側直流出力電圧の出力特性が単峰特性となるようにしたので、定電圧制御に必要なスイッチング周波数の可変制御範囲(必要制御範囲)が縮小される。これにより、力率改善機能を有する共振形コンバータとして、駆動信号の周波数を制御することのみによりワイドレンジ対応化することが容易に実現化可能となる。このようにして、スイッチング周波数制御によるワイドレンジ対応が実現化されることで、力率改善機能を備えるワイドレンジ対応のスイッチング電源回路として、アクティブフィルタを備えない構成を採ることができる。そして、例えばアクティブフィルタによって力率改善を図る電源回路よりも電力変換効率が向上される。
また、本発明の電源回路としては、アクティブフィルタを構成するための多数の部品素子が不要となる。また、電源回路を構成する電流共振形コンバータ、及び力率改善回路はソフトスイッチング動作であり、スイッチングノイズが大幅に低減されるから、ノイズフィルタを強化する必要もなくなる。このために、先行技術と比較しては、部品点数が大幅に削減されることになって、電源回路サイズの小型/軽量化を図ることが可能となる。また、それだけコストダウンが図られることにもなる。また、更には、アクティブフィルタが省略されたことで、一次側アース電位の干渉が無くなるので、一次側アース電位も安定することとなって、信頼性が向上する。
図1は、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態ともいう)における、第1の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。この図に示す電源回路は、一次側の基本構成として、ハーフブリッジ結合方式による他励式の電流共振形コンバータに対して部分電圧共振回路が組み合わされた構成を採る。
また、この図1に示される電源回路としては、AC100V系とAC200V系の双方の入力に対応して動作可能な、いわゆるワイドレンジ対応の構成を採るものとされる。また、この場合の電源回路としては、例えばパーソナルコンピュータの周辺機器であるプリンタ装置の電源として備えられることが想定され、例えば、負荷電力Poとして200W〜0W(無負荷)の負荷変動に対応するものとされる。
先ず、この図1に示す電源回路において、商用交流電源ACに対しては、フィルタコンデンサCL、CL、及びコモンモードチョークコイルCMCによるコモンモードノイズフィルタが形成されている。
そして、ノイズフィルタの後段となる商用交流電源ACに対しては、整流手段の1例であるブリッジ整流回路Diを備え、このブリッジ整流回路Di及び1本の平滑コンデンサCiから成る全波整流平滑回路が接続される。ただし、本実施の形態においては、ブリッジ整流回路Diの正極出力ラインと、平滑コンデンサCiの正極端子間には、力率改善回路10が介在するようにして設けられる。この力率改善回路10の構成及びその動作については後述する。
この全波整流平滑回路が商用交流電源ACを入力して全波整流動作を行うことによって、平滑コンデンサCiの両端には整流平滑電圧Ei(直流入力電圧)が得られる。この場合の整流平滑電圧Eiは、交流入力電圧VACの等倍に対応したレベルとなる。
直流入力電圧を入力してスイッチング(断続)する電流共振形コンバータとしては、図示するようにして、MOS−FETによる2本のスイッチング素子Q1,Q2をハーフブリッジ結合により接続したスイッチング回路を備える。スイッチング素子Q1,Q2の各ドレイン−ソース間に対しては、ダンパーダイオードDD1,DD2が並列に接続される。ダンパーダイオードDD1のアノード、カソードは、それぞれスイッチング素子Q1のソース、ドレインと接続される。同様にして、ダンパーダイオードDD2のアノード、カソードは、それぞれスイッチング素子Q2のソース、ドレインと接続される。ダンパーダイオードDD1,DD2は、それぞれスイッチング素子Q1,スイッチング素子Q2が備えるボディダイオードとされる。
また、スイッチング素子Q2のドレイン−ソース間に対しては、一次側部分共振コンデンサCpが並列に接続される。この一次側部分共振コンデンサCpのキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1によっては並列共振回路(部分電圧共振回路)を形成する。そして、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時にのみ電圧共振する、部分電圧共振動作が得られるようになっている。
また、スイッチング素子Q1,Q2をスイッチング駆動するために、発振・ドライブ回路2が設けられる。この発振・ドライブ回路2は、発振回路、駆動回路を有しており、例えば汎用のICを用いることができる。そして、この発振・ドライブ回路2内の発振回路及び駆動回路によって、所要の周波数によるドライブ信号(ゲート電圧)をスイッチング素子Q1,Q2の各ゲートに対して印加する。これにより、スイッチング素子Q1,Q2は、所要のスイッチング周波数により交互にオン/オフするようにしてスイッチング動作を行う。
コンバータトランスPITは、スイッチング素子Q1 、Q2のスイッチング出力を二次側に伝送するために設けられる。
この絶縁トランスPITの一次巻線N1の一方の端部は、この場合には力率改善用トランスVFTの一次巻線N11を介して、スイッチング素子Q1のソースとスイッチング素子Q2のドレインとの接続点(スイッチング出力点)に接続されることで、スイッチング出力が伝達されるようになっている。また、一次巻線N1の他方の端部は、一次側直列共振コンデンサC1の直列接続を介して、一次側アースと接続されている。
ここで、コンバータトランスPITは、図2の断面図に示すような構造を有する。この図に示されるように、コンバータトランスPITは、フェライト材によるE型コアCR1、CR2を互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE型コア(EE字形コア)を備える。そして、一次側と二次側の巻装部について相互に独立するようにして分割した形状により、例えば樹脂などによって形成される、ボビンBが備えられる。このボビンBの一方の巻装部に対して一次巻線N1を巻装する。また、他方の巻装部に対して、二次巻線N2を巻装する。このようにして一次側巻線(N1)及び二次側巻線(N2)が巻装されたボビンBをEE型コア(CR1,CR2)に取り付けることで、一次側巻線及び二次側巻線とがそれぞれ異なる巻装領域により、EE型コアの内磁脚に巻装される状態となる。このようにしてコンバータトランスPIT全体としての構造が得られる。
そのうえで、EE型コアの内磁脚に対しては、図のようにしてギャップGを形成する。ギャップGとして所定幅を設定し、これによってコンバータトランスPIT自体の一次側と二次側との結合係数kの値として所定値を得るようにしている。なお、本実施の形態の電源回路における実際のコンバータトランスPITの次側と二次側との結合係数kの値として、k=0.74程度を得るようにしている。なお、コンバータトランスPITのギャップGは、E型コアCR1,CR2の中央磁脚を、2本の外磁脚よりも短くすることで形成することができる(図2を参照)。
説明を図1に戻す。コンバータトランスPITは、図2により説明した構造によって一次巻線N1に所定のリーケージインダクタンスL1を生じさせる。そして、少なくとも、一次側直列共振コンデンサC1のキャパシタンスと、リーケージインダクタンスL1によって一次側直列共振回路を形成する。実際には、後述する力率改善用トランスVFTの一次巻線N11のインダクタンスL11の影響を考慮に入れなければならないが、説明を簡単にするために、先ず、インダクタンスL11が無いとして説明をする。
先に説明した接続態様によれば、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力は、上述の一次側直列共振回路に伝達されることになる。そして、伝達されたスイッチング出力により一次側直列共振回路が共振動作を行うことで、一次側スイッチングコンバータの動作を電流共振形とする。
ここで、これまでの説明によると、この図に示す一次側スイッチングコンバータとしては、一次側直列共振回路(L1−C1)による電流共振形としての動作と、前述した一次側部分電圧共振回路(Cp//L1)とによる部分電圧共振動作とが得られることになる。
つまり、この図に示す電源回路の一次側においては、一次側スイッチングコンバータを共振形とするための共振回路に対して、他の共振回路とが組み合わされた構成を採っている。ここでは、このように2つの共振回路が組み合わされて成るスイッチングコンバータを、「複合共振形コンバータ」ということにする。
コンバータトランスPITの二次巻線N2には、一次巻線N1に伝達されたスイッチング出力に応じた交番電圧が励起(誘起)される。この場合、二次巻線N2の巻き終わり端部側に対しては、二次側直列共振コンデンサCが直列に接続されている。これにより、コンバータトランスPITの二次側においては、少なくとも、二次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスと、二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2とによって二次側直列共振回路を形成することになる。つまり、本実施の形態としては、コンバータトランスPITの一次側と二次側とのそれぞれにおいて直列共振回路が形成される。
また、二次巻線N2に対しては、上述のように二次側直列共振コンデンサC2が接続されたうえで、4本の整流ダイオードDo1ないし整流ダイオードDo4を図示するようにして接続して成るブリッジ整流回路と、平滑コンデンサCoとにより形成される全波整流回路が接続される。
この全波整流回路によっては、二次巻線N2に励起(誘起)される交番電圧の一方の半周期において、整流ダイオード[Do1,Do2]の組が導通して、平滑コンデンサCoに対して整流電流を充電する動作が得られる。また、二次巻線N2に励起される交番電圧の他方の半周期においては、整流ダイオード[Do3,Do4]の組が導通して平滑コンデンサCoに対して整流電流を充電する動作が得られる。
これによって平滑コンデンサCoの両端電圧として、二次巻線N2に励起される交番電圧のレベルの等倍に対応したレベルによる二次側直流出力電圧Eoが得られる。このようにして得られた二次側直流出力電圧Eoは、図示しない負荷に供給されるとともに、後述する制御回路1のための検出電圧としても分岐して入力される。
また、上述の全波整流回路は、二次側直列共振回路の共振出力について整流平滑動作を行っていることから、この全波整流回路による二次側整流動作としても電流共振形となる。つまり、整流電流波形としては、二次側直列共振回路の共振周波数による正弦波形を含むことになる。
これまでの説明によれば、本実施の形態のスイッチング電源回路は、一次側に一次側直列共振回路(L1−C1)及び一次側部分電圧共振回路(L1//Cp)を備え、二次側には二次側直列共振回路(L2−C2)を備えることになる。先にも述べたように、例えば、図1の一次側のみをみた場合のように、直列共振回路と部分電圧共振回路とによる2つの共振回路が組み合わされたスイッチングコンバータについては、複合共振形コンバータということとしたが、本実施の形態のようにして3以上の共振回路が組み合わされたスイッチングコンバータについては多重共振形コンバータということにする。
制御回路1は、二次側直流出力電圧Eoをスイッチング周波数制御方式により安定化するために設けられる。この場合の制御回路1は、検出入力である二次側直流出力電圧Eoのレベル変化に応じた検出出力を発振・ドライブ回路2に供給する。発振・ドライブ回路2では、入力された制御回路1の検出出力に応じてスイッチング周波数が可変されるようにしてスイッチング素子Q1,Q2を駆動する。このためには、内部の発振回路により生成する発振信号の周波数を可変することになる。
スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング周波数が可変されることで、一次側直列共振回路の共振インピーダンスが変化し、コンバータトランスPITの一次巻線N1から二次巻線N2側に伝送される電力量が変化するが、これにより二次側直流出力電圧Eoのレベルを安定化させるように動作する。
詳細は後述するが、本実施の形態の電源回路におけるスイッチング周波数制御方式としては、一次側直列共振回路の共振周波数fo1及び二次側直列共振回路の共振周波数fo2により決まる中間共振周波数foに対して、これより高い周波数範囲をスイッチング周波数の可変範囲として設定している。つまり、いわゆるアッパーサイド制御の方式を採る。
一般的なこととして、直列共振回路は、共振周波数において最も共振インピーダンスが低くなる。このことから、本実施の形態のようにして、直列共振回路の共振周波数に基づくアッパーサイド制御方式を採る場合には、スイッチング周波数fsが高くなっていくのに応じて、共振インピーダンスを高くすることになる。
従って、例えば重負荷の傾向となって二次側直流出力電圧Eoが低下するのに応じては、スイッチング周波数を低くするように制御することになる。これは共振インピーダンスを低くすることとなり、一次側から二次側への電力伝送量が増加することになるので、二次側直流出力電圧Eoが上昇する。
これに対して、軽負荷の傾向となって二次側直流出力電圧Eoが上昇するのに応じては、スイッチング周波数を高くするように制御する。これにより、共振インピーダンスは高くなって電力伝送量が低減するために、二次側直流出力電圧Eoは低下する。このようにして、スイッチング周波数が可変されることによって、二次側直流出力電圧Eoが安定化されることになる。
続いて、力率改善回路10について説明する。
図1に図示するようにして、力率改善回路10は、整流手段とスイッチング手段との間に介在している。すなわち、整流手段の1例であるブリッジ整流回路Diの正極出力端子に対して、高速リカバリ型であるスイッチングダイオード(力率改善用スイッチング素子)D1のアノードが接続される。スイッチングダイオードD1のカソードは、力率改善用トランスVFTの二次巻線N12の直列接続を介してスイッチング手段の1例の一部分である平滑コンデンサCiの正極端子とスイッチング素子Q1との接続点に接続される。
つまり、この場合には、整流平滑電圧Eiを生成する整流電流経路において、ブリッジ整流回路Diの正極出力端子と平滑コンデンサCiの正極端子との間のラインに対して、スイッチングダイオードD1−二次巻線N12の直列接続回路を挿入していることになる。ここで、二次巻線N12は、電圧帰還方式による力率改善回路において、スイッチング出力を電圧帰還することにより得られる、スイッチング周期の交番電圧を受けるインダクタとしての機能を有する。
フィルタコンデンサCNは、スイッチングダイオードD1のスイッチング動作により生じるスイッチング周期の交番成分を吸収することでノーマルモードノイズを抑制するために設けられるもので、この場合には、スイッチングダイオードD1−二次巻線N12の直列接続回路に対して並列に接続される。
力率改善用トランスVFTは、一次巻線N11と二次巻線N12とについて、磁気的に結合されるようにしてコアに巻装した構造を有する。なお、この場合の力率改善用トランスVFTは、分割された巻装位置が形成されているいわゆる分割ボビンを有し、一次巻線N11と二次巻線N12とを、分割ボビンにおいてそれぞれ異なる巻装位置に巻回するようにしている。これにより、一次側と二次側の結合度としては、疎結合とされる所定の結合係数が得られるようにされている。すなわち、疎結合とすることによって、電圧帰還トランスの一次巻線のインダクタンスN11の値を大きくし、これによって、一次側直列共振回路を構成する漏れインダクタンスの値を大きなものとできる。
このようにして構成される力率改善回路10においては、一次側直列共振回路にスイッチング出力(一次側直列共振電流)が得られるのに応じて、この一次側直列共振回路に含まれることとされる力率改善用トランスVFTの一次巻線N11にスイッチング出力としての電流が流れることになる。そして、力率改善用トランスVFTにおいては、この一次巻線N11に流れる交番電流に応じて、二次巻線N12に交番電圧を誘起させる。
この場合、力率改善用トランスVFTの二次巻線N12は、スイッチングダイオードD1と直列接続された形態で、商用交流電源ACの整流電流経路に挿入されている。このために、二次巻線N12に誘起される交番電圧は、整流出力電圧に対して重畳されるものとなる。つまり、力率改善用トランスVFTによっては、一次側直列共振電流を、力率改善用トランスVFTの磁気結合を介して整流電流経路に電圧として帰還するようにしている。なお、このようにして、スイッチング出力を電圧として帰還して力率改善を図るようにされた力率改善回路の方式を、ここでは電圧帰還方式という。
スイッチングダイオードD1は、上述した交番電圧の重畳分により整流電流をスイッチング(断続)するようにして動作する。このような動作が得られる結果、交流入力電圧VACのレベルが平滑コンデンサCiの両端電圧よりも低いとされる期間にも整流電流を流すことになる。つまり、整流電流の導通角を拡大させる。
上述のようにして整流電流の導通角が拡大されるのに伴っては、交流入力電流IACの導通角も拡大されることとなり、これによって交流入力電流IACの平均的な波形が交流入力電圧VACの波形に近づくこととなって、力率が改善される。
ところで、図1に示す電源回路では、先に説明したように、力率改善用トランスVFTの一次巻線N11が、コンバータトランスPITの一次巻線N1に対して直列関係にあることで、一次側のリーケージインダクタンスの値については、一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1と力率改善用トランスVFTの一次巻線N11のインダクタンスL11が合算されたものと等価となる。
このように、一次巻線N11について所定のインダクタンスL11の値が設定されるように力率改善用トランスVFTを形成することで、力率改善用トランスVFTの一次巻線N11のインダクタンスL11の値を含めた結合係数である総合結合係数Ktを設定できる。
本実施の形態では、実際としては、コンバータトランスPITの構造自体による結合係数kの値としては0.74であるが、力率改善用トランスVFTの一次巻線N11のインダクタンスL11を加味して、総合結合係数Ktの値が0.64と、より低い値となるようにしている。
次に図1に示す第1の実施の形態のスイッチング電源回路において二次側直流出力電圧Eoがどのようにして安定化されるかについて説明をする。
まず、順を追って説明するために、図1に示した実施の形態の電源回路の構成から、二次側直列共振コンデンサC2を省略して、二次側直列共振回路を形成しないものとした複合共振形コンバータについて、二次側直流出力電圧Eoがどのようにして安定化されるかについて説明をする。
このような複合共振形コンバータは、一次側直列共振回路(及び一次側部分電圧共振回路)は備えるが、二次側直列共振回路は備えていない。このために、アッパーサイド制御のスイッチング周波数制御方式により二次側直流出力電圧Eoを安定化するのにあたっては、一次側直列共振回路の共振周波数fo1よりも高い周波数範囲でスイッチング周波数を可変制御し、これにより生じる共振インピーダンスの変化を利用することになる。
このことについて、図19を参照して説明する。図19は、複合共振形コンバータによる二次側直流出力電圧Eoについての定電圧制御特性を示している。この図において、横軸にはスイッチング周波数fsを示し、縦軸に二次側直流出力電圧Eoを示している。
ここで、直列共振回路は、共振周波数で最も共振インピーダンスが小さくなる。これにより、アッパーサイド制御における二次側直流出力電圧Eoとスイッチング周波数fsの関係として、二次側直流出力電圧Eoのレベルは、一次側直列共振回路の共振周波数fo1に対して、スイッチング周波数fsが近づいていくほど上昇し、共振周波数fo1から離れていくのに従って低下していくものとなる。
従って、負荷電力Poを一定とした条件でのスイッチング周波数fsに対する二次側直流出力電圧Eoのレベルは、図19に示すようにして、スイッチング周波数fsが一次側直列共振回路の共振周波数fo1と同じときにピークとなり、共振周波数fo1から離れるのに応じて低下する二次曲線的な変化を示す。
また、同じスイッチング周波数fsに対応する二次側直流出力電圧Eoのレベルは、最小負荷電力(Pomin)時よりも最大負荷電力(Pomax)時のほうが、所定分低下するようにしてシフトする特性が得られる。つまり、スイッチング周波数fsを固定として考えると、重負荷の条件となるのに従って二次側直流出力電圧Eoのレベルは低下する。
そして、このような特性のもとで、アッパーサイド制御により二次側直流出力電圧Eoについて、Eo=tgとなるようにして安定化しようとした場合、電源回路において必要となるスイッチング周波数の可変範囲(必要制御範囲)は、図においてΔfsとして示される範囲となる。
例えばこの複合共振形コンバータの実際として、AC100V系としての交流入力電圧VAC=85V〜120Vの入力変動範囲と、二次側直流出力電圧Eoの最大負荷電力(Pomax)=150W、最小負荷電力(Pomin)=0W(無負荷)の負荷条件に対応するとして、スイッチング周波数制御方式により、二次側直流出力電圧Eo=135Vで安定化する仕様を設定したとする。
この場合、この複合共振形コンバータが定電圧制御のために可変するスイッチング周波数fsの可変範囲は、fs=80kHz〜200kHz以上であり、必要制御範囲量であるΔfsとしても120kHz以上と相応に広範囲なものとなる。
このことをふまえて、この複合共振形コンバータについて、ワイドレンジ対応として構成することを考えてみる。
ワイドレンジ対応とするためには、例えばAC85V〜288Vの交流入力電圧範囲に対応すべきことになる。従って、例えば、AC100V系のみ、あるいはAC200V系のみの単レンジに対応する場合と比較して、二次側直流出力電圧Eoのレベル変動範囲も大きくなる。このような交流入力電圧範囲に応じて拡大された二次側直流出力電圧Eoのレベル変動に対して定電圧制御動作を行うためには、より広範囲なスイッチング周波数制御範囲が必要となる。例えば、スイッチング周波数fsの制御範囲は、約80kHz〜500kHzにまで拡大する必要がでてくる。
しかしながら、現状のスイッチング素子を駆動するためのIC(発振・ドライブ回路2)としては、対応可能な駆動周波数の上限は200kHz程度にしておくのが好ましい。また、上述したような高い周波数での駆動が可能なスイッチング駆動用ICを構成して実装したしたとしても、スイッチング素子Q1,スイッチング素子Q2における電力変換効率が低下するために、現実の電源回路として実用的ではなくなる。このような点を考慮した場合には、例えば、複合共振形コンバータによって効率よく安定化することが可能な交流入力電圧VACレベルの上限は、100V程度である。
そこで、従来から、スイッチング周波数制御方式により安定化を図るスイッチング電源回路をワイドレンジ対応化するための構成の1つとして、先に図18に示したようにして、前段に対してアクティブフィルタを備えれば良いことが知られている。すなわち、アクティブフィルタの出力側に発生する直流入力電圧(Ei)の値が略一定の値となるように制御するものである。
しかしながら、上述したように、アクティブフィルタ回路はハードスイッチング動作であることから、ノイズの発生レベルが非常に大きいものである。このために、コモンモードノイズ、ノーマルモードノイズのいずれに対しても比較的重度のノイズ抑制対策が必要となる。
更に、アクティブフイルタ回路と、複合共振形コンバータとのスイッチング周波数が異なっているために、お互いのアース電位の干渉や、構成部品の各々から生じる磁気の相互の磁気干渉を軽減する必要があるために、基板上における各々の部品の配置が制限を受け、更に各々の構成部品から流出するノイズ電流の経路を考慮してアースパターンの設計を行わなければならず、基板上におけるパターンの引き回しに困難があった。
また、別のワイドレンジ対応化のための構成としては、商用交流電源を入力して直流入力電圧(Ei)を生成する整流回路系について、AC100V系とAC200V系の商用交流電源入力に応じて、倍電圧整流回路と全波整流回路とで切り換えを行うように機能を与えるものとしても良い。この場合には、商用交流電源の電圧のレベルを検出して、その検出されたレベルに応じて、AC100V系では倍電圧整流回路とし、AC200V系では全波整流回路が形成されるように、電磁リレーを用いたスイッチにより、整流回路系における回路接続の切り換えを行うように回路を構成するものである。
しかしながら、このような整流回路系の切り換えの構成では、電磁リレーが必要になる。また、倍電圧整流回路を形成するために少なくとも2本1組の平滑コンデンサを設ける必要も生じる。このため、それだけ部品点数が増加してコストアップとなると共に、電源回路基板のマウント面積も拡大して大型化する。特に、これら平滑コンデンサや電磁リレーは、電源回路を形成する部品のうちでも大型であるから、基板サイズは相当に大きくなってしまう。
また、全波整流動作と倍電圧整流動作を切り換える構成とした場合において、AC200V系の商用交流電源が入力されているときに、瞬間停電が生じたり、また、交流入力電圧が定格以下に低下するなどして、AC200系に対応するよりも低いレベルとなると、AC100V系であると誤つて検出して倍電圧整流回路に切り換えるという誤動作が生じることがある。このような誤動作が生じると、AC200V系のレベルの交流入力電圧について倍電圧整流を行うこととなるために、例えばスイッチング素子Q1,Q2などが耐圧オーバーとなって破壊される可能性もある。
そこで、実際の回路としては、上述したような誤動作が生じないようにするために、メインとなるスイッチングコンバータの直流入力電圧だけではなく、スタンバイ電源側のコンバータ回路の直流入力電圧も検出する構成を採るようにされる。これにより、スタンバイ電源側のコンバータ回路を検出するための部品の追加などにより、上述したコストアップ、及び回路基板サイズの大型化が更に助長されてしまうことになる。
また、誤動作防止を目的としてスタンバイ電源側のコンバータの直流入力電圧を検出するということは、整流動作切り換えのための回路を備えるワイドレンジ対応の電源回路としては、メイン電源の他にスタンバイ電源を備える電子機器でなければ、実際に使用することができないということになる。つまり、電源を実装可能な電子機器の種類が、スタンバイ電源を備えたものに限定されるわけであり、それだけ利用範囲が狭くなる。
また、ワイドレンジ対応のための、更に別の構成として、AC100V系/AC200V系の商用交流電源入力に応じて、一次側の電流共振形コンバータの形式をハーフブリッジ結合とフルブリッジ結合とで切り換える構成とすることも知られている。
この構成であれば、例えば上述した瞬間停電などによって、AC200V系の交流入力電圧がAC100V系のレベルにまで低下して誤動作したとしても、スイッチング動作がハーフブリッジ動作からフルブリッジ動作となるだけであり、スイッチング素子などが耐圧オーバーになることはない。このためにスタンバイ電源側の直流入力電圧を検出する必要もなくなるので、スタンバイ電源を備えない電子機器に対しても採用することが可能となる。また、商用電源ラインにおける切り換えではないために、半導体スイッチによる回路形態の切り換えが可能であるので、電磁リレーのような大型のスイッチ部品は不要となる。
しかし、この構成では、AC100V系時に対応してフルブリッジ結合を形成するために、スイッチング素子を少なくとも4本備える必要がある。つまり、2本のスイッチング素子により形成可能なハーフブリッジ結合方式のみによるコンバータの構成と比較すれば、2本のスイッチング素子を追加する必要があることになる。
また、この構成の場合には、フルブリッジ動作では4個のスイッチング素子がスイッチング動作を行う。共振形コンバータは、低スイッチングノイズではあるが、このようにしてスイッチングを行うスイッチング素子数が増加するほどスイッチングノイズに関しては不利となる。
このようにして、ワイドレンジ対応として上述した何れの構成を採った場合にも、単レンジ対応の構成と比較した場合には、部品点数の増加などによる回路規模の拡大、コストアップがさけられない。また、前者の構成では機器への利用範囲の制限、後者の構成ではスイッチングノイズの増加など、それぞれ、単レンジ対応の構成では抱えていなかった固有の問題が生じる。
また、図1の電源回路から二次側直列共振回路を省略した複合共振形コンバータについて、スイッチング周波数の制御範囲が相応に広範囲となることに起因しては、二次側直流出力電圧Eoについての安定化の高速応答特性が低下するという問題も抱える。
例えば、電子機器によっては、最大負荷の状態とほぼ無負荷とされる状態のとの間で、負荷条件が瞬時的に切り換わるようにして変動する動作を伴うものがある。このような負荷変動は、スイッチング負荷ともいわれる。このような機器に搭載される電源回路としては、スイッチング負荷とされる負荷変動にも対応して二次側直流出力電圧が適正に安定化されるようにする必要がある。なお、スイッチング負荷としての動作を行う機器として、例えば、パーソナルコンピュータの周辺機器であるプリンタを挙げることができる。
しかしながら、先に図19によっても説明したようにスイッチング周波数の制御範囲が広範である特性を持つ場合には、スイッチング負荷のような負荷変動に対応して、二次側直流出力電圧を所要レベルとするためのスイッチング周波数にまで可変させるためには比較的長い時間を要することになる。つまり、定電圧制御の応答特性としては良好でない結果が得られることになる。
このような上述の種々のワイドレンジ化に対して、図1に示す本実施の形態の電源回路では、一次側と二次側とで、それぞれ直列共振回路(一次側直列共振回路、二次側直列共振回路)を備えることとしている。これにより、電流共振形コンバータを基とする電源回路として、スイッチング周波数制御のみの定電圧制御によりながらもワイドレンジ対応を可能とする。以下、この点について説明する。
図3の回路図は、図1に示す本実施の形態の電源回路について、一次側直列共振回路と二次側直列共振回路との関係によりみた場合の等価回路を示している。なお、この等価回路図において、図1と同一部分には、同一符号を付している。
この図3においては、破線でコンバータトランスPITを示し、一点鎖線で理想トランスITを示している。ここで、理想トランスITは1:nの巻線比(1:二次巻線N2の巻数/一次巻線N1の巻数)に応じて電圧を変換するものである。また、図3において、符号L1、符号L11、符号L1eは、それぞれ、一次巻線N1のリーケージ(漏洩)インダクタンス、力率改善用トランスVFTの一次巻線N11のインダクタンス、一次巻線N1の励磁インダクタンスを示す。また、符号L2、符号L2eは、それぞれ二次巻線N2のリーケージ(漏洩)インダクタンス、二次巻線N2の励磁インダクタンスを示すものである。
この図3に示す等価回路図において、コンバータトランスPITの一次側では、スイッチング周波数fsによる交流(周波数信号)が入力されている。つまり、一次側スイッチングコンバータ(スイッチング素子Q1,Q2)のスイッチング出力が入力となっている。
そして、コンバータトランスPITの一次側では、このスイッチング周波数fsによる交流の入力を、一次側直列共振回路に供給することになる。そして、この一次側直列共振回路の共振周波数fo1の値は、図3に示す等価回路に基づいて求められるものとなる。本実施の形態においては、共振周波数fo1の値は59kHzとした。
また、二次側直列共振回路の共振周波数fo2の値も同様に、図3に示す等価回路に基づいて求められるものとなる。本実施の形態においては、共振周波数fo2の値は84kHzとした。
ここで、図3に示す等価回路においては、コンバータトランスPITの電磁誘導を介して、一次側に一次側直列共振回路を備え、二次側に二次側直列共振回路を備えていることが示されている。従って、この図に示す回路は、電磁結合による結合形共振回路を形成しているものとしてみることができる。このために、図1に示す電源回路における二次側直流出力電圧Eoについての定電圧制御特性は、コンバータトランスPITの結合係数kに応じて異なるものとなる。この点について図4を参照して説明する。なお、ここにおいて一次側と二次側との総合結合係数Ktの値とコンバータトランスPITの結合係数kの値とは、コンバータトランスPITの1次巻線にインダクタンスが付加されていないとして説明しているので、同一の値となる。
図4は、図3の等価回路についての、入力(スイッチング周波数信号)に対する出力特性を示している。つまり、二次側直流出力電圧Eoについての制御特性をスイッチング周波数fsとの関係により示している。この図では、スイッチング周波数を横軸にとり、二次側直流出力電圧Eoのレベルを縦軸にとっている。
なお、図4の説明は、一次側直列共振回路の共振周波数fo1と二次側直列共振回路の共振周波数fo2の周波数関係がどのようなものであるかに関わらず当てはまる一般的なものである。図において、符号fo1及び符号fo2が括弧内に記載されているのは、共振周波数fo1と共振周波数fo2との周波数の上下関係によらず、図4に示す特性が成立することを示している。なお、図5における、括弧内に記載されている符号fo1及び符号fo2の意味も同様のものである。
ここで、総合結合係数Kt=1による密結合とされる状態を設定したとする。このような場合はコンバータトランスPIT自体の結合係数k(トランス結合係数)の値が1であると同時に、力率改善用トランスVFTのインダクタンスL11の値は0H(ヘンリー)でなければならない。すると、この場合の一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1、及び二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2は、それぞれ、(数1)(数3)に対してk=1を代入することで、(数5)を得ることができる。
つまり、コンバータトランスPITが密結合であることで、一次巻線N1及び二次巻線N2のリーケージインダクタンスは存在していない状態であることが示される。
このようにして、コンバータトランスPITの一次側と二次側とが密結合とされる状態での定電圧制御特性としては、図4の特性曲線1として示すように、一次側直列共振回路の共振周波数fo1と二次側直列共振回路の共振周波数fo2とは異なる周波数f1、f2において二次側直流出力電圧Eoがピークとなる、いわゆる双峰特性となる。ここで、周波数f1は、(数6)で表され、周波数f2は、(数7)で表される。
また、(数6)(数7)における項の1つであるfoは、一次側直列共振回路の共振周波数fo1と、二次側直列共振回路の共振周波数fo2との中間に存在する中間共振周波数であり、一次側のインピーダンスと二次側のインピーダンスと、一次側と二次側とで共通となるインピーダンス(相互結合インダクタンスM)により決定される周波数である。なお、相互結合インダクタンスMについては、(数8)で表される。
また、上述した結合係数kについて、k=1の状態から徐々に小さくしていったとする、つまり、密結合の状態から徐々に疎結合の度合いを高くしていったとすると、図4に示される特性曲線1は、双峰の傾向が徐々に希薄となって、中間共振周波数fo近傍で平坦化していくような変化を示す。そして、ある総合結合係数Ktにまで低下した段階で、いわゆる臨界結合の状態となる。この臨界結合の状態では、特性曲線2として示すようにして、双峰特性としての傾向ではなくなっており、中間共振周波数foを中心として曲線形状が平坦となる特性となる。
そして、更に、臨界結合の状態から結合係数kの値を小さくしていって、疎結合の状態を強めていったとすると、図4の特性曲線3として示すように、中間周波数foにおいてのみピークとなる単峰特性が得られる。また、この特性曲線3と、特性曲線1,2とを比較してみると、特性曲線3は、ピークレベルそのものは特性曲線1,2より低下するものの、その二次関数的な曲線形状として、より急峻な傾斜を有していることが分かる。
以上、コンバータトランス自体の結合係数であるトランス結合係数kのみを考慮して結合係数kと諸特性との関係を説明してきたが、コンバータトランスにインダクタンスが付加された場合には、(数6)ないし(数8)において用いた結合係数kに替えて一次側と二次側との間の総合結合係数Ktを用いれば同様に説明ができるものである。
本実施の形態のコンバータトランスPIT自体の結合係数k(トランス結合係数)の値は、0.74程度に設定されているが、総合結合係数Kt(一次側と二次側との間の結合係数)の値は0.64程度の疎結合の状態が設定されている。この総合結合係数Ktの設定においては、特性曲線3として示される単峰特性による動作となる。このように、一次側と二次側との総合結合係数Ktの値とコンバータトランスPIT自体の結合係数kの値とは、コンバータトランスPITの1次巻線にインダクタンスが付加されている場合には異なる値となる
図4に示す単峰特性と、先に図19に示した複合共振形コンバータの定電圧制御特性を実際に比較してみると、図4に対して図19に示した特性は、二次曲線的には相当に緩やかな傾斜となる。
上述のようにして図19に示す特性が曲線的に緩やかであることから、二次側直流出力電圧Eoについて定電圧制御を行うためのスイッチング周波数の必要制御範囲は、例えば単レンジ対応の条件下であっても、fs=80kHz〜200kHz以上でΔfs=120kHz以上となるため、スイッチング周波数制御による定電圧制御のみによって、ワイドレンジ対応とすることが非常に困難であることは、先に説明したとおりである。
また、このように広範囲にスイッチング周波数を変化させる場合には、コモンモードノイズに対するコモンモードノイズフィルタ及びノーマルモードノイズに対するノーマルモードフィルタのいずれも、このような広い範囲のスイッチング周波数に対応する広帯域のものとせねばならず、その実現が困難となる。更に、より高い周波数で電力用のスイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2を動作させなければならず、スイッチング損失が増加する点からも好ましいものではない。
これに対して、本実施の形態の定電圧制御特性としては、図4の特性曲線3により示される単峰特性であることで、定電圧制御動作としては、図5に示すものとなる。図5においては、図1に示す本実施の形態の電源回路についての、交流入力電圧VAC=100V時(AC100V系)における最大負荷電力(Pomax)時、最小負荷電力(Pomin)時の各特性曲線A,Bと、交流入力電圧VAC=230V時(AC200V系)における最大負荷電力(Pomax)時、最小負荷電力(Pomin)時の各特性曲線C,Dとの、4つの特性曲線が示されている。
この図5から分かるように、先ず、AC100V系の入力に対応する交流入力電圧VAC=100V時において、二次側直流出力電圧Eoを所要の定格レベルtgで定電圧化するために必要となるスイッチング周波数の可変制御範囲(必要制御範囲)は、Δfs1で示されることになる。つまり、特性曲線Aにおいてレベルtgとなるスイッチング周波数fsから、特性曲線Bにおいてレベルtgとなるスイッチング周波数fsまでの周波数範囲となる。
また、AC200V系の入力に対応する交流入力電圧VAC=230V時において、二次側直流出力電圧Eoを所要の定格レベルtgで定電圧化するために必要となるスイッチング周波数の可変制御範囲(必要制御範囲)は、Δfs2で示される。つまり、特性曲線Cにおいてレベルtgとなるスイッチング周波数fsから、特性曲線Dにおいてレベルtgとなるスイッチング周波数fsまでの周波数範囲となる。
前述したように、本実施の形態における二次側直流出力電圧Eoの制御特性である単峰特性は、先に図19に示した制御特性と比較して、二次関数曲線的に相当に急峻である。このために、上述した交流入力電圧VAC=100V時、VAC=230V時の各必要制御範囲となるΔfs1、Δfs2は、図19に示されるΔfsと比較して相当に縮小されたものとなっている。
そのうえで、Δfs1における最低スイッチング周波数(特性曲線Aにおいてレベルtgとなるスイッチング周波数fs)から、Δfs2における最高スイッチング周波数(特性曲線Aにおいてレベルtgとなるスイッチング周波数fs)までの周波数可変範囲(ΔfsA)としても、相応に狭いものとなっている。
ここで、図1に示す本実施の形態の電源回路における実際の周波数可変範囲ΔfsAは、現状におけるスイッチング駆動用IC(発振・ドライブ回路2)が対応するスイッチング周波数の可変範囲内に充分に収まるものとなっている。更には、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2も損失が少なく動作する周波数の範囲となっている。
つまり、図1に示す電源回路では、スイッチング周波数について、現実に、周波数可変範囲ΔfsAで可変制御することが可能とされている。そして、このことは、図1に示す電源回路が、AC100V系とAC200V系の何れの商用交流電源入力にも対応して、二次側直流出力電圧Eoを安定化可能であることを意味する。つまり、図1に示す電源回路は、スイッチング周波数制御のみによって、ワイドレンジ対応を可能としている。また、このようにして、必要制御範囲が縮小されることによっては、二次側直流出力電圧Eoを安定化する際の高速応答性が向上することとなって、例えば前述したスイッチング負荷といわれる負荷変動に対応して、良好な定電圧制御の性能が得られることになる。
ちなみに、電磁結合による結合形共振回路は、例えば中間周波トランス増幅器などのようにして、通信技術において、トランジスタによる増幅回路の増幅帯域幅を拡大するための手法として既に知られてはいる。しかしながら、このような分野では、密結合での双峰特性、或いは臨界結合での平担特性を用いているものであり、疎結合での単峰特性は用いられてはいない。本実施の形態では、このような電磁結合による結合形共振回路の技術において、通信技術の分野では採用されていなかった疎結合での単峰特性を、共振形スイッチングコンバータの分野において積極的に用いている、ということがいえる。これにより、上述のようにして、二次側直流出力電圧Eoを安定化するために必要なスイッチング周波数の可変範囲(必要制御範囲)を縮小し、スイッチング周波数制御での定電圧制御のみによるワイドレンジ対応を可能としているものである。
ところで、本実施の形態における総合結合係数Kt=0.64程度の疎結合の状態を、力率改善用トランスVFTの一次巻線N11のインダクタンスL11を含めることなく、コンバータトランスPITの構造のみにより得ようとするのであれば、例えばコンバータトランスPITのEE型コアの内磁脚のギャップGについて、更に拡大して、コンバータトランスPITそのものを、結合係数k=0.64程度またはそれ以下の疎結合トランスとして構成することになる。
このような構成を採ることによっても、図4にて説明した単峰特性を得ることができるので、図5にて説明したようにして、スイッチング周波数の必要制御範囲が縮小され、AC100V系とAC200V系の商用交流電源入力に対応して二次側直流電圧の安定化を図ることができる。
しかしながら、このようなコンバータトランスPITの構造とした場合、コンバータトランスPITのコアのギャップG近傍における渦電流損失の増加が支配的になってきて、この影響によってAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)の低下が生じることになる。この渦電流損失に起因するAC→DC電力変換効率の低下傾向は、交流入力電圧VACのレベルが上昇するのに応じて顕著となる。従って、ワイドレンジ対応の電源回路としては、AC100V系で使用しているときよりもAC200V系で使用したときにAC→DC電力変換効率が低下するという問題を生じることになる。
ただし、上述した渦電流損失の増加は、例えば最大負荷電力(Pomax)=150W以下程度までの負荷条件では許容範囲であるために、上述したように、コンバータトランスPITのみによって結合係数k=0.64程度またはそれ以下の疎結合の状態を設定したとしても、実用可能なワイドレンジ対応の電源回路を得ることができる。しかし、本実施の形態のようにして、最大負荷電力(Pomax)=200W程度にまで対応すべき場合には、上述した渦電流損失の増加が無視できない程度に顕著となってくる。このために、コンバータトランスPIT自体について結合係数k=0.64程度またはそれ以下に設定してワイドレンジ対応の電源回路として実用化するのは困難になってくる。
そこで本実施の形態では、前述もしたように、力率改善用トランスVFTの一次巻線N11のインダクタンスL11を一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1に直列に接続することによって一次側のリーケージインダクタンスの値を等価的に増加させ、これにより、電源回路内におけるコンバータトランスPITの総合結合係数Ktの値として0.64程度を設定するようにしている。
この場合、コンバータトランスPIT自体の結合係数kとしては、k=0.74程度を設定することができるので、ギャップGのギャップ長としても、前述したように、2.0mm程度とすることができる。つまり、渦電流の増加の問題が生じない程度の一定以下のギャップ長に抑えることができる。
また、力率改善用トランスVFTの一次巻線N11のインダクタンスL11を総合結合係数Ktを小さくするための付加的なインダクタンスとして用いているので、部品の点数を増やすことなくスイッチング電源回路の小型化が図れる。
これにより、実施の形態の電源回路としては、上述した渦電流損失の増加の問題は解消されるため、これに起因するAC→DC電力変換効率の低下も生じないことになる。従って、AC200V系時での使用においても、ワイドレンジ対応の電源回路として実用的な程度に良好なAC→DC電力変換効率特性が得られることになる。
以下に、図6、図7に各部の動作波形を示し、図8に特性図を示すが、これらを得るにあたっては、図1に示す回路の要部に係る定数及び部材を次のように選定した。
先ず、コンバータトランスPITについては、EER−39型のフェライトコアを選定し、ギャップGのギャップ長については、2mmとした。また、各巻線の巻数(ターン数:T)としては、一次巻線N1=24T、二次巻線N2=26Tとした。この構造により、上述したように、コンバータトランスPIT自体の結合係数kの値として0.74を得ている。なお、二次巻線N2における1ターン(T)あたりの誘起電圧レベルについては、5V/T以上となる所定値を設定した。
また、力率改善用トランスVFTについては、EE−25型のフェライトコアを選定し、ギャップGの値は、0.6mm、力率改善用トランスVFTの一次巻線N11のインダクタンスL11については、L11=43μH(マイクロヘンリー)、二次巻線N12のインダクタンスL12については、L12=23μH(マイクロヘンリー)を設定した。フィルタコンデンサCNについては1μF(マイクロファラッド)とした。
また、多重複合共振形を形成するための各共振コンデンサについては、下記のように選定した。
・ 一次側直列共振コンデンサC1=0.056μF(マイクロファラッド)
・ 二次側直列共振コンデンサC2=0.027μF(マイクロファラッド)
・ 一次側直列共振コンデンサC1=0.056μF(マイクロファラッド)
・ 二次側直列共振コンデンサC2=0.027μF(マイクロファラッド)
また、商用交流電源の入力条件としては交流入力電圧VAC=85V〜290Vのワイドレンジ入力としたうえで、負荷条件は、二次側直流出力電圧Eoについては、Eo=135Vとし、負荷電力Poの最大値である最大負荷電力(Pomax)の値は200Wとした。
図6の波形図は、力率改善回路10の動作を、商用交流電源周期により示している。この図6では、交流入力電圧VAC、交流入力電流IACの各波形について、AC100V系に対応するVAC=100V時の動作を図6(a)に示し、AC200V系に対応するVAC=230V時の動作を図6(b)に示している。
図6(a)(b)に示すようにして、VAC=100V/230V時のそれぞれにおいて、交流入力電圧VACが入力されて、スイッチングコンバータが動作するのに応じて、先に説明したようにして、力率改善回路10では、一次側直列共振回路からの電力回生が行われて力率改善動作を実行することになる。図6には、力率改善回路10の力率改善動作の結果として得られる交流入力電流IACが示されている。この交流入力電流IACは、例えば力率改善回路10を備えない場合よりも、その導通期間(導通角)が拡大されている。また、この場合の交流入力電流IACのエンベロープ波形は、図示するようにして半波の正弦波状となる。
また、図7は、図1に示した電源回路の要部の動作波形を、スイッチングコンバータのスイッチング周期により示す波形図である。なお、この図において、図7(a)では交流入力電圧VAC=100V時での動作波形を示し、図7(b)では交流入力電圧VAC=230V時の動作波形を示している。また、更に図7(a)(b)の各図では、それぞれ負荷電力Po=200W時とPo=0W時での動作波形を示している。なお、負荷電力Po=200W、負荷電力Po=0Wは、それぞれ実施の形態の電源回路における最大負荷電力(Pomax)、最小負荷電力(Pomin)である。
また、この図7の説明にあたり、図1に示す電源回路における一次側直列共振回路の共振周波数fo1と、二次側直列共振回路の共振周波数fo2の実際について言及しておく。
これら一次側直列共振回路の共振周波数fo1と、二次側直列共振回路の共振周波数fo2については、先に説明したようにして、コンバータトランスPITにインダクタンスL11を付加し、また、一次側直列共振コンデンサC1の値を上述のように選定し、fo1=59kHz程度を設定し、二次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスなど上述の値に選定したことにより、fo2=84kHz程度を設定している。つまり、1例として、fo2≒fo1×1.4の関係が得られるように各共振回路の共振周波数を設定することとしている。
図7において、矩形波状の電圧V1は、スイッチング素子Q2の両端電圧であり、スイッチング素子Q2のオン/オフタイミングを示す。この電圧V1は、スイッチング素子Q2が導通してオンとなるオン期間では0レベルとなり、非導通となるオフ期間においては、整流平滑電圧Eiのレベルでクランプされる波形となる。
スイッチング素子Q2のオン期間においては、スイッチング素子Q2及びダンパーダイオードDD2 から成るスイッチング回路系には、図示する波形によるスイッチング電流IQ2が流れる。また、スイッチング電流IQ2は、スイッチング素子Q2のオフ期間においては0レベルとなる。
また、図示していないが、他方のスイッチング素子Q1の両端電圧、及びスイッチング回路(Q1,DD1)に流れるスイッチング電流としては、電圧V1、及びスイッチング電流IQ2の位相を180°シフトした波形として得られる。つまり、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とは、交互にオン/オフするようにして同じ周期タイミングでスイッチング動作を行う。
なお、一次側直列共振回路(L1−C1)を流れる一次側直列共振電流としては、これらのスイッチング回路(Q1,DD1)(Q2,DD2)に流れるスイッチング電流が合成された成分(図示せず)として流れる。
電圧V1及びスイッチング電流IQ2により示される一次側のスイッチング動作により、コンバータトランスPITの二次巻線N2が誘起されて、二次側直列共振回路が動作することになる。二次巻線N2には、この二次側直列共振回路の共振動作に応じた周期の交番電圧が発生する。
ここで、コンバータトランスPITの二次巻線N2(電気的には二次巻線N2のリーケージインダクタンス成分(L2))及び二次側直列共振コンデンサC2から成る二次側直列共振回路には、ブリッジ接続された整流ダイオードDo1ないし整流ダイオードDo4から成るブリッジ整流回路の、1方の入力端(整流ダイオードDo1のアノードと整流ダイオードDo4のカノードの接続点)及びブリッジ整流回路の他方の入力端(整流ダイオードDo3のアノードと整流ダイオードDo2のカノードの接続点)とが接続されいる。また、ブリッジ整流回路の、1方の出力端(整流ダイオードDo1のカソードと整流ダイオードDo3のカノードの接続点)及びブリッジ整流回路の他方の出力端(整流ダイオードDo2のアノードと整流ダイオードDo4のアノードの接続点)には平滑コンデンサCoが接続され、平滑コンデンサCoの負極端子は、二次側アース電位とし、平滑コンデンサCoの正極端子と負極端子との両端から二次側直流出力電圧を得るようになされている。
すなわち、整流ダイオードDo1ないし整流ダイオードDo4及び平滑コンデンサCoは二次側直流出力電圧生成手段の1例である全波整流回路を構成する。なお、整流ダイオードDo1ないし整流ダイオードDo4の各々のアノードとカソードを入れ替え(具体的には、上述の記載において、括弧外の記載として読んだものを括弧内の記載に読み替える)、平滑コンデンサCoの極性を入れ替えることにより二次側直流出力電圧は正極性にも負極性にもできるものである。
二次側直列共振回路からの交番電圧(二次側直列共振回路の出力)を入力して動作する二次側整流回路においては、交番電圧が正極性となる半周期において整流ダイオード[Do1、Do2]の組が導通して平滑コンデンサCoに整流電流を充電し、負極性となる半周期において整流ダイオード[Do3、Do4]の組が導通して平滑コンデンサCoに整流電流を充電する動作が得られる。
このような動作が行われることで、二次側の整流電流経路を流れる二次側整流電流I2としては、図7に示すように、正極性により流れる期間と負極性により流れる期間とが周期的に交互に現れる波形となる。(各図Pomax時参照)。この二次側整流電流I2は、最小負荷電力(Pomin)=0W時には0レベルとなる。
ここで、これら図7(a)と図7(b)を比較してみると、先ず、図7(b)に示される交流入力電圧VAC=230V、最大負荷電力(Pomax)=200W時の波形図においては、一次側のスイッチング電流IQ2の導通期間内に二次側整流電流I2の導通期間が収まっている。この状態は、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力として一次側直列共振回路に流れる一次側直列共振電流と、二次側整流電流I2との位相が一致している状態とみることができる。
これに対して、図7(a)に示される交流入力電圧VAC=100V、最大負荷電力(Pomax)=200W時では、スイッチング電流IQ2の導通期間内に二次側整流電流I2の導通期間が収まっていない状態で、周期的に流れている状態にある。つまり、交流入力電圧VAC=100V、最大負荷電力(Pomax)=200Wの条件においては、一次側直列共振電流に対して、二次側整流電流I2が一定の位相差を有している状態であるということがいえる。
このような位相差は、先に述べたように、一次側直列共振回路の共振周波数fo1と二次側直列共振回路の共振周波数fo2について、fo2≒fo1×1.4の関係が得られるように設定したことにより生じるものである。逆に言えば、一次側直列共振回路の共振周波数fo1と二次側直列共振回路の共振周波数fo2は、一定以下の交流入力電圧VACのレベルと、一定以上の重負荷の条件において、一次側直列共振電流と二次側整流電流I2との間で一定の位相差が得られるようにして設定されている。
このようにして、本実施の形態としては、各共振周波数fo1、fo2の設定により、交流入力電圧VAC=100V・負荷電力Pomax=200Wの条件のもとで、スイッチング電流IQ2と二次側整流電流I2とについて一定の位相差を生じさせている。これにより、交流入力電圧VAC=230V時(AC200V系時)で最大負荷電力(Pomax)(200W)時の条件では、スイッチング電流IQ2のピークレベルが有効に抑制されるという実験結果が得られた。
なお、このように交流入力電圧VAC=230V時でのスイッチング電流IQ2のピークレベルの抑制が図られていることは、図7(a)における最大負荷電力(Pomax)時のスイッチング電流IQ2のピークレベルと最小負荷電力(Pomin)=0W時のスイッチング電流IQ2のピークレベルの比(Lv1/Lv2)に対して、図7(b)における最大負荷電力(Pomax)時のスイッチング電流IQ2のピークレベルと最小負荷電力(Pomin)=0W時のスイッチング電流IQ2のピークレベルの比(Lv3/Lv4)の方が小さくなっていることによっても示されている。
このようにして、スイッチング電流IQ2のピークレベルが抑制されることによっては、一次側直列共振回路を流れる一次側直列共振電流(Io)のピークレベルとしてもその抑制が図られる。そして、一次側直列共振電流のピークレベルの抑制が図られることによっては、各スイッチング素子Q1、Q2を流れる電流レベルが抑制されることになるので、スイッチング素子Q1、Q2におけるスイッチング損失も低減されることになる。
つまり、図1の電源回路においては、特に交流入力電圧レベルが高く、かつ重負荷となる傾向の条件において、従来よりも電力損失が低減されているものであり、電源回路としての電力変換効率特性の向上が図られているということがいえる。
なお、上述のようにして、共振周波数fo1、fo2を設定した場合、図7に示されるように、交流入力電圧VAC=100V/最大負荷電力(Pomax)=200W時のスイッチング電流IQ2(一次側直列共振電流)の波形は略正弦波状となる。またVAC=230Vであって、最大負荷電力(Pomax)=200W時のスイッチング電流IQ2(一次側直列共振電流)の波形のピーク部分は略M字状となる。
また、本実施の形態では、共振周波数fo1、fo2についてfo2≒fo1×1.4の関係が得られるように設定する例を挙げたが、上述のような効果を得るにあたって設定されるべき共振周波数fo1と共振周波数fo2の値の関係はこれに限定されるものでなく、実際には、例えば対応する負荷条件等により適宜変更されて構わない。
すなわち、例えば、実際に必要とされるまでに一次側直列共振電流のピークレベルが抑制される状態が得られるように、一定以下の交流入力電圧範囲で、かつ、一定以上の重負荷とされる条件において、一次側直列共振電流と二次側整流電流について一定の位相差が得られるように、共振周波数fo1と共振周波数fo2の値が設定されればよいものである。
ここで、、二次側直流出力電圧生成手段として、全波整流回路で代表される、二次巻線の誘起電圧の正負の各期間において二次巻線全体において整流電流が流れる形式の整流回路を用いることによっては、次のような問題も解消している。
先ず、両波整流回路とした場合、図18の電流共振形コンバータの二次側としても示すように、二次巻線N2にはセンタータップが設けられ、2つの二次巻線部N2A,N2Bが形成されることになる。そして、これら2つの二次巻線部において、二次巻線N2に励起される交番電圧の一方の半周期においては、整流電流は[二次巻線部N2A→整流ダイオードDo1→平滑コンデンサCo→二次巻線部N2A]の経路で流れる。また、上述の交番電圧の他方の半周期には、整流電流は[二次巻線部N2B→整流ダイオードDo2→平滑コンデンサCo→二次巻線部N2B]を介して流れる。つまり両波整流において、2つの二次巻線部としては、一方の半周期には一方にのみ電流が流れ、他方には流れないという状態となる。
このような両波整流動作によると、コンバータトランスPITのボビンに対してそれぞれ巻装された二次巻線部N2Aと二次巻線部N2Bとの間には、所要の静電容量が存在することとなる。そして、このように線間静電容量が存在していることにより、この場合のコンバータトランスPITの二次側においては、等価的には二次巻線N2に対して並列にコンデンサCvが接続された状態となる。
二次巻線N2に対して並列にコンデンサCvが接続されることで、この場合は二次側においても二次巻線N2のリーケージインダクタンスとコンデンサCvのキャパシタンスとによる、並列共振回路が形成されることと等価の状態が得られる。
ちなみに、コンデンサCvのキャパシタンスとしては、二次巻線N2として用いるリッツ線の束数と、二次巻線N2が巻装されるボビンの窓面積によって決定されるものであるが、例えば図18に示した電流共振形コンバータの設計仕様では、およそ100pF〜500pF程度と微少なもとなっている。
そして、このように二次側においても並列共振回路が形成されることで、定電圧制御特性の実際としては、図19に示したものから図20に示すようなものとなる。図20において、先ず、上述のように二次側に対しても並列共振回路が形成されることで、一次側の直列共振回路の共振周波数をfo1とした場合、二次側の並列共振回路の共振周波数fov2が存在することになる。
そして、このように異なる共振点が2つ存在するようにされることで、特にPomin時(軽負荷時)における特性曲線としては、一次側の共振周波数fo1に応じてピークと二次側の共振周波数fov2に応じたピークとの2つのピークを持つ、図のような双峰曲線が得られることになる。
この場合、コンデンサCvのキャパシタンスとしては、上述したように比較的微少とされることで、重負荷の条件で二次側直流出力電圧Eoのレベルが比較的低くなる傾向とされているときは、二次側の共振点は顕在化しない(Pomax時の特性曲線)。しかし、軽負荷の傾向となって、無負荷の状態に近づくことによっては、二次側直流出力電圧Eoが急激な上昇傾向となることに伴って、二次側の共振点が顕在化するかの如く、図中Po=0時の特性曲線のような双峰の特性曲線が得られる。
この双峰の特性曲線と、先の図19における同じPo=0W時の特性曲線を比較すると、図20に示される双峰曲線の方が、単峰の曲線とされた場合よりも、無負荷時のスイッチング周波数がより高くなる傾向となることが理解できる。そして、これによれば、各図のΔfsを比較してわかるように、図20の双峰となる方がスイッチング周波数の必要制御範囲Δfsがより広範となる。
このようにして、二次側整流回路として両波整流回路を備えた場合は、二次側において等価的に形成される並列共振回路の共振回路による共振点の存在に起因して、必要制御範囲Δfsが拡大する。これまで説明した二次側の構成を採る本実施の形態の電源回路としては、上述したコンデンサCvは形成されず、従って、二次側並列共振の形成に起因する必要制御範囲Δfsの拡大要素が排除されているものである。
また、図8は、図1に示した電源回路ついての実験結果として、最大負荷電力(Pomax)=200W〜最小負荷電力(Pomin)=0W(無負荷)の範囲での負荷変動に対する整流平滑電圧(直流入力電圧)Ei、力率(PF)、及びAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)の特性を示している。この図においては、AC100V系に対応する交流入力電圧VAC=100V時の特性を実線で示し、AC200V系に対応する交流入力電圧VAC=230V時の特性を破線で示している。
先ず、図8に示されるように、スイッチングコンバータの直流入力電圧となる整流平滑電圧Eiは、交流入力電圧VAC=100V時の条件では、最大負荷電力(Pomax)=200W時には約135Vで、ここから軽負荷の状態となっていくのに応じて上昇傾向となり、最小負荷電力(Pomin)=0W時には、約175Vとなる。また、交流入力電圧VAC=230V時の条件では、最大負荷電力(Pomax)=200W時には約318Vで、ここから軽負荷の状態となっていくのに応じて上昇傾向で、最小負荷電力(Pomin)=0W時には、約342Vとなる。
電力回生方式の力率改善回路を備える電源回路の場合、整流平滑電圧Eiは、一定の軽負荷から無負荷となるまでの負荷変動範囲では、急峻に上昇していく特性となるのが一般的である。これに対して、本実施の形態では、負荷変動に対する整流平滑電圧Eiの変動(ΔEi)は、上述しているように、交流入力電圧VAC=100V時では、ほぼ40V、230V時では、ほぼ24V程度にまで抑制されている。
これは、図1に示す電源回路では、一次側直列共振回路に流れる電流(一次側直列共振電流)は、軽負荷の傾向となるのに応じてレベルが低下する動作となっていることによる。つまり、軽負荷の傾向となるのに応じて一次側直列共振電流レベルが低減していくことで、一次側直列電流を元として力率改善回路10に帰還される電力量も低減し、これが平滑コンデンサCiに対する充電電流レベルの低減を生じる。これにより、無負荷−軽負荷傾向時の整流平滑電圧Eiの上昇が抑制されることになる。整流平滑電圧Eiの変動が抑制されれば、平滑コンデンサCiなどの部品素子について、これまでよりも低耐圧のものを選定することが可能となって、例えば部品の小型化、コストダウンにつながる。また、二次側直流出力電圧安定化のための必要制御範囲の縮小効果も得られる。
また、力率改善回路10の動作に応じて得られる力率PFについては、先ず、交流入力電圧VAC=100V時では、重負荷となるのに従って100W程度の電力値までは高くなり、その後低下し、再び最大負荷電力(Pomax)=200Wまでは力率が向上する傾向となっている。最大負荷電力Po=200W時の特性として、PF=0.89が得られている。
また、交流入力電圧VAC=230V時では、重負荷となるのに従って150W程度の電力値までは高くなり、その後低下する傾向となっている。ちなみに、最大負荷電力(Pomax)=200W時の特性として、力率PFの値は0.78となっている。
このような力率PFの値によれば、電源高調波歪み規制をクリアすることができ、実用上充分な力率が得られているといえる。
また、AC→DC電力変換効率(ηAC→DC)については、先ず、交流入力電圧VAC=100V時では、負荷電力Poが重負荷の傾向となっていくのに従って150W程度までは高くなり、それ以上から最大負荷電力Po=200Wまでは若干低下する傾向とみることができ、最大負荷電力(Pomax)=200Wの負荷条件では、ηAC→DC=89.0%となっている。
また、交流入力電圧VAC=230V時では、負荷電力Poが重負荷の傾向となっていくのに従って高くなり、最大負荷電力(Pomax)=200Wの負荷条件では、ηAC→DC=91%となっている。
また、図9(a)には、交流入力電圧VAC=100V時における二次側直流出力電圧Eoに含まれるリップル電圧ΔEoを示している。最大負荷電力Po=200Wの負荷条件の下での、リップル電圧ΔEoのピーク・ツー・ピーク電圧は100mV(ミリボルト)である。なお、整流平滑電圧(直流入力電圧)Eiに含まれるリップル電圧ΔEiのピーク・ツー・ピーク電圧は35Vであった。
また、図9(b)には、交流入力電圧VAC=230V時における二次側直流出力電圧Eoのリップル電圧ΔEoを示している。最大負荷電力Po=200Wの負荷条件の下での、二次側直流出力電圧Eoのリップル電圧ΔEoのピーク・ツー・ピーク電圧は60mV(ミリボルト)である。なお、整流平滑電圧(直流入力電圧)Eiのリップル電圧ΔEiのピーク・ツー・ピーク電圧は30Vであった。
ここで、これまでに説明した実施の形態の電源回路と、同じ力率改善及びワイドレンジ対応化を図る先行技術である、図18に示した電源回路とを比較した場合には、次のようなことがいえる。
先ず、先の図6による実験結果からもわかるように、図1に示した電源回路では、図18の電源回路の場合よりも、AC100V系時及びAC200V系時の電力変換効率が向上するものとなる。これは、電圧帰還方式による力率改善改善回路を備える構成とし、更にスイッチング周波数の可変制御のみで安定化を図るワイドレンジ対応の構成としたことで、アクティブフィルタを不要としたことによる。すなわち、本実施の形態では、アクティブフィルタを備える場合のように前段と後段の2つの電力変換効率値により総合効率が低下することはない。
また、図1に示した回路では、アクティブフィルタを不要としたことで、回路構成部品点数の削減が図られる。つまりアクティブフィルタは、1組のコンバータを構成するものであり、図19についての説明からも分かるように、実際には、1本のスイッチング素子と、これらを駆動するためのIC等を始め、多くの部品点数により構成される。
これに対し図1に示す電源回路においては、力率改善及びワイドレンジ対応のために必要な追加部品として、少なくともフィルタコンデンサCN、スイッチングダイオードD1、力率改善用トランスVFT、二次側直列共振コンデンサC2を備えればよく、アクティブフィルタと比較すれば非常に少ない部品点数とすることができる。
これにより、図1に示す電源回路としては、力率改善機能を有するワイドレンジ対応の電源回路として、図19に示す回路よりもはるかに低コストとすることができる。また、部品点数が大幅に削減されることで、回路基板についても有効に小型軽量化を図ることができる。
また、図1に示す電源回路では、共振形コンバータ及び力率改善回路10の動作はいわゆるソフトスイッチング動作であるから、図19に示したアクティブフィルタと比較すればスイッチングノイズのレベルは大幅に低減される。
このため、図1にも示したように、各1組のコモンモードチョークコイルCMCとアクロスコンデンサCLから成る1段のノイズフィルタを備えれば、電源妨害規格をクリアすることが充分に可能とされる。また、整流出力ラインのノーマルモードノイズについては、図1にも示しているように、1つのフィルタコンデンサCNのみにより対策を行っている。このようにしてノイズフィルタとしての部品点数が削減されることによっても、電源回路のコストダウンと、回路基板の小型軽量化は促進される。
また、図1に示す電源回路の場合、一次側のスイッチングコンバータを形成する各スイッチング素子Q1,Q2は、同期してスイッチング動作するものである。従って、一次側アース電位としては、図19の電源回路のように、アクティブフィルタ側と、その後段のスイッチングコンバータとの間で干渉することが無いものとできる。これにより、例えば図19の電源回路で問題となる異常発振の問題も解消されることになる。
このようにして図1に示す本実施の形態の電源回路は、アクティブフィルタを備える電源回路が有する各種の問題を解決したうえで、力率改善機能を有するワイドレンジ対応の電源回路を得ているものである。
続いては、本発明に基づくスイッチング電源回路についての二次側直列共振回路及び二次側直流出力電圧生成手段のバリエーションを、実施の形態として示しておくこととする。なお、図10ないし図12には、一次側直列共振コンデンサC1、コンバータトランスPIT、並びに、二次側直列共振回路及び二次側直流出力電圧生成手段のいくつかの実施の形態のみが示されている。これら以外の他の部分については、図1の電源回路と同様であるので、図示は省略している。
図10は、二次側直流出力電圧生成手段の1例である倍電圧半波整流回路を示している。
この倍電圧半波整流回路は、二次巻線部の端部に対して、二次側直列共振コンデンサC2が接続され、二次巻線部N2の漏洩インダクタンス成分と、二次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスとにより二次側直列共振回路を形成している。
そして、二次巻線部N2と二次側直列共振コンデンサC2からなる二次側直列共振回路に対して、整流ダイオードDo2が並列に接続され、整流ダイオードDo2のカソード(またはアノード)に整流ダイオードDo1のアノード(またはカソード)が接続されている。
そして、整流ダイオードDo1のカソード(またはアノード)と整流ダイオードDo2のアノード(またはカソード)との間に平滑コンデンサCoが接続されている。すなわち、整流ダイオードDo1のカソード(またはアノード)と平滑コンデンサCoの正極端子(または負極端子)が接続され、整流ダイオードDo2のアノード(またはカソード)と平滑コンデンサCoの負極端子(または正極端子)とが接続される。そして、平滑コンデンサCoの負極端子は二次側アース電位とされている。
上述のようにして形成される倍電圧半波整流回路では、先ず二次巻線N2に励起される交番電圧の一方の半周期に整流ダイオードDo2が導通して、整流電流を二次側直列共振コンデンサC2に対して充電する動作が得られる。これによって二次側直列共振コンデンサC2の両端には、二次巻線N2に励起(誘起)される交番電圧レベルの等倍に対応したレベルによる電圧が生成される。そして、他方の半周期では、整流ダイオードDo1が導通することで、平滑コンデンサCoに対しては、二次巻線N2に得られる交番電圧レベルと、二次側直列共振コンデンサC2の両端電圧とが重畳された電圧レベルにより充電が行われる。
これによって平滑コンデンサCo1の両端電圧としては、二次巻線N2に励起される交番電圧レベルの2倍に対応したレベルによる整流平滑電圧Eoが得られることになる。この整流動作では、平滑コンデンサCoに対しては、二次巻線N2に励起される交番電圧の一方の半周期にのみ充電が行われる。つまり、倍電圧半波としての整流動作が得られている。なお、整流ダイオードDo1及び整流ダイオードDo2の各々のアノードとカソードを入れ替え、平滑コンデンサCoの極性を入れ替えることにより二次側直流出力電圧は正極性にも負極性にもできるものである。
上述の倍電圧半波整流回路によれば、力率改善効果、AC→DC電力変換効率の値が、力率改善用トランスVFTの一次側と二次側の結合係数や、一巻線N11の巻数に依存する一次巻線N11のインダクタンスL11の値及びコンバータトランスPIT自体の結合係数kの値によって影響を受ける本実施の形態においては、一旦最適化したこれらの関係を維持した1次側の構成をそのまま用い、二次側直流出力電圧生成手段の変更のみで二次側の電圧を2倍にできるという大きな効果を有する。更にまた、倍電圧を二次側で得ることによって、コンバータトランスPITの二次巻線N2の巻数を、倍電圧整流回路を用いない場合に比べて半分にできる。
図11は、二次側直流出力電圧生成手段の別の1例である倍電圧全波整流回路を示している。なお、二次側直列共振回路の構成も二次側直流出力電圧生成手段に伴い異なったものとなっている。
このような倍電圧全波整流回路を用いるに際しては、先ずコンバータトランスPITの二次巻線N2にセンタータップが設けられている。このセンタータップは、二次巻線N2を二次巻線部N2Aと二次巻線部N2Bとに分割し、二次巻線部N2Aと二次巻線部N2Bとにおける巻線の巻数は等しいものである。
そして、二次巻線部N2Aのセンタータップ側ではない端部に対して、二次側直列共振コンデンサC2Aが接続され、二次巻線部N2Aの漏洩インダクタンス成分と、二次側直列共振コンデンサC2Aのキャパシタンスとにより第1の二次側直列共振回路を形成している。また、二次巻線部N2Bのセンタータップ側ではない端部に対して、二次側直列共振コンデンサC2Bが接続され、二次巻線部N2Aの漏洩インダクタンス成分と、二次側直列共振コンデンサC2Bのキャパシタンスとにより第2の二次側直列共振回路を形成している。
ここで、第1の二次側直列共振回路と第2の二次側直列共振回路の共振周波数は、本実施形態においては略同一とした。なお、センタータップ側に二次側直列共振コンデンサC2Aまたは二次側直列共振コンデンサC2Bを接続しない理由は、倍電圧全波整流を行うに際して、二次側直列共振コンデンサC2Aと二次側直列共振コンデンサC2Bとに異なる極性の電圧を保持する必要があるからである。
二次巻線部N2Aと二次側直列共振コンデンサC2Aからなる第1の二次側直列共振回路に対して、整流ダイオードDo4が並列に接続され、整流ダイオードDo4のカソード(またはアノード)に整流ダイオードDo1のアノード(またはカソード)が接続されている。また、二次巻線部N2Bと二次側直列共振コンデンサC2Bからなる第2の二次側直列共振回路に対して、整流ダイオードDo2が並列に接続され、整流ダイオードDo2のカソード(またはアノード)に整流ダイオードDo3のアノード(またはカソード)が接続されている。
そして、整流ダイオードDo1のカソード(またはアノード)と整流ダイオードDo4のアノード(またはカソード)との間、すなわち、整流ダイオードDo3のカソード(またはアノード)と整流ダイオードDo2のアノード(またはカソード)との間に平滑コンデンサCoが接続されている。
具体的には、整流ダイオードDo1のカソード(またはアノード)と整流ダイオードDo3のカソード(またはアノード)との接続点が、平滑コンデンサCoの正極端子(または負極端子)に対して接続され、整流ダイオードDo4のアノード(またはカソード)と整流ダイオードDo2のアノード(またはカソード)との接続点が、平滑コンデンサCoの負極端子(または正極端子)に対して接続される。この場合も、平滑コンデンサCoの負極端子は二次側アースに接続される。
上述の接続形態とされる倍電圧全波整流回路では、二次巻線N2に励起される交番電圧の一方の半周期において、整流電流は[二次巻線部N2A→整流ダイオードDo4→二次側直列共振コンデンサC2A→二次巻線部N2A]の循環経路により流れる。また、二次巻線N2に励起される交番電圧の他方の半周期では、整流電流は[二次巻線部N2B→整流ダイオードDo2→二次側直列共振コンデンサC2B→二次巻線部N2B]の循環経路により流れる。つまりこの場合、二次側直列共振コンデンサC2A、二次側直列共振コンデンサC2Bには、それぞれ対応する半周期において、二次巻線部N2A、二次巻線部N2Bに励起される交番電圧レベルの等倍に対応したレベルによる直流電圧がそれぞれ得られるようになっている。
その上で、二次巻線N2に励起される交番電圧の上述した一方の半周期では、整流電流は上述の循環経路から分岐して[二次巻線部N2B→二次側直列共振コンデンサC2B→整流ダイオードDo3→平滑コンデンサCo]の経路によっても流れる。これにより当該半周期には、平滑コンデンサCoに対し、二次巻線部N2Bの交番電圧と、上述のように二次側直列共振コンデンサC2Bに得られた両端電圧が重畳したレベルにより充電が行われる。すなわち、平滑コンデンサCoの両端電圧としては、二次巻線部に得られる交番電圧レベルの2倍に対応するレベルが得られる。
また、二次巻線N2に励起される交番電圧の上述した他方の半周期では、整流電流は上述した循環経路から分岐して[二次巻線部N2A→二次側直列共振コンデンサC2A→整流ダイオードDo1→平滑コンデンサCo]の経路によっても流れ、従ってこの場合も平滑コンデンサCoの両端電圧としては、二次巻線部N2Aの交番電圧と二次側直列共振コンデンサC2Aの充電分とにより、二次巻線部に得られる交番電圧レベルの2倍に対応するレベルが得られることになる。なお、整流ダイオードDo1ないし整流ダイオードDo4の各々のアノードとカソードを入れ替え、平滑コンデンサCoの極性を入れ替えることにより二次側直流出力電圧は正極性にも負極性にもできるものである。
このような整流動作から、この場合の整流回路においては、平滑コンデンサCoに対し、二次巻線N2に得られる交番電圧の各半周期に充電を行う動作が得られることになる。そして、その両端電圧としては、上述のようにして二次巻線部に誘起される交番電圧の2倍に対応するレベルが得られる。つまり、倍電圧全波整流動作が得られている。
力率改善効果、AC→DC電力変換効率の値が、力率改善用トランスVFT自体の一次側と二次側の結合係数、一次巻線N11のインダクタンスL11の値及びコンバータトランスPIT自体の結合係数kの値によって影響される本実施の形態においては、上述の倍電圧全波整流回路によれば、一旦最適化したこれらの関係を維持したままで、二次側直流出力電圧生成手段の変更のみで二次側の電圧を2倍にできるという効果に加え、全波整流方式を採用するので、半波整流方式に比べ、更に電力の利用率向上が図れるとともに、スイッチング周波数の周期の1/2の周期がリップルの周期となり平滑がより滑らかに行える利点を有する。
図12は、二次側直流出力電圧生成手段の、更に別の1例である4倍電圧半波整流回路を示している。この4倍電圧半波整流回路は、図10に示す倍電圧半波整流回路と略同様な構成を有する、極性の異なる2個の倍電圧半波整流回路を相互に接続し、更に、2倍の電圧を得るものである。なお、二次側直列共振回路の構成も二次側直流出力電圧生成手段に伴い異なったものとなっている。
すなわち、この4倍電圧半波整流回路は、二次巻線N2の1方の端部に二次側直列共振コンデンサC2Aが接続され、二次巻線部N2の漏洩インダクタンス成分と、二次側直列共振コンデンサC2Aのキャパシタンスとにより第1の二次側直列共振回路を形成し、二次巻線N2の上述した1方の端部に二次側直列共振コンデンサC2Bが接続され、二次巻線部N2の漏洩インダクタンス成分と、二次側直列共振コンデンサC2Bのキャパシタンスとにより第2の二次側直列共振回路を形成している。
ここで、二次側直列共振コンデンサC2Aと二次側直列共振コンデンサC2Bとを二次巻線N2の同一の端子に接続するのは、二次巻線N2の他方の端部を共通接続点として、正極性の倍電圧半波整流回路と負極性の倍電圧半波整流回路とを接続して、4倍電圧を得るためには、二次側直列共振コンデンサC2Aと二次側直列共振コンデンサC2Bには異極性の電圧が保持される必要があるためである。
また、二次巻線部N2と二次側直列共振コンデンサC2Aからなる二次側直列共振回路に対して、整流ダイオードDo2が並列に接続され、整流ダイオードDo2のカソード(またはアノード)に整流ダイオードDo1のアノード(またはカソード)が接続されている。
そして、整流ダイオードDo1のカソード(またはアノード)と整流ダイオードDo2のアノード(またはカソード)との間に平滑コンデンサCo1が接続されている。すなわち、整流ダイオードDo1のカソード(またはアノード)と平滑コンデンサCo1の正極端子(または負極端子)が接続され、整流ダイオードDo2のアノード(またはカソード)と平滑コンデンサCo1の負極端子(または正極端子)とが接続される。
上述した、二次側直列共振コンデンサC2A、整流ダイオードDo1、整流ダイオードDo2及び平滑コンデンサCo1によって正極性(負極性)の倍電圧半波整流回路(第1の倍電圧整流回路)が得られる。
他方の倍電圧半波整流回路(第2の倍電圧整流回路)も同様に、二次巻線部N2と二次側直列共振コンデンサC2Bからなる二次側直列共振回路に対して、整流ダイオードDo3が並列に接続され、整流ダイオードDo3のカソード(またはアノード)に整流ダイオードDo4のアノード(またはカソード)が接続されている。
そして、整流ダイオードDo4のアノード(またはカソード)と整流ダイオードDo3のカソード(またはアノード)との間に平滑コンデンサCo2が接続されている。すなわち、整流ダイオードDo4のアノード(またはカソード)と平滑コンデンサCo2の負極端子(または正極端子)が接続され、整流ダイオードDo3のカソード(またはアノード)と平滑コンデンサCoの正極端子(または負極端子)とが接続される。
上述した、整流ダイオードDo3、整流ダイオードDo4及び平滑コンデンサCo2によって負極性(正極性)の倍電圧半波整流回路が得られる。
そして、上述した正極性(負極性)の倍電圧半波整流回路と上述した負極性(正極性)の倍電圧半波整流回路とを直列に接続する。すなわち、平滑コンデンサCo1の負極端子(または正極端子)と平滑コンデンサCo2の正極端子(または負極端子)とを接続する。
上述の接続態様によって形成される倍電圧全波整流回路の整流動作は次のようになる。先ず、第1の倍電圧半波整流回路の整流動作を説明する。
先ず、二次巻線N2に誘起される交番電圧の一方の半周期の期間においては、二次巻線N2−整流ダイオードDo2−二次側直列共振コンデンサC2Aの経路により整流電流が流れることで、二次側直列共振コンデンサC2Aに対して整流電流を充電するようにされる。このときの整流動作によって、二次側直列共振コンデンサC2Aには、二次巻線N2に誘起される交番電圧の等倍に対応するレベルの両端電圧が生成される。
また、続く二次巻線N2の交番電圧の他方の半周期の期間においては、二次巻線N2−二次側直列共振コンデンサC2A−整流ダイオードDo1−平滑コンデンサCo1の経路で整流電流が流れる。このときには、二次巻線N2の誘起電圧に対して、先の二次巻線N2の交番電圧の半周期の期間の整流動作により得られている二次側直列共振コンデンサC2Aの両端電圧が重畳される状態で、平滑コンデンサCo1への充電が行われる。これにより、平滑コンデンサCo1には、二次巻線N2の交番電圧に対して2倍となるレベルの両端電圧が生成されることになる。
つまり、第1の倍電圧半波整流回路は、二次巻線N2の交番電圧の一方の半周期の期間で二次巻線N2の交番電圧の等倍に対応するレベルの二次側直列共振コンデンサC2Aの両端電圧を生成し、二次巻線N2の交番電圧の他方の半周期の期間で、二次巻線N2の交番電圧と二次側直列共振コンデンサC2Aの両端電圧の重畳レベルにより平滑コンデンサCo1に充電を行うことで、平滑コンデンサCo1の両端電圧として、二次巻線N2の交番電圧の2倍に対応するレベルの両端電圧を得る、という倍電圧半波整流動作を行う。
また、上述した倍電圧半波整流動作では、二次側直列共振コンデンサC2Aに対して、正/負の両極の方向で半周期ごとに電流が流れているが、これに応じて、第1の二次側直列共振回路が共振動作を行うことになる。
次に、第2の倍電圧半波整流回路の動作を説明する。第2の倍電圧半波整流回路は、[二次巻線N2、二次側直列共振コンデンサC2B、整流ダイオードDo3,Do4、平滑コンデンサCo2]により、上述の第1の倍電圧半波整流回路と同様の倍電圧半波整流動作を、上述の第1の倍電圧半波整流回路の整流動作に対して、半周期シフトした周期タイミングにより実行する。これにより、平滑コンデンサCo2の両端電圧としても、二次巻線N2の交番電圧に対して2倍となるレベルの両端電圧が生成されることになる。
このような整流動作が実行されることにより、平滑コンデンサCo1−Co2の直列接続回路の両端電圧である二次側直流出力電圧Eoとしては、二次巻線N2の交番電圧に対して4倍となるレベルの両端電圧が生成されることになる。つまり、4倍電圧整流動作が得られている。
上述の4倍電圧全波整流回路によれば、力率改善効果、AC→DC電力変換効率の値が、力率改善用トランスVFT自体の一次側と二次側の結合係数、一次巻線N11のインダクタンスL11の値及びコンバータトランスPIT自体の結合係数kの値によって影響される本実施の形態においては、一旦最適化したこれらの関係を維持したままで、二次側直流出力電圧生成手段の変更のみで二次側の電圧を4倍にできるという大きな効果を有する。また、更に、4倍電圧を整流回路で得ることによって、コンバータトランスPITの二次巻線N2の巻数を1/4とできる。
続いては、本発明に基づくスイッチング電源回路について、スイッチング手段の他のバリエーションを、図13に示しておくこととする。なお、図13において図1と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
図1に示すスイッチング電源回路においては、スイッチング手段がスイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q1の2個のスイッチング素子を有しているのに対して、図13に示すスイッチング電源回路においては、一次側の電流共振形コンバータの構成について、4石のスイッチング素子Q1ないしスイッチング素子Q4を備える、フルブリッジ結合方式としている。
フルブリッジ結合方式は、図1に図示するようなスイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2から成るハーフブリッジ接続に対して、更にスイッチング素子Q3、スイッチング素子Q4のハーフブリッジ接続を並列に接続するようにされる。
また、この図13では、コンバータトランスPITの一次巻線N1の一端を、一次側直列共振コンデンサC1、力率改善用トランスVFTの一次巻線N11の直列接続を介して、スイッチング素子Q1のソースとスイッチング素子Q2のドレインの接続点と接続している。また、コンバータトランスPITの一次巻線N1の他端を、スイッチング素子Q3のソースとスイッチング素子Q4のドレインの接続点と接続している。
上述のスイッチング素子Q3,スイッチング素子Q4についても、それぞれ、ボディダイオードであるダンパーダイオードDD3 、ダンパーダイオードDD4が、ドレイン−ソース間に対して並列に接続されている。また、この場合には、スイッチング素子Q4のソース−ドレイン間に対して並列に一次側部分共振コンデンサCp1が接続されている。この一次側部分共振コンデンサCp1としても、自身のキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1よにより並列共振回路(部分電圧共振回路)を形成し、スイッチング素子Q3,Q4のターンオフ時にのみ電圧共振する部分電圧共振動作を得る。
また、この場合の発振・ドライブ回路2としては、ハーフブリッジ結合方式に対応して2石のスイッチング素子を駆動する構成とされていることから、図13においては、スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2を駆動する発振・ドライブ回路2とともに、スイッチング素子Q3、スイッチング素子Q4を駆動するための発振・ドライブ回路2Aも設けることとしている。
これら発振・ドライブ回路2、発振・ドライブ回路2Aによっては、スイッチング素子[Q1,Q4]の組と、スイッチング素子[Q3,Q4]の組とが交互にオン/オフするようにしてスイッチング駆動が行われる。
すなわち、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とが交互にオン/オフし、スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4とが交互にオン/オフする。なお、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とが重なることなくオンとオフとなっていることは必ずしも要求されないが、少なくとも、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とが同時にオンとなってはならない。また、スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4とについても同様である。
更に、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q4とが同期してオン/オフし、スイッチング素子Q2とスイッチング素子Q3とが同期してオン/オフをする。
ここで、同期してとは、スイッチング素子Q1のオンとなる期間がスイッチング素子Q4のオンとなる期間に含まれる場合、スイッチング素子Q4のオンとなる期間がスイッチング素子Q1のオンとなる期間に含まれる場合、スイッチング素子Q1のオンとなる期間とスイッチング素子Q4のオンとなる期間が同一の場合のいずれをも含むものである。また、スイッチング素子Q2とスイッチング素子Q3とについても同様である。
また、この場合の制御回路1の出力は、発振・ドライブ回路2,2Aの両者に対して入力されており、これにより、発振・ドライブ回路2,2Aは、定電圧制御のために、同期してスイッチング周波数の可変制御を行うようにされる。
なお、一次側の電流共振形コンバータの構成についてフルブリッジ結合方式とするのは、重負荷の条件に対応するためである。フルブリッジ結合であれば、重負荷の条件となっても、必要な負荷電流を、4つのスイッチング素子によりまかなうこととなるために、例えば2本のスイッチング素子から成るハーフブリッジ結合方式の場合よりも、重負荷条件に有利となる。また、各スイッチング素子における電流レベルも低下するために、電力損失の増加も抑制される。
図14は本発明の第2の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成を示している。なお、この図において、図1と同一部分は同一符号を付して説明を省略する。
図14に示す第2の実施の形態のスイッチング電源回路と図1に示す第1の実施の形態のスイッチング電源回路との差異点は、力率改善手段の構成が異なる点である。すなわち、力率改善用トランスVFT及び一次巻線N1及び二次巻線N2が巻装されて形成されたコンバータトランスPITに替えて、一次巻線N1及び二次巻線N2に加えて、更に、三次巻線N3が巻装されて形成されたコンバータトランスPIT及び高周波インダクタL10を具備する点であるので、この差異点を中心に説明する。
力率改善回路30は、力率改善手段の他の1例であり、整流手段とスイッチング手段との間に介在し、一次側直列共振回路に流れる電流に応じて商用交流電源から整流手段に流入する整流電流を断続して商用交流電源から入力される電力の力率を改善するものである。
力率改善回路30は、高周波インダクタL10、高速リカバリ型であるスイッチングダイオード(力率改善用スイッチング素子)D1、フィルタコンデンサCN及びコンバータトランスPITに配された三次巻線N3を有している。
そして、整流手段の1例であるブリッジ整流回路Diの正極出力端子に対して、高速リカバリ型であるスイッチングダイオードD1のアノードが接続される。スイッチングダイオードD1のカソードは、高周波インダクタL10及びコンバータトランスPITに配された三次巻線N3を介してスイッチング手段の1例の一部分である平滑コンデンサCiの正極端子とスイッチング素子Q1との接続点に接続される。
次に、力率改善回路30による力率改善動作について説明する。
一次側電流共振コンバータのスイッチング動作に基づいて三次巻線N3に電圧が誘起する。この誘起する電圧の波形はパルス波形であり、その電圧の大きさは、三次巻線N3と一次巻線N1の巻数比(N3/N1)に比例したものである。
そして、このパルス電圧は、直列接続されたスイッチングダイオードD1と高周波インダクタL10とを介して商用交流電源ACと直列に印加される。つまり、三次巻線N3に誘起される交番電圧は、整流出力電圧に対して重畳されるものとなる。
つまり、三次巻線N3は、一次側直列共振電流を、コンバータトランスPITの磁気結合を介して整流電流経路に電圧として帰還するようにしている。
スイッチングダイオードD1は、上述した交番電圧の重畳分により整流電流をスイッチング(断続)するようにして動作する。このような動作が得られる結果、交流入力電圧VACのレベルが平滑コンデンサCiの両端電圧よりも低いとされる期間にも整流電流を流すことになる。つまり、整流電流の導通角を拡大させる。なお、高周波インダクタL10は電流の大きさを制限するものである。
上述のようにして整流電流の導通角が拡大されるのに伴っては、交流入力電流IACの導通角も拡大されることとなり、これによって交流入力電流IACの平均的な波形が交流入力電圧VACの波形に近づくこととなって、力率が改善される。
第2の実施形態においては、コンバータトランスPIT自体の結合係数kの値として、第1の実施の形態におけると略同様な総合結合係数Ktの値を採用し、第1の実施の形態で得られたと同様の性能を得ながらも、別部品として力率改善用トランスVFTを用いることなくコンバータトランスPITを形成する三次巻線N3を用いて力率を改善することができる。
なお、一次側の電流共振形コンバータの構成については、ハーフブリッジ結合方式したが、上述の実施の形態に示すフルブリッジ結合方式としても良く、更に、二次側直流出力電圧生成手段は、全波整流回路に限ることなく、倍電圧全波整流回路、4倍電圧半波整流回路、または倍電圧半波整流回路のいずれであっても良い。
なお、本発明としては、これまでに説明した構成に限定されるべきものではない。例えばスイッチング素子としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)など、MOS−FET以外の素子が採用されて構わない。また、先に説明した各部品素子の定数なども、実際の条件等に応じて変更されて構わない。また、本発明としてのワイドレンジ対応及び力率改善の構成は、自励式による電流共振形コンバータにも適用することが可能である。
1 制御回路、2 発振・ドライブ回路、100,101,102,103 力率改善回路、Di ブリッジ整流回路、平滑コンデンサCi,CiA,CiB、Q1,Q2 スイッチング素子、PIT コンバータトランス、C1 一次側直列共振コンデンサ、Cp 一次側部分共振コンデンサ、C2、C2A,C2B 二次側直列共振コンデンサ、N1 一次巻線、N2 二次巻線、Do1〜Do4 (二次側)整流ダイオード、Co,Co1,Co2 (二次側)平滑コンデンサ、CN フィルタコンデンサ、D1 スイッチングダイオード、L10 高周波インダクタ
Claims (9)
- 商用交流電源を入力して整流電圧を生成する整流手段と、
上記整流電圧のスイッチングを行うスイッチング素子を有して形成されるスイッチング手段と、
上記スイッチング素子をスイッチング駆動する駆動信号を発生するスイッチング駆動手段と、
少なくとも、上記スイッチング手段のスイッチング動作により得られたスイッチング出力が供給される一次巻線と、この一次巻線により交番電圧が誘起される二次巻線とが巻装されて形成されたコンバータトランスと、
少なくとも、上記コンバータトランスの一次巻線の漏洩インダクタンス成分と、上記一次巻線に直列接続された一次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成される一次側直列共振回路と、
上記整流手段と上記スイッチング手段との間に介在し、上記一次側直列共振回路に流れる電流に応じた電圧を上記整流手段と上記スイッチング手段との間に発生させることによって上記商用交流電源から上記整流手段に入力される電流の導通角を拡大させて力率を改善する力率改善手段と、
少なくとも、上記コンバータトランスの二次巻線の漏洩インダクタンス成分と、上記二次巻線に直列接続された二次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成される二次側直列共振回路と、
上記二次側直列共振回路に得られる共振出力を入力して整流動作を行って二次側直流出力電圧を生成する二次側直流出力電圧生成手段と、
上記二次側直流出力電圧のレベルに応じて、上記駆動信号の周波数を変化させて上記二次側直流出力電圧を所定の電圧値とする電圧制御手段と、を備え、
上記一次側直列共振回路と上記二次側直列共振回路とを有して形成される電磁結合形共振回路について、上記駆動信号の周波数に対する上記二次側直流出力電圧の出力特性が単峰特性となるようにしたことを特徴とするスイッチング電源回路。 - 上記力率改善手段は、
少なくとも、電磁結合された一次巻線と二次巻線とを有する電圧帰還トランス及びダイオードを具備し、
上記整流手段からの電力を直列接続される上記ダイオードと上記電圧帰還トランスの上記二次巻線とを介して上記スイッチング手段に供給し、
上記電圧帰還トランスの上記一次巻線のインダクタンスを含めた上記電磁結合形共振回路の結合係数(総合結合係数)を、上記コンバータトランス自体の結合係数(トランス結合係数)よりも、小さく設定することを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。 - 上記力率改善手段は、
少なくとも、ダイオードと、インダクタと、上記一次巻線及び上記二次巻線とともに巻装されて上記コンバータトランスを形成し、交番電圧が誘起される三次巻線と、を具備し、
上記整流手段からの電力を直列接続される上記ダイオードとインダクタと上記コンバータトランスの上記三次巻線とを介して上記スイッチング手段に供給することを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。 - 上記スイッチング手段は、
上記スイッチング駆動手段からの出力に応じて交互にオンとオフとを繰り返す直列接続された第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子とを有する請求項1に記載のスイッチング電源回路。 - 上記スイッチング手段は、
上記スイッチング駆動手段からの出力に応じて、交互にオンとオフとを繰り返す直列接続された第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子及び交互にオンとオフとを繰り返す直列接続された第3のスイッチング素子と第4のスイッチング素子が並列接続されて形成され、
上記第1のスイッチング素子と上記第4のスイッチング素子とが同期してオン及びオフされ、上記第2のスイッチング素子と上記第4のスイッチング素子とが同期してオン及びオフされることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。 - 上記二次側直列共振回路は、
上記二次巻線にセンタータップを施すことで分割された、第1の二次巻線部と第2の二次巻線部とを有してなり、
上記第1の二次巻線部の漏洩インダクタンス成分と上記第1の二次巻線部のセンタータップ側ではない端部に接続される第1の二次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとを有する第1の二次側直列共振回路と、上記第2の二次巻線部の漏洩インダクタンス成分と上記第2の二次巻線部のセンタータップ側ではない端部に接続される第2の二次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとを有する第2の二次側直列共振回路と、を具備し、
上記二次側直流出力電圧生成手段は、
上記第1の二次側直列共振回路に対して並列に接続された第1の整流ダイオードと、
上記第1の整流ダイオードのカソード(またはアノード)にアノード(またはカソード)が接続された第2の整流ダイオードと、
上記第1の二次側直列共振回路に対して並列に接続された第3の整流ダイオードと、
上記第3の整流ダイオードのアノード(またはカソード)にカソード(またはアノード)が接続された第4の整流ダイオードと、
上記第2の整流ダイオードのカソード(またはアノード)と上記第1の整流ダイオードのアノード(またはカソード)との間、及び上記第4の整流ダイオードのアノード(またはカソード)と上記第3の整流ダイオードのカソード(またはアノード)との間に接続された平滑コンデンサと、を具備する倍電圧全波整流回路を接続して形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。 - 上記二次側直列共振回路は、
上記二次巻線の漏洩インダクタンス成分と上記二次巻線の1方の端部に接続される第1の二次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとを有する第1の二次側直列共振回路と、上記二次巻線の漏洩インダクタンス成分と上記二次巻線の上記1方の端部に接続される第2の二次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとを有する第2の二次側直列共振回路と、を具備し、
上記二次側直流出力電圧生成手段は、
上記二次側直列共振回路に対して、並列に接続された第1の整流ダイオードと、
上記第1の整流ダイオードのカソード(またはアノード)にアノード(またはカソード)が接続された第2の整流ダイオードと、
上記第2の整流ダイオードのカソード(またはアノード)と上記第1の整流ダイオードのアノード(またはカソード)との間に接続された第1の平滑コンデンサと、
上記二次側直列共振回路に対して、並列に接続された第3の整流ダイオードと、
上記第3の整流ダイオードのアノード(またはカソード)にカソード(またはアノード)が接続された第4の整流ダイオードと、
上記第4の整流ダイオードのアノード(またはカソード)と上記第3の整流ダイオードのカソード(またはアノード)との間に接続された第2の平滑コンデンサと、を具備し、上記第1の平滑コンデンサと上記第2の平滑コンデンサの異なる極性端を相互に接続する4倍電圧半波整流回路を接続して形成される、
ことを特徴とする請求項2に記載のスイッチング電源回路。 - 上記二次側直流出力電圧生成手段は、
上記二次側直列共振回路の両端の各々に入力端が接続されたブリッジ整流回路と、
上記ブリッジ整流回路の出力端の各々に接続された平滑コンデンサと、を具備する全波整流回路を接続して形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路 - 上記二次側直流出力電圧生成手段は、
上記二次側直列共振回路に対して、並列に接続された第1の整流ダイオードと、
上記第1の整流ダイオードのカソード(またはアノード)にアノード(またはカソード)が接続された第2の整流ダイオードと、
上記第2の整流ダイオードのカソード(またはアノード)と上記第1の整流ダイオードのアノード(またはカソード)との間に接続された平滑コンデンサと、を具備する倍電圧半波整流回路を接続して形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
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