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JP2006261820A - 撮像装置、画像形成装置および質感読取方法 - Google Patents

撮像装置、画像形成装置および質感読取方法 Download PDF

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JP2006261820A JP2005073613A JP2005073613A JP2006261820A JP 2006261820 A JP2006261820 A JP 2006261820A JP 2005073613 A JP2005073613 A JP 2005073613A JP 2005073613 A JP2005073613 A JP 2005073613A JP 2006261820 A JP2006261820 A JP 2006261820A
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文雄 仲谷
Yuichi Ichikawa
裕一 市川
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Abstract

【課題】 被撮像物から質感に関する情報を良好に読み取り、これを再現する。
【解決手段】 画像形成装置1は、画像読取部10において、45°入射、0°反射の拡散反射光に基づく画像信号(45°色信号)と、65°入射、0°反射の拡散反射光に基づく画像信号(65°色信号)と、45°入射、45°反射の正反射光に基づく画像信号(光沢信号)とを読み取る。画像形成装置1は、45°色信号と光沢信号とを比較することにより光沢情報を生成する。また、画像形成装置1は、45°色信号と65°色信号とを比較することによってテクスチャ情報を生成する。そして、画像形成装置1は、画像形成部20において、これらの光沢情報とテクスチャ情報とを反映させた画像を形成する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、被撮像物から質感に関する情報を得るための技術に関する。
物体表面はそれぞれ「質感」を有している。例えば、研磨された金属の表面はつややかな「光沢感」を観察者に与え、織物の表面は、経糸と緯糸の織りなす独特の織り感や風合い、すなわち「凹凸感」を観察者に与える。スキャナや複写機等の画像読み取り装置を用いて、物体をより実物らしく、リアルに表現するためには、実物の光沢や凹凸といった質感に関する情報を読み取り、これを再現することが必要となる。
物体の質感のうち、特に光沢については、従来よりこれを検知する技術が知られていた。この技術は主に、表面に光沢のある被撮像物(物体)であっても、被撮像物を良好に読み取ることを目的に用いられていた。例えば特許文献1,2および3には、このような技術の一例が示されている。以下、これらの特許文献の技術を総称するときは、これを「従来技術」という。
特開平6−70097号公報 特開平5−313537号公報 特開平5−333643号公報
しかしながら、上記従来技術は以下の問題を有していた。
まず、特許文献1に記載の技術は、被撮像物である原稿から光沢を示す領域を検出し、この領域に対して補正を行うものである。このような技術を用いたのでは、当然、被撮像物のどの領域が光沢を示すのかを知ることは不可能である。また、仮に、このような技術を用いて読み取られた画像情報をプリンタ等の画像形成装置によってプリントしたとしても、画像情報において単に反射率が高いだけの領域(白に近い領域)と光沢を示す領域とを区別することができないため、被撮像物の光沢を再現した画像を得ることもできない。
また、特許文献2および3に記載の技術は、まず、被撮像物である原稿を読み取り、この原稿が示す画像全体が光沢画像または非光沢画像のいずれであるかを判定し、この判定結果に応じて、トナーの定着時における温度や速度等の定着条件を制御するものである。これらの技術においても同様に、光沢の有無を領域単位で判定するものではないから、被撮像物のどの領域が光沢を示すのかを知ることは不可能である。つまり、上述のいずれの場合においても、被撮像物の光沢を再現可能な画像データを得るには至っていないと言える。
また、そもそも、従来技術において検知対象となっているのは光沢に関する情報のみである。上述したように、質感とは光沢感のみを表す概念ではなく、織り感や風合いといった凹凸感をも含む概念であるが、上述の従来技術には被撮像物の凹凸に関する情報を読み取る術は存在しない。つまり、このような凹凸感にまで着目した場合、従来技術は質感に関する情報を十分に読み取っているとは言い難いものであった。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被撮像物から質感に関する情報を良好に読み取り、これを再現することを可能にする仕組みを提供することにある。
上述の目的を達成するために、本発明は、被撮像物に第1および第2の入射角から光を照射する照射手段と、前記照射手段が光を照射することによって生じる前記被撮像物からの拡散反射光を結像させる第1の結像手段と、前記照射手段が光を照射することによって生じる前記被撮像物からの正反射光を結像させる第2の結像手段と、前記第1または第2の結像手段により結像された光をそれぞれ受光し、その光に応じた画像信号を生成する撮像手段と、前記第1の入射角で入射し、前記第1の結像手段により結像された光によって前記撮像手段が生成する第1の画像信号と、前記第1の入射角で入射し、前記第2の結像手段により結像された光によって前記撮像手段が生成する第2の画像信号とを比較することにより、前記被撮像物上の光沢を有する領域を示す光沢情報を生成する光沢情報生成手段と、前記第1の画像信号と、前記第2の入射角で入射し、前記第1の結像手段により結像された光によって前記撮像手段が生成する第3の画像信号とを比較することにより、前記被撮像物上のテクスチャを有する領域を示すテクスチャ情報を生成するテクスチャ情報生成手段と、前記撮像手段により生成された画像信号に基づき、前記被撮像物を表す画像データを生成する画像データ生成手段と、前記画像データ生成手段により生成された画像データに対して、前記光沢情報生成手段により生成された光沢情報と前記テクスチャ情報生成手段により生成されたテクスチャ情報とを付与して出力する出力手段とを備える撮像装置を提供する。
この撮像装置によれば、被撮像物上の光沢を有する領域を示す光沢情報と、テクスチャを有する領域を示すテクスチャ情報とを生成し、これを画像データに付与することができる。光沢情報によって被撮像物の光沢感を再現することが可能となり、テクスチャ情報によって被撮像物の凹凸感を再現することが可能となる。
また、この撮像装置において、前記照射手段は、分光エネルギー分布が可視光領域の全体に渡る光源であり、前記撮像手段は、少なくとも4列以上の複数の撮像素子列であり、各々の撮像素子列が異なる分光感度を有する構成としてもよい。
あるいは、前記照射手段は、分光エネルギー分布の異なる複数の光源であってもよい。
このような構成とすることで、メタメリズム(条件等色)を抑制し、観察する光源によらず被撮像物を忠実に再現可能な画像データを得ることができる。
また、この撮像装置において、前記照射手段は、前記第1の結像手段は、前記被撮像物からの反射角が−5°ないし5°である拡散反射光を結像させ、前記第2の結像手段は、前記被撮像物からの反射角が40°ないし50°である正反射光を結像させる構成であってもよい。
あるいは、前記第1の結像手段は、さらに、前記被撮像物からの反射角が55°ないし75°である拡散反射光を結像させる構成を備えていてもよい。
さらに、前記第1の結像手段は、前記被撮像物からの反射角が17.5°ないし27.5°である拡散反射光を結像させる構成を備えていてもよい。
なお、本発明は、被撮像物に第1および第2の入射角から光を照射する照射手段と、前記照射手段が光を照射することによって生じる前記被撮像物からの拡散反射光を結像させる第1の結像手段と、前記照射手段が光を照射することによって生じる前記被撮像物からの正反射光を結像させる第2の結像手段と、前記第1または第2の結像手段により結像された光をそれぞれ受光し、その光に応じた画像信号を生成する撮像手段と、前記第1の入射角で入射し、前記第1の結像手段により結像された光によって前記撮像手段が生成する第1の画像信号と、前記第1の入射角で入射し、前記第2の結像手段により結像された光によって前記撮像手段が生成する第2の画像信号とを比較することにより、前記被撮像物上の光沢を有する領域を示す光沢情報を生成する光沢情報生成手段と、前記第1の画像信号と、前記第2の入射角で入射し、前記第1の結像手段により結像された光によって前記撮像手段が生成する第3の画像信号とを比較することにより、前記被撮像物上のテクスチャを有する領域を示すテクスチャ情報を生成するテクスチャ情報生成手段と、前記撮像手段により生成された画像信号に基づき、前記被撮像物を表す画像データを生成する画像データ生成手段と、前記画像データ生成手段により生成された画像データに対して、前記光沢情報生成手段により生成された光沢情報と前記テクスチャ情報生成手段により生成されたテクスチャ情報とを付与して供給する供給手段と、前記供給手段により供給された画像データに基づき、記録材にトナー像を形成する画像形成手段とを備える画像形成装置としても特定されるものである。
この画像形成装置によれば、光沢やテクスチャを再現した画像を記録材にトナー像を形成することで得ることができる。
また、この画像形成装置において、前記画像形成手段は、少なくとも5色以上のトナーによりトナー像を形成する構成であることが望ましい。
このような構成とすることで、メタメリズムを良好に抑制した画像を形成することが可能となる。
また、この画像形成装置において、前記画像形成手段は、前記画像データにおける前記光沢情報が示す領域に、透明トナーを用いたトナー像を形成する構成であってもよい。
このような構成とすることで、被撮像物が光沢を示す領域をより良好に再現することが可能となる。
また、この画像形成装置において、前記画像形成手段は、前記画像データにおける前記テクスチャ情報が示す領域に、発泡トナーを用いたトナー像を形成する構成であってもよい。
このような構成とすることで、被撮像物がテクスチャ(凹凸)を示す領域をより良好に再現することが可能となる。
なお、本発明は、第1の入射角で被撮像物に光を照射して、その正反射光に応じた第1の画像信号を生成するステップと、前記第1の入射角で前記被撮像物に光を照射して、その拡散反射光に応じた第2の画像信号を生成するステップと、第2の入射角で前記被撮像物に光を照射して、その拡散反射光に応じた第3の画像信号を生成するステップと、前記第1の画像信号と前記第2の画像信号とを比較することにより、前記被撮像物上の光沢を有する領域を示す光沢情報を生成するステップと、前記第1の画像信号と前記第3の画像信号とを比較することにより、前記被撮像物上のテクスチャを有する領域を示すテクスチャ情報を生成するステップと、前記被撮像物からの拡散反射光に応じた画像信号に基づき、前記被撮像物を表す画像データを生成するステップと、前記画像データに対して、前記光沢情報と前記テクスチャ情報とを付与して出力するステップとを備える質感読取方法としても特定されるものである。
以上説明したように、本発明によれば、被撮像物から質感に関する情報を良好に読み取り、これを再現することが可能となる。
[1:構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の装置構成を示した図である。この画像形成装置1は、例えば紙や織物、あるいは金属等の非撮像物を読み取って画像データを生成する画像読取部10と、この画像データに基づいて記録用紙等の記録材にトナー像を形成する画像形成部20とに大別される。画像読取部10はいわゆるスキャナに相当し、画像形成部20はいわゆるプリンタに相当するものである。つまり画像形成装置1は、スキャナやプリンタの機能を兼ね備えたいわゆる複合機である。
本実施形態の画像形成装置1は、被撮像物の質感を読み取り、これをトナー像で表現するための種々の特徴を有している。ここではまず、この画像形成装置1の構成について、画像読取部10および画像形成部20をそれぞれ図示しながら詳細に説明する。加えて、画像形成装置1の機能的な構成についても説明する。
ここで、画像形成装置1の構成を説明する前に、この画像形成装置1において読み取られる光の種類について説明しておく。
図2は、被撮像物からの光の反射状態を概念的に示した図である。一般に、入射角θ1で被撮像物に入射した光は反射角θ2で反射し、このとき反射角θ2は入射角θ1と等しくなると解される(反射の法則)。しかし実際には、入射光は反射角θ2のみで反射するものではなく、あらゆる角度に反射していることが多い。これは、反射面を光の波長と同程度のオーダーで捉えた場合には、反射面は必ずしも平滑ではなく、多少の凹凸を有していることが多いためである。反射面に凹凸があれば当然、入射光もその凹凸に応じてさまざまな角度に反射する。
ここでは、反射面を巨視的に捉えたときに、反射面から入射角とほぼ同じ角度で反射する反射のことを「正反射(Specular Reflection)」といい、この反射光のことを「正反射光」という。また、入射光の入射角によらず、反射面からあらゆる角度に反射する反射のことを「拡散反射(Diffuse Reflection)」といい、この反射光のことを「拡散反射光」という。以下に示す図面においては、必要に応じて、正反射光を表す光路に符号Lsr,拡散反射光を表す光路に符号Ldrを付すことでこれらを区別する。
なお、一般に、表面反射光に正反射成分を多く含む物体ほど、その表面はより強い光沢を示す。つまり、物体の光沢度はその表面(反射面)の微視的な表面性状に依存し、微視的に平滑であるほど光沢度も高くなる。
また、正反射光はある角度の1点に集中する光ではなく、実際にはある程度の幅(分布)を有している。この正反射光の強度分布は被撮像物の材質やテクスチャ(巨視的な表面性状)により異なるものであるが、詳細については後述する。
[1−1:画像読取部10の構成]
ここで図1を参照し、画像読取部10の構成を説明する。画像読取部10は、フルレートキャリッジ110と、ハーフレートキャリッジ120と、結像レンズ130と、ラインセンサ140と、プラテンガラス150と、プラテンカバー160とを備える。以下にこれらの各部の構成を説明する。
図3は、フルレートキャリッジ110の構成を詳細に示した図である。フルレートキャリッジ110は、第1光源111と、第2光源112と、ミラー113,114,115と、回動リフレクタ116とを備える。第1光源111および第2光源112は、分光エネルギー分布が可視光領域の全体に渡る単一の光源であり、例えばタングステンハロゲンランプやキセノンアークランプである。第1光源111は被撮像物Oに対して約45°の入射角で光を照射し、第2光源112は被撮像物Oに対して約65°の入射角で光を照射する。ミラー113,114,115は被撮像物Oからの反射光を反射し、この光をハーフレートキャリッジ120へと導く。ミラー113は被撮像物Oからの反射角が約0°となる反射光が入射されるように位置調整されており、ミラー114は被撮像物Oからの反射角が約45°となる反射光が入射されるように位置調整されている。
上述したように、ミラー113に入射するのは約0°,より詳細には0±5°程度の反射光である。この角度で反射する反射光には正反射光は含まれず、拡散反射光のみとなっている。そのため、ミラー113に反射される光路Ldrからは、被撮像物Oからの反射光の拡散反射成分を読み取ることができる。
一方、ミラー114に入射するのは約45°,より詳細には45±5°程度の反射光である。この角度で反射する反射光は、そのほとんどが正反射光である。そのため、ミラー114に反射される光路Lsrからは、被撮像物Oからの反射光の正反射成分を読み取ることができる。
なお、ミラー114の最適な位置は、読み取るべき被撮像物Oの材質等により異なるものである。被撮像物Oが主として光沢度の低い物体であれば、ミラー114に入射する反射角はちょうど45°となるのが望ましく、被撮像物Oが主として光沢度の高い物体であれば、ミラー114に入射する反射角は45°から若干ずれるのが望ましい。これは、光沢度を決定づける反射光は、その強度分布が光沢度に応じて異なることによる。
図4は、さまざまな被撮像物に光を照射した場合の反射光の強度分布をモデル的に示したグラフである。同図に示されたグラフは、いずれも横軸が反射角の入射角に対するずれを示しており、縦軸が受光強度を示している。図4(a)は、例えば研磨された金属表面のような非常に光沢度の高い被撮像物の反射光分布であり、図4(b)および(c)は、それぞれ、例えばきめが細かく光沢のある織物および光沢のほとんどない和紙を被撮像物とした場合の反射光分布である。すなわち図4(c)は、光沢度の低い場合の反射光分布であり、図4(b)は図4(a)と図4(c)の中間くらいの光沢度の場合の反射光分布である。
これらの図に示されているように、一般に、光沢度の高い物体の反射光分布はピークが急峻となり、正反射となる角度以外の角度にはほとんど光が反射しない。これに対して、光沢度の低い物体の反射光分布は比較的なだらかなピーク形状となり、正反射となる角度以外にもある程度の光が反射する。
ミラー114は正反射光を反射させるためのものであるから、このミラー114に入射する反射角は、ちょうど正反射となる45°であればよいはずである。しかしながら、図4(a)にも示したように、光沢度の高い物体からの表面反射光は高強度であり、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサのダイナミックレンジ、すなわちラインセンサ140の読み取り限界を超える入力となるおそれがある。このような場合には反射光強度の正確な測定ができなくなるので、主として高光沢の被撮像物を読み取る場合には、ミラー114に入射する反射角は正反射となる45°を避ける必要がある。具体的には、被撮像物が図4(b)のような光沢を示す場合には、ミラー114に入射する反射角は45°から3〜5°前後ずらすのが望ましい。
これに対して、主として被撮像物が図4(a)のような高い光沢を示す場合には、あまり角度をずらすと表面反射光を測定することができなくなるので、ミラー114に入射する反射角は45°から1,2°程度ずらすのが望ましい。また、読み取る物体を特に限定せず、汎用的な用途で用いる場合には、なるべく多くの物体を被撮像物として利用可能とすべく、ミラー114に入射する反射角を適当(例えば2〜3°程度)に設定する。この場合において、ラインセンサ140としてよりダイナミックレンジの大きい撮像手段を用いたり、ラインセンサ140の露光時間を少なくするとさらに望ましい。なお、上述のように、ミラー114に入射する反射角は厳密には45°とならない場合もあるが、説明の便宜上、ここではミラー114に入射する反射角のことを45°であるとする。
回動リフレクタ116は、片面は光を反射するミラー116mであり、もう一方の面は光を吸収する光トラップ116tである。光トラップ116tは例えば黒色で多孔質のポリウレタンシートであり、ここに入射した光のほとんどは表面で捕捉(トラップ)されて吸収されるようになっている。
回動リフレクタ116は、図3に示した位置にあるときには、ミラー113からの光を反射してハーフレートキャリッジ120へと導く一方、ミラー115からの光は吸収する。また、回動リフレクタ116は、図示せぬ駆動部によって116aを軸として回動され、図中の点線(116’)で示された位置へと移動可能となっている。この位置にあるときは、回動リフレクタ116はミラー114,115からの光をハーフレートキャリッジ120へと導く一方、ミラー113に向かう光を吸収する。
なお、回動リフレクタ116に反射された光は、ミラー115に反射された光と光路が一致するようになっている。このようにすることで、2種類の異なる反射光を同一の撮像手段(ラインセンサ140)で受光することが可能となる。
フルレートキャリッジ110の構成は以上の通りである。このフルレートキャリッジ110は図示せぬ駆動部によって駆動され、図1中の矢印C方向に速度vで移動されながら被撮像物Oの読み取りを行う(以下では、この動作のことを「スキャン動作」という)。続いて再び図1を参照し、画像読取部10のその他の各部について説明する。
ハーフレートキャリッジ120はミラー121および122を備え、フルレートキャリッジ110からの光を結像レンズ130へと導く。また、ハーフレートキャリッジ120は図示せぬ駆動部によって駆動され、フルレートキャリッジ110の半分の速度(すなわちv/2)でフルレートキャリッジ110と同じ方向へと移動される。
結像レンズ130は例えばfθレンズ等を備えた結像手段である。結像レンズ130はミラー122とラインセンサ140とを結ぶ光路上に設けられており、被撮像物Oからの光をラインセンサ140の位置で結像させる。
結像レンズ130は単一のレンズにより構成されるものに限定されず、種々の部材を含み得る。本実施形態においては、反射光の光路上に存在するミラーやレンズ等を総称して「(反射光を結像させるための)結像手段」という。ミラー113,回動リフレクタ116,ハーフレートキャリッジ120および結像レンズ130によって拡散反射光を結像させる結像手段が構成されており、ミラー114,115,回動リフレクタ116,ハーフレートキャリッジ120および結像レンズ130によって正反射光を結像させる結像手段が構成されている。
ラインセンサ140は結像された光の強度に応じた画像信号を生成して出力する。ラインセンサ140は異なる波長の光を同時に受光可能な撮像手段であり、例えばオンチップカラーフィルタを備えた複数ラインのCCDイメージセンサ(撮像素子列)である。このCCDイメージセンサは、各ラインが異なる分光感度で被撮像物を撮像する。本実施形態においては、B(ブルー),BG(ブルーグリーン),G(グリーン),R(レッド)の4色にて撮像可能なイメージセンサが用いられる。本実施形態のラインセンサ140は、この4色の画像信号を各色8ビットで出力する。
プラテンガラス150は透明で平坦なガラス板であり、読み取るべき被撮像物Oが載置される。プラテンガラス150の両面には、例えば多層誘電体膜等の反射抑制層が形成されており、プラテンガラス150表面での反射が低減されるようになっている。プラテンカバー160はプラテンガラス150を覆うようにして設けられており、外光を遮断してプラテンガラス150上に載置された被撮像物Oの読み取りを容易にする。
以上の構成のもと、画像読取部10においては、プラテンガラス150上に載置された被撮像物Oに第1光源111,第2光源112が光を照射し、この反射光がラインセンサ140で読み取られる。ラインセンサ140は読み取った反射光に基づき、B,BG,G,Rの4色の画像信号を後述する画像処理部50に供給する。画像処理部50は画像信号に基づいて画像データを生成し、画像形成部20に供給する。
本実施形態の画像読取部10は、入射光および反射光の種類に応じて異なる画像信号を出力する構成となっている。具体的には、画像読取部10は、第1光源111からの光による拡散反射光(45°入射、0°反射)と、第1光源111からの光による正反射光(45°入射、45°反射)と、第2光源112からの光による拡散反射光(65°入射、0°反射)の3種類の反射光に基づいた画像信号を出力する。このため、画像読取部10は、被撮像物Oの読み取りに際して3回のスキャン動作を行う。
[1−2:画像形成部20の構成]
続いて画像形成部20の構成を説明する。画像形成部20は、現像機構210a,210b,210cと、中間転写ベルト220と、一次転写ロール230a,230b,230cと、二次転写ロール240と、バックアップロール250と、給紙機構260と、第1定着機構270と、切替機構280と、第2定着機構290とを備えている。現像機構210a,210b,210cは中間転写ベルト220表面にトナー像を作像するものであり、以下の構成を備えている。
図5は、現像機構210の構成を示した図である。なお、現像機構210a,210b,210cは、それぞれ用いるトナーが異なるだけであり、その基本的な構成に変わりはない。そのため、ここではこれらを特に区別せずに、現像機構210として説明する。
現像機構210はいわゆるロータリー方式の現像装置であり、感光体ドラム211と、帯電器212と、露光器213と、現像ユニット214,215,216,217とを備える。感光体ドラム211は、例えば表面に電荷受容体としてOPC(Organic Photo Conductor:有機光導電体)からなる光導電層が形成された像担持体であり、図中の矢印A方向に回転される。帯電器212は例えば電源や帯電ローラを備えており、感光体ドラム211表面を一様に帯電させる。露光器213は例えばレーザダイオードにより感光体ドラム211に光を照射し、所定の電位の静電潜像を作像する。現像ユニット214,215,216および217はそれぞれ異なる色のトナーを収容し、感光体ドラム211表面に形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像を作像する。
図5からわかるように、現像機構210a,210b,210cはそれぞれ4つの現像ユニットを備えており、この結果、画像形成部20全体としては12色のトナー像を作像可能となっている。トナーの種類は特に限定されるものではないが、本実施形態においては、一般的な電子写真方式の画像形成装置に用いられるC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(ブラック)の4色に加え、R(レッド),Or(オレンジ),G(グリーン),B(ブルー),Au(金),Ag(銀),I(透明),F(発泡)の8色(種類)の特色のトナーを用いている。ここで、透明トナーとは色材を含まないトナーのことであり、例えば低分子量のポリエステル樹脂にSiO2(二酸化シリコン)やTiO2(二酸化チタン)を外添したものである。発泡トナーとは例えばポリエステル樹脂に重炭酸塩やアゾ化合物等の発泡剤を添加してなるトナーであり、内部の発泡剤を発泡させて立体的で凹凸のあるトナー像の作像を可能としている。
なお、これらのトナーは、収容される現像ユニット214〜217の場所を特に問わず、任意の場所に任意の順序で収容されてよい。これは、現像機構210a,210b,210cのそれぞれについても同様である。
ここで再び図1を参照し、画像形成部20のその他の構成について説明する。中間転写ベルト220は、図示せぬ駆動手段によって図中の矢印B方向に移動される無端のベルト部材である。中間転写ベルト220は、感光体ドラム211a,211b,211cと対向する位置においてトナー像を転写(一次転写)され、これを移動させて記録用紙Pに再び転写(二次転写)させる。一次転写ロール230a,230b,230cは、中間転写ベルト220が感光体ドラム211a,211b,211cと対向する位置において適当な圧力で付勢し、中間転写ベルト220にトナー像を転写させる。二次転写ロール240およびバックアップロール250は、中間転写ベルト220が記録用紙Pと対向する位置において適当な圧力で付勢し、記録用紙Pにトナー像を転写させる。給紙機構260は種々の記録用紙Pを収容した用紙トレイ261aおよび261bを備え、画像形成時にこの記録用紙Pを供給する。第1定着機構270は記録用紙Pを加熱および加圧するためのロール部材を備えており、記録用紙P表面に転写されたトナー像を熱と圧力とで定着させる。切替機構280は、記録用紙P表面に形成されているトナー像の種類に応じて記録用紙Pの搬送経路を異ならせる。具体的には、切替機構280は、トナー像に透明トナーを含んでいる記録用紙Pを図中の矢印R方向へと搬送させ、その他の記録用紙Pを図中のL方向へと搬送して排出させる。
第2定着機構290は、定着ベルト291と、加熱装置292と、冷却装置293とを備えている。第2定着機構290は、一度加熱・加圧定着された記録用紙Pに加熱装置292でさらに熱を加えてトナーを再度溶融状態にし、記録用紙Pを表面の平滑な定着ベルト291に密着させたまま冷却装置293で冷却し、トナーを固着させる。このようにすることで、表面が平滑で光沢度の高いトナー像を形成することができる。以下においては、この第2定着機構290を用いて高光沢の画像を形成する処理のことを「高光沢処理」という。
以上の構成のもと、画像形成部20においては、画像処理部50から入力された画像データに基づき、上述した12色のトナーを用いて記録用紙Pに画像を形成する。このとき画像形成部20は、後述する制御部30の指示に従って画像形成処理を異ならせる。具体的には、入力された画像データが光沢度の高い領域を含む画像データであれば、画像形成部20はその領域に透明トナーによるトナー像を形成し、その後上述した高光沢処理を施す。
[1−3:画像形成装置1の機能的構成]
続いて、上述の画像形成装置1の機能的な構成について説明する。
図6は、画像形成装置1の構成を機能的に示したブロック図である。画像形成装置1は、上述の画像読取部10と画像形成部20に加え、制御部30と、記憶部40と、画像処理部50と、操作部60と、データ入出力部70とを備えている。
制御部30は図示せぬCPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)等を備えた演算装置であり、記憶部40に記憶された各種プログラムPRGを実行することによって画像形成装置1各部の動作を制御する。記憶部40は例えばHDD(Hard Disk Drive)等の大容量の記憶装置であり、上述した画像形成装置1各部を動作させるための各種のプログラムPRGのほか、種々の材質の被撮像物の分光反射率を記述したサンプルデータDATと、種々の材質の被撮像物の光沢度を記述した光沢度ルックアップテーブルLUTとを記憶している。サンプルデータDATは種々の物体についてあらかじめ実験的に測定され、記憶されているものであり、例えば種々の物体をラインセンサ140のカラーフィルタと同等のカラーフィルタを用いて撮像して得られる分光分布データである。
続いて、光沢度ルックアップテーブルLUTの内容について説明する。
図7に光沢度ルックアップテーブルLUTのデータ構造の一例を示す。光沢度ルックアップテーブルLUTには、種々の材質の被撮像物の反射光の強度分布に関するデータと、その被撮像物の光沢度を表すデータとが記述されている。具体的には、光沢度ルックアップテーブルLUTには、それぞれの被撮像物について、第1光源111からの光による拡散反射光の反射光強度(45/0)と、第1光源111からの光による正反射光の反射光強度(45/45)と、第2光源112からの光による拡散反射光の反射光強度(65/0)とが記述されている。ここにおいて、カッコ内の左側の数字は入射角を表し、右側の数字は反射角を表している。これらのデータはあらかじめ実験的に特定され、記憶されているものである。
また、光沢度ルックアップテーブルLUTには、それぞれの反射光の強度分布に対応した光沢度を表すレベル値(以下、「光沢度レベル」という)が、「1」から「10」の10段階で記述されている。この光沢度レベルは、値が大きいほどその被撮像物の光沢度が高いことを示している。この光沢度レベルもあらかじめ記憶されているものであり、被撮像物の反射光の強度分布に基づいて決定されている。
光沢度レベルの算定方法は任意であるが、一般に、反射光の正反射成分が大きく、拡散反射成分が小さいほど光沢度が高いものと認められることから、光沢度レベルの算定に際しては正反射光の反射光強度と拡散反射光の反射光強度との間に何らかの相関があることが望ましい。最も簡単な例としては、例えば、正反射光の反射光強度から拡散反射光の反射光強度を差し引いた差分が大きいほど光沢度レベルを高くし、差分が小さいほど光沢度レベルを低くする、という算定方法が考えられる。
ここで図6を参照し、画像形成装置1の構成の説明を続ける。画像処理部50は複数のASIC(Application Specific Integrated Circuit)やLSI(Large Scale Integration)等の画像処理回路や画像データを一時的に記憶するイメージメモリ等を備えており、それぞれの画像処理回路が所定の画像処理を実行する。ここで画像処理とは、AD変換やシェーディング補正、ガンマ変換といった基本的な画像処理から、色空間変換や画像回転、画像拡大・縮小、下地除去(UCR)処理、スクリーン処理などといった各種処理、さらには、光沢情報やテクスチャ情報の生成処理や分光反射率の推定処理までをも含んでいる。
画像処理部50は、画像読取部10が生成した画像信号にこのような画像処理を施し、画像データを生成する。画像処理部50は生成した画像データを画像形成部20に供給する。操作部60は例えばタッチパネル式のディスプレイや各種のボタン等を備えており、画像形成装置1の操作者による入力指示を受け付ける。この入力指示は制御部30へと供給される。データ入出力部70は外部装置とデータをやりとりするためのインターフェース装置である。画像形成装置1は、必要に応じて、画像形成部20に供給されるべき画像データをコンピュータやプリンタ等の外部装置に供給することも可能となっている。
[2:動作]
続いて、上述の構成の画像形成装置1が行う処理について説明する。本実施形態の画像形成装置1は、画像読取部10が被撮像物を読み取って画像信号を生成し、この画像信号に画像処理部50が画像処理を施して画像データを生成する。そして画像形成部20がこの画像データに応じたトナー像を作像し、記録用紙に転写および定着させることで画像を形成する。以下では、画像読取部10による読み取り処理、画像処理部50による画像処理および画像形成部20による画像形成処理のそれぞれについて説明する。
[2−1:読み取り処理]
既に説明したように、画像読取部10は3回のスキャン動作を行って、それぞれにおいて異なる画像信号を出力する。このとき出力される画像信号は、第1光源111からの光による拡散反射光(45°入射、0°反射)と、第1光源111からの光による正反射光(45°入射、45°反射)と、第2光源112からの光による拡散反射光(65°入射、0°反射)の3種類の反射光に基づいた画像信号である。このうち、拡散反射光に基づく画像信号は被撮像物の色情報を検知するための画像信号であり、正反射光に基づく画像信号は被撮像物の光沢情報を検知するための画像信号である。そこで以下では、45°入射、0°反射の拡散反射光に基づく画像信号を「45°色信号」、65°入射、0°反射の拡散反射光に基づく画像信号を「65°色信号」、45°入射、45°反射の正反射光に基づく画像信号を「光沢信号」と呼んで区別する。
続いて、これらの画像信号を得るためのスキャン動作について、図1および図3を適宜参照しながら説明する。なお、この3回のスキャン動作の行われる順番は特に問わないが、ここでは45°色信号、65°色信号、光沢信号の順番で説明する。
まず、45°色信号を出力する場合には、第1光源111が被撮像物Oに光を照射する。このとき第2光源112は消灯している。そして回動リフレクタ116は、正反射光Lsrの進行を妨げつつも拡散反射光Ldrの読み取りを妨げないように、図3に示した位置となるよう調整される。この状態でフルレートキャリッジ110が図1の矢印C方向に移動すると、被撮像物Oの全面に渡って第1光源111からの光が照射され、被撮像物O全体の拡散反射光がラインセンサ140に読み取られる。この結果、45°色信号が生成され、画像処理部50に出力される。画像処理部50は、この45°色信号をイメージメモリに一時的に記憶させる。
次に、65°色信号を得る場合には、第1光源111が消灯し、第2光源112が被撮像物Oに光を照射する。このとき回動リフレクタ116は、図2に示した位置にあって正反射光Lsrの進行を妨げている。この状態でフルレートキャリッジ110が図1の矢印C方向に移動すると、被撮像物Oの全面に渡って第2光源112からの光が照射され、被撮像物O全体の拡散反射光がラインセンサ140に読み取られる。この結果、65°色信号が生成され、画像処理部50に出力される。この65°色信号も同様に、画像処理部50のイメージメモリに記憶される。
そして、光沢信号を得る場合には、まず、回動リフレクタ116が回動し、図2の116’で示される位置に移動する。これにより拡散反射光Ldrは光トラップ116tに吸収される。その後第2光源112が消灯され、再び第1光源111が被撮像物Oに光を照射する。このようにすることで、ラインセンサ140に読み取られる光が被撮像物Oからの正反射光となる。よって、この状態でフルレートキャリッジ110が図1の矢印C方向に移動すると、被撮像物O全体の正反射光がラインセンサ140に読み取られ、光沢信号が生成される。この光沢信号も画像処理部50に出力されて記憶される。
このようにして3種類の画像信号が生成される。なお、これらの画像信号は、いずれもB,BG,G,Rの4色にて出力されるものである。すなわち、画像処理部10は、合計12種類の画像信号を生成し、これらを画像処理部50に出力する。
続いて、以上のように生成された画像信号に対して、画像処理部50が行う画像処理について説明する。
[2−2:画像処理]
画像処理部50は、入力された画像信号に基づいて画像データを生成する。本実施形態の画像処理部50は、画像データを生成する際に、画像領域の各画素の光沢度とテクスチャとを検出し、光沢情報とテクスチャ情報とを生成する処理を行う。また、画像処理部50は、入力された画像信号から被撮像物Oの分光反射率を推定し、この分光反射率を反映させて画像データを生成する処理を行う。以下では、これらの画像処理のそれぞれについて説明する。なお、以下に説明する画像処理において用いられる画像信号は、AD変換やシェーディング補正、ガンマ変換といった基本的な画像処理があらかじめ行われているものである。
[2−2−1:光沢情報生成処理]
まず、画像処理部50が画像信号から光沢情報を生成する処理について説明する。この処理は、45°色信号、65°色信号および光沢信号と、記憶部40に記憶された光沢度ルックアップテーブルLUTを用いて行われる。
図8は、画像処理部50が行う光沢情報生成処理を示したフローチャートである。同図に沿って説明すると、はじめに画像処理部50は、画像信号を表す各画素について、45°色信号、65°色信号および光沢信号を用いて光沢度を算出する(ステップSa1)。具体的には、画像処理部50は45°色信号、65°色信号および光沢信号のそれぞれのビット値に基づいて反射光強度を求め、これを記憶部40に記憶された光沢度ルックアップテーブルLUTと比較する。そして画像処理部50は、それぞれの強度に最も類似しているデータを光沢度ルックアップテーブルLUTの中から特定し、このデータに対応する光沢度レベルをその画素の光沢度とする。
ステップSa1の処理を例を挙げて説明する。例えば、図7に示した光沢度ルックアップテーブルLUTを用いたとき、このとき対象画素の45°色信号、65°色信号、光沢信号の反射光強度が、それぞれ「3」,「3」,「90」だった場合には、画像処理部50はこの強度分布が光沢度ルックアップテーブルLUTの第1行のデータ(金属A)に最も近いと判断し、この画素の光沢度レベルを「10」とする。
なお、この例のように、測定された被撮像物の反射光強度と光沢度ルックアップテーブルLUTのデータが必ずしも一致するとは限らないが、そのような場合には、測定された被撮像物の反射光強度に最も近いデータに基づいて光沢度レベルを求めればよい。
画像処理部50は、このような処理を画像信号を表す全ての画素について行う。すなわち画像処理部50は、上述の処理がまだ行われていない画素が存在すれば(ステップSa2;NO)、その画素について光沢度を算出する(ステップSa1)、という処理を繰り返す。
そして画像処理部50は、全ての画素の光沢度を算出したら(ステップSa2;YES)、画像信号が表す画像領域の中から高光沢となる領域を特定する(ステップSa3)。ステップSa1の処理によって各画素に光沢度レベルの値が付与されるが、いずれの光沢度レベルから高光沢であるとするかは任意である。ここでは、光沢度レベルが「8」以上の画素を高光沢であるとする。このようにして高光沢であると特定された画像領域のことを、以下では「光沢領域」という。
光沢領域が特定されたら、画像処理部50はこの光沢領域に基づいて光沢情報を生成する(ステップSa4)。光沢情報は画像データのどの画像領域が高光沢となるかを表す情報であり、例えば画像データに対してレイヤ情報として付与される。
図9に光沢情報の一例を示す。この図は、被撮像物として携帯電話を撮像した場合の例であり、画像データGとレイヤ情報Lとを示している。この携帯電話は、ディスプレイ領域a1とボタン領域a2は表面が光沢仕上げとなっている。この場合のレイヤ情報Lは、実線で示された領域a1と領域a2が光沢領域となる。ここにおいて、光沢領域は、例えば領域a2の光沢度レベルは「8」,領域a1の光沢度レベルは「9」というように、それぞれが異なる光沢度レベルを表していてもよい。
以上のように光沢情報生成処理は行われる。この処理を行うことにより、画像データに光沢情報を付与することが可能となる。画像形成装置1はこの光沢情報を用いて画像形成プロセスを行うことにより、被撮像物の光沢を示す領域に対してその光沢を反映させることが可能となる。光沢を反映させる具体的な処理については、後述する[2−3]において詳しく説明する。
[2−2−2:テクスチャ情報生成処理]
続いて、画像処理部50が画像信号からテクスチャ情報を生成する処理について説明する。この処理は、45°色信号および65°色信号を用いて行われる。
ここで、テクスチャ情報生成処理を説明する前に、本実施形態における「テクスチャ情報」について説明しておく。
テクスチャ情報とは、被撮像物の巨視的な表面性状、すなわちテクスチャを表すための情報であり、ここでは、被撮像物表面がざらついた質感や凹凸感を有するときに付与される。テクスチャ情報は上述の光沢情報と同様に、被撮像物表面の質感を表す情報であるが、それぞれの情報が意味する質感はその質を異にしており、被撮像物表面から取得している情報も異なっている。
上述したように、物体表面の光沢の違いは物体表面の微視的な表面性状の違いに起因している。換言すれば、物体表面がどの程度の光沢を示すかは、物体表面における光の波長レベルでの平滑度に依存している。これに対して、上述した「ざらついた質感」や「凹凸感」は、光の波長レベルよりもはるかに大きな表面性状の違いに起因して認識されるものである。このような巨視的な表面性状の判定に際しては、もはや光沢度の場合のような微視的な表面性状はほとんど問題とならず、同様の基準で判定することはできない。
そこで、本発明者は、上述の「ざらついた質感」や「凹凸感」といったテクスチャを判定するために、被撮像物の表面に生じている“影”を用いることとした。人間が視覚的に認識できる程度の凹凸、すなわち巨視的な凹凸であれば、当然、その凹凸は影を生じさせる(これに対して、微視的な凹凸によっては影は発生し得ない)。また、本実施形態の画像形成装置1のように、被撮像物に対して決められた方向から光を照射して撮像する方法によれば、凹凸によって生じる影の長さからその凹凸の高さ(被撮像物のなす平面に直交する方向の変位)を特定することが可能である。本発明者はこれらの点に着目してテクスチャ情報を定義し、これを画像データに付与することとしたのである。
続いて、このようなテクスチャ情報を得るための処理について説明する。
図10は、画像処理部50が行うテクスチャ情報生成処理を示したフローチャートである。同図に沿って説明すると、はじめに画像処理部50は、45°色信号により表される画像信号のうちの暗部となっている領域を特定する(ステップSb1)。ここで特定される領域とは、例えば所定の明度・彩度を下回る領域であり、要するに「黒っぽい色の領域」である。このように暗部であると特定される領域のことを、以下では「暗部領域」という。
続いて画像処理部50は、65°色信号により表される画像信号からも、同様に暗部領域を特定する(ステップSb2)。
上記2種の画像信号から暗部領域を特定したら、画像処理部50はこの暗部領域の中から影に相当する領域を特定する(ステップSb3)。このステップにおける具体的な処理は以下のようになる。
上述のステップSb1,Sb2において特定される暗部領域は、単に所定の明度・彩度を下回る領域に過ぎない。ということは、ここで特定される暗部領域には、光が当たらなかったために暗部となった領域と、もともと被撮像物の一部が黒っぽい材質で形成されており、この表面の色情報が取得された領域とがある。後者は被撮像物の本来の色を示しており、影に相当する領域ではないから、このような領域は影に相当する領域とは区別する必要がある。そのため、画像処理部50は、45°色信号により特定された暗部領域と65°色信号により特定された暗部領域とを比較し、双方において同一の形状となる領域については影に相当しないと判断する。一方、45°色信号により特定された暗部領域と65°色信号により特定された暗部領域とを比較し、双方で異なった形状となる領域については、画像処理部50はこれを影に相当する領域であると判断する。この領域のことを、以下では「影領域」という。
図11は、影領域であると判断される領域を説明するための図である。同図において、図11(a)は被撮像物Oの表面に形成された凸部Cvと、この凸部Cvに入射する入射光L45,L65とを模式的に示している。凸部Cvの高さをhとする。入射光L45は第1光源111からの入射角が45°の入射光であり、入射光L65は第2光源112からの入射角が65°の入射光である。また、図11(b),(c)はそれぞれ、45°色信号と65°色信号とを模式的に示している。これらの図において、領域Sは凸部Cvによって形成される影を示している。
これらの図に示されるように、同じ凸部Cvによって形成される影であっても、45°色信号による影と65°色信号による影とでは異なるものとなる。ここで、変位dが所定の閾値を上回る場合に、画像処理部50はこれらの領域Sを影領域であると判断する。また、このとき画像処理部50は、45°色信号における影の長さl45または65°色信号における影の長さl45を記憶しておく。
ここで図10のフローチャートの説明に戻る。影領域を特定した画像処理部50は、記憶された影の長さに基づいて、影を形成させるテクスチャの高さを算出する(ステップSb4)。例えば図11の例の場合、凸部Cvの高さは入射角の正接に影の長さを乗じることで求められるので、「l45×tan45°」または「l65×tan65°」となる。
テクスチャの高さを算出したら、画像処理部50はこのテクスチャの高さに基づいてテクスチャ情報を生成する(ステップSb5)。テクスチャ情報は、上述のステップSb4において算出された高さが所定の閾値を上回るテクスチャについて付与される情報であり、例えば図11の例であれば、影領域Sを生じさせる凸部Cvに付与される。この閾値の値は任意である。なお、テクスチャ情報も上述の光沢情報と同様に、テクスチャの高さを認識可能とするレベル分けがなされていてもよい。
以上のようにテクスチャ情報生成処理は行われる。この処理を行うことにより、画像データにテクスチャ情報を付与することが可能となる。テクスチャ情報は、上述の光沢情報と同様に、例えば画像データに対してレイヤ情報として付与される。画像形成装置1はこのテクスチャ情報を用いて画像形成プロセスを行うことにより、被撮像物のテクスチャを示す領域に対してそのテクスチャの凹凸を反映させることが可能となる。テクスチャを反映させる具体的な処理については、後述する[2−3]において詳しく説明する。
[2−2−3:分光反射率推定処理および画像データ生成処理]
続いて、画像処理部50が画像信号から被撮像物の分光反射率を推定する処理について説明する。この処理は、45°色信号と記憶部40に記憶されたサンプルデータDATを用いて行われる。分光反射率を推定する方法は特に限定されるものではなく、周知の種々の方法を用いてよい。例えば、主成分分析に基づく低次元線形近似法やWiener推定法のほか、ニューラルネットワークや重回帰分析による推定法を用いることができる。
分光反射率を推定したら、画像処理部50はこの分光反射率に基づいて画像データを生成する。上述したように、本実施形態の画像形成装置1は12種類のトナーを用いることが可能であり、色材としては、C,M,Y,K,R,Or,G,B,Au,Agの10色のトナーがある(透明トナーと発泡トナーは、色の表現ではなく質感の表現に用いられる)。そのため、この画像形成装置1は、通常のC,M,Y,Kの4色の色材を用いた画像形成装置に比べ、再現可能な色域が増加するとともに、同等の色を表現可能なトナーの種類と面積率の組み合わせも増加する。画像処理部50は推定された被撮像物の分光反射率に基づき、それらの組み合わせの中から最適な組み合わせを選択する。つまり、画像処理部50は、被撮像物の分光反射率に最も類似した分光反射特性を有するトナーの種類と面積率の組み合わせを選択する。
このとき、画像処理部50は、例えば色補正・色変換処理、下地除去処理、スクリーン処理における網点形状生成処理などといった複数の処理についても、推定された被撮像物の分光反射率に基づいて最適な処理を組み合わせ、各処理において用いられるパラメータ類を決定する。例えば画像処理部50は、選択されたそれぞれのトナーの網点形状を分光反射率に基づいて異ならせたり、複数のトナーの面積率を減じて別のトナー(例えばKトナー)の面積率を増加するといった処理を行う。
以上のような種々の画像処理を経て、画像処理部50は、画像読取部10において読み取られた画像信号から画像形成部20がトナー像を作像可能な形式の画像データを生成する。このとき画像処理部50は、45°色信号、65°色信号および光沢信号という3つの画像信号から1の画像データを生成する。画像処理部50はこの画像データを画像形成部20に出力し、この画像データが表す画像を記録用紙に形成させる。
[2−3:画像形成処理]
ここでは、画像処理部50により生成された画像データに基づいて、画像形成部20が画像を記録用紙に形成する処理について説明する。
本実施形態の画像形成部20は、いわゆるロータリー方式の現像装置を複数備え、これを中間転写ベルト220に対して直列(タンデム)に配置した構成となっている。かかる構成とすることにより、比較的小型でありながらも、多色のトナーを用いた画像を高速に形成することを可能としている。また、この画像形成部20は、色ではなく質感を表現するためのトナーを備えている。そのトナーとは、光沢を表現するための透明トナーと、テクスチャを表現するための発泡トナーである。
画像形成部20は、このような構成のもとで、被撮像物の質感を再現した画像を形成する点に特徴を有している。以下では、この画像形成部20が画像を形成する動作について説明する。なお、透明トナーと発泡トナーを用いた場合の処理を除けば、本実施形態の画像形成部20の画像形成処理は、従来のロータリー方式の現像装置といわゆるタンデム方式の現像装置の画像形成処理を組み合わせたものとなる。ゆえに、以下の説明においては、透明トナーと発泡トナーを用いた画像形成処理の部分を中心に説明し、その他のトナーによる画像形成処理については、適宜説明を割愛する。
図12は、画像形成部20が行う画像形成処理を示したフローチャートである。同図に沿って説明すると、はじめに画像形成部20は、ある画像データが入力されると、感光体ドラム211を所定の帯電電圧にて一様に帯電させる(ステップSc1)。そして画像形成部20は、透明トナーと発泡トナーを除く各色のトナー像を順次作像する(ステップSc2)。ここで「作像」とは、静電潜像を露光し、この静電潜像にトナーを付着させ、中間転写ベルト220に一次転写させる各プロセスを含むものである。
続いて画像形成部20は、入力された画像データに光沢情報が付与されているか否かを判断する(ステップSc3)。すなわち画像形成部20は、画像データに対して光沢情報に相当するレイヤ情報が付与されているか否かを判断する。
このレイヤ情報が付与されていれば(ステップSc3;YES)、画像形成部20はこのレイヤ情報に基づいて透明トナーを用いたトナー像を作像する(ステップSc4)。この場合において、レイヤ情報が示す光沢領域にレベル分けがされていれば、画像形成部20はそのレベルに応じて露光量等を調整し、トナーの量を変化させる。一方、光沢情報に相当するレイヤ情報が付与されていなければ(ステップSc3;NO)、画像形成部20は上述した透明トナー像を作像する処理をスキップする。
続いて画像形成部20は、入力された画像データにテクスチャ情報が付与されているか否かを判断する(ステップSc5)。すなわち画像形成部20は、画像データに対してテクスチャ情報に相当するレイヤ情報が付与されているか否かを判断する。
このレイヤ情報が付与されていれば(ステップSc5;YES)、画像形成部20はこのレイヤ情報に基づいて発泡トナーを用いたトナー像を作像する(ステップSc6)。この場合においても、レイヤ情報が示すテクスチャ領域にレベル分けがされていれば、画像形成部20はそのレベルに応じて露光量等を調整し、トナーの量を変化させる。一方、テクスチャ情報に相当するレイヤ情報が付与されていなければ(ステップSc5;NO)、画像形成部20は上述した発泡トナー像を作像する処理をスキップする。
なお、トナーは収容される場所や順序を特に問わないものであるから、上述の透明トナーや発泡トナーによる作像のステップは順序が異なっていてもよい。同様に、これらのステップがその他の色のトナー像の作像ステップと前後しても、もちろん問題はない。ただし、透明トナーについては、画像表面に光沢を付与するという性質上、記録用紙上に転写されたときにその他のトナーに覆われていないことが望ましい。
以上の処理によって必要な色のトナー像が作像されたら、画像形成部20は中間転写ベルト220上のトナー像を搬送させ、二次転写ロール240の位置において記録用紙に二次転写させる(ステップSc7)。そして画像形成部20はこの記録用紙を搬送させ、記録用紙に転写されたトナー像を第1定着機構270において定着させる(ステップSc8)。
続いて画像形成部20は、高光沢処理を行うか否かの判定を行う。具体的には、画像形成部20は入力された画像データに光沢情報が付与されているか否かを判断する(ステップSc9)。ここでは説明の便宜上このステップを設けるが、このステップの処理は、例えば上述のステップSc3の判断結果を一時的にメモリ等に格納しておき、この判断結果を参照するような処理に置き換えてもよいし、透明トナーによるトナー像を作像したか否かを判断する処理に置き換えてもよい。
形成されたトナー像に対応する画像データに光沢情報が付与されていた場合には(ステップSc9;YES)、画像形成部20は高光沢処理を実行する(ステップSc10)。すなわち画像形成部20は、切替機構280により記録用紙の搬送方向を図1中の矢印R方向へと変化させ、第2定着機構290において、記録用紙を再度加熱および加圧してトナー像を溶融させた後、定着ベルト291に密着させたまま冷却することで画像表面のトナー像を平滑化させる。そして画像形成部20は、高光沢処理を施された記録用紙を排出して(ステップSc11)、画像形成処理を終了させる。
一方、画像データに光沢情報が付与されていない場合には(ステップSc9;NO)、画像形成部20は高光沢処理を実行しない。このとき画像形成部20は、切替機構280により記録用紙の搬送方向を図1中のL方向へと変化させ、記録用紙が第2定着機構290を通過しないように制御する。そして画像形成部20はこの記録用紙を排出し(ステップSc11)、画像形成処理を終了させる。
本実施形態の画像形成装置1は、以上に説明された動作を行うことで、被撮像物の光沢やテクスチャといった質感を良好に再現した画像を形成することが可能となる。また、画像形成装置1は、被撮像物の分光反射率を推定し、多色のトナーの中からその分光反射特性を最もよく再現できる組み合わせとそのトナーに対する各種処理とを決定し、画像形成処理を行うことで、人間が観察する光源(照明)の違いによるメタメリズム(条件等色)を抑制し、いかなる光源で観察しても被撮像物そのものの色を忠実に再現することが可能となる。
[3:変形例]
以上に本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこのような態様でのみ特定されるものではなく、その実施に際しては種々の変形が可能である。以下においては、本発明に適用可能な変形を例示する。
フルレートキャリッジは、種々の構成を採り得る。まず、光源の位置は上述した実施形態に限定されず、第2光源の入射角は65°より大きくても小さくてもよい。第2光源の入射角は、被撮像物のテクスチャを良好に読み取ることができる角度であればいかなる角度であってもよい。この場合において、第2光源の入射角が第1光源の入射角よりも小さくなってもよい。
なお、上述の実施形態においては、第1光源111および第2光源112は分光エネルギー分布が可視光領域の全体に渡る単一の光源であると説明したが、このような態様に限定されない。例えば、これらの光源はそれぞれ、分光エネルギー分布の異なる複数の光源を用いたものであってもよい。このように、分光エネルギー分布の異なる複数の光源で被撮像物を照射することにより、メタメリズムをさらに抑制させることが可能となる。
また、ミラー等の結像手段についても種々の構成が考えられる。図13および図14にその例を示す。
図13のフルレートキャリッジ310は、液晶シャッタを設けた例である。同図において、フルレートキャリッジ310は、第1光源311と、第2光源312と、ミラー313,314,315,316と、ハーフミラー317と、液晶シャッタ318とを備えている。液晶シャッタ318とは、電圧を印加されることにより内部を進行する光の透過率を異ならせることのできる装置であり、ここでは拡散反射光Ldrの進行する領域318aと正反射光Lsrの進行する領域318bの透過率をそれぞれ独立に変化させることが可能となっている。また、ハーフミラー317は、ミラー314からの拡散反射光Ldrを反射させる一方、ミラー316からの正反射光Lsrを透過させる。フルレートキャリッジ310を用いて拡散反射光Ldrを読み取る場合には、領域318aの透過率を100%近くまで上昇させる一方、領域318bの透過率を0%近くまで減少させる。また、フルレートキャリッジ310を用いて正反射光Lsrを読み取る場合には、領域318aの透過率を0%近くまで減少させる一方、領域318bの透過率を100%近くまで上昇させる。このような構成を用いても、フルレートキャリッジにより正反射光Lsrと拡散反射光Ldrの双方を読み取ることができる。
また、図14のフルレートキャリッジ410は、プリズムミラーを設けた例である。同図において、フルレートキャリッジ410は、第1光源411と、第2光源412と、プリズムミラー413と、回動光トラップ414とを備えている。プリズムミラー413は、例えばSCHOTT社のBK7等の低屈折率・低分散の硝材により形成された複数の角柱の表面にミラー層やハーフミラー層、あるいは反射防止層等をコートし、これらを硝材とほぼ同程度の屈折率を有する光学接着剤により接着して得られた多角柱である。プリズムミラー413の断面はA,B,C,D,E,F,Gを頂点とした七角形であり、面AB,CD,DEにはミラーの機能を有するアルミニウム薄膜が真空蒸着されている。また、面CFはハーフミラーを形成しており、面DEの図中413tに相当する部分には光トラップ116tと同様の反射防止層が設けられている。回動光トラップ414は、その両面に光トラップ116tと同様の反射防止層が設けられており、図示せぬ駆動手段によって414aを軸として回動される。回動光トラップ414は、プリズムミラー413の面EFに沿う位置にあるときには被撮像物Oからの拡散反射光Ldrを吸収し、プリズムミラー413の面DEに沿う位置にあるときには被撮像物Oからの正反射光Lsrを吸収する。このような構成を用いても、フルレートキャリッジにより正反射光Lsrと拡散反射光Ldrの双方を読み取ることができる。
もちろん、上述の例の他にも、反射光の反射の回数を増やすことなどによりさまざまな変形を適用可能である。
また、読み取る反射光の角度の種類を増やしてもよい。例えば、上述した0±5°と45±5°に加えて、65±10°,22.5±5°などの反射角で読み取ってもよい。読み取る反射光の角度の種類を増やした場合には、光沢度ルックアップテーブルに記述されるデータの量も増加する。このとき、複数の反射角の中から、読み取る被撮像物の材質や光沢度に応じて最適な反射角が選択される構成としてもよいし、操作者が選択する構成としてもよい。
なお、上述のいずれの場合においても、正反射光Lsrと拡散反射光Ldrの被撮像物から撮像手段に至るまでの距離、すなわち光路長は、互いに等しくなることが望ましい。このようにすれば、スキャン動作の度に焦点距離の調節等を行う必要がなく、処理効率を高めることができる。さらに、正反射光Lsrと拡散反射光Ldrのミラーによる反射の回数はともに奇数か、あるいはともに偶数となることが望ましい。このようにすれば、それぞれの反射光が結像したときに像方向を一致させることができる。
続いて、ラインセンサの変形例を説明する。上述の実施形態においては、ラインセンサ140はオンチップカラーフィルタを備えた複数ラインのCCDイメージセンサであると説明したが、本発明はもちろん、このような構成に限定されない。例えば、撮像手段が1ラインのイメージセンサであって、スライド式または回転式のカラーフィルタを備える構成であってもよい。このような構成とすれば、ラインセンサをより安価に構成することができるが、読み取る色数を増加させると、そのぶん読み取り動作を行う回数も増加する欠点を有する。
また、ラインセンサが読み取る色数についても4色に限定されず、5色以上であってもよい。色数が多いほど分光反射率を精度良く推定することが可能となるが、生成される画像信号のデータ量や画像処理時間を考慮すれば、4〜6色程度が適当である。
なお、このとき選択される色についても、種々の波長領域の色を用いることができる。本発明において分光反射率の推定に好適に用いられる色の例を図15に示す。
続いて、画像形成部の変形例を説明する。上述の実施形態においては、4つの現像ユニット214,215,216,217を備えた3台のロータリー方式の現像機構210a,210b,210cを挙げて説明したが、その他の構成でもよい。例えば、12色を全て直列に配したタンデム方式の現像装置であってもよいし、あるいは、特定のトナー、例えば透明トナーと発泡トナーだけを独立した単色の現像装置として設け、その他のトナーはロータリー式の現像装置とするような、ロータリー方式とタンデム方式とを組み合わせた構成であってもよい。このとき、もちろんトナーの色数を増減させてもよい。
また、中間転写ベルトに代えて用紙搬送ベルトを備え、中間転写体(中間転写ベルト)への転写を行わずに感光体ドラムから記録用紙に直接転写を行ってもよい。
なお、上述の実施形態においては、テクスチャ情報を記録用紙上の画像に再現するのに発泡トナーを用いたが、このような態様に限定されない。例えば、テクスチャと判断された領域、つまり高さを有する領域の明度・彩度を上げ、影領域であると判断された領域は明度・彩度を下げるなどの処理を行い、陰影によってテクスチャを表現してもよい。
また、上述の実施形態においては、光沢情報を記録用紙上の画像に再現するのには透明トナーを用いたが、これだけではなく、透明トナーを用いる場合にはそれ以外の場合とは異なる記録用紙を用いてもよい。このとき用いられる記録用紙としては、例えばコート紙が好適である。ここでコート紙とは、記録用紙に通常用いられるセルロース等の材料の表面に例えばポリエチレン等の熱可塑性樹脂による受像層を設け、加熱および加圧することで記録用紙表面のトナーがこの受像層に埋め込まれるようになっている記録用紙である。このとき受像層には、トナーの離型性を向上させるためにパラフィン系のワックス等を添加してもよい。このような記録用紙を用いれば、画像の表面をより高光沢に仕上げることができる。
また、上述した光沢やテクスチャを表現するための処理の実行の可否は、操作者が操作部を用いて指示するようにしてもよい。その他にも、画像形成装置があらかじめいくつかの動作モードを備えておき、ユーザの指示に従った動作モードで画像処理や画像形成処理を行うようにしてもよい。
上述の動作モードとしては、例えば「金属モード」や「織物モード」などが考えられる。ここで「金属モード」とは、被撮像物が金属であること示している。この動作モードの情報をあらかじめ画像形成装置に与えておくことで、画像形成装置は、この情報に基づいて、光沢度の算出や分光反射率の推定に際してある程度の絞り込みを行ってもよい。これは、例えば「金属モード」が選択されている場合には、光沢度ルックアップテーブルLUTのうち金属を撮像して得られた光沢度以外のデータは用いずに光沢度の算出を行う、というものである。
なお、上述の実施形態においては、本発明を画像形成装置に適用した場合で説明したが、このような態様に限定されない。例えば、本実施形態の画像読取部に相当する構成を備えた撮像装置(スキャナ)によれば、上述の光沢情報やテクスチャ情報を特定できる画像信号を出力することが可能となるから、画像形成部を備えていなくとも一定の効果を奏することができる。すなわち、本発明はこのような撮像装置としても特定される。
本発明の一実施形態に係る画像形成装置の装置構成を示した図である。 被撮像物からの光の反射状態を概念的に示した図である。 同実施形態に係る画像形成装置のフルレートキャリッジの構成を示した図である。 さまざまな被撮像物に光を照射した場合の反射光の強度分布をモデル的に示したグラフである。 同実施形態に係る画像形成装置の現像機構の構成を示した図である。 同実施形態に係る画像形成装置の構成を機能的に示したブロック図である。 光沢度ルックアップテーブルのデータ構造の一例を示す。 同実施形態に係る画像形成装置の画像処理部が行う光沢情報生成処理を示したフローチャートである。 光沢情報の一例を示した図である。 同実施形態に係る画像形成装置の画像処理部が行うテクスチャ情報生成処理を示したフローチャートである。 同実施形態に係る画像形成装置において影領域であると判断される領域を説明するための図である。 同実施形態に係る画像形成装置の画像形成部が行う画像形成処理を示したフローチャートである。 フルレートキャリッジの変形例を示した図である。 フルレートキャリッジの変形例を示した図である。 分光反射率の推定に好適に用いられる色の例を示した図である。
符号の説明
1…画像形成装置、10…画像読取部、110…フルレートキャリッジ、120…ハーフレートキャリッジ、130…結像レンズ、140…ラインセンサ、150…プラテンガラス、160…プラテンカバー、20…画像形成部、210,210a,210b,210c…現像機構、220…中間転写ベルト、230…一次転写ロール、240…二次転写ロール、250…バックアップロール、260…給紙機構、270…第1定着機構、280…切替機構、290…第2定着機構、30…制御部、40…記憶部、50…画像処理部、60…操作部、70…データ入出力部。

Claims (11)

  1. 被撮像物に第1および第2の入射角から光を照射する照射手段と、
    前記照射手段が光を照射することによって生じる前記被撮像物からの拡散反射光を結像させる第1の結像手段と、
    前記照射手段が光を照射することによって生じる前記被撮像物からの正反射光を結像させる第2の結像手段と、
    前記第1または第2の結像手段により結像された光をそれぞれ受光し、その光に応じた画像信号を生成する撮像手段と、
    前記第1の入射角で入射し、前記第1の結像手段により結像された光によって前記撮像手段が生成する第1の画像信号と、前記第1の入射角で入射し、前記第2の結像手段により結像された光によって前記撮像手段が生成する第2の画像信号とを比較することにより、前記被撮像物上の光沢を有する領域を示す光沢情報を生成する光沢情報生成手段と、
    前記第1の画像信号と、前記第2の入射角で入射し、前記第1の結像手段により結像された光によって前記撮像手段が生成する第3の画像信号とを比較することにより、前記被撮像物上のテクスチャを有する領域を示すテクスチャ情報を生成するテクスチャ情報生成手段と、
    前記撮像手段により生成された画像信号に基づき、前記被撮像物を表す画像データを生成する画像データ生成手段と、
    前記画像データ生成手段により生成された画像データに対して、前記光沢情報生成手段により生成された光沢情報と前記テクスチャ情報生成手段により生成されたテクスチャ情報とを付与して出力する出力手段と
    を備える撮像装置。
  2. 前記照射手段は、分光エネルギー分布が可視光領域の全域に渡る光源であり、
    前記撮像手段は、少なくとも4列以上の複数の撮像素子列であり、各々の撮像素子列が異なる分光感度を有する
    請求項1記載の撮像装置。
  3. 前記照射手段は、分光エネルギー分布の異なる複数の光源である
    請求項1記載の撮像装置。
  4. 前記第1の結像手段は、前記被撮像物からの反射角が−5°ないし5°である拡散反射光を結像させ、
    前記第2の結像手段は、前記被撮像物からの反射角が40°ないし50°である正反射光を結像させる
    請求項1記載の撮像装置。
  5. 前記第1の結像手段は、さらに、前記被撮像物からの反射角が55°ないし75°である拡散反射光を結像させる
    請求項4記載の撮像装置。
  6. 前記第1の結像手段は、さらに、前記被撮像物からの反射角が17.5°ないし27.5°である拡散反射光を結像させる
    請求項5記載の撮像装置。
  7. 被撮像物に第1および第2の入射角から光を照射する照射手段と、
    前記照射手段が光を照射することによって生じる前記被撮像物からの拡散反射光を結像させる第1の結像手段と、
    前記照射手段が光を照射することによって生じる前記被撮像物からの正反射光を結像させる第2の結像手段と、
    前記第1または第2の結像手段により結像された光をそれぞれ受光し、その光に応じた画像信号を生成する撮像手段と、
    前記第1の入射角で入射し、前記第1の結像手段により結像された光によって前記撮像手段が生成する第1の画像信号と、前記第1の入射角で入射し、前記第2の結像手段により結像された光によって前記撮像手段が生成する第2の画像信号とを比較することにより、前記被撮像物上の光沢を有する領域を示す光沢情報を生成する光沢情報生成手段と、
    前記第1の画像信号と、前記第2の入射角で入射し、前記第1の結像手段により結像された光によって前記撮像手段が生成する第3の画像信号とを比較することにより、前記被撮像物上のテクスチャを有する領域を示すテクスチャ情報を生成するテクスチャ情報生成手段と、
    前記撮像手段により生成された画像信号に基づき、前記被撮像物を表す画像データを生成する画像データ生成手段と、
    前記画像データ生成手段により生成された画像データに対して、前記光沢情報生成手段により生成された光沢情報と前記テクスチャ情報生成手段により生成されたテクスチャ情報とを付与して供給する供給手段と、
    前記供給手段により供給された画像データに基づき、記録材にトナー像を形成する画像形成手段と
    を備える画像形成装置。
  8. 前記画像形成手段は、少なくとも5色以上のトナーによりトナー像を形成する
    請求項7記載の画像形成装置。
  9. 前記画像形成手段は、前記画像データにおける前記光沢情報が示す領域に、透明トナーを用いたトナー像を形成する
    請求項7記載の画像形成装置。
  10. 前記画像形成手段は、前記画像データにおける前記テクスチャ情報が示す領域に、発泡トナーを用いたトナー像を形成する
    請求項7記載の画像形成装置。
  11. 第1の入射角で被撮像物に光を照射して、その正反射光に応じた第1の画像信号を生成するステップと、
    前記第1の入射角で前記被撮像物に光を照射して、その拡散反射光に応じた第2の画像信号を生成するステップと、
    第2の入射角で前記被撮像物に光を照射して、その拡散反射光に応じた第3の画像信号を生成するステップと、
    前記第1の画像信号と前記第2の画像信号とを比較することにより、前記被撮像物上の光沢を有する領域を示す光沢情報を生成するステップと、
    前記第1の画像信号と前記第3の画像信号とを比較することにより、前記被撮像物上のテクスチャを有する領域を示すテクスチャ情報を生成するステップと、
    前記被撮像物からの拡散反射光に応じた画像信号に基づき、前記被撮像物を表す画像データを生成するステップと、
    前記画像データに対して、前記光沢情報と前記テクスチャ情報とを付与して出力するステップと
    を備える質感読取方法。
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