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JP2006104030A - シリコンの精製方法 - Google Patents

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JP2006104030A JP2004294890A JP2004294890A JP2006104030A JP 2006104030 A JP2006104030 A JP 2006104030A JP 2004294890 A JP2004294890 A JP 2004294890A JP 2004294890 A JP2004294890 A JP 2004294890A JP 2006104030 A JP2006104030 A JP 2006104030A
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Kenji Wada
健司 和田
Hisashi Hayakawa
尚志 早川
Toshiaki Fukuyama
稔章 福山
Hiroyasu Fujiwara
弘康 藤原
Yoshitatsu Otsuka
良達 大塚
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Abstract

【課題】 シリコンからのボロン除去速度を向上させて、効率良くシリコンを精製することができる方法を提供する。
【解決手段】 シリコンの精製方法において、不純物を含有する溶融シリコン(8)を坩堝(2)中に保持し、その溶融シリコン(8)中に処理ガスを吹き込み、その処理ガス中に含まれる還元性ガスの流量がシリコン1g当たり0.05L/hr以上1L/hr以下に設定される。
【選択図】 図1

Description

本発明はシリコンの精製方法に関し、特に太陽電池の製造に用いられるシリコンの精製方法に関する。
鉄、アルミニウム、銅およびシリコンなどは、自然界に単体で存在することは非常に稀であり、大部分が酸化物などの化合物として存在する。したがって、これらの元素を構造材料、導電性材料または半導体材料などとして用いる場合には、これらの元素の酸化物などを還元することによって、不純物を除去する必要がある。しかし、それらの酸化物などを還元することのみによっては、元素材料中の不純物を十分に除去することができない。それゆえ、還元された元素材料中に含まれる不純物量をさらに低減させる必要がある。このような不純物量を低減させる工程が、精製と称される。
例えば、構造用材料として用いられる鉄の精製においては、高炉から取り出された銑鉄を精製添加剤と呼ばれる溶融酸化物と接触させることによって、靭性を著しく損なうリンおよび硫黄などの不純物を精製添加剤中に取り込み、銑鉄中の不純物の含有量を低減させている。また、鉄鋼の機械的強度を制御し得る不純物である炭素については、銑鉄中に酸素ガスを吹き込んで炭素を酸化して二酸化炭素ガスとして除去し、それによって銑鉄中の炭素量を調整している。
また、導電性材料として用いられる銅の精製では、平衡状態における固体銅中での不純物濃度と溶融銅中での不純物濃度との比である不純物の偏析係数が小さいことを利用して、溶融状態にある銅を平衡状態に近くなるような遅い速度で凝固させることによって、固体銅中の不純物濃度を低減させている。
半導体材料として用いられるシリコンの精製においては、珪石を還元して得られる純度98%以上のシリコンをシラン(SiH4)またはトリクロロシラン(SiHCl3)などのガスに変換し、さらにこれらのガスをベルジャ炉内において分解または水素で還元することによって、純度が約11N(ナイン)程度の多結晶シリコンが得られる。この多結晶シリコンを単結晶成長させることによって、LSI(大規模集積回路)などの電子デバイスの製造に用いられるシリコンが得られる。電子デバイスの製造に用いられるシリコンを得るためには、非常に複雑な製造工程および厳密な工程管理が必要となることから、その製造コストは必然的に高くなる。
一方、化石燃料資源の枯渇などのエネルギー問題および地球温暖化などの環境問題に関する意識の高まりから、太陽電池の需要が近年急速に伸びている。太陽電池の製造に用いられるシリコンに要求される純度は約6N程度である。したがって、これまで太陽電池の製造に用いられてきた電子デバイス用シリコンの規格外品は、太陽電池用としては過剰な品質を有していることになる。
今日までは、電子デバイス用規格外シリコンの発生量が太陽電池用シリコンの需要量に勝っていたので問題はなかった。しかし、近い将来には、太陽電池用シリコンの需要量が電子デバイス用規格外シリコンの発生量を上回ることが確実視されており、太陽電池用シリコンの安価な製造技術の確立が強く求められている。そのような技術として、上述した酸化還元反応または凝固偏析などを利用した冶金学的方法により精製する手法が、近年注目されている。
太陽電池用シリコンに含まれる不純物のうちでリンおよびボロンの偏析係数はそれぞれ0.35および0.8であり、いずれも大きい値である。したがって、リンおよびボロンの除去に関しては、凝固偏析を利用する精製方法はほとんど効果がないことが知られている。
ボロンの除去に関しては、特許文献1および非特許文献1において、不活性ガスと水蒸気とを含む混合ガスのプラズマを溶融シリコン表面に照射する方法が開示されている。また、特許文献2では、水素と酸素とを燃焼させるトーチを溶融シリコンに浸漬する方法が開示されている。さらに、特許文献3では、溶融シリコンを撹拌しつつ、そこへ処理ガスを吹き込む方法が開示されている。これらの方法は、シリコンに対して酸化性ガス(水蒸気、酸素)と水素ガスの少なくともいずれかを作用させている。
特許第3205352号公報 米国特許5972107号公報 特開2001−58811号公報 日本金属学会誌第67巻10号(2003年)第583頁〜589頁
上述の先行技術文献に開示されたシリコンの精製方法では、ボロンの除去速度が不十分であり、また設備投資額が莫大になるなどの問題があり、未だ実用化されていない。その理由は、シリコンおよびシリコン中のボロンに対する酸化性ガスおよび水素ガスの役割に関する理解が十分ではなく、適切な処理ガス組成や流量などが明らかになっていないことによる。
例えば、特許文献1および非特許文献1に開示されている方法では、反応が局所的になるので得られるスループットに制限があり、また精製装置自体が高額なものとなってしまう問題がある。さらに、特許文献1では水素ガスを添加した例が開示されておらず、適切な処理ガス組成や流量などが不明である。
特許文献2による方法においても、実施例が開示されておらず、適切な処理ガス組成や流量などが不明である。また、特許文献3による方法では、ボロンの除去速度が不十分な実施例しか開示されておらず、適切な処理ガス組成や流量などが不明である。
そこで、本発明は、ボロンの除去速度を向上させて効率良くシリコンを精製することができる方法を提供することを目的としている。
本発明によるシリコンの精製方法においては、不純物を含有する溶融シリコンを坩堝中に保持し、その溶融シリコン中に処理ガスを吹き込み、その処理ガス中に含まれる還元性ガスの流量がシリコン1g当たり0.05L/hr以上1L/hr以下に設定されることを特徴としている。
なお、処理ガス中の還元性ガスは、水素であることが好ましい。また、処理ガス中に酸化性ガスを添加することが好ましい。酸化性ガスは、水蒸気であることが好ましい。
坩堝として、酸化性材料を使用し得る。酸化ケイ素を45質量%以上含む精製添加剤を坩堝内へ添加することが好ましい。精製添加剤中に、アルカリ金属の酸化物を1種類以上混合することがさらに好ましい。
坩堝として、非酸化性材料を使用することもできる。処理ガス流量は、シリコン1g当たり0.15L/hr以上1L/hr以下に設定することが好ましい。
本発明のシリコン精製方法によれば、ボロンの除去速度を向上させて効率良くシリコンを精製することができ、太陽電池用シリコンを効率良く安価に製造することができる。
(装置)
図1において、本発明に用いられる精製装置の好ましい一例の主要部が模式的な断面図で示されている。この精製装置は、ステンレス製の壁面を有する溶解炉1と、坩堝2と、電磁誘導加熱装置3と、黒鉛製のガス吹込管4とを含んでいる。坩堝2内にはシリコン8および望まれる場合には精製添加剤9が装入され、電磁誘導加熱装置3によって加熱されたシリコン8と精製添加剤9が溶融状態で保持される。
ガス吹込管4は、その底部に攪拌部5を備えている。また、ガス吹込管4の上部には、撹拌部5を溶融シリコン8中で回転させるための回転駆動機構(図示せず)と、撹拌部5を溶融シリコン8中に浸漬させかつそこから離脱させるための昇降機構(図示せず)とが設けられている。攪拌部5を含むガス吹込管4の内部には、処理ガスの通り道となる中空のガス流路7が形成されている。また、ガス吹込管4が溶解炉1の壁を貫通する部分には、溶解炉1内部の密閉性を確保するとともにガス吹込管4を回転可能にするためのシール機構12が設けられている。
ガス吹込管4および攪拌部5の材質には黒鉛を用いることが好ましく、坩堝2の材質にも黒鉛を用いることが好ましい。なぜならば、黒鉛は1400℃を超える温度を有する溶融シリコン8および溶融精製添加剤9と接触しても溶け出さず、さらに室温において任意の形状に加工することが容易だからである。
しかし、処理ガス中に酸化性ガスが含まれる場合には、シリコンの精製時間が経過するにつれて、ガス吹込管4の外面とガス流路7および撹拌部5のガス流路面などが酸化性ガスとの反応によって消耗することが判明した。
このような黒鉛部材の消耗により、ガス吹込管4の肉厚が薄くなってその強度が劣化し、それらの部材の使用可能期間が短くなるという問題が浮上した。さらに、ガス吹出口6の径が拡大して、処理ガスの気泡11が微細化されなくなって、シリコンの精製処理時間が長くなってしまうという問題も明らかになった。
溶融シリコン8の温度は、上述のように約1450〜1600℃に保持される。したがって、溶融シリコン8に接触する坩堝2、ガス吹込管4の一部および撹拌部5は、溶融シリコン8の温度と同等程度にまで加熱されることとなる。また、溶融シリコン8からの伝熱により、シリコン湯面近くにおけるガス吹込管4の部位は約500℃以上に加熱される。このような高温の環境において、酸化性ガスがこれら黒鉛製の部材に接触すれば、これら黒鉛製の部材は容易に酸化されるものと考えられる。
このような問題から、ガス吹込管4および撹拌部5の材質として、黒鉛の代わりに、酸化されにくい材料(耐酸化性材料)を用いることも考えられる。黒鉛に代替する材料としては、例えば、炭化ケイ素または窒化ケイ素などの材料を用いることが考えられる。ところが、これらの耐酸化性材料を用いて坩堝2、ガス吹込管4および撹拌部5のような大きな部材を製造することは非常に困難であり、それらの部材の製造コストが非常に高くなる。
また、ガス吹込管4および撹拌部5に用いられる別の材料の例としては、酸化物セラミックスを用いることも考えられる。特に酸化アルミニウム(アルミナ)については、これを用いて上記のような大きな部材を製造することが可能であり、かつ部材の製造コストも安価となる。しかしながら、酸化物セラミックスは溶融精製添加剤9などによって激しく侵食されてしまうことがある。
したがって、本発明に用いられる装置を構成する部材、特に坩堝2、ガス吹込管4および攪拌部5などの部材の材質には黒鉛を用いることが最も望ましいと言えるが、酸化性ガスによって、ガス流路7が酸化されてガス吹込管4が消耗するのをより確実に防ぐために、ガス吹込管4のガス流路7の一部を耐酸化性材料で作製することが好ましい。
なお、本願において、耐酸化性材料とは、シリコンの融点である1412℃以上の温度において、水蒸気あるいは酸素などの酸化性ガスを2体積%以上含むガスに接触しても外観ないし機械的強度が著しく変化しない材料であり、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素などの公知の材料を用い得るが、特にアルミナは高温での強度や酸化性ガスへの耐性に優れかつ安価であるので好ましい。
また、ガス流路7を耐酸化性材料で作製する方法は特に限定されず、耐酸化性材料でできたガス流路保護管10を挿通してガス吹込管4の内面を覆ってガス流路7としてもよく、ペースト状の耐酸化性材料をガス流路7に塗布してもよく、蒸着法や気相成長法などにより耐酸化性材料の薄膜を形成してもよい。
(精製方法)
以下において、本発明に係るシリコンの精製方法の好ましい一例について説明する。まず、図1の精製装置の坩堝2内に固形状の原料シリコンおよび望まれる場合には精製添加剤をも入れ、溶解炉1内の空間をアルゴンなどの不活性ガス雰囲気として、電磁誘導加熱装置3により坩堝2を加熱し、原料シリコンおよび精製添加剤を溶融させる。こうして得られた融液を所定の処理温度に、代表的には1450〜1600℃に保持する。なお、精製添加剤を添加した場合、融液の攪拌前においては、溶融シリコンと溶融精製添加剤とは2層に完全に分離している。
次いで、昇降機構によりガス吹込管4を下降させ、図1に示すように、ガス吹込管4および攪拌部5を坩堝2内の溶融シリコン8中に浸す。そして、ガス吹込管4の中空のガス流路7に導入された処理ガスをガス吹出口6から溶融シリコン8中に吹き込みながら、矢印で示す方向に回転駆動機構によりガス吹込管4を回転させて溶融シリコン8を攪拌する。なお、溶融精製添加剤9を添加した場合、攪拌により溶融精製添加剤9が溶融シリコン8中に分散させられる。
(処理ガス)
本明細書において、処理ガスは、水素ガス、一酸化炭素ガスなどの還元性ガスを含むガスであり、水蒸気、酸素ガス、二酸化炭素などの酸化性ガス、さらにアルゴンなどの不活性ガスあるいは窒素などを含む混合ガスであってもよい。精製処理における各々のガスの役割を以下に説明する。
ボロンなどの不純物は、酸化剤との反応により生成する酸化物となって、その気化蒸発によって溶融シリコンから除去される。この際、同時にシリコンも酸化されて一酸化ケイ素SiOが生成し、その気化蒸発によって坩堝2から排出される。すなわち、酸化反応を促進することでボロンなどの除去速度は速くなるが、同時にシリコンの消失速度も速くなり、結果として得られる精製シリコン量が少なくなる恐れがある。
一方、還元性ガスはシリコンの酸化を抑制し、かつボロンなどの酸化反応を促進する。還元性ガスとして水素ガスを使用することは、シリコン中に不純物を混入させることがないので最も好ましい。また、処理ガス中に酸化性ガスを添加することはボロンなどの不純物の酸化反応を促進するので好ましく、水蒸気を使用することはシリコン中に不純物を混入させることがないので最も好ましい。還元性ガスとして水素ガスを用いて、酸化性ガスとして水蒸気を用いる場合を例にすれば、シリコンの酸化反応は次式1で表される。
[式1]Si+H2O→SiO+H2
ここで、水素ガスを添加することにより、式1で表される反応が矢印方向へ進行することをある程度抑制できる。そして、ボロンを含む気体化合物の中で、蒸気圧が高い(気化蒸発し易い)ものとして例えばHBOを考えれば、HBOの生成反応は次式2で表される。
[式2]4B+2H2O+O2=4HBO
式1で表されるシリコンの酸化反応が抑制された結果、式2で表されるHBOの生成反応に寄与する水蒸気量が増加し、HBOの生成反応が促進される。
また、酸化性ガスとして二酸化炭素ガスを用いる場合は、シリコンの酸化反応は次式3で表され、還元性ガスとして一酸化炭素ガスを添加することにより、この反応の進行が抑制される。
[式3]Si+CO2→SiO+CO
ところで、還元性ガスと酸化性ガスの組み合わせは、上述のような水素ガスと水蒸気、または一酸化炭素ガスと二酸化炭素ガスのように、酸素原子以外に同種の原子が含まれる場合に限定されるのではない。例えば、酸化性ガスとして酸素ガスを用いる場合においても、水素ガスまたは一酸化炭素ガスなどの還元性ガスを添加することは精製処理時間の短縮に効果がある。
酸化性ガスとして例えば酸素ガスが多量に導入されれば、シリコンの酸化物として一酸化ケイ素SiOの他に、式4に示す反応によって二酸化ケイ素SiO2も生成するようになる。
[式4]Si+O2→SiO2
二酸化ケイ素の融点は1713℃であり、代表的なシリコン精製処理温度1450〜1600℃よりも高い。すなわち、精製処理中に生成する二酸化ケイ素は固体であり、溶融シリコン8と処理ガスの気泡11との界面において被膜を形成する。この被膜が存在すれば、処理ガスが溶融シリコン8に接触できなくなり、式2のようなボロンなどの不純物の酸化反応が抑制されるので、精製処理時間が長くなる傾向がある。
ここで、還元性ガスとして例えば水素ガスが処理ガス中に含まれていれば、次式5または次式6に示す反応によって、被膜状の二酸化ケイ素が還元されて消滅するので、ボロンなどの不純物の酸化反応が抑制されることがなくて、シリコン精製処理時間が長くなることはない。
[式5]SiO2+H2→SiO+H2
[式6]SiO2+2H2→Si+2H2
以上のような混合ガスの調製においては、所望のガスの混合比となるように各々のガス流量を設定し、各々のガス導入経路が接続されたガス混合装置において各ガスが混合される。また、酸化性ガスとして使用する水蒸気の量は、通常の加湿装置を用いて処理ガス中の露点を代表的には20〜90℃の範囲とすることによって、処理ガス全体の約2〜70体積%の範囲内で容易に制御することができる。
本発明の処理ガス中の還元性ガスの流量は、シリコン1g当たり0.05L/hr以上1L/hr以下である。処理ガス中の還元性ガスの流量がシリコン1g当たり0.05L/hr以上であれば、その還元性ガスがシリコンの酸化損失抑制に効果を十分に発現して、精製されたシリコンが多量に得られ、かつボロン除去速度を大きくすることができる。一方、処理ガス中の還元性ガスの流量がシリコン1g当たり1L/hr以下であれば、精製処理中に溶融シリコン8が坩堝2の外へ飛散する傾向が小さくなり、精製されたシリコンが多量に得られる。
また、処理ガス流量は、シリコン1g当たり0.15L/hr以上1L/hr以下であることが好ましい。処理ガス流量がシリコン1g当たり0.15L/hr以上であれば、精製されたシリコンが多量に得られ、かつボロン除去速度を大きくすることができる。一方、処理ガス流量がシリコン1g当たり1L/hr以下であれば、精製処理中に溶融シリコン8が坩堝2の外へ飛散する傾向が小さくなり、精製されたシリコンが多量に得られる。
なお、処理ガスの導入圧力は0.1MPaよりも大きくすることが好ましく、0.15MPa以上0.3MPa以下の範囲とすることがより好ましい。こうすることによって、溶融シリコン8中に粘度の高い溶融精製添加剤9が混合している場合であっても、処理ガスの吹出しを安定して継続することができる傾向になる。
(精製添加剤)
本発明に用いられ得る精製添加剤としては、例えば酸化ケイ素と酸化カルシウムとを混合したものなどが用いられ得る。例えば、Advanced Physical Chemistry for Process Metallurgy(1997年発行)の第109頁に記載されたSiO2−CaOの2元系状態図から分かるように、シリコンの融点である約1412℃より高い約1460℃以上で酸化ケイ素と酸化カルシウムとの混合物である精製添加剤を溶融状態にすることができる。
酸化ケイ素の粉末が酸化剤として有用であることは、例えば上述の特許文献1や特許文献2に開示されているが、酸化ケイ素の粉末は溶融シリコン8との濡れ性が悪く、多量の酸化ケイ素の粉末を溶融シリコン8中に添加することができないので、シリコンの精製処理速度が制限されることがある。そこで、酸化ケイ素と酸化カルシウムとの混合物を精製添加剤として用いることによって溶融シリコン8との濡れ性を改善することができるので、溶融精製添加剤としてシリコンの精製処理に必要となる酸化剤を多量に導入することが可能となる。このような精製添加剤は、シリコンに対して5〜50質量%の割合で添加することが好ましく、10〜30質量%の割合で添加することがさらに好ましい。
精製添加剤を用いる場合には、代表的な精製処理温度である1450〜1600℃で精製添加剤が溶融するように、酸化ケイ素を45質量%以上含むものを用いる。そして、酸化ケイ素を60質量%以上含むものは、ボロンなどの不純物に対する酸化剤としての機能が強まるのでさらに好ましい。
しかし、精製添加剤として、酸化ケイ素を60質量%以上含むものを用いた場合には、溶融精製添加剤9がガス吹出口6に付着し、ガス吹出口6が溶融精製添加剤9によって閉塞されることがある。酸化ケイ素を主成分とする精製添加剤は一般的に粘度が大きいので、一旦付着してしまうとその剥離が困難になるものと考えられる。
酸化ケイ素を主成分とする精製添加剤に酸化リチウムおよび酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の酸化物を1種類以上混合することによって、ガス吹出口6の閉塞を抑制することができる。この理由としては、精製添加剤にアルカリ金属の酸化物を混合することによって溶融精製添加剤9の粘度が下がり、ガス吹出口6への付着が抑制されるからであると考えられる。
なお、精製添加剤にアルカリ金属の酸化物を混合する際には、アルカリ金属の酸化物を直接混合してもよいが、アルカリ金属の酸化物は水と反応して水酸化物に変化すれば強アルカリ性を呈するので、取り扱いに注意を要することがある。
そこで、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩または珪酸塩からなる群から選択された少なくとも1種類を精製添加剤に混合することもできる。例えば、炭酸リチウム、炭酸水素リチウムまたは珪酸リチウムを精製添加剤に混合して加熱することによって、酸化ケイ素を主成分とする精製添加剤に酸化リチウムを混合したことと同様の効果が得られる。
なお、酸化ケイ素を主成分とする精製添加剤に炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムまたは珪酸ナトリウムを混合して加熱することによって、酸化ケイ素を主成分とする精製添加剤に酸化ナトリウムを混合したことと同様の効果が得られる。
また、本発明において用いられる精製添加剤用の材料は、上述のものに限定されるものではないことは言うまでもない。例えば、鉄鋼などの精錬分野で一般的に用いられている酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化バリウムまたはフッ化カルシウムなどの添加剤を適宜混合してもよい。
(坩堝)
坩堝2の材料としてシリカなどの酸素を含有する材料を使用する場合は、その坩堝2はシリコンに対して酸化性であり、黒鉛などの酸素を含有しない材料を使用する場合は、その坩堝2はシリコンに対して非酸化性である。
シリカなどの酸化性材料から成る坩堝2は、それ自体が酸化剤として機能する。そして、処理ガス中の酸化性ガスの他にも酸化剤が供給されることとなって、ボロンなどの除去速度を増大させることが可能となる。特にシリカの坩堝の場合は、溶融シリコン中に鉄、アルミニウムなどの金属不純物元素が混入する恐れがなくて好ましい。しかしながら、坩堝2自体が酸化剤として機能する代償として、精製処理を継続するにつれて坩堝材料が消費される結果として坩堝2の強度が低下するので、坩堝2の交換周期が短いという問題が生じる。また、一般にシリカなどの酸化性材料は、後述する精製添加剤と反応して融解する傾向が強いので、精製添加剤を多量に使用することが困難となる。
一方、坩堝2が黒鉛などの非酸化性材料から成る場合は、精製添加剤との反応性が弱いので精製添加剤を用いることが容易であり、ボロンなどの除去速度を増大させることが可能となる。そして、坩堝2自体が精製処理で消費されないので、その交換周期を長くすることが可能である。
なお、坩堝2の内面に、すなわちシリコン8と接触する面に坩堝2と異なる材料が被覆される場合は、その被覆材料に依存して坩堝2が酸化性であるか非酸化性であるかを認識すべきである。例えば、坩堝2がシリカ製であるがその内面に窒化ケイ素が被覆されている場合、それは非酸化性であり、坩堝2が黒鉛製であるがその内面にシリカ系耐熱煉瓦が貼り付けられている場合、それは酸化性であると認識されるべきである。
以下において、本発明の実施例において使用した原料シリコンおよび精製添加剤の作製方法を説明する。
(原料シリコン)
ボロンを質量比で90ppm含有しているスクラップシリコンと純度11Nの半導体級シリコンとを約1:8の質量比で混合することにより、含有されるボロン濃度を質量比で約10ppmに調整した原料シリコンを作製した。
(精製添加剤)
精製添加剤Aは、試薬(純度95%以上)として市販されている粉末状の二酸化ケイ素SiO2と酸化カルシウムCaOとをおよそ45:55の質量比で混合して作製された。
精製添加剤Bは、試薬(純度95%以上)として市販されている粉末状の二酸化ケイ素SiO2と酸化カルシウムCaOとを約65:35の質量比で混合して作製された。
精製添加剤Cは、試薬(純度95%以上)として市販されている粉末状の二酸化ケイ素SiO2、酸化カルシウムCaO、およびケイ酸リチウムLi2SiO3を約10:5:14の質量比で混合して作製された。この精製添加剤Cが溶融すれば、二酸化ケイ素SiO2、酸化カルシウムCaO、および酸化リチウムLi2Oが質量比で約67:17:16の割合で混合されることになる。
以下の種々の具体的実施例において、精製処理条件、ボロン濃度、およびシリコン収率を説明する。
(実施例1)
黒鉛容器の内面にシリカ系耐熱煉瓦を貼り付けた坩堝2内に原料シリコン2kgを入れ、溶解炉1の内部を1気圧のアルゴンガス雰囲気とし、電磁誘導加熱装置3を用いて原料シリコンを溶融して1550℃で保持した。この際、原料シリコンのボロン含有量を測定するために溶融シリコン8の約20gを抽出し、そのうちの5gを測定に用いた。
水素ガス流量を720L/hr(シリコン1g当たり0.36L/hr)、水蒸気流量を320L/hr(シリコン1g当たり0.16L/hr)として混合した処理ガスを流量1040L/hr(シリコン1g当たり0.52L/hr)で、ガス吹込管4に0.2MPaの圧力で導入し、撹拌部5が溶融シリコン8の下方に位置するように、昇降機構によりガス吹込管4を下降させた。
処理ガスが溶融シリコン8中に吹き込まれるのを確認した後、回転機構によりガス吹込管4を400rpmで回転させて、2時間の精製処理を行なった。精製処理前後のボロン含有量を測定したところ、精製処理前は質量比で9.8ppmで精製処理後は0.49ppmであった。ボロン除去反応が次式7に示すようなボロン濃度に対する1次反応であると仮定して、ボロン除去速度係数は1.5hr-1と求められた。これは、精製処理を140分実施すれば、ボロン濃度を質量比で10ppmから太陽電池用原料シリコンとして要求される0.3ppmに低減できることを意味する。
[式7]ln(B/Bo)=−Kt
Bo:処理前ボロン濃度
B:処理後ボロン濃度
K:ボロン除去速度係数
t:処理時間
一方、精製処理後のシリコン凝固塊を含む坩堝2の重量から精製処理前に測定した坩堝2のみの重量を引くことによって求められた精製処理後のシリコン重量は1.7kgであった。シリコンの重量損失速度は一定であると仮定すれば、ボロン濃度を10ppmから0.3ppmに低減する際のシリコン収率は83%と求められた。
(実施例2)
原料シリコン2kgと精製添加剤A0.4kgを黒鉛製の坩堝2内に入れたこと以外は、実施例1と同様にして精製処理を行なった。精製処理前に測定したボロン含有量は質量比で9.6ppmであって処理後は1.1ppmであり、ボロン除去速度係数は1.1hr-1と求められた。これは、精製処理を190分実施すれば、ボロン濃度を10ppmから0.3ppmに低減できることを意味する。
一方、精製処理後のシリコン凝固塊を含む坩堝2の重量から精製処理前に測定した坩堝2のみの重量を引くことによって求められた精製処理後のシリコン重量は1.8kgであった。シリコンの重量損失速度は一定であると仮定すれば、ボロン濃度を10ppmから0.3ppmに低減する際のシリコン収率は84%と求められた。
(実施例3)
原料シリコン2kgと精製添加剤B0.4kgを黒鉛製の坩堝2内に入れたこと以外は、実施例1と同様にして精製処理を行なった。精製処理前に測定したボロン含有量は質量比で9.7ppmであって処理後は0.40ppmであり、ボロン除去速度係数は1.6hr-1と求められた。これは、精製処理を130分実施すれば、ボロン濃度を10ppmから0.3ppmに低減できることを意味する。
一方、精製処理後のシリコン凝固塊を含む坩堝2の重量から精製処理前に測定した坩堝2のみの重量を引くことによって求められた精製処理後のシリコン重量は1.7kgであった。シリコンの重量損失速度は一定であると仮定すれば、ボロン濃度を10ppmから0.3ppmに低減する際のシリコン収率は84%と求められた。
(実施例4)
原料シリコン2kgと精製添加剤C0.4kgを黒鉛製の坩堝2内に入れたこと以外は、実施例1と同様にして精製処理を行なった。精製処理前に測定されたボロン含有量は質量比で9.8ppmであって処理後は0.18ppmであり、ボロン除去速度係数は、2.0hr-1と求められた。これは、精製処理を105分実施すれば、ボロン濃度を10ppmから0.3ppmに低減できることを意味する。
一方、精製処理後のシリコン凝固塊を含む坩堝2の重量から精製処理前に測定した坩堝2のみの重量を引くことによって求められた精製処理後のシリコン重量は1.6kgであった。シリコンの重量損失速度は一定であると仮定すれば、ボロン濃度を10ppmから0.3ppmに低減する際のシリコン収率は83%と求められた。
(実施例5)
水素ガス流量を720L/hr(シリコン1g当たり0.36L/hr)とし、かつ水蒸気流量を160L/hr(シリコン1g当たり0.080L/hr)として混合した処理ガスを流量880L/hr(シリコン1g当たり0.42L/hr)でガス吹込管4に0.2MPaの圧力で導入したこと以外は、実施例4と同様にして精製処理を行った。精製処理前に測定されたボロン含有量は質量比で9.7ppmであって処理後は0.32ppmであり、ボロン除去速度係数は、1.7hr-1と求められた。これは、精製処理を124分実施すれば、ボロン濃度を10ppmから0.3ppmに低減できることを意味する。
一方、精製処理後のシリコン凝固塊を含む坩堝2の重量から精製処理前に測定した坩堝2のみの重量を引くことによって求められた精製処理後のシリコン重量は1.7kgであった。シリコンの重量損失速度は一定であると仮定すれば、ボロン濃度を10ppmから0.3ppmに低減する際のシリコン収率は85%と求められた。
(実施例6)
水素ガス流量を720L/hr(シリコン1g当たり0.36L/hr)とし、かつ水蒸気流量を80L/hr(シリコン1g当たり0.040L/hr)として混合した処理ガスを流量800L/hr(シリコン1g当たり0.40L/hr)でガス吹込管4に0.2MPaの圧力で導入したこと以外は、実施例4と同様にして精製処理を行った。精製処理前に測定されたボロン含有量は質量比で9.9ppmであって処理後は0.40ppmであり、ボロン除去速度係数は1.6hr-1と求められた。これは、精製処理を130分実施すれば、ボロン濃度を10ppmから0.3ppmに低減できることを意味する。
一方、精製処理後のシリコン凝固塊を含む坩堝2の重量から精製処理前に測定した坩堝2のみの重量を引くことで求められた精製処理後のシリコン重量は1.7kgであった。シリコンの重量損失速度は一定であると仮定すれば、ボロン濃度を10ppmから0.3ppmに低減する際のシリコン収率は84%と求められた。
(実施例7)
水素ガス流量を100L/hr(シリコン1g当たり0.050L/hr)とし、かつ水蒸気流量を320L/hr(シリコン1g当たり0.16L/hr)として混合した処理ガスを流量420L/hr(シリコン1g当たり0.21L/hr)でガス吹込管4に0.2MPaの圧力で導入したこと以外は、実施例4と同様にして精製処理を行った。精製処理前に測定されたボロン含有量は質量比で9.7ppmであって処理後は0.59ppmであり、ボロン除去速度係数は、1.4hr-1と求められた。これは、精製処理を150分実施すれば、ボロン濃度を10ppmから0.3ppmに低減できることを意味する。
一方、精製処理後のシリコン凝固塊を含む坩堝2の重量から精製処理前に測定した坩堝2のみの重量を引くことによって求められた精製処理後のシリコン重量は1.7kgであった。シリコンの重量損失速度は一定であると仮定すれば、ボロン濃度を10ppmから0.3ppmに低減する際のシリコン収率は81%と求められた。
(実施例8)
水素ガス流量を720L/hr(シリコン1g当たり0.36L/hr)とし、かつアルゴンガス流量を320L/hr(シリコン1g当たり0.16L/hr)として混合した処理ガスを流量1040L/hr(シリコン1g当たり0.52L/hr)でガス吹込管4に0.2MPaの圧力で導入したこと以外は、実施例4と同様にして精製処理を行った。精製処理前に測定されたボロン含有量は質量比で9.8ppmであって処理後は0.49ppmであり、ボロン除去速度係数は1.5hr-1と求められた。これは、精製処理を140分実施すれば、ボロン濃度を10ppmから0.3ppmに低減ができることを意味する。
一方、精製処理後のシリコン凝固塊を含む坩堝2の重量から精製処理前に測定した坩堝2のみの重量を引くことによって求められた精製処理後のシリコン重量は1.7kgであった。シリコンの重量損失速度は一定であると仮定すれば、ボロン濃度を10ppmから0.3ppmに低減する際のシリコン収率は83%と求められた。
(実施例9)
水素ガス流量を1710L/hr(シリコン1g当たり0.86L/hr)とし、かつ水蒸気流量を190L/hr(シリコン1g当たり0.095L/hr)として混合した処理ガスを流量1900L/hr(シリコン1g当たり0.95L/hr)のもとで600rpmで回転させたガス吹込管4に0.2MPaの圧力で導入したこと以外は、実施例4と同様にして精製処理を行った。精製処理前に測定されたボロン含有量は質量比で9.6ppmであって処理後は0.12ppmであり、ボロン除去速度係数は、2.2hr-1と求められた。これは、精製処理を95分実施すれば、ボロン濃度を10ppmから0.3ppmに低減できることを意味する。
一方、精製処理後のシリコン凝固塊を含む坩堝2の重量から精製処理前に測定した坩堝2のみの重量を引くことによって求められた精製処理後のシリコン重量は1.5kgであった。シリコンの重量損失速度は一定であると仮定すれば、ボロン濃度を10ppmから0.3ppmに低減する際のシリコン収率は80%と求められた。
(実施例10)
水素ガス流量を140L/hr(シリコン1g当たり0.070L/hr)とし、かつ水蒸気流量を160L/hr(シリコン1g当たり0.080L/hr)として混合した処理ガスを流量300L/hr(シリコン1g当たり0.15L/hr)でガス吹込管4に0.2MPaの圧力で導入したこと以外は、実施例4と同様にして精製処理を行った。精製処理前に測定されたボロン含有量は質量比で9.5ppmであって処理後は0.36ppmであり、ボロン除去速度係数は1.6hr-1と求められた。これは、精製処理を130分実施すれば、ボロン濃度を10ppmから0.3ppmに低減できることを意味する。
一方、精製処理後のシリコン凝固塊を含む坩堝2の重量から精製処理前に測定した坩堝2のみの重量を引くことによって求められた精製処理後のシリコン重量は1.7kgであった。シリコンの重量損失速度は一定であると仮定すれば、ボロン濃度を10ppmから0.3ppmに低減する際のシリコン収率は84%と求められた。
(実施例11)
水素ガス流量を240L/hr(シリコン1g当たり0.12L/hr)とし、かつ水蒸気流量を80L/hr(シリコン1g当たり0.040L/hr)として混合した処理ガスを流量320L/hr(シリコン1g当たり0.16L/hr)でガス吹込管4に0.2MPaの圧力で導入したこと以外は、実施例4と同様にして精製処理を行った。精製処理前に測定されたボロン含有量は質量比で9.7ppmであって処理後は0.45ppmであり、ボロン除去速度係数は1.5hr-1と求められた。これは、精製処理を140分実施すれば、ボロン濃度を10ppmから0.3ppmに低減できることを意味する。
一方、精製処理後のシリコン凝固塊を含む坩堝2の重量から精製処理前に測定した坩堝2のみの重量を引くことによって求められた精製処理後のシリコン重量は1.7kgであった。シリコンの重量損失速度は一定であると仮定すれば、ボロン濃度を10ppmから0.3ppmに低減する際のシリコン収率は83%と求められた。
(比較例1)
水素ガス流量を80L/hr(シリコン1g当たり0.040L/hr)とし、かつ水蒸気流量を180L/hr(シリコン1g当たり0.090L/hr)として混合した処理ガスを流量260L/hr(シリコン1g当たり0.13L/hr)でガス吹込管4に0.2MPaの圧力で導入したこと以外は、実施例4と同様にして精製処理を行った。精製処理前に測定されたボロン含有量は質量比で9.6ppmであって処理後は3.0ppmであり、ボロン除去速度係数は0.58hr-1と求められた。これは、ボロン濃度を10ppmから0.3ppmに低減させるために精製処理を6時間実施しなければならないことを意味する。
(比較例2)
水素ガス流量を2100L/hr(シリコン1g当たり1.05L/hr)とし、かつ水蒸気流量を100L/hr(シリコン1g当たり0.05L/hr)として混合した処理ガスを流量2200L/hr(シリコン1g当たり1.10L/hr)でガス吹込管4に0.2MPaの圧力で導入したこと以外は、実施例4と同様にして精製処理を行った。精製処理前に測定されたボロン含有量は質量比で9.7ppmであって処理後は0.45ppmであり、ボロン除去速度係数は1.5hr-1と求められた。これは、精製処理を実施例11とほぼ同じ時間である140分実施すれば、ボロン濃度を10ppmから0.3ppmに低減できることを意味する。
しかしながら、精製処理後のシリコン凝固塊を含む坩堝2の重量から精製処理前に測定した坩堝2のみの重量を引くことによって求められた精製処理後のシリコン重量は1.0kgであった。シリコンの重量損失速度は一定であると仮定すれば、ボロン濃度を10ppmから0.3ppmに低減させる際のシリコン収率は58%と求められた。本比較例2においては、精製処理中に溶融シリコンが激しく波立ち、多数のシリコン飛沫が坩堝2から飛散している様子が観察された。
以上の実施例および比較例における精製条件およびSi収率が次の表1にまとめられて示されている。
Figure 2006104030
なお、以上の実施例および比較例においては、上述の所定の時間だけ精製処理を行なった後、溶融シリコン8の表面から十分上方に撹拌部5が位置するまで昇降機構によりガス吹込管4を上昇させ、処理後のボロン含有量を測定するための溶融シリコン8を数g程度取り出すことにより、ボロン含有量の測定が行なわれた。また、精製添加剤の材料を添加した場合は、溶融シリコン8と溶融精製添加剤9とを十分に分離させるために数分間静置して、精製後のシリコン融液8中に溶融精製添加剤9が混入しないようにした。ボロン含有量の測定は、ICP(誘導結合プラズマ)発光分析法により行なった。
また、以上においては、原料シリコンとして半導体級シリコンとボロン含有スクラップシリコンとの混合物を用いたが、ボロン以外の不純物を含有している原料、例えば工業的に広く利用されている純度98%程度のシリコンであっても、本発明の効果が発現することは言うまでもない。
また、以上の実施例および比較例においては固体状態のシリコンに固体状態の精製添加剤を添加して溶融させたが、溶融状態のシリコンに固体状態の精製添加剤を添加して溶融させてもよく、固体状態のシリコンに溶融状態の精製添加剤を添加して溶融させてもよく、さらに溶融状態のシリコンに溶融状態の精製添加剤を添加して溶融状態に保持してもよいことは言うまでもない。
さらに、本発明が適用されるところは、本実施例に限定されるものではなく、例えば精製添加剤の混合量、ガス吹込管4の回転数などは、処理を行う原料シリコンの量、あるいは坩堝2の形状などにより最適な状態となるように適宜選択されるべきものである。
今回開示された発明の実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明によれば、シリコンからのボロン除去速度を向上させることにより、効率良くシリコンの精製を行なうことができる。したがって、本発明によれば太陽電池用シリコンを安価に製造することができ、本発明は太陽電池の製造に好適に利用され得る。
本発明に用いられる精製装置の好ましい一例の主要部を示す模式的な断面図である。
符号の説明
1 溶解炉、2 坩堝、3 電磁誘導加熱装置、4 ガス吹込管、5 攪拌部、6 ガス吹出口、7 ガス流路、8 溶融シリコン、9 溶融精製添加剤、10 ガス流路保護管、11 気泡、12 シール機構。

Claims (9)

  1. 不純物を含有する溶融シリコンを坩堝中に保持し、前記溶融シリコン中に処理ガスを吹き込み、前記処理ガス中に含まれる還元性ガスの流量がシリコン1g当たり0.05L/hr以上1L/hr以下に設定されることを特徴とするシリコンの精製方法。
  2. 前記還元性ガスは水素であることを特徴とする請求項1に記載のシリコンの精製方法。
  3. 前記処理ガスに酸化性ガスを添加することを特徴とする請求項1または2に記載のシリコンの精製方法。
  4. 前記酸化性ガスは水蒸気であることを特徴とする請求項3に記載のシリコンの精製方法。
  5. 前記坩堝が酸化性材料から成ることを特徴とする請求項1または2に記載のシリコンの精製方法。
  6. 酸化ケイ素を45質量%以上含む精製添加剤が前記坩堝内に添加されることを特徴とする請求項1または2に記載のシリコンの精製方法。
  7. 前記精製添加剤中にアルカリ金属の酸化物の1種類以上が混合されることを特徴とする請求項6に記載のシリコンの精製方法。
  8. 前記坩堝が非酸化性材料から成ることを特徴とする請求項6または7に記載のシリコンの精製方法。
  9. 前記処理ガスの流量はシリコン1g当たり0.15L/hr以上1L/hr以下に設定されることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のシリコンの精製方法。
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