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JP2006196452A - 電極 - Google Patents

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JP2006196452A JP2005361118A JP2005361118A JP2006196452A JP 2006196452 A JP2006196452 A JP 2006196452A JP 2005361118 A JP2005361118 A JP 2005361118A JP 2005361118 A JP2005361118 A JP 2005361118A JP 2006196452 A JP2006196452 A JP 2006196452A
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正樹 小野
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Abstract

【課題】電極反応を促進する触媒金属の溶出を抑制する。
【解決手段】電極反応を促進する触媒金属とプロトン伝導性部材を含む燃料電池用電極
において、難溶性金属塩を含有することを特徴とする燃料電池用電極触媒層およびガス拡散層ならびにこれらを用いた燃料電池。
【選択図】図2

Description

本発明は、電極、特に燃料電池用電極およびかかる電極を用いた燃料電池に関する。
近年、水素と酸素とを化学反応させて電気をつくる燃料電池が注目されている。何故ならエネルギー効率が高く、電極反応で生成されるのは水で環境に対しクリーンであり、タービンなどの可動部分がないので振動や騒音の発生が少ないなどの特徴を有するからである。かようなエネルギーを社会に提供することは、人の新たな社会生活へとシフトしうるものである。
例えば、固体高分子型燃料電池は、自動車用や定置用電源としての利用が試みられているが、燃料電池の長期の連続運転や起動停止の繰返しにより、電極触媒に用いられるPt(白金)が電解質に溶出して電極性能が低下するという問題点がある。
例えば特許文献1では、リン酸型燃料電池において触媒金属成分の少なくとも1種を予め電解液に溶解させて触媒金属の溶出の抑制を図っている。しかしながら、カソード生成水などとともに金属イオンが排出されると金属イオン濃度が目的濃度よりも低下する恐れがある。その場合、運転中に外部から金属イオンを供給することは困難であり、かりに可能であるとしても定期的なメンテナンスが必要となり、長期にわたって効果を維持することは難しいと言える。
さらに特許文献2では、リン酸型燃料電池においてPdClを10−5Mになるように溶解させて触媒金属の溶出の抑制を図っている。しかしながら、上記の点に加え、貴金属の塩を使用するため高コストである。
特開昭63−29461号公報 特開平11−312529号公報
そこで、本発明の目的は電極反応を促進する触媒金属の溶出を抑制した電極、特に燃料電池用電極を提供することにある。
さらに、本発明の目的はかかる電極を用いた燃料電池を提供することにある。
上記目的を達成するため、
電解質膜と、
前記電解質膜の両側に設けられ、かつプロトン伝導性部材および電極反応を促進する触媒金属を含む1対の電極触媒層と、
更に前記1対の電極触媒層の両側に設けられた1対のガス拡散層と、を有し、
前記1対の電極触媒層および前記1対のガス拡散層からなる群から選択された少なくとも一つの層に難溶性金属塩を含むことを特徴とする電極を考案した。
さらに、前記電極を用いたことを特徴とする燃料電池を考案した。
電極反応を促進する触媒金属およびプロトン伝導性部材を含む電極触媒層ならびにガス拡散層を有する燃料電池用電極において、難溶性金属塩を上記電極触媒層およびGDLの少なくともいずれか一に含有させるので、触媒金属の金属イオン成分が電池系外に流出しても難溶性金属塩から溶解平衡に達するまで溶出するため、常に所望の金属イオン濃度が保たれ、触媒金属の溶出抑制効果を長期に持続することが可能である。
燃料電池において、上記電極を用いたので、長寿命の燃料電池を得ることができる。
第1の発明は、電解質膜と、
前記電解質膜の両側に設けられ、かつプロトン伝導性部材および電極反応を促進する触媒金属を含む1対の電極触媒層と、
更に前記1対の電極触媒層の両側に設けられた1対のガス拡散層と、を有し、
前記1対の電極触媒層および前記1対のガス拡散層からなる群から選択された少なくとも一つの層に難溶性金属塩を含むことを特徴とする電極である。
難溶性金属塩を電極触媒層およびガス拡散層に含ませることによって、一定濃度範囲の金属イオンを電極触媒層やガス拡散層側から供給され、塩析と同様の原理(離液順列)で、触媒金属の溶出を防ぐことができると考えられる。また、ここで言う「塩析」とは、水溶液に他の物質を加えて、さきに溶けていた物質を析出する意味だけではなく、予め他の物質を加えることによって特定の物質を溶解させない意味も含む。本明細書における「電極」とは、膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)と同意語であり、電解質膜、電極触媒、およびガス拡散層を含む。
触媒金属が溶解した状態で難溶性金属塩が供給されると溶解している触媒金属イオンが、イオン化傾向や離液順列などの関係で、金属が触媒金属表面などに再結晶することになる。その結果、触媒金属の表面にばらつきが生じ、三相界面が減少する一因になり、エネルギー効率が低下する。従って本発明のように、予め電極触媒層、ガス拡散層に難溶性金属塩を含ませる。
尚、電極触媒層およびガス拡散層のアノード側、カソード側の層のいずれの層においても難溶性金属塩を含んでも良い。好ましくは電極触媒層のアノード側およびカソード側ならび/またはガス拡散層のカソード側の層がより好ましい。また、アノード側およびカソード側における電極触媒層およびガス拡散層の全ての層において難溶性金属塩を含んでも良い。
本発明に用いられる電解質膜は、特に限定されず公知のものを用いることができるが、電極触媒層に用いられたものと同様の材料が挙げられ、少なくとも高いプロトン伝導性を有する高分子電解質からなる膜であればよい。
この際用いられる前記高分子電解質は、高分子骨格の全部または一部にフッ素原子を含むフッ素系電解質と、高分子骨格にフッ素原子を含まない炭化水素系電解質とに大別される。
前記フッ素系電解質として、具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系高分子、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系高分子、パーフルオロカーボンホスホン酸系高分子、トリフルオロスチレンスルホン酸系高分子、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系高分子、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子などが好適な例として挙げられる。
前記炭化水素系電解質として、具体的には、ポリスルホンスルホン酸、ポリアリールエーテルケトンスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルホスホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエーテルエーテルケトンスルホン酸、ポリフェニルスルホン酸等が好適な例として挙げられる。
高分子電解質は、耐熱性、化学的安定性などに優れることから、フッ素原子を含むのが好ましく、なかでも、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)などのフッ素系電解質が好ましく挙げられる。
本発明の電極触媒層は、極性溶媒、プロトン伝導性部材などの電解質に加えて、電極触媒、必要により難溶性金属塩を含む。前記電極触媒としては、水素の酸化反応(アノード側)および酸素の還元反応(カソード側)を触媒する作用を有するものであれば、特に限定されず、公知の触媒が同様に使用できる、具体的には触媒金属が同様にして使用できる。好ましくは、触媒金属は、導電性担体に担持されて電極触媒として用いられる。この際、電極触媒層としては、水素の酸化反応(アノード側)および酸素の還元反応(カソード側)を触媒できるものであれば特に限定されず、公知の触媒金属が同様にして使用できるが、例えば、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、およびそれらの合金等などから選択される。これらのうち、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性などを向上させるために、少なくとも白金を含むものが好ましく用いられる。
前記合金の組成は、合金化する金属の種類にもよるが、白金が30〜90原子%、合金化する金属が10〜70原子%とするのがよい。カソード触媒をして合金を使用する場合の合金の組成は、合金化する金属の種類などによって異なり、当業者が適宜選択できるが、白金が30〜90原子%、合金化する他の金属が10〜70原子%とすることが好ましい。なお、合金とは、一般に金属元素に1種以上の金属元素または非金属元素を加えたものであって、金属的性質をもっているものの総称である。
合金の組織には、成分元素が別個の結晶となるいわば混合物である共晶合金、成分元素が完全に溶け合い固溶体となっているもの、成分元素が金属間化合物または金属と非金属との化合物を形成しているものなどがあり、本願ではいずれであってもよい。この際、カソード触媒層に用いられる触媒金属およびアノード触媒層に用いられる触媒金属は、上記の中から適宜選択できる。以下の説明では、特記しない限り、カソード触媒層およびアノード触媒層用の触媒金属についての説明は、両者について同様の定義であり、一括して、「触媒金属」と称する。しかしながら、カソード触媒層およびアノード触媒層用の触媒金属は同一である必要はなく、上記したような所望の作用を奏するように、適宜選択される。
触媒金属の形状や大きさは、特に制限されず公知の触媒金属と同様の形状および大きさが使用できるが、触媒金属は、粒状であることが好ましい。この際、電極触媒層に用いられる触媒金属の平均粒子径は、小さいほど電気化学反応が進行する有効電極面積が増加するため酸素還元活性も高くなり好ましいが、実際には平均粒子径が小さすぎると却って酸素還元活性が低下する現象が見られる。従って、触媒スラリーに含まれる触媒金属の平均粒子径は、1〜30nm、より好ましくは1.5〜20nm、さらにより好ましくは2〜10nm、特に好ましくは2〜5nmの粒状であることが好ましい。担持の容易さという観点から1nm以上であることが好ましく、触媒利用率の観点から30nm以下であることが好ましい。なお、本発明における「触媒金属の平均粒径」は、X線回折における触媒金属の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径あるいは透過型電子顕微鏡像より調べられる触媒金属の粒子径の平均値により測定することができる。
本発明に係る電極触媒層に用いられる電極触媒は、導電性担体に触媒金属が担持されたものを含む。
前記導電性担体としては、触媒金属を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、集電体として十分な電子導電性を有しているものであればよく、主成分がカーボンであるのが好ましい。具体的には、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛などからなるカーボン粒子が挙げられる。なお、本発明において「主成分がカーボンである」とは、主成分として炭素原子を含むことをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念である。場合によっては、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、実質的に炭素原子からなるとは、2〜3質量%程度以下の不純物の混入が許容されることを意味する。
前記導電性担体のBET比表面積は、触媒金属を高分散担持させるのに十分な比表面積であればよいが、好ましくは20〜1600m/g、より好ましくは80〜1200m/gとするのがよい。前記比表面積が、20m/g未満であると前記導電性担体への触媒金属の分散性が低下して十分な発電性能が得られない恐れがあり、1600m/gを超えると高分子電解質が侵入できない微細な空孔が多くなり、そのような箇所に担持された触媒金属は電極反応に寄与しないため、触媒金属の有効利用率が却って低下する恐れがある。
また、前記導電性担体の大きさは、特に限定されないが、担持の容易さ、触媒利用率、電極触媒層の厚みを適切な範囲で制御するなどの観点からは、平均1次粒子径が5〜200nm、好ましくは10〜100nm程度とするのがよい。
前記導電性担体に触媒金属が担持された電極触媒において、触媒金属の担持量は、電極触媒の全量に対して、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%とするのがよい。前記担持量が、80質量%を超えると、触媒金属の導電性担体上での分散度が下がり、担持量が増加するわりに発電性能の向上が小さく経済上での利点が低下する恐れがある。また、前記担持量が、10質量%未満であると、単位質量あたりの触媒活性が低下して所望の発電性能を得るために多量の電極触媒が必要となり好ましくない。なお、触媒金属の担持量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)によって調べることができる。
本発明に係る電極触媒層におけるプロトン伝導性材料は、特に限定されず公知のものを用いることができるが、電解質に用いられたものと同様の材料が挙げられ、少なくとも高いプロトン伝導性を有する材料であればよい。
即ちプロトン伝導性部材としては、例えば少なくとも高いプロトン伝導性を有する液体、固体、ゲル状材料などが利用可能である。具体的は、リン酸、硫酸、アンチモン酸、スズ酸、ヘテロポリ酸などの固体酸、パーフルオロスルホン酸アイオノマー、リン酸などの無機酸を炭化水素系高分子化合物にドープさせたもの、一部がプロトン伝導性の官能基で置換された有機/無機ハイブリッドポリマー、高分子マトリックスにリン酸溶液や硫酸溶液を含浸させたゲル状プロトン伝導性などが例示される。プロトン伝導性部材は電子導電性を同時に有する混合導電体も利用できる。
また前記プロトン伝導性部材は、好ましくは高分子電解質が使用され、本発明のカソード触媒層/アノード触媒層(以下、単に「触媒層」とも称する)には、触媒金属の他に、高分子電解質が含まれる。この際使用できる高分子電解質は、高分子骨格の全部または一部にフッ素原子を含むフッ素系電解質と、高分子骨格にフッ素原子を含まない炭化水素系電解質とに大別される。
前記フッ素系電解質として、具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系高分子、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系高分子、パーフルオロカーボンホスホン酸系高分子、トリフルオロスチレンスルホン酸系高分子、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系高分子、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子などが好適な例として挙げられる。
前記炭化水素系電解質として、具体的には、ポリスルホンスルホン酸、ポリアリールエーテルケトンスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルホスホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエーテルエーテルケトンスルホン酸、ポリフェニルスルホン酸等が好適な例として挙げられる。
高分子電解質は、耐熱性、化学的安定性などに優れることから、フッ素原子を含むのが好ましく、なかでも、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)などのフッ素系電解質が好ましく挙げられる。
また、導電性担体への触媒金属の担持は公知の方法で行うことができる。例えば、含浸法、液相還元担持法、蒸発乾固法、コロイド吸着法、噴霧熱分解法、逆ミセル(マイクロエマルジョン法)などの公知の方法が使用できる。または、電極触媒は、市販品を用いてもよい。
尚、電解質膜と電極触媒層とで用いる電解質は、異なってもよいが、膜と電極の接触抵抗などを考慮すると同じものを用いるのが好ましい。
電極触媒層において、前記高分子電解質は、接着の役割をする高分子として電極触媒を被覆しているのが好ましい。これにより、電極の構造を安定に維持できるとともに、電極反応が進行する三相界面を十分に確保して、高い触媒活性を得ることができる。電極中に含まれる前記固体高分子電解質の含有量は、特に限定されないが、触媒金属の全量に対して25〜35質量%とするのがよい。
本発明に係るアノード側電極触媒層およびカソード側電極触媒層は、触媒金属、プロトン伝導性高分子、および必要があれば撥水材料を含む。
前記電極触媒層の空孔率は、20〜80%が好ましく、より好ましくは30〜70%である。空孔率が20%未満では、ガスの拡散が十分ではなく、高電流域でのセル電圧が低下する。また、空孔率が80%超では、電極触媒層の強度が十分ではなく、転写プロセスにおいて空孔率が低下する。
本発明に係るガス拡散層(以下GDL、カーボン層とも称する)に用いられる材料としては、カーボンペーパー、不織布、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルトなどからなるシート状材料や、カーボンペーパー、不織布、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルトなどからなるシート状GDL上に、カーボン粒子、難溶性金属塩およびバインダーを配置して、両者をガス拡散層として使用してもよく、またカーボン粒子、難溶性金属塩およびバインダーからなるフィルム自体をガス拡散層として用いられることが提案されている。GDLが優れた電子伝導性を有していると、発電反応により生じた電子の効率的な運搬が達成され、燃料電池の性能が向上する。またGDLが優れた撥水性を有していると、生成した水が効率的に排出される。
高い撥水性を確保するために、GDLを構成する材料を撥水処理する技術も提案されている。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系樹脂を含む溶液中にカーボンペーパーなどのGDLを構成する材料を含浸させ、大気中または窒素などの不活性ガス中に乾燥させる。場合によっては、親水化処理がGDLを構成する材料に施されてもよい。
フィルム自体に均一に撥水材料、難溶性金属塩、およびカーボン粒子が形成されているため、上記の塗布に比較して撥水効率の上昇がみられ、かつ燃料電池の運転中に触媒金属であるPtなどの溶出を抑制することができる。
前記撥水材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。なかでも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系樹脂が好ましい。
尚、「バインダー」とは接着の役割を有する物質をいい、本発明に係る実施例では、バインダーの役割および撥水性の役割を兼ね備えたフッ素系樹脂を使用しているが、必ずしもこれに限定されず、バインダーおよび撥水材料を個々独立した物質で混合して使用しても良い。
本発明は、前記触媒金属としては少なくともPtを含むことが好ましい。Ptを採用することにより、酸素還元活性および水素酸化活性の高い電極触媒とすることができるからである。Pt以外には、燃料電池用電極の電極反応を促進する金属として用いられている金属であれば使用することができる。Ptを基体とした貴金属合金触媒、貴金属−卑金属混合物触媒も高い活性を示すからである。
電極反応を促進する触媒金属であるPtの溶出は一般に以下のように考えられる。
一般的に、白金の溶解電位は次のように表される。
Figure 2006196452
しかしながら、実際には、
E=1.2+(0.059/2)log[Pt2+]と表される。具体的には、log[Pt2+]=−9のとき、E=0.9345Vとなり、log[Pt2+]=−6のとき、E=1.023Vとなり、Ptイオン濃度によってPt溶解電位が変化する。
また、燃料電池の運転電圧レンジからカソードにおける運転電位レンジは、通常、約0.6V〜0.98V前後(OCV:開回路電圧)の範囲にあると考えられる。燃料電池の運転により経時的にセル電圧が低下する原因は、電極触媒であるPtが溶出することが一因となっている。それに対して、Ptの溶解電位を所定値より高くすると、Ptの溶出は低減できると考えられる。すなわち、Ptの溶解電位が所定値よりも低い場合にはPtが溶出してカソードの活性が低下し、一方、Ptの溶解電位を所定値より高く、つまり貴電位化できればPtの溶出が抑制され、その結果、電池の発電性能の低下が抑制できる。
換言すると、運転電圧レンジ内にPtが溶解する電位が含まれると運転中にPtの溶出が起こりやすく、運転電圧レンジ内にPtが溶解する電位が含まれないと運転中にPtの溶出が起こりにくい。貴電位化はPtイオンを追加することによって行うことができ、この関係を、図1に示す。
当然のことながら、Pt以外の金属イオンを添加することによっても、同様にPt溶解平衡を変化させてPt溶解電位を貴電位化することができる。
本発明は、前記難溶性金属塩の25℃における溶解度積が、10−36〜10−8の範囲にあることが好ましい。
本発明に係る電極内、特に電極触媒層および/またはガス拡散層内で目的とする一定の金属イオン濃度を得るために、難溶性金属塩の溶解平衡を利用することができ、電極触媒層内およびガス拡散層内の金属イオン濃度[Mn+]は−7乗〜−4乗がよいと思われる。難溶性金属塩の添加量が少なすぎるとPtなどの触媒金属の溶解電位の貴電位化が達成されず、多すぎるとプロトン伝導を妨げて電極性能を低下させてしまうことが考えられる。また金属イオン濃度が高いと、アニオンがPtなどの触媒金属と結合し、触媒金属の被毒の原因になり、さらにはHと結合し、反応が進行しにくくなるとも考えられる。
例えば、2価金属Mと2価アニオンXの場合には溶解度積Kspは、下記に示される。
Figure 2006196452
また、2価金属Mと3価アニオンXの場合には次のように示される。
Figure 2006196452
ここで、平衡金属イオン濃度は溶解度積Kspの値から見積もられ、目的とする平衡金属イオン濃度を得るために、溶解度積の値から適切な金属塩を選択できる。
具体的には、各価数金属イオンとアニオンの組み合わせによって、以下のように場合
分けできる。
本発明は、前記難溶性金属塩の25℃における溶解度積が、以下の各組み合わせにおいてそれぞれ
・1価金属/2価アニオン・・・Ksp=5×10−22〜5×10−13
・2価金属/2価アニオン・・・Ksp=1×10−14〜1×10−8
・2価金属/3価アニオン・・・Ksp=4×10−36〜4×10−21
であることが好ましい。
電極触媒層内および/またはガス拡散層の金属イオン濃度を一定濃度範囲内(−7乗〜−4乗)に保つことが可能となり、燃料電池の運転中に触媒金属であるPtなどの溶出を抑制することができる。
上記溶解度積に該当する難溶性金属塩は以下の通りである。
本発明に係る前記難溶性金属塩は、2、11、12、14族元素のうちから選ばれた少なくとも1種の金属を使用した金属塩であることが好ましい。2、11、12、14族元素の金属を使用すると、上記の電極触媒層内および/またはガス拡散層の金属イオン濃度を一定濃度範囲内(−7乗〜−4乗)に保つことが可能となり、燃料電池の運転中に触媒金属であるPtなどの溶出を抑制することができる。
本発明に係る前記難溶性金属塩は、2、11、12、14族元素のうち、Ag,Ba,Mg,Pb,SrおよびZnよりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属を含む金属塩が好ましい。
これらの難溶性金属塩の少なくとも1種を電極触媒層および/またはガス拡散層に適量添加、または含ませることにより、Pt溶解電位の貴電位化を達成できる。上記の電極触媒層内および/またはガス拡散層の金属イオン濃度を一定濃度範囲内(−7乗〜−4乗)に保つことが可能となり、燃料電池の運転中に触媒金属であるPtなどの溶出を抑制することができる。
一方、本発明に係る難溶性金属塩のアニオンは、酸素酸塩であることが好ましい。
また、前記難溶性金属塩は、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩およびクロム酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの金属塩であることがより好ましい。
さらに、本発明に係る前記難溶性金属塩は、1価金属/2価アニオンの例として、炭酸銀、クロム酸銀;2価金属/2価アニオンの例として、硫酸バリウム、炭酸鉛、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、クロム酸バリウム、クロム酸鉛;2価金属/3価アニオンの例として、リン酸鉛、リン酸亜鉛、リン酸ストロンチウム、リン酸マグネシウムなどが好ましい。これらの難溶性金属塩の少なくとも1種を電極触媒層および/またはガス拡散層に適量添加、または含ませることにより、Pt溶解電位の貴電位化を達成できる。上記の電極触媒層内および/またはガス拡散層の金属イオン濃度を一定濃度範囲内(−7乗〜−4乗)に保つことが可能となり、燃料電池の運転中に触媒金属であるPtなどの溶出を抑制することができる。
前記難溶性金属塩の含有量は、燃料電池用電極触媒層の質量に対し、0.01〜10質量%の範囲にあることが好ましい。さらに好ましくは、0.05〜5質量%であり、もっとも好ましいのは0.2〜2質量%である。
燃料電池用電極触媒層には、難溶性金属塩が含まれる。ここで、難溶性とは水に対するものである。このように、金属イオンを電極触媒(層)やガス拡散層に共存させることによって触媒金属であるPtの溶出を抑制することができる。すなわち、難溶性金属塩の溶解平衡によって電極層中の金属イオン濃度を所望の濃度範囲に保つことができ、燃料電池の運転中にPt溶出の抑制効果を長期にわたり維持することが可能になる。
10質量%を超える場合には、電極触媒層の他の構成成分の働きを妨げて(プロトン伝導性の低下、触媒の利用率の低下)電極性能を低下させる可能性が生じる。0.01質量%未満の場合には、金属イオンが系外へ多量に流出したときに、溶解平衡によって新たに供給される金属イオン源が不足するため、長期にPt溶出抑制効果が得られないからである。
このように、電池の運転中に、Ptなどの金属のイオン成分の一部が電池系外に流出したとしても難溶性金属塩から溶解平衡に達するまで金属が溶出するため、常に所望の金属イオン濃度が保たれ、Pt溶出抑制効果を長期に持続させることが可能である。易溶性金属塩により所望濃度の金属イオンを添加する方法では、金属イオンが生成水などとともに電池系外に排出された場合、金属イオン濃度が低下し、所望の金属イオン濃度を長期に保つことが出来ないため、長期にわたりPt溶出抑制効果を得ることはできないと思われる。PtイオンあるいはPtを過剰に含有させることによっても同様なPt溶出抑制効果は期待できるが、従来の電極より著しく高コストになってしまう。
前記ガス拡散層における前記難溶性金属塩の含有量は、ガス拡散層の単位表面積1cmあたり0.001〜1mgであることが好ましい。さらに好ましくは、単位表面積あたり0.005〜0.5mgであり、もっとも好ましいのは、単位表面積あたり0.02〜0.2mgである。
前記難溶性金属塩の含有量が1mg/cm超の場合には、ガス拡散層としての本来の働きを妨げる(ガス拡散性の低下、フラッディング現象の誘発、電子伝導性の低下)ことより電極性能を低下させる。また前記難溶性金属塩の含有量が0.001mg/cm未満の場合には、金属イオンが系外へ流出したときに、溶解平衡によって新たに供給される金属イオン源が不足するため、長期にPt溶出抑制効果が得られない。尚、上述したように前記難溶性金属塩は、カソード側のガス拡散層に含有させることが好ましい。
尚、本明細書で言うガス拡散層の「単位面積あたり」における面積とは、ガス拡散層に隣接する電極触媒層とガス拡散層とが接触する面の面積を意味する。
次に、以下、本発明の電極(膜電極接合体)の製造方法の好ましい態様を説明して、上記の電極(膜電極接合体)を説明する。なお、以下の態様は、本発明の好ましい態様を示したものであり、本発明の電極(膜電極接合体)の製造方法が下記方法に限定されるものではない。
まず、本発明の触媒スラリーを転写用台紙上に塗布・乾燥して、電極触媒層を形成する。この際、転写用台紙としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)シート、PET(ポリエチレンテレフタレート)シート、ポリエステルシートなどの公知のシートが使用できる。なお、転写用台紙は、用いられる触媒スラリー(特にインク中のカーボン等の導電性担体)の種類に応じて適宜選択される。また、上記工程において、電極触媒層の厚みは、水素の酸化反応(アノード側)および酸素の還元反応(カソード側)の触媒作用が十分発揮できる厚みであれば特に制限されず、従来と同様の厚みが使用できる。具体的には、電極触媒層の厚みは、1〜30μm、より好ましくは2〜20μmである。
次に、本発明のカーボンスラリーをカーボンペーパー、不織布、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルトなどからなるシート状材料上に塗布・乾燥して、カーボン層(ガス拡散層)を形成する。
また、転写用台紙上への触媒スラリーは、特に制限されず、スクリーン印刷法、沈積法、あるいはスプレー法などの公知の方法が同様にして適用できる。また、塗布された電極触媒層乾燥条件もまた、電極触媒層から極性溶剤を完全に除去できる条件であれば特に制限されない。具体的には、触媒スラリーの塗布層(電極触媒層)を真空乾燥機内にて、室温〜100℃、より好ましくは50〜80℃で、30〜60分間、乾燥する。この際、触媒層の厚みが十分でない場合には、所望の厚みになるまで、上記塗布・乾燥工程を繰り返す。次に、本発明に係る加湿ガス雰囲気下で熱処理工程を、上記の本発明に係る条件で行い、下記の工程に進む。
すなわち、このようにして作製された固体高分子電解質膜を挟持した後、当該積層についてホットプレスを行なう。この際、ホットプレス条件は、電極触媒層および固体高分子電解質膜が十分密接に接合できる条件であれば特に制限されないが、100〜200℃、より好ましくは110〜170℃で、電極面に対して1〜5MPaのプレス圧力で行なうのが好ましい。これにより固体高分子電解質膜および電極触媒層との接合性を高めることができる。
ホットプレスを行なった後、転写用台紙を剥がすことにより、電極触媒層および固体高分子電解質膜を含む電極(膜電極接合体)を得ることができる。
本発明の第2は、第1発明である電極を用いた燃料電池である。
本発明に係る電極を用いた前記燃料電池は、下記に詳述されるように、一般的にガス拡散層をさらに有しており、この際、ガス拡散層は、上記方法において、転写用台紙を剥がし、得られた接合体をさらにガス拡散層で挟持することによって、電極触媒層と固体高分子電解質膜との接合後にさらに各電極触媒層に接合することが好ましい。または、電極触媒層を予めガス拡散層表面上に形成して電極触媒層−ガス拡散層接合体を製造した後、上記したのと同様にして、この電極触媒層−ガス拡散層接合体で固体高分子電解質膜をホットプレスにより挟持・接合することもまた好ましい。
前記のホットプレス方法以外に、ガス拡散層上に逐次塗布により電極触媒層−高分子電解質膜−電極触媒層−ガス拡散層を積層する方法を用いても良い。
本発明では、熱処理を従来公知の方法と同様の方法によって電極(膜電極接合体)が製造できる。例えば、調製された触媒スラリーを所望の厚さで転写用台紙上に塗布・乾燥することによって、カソード側およびアノード側の電極触媒層を形成し、さらにこの電極触媒層が内側にくるように高分子電解質膜を上記電極触媒層で挟持してホットプレス等により接合した後、転写用台紙を剥がすことによって、電解質膜に触媒層を取り付けた。
このようにして作製した触媒層コート済の電解質膜の触媒層側およびガス拡散層(カーボン層コート済のカーボンペーパーのカーボン層側)を貼り合わせて電極(MEA:膜電極接合体)を作製した。
本発明の触媒スラリーにおいて、電極触媒は、所望の作用、即ち、水素の酸化反応(アノード側)および酸素の還元反応(カソード側)を触媒する作用を十分発揮できる量であればいずれの量で、使用されてもよい。電極触媒が、触媒スラリー中、1〜20質量%、より好ましくは5〜10質量%となるような量で存在することが好ましい。
本発明の触媒スラリーには、電極触媒、電解質、および必要に応じて難溶性金属塩を溶剤に加え、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体といった撥水性高分子なども含まれてもよい。これにより、得られる電極触媒層の撥水性を高めることができ、発電時に生成した水などを速やかに排出することができる。撥水性高分子を使用する際の、撥水性高分子の添加量は、本発明の上記効果を妨げない程度の量であれば特に制限されないが、触媒スラリーの全質量に対して、好ましくは0.1〜10質量%である。
上記撥水性高分子に代えてまたは上記撥水性高分子に加えて、本発明の触媒スラリーは、増粘剤を含んでもよい。増粘剤の使用は、触媒スラリーなどが転写用台紙上にうまく塗布できない場合などに有効である。この際使用できる増粘剤は、特に制限されず、公知の増粘剤が使用できるが、例えば、グリセリン、(EG(エチレングリコール)、PVA(ポリビニルアルコール))などが挙げられる。増粘剤を使用する際の、増粘剤の添加量は、本発明の上記効果を妨げない程度の量であれば特に制限されないが、触媒スラリーの全質量に対して、好ましくは1〜30質量%である。
本発明の触媒スラリーは、電極触媒、電解質、および溶剤、ならびに必要であれば撥水性高分子、難溶性金属塩および/または増粘剤、が適宜混合されたものであればその調製方法は特に制限されなく、さらに、本発明で使用される触媒スラリーを構成する溶剤としては、特に制限されず、触媒層を形成するのに使用される通常の溶剤が同様にして使用できる。具体的には、水、シクロヘキサノールやエタノールや2−プロパノール等の低級アルコールが使用できる。
本発明のカーボンスラリーは、カーボン粒子、必要により難溶性金属塩、撥水材料などが適宜混合されたものであればその調製方法は特に制限されなく、さらに、本発明で使用されるカーボンスラリーを構成する溶剤としては、特に制限されず、触媒層を形成するのに使用される通常の溶剤が同様にして使用できる。具体的には、水、シクロヘキサノールやエタノールや2−プロパノール等の低級アルコールが使用できる。
本発明で使用される溶剤の量は、電解質を完全に溶解できる量であれば特に制限されないが、電解質が、溶剤中、好ましくは0.5〜20質量%、より好ましくは1〜5質量%の濃度になるような量である。この際、電解質の濃度が20質量%を超えると、電解質を完全には溶解せずに一部コロイドが形成される可能性があり、逆に0.5質量%未満であると、含まれる電界質量が少なすぎて、電解質高分子の分子鎖がよく絡まりあいきれずに、形成される電極触媒層の機械的強度が劣る可能性がある。また、触媒スラリーにおいて、電極触媒および固体高分子電解質などを合わせた固形分の濃度は、触媒スラリー中、2〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%程度とするのがよい。
本発明の触媒スラリーは、カソード側電極触媒層またはアノード側電極触媒層のいずれか一方のみに使用されてもあるいは双方に使用されてもよいが、カソード側は特に出力変動による生成水量の変化により乾湿の変化を受けて、初期状態における電極触媒層の多孔構造が崩れ、空隙率が低下して、電極触媒層への反応ガス供給量が低下する危険性が高いため、少なくともカソード側電極触媒層に使用されることが好ましく、特にカソードおよびアノード双方の側の電極触媒層に使用されることが好ましい。
前記燃料電池の種類としては、特に限定されず、上記した説明中では高分子電解質型燃料電池を例に挙げて説明したが、この他にも、アルカリ型燃料電池、リン酸型燃料電池に代表される酸型電解質の燃料電池、ダイレクトメタノール型燃料電池、マイクロ燃料電池などが挙げられる。なかでも小型かつ高密度・高出力化が可能であるから、固体高分子電解質型燃料電池が好ましく挙げられる。また、前記燃料電池は、搭載スペースが限定される車両などの移動体用電源の他、定置用電源などとして有用であるが、特にシステムの起動/停止や出力変動が頻繁に発生する自動車用途で特に好適に使用できる。
前記高分子電解質型燃料電池は、定置用電源の他、搭載スペースが限定される自動車などの移動体用電源などとして有用である。なかでも、比較的長時間の運転停止後に高い出力電圧が要求されることによるカーボン担体の腐食、および、運転時に高い出力電圧が取り出されることにより高分子電解質の劣化が生じやすい自動車などの移動体用電源として用いられるのが特に好ましい。
前記燃料電池の構成としては、特に限定されず、従来公知の技術を適宜利用すればよいが、一般的には電極(膜電極接合体)をセパレータで挟持した構造を有する。
前記セパレータとしては、緻密カーボングラファイト、炭素板等のカーボン製や、ステンレス等の金属製のものなど、従来公知のものであれば制限なく用いることができる。セパレータは、空気と燃料ガスとを分離する機能を有するものであり、それらの流路を確保するための流路溝が形成されてもよい。セパレータの厚さや大きさ、流路溝の形状などについては、特に限定されず、得られる燃料電池の出力特性などを考慮して適宜決定すればよい。
また、各触媒層に供給されるガスが外部にリークするのを防止するために、ガスケット層上の触媒層が形成されていない部位にさらにガスシール部が設けられてもよい。前記ガスシール部を構成する材料としては、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリイソブチレンゴム等のゴム材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系の高分子材料、ポリオレフィンやポリエステル等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。また、ガスシール部の厚さとしては、2mm〜50μm、望ましくは1mm〜100μm程度とすればよい。
さらに、燃料電池が所望する電圧等を得られるように、セパレータを介して電極(膜電極接合体)を複数積層して直列に繋いだスタックを形成してもよい。燃料電池の形状などは、特に限定されず、所望する電圧などの電池特性が得られるように適宜決定すればよい。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されることはない。また、当該実施例において、「%」は特記しない限り質量百分率を表わすものとする。
(A)電極触媒層に難溶性金属塩を含有させた場合
(Pt担持カーボンの調製)
カーボンブラック粉末1g(Cabot社製 Vulcan XC−72)を0.4%の白金を含有する塩化白金酸水溶液250g中にホモジナイザを用いて十分に分散させた後、これにクエン酸ナトリウム3gを加え、還流反応装置を使用して85℃に加熱し、白金の還元担持を行った。そして、室温まで放冷した後、白金が担持されたカーボンを濾別することにより、Pt担持カーボンブラック粉末を得た。このPt担持カーボンの平均Pt粒子径は透過型電子顕微鏡観察の結果から約3.1nmであった。また、Pt担持量を誘導結合プラズマ発光分光法によって調べた結果、48.6%のPtが担持されていることが確認された。
(実施例1:電極触媒粉末)
上記方法で調製したPt担持カーボン粉末とZn(PO・4HO粉末(関東化学製)を質量比99.5:0.5の割合で混合した。なお、Zn(PO・4HOの溶解度積値は9.1×10−33であった。
(実施例2:電極触媒粉末)
上記方法で調製したPt担持カーボン粉末とBaSO粉末(関東化学製)を質量比99.5:0.5の割合で混合した。なお、BaSOの溶解度積値は8.9×10−11であった。
(実施例3(追加):電極触媒粉末)
上記方法で調製したPt担持カーボン粉末とAgCO粉末(関東化学製)を質量比99.5:0.5の割合で混合した。なお、AgCOの溶解度積値は1.3×10−14であった。
(比較例1:電極触媒粉末)
上記方法で調製したPt担持カーボンのみを使用した。
(比較例2(追加):電極触媒粉末)
上記方法で調製したPt担持カーボン粉末とPdCl粉末(関東化学製)を質量比99.5:0.5の割合で混合した。PdClは易水溶性金属塩である。
〔評価方法〕
(電極(MEA)の作製)
電極(MEA(膜電極接合体))の作製についてはいずれについても以下のように行った。
各実施例および比較例の電極触媒粉末の質量に対し、5倍量の精製水を加えた後、0.5倍量のイソプロピルアルコールを加え、さらにはナフィオン(デュポン社製、登録商標)の質量が0.8倍量になるようにナフィオン(デュポン社製、登録商標)溶液(Aldrich社製5wt.%ナフィオン(デュポン社製、登録商標)含有)を加えた。混合スラリーを超音波ホモジナイザでよく分散し、それに続いて減圧脱泡操作を加えることによって触媒スラリーを作製した。これをガス拡散層(GDL)であるカーボンペーパー(東レ製TGP−H−090)の片面にスクリーン印刷法によって所望の厚さに応じて所定量の触媒スラリーを印刷し、60℃で24時間乾燥させた後、触媒層を塗布した面を電解質膜に合わせて120℃、1.2MPaで10分間ホットプレスを行うことによりそれぞれのMEAを作製した。
アノードは同様な方法を用いて電極触媒としてPt担持カーボンブラックのみを用いてMEAを作製した。
これらのMEAは、Pt使用量を見かけの電極面積1cm当りアノードでは0.3mg、カソードでは0.5mgとし、電極面積は25cmとした。また、電解質膜としてナフィオン(デュポン社製、登録商標) 112(厚さ:約50μm)を用いた。
(単セル評価)
作製したMEAを用いて燃料電池単セルを構成し、カソードのガス加湿温度に対するセル電圧変化の評価を以下のような方法で行った。
燃料電池のアノード側には燃料として水素を供給し、カソード側には空気を供給した。両ガスとも供給圧力は大気圧とし、燃料電池本体の温度は70℃に設定し、水素利用率は67%、空気利用率は40%として、電流密度を0.2A/cm一定で連続運転したときのセル電圧の変化を調べた。
図2は、その結果を示すグラフであって、従来型の比較例1の電極触媒粉末を用いた場合に比べ、実施例1、2および3の電極触媒粉末を用いたセルの方が運転時間に対するセル電圧の低下量が著しく減少していることがわかる。PdClを含んだ比較例2の場合、運転時間に対するセル電圧の低下速度が他に比べて著しく速いことがわかった。これはPdClの溶解によって生成する塩化物イオンが電極触媒であるPt表面を被毒するとともに、溶出したPtイオンと塩化物イオンが錯体を形成しイオン状態で安定化してしまうことが影響したためと考えられる。
これは、難溶性金属塩であるリン酸亜鉛、硫酸バリウムや炭酸銀の添加によって電極性能の劣化が有意に抑制されたことを示しており、これはPtの溶出が抑制されたことによるものだと考えられる。
(B)ガス拡散層に難溶性金属塩を含有させた場合
(カーボン層の調製)
カーボンブラック粉末1g(電気化学工業製 デンカブラック)にテフロンディスパージョン(ダイキン工業製 D−4)を重量比で5:1混合させ、マグネチックスターラーで30分間よく攪拌することによりカーボンスラリーを調製する。所定量のカーボンスラリーを所定サイズの型枠をつけたカーボンペーパー(東レ製TGP−H−090)の片面に流しこみ、反対面から減圧吸引することにより流し込んだカーボンスラリーの水分を除去し、カーボン層をカーボンペーパー片面に堆積させた。水分除去後、乾燥器で80℃、1時間乾燥させた後、さらに340℃に加熱することによってカーボン層をカーボンペーパーに密着させた。
(実施例4:カーボン層)
カーボンスラリーにZn(PO・4H2O粉末(関東化学製、平均粒径<1μm)を所定量混合させることによりリン酸亜鉛含有カーボンスラリーを調製し、このカーボンスラリーを用いて、カーボンペーパーに堆積させたカーボン層の堆積量を、見かけの面積1cmあたり0.51 mgとした。このカーボン層には1cmあたり0.03 mgのZn(PO・4HO が含まれていた。
(実施例5:カーボン層)
カーボンスラリーにBaSO粉末(関東化学製、平均粒径<1μm)を所定量混合させることにより硫酸バリウム含有カーボンスラリーを調製し、このカーボンスラリーを用いて、カーボンペーパーに堆積させたカーボン層の堆積量を、見かけの面積1cmあたり0.54mgとした。このカーボン層には1cmあたり0.05 mgのBaSOが含まれていた。
(実施例6(追加):カーボン層)
カーボンスラリーにAgCO粉末(関東化学製、平均粒径<1μm)を所定量混合させることにより炭酸銀含有カーボンスラリーを調製し、このカーボンスラリーを用いて、カーボンペーパーに堆積させたカーボン層の堆積量を、見かけの面積1cmあたり0.49 mgとした。このカーボン層には1cmあたり0.04 mgのAgCOが含まれていた。
(比較例3カーボン層)
カーボン層の見かけの面積1cm2あたり0.50 mgであり、難溶性金属塩は含んでいない。
(比較例4カーボン層)
カーボンスラリーにPdCl粉末(関東化学製)を所定量混合させることにより塩化パラジウム含有カーボンスラリーを調製し、このカーボンスラリーを用いて、カーボンペーパーに堆積させたカーボン層の堆積量を、見かけの面積1cmあたり0.50 mgとした。このカーボン層には1cmあたり0.06 mgのPdClが含まれていた。
〔評価方法〕
(MEAの作製)
MEA(膜―電極接合体)の作製についてはいずれについても以下のように行った。Pt担持カーボン(Pt担持量:48.6%、平均Pt粒子径:3.5 nm、担体カーボン:VulcanXC−72(Cabot社製))の重量に対して5倍量の精製水を加えた後、0.5倍量のイソプロピルアルコールを加え、さらにはナフィオン(デュポン社製、登録商標)の重量が0.8倍量になるようにナフィオン(デュポン社製、登録商標)溶液(Aldrich社製5wt.%ナフィオン(デュポン社製、登録商標)含有)を加えた。混合スラリーを超音波ホモジナイザでよく分散させ、それに続いて減圧脱泡操作を加えることによって触媒スラリーを作製した。これをテフロンシートの片面にスクリーン印刷法によって所定のPt量になるように触媒スラリーを印刷し、60℃で3時間乾燥させた後、触媒層を塗布した面を電解質膜に合わせて120℃、1.5MPaで10分間ホットプレスを行うことにより電解質膜に触媒層を取り付けた。このようにして作製した触媒層コート済の電解質膜の触媒層側とカーボン層コート済のカーボンペーパーのカーボン層側を貼り合わせて膜−電極接合体(MEA)を作製した。
これらのMEAは、Pt使用量を見かけの電極面積1cmあたりアノードでは0.3mg、カソードでは0.5mgとし、電極面積は25cmとした。また、電解質膜としてナフィオン(デュポン社製、登録商標)112(厚さ:約50μm)を用いた。
(単セル評価)
作製したMEAを用いて燃料電池単セルを構成し、運転時間に対するセル電圧変化の評価を以下のような方法で行った。燃料電池のアノード側には燃料として水素を供給し、カソード側には空気を供給した。両ガスとも供給圧力は大気圧とし、燃料電池本体の温度は70℃に設定し、水素利用率は67%、アノード供給ガス露点は70℃、空気利用率は40%、カソード供給ガス露点は50℃として、電流密度0.2 A/cmと1.0 A/cmでそれぞれ10分ずつの負荷変動運転したときのセル電圧の変化を調べた。また、上記の試験前と試験後にカソードのPtの電気化学的有効電極面積を求めるためにサイクリックボルタンメトリを行った。なお、サイクリックボルタンメトリ測定はセル温度を室温にし、アノード側に室温露点の水素を500cc/min、カソード側には室温露点の窒素を50cc/minで流通させながら行った。
Figure 2006196452
図3は、負荷変動運転によるセル電圧の変化を示すグラフである。この図3においてセル電圧は負荷変動運転の中で0.2 A/cm運転開始からの9〜10分のセル電圧の平均値とした。従来型の比較例カーボン層を用いた場合に比べ、実施例4,5および6カーボン層を用いたセルの方が運転時間に対するセル電圧の低下量が著しく減少していることがわかる。さらに表1に上記試験を行う前と試験を行った後のサイクリックボルタンメトリにより求めたカソードのPt有効電極面積の変化を示したが、実施例カーボン層を用いた方が試験後のPt有効電極面積の低下量がかなり小さい事がわかる。これは図3の結果と対応している。以上の結果から、難溶性金属塩であるリン酸亜鉛、硫酸バリウム、または炭酸銀をカーボン層に添加することによって電極性能の劣化が有意に抑制されたことを示しており、実施例においてPtの電気化学的有効表面積減少の抑制も確認されたことから、Ptの溶出が抑制されたことによるものだと考えられる。
電池電圧とPtの溶解電圧との関係の一例を示す模式図である。 本発明の難溶性金属塩を電極触媒層に含む燃料電池用電極触媒を用いた燃料電池と比較例電極触媒を用いた燃料電池とを、電流密度0.2A/cmのセル電圧の連続運転時間に対する変化を示すグラフである。 本発明の難溶性金属塩を含んだカーボン層を用いた燃料電池と比較例カーボン層を用いた燃料電池の電流密度0.2A/cmのセル電圧の負荷変動運転時間に対する変化を示すグラフである。

Claims (11)

  1. 電解質膜と、
    前記電解質膜の両側に設けられ、かつプロトン伝導性部材および電極反応を促進する触媒金属を含む1対の電極触媒層と、
    更に前記1対の電極触媒層の両側に設けられた1対のガス拡散層と、を有し、
    前記1対の電極触媒層および前記1対のガス拡散層からなる群から選択された少なくとも一つの層に難溶性金属塩を含むことを特徴とする電極。
  2. 前記触媒金属は、少なくともPtを含むことを特徴とする請求項1に記載の電極。
  3. 前記難溶性金属塩の25℃における溶解度積が、10−36〜10−8の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の電極。
  4. 前記難溶性金属塩の25℃における溶解度積が、以下の各組み合わせにおいてそれぞれ
    ・1価金属/2価アニオン・・・Ksp=5×10−22〜5×10−13
    ・2価金属/2価アニオン・・・Ksp=1×10−14〜1×10−8
    ・2価金属/3価アニオン・・・Ksp=4×10−36〜4×10−21
    であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極。
  5. 前記難溶性金属塩は、2、11、12、14族元素のうちから選ばれた少なくとも1種
    の金属塩であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極。
  6. 前記難溶性金属塩は、Ag,Ba,Mg,Pb,SrおよびZnよりなる群から選ばれ
    た少なくとも1種の金属塩であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載
    の電極。
  7. 前記難溶性金属塩は、酸素酸塩であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に
    記載の電極。
  8. 前記難溶性金属塩は、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩およびクロム酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの金属の塩であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電極。
  9. 前記電極触媒層における前記難溶性金属塩の含有量は、電極触媒層の質量に対し、0.01〜10質量%であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の電極。
  10. 前記ガス拡散層における前記難溶性金属塩の含有量は、前記ガス拡散層の単位表面積1cmあたり0.001〜1mgであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の電極。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の電極を用いたことを特徴とする燃料電池。
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