JP2006144826A - タイミングベルト - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 リング状のベルト本体3と、前記ベルト本体3の内周面に沿って所定の間隔で複数形成された歯部2と、ベルト本体3の周方向に沿って埋設される心線6と、ベルト本体3における心線6の外周側に設けられる中間帆布7と、を備えたタイミングベルト1であって、中間帆布7は、周方向に伸縮性を有することを特徴とするタイミングベルト1である。
【選択図】 図1
Description
例えば、タイミングベルトは、自動車のエンジンのクランク軸とカムとを同期伝動するためのベルトとして使用されるほか、カメラ、コンピュータ、複写機等の精密機械、一般産業用機械等の同期伝動が必要な全てのベルト伝動系に使用されている。
図6に示すとおり、従来のタイミングベルト1’は、リング状のベルト本体3’と、このベルト本体3’の内周面に沿って所定の間隔で複数形成された歯部2’と、この歯部2’の表面を被覆する歯布4’と、ベルト本体3’の周方向に沿って埋設される心線6’とから構成される。このような構成により、心線6’でベルト本体3’の引張方向の強度アップと高剛性化を図り、歯布4’で歯部2’の変形や磨耗を防止している。
このような構成とすることで、中間帆布により、ベルト本体の剛性を強化することができる。それと同時に中間帆布に周方向への伸縮性を持たせたことで、ピッチライン外周側においては周方向に伸縮することができ、ベルトの屈曲にともない発生する曲げ応力を適切に分散することができる。また、中間帆布を設けることで、ベルトの縦裂きや側面の磨耗を抑え、引張強度を向上させることができる。
さらに、前記中間帆布を、前記心線より外周側に設けることで、心線の曲げ剛性を高め、多角形噛み合いによる局部的な応力集中を分散させることができる。
さらに、前記心線と中間帆布の間に加硫接着により成形されるゴム層を有することで心線と帆布の直接の干渉を防止し、繊維の切断等による強度低下を防止することができる。
他には、狭い隙間にフィラメントの束を押し込む方法(押し込み法)、機械的に型に押し付けて糸に波形を付ける方法(加熱ギヤ法)、熱収縮性の異なる2成分からなる複合繊維を熱処理により螺旋状捲縮を与える方法(収縮熱処理法)等により、捲縮性を付与することができる。
例えば、図2(a)に示すように、伸縮性のある弾性糸を芯糸21としたダブルカバリング糸20aが好適である。本実施形態において、ダブルカバリング糸20aは、伸縮性を備えたポリウレタン系弾性糸等を芯糸21として、この芯糸21の周囲に耐熱性に優れた第1のカバリング糸22を下巻きし、さらにその外側に、第1のカバリング糸22の巻きと同一の方向に耐摩耗性に優れた第2のカバリング糸23aを上巻きして構成される。第1のカバリング糸22に耐熱性および剛性に優れた芳香族ナイロン、第2のカバリング糸23aに接着性に優れた脂肪族ナイロンであることが好適である。複合糸が伸縮性を満たすことができれば、第1のカバリング糸22および第2のカバリング糸23aはフィラメント糸であってもよいし、捲縮糸あるいは紡績糸であってもよい。
例えば、図2(b)に示すように、下巻きした第1のカバリング糸22と逆の方向に第2のカバリング糸23bを上巻きすることによって、ダブルカバリング糸23bを構成してもよい。あるいは、伸縮性のある弾性糸等を芯糸21として、1本の芳香族ナイロン繊維または脂肪族ナイロン繊維をカバリング糸として巻き付けた、シングルカバリング糸であってもよい。芯糸21に対しカバリング糸を3重以上巻き付けた構成であってもよい。
カバリング糸だけでなく、芯糸21についても、前記したものに限定されることはない。例えば、芯糸21は、1本ではなく複数本の弾性糸から構成してもよい。
縦糸をこのように構成することで、タイミングベルト1の縦裂きを防止し、ベルトのねじれを抑制することでベルトの走行を安定にすることができる。さらに、ベルト側面がプーリフランジと摺動する際に、側面に露出した中間帆布7の効果によって、ベルト側面の摩耗を減少させることができる。
また、RFL溶液のラテックスには中間帆布7あるいは後記するゴム糊との接着性が良好なものが適宜選択される。具体的には、クロロプレンゴム(CR)、エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマーゴム(EPDM)、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ACSM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素添加NBR(H‐NBR)等のラテックスが適用できる。なお、ラテックス成分は、適宜最良なものを選択することができ、前記した例に限定されることはない。
例えば、中間帆布7に脂肪族ナイロンを選択した場合には、ビニルピリジンラテックスを使用することで、優れた接着力が得られることがよく知られている。
ゴム糊には、例えば、タイミングベルト1のゴム成分と相容するゴムを用いて、イソシアネート等の接着剤を同時に溶かしたものが用いられる。
ベルト本体3の外周面5は、研磨され、均一の厚さになっている。
この研磨によって、ベルト外周面5に背面テンショナを設置した際においても、ベルト走行時にピッチラインが上下することがなく、ベルト走行方向に対し左右いずれかの方向に偏りが出てしまったりすることがない。また、ベルトの張力変動によるベルト走行時の騒音や振動を抑制することができる。
また、歯部2とベルト本体3のゴムは同一のゴムで成分であることが好適であるが、接着が良好なゴム成分であれば、異なるゴム成分によって構成してもよい。
心線6に対して、RFL処理およびゴム糊処理の接着処理を施してもよい。
基本的には、歯布4を製織するための有機繊維は耐磨耗性を重視して選択されるのに対して、中間帆布7を製織するための有機繊維はベルト本体3のゴム等との接着性や耐熱性を重視して選択される。また、歯布4は耐摩耗性、低摩擦性を重視した織り方により製織されるのに対して、中間帆布7は周方向への伸縮性を重視した織り方により製織される。
基本的には、歯布4を接着処理するためのRFL溶液やゴム糊は、耐熱性、耐摩耗性、低摩擦性を重視して選択されるのに対して、中間帆布7を接着処理するためのRFL溶液やゴム糊は、ベルト本体3のゴムとの接着性を重視して選択される。
このとき、伸縮性加工が施された横糸が接合部において周方向に一致するようにし、例えば、縫合処理、レーザー溶着または超音波溶着によって2つの端面を互いに対向させた状態で接合し、無端帆布とする(図4の接合部参照)。
その外周側に、図4に示すように、前記円筒状中間帆布7をその周方向の伸縮性を利用して被せ、さらにその外周側にゴムシート10を巻き付ける(図3参照)。
そして図示しない加硫用スリーブを嵌合して全体を覆い、公知のスチーム加硫釜を用いて所定条件(温度、圧力および時間)下で加硫する。
このように高圧蒸気で加熱すると、図5に示すように、その際の蒸気圧で、流動化したゴムシート10のゴムが歯布4と心線6の間および心線6と中間帆布7の間に圧入されてゴム層11が形成されると同時に、成形金型8の凹部9に圧入されることで歯部2が形成される。このとき、歯布4は、流動化したゴムとともに成形金型8の凹部9に押し込まれ、歯部2の表面に被覆される。
前記工程を経ることで、歯布4、歯部2、心線6、中間帆布7およびベルト本体3を一体的に加硫成形することができる。加硫処理については従来公知であるため、詳細な説明は省略する。
タイミングベルト1に中間帆布7を設けたことで、タイミングベルト1を補強することができる。具体的には、ベルトの周方向および幅方向の引張強度の向上や、側面の磨耗およびベルトの縦裂きの抑制等であり、さらに、ベルト本体3のゴムと材質の異なる中間帆布7をベルト本体3に備えることで、タイミングベルト1の固有振動数を調整することが可能となる。
また、中間帆布7を外周面5に露出させることなく、心線6と外周面5の間に埋設したことで、外周面5を研磨することができる。その結果、横ブレの少ない安定した走行運動を提供することができ、ベルトの張力変動によるベルト走行時の騒音や振動を抑制することができる。
さらに、埋設する中間帆布7により多角形噛み合いによる心線6の局部屈曲を防止することができる。さらに、中間帆布7の伸縮性を調整することにより、タイミングベルト1の曲げ剛性を調整することができる。
本実施形態のタイミングベルト1の製造方法によると、中間帆布7を無端帆布としてから加硫成形前の成形金型8に装着することで、中間帆布7に一定の張力を作用させつつ成形できるため、中間帆布7の厚さを全体にわたって均一にすることができる。
例えば、中間帆布7は、必ずしも外周面5と心線6の間に埋設する必要はない。中間帆布7は、ベルト本体3の外周面5より露出する構成としてもよい。
2 歯部
3 ベルト本体
4 歯布
5 外周面
6 心線
7 中間帆布
8 成形金型
9 凹部
10 ゴムシート
11 ゴム層
20a,20b ダブルカバリング糸
21 芯糸21
22 第1のカバリング糸
23a,23b 第2のカバリング糸
Claims (10)
- リング状のベルト本体と、
前記ベルト本体の内周面に沿って所定の間隔で複数形成された歯部と、
前記ベルト本体の周方向に沿って埋設される心線と、
前記ベルト本体における前記心線の外周側に設けられる中間帆布と、
を備えたタイミングベルトであって、
前記中間帆布は、周方向に伸縮性を有することを特徴とし、
前記心線と前記中間帆布の間には、加硫成形により成形されるゴム層を有することを特徴とするタイミングベルト。 - 前記中間帆布は、前記ベルト本体に埋設されていることを特徴とする請求項1に記載のタイミングベルト。
- 前記ベルト本体は、その厚みが均一になるように外周面を研磨されていることを特徴とする請求項2に記載のタイミングベルト。
- 前記中間帆布は、周方向に沿った横糸と幅方向に沿った縦糸とから製織され、前記横糸は有機繊維から形成され、前記縦糸は有機繊維あるいは無機繊維から形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のタイミングベルト。
- 前記横糸は、伸縮性を有する加工糸からなることを特徴とする請求項4に記載のタイミングベルト。
- 前記加工糸は、捲縮加工されてなることを特徴とする請求項5に記載のタイミングベルト。
- 前記加工糸は、伸縮性のある弾性糸を芯糸として、前記芯糸の外周側に少なくとも1重以上のカバリング糸を巻き付けてなることを特徴とする請求項5に記載のタイミングベルト。
- 前記縦糸は、芳香族ナイロンあるいはカーボン繊維からなることを特徴とする請求項4ないし請求項7のいずれか1項に記載のタイミングベルト。
- 前記横糸および前記縦糸は、太さ100デニール以上2000デニール以下の撚糸であることを特徴とする請求項4ないし請求項8のいずれか1項に記載のタイミングベルト。
- 前記中間帆布は、表面に接着処理がなされたことを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のタイミングベルト。
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