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JP2006140472A - 交換結合膜と、この交換結合膜を用いた磁気抵抗効果素子、ならびに前記磁気抵抗効果素子を用いた薄膜磁気ヘッド - Google Patents

交換結合膜と、この交換結合膜を用いた磁気抵抗効果素子、ならびに前記磁気抵抗効果素子を用いた薄膜磁気ヘッド Download PDF

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JP2006140472A JP2005320565A JP2005320565A JP2006140472A JP 2006140472 A JP2006140472 A JP 2006140472A JP 2005320565 A JP2005320565 A JP 2005320565A JP 2005320565 A JP2005320565 A JP 2005320565A JP 2006140472 A JP2006140472 A JP 2006140472A
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antiferromagnetic layer
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JP2005320565A
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Naoya Hasegawa
直也 長谷川
Masaji Saito
正路 斎藤
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Alps Alpine Co Ltd
Original Assignee
Alps Electric Co Ltd
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Abstract

【目的】 耐食性に優れた反強磁性材料としてPtMn合金膜が知られているが、前記PtMn合金膜を反強磁性層として使用しても、結晶粒界の状態によって交換結合磁界は小さくなることがわかった。
【構成】 本発明では、反強磁性層(PtMn合金膜)に形成された結晶粒界と、強磁性層に形成された結晶粒界が、界面の少なくとも一部で不連続な状態になっている。これによって前記反強磁性層は熱処理を施すことによって適切な規則変態を起しており、従来に比べて大きな交換結合磁界を得ることが可能である。
【選択図】 図28

Description

本発明は、反強磁性層と強磁性層とから成り、前記反強磁性層と強磁性層との界面にて発生する交換結合磁界により、前記強磁性層の磁化方向が一定の方向に固定される交換結合膜に係り、特に大きい前記交換結合磁界を得られるようにした交換結合膜およびこの交換結合膜を用いた磁気抵抗効果素子(スピンバルブ型薄膜素子、AMR素子)、ならびに前記磁気抵抗効果素子を用いた薄膜磁気ヘッドに関する。
スピンバルブ型薄膜素子は、巨大磁気抵抗効果を利用したGMR(giant magnetoresistive)素子の1種であり、ハードディスクなどの記録媒体からの記録磁界を検出するものである。
このスピンバルブ型薄膜素子は、GMR素子の中でも比較的構造が単純で、しかも弱い磁界で抵抗が変化するなど、いくつかの優れた点を有している。
前記スピンバルブ型薄膜素子は、最も単純な構造で、反強磁性層、固定磁性層、非磁性中間層およびフリー磁性層から成る。
前記反強磁性層と固定磁性層とは接して形成され、前記反強磁性層と固定磁性層との界面にて発生する交換異方性磁界により、前記固定磁性層の磁化方向は一定方向に単磁区化され固定される。
フリー磁性層の磁化は、その両側に形成されたバイアス層により、前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に揃えられる。
前記反強磁性層には、Fe−Mn(鉄−マンガン)合金膜、Ni−Mn(ニッケル−マンガン)合金膜、あるいはPt−Mn(白金−マンガン)合金膜等が一般的に使用されているが、この中でも特にPt−Mn合金膜はブロッキング温度が高く、しかも耐食性に優れるなど種々の優れた点を有しており、脚光を浴びている。
特開平11−191647号公報 特開2000−150235号公報
ところで本発明者らは、反強磁性層にPtMn合金膜を使用しても前記反強磁性層と固定磁性層間で発生する交換結合磁界は、条件によって大きくできないことがわかった。
前記反強磁性層にPtMn合金膜を使用した場合には、前記反強磁性層及び固定磁性層を積層した後、熱処理を施すことによって、前記反強磁性層を不規則格子から規則格子へ変態させ、これによって交換結合磁界を生じさせることができる。
しかしながら前記反強磁性層と強磁性層との界面で、反強磁性層を構成する反強磁性材料の原子と、固定磁性層を構成する軟磁性材料の原子とが1対1に対応する、いわゆる整合状態になっていると、前記反強磁性層は上記した規則変態を適切に起せず、大きな交換結合磁界は生じ得ないことがわかった。
本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、反強磁性層として、元素X(Xは白金族元素)とMnとを含有する反強磁性材料を用いた場合、大きい交換異方性磁界を発生することができるようにした交換結合膜、およびこの交換結合膜を用いた磁気抵抗効果素子、ならびに前記磁気抵抗効果素子を用いた薄膜磁気ヘッドに関する。
本発明は、反強磁性層と強磁性層とが接して形成され、前記反強磁性層と強磁性層との界面に交換結合磁界が発生し、前記強磁性層の磁化方向が一定方向にされる交換結合膜において、
前記反強磁性層は、元素X(ただしXは、Pt,Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料で形成され、
前記交換結合膜を膜厚方向と平行な切断面に現われる前記反強磁性層に形成された結晶粒界と、強磁性層に形成された結晶粒界とが前記界面の少なくとも一部で不連続であることを特徴とするものである。
ここで本発明で言う前記結晶粒界とは、2つの結晶粒が異なる結晶方位を保って前記それぞれの結晶粒が接する境界であり、2つの結晶粒の間で、原子配列が鏡面対称となる境界(いわゆる双晶境界)を含む。ここで「金属材料の物理(日刊工業新聞社(1992年2月28日発行))の第58頁には「特殊粒界」の一例として双晶境界が挙げられており、一般的に結晶粒界には双晶境界が含まれることが明確にされている。
図26は本発明におけるスピンバルブ膜を膜厚方向と平行な方向から切断し、その切断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測した写真であり、その模式図が図28に示されている。
膜構成としては下から、
Si基板/Al23/下地層:Ta(3nm)/シードレイヤ:Ni80Fe20/反強磁性層:Pt54Mn46(15nm)/固定磁性層[Co(1.5nm)/Ru(0.8nm)/Co(2.5nm)]/非磁性中間層:Cu(2.5nm)/フリー磁性層:[Co(1nm)/Ni80Fe20(3nm)]/バックド層:Cu(1.5nm)/Ta/Ta酸化膜、
である。なお各層に記載した括弧書き中の数値は膜厚を示している。またシードレイヤ、反強磁性層、フリー磁性層の組成比はat%である。
前記反強磁性層、および固定磁性層の成膜は、DCマグネトロンスパッタ装置で行い、前記2層の成膜の際に使用されるArガスのガス圧を3mTorrとした。また前記反強磁性層を成膜するとき、基板とターゲット間の距離を80mmとした。
上記した膜構成を有するスピンバルブ膜を成膜後、熱処理を施した。この時の熱処理温度は例えば200℃以上で時間は2時間以上である。なお熱処理真空度を10―7Torrとした。
図26に示す透過電子顕微鏡写真は、上記の熱処理後の状態を示したものである。
図26からわかるように、PtMn(反強磁性層)よりも上側に形成された各層には、隣接する層との界面が全く見えず、単一層のような状態になっている。これは前記PtMn合金膜よりも上側に形成された各層はそれぞれが原子番号の近い元素で構成されており、なおかつ結晶方位が各層で揃っているために、電子線の吸収や回折特性が似通り、透過電子顕微鏡像中で各層のコントラストに差を生じ難いことによると考えられる。
一方図26に示すように、PtMn合金膜と前記PtMn合金膜よりも上側に形成された層との界面は、明確に見てとれる。
そして透過電子顕微鏡写真には、前記PtMn合金膜に形成された結晶粒界と、PtMn合金膜よりも上側に形成された層に現れる結晶粒界も写真にはっきりと映し出されている。前記結晶粒界は膜厚方向に延びて形成されるものが多い。
ここで図28の模式図を参照すると、本発明におけるスピンバルブ膜では、例えば前記PtMn合金に形成された結晶粒界(5)と、前記PtMn合金膜よりも上側の各層に形成された結晶粒界(1)(2)(3)とは、PtMn合金膜と、その上の層との界面で不連続になっていることがわかる。
ここで前記結晶粒界(1)(2)(3)及び(5)は、2つの結晶粒が異なる結晶方位を保って前記それぞれの結晶粒が接する境界であると考えられる。一方、結晶粒界(4)(8)(9)(10)および(11)は、1つの結晶粒内で、原子配列が鏡面対称となる双晶境界であると考えられる。それぞれの前記双晶境界は平行して現れやすい。
前記結晶粒界(4)(8)(9)(10)および(11)も、前記PtMn合金膜よりも上側の各層に形成された結晶粒界(1)(2)(3)と界面で不連続状態となっていることがわかる。
このように反強磁性層に形成された結晶粒界と強磁性層に形成された結晶粒界とが界面で不連続になる原因については、後で考察することにするが、図26の透過電子顕微鏡写真が得られたスピンバルブ型薄膜素子であると、交換結合磁界は非常に大きくなり、10.9×104(A/m)程度の交換結合磁界が得られた。
次に図27は従来におけるスピンバルブ膜を膜厚方向と平行な方向から切断し、その切断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測した写真であり、その模式図が図29に示されている。
膜構成としては下から、
Si基板/Al23/下地層:Ta(3nm)/シードレイヤ:Ni80Fe20(2nm)/反強磁性層:Pt44Mn56(13nm)/固定磁性層[Co(1.5nm)/Ru(0.8nm)/Co(2.5nm)]/非磁性中間層:Cu(2.5nm)/フリー磁性層:[Co(1nm)/Ni80Fe20(3nm)]/バックド層:Cu(1.5nm)/Ta/Ta酸化膜、
である。なお各層に記載した括弧書き中の数値は膜厚を示している。またシードレイヤ、反強磁性層、フリー磁性層の組成比はat%である。
上記した本発明におけるスピンバルブ膜の膜構成との違いは、PtMn合金膜(反強磁性層)のPt量及び膜厚、さらには成膜条件などである。
前記反強磁性層、および固定磁性層の成膜は、DCマグネトロンスパッタ装置で行い、前記2層の成膜の際に使用されるArガスのガス圧を0.8mTorrとした。また前記反強磁性層を成膜するとき、基板とターゲット間の距離を50mmとした。
上記した膜構成を有するスピンバルブ膜を成膜後、熱処理を施した。この時の熱処理温度は例えば200℃以上で時間は2時間以上である。なお熱処理真空度を10-7Torrとした。図27に示す透過電子顕微鏡写真は、上記の熱処理後の状態を示したものである。
図27からわかるように、膜厚方向にPtMn合金膜と前記PtMn合金膜の上に形成された各層とを貫く大きな結晶粒の塊が生じていることがわかる。
図29の模式図を参照すると、PtMn合金膜と前記PtMn合金膜よりも上側に形成された層には、界面を貫いて結晶粒界(6)(7)が形成されている。すなわち比較例のスピンバルブ膜においては、PtMn合金膜に形成される結晶粒界と前記PtMn合金膜よりも上側の層に形成される結晶粒界とが、前記界面で連続した状態となっているのである。
なお前記結晶粒界(6)(7)は、2つの結晶粒が異なる結晶方位を保って前記それぞれの結晶粒が接する境界であると考えられ、前記反強磁性層には双晶境界は形成されていないものと考えられる。
図27に示す透過電子顕微鏡写真を有するスピンバルブ型薄膜素子では、交換結合磁界が非常に低く、0.24×104(A/m)程度の交換結合磁界しか得られなかった。
以上のように本発明と従来とでは、反強磁性層と強磁性層との界面における、前記反強磁性層に形成された結晶粒界と、強磁性層に形成された結晶粒界との位置が異なるのである。
本発明のように、反強磁性層に形成された結晶粒界と強磁性層に形成された結晶粒界とを界面で不連続にするには、一つは前記反強磁性層の組成が重要であり、その他に成膜条件が重要である。成膜条件とは熱処理温度や熱処理時間、および前記反強磁性層、強磁性層を成膜する際のArガス圧、さらには基板とターゲット間の距離、基板温度、基板バイアス電圧、成膜速度などである。
一方、本発明と異なる反強磁性層の組成や成膜条件で前記反強磁性層を成膜すると、図29で見た比較例のように、反強磁性層に形成された結晶粒界と強磁性層に形成された結晶粒界とが界面で連続した状態にしやすい。
界面での結晶粒界が不連続とされた本発明では、成膜段階において、反強磁性層と強磁性層とはエピタキシャル的に成長せず、前記反強磁性層を構成する原子は強磁性層の結晶構造に強固に拘束されていないと考えられる。このため熱処理を施したとき、前記反強磁性層は不規則格子から規則格子へ適切に変態し大きな交換結合磁界を得ることができる。
一方、界面での結晶粒界が連続とされた比較例の場合、成膜段階において、反強磁性層と強磁性層とはエピタキシャル的に成長し、前記反強磁性層の原子は強磁性層の結晶構造に強固に拘束された状態になっていると考えられる。このため熱処理を施しても、前記反強磁性層は不規則格子から規則格子へ適切に変態できず、交換結合磁界は非常に小さくなってしまう。
なお本発明では前記反強磁性層の結晶粒界と強磁性層の結晶粒界は、前記界面の少なくとも一部において不連続な状態となっていればよい。
また前記反強磁性層と強磁性層の結晶配向は、膜面と平行な方向に異なる結晶面が優先配向するものでもよいが、好ましくは同じ等価な結晶面が優先配向するものであることが好ましい。
具体的には本発明では、前記反強磁性層及び強磁性層は、前記界面と平行な方向に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向していることが好ましい。前記{111}面とは、ミラー指数を用いて表した単結晶構造の場合における等価な結晶面の総称であり、前記等価な結晶面には(111)面、(-111)面、(1-11)面、(11-1)面、(-1-11)面、(1-1-1)面、(-11-1)面、(-1-1-1)面が存在する。
なお図26と図27に示す透過電子顕微鏡写真を有するスピンバルブ型薄膜素子では、共に膜面と平行な方向に{111}面の格子縞が見られ、反強磁性層と前記反強磁性層よりも上側に形成された層は、本発明及び比較例ともに、膜面と平行な方向に{111}面と等価な結晶面が優先配向していると認められた。
このように同じ等価な結晶面が反強磁性層と強磁性層とで優先配向している場合には、大きな抵抗変化率(ΔR/R)を得ることが可能である。
また本発明は、反強磁性層と強磁性層とが接して形成され、前記反強磁性層と強磁性層との界面に交換結合磁界が発生し、前記強磁性層の磁化方向が一定方向にされる交換結合膜において、
前記反強磁性層は前記界面と平行な方向に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向し、
前記反強磁性層には少なくとも一部に双晶が形成され、少なくとも一部の前記双晶の双晶境界は、前記界面と非平行に形成されていることを特徴とするものである。
この発明では、反強磁性層は、前記界面と平行な方向に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向している。なお前記反強磁性層を{111}面配向させるには前記反強磁性層の下側にシードレイヤを敷くことが効果的である。
本発明では、反強磁性層に形成された少なくとも一部の双晶の双晶境界は前記界面と非平行に形成されているが、それは図26および図28を見れば明らかである。
すなわち図26および図28に示すように、反強磁性層には、双晶が形成され、前記双晶内には、双晶境界を示す粒界(4)(8)(9)(10)及び(11)が現れている。そしてこれら双晶境界はいずれも界面と非平行になっている。
またここで、図26に示す膜構成とは違う膜構成のものを膜厚と平行な方向から切断し、その切断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測した写真を図30に示す。
膜構成は下から、Si基板/Al23/下地層:Ta(3nm)/シードレイヤ:Ni80Fe20(2nm)/反強磁性層:Pt49Mn51(16nm)/固定磁性層[Co90Fe10(1.4nm)/Ru(0.9nm)/Co90Fe10(2.2nm)]/非磁性中間層:Cu(2.2nm)/フリー磁性層:[Co90Fe10(1nm)/Ni80Fe20(4nm)]/Ta(3nm)である。なお括弧内の数値は膜厚を示している。なお反強磁性層、固定磁性層及びフリー磁性層の組成比はat%である。
前記反強磁性層、および固定磁性層の成膜は、DCマグネトロンスパッタ装置で行い、前記2層の成膜の際に使用されるArガスのガス圧を2.5mTorrとした。また前記反強磁性層を成膜するとき、基板とターゲット間の距離を80mmとした。
上記した膜構成を有するスピンバルブ膜を成膜後、熱処理を施した。この時の熱処理温度は例えば270℃で時間は4時間であった。また熱処理真空度を10―7Torrとした。なおこの実施例では図26のものとPtMnの組成比や膜厚、成膜条件などが異なる。
図30に示す透過電子顕微鏡写真は、上記の熱処理後の状態を示したものである。また反強磁性層及び強磁性層は、界面と平行な方向に等価な{111}面が優先配向していることが、電子線回折像によりわかった。
図31は、図30に示すTEM写真の模式図である。図31に示すように、反強磁性層には、複数の双晶境界が形成され、これら双晶境界はいずれも強磁性層との界面と非平行であることがわかる。
一方、既に説明したように図27および図29に示す比較例では、反強磁性層に双晶が形成されておらず、よって双晶境界は現れていないことがわかる。
本発明のように、反強磁性層に双晶が形成され、前記双晶内に双晶境界が前記界面と非平行に形成されている場合、前記反強磁性層は熱処理によって適切に不規則格子から規則格子に変態しており、大きな交換結合磁界を得ることができる。図30に示す膜構成での交換結合磁界は、約9.3×104(A/m)であった。
ところで前記双晶境界は成膜段階において形成されているか否かは重要ではない。成膜段階で前記双晶境界が形成されていなくても熱処理を施すことによって本発明のような前記双晶境界が現れることがある。
本発明では、成膜段階において前記反強磁性層の原子は強磁性層の結晶構造に拘束された状態にないと思われる。このように界面での拘束力が弱くなると、前記反強磁性層は熱処理によって不規則格子から規則格子に変態しやすくなるが、前記変態の際には格子歪が発生するため、この格子歪を適切に緩和できないと、前記変態を効果的に起すことはできない。変態をするときには反強磁性層の原子が不規則格子から規則格子への再配列を起し、このとき生じる格子歪を、短い距離間隔で原子配列が鏡面対称に変化していくことで緩和していくものと考えられる。熱処理後、前記鏡面対称変化の境は双晶境界となり、このような双晶境界が形成されていることは、いわば熱処理を施したときに規則化変態が起こっていることを意味する。
ここで反強磁性層と強磁性層との界面付近では、前記界面と平行な方向に原子が再配列するときに生じる格子歪を緩和するため、前記界面と交わる方向に前記双晶境界が形成される。このため全体的に適切な規則化変態が起きたとき前記双晶境界は前記界面と非平行に形成される。これが本発明であり、本発明のように界面と非平行に双晶境界が形成された場合、非常に大きな交換結合磁界を得ることが可能になる。一方、前記界面と平行な方向に原子が再配列できないとき、すなわち界面において前記反強磁性層の原子が強磁性層の結晶構造に強固に拘束されているときなどは、前記界面と交わるように双晶境界は形成されない。かかる場合、前記双晶境界は形成されなかったり、あるいは前記界面と平行な双晶境界が形成されたりするのである。
なお前記双晶境界は、図26や図30のように同じ双晶内に複数形成されるとき、それぞれの双晶境界どうしはほぼ平行となる。
なお図30に示す実施例の反強磁性層及び強磁性層には共に特別な対称関係を持たない粒界が形成されており、反強磁性層側に形成された前記粒界及び双晶境界は、強磁性層に形成された粒界とは界面で不連続な状態であることがわかる。
また本発明では、前記双晶境界と前記界面間の内角は、68°以上で76°以下であることが好ましい。この範囲内であると前記反強磁性層は界面と平行な方向に等価な{111}面が優先配向する。
また本発明では、前記強磁性層は、前記界面と平行な方向に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向していることが好ましい。
本発明のように前記反強磁性層及び強磁性層が共に界面と平行な方向に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向していると、大きな抵抗変化率を得ることが可能である。
また本発明では、前記反強磁性層は、元素X(ただしXは、Pt,Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料で形成されることが好ましい。
また本発明では、上記のように反強磁性層と強磁性層の膜面と平行な方向における結晶配向が{111}面として表される等価な結晶面となるように、前記反強磁性層の下側にシードレイヤを形成したのである。
本発明では、前記交換結合膜は、下から反強磁性層、強磁性層の順に積層され、さらに前記反強磁性層の下側に、結晶構造が主として面心立方晶から成り、しかも前記界面と平行な方向に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向したシードレイヤが形成されていることが好ましい。
このように本発明では反強磁性層の下側にシードレイヤを設けることで、前記反強磁性層及び強磁性層は膜面と平行な方向に、代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向する。
また本発明では、前記シードレイヤは、NiFe合金、NiあるいはNi−Fe−Y合金(ただしYは、Cr,Rh,Ta,Hf,Nb,Zr,Tiから選ばれる少なくとも1種以上)、さらにはNi−Y合金で形成されることが好ましい。
また前記シードレイヤは、組成式が(Ni1−xFe1―y(x,yは原子比率)で示され、原子比率xは0以上で0.3以下で、原子比率yは0以上で0.5以下であることが好ましい。また前記シードレイヤは常温で非磁性であることが好ましい。
また本発明では、前記シードレイヤの下には、Ta,Hf,Nb,Zr,Ti,Mo,Wのうち少なくとも1種以上の元素で形成された下地層が形成されていることが好ましい。
さらに本発明では、前記反強磁性層とシードレイヤとの界面の少なくとも一部は非整合状態であることが好ましい。ここで非整合状態とは、反強磁性層を構成する原子と強磁性層(シードレイヤ、なお室温では非磁性)を構成する原子とが界面で1対1に対応しない状態のことを指す。一方、整合状態とは前記界面で原子が1対1で対応する状態のことを指す。
ところで本発明では、上記したように反強磁性層に形成された結晶粒界と強磁性層に形成された結晶粒界とが界面の少なくとも一部で不連続な状態となっているが、この結晶構造は前記反強磁性層とシードレイヤとの界面においても生じていることが好ましい。
すなわち本発明では、反強磁性層に形成された結晶粒界とシードレイヤに形成された結晶粒界が界面の少なくとも一部で不連続な状態となっていることが好ましい。これによって前記反強磁性層は熱処理を施したときに、前記シードレイヤの結晶構造に拘束されずに適切な規則変態を起しており、大きな交換結合磁界を得ることが可能になる。
また本発明では、前記反強磁性層は、X−Mn−X′合金(ただし元素X′は、Ne,Ar,Kr,Xe,Be,B,C,N,Mg,Al,Si,P,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,Cd,Ir,Sn,Hf,Ta,W,Re,Au,Pb、及び希土類元素のうち1種または2種以上の元素である)で形成されていてもよい。この場合、前記X―Mn―X′合金は、元素XとMnとで構成される空間格子の隙間に元素X ′が侵入した侵入型固溶体であり、あるいは、元素XとMnとで構成される結晶格子の格子点の一部が、元素X′に置換された置換型固溶体であることが好まし い。これによって反強磁性層の格子定数を広げることができ、強磁性層との界面において、前記強磁性層の原子配列に対して1対1に対応しない原子配列を形成することが可能である。
また本発明では、前記元素Xあるいは元素X+X′の組成比は、45(at%)以上60(at%)以下であることが好ましい。後述する実験結果により、前記元素Xあるいは元素X+X′の組成比が上記範囲内であると少なくとも1.58×104(A/m)以上の交換結合磁界を得ることができる。なおより好ましくは、前記元素Xあるいは元素X+X′の組成比は、49(at%)以上56.5(at%)以下である。
また本発明では、前記反強磁性層と強磁性層との界面の少なくとも一部は非整合状態であることが好ましい。
本発明では、上記した交換結合膜を様々な磁気抵抗効果素子に適用することができる。
本発明は、反強磁性層と、この反強磁性層と接して形成され、前記反強磁性層との交換異方性磁界により磁化方向が固定される固定磁性層と、前記固定磁性層に非磁性中間層を介して形成されたフリー磁性層と、前記フリー磁性層の磁化方向を前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向へ揃えるバイアス層とを有し、前記反強磁性層とこの反強磁性層と接して形成された固定磁性層とが、上記した交換結合膜により形成されていることを特徴とするものである。
また本発明は、反強磁性層と、この反強磁性層と接して形成され、前記反強磁性層との交換異方性磁界により磁化方向が固定される固定磁性層と、前記固定磁性層に非磁性中間層を介して形成されたフリー磁性層とを有し、前記フリー磁性層の上側または下側に、トラック幅Twの間隔を空けて反強磁性のエクスチェンジバイアス層が形成され、前記エクスチェンジバイアス層とフリー磁性層とが、上記した交換結合膜により形成され、前記フリー磁性層の磁化が一定方向にされることを特徴とするものである。
また本発明は、フリー磁性層の上下に積層された非磁性中間層と、一方の前記非磁性中間層の上および他方の非磁性中間層の下に位置する固定磁性層と、一方の前記固定磁性層の上および他方の固定磁性層の下に位置して、交換異方性磁界によりそれぞれの固定磁性層の磁化方向を一定の方向に固定する反強磁性層と、前記フリー磁性層の磁化方向を前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に揃えるバイアス層とを有し、前記反強磁性層とこの反強磁性層と接して形成された固定磁性層とが、上記した交換結合膜により形成されていることを特徴とするものである。
また本発明は、非磁性層を介して重ねられた磁気抵抗層と軟磁性層とを有し、前記磁気抵抗層の上側あるいは下側にトラック幅Twの間隔を空けて反強磁性層が形成され、前記反強磁性層と磁気抵抗層とが、上記した交換結合膜により形成されていることを特徴とするものである。
また本発明における薄膜磁気ヘッドは、上記した磁気抵抗効果素子の上下にギャップ層を介してシールド層が形成されていることを特徴とするものである。
以上詳述したように本発明における交換結合膜では、前記交換結合膜を膜厚方向と平行な切断面に現われる前記反強磁性層に形成された結晶粒界と、強磁性層に形成された結晶粒界とが前記界面の少なくとも一部で不連続となっている。
また本発明では、前記反強磁性層は前記界面と平行な方向に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向し、前記反強磁性層には少なくとも一部に双 晶が形成され、前記双晶の少なくとも一部の前記双晶の双晶境界は、前記界面と非平行に形成されていることを特徴とするものである。なお前記双晶境界と前記界面間の内角は、68°以上で76°以下であることが好ましい。
上記した膜構造が熱処理後によって得られた場合、前記反強磁性層は熱処理により適切に不規則格子から規則格子に変態しており、大きな交換結合磁界を得ることができる。
上記した交換結合膜は様々な磁気抵抗効果素子に適用することができ、前記交換結合膜を有する磁気抵抗効果素子であると、今後の高記録密度化に適切に対応することが可能になる。
図1は本発明の第1実施形態のシングルスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の全体構造をABS面側から見た断面図である。なお、図1ではX方向に延びる素子の中央部分のみを破断して示している。
このシングルスピンバルブ型磁気抵抗効果素子は、ハードディスク装置に設けられた浮上式スライダのトレーリング側端部などに設けられて、ハードディスクなどの記録磁界を検出するものである。なお、ハードディスクなどの磁気記録媒体の移動方向はZ方向であり、磁気記録媒体からの洩れ磁界の方向はY方向である。
図1の最も下に形成されているのはTa,Hf,Nb,Zr,Ti,Mo,Wのうち1種または2種以上の元素などの非磁性材料で形成された下地層6である。前記下地層6は、その上に形成されるシードレイヤ22の{111}面として表される等価な結晶面を、膜面と平行な方向に優先配向させるために設けられたものである。前記下地層6は例えば50Å程度の膜厚で形成される。
前記シードレイヤ22は、主として面心立方晶から成り、前記反強磁性層4との界面と平行な方向に、代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向されている。前記シードレイヤ22は、NiFe合金、NiあるいはNi−Fe−Y合金(ただしYは、Cr,Rh,Ta,Hf,Nb,Zr,Tiから選ばれる少なくとも1種または2種以上)、Ni−Y合金で形成されることが好ましい。
なお前記シードレイヤ22は、組成式が(Ni1-xFex1-yy(x,yは原子比率)で示され、原子比率xは0以上で0.3以下で、原子比率yは0以上で0.5以下であることが好ましい。これによって反強磁性層4及びその上の各層の{111}面の優先配向度を高めることができ、抵抗変化率ΔR/Rを高めることができる。
ここで「等価な結晶面」とは、ミラー指数を用いて表した結晶格子面を示し、前記{111}面として表される等価(同等)な結晶面としては(111)面、(−111)面、(1−11)面、(11−1)面、(−1−11)面、(1−1−1)面、(−11−1)面、(−1−1−1)面が存在する。
すなわち本発明では、前記シードレイヤ22は(111)面や、それと等価な(1−11)面等が膜面と平行な方向に優先配向しているのである。
また本発明では前記シードレイヤ22は常温にて非磁性であることが好ましい。前記シードレイヤ22を常温で非磁性とすることにより、波形の非対称性(アシンメトリー)の悪化を防ぐことができるとともに、非磁性にするために添加する元素Y(後述)の効果により、前記シードレイヤ22の比抵抗を大きくすることができ、導電層から流れるセンス電流の前記シードレイヤ22への分流を抑制することが可能である。前記センス電流がシードレイヤ22に分流しやすくなると、抵抗変化率(ΔR/R)の低下やバルクハウゼンノイズの発生に繋がり好ましくない。
前記シードレイヤ22を非磁性で形成するには、上記した材質のうちNi−Fe−Y合金(ただしYは、Cr,Rh,Ta,Hf,Nb,Zr,Tiから選ばれる少なくとも1種または2種以上)やNi−Y合金を選択できる。これら材質は、結晶構造が面心立方晶であり、しかも膜面と平行な方向に、代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向しやすく好ましい。前記シードレイヤ22は、例えば30Å程度で形成される。
前記シードレイヤ22の上には反強磁性層4が形成される。前記反強磁性層4は、元素X(ただしXは、Pt,Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料で形成されることが好ましい。
これら白金族元素を用いたX−Mn合金は、耐食性に優れ、またブロッキング温度も高く、さらに交換結合磁界(Hex)を大きくできるなど反強磁性材料として優れた特性を有する。特に白金族元素のうちPtを用いることが好ましい。例えば二元系で形成されたPtMn合金を使用することができる。
また本発明では、前記反強磁性層4を元素Xと元素X′(ただし元素X′は、Ne,Ar,Kr,Xe,Be,B,C,N,Mg,Al,Si,P,Ti, V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,Cd,Sn,Hf,Ta,W,Re,Au,Pb、及び希土類元素のうち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料で形成してもよい。
なお前記元素X′には、元素XとMnとで構成される空間格子の隙間に侵入し、または元素XとMnとで構成される結晶格子の格子点の一部と置換する元素を用いることが好ましい。ここで固溶体とは、一つの結晶相内において、均一に成分が混ざり合った固体のことを指している。
侵入型固溶体あるいは置換型固溶体とすることで、前記X−Mn合金膜の格子定数に比べて、前記X−Mn−X′合金の格子定数を大きくすることができるの で、後述する固定磁性層3の格子定数との差を広げることができ、前記反強磁性層4と固定磁性層3との界面構造を非整合状態にしやすくできる。また特に置換型で固溶する元素X′を使用する場合は、前記元素X′の組成比が大きくなりすぎると、反強磁性としての特性が低下し、固定磁性層3との界面で発生する交換結合磁界が小さくなってしまう。特に本発明では、侵入型で固溶し、不活性ガスの希ガス元素(Ne,Ar,Kr,Xeのうち1種または2種以上)を元素X′ として使用することが好ましいとしている。希ガス元素は不活性ガスなので、希ガス元素が、膜中に含有されても、反強磁性特性に大きく影響を与えることがなく、さらに、Arなどは、スパッタガスとして従来からスパッタ装置内に導入されるガスであり、ガス圧を適正に調節するのみで、容易に、膜中にArを侵入させることができる。
なお、元素X′にガス系の元素を使用した場合には、膜中に多量の元素X′を含有することは困難であるが、希ガスの場合においては、膜中に微量侵入させるだけで、熱処理によって発生する交換結合磁界を、飛躍的に大きくできる。
なお本発明では、好ましい前記元素X′の組成範囲は、at%で0.2から10であり、より好ましくは、at%で、0.5から5である。また本発明では前記元素XはPtであることが好ましく、よってPt−Mn−X′合金を使用することが好ましい。
次に前記反強磁性層4の上には3層膜で形成された固定磁性層3が形成されている。
前記固定磁性層3は、Co膜11とRu膜12とCo膜13とで形成され、前記反強磁性層4との界面での交換結合磁界及び前記Co膜11とCo膜13の間にRu膜12を介して働くRKKY的反強磁性結合により前記Co膜11とCo膜13の磁化方向は互いに反平行状態にされる。これは、いわゆるフェリ磁性結合状態と呼ばれ、この構成により固定磁性層3の磁化を安定した状態にでき、また前記固定磁性層3と反強磁性層4との界面で発生する交換結合磁界を大きくすることができる。
なお前記Co膜11は例えば20Å程度で形成され、Ru膜12は8Å程度で形成され、Co膜13は15Å程度で形成される。
なお前記固定磁性層3は3層膜で形成されなくても良く、例えば単層膜で形成されてもよい。また各層11,12,13は、上記した磁性材料以外の材料によって形成してもよい。例えば前記層11や13には、CoのほかにCoFeなどを選択できる。
前記固定磁性層3の上には非磁性中間層2が形成されている。前記非磁性中間層2は、例えばCuで形成されている。なお本発明における磁気抵抗効果素子が、トンネル効果の原理を用いたトンネル型磁気抵抗効果素子(TMR素子)の場合、前記非磁性中間層2は、例えばAl等の絶縁材料で形成される。
さらに前記非磁性中間層2の上には2層膜で形成されたフリー磁性層1が形成される。
前記フリー磁性層1は、NiFe合金膜9とCo膜10の2層で形成される。図1に示すように前記Co膜10を非磁性中間層2と接する側に形成することにより、前記非磁性中間層2との界面での金属元素等の拡散を防止し、ΔR/R(抵抗変化率)を大きくすることができる。
なお前記NiFe合金膜9は、例えば前記Niを80(at%)、Feを20(at%)として形成する。また前記NiFe合金膜9の膜厚を例えば45Å程度、Co膜を5Å程度で形成する。
図1に示すように前記フリー磁性層1の上にはTa,Hf,Nb,Zr,Ti,Mo,Wのうち1種または2種以上の元素などの非磁性材料で形成された保護層7が形成されている。
さらに前記下地層6から保護層7までの積層膜の両側にはハードバイアス層5及び導電層8が形成されている。前記ハードバイアス層5からのバイアス磁界によってフリー磁性層1の磁化はトラック幅方向(図示X方向)に揃えられる。
前記ハードバイアス層5,5は、例えばCo−Pt(コバルト−白金)合金やCo−Cr−Pt(コバルト−クロム−白金)合金などで形成されており、導電層8,8は、α−Ta、Au、Cr、Cu(銅)やW(タングステン)などで形成されている。なお上記したトンネル型磁気抵抗効果素子の場合、前記導電層8,8は、フリー磁性層1の下側と、反強磁性層4の上側にそれぞれ形成されることになる。
また本発明では、上記したフリー磁性層1の上に、金属材料あるいは非磁性金属のCu,Au,Agからなるバックド層が形成されていてもよい。例えば前記バックド層の膜厚は12〜20Å程度で形成される。
また前記保護層7には、Taなどから成りその表面が酸化された酸化層が形成されていることが好ましい。
前記バックド層が形成されることによって、磁気抵抗効果に寄与する+スピン(上向きスピン:up spin)の電子における平均自由工程(mean free path)を延ばし、いわゆるスピンフィルター効果(spin filter effect)によりスピンバルブ型磁気素子において、大きな抵抗変化率が得られ、高記録密度化に対応できるものとなる。
上記した各層を積層した後、本発明では熱処理を施して反強磁性層4と固定磁性層3との界面に交換結合磁界(Hex)を発生させ、これにより前記固定磁性層3の磁化をハイト方向(図示Y方向)に固定するが、熱処理後における前記スピンバルブ型薄膜素子では、以下のような結晶配向を有している。
前記結晶配向については、主に反強磁性層と強磁性層(固定磁性層)とで形成される交換結合膜を中心して説明する。
本発明では上記したように、反強磁性層4の下側にシードレイヤ22が形成されている。前記シードレイヤ22は、代表的に{111}面として表される等価 な結晶面が膜面に優先配向するように形成されているが、これによって前記シードレイヤ22上に形成される反強磁性層4もまた膜面と平行な方向に、前記シードレイヤ22と同じ結晶面が膜面と平行方向に優先配向される。
例えばシードレイヤ22は、膜面と平行な方向に(−111)面が優先配向する場合、前記シードレイヤ22上に形成される反強磁性層4も膜面と平行な方向に(−111)面が優先配向する。
さらに前記反強磁性層4の上に形成される固定磁性層3もまた前記反強磁性層4と同じ等価な結晶面が膜面と平行な方向に優先配向する。
すなわち本発明では、シードレイヤ22、反強磁性層4及び固定磁性層3は、膜面と平行な方向に、代表的に{111}面として表される同じ等価な結晶面が優先配向しているのである。
なお本発明では、前記膜面と平行な方向に優先配向する結晶面は、代表的に{111}面として表される等価な結晶面であることが好ましいが、これは前記結晶面が最密面であるからである。例えば磁気ヘッド装置内の環境温度やセンス電流密度が高くなると、特に熱的な安定性が求められるが、膜面と平行な方向に最密面である{111}面として表される等価な結晶面が優先配向すると膜厚方向の原子の拡散が起こり難く、多層膜界面の熱的安定性が増し、特性の安定化を図 ることが可能である。
本発明ではこのように反強磁性層4及び固定磁性層3は、膜面と平行な方向に同じ等価な結晶面が優先配向するが、さらに本発明では、前記結晶面内に存在する、ある同じ結晶軸の少なくとも一部が、前記反強磁性層4及び固定磁性層3とで互いに異なる方向を向いているのである(図14参照)。なお図14では、例えば(111)面内に存在する[110]方向が、前記反強磁性層4と固定磁性層3とで互いに異なる方向を向いていることがわかる。
このような結晶配向を生じる原因としては、前記反強磁性層4と固定磁性層3とを成膜段階(熱処理前)において、如何なる状態で成膜したかに依存すると考えられる。
例えば反強磁性層4の材質及び組成比を調整し、さらに成膜条件等を制御し前記反強磁性層4の格子定数を固定磁性層3の格子定数よりも充分に大きくした状態で各層を成膜すると、前記反強磁性層4及び固定磁性層3は、エピタキシャル的な成長をしづらいものと考えられる。
エピタキシャル的に成膜されると、反強磁性層4と固定磁性層3とで全ての結晶方位が平行関係を有して成膜されやすい。そして前記反強磁性層4と固定磁性層3との界面では、前記界面と平行な方向に同じ等価な結晶面が優先配向するのみならず、前記結晶面内に存在する、反強磁性層4と固定磁性層3とのある同一の等価な結晶軸が同じ方向に向き、前記界面で反強磁性層4の原子の配列と固定磁性層3の原子の配列とが1対1に対応しやすくなる(図15参照)。なお図15には具体的な例として、(111)面内に存在する[110]方向が、反強磁性層31と強磁性層30とで同じ方向を向いていることが示されている。
このような結晶配向が熱処理前の段階で生じていると、前記反強磁性層4は熱処理を施しても固定磁性層3の結晶構造に拘束されて、適切な規則変態を起せず、交換結合磁界は非常に低下してしまう。
本発明では、上記のようなエピタキシャル的な成長をせずに、反強磁性層4と固定磁性層3とが成膜されたものと考えられ、このような成膜状態で熱処理を施すと、前記反強磁性層4は固定磁性層3の結晶構造に拘束されず適切な規則変態を起す。熱処理後の本発明におけるスピンバルブ膜の膜構造を観測すると、前記反強磁性層4と固定磁性層3は、膜面と平行な方向に互いに同じ等価な結晶面が優先配向しながらも、前記膜面と平行な方向に配向しない他の結晶面では、前記反強磁性層4と固定磁性層3とで平行関係を保たず、この結果、前記膜面平行に配向した前記結晶面内に存在する、ある同じ等価な結晶軸の少なくとも一部は、反強磁性層4と固定磁性層3とで互いに異なる方向を向いているのである。
本発明では、上記した結晶配向を生じさせるための一つの方法として反強磁性層4の下側にシードレイヤ22を敷いた。既に説明したように、シードレイヤ22を設けることで前記シードレイヤ22上に形成される反強磁性層4及び固定磁性層3は膜面と平行な方向に同じ等価な結晶面が優先配向し、このような結晶配向は、大きな抵抗変化率(ΔR/R)をもたらす。
また本発明では、前記反強磁性層4及び固定磁性層3の膜面平行な方向に配向する前記結晶面内に存在する、ある同じ等価な結晶軸の少なくとも一部は互いに異なる方向を向いているが、このような結晶方位の存在は、熱処理段階で前記反強磁性層4は固定磁性層3の結晶構造に拘束されずに、不規則相としての面心立方格子から規則相としてのCuAu−I型の面心正方格子に適切に変態したものと考えられ、従来に比べて大きな交換結合磁界を得ることが可能である。なお本発明では、熱処理後において前記反強磁性層4の少なくとも一部の結晶構造がCuAu−I型の面心正方規則格子となっていればよい。
また本発明では、以下のような結晶組織を有することが大きな交換結合磁界を得る上で重要である。
すなわち本発明では、前記切断面に現われる前記反強磁性層4の結晶粒界と、固定磁性層3の結晶粒界とが、前記反強磁性層4と固定磁性層3との界面の少なくとも一部で不連続な状態となっているのである。
なお本発明で言う前記結晶粒界とは、2つの結晶粒が異なる結晶方位を保って前記それぞれの結晶粒が接する境界であり、2つの結晶粒の間で、原子配列が鏡面対称となる境界(いわゆる双晶境界)を含む。図28に示す粒界(1)(2)(3)及び(5)は、特別な対称関係を持たない前者の境界であり、図28に示す粒界(4)(8)(9)(10)及び(11)は後者の双晶境界であると思われる。
図26,28(図26は透過電子顕微鏡写真(TEM写真)、図28は図26に示す写真の模式図)に示すように本発明では、PtMn合金膜(反強磁性層4)に形成された結晶粒界(4)(5)(8)(9)(10)及び(11)と、前記反強磁性層4上層に形成された結晶粒界(1)(2)(3)とが、前記界面で不連続な状態になっており、このような不連続状態が生じる場合には、前記界面において反強磁性層4の膜面方向の結晶面と、固定磁性層3の膜面方向の結晶面とに存在する、ある同じ等価な結晶軸の少なくとも一部が異なる方向を向いているものと推測できる。また別の実施例として挙げた図30、31においても、反強磁性層に形成された、特別な対称関係を持たない粒界と双晶境界は、強磁性層に形成された粒界と界面で不連続であることがわかる。
図26,28、30、31に示す結晶構造は、比較例として表される図27,29(図27は透過電子顕微鏡写真(TEM写真)、図29は図27に示す写真の模式図)に示す結晶組織とは明らかに異なることがわかる。図27,29では、PtMn合金膜(反強磁性層4)に形成された結晶粒界と、PtMn合金膜の上の層に形成された結晶粒界が界面で連続し、反強磁性層4からその上の層にかけて前記界面を貫く大きな結晶粒が形成されているからである。
本発明のように図26,28、30、31に示すような結晶粒界を有する交換結合膜であると、成膜段階において前記反強磁性層4と固定磁性層3とはエピタキシャル的な成長をせずに成膜されたものと考えられ、したがって熱処理によって前記反強磁性層4は固定磁性層3の結晶構造に拘束されずに適切な規則変態を起しており、大きな交換結合磁界を得ることができるのである。
また図28に示す粒界(4)(8)(9)(10)及び(11)、すなわち双晶境界は、界面と非平行であることがわかる。同様に別の実施例としての図30及び図31に示した双晶境界も前記界面と非平行であることがわかる。なお本発明におけるいずれの実施例でも前記反強磁性層は、前記反強磁性層の下側にシードレイヤ層が敷かれているため前記界面と平行な方向に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向している。
なお双晶とは、1つの物質の単結晶が2つ以上、互いに特定の対称関係に従って結合している一固体をいう。そして前記双晶には双晶境界が形成され、前記双晶境界を境にして原子配列が鏡面対称となっている。このような双晶が生じるのは、内部応力の緩和のためである。ちなみに双晶境界が形成されて内部応力の緩和が促進されても、ある部分で大きな内部応力が発生している場合には、もはや双晶境界では適切な内部応力の緩和を行えず、図28の粒界(5)、図30の粒界のような、2つの結晶粒が異なる結晶方位を保って前記それぞれの結晶粒が接する境界が形成されて、前記の大きな内部応力が緩和されていくものと考えられる。
本発明のように前記反強磁性層に形成された双晶境界が界面と非平行である場合には、前記界面において反強磁性層4の膜面方向の結晶面と、固定磁性層3の膜面方向の結晶面とに存在する、ある同じ等価な結晶軸の少なくとも一部が異なる方向を向いているものと推測できる。
前記反強磁性層4は成膜後、熱処理を施すことによって不規則格子から規則格子への変態が起こなければ大きな交換結合磁界を得ることはできないが、変態時、界面と平行な方向及び膜厚方向に原子が移動するときに生じる格子歪を緩和すべく、原子配列が鏡面対称に変化する双晶境界が形成される。そしてこのとき前記双晶境界は前記界面と非平行に形成される。
前記反強磁性層が不規則格子から規則格子に適切に変態すると、前記反強磁性層には前記界面と非平行になる双晶境界が形成され、大きな交換結合磁界が発生する。なおある双晶内には前記双晶境界は複数形成されていても良く、かかる場合、それぞれの前記双晶境界どうしはほぼ平行状態になる。
一方、比較例を示す図27及び図29では、前記反強磁性層に全く双晶境界が形成されていない。これはすなわち、熱処理を施しても前記反強磁性層の原子は変態時に起こる再配列が成されていないからであり、よって不規則格子から規則格子への変態がほとんど進行せず、小さな交換結合磁界しか得ることができない。
また前記反強磁性層に双晶境界が形成されても、前記双晶境界が前記界面と平行であるときには、膜厚方向への格子歪はある程度緩和されていると推測できるが、前記界面と平行な方向への原子再配列は全く起こっておらず、よって特に界面で前記反強磁性層は不規則格子から規則格子に適切に変態していない。従って交換結合磁界は小さくなってしまう。
なお本発明では、前記双晶境界と前記界面間の内角θ(図28及び図31を参照のこと)は68°以上で76°以下であることが好ましい。ちなみに図28の前記内角は約68°、図31の前記内角θは約75°であった。この範囲内であると前記反強磁性層は前記界面と平行な方向に{111}面として表される等価 な結晶面が優先配向する。さらに前記固定磁性層3も{111}面として表される等価な結晶面が優先配向していることが好ましい。これによってより効果的に抵抗変化率を向上させることができる。
また本発明では、反強磁性層4と固定磁性層3とを成膜し、熱処理を施した後において、前記反強磁性層4と固定磁性層3との結晶配向を透過電子線回折像によって観測し、この透過電子線回折像が以下に説明するような回折図形として得られたなら、反強磁性層4と固定磁性層3との結晶配向は、前記反強磁性層4と固定磁性層3との界面と平行な方向に同じ等価な結晶面が優先配向し、しかも前記結晶面内に存在する、ある同じ等価な結晶軸の少なくとも一部は前記反強磁性層4と固定磁性層3とで互いに異なる方向を向いているものと推定することが可能である。
本発明では、まず反強磁性層4と固定磁性層3との界面と平行方向から電子線(ビーム)を入射させ、反強磁性層4及び固定磁性層3のそれぞれについて透過電子線回折像を得る。
前記反強磁性層4及び固定磁性層3の透過電子線回折像には、それぞれの層の各結晶面に相当する逆格子点に対応した回折斑点が現れる。前記逆格子点(=回折斑点)はミラー指数により表される結晶面であり、例えば前記逆格子点は(110)面などである。
次に前記回折斑点に指数付けを行う。ビーム原点から回折斑点までの距離rは、格子面間隔dに反比例するため、rを測定することでdを知ることができる。PtMnやCoFe,NiFe等の各結晶格子面{hkl}の面間隔は、ある程度既知であるため、各回折斑点に等価な{hkl}なる指数付けをすることができる。また、一般的な透過電子線回折像の文献には、単結晶構造の結晶粒の各種の方向に対して観測あるいは計算された、各回折斑点に{hkl}なる特定の指数付けがなされた透過電子線回折図形が掲載されている。このような文献を用いて、上記の反強磁性層4及び固定磁性層3の透過電子線回折像から得られた回折斑点が、単結晶構造の場合の、どの結晶面の回折斑点と同一あるいは類似しているかを判別し、前記単結晶の場合と同様の指数付け{hkl}を各個別の回折斑点毎に行う。
そして上記した反強磁性層4の透過電子線回折像と、固定磁性層3の透過電子線回折像とに現れたビーム原点同士を一致させて、各回折像を重ねあわせる。
あるいは反磁性層4と固定磁性層3の両者に同時に電子線が照射される範囲で透過電子線回折像を得る。
本発明では、前記回折斑点のうち、反強磁性層4の回折像と固定磁性層3の回折像とで同じ指数付けがなされ且つビーム原点からみたときに膜厚方向に位置する、ある結晶面を示す回折斑点と、前記ビーム原点とを結んだ第一仮想線は、前記反強磁性層の回折像及び強磁性層の回折像とで互いに一致する(図16,18参照;図16は透過電子線回折像、図18は図16に示す回折像の模式図)。これは、前記反強磁性層4と固定磁性層3とが膜面方向に同じ等価な結晶面が優先配向していることを意味する。
さらに本発明では、同じ指数付けがなされ、且つ前記ビーム原点からみたときに前記膜厚方向以外の方向に位置する、ある結晶面を示す回折斑点と、前記ビーム原点とを結んだ第二仮想線は、前記反強磁性層の回折像及び強磁性層の回折像とで互いにずれているのである(図16,18参照)。これは、すなわち膜面と平行な方向に配向しない結晶面については、反強磁性層4と固定磁性層3とで互いに平行関係になっていないことを意味している。あるいは、前記ビーム原点からみたときに、前記膜厚方向以外の方向に位置する、ある結晶面を示す回折斑点が反強磁性層あるいは強磁性層の一方の回折像のみに現れる状態でも、反強磁性層4と固定磁性層3とで互いに平行関係になっていない。
本発明では、図17,19(図17は透過電子線回折像、図19は図17に示す回折像の模式図)に示す比較例とは明らかに異なる回折像を得ることができる。図17,19に示す比較例では、同じ指数付けがなされ、且つ前記ビーム原点からみたときに前記膜厚方向以外の方向に位置する、ある結晶面を示す回折斑点と、前記ビーム原点とを結んだ第二仮想線が、反強磁性層4と固定磁性層3との回折像で互いに一致しているからである。
本発明では図16に示すような透過電子線回折像が得られた場合には、反強磁性層4と固定磁性層3は膜面と平行な方向に同じ等価な結晶面が優先配向し、前記結晶面内に存在する、ある同じ等価な結晶軸の少なくとも一部が、前記反強磁性層4と固定磁性層3とで互いに異なる方向を向いているものと推測できる。
よって上記した透過電子線回折像が得られるスピンバルブ膜であれば、熱処理を施した段階で反強磁性層4は適切な規則変態を起しており、大きな交換結合磁界を得ることが可能である。
なお本発明では、前記膜厚方向に位置する回折斑点は、代表的に{111}面として表される等価な結晶面を示していることが好ましい。
また本発明では、前記反強磁性層4と固定磁性層3との結晶配向を上記とは別の方向から透過電子線回折像によって観測し、この透過電子線回折像が以下に説明するような回折図形として得られたなら、反強磁性層4と固定磁性層3は、膜面と平行な方向に同じ等価な結晶面が優先配向し、しかも前記結晶面内に存在する、ある同じ等価な結晶軸の少なくとも一部が、前記反強磁性層4と固定磁性層3とで互いに異なる方向を向いているものと推測できる。
すなわち本発明では、反強磁性層4と固定磁性層3との界面と垂直方向から電子線(ビーム)を入射させ、反強磁性層4及び固定磁性層3のそれぞれについて同時に透過電子線回折像を得る(図20及び図21参照;図20は反強磁性層4の回折像の模式図、図21は固定磁性層3の回折像の模式図)。
前記反強磁性層4及び固定磁性層3の透過電子線回折像には、同じ逆格子面の回折斑点が現れる。前記逆格子面すなわち電子線回折像の投影面は、入射電子線と垂直な結晶面と平行であり、例えば前記逆格子面と平行な結晶面は(111)面などである。なお本発明では、前記界面と垂直な方向は、代表的に<111>方向として表される等価な結晶軸の方向であり、あるいは反強磁性層及び強磁性層の前記界面と平行な結晶面は、代表的に{111}面として表される等価な結晶面であることが好ましい。
次に、単結晶構造の場合の透過電子線回折像の文献などを参照して、前記回折斑点に指数付けを行う。反強磁性層4と固定磁性層3には格子定数の違い、すなわち格子面間隔の違いがあるため反強磁性層4の透過電子線回折斑点と、固定磁性層3の透過電子線回折斑点とは、それらの斑点のビーム原点との距離の違いにより容易に判別できる(図22参照)。
本発明では、前記回折斑点のうち、反強磁性層4の回折像と、固定磁性層3の回折像とで同じ指数付けがなさた、ある回折斑点からビーム原点までを結んだ仮想線(仮想線Aと仮想線B、及び仮想線Cと仮想線D)は、前記反強磁性層の回折像及び強磁性層の回折像とで互いにずれた状態となっている(図22参照)。 これは、膜面と平行な方向に配向した結晶面内に存在する、ある同じ等価な結晶軸の方位が、反強磁性層4と固定磁性層3とで互いに異なる方向を向いていることを意味する。あるいは前記回折斑点のうち、ある指数付けがされた回折斑点が、反強磁性層あるいは強磁性層の一方の回折像にのみ現れる状態でも反強磁性層4と固定磁性層3とで互いに異なる方向を向いていることを意味する。
上記の本発明における透過電子線回折像は、図23ないし図25(図23は反強磁性層の回折像の模式図、図24は固定磁性層の回折像の模式図、図25は図23と図24とを重ねあわせた模式図)に示す比較例の透過電子線回折像とは明らかに異なることがわかる。
図25に示すように、ある回折斑点からビーム原点まで結んだ仮想線E,Fは、前記反強磁性層の回折像及び強磁性層の回折像とで互いに一致しているからである。
本発明では、図20ないし図22に示す透過電子線回折像が得られた場合には、反強磁性層4と固定磁性層3は膜面と平行な方向に同じ等価な結晶面が優先配向するが、前記結晶面内に存在する、ある同じ等価な結晶軸の少なくとも一部が、前記反強磁性層4と固定磁性層3とで互いに異なる方向を向いていると推測される。
よって上記した透過電子線回折像が得られるスピンバルブ膜であれば、熱処理を施した段階で反強磁性層4は適切な規則変態を起しており、大きな交換結合磁界を得ることが可能である。
以上のように本発明におけるスピンバルブ型薄膜素子の結晶配向、結晶粒界及び双晶境界の特徴点を説明したが、このような結晶配向、結晶粒界及び双晶境界を得るには、前記反強磁性層4と固定磁性層3とを成膜したとき、前記反強磁性層4の原子が前記固定磁性層3の結晶構造に強固に拘束されないようにしなければならない。拘束力を弱めるためには、前記反強磁性層4と固定磁性層3の界面でいわゆる非整合状態になっていることが好ましい。
非整合状態とは、反強磁性層4の原子の配列と固定磁性層3の原子の配列が前記界面で1対1に対応しない状態のことを言うが、このような非整合状態を作るには前記反強磁性層4の格子定数を前記固定磁性層3の格子定数に比して広げておくことが必要である。
それに加えて前記反強磁性層4は熱処理によって適切な規則変態を起さなければならない。前記固定磁性層3との界面が非整合状態であっても前記反強磁性層4が規則変態を引き起こさない場合には、結局、交換結合磁界は低くなってしまう。
上記した成膜段階における非整合状態、及び規則変態を起すか否かの適正化は、反強磁性層4を構成する各構成元素の組成比や成膜条件によるところが大きいと考えられる。
本発明では、反強磁性層4の元素Xあるいは元素X+X′の原子%を45(at%)以上60(at%)以下に設定することが好ましい。これによって成膜段階において、固定磁性層3との界面が非整合状態にされ、しかも前記反強磁性層4は熱処理によって適切な規則変態を起すものと推測される。
そして上記の組成範囲内で形成された反強磁性層4を使用することにより、熱処理後のスピンバルブ型薄膜素子では、前記反強磁性層4と固定磁性層3との結晶配向を、膜面と平行な方向に同じ等価な結晶面を優先配向させ、しかも前記反強磁性層4及び固定磁性層3の前記結晶面内に存在する、ある同じ等価な結晶軸の少なくとも一部を互いに異なる方向に向かせることが可能である。また前記反強磁性層4の結晶粒界と、固定磁性層3の結晶粒界とを界面の少なくとも一部で不連続な状態にすることができる。また前記反強磁性層4を{111} 面配向させ、さらに前記反強磁性層4に形成される双晶境界を前記界面と非平行で形成することができる。上記の組成範囲内であると後述する実験結果によれば1.58×104(A/m)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。
また本発明では、前記元素Xあるいは元素X+X′の原子%を、49(at%)以上で56.5(at%)以下に設定することが好ましい。これにより7.9×104(A/m)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。
また非整合状態を形成するに重要な前記成膜条件とは、前記反強磁性層4、固定磁性層3を成膜する際に用いられるArガス圧や、熱処理条件、さらには前記反強磁性層4を成膜する際の基板とターゲット間の距離、基板温度、基板バイアス電圧、成膜速度などである。
本発明では例えば前記Arガス圧を3mTorrとする。また熱処理温度を200℃以上で300℃以下とし、熱処理時間を2時間以上で10―6Torr以下の真空中で磁場中熱処理をする。また前記基板とターゲット間の距離を80mmとする。
また本発明では、上記した結晶配向を有するスピンバルブ型薄膜素子では、熱処理後において、前記反強磁性層4と固定磁性層3との界面の少なくとも一部を非整合状態にすることが可能である。
また上記した反強磁性層4と固定磁性層3との結晶配向、及び透過電子線回折像は、シードレイヤ22と反強磁性層4間にも観測される。すなわち前記シードレイヤ22と反強磁性層4との間においても膜面と平行な方向に同じ等価な結晶面が優先配向し、しかも前記結晶面内に存在する、ある同じ等価な結晶軸の少なくとも一部が、前記シードレイヤ22と反強磁性層4とで互いに異なる方向を向いている。
また膜厚方向と平行な方向の断面において、前記シードレイヤ22の結晶粒界と反強磁性層4の結晶粒界との少なくとも一部は不連続な状態となっている。
このような結晶配向及び結晶粒界がシードレイヤ22と反強磁性層4との間に存在すると、前記シードレイヤ22と反強磁性層4との界面では少なくとも一部が非整合状態を保ちやすく、したがって前記反強磁性層4は前記シードレイヤ22の結晶構造に拘束されずに適切な規則変態を起しており、さらに大きな交換結合磁界が得られるのである。
また本発明では前記反強磁性層4の膜厚を7nm〜30nmの範囲内で形成することが好ましい。このように本発明では前記反強磁性層4の膜厚を薄くしてもなお適切な交換結合磁界を発生させることができる。
図2は、別のスピンバルブ型薄膜素子の構造を示す部分断面図である。
このスピンバルブ型薄膜素子では、下から下地層6、NiFe合金膜9とCo膜10とから成るフリー磁性層1、非磁性中間層2、及びCo膜11、Ru膜12、及びCo膜13から成る固定磁性層3、反強磁性層4及び保護層7が積層されている。そして前記積層膜の両側にはハードバイアス層5,5及び導電層8,8が形成されている。
なお各層の材質等に関しては図1に説明したスピンバルブ型薄膜素子と同じである。
図2に示すスピンバルブ型薄膜素子では、反強磁性層4と固定磁性層3は膜面と平行な方向に同じ等価な結晶面が優先配向し、前記結晶面内に存在する、ある同じ等価な結晶軸の少なくとも一部が、前記反強磁性層4と固定磁性層3とで互いに異なる方向を向いている。
また前記反強磁性層4と固定磁性層3とを膜厚と平行な方向(図示Z方向)から断面としてみたときに、前記反強磁性層4の結晶粒界と前記固定磁性層3の結晶粒界は、界面の少なくとも一部において不連続な状態になっている。
このため前記界面の少なくとも一部は非整合状態を保ち、前記反強磁性層4は熱処理によって適切な規則変態がなされており、大きな交換結合磁界を得ることが可能である。
なお反強磁性層4と固定磁性層3とが膜面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向していることが好ましい。また前記結晶面内において、代表的に<110>方向として表される等価な結晶軸の方向が、反強磁性層4と固定磁性層3とで互いに異なる方向を向いていることが好ましい。
またこの実施形態のように前記反強磁性層4が固定磁性層3の上に形成されているときは、シードレイヤ、反強磁性層4及び固定磁性層3の順に積層される場合に比べて前記反強磁性層4を{111}面配向させることは難しいが、ただし成膜条件等の制御によって前記反強磁性層4を{111}面配向にすることは可 能である。そしてこの場合、本発明では、前記反強磁性層4には少なくとも一部に双晶が形成され、一部の前記双晶の双晶境界は、前記界面と非平行となっている。これによって抵抗変化率を向上させることができると共に、前記反強磁性層4は適切に不規則格子から規則格子に変態しており、大きな交換結合磁界を得ることができる。なお前記双晶境界と界面間の内角は68°以上で76°以下であることが好ましい。
また図2に示すスピンバルブ型薄膜素子では、前記界面と平行方向から電子線(ビーム)を入射させて得られた反強磁性層4及び固定磁性層3の透過電子線回折像には、それぞれの層の各結晶面を表す逆格子点に対応した回折斑点が現れ、前記回折斑点のうち、反強磁性層4の回折像と固定磁性層3の回折像とで同じ指数付けがなされ且つビーム原点からみたときに膜厚方向に位置する、ある結晶面を示す回折斑点と、前記ビーム原点とを結んだ第一仮想線は、前記反強磁性層の回折像及び強磁性層の回折像とで互いに一致している。
しかも本発明では、同じ指数付けがなされ、且つ前記ビーム原点からみたときに前記膜厚方向以外の方向に位置する、ある結晶面を示す回折斑点と、前記原点とを結んだ第二仮想線は、前記反強磁性層の回折像及び強磁性層の回折像とで互いにずれているのである。あるいは前記ビーム原点からみたときに、前記膜厚方向以外の方向に位置する、ある結晶面を示す回折斑点が反強磁性層あるいは強磁性層の一方の回折像のみに現れる。
上記の場合、前記膜厚方向に位置する回折斑点は、代表的に{111}面として表される等価な結晶面であることが好ましい。
あるいは図2に示すスピンバルブ型薄膜素子では、前記界面と垂直方向から電子線(ビーム)を入射させて得られた反強磁性層4及び固定磁性層3の透過電子線回折像には、それぞれの層の各結晶面を表す逆格子点に対応した回折斑点が現れ、前記回折斑点のうち、反強磁性層4の回折像と固定磁性層3の回折像とで同じ指数付けがなされた、ある回折斑点からビーム原点までを結んだ仮想線は、前記反強磁性層の回折像及び強磁性層の回折像とで互いにずれている。あるいは前記回折斑点のうち、ある指数付けがされた回折斑点が、反強磁性層あるいは強磁性層の一方の回折像にのみ現れる。
上記の場合、前記界面と垂直な方向は、代表的に<111>方向として表される等価な結晶軸の方向であり、あるいは反強磁性層及び強磁性層の前記界面と平行な結晶面は、代表的に{111}面として表される等価な結晶面であることが好ましい。
上記のような透過電子線回折像が得られると、反強磁性層4と固定磁性層3は膜面と平行な方向に同じ等価な結晶面が優先配向し、しかも前記結晶面内に存在する、ある同じ等価な結晶軸の少なくとも一部が、反強磁性層4と固定磁性層3とで互いに異なる方向を向いているものと推測できる。
そして上記した透過電子線回折像を有するスピンバルブ型薄膜素子であると、前記反強磁性層4は熱処理によって適切な規則変態を起しており、従来に比べて大きな交換結合磁界が得られる。
また図2に示すスピンバルブ型薄膜素子では、反強磁性層4を構成する元素Xあるいは元素X+X′の組成比は45(at%)以上60(at%)以下であることが好ましい。これにより1.58×10(A/m)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。
また本発明では、前記元素Xあるいは元素X+X′の組成比は、49(at%)以上57(at%)以下であることが好ましい。これにより7.9×10(A/m)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。
次に図3は本発明における別のスピンバルブ型薄膜素子の構造を示す部分断面図である。
図3では下から下地層6、シードレイヤ22、反強磁性層4、固定磁性層3、非磁性中間層2、フリー磁性層1が積層されている。
前記下地層6は、Ta,Hf,Nb,Zr,Ti,Mo,Wのうち少なくとも1種以上の元素で形成されていることが好ましい。
また前記シードレイヤ22は、結晶構造が主として面心立方晶からなり、しかも反強磁性層4との界面と平行な方向に、代表的に{111}面として表される 等価な結晶面が優先配向していることが好ましい。なお前記シードレイヤ22の材質等に関しては図1で説明したものと同様である。
前記シードレイヤ22を反強磁性層4の下に形成することで、前記シードレイヤ22上に形成される反強磁性層4、固定磁性層3、非磁性中間層2及びフリー磁性層1も前記シードレイヤ22と同じ等価な結晶面が膜面と平行な方向に優先配向する。
また図3では固定磁性層3が、Co膜11,13、Ru膜12の3層膜で形成されているが、他の材質が使用されても良く、また3層膜ではなく例えば単層膜で形成されてもかまわない。
またフリー磁性層1は、NiFe合金膜9とCo膜10との2層膜で形成されているが、他の材質が使用されても良く、また2層膜ではなく例えば単層膜で形成されてもかまわない。
図3に示すスピンバルブ型薄膜素子では、反強磁性層4と固定磁性層3は膜面と平行な方向に同じ等価な結晶面が優先配向し、しかも前記結晶面内に存在する、ある同じ等価な結晶軸の少なくとも一部が、前記反強磁性層4と固定磁性層3とで互いに異なる方向を向いている。
また前記反強磁性層4と固定磁性層3とを膜厚と平行な方向(図示Z方向)から断面としてみたときに、前記反強磁性層4の結晶粒界と前記固定磁性層3の結晶粒界が前記界面の少なくとも一部で不連続な状態になっている。
このため前記界面の少なくとも一部は非整合状態を保ち、前記反強磁性層4は熱処理によって適切な規則変態がなされており、大きな交換結合磁界を得ることが可能である。
なお反強磁性層4と固定磁性層3膜面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向していることが好ましい。また前記結晶面内において、代表的に<110>方向として表される等価な結晶軸の方向が、反強磁性層4と固定磁性層3とで互いに異なる方向を向いていることが好ましい。
また本発明では、前記反強磁性層4と固定磁性層3とが前記界面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向し、しかも前記反強磁性層4には少なくとも一部に双晶が形成され、一部の前記双晶の双晶境界は、前記界面と非平行となっている。これによって抵抗変化率を向上させることができると共に、前記反強磁性層4は適切に不規則格子から規則格子に変態しており、大きな交換結合磁界を得ることができる。なお前記双晶境界と界面間の内角は68°以上で76°以下であることが好ましい。
また図3に示すスピンバルブ型薄膜素子では、前記界面と平行方向から電子線(ビーム)を入射させて得られた反強磁性層4及び固定磁性層3の透過電子線回折像には、それぞれの層の各結晶面を表す逆格子点に対応した回折斑点が現れ、前記回折斑点のうち、反強磁性層4の回折像と固定磁性層3の回折像とで同じ指数付けがなされ且つビーム原点からみたときに膜厚方向に位置する、ある結晶面を示す回折斑点と、前記ビーム原点とを結んだ第一仮想線は、前記反強磁性層の回折像及び強磁性層の回折像とで互いに一致している。
しかも本発明では、同じ指数付けがなされ、且つ前記ビーム原点からみたときに前記膜厚方向以外の方向に位置する、ある結晶面を示す回折斑点と、前記ビーム原点とを結んだ第二仮想線は、前記反強磁性層の回折像及び強磁性層の回折像とで互いにずれている。また前記ビーム原点からみたときに、前記膜厚方向以外の方向に位置する、ある結晶面を示す回折斑点が、反強磁性層あるいは強磁性層の一方の回折像にのみ現れる。
上記の場合、前記膜厚方向に位置する回折斑点は、代表的に{111}面として表される等価な結晶面であることが好ましい。
あるいは図3に示すスピンバルブ型薄膜素子では、前記界面と垂直方向から電子線(ビーム)を入射させて得られた反強磁性層4及び固定磁性層3の透過電子線回折像には、それぞれの層の各結晶面を表す逆格子点に対応した回折斑点が現れ、前記回折斑点のうち、反強磁性層4の回折像と固定磁性層3の回折像とで同じ指数付けがなされた、ある回折斑点からビーム原点までを結んだ仮想線は、前記反強磁性層の回折像及び強磁性層の回折像とで互いにずれている。あるいは前記回折斑点のうち、ある指数付けがされた回折斑点が、反強磁性層あるいは強磁性層の一方の回折像にのみ現れる。
上記の場合、前記界面と垂直な方向は、代表的に<111>方向として表される等価な結晶軸の方向であり、あるいは、反強磁性層及び強磁性層の前記界面と平行な結晶面は、代表的に{111}面として表される等価な結晶面であることが好ましい。
上記のような透過電子線回折像が得られると、反強磁性層4と固定磁性層3は膜面と平行な方向に同じ等価な結晶面が優先配向し、しかも前記結晶面内に存在する、ある同じ等価な結晶軸の少なくとも一部が、前記反強磁性層4と固定磁性層3とで互いに異なる方向を向いているものと推測できる。上記した透過電子線回折像を有するスピンバルブ型薄膜素子であると、前記反強磁性層4は熱処理によって適切な規則変態を起しており、従来に比べて大きな交換結合磁界が得られる。
また図3に示すスピンバルブ型薄膜素子では、反強磁性層4を構成する元素Xあるいは元素X+X′の組成比は45(at%)以上60(at%)以下であることが好ましい。これにより1.58×10(A/m)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。
また本発明では、前記元素Xあるいは元素X+X′の組成比は、49(at%)以上56.5(at%)以下であることが好ましい。これにより7.9×10(A/m)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。
また図3に示すように前記フリー磁性層1上には、トラック幅方向(図示X方向)にトラック幅Twの間隔を開けてエクスチェンジバイアス層(反強磁性層)16,16が形成されている。
なおこのエクスチェンジバイアス層16は、X−Mn合金(ただしXは、Pt,Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうちいずれか1種または2種以上の元素である)、好ましくはPtMn合金、またはX―Mn―X′合金(ただしX′は、Ne,Ar,Kr,Xe,Be,B,C,N,Mg,Al,Si,P,Ti,V, Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,Cd,Sn,Hf,Ta,W,Re,Au,Pb、及び希土類元素のうち1種または2種以上の元素である)で形成されている。
本発明では、前記エクスチェンジバイアス層16とフリー磁性層1は膜面と平行な方向に同じ等価な結晶面が優先配向し、しかも前記結晶面内に存在する、ある同じ等価な結晶軸の少なくとも一部の方向は前記エクスチェンジバイアス層16とフリー磁性層1とで、互いに異なる方向を向いている。
また前記エクスチェンジバイアス層16とフリー磁性層1とを膜厚と平行な方向(図示Z方向)から断面としてみたときに、前記エクスチェンジバイアス層16の結晶粒界と前記フリー磁性層1の結晶粒界は界面の少なくとも一部において不連続な状態になっている。
このため前記界面の少なくとも一部は非整合状態を保ち、前記エクスチェンジバイアス層16は熱処理によって適切な規則変態がなされており、大きな交換結合磁界を得ることが可能である。
なおエクスチェンジバイアス層16とフリー磁性層1は膜面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向していることが好ましい。また前記結晶面内において、代表的に<110>方向として表される等価な結晶軸の方向が、エクスチェンジバイアス層16とフリー磁性層1とで互いに異なる方向を向いていることが好ましい。
また本発明では、前記エクスチェンジバイアス層16が前記界面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向し、しかも前記エクスチェンジバイアス層16には少なくとも一部に双晶が形成され、一部の前記双晶の双晶境界は、前記界面と非平行となっている。このため前記エクスチェンジバイアス層16は適切に不規則格子から規則格子に変態しており、大きな交換結合磁界を得ることができる。なお前記双晶境界と界面間の内角は68°以上 で76°以下であることが好ましい。
また図3に示すスピンバルブ型薄膜素子では、前記界面と平行方向から電子線(ビーム)を入射させて得られたエクスチェンジバイアス層16及びフリー磁性層1の透過電子線回折像には、それぞれの層の各結晶面を表す逆格子点に対応した回折斑点が現れ、前記回折斑点のうち、エクスチェンジバイアス層16の回折像とフリー磁性層1の回折像とで同じ指数付けがなされ且つビーム原点からみたときに膜厚方向に位置する、ある結晶面を示す回折斑点と、前記ビーム原点とを結んだ第一仮想線は、前記反強磁性層の回折像及び強磁性層の回折像とで互いに一致している。
しかも本発明では、同じ指数付けがなされ、且つ前記ビーム原点からみたときに前記膜厚方向以外の方向に位置する、ある結晶面を示す回折斑点と、前記ビーム原点とを結んだ第二仮想線は、前記反強磁性層の回折像及び強磁性層の回折像とで互いにずれているのである。あるいは前記ビーム原点からみたときに前記膜厚方向以外の方向に位置する、ある結晶面を示す回折斑点が反強磁性層あるいは強磁性層の一方の回折像にのみ現れるのである。
上記の場合、前記膜厚方向に位置する回折斑点は、代表的に{111}面として表される等価な結晶面であることが好ましい。
あるいは図3に示すスピンバルブ型薄膜素子では、前記界面と垂直方向から電子線(ビーム)を入射させて得られたエクスチェンジバイアス層16及びフリー磁性層1の透過電子線回折像には、それぞれの層の各結晶面を表す逆格子点に対応した回折斑点が現れ、前記回折斑点のうち、エクスチェンジバイアス層16の回折像とフリー磁性層1の回折像とで同じ指数付けがなされた、ある回折斑点からビーム原点までを結んだ仮想線は、前記反強磁性層の回折像及び強磁性層の回折像とで互いにずれている。あるいは前記回折斑点のうち、ある指数付けがされた回折斑点が、反強磁性層あるいは強磁性層の一方の回折像にのみ現れる。
上記の場合、前記界面と垂直な方向は、代表的に<111>方向として表される等価な結晶軸の方向であり、あるいは、反強磁性層及び強磁性層の前記界面と平行な結晶面は、代表的に{111}面として表される等価な結晶面であることが好ましい。
上記のような透過電子線回折像を有するスピンバルブ型薄膜素子であると、エクスチェンジバイアス層16とフリー磁性層1は膜面と平行な方向に同じ等価な結晶面が優先配向し、しかも前記結晶面内に存在する、ある同じ等価な結晶軸の少なくとも一部が、前記エクスチェンジバイアス層16とフリー磁性層1とで互いに異なる方向を向いているものと推測される。そして前記透過電子線回折像を有するスピンバルブ型薄膜素子では、前記エクスチェンジバイアス層16は熱処理によって適切な規則変態を起しており、従来に比べて大きな交換結合磁界が得られる。
前記フリー磁性層1の両側端部では、エクスチェンジバイアス層16間での交換結合磁界によりフリー磁性層1が図示X方向に単磁区化され、フリー磁性層1のトラック幅Tw領域の磁化は、外部磁界に対して反応する程度に図示X方向に適性に揃えられている。
このようにして形成されたシングルスピンバルブ型磁気抵抗効果素子では、図示Y方向の外部磁界により、フリー磁性層1のトラック幅Tw領域の磁化が図示X方向から図示Y方向に変化する。このフリー磁性層1内での磁化の方向の変動と、固定磁性層3の固定磁化方向(図示Y方向)との関係で電気抵抗が変化し、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化により、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。
図4は、本発明における他のスピンバルブ型薄膜素子の構造を示す部分断面図である。
図4に示すスピンバルブ型薄膜素子では、トラック幅方向(図示X方向)にトラック幅Twの間隔を開けた一対のシードレイヤ22が形成され、前記シードレイヤ22の上にエクスチェンジバイアス層16,16が形成されている。
前記一対のシードレイヤ22及びエクスチェンジバイアス層16間は、SiOやAl等の絶縁材料で形成された絶縁層17によって埋められている。
そして前記エクスチェンジバイアス層16及び絶縁層17上にはフリー磁性層1が形成されている。
前記エクスチェンジバイアス層16はX−Mn合金、あるいはX−Mn−X′合金で形成され、前記元素Xあるいは元素X+X´の組成比は45(at%)以上60(at%)以下であることが好ましく、より好ましくは49(at%)以上56.5(at%)以下である。
熱処理を施すことにより前記エクスチェンジバイアス層16はフリー磁性層1の結晶構造に拘束されず、適切な規則変態を起し、従来に比べて大きな交換結合磁界を得ることができる。
本発明では熱処理後において、前記エクスチェンジバイアス層16とフリー磁性層1は膜面と平行な方向に同じ等価な結晶面が優先配向し、しかも前記結晶面内に存在する、ある同じ等価な結晶軸の少なくとも一部が、前記エクスチェンジバイアス層16とフリー磁性層1とで互いに異なる方向を向いている。
また前記エクスチェンジバイアス層16とフリー磁性層1とを膜厚と平行な方向(図示Z方向)から断面としてみたときに、前記エクスチェンジバイアス層16の結晶粒界と前記フリー磁性層1の結晶粒界は界面の少なくとも一部において不連続な状態になっている。
このため前記界面の少なくとも一部は非整合状態を保ち、前記エクスチェンジバイアス層16は熱処理によって適切な規則変態がなされており、大きな交換結合磁界を得ることが可能である。
なおエクスチェンジバイアス層16とフリー磁性層1は膜面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向していることが好ましい。また前記結晶面内において、代表的に<110>方向として表される等価な結晶軸の方向が、エクスチェンジバイアス層16とフリー磁性層1とで互いに異なる方向を向いていることが好ましい。
また本発明では、前記エクスチェンジバイアス層16が前記界面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向し、しかも前記エクスチェンジバイアス層16には少なくとも一部に双晶が形成され、一部の前記双晶の双晶境界は、前記界面と非平行となっている。このため、前記エクスチェンジバイアス層16は適切に不規則格子から規則格子に変態しており、大きな交換結合磁界を得ることができる。なお前記双晶境界と界面間の内角は68° 以上で76°以下であることが好ましい。
また図4に示すスピンバルブ型薄膜素子では、前記界面と平行方向から電子線(ビーム)を入射させて得られたエクスチェンジバイアス層16及びフリー磁性層1の透過電子線回折像には、それぞれの層の各結晶面を表す逆格子点に対応した回折斑点が現れ、前記回折斑点のうち、エクスチェンジバイアス層16の回折像とフリー磁性層1の回折像とで同じ指数付けがなされ且つビーム原点からみたときに膜厚方向に位置する、ある結晶面を示す回折斑点と、前記ビーム原点とを結んだ第一仮想線は、前記反強磁性層の回折像及び強磁性層の回折像とで互いに一致している。
しかも本発明では、同じ指数付けがなされ、且つ前記原点からみたときに前記膜厚方向以外の方向に位置する、ある結晶面を示す回折斑点と、前記ビーム原点とを結んだ第二仮想線は、前記反強磁性層の回折像及び強磁性層の回折像とで互いにずれている。あるいは前記ビーム原点からみたときに、前記膜厚方向以外の方向に位置する、ある結晶面を示す回折斑点が反強磁性層あるいは強磁性層の一方の回折像にのみ現れる。
上記の場合、前記膜厚方向に位置する回折斑点は、代表的に{111}面として表される等価な結晶面を示していることが好ましい。
あるいは図4に示すスピンバルブ型薄膜素子では、前記界面と垂直方向から電子線(ビーム)を入射させて得られたエクスチェンジバイアス層16及びフリー磁性層1の透過電子線回折像には、それぞれの層の各結晶面を表す逆格子点に対応した回折斑点が現れ、前記回折斑点のうち、エクスチェンジバイアス層16の回折像とフリー磁性層1の回折像とで同じ指数付けがなされた、ある回折斑点からビーム原点までを結んだ仮想線は、前記反強磁性層の回折像及び強磁性層の回折像とで互いにずれている。あるいは、前記回折斑点のうち、ある指数付けがされた回折斑点が、反強磁性層あるいは強磁性層の一方の回折像にのみ現れる。
上記の場合、前記界面と垂直な方向は、代表的に<111>方向として表される等価な結晶軸の方向であり、あるいは、反強磁性層及び強磁性層の前記界面と平行な結晶面は、代表的に{111}面として表される等価な結晶面であることが好ましい。
上記のような透過電子線回折像が得られると、エクスチェンジバイアス層16とフリー磁性層1は膜面と平行な方向に同じ等価な結晶面が優先配向し、前記結晶面内に存在する、ある同じ等価な結晶軸の少なくとも一部が、前記エクスチェンジバイアス層16とフリー磁性層1とで互いに異なる方向を向いているものと推測できる。そして上記したスピンバルブ型薄膜素子であると、前記エクスチェンジバイアス層16は熱処理によって適切な規則変態を起しており、従来に比べて大きな交換結合磁界が得られる。
前記フリー磁性層1の両側端部では、エクスチェンジバイアス層16間での交換結合磁界により図示X方向に単磁区化され、フリー磁性層1のトラック幅Tw領域の磁化は、外部磁界に対して反応する程度に図示X方向に適性に揃えられている。
図4に示すように前記フリー磁性層1の上には非磁性中間層2が形成され、さらに前記非磁性中間層2の上には固定磁性層3が形成されている。さらに前記固定磁性層3の上には反強磁性層4が形成されている。
本発明では熱処理後において、前記反強磁性層4と固定磁性層3は膜面と平行な方向に同じ等価な結晶面が優先配向し、しかも前記結晶面内に存在する、ある同じ等価な結晶軸の少なくとも一部が、前記反強磁性層4と固定磁性層3とで互いに異なる方向を向いている。
また前記反強磁性層4と固定磁性層3とを膜厚と平行な方向(図示Z方向)から断面としてみたときに、前記反強磁性層4の結晶粒界と前記固定磁性層3の結晶粒界は界面の少なくとも一部において不連続な状態になっている。
このため前記界面の少なくとも一部は非整合状態を保ち、前記反強磁性層4は熱処理によって適切な規則変態がなされており、大きな交換結合磁界を得ることが可能である。
なお反強磁性層4と固定磁性層3膜面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向していることが好ましい。また前記結晶面内において、代表的に<110>方向として表される等価な結晶軸の方向が、反強磁性層4と固定磁性層3とで互いに異なる方向を向いていることが好ましい。
また本発明では、前記反強磁性層4が前記界面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向し、しかも前記反強磁性層4には少なくとも一部に双晶が形成され、一部の前記双晶の双晶境界は、前記界面と非平行となっている。これによって抵抗変化率を向上させることができると共に、前記反強磁性層4は適切に不規則格子から規則格子に変態しており、大きな交換結合磁界を得ることができる。なお前記双晶境界と界面間の内角は68°以上で 76°以下であることが好ましい。
また図4に示すスピンバルブ型薄膜素子では、前記界面と平行方向から電子線(ビーム)を入射させて得られた反強磁性層層4及び固定磁性層3の透過電子線回折像には、それぞれの層の各結晶面を表す逆格子点に対応した回折斑点が現れ、前記回折斑点のうち、反強磁性層4の回折像と固定磁性層3の回折像とで同じ指数付けがなされ且つビーム原点からみたときに膜厚方向に位置する、ある結晶面を示す回折斑点と、前記ビーム原点とを結んだ第一仮想線は、前記反強磁性層の回折像及び強磁性層の回折像とで互いに一致している。
しかも本発明では、同じ指数付けがなされ、且つ前記ビーム原点からみたときに前記膜厚方向以外の方向に位置する、ある結晶面を示す回折斑点と、前記ビーム原点とを結んだ第二仮想線は、前記反強磁性層の回折像及び強磁性層の回折像とで互いにずれている。あるいは前記ビーム原点からみたときに、前記膜厚方向以外の方向に位置する、ある結晶面を示す回折斑点が反強磁性層あるいは強磁性層の一方の回折像にのみ現れる。
上記の場合、前記膜厚方向に位置する回折斑点は、代表的に{111}面として表される等価な結晶面を示していることが好ましい。
あるいは図4に示すスピンバルブ型薄膜素子では、前記界面と垂直方向から電子線(ビーム)を入射させて得られた反強磁性層4及び固定磁性層3の透過電子線回折像には、それぞれの層の各結晶面を表す逆格子点に対応した回折斑点が現れ、前記回折斑点のうち、反強磁性層4の回折像と固定磁性層3の回折像とで同じ指数付けがなされた、ある回折斑点からビーム原点までを結んだ仮想線は、前記反強磁性層の回折像及び強磁性層の回折像とで互いにずれている。あるいは、前記回折斑点のうち、ある指数付けがされた回折斑点が、反強磁性層あるいは強磁性層の一方の回折像にのみ現れる。
上記の場合、前記界面と垂直な方向は、代表的に<111>方向として表される等価な結晶軸の方向であり、あるいは反強磁性層及び強磁性層の前記界面と平行な結晶面は、代表的に{111}面として表される等価な結晶面であることが好ましい。
上記のような透過電子線回折像が得られると、反強磁性層4と固定磁性層3は膜面と平行な方向に同じ等価な結晶面が優先配向し、しかも前記結晶面内に存在する、ある同じ等価な結晶軸の少なくとも一部は、反強磁性層4と固定磁性層3とで互いに異なる方向を向いているものと推測できる。そして上記した透過電子線回折像を有するスピンバルブ型薄膜素子であると、前記反強磁性層4は熱処理によって適切な規則変態を起しており、従来に比べて大きな交換結合磁界が得られる。
図5は本発明におけるデュアルスピンバルブ型薄膜素子の構造を示す部分断面図である。
図5に示すように、下から下地層6、シードレイヤ22、反強磁性層4、固定磁性層3、非磁性中間層2、およびフリー磁性層1が連続して積層されている。前記フリー磁性層1は3層膜で形成され、例えばCo膜10,10とNiFe合金膜9で構成される。さらに前記フリー磁性層1の上には、非磁性中間層2、固定磁性層3、反強磁性層4、および保護層7が連続して積層されている。
また、下地層6から保護層7までの多層膜の両側にはハードバイアス層5,5、導電層8,8が積層されている。なお、各層は図1で説明した材質と同じ材質で形成されている。
この実施例では、フリー磁性層1よりも図示下側に位置する反強磁性層4の下にはシードレイヤ22が形成されている。さらに前記反強磁性層4を構成する元素Xあるいは元素X+X′の組成比は、45(at%)以上60(at%)以上で形成されることが好ましく、より好ましくは49(at%)以上56.5(at%)以下である。
そして本発明では熱処理後において、前記反強磁性層4と固定磁性層3の結晶配向は、前記反強磁性層4と固定磁性層3との界面と平行な方向に同じ等価な結晶面が優先配向し、前記反強磁性層4と固定磁性層3の前記結晶面内に存在する、ある同じ等価な結晶軸の少なくとも一部が、互いに異なる方向を向いている。
また前記反強磁性層4と固定磁性層3とを膜厚と平行な方向(図示Z方向)から断面としてみたときに、前記反強磁性層4の結晶粒界と前記固定磁性層3の結晶粒界は界面の少なくとも一部において不連続な状態になっている。
このため前記界面の少なくとも一部は非整合状態を保ち、前記反強磁性層4は熱処理によって適切な規則変態がなされており、大きな交換結合磁界を得ることが可能である。
なお反強磁性層4と固定磁性層3膜面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向していることが好ましい。また前記結晶面内において、代表的に<110>方向として表される等価な結晶軸の方向が、反強磁性層4と固定磁性層3とで互いに異なる方向を向いていることが好ましい。
また本発明では、前記反強磁性層4が前記界面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向し、しかも前記反強磁性層4には少なくとも一部に双晶が形成され、一部の前記双晶の双晶境界は、前記界面と非平行となっている。これによって抵抗変化率を向上させることができると共に、前記反強磁性層4は適切に不規則格子から規則格子に変態しており、大きな交換結合磁界を得ることができる。なお前記双晶境界と界面間の内角は68°以上で 76°以下であることが好ましい。
また図5に示すデュアルスピンバルブ型薄膜素子では、フリー磁性層1よりも下側に形成された固定磁性層3及び反強磁性層4のみならず、積層膜全体の結晶配向が、上記と同様の結晶配向を有するものとなっている。
すなわち本発明では、フリー磁性層1よりも上側に形成された反強磁性層4及び固定磁性層3もまた膜面と平行な方向に同じ等価な結晶面が優先配向し、しかも前記結晶面内に存在する、ある同じ等価な結晶軸の少なくとも一部が、前記反強磁性層4と固定磁性層3とで互いに異なる方向を向いているのである。
また前記反強磁性層4と固定磁性層3とを膜厚と平行な方向(図示Z方向)から断面としてみたときに、前記反強磁性層4の結晶粒界と前記固定磁性層3の結晶粒界は界面の少なくとも一部において不連続な状態になっている。
このため前記界面の少なくとも一部は非整合状態を保ち、前記反強磁性層4は熱処理によって適切な規則変態がなされており、大きな交換結合磁界を得ることが可能である。
なお反強磁性層4と固定磁性層3膜面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向していることが好ましい。また前記結晶面内において、代表的に<110>方向として表される等価な結晶軸の方向が、反強磁性層4と固定磁性層3とで互いに異なる方向を向いていることが好ましい。
また本発明では、前記反強磁性層4が前記界面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向し、しかも前記反強磁性層4には少なくとも一部に双晶が形成され、一部の前記双晶の双晶境界は、前記界面と非平行となっている。これによって抵抗変化率を向上させることができると共に、前記反強磁性層4は適切に不規則格子から規則格子に変態しており、大きな交換結合磁界を得ることができる。なお前記双晶境界と界面間の内角は68°以上で 76°以下であることが好ましい。
また図5に示すスピンバルブ型薄膜素子では、前記界面と平行方向から電子線(ビーム)を入射させて得られた、反強磁性層4及び固定磁性層3の透過電子線回折像には、それぞれの層の各結晶面を表す逆格子点に対応した回折斑点が現れ、前記回折斑点のうち、反強磁性層4の回折像と固定磁性層3の回折像とで同じ指数付けがなされ且つビーム原点からみたときに膜厚方向に位置する、ある結晶面を示す回折斑点と、前記ビーム原点とを結んだ第一仮想線は、前記反強磁性層の回折像及び強磁性層の回折像とで互いに一致する。
しかも本発明では、同じ指数付けがなされ、且つ前記ビーム原点からみたときに前記膜厚方向以外の方向に位置する、ある結晶面を示す回折斑点と、前記ビーム原点とを結んだ第二仮想線は、前記反強磁性層の回折像及び強磁性層の回折像とで互いにずれている。あるいは前記ビーム原点からみたときに、前記膜厚方向以外の方向に位置する、ある結晶面を示す回折斑点が反強磁性層あるいは強磁性層の一方の回折像にのみ現れる。
上記の場合、前記膜厚方向に位置する回折斑点は、代表的に{111}面として表される等価な結晶面を示していることが好ましい。
あるいは図5に示すスピンバルブ型薄膜素子では、前記界面と垂直方向から電子線(ビーム)を入射させて得られた、反強磁性層4及び固定磁性層3の透過電子線回折像には、それぞれの層の各結晶面を表す逆格子点に対応した回折斑点が現れ、前記回折斑点のうち、反強磁性層4の回折像と固定磁性層3の回折像とで同じ指数付けがなされた、ある回折斑点からビーム原点までを結んだ仮想線は、前記反強磁性層の回折像及び強磁性層の回折像とで互いにずれている。あるいは、前記回折斑点のうち、ある指数付けがされた回折斑点が、反強磁性層あるいは強磁性層の一方の回折像にのみ現れる。
上記の場合、前記界面と垂直な方向は、代表的に<111>方向として表される等価な結晶軸の方向であり、あるいは、反強磁性層及び強磁性層の前記界面と平行な結晶面は、代表的に{111} 面として表される等価な結晶面であることが好ましい。
上記のような透過電子線回折像が得られると、反強磁性層4と固定磁性層3は膜面と平行な方向に同じ等価な結晶面が優先配向し、しかも前記結晶面内に存在する、ある同じ等価な結晶軸の少なくとも一部が、反強磁性層4と固定磁性層3とで互いに異なる方向を向いているものと推測される。よって上記した透過電子線回折像を有するスピンバルブ型薄膜素子であると、前記反強磁性層4は熱処理によって適切な規則変態を起しており、従来に比べて大きな交換結合磁界が得られる。
図6、7は、本発明のAMR型磁気抵抗効果素子の構造を示す断面図である。
図6に示すように、下から軟磁性層(SAL層)18、非磁性層(SHUNT層)19、および磁気抵抗層(MR層)20が連続して積層されている。
例えば前記軟磁性層18は、Fe−Ni−Nb合金、非磁性層19は、Ta膜、磁気抵抗層20は、NiFe合金により形成されている。
前記磁気抵抗層20の上には、トラック幅Twを開けたトラック幅方向(X方向)の両側の部分にエクスチェンジバイアス層(反強磁性層)21,21が形成されている。導電層は図示しないが、例えば前記エクスチェンジバイアス層21,21の上に形成される。
また図7では、トラック幅方向(図示X方向)にトラック幅Twの間隔を開けて一対のシードレイヤ22が形成されている。前記シードレイヤ22上にはエクスチェンジバイアス層21,21が形成され、前記一対のシードレイヤ22及びエクスチェンジバイアス層21,21間がSiOやAl等の絶縁材料で形成された絶縁層26によって埋められている。
そして前記エクスチェンジバイアス層21,21及び前記絶縁層26上に、磁気抵抗層(MR層)20、非磁性層(SHUNT層)19、及び軟磁性層(SAL層)18が積層される。
本発明では、図6及び7に示すエクスチェンジバイアス層21と磁気抵抗層20は膜面と平行な方向に同じ等価な結晶面が優先配向し、しかも前記結晶面内に存在する、ある同じ等価な結晶軸の少なくとも一部が、前記エクスチェンジバイアス層21と磁気抵抗層20とで互いに異なる方向を向いているのである。
また前記エクスチェンジバイアス層21と磁気抵抗層20とを膜厚と平行な方向(図示Z方向)から断面としてみたときに、前記エクスチェンジバイアス層21の結晶粒界と前記磁気抵抗層20の結晶粒界は界面の少なくとも一部において不連続な状態になっている。
このため前記界面の少なくとも一部は非整合状態を保ち、前記エクスチェンジバイアス層21は熱処理によって適切な規則変態がなされており、大きな交換結合磁界を得ることが可能である。
なおエクスチェンジバイアス層21と磁気抵抗層20は膜面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向していることが好ましい。また前記結晶面内において、代表的に<110>方向として表される等価な結晶軸の方向が、エクスチェンジバイアス層21と磁気抵抗層20とで互いに異なる方向を向いていることが好ましい。
また本発明では、前記エクスチェンジバイアス層21が前記界面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向し、しかも前記エクスチェンジバイアス層21には少なくとも一部に双晶が形成され、一部の前記双晶の双晶境界は、前記界面と非平行となっている。このため前記エクスチェンジバイアス21は適切に不規則格子から規則格子に変態しており、大きな交換結合磁界を得ることができる。なお前記双晶境界と界面間の内角は68°以上で 76°以下であることが好ましい。
また図6,7に示すAMR型薄膜素子では、前記界面と平行方向から電子線(ビーム)を入射させて得られたエクスチェンジバイアス層21及び磁気抵抗層20の透過電子線回折像には、それぞれの層の各結晶面を表す逆格子点に対応した回折斑点が現れ、前記回折斑点のうち、エクスチェンジバイアス層21の回折像と磁気抵抗層20の回折像とで同じ指数付けがなされ且つビーム原点からみたときに膜厚方向に位置する、ある結晶面を示す回折斑点と、前記ビーム原点とを結んだ第一仮想線は、前記反強磁性層の回折像及び強磁性層の回折像とで互いに一致している。
しかも本発明では、同じ指数付けがなされ、且つ前記原点からみたときに前記膜厚方向以外の方向に位置する、ある結晶面を示す回折斑点と、前記原点とを結んだ第二仮想線は、前記反強磁性層の回折像及び強磁性層の回折像とで互いにずれている。あるいは前記ビーム原点からみたときに、前記膜厚方向以外の方向に位置する、ある結晶面を示す回折斑点が反強磁性層あるいは強磁性層の一方の回折像にのみ現れる。
上記の場合、前記膜厚方向に位置する回折斑点は、代表的に{111}面として表される等価な結晶面を示していることが好ましい。
あるいは図6,7に示すAMR型薄膜素子では、前記界面と垂直方向から電子線(ビーム)を入射させて得られたエクスチェンジバイアス層21及び磁気抵抗層20の透過電子線回折像には、それぞれの層の各結晶面を表す逆格子点に対応した回折斑点が現れ、前記回折斑点のうち、エクスチェンジバイアス層21の回折像と磁気抵抗層20の回折像とで同じ指数付けがなされた、ある回折斑点からビーム原点までを結んだ仮想線は、前記反強磁性層の回折像及び強磁性層の回折像とで互いにずれている。あるいは、前記回折斑点のうち、ある指数付けがされた回折斑点が、反強磁性層あるいは強磁性層の一方の回折像にのみ現れる。
上記の場合、前記界面と垂直な方向は、代表的に<111>方向として表される等価な結晶軸の方向であり、あるいは、反強磁性層及び強磁性層の前記界面と平行な結晶面は、代表的に{111}面として表される等価な結晶面であることが好ましい。
上記のような透過電子線回折像が得られると、エクスチェンジバイアス層21と磁気抵抗層20は膜面と平行な方向に同じ等価な結晶面が優先配向し、しかも前記結晶面内に存在する、ある同じ等価な結晶軸の少なくとも一部が、前記エクスチェンジバイアス層21と磁気抵抗層20とで互いに異なる方向を向いていると考えられる。そして上記した透過電子線回折像を有するスピンバルブ型薄膜素子であると、前記エクスチェンジバイアス層21は熱処理によって適切な規則変態を起しており、従来に比べて大きな交換結合磁界が得られる。
上記した図6及び図7に示すAMR型薄膜素子では、前記エクスチェンジバイアス層21,21と磁気抵抗層20との界面で発生する交換結合磁界により、図6、7に示す磁気抵抗層20のE領域が、図示X方向に単磁区化される。そしてこれに誘発されて前記磁気抵抗層20のD領域の磁化が図示X方向に揃えられる。また、検出電流が磁気抵抗層20を流れる際に発生する電流磁界が、軟磁性層18にY方向に印加され、軟磁性層18がもたらす静磁結合エネルギーにより、磁気抵抗層20のD領域に横バイアス磁界がY方向に与えられる。X方向に単磁区化された磁気抵抗層20のD領域にこの横バイアス層が与えられることにより、磁気抵抗層20のD領域の磁界変化に対する抵抗変化(磁気抵抗効果特性:H―R効果特性)が直線性を有する状態に設定される。
記録媒体の移動方向はZ方向であり、図示Y方向に漏れ磁界が与えられると、磁気抵抗層20のD領域の抵抗値が変化し、これが電圧変化として検出される。
なお上記した図1ないし図7に示す磁気抵抗効果素子の製造方法についてであるが、本発明では特に反強磁性層4を以下のようにして形成することが好ましい。
上記したように、前記反強磁性層4の元素Xあるいは元素X+X′の組成比は、45(at%)以上60(at%)以下であることが好ましく、より好ましくは49(at%)以上56.5(at%)以下であり、この範囲内であると後述する実験結果に示すように、大きな交換結合磁界を得ることが可能である。
よって一つの製法としては、成膜段階において前記反強磁性層4を上記の組成範囲内で形成し、さらに他の各層も成膜した後、熱処理を施せば良い。
また本発明では、熱処理後において、反強磁性層4と固定磁性層3との界面、エクスチェンジバイアス層16とフリー磁性層1との界面、エクスチェンジバイアス層21と磁気抵抗層20との界面、及びシードレイヤ22が形成される場合には、前記シードレイヤ22と反強磁性層4との界面、及び前記シードレイヤ22とエクスチェンジバイアス層16,21との界面の少なくとも一部は非整合状態であることが好ましいが、前記非整合状態は成膜段階から保たれていることが好ましい。成膜段階において前記界面が整合状態であると、熱処理を施しても前記反強磁性層4等は適切な規則変態を起し難いと考えられるからである。
成膜段階において前記界面を非整合状態としておくためには、前記反強磁性層4等を例えば以下のような方法で形成することが好ましい。
図8は、図1に示す積層膜の各層を成膜した状態を示す模式図である。図8に示すように、下地層6上にシードレイヤ22を形成した後、前記反強磁性層4を3層膜で形成する。前記反強磁性層4を構成する第1の反強磁性層23、第2の反強磁性層24、及び第3の反強磁性層25は上記したX−Mn合金、X−Mn−X′合金で形成される。
ただし成膜段階において、第1及び第3の反強磁性層23,25を構成する元素Xあるいは元素X+X′の組成比を、第2の反強磁性層24の元素Xあるいは元素X+X′の組成比よりも多くする。
また前記第1の反強磁性層23と第3の反強磁性層25との間に形成される第2の反強磁性層24は、熱処理によって不規則格子から規則格子に変態しやすい理想的な組成に近い反強磁性材料で形成される。
このように第1の反強磁性層23及び第3の反強磁性層25の元素Xあるいは元素X+X′の組成比を、第2の反強磁性層24の元素Xあるいは元素X+X´の組成比よりも大きくするのは、熱処理を施したときに、反強磁性層4が不規則格子から規則格子への変態をしやすくするため、各界面において、前記固定磁性層3及びシードレイヤ22の結晶構造等に拘束されないようにする必要があるからである。
前記第1の反強磁性層23及び第3の反強磁性層25の元素Xあるいは元素X+X´の組成比は53(at%)以上65(at%)以下であることが好ましく、より好ましくは55(at%)以上60(at%)以下である。また前記第1の反強磁性層23及び第3の反強磁性層25の膜厚は3Å以上30Å以下であ ることが好ましい。例えば図8の場合では、前記第1及び第3の反強磁性層23,25をそれぞれ10Å程度で形成している。
前記第2の反強磁性層24の元素Xあるいは元素X+X′の組成比は、44(at%)以上57(at%)以下で形成される。好ましくは、46(at%)以上55(at%)以下である。元素Xあるいは元素X+X′の組成比がこの範囲内で形成されると、熱処理を施すことによって前記第2の反強磁性層24は不規 則格子から規則格子へ変態しやすくなる。なお前記第2の反強磁性層24の膜厚は70Å以上であることが好ましい。なお図8に示す実施例の場合には、前記第2の反強磁性層24の膜厚を100Å程度で形成している。
また上記した各反強磁性層23,24,25をスパッタ法で形成することが好ましい。なおこのとき、第1及び第3の反強磁性層23,25を、第2の反強磁性層24よりも低いスパッタガス圧で形成することが好ましい。これにより、前記第1及び第3の反強磁性層23,25の元素Xあるいは元素X+X′の組成比 を、第2の反強磁性層24の元素Xあるいは元素X+X′の組成比よりも大きくすることが可能である。
あるいは本発明では、成膜段階(熱処理前)において前記反強磁性層4を上記した3層膜で形成せず、以下の方法によって前記反強磁性層4を単一層で形成した場合でも、膜厚方向に元素Xあるいは元素X+X′の組成比(原子%)を適切に変化させて形成することが可能である。
まず元素XとMnとを含有する反強磁性材料、あるいは元素XとX′とMnとで形成されたターゲットを用いてスパッタによって反強磁性層4を形成する際 に、シードレイヤ22から離れるにしたがって徐々にスパッタガス圧を高くして反強磁性層4を成膜していき、前記反強磁性層4を半分程度成膜した段階で、今度は前記スパッタガス圧を徐々に低くして残りの反強磁性層4を成膜するのである。
この方法によれば、元素Xあるいは元素X+X′の組成比(原子%)は、シードレイヤ22との界面から前記反強磁性層4の膜厚の中央付近にかけて徐々に低くなっていき、前記組成比(原子%)は、前記中央付近から前記固定磁性層3との界面にかけて徐々に高くなる。
このため元素Xあるいは元素X+X′の組成比(原子%)は、シードレイヤ22及び固定磁性層3との界面近傍において最も大きく、膜厚のほぼ中央付近で最も低くなる反強磁性層4を形成することが可能になる。
なお前記固定磁性層3との界面近傍及びシードレイヤ22との界面近傍で、前記反強磁性層4を構成する全元素の組成比を100at%としたときに、元素Xあるいは元素X+X′の組成比を、53at%以上65at%以下にすることが好ましく、より好ましくは55at%以上60at%以下である。
また反強磁性層4の膜厚方向の中央付近で、前記元素Xあるいは元素X+X′の組成比を44(at%)以上57(at%)以下とすることが好ましく、より 好ましくは46(at%)以上55(at%)以下である。また前記反強磁性層4の膜厚を76Å以上で形成することが好ましい。
図9は、図8に示す積層膜に対し熱処理を施した後の状態を示すスピンバルブ型薄膜素子の模式図である。
本発明では、上記のように前記シードレイヤ22及び固定磁性層3と接する側に、元素Xあるいは元素X+X′の組成比が多い第1及び第3の反強磁性層 23,25を形成し、しかも前記第1及び第3の反強磁性層23,25間に、熱処理によって適切に不規則格子から規則格子に変態しやすい組成で形成された第2の反強磁性層24を設けているので、熱処理によって前記第2の反強磁性層24の部分で変態が進むと同時に、第1及び第3の反強磁性層23,25と第2の反強磁性層24間で組成拡散が起こると考えられ、したがって前記第1及び第3の反強磁性層23,25の部分でも、シードレイヤ22及び固定磁性層3との界面で適切に非整合状態を維持しながら、不規則格子から規則格子への変態が起こり、反強磁性層4全体で適切な変態を起すことができる。
そして熱処理後におけるスピンバルブ型薄膜素子では、前記反強磁性層4と固定磁性層3は膜面と平行な方向に同じ等価な結晶面が優先配向し、しかも前記結晶面内に存在する、ある同じ等価な結晶軸の少なくとも一部が、反強磁性層4と固定磁性層3とで互いに異なる方向を向いているのである。
また前記反強磁性層4と固定磁性層3とを膜厚と平行な方向(図示Z方向)から断面としてみたときに、前記反強磁性層4の結晶粒界と前記固定磁性層3の結晶粒界は界面の少なくとも一部において不連続な状態になっている。
また本発明では、前記反強磁性層4の下にシードレイヤが形成されているため、前記反強磁性層は前記界面と平行な方向に代表的に{111}面として表され る等価な結晶面が優先配向し、しかも前記反強磁性層4には少なくとも一部に双晶が形成され、一部の前記双晶の双晶境界は、前記界面と非平行となっている。なお前記双晶境界と界面間の内角は68°以上で76°以下であることが好ましい。さらに前記固定磁性層3も{111}面として表される等価な結晶面が優先配向していることが好ましい。
なお熱処理後における反強磁性層4には、シードレイヤ22及び固定磁性層3に向かうにしたがって、Mnに対する元素Xあるいは元素X+X´の原子%の比率が、増加する領域が存在すると考えられる。
図2に示すスピンバルブ型薄膜素子の場合では、反強磁性層4を上記した3層膜で形成してもよいが、例えば固定磁性層3側に接する第1の反強磁性層23と保護層7側に接する第2の反強磁性層24の2層構造で形成してもよい。図2では図1のようにシードレイヤ22が無いからである。
なお上記のように反強磁性層4を2層膜で形成した場合には、熱処理後における反強磁性層4には、固定磁性層3に向かうにしたがって、Mnに対する元素Xあるいは元素X+X´の原子%の比率が増加する領域が存在するものと考えられる。
また図3のスピンバルブ型薄膜素子の場合では、エクスチェンジバイアス層16を図2の場合と同様に2層膜で形成する。第1の反強磁性層23はフリー磁性層1側に接して形成し、前記フリー磁性層1から離れた側に第2の反強磁性層24を形成する。
また図3に示す反強磁性層4を図1の場合と同様に3層膜で形成する。熱処理を施すことにより、前記エクスチェンジバイアス層16及び反強磁性層4は適切な規則変態を起し、大きな交換結合磁界を得ることが可能である。
熱処理後における前記エクスチェンジバイアス層16には、フリー磁性層1に向かうにしたがって、Mnに対する元素Xあるいは元素X+X´の原子%の比率が増加する領域が存在するものと考えられる。
また熱処理後における前記反強磁性層4には、固定磁性層3及びシードレイヤ22に向かうにしたがってMnに対する元素Xあるいは元素X+X´の原子%の比率が増加する領域が存在するものと考えられる。
また図4に示すスピンバルブ型薄膜素子の製造方法では、反強磁性層4を図2の場合と同様に2層膜で形成する。第1の反強磁性層23は固定磁性層3側に接して形成し、前記固定磁性層3から離れた側に第2の反強磁性層24を形成する。
またエクスチェンジバイアス層16を図1の反強磁性層4の場合と同様に3層膜で形成する。熱処理を施すことにより、前記エクスチェンジバイアス層16及び反強磁性層4は適切な規則変態を起し、大きな交換結合磁界を得ることが可能である。
熱処理後における前記エクスチェンジバイアス層16には、フリー磁性層1及びシードレイヤ22に向かうにしたがって、Mnに対する元素Xあるいは元素X+X´の原子%の比率が増加する領域が存在するものと考えられる。
また熱処理後における前記反強磁性層4には、固定磁性層3に向かうにしたがって、Mnに対する元素Xあるいは元素X+X´の原子%の比率が増加する領域が存在するものと考えられる。
図5に示すデュアルスピンバルブ型薄膜素子の製造方法では図10に示すように、フリー磁性層1よりも下側に位置する反強磁性層4を、第1の反強磁性層23、第2の反強磁性層24、及び第3の反強磁性層25の3層膜で形成し、フリー磁性層1よりも上側に位置する反強磁性層4を、第1の反強磁性層14及び第2の反強磁性層15の2層膜で形成する。
前記第1の反強磁性層23、第2の反強磁性層24、及び第3の反強磁性層25の膜厚、及び組成に関しては図1で説明したものと同じである。
図10に示すように成膜した後、熱処理を施す。その状態は図11に表されている。図11では、フリー磁性層1よりも下側に形成されている反強磁性層4を構成する3層膜が組成拡散を起し、熱処理後における前記反強磁性層4には、固定磁性層3及びシードレイヤ22に向かうにしたがって、Mnに対する元素Xあるいは元素X+X′の原子%の比率が増加する領域が存在するものと考えられる。
またフリー磁性層1よりも上側に形成された反強磁性層4を構成する2層膜もまた組成拡散を起し、熱処理後における前記反強磁性層4には、固定磁性層3に向かうにしたがって、Mnに対する元素Xあるいは元素X+X′の原子%の比率が増加する領域が存在するものと考えられる。
次に図6に示すAMR型薄膜素子の製造方法では、エクスチェンジバイアス層21を図10に示すフリー磁性層1よりも図示上側に形成された反強磁性層4と同様に2層膜で形成する。前記エクスチェンジバイアス層21は、磁気抵抗層20と接する第1の反強磁性層14と前記磁気抵抗層20から離れた側に形成される第2の反強磁性層15とで形成する。
熱処理を施すと、前記エクスチェンジバイアス層21は適切な規則変態を起し、前記エクスチェンジバイアス層21と磁気抵抗層20との間で大きな交換結合磁界が発生する。
そして熱処理後における前記エクスチェンジバイアス層21には、磁気抵抗層20に向かうにしたがって、Mnに対する元素Xあるいは元素X+X´の原子%の比率が増加する領域が存在するものと考えられる。
また図7に示すAMR型薄膜素子の製造方法では、エクスチェンジバイアス層21を図8に示す反強磁性層4と同様に3層膜で形成する。前記エクスチェンジバイアス層21は、磁気抵抗層20に接する第1の反強磁性層23と、シードレイヤ22に接する第3の反強磁性層25と、前記第1及び第3の反強磁性層23,25の間に形成される第2の反強磁性層24で形成する。
熱処理を施すと、前記エクスチェンジバイアス層21は適切な規則変態を起し、前記エクスチェンジバイアス層21と磁気抵抗層20との間で大きな交換結合磁界が発生する。
そして熱処理後における前記エクスチェンジバイアス層21には、磁気抵抗層20及びシードレイヤ22に向かうにしたがって、Mnに対する元素Xあるいは元素X+X´の原子%の比率が増加する領域が存在するものと考えられる。
図12は、図1から図11に示す磁気抵抗効果素子が形成された読み取りヘッドの構造を記録媒体との対向面側から見た断面図である。
符号40は、例えばNiFe合金などで形成された下部シールド層であり、この下部シールド層40の上に下部ギャップ層41が形成されている。また下部ギャップ層41の上には、図1ないし図7に示す磁気抵抗効果素子42が形成されており、さらに前記磁気抵抗効果素子42の上には、上部ギャップ層43が形成され、前記上部ギャップ層43の上には、NiFe合金などで形成された上部シールド層44が形成されている。
前記下部ギャップ層41及び上部ギャップ層43は、例えばSiOやAl(アルミナ)などの絶縁材料によって形成されている。図12に示すように、下部ギャップ層41から上部ギャップ層43までの長さがギャップ長Glであり、このギャップ長Glが小さいほど高記録密度化に対応できるものとなっている。
本発明では反強磁性層4の膜厚を小さくしてもなお大きな交換結合磁界を発生させることができる。よって磁気抵抗効果素子の膜厚を従来に比べて小さくすることができ、狭ギャップ化により高記録密度化に対応可能な薄膜磁気ヘッドを製造することが可能になっている。
なお本発明では、図1、図3、図4、図5及び図7において反強磁性層4(またはエクスチェンジバイアス層16あるいは磁気抵抗層20)の下側にシードレイヤ22を形成した実施例を載せたが、この形態に限定するものではない。
また本発明では、膜厚方向と平行な方向に切断した切断面において、反強磁性層4の結晶粒界と強磁性層の結晶粒界とが界面の少なくとも一部で不連続な状態となっているが、この場合、前記反強磁性層及び強磁性層の結晶配向は、膜面と平行な方向に異なる結晶面が優先配向していてもかまわない。このような場合でも反強磁性層は熱処理によって適切な規則変態を起し大きな交換結合磁界を得ることが可能である。
本発明では、以下に記載する膜構成のスピンバルブ膜を形成し、反強磁性層を構成するPtMn合金膜のPt量を変化させながら、前記Pt量と交換結合磁界(Hex)との関係を調べた。
膜構成は下から、
Si基板/アルミナ/下地層:Ta(3nm)/シードレイヤ:NiFe(3nm)/反強磁性層:PtxMn100-x(15nm)/固定磁性層:[Co(1.5nm)/Ru(0.8nm)/Co(2.5nm)]/非磁性中間層:Cu(2.3nm)/フリー磁性層:[Co(1nm)/NiFe(3nm)]/バックド層:Cu(1.5nm)/保護層:Ta(3nm)
であり、各層に記載された括弧書きの数値は膜厚を示している。
前記反強磁性層及び固定磁性層をDCマグネトロンスパッタ法で成膜した。また前記反強磁性層及び固定磁性層を形成するとき、Arガス圧を1〜3mTorrとした。また前記反強磁性層を成膜するとき、基板とターゲット間の距離を70〜80mmとした。上記膜構成のスピンバルブ膜を成膜した後、200℃以上で2時間以上の熱処理を施し、交換結合磁界を測定した。その実験結果を図13に示す。
図13に示すように、Pt量Xが約50(at%)〜55(at%)程度まで増加すると、交換結合磁界(Hex)も増加することがわかる。また前記Pt量Xが約55(at%)以上になると交換結合磁界は徐々に減少することがわかる。
本発明では、交換結合磁界が1.58×10(A/m)以上得られる場合を好ましいPt量とし、図13に示す実験結果から好ましいPt量を45(at%)以上60(at%)以下と設定した。
また本発明では交換結合磁界が7.9×10(A/m)以上得られる場合をより好ましいPt量とし、図13に示す実験結果からより好ましいPt量を49(at%)以上56.5(at%)以下と設定した。
上記のようにPt量によって交換結合磁界の大きさに変化が現れるのは、Pt量を変化させることによって反強磁性層と強磁性層(固定磁性層)との界面の状態が変化するためであると考えられる。
ここでPt量は多くなればなるほど反強磁性層の格子定数は大きくなることがわかっている。このためPt量を多くすることによって反強磁性層と強磁性層との格子定数の差を広げることができ、前記反強磁性層と強磁性層との界面を非整合状態にしやすくできる。
一方、上記した膜構成のように反強磁性層の下側にシードレイヤを形成することによって前記シードレイヤ上に形成される反強磁性層等の各層の結晶配向を、前記シードレイヤと同様に膜面と平行な方向に{111}面を優先配向させやすくなる。
またPt量は多ければ多いほど良いわけではない。Pt量を多くしすぎると前記反強磁性層は熱処理を施しても適切な規則変態を起すことができないからである。
本発明では、反強磁性層の下側にシードレイヤを敷いたこと、及び反強磁性層を構成するPt量を規則変態を起しやすく且つ強磁性層との界面を非整合状態に保ちやすい組成で形成し、さらに上記した成膜条件を適切に制御するなどによって、熱処理を施すと前記反強磁性層は、強磁性層との界面で非整合状態を保ちながら適切な規則変態を起し、熱処理を施した後の状態では、前記反強磁性層と強磁性層は膜面と平行な方向に同じ等価な結晶面が優先配向し、且つ前記結晶面内に存在する、ある同じ等価な結晶軸の方向の少なくとも一部が前記反強磁性層と強磁性層とで互いに異なる方向を向く結晶配向となっているのである。
また前記反強磁性層と強磁性層とを膜厚と平行な方向から切断した切断面を観測すると、前記反強磁性層の結晶粒界と強磁性層の結晶粒界とが、前記反強磁性層と強磁性層との界面の少なくとも一部で不連続な状態となっているのである。
また本発明では、前記反強磁性層と固定磁性層とが前記界面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向し、しかも前記反強磁性層4には少なくとも一部に双晶が形成され、一部の前記双晶の双晶境界は、前記界面と非平行となるのである。
本発明の第1実施形態のシングルスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の構造をABS面側から見た断面図、 本発明の第2実施形態のシングルスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の構造をABS面側から見た断面図、 本発明の第3実施形態のシングルスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の構造をABS面側から見た断面図、 本発明の第4実施形態のシングルスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の構造をABS面側から見た断面図、 本発明の第5実施形態のデュアルスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の構造をABS面側から見た断面図、 本発明の第6実施形態のAMR型磁気抵抗効果素子の構造をABS面側から見た断面図、 本発明の第7実施形態のAMR型磁気抵抗効果素子の構造をABS面側から見た断面図、 図1に示す磁気抵抗効果素子の成膜段階の状態を示す模式図、 図8に示す積層膜に熱処理を施した後の前記積層膜の構造を示す模式図、 図5に示す磁気抵抗効果素子の成膜段階の状態を示す模式図、 図10に示す積層膜に熱処理を施した後の前記積層膜の構造を示す模式図、 本発明における薄膜磁気ヘッド(再生ヘッド)の構造示す部分断面図、 反強磁性層(PtMn合金膜)のPt量を変化させた場合における、前記Pt量と交換結合磁界(Hex)との関係を示すグラフ、 本発明における交換結合膜の反強磁性層と強磁性層との結晶配向を模式図的に示した図、 比較例における交換結合膜の反強磁性層と強磁性層との結晶配向を模式図的に示した図、 本発明におけるスピンバルブ膜の膜面と平行方向からの透過電子線回折像、 比較例におけるスピンバルブ膜の膜面と平行方向からの透過電子線回折像、 図16に示す透過電子線回折像の部分模式図、 図17に示す透過電子線回折像の部分模式図、 本発明における反強磁性層の膜面と垂直方向からの透過電子線回折像の模式図、 本発明における強磁性層の膜面と垂直方向からの透過電子線回折像の模式図、 図20及び21の透過電子線回折像を重ねあわせた模式図、 比較例における反強磁性層の膜面と垂直方向からの透過電子線回折像の模式図、 比較例における強磁性層の膜面と垂直方向からの透過電子線回折像の模式図、 図23及び24の透過電子線回折像を重ねあわせた模式図、 本発明におけるスピンバルブ型薄膜素子を膜厚と平行な方向から切断した際の前記切断面の透過電子顕微鏡写真、 比較例におけるスピンバルブ型薄膜素子を膜厚と平行な方向から切断した際の前記切断面の透過電子顕微鏡写真、 図26に示す透過電子顕微鏡写真の部分模式図、 図27に示す透過電子顕微鏡写真の部分模式図、 本発明における別の実施例のスピンバルブ型薄膜素子を膜厚と平行な方向から切断した際の前記切断面の透過電子顕微鏡写真、 図30に示す透過電子顕微鏡写真の部分模式図、
符号の説明
1 フリー磁性層
2 非磁性中間層
3 固定磁性層(強磁性層)
4 反強磁性層
5 ハードバイアス層
6 下地層
7 保護層
8 導電層
14、23 第1の反強磁性層
15、24 第2の反強磁性層
16、21 エクスチェンジバイアス層
17、26 絶縁層
18 軟磁性層(SAL層)
19 非磁性層(SHUNT層)
20 磁気抵抗層(MR層)
22 シードレイヤ
25 第3の反強磁性層
42 磁気抵抗効果素子

Claims (21)

  1. 反強磁性層と強磁性層とが接して形成され、前記反強磁性層と強磁性層との界面に交換結合磁界が発生し、前記強磁性層の磁化方向が一定方向にされる交換結合膜において、
    前記反強磁性層は、元素X(ただしXは、Pt,Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料で形成され、
    前記交換結合膜を膜厚方向と平行な切断面に現われる前記反強磁性層に形成された結晶粒界と、強磁性層に形成された結晶粒界とが前記界面の少なくとも一部で不連続であることを特徴とする交換結合膜。
  2. 前記反強磁性層及び強磁性層は、前記界面と平行な方向に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向している請求項1記載の交換結合膜。
  3. 反強磁性層と強磁性層とが接して形成され、前記反強磁性層と強磁性層との界面に交換結合磁界が発生し、前記強磁性層の磁化方向が一定方向にされる交換結合膜において、
    前記反強磁性層は前記界面と平行な方向に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向し、
    前記反強磁性層には少なくとも一部に双晶が形成され、少なくとも一部の前記双晶の双晶境界は、前記界面と非平行に形成されていることを特徴とする交換結合膜。
  4. 前記双晶境界と前記界面間の内角は、68°以上で76°以下である請求項3記載の交換結合膜。
  5. 前記強磁性層は、前記界面と平行な方向に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向している請求項3または4に記載の交換結合膜。
  6. 前記反強磁性層は、元素X(ただしXは、Pt,Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料で形成される請求項3ないし5のいずれかに記載の交換結合膜。
  7. 前記交換結合膜は、下から反強磁性層、強磁性層の順に積層され、さらに前記反強磁性層の下側に、結晶構造が主として面心立方晶から成り、しかも前記界面と平行な方向に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向したシードレイヤが形成されている請求項1ないし6のいずれかに記載 の交換結合膜。
  8. 前記シードレイヤは、NiFe合金、NiあるいはNi−Fe−Y合金(ただしYは、Cr,Rh,Ta,Hf,Nb,Zr,Tiから選ばれる少なくとも1種以上)、さらにはNi−Y合金で形成される請求項7記載の交換結合膜。
  9. 前記シードレイヤは、組成式が(Ni1-xFex1-yy(x,yは原子比率)で示され、原子比率xは0以上で0.3以下で、原子比率yは0以上で0.5以下である請求項8記載の交換結合膜。
  10. 前記シードレイヤは常温で非磁性である請求項7ないし9のいずれかに記載の交換結合膜。
  11. 前記シードレイヤの下には、Ta,Hf,Nb,Zr,Ti,Mo,Wのうち少なくとも1種以上の元素で形成された下地層が形成されている請求項7ないし10のいずれかに記載の交換結合膜。
  12. 前記反強磁性層とシードレイヤとの界面の少なくとも一部は非整合状態である請求項7ないし11のいずれかに記載の交換結合膜。
  13. 前記反強磁性層は、X−Mn−X′合金(ただし元素X′は、Ne,Ar,Kr,Xe,Be,B,C,N,Mg,Al,Si,P, Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,Cd,Ir,Sn,Hf,Ta,W,Re,Au,Pb、及び希土類元素のうち1種または2種以上の元素である)で形成されている請求項1ないし12のいずれかに記載の交換結合膜。
  14. 前記X―Mn―X′合金は、元素XとMnとで構成される空間格子の隙間に元素X′が侵入した侵入型固溶体であり、あるいは、元素XとMnとで構成される結晶格子の格子点の一部が、元素X′に置換された置換型固溶体である請求項13記載の交換結合膜。
  15. 前記元素Xあるいは元素X+X′の組成比は、45(at%)以上60(at%)以下である請求項1ないし14のいずれかに記載の交換結合膜。
  16. 前記反強磁性層と強磁性層との界面の少なくとも一部は非整合状態である請求項1ないし15のいずれかに記載の交換結合膜。
  17. 反強磁性層と、この反強磁性層と接して形成され、前記反強磁性層との交換異方性磁界により磁化方向が固定される固定磁性層と、前記固定磁性層に非磁性中間層を介して形成されたフリー磁性層と、前記フリー磁性層の磁化方向を前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向へ揃えるバイアス層とを有し、前記反強磁性層とこの反強磁性層と接して形成された固定磁性層とが、請求項1ないし請求項16のいずれかに記載された交換結合膜により形成されていることを特徴とする磁気抵抗効果素子。
  18. 反強磁性層と、この反強磁性層と接して形成され、前記反強磁性層との交換異方性磁界により磁化方向が固定される固定磁性層と、前記固定磁性層に非磁性中間層を介して形成されたフリー磁性層とを有し、前記フリー磁性層の上側または下側に、トラック幅Twの間隔を空けて反強磁性のエクスチェンジバイアス層が形成され、前記エクスチェンジバイアス層とフリー磁性層とが、請求項1ないし請求項16のいずれかに記載された交換結合膜により形成され、前記フリー磁性層の磁化が一定方向にされることを特徴とする磁気抵抗効果素子。
  19. フリー磁性層の上下に積層された非磁性中間層と、一方の前記非磁性中間層の上および他方の非磁性中間層の下に位置する固定磁性層と、一方の前記固定磁性層の上および他方の固定磁性層の下に位置して、交換異方性磁界によりそれぞれの固定磁性層の磁化方向を一定の方向に固定する反強磁性層と、前記フリー磁性層の磁化方向を前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に揃えるバイアス層とを有し、前記反強磁性層とこの反強磁性層と接して形成された固定磁性層とが、請求項1ないし請求項16のいずれかに記載された交換結合膜により形成されていることを特徴とする磁気抵抗効果素子。
  20. 非磁性層を介して重ねられた磁気抵抗層と軟磁性層とを有し、前記磁気抵抗層の上側あるいは下側にトラック幅Twの間隔を空けて反強磁性層が形成され、前記反強磁性層と磁気抵抗層とが、請求項1ないし請求項16のいずれかに記載された交換結合膜により形成されていることを特徴とする磁気抵抗効果素子。
  21. 請求項17ないし20のいずれかに記載された磁気抵抗効果素子の上下にギャップ層を介してシールド層が形成されていることを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
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