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JP2006035828A - 加飾成形品および成形品の装飾方法 - Google Patents

加飾成形品および成形品の装飾方法 Download PDF

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JP2006035828A JP2004223491A JP2004223491A JP2006035828A JP 2006035828 A JP2006035828 A JP 2006035828A JP 2004223491 A JP2004223491 A JP 2004223491A JP 2004223491 A JP2004223491 A JP 2004223491A JP 2006035828 A JP2006035828 A JP 2006035828A
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Toshiro Ariga
利郎 有賀
Koichi Mahira
耕一 間平
Yoshinari Santo
善成 山東
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Abstract

【課題】 優れた長時間高温での耐熱水性と鮮明で詳細な装飾を有する金属または繊維強化プラスチック成形品を提供する。
【解決手段】 金属または繊維強化プラスチック成形品の表面に、プライマー層(A)と、水圧転写により転写された印刷インキ被膜または塗料皮膜からなる装飾層(B)と、硬化樹脂層(C)とがこの順に積層された装飾付き成形品において、
前記プライマー層(A)が、無機化合物(Y)を30〜70質量%含有した、硬化性エポキシ樹脂とポリアミドアミンの硬化物であることを特徴とする加飾成形品。
【選択図】 なし

Description

本発明は、加飾成形品および繊維強化プラスチック成形品の装飾方法に関する。
アルミニウムやステンレス鋼などの金属や、繊維強化プラスチック(以下、FRPと言う。)は、その優れた強度、耐熱性及び耐久性から、広く建築部材、家電部材、自動車部材などの工業製品部材を始め、システムキッチン等や浴室部材等の家庭用品部材などにも用いられている。これらの素材からなる建築部材、家電部材、自動車部材およびシステムキッチンや浴室部材等の家庭用品部材には、金属の場合には塗装やマーキングフィルムによる加飾が、FRPには材料樹脂組成物に着色顔料を添加した加飾が施される。近年、嗜好の高級化から、これら成形品に意匠性の高い絵柄模様などの装飾を施すことが求められている。
従来、FRP成形品に装飾を施す方法として、チタン紙、不織布、布、含浸紙などに装飾を施した部材を成形と同時に一体化する方法(例えば、特許文献1参照)が知られていた。しかしこの方法では、装飾を施した部材に破れが生じやすい、または成形性がなく形状が制限されるなどの欠点があった。それらの欠点を改良するために、2軸延伸ポリエステル樹脂層とABS樹脂層とを積層した装飾シートを該装飾シートのABS樹脂層側と接するように繊維強化プラスチックに重ね合わせ、金型内で加熱加圧して両者を一体化する繊維強化プラスチック成形品の製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、この方法も装飾したシートを金型内で加熱加圧成形するために、成形品の形状によっては、装飾層が均一に延伸されず、部分的に装飾の意匠性が損なわれる問題があった。また、耐擦傷性も低く、例えば、浴室部材等に要求される耐水性も十分でなかった。
一方、FRPからなる浴槽に装飾を施したものには、例えば、成形後のFRP浴槽の表面にハンド塗装ガンを用いて塗料を粒子状に噴霧することにより模様を塗装する模様付き浴槽の製造方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、この製造方法では、作業に熟練と手間がかかり、斑点を組み合わせて御影石調の浴槽を得ることができる程度であり、複雑な絵柄模様を浴槽に付与することは到底出来なかった。
水圧転写法は、3次元成形品に印刷インキや塗料皮膜からなる装飾層を設けるには、非常に有用な方法である。しかし、被転写体が金属やFRPなどの場合は、転写された印刷インキや塗料皮膜との密着が低いため、剥がれやすく、特に水や熱水により膨れたり、剥がれたりし易い。
金属の被転写体へ、ポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテルとP−OH結合を有するリン系化合物とをリン酸エステル化反応させて得られる樹脂組成物からなるプライマー層(A)を設けることにより、密着性の良く、98℃の熱水中で30分間の処理後でも剥離が見られない水圧転写体が得られることが開示されている(例えば、特許文献4参照。)
特開昭51−20951号公報 特開平11−70622号公報 特開2000−300454号公報 特開2003−191695号公報
しかしながら、システムキッチン等や浴室部材等に代表されるような、熱水に長時間晒される用途に対して求められる長時間高温での耐熱水性に対しては十分な性能が得られていなかった。
本発明が解決しようとする課題は、優れた長時間高温での耐熱水性と鮮明で詳細な装飾を有する金属または繊維強化プラスチック成形品、つまり
1)鮮明で詳細な装飾が水圧転写により得られ、
2)得られた金属またはFRPに水圧転写した加飾成形品が長時間熱水に晒されても、容易に膨れや剥がれを生じない、
加飾成形品を提供することにある。
本発明者らは、水圧転写した装飾層と成形品基材との密着性が高く、熱水との接触で容易に膨れや剥がれを生じない水圧転写方法による金属成形品やFRP成形品への加飾を検討した結果、
装飾層を設ける金属またはFRPの表面に、
1)エポキシ樹脂とポリアミドアミンの硬化物であって
2)無機化合物(Y)を30〜70質量%含有する
プライマー層(A)を設けることにより、プライマー層(A)が、
1)鮮明で詳細に装飾層を水圧転写するための受理層として有用であり、
2)金属またはFRPとの界面における密着性が良いため、
熱水に長時間晒されても、容易に膨れや剥がれを生じないことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、金属またはFRP成形品の表面に、プライマー層(A)と、水圧転写により転写された印刷インキ被膜または塗料皮膜からなる装飾層(B)と、硬化樹脂層(C)とがこの順に積層された装飾付き成形品において、
前記プライマー層(A)が、無機化合物(Y)を30〜70質量%含有した、エポキシ樹脂とポリアミドアミンの硬化物である加飾成形品を提供する。
本発明により得られる、優れた長時間高温での耐熱水性と鮮明で詳細な装飾を有する金属または繊維強化プラスチックの加飾成形品は、システムキッチン等や浴室部材等に代表される、熱水に長時間晒される用途に対して極めて有用である。
本発明の加飾成形品は、目的形状に成形した金属またはFRP成形品に特定の成分を有するプライマー層(A)を設け、該プライマー層(A)上に水圧転写により装飾層を転写し、さらに該装飾層上に保護層として透明な硬化樹脂層(C)を設けたものである。
[成形品]
本発明で用いることができる金属成形品は、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、マグネシウムの群から選ばれる素材を、プレス成形等で腑形した成形物である。
FRP成形品は、ガラス繊維などの繊維強化材に含浸させた繊維強化プラスチックを加熱プレス成形することによって製造される。この際、重合性単量体、充填剤、ラジカル重合開始剤、重合禁止剤、増粘剤、離型剤および必要に応じてその他の添加剤を繊維強化プラスチックに混合することができる。
より具体的には、FRP成形品は、混練により塊状にしたBMC(バルクモールディングコンパウンド)や、マトリックス樹脂、充填材およびその他添加物の混合物をガラス繊維に含侵させたシート状成形材料であるSMC(シートモールディングコンパウンド)などの繊維強化プラスチックを目的形状に加熱加圧プレス成形するか、あるいは型内でこれらの繊維強化プラスチックをRTM(反応トランスファーモールディング)成形するか、あるいは繊維強化プラスチックを手作業で目的形状の型に積層、硬化させた後に脱型するハンドレイアップ成形することにより製造することができる。
FRP中のマトリックス樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂等が用いられ、中でも成形性と耐熱水性に優れることから不飽和ポリエステル樹脂が好ましくは用いられる。重合性単量体としては、スチレン、クロロスチレン、t−ブチルスチレン、メチルメタクリレート等の重合性単量体が用いられる。
また、FRP中のマトリックス樹脂に対して充填剤、ラジカル重合開始剤、重合禁止剤、増粘剤、離型剤などは、それぞれ慣用のものを用いることができ、特に限定されない。充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、珪酸マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられ、ラジカル重合開始剤としては、例えば、マトリックス樹脂が不飽和ポリエステルの場合は、ターシャリーヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート(以下、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネートと言う。)などが好ましく用いられる。
また、必要に応じて用いられる重合禁止剤としては、パラベンゾキノンなどが挙げられる。増粘剤としては、アルカリ土類金属の酸化物や、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム等が挙げられ、離型剤としては、ステアリン酸塩やけい素樹脂等が挙げられる。その他の添加剤としては、着色剤等が用いられる。また、繊維強化材としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、セルロース繊維、綿繊維などが用いられる。
[プライマー層(A)]
(樹脂種類)
プライマー層(A)に使用する硬化性エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、中でも、耐水性に優れたビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
(分子量)
プライマー層(A)に使用する硬化性エポキシ樹脂の数平均分子量は、700〜5,000が好ましく、より好ましくは、1,000〜3,000である。数平均分子量が700未満の場合は、架橋点が多くなるために硬化剤との反応で生じる水酸基が多くなり、親水性が増加して耐熱水性が低下する。一方、数平均分子量が5,000を超えて大きくなると、架橋点間分子量が大きくなるため、高温での塗膜の柔軟性が高くなり、繊維強化プラスチックとの密着力が低下しやすい。
(硬化剤)
硬化性エポキシ樹脂の硬化剤は、硬化物の耐水性が優れるためポリアミドアミンが用いられる。
ポリアミドアミンとしては、脂肪族系多官能性アミンと脂肪族ジカルボン酸とから形成されるものがより耐水性に優れているため好ましい。該脂肪族系多官能性アミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンペンタミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミンなどのアルキレンポリアミンが挙げられる。これらの硬化剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
(樹脂と硬化剤との組み合わせ)
プライマー層(A)に用いる硬化性エポキシ樹脂は、FRP成形品との密着性、耐熱水性が良好であることから、ビスフェノール型エポキシ樹脂と、ポリアミンとダイマー酸が反応したポリアミドアミンであるダイマー酸変性ポリアミドとの組み合わせが特に好ましい。ダイマー酸変性ポリアミドとしては、たとえば、ダイマー酸とアルキレンポリアミンから得られるものが挙げられ、特にダイマー酸とビスフェノールAジグリシジルエーテルとアルキレンポリアミンから得られるダイマー酸変性ポリアミドアミンが好ましい。
(樹脂と硬化剤の配合比)
硬化性エポキシ樹脂と硬化剤の配合比は、エポキシ基1当量に対して0.7〜1.2当量を用いることが好ましい。エポキシ基1当量に対して、0.7当量未満、あるいは1.2当量を超えた場合は、いずれも硬化が不完全となりやすい。
(硬化促進剤)
また、硬化性エポキシ樹脂の硬化に対しては、上記の硬化剤に加え、更に硬化促進剤を含ませてもよい。硬化促進剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、DBU等の第三級アミン類、2メチル4エチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルフォスフィン等のフォスフィン類が挙げられる。
(無機化合物(Y))
プライマー層(A)には、樹脂成分のほかに無機化合物(Y)が必須成分として含まれる。無機化合物(Y)は珪酸マグネシウム、酸化ケイ素、酸化チタンおよび酸化鉄からなる群から選ばれる少なくとも一つの無機物であることが好ましい。無機化合物(Y)の含有率は30〜70質量%であるが、好ましくは40〜60重量%である。
本発明で使用するプライマー層(A)は、エポキシ樹脂とポリアミドアミンの硬化物であるため、金属またはFRPに対する接着性と耐熱水性が優れている。更に、無機化合物が30〜70質量%の範囲では耐熱水性が更に優れると共に、プライマー層(A)上に装飾層(B)を水圧転写する際の受理層として優れるため、鮮明で詳細な装飾層を形成することができる。
無機化合物(Y)の含有率が30質量%以下であると塗膜の強度が低下し、耐熱水性、水圧転写の受理層としての役割も低下する。
一方、Xが70質量%以上であると、耐熱水性が低下し、長期にわたる耐水性試験では、基材面とプライマーの界面に水が入り込みブリスターを生じやすくなる。
塗膜を温水中に浸漬させると、塗膜中に水蒸気拡散が生じる。基材と塗膜の境界面は、温度勾配が高い部分で水蒸気が滞留しやすい。本発明の加飾成形品を熱水に晒した場合に、最も剥がれが起こりやすい部位は、金属・FRPとプライマー層(A)との界面である。このため、水が金属・FRPとプライマー層(A)との界面にできるだけ偏在しないことが重要である。このため、プライマー層(A)は、水分が浸透してきた際には、金属・FRPとプライマー層(A)との界面に偏在させないように自ら水をプライマー塗膜のバルク層中に保持することが好ましいと考えられる。しかし、プライマー層(A)が水をあまり多く保持しすぎると、水が加飾層から出にくくなり、かえって金属・FRPとプライマー層(A)との界面へ水を供給することになり好ましくないと考えられる。プライマー層(A)の水の保持率は、プライマー層(A)の無機化合物の含有率により制御することができる。
また、金属・FRPとプライマー層の化学的な付着力は、樹脂成分によって生み出されるので、この観点からも無機化合物の含有量は制限されることになる。
このような観点から、プライマー層(A)の組成と無機含有率を特定の値にすることにより、金属およびFRPへの密着性と、熱水に対する長時間の耐性を両立させることができる。
無機物の粒子径は、好ましくは1μm〜50μmであり、塗膜の平滑性をより高くするには、1μm〜20μmである。
(プライマー層(A)の膜厚)
プライマー層の膜厚は、20〜120μmが好ましい。より好ましくは25〜100μmである。膜厚が20μmより薄ければ、プライマー塗膜の欠陥が生じやすくなり、この塗膜欠陥からブリスターを生じやすい。一方、膜厚が120μm以上であると、長期的に熱水に接触した場合、塗膜中に水が残留して、基材とのブリスターを生じやすくなる。
(アセトン可溶分率)
金属またはFRPに対する密着性を十分にとるためには、プライマー層(A)のエポキシ樹脂とポリアミドアミンは十分に硬化させてあることが好ましい。具体的には、後述するアセトン中に試料を浸漬し測定する方法により得られる可溶分率(%)を硬化性の指標として用いたときに、プライマー層(A)全塗膜のアセトン可溶分率が10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下であることが望ましい。
(硬化性エポキシ樹脂の硬化物のTg)
製造される加飾成形品が、浴槽等に要求される優れた耐熱水性を備えるためには、プライマー層(A)を構成する硬化性エポキシ樹脂の硬化物のTgが、50℃を越えることが好ましく、プライマー層(A)を構成する硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物のTgは、好ましくは55℃〜120℃、より好ましくは60℃〜120℃である。
(プライマー層(A)の硬化状態)
プライマー層(A)上への装飾層(B)の水圧転写に先立って、プライマー層(A)を構成する硬化性エポキシ樹脂を硬化させるが、装飾層(B)を水圧転写した際の活性剤をプライマー層(A)に受理するために、水圧転写前はプライマー層(A)を完全に硬化させず、硬化はしているが、完全には硬化していない状態であることが好ましい。この状態は、アセトン可溶分率15〜40%程度である。プライマー層(A)は、装飾層(B)をプライマー層(A)上に水圧転写させた後、加熱することにより、プライマー層(A)を完全に硬化させてアセトン可溶分率が10質量%以下にすることが好ましく、更に5質量%以下にすることが好ましい。
(プライマー層(A)・2層構造)
プライマー層(A)の金属・FRP界面近傍では、無機化合物の含有率が多い方が、密着性および熱水に対する耐性が増すため好ましい。一方、水圧転写面に対しては、表面平滑性が高い方が、水圧転写が良好に行なわれ、かつ転写された装飾層(B)も鮮明になり、表面保護層である硬化性樹脂層(C)の鮮映度もより高くなることから、水圧転写面近傍では無機化合物の含有率は低く表面平滑性が高い方が好ましい。また、無機化合物の含有率は低い方が塗膜の柔軟性も高まるため、塗膜全体の耐衝撃性が向上する。このように、プライマー層(A)は、金属・FRP界面から水圧転写界面に対して、無機化合物の含有率が多い状態から少ない状態への傾斜構造が好ましい。
例えば、前記プライマー層(A)の無機化合物(Y)の含有率が、前記金属または繊維強化プラスチック成形品の表面から20〜30μmのプライマー層下部の領域は40〜70質量%であり、転写面から30〜50μmのプライマー層内上部は0〜40質量%である態様が好ましい。
このような構造を形成するためには、プライマー層(A)を多層構造とし、例えば2層
構造にした場合には、プライマー層(A)が金属またはFRP成形品の表面に積層された無機化合物(Y)の含有率が40〜70質量%の層(A1層)と、更にその上に積層された無機化合物(Y)の含有率が0〜40質量%の層(A2層)により形成されていることが好ましい。また、その膜厚がそれぞれ20〜60μmであることが好ましい。
(2層積層方法)
プライマー層(A)のA1層を塗装後、これを乾燥させることなくA2層を塗装し、A1層およびA2層のアセトン可溶分率が15〜60%になるように乾燥、硬化させることにより、
両層の密着性も良い、連続的な層形成がされるため好ましい。
これを用いて次工程の水圧転写工程で、良好な水圧転写性を実現できる。
[装飾層(B)]
(樹脂成分)
前記プライマー層(A)上に水圧転写により設けられる装飾層(B)は、水圧転写フィルムから水圧転写により転写されたポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリレートおよびポリ塩化ビニル酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一つを樹脂成分とする印刷インキ被膜または塗料皮膜からなる。
(装飾層(B)の樹脂成分)
水圧転写により転写される装飾層(B)は、水圧転写用フィルムの水溶性もしくは水膨潤性の樹脂から成る支持体フィルム上に印刷または塗布により設けられるが、これらの印刷インキまたは塗料に用いる樹脂が一般に水圧転写用フィルムの印刷インキに用いられる硝化綿や硝化綿と同程度の親水性の樹脂であると、得られる装飾付き浴槽の耐熱水性が低くなる。
従って、硝化綿より高い疎水性を有する熱可塑性樹脂として、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂(塩ビ、酢ビ共重合樹脂)、ビニリデン樹脂(ビニリデンクロライド、ビニリデンフルオネート)、エチレン−ビニルアセテート樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化オレフィン樹脂、エチレン−アクリル樹脂などが、印刷インキまたは塗料の主な樹脂成分として好ましく用いられる。なかでもポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリレート樹脂およびポリ塩化ビニル酢酸ビニル共重合体を主な樹脂成分とする印刷インキまたは塗料が、プライマー層(A)および硬化樹脂層(C)との密着性に優れ、かつ耐水性にも優れるために好ましい。
(着色剤)
樹脂成分と共に印刷インキまたは塗料に用いる着色剤は、顔料が好ましく、無機系顔料と有機系顔料のいずれであってもよく、また、金属切削粒子のペーストや蒸着金属膜から得られる金属細片顔料も用いることが出来る。それらに用いられる金属は、アルミニウム、金、銀、真鍮、チタン、クロム、ニッケル、ニッケルクロームおよびステンレス等が挙げられる。これらの金属細片は、分散性を向上させる目的や酸化防止を目的として、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂などで表面が処理されていても良い。
装飾層(B)の乾燥膜厚は0.5〜15μmであることが好ましく、より好ましくは、1〜7μmである。
[硬化性樹脂層(C)]
(樹脂種類)
水圧転写した装飾層(B)の保護層として装飾層(B)上に設ける硬化性樹脂層(C)は、硬化樹脂層(C)の下にある装飾層(B)が透けて見えることに加え、優れた耐熱水性、耐洗剤性および耐擦傷性を有することが好ましいため、硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物またはアクリルウレタン樹脂が好ましく、装飾層(B)との密着性に優れることからアクリルウレタン樹脂がより好ましい。
アクリルウレタン樹脂は、アクリルポリオール樹脂とポリイソシアネートの硬化物が好ましい。主剤成分であるアクリルポリオール樹脂は、水酸基を有する重合性不飽和単量体類と、該水酸基を有する重合性不飽和単量体類と共重合可能な他の重合性不飽和単量体類とを常法により共重合させることにより製造される。本発明で好ましく用いられるアクリルポリオール樹脂の水酸基価は50〜150で、その質量平均分子量は、3000〜20000である。
(水酸基を有する重合性不飽和単量体類)
水酸基を有する重合性不飽和単量体類としては、例えば、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートの如き(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類;
マレイン酸、フマル酸、イタコン酸の如き多価カルボン酸類のジヒドロキシアルキルエステル類;またはヒドロキシアルキルビニルエーテル類などである。
(共重合可能な他の重合性不飽和単量体類)
水酸基を有する重合性不飽和単量体類と共重合可能な他の重合性不飽和単量体類としては、メチルメタアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートもしくはシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートの如きアルキル(メタ)アクリレート類;
あるいは、メトキシエチル(メタ)アクリレートなどに代表されるようなアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;
ジメチルマレエート、ジエチルフマレート、ジブチルフマレートもしくはジブチルイタコネートの如きマレイン酸、フマル酸ないしはイタコン酸などによって代表されるジカルボン酸類と1価アルコール類とのジエステル類;
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸の如き不飽和モノ−またはジ−カルボン酸類または上述したような酸無水物の種々のカルボキシル基含有単量体類;グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルの如きエポキシ基含有単量体類;
スチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー類などである。
また、アクリルポリオール樹脂として、市販品、例えば、「アクリディックA−800、A801、A−801−P」(大日本インキ化学工業株式会社製)などを用いることもできる。
(硬化剤)
硬化剤成分であるポリイソシアネートは、少なくとも1分子あたり2個のイソシアネート基を有する化合物が用いられる。ポリイソシアネートの代表例としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートまたはジフェニルメタンジイソシアネートの如き芳香族ジイソシアネート類;
テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはトリメチルヘキサンジイソシアネートの如き脂肪族ジイソシアネート類;
イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−(または2、6−)ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)または1,3−ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサンの如き脂環式ジイソシアネート類;
あるいは、これらイソシアネート化合物と多価アルコール類から得られるポリイソシアネートや、イソシアネート基と末端に水酸基を有するポリエステル樹脂から得られるポリオール伸長型ポリイソシアネート類;
さらには上記ジイソシアネートのビウレット体やイソシアヌレート体などが挙げられる。
(アクリルポリオール樹脂の構成成分)
主剤のアクリルポリオール樹脂の構成成分としては、上記重合性不飽和単量体の中からブチルアクリレートやジブチルフマレートの如き炭素数4以上の脂肪族アルコールのアクリルエステルや、スチレン誘導体の如き疎水性の高いモノマーを全体の構成成分の10モル%〜50モル%用いることが耐熱水性を向上させるために好ましい。また、硬化剤としてはヘキサメチレンジイソシアネートの重合体やキシリレンジイソシアネートのイソシアヌレートが特に好ましく用いられる。
(硬化樹脂層(C)のTg)
硬化樹脂層(C)を構成するアクリルウレタン樹脂の完全硬化後のTgは50℃〜120℃であるものが好ましく、より高い耐熱水性を得るには、完全硬化後のTgが60℃〜120℃であるものが好ましい。
(硬化剤配合比)
主剤であるアクリルポリオール樹脂を構成する水酸基を有する重合性不飽和単量体類と硬化剤としてのポリイソシアネートの配合比は、水酸基を有する重合性不飽和単量体類のヒドロキシ基とポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比OH/NCOが1.0/0.8〜1.0/2.0である範囲が好ましい。ヒドロキシ基1当量に対してイソシアネート基が0.8当量未満では、十分な塗膜性能が得られ難く、逆にNCO基が2.0当量を越えると、塗膜の形成時に発泡したり、耐熱水性が低下するために好ましくない。
(反応促進剤)
また、必要に応じて、慣用のウレタン化反応の反応促進剤を用いて塗膜の硬化性を向上せしめることもできる。
硬化条件は、硬化樹脂層(C)のアセトン可溶分率が0%〜10%になるような条件を選択し、具体的にはアクリルウレタン樹脂では60〜100℃、乾燥時間は30分〜1時間程度が好ましい。
(表面平滑性)
また、硬化樹脂層(C)は、十分に光沢が高いことが好ましく、60°入射角光沢値が80%以上であることが好ましい。また、硬化樹脂層(C)は、鮮映性を向上させるために、表面平滑性が高いことが好ましく、表面平滑性を向上させるために硬化樹脂層(C)にレベリング剤を添加しても構わない。レベリング剤としては、慣用のシリコン系、アクリル系のものを用いることができる。硬化樹脂層(C)の膜厚は、好ましくは10〜100μmである。
[接着層(D)]
前記プライマー層(A)と前記装飾層(B)の間に、接着層(D)を設けることが好ましい。
接着層(D)は、水圧転写される装飾層(B)が含む有機溶剤を吸収し、装飾層(B)をプライマー層(A)に密着させる役割を果たす。接着層(D)は、プライマー層(A)を構成するエポキシ樹脂が、室温で硬化が進行しやすく、装飾層(B)を水圧転写する時まで半硬化状態を保ちにくい場合や、耐薬品性、特に耐酸性洗剤性を更に向上させる必要がある場合に、特に有用である。
(アセトン可溶分率)
接着層(D)は、完全硬化した状態では有機溶剤吸収能が低く、水圧転写される装飾層(B)との接着性が低くなるので、接着層(D)が半硬化の状態で水圧転写を行うことが好ましく、水圧転写時における接着層(D)のアセトン可溶分率は20%以上であることが好ましく、より好ましくは25%〜40%である。
(樹脂種類)
接着層(D)を構成する硬化性樹脂としては、硬化性エポキシ樹脂組成物やアクリルウレタン樹脂を形成するアクリルポリオール樹脂とポリイソシアネートを含む硬化性樹脂組成物が好ましく用いられ、中でも上述した硬化樹脂層(C)と同様のアクリルウレタン樹脂を形成するアクリルポリオール樹脂とポリイソシアネートを含む硬化性樹脂組成物が耐水性に優れ、かつプライマー層(A)や装飾層(B)との接着性に優れることから好ましい。
(アクリルウレタン樹脂のTg)
接着層(D)を構成するアクリルウレタン樹脂は、完全硬化後のTgが55℃〜120℃であるものが好ましく、より高い耐熱性を得るには、完全硬化後のTgが60℃〜120℃であるものが好ましい。
(フィラー)
また、接着層(D)には、プライマー層(A)に添加する着色顔料や体質顔料などのフィラーを配合することが好ましい。着色顔料としては公知慣用の着色顔料が使用でき、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、硫化亜鉛、ベンガラや公知慣用の体質顔料が使用できる。例えば、体質顔料としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン等が挙げられる。これらフィラーの配合量は、塗装性、耐熱水性および接着性が良好な範囲であるアクリルウレタン樹脂の約20〜50質量%であること好ましい。
(膜厚)
また、接着層(D)の膜厚は、10〜60μmが好ましく、より好ましくは30〜50μmである。
[加飾成形品の製造方法]
本発明の加飾成形品の代表的な製造方法を例示として示す。
(1)目的形状に成形された繊維強化プラスチック成形品の装飾所望箇所に硬化性エポキシ樹脂組成物を塗布し、次いで前記成形体を加熱して前記硬化性エポキシ樹脂組成物を乾燥しているが硬化していない状態にプライマー層(A)を形成させる。このとき耐衝撃性を付与するために、下層と上層で異なる無機化合物濃度のエポキシ系樹脂組成物を途中に乾燥を行うことなく連続的に塗装し、これらを乾燥しているが硬化していない状態にさせることもできる。
(2)前記プライマー層(A)上に、水溶性もしくは水膨潤性の樹脂から成る支持体フィルムと前記支持体フィルム上に設けた有機溶剤に溶解可能な疎水性のウレタン樹脂を主な樹脂成分とする印刷インキ被膜または塗料皮膜からなる装飾層(B)を有する水圧転写フィルムから前記装飾層(B)を水圧転写し、
(3)得られた水圧転写体を加熱して、前記水圧転写体を乾燥させると共にプライマー層(A)を硬化させ、または硬化させずに
(4)水圧転写した装飾層(B)上にアクリルポリオール樹脂とポリイソシアネートを含む硬化性樹脂組成物を塗布し、加熱して前記アクリルポリオール樹脂とポリイソシアネートを反応させてアクリルウレタン樹脂からなる透明な硬化樹脂層(C)を形成させるか、または前記アクリルウレタン樹脂からなる透明な硬化樹脂層(C)を形成させると共に前記プライマー層(A)を完全に硬化させる。
また、プライマー層(A)の上に接着層(D)を設ける場合の製造方法は下記のように行なう製造方法が例示される。
(1)目的形状に成形された繊維強化プラスチック成形品の装飾所望箇所に硬化性エポキシ樹脂組成物を塗布し、次いで前記成形体を加熱して前記硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化または半硬化させたプライマー層(A)を形成させ、
(2)前記硬化または半硬化させたプライマー層(A)上にアクリルポリオール樹脂とポリイソシアネートを含む硬化性樹脂組成物を塗布し、次いで加熱して前記硬化性樹脂組成物を反応させることにより、アクリルウレタン樹脂からなる半硬化の接着層(D)を形成させ、
(3)前記半硬化の接着層(D)上に、水溶性もしくは水膨潤性の樹脂から成る支持体フィルムと前記支持体フィルム上に設けた有機溶剤に溶解可能な疎水性のウレタン樹脂を主な樹脂成分とする印刷インキ被膜または塗料皮膜からなる装飾層(B)を有する水圧転写フィルムから前記装飾層(B)を水圧転写し、
(4)得られた水圧転写体を加熱して、前記水圧転写体を乾燥させると共にプライマー層(A)及び接着層(D)を硬化させ、または硬化させずに、
(5)水圧転写した装飾層(B)上にアクリルポリオール樹脂とポリイソシアネートを含む硬化性樹脂組成物を塗布し、加熱して前記アクリルポリオール樹脂とポリイソシアネートを反応させてアクリルウレタン樹脂からなる透明な硬化樹脂層(C)を形成させるか、または前記アクリルウレタン樹脂からなる透明な硬化樹脂層(C)を形成させると共に前記プライマー層(A)及び接着層(D)を硬化させる。
プライマー層(A)の塗布方法は、スプレー塗装、刷毛塗り塗装、ロール塗装などの何れであっても良いが、好ましくはスプレーガンやリシンガン等の機械装置でのスプレー塗装である。
プライマー層(A)または接着層(D)が完全に硬化した状態では、水圧転写する装飾層(B)のプライマー層(A)または接着層(D)への密着性が低いため、装飾層(B)が水圧転写されるプライマー層(A)または接着層(D)は半硬化状態であることが特に好ましい。水圧転写後、得られた水圧転写体を洗浄して残着した支持体フィルムを完全に除去した後、水分除去とプライマー層(A)または接着層(D)を完全硬化させる目的で加熱、乾燥させる。プライマー層(A)または接着層中に水分が残存すると、プライマー層(A)または接着層に膨れを生じたり、硬化樹脂層(C)に気泡が発生し、耐熱水性を低下させる原因となる。
本発明の加飾成形品は、加飾部位と非加飾部位を分割するためにマスキングを行うことができる。マスキングは、加熱乾燥時に伸縮しない耐熱性が優れたものが好ましい。マスキングは、最終工程の硬化性樹脂層(C)の形成、乾燥後速やかに除去することが好ましい。
[水圧転写フィルム]
次に水圧転写フィルムについて説明する。
水溶性もしくは水膨潤性の樹脂から成る支持体フィルム(以下、支持体フィルムと略す)としては、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)、ポリビニルピロリドン、アセチルセルロース、ポリアクリルアミド、アセチルブチルセルロース、ゼラチン、にかわ、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のフィルムが使用できる。なかでも水圧転写用フィルムとして広く用いられているPVAフィルムが水に溶解し易く、入手が容易で、装飾層(B)の形成にも適しており、特に好ましい。また、支持体フィルムの厚みは10〜200μm程度が好ましい。
上記支持体フィルム上に転写層としての前記装飾層(B)を形成させ、水圧転写用フィルムを製造する。支持体フィルム上での装飾層(B)の形成は、従来の水圧転写用フィルムの製造と同様に、支持体フィルム上へのグラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷などの慣用の印刷または塗布により行うことができ、中でもグラビア印刷により行うことが、複雑かつ鮮明な画像を容易に形成できることから好ましい。
[水圧転写方法]
また、本発明の加飾成形品は、下記の製造方法で製造することができる。
(1)目的形状に成形された成形品の装飾所望箇所に、無機化合物(Y)を30〜70質量%とポリアミドアミンを含有したエポキシ樹脂組成物を塗布し、次いで前記成形体を加熱して前記硬化性エポキシ樹脂組成物を乾燥しているが硬化していない状態にしたプライマー層(A)を形成させ、
(2)前記プライマー層(A)上に、水溶性もしくは水膨潤性の樹脂から成る支持体フィルムと前記支持体フィルム上に設けた有機溶剤に溶解可能な印刷インキ被膜または塗料皮膜からなる装飾層(B)を有する水圧転写フィルムを水圧転写することにより装飾層(B)を水圧転写し、
(3)得られた水圧転写体を加熱して、前記水圧転写体を乾燥させると共にプライマー層(A)を硬化させ、または硬化させずに、
(4)水圧転写した装飾層(B)上に硬化性樹脂組成物を塗布し、加熱して前記硬化樹脂層(C)を形成させるか、または前記硬化樹脂層(C)を形成させると共に前記プライマー層(A)を硬化させる。
本発明のプライマー層(A)または接着層(D)への装飾層(B)の水圧転写は、慣用の水圧転写方法に従って行えば良く、その概略は以下の通りである。
(1)装飾層(B)を有する水圧転写用フィルムの支持体フィルム側を下にして水槽中の25℃〜30℃の水に浮かべ、支持体フィルムを水で溶解もしくは膨潤させる。
(2)前記装飾層(B)に有機溶剤を塗布または噴霧することにより装飾層(B)を活性化させる。なお、装飾層(B)の有機溶剤による活性化は、フィルムを水に浮かべる前に行っても良い。
(3)上述したプライマー層(A)、またはプライマー層(A)と接着層(D)を有する目的形状に成形された繊維強化プラスチック成形品を水圧転写用フィルムの装飾層(B)に押しつけながら、水圧転写用フィルムと共に水中に沈めて行き、水圧によって装飾層(B)を前記成形体のプライマー層(A)または接着層(D)上に密着させて転写する。
(4)水から出した前記成形体から水洗にて残存した支持体フィルムを除去し、水圧転写体を得る。
支持体フィルム上の装飾層(B)は、水圧転写される前に散布される有機溶剤で活性化され、十分に可溶化もしくは柔軟化されることが必要である。ここで言う活性化とは、装飾層(B)に有機溶剤を塗布または散布することにより、装飾層(B)を構成する樹脂を完全には溶解せずに可溶化させ、水圧転写に際して水溶性もしくは水膨潤性の支持体フィルムから疎水性の装飾層(B)の剥離を容易にすると共に、装飾層(B)に柔軟性を付与することにより、被転写対象の成形体の三次元曲面への追従性と密着性を向上させることを意味する。この活性化は、装飾層(B)を水圧転写用フィルムから該成形体へ転写する際に、装飾層(B)が柔軟化され、成形体への三次元曲面への転写に十分に追従できる程度に行われれば良い。
(水槽の水)
水圧転写における水槽の水は、装飾層(B)を転写する際に水圧転写用フィルムの硬化性樹脂層もしくは硬化性樹脂層と装飾層(B)とを被転写体である成形体の三次元曲面に密着させる水圧媒体として働く他、支持体フィルムを膨潤または溶解させるものであり、具体的には、水道水、蒸留水、イオン交換水などの水でよい。
(活性化剤)
本発明に用いる活性化剤は、装飾層(B)を可溶化させる有機溶剤である。本発明に用いる活性化剤は、一般の水圧転写に用いる活性化剤と同様なものを用いることができ、具体的には、トルエン、キシレン、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトールアセテート、カルビトール、カルビトールアセテート、セロソルブアセテート、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソブチル、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、ソルフィットアセテートなど及びそれらの混合物が挙げられる。
この活性化剤中に装飾層(B)と被転写体である成形体との密着性を高めるために、若干の樹脂成分を含ませてもよい。例えば、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂といった、インキのバインダーに類似の構造のものを1〜10%含ませることによって密着性が高まることがある。
(支持体洗浄)
被転写体である成形体に装飾層(B)を水圧転写した後は、従来の水圧転写方法と同様に水流で支持体フィルムを溶解もしくは剥離して除去する。
(加飾成形品)
本発明の加飾成形品は、その優れた意匠性、耐水性、耐薬品性及び耐久性から、装飾を付与することが好ましい建築部材、家電部材および自動車部材などの工業製品部材を始め、浴室部材、洗面台及びシステムキッチン等の家庭用品の部材にも広く用いられる。本発明の加飾成形品は、なかでも、耐熱水性や耐薬品性に優れることから、浴槽や浴室の壁板や床板、浴室のカウンター前板や防水パン等の浴室部材または、洗面台やシステムキッチン等の台所の部材として好ましく用いられる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、文中「部」「%」は、断りのない限り質量基準である。
(アセトン可溶分率の測定方法)
3×3cmの1mm厚のポリプロピレン製シートを、金属またはFRP基材に貼りつけ、プライマーやトップコートなどを、指定膜厚になるように塗装し、成形品の乾燥条件と同様な条件で乾燥する。乾燥後、シートをはがし、この上に塗装された皮膜をカッターナイフ等ではがす。この塗装皮膜の重量を測定後、#200のステンレスメッシュで包み、メッシュごと重量測定後、アセトン中に24時間室温で浸漬する。24時間経過後、メッシュごと、90℃で30分以上乾燥し、メッシュと不溶分の重量を測定する。これらの重量から、アセトンに可溶の重量を塗装乾燥後の重量で割り、アセトン可溶分率(%)とした。
(参考例1)プライマー層(A)用塗料(P1)の調製
数平均分子量500のビスフェノールA型エポキシ樹脂35質量部、酸化チタン30質量部、珪酸マグネシウム35質量部)、溶剤(キシレン/酢酸ブチル/n−ブタノール=)50質量部をホモディスパーで十分に攪拌し、プライマー層(A)用主剤を調製した。この主剤75質量部と硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンとビスフェノールA変性ポリアミドアミン及びシンナー(キシレン:酢酸ブチル=80:20)を75:5:20:30の質量比で混合し、プライマー層(A)用塗料(P1)を調製した。
(参考例2)プライマー層(A)用塗料(P2)の調製
数平均分子量500のビスフェノールA型エポキシ樹脂50質量部、酸化チタン25質量部、珪酸マグネシウム25質量部および溶剤(キシレン/酢酸ブチル/n−ブタノール=)50質量部をホモディスパーで十分に攪拌し、プライマー層(A)用主剤を調製した。この主剤75質量部、硬化剤としてビスフェノールA変性ポリアミドアミン及びシンナー(キシレン:酢酸ブチル=80:20)を75:25:30の質量比で混合し、プライマー層(A)用塗料(P2)を調製した。
(参考例3)プライマー層(A)用塗料(P3)の調製
数平均分子量1000のビスフェノールA型エポキシ樹脂65質量部、酸化チタン10質量部、珪酸マグネシウム10質量部、酸化ケイ素10質量部、酸化鉄5質量部および溶剤(キシレン/酢酸ブチル/n−ブタノール=)50質量部をホモディスパーで十分に攪拌し、プライマー層(A)用主剤を調製した。この主剤75質量部、硬化剤としてビスフェノールA変性ポリアミドアミン及びシンナー(キシレン:酢酸ブチル=80:20)を75:35:30の質量比で混合し、プライマー層(A)用塗料(P3)を調製した。
(参考例4)プライマー層(A)用塗料(P4)の調製
数平均分子量500のビスフェノールA型エポキシ樹脂50質量部、酸化チタン20質量部、珪酸マグネシウム30質量部および溶剤(キシレン/酢酸ブチル/n−ブタノール=)50質量部をホモディスパーで十分に攪拌し、プライマー層(A)用主剤を調製した。この主剤75質量部、硬化剤としてダイマー酸変性ポリアミドアミン及びシンナー(キシレン:酢酸ブチル=80:20)を75:25:30の質量比で混合し、プライマー層(A)用塗料(P4)を調製した。
(参考例5)プライマー層(A)用塗料(P5)の調製
数平均分子量500のビスフェノールA型エポキシ樹脂20質量部、酸化チタン40質量部、珪酸マグネシウム40質量部、溶剤(キシレン/酢酸ブチル/n−ブタノール=)50質量部をホモディスパーで十分に攪拌し、プライマー層(A)用主剤を調製した。この主剤75質量部と硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンとビスフェノールA変性ポリアミドアミン及びシンナー(キシレン:酢酸ブチル=80:20)を75:5:20:30の質量比で混合し、プライマー層(A)用塗料(P5)を調製した。
(参考例6)プライマー層(A)用塗料(P6)の調製
数平均分子量500のビスフェノールA型エポキシ樹脂80質量部、酸化チタン10質量部、珪酸マグネシウム10質量部)、溶剤(キシレン/酢酸ブチル/n−ブタノール=)50質量部をホモディスパーで十分に攪拌し、プライマー層(A)用主剤を調製した。この主剤75質量部と硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンとビスフェノールA変性ポリアミドアミン及びシンナー(キシレン:酢酸ブチル=80:20)を75:25:30の質量比で混合し、プライマー層(A)用塗料(P6)を調製した。
(参考例7)プライマー層(A)用塗料(P7)の調製
数平均分子量500のビスフェノールA型エポキシ樹脂50質量部、酸化チタン20質量部、珪酸マグネシウム30質量部、溶剤(キシレン/酢酸ブチル/n−ブタノール=)50質量部をホモディスパーで十分に攪拌し、プライマー層(A)用主剤を調製した。この主剤75質量部と硬化剤としてヘキサメチレンテトラミン及びシンナー(キシレン:酢酸ブチル=80:20)を75:10:30の質量比で混合し、プライマー層(A)用塗料(P7)を調製した。
(参考例8)接着層(D)用塗料(U1)の調製
スチレン、ジブチルフマレート、ヒドロキシメチルメタクリレート及びアクリル酸を40:30:15:5の比で共重合させて得た数平均分子量10000のポリアクリレート共重合体(Tg50℃)を100質量部と、酸化チタン37質量部および溶剤50質量部をホモディスパーで十分に攪拌し、接着層用主剤を調製した。この主剤と硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(イソシアヌレート含有率78%、ウレトジオンダイマー含有率10%)と、シンナー(キシレン:酢酸ブチル=60:40)を質量比80:20:50で混合し、接着層(D)用塗料(U1)を調製した。
(参考例9)硬化樹脂層(C)用塗料(T1)の調製
スチレン、ジブチルフマレート、ヒドロキシメチルメタクリレート及びアクリル酸を40:30:15:5の比で共重合させて得た数平均分子量10000のポリアクリレート共重合体(OHV100)を100質量部および溶剤50質量部をホモディスパーで十分に攪拌し、接着層用主剤を調製した。この主剤と硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(イソシアヌレート含有率78%、ウレトジオンダイマー含有率10%)と、シンナー(キシレン:酢酸ブチル=60:40)を質量比80:20:50で混合し、硬化樹脂層(C)用塗料(T1)を調製した。
(参考例10)硬化樹脂層(C)用塗料(T2)の調製
メチルメタクリレート、ラクトン変性メタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレートを30:30:20:20の比で共重合させて得た数平均分子量5000のポリアクリレート共重合体(OHV130)を100質量部および溶剤50質量部をホモディスパーで十分に攪拌し、接着層用主剤を調製した。この主剤と硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(イソシアヌレート含有率78%、ウレトジオンダイマー含有率10%)と、シンナー(キシレン:酢酸ブチル=60:40)を質量比80:20:50で混合し、硬化樹脂層(C)用(T2)を調製した。
(参考例11)ウレタン系印刷インキ(I1)の調製
数平均分子量20000のウレタン樹脂(三洋化成社製:サンプレンIB1700、不揮発分30%)40質量部、混合溶剤(トルエン:MEK:IPA=30:50:20)49質量部、ポリエチレンワックス(三井化学社製:ハイワックス220MP)1質量部および顔料10質量部を1時間練肉し、更に溶剤で希釈して不揮発分23%のウレタン系印刷インキ(I1)を調製した。
(参考例12)アクリル系印刷インキ(I2)の調製
数平均分子量25000のアクリル樹脂(ローム・アンド・ハース社製:パラロイドB66、不揮発分30%)40質量部、混合溶剤(トルエン:MEK:IPA=30:50:20)49質量部、ポリエチレンワックス(三井化学社製:ハイワックス220MP)1質量部および顔料10質量部を1時間練肉し、更に溶剤で希釈して不揮発分23%のウレタン系印刷インキ(I2)を調製した。
(参考例13)水圧転写フィルム(W1)の作製
参考例11で調製したウレタン系印刷インキI1をトーセロ製PVAフィルム「トスロン」に4版構成で石目柄を印刷し、水圧転写用フィルム(W1)を得た。
(参考例14)水圧転写フィルム(W2)の作製
参考例12で調製したアクリル印刷インキI2をトーセロ製PVAフィルム「トスロン」に4版構成で石目柄を印刷し、水圧転写用フィルム(W2)を得た。
(参考例15)水圧転写用活性剤の調製
キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、イソブチルアルコールを50:25:15:10の比で混合し、水圧転写用活性剤を得た。
(実施例1)浴室カウンター(M1)の作製
大日本インキ化学工業株式会社製のSMC(ディックマット2417、不飽和ポリエステル系SMC)を加熱加圧成形しFRP浴室カウンターの上面をイソプロパノールを用いて脱脂処理した。
脱脂剤乾燥後、プライマー層(A)用塗料(P1)を膜厚35μmになるように塗布し、室温で20分放置後、70℃で20分乾燥加熱し、プライマー層(A)用塗料(P1)を半硬化させ、プライマー層(A)を形成させた。なお、プライマー層(A)用塗料(P1)を塗布した試験片を同様に処理して求めたプライマー層(A)用塗料(P1)のアセトン可溶分率は25%であった。以下の実施例においても、同様に試験片を処理して求めたアセトン可溶分率を記載した。
次に、カウンターを室温まで放冷後、水圧転写用フィルム(W1)を、装飾層(B)を上にして30℃の水に浮かべ、フィルム面に活性剤40g/mを噴霧した。活性剤の噴霧後、カウンターを浴槽開口部からフィルム面にゆっくり接触させ、フィルムと共にゆっくりと水中に沈めて装飾層(B)を浴槽の上縁面に転写した。カウンターを水中から引き上げ、40℃の温水で洗浄後、さらに清浄水で洗浄した。次いで、カウンターを80℃の乾燥機で30分加熱、乾燥してプライマー層(A)を完全に硬化させた(アセトン可溶分率5%)。
装飾層(B)を設けたカウンターを放冷後、水圧転写した装飾層(B)上に透明な硬化樹脂層(C)用塗料(T1)を50μmの膜厚になるように塗布し、20分室温で放置後、80℃で30分加熱して硬化させ、透明な硬化樹脂層(C)を形成させた(アセトン可溶分率8%)。表面に光沢があり、高級感のある大理石柄模様の装飾付きカウンター(M1)を得た。
(実施例2)浴室カウンター(M2)の作製
実施例1と同じ成形物に、脱脂剤乾燥後、プライマー層(A)用塗料(P2)を膜厚50μmになるように塗布し、室温で20分放置後、70℃で20分乾燥加熱し、プライマー層(A)用塗料(P2)を半硬化させ、プライマー層(A)を形成させた。なお、プライマー塗膜のアセトン可溶分率は30%であった。
次に、カウンターを室温まで放冷後、実施例1と同様の材料、手法で水圧転写により装飾層(B)を形成したのち、硬化樹脂層(C)用塗料(T1)を用いて硬化樹脂層(C)を形成し、加飾カウンター(M2)を得た。硬化後のプライマー塗膜のアセトン可溶分率は3%であった。
(実施例3)浴室カウンター(M3)の作製
実施例1と同じ成形物に、脱脂剤乾燥後、プライマー層(A)用塗料(P3)を膜厚50μmになるように塗布し、室温で20分放置後、70℃で20分乾燥加熱し、プライマー層(A)用塗料(P3)を半硬化させ、プライマー層(A)を形成させた。プライマー塗膜のアセトン可溶分率は50%であった。
次に、カウンターを室温まで放冷後、実施例1と同様の材料、手法で水圧転写により装飾層(B)を形成したのち、硬化樹脂層(C)用塗料(T1)を用いて硬化樹脂層(C)を形成し、加飾カウンター(M3)を得た。硬化後のプライマーのアセトン可溶分率は4%であった。
(実施例4)浴室カウンター(M4)の作製
実施例1と同じ成形物に、脱脂剤乾燥後、プライマー層(A)用塗料(P4)を膜厚50μmになるように塗布し、室温で20分放置後、70℃で20分乾燥加熱し、プライマー層(A)用塗料(P4)を半硬化させ、プライマー層(A)を形成させた。プライマー塗膜のアセトン可溶分率は35%であった。
次に、カウンターを室温まで放冷後、水圧転写フィルム(W2)を実施例1と同様な材料、手法で水圧転写、硬化樹脂層(C)を形成し、加飾カウンター(M4)を得た。硬化後のプライマーのアセトン可溶分率は5%であった。
(実施例5)ステンレス製加飾キッチンカウンター(M5)の作製
ステンレスを加圧成形したキッチンカウンター表面を加飾面と非加飾面を仕切るようにマスキングしたのちに、加飾面の表面をイソプロパノールを用いて脱脂処理した。
脱脂剤乾燥後、プライマー層(A)用塗料(P4)を膜厚40μmになるように塗布し、その上に参考例3で作製したプライマー層(A)用塗料(P3)を膜厚40μmになるように塗布した。室温で20分放置後、60℃で20分乾燥加熱し、プライマー層(A)用塗料(P3/P4)を半硬化させ、プライマー層(A)を形成させた。プライマーのアセトン可溶分率は50%であった。
次に、カウンターを室温まで放冷後、水圧転写用フィルム(W1)を、装飾層(B)を上にして30℃の水に浮かべ、フィルム面に活性剤40g/mを噴霧した。活性剤の噴霧後、カウンターをカウンター開口部からフィルム面にゆっくり接触させ、フィルムと共にゆっくりと水中に沈めて装飾層(B)をカウンターの上縁面に転写した。カウンターを水中から引き上げ、40℃の温水で洗浄後、さらに清浄水で洗浄した。次いで、カウンターを80℃の乾燥機で30分加熱、乾燥してプライマー層(A)を完全に硬化させた(アセトン可溶分率5%)。
装飾層(B)を設けたカウンターを放冷後、水圧転写した装飾層(B)上に硬化樹脂層(C)用塗料(T2)を50μmの膜厚になるように塗布し、20分室温で放置後、80℃で30分加熱して硬化させ、硬化樹脂層(C)を形成させた(アセトン可溶分率1%)。5分後(表面温度62℃)、マスキングテープをはがし、表面に光沢があり、高級感のある大理石柄模様の装飾付きカウンター(A)を得た。プライマー層(A)の塗膜のTgが構成される塗膜中でもっとも高く82℃であった。
(実施例6)装飾付き浴槽(M6)の作製
大日本インキ化学工業株式会社製のSMC(ディックマット2417、不飽和ポリエステル系SMC)を加熱加圧成形した繊維強化プラスチック浴槽の上縁面(図1及び図2の符号2で示す部分)と上縁面から浴槽内側下4cm以外の部分にマスキングテープによりマスキングを行い、次いで浴槽の上縁面と上縁面から浴槽内側下4cmとをイソプロパノールを用いて脱脂処理した。
脱脂剤乾燥後、プライマー塗料(P4)を上縁面と上縁面から浴槽内側下4cmに膜厚35μmになるように塗布し、室温で20分放置後、90℃で45分乾燥加熱し、プライマー層(A)用塗料(P4)を完全硬化させてプライマー層(A)を形成させた(アセトン可溶分率は7%)。
次に、浴槽を室温まで放冷後、接着層用塗料(U1)を上記プライマー層(A)上に膜厚40μmになるように塗布し、室温で20分放置後、80℃で15分加熱乾燥し半硬化状態の接着層を形成させた(アセトン可溶分率30%)。
次に、浴槽を室温まで放冷後、水圧転写用フィルム(W1)を、装飾層(B)を上にして30℃の水に浮かべ、フィルム面に活性剤40g/mを噴霧した。活性剤の噴霧後、浴槽を浴槽開口部からフィルム面にゆっくり接触させ、フィルムと共にゆっくりと水中に沈めて装飾層(B)を浴槽の上縁面に転写した。浴槽を水中から引き上げ、40℃の温水で洗浄後、さらに清浄水で洗浄した。次いで、浴槽を80℃の乾燥機で30分加熱、乾燥してプライマー層(A)を完全に硬化させた(アセトン可溶分率5%、Tg82℃)。
装飾層(B)を設けた浴槽を放冷後、水圧転写した装飾層(B)上に硬化樹脂層(C)用塗料(T2)を50μmの膜厚になるように塗布し、20分室温で放置後、80℃で30分加熱して硬化させ、透明な硬化樹脂層(C)を形成させた(アセトン可溶分率8%)。乾燥終了後5分以内(表面温度63℃)に、マスキングテープをはがし、加飾面を完成させた。表面に光沢があり、高級感のある大理石柄模様の装飾付き浴槽(B1)を得た。プライマー層(A)の塗膜のTgが構成される塗膜中でもっとも高く82℃であった。
(実施例7)装飾付き浴槽(B2)の作製
大日本インキ化学工業株式会社製のSMC(ディックマット2451、不飽和ポリエステル系SMC)を実施例6と同様にマスキングし、イソプロパノールを用いて脱脂処理した。脱脂剤乾燥後、実施例6と同様に、プライマー層(A)用塗料(P4)を上縁面と上縁面から浴槽内側下4cmに膜厚35μmになるように塗布した。室温で20分放置後、80℃で30分加熱、乾燥させてプライマー層(A)用塗料(P4)を完全硬化させてプライマー層(A)を形成させた(アセトン可溶分率7%)。
次に、浴槽を室温まで放冷後、接着層用塗料(U1)を上記プライマー層(A)上に膜厚60μmになるように塗布し、室温で20分放置後、80℃で15分加熱乾燥し半硬化状態の接着層を形成させた(アセトン可溶分率30%)。
次に、浴槽を室温まで放冷後、水圧転写用フィルム(W1)を、装飾層(B)を上にして30℃の水に浮かべ、フィルム面に活性剤40g/mを噴霧した。活性剤の噴霧後、浴槽を浴槽開口部からフィルム面にゆっくり接触させ、フィルムと共にゆっくりと水中に沈めて装飾層(B)を浴槽の上縁面に転写した。浴槽を水中から引き上げ、40℃の温水で洗浄後、さらに清浄水で洗浄した。次いで、浴槽を80℃の乾燥機で30分加熱、乾燥してプライマー層(A)を完全に硬化させた(アセトン可溶分率5%、Tg82℃)。
装飾層(B)を設けた浴槽を放冷後、水圧転写した装飾層(B)上に硬化樹脂層(C)用塗料(T2)を90μmの膜厚になるように塗布し、20分室温で放置後、80℃で30分加熱して硬化させ、透明な硬化樹脂層(C)を形成させた(アセトン可溶分率8%)。乾燥終了後5分以内(表面温度65℃)に、マスキングテープをはがし、加飾面を完成させた。表面に光沢があり、高級感のある大理石柄模様の装飾付き浴槽(B2)を得た。プライマー層(A)の塗膜のTgが構成される塗膜中でもっとも高く82℃であった。
(比較例1)浴室カウンター(M8)の作製
実施例1と同じ成形物に、脱脂剤乾燥後、プライマー層(A)用塗料(P5)を膜厚35μmになるように塗布し、室温で20分放置後、70℃で20分乾燥加熱し、プライマー層(A)用塗料(P5)を半硬化させ、プライマー層(A)を形成させた。なお、プライマー層(A)用塗料(P5)を塗布した試験片を同様に処理して求めたプライマー層(A)用塗料(1)のアセトン可溶分率は15%であった。
次に、カウンターを室温まで放冷後、実施例1と同様の材料、手法で水圧転写、硬化樹脂層(C)を形成し、加飾カウンター(M8)を得た。硬化後のプライマーのアセトン可溶分率は5%であった。
(比較例2)浴室カウンター(M9)の作製
実施例1と同じ成形物に、脱脂剤乾燥後、プライマー層(A)用塗料(P6)を膜厚35μmになるように塗布し、室温で20分放置後、70℃で20分乾燥加熱し、プライマー層(A)用塗料(P6)を半硬化させ、プライマー層(A)を形成させた。なお、プライマー層(A)用塗料(P6)を塗布した試験片を同様に処理して求めたプライマー層(A)用塗料(P6)のアセトン可溶分率は30%であった。
次に、カウンターを室温まで放冷後、実施例1と同様の材料、手法で水圧転写、硬化樹脂層(C)を形成し、加飾カウンター(M9)を得た。硬化後のプライマーのアセトン可溶分率は3%であった。
(比較例3)浴室カウンター(M10)の作製
実施例1と同じ成形物に、脱脂剤乾燥後、プライマー層(A)用塗料(P7)を平均膜厚35μmになるように塗布し、室温で20分放置後、90℃で40分乾燥加熱し、プライマー層(A)用塗料(P7)を完全硬化させ、プライマー層(A)を形成させた。このプライマー層(A)塗膜のアセトン可溶分率は5%であった。
次に、浴槽を室温まで放冷後、接着層用塗料(U1)を上記プライマー層(A)上に膜厚40μmになるように塗布し、室温で20分放置後、60℃で10分加熱乾燥し半硬化状態の接着層を形成させた(アセトン可溶分率30%)。
次に、カウンターを室温まで放冷後、水圧転写フィルム(W1)を、接着層(D)上に転写し、水洗後50℃で20分乾燥した。装飾層(B)上に硬化樹脂層(C)用塗料(T1)を形成し、90℃、30分硬化させ、加飾カウンター(M10)を得た。
次に、作製した浴槽の耐熱水性試験や耐洗剤性試験を以下に示す方法で行った。
(耐熱水試験)
作製した浴槽にサーモスタット付投げ込みヒータを設置し浴槽内を満水にして、浴槽内の水温を80℃に加温した。この浴槽に、ステンレス板で蓋をして、80℃の温水を満水にしたまま2000時間放置した。2000時間経過後、浴槽から温水を抜き取り、転写面のはがれや膨れを調べた。評価は、目視により、はがれや膨れのないものを○、はがれまたは膨れが確認されたものを×とした。
(耐洗剤性試験)
10cm×10cmのSMC試験平板に実施例および比較例で作製した装飾付き浴槽または浴室カウンターと同様の層構成を持ち、かつ実施例および比較例と同様に水圧転写により装飾層(B)を転写した試験平板をそれぞれ作製した。弱酸性の洗剤原液(キンチョー株式会社製ティンクル)を40℃に保温した水槽に、これらのSMC試験平板を浸漬した。80時間後および200時間後に試験平板を取り出し、表面状態を確認した。200時間でも変化がなかったものを◎、80時間までは変化がなかったが、200時間では膨れやはがれが出たものを○、80時間で膨れまたははがれが生じたものを×とした。
(水圧転写性評価)
浴槽または浴室カウンターの装飾部分で、転写フィルムの印刷柄が崩れなく水圧転写された場合を○、一部でも柄の崩れを生じた場合を×とした。
(水圧転写体の耐衝撃性評価法)
JIS K5400 デュポン衝撃試験に準じて、より測定した。
落下距離30cmで5回中3回以上はがれのないものを○、3回以上はがれたものを×とした。さらに落下距離60cmで5回中3回以上はがれなかったものを◎とした。
得られた評価結果を表1に示す。
Figure 2006035828
長時間の耐熱水性試験の結果、実施例1〜7で作製した浴室カウンター、キッチンカウンター、浴槽のいずれも、膨れやはがれはなく、試験前と同じ良好な光沢ある外観を保っていた。これに対して、比較例1〜3で作製した浴室カウンターは装飾を施した表面に多数の膨れを生じていた。膨れを分析したところ、いずれもプライマー層(A)とSMCの界面で膨れが生じていた。
耐酸性、耐入浴剤性では、いずれも耐熱水性と同様な傾向を示し、膨れ箇所も同じであった。一方、耐衝撃試験では、プライマー層(A)に上層と下層を設けた実施例5のM5と接着層を設けた実施例6と実施例7のM6とM7は、デュポン衝撃試験の60cm落下距離でも優れた衝撃吸収性を示した。一方で、無機充填剤の量の多い比較例1では30cmの落下距離でもはがれが生じた。
実施例1の装飾付き浴槽の斜視図である。 実施例1の装飾付き浴槽のA−B断面における断面図である。
符号の説明
1 浴槽
2 上縁面
3 装飾部分

Claims (12)

  1. 金属または繊維強化プラスチック成形品の表面に、プライマー層(A)と、水圧転写により転写された印刷インキ被膜または塗料皮膜からなる装飾層(B)と、硬化樹脂層(C)とがこの順に積層された装飾付き成形品において、
    前記プライマー層(A)が、無機化合物(Y)を30〜70質量%含有した、硬化性エポキシ樹脂とポリアミドアミンの硬化物であることを特徴とする加飾成形品。
  2. 前記無機化合物(Y)が珪酸マグネシウム、酸化ケイ素、酸化チタンおよび酸化鉄からなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項1に記載の加飾成形品。
  3. 前記プライマー層(A)のアセトン可溶分率がプライマー層(A)の10質量%以下である請求項1または2に記載の加飾成形品。
  4. 前記プライマー層(A)の膜厚が20〜120μmである請求項1〜3に記載の加飾成形品。
  5. 前記硬化性エポキシ樹脂がビスフェノールA型エポキシ樹脂であり、前記ポリアミドアミンが、ポリアミンとダイマー酸とが反応したポリアミドアミンである請求項1に記載の装飾付き加飾成形品。
  6. 前記装飾層(B)の樹脂成分が、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリレートおよびポリ塩化ビニル酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1に記載の加飾成形品。
  7. 前記硬化樹脂層(C)の樹脂成分が、アクリルポリオールとポリイソシアネートの硬化物である請求項1に記載の加飾成形品。
  8. 前記アクリルポリオールの重量平均分子量が3000〜20000および水酸基価が50〜150である請求項7に記載の加飾成形品。
  9. 前記プライマー層(A)の無機化合物(Y)の含有率が、前記金属または繊維強化プラスチック成形品の表面から20〜30μmのプライマー層下部の領域は40〜70質量%であり、転写面から30〜50μmのプライマー層上部は0〜40質量%である請求項1に記載の加飾成形品。
  10. 前記プライマー層(A)が、前記金属または繊維強化プラスチック成形品の表面に積層された無機化合物(Y)の含有率が40〜70質量%の層(A1層)と、更にその上に積層された無機化合物(Y)の含有率が0〜40質量%の層(A2層)により形成され、その膜厚がそれぞれ20〜60μmである請求項1に記載の加飾成形品。
  11. 前記プライマー層(A)が、前記金属または繊維強化プラスチック成形品の表面に積層された無機化合物(Y)の含有率が40〜70質量%の層(A1層)を塗装後、これを乾燥させることなくその上に前記無機化合物(Y)の含有率が0〜40質量%の層(A2層)を塗装したものである請求項10に記載の加飾成形品。
  12. 前記プライマー層(A)と前記装飾層(B)の間に、アクリルポリオールとポリイソシアネートの硬化物からなる接着層(D)を設ける請求項1記載の加飾成形品。
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