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JP2006035294A - 接合部の耐食性に優れた亜鉛系合金めっき鋼板の接合方法 - Google Patents

接合部の耐食性に優れた亜鉛系合金めっき鋼板の接合方法 Download PDF

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JP2006035294A
JP2006035294A JP2004222257A JP2004222257A JP2006035294A JP 2006035294 A JP2006035294 A JP 2006035294A JP 2004222257 A JP2004222257 A JP 2004222257A JP 2004222257 A JP2004222257 A JP 2004222257A JP 2006035294 A JP2006035294 A JP 2006035294A
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Shinji Kodama
真二 児玉
Hideki Hamaya
秀樹 濱谷
Nobuo Mizuhashi
伸雄 水橋
Kenichi Asai
謙一 浅井
Kiyokazu Ishizuka
清和 石塚
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Abstract

【課題】 亜鉛系合金めっき鋼板を接合する際、接合部での異種金属接触腐食によるめっき成分の溶出を防止し、耐食性に優れた接合部を得る。
【解決手段】 めっき成分中のアルミ含有量Aが3質量%以上であり、かつ片面当たりのめっき付着量Bが150≧B≧300/Aを満足し、かつ板厚が3mmを超える亜鉛系合金めっき鋼板1を用い、ステンレス鋼または銅合金溶接材料を用いて溶接する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、主に、建材、自動車部材として使用される亜鉛系合金めっき鋼板の接合方法に関し、特に、耐食性に優れた接合部を得るためのステンレス系溶接材料または銅合金接合材料を用いた亜鉛系合金めっき鋼板の接合方法に関する。
亜鉛系合金めっき鋼板は、建築や自動車など構造部材の耐食性向上の観点から幅広く用いられている。従来、溶接構造物の耐食性向上に関しては、非めっき材を溶接加工後に、亜鉛系合金浴に浸漬し亜鉛系合金を鋼材および溶接部表面に付着させ、溶接構造物全体の耐食性を確保する方法が用いられていた。しかしながら、この方法は、溶接工程後にめっき付着工程を必要とするため生産性が劣るとともに、めっき浴等の付加的な設備が必要となるためコスト高になる。このような背景からも、事前にめっきの施された亜鉛めっき鋼板を溶接構造物に使用するようになってきた。
亜鉛系合金めっき鋼板を溶接構造物として使用する場合、溶接時に溶融または加熱された溶接金属および溶接熱影響部(以下では、HAZと呼ぶ)は亜鉛系合金めっき鋼板の表面に施されためっき層が消失または損傷するため耐食性が劣化する。このため、従来、溶接部の耐食性を確保するために溶接部にジンクリッチペイント等の塗料を塗装することが一般的に行なわれている。しかしながらこの方法も、溶接の後工程での塗装作業が必要となるため生産性に難がある。また、このような塗料による防食は永年の使用環境において剥離したり、狭隘な個所への塗装が困難であるなどの問題のため、耐食性が十分であるとは言い難い。
一方、耐食性が要求されるステンレス鋼材の溶接に用いられる接合材料としてステンレス系溶接材料が知られている。この耐食性に優れたステンレス系溶接材料を用いて亜鉛系合金めっき鋼板を溶接することにより溶接部に形成される溶接金属の耐食性が向上することが期待される。
しかしながら、ステンレス系溶接材料を用いて亜鉛系合金めっき鋼板を溶接する場合には、ステンレス系成分の溶接金属とその周囲の亜鉛系合金めっきとの異種金属間の接触腐食により溶接部で局所的な耐食が生じるという新たな問題が生じる。
一般に異種金属が接触する部位では、水などを媒体として異種金属間で所謂電池が形成され、異種金属間の電子移動により電位の低い側の金属が選択的に腐食される、異種金属接触腐食(ガルバニック腐食ともいう)という現象が生じる。
従来、亜鉛系合金めっき鋼板とステンレス鋼板とを接合する場合には、亜鉛めっきとステンレス鋼とが接合または接触する部位では、これらの異種金属間で局部的な接触腐食が生じるため、亜鉛系合金めっきとステンレス鋼との接合または接触部に絶縁物を介在させたり、ステンレス鋼を亜鉛系合金めっき鋼板に代替し、異種金属間の接合または接触を回避する方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
したがって、ステンレス系接合材料または銅合金接合材料を用いて亜鉛系合金めっき鋼板を接合する場合に、接合部での異種金属接触腐食の発生を抑制し、耐食性に優れた溶接部が得られる亜鉛系合金めっき鋼板の接合方法の開発が望まれている。
特開2001−173180号公報
前述の従来技術の現状を踏まえ、本発明は、ステンレスまたは銅合金の接合材料を用いて亜鉛系合金めっき鋼板を接合する際に、接合部での異種金属接触腐食によるめっき成分の溶出を防止し、耐食性に優れた接合部が得られる亜鉛系合金めっき鋼板の接合方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ステンレスまたは銅合金接合材料を用いて亜鉛系合金めっき鋼板を接合する際の接合部における異種金属接触腐食は、亜鉛系合金めっき鋼板のめっき付着量及びめっき成分中のアルミ含有量に依存し、これらの条件を規定することにより異種金属接触腐食の発生を抑制できることを知見した。本発明は、この知見を基になされたものであり、その要旨とするところは以下の通りである。
(1) 亜鉛系合金めっき鋼板の接合方法において、ステンレス系溶接材料を用いて、めっき成分中のアルミ含有量Aが3質量%以上であり、片面当たりのめっき付着量Bが下記(1)式を満足し、かつ板厚が3mmを超える亜鉛系合金めっき鋼板をアーク溶接することを特徴とする接合部の耐食性に優れた亜鉛系合金めっき鋼板の接合方法。
150≧B≧300/A ・・・(1)
但し、Bは片面当たりのめっき付着量[g/m]、Aはめっき成分中のアルミ含有量[質量%]をそれぞれ示す。
(2) 亜鉛系合金めっき鋼板の接合方法において、ステンレス系溶接材料を用いて、めっき成分中のアルミ含有量Aが3質量%以上であり、片面当たりのめっき付着量Bが下記(1)式を満足し、かつ板厚が3mm以下の亜鉛系合金めっき鋼板を溶接入熱量Pが下記(2)式を満足する溶接入熱でアークスポット溶接することを特徴とする接合部の耐食性に優れた亜鉛系合金めっき鋼板の接合方法。
150≧B≧300/A ・・・(1)
P[kJ]=I×E×t/1000≦1.5×T ・・・(2)
但し、Bは片面当たりのめっき付着量[g/m]、Aはめっき成分中のアルミ含有量[質量%]、Iは溶接電流値[A]、Eはアーク電圧値[V]、tは溶接時間[s]、Tは亜鉛系合金めっき鋼板の板厚[mm]をそれぞれ示す。
(3) 亜鉛系合金めっき鋼板の接合方法において、銅合金接合材料を用いて、めっき成分中のアルミ含有量Aが6質量%以上であり、かつ片面当たりのめっき付着量Bが下記(3)式を満足する亜鉛系合金めっき鋼板をろう付け接合することを特徴とする接合部の耐食性に優れた亜鉛系合金めっき鋼板の接合方法。
B≧300/A ・・・(3)
但し、Bは片面当たりのめっき付着量[g/m]、Aはめっき成分中のアルミ含有量[質量%]をそれぞれ示す。
(4) 前記亜鉛系合金めっきがZn−Al系合金めっき、Zn−Al−Mg系合金めっき、および、Zn−Al−Mg−Si系合金めっきの何れかであることを特徴とする上記(1)〜(3)項の何れかに記載の接合部の耐食性に優れた亜鉛系合金めっき鋼板の接合方法。
本発明によれば、亜鉛系合金めっき鋼板をステンレスまたは銅合金の接合材料を用いて亜鉛系合金めっき鋼板を接合する際に、接合部での異種金属接触腐食を防止し、耐食性に優れた溶接部を有する溶接継手を提供することができる。
したがって、本発明の亜鉛系合金めっき鋼板の溶接継手を建築や自動車分野などの溶接構造部材に適用することにより、耐久性や安全性を従来に比べ向上できるため、本発明の産業上にもたらす貢献は多大なものである。
以下に本発明の詳細について説明する。
ステンレスまたは銅合金の接合材料を用いて亜鉛系合金めっき鋼板を接合する場合には、接合部においてステンレスまたは銅合金と亜鉛系合金めっきとの異種金属接触腐食が生じるため、従来、これらの接合材料を用いて亜鉛系合金めっき鋼板を接合することは試みられなかった。
そこで、本発明者らは、亜鉛系合金めっき鋼板のめっき成分組成を変えて、ステンレスまたは銅合金の接合材料を用いて亜鉛系合金めっき鋼板を接合し、接合部の異種金属接触腐食の発生形態を詳細に調査検討した。
図1は、亜鉛系合金めっき鋼板の接合試験体を示す模式図を示す。
図1に示す溶接試験体は、Ni:12%、Cr:24%を含有する309系のフラックス入りステンレス溶接材料(JIS Z 3323 YF309LC相当)を用いて板厚2mmの亜鉛系合金めっき鋼板1をアーク溶接法にて隅肉溶接2をすることで作製した。供試材は、SS400鋼を母材鋼板とし、その表面に付着量90g/mで亜鉛系合金めっき成分系が異なる亜鉛系合金めっきが施された亜鉛系合金めっき鋼板を用いた。溶接条件は、溶接電流I:140A、溶接電圧E:19V、溶接速度v:60cm/minとし、シールドガスに炭酸ガスを用いた。接合部の耐食性の評価はJASOに基づく複合サイクル腐食試験にて行い、溶接金属および溶接止端部の熱影響部の錆び発生状況を評価した。複合サイクル腐食試験は塩水噴霧(5%NaCl)を35℃で2時間、乾燥(湿度30%)を60℃で4時間、湿潤(湿度95%)を50℃で2時間を1サイクルとし50サイクル繰り返した状態での赤錆発生状況を評価した。
図2にめっき中のAl含有量が異なる2種の亜鉛系合金めっき鋼板をそれぞれステンレス接合材料を用いて溶接した場合の溶接止端部周囲の模式図を示す。
一般の亜鉛めっき鋼板をステンレス接合材料を用いて溶接した場合(図2(a)、参照)は、熱影響部3は溶接時の入熱により亜鉛めっき5中の亜鉛成分が蒸発し、溶接止端近傍に母材界面に亜鉛めっきが存在しない亜鉛めっき消失部5が形成される。これに対して、Zn中にAlを11%含有するZn−Al系合金めっき鋼板を用いた場合(図2(b)、参照)は、熱影響部3は溶接時の入熱により亜鉛めっき5中の亜鉛成分は蒸発するものの、亜鉛に比べ融点(沸点)が高いアルミ成分6は蒸発せずに残存し、溶接止端部近傍に凝縮する。
また、本発者らは、溶接止端部近傍の残存めっきの成分分析により溶接止端部近傍に残存したアルミ成分6は酸化物として存在していることを確認した。これらから、Zn−Al系合金めっき鋼板を用いる場合(図2(a)、参照)には、溶接止端部近傍の残存したAl酸化物が、溶接止端部近傍の母材界面の保護層として作用するとともに、ステンレス溶接金属と亜鉛系合金めっき間の絶縁体として作用し、耐食性の向上および異種金属接触腐食の抑制効果が期待できる。
図3は、ステンレス溶接材料を用いて接合する場合の亜鉛系合金めっき鋼板のめっき付着量及びめっき成分中のアルミ含有量と接合部の耐食性との関係を示す。
なお、ステンレス溶接材料、溶接方法及び条件、腐食性評価は上述した図1の溶接試験体を作製した条件と同じである。
図3から、亜鉛系合金めっき鋼板のめっき成分中のアルミ含有量Aが3%以上で、かつ、めっき付着量Bが下記(1)式の関係を満足する条件で溶接止端部近傍における異種金属接触腐食の抑制され、溶接金属および母材熱影響部共に優れた耐食性が得られる。
150≧B≧300/A ・・・(1)
但し、Bは片面当たりのめっき付着量[g/m]、Aはめっき成分中のアルミ含有量[質量%]をそれぞれ示す。
上記条件において溶接止端部に残存したアルミが強固な不働態酸化被膜を形成し、かつステンレス溶接金属と亜鉛系合金めっきとの異種金属間の絶縁体として作用することにより異種金属接触腐食(めっき成分の溶出)を抑制し、その結果、特に溶接止端部の耐食性を向上させたと考えられる。
一方、めっき成分中のアルミ含有量Aが3%未満の条件、または、めっき付着量Bが(300/A)[g/m]未満の条件では、特に、溶接止端部近傍の母材熱影響部において耐食性が低下し赤錆が発生する。
また、めっき付着量が200[g/m]を超える条件では、溶接時に多量のめっき蒸気が発生することによりブローホール欠陥やスパッタが多発した。
以上から、本発明では、ステンレス系溶接材料を用いて溶接する場合に、特に溶接止端部の異種金属接触腐食を抑制し、耐食性を向上するために、亜鉛系合金めっき鋼板のめっき成分中のアルミ含有量Aを3質量%以上とし、かつ片面当たりのめっき付着量Bが上記(1)式を満足させる。
なお、本発明において、ステンレス系溶接材料としては、例えば、309系ステンレス溶接材料(ステンレスと軟鋼の溶接用)や329系ステンレス溶接材料(2相ステンレス用)等を用いることができる。
本発明において、ステンレス系溶接材料を用いて亜鉛系合金めっき鋼板を連続でアーク溶接する場合には、亜鉛系合金めっき鋼板の板厚が3mm以下の薄い条件では、溶接時の入熱により接合部の鋼板裏面の亜鉛系合金めっきが蒸発し、めっきの損傷が生じ、鋼板裏面の耐食性の劣化を招くことがある。
一般に、鋼板表面(溶接側)と鋼板裏面では腐食環境が異なり、例えば、角鋼管の溶接部のように裏面側が閉空間となる場合は耐食性の劣化が問題とならない場合もある。しかしながら、裏面側が厳しい腐食環境に曝される場合を想定すると、鋼板裏面の耐食性を確保することが好ましい。
そこで、発明者者らは、接合部の鋼板裏面のめっき損傷が問題となる板厚が3mm以下の亜鉛系合金めっき鋼板1を用いて、図4に示すようにアークスポット溶接(アーク溶接による点付け溶接)8を行い、種々の溶接入熱条件で図5に示す接合部の鋼板裏面におけるめっき損傷部(めっき蒸発範囲)9の損傷度合いを評価した。
なお、損傷部(めっき蒸発範囲)9の損傷度合いの評価は、図5に示すように、損傷部(めっき蒸発範囲)9を目視で観察し、損傷部(めっき蒸発範囲)9の最大長さ10が3mm以上の場合を不良(×)、3mm未満を良好(○)と判断した。
損傷部(めっき蒸発範囲)の損傷度合いが良好(○)とした損傷部の最大長さが3mm以下の場合は、亜鉛系合金めっきによる犠牲防食効果、すなわち、鋼板母材母材よりもイオン化傾向の大きい亜鉛を溶出させることによってめっき蒸発部の鋼板母材の腐食を抑制し、耐食性を良好に確保できる。なお、鋼板と亜鉛の接触電位差(0.3V程度)は、ステンレスおよび銅合金と亜鉛の接触電位差(0.6〜0.8V程度)よりも小さいため、本願発明の課題である異種金属接触腐食は問題にならない。
図6に、ステンレス溶接材料を用いてアーク溶接する場合の溶接入熱及び鋼板板厚と接合部の鋼板裏面におけるめっき損傷度合いとの関係を示す。
ステンレス溶接材料は309系ステンレス溶接ワイヤを用い、溶接電流Iが140〜180A、アーク電圧Eが18〜22V、溶接時間tが0.8〜5秒の範囲で下記(2)式で定義される溶接入熱量Pを変化させ、溶接部の鋼板裏面におけるめっき損傷部の損傷度合い(めっき蒸発範囲)を評価した。
P[kJ]=I×E×t/100 ・・・(2)
但し、Iは溶接電流値[A]、Eはアーク電圧値[V]、tは溶接時間[s]を示す。
図6から、上記(2)式で定義される溶接熱量P(kJ)が、亜鉛系合金めっき鋼板の板厚Tとの関係で、下記(2)’式を満足する条件で、溶接部の鋼板裏面のめっき損傷度合い(めっき蒸発範囲)を3mm以下に抑制し、良好な耐食性を確保することが可能となる。
P[kJ]=I×E×t/100≦1.5T ・・・(2)’
但し、I[A]は溶接電流値、E[V]は溶接電圧値、t[s]は溶接時間、T[mm]は亜鉛系合金めっき鋼板の板厚をそれぞれ示す。
したがって、本発明では、板厚が3mm以下の亜鉛系合金めっき鋼板をアーク溶接する場合に、接合部の鋼板裏面のめっき損傷を抑制し、良好な耐食性を確保するために、溶接入熱量Pを上記(2)’式 満足するように規定する。
本発明では、上記実施形態の他の実施形態として、上記ステンレス系溶接材料と同様に耐食性に優れた銅合金材料を用いて亜鉛系合金めっき鋼板を接合することができる。
銅合金材料を用いて亜鉛系合金めっき鋼板を接合する場合は、銅合金の融点がステンレス溶接材料に比較して低いため、溶接入熱の6割程度の低い入熱条件で、鋼板母材はほとんど溶けないロウ付け接合が可能となる。
銅合金材料を用いて亜鉛系合金めっき鋼板を接合する場合も、通常のアーク溶接と同様に、銅合金接合材料と亜鉛系合金めっき鋼板の接合部との間でアークを発生させ、その熱エネルギーで銅合金接合材料を溶融させロウ付けを行うことで図1に示す接合試験体を作製できる。
銅合金接合材料を用いたロウ付け接合では、ステンレス系溶接材料を用いた接合に比べ、入熱が低いため接合時のめっき蒸気発生による接合不安定やスパッタ発生の問題はなくなる。しかし、ステンレス系溶接材料を用いた接合と同様に接合部における銅合金接合金属と亜鉛系合金めっきとの異種金属接触腐食の発生を抑制するため、亜鉛系合金めっき鋼板のめっき成分中のアルミ含有量とめっき付着量を同様に規定する必要がある。
図7は、銅合金接合材料を用いて接合する場合の亜鉛系合金めっき鋼板のめっき付着量及びめっき成分中のアルミ含有量と接合部の耐食性との関係を示す。
銅合金接合材料はSiを3%含有する珪素青銅のワイヤ(JIS Z3341 YCuSiB相当)とした。
なお、本発明において、銅合金接合材料は他の銅合金としてAlを7〜11%およびNiを0.5〜5%含有するアルミ青銅のワイヤも適用可能である。
銅合金の接合金属は、ステンレス溶接金属に比べて、亜鉛系合金めっきとの異種金属接触腐食が発生しやすい傾向にあり、耐食性を充分に向上するにはめっき成分中のアルミ含有量Aを6%以上とする必要がある。
図7から、亜鉛系合金めっき鋼板のめっき成分中のアルミ含有量Aが6%以上で、かつ、めっき付着量Bが下記(3)式の関係を満足する条件で溶接止端部近傍における異種金属接触腐食の抑制され、溶接金属および母材熱影響部共に優れた耐食性が得られる。なお、銅合金接合材料を用いたロウ付け接合では、溶接時に比べ入熱が低いため接合時のめっき蒸気発生による接合不安定は生じないため、めっき付着量Bの上限を特に限定する必要はない。
B≧300/A ・・・(3)
但し、Bは片面当たりのめっき付着量 [g/m]、Aはめっき成分中のアルミ含有量[質量%]をそれぞれ示す。
本発明で規定する上記含有範囲でAlを含有する亜鉛系合金めっき鋼板としては、Zn−Al系合金めっき、Zn−Al−Mg系合金めっき、および、Zn−Al−Mg−Si系合金めっきの何れかが鋼板表面に施された亜鉛系合金めっき鋼板が挙げられる。Zn−Al系合金めっきでは、Al:0.18〜5%を含有し、さらに、Mg:0.01〜0.5%、La:0.001〜0.5%、および、Ce:0.001〜0.5%のうちのいずれか1種または2種以上を含有し、残部がZnからなり、Zn−Al−Mg系合金めっきでは、Al:2〜19%、Mg:0.5〜10%、残部Znからなるめっきからなり、Zn−Al−Mg−Si系合金めっきでは、Al:2〜19%、Mg:0.5〜10%、Si:0.01〜2%、残部Znからなるめっきが一般に用いられるが、本発明ではこれらのめっき成分組成に限定されるものではない。
本発明の効果について以下の実施例に基づいて具体的に説明する。
SS400鋼を母材とし、表1に示すめっき中のAl含有量、片面当たりめっき付着量で、Zn−Al系合金めっき(A、B、F、G)、Zn−Al−Mg系合金めっき(C)、Zn−Al−Mg−Si系合金めっき(D、E)、Znめっき(H)が表面に施された亜鉛系合金めっき鋼板を、表2に示す接合材料及び接合条件で接合継手を作製した。接合継手の形状は、図8に示すように、(a)隅肉継手、(b)重ね隅肉継手、および(c)拝み継手とした。
表1において、接合材料としてステンレス系溶接材料を用いる場合は、A〜Eは、めっき中のAl含有量およびめっき付着量が本発明で規定する範囲を満足する発明例に相当する亜鉛系合金めっき鋼板であり、F〜Hは、めっき中のAl含有量およびめっき付着量が本発明で規定する範囲から外れた比較例に相当する亜鉛系合金めっき鋼板である。また、接合材料として銅合金接合材料を用いる場合は、B〜Eは、めっき中のAl含有量およびめっき付着量が本発明で規定する範囲を満足する発明例に相当する亜鉛系合金めっき鋼板であり、A、F〜Hは、めっき中のAl含有量およびめっき付着量が本発明で規定する範囲から外れた比較例に相当する亜鉛系合金めっき鋼板である。なお、Hはめっき中にAlを含有しない通常の亜鉛めっき鋼板である。
Figure 2006035294
表2において、S1の接合材料はNi:12%、Cr:24%を含有する309系フラックス入りステンレスワイヤであり、C1の接合材料はSi:3%を含有する珪素青銅の銅合金ワイヤ、S2の接合材料はAlを9%含有するアルミ青銅の銅合金ワイヤ、F1の接合材料はSi−Mn鋼用溶接ワイヤ(YGW12)であり、いずれもワイヤ径が1.2mmφのものを用いた。なお、S1、C1、S2の接合材料は本発明で規定するステンレス系溶接材料および銅合金接合材料に相当し、F1の接合材料は本発明の規定対象外の普通鋼用接合材料に相当する。
Figure 2006035294
表3に各接合継ぎ手を作製する際の接合条件および溶接部の耐食性評価結果を示す。
Figure 2006035294
表3に示される点付け溶接の場合の接合入熱量は、入熱量:P[kJ]=I×E×t/1000[kJ]と定義する。
溶接部の耐食性評価はJASOの複合サイクル腐食試験を実施し、溶接金属、接合止端部(接合金属とめっきが接触する母材熱影響部)、接合部の鋼板裏面熱影響部の錆び発生状況を評価した。複合サイクル腐食試験を50サイクルは、塩水噴霧(5%NaCl)を35℃で2時間、乾燥(湿度30%)を60℃で4時間、湿潤(湿度95%)を50℃で2時間を1サイクルとし繰り返した状態での赤錆発生状況を評価した。
表3において、No.1〜6はステンレス系溶接材料を用いて溶接した本発明例であり、No.2は板厚が4mmの亜鉛系合金めっきを連続溶接し、No.1および3〜6は板厚が1.2〜3mmの亜鉛系合金めっきを点付け(スポット)溶接した。何れの場合もステンレス系溶接材料を用いる場合の亜鉛系合金めっきの板厚、めっき成分中のアルミ含有量(3%以上)およびめっき付着量が本発明規定範囲内であるため、接合金属および接合止端部におけるステンレス接合金属と亜鉛系合金めっきとの異種金属接触腐食、溶接部の鋼板裏面熱影響部のめっき損傷に起因する耐食性低下は抑制され、すべての耐食性評価は良好であった。
また、No.7〜10は、銅合金接合材料を用いて板厚が1.2〜4mmの亜鉛系合金めっき鋼板をろう付け接合(連続)した本発明例である。何れの場合も銅合金接合材料を用いる場合のめっき成分中のアルミ含有量(6%以上)およびめっき付着量が本発明規定範囲内であるため、接合金属および接合止端部における銅合金接合金属と亜鉛系合金めっきとの異種金属接触腐食は抑制され、耐食性評価は良好であった。また、ろう付け接合の入熱量は溶接に比べて低いため、連続接合においても溶接部の鋼板裏面熱影響部のめっき損傷は発生せず、鋼板裏面熱影響部の耐食性評価は良好であった。
一方、No.11〜No.17は本発明で規定する範囲から外れた比較例を示す。
No.11〜14はステンレス系溶接材料を用いて亜鉛系合金めっき鋼板を溶接した例である。
No.11および12は、ステンレス系溶接材料を用いる場合のめっき成分中のアルミ含有量(3%以上)およびめっき付着量が本発明規定範囲内であるため、接合金属および接合止端部におけるステンレス接合金属と亜鉛系合金めっきとの異種金属接触腐食は抑制され、耐食性評価は良好であった。しかし、No.11は板厚1.6mmの亜鉛系合金めっき鋼板を点付け溶接する際の接合入熱条件が本発明で規定する範囲から高く外れ、No.12は、板厚1.2mmの亜鉛系合金めっき鋼板を連続溶接したため、いずれも、溶接部の鋼板裏面熱影響部のめっき損傷が発生し、鋼板裏面熱影響部に赤錆が発生し、耐食性評価は不良となった。
No.13およびNo.14は、ステンレス系溶接材料を用いて板厚が2mmの亜鉛系合金めっき鋼板を点付け溶接する際に接合入熱条件が本発明で規定する範囲内であるため、いずれも、溶接部の鋼板裏面熱影響部のめっき損傷は抑制され、鋼板裏面熱影響部の耐食性評価は良好である。しかし、めっき付着量が本発明規定範囲から低く外れるため、接合止端部におけるステンレス接合金属と亜鉛系合金めっきとの異種金属接触腐食が発生し、局所的にめっきが溶出し、耐食性評価は不好であった。
No.15および16は、銅合金接合材料を用いて板厚が2mmの亜鉛系合金めっき鋼板をろう付け接合(連続)した比較例である。
No.15は、銅合金接合材料を用いる場合のめっき成分中のアルミ含有量(6%以上)が本発明規定範囲から低く外れるため、接合止端部における銅合金接合金属と亜鉛系合金めっきとの異種金属接触腐食が発生し、局所的にめっきが溶出し、耐食性評価は不好であった。
No.16は、銅合金接合材料を用いる場合のめっき付着量が本発明規定範囲から低く外れるため、接合止端部における銅合金接合金属と亜鉛系合金めっきとの異種金属接触腐食が発生し、局所的にめっきが溶出し、耐食性評価は不良であった。
No.17は、軟鋼用接合材料を用いて板厚が4mmの亜鉛系合金めっき鋼板を連続溶接した比較例であり、接合材料が本発明で規定するステンレス接合材料および銅合金接合材料のいずれでもないため、接合金属および接合止端部に赤錆が発生し、耐食性評価は不良であった。
亜鉛系合金めっき鋼板の接合試験体を示す図である。 めっき中のAl含有量が異なる2種の亜鉛系合金めっき鋼板をそれぞれをステンレス系溶接材料用いて溶接した場合の溶接止端部周囲を示す図である。(a)は一般のZnめっき鋼板を用いた場合、(b)はZn−Al系合金めっき鋼板を用いた場合を示す。 ステンレス溶接材料を用いて接合する場合の亜鉛系合金めっき鋼板のめっき付着量及びめっき成分中のアルミ含有量と接合部の耐食性との関係を示す図である。 点付け溶接(アークスポット)溶接の例を示す図である。 点付け溶接における鋼板裏面の熱影響部のめっき蒸発状況を示す図である。 ステンレス溶接材料を用いてアークスポット溶接する場合の溶接入熱及び鋼板板厚と接合部の鋼板裏面におけるめっき損傷度合いとの関係を示す図である。 銅合金接合材料を用いて接合する場合の亜鉛系合金めっき鋼板のめっき付着量及びめっき成分中のアルミ含有量と接合部の耐食性との関係を示すを示す図である。 溶接継手の例を示す図である。(a)隅肉溶接継手、(b)重ね隅肉溶接継手、(c)拝み継手を示す。
符号の説明
1:亜鉛系合金めっき鋼板
2:隅肉溶接部(溶接金属)
3:熱影響部
4:溶接始端部のめっき損傷範囲
5:亜鉛めっき消失部
6:溶接止端部に残存するアルミ成分
7:亜鉛系合金めっき(熱影響を受けない領域)
8:点付け溶接部
9:点付け溶接部の鋼板裏面のめっき損傷部(めっき蒸発範囲)
10:めっき損傷部(めっき蒸発範囲)の最大長さ
11:溶接線

Claims (4)

  1. 亜鉛系合金めっき鋼板の接合方法において、ステンレス系溶接材料を用いて、めっき成分中のアルミ含有量Aが3質量%以上であり、片面当たりのめっき付着量Bが下記(1)式を満足し、かつ板厚が3mmを超える亜鉛系合金めっき鋼板をアーク溶接することを特徴とする接合部の耐食性に優れた亜鉛系合金めっき鋼板の接合方法。
    150≧B≧300/A ・・・(1)
    但し、Bは片面当たりのめっき付着量[g/m2]、Aはめっき成分中のアルミ含有量[質量%]をそれぞれ示す。
  2. 亜鉛系合金めっき鋼板の接合方法において、ステンレス系溶接材料を用いて、めっき成分中のアルミ含有量Aが3質量%以上であり、片面当たりのめっき付着量Bが下記(1)式を満足し、かつ板厚が3mm以下の亜鉛系合金めっき鋼板を溶接入熱量Pが下記(2)式を満足する溶接入熱でアークスポット溶接することを特徴とする接合部の耐食性に優れた亜鉛系合金めっき鋼板の接合方法。
    150≧B≧300/A ・・・(1)
    P[kJ]=I×E×t/1000≦1.5×T2 ・・・(2)
    但し、Bは片面当たりのめっき付着量[g/m2]、Aはめっき成分中のアルミ含有量[質量%]、Iは溶接電流値[A]、Eはアーク電圧値[V]、tは溶接時間[s]、Tは亜鉛系合金めっき鋼板の板厚[mm]をそれぞれ示す。
  3. 亜鉛系合金めっき鋼板の接合方法において、銅合金接合材料を用いて、めっき成分中のアルミ含有量Aが6質量%以上であり、かつ片面当たりのめっき付着量Bが下記(3)式を満足する亜鉛系合金めっき鋼板をろう付け接合することを特徴とする接合部の耐食性に優れた亜鉛系合金めっき鋼板の接合方法。
    B≧300/A ・・・(3)
    但し、Bは片面当たりのめっき付着量[g/m2]、Aはめっき成分中のアルミ含有量[質量%]をそれぞれ示す。
  4. 前記亜鉛系合金めっきがZn−Al系合金めっき、Zn−Al−Mg系合金めっき、および、Zn−Al−Mg−Si系合金めっきの何れかであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の接合部の耐食性に優れた亜鉛系合金めっき鋼板の接合方法。
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