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JP2006065038A - 光学部材及びその製造方法 - Google Patents

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JP2006065038A JP2004248284A JP2004248284A JP2006065038A JP 2006065038 A JP2006065038 A JP 2006065038A JP 2004248284 A JP2004248284 A JP 2004248284A JP 2004248284 A JP2004248284 A JP 2004248284A JP 2006065038 A JP2006065038 A JP 2006065038A
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Abstract

【課題】 耐擦傷性及び撥水性の耐久性により優れた光学部材及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 プラスチック基材と、このプラスチック基材上に真空蒸着法で形成された多層反射防止膜と、この多層反射防止膜上に形成された撥水層とを有する光学部材であって、前記多層反射防止膜の最外層が、二酸化ケイ素を含有する無機物質と、有機ケイ素化合物及び/又はケイ素非含有有機化合物とを蒸着原料として真空蒸着法で形成され、かつ酸素及び/又はアルゴンイオンが照射されてなるハイブリッド層であり、前記撥水層が、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物を含む撥水原料が電子銃による加熱処理で、前記最外層に蒸着されてなる層である光学部材である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、特に耐擦傷性及び撥水性の耐久性に優れた光学部材及びその製造方法に関する。
プラスチックを基板とする撥水性及び撥水性の耐久性に優れた光学部材として、プラスチック基材と、二酸化ケイ素からなる層を最外層とする多層反射防止膜と、多層反射防止膜上に電子銃を用いて、真空蒸着法により、フッ素置換アルキル基を含有する有機ケイ素化合物を積層した撥水層からなる光学部材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
ところで、従来、光学部材の耐擦傷性を評価する方法として、スチールウールテストが用いられてきた。しかし、スチールウールテストは、数値で評価できるものではないため、耐擦傷性を評価する方法として、近年ベイヤー(Bayer)試験が採用され始めている。その影響により、特許文献1に開示されたプラスチックを基板とする光学部材より、さらに、耐擦傷性及び撥水性の耐久性に優れた光学部材の提供が望まれていた。
欧州公開第1306695号公報
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、耐擦傷性及び撥水性の耐久性により優れた光学部材及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、プラスチック基材上に、真空蒸着法によって形成される多層反射防止膜において、この反射防止膜の最外層を二酸化ケイ素を含有する無機物質と、特定の有機化合物とを蒸着原料で形成すると共に、酸素イオン及び/又はアルゴンイオンを照射し、その後、電子銃による加熱処理で、撥水原料を前記最外層に積層させることにより、撥水性及び撥水性の耐久性の性能を維持させて、耐擦傷性を向上させることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の光学部材は、プラスチック基材と、このプラスチック基材上に真空蒸着法で形成された多層反射防止膜と、この多層反射防止膜上に形成された撥水層とを有する光学部材であって、
前記多層反射防止膜の最外層が、二酸化ケイ素を含有する無機物質と、有機ケイ素化合物及び/又はケイ素非含有有機化合物とを蒸着原料として真空蒸着法で形成され、かつ酸素及び/又はアルゴンイオンが照射されてなるハイブリッド層であり、
前記撥水層が、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物を含む撥水原料が電子銃による加熱処理で、前記最外層に蒸着されてなる層である光学部材である。
また、本発明の光学部材の製造方法は、プラスチック基材と、このプラスチック基材上に真空蒸着法で形成された多層反射防止膜と、この多層反射防止膜上に形成された撥水層とを有する光学部材の製造方法であって、
前記多層反射防止膜の最外層を、二酸化ケイ素を含有する無機物質と、有機ケイ素化合物及び/又はケイ素非含有有機化合物とを蒸着原料として真空蒸着法で形成する工程と、
前記最外層を形成した後、該最外層に酸素及び/又はアルゴンイオンを照射する工程と、
フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物を含む撥水原料を電子銃による加熱処理で、前記最外層に蒸着して撥水層を形成する工程とを有する製造方法である。
本発明によれば、耐擦傷性及び撥水性の耐久性により優れた光学部材を得ることができる。
以下、本発明に関し詳述する。
本発明で使用するプラスチック基材の材質は、特に限定されず、例えば、メチルメタクリレート単独重合体、メチルメタクリレートと1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート単独重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする共重合体、イオウ含有共重合体、ハロゲン含有共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリチオウレタン、エピチオ基を有する化合物を原料とする重合体などを挙げることができる。
エピチオ基を有する化合物の例としては、ビス(β−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−(β−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−3−(β−エピチオプロピルチオメチル)ブタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ペンタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)ペンタン、1,6−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−5−(β−エピチオプロピルチオメチル)ヘキサン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオ〕エタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−[〔2−(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオエチル〕チオ]エタン等の鎖状有機化合物等が挙げられる。
また、テトラキス(β−エピチオプロピルチオメチル)メタン、1,1,1−トリス(β−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2,2−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−4−チアヘキサン、1,5,6−トリス(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアヘキサン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,5ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,4,5−トリス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,9−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5−(β−エピチオプロピルチオメチル)−5−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオメチル〕−3,7−ジチアノナン、1,10−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,6−ビス〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオ〕−3,6,9−トリチアデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,8−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,7−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,7−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオメチル〕−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,7−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン等の分岐状有機化合物及びこれらの化合物中のエピスルフィド基の水素の少なくとも1個がメチル基で置換された化合物等が挙げられる。
さらには1,3及び1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3及び1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕メタン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕スルフィド、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオエチルチオメチル)−1,4−ジチアン等の環状脂肪族有機化合物及びこれらの化合物のエピスルフィド基の水素の少なくとも1個がメチル基で置換された化合物、及び1,3及び1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3及び1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕スルフォン、4,4’−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ビフェニル等の芳香族有機化合物及びこれらの化合物のエピスルフィド基の水素の少なくとも1個がメチル基で置換された化合物等が挙げられる。
本発明に係る多層反射防止膜は、前記プラスチック基材上に蒸着法で形成される。プラスチック基材を基準とした、多層反射防止膜の最外層は、二酸化ケイ素を含む無機物質と、有機ケイ素化合物及び/又はケイ素非含有有機化合物を蒸着原料とするハイブリッド層である。このハイブリッド層は、良好な膜強度及び密着性を得るために、イオンアシスト法で形成されることが好ましい。
本発明におけるプラスチック基材上に形成される多層反射防止膜の構成としては、最外層以外の少なくとも1層にもハイブリッド層を用いることが好ましい。
最外層以外のハイブリッド層は、多層反射防止膜中の任意の層に形成できる。また、このハイブリッド層は複数の層への形成も可能である。最外層以外のハイブリッド層の好ましい位置は、特に優れた耐衝撃性を得るために、レンズ基材から最も近い位置である。また、特に優れた密着性を得るために、最外層と同様に、イオンアシスト法で形成されることが好ましい。
イオンアシスト法において、イオン銃の出力に関し好ましい範囲は、特に、良好な反応を得るとの観点から、加速電圧50〜700V、加速電流30〜250mAである。前記イオンアシスト法を実施する際に使用されるイオン化ガスは、成膜中の反応性、酸化防止の点からアルゴン(Ar)又はアルゴンと酸素の混合ガスを用いるのが好ましい。
本発明における、ハイブリッド層に使用される無機物質としては、二酸化ケイ素を含有することが必要であり、その他、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム及び酸化ニオブから選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。複数の無機物質を用いる場合は、それらを物理的に混合してもよいし、また複合酸化物であってもよく、具体的にはSiO2−Al23等がある。これらのうち二酸化ケイ素(SiO2)単独、二酸化ケイ素(SiO2)及び酸化アルミニウム(Al23)から選ばれる少なくとも1種類の無機酸化物が好ましい。
前記多層反射防止膜の最外層以外の膜構成層は、反射防止効果を有すれば特に限定されないが、良好な反射防止効果等の物性を得るため、低屈折率層として、SiO2層、SiO2とAl23との混合層、二酸化ケイ素と、有機ケイ素化合物及び/又はケイ素非含有有機化合物を蒸着原料とするハイブリッド層、二酸化ケイ素と、酸化アルミニウムと、有機ケイ素化合物及び/又はケイ素非含有有機化合物を蒸着原料とするハイブリッド層を有し、高屈折率層として、Nb25層、ZrO2層、Ta25層又はTiO2層を有することが好ましい。
本発明に係るハイブリッド層に使用される有機ケイ素化合物としては、膜厚の制御、蒸着速度の制御の観点から、常温、常圧下で液体状態にある有機ケイ素化合物が望ましく、ケイ素非含有有機化合物も同様の観点から、常温、常圧下で液体であるケイ素非含有有機化合物が望ましい。
前記有機ケイ素化合物としては、例えば、以下の一般式(a)〜(d)のいずれかで表される構造を有することが好ましい。
一般式(a):シラン又はシロキサン化合物
Figure 2006065038
一般式(b):シラザン化合物
Figure 2006065038
一般式(c):シクロシロキサン化合物
Figure 2006065038
一般式(d):シクロシラザン化合物
Figure 2006065038
(一般式(a)〜(d)において、式中のm、nは、それぞれ独立に0以上の整数を表す。また、X1〜X8はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜6の炭化水素基(飽和・不飽和双方を含む)、−OR1基、−CH2OR2基、−COOR3基、−OCOR4基、−SR5基、−CH2SR6基、−NR7 2基又は−CH2NR8 2基(R1〜R8は水素又は炭素数1〜6の炭化水素基(炭素原子間の結合において飽和・不飽和双方を含む))。
X1〜X8は上記の任意の官能基であればよく、すべて同じ官能基でもよいし、一部又はすべてがそれぞれ異なるものでもよく限定されない。
前記R1〜R8で示される炭素数1〜6の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、フェニル基、シクロヘキシル基、プロピニル基、イソプロペニル基等が挙げられる。
一般式(a)で表せる具体的な化合物としては、トリメチルシラノール、ジエチルシラン、ジメチルエトキシシラン、ヒドロキシメチルトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、メルカプトメチルトリメチルシラン、アミノメチルトリメチルシラン、ジメチルジメチルアミノシラン、エチニルトリメチルシラン、ジアセトキシメチルシラン、アリルジメチルシラン、トリメチルビニルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、アセトキシトリメチルシラン、トリメトキシビニルシラン、ジエチルメチルシラン、エチルトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、ジエトキシメチルシラン、エチルトリメトキシシラン、ジメチルアミノトリメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、フェニルシラン、ジメチルジビニルシラン、2-プロピニロキシトリメチルシラン、ジメチルエトキシエチニルシラン、ジアセトキシジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、アリロキシトリメチルシラン、エトキシジメチルビニルシラン、イソプロペノキシトリメチルシラン、アリルアミノトリメチルシラン、トリメチルプロピルシラン、トリメチルイソプロピルシラン、トリエチルシラン、ジエチルジメチルシラン、ブチルジメチルシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、トリエチルシラノール、ジエトキシジメチルシラン、プロピルトリメトキシシラン、ジエチルアミノジメチルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、トリ(ジメチルアミノ)シラン、メチルフェニルシラン、メチルトリビニルシラン、ジアセトキシメチルビニルシラン、メチルトリアセトキシシラン、アリロキシジメチルビニルシラン、ジエチルメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ブチルジメチルヒドロキシメチルシラン、1-メチルプロポキシトリメチルシラン、イソブトキシトリメチルシラン、ブトキシトリメチルシラン、ブチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソプロピルアミノメチルトリメチルシラン、ジエチルアミノトリメチルシラン、メチルトリ(ジメチルアミノ)シラン、ジメチルフェニルシラン、テトラビニルシラン、トリアセトキシビニルシラン、テトラアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、1,1-ジメチルプロピニロキシトリメチルシラン、ジエトキシジビニルシラン、ブチルジメチルビニルシラン、ジメチルイソブトキシビニルシラン、アセトキシトリエチルシラン、トリエトキシビニルシラン、テトラエチルシラン、ジメチルジプロピルシラン、ジエトキシジエチルシラン、ジメチルジプロポキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルフェニルビニルシラン、フェニルトリメチルシラン、ジメチルヒドロキシメチルフェニルシラン、フェノキシトリメチルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、フェニルトリメトキシシラン、アニリノトリメチルシラン、1-シクロヘキセニロキシトリメチルシラン、シクロヘキシロキシトリメチルシラン、ジメチルイソペンチロキシビニルシラン、アリルトリエトキシシラン、トリプロピルシラン、ブチルジメチル-3-ヒドロキシプロピルシラン、ヘキシロキシトリメチルシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ジメチルフェニルビニルシラン、トリメチルシリルベンゾネート、ジメチルエトキシフェニルシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、メトキシトリプロピルシラン、ジブトキシジメチルシラン、メチルトリプロポキシシラン、ビス(ブチルアミノ)ジメチルシラン、ジビニルメチルフェニルシラン、ジアセトキシメチルフェニルシラン、ジエチルメチルフェニルシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、トリイソプロポキシビニルシラン、2-エチルヘキシロキシトリメチルシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ジフェニルシラン、フェニルトリビニルシラン、トリエチルフェニルシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラアリロキシシラン、フェニルトリ(ジメチルアミノ)シラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、ジフェニルメチルシラン、ジアリルメチルフェニルシラン、ジメチルジフェニルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジフェニルエトキシメチルシラン、トリペンチロキシシラン、ジフェニルジビニルシラン、ジアセトキシジフェニルシラン、ジエチルジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルシラン、テトラブチルシラン、テトラブトキシシラン、トリフェニルシラン、ジアリルジフェニルシラン、トリヘキシルシラン、トリフェノキシビニルシラン、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、ペンタメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3-ジメトキシテトラメチルジシロキサン、1,3-ジエチニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジエトキシテトラメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、1,3-ジブチル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンなどの化合物が挙げられる。
一般式(b)としては、ヘキサメチルジシラザン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、などの化合物が挙げられる。
一般式(c)としてはヘキサメチルシクロトリシロキサン、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘキサエチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどの化合物が挙げられる。
一般式(d)としては1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチルシクロテトラシラザンなどの化合物が挙げられる。
これらの有機ケイ素化合物の数平均分子量は、ハイブリッド層中の有機成分の制御、膜自体の強度の点から、好ましくは、48〜320、特に好ましくは、48〜249である。
次に、前記ハイブリッド層を構成するケイ素非含有有機化合物としては、その側鎖又は末端に反応性基を含有する炭素及び水素を必須成分とするもの、又は二重結合を含むものが好ましく、具体的には一般式(e)〜(g)で表される化合物が好ましく用いられる。
一般式(e):片末端にエポキシ基を有する炭素及び水素を必須成分とするケイ素非含有有機化合物
Figure 2006065038
一般式(f):両末端にエポキシ基を有する炭素及び水素を必須成分とするケイ素非含有有機化合物
Figure 2006065038
一般式(g):二重結合を含む、炭素及び水素を必須成分とするケイ素非含有有機化合物
CX910=CX1112 ・・・(g)
(一般式(e)、(f)において、R9は水素又は酸素を含んでいてもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R10は酸素を含んでいてもよい炭素数1〜7の二価の炭化水素基を示し、一般式(g)において、X9〜X12はそれぞれ水素、炭素数1〜10の炭化水素基又は炭素数1〜10の炭素及び水素を必須成分とする有機基であって、さらに酸素及び窒素の少なくとも一方を必須成分とする有機基を示す)
一般式(e)の化合物の具体例としては、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p-sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、2-メチルオクチルグリシジルエーテル、グリシドール、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
一般式(f)の化合物の具体例としては、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
一般式(g)の具体例としてはビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、メタクリル酸、グリシジルメタクリレート、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。
また、前記一般式(e)〜(g)で表される化合物の数平均分子量は、ハイブリッド層中の有機成分の制御及びハイブリッド層の強度を考慮して、好ましくは、28〜320、特に好ましくは、28〜249である。
本発明に係る反射防止膜における有機ケイ素化合物及び/又はケイ素非含有有機化合物(以下「有機物質」ということがある)の成膜方法としては、図1に示すように、ハイブリッド層を形成する際に、無機物質、有機物質それぞれを別の蒸着源にて同時に蒸着して成膜するのが好ましい。
また、蒸着速度の制御の観点から、有機物質を貯蔵する外部タンクを加熱・減圧して該有機物質をチャンバー内に供給し、酸素ガス及び/又はアルゴンガスを用い上述したイオンアシスト法で成膜するのが好ましい。
また、本発明では有機物質が常温・常圧で液体の場合に、溶媒を使用する必要がなく、直接加熱して蒸着することが好ましい。
有機物質の導入口は、図1に示すよう無機物質蒸発源真上に設けるのが対衝撃性、対摩耗性向上に効果的であり、反射防止膜における有機ケイ素化合物を下部より、ケイ素非含有有機化合物を上部より供給するのが好ましい。
外部タンクの加熱温度は、その有機物質の蒸発温度により異なるが、30〜200℃、好ましくは50〜150℃とすることが適当な蒸着速度を得るという点から好ましい。
本発明におけるハイブリッド層の有機物質の好ましい膜内含有率は、特に良好な物性改質効果が得られる点を考慮して、0.02質量%〜25質量%である。
本発明における多層反射防止膜の好ましい膜厚及び屈折率の範囲は、例えば、以下の通りである。なお、第1層は、プラスチック基材から最も近い層で、第7層が最外層である。λは光の波長を示す。
第1層 0.005λ〜1.25λ 1.41〜1.50
第2層 0.005λ〜0.10λ 2.00〜2.35
第3層 0.005λ〜1.25λ 1.41〜1.50
第4層 0.05λ〜0.45λ 2.00〜2.35
第5層 0.005λ〜0.15λ 1.41〜1.50
第6層 0.05λ〜0.45λ 2.00〜2.35
第7層 0.2λ〜0.29λ 1.41〜1.50
さらに、耐擦傷性の観点から第1層から7層の好ましい組成は以下の通りである。
第1層:常温、常圧下で液体である有機ケイ素化合物及び/又は常温、常圧下で液体であるケイ素非含有有機化合物と、二酸化ケイ素を含有する無機物質とを蒸着原料として形成されるハイブリッド層
第2層:酸化タンタルが第2層を基準にして、少なくとも50質量%含有している層
第3層:常温、常圧下で液体である有機ケイ素化合物及び/又は常温、常圧下で液体であるケイ素非含有有機化合物と、二酸化ケイ素を含有する無機物質とを蒸着原料として形成されるハイブリッド層
第4層:酸化タンタルが第4層を基準にして、少なくとも50質量%含有している層
第5層:常温、常圧下で液体である有機ケイ素化合物及び/又は常温、常圧下で液体であるケイ素非含有有機化合物と、二酸化ケイ素を含有する無機物質とを蒸着原料として形成されるハイブリッド層
第6層:酸化タンタルが第6層を基準にして、少なくとも50質量%含有している層
第7層:常温、常圧下で液体である有機ケイ素化合物及び/又は常温、常圧下で液体であるケイ素非含有有機化合物と、二酸化ケイ素を含有する無機物質とを蒸着原料として形成されるハイブリッド層
上述したイオンアシスト法では、成膜しながら酸素イオン及び/又はアルゴンイオン照射を行うが、本発明での多層反射防止膜の最外層への酸素イオン及び/又はアルゴンイオン照射では、最外層を形成した後、該最外層に酸素イオン及び/又はアルゴンイオン照射を行う。上述した最外層の構成、酸素イオン及び/又はアルゴンイオン照射と、後述する撥水層との組み合わせにより、高い耐擦傷性、撥水性及び撥水性の耐久性を有するレンズが得られる。
かかる酸素イオン及び/又はアルゴンイオンは、ガス状にして照射することが望ましい。良好な物性を得るための、イオン銃の出力条件は、加速電圧50〜700V、加速電流30〜250mAである。酸素イオン及び/又はアルゴンイオンの照射は、酸化防止の観点からアルゴン又はアルゴンと酸素の混合ガスを用いるのが好ましい。また、好ましいアルゴンと酸素との混合ガスの割合の範囲は、(10:0) 〜 (5:5)である。最外層への好ましい照射時間は、通常5〜80秒程度、好ましくは10秒以上、さらに好ましい照射時間は20秒以上、特に好ましい照射時間は30秒以上である。
撥水層は、前記反射防止膜の最外層上に設けられ、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物を原料として形成される。その原料及び形成方法は、欧州公開1351071号公報に記載されている原料及び方法が好ましい。その方法としては、溶媒で希釈したフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物を減圧下、該有機ケイ素化合物の蒸着開始温度以上から該有機ケイ素化合物の分解温度を超えない範囲で、加熱開始から蒸着を90秒以内、好ましくは50秒以内、より好ましくは10秒以内に完結させることが好ましい。かかる蒸着時間を達成する方法としては、前記有機ケイ素化合物に電子ビームを照射する方法が好ましく用いられる。かかる撥水層の原料としてケイ素非含有のオイルを含有してもよく、また、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物を原料とした層の上にケイ素非含有のオイルを原料とする層を形成して2層構成にしてもよい。
フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物としては、下記一般式(h)で表されるもの又は下記単位式(i)で表されるものが好ましい。
Figure 2006065038
(式中、Rfは炭素数1〜16の直鎖状のパーフルオロアルキル基、Xは水素又は炭素数1〜5の低級アルキル基、R11は加水分解可能な基、kは1〜50の整数、rは0〜2の整数、pは1〜10の整数)
q2q+1CH2CH2Si(NH23 ・・・(i)
(ただし、qは1以上の整数である)
ここで、上記R11で示される加水分解可能な基としてはアミノ基、アルコキシ基、特にアルキル部が炭素数1〜2であるアルコキシ基、塩素原子等が挙げられる。
また、上記式(i)で表される化合物の具体例としては、n−CF3CH2CH2Si(NH2)3;n−トリフロロ(1,1,2,2-テトラヒドロ)プロピルシラザン、n−C3F7CH2CH2Si(NH2)3;n−ヘプタフロロ(1,1,2,2-テトラヒドロ)ペンチルシラザン、n−C4F9CH2CH2Si(NH2)3;n−ノナフロロ(1,1,2,2-テトラヒドロ)ヘキシルシラザン、n−C6F13CH2CH2Si(NH2)3;n−トリデオフロロ(1,1,2,2-テトラヒドロ)オクチルシラザン、n−C8F17CH2CH2Si(NH2)3;n−ヘプタデカフロロ(1,1,2,2-テトラヒドロ)デシルシラザン等を例示することができる。
また、撥水層の原料として、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物と、ケイ素非含有のパーフルオロポリエーテルとの2成分を主成分とする原料を用いることもでき、さらにはこれらの原料からなる第1層を形成し、該第1層上に接して、ケイ素非含有のパーフルオロポリエーテルを主成分とする原料を用いて第2層を形成することにより、撥水層を形成することも好適である。
ケイ素非含有のパーフルオロポリエーテルは、ケイ素を含有しない以下の構造式(j)
−(R12O)− ・・・(j)
(式中、R12は炭素数1〜3のパーフルオロアルキレン基である)
で表される単位からなるものが好ましく用いられ、平均分子量が1000〜10000、特に2000〜10000のものが好ましい。R12は炭素数1〜3のパーフルオロアルキレン基であり、具体的にはCF2,CF2−CF2,CF2CF2CF2,CF(CF3)CF2等の基が挙げられる。これらのパーフルオロポリエーテルは常温で液状であり、いわゆるフッ素オイルと称されるものである。
本発明の光学部材は、反射防止膜の下に、密着性を向上させるために、下地層として、ハイブリッド層形成の際に触媒作用のある金属、例えば、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、白金(Pt)、ニオブ(Nb)及びチタン(Ti)から選ばれる少なくとも1種からなる層を形成することができる。特に好ましい下地層は、より良好な耐衝撃性を付与できるとの観点から、ニオブからなる金属層である。
上述した金属層を下地層として用いた場合、通常、光学部材の耐衝撃性が向上する。また、下地層の膜厚は、特に限定されないが、耐衝撃性及び透過率の良好なレンズを得る観点から言えば、1〜5nmの範囲であることが好ましい。
本発明の光学部材には、更なる耐衝撃性向上のため、プラスチック基材と後述する硬化膜との間に、特開昭63-141001号公報などに記載されている、有機化合物を原料とするプライマー層を形成してもよい。
このプライマー層の例としては、ポリイソシアネートとポリオールを原料として形成されるウレタン系の膜などが挙げられる。ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4'-シクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネートのそれぞれ数分子を種々の方法で結合させた付加物、イソシアヌレート、アロファネート、ビュウレット、カルボジイミドをアセト酢酸、マロン酸、メチルエチルケトオキシムなどでブロックしたものなどが挙げられ、一方、ポリオールとしては、水酸基を1分子内に複数個有するポリエステル、ポリエーテル、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリアクリレートなどが挙げられる。また、プライマー層の屈折率向上のため、酸化チタン微粒子などの酸化金属微粒子をプライマー層に含有させることができる。
特に、屈折率が1.68〜1.76程度のポリスルフィド結合を有するプラスチック基材にプライマー層を形成し、この上に本発明に係る反射防止膜を形成することにより、基材の中心厚を小さくしても耐衝撃性、密着性、耐擦傷性に優れた光学部材を得ることができる。
本発明の光学部材には、プラスチック基材と多層反射防止膜との間、又はプライマー層と多層反射防止膜との間に、硬化膜を形成してもよい。硬化膜としては特に限定はなく、従来公知の硬化膜を形成することができる。硬化膜の原料として、従来知られている微粒子状金属酸化物と有機ケイ素化合物を含有したコーティング組成物が挙げられる。
コーティング組成物の例として、金属酸化物コロイド粒子と下記一般式(k)
(R13a (R14)bSi(OR154-(a+b) ・・・(k)
(式中、R13及びR14は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数1〜8のアシル基、ハロゲン基、グリシドキシ基、エポキシ基、アミノ基、フェニル基、メルカプト基、メタクリロキシ基及びシアノ基の中から選ばれる有機基を示し、R15は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアシル基及び炭素数6〜8のフェニル基の中から選ばれる有機基を示し、a及びbは、それぞれ独立に0又は1の整数である)で表される有機ケイ素化合物とからなる組成物が使用される。
前記金属酸化物コロイド粒子としては、例えば、酸化タングステン(WO3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化スズ(SnO2)、酸化ベリリウム(BeO)又は酸化アンチモン(Sb25)等が挙げられ、単独又は2種以上を併用することができる。
前記硬化層を作製するコ−ティング組成物の調製は、従来知られている方法で行うことができる。所望により、硬化触媒、塗布時における濡れ性を向上させ、硬化層の平滑性を向上させる目的で各種の有機溶剤や界面活性剤を含有させることもできる。さらに、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、老化防止剤等もコーティング組成物及び硬化膜の物性に影響を与えない限り添加することができる。
コ−ティング組成物の硬化は、熱風乾燥又は活性エネルギー線照射によって行い、硬化条件としては、70〜200℃の熱風中にて行うのが良く、特に好ましくは90〜150℃である。なお活性エネルギー線としては遠赤外線等があり、熱による損傷を低く抑えることができる。
また、コ−ティング組成物よりなる硬化膜を基材上に形成する方法としては、上述したコ−ティング組成物を基材に塗布する方法が挙げられる。塗布手段としてはディッピング法、スピンコーティング法、スプレー法等の通常行われる方法が適用できるが、面精度の面からディッピング法、スピンコーティング法が特に好ましい。
また、プラスチック基材と下地層との密着性確保又は蒸着物質の初期膜形成状態の均一化を図るために、硬化膜表面をイオン化ガス処理してもよい。イオン銃前処理におけるイオン化ガスは、酸素、アルゴン(Ar)などを用いることができ、出力で好ましい範囲は、特に良好な密着性、耐摩耗性を得るとの観点から加速電圧50〜700V、加速電流50〜250mAである。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において得られた光学部材の物性評価は以下のようにして行った。
(1)視感透過率
プラスチックレンズの視感透過率Y1は、両面に反射防止膜を有するプラスチックレンズをサンプルとして、日立分光光度計U−3410を用い測定した。
(2)視感反射率
プラスチックレンズの視感反射率Y2は、両面に反射防止膜を有するプラスチックレンズをサンプルとして、日立分光光度計U−3410を用い測定した。
(3)密着性
プラスチックレンズの表面に剃刀にて1mm×1mmの升目を100個作成し、升目上にセロハンテープ(ニチバン(株)製)を貼り、一気にテープをはがし、残った升目の数で評価した。表中、残った升目の数/100で記載した。
(4)耐摩耗性
プラスチックレンズの表面にスチールウール(規格#0000,日本スチ−ルウ−ル社製)にて98kPa(1kgf/cm2)の荷重をかけ、10ストローク擦り、表面状態により以下の基準で評価した。
UA:殆ど傷なし
A:細い傷数本あり
B:細い傷多数、太い傷数本あり
C:細い傷多数、太い傷多数あり
D:殆ど膜はげ状態
(5)耐熱性
プラスチックレンズをドライオーブンで60℃から、5℃ずつ上昇させて1時間加熱し、クラックの発生温度を測定した。
(6)耐アルカリ性
プラスチックレンズをNaOH10%水溶液に20℃、1時間浸漬し、表面状態により以下の基準で評価した。
UA:殆ど変化なし
A:点状の膜はげ数個あり
B:点状の膜はげが全面にあり
C:点状のはげが全面、面状のはげ数個あり
D:殆ど全面膜はげ
(7)Bayer値測定
摩耗試験機 BTETM Abrasion Tester(米COLTS社製)及びヘイズ値測定装置(村上色彩技術研究所製)を使用し、基準レンズとのヘイズ値変化の差によりBayer値を測定した。
(サンプル数、測定方法)
(a)基準レンズ(CR39基材)3枚、サンプルレンズ3枚を用意した。
(b)摩耗テスト前ヘイズ(haze)値の測定を行った。
(c)BTETM Abrasion Testerにて、摩耗性テストを行った。
(砂による表面摩耗600往復)
(d)摩耗テスト後ヘイズ値を測定した。
(e)Bayer値を算出した(3枚分の平均値とする)。ここでBayer値とは基準レンズの透過率変化/サンプルレンズの透過率変化で表されるものである。
(8)機械的強度試験(JIS静圧試験)
JIS T 7331:2000に準拠して試験を行った。
(9)水に対する静止接触角
接触角計(協和界面科学(株)製、CA-D型)を使用し、室温下で直径2mmの水滴を針先に作り、これをレンズの凸面の最上部に触れさせて、液滴を作った。この時に生ずる液滴と面との角度を測定し静止接触角(初期)とした。また、以下の方法で耐久性試験を行った後(促進テスト後)の水接触角を測定した。
耐久性試験は以下のようにして行った。すなわち、往復摩耗試験機(新東科学(株)製、TYPE:30S)を用いた。荷重を19.6N(2kgW)とし、プラスチック消しゴム(商品名:PL
ASTIC ERASER MONO TOMBO サイズ 54x19x10mm, (株)トンボ鉛筆 型番 PE-03A)を27x19x10mmにして、クリーニング紙として商品名:DUSPER (販売社:OZU CORPORATION)を用い、このクリーニング紙のザラザラしている面を表側にして前記消しゴムに巻きつけ、前記クリーニング紙に評価レンズが静かに触れるように試験機にセットし、スクラッチ速度1000回/13分の速さで、スクラッチを600回行った。
使用するプラスチックレンズ基材
(a)基材A:ジエチレングリコ−ルビスアリルカ−ボネート、屈折率1.50、中心厚2.0mm、レンズ度数0.00
(b)基材B:EYRY基材(商品名、HOYA(株)製、エピチオ基を有する化合物を原料とするレンズ)屈折率1.70、中心厚1.0mm、レンズ度数0.00
(c)基材C:EYNOA基材(商品名、HOYA(株)製、ポリイソシアナート化合物とポリチオール化合物を原料とするレンズ)屈折率1.67、中心厚1.0mm、レンズ度数0.00
コ−ティング組成物Aの作製
ガラス製容器に、コロイダルシリカ(スノーテックス−40、日産化学(株)製)90質量部、有機ケイ素化合物のメチルトリメトキシシラン81.6質量部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン176質量部、0.5N塩酸2.0質量部、酢酸20質量部、水90質量部を加えた液を、室温にて8時間攪拌後、室温にて16時間放置して加水分解溶液を得た。この溶液に、イソプロピルアルコ−ル120質量部、n−ブチルアルコ−ル120質量部、アルミニウムアセチルアセトン16質量部、シリコ−ン系界面活性剤0.2質量部、紫外線吸収剤0.1質量部を加え、室温にて8時間攪拌後、室温にて24時間熟成させコ−ティング液を得た。このコ−ティング組成物で得られた硬化層を以下、「ハードコート層A」と言う場合がある。
コ−ティング組成物Bの作製
ガラス製容器にγ-グリシドキシプロピル(トリメトキシ)シラン1045質量部と、γ-グリシドキシプロピルメチル(ジエトキシ)シラン200質量部とを入れ攪拌しながら0.01モル/リットル塩酸299質量部を添加し、10℃のクリーンルーム内で一昼夜攪拌を続け、シラン加水分解物を得た。
別の容器内で酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素を主体とする複合微粒子ゾル(メタノール分散、全固形分30質量%、平均粒子径5〜8ミリミクロン)3998質量部にメチルセロソルブ4018質量部とイソプロパノール830質量部とを加え攪拌混合し、さらに、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製「L−7001」)4質量部とアルミニウムアセチルアセトネート100質量部とを加え、上記と同様に10℃のクリーンルーム内で一昼夜攪拌を続けた後、上記加水分解物とを合わせ、さらに一昼夜攪拌した。その後3μmのフィルターでろ過を行い、ハードコート液Bを得た。このコ−ティング組成物で得られた硬化層を以下、「ハードコート層B」と言う場合がある。
硬化層の形成
アルカリ水溶液で前処理したプラスチックレンズ基板A又はBを、前記コーティング液の中に浸漬させ、浸漬終了後、引き上げ速度20cm/分で引き上げたプラスチックレンズを120℃で2時間加熱して硬化層(ハードコートA層又はハ−ドコ−トB層)を形成した。
イオン銃処理
硬化層上に、表に記載したイオン加速電圧、照射時間、ガス雰囲気下の条件で、イオン銃を用いて酸素イオン及びアルゴンイオンのイオン照射を行った。
ハイブリッド膜を有する反射防止膜の形成
前記イオン照射したハードコートA層又はB層の上に、第1表に示した条件で第1〜7層からなる反射防止膜を形成して、プラスチックレンズを得た。
なお、ハイブリッド層は、図1に示す装置を用いて、無機物質の蒸着と有機物質の蒸着との、二元蒸着として、ほぼ同時に蒸着するように条件を設定した。有機物質の蒸着の際は、外部加熱タンクにて気化させ、気化した有機物を、ガスバルブ、マスフローコントローラを使用して、蒸着装置内に導入した。ハイブリッド層を形成する際には、アルゴンガス、酸素ガスとの混合ガスの雰囲気下にてイオンアシスト法を用いた。また、表中「−」と記載されているのは、イオンアシスト法を用いず、通常の真空蒸着法にて層を形成したことを示す。なお、表中、M1は無機物質、CM1は有機ケイ素化合物、CM2はケイ素非含有有機化合物を表す。
表中に記載されている有機化合物の詳細は次の通りである。
(a) エポライト 70P (プロピレングリコ−ルジグリシジルエ−テル、平均分子量約188、共栄社化学(株)製造)
(b) LS:1371(ジエトキシジメチルシラン 分子量148.3 信越化学工業(株)製造)
(c) エピオールP200(ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、平均分子量約304、日本油脂(株)製造)
また、KY-130は撥水層形成用の「フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物」(信越シリコーン(株)製)である。
撥水層の形成
フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物を含有したKY-130(信越シリコーン(株)製)を0.3ミリリットルしみ込ませたステンレス製焼結フィルター(メッシュ80〜100μm、18φ×3mm)を真空蒸着装置内にセットし、以下の条件で電子銃を用いて該焼結フィルター全体を加熱して、撥水層を形成した。
(a)真空度:3.1×10-4〜8.0×10-4 Pa(2.3×10-6〜6.0×10-6 Torr)
(b)電子銃の条件
加速電圧:6KV、印加電流:20mA、照射面積:3.5×3.5cm平方、蒸着時間:40秒
撥水層を形成する前に、以下に記載する条件で、反射防止膜の最外層にイオン銃処理(イオンビーム照射)を行った。
加速電圧:200 V
加速電流:120m A
酸素ガス:5 sccm、アルゴンガス:15sccm
照射時間:45秒
なお、実施例5以降においては、基材と硬化層との間にプライマ−層を形成した。そのプライマ−層の形成方法は次の通りである。
プライマ−層の形成
ポリエステルタイプのポリオール(住友バイエルウレタン(株)社の商品名、デスモフェンA−670使用)6.65質量部、ブロック型ポリイソシアネート(住友バイエルウレタン(株)社の商品名、BL−3175使用)6.08質量部、硬化触媒としてジブチル錫ジラウレート0.17質量部、レベリング剤としてフッ素系レベリング剤(住友スリーエム(株)社の商品名、フロラードFC−430使用)0.17質量部、及び溶媒としてジアセトンアルコール95.71質量部からなる混合物を均一な状態になるまで充分攪拌してプライマー層形成のための組成物を得た。この組成物を、前処理としてのアルカリ処理された基体レンズ上に浸漬法(引き上げ速度:24cm/分)にて塗布し、100℃で40分加熱して硬化して、厚さ2〜3μmのプライマー層を形成した。
実施例1〜16及び比較例1〜4
第1表に示すような構成で、基材上に反射防止膜を設け、物性評価を行った。その結果を第2表に示す。なお、λは光の波長を示す。
Figure 2006065038
Figure 2006065038
Figure 2006065038
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本発明によれば、耐擦傷性及び撥水性の耐久性により優れた光学部材を得ることができ、この光学部材は眼鏡用レンズとして特に優れている。
本発明における成膜装置を示す概略図である。
符号の説明
1:光学式膜厚モニター
2:基板
3:基板保持用ドーム
4:有機物質導入口A
5:有機物質導入口B
6:蒸発源
7:RF型イオン銃
8:イオン化ガス導入口
9:排気系への接続部
10:外部モノマー加熱(気化)装置への接続部

Claims (10)

  1. プラスチック基材と、このプラスチック基材上に真空蒸着法で形成された多層反射防止膜と、この多層反射防止膜上に形成された撥水層とを有する光学部材であって、
    前記多層反射防止膜の最外層が、二酸化ケイ素を含有する無機物質と、有機ケイ素化合物及び/又はケイ素非含有有機化合物とを蒸着原料として真空蒸着法で形成され、かつ酸素及び/又はアルゴンイオンが照射されてなるハイブリッド層であり、
    前記撥水層が、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物を含む撥水原料が電子銃による加熱処理で、前記最外層に蒸着されてなる層である光学部材。
  2. プラスチック基材と、このプラスチック基材上に真空蒸着法で形成された多層反射防止膜と、この多層反射防止膜上に形成された撥水層とを有する光学部材の製造方法であって、
    前記多層反射防止膜の最外層を、二酸化ケイ素を含有する無機物質と、有機ケイ素化合物及び/又はケイ素非含有有機化合物とを蒸着原料として真空蒸着法で形成する工程と、
    前記最外層を形成した後、該最外層に酸素及び/又はアルゴンイオンを照射する工程と、
    フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物を含む撥水原料を電子銃による加熱処理で、前記最外層に蒸着して撥水層を形成する工程とを有する光学部材の製造方法。
  3. 前記多層反射防止膜の最外層を形成するための有機ケイ素化合物が、常温、常圧下で液体である請求項2記載の光学部材の製造方法。
  4. 前記多層反射防止膜の最外層を形成するためのケイ素非含有有機化合物が、常温、常圧下で液体である請求項2又は3記載の光学部材の製造方法。
  5. フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物を含む撥水原料の加熱処理において、加熱開始から蒸着の完結までの時間が50秒以内である請求項2〜4のいずれか1項記載の光学部材の製造方法。
  6. 前記最外層における酸素イオン及び/又はアルゴンイオンの照射が、イオン銃により行われる請求項2〜5のいずれか1項記載の光学部材の製造方法。
  7. 酸素イオン及び/又はアルゴンイオンの照射が、加速電圧50〜700V、加速電流30〜250mAの範囲で行われる請求項6記載の光学部材の製造方法。
  8. 酸素イオン及び/又はアルゴンイオンの照射時間が5〜80秒である請求項7記載の光学部材の製造方法。
  9. プラスチック基材と多層反射防止膜との間に有機ケイ素化合物を原料とする硬化膜を形成する請求項2〜8のいずれか1項記載の光学部材の製造方法。
  10. プラスチック基材と硬化膜との間に、プライマー層を形成する請求項9記載の光学部材の製造方法。

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