地上波デジタル放送方式(ISDB-T:Integrated Services Digital Broadcasting-Terrstrial。以下、新放送方式と略称する。)は、携帯端末向け2005年末に放送開始が予定されている。新放送方式は、マルチパス干渉に強い直交波周波数分割多重方式(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplex)の採用によって、複数の搬送波を一部重なり合いながらも相互干渉を抑制して密に並べることが可能であり、また狭い周波数帯域を効率的に利用して広帯域受信を実現している。
新放送方式においては、1つの周波数チャンネル(6MHz)を最大3つの階層に分けることで、それぞれ別放送を行うことを可能とする。新放送方式においては、さらに同一周波数チャンネル内の13個の搬送波のうち1個を受信チャンネルに用いたワンセグメント受信機能が採用され、周波数チャンネルの全帯域を使用するフルセグメント受信方式と比較して、対復調電力、対周波数選択制フェージング等に優れている。新放送方式においては、かかる特性から携帯型テレビジョン受信機(携帯テレビと略称する。)や携帯電話機或いは携帯型情報端末装置(PDA:Personal Digital Assistat)等の各種移動体通信機器においても高い受信特性を有するといった特徴がある。
ところで、従来の移動体通信機器、例えば携帯テレビ200には、図18に示すようにアンテナ長が1/4波長で共振する伸縮自在なロッドアンテナ201が備えられている。ロッドアンテナ201は、無限のグランドと線状のアンテナ素子との間で電力を励振するモノポールアンテナであり、グランドを対称にイメージ電流が定義されてダイポールアンテナと同様の挙動を示す。しかしながら、ロッドアンテナ201は、移動体通信機器の小型軽量化に伴い、実装スペースや形状等による制限のために、必要な1/4波長のアンテナ長を確保することが困難となっている。
ロッドアンテナ201は、無限のグランドを基本とするが、移動体通信機器に搭載された場合にグランド板のサイズも限定され、図19に示すように一般化することができる。ロッドアンテナ201は、ヒンジ機構によってアンテナ素子202がグランド板203に対して回動自在に組み合わされており、同図(A)に示すようにアンテナ素子202がグランド板203と同軸上に位置する状態と、同図(B)に示すようにアンテナ素子202がグランド板203と平行な状態とに位置される。
ロッドアンテナ201は、グランド板203が有限となるために、その大きさによって入力特性が大きく変化するロッドアンテナ201の特性について、アンテナ素子202の長さLが40mmである場合に電磁界解析手法の1つであるFDTD(Finite Difference Time Domain)法によって解析した結果を図21に示す。なお、図19において、GVはグランド板203の縦方向の長さ、GWはグランド板203の横方向の長さ、OGはアンテナ素子202とグランド板203との対向間隔である。
図20(A)は、アンテナ素子202とグランド板203とを同軸上に位置させた図19(A)に示した状態における、ロッドアンテナ201の入力特性の解析結果を示す。また、同図(B)は、アンテナ素子202とグランド板203とを平行に位置させた図19(B)に示した状態において、GVを80mm、GWを40mmとして、ロッドアンテナ201の入力特性の解析結果である。
ロッドアンテナ201においては、図20(A)に示す解析結果から明らかなように、入力特性がアンテナ素子202の長さLやグランド板203の横方向の長さGWに対してグランド板203の縦方向の長さGVに大きく依存しその長さの1/4波長で共振が生じている。したがって、ロッドアンテナ201においては、グランド板203の大きさや実装状態によって周波数特性に大きな影響がある。なお、ロッドアンテナ201は、グランド板203が大型化するに伴って利得が向上する傾向にあり、その変化は横方向の長さGWと縦方向の長さGVとでほぼ同傾向である。
また、ロッドアンテナ201においては、図20(B)に示す解析結果から明らかなように、アンテナ素子202とグランド板203とが接近した状態では容量成分が大きくなって周波数が大きくなり、一定の間隔に離すとグランド板203の長さが支配的となって共振が生じる。したがって、ロッドアンテナ201においては、機器筐体からある程度突出させた状態で用いられることが好ましく、小型化を困難とさせる。
一方、移動体通信機器においては、上述したロッドアンテナ201とともにアンテナ素子を1波長径で螺旋状に多数回巻いたヘリカルアンテナも用いられている。ヘリカルアンテナは、モノポール型アンテナと比較して広周波数帯域化が図られるとともに波長短縮効果も有するといった特徴を有している。
移動体通信機器においては、配線基板上に直接アンテナパターンを形成してなるパッチアンテナのような、いわゆる平面型アンテナを備えることにより薄型化を図るようにしている。平面型アンテナは、利用周波数帯域が低くなると大きなサイズのアンテナパターンが必要となるために、機器の小型化が図れないといった問題がある。また、平面型アンテナは、人体や機器筐体等の影響を受けやすいために、受信状態が安定しないといった問題もある。平面型アンテナにおいては、アンテナパターンを多重に折り返すことによってパターン長を確保したいわゆるミアンダパターンアンテナも用いられている。かかるミアンダ型アンテナは、配線基板上に直接アンテナパターンを形成することによって、薄型化が図られるといった特徴がある。
特許文献1には、セラミック等の高誘電体材内に複雑な3次元金属パターンを焼結形成した多層構造体からなり、給電電流を励振させて電磁波を放射させるチップアンテナが開示されている。チップアンテナは、上述した平面型アンテナと比較して利用周波数帯域に対して小型に形成することが可能であり、送受信回路を構成する電子部品等とともに回路基板に搭載して用いられる。
以下、本発明の実施の形態として図面に示したアンテナ装置1について、詳細に説明する。アンテナ装置1は、例えば携帯テレビ、携帯電話機或いは携帯型情報端末装置等の各種移動体通信機器に用いられ、従来の受信特性とともに利用周波数帯域がUHF帯域の470MHz〜770MHzと非常に広範囲に分布する新放送方式に対応して放送番組を高感度で受信することを可能とする。アンテナ装置1においては、新放送方式が上述したUHF帯域ばかりでなくVHF帯域の放送番組も行うことから、さらなる小型化の要求にも対応可能とされる。アンテナ装置1は、縦長矩形の両面基板2に後述するアンテナパターンが形成されることによって、小型かつ薄型に構成される。
アンテナ装置1は、図1に示すように両面基板2の第1主面2aにそれぞれ互いに同一ピッチを以って独立して形成された多数本の第1単位アンテナパターン3a〜3n(以下、個々に説明する場合を除いて第1単位アンテナパターン3と総称する。)を有する。アンテナ装置1は、両面基板2の第2主面2bにそれぞれ互いに同一ピッチを以って独立して形成された多数本の第2単位アンテナパターン4a〜4n(以下、個々に説明する場合を除いて第2単位アンテナパターン4と総称する。)を有する。
アンテナ装置1は、両面基板2の第1側縁2cに沿ってそれぞれ互いに同一ピッチを以って形成された多数個の第1ビアホール5a〜5n(以下、個々に説明する場合を除いて第1ビアホール5と総称する。)を有する。アンテナ装置1は、両面基板2の第2側縁2dに沿ってそれぞれ互いに同一ピッチを以って形成された多数個の第2ビアホール6a〜6n(以下、個々に説明する場合を除いて第2ビアホール6と総称する。)を有する。アンテナ装置1は、第1ビアホール5と第2ビアホール6とがそれぞれ対向しており、第2単位アンテナパターン4と同一ピッチを以って両面基板2に形成されている。
アンテナ装置1には、両面基板2の第2側縁2d側で、最下段の第2ビアホール6aに対して同一ピッチを以って第3ビアホール7が形成されている。アンテナ装置1には、両面基板2に、第3ビアホール7を起点として下端部へと伸びる給電パターン8が形成されるとともに、この給電パターン8の下端部に給電端子部9が一体に形成されている。アンテナ装置1は、給電端子部9を介して給電パターン8が本体装置側に設けたグランド10と接続される。
アンテナ装置1は、詳細を後述するように各第1単位アンテナパターン3の両端部と相対する各第2単位アンテナパターン4の両端部とが第1ビアホール5と第2ビアホール6とを介して、両面基板2の第1主面2aと第2主面2bとの間で交互に連結される。アンテナ装置1は、アンテナパターンを両面基板2の第1主面2aと第2主面2bとに亘って形成することにより、全体として立体型のヘリカル型アンテナパターンを構成してなる。
両面基板2は、従来各種の電子機器等に一般に用いられており、絶縁基板の両面に銅箔等の導体を貼り付けた基板材が用いられ、詳細を省略するがその第1主面2aと第2主面2bとに対して例えばリソグラフィー処理を施して不要な導体を除去することによって所定形状の第1単位アンテナパターン3と第2単位アンテナパターン4とをそれぞれ形成する。両面基板2には、絶縁基板に対してドリル加工やレーザ加工等を施して適宜の位置に貫通孔を形成し、これら貫通孔に対してめっき等による孔内の導体化処理を施すことにより第1ビアホール5や第2ビアホール6を形成する。両面基板2は、大規模設備や精密技術を不要として所望の回路パターンを効率的に形成することが可能であるとともに、各種の電子部品等が実装される。
第1単位アンテナパターン3は、図1及び図2に示すように、両面基板2の第1主面2aに幅方向の中心を挟んだ両側領域に位置してそれぞれ形成された略コ字状のパターンからなる。第1単位アンテナパターン3は、左右領域においてコ字状の開放部位がそれぞれ外側に位置するとともに、互いに上下方向にずれて形成されている。すなわち、第1単位アンテナパターン3は、図2(B)を参照して左側領域の最下段に形成された第1単位アンテナパターン3aを代表して説明するように、両面基板2の左側縁部の近傍を第1端部3a1として水平な下辺部3a2が中心の近傍まで形成され、中心の近傍位置で下辺部3a2から高さ方向に折曲されて垂直辺部3a3が連設され、この垂直辺部3a3の上端で下辺部3a2と平行な上辺部3a4が水平方向に折曲されて連設され、さらにこの上辺部3a4が第2端部3a5として第1端部3a1と対向されたコ字状に形成される。第1単位アンテナパターン3aは、第1端部3a1が最下段の第1ビアホール5aと接続されるとともに、第2端部3a5が2段目の第1ビアホール5bと接続される。
また、第1単位アンテナパターン3は、上述した第1単位アンテナパターン3aと隣り合って右側領域の最下段に形成された第1単位アンテナパターン3bが、第1単位アンテナパターン3aの上辺部3a4と略同一高さ位置において両面基板2の右側縁部の近傍を第1端部3b1として水平な下辺部3b2が中心の近傍まで形成される。第1単位アンテナパターン3bは、中心の近傍位置で下辺部3b2から高さ方向に折曲されて垂直辺部3b3が連設され、この垂直辺部3b3の上端で下辺部3b2と平行な上辺部3b4が水平方向に折曲されて連設され、この上辺部3b4が第2端部3b5として第1端部3b1と対向されたコ字状に形成され両面基板2の右側縁部の近傍を第2端部3b5とする。第1単位アンテナパターン3bは、第1端部3b1が最下段の第2ビアホール6aと接続されるとともに、第2端部3b52段目の第2ビアホール6bと接続される。
第1単位アンテナパターン3は、左側領域の第2段目の第1単位アンテナパターン3cが、右側領域の最下段第1単位アンテナパターン3bの上辺部3b4と略同一高さ位置から上述した第1単位アンテナパターン3aと同一形状を以って形成される。第1単位アンテナパターン3は、相互の間隔とそれぞれの第1端部3a1(3b1)と第2端部3a5(3b5)の間隔とがほぼ等しく形成される。したがって、第1単位アンテナパターン3は、両面基板2の第1主面2aに、左右領域でそれぞれ向きを変えて上下方向に対して1ピッチずつずれた状態で交互に形成される。
第2単位アンテナパターン4は、両面基板2の第2主面2bに、上述した第1単位アンテナパターン3のそれぞれの下辺部3a2(3b2)と上辺部3a4(3b4)とそれぞれ対向して互いに平行な水平方向の直線パターンによって構成される。第2単位アンテナパターン4は、それぞれが相対する第1ビアホール5と第2ビアホール6との対向間隔と等しい長さを有しており、図2(A)に示すように両端部を相対する第1ビアホール5と第2ビアホール6とに接続それる。なお、最下段の第2単位アンテナパターン4aは、図2(B)に示すように一端部を最下段の第1ビアホール5aと接続されるとともに、他端部を第3ビアホール7と接続される。
各第1ビアホール5と各第2ビアホール6及び第3ビアホール7は、上述したように両面基板2に形成した貫通孔に対して、孔内の導体化処理を施すことによって第1主面2aと第2主面2bとを導通させる。各第1ビアホール5と各第2ビアホール6は、上述したように相対する第1単位アンテナパターン3と第2単位アンテナパターン4の端部を交互に層間接続する。各第1ビアホール5と各第2ビアホール6は、相対する各第1単位アンテナパターン3と各第2単位アンテナパターン4とを直列に接続する。第3ビアホール7には、上述したように第2主面2bにおいて最下段の第2単位アンテナパターン4aの下辺部3b2が接続されるとともに、第1主面2aにおいて給電パターン8の一端部が接続される。
アンテナ装置1は、上述したように両面基板2の第1主面2aにおいて各第1単位アンテナパターン3が一種のミアンダパターンを構成するとともに、各第1ビアホール5と各第2ビアホール6とを介して第2主面2bで第2単位アンテナパターン4によって折り返された構造となっている。したがって、アンテナ装置1は、各第1単位アンテナパターン3と第2単位アンテナパターン4及び各第1ビアホール5と各第2ビアホール6とによって、両面基板2の第1主面2aと第2主面2bとを巡る所定の全長を有するヘリカル型アンテナパターンを構成する。
上述した基本構成に基づいて、例えば両面基板2の第1主面2aと第2主面2bとに長さ40mmの領域に第1単位アンテナパターン3と第2単位アンテナパターン4とを形成し、各第1単位アンテナパターン3及び各第2単位アンテナパターン4間のピッチを2mm、幅を5mmとしてアンテナ装置1を製作する。このアンテナ装置1について、米国CST社(COMPUTER SIMULATION TECHNOLOGY)製のMicrowave-Studioを使用して後述するアンテナ特性の解析を行った。
アンテナ装置1は、図2(B)に一部を概略的に示すように左側領域に形成された奇数段第1単位アンテナパターン3と右側領域に形成された偶数段第1単位アンテナパターン3の相対する垂直辺部と上辺部と下辺部との各コーナ部位100a〜100nにおいて、それぞれ逆位相の第1磁界11と第2磁界12とが発生する。アンテナ装置1は、これら第1磁界11と第2磁界12とがそれぞれに微小ループを形成して両面基板2内に変位電流を発生させることにより、アンテナとして動作されるようになる。
アンテナ装置1について、図3(A)に示すようにグランド10と同一軸上に配置して用いた場合のグランド10に対する依存性の解析結果を同図(B)にグランド10のサイズによる入力特性の変化として示す。アンテナ装置1においては、上述したように各微小ループ毎に変位電流が発生してアンテナ動作が行われことから、従来一般に用いられている全長に亘って電流が分布するモノポールアンテナと比較してグランドの大きさ(縦方向の長さ)変化に対する依存性が小さい解析結果が得られる。
また、アンテナ装置1について、図4(A)に示すようにグランド10と平行状態にして用いた場合のグランド10に対する依存性の解析結果を同図(B)にグランド10との対向間隔による入力特性の変化として示す。なお、アンテナ装置1は、GVが80mm、GWが40mmのグランドに対して平行な状態に配置される。アンテナ装置1においては、各微小ループがグランド10と直交した構造であることから、かかる使用形態においてもモノポールアンテナと比較してグランドの大きさ(縦方向の長さ)変化に対する依存性が小さい解析結果が得られる。
アンテナ装置1について、例えば図5に示した整合回路13を接続して、単体及び整合回路13の常数を変化させた場合のそれぞれの入力特性を図6に示す。なお、整合回路13は、アンテナ装置とチューナとの間に介挿される一般的な回路であり、一端をアンテナ装置1と接続されるともに他端を接地された第1コイル14と、一端をアンテナ装置1と接続されるともに他端をチューナの入力端に接続される第2コイル15とコンデンサ16との直列回路からなる。整合回路13は、適宜のスイッチ構造によってアンテナ装置1に対して第1整合回路13Aと第2整合回路13Bとが切り替えられる。
第1整合回路13Aは、インダクタンス15nHの第1コイル14と、インダクタンス3.3nHの第2コイル15と、容量3pHのコンデンサ16との組み合わせによって設定された第1回路定数を有する。第2整合回路13Bは、18nHの第1コイル14と、1.2nHの第2コイル15と、3pHのコンデンサ16との組み合わせによって設定された第2回路定数を有する。なお、整合回路13は、例えば第1整合回路13Aと第2整合回路13Bとを有してスイッチによる切り替えを行う構成や、各素子を個々にスイッチにより切り替える構成等が採用される。
アンテナ装置1においては、整合回路13を接続せずに単体で用いた場合に、図6に実線で示すようにVSWR(Voltage Standing Wave Ratio:電圧定在波比)が3以上の入力特性を約571MHz〜約670MHzの周波数帯域において得る。また、アンテナ装置1は、VSWRが3以上の帯域幅が約100MHzであり、モノポールアンテナと比較して広帯域化が図られる。一方、アンテナ装置1は、利用周波数帯域がUHF帯域の470MHz〜770MHzである新放送方式の放送番組を全域に亘って良好な状態で受信するために、帯域幅がやや不足する。
アンテナ装置1においては、第1整合回路13Aと第2整合回路13Bとを選択的に接続することによって新放送方式の利用周波数帯域を全域に亘って良好な状態で受信可能となる。アンテナ装置1においては、第1整合回路13Aを接続することによって、図6破線で示すように単体での良好な受信対応が困難な470MHz〜571MHzの帯域についても、この第1整合回路13Aの作用によって良好な受信対応が可能となる。また、アンテナ装置1においては、第2整合回路13Bを接続することによって、図6鎖線で示すように単体での良好な受信対応が困難な670MHz〜770MHzの帯域についても、接続された第2整合回路13Bの作用によって良好な受信対応が可能となる。
次に、アンテナ装置1について、従来携帯型テレビに一般的に用いられている約100mm長のロッドアンテナとヘリカルアンテナとを比較例として電波暗室内で、水平面のアンテナゲインの周波数特性と、所定周波数に対する垂直偏波及び水平偏波の測定を行って放射特性を確認した。なお、アンテナ装置1については、厚さが3.2mmの両面基板にピッチmm、パターン幅5mmを共通として40mmの長さの第1アンテナ装置1Aと30mmの長さの第2アンテナ装置1Bについて測定を行った。測定結果を図7及び図8に示す。
図7は、各アンテナ装置のアンテナ利得の周波数特性を示す。同図において、a1はアンテナ装置1A(全長40mm)の最大利得、a2は平均利得であり、b1はアンテナ装置1B(全長30mm)の最大利得、b2は平均利得であり、c1は比較例のヘリカルアンテナの最大利得、c2は平均利得であり、d1は比較例のロッドアンテナの最大利得、d2は平均利得である。アンテナ装置1Aは、同図から明らかなように最大利得で−7dBi、平均利得で−9dBiを得る。また、アンテナ装置1Bは、同図から明らかなように最大利得で−9dBi、平均利得で−12dBiを得る。アンテナ装置1A、1Bは、アンテナ長に大きな差異があるためにいずれもロッドアンテナと比較して最大利得と平均利得が低くなっているが、ヘリカルアンテナよりも大きな利得を得る。
図8は、各アンテナ装置の水平面指向性を示す。同図において、a線はアンテナ装置1A、b線はアンテナ装置1B、c線はロッドアンテナ、d線はヘリカルアンテナを示す。同図(A)は、470MHzにおける垂直偏波特性を示し、同図(B)は470MHzにおける水平偏波特性を示す。また、同図(C)は、600MHzにおける垂直偏波特性を示し、同図(D)は、600MHzにおける水平偏波特性を示す。さらに、同図(E)は、700MHzにおける垂直偏波特性を示し、同図(F)は700MHzにおける水平偏波特性を示す。アンテナ装置1A及びアンテナ装置1Bは、これらの図から明らかなように小型であるにもかかわらずロッドアンテナやヘリカルアンテナと同等の指向性を有している。
上述したようにアンテナ装置1は、全長が30mm或いは40mmと小型であっても、グランド10のサイズに影響を受けることなく、良好なアンテナ特性を奏する。アンテナ装置1は、例えば携帯電話機やPDAのようにいわゆる手の平サイズの移動体通信機器に搭載することによって小型化を保持して広帯域の新放送方式の放送番組を良好な状態で受信することを可能とする。アンテナ装置1は、一般的なプリント基板技術によって製作されることから極めて廉価であり、基板上に送受信回路部品等も同時に搭載することにより本体機器の実装効率の向上も図られるようにして一層の小型化が図られるようにする。
上述したアンテナ装置1においては、両面基板2の第1主面2aに形成したミアンダ型の第1単位アンテナパターン3と第2主面2bに形成した第2単位アンテナパターン4とを第1ビアホール5と第2ビアホール6とを介して立体型のヘリカル型アンテナパターンを構成してなる。本発明は、かかる構成に限定されるものではなく、両面基板2の第1主面2aと第2主面2bとを巡る種々のアンテナパターンを形成するようにしてもよい。
図9は、両面基板2の第1主面2aと第2主面2bとを巡って形成される各種のアンテナパターンとそのアンテナ長とを解析した図である。アンテナ装置は、アンテナ長が、各第1単位アンテナパターン3の長さW1と各第2単位アンテナパターン4の長さW2と、第1ビアホール5と第2ビアホール6の長さ、すなわち両面基板2の厚みHとによって決定される。2個の第1ビアホール5と1個の第2ビアホール6との間に構成される代表的なアンテナパターン20A〜20Dを一覧で示す。なお、アンテナパターン20Dは、上述したアンテナ装置1の第1単位アンテナパターン3と第2単位アンテナパターン4と同一である。
アンテナパターン20Aは、第1ビアホール5a−第1単位アンテナパターン3−第2ビアホール6−第2単位アンテナパターン−第1ビアホール5bのルートによりヘリカルパターンを形成する。したがって、アンテナパターン20Aは、ヘリカルピッチを2Vとすると、各ヘリカルパターンの全長が3H+2√(V2+W2)となる。
アンテナパターン20Bは、第1単位アンテナパターン3と第2単位アンテナパターン4とがそれぞれ略L字状を呈しており、第2ビアホール6a−第2単位アンテナパターン4−第1ビアホール5−第1単位アンテナパターン3−第2ビアホール6bのルートによりヘリカルパターンを形成する。したがって、アンテナパターン20Bは、ヘリカルパターンの全長が3H+2V+2Wとなる。
アンテナパターン20Cは、第1単位アンテナパターン3と第2単位アンテナパターン4とがそれぞれ略クランク状を呈しており、アンテナパターン20Bと同様に第2ビアホール6a−第2単位アンテナパターン4−第1ビアホール5−第1単位アンテナパターン3−第2ビアホール6bのルートによりヘリカルパターンを形成する。したがって、アンテナパターン20Cは、ヘリカルパターンの全長が3H+2V+3Wとなる。
アンテナパターン20Dは、上述したように第1単位アンテナパターン3がそれぞれ略コ字状を呈しており、第2ビアホール6a−第2単位アンテナパターン4a−第1ビアホール5a−第1単位アンテナパターン3a−第1ビアホール5b−第2単位アンテナパターン4b−第2ビアホール6bによりヘリカルパターンを形成する。したがって、アンテナパターン20Dは、ヘリカルパターンの全長が6H+2V+6W−3G(Gは、左右の第1単位アンテナパターンの間隔)となる。
上述した各アンテナパターン20A〜20Dについて、図10にそれぞれのヘリカルピッチに対するヘリカル長の変化特性を示すとともに、図11に両面基板2の厚みに対するヘリカル長の変化特性を示す。各アンテナパターン20A〜20Dは、これらの図から明らかなようにいずれもアンテナの全長及び両面基板2の厚みに対してヘリカルパターン長の増加が図られている。したがって、各アンテナパターン20A〜20Dは、波長短縮効果が得られるとともに薄型の両面基板2を用いて本体機器を小型、薄型化する。中でもアンテナパターン20Dは、第1単位アンテナパターン3をミランダパターンとして両面基板2の左右領域に形成した構成から、ヘリカルパターン長の増加が著しく大きな波長短縮効果を得るとともにより薄型化が図られる。
アンテナ装置1においては、両面基板2の第1主面2aと第2主面2bとを巡るようにして第1単位アンテナパターン3と第2単位アンテナパターン4とにより立体型のヘリカル型アンテナパターンが形成されてなる。アンテナ装置1においては、上述したようにヘリカルパターンのピッチを密にすることによってアンテナ長が確保されて薄型化が図られるようになる。図12に第2の実施の形態として示したアンテナ装置30も、両面基板31の第1主面31aに多数個の第1単位アンテナパターン32がそれぞれ互いに同一ピッチを以って独立して形成されるとともに、第2主面31bに多数個の第2単位アンテナパターン33がそれぞれ互いに同一ピッチを以って独立して形成される。
アンテナ装置30は、例えば厚さが約2mmの両面基板31が用いられ、この両面基板31の第1側縁に沿ってそれぞれ互いに同一ピッチpを以って多数個の第1ビアホール34が形成されるとともに第2側縁に沿ってそれぞれ互いに同一のピッチpを以って多数個の第2ビアホール35が形成される。アンテナ装置30は、第1ビアホール34と第2ビアホール35とが互いに同一ピッチを以って両面基板2にそれぞれ幅方向に離間して相対して形成されるが、上述したアンテナ装置1の第1ビアホール5や第2ビアホール6のピッチよりも約1/2のピッチ幅で形成される。
第1単位アンテナパターン32は、図12(A)に示すように、両面基板31の第1主面31aに幅方向の中心を挟んで対向間隔dを保持した両側領域に位置してそれぞれ形成され、全体がコ字状を基本形状とするとともに左右領域においてコ字状の開放部位がそれぞれ外側に位置するとともに、互いに上下方向にずれて形成された基本形状を上述したアンテナ装置1の第1単位アンテナパターン3と同様とする。第1単位アンテナパターン32は、第1ビアホール34又は第2ビアホール35(図では第1ビアホール34a)と接続される第1端部32a1から水平方向に下辺部32a2が一体に連設される。
第1単位アンテナパターン32は、下辺部32a2の先端において高さ方向に折曲されて約1/2pの長さを有する第1垂直部32a3が一体に連設され、この第1垂直部32a3の先端から側方に向かって折曲されて下辺部32a2と平行に対峙する第1折返し辺部32a4が一体に連設される。第1単位アンテナパターン32は、第1折返し辺部32a4が第1ビアホール34や第2ビアホール35の近傍位置において高さ方向に折曲されて約1/2pの長さを有する第2垂直部32a5が一体に連設され、この第2垂直部32a5の先端から中心側に向かって折曲されて第1折返し辺部32a4と平行に対峙する第2折返し辺部32a6が一体に連設される。
第1単位アンテナパターン32は、第2折返し辺部32a6の先端において高さ方向に折曲されて約1/2pの長さを有する第3垂直部32a7が一体に連設され、この第3垂直部32a7の先端から側方に向かって折曲されて第2折返し辺部32a6と平行に対峙する上辺部32a8が一体に連設される。第1単位アンテナパターン32は、上辺部32a8が各第1ビアホール34或いは各第2ビアホール35の軸線上に位置する長さを有しており、先端部において折曲されて第3垂直部32a7と対向する第4垂直部32a9を一体に連設する。第1単位アンテナパターン32は、第4垂直部32a9の先端に、次の第1ビアホール34又は第2ビアホール35(図では第1ビアホール34b)と接続される第2端部32a10が一体に形成されてなる。
以上のように構成された各第1単位アンテナパターン32は、上述したアンテナ装置1の第1単位アンテナパターン3と同様にコ字状を基本形状とするが、下辺部32a2と上辺部32a8との間にさらにコ字状の折返し部が一体に連設された形状に特徴を有している。各第1単位アンテナパターン32は、上述したアンテナ装置1の第1単位アンテナパターン3と比較してこの折返し部位と第4垂直部32a9とに相当する長さ分、パターン長が延長されている。第1単位アンテナパターン32は、両面基板31の第1主面31a上に、上述した左側領域の第1単位アンテナパターン32aに対向する右側領域の第1単位アンテナパターン32bが、第1ビアホール34bと同一高さ位置にある第2ビアホール35bを始端として上述したパターン形状に対して対称形状を以って形成される。
各第2単位アンテナパターン33は、両面基板31の第2主面31bに、上述した各第1単位アンテナパターン32に対向してそれぞれ形成される。第2単位アンテナパターン33は、図12(B)に示すように第1ビアホール34或いは第2ビアホール35のピッチpと同幅の領域内において全体略クランク状を呈するパターンとして形成される。第2単位アンテナパターン33は、詳細には上述した各第1単位アンテナパターン32の第1端部32a1が接続される第1ビアホール34aと第2主面31b側において接続される第1端部33a1に約1/2pの長さを有する第1垂直部33a2が一体に連設される。
第2単位アンテナパターン33は、第1垂直部33a2の先端から水平方向に第1単位アンテナパターン32の下辺部32a2とほぼ等しい長さの第1水平辺部33a3が一体に連設される。第2単位アンテナパターン33は、第1水平偏部33a3が両面基板31の中央位置の先端部において、隣り合う第1単位アンテナパターン32の対向間隔dの範囲でピッチpの長さを以って傾斜する傾斜辺部33a4が一体に連設される。第2単位アンテナパターン33は、傾斜辺部33a4の先端において左側領域の第1単位アンテナパターン32の上辺部32a8と対向してその長さとほぼ等しい第2水平辺部33a5が一体に連設される。第2単位アンテナパターン33は、第2水平辺部33a5の先端が各第1ビアホール34或いは各第2ビアホール35の軸線上に位置され、この先端から第1垂直部33a2と対向する第2垂直部33a6を一体に連設し、さらに第2垂直部33a6の先端部が第2端部33a7として第2ビアホール35aと接続される。
以上のように構成された第2単位アンテナパターン33は、相対する第1ビアホール34と第2ビアホール35との間を接続する基本形態を上述したアンテナ装置1の第2単位アンテナパターン4と同様とするが、両側に互いに逆向きの第1垂直部33a2と第2垂直部33a6とを形成するともに中央部に傾斜辺部33a4を形成して1ピッチ領域を活用した形状とされる。したがって、第2単位アンテナパターン33は、アンテナ装置1の第2単位アンテナパターン4と比較してこれらの部位に相当する長さ分、パターン長が延長されている。
以上のように構成されたアンテナ装置30は、ヘリカルパターンのピッチpが1/2となるとともに、パターンの長大化が図られる。アンテナ装置30は、長さが30mm、厚みが2mmの両面基板31を用いて製作した場合に、図13に示すような入力特性を奏する。アンテナ装置30は、小型であるにもかかわらず、同図実線で示すようにVSWRが3以上の入力特性を約580MHz〜約660MHzの周波数帯域において得る。アンテナ装置30は、上述したように多数個の第1単位アンテナパターン32にそれぞれ折返し部を付加したことによって電流の打ち消し合いがより多く発生し、広帯域化が図られるようになる。
また、アンテナ装置30は、上述した整合回路13を接続することによって広帯域化が図られるようになる。整合回路13は、インダクタンス18nHの第1コイル14と、インダクタンス4.7nHの第2コイル15と、容量3pHのコンデンサ16との組み合わせにより回路定数が設定される。アンテナ装置30は、この整合回路13を接続することによって約480MHz〜約720MHzの広帯域化が図られる。アンテナ装置30は、回路定数の切替のためのスイッチング操作を不要とする。
薄型化したアンテナ装置30(厚さ2.2mm、長さ30mm)と、上述したアンテナ装置1A(厚さ3.2mm、長さ40mm)及びアンテナ装置1B(厚さ3.2mm、長さ30mm)とについて、アンテナ利得の周波数特性を図14に示す。なお、同図において、実線はそれぞれの最大利得、破線はそれぞれの平均利得である。アンテナ装置30は、厚みの小さな基板が用いられても、アンテナ装置1Aやアンテナ装置1Bと同等のアンテナ特性を有する。
ところで、アンテナ装置1及びアンテナ装置30においては、上述したように新放送方式に対応してUHF帯域とともにVHF帯域の受信特性も求められ、さらなる小型化の要求にも対応しなければならない。アンテナ装置1及びアンテナ装置30においては、上述したように各第1単位アンテナパターン3、32がそれぞれ相対する対向辺を構成する折返し部位を有することで多重ループを形成して内部にエネルギーを蓄積する。アンテナ装置1及びアンテナ装置30においては、上述した図2(B)によって説明したように第1単位アンテナパターン3の相対する各折返し部位100において互いに逆相の第1磁界11と第2磁界12とが発生しており、蓄積されるエネルギーが電界エネルギーよりは磁界エネルギーが内部に多く分布して優勢な状態にある。
図15は、基板材料の比誘電率及び比透磁率の材料定数変化に対する波長短縮効果の変化を解析した図である。同図において、実線は磁性材料を選択して比誘電率を変化させた場合の波長短縮効果の変化量を示し、また破線は基板材に対して磁性材を混合することによって比透磁率を変化させた場合の波長短縮効果の変化量を示している。
アンテナ装置1及びアンテナ装置30においては、上述したように内部に蓄積されるエネルギーとして磁界エネルギーが優勢にある構成から、基板材料の誘電率変化よりも透磁率変化が大きく影響する。アンテナ装置1及びアンテナ装置30においては、図15から明らかなように基板材の比誘電率を変化させるよりは比透磁率を変化させることによってより大きな波長短縮効果が得られてさらなる小型化が図られるようになる。したがって、アンテナ装置1及びアンテナ装置30においては、両面基板2、31が、一般的に用いられる誘電材料に対して磁性材料を混合した基板材によって形成される。例えば、六方晶系フェライト材は、UHF帯域においても透磁率が低下せず、極めて有効である。
アンテナ装置1及びアンテナ装置30は、上述したように40mmや30mm程度の大きさの両面基板2、31に形成することが可能である。したがって、アンテナ装置1及びアンテナ装置30は、図16に示すように各種の電子部品等を実装した回路基板40を利用して、その一部に直接形成するようにしてもよい。アンテナ装置1及びアンテナ装置30は、かかる構成によって例えば送受信回路部や制御回路部との一体化が図られるようになり、スペース効率や組立効率を向上させるとともに実装前の機能確認等も可能とし、大幅なコスト削減を図るようにする。アンテナ装置1及びアンテナ装置30は、携帯電話機等の小型機器にも搭載することが可能であり、突出量が小さいことから使い勝手の向上を図るとともに意匠展開の制約を緩やかにする。
また、アンテナ装置1及びアンテナ装置30は、上述したようにグランドの依存性が小さい特性を有している。したがって、アンテナ装置1及びアンテナ装置30は、図17に示す新放送方式の受信機能を有する携帯電話機45のように、筐体の一部に直接形成することも可能である。携帯電話機45は、放送番組を筐体から長いロッドアンテナを引き出して視聴する必要が無く、使い勝手の大幅な向上が図られるようになる。
なお、実施の形態として示したアンテナ装置1及びアンテナ装置30は、両面基板2、31の表裏主面に単位アンテナパターンを形成してビアホールによってこれらを層間接続して立体形状のヘリカルアンテナパターンを形成するようにしたが、かかる構成に限定されるものでは無い。本発明は、例えば片面プリント基板に多数の折返し部を有する連続パターンからなるいわゆるミアンダ型アンテナ等にも適用することによって、小型化をはかることを可能とする。
1 アンテナ装置、2 両面基板、2a 第1主面、2b第2主面、3 第1単位アンテナパターン、4 第2単位アンテナパターン、5 第1ビアホール、6 第2ビアホール、7 第3ビアホール、10 グランド、11 第1磁界、12 第2磁界、13 整合回路、20 アンテナパターン、30 アンテナ装置、31両面基板、32 第1単位アンテナパターン、33 第2単位アンテナパターン、34 第1ビアホール、35 第2ビアホール、40 回路基板、45 携帯電話機、100 折返し部位