JP2006057127A - 耐落重破壊特性に優れたパーライト系レール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 質量%で、C:0.65〜1.40%を含有するパーライト組織を呈する鋼レールにおいて、底部表面を起点として深さ10mmまでの範囲の少なくとも一部に、粒径1〜15μmのパーライトブロックが被検面積0.2mm2あたり200個以上存在 することを特徴とする耐落重破壊特性に優れたパーライト系レール。
【選択図】 図3
Description
(1)圧延終了後あるいは、再加熱したレール頭部をオーステナイト域温度から850〜500℃間を1〜4℃/secで加速冷却する130kgf/mm2以上の高強度レールの製造法( 特許文献1)。
(2)過共析鋼(C:0.85超〜1.20%)を用いて、パーライト組織中のラメラ中のセメンタイト密度を増加させた耐摩耗性に優れたレール(特許文献2)。
これらのレールの特徴は、共析炭素含有鋼(炭素量:0.7〜0.8%)または、過共析炭素含有鋼(炭素量:0.85超〜1.20%)による微細パーライト組織を呈する高強度レールであり、その目的とするところは、パーライト組織中のラメラ間隔を微細化し、さらには、パーライトラメラ中のセメタイト相の密度を増加させ、耐摩耗性を向上させるところにあった。
(3)共析鋼(C:0.60〜0.85%)を用いて、圧延によりパーライト組織の平均ブロック粒径を微細化し、延性や靭性を向上させたレール(特許文献3)。
(4)過共析鋼(C:0.85超〜1.20%)を用いて、圧延によりパーライト組織の平均ブロック粒径を微細化し、延性や靭性を向上させたレール(特許文献4)。
これらのレールの特徴は、パーライト組織の平均ブロック粒径を微細化することにより、耐摩耗性を確保しつつ、パーライト組織の延性や靭性を向上させるものであった。
すなわち、本発明は、重荷重鉄道用のレールに要求される、底部からの折損等の破壊の発生を防止することを目的としたものである。
(2)質量%で、C:0.65〜1.40%、Si:0.10〜2.00%、Mn:0.10〜2.00%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるパーライト組織を呈する鋼レールにおいて、底部表面を起点として深さ10mmまでの範囲の少なくとも一部に、粒径1〜15μmのパーライトブロックが被検面積0.2mm2あたり200個以 上存在することを特徴とする耐落重破壊特性に優れたパーライト系レール。
(3)請求項1〜2記載の鋼レールにおいて、底部表面を起点として、少なくとも深さ10mmの範囲の硬さがHv300〜480の範囲であることを特徴とする耐落重破壊特性に優れたパーライト系レール。
(4)上記(1)〜(3)のレールには、質量%でさらに、下記1)〜9)の成分を選択的に含有させることができる。
1) Cr:0.05〜2.00%、Mo:0.01〜0.50%の1種または2種、
2) V :0.005〜0.50%、Nb:0.002〜0.050%の1種または2種、
3) B :0.0001〜0.0050%、
4) Co:0.10〜2.00%、Cu:0.05〜1.00%の1種または2種、
5) Ni:0.01〜1.00%、
6) Ti:0.0050〜0.0500%、Mg:0.0005〜0.0200%、Ca:0.0005〜0.0150%の1種または2種以上、
7) Al:0.0100〜1.00%、
8) Zr:0.0001〜0.2000%、
9) N :0.0040〜0.0200%
の1つ以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。
本発明者らは、まず、レール底部からの折損の発生とパーライト組織の機械的特性の関係を実験室的に整理した。その結果、車輪との接触により発生するレール底部の荷重速度は比較的遅く、底部から発生する折損現象は、比較的荷重速度の早い衝撃試験による評価よりも引張試験での延性とよい相関があることが確認された。
(1)パーライトブロック粒径、粒数およびその範囲の限定理由
まず、粒数を規定するパーライトブロック粒径を1〜15μmの範囲に規定した理由について説明する。
粒径が15μmを超えるパーライトブロックは、パーライト組織の延性を向上させないばかりでなく、場合によっては延性を低下させ、レール底部の耐落重破壊特性を低下させる。また、粒径が1μm未満のパーライトブロックは、微細なパーライト組織の延性向上には寄与するが、その寄与度が小さく、延性を大きく向上させない。このため、粒数を規定するパーライトブロック粒径を1〜15μmの範囲に限定した。
被検面積0.2mm2あたりの粒径1〜15μmを有するパーライトブロックの粒数が 200個未満になると、パーライト組織の延性向上が図れず、レール底部の耐落重破壊特性が改善しない。なお、粒径1〜15μmを有するパーライトブロックの粒数には上限を設けないが、レールの製造時の圧延温度や熱処理時の冷却条件の制約から、実質的には被検面積0.2mm2あたり1000個が上限となる。
レール底部から発生する折損は、基本的にはレール底部表面を起点としている。このため、レール折損を防止するにはレール底部の延性、すなわち、粒径1〜15μmを有するパーライトブロックの粒数を増やす必要がある。実験によりレール底部の延性とレール底部のパーライトブロックとの相関を調査した所、レール底部の延性は、底部表面を起点として深さ10mmまでの範囲のパーライトブロックサイズと相関があることが分かった。
パーライトブロックの測定方法には、(a)修正カーリングエッチ法、(b)エッチピット法、(c)SEMによる後方散乱電子回折(EBSP:Electron Back-Scatter diffraction Pattern)法がある。
今回の測定では、パーライトブロックサイズが微細であるため、修正カーリングエッチ法、エッチピット法ではその確認が困難であった。そこで、(c)後方散乱電子回折(EB SP)法を用いた。
以下に測定条件を記す。測定は下記の1)〜7)の手順に従い、パーライトブロックの粒径測定を行い、被検面積0.2mm2あたりの粒径1〜15μmを有するパーライトブロッ クの粒数をカウントした。測定はそれぞれの観察位置で最低2視野以上行い、下記の手順に従い粒数をカウントし、その平均値を観察位置での代表粒数とした。
1) SEM:高分解能走査型顕微鏡
2) 測定前処理:機械加工面1μmダイヤ研磨→電解研摩
3) 測定視野:400×500μm2(被検面積0.2mm2)
4) SEMビーム径:30nm
5) 測定ステップ(間隔):0.1〜0.9μm
6) 粒界認定:隣り合う測定ポイントにおいて、結晶方位差15°以上(大角粒界)をパーライトブロック粒界として認識させる。
7) 粒径測定:各パーライトブロック粒の面積を測定後、パーライトブロックを円形と仮定し、各結晶粒の半径を計算後、直径を算定し、その値をパーライトブロック粒径とする。
次に、レール底部表面を起点として深さ10mmの範囲の硬さをHv300〜480の範囲に限定した理由について説明する。
本成分系では、パーライト組織の硬さがHv300未満になると、レール底部に作用する応力が大きい場合は、レール底部が部分的に降伏し、レール底部からの折損が発生し易くなる。また、パーライト組織の硬さがHv480を超えると、延性が著しく低下し、レール底部からの折損が発生し易くなる。このためパーライト組織の硬さをHv300〜480の範囲に限定した。
レール底部から発生する折損は、基本的にはレール底部表面を起点としている。このため、レール折損を防止するにはレール底部の硬さをある一定範囲内に制御する必要がある。実験によりレール底部の耐落重破壊特性とレール底部の硬さとの相関を調査したところ、レール底部の耐落重破壊特性は、底部表面を起点として深さ10mmまでの範囲の硬さとよい相関があることがわかった。本限定は、上記のような調査結果に基づくものである。
ブロック粒径1〜15μmを有するパーライト組織が、図中の斜線部で示すように、足裏部1+足先部2の全幅W、深さ10mmの範囲において存在し、少なくともその一部において、被検面積0.2mm2あたり200個以上存在していれば、レール底部の延性が 向上し、結果的にレール底部からの折損が抑制され、耐落重破壊特性が向上する。
さらに、上記領域において、微細なパーライト組織の硬さがHv320〜480の範囲であれば、レール底部での降伏現象が抑制され、レール底部からの折損がさらに抑制され、耐落重破壊特性が一層向上する。
次に、レール鋼の化学成分を上記範囲に限定した理由について詳細に説明する。
Cは、パーライト変態を促進させて、かつ、耐摩耗性を確保する有効な元素である。C量が0.65%以下では、レール頭部のパーライト組織の硬度が確保できず、さらに、初析フェライト組織が生成し、耐摩耗性が低下し、レールの使用寿命が低下する。また、C量が1.40%を超えると、レール頭部内部、底部のパーライト組織中に初析セメンタイト組織が生成するとともに、パーライト組織中のセメンタイト相の密度が増加し、パーライト組織の延性が低下して、耐落重破壊特性が大きく低下する。このため、C量を0.65〜1.40%に限定した。なお、レール頭部の耐摩耗性をより一層向上させるには、パーライト組織中のセメンタイト相の体積比率がさらに増加し、耐摩耗性の一層の向上が図れるC量0.85%超とすることが望ましい。
Mnは、焼き入れ性を高め、パーライトラメラ間隔を微細化することにより、パーライト組織の硬度を確保する元素である。
V,Nbは、熱間圧延やその後の冷却課程で生成した炭化物や窒化物により、オーステナイト粒の成長を抑制し、さらに、析出硬化により、パーライト組織の延性と硬度を向上させ、また再加熱時に炭化物や窒化物を安定的に生成させ、溶接継ぎ手熱影響部の軟化を防止する。
Co,Cuは、パーライト組織中のフェライトに固溶し、パーライト組織の硬度を高める。
Tiは、熱影響部の組織の微細化を図り、溶接継ぎ手部の脆化を防止する。
Alは、共析変態温度を高温側へ移動させ、パーライト組織を強化し、レールの耐摩耗性の向上させ、さらに共析炭素量を高炭素側へ移動させ、初析セメンタイト組織の生成を抑制する。
Nは、オーステナイト粒界からのパーライト変態を促進させ、パーライト組織を微細にすることより、延性を向上させることが主な添加目的である。
Siは、脱酸剤として必須の成分である。また、パーライト組織中のフェライト相への固溶強化によりレール頭部の硬度(強度)を上昇させる元素である。さらに、過共析鋼において、初析セメンタイト組織の生成を抑制し、延性の低下を抑制する元素である。しかし、0.10%未満ではこれらの効果が十分に期待できない。また、2.00%を超えると、熱間圧延時に表面疵が多く生成することや、酸化物の生成により溶接性が低下する。さらに、焼入性が著しく増加し、レール頭部の耐摩耗性やレール底部の耐落重破壊特性に有害なマルテンサイト組織が生成する。このため、Si量を0.10〜2.00%に限定した。
表1に本発明レール鋼の化学成分、レール底部の熱間圧延および熱処理条件、底部ミクロ組織(足裏表面下2mm)、粒径1〜15μmを有するパーライトブロックの粒数および測定位置、レール底部(足裏表面下2mm)の硬さを示し、さらにレール底部の引張試験結果、レールの落重試験結果も併記した。
なお、レールの構成は以下の通りである。
上記成分範囲内で、レール底部表面を起点として深さ10mmまでの範囲の少なくとも一部に、粒径1〜15μmのパーライトブロックが被検面積0.2mm2あたり200個 以上存在し、レール底部の硬さがHv300〜480の範囲であることを特徴とする耐落重破壊特性に優れたパーライト系レール。
符号O〜Q:C,SiおよびMnの添加量が上記成分範囲外の比較レール鋼(3本)。 符号R〜Y:上記成分範囲内で、レール底部表面を起点として深さ10mmまでの範囲の少なくとも一部に、粒径1〜15μmのパーライトブロックが被検面積0.2mm2あ たり200個未満、もしくは、レール底部の硬さがHv300〜480の範囲外である比較レール鋼(11本)。
図1は、本発明の耐落重破壊特性に優れたパーライト系レールの底部断面表面位置での呼称、および、微細で、かつ、ある一定範囲の硬さを有するパーライト組織が必要とされる領域を示したものである。
図2は、表1と表2に示す引張試験における試験片採取位置を図示したものである。
また、図3は、表1に示す本発明レール鋼(符号:A〜N)と表2に示す比較レール鋼(符号:R〜Y)の落重試験結果における炭素量と全試験片が未破断(4本中4本未破断)であった試験温度の関係を示したものである。
なお、各種試験は次の通りとした。
試験機:万能小型引張試験機
試験片形状:JIS4号相似
平行部長さ:25mm、平行部直径:6mm、
伸び測定評点間距離:21mm
試験片採取位置:レール足裏表面下5mm(図2参照)
引張速度:10mm/min
試験温度:常温(20℃)
試験機:落重試験機
試験片形状:141ポンドレール×1500mm
試験条件:スパン長:9140mm、落錘高さ:6000mm、落錘重さ:907kg 試験形態:2点支持式(レール頭部に落錘を落とす)
試験温度:−90〜+40℃
試験本数:各温度において4本
2:足先部
3:底部
W:レール底部の幅
Claims (12)
- 質量%で、C:0.65〜1.40%を含有するパーライト組織を呈する鋼レールにおいて、底部表面を起点として深さ10mmまでの範囲の少なくとも一部に、粒径1〜15μmのパーライトブロックが被検面積0.2mm2あたり200個以上存在することを特 徴とする耐落重破壊特性に優れたパーライト系レール。
- 質量%で、
C :0.65〜1.40%、
Si:0.10〜2.00%、
Mn:0.10〜2.00%
を含有するパーライト組織を呈する鋼レールにおいて、底部表面を起点として深さ10mmまでの範囲の少なくとも一部に、粒径1〜15μmのパーライトブロックが被検面積0.2mm2あたり200個以上存在することを特徴とする耐落重破壊特性に優れたパーラ イト系レール。 - 請求項1〜2記載の鋼レールにおいて、底部表面を起点として、少なくとも深さ10mmの範囲の硬さがHv300〜480の範囲であることを特徴とする耐落重破壊特性に優れたパーライト系レール。
- 質量%で、さらに、
Cr:0.05〜2.00%、
Mo:0.01〜0.50%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐落重破壊特性に優れたパーライト系レール。 - 質量%で、さらに、
V :0.005〜0.50%、
Nb:0.002〜0.050%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐落重破壊特性に優れたパーライト系レール。 - 質量%で、さらに、
B :0.0001〜0.0050%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐落重破壊特性に優れたパーライト系レール。 - 質量%で、さらに、
Co:0.10〜2.00%、
Cu:0.05〜1.00%
の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐落重破壊特性に優れたパーライト系レール。 - 質量%で、さらに、
Ni:0.01〜1.00%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の耐落重破壊特性に優れたパーライト系レール。 - 質量%で、さらに、
Ti:0.0050〜0.0500%、
Mg:0.0005〜0.0200%、
Ca:0.0005〜0.0150%
の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の耐落重破壊特性に優れたパーライト系レール。 - 質量%で、さらに、
Al:0.0100〜1.00%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の耐落重破壊特性に優れたパーライト系レール。 - 質量%で、さらに、
Zr:0.0001〜0.2000%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の耐落重破壊特性に優れたパーライト系レール。 - 質量%で、さらに、
N :0.0040〜0.0200%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の耐落重破壊特性に優れたパーライト系レール。
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