近年、画像やドキュメント等のデータ出力装置としてインクジェットプリンターが普及している。インクジェットプリンターは記録ヘッドに備えられたノズル等の記録素子をデータに応じて駆動させ、該ノズルから吐出されるインクによって記録紙などの被記録媒体(記録メディア)上にデータを形成することができる。
インクジェットプリンターでは、多数のノズルを有する記録ヘッドと被記録媒体とを相対的に移動させ、該ノズルからインク滴を吐出させることによって被記録媒体上に所望の画像が形成される。
インクジェット記録装置では高速印字及び高画質印字に対する要求が高くなり、インクの打滴周期の短縮化や被記録媒体の高速搬送などによって高速印字を実現している。
一方、高品質の画像を印字するために、画像を形成するドットを微細化すると共に高密度化を図ることで、高い階調表現や高解像度化を実現している。例えば、微小量のインクを打滴することでドットの微細化を実現し、且つ、インクを吐出させるノズルを高密度に形成することでドットの高密度化が実現される。ドットが高密度化されると、隣り合う位置に形成されるドット間ではその形成領域が互いに重なるようになる。
複数のドットが互いに重なるように形成されるドット列(ドット群)では、先に着弾したインク液滴の浸透完了前またはインク液滴の硬化完了前に次の液滴が着弾すると、後に着弾したインク滴が先に着弾したインク滴に引き寄せられ、本来のドット形成位置に本来の大きさのドットが形成されない着弾干渉が起こり得る。したがって、このような着弾時の液滴間の相互干渉(着弾干渉)を抑制するために、先に着弾したインクの浸透を待って次に着弾するインク滴を打滴するような打滴制御が行われる。しかし、先に着弾したインク滴の浸透を待って次の液が着弾する打滴制御では高速印字化の実現が困難である。
ここで、図13乃至図15を用いて、従来技術を更に具体的に説明する。
図13(a) 、(b) は、従来技術に係る吐出制御を説明する図である。
図13(a) には、インクジェット記録装置を用いて記録紙上に形成されるドット列200を示す。ドット列200では、同一直径Dを有するドット202、204、206、…、が同一ドット間ピッチPで同一ライン上に並べられている。
図13(a) において、ドット間ピッチPは各ドットの直径Dよりも小さく設定されており(即ち、D>P)、ドット列200は隣接するドットが互いに重なり合うように形成されている。
一方、図13(b) には、図13(a) に示した、ドット列200の各ドットを形成するインク滴を着弾したインク滴が記録紙に浸透完了する前に隣り合う打滴点にインク滴が打滴される打滴周期(打滴周波数)で打滴し、記録紙上に形成された線画240を示している。なお、一点破線で示した符号202’は線画240の本来形成されるべき(理論上の)形状を示している。また、ドット列200を形成するインク滴の打滴順序は矢印線Kに示す方向(図13(a) 中、左から右への方向)である。
ここで、ドットとは、一般に記録紙上に打滴されたインク滴が記録紙に定着することで形成される略円形状を示し、インク滴の浸透完了後に形成される略円形状を表す。本明細書では、インク滴の形状が崩れて略円形状とは異なる形状が形成される場合や、複数のインク滴が一体化する現象などによって複数の略円形状を重ねた形状と異なる形状が形成される場合に、各打滴点に形成される形状もドットと呼ぶことにする。
また、本インクジェット記録装置では、ある打滴点に打滴されたインク滴が記録紙へ浸透完了前に少なくとも前後左右の何れか1方向に隣り合う打滴点にインク滴が打滴される打滴周波数を持っている。例えば、ドット202を形成するインク滴が浸透完了する前にドット202と隣り合うドット204を形成するインクが記録紙上へ着弾するように打滴が行われる。
このように、記録紙上に着弾したインク滴(例えば、ドット202を形成するインク滴)が浸透完了する前に、当該インク滴によって形成されるドット(ドット202)に隣接するドット(ドット204)を形成するインク滴を吐出させると、先に着弾しているインク滴と後から着弾するインク滴とがつながり、一体となって画像を形成することになる。これは、連続して(同一量の)インク滴を打滴すると、打滴開始直後では、先に着弾したインク滴に後から着弾したインク滴が引き寄せられる凝集によって起こる現象である。
本来、ドット列200を形成するインク滴を連続打滴すると、線幅が均一な(線幅h=D)線画が形成されるはずであるが、上述した凝集によって、図13(b) に示すように、書き出し直後では、線幅h=D’(即ち、D’>D)となる線画240が形成される。
これは、本来直径Dのドット202が形成される打滴点に、凝集によって直径D’を有するドット202’が形成されることとほぼ等価であり、実際には線画240の線幅が不均一になってしまう。
更に具体的な例として、図14(a) 〜(d) 及び図15(a) 〜(c) に、1回の打滴の液滴量2pl、このインク滴によって単独でドットが形成される場合の各ドットの直径D=30μm 、ドット間ピッチP=10μm 、打滴周期がインク滴浸透時間の10% の打滴条件で2滴以上のインク滴を打滴したときに形成される線画242〜246を示す。
なお、図14(a) 〜(d) 及び図15(a) 〜(d) 中、図13(a) 、(b) と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図14(a) は、インク滴を1滴だけ打滴して1つのドット202が形成される場合を示す。インク滴を1滴だけ打滴すると、直径30μm のドットが1つだけ形成される。
また、図14(b) には、上記条件で5滴のインク滴を連続打滴した場合に形成される線画242を示す。なお、打滴の進行方向は矢印線Kに示す、図14(b) 上の左から右への方向とする。
図14(b) に示すように、先に着弾したインク滴の浸透完了前に次のインク滴が着弾するように打滴が行われると、通常、最初に着弾したインク滴へ次に着弾したインク滴が引き寄せられる。
これは、先のインク滴の着弾位置に所定量2plより多い量のインクが着弾し、後のインク滴の着弾位置に所定量2plより少ない量のインク滴が着弾したことと実質的に同じであり、これらのインク滴によって形成される形状は、本来形成されるべき同一ドット径を有する2つのドットがたし合わされた形状とは異なり、先に着弾したインク滴の着弾位置には本来形成されるドットより大きなドット径を有するドットが形成され、後に着弾したインク滴の着弾位置には本来形成されるドットより小さなドット径を有するドットが形成され、これらのドットがたし合わされた形状と実質的に同じである。
同様に、3滴目のインク滴は1滴目インク滴及び2滴目のインク滴が一体化したインク滴に引き寄せられ、先に着弾したインク滴側に後に着弾したインク滴が引き寄せられる現象が順次起こる。なお、先に着弾したインク滴側に後に着弾したインク滴が引き寄せられる割合(インクの変化量)は打滴の進行と共に小さくなる。
このようにして形成されるインクの浸透完了後の線画242の最終形状は、1滴目側(書き出し側、図14(b) では左端)の幅h1 (=40μm )が最終液滴側(書き終わり側)の幅hn (図14(b) ではh5 =20μm )より広くなる。また、書き出し側の濃度は書き終わり側の濃度より高くなる。これは、2滴目以降の液滴は先に着弾した書き出し側の液に引き寄せられることで、書き出し側(図14(b) では左側)は書き終わり側(図14(b) では右側)に比べて打滴液量が多くなることによる。
なお、書き出し側端の線幅h1 は本来の線幅30μm より大きい40μm となり、書き終わり側端の線幅h5 は本来の線幅30μm より小さい20μm になる。また、線画242の線幅は書き出し側から書き終わり側へ向かって徐々に小さくなる。
図14(c) は、10滴のインク滴を上記条件で連続打滴した場合に形成される線画244を示し、図14(d) は、60滴のインク滴を上記条件で連続打滴した場合に形成される線画246を示す。
図14(c) に示すように、10滴のインク滴から形成される線画244では、書き出し側の幅h1 は45μm であり、書き終わり側の幅hn (図14(c) ではh10)は20μm になり、また、線画244の幅は徐々に変化するのでその勾配(幅が変化する割合)はほぼ一定である。
一方、図14(d) に示すように、60滴のインク滴から形成される線画246では書き出し側の幅h1 は50μm であり、書き終わり側の幅hn (図14(d) ではh60)は15μm になる。但し、図14(d) に示す線画246の幅は、書き出し領域260、中間領域262、書き終わり領域264によってその勾配が異なる。
即ち、書き出し領域260では、線画246の幅はh1 (図14(d) では50μm )から徐々に減少してhi (図14(d) ではhi =30μm )になり、中間領域262では、線画246の幅はhi のまま変化せず、書き終わり領域264では、線画246の幅はhi から徐々に減少してhn (図14(c) ではh60=15μm )になる。
図15(a) 〜(d) には、図14(b) 〜(d) に示した線画242、244、246を形成するインクの立体形状(断面形状)を示す。
図15(b) 及び図15(c) に示すように、5〜10滴程度のインク滴から形成される線画242、244では、インク滴の高さが書き出し側から書き終わり側に向かって徐々にに変化する。
一方、図15(d) に示した線画246では書き出し領域260及び書き終わり領域264ではインク滴の高さが書き出し側から書き終わり側に向かって徐々に変化し、中間領域262ではインク滴に高さは変化しない傾向がある。
したがって、図14(a) 〜(d) 及び図15(a) 〜(d) に示すように、先に着弾したインク滴が浸透完了前に次に打滴されたインク滴が先に着弾したインク滴に重なるように着弾すると、記録紙上で起こる着弾干渉によって、形成される線画の幅が不均一になるといった現象が発生し、結果画像の品質を低下させてしまう。この現象は、太さの違いとしては視認されにくいが、濃度の違いとして視認され易く、特に複数の線画を並べて形成させると視認され易くなる。
なお、図13、図14に示した数値はあくまでも一例であり、インクの種類、記録紙 (記録メディア)の種類及びこれらの組み合わせによって異なってくる。
特許文献1に記載された記録方法及びその装置では、隣接するドットの相互干渉を防止するために、本来の記録データと補間データとを別々のヘッドスキャン中にそれぞれ出力して前記記録を行うように構成し、インク滲みやインク同士の混合が防止される。
特開平9−272226号公報
以下、図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示したように、このインクジェット記録装置10は、インクの色ごとに設けられた複数の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yを有する印字部12と、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター(第1のカッター)28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図1中不図示,図7中符号88として記載)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1上の時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹き付け、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙送り方向と直交方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。詳細な構造例は後述するが(図3乃至図5)、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yは、図2に示したように、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙16の送り方向(以下、記録紙搬送方向と記載)に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド12K,12C,12M,12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色ごとに設けられてなる印字部12によれば、副走査方向について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが主走査方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお、本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは不図示の管路を介して各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサを含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列と、からなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。吐出検出の詳細については後述する。
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
多孔質のペーパーに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパーの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
こうして生成されたプリント物は排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り替える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述
した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成される。
また、図1には示さないが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
次に、印字ヘッドの構造について説明する。インク色ごとに設けられている各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを示すものとする。
図3(a) は印字ヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図3(b) はその一部の拡大図である。また、図3(c) は印字ヘッド50の他の構造例を示す平面透視図、図4はインク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図3(a) 中の4−4線に沿う断面図)である。記録紙面上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、印字ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例の印字ヘッド50は、図3(a) 〜(c) 及び図4に示したように、インク滴が吐出するノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリックス状に配置させた構造を有し、これにより見かけ上のノズルピッチの高密度化を達成している。
即ち、本実施形態における印字ヘッド50は、図3(a) ,(b) に示すように、インクを吐出する複数のノズル51が印字媒体送り方向と略直交する方向に印字媒体の全幅に対応する長さにわたって配列された1列以上のノズル列を有するフルラインヘッドである。
また、図3(c) に示すように、短尺の2次元に配列されたヘッド50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、印字媒体の全幅に対応する長さとしてもよい。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。
圧力室52の天面を構成している加圧板56には個別電極57を備えたアクチュエータ58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ58が変形してノズル51からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
かかる構造を有する多数のインク室ユニット53を図5に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に配列させた構造になっている。主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなる。
すなわち、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。以下、説明の便宜上、ヘッドの長手方向(主走査方向)に沿って各ノズル51が一定の間隔(ピッチP)で直線状に配列されているものとして説明する。
なお、用紙の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1列のドットによるラインまたは複数列のドットから成るラインを印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図5に示すようなマトリクスに配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。即ち、ノズル51-11 、51-12 、51-13 、51-14 、51-15 、51-16 を1つのブロックとし(他にはノズル51-21 、…、51-26 を1つのブロック、ノズル51-31 、…、51-36 を1つのブロック、…として)記録紙16の搬送速度に応じてノズル51-11 、51-12 、…、51-16 を順次駆動することで記録紙16の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1列のドットによるラインまたは複数列のドットから成るラインの印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
なお、本実施形態では、フルライン型印字ヘッドを例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、主走査方向に印字ヘッドを走査させながら主走査方向の1ラインを形成するシャトル型印字ヘッドを適用してもよい。
更に、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。主走査方向にノズル列を1列備えた印字ヘッドを適用してもよい。
また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ58の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
図6はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。
インク供給タンク60はインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インク供給タンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。なお、図6のインク供給タンク60は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
図6に示したように、インク供給タンク60と印字ヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図6には示さないが、印字ヘッド50の近傍又は印字ヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面の清掃手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。
これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によって印字ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル面をキャップ64で覆う。
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。このような状態になると、アクチュエータ58が動作してもノズル51からインクを吐出できなくなってしまう。
このような状態になる前に(アクチュエータ58の動作により吐出が可能な粘度の範囲内で)アクチュエータ58を動作させ、その劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)を排出すべくキャップ64(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き、ダミー吐出)が行われる。
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室52内)に気泡が混入した場合、アクチュエータ58が動作してもノズルからインクを吐出させることができなくなる。このような場合には印字ヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。
この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室52内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構(ワイパー)により印字ヘッド50のインク吐出面(ノズル板表面)に摺動可能である。ノズル板にインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズル板に摺動させることでノズル板表面を拭き取り、ノズル板表面を清浄する。なお、該ブレード機構によりインク吐出面の汚れを清掃した際に、該ブレードによってノズル51内に異物が混入することを防止するために予備吐出が行われる。
図7はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ74に記憶される。メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって後乾燥部42等のヒータ89を駆動するドライバである。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して印字ヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミング、インク液滴の飛翔速度の制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図7において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yのアクチュエータを駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
不図示のプログラム格納部には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ72の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。前記プログラム格納部はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。
なお、前記プログラム格納部は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
印字検出部24は、図1で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供する。
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいて印字ヘッド50に対する各種補正を行う。
なお、図1に示した例では、印字検出部24が印字面側に設けられており、ラインセンサの近傍に配置された冷陰極管などの光源(不図示)によって印字面を照明し、その反射光をラインセンサで読み取る構成になっているが、本発明の実施に際しては他の構成でもよい。
〔第1実施形態〕
次に、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置10の打滴制御について詳述する。
本インクジェット記録装置10では、短い時間間隔(例えば、先に着弾したインク滴の10%が記録紙16に浸透する時間以内に、後のインク滴が着弾する場合等)で連続して打滴されたインク滴によって線画を形成する際に、従来技術に記載した着弾干渉(凝集)が発生しても該線画の全長にわたって線幅hが略均一になるように打滴制御が行われる。
凝集は、後に着弾するインク液滴と後に着弾するインク滴の着弾する瞬間における先に着弾した記録紙16表面上のインク液滴の大小関係に依存する。先に着弾したインク液滴と後に着弾するインク液滴との量(吐出体積)が等しくても、先に着弾したインク液滴と後に着弾するインク液滴が記録紙16表面上で重なって打滴される場合、後に打滴されるインク液滴が着弾する瞬間に先に着弾したインク液滴に引き寄せられて、先に着弾したインク液滴の液滴径は大きくなり、後に着弾するインク液滴の液滴径は、本来単独で着弾するときの液滴径より小さくなる。
また、図13、図14に示した線画240〜246の勾配は、ドット間ピッチP(打滴間隔)を近づけると大きくなる傾向があり、また、インク滴の浸透量が少ないと(即ち、記録紙16表面上に残っているインクの非浸透量が多いと)大きくなる傾向がある。
本打滴制御では、先に着弾したインク液滴と後に着弾するインク液滴を記録紙16上で重ねて打滴する場合、先に着弾したインク液滴径と後に着弾するインク液滴径とを、略同一にするように、後に打滴するインク液滴量を先に打滴したインク液滴量より大きくするように制御する。また、次滴の打滴量を大きくする割合は、ドット間ピッチ、前記インクの非浸透量、インクの表面張力等に応じて決められる。
インクの浸透速度はインクの種類及び記録紙16(記録メディア)の種類に依存するので、インクの非浸透量に応じて打滴量を増やす割合を決める場合には、インクの種類情報及び記録紙16の種類ごとにインクの浸透時間情報を予め記録しておくとよい。
ここで、インク滴径とは、記録紙16に浸透せず、表面上に残っている非浸透状態のインク滴を記録紙16(記録メディア)の表面に投影した略円形状の直径を示す。これは、記録紙16上で非浸透状態のインク滴が占有する領域の大きさに相当する。
即ち、インク滴が記録メディア(ここでは記録紙16)に着弾すると、該インク滴は着弾直後から一定期間は記録メディア上で徐々に広がり続け、着弾から所定の時間経過後は記録メディアへのインク滴の浸透の進行に応じてインク滴の非浸透量が減少し、記録メディア表面上の液滴径は徐々に小さくなり、インク滴の浸透完了時にはインク滴の非浸透量がゼロになるので、液滴径はゼロになる。
図8(a) は、ドット間ピッチPで等間隔に並べられたドット100、102、104、106、…、を含むドット列120を示し、図8(b) は、図8(a) に示したドット列120を形成するインク滴を、該インク滴の10%の量が浸透するまでの時間の打滴間隔で、矢印線Kに示す方向(図8中、左から右方向)に連続打滴したときに形成される線幅h=Dの線画140を示す。ドット列120は各ドット間における着弾干渉等が起こらずに各ドットが形成される場合(即ち、理想的に形成された各ドットを含んだドット列)を示している。
即ち、本打滴制御では、非浸透状態の残存液滴量が着弾情時の液滴量の90%(0.9)になるまでの時間間隔で打滴が行われ、1滴目のインク滴(図8(a) ではドット100を形成するインク滴)が着弾後に2滴目のインク滴(図8(a) ではドット102を形成するインク滴)が着弾する際に、2滴目の着弾した瞬間のインク滴径を、1滴目のインク滴径と略同一になるように、1滴目の打滴量及び2滴目の打滴量のうち少なくとも一方の打滴量を変更する打滴制御が実行される。
図8(a) に示す態様では、1滴目のインク滴によってドット100が形成され、2滴目のインク滴によってドット102が形成され、3滴目のインク滴によってドット104、4滴目のインク滴によってドット106が形成される。以降、順次所定の打滴周期でインク滴の打滴が行われ、図8(b) に示す線画140が形成される。
1滴目の打滴量をv1 、2滴目の打滴量をv2 、3滴目の打滴量をv3 、4滴目の打滴量をvc 、…、とすると、本打滴制御では、v1 <v2 <v3 <vc となるようにインクの打滴量が制御される。
なお、図8(a) に示す態様では、4滴目以降の打滴量は略同一であり、その打滴量はvc である。もちろん、4滴目以降の打滴量を徐々に変えてもよい。
ここで、ドット100は打滴量v1 のインクが所定の打滴点に形成し得るドットであり、その直径はD1 になる。同様に、ドット102のドット径はD2 となり、ドット104のドット径はD3 、ドット106のドット径及びドット106の後に打滴されるインクはDc となる。
但し、ここでいうドット102〜106は仮想的なドットであり、各インク滴が単独で打滴された場合に所定の打滴点(着弾点)に形成し得るドットを示している。各インク滴は着弾時に起こる凝集によって一体化され、この一体化したインク滴の形状に応じた形状が形成される。
また、線画140の線幅h=Dを実現するために、各ドットの打滴量v1 〜v3 及びvc が調整される。2滴目以降の打滴量が増えることを考慮すると、少なくともh>D1 となる。
図8(c) には、1滴目から10滴目までの打滴量v1 〜v10を徐々に変え、11滴目以降の打滴量を10滴目の打滴量v10(=vc )とする態様を示す。図8(c) に示すように、ドット100〜ドット110のドット径は、D1 〜D10であり、D1 <D2 <D3 <…<D9 <D10=D11=Dc となる。図8(c) に示す態様は、比較的長い線画を形成する場合に好適である。
また、着弾時のインク滴の液滴径を大きくするには、打滴量を大きくする方法の他に、インク滴の飛翔速度を大きくしてもよい。
3滴目以降のインク滴についても、1滴目のインク滴に比べて打滴量或いは飛翔速度を変えてもよいし(段階的に打滴量或いは飛翔速度を変えてもよい)、直前に打滴されたインク滴に比べて打滴量或いは飛翔速度を変えてもよい(連続的に打滴量或いは飛翔速度を変えてもよい)。
このように、飛翔速度を変えることで、インク液滴が着弾した際の記録紙16との接触面積が変わり、前述した打滴量制御と同等の効果を得られる。
図9(a) には、1滴あたり2pl、直径30μm のドットを形成し得る5滴のインク滴によって形成される長さ70μm の線画142を示し、図9(b) 及び図9(c) には、それぞれ10滴のインク滴によって形成される長さ120μm の線画144及び60滴のインク滴によって形成される長さ620μm の線画146を示している。なお、線画の長さは上記の値より小さくなることがある。
図9に示すような全長の長い線画146を形成する場合、図14(d) に示すように、書き出し領域260及び書き終わり領域264において線幅が変化しているので、打滴量の変更制御或いは飛翔速度の変更制御は書き出し領域260及び書き終わり領域264に適用し、中間領域262では打滴量の変更制御或いは飛翔速度の変更制御を行わずに打滴を行ってもよい。また、打滴量の変更制御或いは飛翔速度の変更制御を書き出し領域260のみに適用してもよい。
本実施形態では書き出し領域260及び書き終わり領域264はそれぞれ10滴(図14(d) では書き出し側端部から60μm を書き出し領域260、書き終わり側端から60μm を書き終わり領域264)としている。もちろん、書き出し領域260及び書き終わり領域264は10滴(10回の打滴)に限定されず、記録紙の種類やインクの種類に合わせて適宜変更できる態様が好ましい。更に好ましくは、記録紙の種類やインクの種類を判断し、書き出し領域260及び書き終わり領域264を自動的に切り換える態様である。
図9(a) 〜図9(c) に示す線画142〜146は、各インク滴が単独でドットを形成する際のドット径(図9(a) 〜図9(c) では30μm )と略同一幅h(30μm )を有する。なお、図9(a) 〜図9(c) に示した数値はあくまでも一例であり、本発明の適用範囲を示すものではない。
更に、インク滴数が5滴を超えるような連続印画の場合、徐々に打滴量を増やすように打滴量を調整することで、均一な幅を持った線画の形成が可能になる。
上記の如く構成されたインクジェット記録装置10における打滴制御では、ある液滴が浸透完了する前に周辺の(隣接する)液滴が着弾し、一体となって画像を形成する場合、元画像が同一濃度のライン状の場合でも、ある液滴とその周辺の液滴の打滴量(吐出量)が異なるように打滴制御を行うので、1ラインの印画濃度を一定にすることができると共に、1ラインの印画結果を一定形状に形成することができ、より高精細な印画が可能となる。
〔第2実施形態〕
次に、図10(a) 、(b) 及び図11を用いて本発明の第2実施形態に係る打滴制御を説明する。
図10(a) は、本打滴制御を適用して形成される線画140’となるドット列120’を示し、図10(b) は線画140’を示している。なお、図10(a) 、(b) 中、図8と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
本打滴制御では、連続打滴によって幅h=Dの線画140を形成する場合に、書き出し領域の線幅が大きくなるのを見越して、書き出し直後のインク滴の打滴量を予め少なくしておき、その後、徐々に本来の打滴量に近づくように打滴量を増やす制御が行われる。
即ち、1滴目のインク滴のインク量v1'(インク滴が単独でドット100’を形成する場合のドット径D1'、但し、D>D1')、2滴目のインク滴のインク量v2 ’(インク滴が単独でドット102’を形成する場合のドット径D2 ’)、3滴目のインク滴のインク量v3'(インク滴が単独でドット104’を形成する場合のドット径D3 ’)、4滴目のインク滴以降の打滴量をvc'(インク滴が単独でドット106’を形成する場合のドッ
ト径Dc')とすると、v1'<v2'<v3'<vc'(D1'<D2'<D3'<Dc')となるように打滴制御が行われる。その結果、線画140の線幅を全長にわたって略均一にすることができる。
なお、本例においても、第1実施形態に示すように、全長の長い線画を形成する場合には、少なくともその書き出し領域及び書き終わり領域に本打滴制御を適用すればよい。
次に、各インク滴の打滴量を変化させる割合(補正量)を図11に示すグラフによって決める態様を説明する。
書き出し領域(例えば、図14(d) の符号260)において、1番目に打滴されるインク滴の打滴量をv1 、2番目に打滴されるインク滴の打滴量をv2 、3番目に打滴されるインク滴の打滴量をv3 、…i番目に打滴されるインク滴の打滴量をvi 、中間領域(例えば、図14(d) の符号262)におけるインク滴の打滴量をvc (固定量)とし、v1/vc <v2/vc <v3/vc <…<vi/vc 、となるように打滴量v1 、v2 、v3 、…、vi 、を制御する。
ここで、G1 =v1/vc 、G2 =v2/vc 、G3 =v3/vc 、…、Gi =vi/vc と定義すると、G1 、G2 、G3 、…、Gi の変化のパターンを図11のグラフ180のように設定する。
即ち、凝集による表面液滴(記録紙16の表面にあるインク滴)の引っ張りの程度が大きいほど、補正する打滴量の補正の度合いを強くするように制御される。
例えば、先に着弾したインク滴の表面液滴と後に着弾したインク滴の表面液滴との重なり量及び、表面液滴の表面張力の大小によって、グラフ180のパターンA、B、C、Dを選択する。
前記重なり量及び表面張力が小さい時にはグラフ180のパターンDを用い、これらが大きくなるに従って、パターンC、パターンB、パターンAといったように補正量の割合を切り換える制御が行われる。
即ち、図11に示すグラフ180には、パターンA、パターンB、パターンC、パターンDに応じて表面液滴の重なりもしくは表面液滴の表面張力が小さくなるにつれての打滴量の比がプロットされている。
なお、各パターンにおけるインクの打滴量をデータテーブル化して、図7に示したメモリ74等の記録手段に予め記録しておき、連続打滴を行う際に該データテーブルを参照しながら打滴制御を行ってもよい。
なお、図11のグラフ180に示した補正パターンは直線での補正例を示したが、例えば、x1/2 のような曲線を用いてもよい。
また、本例と同様の方法を用いて打滴量の補正だけでなく飛翔速度の補正を行うことも可能である。
図12(a) 〜(c) には、先に記録紙16上に着弾したインク滴の残存液適量が着弾時の90%の体積になるタイミングで次のインク滴が着弾するようにインク打滴を制御する例を示す。
図12(a) には1滴目(先に着弾した)インク滴100’を示す。このインク滴100’が記録紙16に浸透して、図12(b) に符号100”で示す(実線で図示)、着弾時の90%の体積(液滴量)になるタイミングで、2滴目(次に着弾する)インク滴を記録紙16に着弾させるように打滴制御が実行される。このときに、このような打滴制御では、打滴周波数を落とすことなく、全域にわたって線幅が略均一な線画を形成することが可能になる。
なお、後に着弾するインク滴の着弾時において、後に着弾するインク滴の直径は先に着弾したインク滴の直径と略同一になることが好ましい。
上記の如く構成されたインクジェット記録装置10における打滴制御では、予め、書き出し直後の線幅が大きくなることを見越して、書き出し領域の打滴量を所定の量より少なくなるように制御するので、線画140’の全長にわたって線幅を均一化できると共に、所望の線幅(本来の線幅)とすることができる。また、打滴量を変える割合を液滴の重なり量及び液滴間の表面張力に応じて変更することができるので、ドット径の均一化をより確実に行うことができる。
上述した実施形態では、ある方向(例えば、主走査方向)に略直線形状の線画140等を形成する態様を例示したが、本発明は曲線形状の線画や直線と曲線を組み合わせた線画を形成する際にも適用可能である。
また、線画の形成方向は副走査方向に限らず、主走査方向でもよいし、主走査方向の成分と副走査方向の成分を持つ斜め方向でもよい。
本実施形態の応用例として、以下の態様がある。
奇数番目の打滴点へ打滴を行う印字ヘッドと偶数番目の打滴点へ打滴を行う印字ヘッドとを組み合わせた印字ヘッドでは、奇数番目の打滴点へ同時に打滴を行い、短い時間間隔(例えば、図12に示すように、残存インク滴量が着弾時のインク滴量の90%になるまでの時間)の打滴周期で奇数番目の打滴点に打滴を行い、計3滴以上の液を打滴すると、後から打滴された液滴の広がりを片方の液滴のみに偏らせることなく両側の液滴に均等に引き寄せられるようにしてもよい。もちろん、奇数番目の打滴点へ打滴を行う印字ヘッドと偶数番目の打滴点へ打滴を行う印字ヘッドとを別々に備えてもよい。
上述した実施形態では液滴の吐出ヘッドとしてインクジェット記録装置に用いられる印字ヘッドを例示したが、本発明は、ウエハやガラス基板、エポキシなどの基板類等の被吐出媒体上に液類(水、薬液、レジスト、処理液)を吐出させて画像、回路配線、加工パターンなどの立体形状を形成させる液吐出装置に用いられる吐出ヘッドにも適用可能である。
10…インクジェット記録装置、50…印字ヘッド、72…システムコントローラ、74…メモリ、80…プリント制御部、100,102,104,106,202,204,206…ドット