JP2005306902A - コーティング用シリコーン溶液、およびシリコーン化合物の塗布方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】環境への影響がなく、優れた滑り性を発現できるコーティング用シリコーン溶液の提供、および物品表面にシリコーン化合物の被膜を形成させるシリコーン化合物の塗布方法の提供。
【解決手段】注射針の針管部等の物品表面にシリコーン化合物と、ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロフルオロエーテルからなる含フッ素系溶剤とを含有するコーティング用シリコーン溶液を塗布し、含フッ素系溶剤を蒸発除去することにより、物品表面にシリコーン化合物の被膜を形成させる。含フッ素系溶剤として、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル等を用いる。
【選択図】なし
【解決手段】注射針の針管部等の物品表面にシリコーン化合物と、ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロフルオロエーテルからなる含フッ素系溶剤とを含有するコーティング用シリコーン溶液を塗布し、含フッ素系溶剤を蒸発除去することにより、物品表面にシリコーン化合物の被膜を形成させる。含フッ素系溶剤として、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル等を用いる。
【選択図】なし
Description
本発明は、コーティング用シリコーン溶液、および物品表面にシリコーン化合物の被膜を形成させるシリコーン化合物の塗布方法に関する。
従来、注射針に、シリコーン化合物と溶媒とからなるシリコーン溶液を塗布して注射針の表面にシリコーンの被膜を形成し、注射針の滑り性を向上させる方法が知られている。上記シリコーン溶液としては、通常、シリコーン化合物の濃度が30〜50質量%のものが販売されており、使用にあたっては、これをさらに有機溶媒で希釈して、シリコーン濃度が2〜5質量%程度として使用するのが一般的である。
このとき使用される希釈用の有機溶媒としては、クロロフルオロカーボンである1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン(特許文献1参照。)、ハイドロクロロフルオロカーボン(特許文献2参照。)等のフロン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム等の塩素含有炭化水素、ヘキサン、トルエン等の炭化水素、メタノール、エタノールなどのアルコール類等が挙げられる。なかでもフロン系溶剤は、得られるシリコーンの皮膜が良好な状態で形成され、優れた滑り性を発現することから、好ましく用いられてきた。
しかし、上記フロン系溶剤は環境への悪影響が大きく、ハイドロクロロフルオロカーボンについても、オゾン破壊係数を有するため、先進国においては2020年に生産が全廃されることが決まっている。よって、本用途においても、フロン系溶剤から他の有機溶媒への転換が求められている。
本発明は、環境への悪影響がなく、かつ、優れた滑り性を発現できるコーティング用シリコーン溶液の提供、および物品表面にシリコーン化合物の被膜を形成させるシリコーン化合物の塗布方法の提供を目的とする。
本発明は、シリコーン化合物と、ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロフルオロエーテルからなる含フッ素系溶剤とを含有することを特徴とするコーティング用シリコーン溶液である。
また、本発明は、物品表面に上記コーティング用シリコーン溶液を塗布し、上記含フッ素系溶剤を蒸発させて除去することにより、物品表面にシリコーン化合物の被膜を形成させるシリコーン化合物の塗布方法である。
本発明によれば、シリコーン化合物を溶解させる溶剤として、ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロフルオロエーテルからなる含フッ素系溶剤を使用することにより、膜厚が均一で乾きムラやハジキ現象のない硬質シリコーン被膜を形成できる。よって、シリコーン皮膜が形成された物品の表面は、優れた滑り性を発現し、その耐久性も良好である。
本発明において、シリコーン化合物としては、表面コーティング用に市販されている各種のシリコーンを使用できる。具体的には、特公昭46−3627号公報に記載のアミノアルキルシロキサンとジメチルシロキサンとの共重合体を主成分とするもの、特公昭61−35870号公報または特公昭62−52796号公報に記載のアミノ基含有シランとエポキシ基含有シランの反応生成物と、シラノール基を含有するポリジオルガノシロキサンとの反応生成物を主成分とするもの、特開平7−178159号公報に記載の側鎖および/または末端にアミノ基を含有するシリコーンとポリジオルガノシロキサンからなるシリコーン混合物、特開平10−309316号公報に記載のアミノ基含有アルコキシシランとエポキシ基含有アルコキシシランおよび両末端にシラノール基を有するシリコーンを反応させて得られたシリコーンと非反応性シリコーンとの混合物等が挙げられる。
また、本発明においては、含フッ素系溶剤としては、ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロフルオロエーテルが用いられる。これらは塩素原子を含まない化合物である。
ここで、ハイドロフルオロカーボンとしては、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンが挙げられる。
また、ハイドロフルオロエーテルとしては、パーフルオロブトキシメタン、パーフルオロブトキシエタン、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテルが挙げられる。
なかでも、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテル、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンは、各種有機物に対する溶解性に優れ、適度な沸点であり、乾燥が早い、安定性が高い、引火点を有しない不燃性溶媒であるため取り扱いが容易である、注射針等の物品を浸漬させて使用した後に容易に再生し、繰り返し利用できる点で特に好ましい。
本発明において、含フッ素系溶剤は酸分が1ppm以下であることが好ましい。酸分が1ppmを超える場合は、長期間保存する場合、注射針等に錆が発生する要因となり得るため衛生上好ましくない。
また、含フッ素系溶剤は、本発明の特徴を損なわない範囲で、低級アルコール類、炭化水素類またはケトン類からなる有機溶媒を含んでいてもよい。含フッ素系溶剤における上記有機溶媒の含有割合は、通常、10質量%以下程度とするのが好ましい。
具体的には、低級アルコール類としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、炭化水素類としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ケトン類としてはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが好ましい。これらはシリコーン化合物と含フッ素系溶剤との相溶性を高め、シリコーン溶液が塗布されるときの均一性を向上することができる。
また、含フッ素系有機溶剤として、上記有機溶媒を含有するものを用いる場合は、含フッ素系溶剤と、上記有機溶媒とが共沸または共沸様組成を形成する組成比で混合して用いるのが好ましい。この場合は、使用後のコーティング溶液を再生して使用する場合に、組成の調整をする必要がない点で好ましい。
本発明のコーティング用シリコーン溶液におけるシリコーン化合物の含有割合は、0.1〜80質量%、特には1〜20質量%であるのが好ましい。0.1質量%未満では、十分な膜厚のコーティング被膜が形成されにくく、80質量%を超えると、均一な膜厚のコーティング被膜が得られにくい。
本発明の方法においては、物品表面にコーティング用シリコーン溶液を塗布し、シリコーン溶液中の含フッ素系溶剤を蒸発除去することにより、物品表面にシリコーン化合物の皮膜を形成する。本発明の方法を適用できる物品としては、金属部品、樹脂部品、セラミックス部品、ガラス部品などの各種材質に適用でき、カテーテル等のチューブ類のコネクタ、注射器のシリンジ部分、注射針の針管部等が挙げられるが、特には、注射針の針管部に好ましく適用できる。
シリコーン溶液を注射針の針管部に塗布する方法としては、注射針の針管部分を溶液に浸漬する方法が一般的であるが、シリコーン溶液を含浸させた媒体と針管の外表面とを接触させる方法によっても可能である。そして、シリコーン溶液を塗布した後、室温あるいは加温下に放置して含フッ素系溶媒を蒸発させ、シリコーンの被膜を形成させる。
シリコーン被膜処理が形成された注射針は、包装した後に滅菌を行う。滅菌方法としては各種の方法が知られているが、ガンマ線滅菌法を採用すると、滑り性の低下もなく効率的に滅菌できる点で好ましい。
以下、本発明を、実施例(例1〜3)を用いて説明する。
コーティング用のシリコーン溶液(信越化学工業社製品名:X−22−8100A、シリコーン有効成分50質量%、溶媒トルエン50質量%)を、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル(例1)、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテル(例2)、または1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン(例3)で希釈し、シリコーン有効成分が3質量%の溶液を調整する。
注射針を、上記各溶液中に1分間浸漬して引き上げ、室温で1昼夜放置した後の滑り性を評価する。例1〜3のいずれの溶液を用いた場合も、得られる注射針は良好な滑り性を発現する。
本発明のコーティング用シリコーン溶液は、カテーテル等のチューブ類のコネクタ、注射器のシリンジ部分、注射針の針管部等の表面へのシリコーン化合物の皮膜の形成に適用できる。
Claims (4)
- シリコーン化合物と、ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロフルオロエーテルからなる含フッ素系溶剤とを含有することを特徴とするコーティング用シリコーン溶液。
- 含フッ素系溶剤が、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテルまたは1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサンである請求項1に記載のコーティング用シリコーン溶液。
- 物品表面に請求項1または2に記載のコーティング用シリコーン溶液を塗布し、上記含フッ素系溶剤を蒸発除去することにより、物品表面にシリコーン化合物の被膜を形成させるシリコーン化合物の塗布方法。
- 物品が注射針の針管部である請求項3に記載のシリコーン化合物の塗布方法。
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