JP2005226083A - 固体酸化物型燃料電池セパレータ用フェライト系ステンレス鋼 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 C:0.03質量%以下,Si:1.0質量%以下,Mn:1.5質量%以下,S:0.01質量%以下,N:0.03%以下,Cr:11.0〜20.0質量%を含み、必要に応じてさらに、Mo:3.0質量%以下,Cu:1.5質量%以下,Nb:0.05〜0.80質量%,Ti:0.03〜0.50質量%,Y:0.001〜0.1質量%,希土類元素:0.001〜0.1質量%,Ca:0.001〜0.01質量%の1種又は2種以上を含み、残部が実質的にFeからなる組成を有するフェライト系ステンレス鋼の表面に機械研磨を施して、JIS B0601で規定される表面粗さRaで0.05〜50μmの機械研磨仕上面を得る。
【選択図】 なし
Description
燃料電池には、用いられる電解質の違いによりリン酸型燃料電池,溶融炭酸塩型燃料電池,固体高分子型燃料電池等、いくつかの種類があるが、その中でも、固体酸化物型の燃料電池(SOFC)は作動温度,エネルギー効率ともに燃料電池の中では最も高く、実用化が最も有望視されている燃料電池である。
しかしながら、近年になって、固体電解質膜の改良により、600〜800℃程度まで作動温度の低下が可能となった。低温作動型の固体酸化物型燃料電池(SOFC)を構成するセパレータに金属材料を適用するためには、600〜800℃の温度域で50mΩ・cm2以下なる良好な電気伝導性や、数10%の水蒸気を含む高温雰囲気においても優れた耐水蒸気酸化性、さらにはセラミックス系固体電解質膜と同等の熱膨張係数(室温〜800℃で13×10-6(1/K)程度)を十分に満足できる特性が必要である。
固体酸化物型燃料電池用の部材としては、熱膨張係数が固体電解質膜と同程度であり、熱膨張・熱収縮を受けても熱変形・スケール剥離が発生しないフェライト系ステンレス鋼が最適である。
そして、熱膨張係数の調整や、表面に形成される酸化皮膜の特性の改良等を目的として、フェライト系ステンレス鋼の合金組成を調整する技術に関して、例えば特許文献1〜6にみられるように、種々の提案がなされている。
しかしながら、実際の燃料電池におけるセパレータの導電部は数10%以上の水蒸気を含む雰囲気に曝されることになる。このため、セパレータは水蒸気雰囲気特有の酸化(以下「水蒸気酸化」と称す。)を受け、損傷されたり電気抵抗が低下したりする。このような問題を起させないためには、少なくとも20質量%を超えるCrを含有させる必要がある。
その一方で、20質量%を超えるCrを添加すると475℃脆化感受性が著しく低下し、使用中にセパレータが硬化し、破損することにも繋がることがある。加えて、Crの増加によりコストアップにもなっている。
本発明のフェライト系ステンレス鋼には、さらに、Nb:0.05〜0.80質量%,Ti:0.03〜0.50質量%,Y:0.001〜0.1質量%,希土類元素:0.001〜0.1質量%,Ca:0.001〜0.01質量%の1種又は2種以上を含むこともできる。
したがって、本発明により、耐久性に優れたセパレータ用材料が低コストで提供されるので、固体酸化物型燃料電池のコストダウン,性能及び耐久性の向上が見込まれ、固体酸化物型燃料電池の普及促進に寄与できる。
この点が、フェライト系ステンレス鋼を用いる上で問題となっている。
高温雰囲気における水蒸気酸化は大気中における酸化よりも損傷が大きく、鋼素地を減肉させて変形,穴開き等のトラブルを発生させる原因となっている。
しかし、本発明者等は、この水蒸気酸化は、ステンレス鋼表面に生成するCr系酸化物を主体とした酸化皮膜を安定化することにより抑制できると推測した。以下に、その機構と対策について説明する。
機械研磨を施すことにより、金属表層に転位やすべり帯が多数形成され、表層から所定の深さまでは研磨による歪みの影響を受けることになる。歪みの影響により表層所定厚み範囲のCrの表層への拡散を促し、結果として、酸化のごく初期においてFe,Mn系のポーラスな酸化皮膜を生成させることなく、ステンレス鋼の表層にCrの緻密な酸化皮膜を形成することができる。
すなわち、前述の通り、Cr酸化物を酸化のごく初期に形成させ、鋼の最表層でのFe,Mn系のスピネル構造をもつ酸化物の生成を抑止させることである。Cr系酸化物皮膜を形成させることにより、Fe,Mnの外方への拡散が抑制され、Fe,Mn系酸化物生成の進行が抑止される。その結果、緻密で密着性がよく、欠陥の少ないCr系酸化物皮膜が、耐水蒸気酸化性を向上させるだけでなく、高温域における電気抵抗を低減させ電気伝導度をも向上させることができる。
なお、本明細書中に記載している「機械研磨」には、研磨材,研磨砥石,研磨布を用いて人力で、あるいは機械力で行うベルト研磨,手研磨,バフ研磨などの乾式又は湿式の機械研磨はもちろん、同様な効果が得られる研削やショットブラストも含まれる。
C:0.03%以下,N:0.03%以下
Cは、高温強度、特にクリープ特性を改善する合金成分である。しかし、フェライト系ステンレス鋼に過剰添加すると加工性,低温靭性等が著しく低下する。また、TiやNbとの反応によって炭窒化物を生成しやすく、高温強度の改善に有効な固溶Tiや固溶Nbを減少させる。したがって、本成分系では、C,N含有量は少ない程好ましく、ともに上限を0.03%に設定した。
Cr系酸化物の安定化に有効な合金成分であり、耐水蒸気酸化性の改善に有効な成分である。しかし、1.0%を超える過剰量のSiが含まれると、表層に電気抵抗が高いSiO2の酸化物層を形成し、電気伝導度を低下することになる。しかも、低温靭性を低下するばかりでなく、製造性も低下し、鋼表面に疵が生成しやすくなる。このため、Si含有量の上限は1.0%に設定した。
フェライト系ステンレス鋼のスケール剥離性の改善に有効な合金成分である。しかし、過剰量のMnが含まれると鋼材が硬質化し、加工性及び低温靭性が低下する。したがって、Mn含有量の上限は1.5%に設定した。
S:0.01%以下
熱間加工性,耐溶接高温割れ性に悪影響を及ぼす成分であり、異常酸化の起点にもなる。そのため、S含有量は可能な限り低くすることが望ましく、0.01%を上限とした。
ステンレス鋼に必要な耐食性,耐酸化性,電気伝導性を付与する上で不可欠な合金成分である。600℃前後での耐水蒸気酸化性及び良好な電気伝導性を確保するためには、11.0%以上のCrが必要である。しかし、20%を超えるCrの添加は、フェライト系ステンレス鋼の加工性,低温靭性及び475℃脆化感受性を低下させる。したがって、Cr含有量の上限は20.0%に設定した。
Mo:3.0%以下
Moは固溶強化により高温強度及び耐熱疲労特性を向上させるため、特に熱疲労特性が必要とされる場合に添加される。過剰量のMoの添加は、鋼材コストの上昇を招くばかりでなく,過度の硬質化を招くので、添加する場合は3.0%を上限とする。
Cu:1.5%
Cuは固溶又は析出硬化により高温強度を向上させるため、特に高温強度が必要とされる場合に添加される。過剰量のCuが含まれると鋼材が過度に硬質化するので、添加する場合は1.5%を上限とする。
Nb:0.05〜0.80%,
Ti:0.03〜0.50%,
Nb,Tiは析出硬化によりフェライト系ステンレス鋼の高温強度を向上させ、熱疲労特性を改善する作用を有している。その効果を発揮させるには、Nbは0.05%以上、Tiは0.03%の含有が必要である。しかし、過剰量のNb,Tiが含まれると鋼材が過度に硬化して靭性低下に繋がるので、Nb及びTi含有量の上限はそれぞれ0.80%および0.50%に設定した。
希土類元素(La,Ce,Nd等):0.001〜0.10%
Ca:0.001〜0.01%
いずれも酸化皮膜中に固溶し、酸化皮膜を強化させ、フェライト系ステンレス鋼の耐食性及び耐酸化性をさらに向上させる。特に、Yは酸化皮膜中の電気伝導度を向上させる。0.001%以上のY,0.001%以上のLa,Ce,Nd等の希土類元素,0.001%以上のCaの添加でその効果が顕著になる。しかし、過剰量のY,希土類元素(La,Ce,Nd等),Caが含まれると鋼材が過度に硬化し、製造時に表面疵が生じやすくなるばかりでなく、製造コストの上昇を招く。したがって、それらを添加する場合は、Y及び希土類元素は0.10%を、Caは0.01%を上限とする。
また、耐熱性の改善に有効なTa,W,V,Zrや、熱間加工性の改善に有効なB,Mg,Co等の元素も必要に応じて添加してもよい。
各フェライト系ステンレス鋼の冷延焼鈍板から試験片を切り出した。最終仕上条件として、JIS G4305で規定した2D仕上を施したままのもの、この冷延焼鈍板を最終仕上条件として湿式研磨によりJIS B0601で規定されるRaで0.03μm,0.10μm,25μm,68μmとなる番手で施した研磨材との5種類の仕上材で、高温水蒸気酸化試験に供した。
試験後の重量を試験前の重量と比較し、重量変化が0.2mg/cm2以下を○、それを超える重量変化があったものを×として、耐水蒸気酸化性を評価した。酸化が生じていないもの程、酸化皮膜の環境遮断機能が強く、耐水蒸気酸化性に優れているといえる。
この研磨仕上円板を、半径10mmのイットリア安定化ジルコニア製固体酸化物の円板で両面から挟み込み、当該挟み込み測定試料の上下に電流供給用の白金電極を配置し、研磨仕上円板とジルコニア製固体酸化物円板の接触面の面圧が1.9kg/cm2となるように白金電極上に錘を乗せ、白金電極間に定電流を流して、研磨仕上円板を挟み込んだジルコニア製固体酸化物間の電位差を測定することにより抵抗測定を行った。
抵抗測定は、上記実施例と同じ雰囲気で10℃/分の条件で650℃に上昇させ、1時間保持した後に電気抵抗を測定した。電気抵抗値が50mΩ・cm2以下を○、50mΩ・cm2を超える電気抵抗値があったものを×として、電気伝導性を評価した。
これに対して、Raが68μmの研磨仕上材では50mΩ・cm2を超える電気抵抗値を示し、Raが0.03μmの研磨仕上材及び2D仕上材では電気抵抗値が100mΩ・cm2以上と大きく、固体酸化物型燃料電池のセパレータ用材料としては適していなかった。
Claims (4)
- C:0.03質量%以下,Si:1.0質量%以下,Mn:1.5質量%以下,S:0.01質量%以下,N:0.03%以下,Cr:11.0〜20.0質量%を含み、残部が実質的にFeからなる組成を有するとともに、JIS B0601で規定される表面粗さRaで0.05〜50μmの機械研磨仕上面を有することを特徴とする固体酸化物型燃料電池セパレータ用フェライト系ステンレス鋼。
- さらに、3.0質量%以下のMo、あるいは1.5質量%以下のCuの1種又は2種を含む請求項1に記載の固体酸化物型燃料電池セパレータ用フェライト系ステンレス鋼。
- さらに、Nb:0.05〜0.80質量%,Ti:0.03〜0.50質量%の1種又は2種を含む請求項1又は2に記載の固体酸化物型燃料電池セパレータ用フェライト系ステンレス鋼。
- さらに、Y:0.001〜0.1質量%,希土類元素:0.001〜0.1質量%,Ca:0.001〜0.01質量%の1種又は2種以上を含む請求項1〜3のいずれかに記載の固体酸化物型燃料電池セパレータ用フェライト系ステンレス鋼。
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