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JP2005205542A - サファイア研磨用砥石およびサファイア研磨方法 - Google Patents

サファイア研磨用砥石およびサファイア研磨方法 Download PDF

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JP2005205542A JP2004014857A JP2004014857A JP2005205542A JP 2005205542 A JP2005205542 A JP 2005205542A JP 2004014857 A JP2004014857 A JP 2004014857A JP 2004014857 A JP2004014857 A JP 2004014857A JP 2005205542 A JP2005205542 A JP 2005205542A
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grindstone
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Akira Nagata
晃 永田
Junji Ishizaki
順二 石崎
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Noritake Co Ltd
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Noritake Co Ltd
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Abstract

【課題】研磨能率が高く且つ良好な表面粗さを得ることの可能な単結晶サファイア研磨用砥石および単結晶サファイア研磨方法を提供する。
【解決手段】研磨用砥石は、アルコレートからゾル−ゲル法を用いて製造されたα型アルミナから成る平均粒径が0.6(μm)程度の微細な砥粒をエポキシ樹脂結合剤で結合して構成されていることから、単結晶サファイア基板を研磨するに際して、高い研磨能率および良好な表面粗さを共に得ることができる。
【選択図】 図4

Description

本発明は、単結晶サファイアを仕上げ研磨するための研磨砥石および単結晶サファイアの仕上げ研磨方法に関する。
単結晶サファイアは、機械的特性、化学的安定性、透光性等に優れることから、例えばその一面(例えば基板においてはその両面)が所謂鏡面に研磨加工されることにより、半導体素材や光学部品等に好適に用いられている。従来、単結晶サファイアから成る基板を鏡面加工するに際しては、シリカ系砥粒を用いた遊離砥粒加工が行われていた(例えば特許文献1を参照)。
また、上記遊離砥粒加工に代えて、無機砥粒の焼結体のみにより構成した砥石を用いることも提案されている(例えば特許文献2を参照)。上記無機砥粒としては、ダイヤモンド砥粒、炭化硼素砥粒、立方晶窒化硼素砥粒等種々のものが用いられ、例えば鋳込み成形および焼成処理等を経て砥石が製造される。
特開平8−95233号公報 特開平10−337669号公報
しかしながら、前記特許文献1に記載されている遊離砥粒研磨は、コロイダルシリカ(シリコン乳剤)を研磨材として用いた湿式加工であり、良い表面粗さが得られるものの研磨能率(すなわち単位時間当りの除去量)が低い不都合があった。また、前記特許文献2に記載されている仕上げ研磨砥石によれば、例えばRaで3(nm)程度の更に良好な表面粗さが得られるが、研磨能率が著しく低い不都合があった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、研磨能率が高く且つ良好な表面粗さを得ることの可能な単結晶サファイア研磨用砥石および単結晶サファイア研磨方法を提供することにある。
上記目的の下、本発明者等は、単結晶サファイアの仕上げ研磨に用い得ると考えられる種々の砥粒を用意して湿式遊離砥粒加工試験を行った。試験対象として選んだのは、酸化セリウム、マイカ、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、弗化カルシウム、および通常用いられているコロイダルシリカ等である。その結果、全く意外にもこれらの中ではアルミナが最も優れた研磨能率を示したのである。この結果を受けて、更に種々のアルミナ砥粒を評価したところ、アルコレートを出発原料としてゾル−ゲル法で製造されたα型アルミナが、サファイア研磨において研磨能率および表面粗さを両立させるために最も好ましいことが判明した。このような結果が得られたのは、上記製法によるα型アルミナの表面活性が高いためであると推測される。本発明は、このような研究結果に基づいて為されたものである。
前記目的を達成するための第1発明の要旨とするところは、砥粒が所定の結合剤で結合された研磨面を有し、その研磨面で単結晶サファイアの一面を所定の表面粗さに仕上げ研磨するためのサファイア研磨用砥石であって、(a)前記砥粒がアルコレートを出発原料としてゾル−ゲル法を用いて製造されたα型アルミナから成ることにある。
また、前記目的を達成するための第2発明の要旨とするところは、単結晶サファイアの一面を所定の表面粗さに仕上げ研磨するためのサファイア研磨方法であって、(a)アルコレートを出発原料としてゾル−ゲル法を用いて製造されたα型アルミナから成る砥粒を前記一面に供給しつつ研磨することにある。
このようにすれば、サファイア研磨用砥石に用いられている砥粒およびサファイア研磨方法に用いられる砥粒は、アルコレートからゾル−ゲル法を用いて製造されたα型アルミナすなわち六方晶系酸化アルミニウムから成ることから、単結晶サファイアを研磨するに際して、高い研磨能率および良好な表面粗さを共に得ることができる。
なお、アルコレートは、アルコールのヒドロキシ基の水素を金属元素で置換した化合物の総称であり、アルコキシド或いは金属アルコキシドとも称される。本発明に用い得るアルコレートは特に限定されず、種々のヒドロキシ基を備えたアルコレートを砥粒の出発原料とすることができる。
ここで、好適には、前記研磨砥石および研磨方法において、前記砥粒は平均粒径が5(μm)以下である。このようにすれば、平均粒径の十分に小さい砥粒が用いられることから、砥粒による表面傷が生じ難いので一層良い表面粗さを得ることができる。しかも、平均粒径が小さくなるほどその比表面積が増大してケミカル作用が顕著となるので、それにより研磨能率が向上する利点もある。一層好適には、砥粒の平均粒径は、0.01(μm)以上である。このようにすれば、十分に大きい砥粒が用いられるため、一層高い研磨能率が得られる。すなわち、0.01(μm)未満では良好な研磨面は得られるものの研磨能率が低下するので、砥粒の平均粒径は、0.01〜5(μm)の範囲内が好ましい。更に好適には、砥粒の平均粒径は0.1〜3(μm)の範囲内である。
また、好適には、前記研磨砥石において、前記結合剤は合成樹脂結合剤である。結合剤は、合成樹脂結合剤に限られず、ガラス質結合剤や金属質結合剤などであってもよいが、このようにすれば、弾性率の比較的低いすなわち容易に弾性変形する合成樹脂結合剤で砥粒が結合させられていることから、単結晶サファイアの被研磨面から押圧力を受けた際にその被研磨面から容易に後退させられる。そのため、被研磨面に傷などを生じさせることが好適に抑制され、一層高品質の被研磨面が得られる。
一層好適には、前記結合剤は熱硬化性樹脂であり、更に好適には、液状エポキシ樹脂を用いたものである。被研磨面の高い平坦度を得るためには、研磨砥石の研磨面形状が加工中に維持されることが望ましいが、エポキシ樹脂は適度な弾性率を備えているので、表面粗さおよび平坦度を両立させるために好適である。特に、液状エポキシ樹脂が用いられる場合には、これに混合された砥粒が高い一様性を以て分散されるので、砥粒が一様に分散した組織の均一性の高い研磨砥石が得られ、一層優れた表面粗さや平坦度などを得ることができる。
また、好適には、前記研磨方法は、前記砥粒が結合剤で結合された研磨砥石が用いられるものである。このようにすれば、研磨砥石等を用いる砥粒固定型の加工では遊離砥粒加工に比較して、被研磨面のダレ(外周縁部が過度に除去された形状)が生じ難くなると共に、加工廃液が少なくなるので対環境性に優る利点がある。
また、本発明は、単結晶サファイアの一面を研磨するための研磨砥石および研磨方法に適用されるが、特に、仕上げ研磨に好適に適用され、また、サファイア基板の鏡面研磨に好適に適用される。
また、好適には、前記研磨砥石は、軸心部に厚み方向に貫通する取付孔を備えた円板状の台板の上面に所定厚さ寸法の砥石層が固着されたものである。本発明は、種々の研磨装置に用いられる研磨砥石および研磨方法に適用され得るが、片面ポリシング・マシンに使用されるこのような研磨砥石およびこれを用いた研磨方法に特に好適に適用される。
上記台板は、例えばアルミニウム合金から成るものであるが、スチールや樹脂等で構成することもできる。
また、好適には、上記のような研磨砥石は、砥石層にその研磨面から台板に向かう多数の溝を備えたものである。このような溝は必須ではないが、多数の溝が形成されていれば、研磨面に設けられたその溝の稜部が研磨能率向上に好適に寄与すると共に、溝が加工液や切り粉等の排出路として好適に機能する。
また、好適には、前記研磨砥石は、前記砥粒を10〜60(%)の範囲内の砥粒率で含むものである。このようにすれば、加工作用面に寄与する砥粒数が多くなり且つ結合剤量とのバランスもとれるため、高い研磨能率が得られる。なお、砥粒率が60(%)を越えると、結合剤の割合が著しく低くなるので、砥留保持力が不十分となって砥石摩耗が著しくなり、延いては砥石寿命が短くなる不都合がある。
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例のサファイア研磨用砥石(以下、単に研磨砥石という)10の全体を示す斜視図である。図において、研磨砥石10は、中央部に厚み方向に貫通する取付孔12を備えた円板状の台板14の一面に、同様な形状の砥石層16が固着されることによって構成されている。この研磨砥石10は、砥石層16が上側に位置する向きで、その取付孔12において片面(一面)ラップ盤の回転軸に取り付けられて用いられるものである。
上記台板14は、例えばアルミニウム合金等の金属材料で構成されるものであって、例えば、外径327(mm)×内径110(mm)×厚み20(mm)程度の寸法に構成されている。台板14の表面は平坦に加工されており、砥石層16はその平坦な表面にエポキシ樹脂等の接着剤を用いて固着されている。
また、前記砥石層16は、例えば、砥粒が合成樹脂等の結合剤によって結合されたものであり、例えば、台板14と同様な外径寸法および内径寸法を備え、10(mm)程度の厚さ寸法を備えたものである。この砥石層16は、砥粒率Vgが40(容積%)程度、結合剤率Vbが15(容積%)程度、気孔率Vpが45(容積%)程度の組織を備えており、その組織内に砥粒が略一様に分散させられている。また、砥石層16の表面すなわち研磨面18には、その砥石層16の厚さ寸法と同程度かそれよりも僅かに浅い深さ寸法の多数の溝20が例えば格子状に形成されている。溝20の幅寸法は例えば2(mm)程度であり、中心間隔は例えば15(mm)程度である。
上記砥粒は、例えば平均粒径が0.1〜5(μm)の範囲内、例えば0.6(μm)程度、比表面積が1〜200(m2/g)の範囲内、例えば5.9(m2/g)程度のα型アルミナから成るものである。この砥粒は、例えばアルミニウム・アルコキシドを出発原料としてゾル−ゲル法で製造されたものである。また、上記結合剤は、例えばエポキシ樹脂である。
このような研磨用砥石10は、例えば、液状エポキシ樹脂中に上記砥粒を混合して攪拌することによって略一様に分散させ、これを成形型内で硬化させることによって砥石層16を製造し、必要に応じて寸法および形状を整えるための加工を施した後、台板14に接着することで製造される。
図2は、上記研磨用砥石10の使用状態の一例であって片面ラップ盤22に取り付けられている状態を模式的に表したものである。図2において、研磨砥石10は、砥石層16が上側に位置する向きで、前記取付孔12においてその軸心回りの回転可能に図示しない回転軸に取り付けられており、キャリア24で保持されることによって研磨砥石10の周方向の移動が抑制され且つ一定の荷重を以てその上面すなわち研磨面に押し付けられたワークが、その上面の例えば三箇所に配置されている。また、研磨砥石10の上方にはノズル26が備えられており、その研磨面に向かって例えば水などの研磨液が供給されるようになっている。なお、ラップ盤22にはキャリア24を一定の位置に保つためのアーム等が備えられているが、図2においてはこれを省略した。
図3および図4は、上記のようなラップ盤22を用いてφ2(inch)程度の大きさの単結晶サファイア基板を研磨用砥石10(以下、実施例1とする)で仕上げ研磨した場合の研磨能率を評価した結果を、他の砥粒を用いた実施例2,3と共に、従来の遊離砥粒加工(比較例1)および他材料から成る砥粒を用いた研磨砥石による加工(比較例2,3)と比較して示す図である。なお、実施例2は、平均粒径が0.6(μm)程度で比表面積が4.8(m2/g)程度のアルミナ砥粒を用い、砥粒率Vgが30.5(容積%)程度、結合剤率Vbが16.7(容積%)程度、気孔率Vpが52.8(容積%)程度とされた他は研磨用砥石10と略同様に構成されたものである。また、実施例3は、平均粒径が0.4(μm)程度で比表面積が4.9(m2/g)程度のアルミナ砥粒を用い、砥粒率Vgが28,9(容積%)程度、結合剤率Vbが15.9(容積%)程度、気孔率Vpが55.2(容積%)程度とされた他は研磨用砥石10と略同様に構成されたものである。これら実施例2,3に用いた砥粒は、何れもアルミニウム・アルコキシドを出発原料としてゾル−ゲル法で製造されたα型アルミナである。
また、比較例1は、研磨用砥石10に代えてパッド(例えばロデール・ニッタ(株)製IC1000)を用い、シリカ系砥粒を含むスラリ(例えば(株)フジミインコーポレーテッド製コンポールEX−3)を供給して研磨したものである。上記パッドは、発泡ウレタン系多孔質体である。また、比較例2は、アルミナ砥粒に代えて例えば平均粒径が1.0(μm)程度のシリカ系砥粒(例えば(株)龍森製)を軟結合度で結合した他は研磨砥石10と同様に構成されたものである。また、比較例3は、砥粒として例えば平均粒径が2.0(μm)程度の合成マイカ(雲母)(例えばコープケミカル製)を用いた他は研磨砥石10と同様に構成されたものである。
また、この評価試験においては、片面ラップ盤22として、エンギス社製片面ポリシングマシンEJ-380を用い、実施例1〜3および比較例1〜3共に、研磨砥石或いはパッドおよびワークの回転数を何れも90(r.p.m.)、同時に研磨するワーク枚数を3枚とした。また、ワークに印加される研磨面への押付け荷重は例えば208(g/cm2)程度に設定し、研磨液として水を10(ml/min)の流量で供給しつつ研磨した。ワークは、鏡面研磨品とラップ品とを用意し、加工時間をそれぞれ60分、210分とした。図3が鏡面研磨品の加工結果を表したものであり、図4がラップ品(すなわちすりガラス状の表面を有するもの)の加工結果を表したものである。これらは加工時間が異なる他は同様な条件で仕上げ研磨を施した。なお、実施例2,3については、鏡面研磨品の加工のみを評価した。
上記の図3に示されるように、鏡面加工品を研磨した場合には、実施例1の研磨用砥石10を用いた仕上げ研磨によれば、累積削除重量が30分の研磨時間で1.9(mg)程度、60分の研磨時間で2.8(mg)程度の極めて高い研磨能率が得られた。これは、比較例1すなわち従来の遊離砥粒による研磨加工が30分で1.05(mg)程度、60分で1.65(mg)程度であったのに比較して、1.6〜1.8倍もの値である。なお、60分の研磨後にも、研磨用砥石10の磨耗は僅か1(μm)に留まり、加工後のワーク表面の面粗度はRaで0.986(nm)程度、Rmaxで5.943(nm)程度であって、従来の遊離砥粒加工の場合と同等以上であった。因みに、従来の遊離砥粒加工の場合すなわち比較例1における面粗度は、Raで0.97(nm)程度、Rmaxで6.48(nm)程度である。
また、実施例2の研磨用砥石を用いた仕上げ研磨では、累積削除重量が30分の研磨時間で1.05(mg)程度、60分の研磨時間で2.2(mg)程度の比較的高い研磨能率が得られた。これは、従来の遊離砥粒加工に比較して30分の研磨時間では同程度、60分の研磨時間では1.3倍程度の値である。また、この実施例2においても、60分の研磨後の砥石摩耗は殆ど無く、ワーク表面の面粗度は実施例1と同程度であった。また、時間経過に伴う研磨能力の低下は見られず、むしろ、研磨能力が向上する傾向が見られる。
また、実施例3の研磨用砥石を用いた仕上げ研磨では、累積削除重量が30分の研磨時間で0.8(mg)程度、60分の研磨時間で1.3(mg)程度と比較的高い値を示した。これは、比較例1にはやや劣るものの略同程度の結果であり、遊離砥粒加工に比較して実施例3のような固定砥粒加工の方が対環境性に優れることを考慮すれば、十分に使用する価値がある。なお、この実施例3においても、60分の研磨後の砥石摩耗は殆ど無く、ワーク表面の面粗度は実施例1,2と同程度であった。
これに対して、対照のために同時に評価した比較例2,3においては、60分の研磨後でも、比較例2で0.2(mg)程度、比較例3で0.3(mg)程度と極めて低い値に留まった。しかも、砥石磨耗量が比較例2では数(μm)、比較例3では1(μm)程度であり、研磨能率に対して著しく砥石磨耗が大きいことが確認できた。上記実施例3の研磨用砥石は、これら比較例2,3すなわち従来の研磨用砥石に比較すれば極めて高い研磨能率を有している。
また、図4に示されるように、ラップ品の研磨においては、60分後の累積削除重量が実施例1の研磨用砥石10が11(mg)程度であるのに対し、比較例1が2(mg)程度、比較例2が5(mg)程度、比較例3が略零(1(mg)未満)であった。すなわち、上記鏡面加工品の研磨と同様に、比較例1〜3に比較して2〜10倍以上の研磨能率を有することが確かめられた。しかも、実施例1の研磨用砥石10は、研磨時間が長くなっても研磨能力(研磨能率)の低下が殆ど認められず、累積削除重量が210時間で26(mg)にもなるが、比較例1〜4は研磨時間が増加するに従って研磨能力が次第に低下し、これらの差は拡大する傾向にある。
また、この試験においても、実施例1の研磨用砥石10の磨耗量は著しく小さく、210時間後に4(μm)程度に留まったのに対し、比較例2では60時間後に163(μm)程度と著しい磨耗が認められた。なお、比較例3は60時間では磨耗が見られなかった。
要するに、本実施例においては、研磨用砥石10に用いられている砥粒は、アルコレートからゾル−ゲル法を用いて製造されたα型アルミナから成ることから、単結晶サファイア基板を研磨するに際して、高い研磨能率および良好な表面粗さを共に得ることができる。
しかも、本実施例においては、平均粒径が0.6(μm)程度の微細な砥粒が用いられるので、一層良い表面粗さを得ることができる。
また、本実施例においては、結合剤が弾性率の低いエポキシ樹脂であることから、単結晶サファイアの被研磨面から押圧力を受けた際にその被研磨面から容易に後退させられる。そのため、被研磨面に傷などを生じさせることが好適に抑制され、一層高品質の被研磨面が得られる。
なお、前記の実施例においては、砥粒が固定された研磨用砥石10を用いて研磨を行っているが、これに代えて、従来の遊離砥粒加工において、コロイダルシリカに代えて実施例1〜3に用いられているようなゾル−ゲル法で製造されたα型アルミナ砥粒を用いることももちろん可能である。このようにしても、従来のコロイダルシリカを用いた遊離砥粒加工に比較して、サファイア研磨において高い研磨能力が得られる。すなわち、前記の図2において、研磨用砥石10に代えてパッドを用い、ノズル26から砥粒を含むスラリーを供給して研磨する場合にも、本発明は適用される。
ところで、本実施例において研磨用砥石10を構成する砥粒は、以下に説明する実験に基づいて決定されたものである。
図5は、従来の遊離砥粒加工に用いられていたシリカ系砥粒を含む種々の砥粒の研磨能率を評価するために、同様な遊離砥粒加工をそれらの砥粒で行った結果を示したものである。評価した砥粒は、平均粒径が0.8(μm)程度の酸化セリウム、平均粒径が2.0(μm)程度の合成マイカ、平均粒径が1.0(μm)程度のシリカ、平均粒径が0.6(μm)程度のアルミナ(例えばWA#10000)、平均粒径が2.1(μm)程度の水酸化アルミニウム、平均粒径が1.5(μm)程度の弗化カルシウム、および、従来から用いられているコロイダルシリカ(例えば前記コンポールEX−3の2.5倍希釈スラリー)である。なお、上記のうち合成マイカは近年学会で注目されているものであり、シリカは過去の文献で研削能力が最も高いとされているものである。
なお、ワークおよび試験装置(ラップ盤)は前述した評価と同一のものを用い、研磨用砥石10に代えてφ300(mm)のパッド(IC1000)を回転軸に取付け、水道水に3(vol%)の濃度で上記砥粒を添加したスラリーを10(ml/min)の流量でパッド上に供給した。回転数その他の条件は、前述した評価と同様である。
上記の図5は、このような評価試験において、30分後および60分後の累積削除重量を測定した結果を表したものである。図から明らかなように、唯一アルミナのみが従来のコロイダルシリカに対して優位性を示し、累積削除重量で約2.3倍もの結果を得た。なお、酸化セリウムは全く研磨できなかったために図に表示されていない。
図6は、上記図5の結果を受け、アルミナ砥粒に絞って複数のメーカの種々の砥粒を上記と同様な試験条件で評価した結果を表したものである。各砥粒の種別、平均粒径等を下記の表1に示す。表1の記号欄の英字が図6の各データに付した記号に対応する。なお、表1において、結晶系が六方晶のものはα型、六方晶+正方晶のものおよび正方晶のものはγ型、単斜晶+斜方晶のものはδ型、単斜晶+六方晶のものはθ型と称されるものである。この図6に示されるように、アルミナ砥粒は、種類によって著しく異なるが、殆どのアルミナ砥粒は従来から使用されているコロイダルシリカよりも高い研磨能力を有する。
[表1]
記号 種別 平均粒径 比表面積 結晶系
A社 a WA#10000 0.7(μm) 21.6(m 2 /g) 六方晶
B社 b アルコキシド細粒 0.3 82.8 六方晶+正方晶
c アルコキシド中粒 0.4 24.3 六方晶
d アルコキシド粗粒 0.6 5.9 六方晶
C社 e 球状アルミナ 0.7 5.8 単斜晶+斜方晶
f アルコキシド細粒 0.3 7.1 六方晶
g アルコキシド粗粒 0.6 4.8 六方晶
h アルコキシド微粉 0.1以下 73.7 単斜晶+六方晶
D社 i アルコキシド超微粉 0.1以下 134.9 正方晶
j アルコキシド中微粉 0.2 12.3 六方晶
k 易焼結細粒 0.4 4.9 六方晶
l 易焼結粗粒 0.8 2.5 六方晶
m バイヤー法 0.4 7.4 六方晶
上記砥粒のうち、B社の3種(b〜d)は、何れもアルコキシドから製造されたものであるが、アルミナbはα化しておらず、アルミナc,dは粒径が相互に異なるので、焼成度合いが異なるものと推定される。
また、アルミナeは、アルコキシドを出発原料とするものでは無く、α化もしていないものである。
また、D社8種のうちf〜iの4種は、アルコキシドから製造されたものであって、アルミナh,iはα化しておらず、アルミナf,gは相互に粒径が異なるので、これらは相互に焼成度合いが異なるものと推定される。また、アルミナjはアルミナf,gと同様にアルコキシドから製造されたものであるが、粗粒品をカットして粒度分布をシャープにした微粉である。また、アルミナk、lは、アルコキシドから製造されたものであるが、工程の相違により形状が球形に近いものである。また、アルミナmは、バイヤー法で製造された一般的なアルミナである。
なお、上記の評価において、コロイダルシリカよりも研磨能力が低いのはγ型のアルミナiおよびδ型のアルミナeである。また、コロイダルシリカよりは高い研磨能力を有しているが、θ型のアルミナh、γ型のアルミナb、α型のアルミナfおよびアルミナa(WA#10000)は、他のα型のものに比較して低い特性に留まっている。
図7は、上記のうち研磨能力が著しく低い(すなわち図に破線で示すコロイダルシリカよりも低い)アルミナi,eを除く11種類の砥粒を用いた遊離砥粒加工試験結果を、研磨加工後のワークの表面粗さを横軸に、60分後の研磨削除重量を縦軸にとってそれらの相関を見たものである。この図7から明らかなように、面粗度と研磨削除重量との相関は余り強くなく、どちらかといえば逆相関の傾向にある。機械的な作用による研削加工の場合の面粗度と研磨削除重量との一般的な相関傾向は、右上に向かって伸びる矢印のように正相関の傾向を示すことから、化学的な作用が研磨能力(研磨能率)に影響を及ぼしていることが推定される。
また、上記の図7において、○は加工傷がワーク表面に生じた砥粒を、●は加工傷が生じなかった砥粒を区別したものである。また、砥粒はよい面粗度が得られ且つ削除重量が多いものが好ましいので、この評価結果によれば、左上に位置するアルミナc,d,g,kの4つの砥粒が特に好ましいことが判る。
図8は、砥粒の比表面積と研磨削除重量との相関を見たものである。この図において、白抜き印(○□◇△)はα型アルミナを表しており、黒塗り印(●◆★)はそれ以外すなわちγ型、δ型、およびθ型アルミナを表している。また、各印の形状はアルミナの製造方法および種類に対応しており、○および●がゾル−ゲル法で製造されたD社アルミナf〜j、□がゾル−ゲル法で製造されたD社易焼結アルミナk、l、◇および◆がゾル−ゲル法で製造されたB社アルミナb〜d、△がバイヤー法で製造された粉砕型アルミナ(WAおよびD社アルミナm)、★がC社アルミナeである。
上記の図8に示されるアルミナの結晶系の相違と研磨削除重量との関係から、α型アルミナが他の結晶系に比較して研磨能力の高い傾向が明らかである。また、比表面積の小さいものの方が研磨能力が高い傾向が見られる。
また、製造方法との関連で見ると、α型のうちゾル−ゲル法で製造したものがD社アルミナfを除いて左上に集中しており、これらの研磨能力が最も高いことが明らかである。このような結果が得られたのは、斯かる製造方法で製造されたアルミナが高い焼結性を有することで知られるように、高い表面活性を有するため、化学的研磨作用で研磨能率が高められているためと考えられる。
以上の図7、図8に示される削除重量、面粗度、比表面積(粒径)の相互の関係から、α型アルミナであって、アルコキシドからゾル−ゲル法で製造された砥粒がサファイア研磨に好適であることが明らかである。
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
研磨砥石の全体を示す斜視図である。 図1の研磨砥石を用いた単結晶サファイアの仕上げ研磨の実施状態を示す図である。 図1の研磨砥石の試験結果を比較例と共に示す図である。 図1の研磨砥石の他の試験結果を示す図である。 各種砥粒の研磨能率を比較した試験結果を示す図である。 各種アルミナ砥粒の研磨能率を比較した試験結果を示す図である。 図6の試験結果において被研磨面の面粗度と研磨能率との関係を表した図である。 図6の試験結果において砥粒の比表面積と研磨能率との関係を表した図である。
符号の説明
10:サファイア研磨用砥石

Claims (5)

  1. 砥粒が所定の結合剤で結合された研磨面を有し、その研磨面で単結晶サファイアの一面を所定の表面粗さに仕上げ研磨するためのサファイア研磨用砥石であって、
    前記砥粒がアルコレートを出発原料としてゾル−ゲル法を用いて製造されたα型アルミナから成ることを特徴とするサファイア研磨用砥石。
  2. 前記砥粒は平均粒径が5(μm)以下である請求項1のサファイア研磨用砥石。
  3. 単結晶サファイアの一面を所定の表面粗さに仕上げ研磨するためのサファイア研磨方法であって、
    アルコレートを出発原料としてゾル−ゲル法を用いて製造されたα型アルミナから成る砥粒を前記一面に供給しつつ研磨することを特徴とするサファイア研磨方法。
  4. 前記砥粒は、平均粒径が5(μm)以下である請求項3のサファイア研磨方法。
  5. 前記砥粒が結合剤で結合された研磨砥石が用いられるものである請求項3のサファイア研磨方法。
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