JP2005292184A - 光学ユニット - Google Patents
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- CHPYALRULUWNDS-UHFFFAOYSA-N CC(Oc(ccc1c2cccc1)c2-c(c1ccccc1cc1)c1OC)=O Chemical compound CC(Oc(ccc1c2cccc1)c2-c(c1ccccc1cc1)c1OC)=O CHPYALRULUWNDS-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 1
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Abstract
【解決手段】 少なくとも第一のプラスチック製レンズと第二のプラスチック製レンズとを備える光学ユニットであって、
(1)第一のプラスチック製レンズは、特定の式(A)、式(B)及び式(C)で表される構造単位を有し、式(A)の構造単位が全構造単位中5〜40mol%であり、かつ極限粘度が0.30〜0.50dl/gであるポリカーボネートを含有する組成物を成形して得られ、
(2)第二のプラスチック製レンズのアッべ数が45〜60であることを特徴とする光学ユニット。
【選択図】なし
Description
このため、互いにアッベ数が異なるプラスチック製とガラス製レンズとを組み合わせることで、色収差を補正している。
また、アッベ数45〜60の脂環式ポリオレフィン樹脂製のレンズと、アッベ数がこれよりも低い(例えば30程度)ビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂製のレンズとを組み合わせて色収差を補正することが行われている。しかし、ポリカーボネート樹脂は固有複屈折が0.106と大きく(非特許文献1参照)、高解像度の光学ユニットには適用することができなかった。
井手文雄、「ここまできた透明樹脂」、工業調査会、p.29、2001年。
また、高画質な画像を撮影するためには、鏡筒に組み込まれた各レンズの光軸が適正に一致している必要がある。特に、小型撮像ユニットでは、前述のような高い解像力が光学ユニットに要求されるため、若干でも各レンズ間の光軸にズレ(以下、レンズ間偏芯とする)があると、非常に大きな画質劣化の原因となる。
ところが、鏡筒とレンズとの間には、鏡筒にレンズを組み込むための間隙(クリアランス)を有する。そのため、この中で、組み込んだレンズが移動してしまい、レンズ間偏芯が生じてしまう。
また、プラスチック製レンズを組み合わせるだけで、光軸と直交方向の互いの位置決めを行って各レンズの光軸を一致させることができ、かつ、その後のレンズ間の光軸のズレも生じることがない光学ユニット(レンズユニット)を提供することにある。
[1]少なくとも第一のプラスチック製レンズと第二のプラスチック製レンズとを備える光学ユニットであって、
(1)第一のプラスチック製レンズは、後述の式(A)、式(B)及び式(C)で表される構造単位を有し、式(A)の構造単位が全構造単位中5〜40mol%であり、かつ極限粘度が0.30〜0.50dl/gであるポリカーボネートを含有する組成物を成形して得られ、
(2)第二のプラスチック製レンズのアッべ数が45〜60である光学ユニット。
[2]上記ポリカーボネートの分子末端が、後述の式(D)で表される一価フェノールより誘導される上記[1]記載の光学ユニット。
[3]上記第一と第二のプラスチック製レンズとは、光学的な作用を有するレンズ部の周囲にフランジ部を有し、かつ、第一と第二のプラスチックレンズのフランジ部はそれぞれ、第二と第一のプラスチックレンズのフランジ部それぞれとまたは第一と第二のプラスチック製レンズの間に設けられるスペーサと嵌合可能であり、さらに、第一と第二のレンズとは、前記フランジ部相互の嵌合またはスペーサとフランジ部との嵌合によって組み合わされた状態で互いの光軸を一致する形状を有する上記[1]または[2]に記載の光学ユニット。
[4]上記レンズは、互いの前記フランジ部の嵌合またはスペーサとフランジ部との嵌合によって、他のレンズと組み合わせた状態で、互いの光軸方向の位置が適正となる形状を有する上記[3]に記載の光学ユニット。
[5]少なくとも前記第一のプラスチック製レンズがその表面全面に防湿皮膜を有する上記[1]〜[4]のいずれかに記載の光学ユニット。
[6]上記防湿皮膜は、スパッター法で形成されたSi−O系膜である上記[5]に記載の光学ユニット。
[7]上記防湿皮膜は、塩化ビニリデンを有する膜である上記[5]に記載の光学ユニット。
本発明の光学ユニットは、全てのレンズがプラスチック製レンズで構成されれば、小型軽量化が要求される用途に好適である。
しかも、この特定のポリカーボネート材料は、流動性に優れているにもかかわらず、光学ユニットを構成するレンズとして充分な機械強度を持つ。
以下、図面を参照して本発明の光学ユニットの一例を説明する。
図1は、本発明の光学ユニットの1実施形態の側部断面図である。本発明の光学ユニットは、少なくとも第一のプラスチック製レンズ2と第二のプラスチック製レンズ3とを備える。プラスチック製レンズは後述する特定の特性を有する2以上のレンズであればよく。同じ特性のレンズを複数枚有したりその他のレンズをさらに有することで3、4、5枚以上等如何なる組合せでもよく、必要な場合はガラス製レンズと2以上のプラスチック製レンズとを組み合わせても良い。図1に示す光学ユニット1は、円筒状の鏡筒5内に2枚のプラスチック製レンズ2,3が収納されている。
本発明の光学ユニットにおいて、第一のプラスチック製レンズは、下記式(A)〜(C)で表される構造単位を有し、式(A)の構造単位が全構造単位中5〜40モル%であり、かつ極限粘度が0.30〜0.50dl/gであるポリカーボネートを含有する組成物を成形して得られる。
Yは、
(式中、R7 は炭素数4〜20のアルキル基を示し、R8 〜R9は各々独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。Zはエステル基、エーテル基、カルボニル基を表すか、単に結合を表す。)
成形温度は240〜260℃であり、せん断速度は、100〜1000s-1である。この温度範囲において、せん断速度と粘度との関係がニュートン流体に近い特性を有する。低温成形が可能なので、ポリマーの熱劣化(着色)が少なく、成形に要するエネルギーが少なくてすむ。このため、レンズの生産性に優れており、光学ユニットのコストダウンが可能である。また、この特定のポリカーボネート材料は、流動性に優れているにもかかわらず、光学ユニットを構成するレンズ用途に充分な機械強度を有する。
第一のプラスチック製レンズのレタデーションは、例えば、光学面の半径9mm,中心部の厚さ2.5mmのレンズを射出成形した場合に、0〜120nm程度で、同じ形状のレンズを汎用のポリカーボネート(ビスフェノールA型のPC)材料で射出成形した場合のレタデーションが、200〜400nmであることを考えると、複屈折が低いことがわかる。ここで、レタデーションは、偏光板(直交ニコル)に挟んで干渉色を基準サンプルと比較することで求める。
第一のプラスチック製レンズの吸水性は、約0.3%以下であり、汎用のポリカーボネート(ビスフェノールA型のPC)材料の吸水性が0.3%程度に対して、0.25%程度である。
本発明の光学ユニットの第二のプラスチック製レンズは、アッベ数45〜60のレンズである。用いるプラスチック材料は、複屈折および吸水性が低く、寸法安定性に優れた透明なプラスチック材料であることが好ましい。このようなプラスチック材料としては、メタクリル樹脂(PMMA)、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、オレフィン・マレイミド交互共重合体、ポリ(1,3−シクロヘキサンジエン)、ポリ(シクロヘキサン)、脂環式ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
上記した脂環式ポリオレフィン樹脂は、複屈折が少ないことを特徴とする。具体的には、例えば、光学面の半径6.4mm,中心部の厚さ2.9mmのレンズを射出成形した場合に、レタデーションが、0〜150nm程度で低複屈折である。色収差を補正するために、第一のプラスチック製レンズと組み合わせて使用しても解像度に悪影響を及ぼすことがない。
また、脂環式ポリオレフィン樹脂は、光学弾性率が低い。具体的には、光学弾性係数が7.0×10-13cm2/dyne以下である。光学弾性係数の低い材料を用いて射出成形した成形体は、光学弾性係数が高い材料から成形した成形体と比較した場合、成形体に内在する分子の歪が同程度であったとしても、複屈折が成形体に現れにくい特性を有する。したがって、光学弾性係数の低い材料は、複屈折の少ない成形体を得るうえで好ましい。
第二のプラスチックレンズは、押出成形、射出成形、ブロ−成形、圧縮成形、湿式成形など公知の成形法で成形可能であるが、射出成形が好ましく、射出成形条件は、例えば、ポリマー温度240〜290℃、金型温度100〜130℃、金型内冷却保持時間30秒〜5分が好ましい。
また、光学ユニットは、その用途、すなわち銀塩カメラ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話組み込み用小型カメラ等にとって好ましい他の機構を有していてもよい。このような機構としては、具体的には、焦点合わせ機構、ズーム機構等が挙げられる。
上記の第一と第二のプラスチック製レンズは、光学的な作用を有するレンズ部の周囲にフランジ部を有していてもよい。この第一と第二のプラスチック製レンズのフランジ部はそれぞれ、第二と第一のプラスチック製レンズのフランジ部それぞれとまたは第一と第二のプラスチック製レンズの間に設けられるスペーサと嵌合可能であり、さらに、第一と第二のレンズとは、前記フランジ部相互の嵌合またはスペーサとフランジ部との嵌合によって組み合わされた状態で互いの光軸を一致する形状を有する。スペーサは好ましくはレンズ部を有さないフランジ部の構成とすることができる。
本発明の光学ユニットは、構成するレンズがプラスチック製であるため、以下に述べる光軸合わせに有用な構造を容易に製造することができる。
上記構成を有する本発明によれば、複数のレンズを有する光学ユニットにおいて、各レンズのフランジ部またはスペーサとしてのフランジ部を嵌合して組み合わせるだけで、光軸と直交する方向の位置決定を行って互いの光軸を一致し、好ましくはさらに光軸方向の位置決定も行って、結像レンズ等とすることができる。また、組み合わせた後は、1つのレンズと同様に扱うことができるので、組合せ後のレンズ間の光軸のズレも防止できる。
図2(a)、(b)に示すレンズ28は、その中心に位置し、光学的作用をするレンズ部28aと、該レンズ28の周囲に設けられたフランジ部28bからなる。該フランジ部28bは、光学ユニットを構成する他のレンズに設けられたフランジ部と嵌合可能であり、該他のレンズのフランジ部とともに光軸合わせ構造をなす。
レンズ26はレンズ部26aとフランジ部26bとから、レンズ28はレンズ部28aとフランジ部28bとから、レンズ30はレンズ部30aとフランジ部30bとから、それぞれ構成され、いずれも円形(光軸方向から見た形状)である。
図示例においては、レンズ26のフランジ部26bは、レンズ28のフランジ部28bの上方の内側(光軸側)に嵌合(嵌入)可能であり、レンズ30のフランジ部30bは、レンズ28のフランジ部28bの下方の内側に嵌合可能である。
各レンズは、このようにフランジ部を嵌合して組み立てた状態で、互いの光軸を一致し、図示例においては好ましい態様として、さらに光軸方向の互いの位置関係も適正になる形状を有する。
本発明の光学ユニットは、このような構成を有することにより、互いのフランジ部を嵌合して組み立てるだけで、各レンズの光軸合わせを行い、あるいはさらに光軸方向の位置決めを行うことができ、さらに、互いの光軸のズレ(以下、レンズ間偏芯とする)も防止することができる。
通常、携帯電話等に用いられる小型撮像モジュールでは、高い解像度が要求されるために、ガラスのレンズを用いている。ガラスのレンズでは、複雑な形状のレンズを成形することはできない。そのため、従来の小型撮像モジュールでは、特開2002−82272号公報などに開示されるように、径の異なる複数の円形のレンズを組み合わせて、段階的に径が異なるレンズ収容部を有する階段状の鏡筒に組み込んでいる。
ところが、通常のレンズユニットでは、鏡筒にレンズを組み込むための遊びを有するため、組み込む際にレンズの光軸がズレてしまい、光軸を一致させることが、困難である。
本発明の光学ユニットは、これを利用したものであり、レンズを、フランジ部で嵌合して組み合わせ可能にすると共に、フランジ部を嵌合して組み合わせた状態で光軸が一致する形状とし、好ましくは、さらにフランジ部の厚さ(光軸方向の厚さ)を組み合わせるレンズの互いの光軸方向の位置に対応する厚さとして、フランジ部を嵌合して組み合わせた状態で、光軸方向の位置も適正になる形状とし、このようなレンズを組み合わせて、光学ユニット1を形成する。
従って、本発明によれば、レンズ26、28および30を互いのフランジを嵌合して組み合わせるだけで、光軸と直交する方向(以下、x−y方向とする)の位置決定を行って互いの光軸を一致し、好ましくはさらに光軸方向の位置決定も行って、結像レンズである光学ユニット1とすることができ、さらに、組み合わせ後は、1つのレンズと同様に扱うことができるので、組み合わせ後のレンズ間の偏芯も防止できる。
特に、レンズ26のフランジ部26bとレンズ28のレンズ部28aとの当接面や、レンズ30のフランジ部30bとレンズ28のレンズ部28aとの当接面のように、光軸方向の位置決めを行う面(基準面)には、割り線が存在しないように、各レンズの成形を行うのが好ましい。
すなわち、基準面に割り線が存在しないことにより、より高精度な組レンズの結像レンズを作製することが可能となる。
その際には、基準面に連続する角部を曲面(Rを付ける)として、この位置に割り面を形成する手段、基準面に連続する角部を切欠いた形状として、この位置に割り面を形成する手段、等により、割り線を基準面から逃がす方法が好適に利用される。
また、互いに嵌合可能であれば、レンズ(レンズ部およびフランジ部)の形状は円形に限定はされず、各種の形状が利用可能である。
さらに、図示例においては、好ましい態様として、フランジ部の厚さを各レンズ同士の光軸方向の位置に応じた厚さとすることにより、フランジ部とレンズ部とを当接することで光軸方向の位置決めも行っている。しかしながら、本発明は、これに限定はされず、例えば、各レンズ同士の光軸方向の位置決めは、当接部の間にスペーサ等の光軸方向の位置決め部材を配置する等の方法で行ってもよい。
上記の第一または第二のプラスチック製レンズは、その表面全面に防湿皮膜をさらに有していても良い。図2の(b)図には防湿皮膜14が誇張して記載されている。
防湿皮膜14は、レンズ部28aのみならず、フランジ部28bも含めて、レンズ28の表面全面に設けるのが好ましい。
ここで、防湿皮膜14は、単層膜であっても良いし、多層膜であっても良い。単層膜は、無機系皮膜であっても、有機系皮膜であっても良い。さらに、多層膜も、無機系皮膜の多層膜であっても、有機系皮膜の多層膜であっても良いし、また、無機系皮膜と有機系皮膜との複合膜であっても良い。
好適な無機材料の一例として、SiO2 、SiO、ZrO2 、TiO2、TiO、Ti2 O3 、Al2 O3 、Ta2O5 、CeO2 、MgO、Y2 O3 、SnO2、MgF2 、WO3 、InとSnの混合酸化物からなる混合物が挙げられる。
何れの皮膜であっても、無機系皮膜は、できるだけ緻密な構造を有し、かつ目的とする波長の光線の吸収が少ない皮膜であるのが好ましい。
ここで、防湿皮膜14は、無機系皮膜を用いる場合には、SiOからなるガラス質膜であるのが好ましい。すなわち、防湿皮膜14に単層膜として、または多層膜や多層複合膜の一部として無機系皮膜を用いる場合には、無機系皮膜は、特に、SiOからなるガラス質膜であるのが好ましい。
無機系皮膜を防湿皮膜14として用いる場合の膜厚は、10nm〜1000nm(1μm)であるのが好ましい。この膜厚は、特に、無機系皮膜の単層膜または無機系皮膜のみの多層膜の膜厚、もしくは有機系皮膜との多層複合膜の場合の無機系皮膜のみの合計厚さを意味する。この膜厚がこのような範囲であれば、防湿性能に影響を与えるピンホールの数が少ないからである。すなわち、無機系皮膜の膜厚を上記範囲に限定する理由は、膜厚が、10nmより薄いとピンホールの発生の懸念があるし、また、1000nmより厚くしても、防湿性という観点からは、その寄与は最早少ないし、膜厚を厚くすると、生産性が低下する、特に乾式成膜法では生産性が低下するし、また、残留応力によりクラックが入りやすくなるからである。
さらに、ゾル−ゲル法などの湿式の成膜法を利用する際における溶液の塗布方法にも、特に限定は無く、ディップコート、スプレーコート、スピンコート等各種の塗布方法が利用可能であるが、容易にレンズ28の全面に溶液を塗布、すなわち無機系皮膜を成膜できる等の点で、ディップコート(浸漬塗布)が好ましく例示される。
ゾルーゲル法による場合、無機系皮膜は、例えば、アルコキシシラン化合物を加水分解することにより得られるが、市販品では日本ダクロシャムロック社製のソルガード(SolGard)TM等を用いることができる。
好適な有機系皮膜の一例として、ポリ塩化ビニリデンや塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体などを主成分とする皮膜、日本ゼオン社製のゼオネックス(ZEONEX)TMなどのシクロオレフィン系樹脂を主成分とする皮膜、旭硝子社製のサイトップ(CYTOP)TMやデュポン社製のテフロン(登録商標)AF(TeflonAF)などの非晶フッ素樹脂(アモルファスフルオロポリマー)を主成分とする皮膜、住友3M社製のノベック(Novec)TMなどのフッ素系樹脂を主成分とする皮膜、信越化学工業の信越シリコーンKR251、KR400、KR114A等のシリコーン系樹脂を主成分とする皮膜等が例示される。
ここで、防湿皮膜14は、有機質皮膜を用いる場合には、塩化ビニリデン膜であるのが好ましい。すなわち、防湿皮膜14に単層膜としてまたは多層膜や多層複合膜の一部として有機質皮膜を用いる場合には、有機質皮膜は、特に、塩化ビニリデン膜であるのが好ましい。
有機系皮膜を防湿皮膜14として用いる場合の膜厚は、100nm〜10000nm(10μm)であるのが好ましい。この膜厚は、特に、有機系皮膜の単層膜または有機系皮膜のみの多層膜の膜厚、もしくは、無機系皮膜との多層複合膜の場合の有機系皮膜のみの合計厚さを意味する。この膜厚がこのような範囲であれば、防湿性能に影響を与えるピンホールの数が少ないからである。すなわち、有機系皮膜の膜厚を上記範囲に限定する理由は、膜厚が、100nmより薄いとピンホールができやすくなり、また、10μmより厚くしても、防湿性という観点からは、その寄与は最早少ないし、極端に厚いと厚みが不均一となりやすく、光学性能が低下するからである。
また、塗料を用いる湿式の成膜法において、塗料の塗布方法には、特に限定はなく、スプレー塗布、刷毛による塗布、ディップコートなど、各種の方法が利用可能であるが、先と同様、容易にレンズの全面に溶液を塗布すなわち有機系皮膜を成膜できる等の点で、ディップコートが好ましく例示される。
特に、塗布成膜法による無機皮膜の膜厚は、上述した100nm〜10μmであるのがより好ましい。この理由は、上記限定理由がより顕著だからである。
また、一般的に、無機系皮膜は硬質でピンホールやクラック等が多く、逆に、有機系皮膜はある程度の弾性を有する。そのため、防湿皮膜14として多層膜を用いる場合、下層に無機系皮膜、上層に有機系皮膜を設けることにより、無機系皮膜のピンホール等を有機系皮膜が好適に埋めて、結果的に欠陥の無い皮膜を形成でき、無機系皮膜の防湿性能を完全に生かした非常に高い防湿性能を発現できる。しかも、弾性を有する有機系皮膜が、外部からのストレスに対する耐性や、熱等によるレンズ28の膨張/収縮に対して無機系皮膜を保護する保護膜としても作用するので、強度も十分に確保して、長期にわたって良好な耐湿性を発揮できる。
無機被膜の材料としては、SiO2、SiO、ZrO2、TiO2、TiO、Ti2O3、Ti2O5、Al2O3、Ta2O5、CeO2、MgO、Y2O3、SnO2、MgF2、WO3等の無機物が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。これらの中では、光透過性基材が熱可塑性樹脂である場合は、低温で真空蒸着が可能なSiO2、ZrO2、TiO2、Ta2O5が好ましい。
無機被膜の多層膜としては、光透過性基材側からZrO2層とSiO2層の合計光学的膜厚がλ/4、ZrO2層の光学的膜厚がλ/4、最表層のSiO2層の光学的膜厚がλ/4の屈折率が高い層と屈折率が低い層とを交互に成膜する積層構造を例示することができる。ここで、λは設計波長であり、通常520nmが用いられる。最表層は、屈折率が低く、固い被膜を形成できるSiO2とすることが好ましい。
無機被膜の成膜方法は、例えば真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、CVD法、飽和溶液中での化学反応により析出させる方法等を採用することができる。有機被膜の材料は、例えばFFP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)等を挙げることができ、光透過性基材やハードコート膜の屈折率を考慮して選定される。成膜方法は、真空蒸着法の他、スピンコート法、ディップコート法などの量産性に優れた塗装方法で成膜することができる。
8.8%(w/v) の水酸化ナトリウム水溶液58リットルに、1,1'−ビ−2-ナフトール2.86Kg(以下BNP と略称、10mol )と4,4'-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスフェノール6.92Kg(以下BPM と略称、20mol )とビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン3.52Kg(以下BPBPと略称、10mol )及びハイドロサルファイト10g を加え溶解した。これにメチレンクロライド36リットルを加え、15℃に保ちながら撹拌しつつ、ホスゲン5kg を50分かけて吹き込んだ。吹き込み終了後、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド5g(0.022mol)を加え5分間激しく撹拌して反応液を乳化させ、次にp-ターシャルブチルフェノール360g(以下PTBPと略称、2.4mol)を加え、さらに20mlのトリエチルアミン(0.14mol) を加え、約1時間撹拌し重合させた。重合液を水相と有機相に分離し、有機相をリン酸で中和し、洗液の導電率が10μS以下になるまで水洗を繰り返した後、精製樹脂液を得た。得られた精製樹脂液を、強攪拌されている45℃の温水に樹脂液をゆっくり滴下し、溶媒を除去しつつ重合物を固形化した。固形物を濾過後、乾燥して白色粉末状重合体を得た。この重合体は、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の温度20℃における極限粘度[η]は0.36dl/gであった。得られた上記重合体を赤外線吸収スペクトルより分析した結果、1770cm-1付近の位置にカルボニル基による吸収、1240cm-1付近の位置にエーテル結合による吸収が認められ、カーボネート結合を有することが確認された。また、3650〜3200cm-1の位置に水酸基由来の吸収はほとんど認められなかった。このポリカーボネート中のモノマーをGPC分析で測定した場合、いずれのモノマーも20ppm 以下であった。これらを総合した結果、この重合体は下記構造単位からなるポリカーボネート重合体と認められた。
BNP を4,58Kg(16mol )に変更し、BPBPの代わりに1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン1.07Kg(以下BPZ と略称、4mol)、PTBPの代わりにp-ヘプタデカニルフェノール797g(以下PHPDP と略称、2.4mol)に変更した以外は、実施例1と同様に行った。得られた重合体の極限粘度[η]は0.37dl/gで、赤外吸収スペクトル分析等よりこの重合体は下記構造単位からなるポリカーボネート重合体と認められた。結果を表1に示した。
第二のプラスチックレンズの材料には、アッベ数56.2(25℃、カタログ値)、吸水率0.01%未満のゼオネックス(ZEONEX)TM480R(日本ゼオン株式会社製)を使用し、ポリマー温度280℃、金型温度125℃、保持圧力80MPa、冷却保持時間130秒で射出成形し、図1のレンズ3(光学面の半径6.4mm,中心部厚さ2.9mm)を得た。レンズのレタデーションは、0〜150nmであった。
射出成形により得られた第一および第二のプラスチック製レンズを用いて、図1に示す光学ユニット1を組み立てて、レンズの複屈折による解像度への影響を以下の手順で評価した。
図4は、評価に使用した装置の模式図である。図4において、コリメート光源8から出た平行光線は、撮影用のチャート10を通過して光学ユニット1に入射する。該チャート10は図5に示すように、複屈折を持たない透明なガラス板に碁盤目状に線が記入されたものである。ただし、複屈折による解像度への影響評価に使用するパターンとしては、図5に示す撮影チャート以外も使用可能であり、例えば、図6や図7に示す撮影チャートも使用可能である。使用する撮影チャートの選択は、光学ユニットの用途や、要求される解像度に応じて適宜選択可能である。
このチャート10を、図1に示す光学ユニット1を用いて、CCDカメラ12に結像させて撮影する。光学ユニット1とCCDカメラ12とは、焦点距離の調整機構と絞り機構を有するアダプタ11により接続されている。CCDカメラ12により撮影された画像は、電子データとしてコンピュータ13に取り込まれる。コンピュータ13には、予め複屈折ゼロの基準データが保存されており、該基準データと取り込んだ画像データとを画像演算プログラムを用いて比較し、基準データに対する画像の低下を以下の基準にしたがって評価した。なお、基準データは、理論上複屈折ゼロの画像データとして、コンピュータ上で作成したものである。結果を表2に示した。
○ 画像低下がほとんど認められない場合。
△ 画像低下がある程度認められる場合。
× 画像低下がはっきり認められる場合。
第一のプラスチック製レンズ材料として、ビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂(AD−5503(帝人化成株式会社製)、アッベ数30(25℃、カタログ値)を使用して、ポリマー温度280℃、金型温度130℃、保持圧力60MPa、冷却保持時間240秒でBPA型PCを射出成形した以外は、実施例1と同様に実施した。レンズの複屈折による解像度への影響評価の結果を表2に示す。
1,1'−ビ−2-ナフトール BNP
4,4'-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスフェノール BPM
ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン BPBP
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン BPZ
2,3,4:レンズ
5:鏡筒
6:スペーサ
7:レンズ押さえ
8:コリメート光源
10:撮影用チャート
11:接続アダプタ
12:CCDカメラ
13:コンピュータ
14:防湿皮膜
26,28,30 レンズ
26a,28a,30a レンズ部
26b,28b,30b フランジ部
Claims (7)
- 少なくとも第一のプラスチック製レンズと第二のプラスチック製レンズとを備える光学ユニットであって、
(1)第一のプラスチック製レンズは、下記式(A)、式(B)及び式(C)で表される構造単位を有し、式(A)の構造単位が全構造単位中5〜40mol%であり、かつ極限粘度が0.30〜0.50dl/gであるポリカーボネートを含有する組成物を成形して得られ、
(2)第二のプラスチック製レンズのアッべ数が45〜60であることを特徴とする光学ユニット。
{(C)式中Wは、
であり、R1 〜R4 は各々独立に、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、又は炭素数7〜17のアラルキル基である。但し、これらの基が炭素を有する場合には、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン、ジメチルポリシロキシ基、及びアルキルアリールポリシロキシ基で置換されているものも含む。
Yは、
であり、ここにR5 及びR6 は各々独立に、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は炭素数6〜12アリール基を表すか、R5及びR6 が一緒に結合して、炭素環または複素環を形成する基を表す。但し、これらの基が炭素を含有する場合は、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素で置換されているものも含む。a は0〜20の整数、b は1〜100の整数を表す。} - 前記第一と第二のプラスチック製レンズとは、光学的な作用を有するレンズ部の周囲にフランジ部を有し、かつ、第一と第二のプラスチックレンズのフランジ部はそれぞれ、第二と第一のプラスチックレンズのフランジ部それぞれとまたは第一と第二のプラスチック製レンズの間に設けられるスペーサと嵌合可能であり、さらに、第一と第二のレンズとは、前記フランジ部相互の嵌合またはスペーサとフランジ部との嵌合によって組み合わされた状態で互いの光軸を一致する形状を有すること特徴とする請求項1または2に記載の光学ユニット。
- 前記レンズは、互いの前記フランジ部の嵌合またはスペーサとフランジ部との嵌合によって、他のレンズと組み合わせた状態で、互いの光軸方向の位置が適正となる形状を有する請求項3に記載の光学ユニット。
- 少なくとも前記第一のプラスチック製レンズがその表面全面に防湿皮膜を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学ユニット。
- 前記防湿皮膜は、スパッター法で形成されたSi−O系膜であることを特徴とする請求項5に記載の光学ユニット。
- 前記防湿皮膜は、塩化ビニリデンを有する膜であることを特徴とする請求項5に記載の光学ユニット。
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