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JP2005288933A - 可とう性成形型及びその製造方法 - Google Patents

可とう性成形型及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 微細な格子状突起パターンあるいはそれに類似の突起パターンを表面に有する微細構造体を簡便かつ安価に、しかも高い寸法精度で歩留まりよく製造できるとともに、高い寸法精度及び良好な寸法安定性、特に湿度変化に対する良好な寸法安定性を同時に満足させ得るような可とう性成形型を提供すること。
【解決手段】 可とう性成形型が、ポリマー材料及び強化材の複合材料からなる支持体と、前記支持体によって支持された、微細構造表面をその表面に備えた賦形層とを有するように構成する。
【選択図】 図4

Description

本発明は、成形技術に関し、さらに詳しく述べると、微細構造体の製造において微細構造パターンの転写のために使用される可とう性成形型とその製造方法ならびに微細構造体の製造方法に関する。本発明は、各種の微細構造体の製造に有利に使用することができるけれども、プラズマディスプレイパネル用背面板のリブの製造にとりわけ有利に使用することができる。
最近、薄型で大画面のフラットパネルディスプレイとしてプラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel; PDP)が注目されており、業務用あるいは家庭用で壁掛けテレビなどとして使用され始めている。
PDPは、通常、図1に模式的に示すように、多数個の微細な放電表示セルを含んでいる。図示のPDP50において、それぞれの放電表示セル56は、離隔対向した一対のガラス基板、すなわち、前面ガラス基板61及び背面ガラス基板51と、これらのガラス基板間に所定形状をもって配置された微細構造のリブ(バリアリブ、隔壁又は障壁ともいう)54とによって囲まれて画定されている。前面ガラス基板61は、走査電極及び維持電極からなる透明な表示電極63と、透明な誘電体層62と、透明な保護層64とをその上に備えている。また、背面ガラス基板51は、アドレス電極53と、誘電体層52とをその上に備えている。走査電極及び維持電極からなる表示電極63とアドレス電極53は、直交しており、かつ、それぞれ、間隔をあけて一定のパターンで配置されている。各放電表示セル56は、その内壁に蛍光体層55を有するとともに、希ガス(例えば、Ne−Xeガス)が封入されており、上記電極間のプラズマ放電により自発光表示をできるようになっている。
一般に、リブ54は、セラミックの微細構造体からなり、通常は、図2に模式的に示すように、アドレス電極53及び誘電体層52とともに背面ガラス基板51の上に予め設けられてPDP用背面板を構成している。リブの形状としては、一般的にはストレートパターンと格子状(マトリックス状)パターンとがあるが、最近では、格子状パターンのリブが主流となりつつある。格子状パターンのリブは、ストレートパターンに較べて、紫外線が上下のセルに漏れることがないために垂直解像度の低下がなく、かつ蛍光体塗布面積が大きいために発光効率も高いからである。
成形型を使用して、PDPのストレートリブパターン又は格子状リブパターンを形成する方法は、すでに報告されている。例えば、下記の工程:
(A)ロール凹版の版凹部に電離放射線硬化性樹脂(例えば、紫外線硬化性樹脂等)を充填するとともに、可とう性のフィルム基材(例えば、ポリエステル等)をロール凹版に接触させた後、電離放射線の照射によって樹脂を硬化させて、リブの突起に対応する凹部を備えた型シートを作製する工程、
(B)得られた型シートを成形型として使用して、その型シートの凹部にガラスペーストを充填する工程、
(C)ガラスペーストを充填した型シートにガラス基板を密着させた後、型シートを剥離して、ガラス基板にガラスペーストを転写する工程、及び
(D)転写されたガラスペーストを焼成してリブを形成する工程、
よりなることを特徴とするPDPリブの製造方法が公知である(特許文献1)。しかし、このような転写法に基づくPDPリブの製造方法には成形型の構成に問題がある。例えば、PDPの製造において、PDPが大型化し、かつ放電表示セルが微細化する傾向にある昨今、リブの形成に用いられる成形型の寸法精度を高め、かつ良好な寸法安定性を維持できるということは非常に重要なことである。ところで、特に成形型の寸法安定性は、その成形型に使用される基材(上記の例では、フィルム基材)の性質が支配的である。しかし、従来の成形型で基材として一般的に用いられているポリエステル等の有機高分子材料は、温湿度変化に対する寸法変化が大きいので、成形型の良好な寸法安定性をいろいろな使用環境下で達成することは困難である。実際、リブのトータルピッチ(左右又は上下の最外リブ間距離)を高精度に再現可能な成形型を提供できたとしても、その成形型の高精度を安定に維持するため、リブ形成工程における作業環境の厳密な温湿度管理が必要であった。成形型の温湿度変化に対する寸法変化のなかでも、特に湿度変化に対する寸法変化は、応答速度が遅いことや、厳密な湿度管理が困難なことなどが原因で、リブのトータルピッチ制御を困難にする最も大きな原因のひとつとなっている。
特開平8−273537号公報(請求項1、段落0030、図1)
本発明の目的は、したがって、欠陥のない突起パターン、特に微細な格子状突起パターンあるいはそれに類似の突起パターンを表面に有する微細構造体を簡便かつ安価に、しかも高い寸法精度で歩留まりよく製造できるとともに、高い寸法精度及び良好な寸法安定性、特に湿度変化に対する良好な寸法安定性を同時に満足させ得るような可とう性成形型を提供することにある。
また、本発明の目的は、上記のような優れた可とう性成形型を簡便かつ安価に、しかも高い寸法精度で歩留まりよく製造するための方法を提供することにある。
さらに、本発明の目的は、欠陥のない突起パターン、特に微細な格子状突起パターンあるいはそれに類似の突起パターンを表面に有する微細構造体を簡便かつ安価に、しかも高い寸法精度で歩留まりよく製造するための方法を提供することにある。
本発明のこれらの目的やその他の目的は、以下の詳細な説明から容易に理解することができるであろう。
本発明は、その1つの面において、微細構造体の製造において微細構造パターンの転写に使用される可とう性成形型であって、
(1)ポリマー材料及び強化材の複合材料からなる支持体と、
(2)前記支持体によって支持された、微細構造表面をその表面に備えた賦形層と、
を有することを特徴とする微細パターン転写用可とう性成形型にある。ここで、微細構造表面は、溝パターン又は突起パターンのいずれを有していてもよい。
なお、本願明細書においては特に、本発明の実施において用いられるその他の成形型の基体やベースなどと区別するために「支持体」なる語を使用したが、容易に理解されるように、支持体は、上記した従来の成形型の基材と同義である。
また、本発明は、微細構造体の製造において微細構造パターンの転写に使用される可とう性成形型であって、約5ppm/RH%未満の吸湿膨張係数を有することを特徴とする微細パターン転写用成形型にある。本発明の成形型において、その吸湿膨張係数は、好ましくは約3ppm/RH%もしくはそれ以下であり、さらに好ましくは約1ppm/RH%もしくはそれ以下である。
また、本発明は、そのもう1つの面において、上述しかつ以下に詳細に説明する本発明による可とう性成形型を製造する方法であって、下記の工程:
微細構造体の微細構造パターンに対応する形状及び寸法を有する突起パターンを表面に備えたマスター型を準備する工程、
前記マスター型のパターン形成面に硬化性樹脂組成物を所定の膜厚で適用してプレ賦形層を形成する工程、
前記プレ賦形層の上に、ポリマー材料及び強化材の複合材料からなるフィルム状支持体をさらに積層して前記マスター型、前記プレ賦形層及び前記支持体を含む積層体を形成する工程、
前記プレ賦形層の硬化性樹脂組成物を硬化させる工程、そして
前記硬化性樹脂組成物の硬化によって形成された賦形層を前記支持体とともに前記マスター型から離型して、支持体と、その支持体によって裏面を支持された、前記微細構造パターンに対応する形状及び寸法を有する溝パターンを表面に備えた賦形層とを有する可とう性成形型を作製する工程、
を含んでなることを特徴とする可とう性成形型の製造方法にある。
さらに、本発明は、そのもう1つの面において、所定の形状及び寸法を有する微細構造パターンを基板の表面に備えた微細構造体を製造する方法であって、下記の工程:
上述しかつ以下に詳細に説明する本発明による可とう性成形型を用意する工程、
前記基板と前記可とう性成形型の賦形層との間に硬化性の突起形成材料を配置して、前記突起形成材料を前記成形型の溝パターンに充填する工程、
前記突起形成材料を硬化させ、前記基板とそれに一体的に結合した突起パターンとからなる微細構造体を作製する工程、そして
前記微細構造体を前記可とう性成形型から取り去る工程、
を含んでなることを特徴とする微細構造体の製造方法にある。
以下の詳細な説明から理解されるように、本発明により提供される可とう性成形型は、欠陥のない突起パターン、特に微細な格子状突起パターンあるいはそれに類似の突起パターンを表面に有する微細構造体を簡便かつ安価に、しかも高い寸法精度で歩留まりよく製造するのに好適であり、特にPDPリブの製造に好適である。また、本発明の可とう性成形型は、PDPリブ等の製造に従来一般的に使用されてきた成形型とは対照的に、高い寸法精度及び良好な寸法安定性、特に湿度変化に対する良好な寸法安定性を同時に満足させることができる。
また、本発明方法によれば、上記のような優れた可とう性成形型を簡便かつ安価に、しかも高い寸法精度で歩留まりよく製造することができる。
さらに、本発明方法によれば、欠陥のない突起パターンを表面に有する微細構造体、典型的にはPDPリブを簡便かつ安価に、しかも高い寸法精度で歩留まりよく製造することができる。
さらにまた、本発明方法によれば、例えばPDPリブの製造において、基板の所定位置に多数個のリブを予め定められたパターンで容易かつ正確に、高い寸法精度で設けることができる。
さらに加えて、本発明方法によれば、PDPリブあるいはその他の微細構造体を、気泡の発生、パターンの変形等の欠陥を伴わないで高精度に製造できるという効果もある。
本発明による可とう性成形型及びその製造方法ならびに微細構造体の製造方法は、それぞれ、いろいろな形態で有利に実施することができる。以下では、微細構造体の典型例であるPDPリブの製造を参照して本発明の実施を詳細に説明する。なお、本発明がPDPリブの製造に限定されるわけではないことは、言うまでもない。
PDPリブは、図2を参照してすでに説明した通りである。すなわち、PDPのリブ54は、背面ガラス基板51の上に設けられてPDP用背面板を構成している。リブ54の間隔(セルピッチ)Cは、画面サイズなどによって変動するけれども、通常、約150〜400μmの範囲である。一般的に、リブには、「気泡の混入や変形などの欠陥のないこと」及び「ピッチ精度がよいこと」の2点が必要とされる。ピッチ精度に関して言えば、リブは、その形成時、アドレス電極に対してほとんどずれることなく所定位置に設けられることが求められ、実際、数十μm以内の位置誤差しか許容されない。位置誤差が数十μmを上回った場合、可視光の放出条件等に悪影響が生じ、満足のいく自発光表示が不可能となる。画面サイズの大型化が進んでいる今日、このようなリブのピッチ精度の問題は深刻である。
リブ54を全体として見た場合、基板のサイズ及びリブの形状によって若干の差はあるものの、一般的に、リブ54のトータルピッチ(2つの最外リブ54の間の距離;図では5本のリブしか示されていないが、通常、3000本前後である)Rは、数十ppm以下の寸法精度が必要とされる。また、一般的には支持体とそれによって支承された溝パターン付きの賦形層とからなる可とう性成形型を用いてリブを成形するのが有用であるが、そのような成形方法の場合、成形型のトータルピッチ(両端の溝部の距離)にも、リブと同様に数十ppm以下の寸法精度が必要とされる。もちろん、本発明による可とう性成形型を使用すると、このような寸法精度は容易に達成可能である。
図示のPDPリブは、いろいろな手法で製造することができるけれども、好ましくは、以下に詳細に説明するように、そのリブに対応する形状及び寸法を備えたマスター型から可とう性成形型を作製し、その成形型からリブを製造することが好ましい。しかし、所望ならば、マスター型から転写用成形型を作製し、さらにその転写用成形型から可とう性成形型を作製し、得られた可とう性成形型からリブを製造してもよい。すなわち、本発明の実施において、PDPリブは、マスター型−可とう性成形型−PDPリブの順序で、さもなければ、マスター型−転写用成形型−可とう性成形型−PDPリブの順序で、有利に製造することができる。また、可とう性成形型からのPDPリブの製造は、好ましくは、転写法によって、すなわち、可とう性成形型の溝パターンを基板のリブ形成面に転写することによって、有利に製造することができる。本発明の可とう性成形型を使用すると、目的とするPDPリブを容易にかつ高精度で製造することができる。
本発明は、第1に、PDPリブやその他の微細構造体の製造において微細構造パターンの転写に使用される可とう性成形型にある。本発明の実施において、微細構造パターンは多岐に及ぶけれども、最も好適な微細構造パターンは、前記したように、PDPリブの微細構造パターンであり、したがって、可とう性成形型の溝パターンは、通常、一定の間隔をあけて互いに略平行に配置された複数本の溝部をもって構成されたストレートパターンからなるか、さもなければ、図3に示すように、一定の間隔をあけて互いに交差しながら略平行に配置された複数本の溝部をもって構成された格子状パターンからなる。相隣りあった格子状パターンによって規定される矩形の突起部は、最終的に得られるPDPパネルにおいてその放電表示セルを規定可能である。本発明の可とう性成形型は、たとえ微細構造パターンが格子状パターンに代表される複雑なパターンであっても、その作製後にマスター型や転写用成形型から剥離する時に従来の成形型のように強い剥離力を必要とすることがなく、また、突起部の破損などを引き起こすこともないという点で、注目に値する。
また、ここで説明しておくと、格子状リブの説明のために用いられている「格子状パターン」なる語は、図3に示すような典型的な格子状パターンのみを意味するわけではなく、格子に近い構造をもった類似のパターンも包含する。本発明の実施に有効なそのようなパターンとしては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、例えばミアンダパターン、ワッフル(井桁)パターン、ひし形パターンなどを挙げることができる。
図3は、本発明による可とう性成形型の好ましい1態様を示した斜視図であり、また、図4は、図3の線分IV−IVに沿った断面図である。可とう性成形型20は、図示されるように、
(1)ポリマー材料及び強化材の複合材料からなる支持体21、及び
(2)支持体21によって裏面を支持された、微細構造体(図示せず)の微細構造パターンに対応する形状及び寸法を有する溝パターン24を表面に備えた賦形層22
を有している。溝パターン24は、一定の間隔をあけて互いに交差しながら略平行に配置された複数本の溝部をもって構成された格子状溝パターン24からなる。相隣りあった格子状溝パターン24によって規定される矩形の突起部25は、最終的に得られるPDPパネルにおいてその放電表示セル(図1の参照番号56)を規定可能である。また、図示しないけれども、支持体21の賦形層側には、支持体21と賦形層22の間の接着力の増強のためにプライマ層が施されていてもよい。なお、賦形層は、必要ならば、溝パターンに代えて突起パターンをその表面に有することができる。
本発明の可とう性成形型は、特にその支持体に要求されている特性を満足させるために、ポリマー材料及び強化材の複合材料、例えばポリプロピレン(PP)とガラス繊維の複合材料を支持体材料として使用したことに特徴がある。これは、以下の詳細な説明から理解されるように、今までには予想されなかったことであるが、この特定の複合材料が、成形型の支持体に要求される多くの特性、例えば:
1)湿度変化に対する優れた寸法安定性、
2)紫外線(UV)、電子線(EB)、可視光線等の電離放射線の良好な透過性、
3)高い引張り強度、
4)曲げに対する優れた柔軟性、
などを同時に満足させることができるからである。これに対して、ガラス材料は、湿度変化に対する寸法安定性、UV、可視光線等の透過性、高い引張り強度については具現可能であるけれども、曲げに対する柔軟性が著しく低い。また、通常の有機高分子材料を支持体に使用することもできるが、この材料は、柔軟性があるというものの、湿度変化に対する寸法安定性に難点がある。
本発明による可とう性成形型において、支持体は、それによって賦形層を支承でき、かつ成形型の可とう性を確保するのに十分な柔軟性(フレキシビリティ)及び適度の硬さを有している限りにおいて、その形態、複合材料の組成、厚さなどが限定されることはない。一般的には、特定の複合材料のフレキシブルなフィルム(強化ポリマーフィルム)を支持体として有利に使用することができる。強化ポリマーフィルムは、好ましくは透明であり、特に賦形層を光硬化性樹脂組成物から形成する場合、その賦形層の形成時に硬化目的で照射される紫外線(UV)、電子線(EB)、可視光線等を透過させるのに十分な透明度を有していることが、少なくとも必要である。さらには、得られた成形型を使用してPDPリブやその他の微細構造体を光硬化性材料から製造することを特に考慮に入れた場合、支持体及び賦形層のどちらも実質的に透明であることが好ましい。
支持体として使用する強化ポリマーフィルムにおいて、可とう性成形型の溝部のピッチ精度を数十ppm以内にコントロールするため、溝部の形成に関与する賦形層形成材料(好ましくは、紫外線硬化性組成物などの光硬化性材料)よりもはるかに硬い複合材料を強化ポリマーフィルムに選択することが好ましい。一般的に、光硬化性材料の硬化収縮率は数%程度であるため、軟質のポリマーフィルムを支持体に使用した場合、前者の硬化収縮によって、支持体自体の寸法も変化し、溝部のピッチ精度を数十ppm以内にコントロールすることはできない。一方、支持体として使用するポリマーフィルムが本発明で使用される強化ポリマーフィルムの如くに硬いと、光硬化性材料が硬化収縮したとしても支持体自体の寸法精度が維持されるので、溝部のピッチ精度を高精度で維持することができる。また、ポリマーフィルムが硬いと、リブを形成する際のピッチ変動も小さく抑えることができるため、成形性及び寸法精度の両面で有利である。さらに、ポリマーフィルムが硬い場合、成形型の溝部のピッチ精度は、ポリマーフィルムの寸法変化にのみ依存することになるため、安定的に所望のピッチ精度を有する成形型を提供するためには、製造後の成形型においてそのポリマーフィルムの寸法が予定通りであり、少しも変化していないように後処理するだけで十分である。
強化ポリマーフィルムの硬さは、例えば引張りに対する剛性、すなわち、引張り強度で表すことができる。強化ポリマーフィルムの引張り強度は、通常、少なくとも約5kg/mmであり、好ましくは、少なくとも約10kg/mmである。強化ポリマーフィルムの引張り強度が5kg/mmを下回った場合、得られた成形型をモールド型から取り出す時や可とう性成形型からPDPリブを取り出す時などに取り扱い性が低下し、破損や引裂けが生じることもある。
複合材料である強化ポリマーフィルムの形成に好適なポリマー材料の例としては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、ポリオレフィン類、例えばポリプロピレン、シクロオレフィンなど、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマーなどを挙げることができる。エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックなどとして一般的に用いられているポリマー材料も使用可能である。とりわけポリプロピレンやシクロオレフィンなどのポリオレフィンが、ポリマー材料として有用である。
さらに、熱可塑性のポリマー材料も支持体形成のためのポリマー材料として有利であると考えられる。ある種のエポキシ樹脂は適当であるということがわかったけれども、その他の非熱可塑性の(例えば、熱硬化性の)ポリマー材料は適当であると考えられる。
強化ポリマーフィルムは、上述のようなポリマー材料の原料に所定量の強化材を配合し、成形することによって製造することができる。得られる強化ポリマーフィルムは、望ましいことに、ポリマー材料及び強化材の両者の長所を併せ持つことができ、湿度変化に対する寸法安定性、UV、可視光線等の透過性、高い引張り強度、曲げに対する柔軟性を併せ持つ複合材料となることができる。
本発明の実施において、強化材としては、強化ポリマーフィルムの製造に一般的に使用されている各種の強化材をいろいろな形態及びいろいろな量で使用することができる。適当な強化材は、例えば、無機材料、有機材料、金属材料、金属酸化物などの繊維、粒子、その他であり、これらの材料は、必要ならば、混合物、複合体などの形で使用してもよい。
強化材として好適な繊維は、例えば、ガラス繊維、例えばEガラス(アルミノホウケイ酸ガラス)繊維等、炭素繊維、有機繊維、セラミック繊維、例えばアルミナ繊維、シリカ繊維等、金属繊維、例えばアルミニウム、ステンレス鋼、銅、真ちゅう等の繊維、その他である。また、これらの繊維は、必要に応じて、編織物、不織布などの形で使用してもよい。さらに、これらの繊維は、ウイスカー、連続繊維、長繊維、短繊維などの形で使用してもよい。さらに、強化繊維は、例えばいろいろな直径やアスペクト比で使用することができる。ここで使用される強化繊維のアスペクト比は、好ましくは3以上である。
強化材の形態は、上記からも理解されるように多岐にわたっており、したがって、その寸法も一概には規定することができない。典型的な強化材であるガラス繊維を例にとると、それが単繊維である場合、その直径は、通常、約5〜30μmの範囲であり、長さは、複合の形態によって大きく変更可能である。ガラス繊維からなる強化材の形態は、したがって、連続繊維からなる長尺の形態から、長さ約5mmの短繊維の形態まで、幅広い。なお、以上に列挙した強化材やその他の強化材の一般的な寸法については、すでに多数の報告がなされているので、成書を参照されたい。
上記したような強化材は、ポリマー材料に対していろいろな量で配合することができるが、通常、複合材料の全量を基準にして約20〜70体積%の範囲である。強化材の配合量が20体積%を下回ると、強化材の配合効果を十分に発現させることができなくなり、反対に70体積%を上回ると、フィルムの柔軟性の低下といった欠点が目立つようになる。
本発明の可とう性成形型では、その支持体の複合材料を上述のようなポリマー材料及び強化材のいろいろな組み合わせでもって完成することができる。本発明の実施に好適な組み合わせのいくつかを列挙すると、例えば、
A)ポリプロピレンとガラス繊維の組み合わせ、
B)シクロオレフィンとガラス繊維の組み合わせ、
C)ポリフェニレンサルファイドとガラス繊維の組み合わせ、
D)液晶ポリマーとガラス繊維の組み合わせ、
などを挙げることができる。
強化ポリマーフィルムは、それを支持体として使用する場合、単層フィルムとして使用してもよく、必要ならば、2種類以上を組み合わせて複合もしくは積層フィルムとして使用してもよい。いずれにしても、強化ポリマーフィルムからなる支持体は、可とう性成形型及びPDPの構成などに応じていろいろな厚さで使用することができるけれども、通常、約50〜1,000μmの範囲であり、好ましくは、約100〜400μmの範囲である。支持体の厚さが50μmを下回ると、フィルムの剛性が低くなりすぎ、皺や折れが生じやすくなる。反対に、支持体の厚さが1,000μmを上回ると、フィルムのフレキシビリティが低下するため、取り扱い性が低下する。
強化ポリマーフィルムは、通常、ポリマー原料及び強化材をカレンダー成形やコーティングなどの技法によってシート化したものであり、シートの形態に裁断した状態あるいはロールに巻き取った状態で製造することができ、さもなければ、商業的に入手可能である。必要ならば、強化ポリマーフィルムに任意の表面処理を施して、強化ポリマーフィルムに対する賦形層の密着強度を向上させるなどしてもよい。適当な表面処理として、プライマ処理を挙げることができる。プライマ処理は、必要ならば、成形型の製造途中で現場で行ってもよい。プライマ処理は、常法に従って行うことができる。
可とう性成形型において、上述のような支持体の上に設けられる賦形層は、所望とする効果などに応じていろいろに構成することができる。一般的には、賦形層は、硬化性樹脂組成物の硬化生成物からなることが好ましい。硬化性樹脂組成物は、光硬化性であってもよく、熱硬化性であってもよいけれども、好ましくは、光硬化性樹脂組成物である。かかる樹脂組成物は、紫外線(UV)、電子線(EB)、可視光線等の各種の電離放射線を照射することによって、架橋反応やその他の硬化メカニズムによって賦形層に硬化可能である。入手や硬化反応の容易さなどから、紫外線硬化性樹脂組成物を賦形層の形成に有利に使用することができる。なお、以下においては特に紫外線硬化性樹脂組成物を参照して賦形層の形成を説明するけれども、その他の光硬化性樹脂も必要に使用し得ることは言うまでもないことである。
紫外線硬化性樹脂組成物は、いろいろな組成を有することができるけれども、好ましくは、アクリル系モノマー及び(又は)オリゴマーを主成分として含有する。また、この紫外線硬化性組成物に由来する硬化樹脂は、約0℃もしくはそれ以下のガラス転移点を有していることが好ましい。
賦形層は、好ましくは、アクリル系モノマー及び(又は)オリゴマーを主成分として含有する紫外線硬化性組成物を紫外線照射によって硬化させることによって形成された硬化樹脂からなるが、この賦形層は、それを紫外線硬化性組成物から形成するに当たって長大な加熱炉を必要とすることなく、しかも比較的短時間に硬化させて硬化樹脂を得ることが可能であるので、有用である。
賦形層の形成に好適なアクリル系モノマーとしては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル、アクリル酸、アクリル酸エステルなどを挙げることができる。また、賦形層の形成に好適なアクリル系オリゴマーとしては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、ウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエーテルアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマーなどを挙げることができる。特にウレタンアクリレートやそのオリゴマーは、硬化後に柔軟で強靭な硬化樹脂層を提供でき、また、アクリレート全般のなかでも硬化する速度が極めて速いので、成形型の生産性の向上にも寄与できる。さらに、これらのアクリル系モノマーやオリゴマーを使用すると、賦形層が光学的に透明になる。したがって、このような賦形層を備えた可とう性成形型は、PDPリブやその他の微細構造体を製造する時、光硬化性の成形材料を使用可能となすという点でも有用である。
上記したようなアクリル系のモノマー及びオリゴマーは、所望とする成形型の構成やその他のファクタに応じて、単独で使用してもよく、2種類以上を任意に組み合わせて使用してもよい。本発明者らは、アクリル系モノマー及び(又は)オリゴマーが、ウレタンアクリレートオリゴマーと、単官能性及び(又は)2官能性アクリルモノマーとの混合物である時に特に好ましい結果が得られることを発見した。また、このような混合物において、ウレタンアクリレートオリゴマーとアクリルモノマーとの混合比は広い範囲で変更することができるけれども、通常、オリゴマーとモノマーの合計量を基準にしてウレタンアクリレートオリゴマーを約20〜80重量%の量で使用するのが好ましい。得られる成形型においてウレタンアクリレートオリゴマーとアクリルモノマーをこのように広範囲の比率で混合することができるので、賦形層形成用の紫外線硬化性組成物の粘度を成形に好適な広範囲な値に設定できるようになり、したがって、成形型の製造時、作業が容易である、膜厚を一定にできる、などの改良を達成することができる。
紫外線硬化性組成物は、必要に応じて、光重合開始剤やその他の添加剤を任意に含有することができる。例えば、光重合開始剤は、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなどを包含する。光重合開始剤は、紫外線硬化性組成物においていろいろな量で使用することができるというものの、通常、アクリル系モノマー及び(又は)オリゴマーの全量を基準にして約0.1〜10重量%の量で使用するのが好ましい。光重合開始剤の量が0.1重量%を下回ると、硬化反応が著しく遅くなってしまうか、十分な硬化が得られないといった問題が発生する。反対に、光重合開始剤の量が10重量%よりも多くなると、硬化工程の完了後も未反応の光重合開始剤が残留した状態となり、樹脂の黄変や劣化、揮発による樹脂の収縮といった問題が発生する。その他の有用な添加剤としては、例えば、帯電防止剤などを挙げることができる。
また、賦形層の形成において、紫外線硬化性組成物はいろいろな粘度(ブルックフィールド粘度、いわゆるB粘度)で使用することができるというものの、好ましい粘度は、通常、約10〜35,000cpsの範囲であり、さらに好ましくは、約50〜10,000cpsの範囲である。紫外線硬化性組成物の粘度が上記の範囲を外れると、賦形層の形成作業において成膜が困難となる、硬化が十分に進行しない、などといった問題が発生するおそれがある。
賦形層は、可とう性成形型及びPDPの構成などに応じていろいろな厚さで使用することができるけれども、通常、約5〜1,000μmの範囲であり、好ましくは、約10〜800μmの範囲であり、さらに好ましくは、約50〜700μmの範囲である。賦形層の厚さが5μmを下回ると、必要なリブ高さが得られないといった問題が発生する。本発明の賦形層は、大きなリブ高さを保証するためにその厚さが1,000μmまで大きくなってもマスター型や転写用成形型から可とう性成形型を取り外す作業に不都合を生じることはないけれども、賦形層の厚さがもしも1,000μmよりもさらに大きくなると、紫外線硬化性組成物の硬化収縮によってストレスが大きくなり、成形型の反り、寸法精度の劣化といった問題が発生する。本発明の成形型では、リブの高さに対応して溝パターンの深さ、換言すると、賦形層の厚さを大きく設計したとしても、完成した成形型をマスター型などから取り外す作業を小さい力で容易に実施することができるということが重要である。
また、賦形層の表面に形成される溝パターンについて説明すると、溝パターンの深さ、ピッチ及び幅は、目的とするPDPリブのパターン(ストレートパターン又は格子状パターン)や賦形層自体の厚さによって広い範囲で変更することができるけれども、図3及び図4に示した格子状PDPリブ用可とう性成形型の場合、その溝パターンの深さ(リブの高さに対応)は、通常、約100〜500μmの範囲であり、好ましくは、約150〜300μmの範囲であり、縦方向と横方向で異なっていてもよい溝パターンのピッチは、通常、約100〜600μmの範囲であり、好ましくは、約200〜400μmの範囲であり、また、上面と下面で異なっていてもよい溝パターンの幅は、通常、約10〜100μmの範囲であり、好ましくは、約50〜80μmの範囲である。
本発明は、第2に、上記のような本発明の可とう性成形型を製造する方法にある。本発明による可とう性成形型の製造方法は、いろいろなプロセスで実施することができるけれども、好ましくは、下記の工程:
最終目的とする微細構造体の微細構造パターンに対応する形状及び寸法を有する突起パターンを表面に備えたマスター型を準備する工程、
前記マスター型のパターン形成面に硬化性樹脂組成物を所定の膜厚で適用してプレ賦形層を形成する工程、
前記プレ賦形層の上に、ポリマー材料及び強化材の複合材料からなるフィルム状支持体をさらに積層して前記マスター型、前記プレ賦形層及び前記支持体を含む積層体を形成する工程、
前記プレ賦形層の硬化性樹脂組成物を硬化させる工程、そして
前記硬化性樹脂組成物の硬化によって形成された賦形層を前記支持体とともに前記マスター型から離型して、支持体と、その支持体によって裏面を支持された、前記微細構造パターンに対応する形状及び寸法を有する溝パターンを表面に備えた賦形層とを有する可とう性成形型を作製する工程、
を含むプロセスで有利に実施することができる。なお、本発明方法でいう「プレ賦形層」は、換言すると、硬化によって賦形層に変換可能な、賦形層の前駆体である。
本発明方法は、いろいろな態様で有利に実施することができる。例えば、好ましい1態様に従うと、微細構造体の微細構造パターンに対応する形状及び寸法を有する突起パターンを表面に備えたマスター型を可とう性成形型の母型として使用することができる。微細構造体がPDPリブである場合、リブに対応する形状及び寸法をもった微細な突起パターンがマスター型の表面に付与されている。マスター型は、例えば、真ちゅう板などの金属平板に、リブ対応の微細な突起パターンをエンドミル、放電加工、超音波研削等の電気的、機械的及び(又は)物理的加工によって作り込むことによって製造することができる。もちろん、本発明の実施において使用されるマスター型は、金属製に限定されるものではなく、セラミック製、石膏製などであってもよい。
もう1つの好ましい態様に従うと、マスター型から可とう性成形型を直接的に作製しないで、マスター型からまず転写用成形型を作製し、次いでその転写用成形型から可とう性成形型を作製することもできる。すなわち、この態様によると、微細構造体の微細構造パターンに対応する形状及び寸法を有する溝パターンを表面に備えたマスター型を準備し、そのマスター型の溝パターンの転写によって転写用成形型を作製する。容易に理解できるように、この場合に使用するマスター型は、例えば、真ちゅう板などの金属平板に、リブ対応の微細な溝パターンをエンドミル、放電加工、超音波研削等の電気的、機械的及び(又は)物理的加工によって作り込むことによって製造することができる。この方法では、中間的に使用する転写用成形型を繰り返し使用可能な構成とすることによって、可とう性成形型を製造するための実質的な母型として利用することができ、従来の技術で経験されてきた、母型として使用するために多数のマスター金型を製造する煩雑さや不経済の問題点を克服することができる。さらに、本発明のこの態様で用いられるマスター型の作製は溝パターンの加工で済むので、突起パターンの加工に比べて簡便であり、経済的にもメリットがある。
プレ賦形層の形成工程は、前記したように、光硬化性もしくは熱硬化性樹脂組成物を使用して実施することができるけれども、好ましくは光硬化性樹脂組成物を使用して実施することができ、特に紫外線硬化性樹脂組成物を使用して有利に実施することができる。紫外線硬化性樹脂組成物は、好ましくは、アクリル系モノマー及び(又は)オリゴマーを主成分として含有する紫外線硬化性組成物である。また、プレ賦形層を光硬化性樹脂組成物から構成した場合、その光硬化性樹脂組成物をいろいろな技法で硬化させることができるけれども、プレ賦形層が積層されている支持体を通過した光によって硬化させて賦形層となすことが有利である。さらに、支持体と賦形層の間の接着力増強のため、必要に応じて、支持体のプレ賦形層側に予めプライマ層を設けることもできる。プライマ層は、例えば、3M社から商業的に入手可能なプライマ組成物「K−500」から形成することができる。
可とう性成形型は、上記したようにいろいろな技法に従って製造することができる。例えば、図5に順を追って示すような手順によって有利に製造することができる。なお、図において、製造対象の微細構造体はPDPリブである。
まず、図5(A)に示すように、PDPリブに対応する形状及び寸法を備えたマスター型1を作製する。マスター型1は、例えば、ステンレス鋼板を機械加工して作製することができる。マスター型1は、PDP用背面板のリブと同じパターン及び形状の隔壁4をその表面に備え、また、したがって、相隣りあう隔壁4によって規定されるキャビティ(凹部)5が、PDPの放電表示セルとなる。隔壁4の上端部には、泡かみを防止するためのテーパーを取り付けてもよい。また、このマスター型1とあわせて、透明なポリマーフィルムからなる支持体(以下、支持フィルムと呼ぶ)21及び及びラミネートロール23を用意する。ラミネートロール23は、支持フィルム21をマスター型1に押し付けるもので、ゴムロールからなる。必要ならば、ラミネートロールに代えてその他の周知・慣用のラミネート手段を使用してもよい。支持フィルム21は、上記した通り、透明な強化ポリマーフィルムからなる。
次いで、例えばナイフコータやバーコータ等の周知・慣用のコーティング手段(図示せず)により、マスター型1の端面に紫外線硬化性の成形材料3を所定の量で塗布する。紫外線硬化性の成形材料は、得られる可とう性成形型の賦形層を形成するためのものである。ここで、支持フィルム21として曲げに対して柔軟で引張り、圧縮に対して剛性のある材料を使用すると、紫外線硬化性の成形材料3が収縮しても、支持フィルム21と密着しているため、支持フィルムそのものが変形しない限り、10ppm以上の寸法変動を起こすことがない。
ラミネート処理の前、支持フィルムの湿度による寸法変化を取り除くため、成形型の製造環境下でエージングを行うことが好ましい。このエージング処理を行わないと、得られる成形型において許容し得ない程度の寸法のばらつき(例えば、300ppmのオーダーのばらつき)が発生する恐れがある。
次いで、ラミネートロール23をマスター型1の上を矢印の方向に滑動させる。このラミネート処理の結果、成形材料3が所定の厚さで均一に分布せしめられ、隔壁4の間隙も成形材料3で充填される。また、成形材料3が支持フィルム21で押し広げられるので、従来一般的に使用されている塗布法に比較して、アワ抜けも良好である。この状態の成形材料3が、本発明でいうプレ賦形層である。
ラミネート処理が完了した後、図5(B)に示すように、支持フィルム21をマスター型1に積層した状態で、支持フィルム21を介して、紫外線光(hν)を矢印で示すようにプレ賦形層3に照射する。ここで、支持フィルム21が気泡等の光散乱要素を含むことなく、透明材料によって一様に形成されていれば、照射光は、ほとんど減衰することがなく、プレ賦形層3に均等に到達可能である。その結果、プレ賦形層3の成形材料は効率的に硬化して、支持フィルム21に接着した均一な賦形層22になる。よって、支持フィルム21と賦形層22が一体的に接合した可とう性成形型20が得られる。なお、この工程では、例えば波長350〜450nmの紫外線を使用できるので、フュージョンランプなどの高圧水銀灯のように高熱を発生させる光源を使用しないで済むというメリットもある。さらに、紫外線硬化時に支持フィルムや賦形層を熱変形させることがないので、高度のピッチコントロールができるというメリットもある。
その後、図5(C)に示すように、可とう性成形型20をその一体性を保持したままマスター型1から分離する。
本発明の可とう性成形型は、寸法・大きさによらず、それに応じた周知・慣用のラミネート手段及びコーティング手段を使用しさえすれば、比較的簡便に製造可能である。したがって、本発明によれば、真空プレス成形機等の真空設備を使用した従来の製造方法とは異なり、何らの制限を受けることなく大型の可とう性成形型を簡便に製造可能となる。
また、可とう性成形型は、いろいろな微細構造体の製造において有用である。例えば、可とう性成形型は、ストレートリブパターンあるいは格子状リブパターンをもったPDPのリブの成形に有用である。この可とう性成形型を使用すれば、真空設備及び(又は)複雑なプロセスの代わりにラミネートロールを用いただけで、放電表示セルから外部に紫外線が漏れ難いリブ構造を有する大画面のPDPを簡便に製造することができる。
さらに、可とう性成形型は、特に複数本のリブが一定の間隔をあけて互いに交差しながら略平行に配置された、すなわち、格子状PDPリブを製造する場合に有用である。この可とう性成形型は、それが大型で複雑な形状を有するリブ製造用の成形型であるにもかかわらず、マスター型からその可とう性成形型を取り外す作業を成形型の変形、破壊等の問題を生じることなく容易に実施することができるからである。
以上に説明した図5は、マスター型から可とう性成形型を製造した例である。別法によれば、前記したように、マスター型から転写用成形型を作製し、次いでこの転写用成形型から可とう性成形型を製造することも可能である。以下、転写用成形型から可とう性成形型を製造する方法について説明する。
転写用成形型(以下、「転写型」と略称する)は、例えば、図6(C)に模式的に示す構造を有することができる。転写型10は、図示されるように、
(1)高い弾性率を有する硬質材料からなるベース11、及び
(2)ベース11によって支持された、微細構造体の微細構造パターン(図では、微細なPDPリブパターン)に対応する形状及び寸法を有する突起パターン14を表面に備えた転写パターン層12、
を有している。この転写型10において、転写パターン層12は、好ましくは、特定のシリコーンゴムである2液型室温硬化性シリコーンゴムから形成することができる。
図示のような転写用成形型において、ベースは、高い弾性率を有する硬質材料からなる。このような硬質材料は、マスター型から転写用成形型(転写型)を作製する際に、マスター型に備わった高い寸法精度をそのまま維持することを可能とする。すなわち、マスター型上に転写パターン層の形成材料を塗布して硬化させる場合、その転写パターン層の形成材料の硬化収縮があるため、得られる転写パターンの寸法精度を精確に維持することが一般的には困難であるけれども、高い弾性率を有する硬質材料をベースに用いることで、高い寸法をそのまま維持できる。
ベースに好適な硬質材料は、金属材料からプラスチック材料までの広範な材料を包含するけれども、とりわけ金属材料が有用である。適当な金属材料としては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、例えば、ステンレス鋼、銅などを挙げることができる。これらの金属材料は、単体で使用してもよく、所望ならば、合金の形で使用してもよい。
ベースは、通常、単一の硬質材料からなるシート、板などの形で使用するのが一般的であるけれども、所望ならば、複合体あるいは積層体の形で使用してもよい。ベースの厚さは、転写型の仕様などに応じて広い範囲で変更することができるけれども、通常、約0.1〜5mmの範囲であり、さらに好ましくは、約0.5〜3mmの範囲である。ベースの厚さが0.1mmよりも薄くなると、転写型の取り扱い性が低下し、また、マスター型の高い寸法精度の維持が困難になる。例えば、ベースとして、所定の厚さをもった金属板に代えてPETフィルムを使用した場合、転写型は軽くなるけれども、もはや高い寸法精度を維持することが難しくなる。反対に、転写型の厚さが5mmを上回ると、重量増加に原因して転写型の取り扱い性が低下する。
ベースによって支持される転写パターン層は、2液型室温硬化性シリコーンゴムから形成される。このようなシリコーンゴムは、それを使用して転写パターン層を形成する場合、従来成膜目的で一般的に使用されている熱硬化性樹脂などとは異なってベースやマスター型を加熱処理する必要がないので、加熱に原因した変形と、それによる寸法精度の低下を回避することができる。また、難点をもった熱硬化性樹脂に代えて光硬化性樹脂や湿気硬化性樹脂などを使用して転写パターン層を形成することも考えられるが、このような硬化性樹脂の場合、光透過性を有しないマスター型とベースの間に挟んで使用されるので、完全な形で硬化を行わせることが実質的に不可能である。
また、2液型室温硬化性シリコーンゴムは、表面エネルギーが低く、柔軟性を有していることから、マスター型から転写用成形型(転写型)を剥離する作業、そしてその転写型から本発明の可とう性成形型を剥離する作業が極めて容易となる。
さらに、2液型室温硬化性シリコーンゴムは、一般的に数時間で硬化させることが可能である。そのため、従来の方法では転写型の製造に非常に長い時間を必要としていたものを、数時間のサイクルで転写型を製造することができる。つまり、この方法によれば、格子あるいはその他の形状の凸部パターンを有する転写型を数時間サイクルで何枚でも製造可能である。さらに、このようにして製造される転写型は、その転写パターン層が繰り返し使用可能な強度等を有しているので、実質的な母型として、従来のマスター金型に代えて繰り返し使用することができる。
転写パターン層の厚さは、転写用成形型の仕様やその他のファクタに応じて広い範囲で変更することができるが、通常、約0.005〜10mmの範囲であり、好ましくは、約0.02〜0.2mmの範囲である。転写パターン層の厚さが0.005mmを下回ると、もはや突起パターンをその層の表面に付与することが難しくなり、反対に、転写パターン層の厚さが10mmを上回ると、材料コストが増加し、転写パターン層を薄く形成するメリットもなくなる。
さらに、上述の転写用成形型は、微細構造体の微細構造パターンに対応する形状及び寸法を有する溝パターン(凹部パターン)を表面に備えたマスター型を使用可能であるので、マスター型の加工を容易に、かつ比較的に短時間で実施することができるという効果もある。従来のように、突起パターンを表面に備えたマスター金型を作製する場合には、長時間の加工や熟練、そして多大の経費を必要としていたのとは対象的である。実際、格子状凹部パターンを金属板などに機械加工する場合と、格子状凸部パターンを同じ金属板などに機械加工する場合とでは、加工可能なパターンの微細度、加工時間、コストなどにおいて明確な差が出てくる。
また、従来のように、凹部パターンを表面に備えたマスター金型から直接に微細構造体(例えば、PDPリブ)を転写によって作製した場合には、突起部(例えば、リブ)を破損するなどの問題が発生するけれども、本発明のこの方法では、転写用成形型を使用しているので、この問題も回避することができる。要するに、本発明によれば、微細構造体の典型例である格子状PDPリブなどを作製したい場合、加工が容易な格子状凹部パターンを備えたマスター型を母型として使用することができ、かつリブ欠陥を生じることなく格子状リブを形成することができる。
転写用成形型は、いろいろな手法を使用して製造することができるが、好ましくは、下記の工程:
目的とする微細構造体の微細構造パターンに対応する形状及び寸法を有する突起パターンを表面に備えた転写パターン層を2液型室温硬化性シリコーンゴムから形成する工程、及び
前記転写パターン層の裏面を高い弾性率を有する硬質材料からなるベースによって支持する工程
を含む方法によって製造することができる。
また、この製造方法の実施において、微細構造体の微細構造パターンに対応する形状及び寸法を有する溝パターンを表面に備えたマスター型から、そのマスター型の溝パターンを前記シリコーンゴムに転写して前記転写パターン層の突起パターンを形成することが好ましい。具体的には、下記の工程:
マスター型の表面に2液型室温硬化性シリコーンゴムを所定の膜厚で適用して前記転写パターン層の前駆体層を形成する工程、
前記マスター型の上に前記ベースを積層して前記マスター型、前記転写パターン層の前駆体層及び前記ベースを含む積層体を形成する工程、
前記シリコーンゴムを硬化させる工程、そして
前記シリコーンゴムの硬化によって形成された前記転写パターン層を前記ベースとともに前記マスター型から離型する工程、
を順次実施することによって、目的とする転写用成形型を製造することができる。
図6は、転写用成形型の好ましい1製造方法を示したものである。
まず、図6(A)に示すようなマスター型1を用意する。マスター型1は、例えばステンレス鋼の平板からなり、その表面に、微細構造体の微細構造パターンに対応する形状及び寸法を有する溝パターン4bを備えている。
次いで、図6(B)に示すように、用意したマスター型1の表面に、転写パターンの前駆体として使用される2液型室温硬化性シリコーンゴム2を所定の膜厚で適用する。図示の例では、室温硬化性シリコーンゴム2をマスター型1の表面に塗布し、溝パターン4bを順次充填する方法を採用しているが、その他の方法を採用してもよい。例えば、シート状に加工した室温硬化性シリコーンゴムを用意し、これをマスター型のパターン面に積層して両者を密着させてもよい。また、別法によれば、マスター型と、転写用成形型のベース(前記した)を所定の間隔を開けて配置した後、その間隙に室温硬化性シリコーンゴムを注入してもよい。いずれの方法によっても、転写パターン層の前駆体2を所定の厚さで形成することができる。
引き続いて、図6(C)に示すように、マスター型1の上に転写用成形型のベース11を積層して、マスター型1、転写パターン層の前駆体及びベース11を含む積層体を形成する。なお、図では、前駆体の硬化によって形成された転写パターン層12が示されている。すなわち、前駆体の室温硬化性シリコーンゴムを硬化させると、図示のように、ベース11とそれによって支持された転写パターン層12とからなる転写用成形型10が得られる。なお、室温硬化性シリコーンゴムは、通常、室温で数時間で硬化可能である。
最後に、図示しないが、得られた転写用成形型をマスター型から離型する。離型した後の成形型は、必要ならば、室温あるいは高められた温度でアフターキュアしてもよい。この転写用成形型は、可とう性成形型作製のため、図5を参照して先に説明した可とう性成形型の製造方法において、マスター型1の代替として有利に使用することができる。
本発明は、第3に、微細構造体の製造方法にある。この製造方法は、本発明の可とう性成形型を使用する限り、いかなる工程を経て実施してもよい。実際、本発明方法は、いろいろな工程を経て有利に実施することができる。
本発明による微細構造体の製造方法は、好ましくは、下記の工程:
本発明による可とう性成形型を用意する工程、
微細構造体の基板と可とう性成形型の賦形層との間に硬化性の突起形成材料を配置して、前記突起形成材料を前記可とう性成形型の溝パターンに充填する工程、
前記突起形成材料を硬化させ、前記基板とそれに一体的に結合した突起パターンとからなる微細構造体を作製する工程、そして
前記微細構造体を前記可とう性成形型から取り去る工程、
を順次実施することによって有利に実施することができる。硬化性の突起形成材料は、好ましくは、光硬化性材料である。
本発明の微細構造体の製造方法は、PDPリブの作製において有利に使用することができる。すなわち、上記のようにして、あるいはその他の方法を使用して作製した本発明の可とう性成形型を使用して、PDPリブを有利に製造することができる。以下、図5の方法で作製した可とう性成形型20を使用して格子状リブパターンをもったPDPリブを製造する方法を、図7を参照して順を追って説明する。なお、本方法の実施には、例えば特開2001−191345号公報の図1〜図3に示した製造装置を有利に使用できる。
まず、図示しないが、ストライプ状の電極を予め定められたパターンで上面に配設したガラス平板を用意して定盤上にセットする。次いで、図7(A)に示すように、溝パターンを表面に有する可とう性成形型20をガラス平板31上の所定の位置に設置し、ガラス平板31と成形型20との位置合わせ(アライメント)を行う。ここで、ガラス平板31は、図2に示したようにアドレス電極及び誘電体層を有しているが、説明の簡略化のために省略されている。成形型20は透明であるので、ガラス平板31上の電極との位置合わせは、容易に可能である。詳細に述べると、この位置合わせは、目視によって行ってもよく、さもなければ、例えばCCDカメラのようなセンサを用いて行ってもよい。このとき、必要により、温度及び湿度を調整して成形型20の溝部とガラス平板31上の相隣れる電極間の間隔を一致させてもよい。通常、成形型20とガラス平板31は温度及び湿度の変化に応じて伸縮し、また、その程度は互いに異なるからである。したがって、ガラス平板31と成形型20との位置合わせが完了した後は、そのときの温度及び湿度を一定に維持するよう制御する。かかる制御方法は、大面積のPDP用基板の製造に当たって特に有効である。
引き続いて、ラミネートロール23を成形型20の一端部に載置する。ラミネートロール23は、好ましくはゴムロールである。このとき、成形型20の一端部はガラス平板31上に固定されているのが好ましい。先に位置合わせが完了したガラス平板31と成形型20との位置ずれが防止され得るからである。
次に、成形型20の自由な他端部をホルダー(図示せず)によって持ち上げてラミネートロール23の上方に移動させ、ガラス平板31を露出させる。このとき、成形型20には張力を与えないようにする。成形型20にしわが入るのを防止したり、成形型20とガラス平板31の位置合わせを維持したりするためである。但し、その位置合わせを維持し得る限り、他の手段を使用してもよい。なお、本製造方法では、成形型20に弾性があるので、成形型20を図示のように捲りあげても、その後のラミネート時には、もとの位置合わせの状態に正確に戻すことができる。
引き続いて、リブの形成に必要な所定量のリブ前駆体33をガラス平板31の上に供給する。リブ前駆体の供給には、例えば、ノズル付きのペースト用ホッパーを使用できる。
ここで、リブ前駆体とは、最終的に目的とするリブ成形体を形成可能な任意の成形材料を意味し、リブ成形体を形成できる限り特に限定されるものではない。リブ前駆体は、熱硬化性でも光硬化性でもよい。特に、光硬化性のリブ前駆体は、上述した透明の可とう性成形型と組み合わせて極めて効果的に使用可能である。可とう性成形型は、上記したように、気泡や変形等の欠陥をほとんど伴わず、光の不均一な散乱等を抑制することができる。かくして、成形材料が均一に硬化され、一定かつ良好な品質をもったリブになる。
リブ前駆体に好適な組成物の一例を挙げると、(1)リブの形状を与える、例えば酸化アルミニウムのようなセラミック成分、(2)セラミック成分間の隙間を埋めてリブに緻密性を付与する鉛ガラスやリン酸ガラスのようなガラス成分、及び(3)セラミック成分を収容及び保持して互いに結合するバインダ成分とその硬化剤又は重合開始剤を基本的に含む組成物である。バインダ成分の硬化は、加熱又は加温によらず光の照射によってなされることが望ましい。かかる場合、ガラス平板の熱変形を考慮する必要はなくなる。
また、図示の製造方法の実施において、リブ前駆体33をガラス平板31の上面に全体的に供給する。リブ前駆体33は、通常約20,000cps以下、好適には約5,000cps以下の粘度を有することが望ましい。リブ前駆体の粘度が約20,000cpsより高いと、ラミネートロールによってリブ前駆体が十分に広がり難くなり、その結果、成形型の溝部に空気が巻き込まれ、リブの欠陥の原因となるおそれがある。実際、リブ前駆体の粘度が約20,000cps以下であると、ラミネートロールをガラス平板の一端部から他端部に一回だけ移動させるだけで、ガラス平板と成形型の間にリブ前駆体が均一に広がり、全ての溝部に気泡を含むことなく均一に充填できる。
次に、回転モータ(図示せず)を駆動させ、図7(A)において矢印で示すように、ラミネートロール23を成形型20上を所定の速度で移動させる。ラミネートロール23がこのようにして成形型20上を移動している間、成形型20にはその一端部から他端部に圧力がラミネートロール23の自重によって順次印加されて、ガラス平板31と成形型20の間にリブ前駆体33が広がり、成形型20の溝部にも充填される。すなわち、リブ前駆体33が順次溝部の空気と置換されて充填されていく。このとき、リブ前駆体の厚さは、リブ前駆体の粘度又はラミネートロールの直径、重量もしくは移動速度を適当に制御することにより、数μmから数十μmの範囲にすることができる。
また、図示の製造方法によれば、成形型の溝部は空気のチャネルにもなって、空気をそこに捕捉したとしても、上述した印加圧力を受けたときには空気を効率よく成形型の外部又は周囲に排除することができる。その結果、本製造方法は、リブ前駆体の充填を大気圧下で行っても、気泡の残存を防止することができるようになる。換言すれば、リブ前駆体の充填に当たって減圧を適用する必要はなくなる。もちろん、減圧を行って、気泡の除去を一層容易に行ってもよい。
引き続いて、リブ前駆体を硬化させる。ガラス平板31上に広げたリブ前駆体33が光硬化可能である場合は、図7(B)に示すように、ガラス平板31と成形型20の積層体を光照射装置(図示せず)に入れ、紫外線のような光をガラス平板31及び成形型20を介してリブ前駆体33に照射して硬化させる。このようにして、リブ前駆体の成形体、すなわち、リブそのものが得られる。
最後に、得られたリブ32をガラス平板31に接着させたまま、ガラス平板31及び成形型20を光照射装置から取り出し、図7(C)に示すように成形型20を剥離除去する。ここで使用した可とう性成形型20はハンドリング性にも優れるので、ガラス平板31に接着したリブ32を破損させることなく、少ない力で成形型20を容易に剥離除去できる。もちろん、この剥離除去作業に大掛かりな装置は不要である。
引き続いて、本発明をその実施例を参照して説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものでないことは言うまでもない。
実施例1
本例では、格子状パターンのリブ(隔壁)をもったPDP用背面板を製造するため、図3及び図4に示したような格子状溝パターンを表面に備えた可とう性成形型を作製した。
可とう性成形型の作製のため、縦210mm×横300mm×厚さ20mmの真ちゅう板の片面に、それぞれ縦700μm×横200μm×深さ200μmの寸法を有するセルを、縦周期800μm、縦総数180個、横周期270μm及び横総数840個で規則的に機械加工した。セルは、得られるPDP用背面板の放電表示セルを規定するためのものである。格子状突起パターンを表面に有しているマスター型が得られた。このマスター型において、突起パターンは、縦突起部と横突起部とからなり、それぞれ等脚台形の断面を有し、かつ一定の間隔を開けて互いに交差しながら略平行に配置されていた。
上記のマスター型を使用して、図5を参照して先に説明したような手法に従って可とう性成形型を作製した。
まず、成形型の賦形層の形成に使用するため、下記のような組成の2種類の紫外線硬化性樹脂組成物を調製した。
高粘度の紫外線硬化性樹脂組成物(A):
脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名「フォトマー6010」、ヘンケル社製) 80重量%
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(新中村化学社製) 20重量%
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(光重合開始剤、商品名「ダロキュア1173」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製) 1重量%
低粘度の紫外線硬化性樹脂組成物(B):
脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名「フォトマー6010」、ヘンケル社製) 40重量%
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(新中村化学社製) 60重量%
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(光重合開始剤、商品名「ダロキュア1173」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製) 1重量%
それぞれの樹脂組成物の粘度をブルックフィールド(B)型粘度計で測定したところ、樹脂組成物(A)の粘度は8,500cpsであり、樹脂組成物(B)の粘度は110cpsであった(シャフト#5、20rpm、22℃)。
さらに、成形型の支持体として使用するため、縦300mm×横300mm×厚さ0.2mmの強化ポリプロピレン(PP)フィルムを用意した。この強化PPフィルムは、Eガラス(アルミノホウケイ酸ガラス)の連続繊維で強化されたものであり、東洋紡績(株)から、製品名「Quick Form」として入手可能であり、また、Eガラスは直径が約10μm、含有量が体積分率で約50%である。
次いで、強化PPフィルムの片面に上記のようにして調製した紫外線硬化性樹脂組成物(A)を約200μmの厚さで塗布し、一方、先の工程で作製したマスター型の突起パターン面に紫外線硬化性樹脂組成物(B)を塗布した。その後、強化PPフィルムとマスター型をそれぞれの樹脂コーティングが重なり合うようにラミネートした。強化PPフィルムの長手方向はマスター型の縦突起部と平行とし、強化PPフィルムとマスター型にサンドイッチされた紫外線硬化性樹脂組成物の合計厚さは約250μmとなるように設定した。ラミネートロールを使用して強化PPフィルムを入念に押し付けたところ、マスター型の凹部に紫外線硬化性樹脂組成物が完全に充填され、気泡の取り込みも認められなかった。
この状態で、三菱電機オスラム社製の蛍光ランプを用い、300〜400nmに波長(ピーク波長:352nm)をもった紫外線光を、強化PPフィルムを介して、紫外線硬化性樹脂組成物層に30秒間照射した。紫外線光の照射量は、200〜300mJ/cmであった。2種類の紫外線硬化性樹脂組成物が硬化し、賦形層が得られた。引き続いて、強化PPフィルムを賦形層と共にマスター型から剥離したところ、マスター型の格子状突起パターンに対応する形状及び寸法を有する格子状溝パターンを表面に備えた可とう性成形型が得られた。この可とう性成形型の厚さは、約450μmであった。
実施例2
本例では、前記実施例1で作製した可とう性成形型を使用して、図7を参照して先に説明したような手法に従ってPDP用背面板(本発明でいう微細構造体)を作製した。
可とう性成形型をPDP用ガラス基板の上に位置合わせして配置した。成形型の溝パターンをガラス基板に対向させた。次いで、成形型とガラス基板の間に感光性セラミックペーストを110μmの厚さで充填した。ここで使用したセラミックペーストは、次のような組成であった。
光硬化性オリゴマー:ビスフェノールAジグリシジルメタクリレート酸付加物(共栄社化学社製) 21.0g
光硬化性モノマー:トリエチレングリコールジメタクリレート(和光純薬工業社製) 9.0g
希釈剤:1,3−ブタンジオール(和光純薬工業社製) 30.0g
光重合開始剤:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(商品名「イルガキュア819」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製) 0.3g
界面活性剤:POCA(ホスフェートプロポキシアルキルポリオール、3M社製) 1.5g
スルホン酸系界面活性剤(商品名「ネオペレックスNо.25」、花王社製) 1.5g
無機粒子:鉛ガラスとセラミックの混合粉末(商品名「RFW−030」、旭硝子社製) 270.0g
このセラミックペーストの粘度をブルックフィールド(B)型粘度計で測定したところ、7,300cps(シャフト#5、20rpm、22℃)であった。
セラミックペーストをガラス基板上に全面塗布した後、ガラス基板の表面を覆うように成形型をラミネートした。直径200mm及び重量30kgのゴム製ラミネートロールを使用して成形型を入念に押し付けたところ、その成形型の溝部にセラミックペーストが完全に充填された。
この状態で、フィリップス社製の蛍光ランプを用い、400〜500nmに波長をもった青色光(ピーク波長:450nm)を成形型とガラス基板の両面から30秒間照射した。紫外線光の照射量は、200〜300mJ/cmであった。セラミックペーストが硬化し、リブとなった。引き続いて、ガラス基板をその上のリブと共に成形型から剥離したところ、格子状リブ付きのガラス基板が得られた。得られたガラス基板において、リブの形状及び寸法は、可とう性成形型の作製に使用されたマスター型の溝部のそれに正確に一致した。最後に、ガラス基板を550℃で1時間にわたって焼成することで、ペースト中の有機成分を燃焼除去した。ガラス成分のみからなる格子状リブを備えたPDP用背面板が得られた。リブの欠陥を光学顕微鏡によって検査したところ、リブの欠損等の欠陥は認められなかった。
試験例1
複合フィルムの寸法変化の測定
本例では、本発明の可とう性成形型において支持体として使用される複合フィルムについて、22℃における相対湿度を85%RHから55%RHに変化させた時の寸法変化を次の手順で測定した。
1.供試複合フィルムの準備
前記実施例1において可とう性成形型の支持体として使用された強化PPフィルム(縦300mm×横300mm×厚さ0.2mm)を供試複合フィルムとして使用した。
2.寸法測定用のマーキング
図8に示すように、供試複合フィルム21の4隅(A、B、C及びDの4点、点間の距離:250mm)に寸法測定用のマーキングを付与した。
3.恒温湿保管
工程2の供試複合フィルムを22℃/55%RHの恒温湿のオーブンに入れ、1週間にわたって保管した。
4.XY座標の測定
工程3の供試複合フィルムをオーブンから取り出し、その直後の4点(A、B、C及びDの4点)のXY座標を測定機上で測定した。測定時、22℃/55%RHであった。下記の第1表に「データ1」として記載する測定結果が得られた。
5.恒温湿保管
工程2の供試複合フィルムを22℃/85%RHの恒温湿のオーブンに入れ、1週間にわたって保管した。
6.XY座標の測定
工程5の供試複合フィルムをオーブンから取り出し、その直後の4点(A、B、C及びDの4点)のXY座標を測定機上で測定した。測定時、22℃/55%RHであった。下記の第1表に「データ2」として記載する測定結果が得られた。
7.寸法変化の測定
工程4及び6において得られた測定結果(各点間の寸法)を比較したところ、下記の第1表に「差」として記載する寸法変化のあることが確認された。
また、各点間における吸湿膨脹係数も算出したところ、下記の第1表に記載する結果が得られた。
Figure 2005288933
上記第1表の結果から理解されるように、本例で試験に供した複合フィルムは、相対湿度30RH%の変化に対して有意な寸法変化を示すことがなかった。
試験例2
可とう性成形型の寸法変化の測定
本例では、本発明の可とう性成形型について、22℃における相対湿度を85%RHから55%RHに変化させた時の寸法変化を次の手順で測定した。
1.可とう性成形型の作製
前記実施例1に記載の可とう性成形型を同一の製造条件で作製した。強化PPフィルムからなる支持体と、それに積層された、ウレタンアクリレートとアクリルモノマー由来の硬化物(Tg:−40℃)からなる賦形層とを備えた厚さ450μmの可とう性成形型が得られた。
2.寸法測定用のマーキング
前記試験例1と同様な手法で、供試成形型の4隅(A、B、C及びDの4点、点間の距離:250mm)に寸法測定用のマーキングを付与した。
3.恒温湿保管
工程2の供試成形型を22℃/55%RHの恒温湿のオーブンに入れ、1週間にわたって保管した。
4.XY座標の測定
工程3の供試成形型をオーブンから取り出し、その直後の4点(A、B、C及びDの4点)のXY座標を測定機上で測定した。測定時、22℃/55%RHであった。下記の第2表に「データ3」として記載する測定結果が得られた。
5.恒温湿保管
工程2の供試成形型を22℃/85%RHの恒温湿のオーブンに入れ、1週間にわたって保管した。
6.XY座標の測定
工程5の供試成形型をオーブンから取り出し、その直後の4点(A、B、C及びDの4点)のXY座標を測定機上で測定した。測定時、22℃/55%RHであった。下記の第1表に「データ4」として記載する測定結果が得られた。
7.寸法変化の測定
工程4及び6において得られた測定結果(各点間の寸法)を比較したところ、下記の第2表に「差」として記載する寸法変化のあることが確認された。
また、各点間における吸湿膨脹係数も算出したところ、下記の第2表に記載する結果が得られた。
Figure 2005288933
上記第2表の結果から理解されるように、本例で試験に供した可とう性成形型は、相対湿度30RH%の変化に対して有意な寸法変化を示すことがなかった。
比較試験例1
前記試験例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、比較のため、供試複合フィルム(強化ポリマーフィルム)として、PPに代えてエポキシガラスのコンポジットフィルム(有沢製作所製)を使用し、かつ供試複合フィルムのサイズを縦300mm×横300mm×厚さ0.25mmに変更した。
前記試験例1に記載の手法に従って複合フィルムの寸法変化を測定したところ、下記の第3表に記載する結果が得られた。なお、表中、「データ5」は、22℃/55%RHの恒温湿のオーブンで1週間にわたって保管した場合の結果であり、「データ6」は、22℃/85%RHの恒温湿のオーブンで1週間にわたって保管した場合の結果である。
Figure 2005288933
上記第3表の結果から理解されるように、本例で試験に供した複合フィルムは、約8ppm/RH%の吸湿膨脹係数を示し、相対湿度30RH%の変化に対して有意な寸法変化を示した。
比較試験例2
前記試験例2に記載の手法を繰り返したが、本例では、比較のため、可とう性成形型の支持体として使用した強化ポリマーフィルムにおいて、PPに代えてエポキシ樹脂を使用し、かつ強化ポリマーフィルムのサイズを縦300mm×横300mm×厚さ0.25mmに変更した。
前記試験例2に記載の手法に従って可とう性成形型の寸法変化を測定したところ、下記の第4表に記載する結果が得られた。なお、表中、「データ7」は、22℃/55%RHの恒温湿のオーブンで1週間にわたって保管した場合の結果であり、「データ8」は、22℃/85%RHの恒温湿のオーブンで1週間にわたって保管した場合の結果である。
Figure 2005288933
上記第4表の結果から理解されるように、本例で試験に供した可とう性成形型は、約8ppm/RH%の吸湿膨脹係数を示し、相対湿度30RH%の変化に対して有意な寸法変化を示した。
比較試験例3
前記試験例2に記載の手法を繰り返したが、本例では、比較のため、可とう性成形型の作製において、強化PPフィルムに代えて、厚さ188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを支持体として使用した。PETフィルムのサイズは、縦300mm×横300mm×厚さ0.2mmであった。
前記試験例2に記載の手法に従って可とう性成形型の寸法変化を測定したところ、約8ppm/RH%の吸湿膨脹係数を示し、相対湿度30RH%の変化に対して有意な寸法変化を示すということが判明した。また、支持体として使用したPETフィルムも、約8ppm/RH%の吸湿膨脹係数を示した。
本発明の可とう性成形型を使用してリブを形成することが可能な、従来のPDPの一例を模式的に示した断面図である。 図1のPDPに用いられたPDP用背面板を示した斜視図である。 本発明による可とう性成形型の1実施形態を示した斜視図である。 図3の可とう性成形型の線分IV−IVに沿った断面図である。 本発明による可とう性成形型の1製造方法を、順を追って示した断面図である。 可とう性成形型の製造に用いられる転写用成形型の1製造方法を順を追って示した断面図である。 図5の方法で作製した可とう性成形型を使用して微細構造体を製造する1方法を、順を追って示した断面図である。 寸法変化測定用のマーキングの位置を示した供試複合フィルムの平面図である。
符号の説明
1…マスター型
2…シリコーンゴム
3…紫外線硬化性成形材料(プレ賦形層)
4…突起パターン
10…転写用成形型
11…ベース
12…転写パターン層
14…突起パターン
20…可とう性成形型
21…支持体
22…賦形層
30…微細構造体
31…ガラス平板
32…リブ

Claims (17)

  1. 微細構造体の製造において微細構造パターンの転写に使用される可とう性成形型であって、
    (1)ポリマー材料及び強化材の複合材料からなる支持体と、
    (2)前記支持体によって支持された、微細構造表面をその表面に備えた賦形層と、
    を有することを特徴とする微細パターン転写用可とう性成形型。
  2. 前記微細構造表面が溝パターンを含むことを特徴とする請求項1に記載の可とう性成形型。
  3. 前記微細構造表面が突起パターンを含むことを特徴とする請求項1に記載の可とう性成形型。
  4. 前記強化材が、無機材料、有機材料、金属材料、金属酸化物又はその混合物からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の可とう性成形型。
  5. 前記強化材が繊維であることを特徴とする請求項4に記載の可とう性成形型。
  6. 前記強化材が、前記複合材料の全量を基準にして20〜70体積%の範囲で含まれることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の可とう性成形型。
  7. 前記ポリマー材料が、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド及び液晶ポリマーからなる群から選ばれた1員であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の可とう性成形型。
  8. 前記ポリオレフィンが、ポリプロピレン又はシクロオレフィンであることを特徴とする請求項7に記載の可とう性成形型。
  9. 前記支持体が、ポリプロピレンとガラス繊維の複合材料からなることを特徴とする請求項1に記載の可とう性成形型。
  10. 前記賦形層が、硬化性樹脂組成物の硬化生成物からなることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の可とう性成形型。
  11. 前記硬化性樹脂組成物が光硬化性樹脂組成物であることを特徴とする請求項10に記載の可とう性成形型。
  12. 前記微細構造体の微細構造パターンが、プラズマディスプレイパネル用背面板のリブに相当する突起パターンであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の可とう性成形型。
  13. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の可とう性成形型を製造する方法であって、下記の工程:
    前記微細構造体の微細構造パターンに対応する形状及び寸法を有する突起パターンを表面に備えたマスター型を準備する工程、
    前記マスター型のパターン形成面に硬化性樹脂組成物を所定の膜厚で適用してプレ賦形層を形成する工程、
    前記プレ賦形層の上に、ポリマー材料及び強化材の複合材料からなるフィルム状支持体をさらに積層して前記マスター型、前記プレ賦形層及び前記支持体を含む積層体を形成する工程、
    前記プレ賦形層の硬化性樹脂組成物を硬化させる工程、そして
    前記硬化性樹脂組成物の硬化によって形成された賦形層を前記支持体とともに前記マスター型から離型して、支持体と、その支持体によって裏面を支持された、前記微細構造パターンに対応する形状及び寸法を有する溝パターンを表面に備えた賦形層とを有する可とう性成形型を作製する工程、
    を含んでなることを特徴とする可とう性成形型の製造方法。
  14. 前記プレ賦形層側にプライマ層を有するフィルム状支持体を使用することを特徴とする請求項13に記載の可とう性成形型の製造方法。
  15. 微細構造体の製造において微細構造パターンの転写に使用される可とう性成形型であって、
    5ppm/RH%未満の吸湿膨張係数を有することを特徴とする微細パターン転写用成形型。
  16. 前記吸湿膨張係数が3ppm/RH%以下であることを特徴とする請求項15に記載の微細パターン転写用成形型。
  17. 前記吸湿膨張係数が1ppm/RH%以下であることを特徴とする請求項15に記載の微細パターン転写用成形型。
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