JP2005255720A - 撥水・撥油性による防汚性と親水性による高洗浄性をもつガラスの表面組成物及び処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 フッ素含有オリゴマーを原料とする新規なハイブリッド化合物を開発し、このハイブリッド化合物でなる表面処理膜をガラス表面に形成することで、従来よりも優れた防汚性と高洗浄性を付与する。
【解決手段】 下記(1式)で示されるフッ素含有オリゴマー(RFはフルオロアルキル基を含有する基、nは1〜300の自然数で、分子量は500〜20000)と、多官能性アルコキシシランとを脱水縮合反応させて新規なハイブリッド化合物を得る。ガラス表面にこの化合物の被膜を形成する表面処理を行うと、ガラス表面に優れた防汚性及び高洗浄性が付与される。
【化1】
【解決手段】 下記(1式)で示されるフッ素含有オリゴマー(RFはフルオロアルキル基を含有する基、nは1〜300の自然数で、分子量は500〜20000)と、多官能性アルコキシシランとを脱水縮合反応させて新規なハイブリッド化合物を得る。ガラス表面にこの化合物の被膜を形成する表面処理を行うと、ガラス表面に優れた防汚性及び高洗浄性が付与される。
【化1】
Description
本発明はフルオロアルキル基を含有するアクリル酸オリゴマー/シリカゲルポリマーのハイブリッド化合物及びその利用に関する。さらに本発明は、ガラスの表面を処理するための表面処理組成物及び表面処理方法に関し、より詳しくは、新規なハイブリッド化合物により構成される表面処理膜をガラス表面に形成し、当該ガラスの表面に、一般環境においては防汚性を、洗浄環境など水中においては高洗浄性を付与することのできる表面処理組成物及び表面処理方法に関する。
フッ素などの撥水・撥油性を利用した表面処理を行うことで、防汚機能を付与する技術が従来から知られており、例えば特開2003-253250(特許文献1)に開示されている。また、表面に親水機能を付与することで、汚れが表面に付着しても水洗により容易に汚れを除去するという技術も従来から知られており、例えば特開2001-70801(特許文献2)に開示されている。
特開2003-253250号公報
特開2001-70801号公報
前記の特許文献1は、ガラスなどの無機材料の表面に、撥油性及び撥水性(時間経過と共に親水性に変わる)の機能を有する表面処理を行い、防汚性を付与するものであるが、原料である特定のフッ素含有オリゴマーがやや複雑な分子構造を有するため、煩雑な製造工程を有し、製造コストがかかっていた。
前記の特許文献2の場合、汚れが落ちやすいという機能は有するものの、一般的には汚れに対する耐性が特に優れているというものではないため、防汚という観点においては非処理物とのあいだにその機能の優位性は認められるものではなかった。
本発明は、低コストで容易に得ることができるフッ素含有オリゴマーを原料とする新規なハイブリッド化合物を開発し、このハイブリッド化合物でなる表面処理膜をガラス表面に形成することで、従来よりも優れた防汚性と高洗浄性を付与することを課題としてなされたものである。
本発明は、下記(1式)で示されるフッ素含有オリゴマー(RFはフルオロアルキル基を含有する基、nは1〜300の自然数で、分子量は500〜20000)と、多官能性アルコキシシランとを脱水縮合反応させて得られることを特徴とするハイブリッド化合物である。
また本発明は、前記(1式)のフッ素含有オリゴマーと、多官能性アルコキシシランとを脱水縮合反応させることを特徴とする新規なハイブリッド化合物の製造方法である。
また本発明は、前記(1式)のフッ素含有オリゴマーと、多官能性アルコキシシランとを含む表面処理組成物をガラス基材の表面に塗布する工程と、前記表面処理組成物による塗膜及びガラス基材を加熱処理する工程とを含み、前記の新規なハイブリッド化合物でなる表面処理膜をガラス表面に形成することを特徴とするガラスの表面処理方法である。
また本発明は、前記(1式)のフッ素含有オリゴマーと、多官能性アルコキシシランと、エタノールなどの溶剤と、アルカリ又は酸を含有することを特徴とするガラスの表面処理組成物である。
本発明のハイブリッド化合物は、フルオロアルキル基含有アクリル酸オリゴマー/シリカゲルポリマーであるため、一般環境(空気中)においては撥水・撥油機能により汚れがつき難く(防汚性)、また洗浄環境(水中)においては親水性により油汚れを除去しやすい(高洗浄性)という、相反する特性を有し、この防汚性及び高洗浄性はたいへん優れたものである。また、原料物質である特定のフッ素含有オリゴマーは比較的単純な分子構造であるので、容易かつ低コストで製造できる。
本発明のハイブリッド化合物の製造方法は、比較的単純な分子構造を有する特定のフッ素含有オリゴマーを原料とするので、容易かつ低コストで製造でき、しかも製造したハイブリット化合物は優れた防汚性と高洗浄性を有する。
本発明のガラスの表面処理方法は、比較的単純な分子構造を有する特定のフッ素含有オリゴマーを原料とするので、容易かつ低コストで、ガラス表面に優れた防汚性及び高洗浄性を付与できる。
本発明の表面処理組成物も同様に、比較的単純な分子構造を有する特定のフッ素含有オリゴマーを原料とするので、容易かつ低コストで、ガラス表面に優れた防汚性及び高洗浄性を付与できる。
(2式)中、R2 はメチル基、又はエチル基を表す。R1 は水素原子又はメチル基、エチル基、ヘキシル基、フェニル基等のアルキル基若しくはアリール基である。pは3又は4の自然数である。pが3の時、一般式は〔R1
Si(OR2 )3 〕のトリアルコキシシランとなる。例えばトリエトキシシラン、トリエトキシ(メチル)シラン、トリエトキシ(フェニル)シラン、トリメトキシ(メチル)シラン及びトリメトキシ(フェニル)シラン等である。pが4の時、qは0で、一般式は〔Si(OR2)4〕のテトラアルコキシシランとなる。例えばテトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)である。これらのうち、テトラアルコキシシランが好ましく、特に、TMOS及びTEOSは、液状であって特定のフッ素含有オリゴマーとの相溶性が高く、これらを使用することにより、本発明の処理組成物を均質なものとすることができる。
Si(OR2 )3 〕のトリアルコキシシランとなる。例えばトリエトキシシラン、トリエトキシ(メチル)シラン、トリエトキシ(フェニル)シラン、トリメトキシ(メチル)シラン及びトリメトキシ(フェニル)シラン等である。pが4の時、qは0で、一般式は〔Si(OR2)4〕のテトラアルコキシシランとなる。例えばテトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)である。これらのうち、テトラアルコキシシランが好ましく、特に、TMOS及びTEOSは、液状であって特定のフッ素含有オリゴマーとの相溶性が高く、これらを使用することにより、本発明の処理組成物を均質なものとすることができる。
上記の種々の多官能性アルコキシシランを2種以上混合して用いることもできる。例えば、テトラアルコキシシランに若干のトリアルコキシシランを添加する、あるいはテトラアルコキシシランの一部をトリアルコキシシランと置換した場合、フルオロアルキル基含有オリゴマーと多官能性アルコキシシランの相溶性が増加して、ハイブリッド化合物構造中の架橋性が向上し、膜の硬化性、耐久性を向上させる。さらには、コロイダルシリカあるいは珪酸ソーダの添加や、多官能アルコキシシランとの置換、そしてカルシウム・リン化合物の添加も同様の効果が発現できる。
本発明におけるフッ素含有オリゴマーは、フルオロアルキル基を含有する基(RF )を分子両末端もしくは片末端のみに一部含んでいる、アクリル酸オリゴマーである。フッ素含有オリゴマーにおける中間鎖(CH2 −CH−COOH)nの数nは1〜300であるが、好ましくは10〜100である。フッ素含有オリゴマーのフルオロアルキル基を含有する基(RF)は、(CF2)rF
(r=2〜10)又はCF(CF3)O[CF2CF(CF3)O]mC3F7 (m=0,1,2,3)とすることができる。
(r=2〜10)又はCF(CF3)O[CF2CF(CF3)O]mC3F7 (m=0,1,2,3)とすることができる。
上記式(1)で示される特定のフッ素含有オリゴマーは、下記式(1A)で示される過酸化フルオロアルカノイル[RFC(=O)OOC(=O)RF]を下記式(1B)で示されるアクリル酸と反応させることにより得ることができる。なお、この本発明における反応生成物(フッ素含有オリゴマー)中には、フルオロアルキル基を含有する基(RF
)が片末端のみに導入されているオリゴマーが任意の割合で含まれていてもよい。なお、式中RFは(CF2)rF (r=2〜10)、又はCF(CF3)O(CF2CF(CF3)O)mC3F7
(m= 0, 1, 2, 3)を示す。
)が片末端のみに導入されているオリゴマーが任意の割合で含まれていてもよい。なお、式中RFは(CF2)rF (r=2〜10)、又はCF(CF3)O(CF2CF(CF3)O)mC3F7
(m= 0, 1, 2, 3)を示す。
本発明の表面処理組成物は、前記のフッ素含有オリゴマーと多官能性アルコキシシランとを含むが、さらにこれらを溶解する溶剤(好ましくはエタノール)を含む。さらに、反応触媒としてアルカリ又は酸(好ましくはアルカリ)を含むことが望ましい。
本発明の表面処理組成物を構成する溶剤としては、特定のフッ素含有オリゴマー及び多官能性アルコキシシランを共に溶解することができるものの中から選択することができ、これらの種類によっても異なるが、メタノール、エタノール、IPA、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ベンゼン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン、アセトンなどの有機溶剤を例示することができ、これらのうち、メタノール及びエタノールなどのアルコール類が好ましい。
多官能性アルコキシシランの脱水・縮合反応を効率的に行わせて、ハイブリッド化合物形成を促進させる観点から、本発明の処理組成物は、酸性又はアルカリ性であることが好ましく、より良くはアルカリ性であることが特に好ましい。本発明の処理組成物をアルカリ性とするために添加されるアルカリ触媒は、例えばアンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重曹、炭酸水素カリウムなどを挙げることができる。本発明の処理組成物を酸性とするために添加される酸触媒は、無機酸であっても有機酸であってもよいが、例えば、無機酸として、塩酸、硝酸、硫酸などを、さらには、有機酸としては、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、蟻酸、酢酸、などを挙げることができる。
本発明の表面処理組成物において、フッ素含有オリゴマーの含有割合は0.2〜20質量%(更に好ましくは0.5〜10質量%)が適当である。特定のフッ素含有オリゴマーの含有割合が過小である場合には、防汚性や高洗浄性などの機能付与が困難となる。他方、20質量%を超える割合で特定のフッ素含有オリゴマーを含有させても、含有量に見合う処理効果が得られない。多官能性アルコキシシランの含有割合は2〜50質量%が適当である。またフッ素含有オリゴマーと、多官能性アルコキシシランとの質量割合は1:1〜1:20(さらに好ましくは1:1〜1:10)が適当である。多官能性アルコキシシランの含有割合(特定のフッ素含有オリゴマーに対する相対的な割合)が過小である場合には、フッ素含有オリゴマーと多官能性アルコキシシランの相溶性が悪化し、相分離が起こったり化合物が白濁したりするなど良好な処理膜の形成が困難となる。他方、この割合が過大である場合には、特定のフッ素含有オリゴマーの割合が相対的に過小となり、所期の効果をガラス表面に付与することが困難となる。
アルカリの含有割合は0.01〜30質量%が適当である。0.01質量%以下では触媒として効果が得られず、また、30質量%以上では、フッ素含有オリゴマーと、多官能性アルコキシシランの相溶性が著しく悪化し、ハイブリッド化合物を得ることができない。酸の含有割合は0〜50質量%が適当である。
なお、本発明の処理組成物には、その効果が損なわれない限度において、上記の必須成分以外に各種の任意成分が含有されていてもよい。
本発明の処理組成物は、特定のフッ素含有オリゴマーと、多官能性アルコキシシランとを溶剤に溶解させることにより容易に製造することができる。ここに、製造方法の一例を示せば、特定のフッ素含有オリゴマーを溶剤の一部に溶解してなる溶液と、多官能性アルコキシシランと、酸あるいはアルカリとを室温下に攪拌混合して均質化させ、次いで、溶剤の残部を添加してこの混合溶液を希釈する方法を挙げることができる。
本発明の処理組成物は、ガラスの表面処理に使用することができ、当該ガラス材料の表面に、防汚性(撥水及び撥油性)並びに高洗浄性(親水性)という相反する特性を付与することを可能とし、さらには表面に抗ウィルス性などの効果をも付与することができる。
本発明の処理方法は、ガラス表面に、本発明の処理組成物を塗布する工程と、前記処理組成物による塗膜を加熱する工程とを含む。塗布工程において、ガラス表面への処理組成物の塗布方法としては、当該処理組成物中にガラスを浸漬する浸漬法、スプレー、刷毛、ローラなど塗布手段を使用する、あるいは印刷手法を用いる方法など特に制限されるものではない。なお、この塗布工程の終了後、無機材料の表面に形成された塗膜から溶剤を除去するために乾燥処理を行うことが好ましい。乾燥条件としては、処理組成物を構成する溶剤の種類及び含有割合などによっても異なるが、例えば常温で1〜24時間とされる。
前記塗膜形成後の加熱工程において、加熱方法としては、オーブンによる加熱など、特に制限されるものではない。加熱条件としては、例えば常温〜200℃で5〜120分間とされ、好ましくは常温〜100℃で5〜60分間とされる。ガラス表面に塗布された塗膜が加熱されることにより、フッ素含有オリゴマーと、多官能性アルコキシシランとが脱水縮合反応して、ハイブリッド化合物からなる表面処理層が形成されるが常温以下では反応を進行させるには足りず、200℃以上では加熱による当該物質の分解反応が起こり、反応物であるハイブリッド化合物の形成が困難となる。また、このハイブリッド化合物は、アルカリ性のもとで脱水縮合反応を行うことで、酸性のもとで反応を行った場合と比較して、表面処理膜の耐久性を向上させることができる。この結果、水あるいは熱水を用いた食器洗浄機などの洗浄操作にともなう、化学的、物理的な作用に対して、ハイブリッド化合物により付与される防汚性(撥水及び撥油性)及び高洗浄性(親水性)が著しく損なわれることはなくなる。このように、アルカリ性のもとで反応を行うことで得た当該ハイブリッド化合物は、酸性のもとで反応を行うことで得たものと比較して、優れた洗浄耐久性を有する。さらには、膜の透明性向上、そして反応時間短縮に伴う、生産性の向上寄与が効果として認められる。
本発明の表面処理組成物により形成される表面処理層は、一般環境(空気中)においては表面に露出するフルオロアルキル基(フッ素)の作用で高い撥水及び撥油性を有することから、優れた防汚性を発揮する。洗浄時(水中)においてはフッ素に代わってカルボキシル基が表面に出て親水性になり、油汚れと表面処理層の間に水が進入することで油が表面から浮き出すので、優れた洗浄性を有することとなる。
以下、本発明の実施例について詳しく説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
〔調製例1〕
前記(1式)で示される特定のフッ素含有オリゴマー0.3gをエタノール11.3mlに溶解してなる溶液中に、テトラエトキシシラン(TEOS)1.5g及び3Nの塩酸7.5gを添加した。この系を室温下にて12日間攪拌し、半透明の溶液を得、これによりフルオロアルキル基含有アクリル酸オリゴマ-/シリカゲルポリマーである表面処理組成物を調製した。
前記(1式)で示される特定のフッ素含有オリゴマー0.3gをエタノール11.3mlに溶解してなる溶液中に、テトラエトキシシラン(TEOS)1.5g及び3Nの塩酸7.5gを添加した。この系を室温下にて12日間攪拌し、半透明の溶液を得、これによりフルオロアルキル基含有アクリル酸オリゴマ-/シリカゲルポリマーである表面処理組成物を調製した。
〔調製例2〕
前記(1式)で示される特定のフッ素含有オリゴマー0.3gをエタノール11.3mlに溶解してなる溶液中に、テトラエトキシシラン(TEOS)1.5g及び0.1Nのアンモニア水0.75gを添加した。この系を室温下にて4日間攪拌し、透明性の高い溶液を得、これにより表面処理組成物を調製した。
前記(1式)で示される特定のフッ素含有オリゴマー0.3gをエタノール11.3mlに溶解してなる溶液中に、テトラエトキシシラン(TEOS)1.5g及び0.1Nのアンモニア水0.75gを添加した。この系を室温下にて4日間攪拌し、透明性の高い溶液を得、これにより表面処理組成物を調製した。
〔ハイブリット膜の作製〕
室温下において、ガラス基板に、前記調製例1〜2で得られた表面処理組成物をそれぞれディップコートにより塗布し、50℃の温度で30分間加熱し、塗膜を硬化させてガラス表面に表面処理膜(ハイブリッド化合物の薄膜)を形成した。その後ガラス基板は、室温の塩化メチレンに浸漬して、15分間超音波洗浄機にて脱脂・洗浄処理を行い、サンプル基板とした。
室温下において、ガラス基板に、前記調製例1〜2で得られた表面処理組成物をそれぞれディップコートにより塗布し、50℃の温度で30分間加熱し、塗膜を硬化させてガラス表面に表面処理膜(ハイブリッド化合物の薄膜)を形成した。その後ガラス基板は、室温の塩化メチレンに浸漬して、15分間超音波洗浄機にて脱脂・洗浄処理を行い、サンプル基板とした。
〔表面処理膜の評価1〕
得られた表面処理膜の上に油(大豆油:オレイン酸+リノール酸)25μlを滴下させ、ガラス基板と油滴の接触部位で形成される角度を、ERMA製G-1-1000 接触角測定器により測定を行った。
この接触角値が高いほど、空中において油を弾きやすい、すなわち高い防汚性を有するということができる。(以降、ガラス基板と油滴の形成する角度を水中油滴接触角(度)あるいは単に水中油滴角(度)と呼ぶ。)
得られた表面処理膜の上に油(大豆油:オレイン酸+リノール酸)25μlを滴下させ、ガラス基板と油滴の接触部位で形成される角度を、ERMA製G-1-1000 接触角測定器により測定を行った。
この接触角値が高いほど、空中において油を弾きやすい、すなわち高い防汚性を有するということができる。(以降、ガラス基板と油滴の形成する角度を水中油滴接触角(度)あるいは単に水中油滴角(度)と呼ぶ。)
〔表面処理膜の評価2〕
得られた表面処理膜の上に前記油を滴下させ、さらにそのガラス基板を水中に浸漬し、ガラス基板と油滴の接触角度を前記接触角測定器により測定を行った。この接触角値が高いほど、水中において油が容易にとれる、すなわち高い洗浄性を有するということができる。
得られた表面処理膜の上に前記油を滴下させ、さらにそのガラス基板を水中に浸漬し、ガラス基板と油滴の接触角度を前記接触角測定器により測定を行った。この接触角値が高いほど、水中において油が容易にとれる、すなわち高い洗浄性を有するということができる。
前記の評価1,2の結果(空中油滴接触角、及び水中油滴角測定結果)を下記表1、2に示す。表1は調整例1(酸触媒)から得たサンプル基板、表2は調整例2(アルカリ触媒)から得たサンプル基板に関する。表1、2に示す結果から、本発明の表面処理を行ったガラスは初期状態においては、高い防汚性及び高洗浄性を有することが理解される。なお、表1、2中の※印は、水中において油滴がガラス基板から遊離したため(接触角値にした場合限りなく180°に近い状態で)、接触角の測定ができなかったもので、極めて撥油性が高いことを示している。(以下の表3、4においても同様)
〔表面処理膜の評価3:ハイブリッド化合物被膜を形成したガラスの洗浄耐久性評価〕
調製1〜2で得られた本発明の表面処理を行ったガラスの洗浄耐久性について調査を行った。
ガラスの洗浄には、石川島播磨重工業製業務用自動洗浄機を使用し、60〜65℃の温シャワー水で60秒間、そして80℃の温シャワー水で15秒間洗浄を行う操作を1サイクルとして、30サイクル繰り返し洗浄を行い、温度とシャワー水による化学的・物理的な作用に対する表面処理膜の耐久性を調べた。評価は水中油滴角により行った。測定結果を表3,4に示す。
調製1〜2で得られた本発明の表面処理を行ったガラスの洗浄耐久性について調査を行った。
ガラスの洗浄には、石川島播磨重工業製業務用自動洗浄機を使用し、60〜65℃の温シャワー水で60秒間、そして80℃の温シャワー水で15秒間洗浄を行う操作を1サイクルとして、30サイクル繰り返し洗浄を行い、温度とシャワー水による化学的・物理的な作用に対する表面処理膜の耐久性を調べた。評価は水中油滴角により行った。測定結果を表3,4に示す。
表1、2に示すように、調製例1、2によって表面処理されたガラス材料は、良好な防汚性(撥水、撥油性)と、高い洗浄性(水中撥油性=親水性)を示した。更に調製例2によって表面処理されたガラス材料は、洗浄操作による化学的・物理的作用を受けた後も良好な水中撥油性(親水性)が発現された。調製例1によって表面処理されたガラス材料は、洗浄操作による化学的・物理的作用を受けた後は、水中接触角値の低下が認められ、実質的な水中撥油機能は発現しなかった。
〔表面処理膜の評価4:XPSによる評価〕
調製例1、2によりガラス材料に表面処理された表面処理膜について、X線光電子分光分析装置(XPS)により、形成されたハイブリッド表面処理膜に存在するフッ素原子のシリカ原子1に対する比を求めた。さらに、評価3の洗浄処理後の試料についても同様に求めた。結果を表5に示す。
調製例1、2によりガラス材料に表面処理された表面処理膜について、X線光電子分光分析装置(XPS)により、形成されたハイブリッド表面処理膜に存在するフッ素原子のシリカ原子1に対する比を求めた。さらに、評価3の洗浄処理後の試料についても同様に求めた。結果を表5に示す。
初期未洗浄の場合、酸あるいはアルカリ触媒を理由とするシリカ対フッ素の比に違いはほとんど認められない。前記評価3の洗浄処理後の基板表面におけるシリカ対フッ素の比は、酸触媒の場合、洗浄による物理的・化学的影響により初期に比べてフッ素の比が大きく減少している。一方アルカリ触媒の場合、洗浄後の表面シリカ対フッ素の比は初期未洗浄の値とほぼ同値にとどまっていることが確認された。撥水・撥油性に寄与するフッ素は、酸触媒ではほぼ喪失しているが、アルカリ触媒では初期未洗浄と遜色ない程度にフッ素の残存が確認された。
フルオロアルキル基含有アクリル酸オリゴマ-/シリカゲルポリマーハイブリッドを表面に処理されたガラスは通常の一般空気中においてはフッ素による高い撥水・撥油性、すなわち汚れのつきにくさを有し、水中においては親水性、すなわち高い洗浄性を有するという相反する特性を発現する。この特性は、調製例1、2にあるように酸、アルカリのいずれの触媒下でも得ることが可能であるが、より良くはアルカリ触媒のもとで反応を行うことで、洗浄に対する耐久性が向上する。更には、表面処理膜透明性や加水分解反応時間短縮に伴う生産性向上の実現をも可能とした。
Claims (8)
- 前記多官能性アルコキシシランが、(R1)q-Si-(OR2)p(R2
=メチル基又はエチル基、R1 =水素原子、メチル基、エチル基、ヘキシル基、フェニル基等のアルキル基又はアリール基を示す。pは3又は4を示し、p=3の時R1はメチル基、エチル基又はヘキシル基を示し、p=4の時はq=0となる。)であることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド化合物。 - 前記多官能性アルコキシシランが、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシシラン又はトリエトキシシランから選択される1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド化合物。
- 前記フッ素含有オリゴマーを示す上記(1式)において、RF で表されるフルオロアルキル基を含有する基が(CF2)rF
(r=2〜10)、又はCF(CF3)O[CF2CF(CF3)O]mC3F7 (m=0,1,2,3)であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のハイブリッド化合物。 - 請求項1又は4に記載のフッ素含有オリゴマーと、請求項1〜3の何れかに記載の多官能性アルコキシシランとを脱水縮合反応させることを特徴とするハイブリッド化合物の製造方法。
- 請求項1又は4に記載のフッ素含有オリゴマーと、請求項1〜3の何れかに記載の多官能性アルコキシシランとを含む表面処理組成物をガラス基材の表面に塗布する工程と、前記表面処理組成物による塗膜及びガラス基材を加熱処理する工程とを含み、請求項1〜4の何れかに記載のハイブリッド化合物でなる表面処理膜をガラス表面に形成することを特徴とするガラスの表面処理方法。
- 請求項1又は4に記載のフッ素含有オリゴマーと、請求項1〜3の何れかに記載の多官能性アルコキシシランと、アルコールなどの溶剤と、アルカリを含有することを特徴とするガラスの表面処理組成物。
- 請求項1又は4に記載のフッ素含有オリゴマーと、請求項1〜3の何れかに記載の多官能性アルコキシシランと、アルコールなどの溶剤と、酸を含有することを特徴とするガラスの表面処理組成物。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2007154020A (ja) * | 2005-12-05 | 2007-06-21 | Inax Corp | ハイブリッド塗料及びその製造方法並びにハイブリッド皮膜付き製品及びその製造方法 |
JP2009280697A (ja) * | 2008-05-22 | 2009-12-03 | Nissan Motor Co Ltd | 上塗り塗料組成物及び上塗り塗膜 |
JP2013184985A (ja) * | 2012-03-05 | 2013-09-19 | Fujikura Rubber Ltd | 難燃性付与剤及びその製造方法 |
JP2018039987A (ja) * | 2017-08-21 | 2018-03-15 | 国立大学法人弘前大学 | フッ素含有ナノコンポジット粒子及びその製造方法、並びにこれを含むコーティング剤、油水分離膜、樹脂組成物 |
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2004
- 2004-03-09 JP JP2004065758A patent/JP2005255720A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007154020A (ja) * | 2005-12-05 | 2007-06-21 | Inax Corp | ハイブリッド塗料及びその製造方法並びにハイブリッド皮膜付き製品及びその製造方法 |
JP2009280697A (ja) * | 2008-05-22 | 2009-12-03 | Nissan Motor Co Ltd | 上塗り塗料組成物及び上塗り塗膜 |
JP2013184985A (ja) * | 2012-03-05 | 2013-09-19 | Fujikura Rubber Ltd | 難燃性付与剤及びその製造方法 |
JP2018039987A (ja) * | 2017-08-21 | 2018-03-15 | 国立大学法人弘前大学 | フッ素含有ナノコンポジット粒子及びその製造方法、並びにこれを含むコーティング剤、油水分離膜、樹脂組成物 |
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