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JP2005243379A - 光電変換装置 - Google Patents

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学 古茂田
Hisashi Higuchi
永 樋口
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Abstract

【課題】 透明電極の光学的および電気的特性を維持しつつ、エッチング加工性を向上させ、特に集積化パターニングが容易な高効率光電変換装置を提供すること。
【解決手段】 亜鉛を含有する錫酸化物もしくはインジウム酸化物またはこれらの複合酸化物からなる透明電極2と、この透明電極2上に形成され色素4を有する電子輸送層3と、正孔輸送層6とをこの順で下から上に配置した光電変換装置とする。これにより、低抵抗特性や高耐熱性を維持しつつ、エッチング加工性に優れた透明電極2を形成することができ、これにより、集積化時のパターニングが容易に行なえる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、特に太陽電池,光センサ等に好適に使用できる信頼性に優れた光電変換装置に関するものである。
近年、開発が盛んとなっている低コスト型太陽電池の主流として、色素増感型太陽電池が挙げられる。このタイプの太陽電池は、真空装置を用いないこと、低温プロセスであること、材料コストが安価であることなどから、製造コストが安いことが特長である。
色素増感太陽電池は、セル構成や色彩性の自由度の高さを製品の機能性に活用するために、透光性基板を用いることが多い。この場合、電極としての機能を保持させるために、ガラスまたは樹脂基板等の上に透明導電膜を形成することが一般的であり、目的に応じて透明導電膜の材料構成は様々に選定される。
従来、透光性基板上に形成される上記の透明導電膜の材料はインジウム錫酸化物(ITO)、フッ素ドープした酸化錫(FTO)、酸化インジウム(IO)または酸化錫(SnO2)が用いられてきた(例えば、特許文献1を参照。)。
また、耐熱性に優れた低抵抗透明導電膜として、ITO上にFTOを形成した2層構造とするものが提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
さらに、透明導電膜に不純物を添加して膜質を変化させる試みとしては、酸化錫を主成分とした透明導電膜における塩素濃度が0.11質量%であり、透明導電膜中のフッ素濃度が前記塩素濃度以上とする提案がなされている(例えば、特許文献3を参照。)。
特開2002−100787号公報 特開2003−323818号公報 特開2001−36107号公報
しかしながら、金属酸化物から構成される透明導電膜は、低抵抗金属並みの電気抵抗値が得られないために、大面積化を図る場合には、パターニングを行なった上で直列または並列接続する必要があるが、上述した各例においては、少なくともプロセス面または品質面のいずれかにおいて以下の問題を有していた。
すなわち、特許文献1に開示された光起電力素子は、主として酸化チタンで構成される半導体を介して一対の電極を有するものであって、電極の少なくとも一方が実質的に透明であることを特徴としている。この中で透明電極材料として挙げられている金属酸化物は、インジウム錫酸化物(ITO)、フッ素ドープした酸化錫(FTO)、ノンドープの酸化インジウム(IO)または酸化錫(SnO)である。しかしながら、ITOを用いた場合は、耐熱性が乏しいために酸化チタン層の形成時等の加熱プロセス中に比抵抗値が増大し、素子特性が大きく低下する。加えて、エッチング加工時には王水系のエッチャントを使用するために、形成される収集電極のAl等の材料も腐食してしまい、加工性の面においても問題を有している。また、FTOを用いた場合は、耐熱性および抵抗値は問題がないものの、エッチング加工性が極めて悪いために、集積化時に必要となるパターニング処理が困難であるといった問題を抱えている。また不純物をドープしないIOまたはSnOはキャリア濃度が低いために抵抗値が高く、太陽電池用の透明導電膜材料としては不適であった。
また、特許文献2に開示された技術では、ITO上にFTOを形成した2層構造とすることで、耐熱性に優れた低抵抗透明導電膜を実現している。耐熱性の向上については、ITOの酸素欠損部の加熱時における酸化が抑制されたためであると解釈されている。ところが、FTOを上部に被覆するためにエッチング加工性が悪く、集積化時に必要となるパターニング処理が困難になるといった問題を抱えている。
さらに、特許文献3に開示された光電変換装置用基板においては、塩素およびフッ素濃度の制御により、光透過率の向上とヘイズ率の制御を行なっているが、不純物の添加によっては、エッチング加工性は改善されず、特許文献2の場合と同様に集積化時に必要となるパターニング処理が困難であるといった問題を抱えている。
そこで本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、透明電極の光学的および電気的特性を維持しつつ、エッチング加工性を向上させ、特に集積化パターニングが容易な光電変換装置を提供することを目的とする。
本発明の光電変換装置は、亜鉛を含有する錫酸化物もしくは亜鉛を含有するインジウム酸化物またはこれらの複合酸化物からなる透明電極と、該透明電極上に形成された、色素を有する電子輸送体とを備えたことを特徴とする。
また、本発明の光電変換装置は、特に、前記透明電極の前記電子輸送体側に亜鉛が多く含有されていることとする。
本発明の光電変換装置は、亜鉛を含有する錫酸化物もしくはインジウム酸化物またはこれらの複合酸化物からなる透明電極と、該透明電極上に形成され色素を有する電子輸送体とを備えているので、亜鉛の存在により透明電極の低抵抗特性や高耐熱性を維持することが可能になる上にアモルファス化に寄与する。透明電極がアモルファスであるとエッチング加工性が向上する。また特に、電子輸送体側に亜鉛元素が多く含有されていることにより、初期のエッチングレートを高め、それ以降の安定したエッチングを実現させることができる。
以上により、低抵抗特性や高耐熱性を維持しつつ、エッチング加工性に優れた透明電極を形成することができ、これにより、集積化時のパターニングが容易な光電変換装置を提供することができる。
以下、本発明の光電変換装置について詳細に説明する。図1は本発明の光電変換装置の一実施形態を示す断面図であり、1は透光性基板、2は一方電極となる透明電極、3は色素4を有し色素4により発生した電子を輸送する電子輸送体である電子輸送層、5は他方電極である対向電極、6は正孔輸送体であり色素3により発生した正孔を輸送するための正孔輸送層、7は封止材、8は隣り合う光電変換領域どうしを接続するための導電接続部、9は対向基板である。
まず、透光性基板1は支持体としての機能を有するものであれば、例えばガラスやPET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂材料を用いることができる。透明電極2は低抵抗材料で、特に亜鉛を微量に(0.1ppm〜0.1原子%)含有する錫酸化物、インジウム酸化物またはその複合酸化物とする。具体的にはフッ素(F)またはアンチモン(Sb)をドープしたSnO、SnOやマンガン(Mn)をドープしたIn、InSn12のようなIn−SnO複合酸化物などが挙げられる。錫酸化物、インジウム酸化物またはその複合酸化物は、透明導電性材料の中でも、可視光域における透過率が高く、低抵抗のものが得られやすいために、光電変換素子の受光面側の電極材料として特に好適である。
ここで、透明電極2に含有される微量の亜鉛原子は、格子歪みを生じさせることによって結晶性を低下させ(アモルファス化させ)て、結果として膜のエッチング加工性を向上させることに大きく寄与する。この効果は透明電極2内に含有されている亜鉛原子濃度が高いほど顕著に発現するが、透明電極2の内部にまで亜鉛原子を高濃度で含有させた場合には、透明電極2の光学的透過率が低下するとともに抵抗率が上昇し、素子の短絡電流値および曲線因子が低下するために好ましくない。よって、透明電極2の光学的特性および電気的特性を維持しつつ、エッチング加工性を効果的に向上させるには、透明電極2内の亜鉛原子が、これと接触する層との界面において最も多く含まれるようにすることが好ましい。特にエッチングにおける初期層、すなわち電子輸送層3側に亜鉛原子を多く含有させることにより、エッチャントが膜中に効果的に浸透し、迅速なエッチングが可能となる。
なお、透明電極2の形成はスパッタ法,蒸着法,イオンプレーティング法、CVD法等の真空成膜技術を用いる他、スプレー熱分解法,ペースト法,ディップコート法等の膜形成方法によっても容易に形成することが可能である。
真空成膜にて形成する場合、例えばスパッタ法を用いて亜鉛原子を含有するフッ素ドープ酸化錫層を形成する場合には、スパッタリングターゲットとして、あらかじめ亜鉛原子を含有させたフッ素ドープ酸化錫を用いてスパッタする方法、純亜鉛または酸化亜鉛ターゲットとフッ素ドープした酸化錫ターゲットを用いて2元スパッタする方法、フッ素ドープした酸化錫ターゲットを、亜鉛原子を含有するガス雰囲気にてリアクティブスパッタする方法等を用いる。
一方、大気圧下で形成する場合、例えばスプレー熱分解法を用いて亜鉛原子を含有するフッ素ドープ酸化錫層を形成する場合には、原料溶液としてDBTDA[(CSn(OCOCH]エタノール溶液およびフッ化アンモニウム水溶液の混合液等、錫原子およびフッ素原子を含有する溶媒に、亜鉛アセチルアセトネート一水和物を含有したエタノール溶液等、亜鉛原子を含有する溶媒を極微量添加したものを用いて、加熱基板上に間欠噴霧して形成する。錫原子を含有する原料としては、塩化錫(無水)、塩化錫・5水和物、テトラブチル錫等を用いてもよい。
電子輸送層3はIn、SnO、WO、ZnO、TiO、Nb、ZrO、Ta、AgO、MnO、Cu、Fe、V、Cr、NiO、SrTiOもしくはKNbO17またはこれらを組み合わせたものが用いられる。また、上記の材料にバンドギャップ調整材、あるいは電荷輸送特性を向上させる目的で微量の不純物をドープしたものを用いてもよい。さらに、上記の材料を複合して用いてもよい。特に上記材料の中ではTiOに代表される酸化チタンまたはZnOに代表される酸化亜鉛を用いることが好ましい。これは、電子輸送層3として利用される金属酸化物の中において、特にキャリアの輸送特性に優れ、且つ製造プロセスが簡易であり、大面積成膜が容易であるといった特長を有しているからである。
また、電子輸送特性が極度に低下しないものであれば、Si、Ge等の単体半導体、CdSe、CdS、InP、Bi、PbS、ZnS等の化合物半導体やこれらに不純物を適宜ドープしたものを電子輸送層3として用いてもよい。
なお、透明電極2および電子輸送層3間に層状の酸化物半導体層を挿入させてもよい。これによって素子のリーク電流が低減され開放電圧値が向上する。
色素4はルテニウム錯体、フタロシアニン色素、シアニン色素、メロシアニン色素、ポルフィリン色素、ペリレン色素、アントラキノン色素、アゾ色素、キノフタロン色素、ナフトキノン色素、キナクリドン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色素、ベリレン色素、インジゴ色素等の有機色素、または無機色素から構成されることが好ましい。また、金属酸化物半導体3との吸着性および電荷輸送性を考慮すると、色素4の分子中にカルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、スルホン酸基、エステル基、ホスホニル基、ヒドロキシアルキル等のインターロック基を備えていることが好ましい。また、ここでいう色素とは、少なくとも可視光領域の光を吸収してキャリアを励起させる物質を統括的に表すものとし、本発明の効果が著しく損なわれないものであればよい。例えば、Si、Ge等の単体半導体、CdSe、CdS、InP、Bi、PbS、ZnS、InN等の化合物半導体やこれらに不純物を適宜ドープしたものを用いてもよい。さらに、有機−無機ハイブリッド材料も同様に適用することが可能である。
対向電極5は透光性および導電性を有する材料から構成されることが好ましく、支持基体上に透明導電層を形成したものが好適に用いられる。具体的には支持基体はガラス、透明プラスチックおよび透明樹脂等が用いられる。また、透明導電層には酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛またはこれらの複合酸化物が用いられる。さらに透明導電層上には、電解液中のレドックスイオンの還元反応を充分な速度で行なわせるために、白金(Pt)、カーボン(C)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)等の触媒層を形成することが好ましい。
なお、対向電極5のシート抵抗は20Ω/□以下、望ましくは10Ω/□以下とし、これを達成するために、網目状金属等からなる取り出し電極を付加形成してもよい。取り出し電極の材料としては、Ag,Al,Cu,Ti,Ni,Fe,Zn,Mo,Wまたはこれらの化合物を用いることができる。この時、電解液に対して腐食耐性の低い材料を用いた場合は、腐食耐性に優れたバリア層をさらに設けることが望ましい。
正孔輸送層6は、第4級アンモニウム塩やLi塩などを用いる。電解質溶液の組成としては例えば、炭酸エチレン、アセトニトリルまたはメトキシプロピオニトリルなどに、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム、ヨウ化リチウム、ヨウ素などを混合し調製したものを用いることができる。
上記に代わる正孔輸送層6の材料としては、透明導電性酸化物、ゲル電解質や固体電解質などの電解質、有機正孔輸送剤、極薄膜金属などがよい。
透明導電性酸化物としては、CuI,CuO,CuS,CuInSe,CuInS,CuSCN,CoO,NiO,FeO,MoOまたはCr等がよい。
ゲル電解質は、大別して化学ゲルと物理ゲルに分けられる。化学ゲルは架橋反応などにより化学結合でゲルを形成しているものであり、物理ゲルは、物理的な相互作用により室温付近でゲル化しているものである。ゲル電解質としては、アセトニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、またはこれらの混合物に対し、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドなどのホストポリマーを混入して重合させたゲル電解質が好ましい。なお、ゲル電解質や固体電解質を使用する場合、低粘度の前駆体を酸化物半導体層に含有させ、加熱,紫外線照射,電子線照射などの手段で二次元,三次元の架橋反応を起こさせることによってゲル化または固体化できる。
イオン伝導性の固体電解質としては、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイドまたはポリエチレンなどの高分子鎖に、スルホンイミダゾリウム塩、テトラシアノキノジメタン塩、ジシアノキノジイミン塩などの塩をもつ固体電解質が好ましい。ヨウ化物の溶融塩としてはイミダゾリウム塩、第4級アンモニウム塩、イソオキサゾリジニウム塩、イソチアゾリジニウム塩、ピラゾリジウム塩、ピロリジニウム塩、ピリジニウム塩などのヨウ化物を用いることができる。
上述のヨウ化物の溶融塩としては、例えば、1,1−ジメチルイミダゾリウムアイオダイド、1,メチル−3−エチルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−イソペンチルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムアイオダイド、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾールアイオダイド、1−エチル−3−イソプロピルイミダゾリウムアイオダイド、ピロリジニウムアイオダイド等を挙げることができる。
有機正孔輸送剤としては、トリフェニルジアミンやOMeTADなどが挙げられる。イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩およびピリジニウム塩等の溶融塩電解質やLiI,NaI,KIおよびCaIとIの混合物、またはLiBr、NaBr、KBrおよびCaBr2とBr2の混合物をアルコール類、ニトリル化合物、カーボネート化合物に溶解させた電解液が好適に用いられる。
封止材7は、薬液に対する腐食耐性、吸湿防止機能を有し充分な接着強度を有するものがよく、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)、EEA(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、UV硬化樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂またはこれらの複合物などを用いることができる。
導電接続部8は、隣接セルの電気的接続部であり、金属等の低抵抗材料が用いられる。具体的にはAg、Al、Cu、Ti、Ni、Fe、Zn、Mo、W、またはこれらの合金やこれらを含有する化合物が好ましい。導電接続部8の形成は蒸着法、スパッタ法、CVD法等の真空成膜技術を用いるか、ペースト法、ディップコート法、スプレー熱分解法、ディスペンサー法等によって形成することが可能である。図1は直列接続の例であるが、並列接続または両者を組み合わせた任意の接続方法とすることが可能である。
対向基板9は支持体としての機能を有するものであれば、例えば金属基板、ガラスやPET等の樹脂材料を用いることができる。但し、導電性材料を用いる場合には、集積化の際にリークが生じないように、分割して用いるか、または絶縁処理を表面に施すことが好ましい。
このように構成した本発明の光電変換装置によれば、亜鉛を含有する錫酸化物もしくはインジウム酸化物またはこれらの複合酸化物からなる透明電極2と、この透明電極2上に形成され色素4を有しこの色素4で発生した電子を輸送する電子輸送体である電子輸送層3と、色素4で発生した正孔を輸送する正孔輸送体である正孔輸送層6とをこの順で下から上に配置しているので、亜鉛の存在により透明電極2の低抵抗特性や高耐熱性を維持することが可能になる上にアモルファス化に寄与する。透明電極2がアモルファスであるとエッチング加工性が向上する。また特に、電子輸送層3側に亜鉛を多く含有させることにより、初期のエッチングレートを高め、それ以降の安定したエッチングを実現させることができる。
以上により、低抵抗特性や高耐熱性を維持しつつ、エッチング加工性に優れた透明電極を形成することができ、これにより、集積化時のパターニングが容易な光電変換装置を提供することができる。
まず、透光性基板1となる厚さ1.1mmのガラス基板上に、スパッタリング法によって透明電極2となる、亜鉛原子を含有するフッ素ドープ酸化錫を形成した。スパッタにはバイアススパッタ装置(ULVAC社製、SBH−2306RE特型)を用い、15cmφの酸化亜鉛ターゲットおよびフッ素ドープ酸化錫ターゲットによる2元スパッタを行なった。各ターゲットの基板側にはシャッターを設け、開度を調整することにより両ターゲットからの成膜寄与率を制御した。この時、酸化亜鉛ターゲットおよびフッ素ドープ酸化錫ターゲットには、それぞれ直流電圧400〜490V,450〜570Vを印加し、スパッタ電流をそれぞれの電圧に対して0.08〜0.12A,0.55〜0.7Aとした。またプロセスガスとしてArおよびO(ただし、20%Ar希釈)を35sccmおよび1sccm導入し、成膜室内の圧力を0.5〜0.7Paに制御した。
次に耐酸レジストを、エッチング領域を除いた部分にスクリーン印刷した後、25℃の5mol/lのHCl溶液中に浸漬させ、Mg片を適宜投入しつつ、エッチングを行なった。次いで、アセトン溶液に基板を浸漬させて耐酸レジストを除去した後、エタノール中にてガラス基板の表面洗浄を行なった。
次に、同ガラス基板上に電子輸送層3となるTiO層を部分的に形成した。具体的には、ゾルゲル法から作製した平均粒径約10nmのTiOペーストをスクリーン印刷法で塗布し、室温にて予備乾燥させた後、マッフル炉内で450℃×30分の焼結熱処理を行なった。さらに、平均粒径約50〜100nmのTiOペーストを先のペースト量の30%程度の分量でスクリーン印刷法により塗布し、同じく室温にて予備乾燥させた後、マッフル炉内で450℃×30分の焼結熱処理を行なった。このとき、焼結後のTiO層の膜厚は約9μmであり、多孔質形状であった。この後、酸性のTiOゾルを添加し、150℃×5分の加熱処理を行なった。
次に、ルテニウム−トリス型の遷移金属錯体色素をアセトニトリルおよびt−ブタノールの溶媒に溶解させたものにTiO層を形成した基板を約15時間浸漬して、色素をTiO層上に形成した。この間、溶液の温度は60℃〜80℃に保持した。
次いで、対向基板9となるガラス基板上に、対向電極5となる亜鉛元素を含有するフッ素ドープ酸化錫およびPt層をパターン形成したものを、上記色素層まで形成した基板と、封止材となる熱可塑性エポキシ樹脂を介して対向配置させ、電解液注入孔(不図示)を残して局部加熱により周囲を封止した。この際、隣接して接続される素子の電気的コンタクトを取るため、一素子の透明電極2と隣接する素子の対向電極5を、Agペーストを介して接続した。
引き続き、対向基板9に設けた注入孔より、正孔輸送層6となるヨウ素を0.1M、ヨウ化リチウムを0.1M、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドを0.7M、4−tertブチルピリジンを8M混合し、メトキシアセトニトリルを溶媒として調製したものを用いた。最後に、電解液注入孔をエポキシ樹脂により封止した。
上記の工程において、スパッタ時のシャッター開度を調整することによって、透明電極2への亜鉛元素の含有量およびプロファイルが異なる素子を作製し、パターニング時におけるエッチングレートの差異を調べた(表1を参照)。
Figure 2005243379
また、各透明電極について一定時間のエッチング処理を施して作製した素子について、入射光強度が100mW/cmに調整された擬似太陽光を照射し、特性評価を行なった(表2を参照)。なお、評価において比較例は、亜鉛を含有させていないフッ素ドープ酸化錫を透明電極2に用いた場合を示している。また、表1において、亜鉛濃度の分析はXRF(蛍光X線分析)装置(理学電機工業社製、型番RIX−2100)によって、深さ方向のエッチングを行ないながら測定を行なった。測定箇所は、透明電極2の基板から0.1μmの深さ位置(表1中で基板側と記す)、基板から0.5μm深さ位置(表1中で中央部と記す)、および電子輸送層側表面から0.1μmの深さ位置(表1中で電子輸送層側と記す)について行なった。
表1より、本発明例の亜鉛原子を含んだフッ素ドープ酸化錫膜では、比較例よりエッチングレートが向上しており、亜鉛原子の含有量が増大するにつれて、その効果が顕著となっていることがわかる。これは、上述したように亜鉛原子の導入によって、フッ素ドープ
酸化錫膜の結晶性が低下したことに起因するものであると考えられる。
Figure 2005243379
さらに、表2より、エッチングレートの高い条件では、素子の分離が確実に行なわれており、これによってリーク電流が抑えられ、比較例に比して開放電圧および曲線因子が向上していることが分かる。但し、本発明例1のように膜中全般に高濃度で亜鉛原子を含有させた場合には、結晶性の低下に伴う透過率の悪化や、比抵抗値の上昇が顕著となり、短絡電流値および曲線因子が低下してしまう。これに対して、亜鉛含有量を深さ方向に不均一とした場合、特に透明電極と接触する他層との界面近傍で高濃度に含有させた場合(本発明例4,5)では、エッチングレートの向上による利点を維持しつつ、透明電極の透過率の低下や比抵抗値の上昇を抑制させることが可能となる。したがって、この条件では素子の短絡電流値や曲線因子の大幅な低下が抑止され、比較例より十分に高い変換効率を実現することができた。
以上により、透明電極部に亜鉛原子を含有させることで、エッチング加工性が向上し、集積化に必要となるパターニング処理が容易となる。同時に、パターニング不良等による特性低下が抑止され、高効率を有する素子の作製が可能となる。
なお、本発明では、上記例の様に色素増感型太陽電池に関する応用に限定されるものではなく、薄膜シリコン太陽電池および化合物系薄膜太陽電池に代表される薄膜太陽電池や、有機太陽電池の透明電極に用いることも可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の調整、変更を行なってもよい。
本発明の光電変換装置を模式的に説明する断面図である。
符号の説明
1:透光性基板
2:透明電極
3:電子輸送層
4:色素
5:対向電極
6:正孔輸送層
7:封止材
8:導電接続部
9:対向基板

Claims (2)

  1. 亜鉛を含有する錫酸化物もしくは亜鉛を含有するインジウム酸化物またはこれらの複合酸化物からなる透明電極と、該透明電極上に形成された、色素を有する電子輸送体とを備えたことを特徴とする光電変換装置。
  2. 前記透明電極の前記電子輸送体側に亜鉛が多く含有されていることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
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